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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1351782
審判番号 不服2018-1156  
総通号数 235 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-01-29 
確定日 2019-05-16 
事件の表示 特願2013-229517号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成27年5月11日出願公開、特開2015-89403号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年11月5日の出願であって、平成29年8月24日付けで拒絶の理由が通知され、同年10月26日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年11月6日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、平成30年1月29日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされ、これに対し、当審において、同年10月12日付けで拒絶の理由が通知され、同年12月17日に意見書及び手続補正書が提出され、これに対し、当審において、平成31年1月7日付けで最後の拒絶の理由が通知され、同年2月28日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 平成31年2月28日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成31年2月28日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
本件補正は特許請求の範囲の請求項1の記載の補正を含むものであり、本件補正前の平成30年12月17日にされた手続補正の特許請求の範囲の請求項1の記載と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、それぞれ以下のとおりである(下線部は補正箇所を示す。また、A?I4については発明を分説するため当審で付与した。)。

(本件補正前)
「【請求項1】
A 遊技領域に設けた特別始動領域への遊技球の入賞に基づき特図変動表示ゲームを実行し、該特図変動表示ゲームが予め定めた特別結果となった場合に、前記遊技領域に設けた変動入賞部を閉状態から開状態に変換することに関連して遊技者に有利な特別遊技状態を発生させることが可能な遊技機において、
B 前記特別遊技状態は、第1特別遊技状態と、該第1特別遊技状態よりも遊技者に不利な第2特別遊技状態とが含まれ、
C 前記第2特別遊技状態の終了後、所定期間に亘って特定の遊技モードを発生可能とし、
D 前記特別始動領域への遊技球の入賞に基づき前記特図変動表示ゲームの実行権利を始動記憶として規定数の範囲内で記憶することが可能な始動記憶手段と、
E 前記始動記憶手段に記憶された始動記憶を記憶された順序で消化して前記特図変動表示ゲームを実行することが可能な変動表示手段と、
F 前記始動記憶に対応する特図変動表示ゲームが前記特別結果となるか否かを当該特図変動表示ゲームの実行以前に事前判定することが可能な事前判定手段と、
G 前記始動記憶手段に記憶される始動記憶及び前記変動表示手段によって特図変動表示ゲームが実行されている始動記憶に対応する数の演出部を表示可能に設定されるとともに前記変動入賞部からの距離がそれぞれ異なるように設定される複数の演出部と、
H 予告条件を成立させる特定の始動記憶に対応する前記演出部に特定の態様で演出を行わせることで予告演出を実行することが可能な予告演出手段と、
を備え、
I 前記予告演出手段は、
I1 前記特定の遊技モードにおいて前記予告演出を実行可能であり、
I2 前記特定の始動記憶が消化される順序が進行することに伴って、前記特定の態様で演出を行わせる前記演出部を変更し、
I3 前記特定の始動記憶が消化される順序に対応する前記演出部が、前記始動記憶手段に記憶される始動記憶に対応する演出部から前記変動表示手段によって特図変動表示ゲームが実行されている始動記憶に対応する演出部に変更されることに伴い、該始動記憶に対応する演出部において前記特定の態様で行われていた演出の態様を該特図変動表示ゲームが実行されている始動記憶に対応する演出部において認識可能に反映すると共に演出の態様を一部変更可能にし、
I4 前記始動記憶手段に記憶される始動記憶に対応する演出部において前記特定の態様に比べて期待度の低い所定の態様で行われていた演出の態様を前記特図変動表示ゲームが実行されている始動記憶に対応する演出部において認識可能に反映させる
ことを特徴とする遊技機。」

(本件補正後)
「【請求項1】
A 遊技領域に設けた特別始動領域への遊技球の入賞に基づき複数の識別情報を変動表示する特図変動表示ゲームを実行し、該特図変動表示ゲームが予め定めた識別情報が停止表示される特別結果となった場合に、前記遊技領域に設けた変動入賞部を閉状態から開状態に変換することに関連して遊技者に有利な特別遊技状態を発生させることが可能な遊技機において、
B 前記特別遊技状態は、第1特別遊技状態と、該第1特別遊技状態よりも遊技者に不利な第2特別遊技状態とが含まれ、
C 前記第2特別遊技状態の終了後、所定期間に亘って特定の遊技モードを発生可能とし、
D 前記特別始動領域への遊技球の入賞に基づき前記特図変動表示ゲームの実行権利を始動記憶として規定数の範囲内で記憶することが可能な始動記憶手段と、
E 前記始動記憶手段に記憶された始動記憶を記憶された順序で消化して前記特図変動表示ゲームを実行することが可能な変動表示手段と、
F 前記始動記憶に対応する特図変動表示ゲームが前記特別結果となるか否かを当該特図変動表示ゲームの実行以前に事前判定することが可能な事前判定手段と、
G 前記始動記憶手段に記憶される始動記憶及び前記変動表示手段によって特図変動表示ゲームが実行されている始動記憶に対応する数の演出部を表示可能に設定されるとともに前記変動入賞部からの距離がそれぞれ異なるように設定される複数の演出部と、
H 予告条件を成立させる特定の始動記憶に対応する前記演出部に特定の態様で演出を行わせることで予告演出を実行することが可能な予告演出手段と、
を備え、
I 前記予告演出手段は、
I1 前記特定の遊技モードにおいて前記予告演出を実行可能であり、
I2 前記特定の始動記憶が消化される順序が進行することに伴って、前記特定の態様で演出を行わせる前記演出部を変更し、
I3 前記特定の始動記憶が消化される順序に対応する前記演出部が、前記始動記憶手段に記憶される始動記憶に対応する演出部から前記変動表示手段によって特図変動表示ゲームが実行されている始動記憶に対応する演出部に変更されることに伴い、該始動記憶手段に記憶される始動記憶に対応する演出部において前記特定の態様で行われていた演出の態様を該特図変動表示ゲームが実行されている始動記憶に対応する演出部において認識可能に反映すると共に演出の態様を一部変更可能にし、
I4 前記始動記憶手段に記憶される始動記憶に対応する演出部において前記特定の態様に比べて期待度が低く且つ前記特定の遊技モードにおける通常の態様よりも期待度の高い所定の態様で行われていた演出の態様および前記特定の遊技モードにおける通常の演出の態様を前記特図変動表示ゲームが実行されている始動記憶に対応する演出部において認識可能に反映させる
ことを特徴とする遊技機。」

2 補正の適否
本件補正は、
ア 補正前の請求項1に記載された発明特定事項であるAの「特図変動表示ゲーム」について、「複数の識別情報を変動表示する」ことを付加して限定し、

イ 補正前の請求項1に記載された発明特定事項であるAの「特別結果」について、「識別情報が停止表示される」ものであることを付加して限定し、

ウ 補正前の請求項1に記載された発明特定事項であるI3の「該始動記憶に対応する演出部」を「該始動記憶手段に記憶される始動記憶に対応する演出部」へと変更するものであるが、明確にするための変更で実質的な内容を変更するものでなく、

エ 補正前の請求項1に記載された発明特定事項であるI4の「前記特定の態様に比べて期待度の低い所定の態様」について、「前記特定の遊技モードにおける通常の態様よりも期待度の高い」ことを付加して限定し、

オ 補正前の請求項1に記載された発明特定事項であるI4の「前記特図変動表示ゲームが実行されている始動記憶に対応する演出部において認識可能に反映させる」対象について、「前記特定の遊技モードにおける通常の演出の態様」を付加して限定する補正を含むものである。

また、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
そうすると、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
そして、本件補正は、明細書の段落【0067】、【1199】、【1231】?【1233】及び【1277】並びに図151、図153(D)及び図156(C)等の記載に基づいており、新規事項を追加するものではない。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、前記1(本件補正後)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献に記載された事項
当審による平成31年1月7日付けの最後の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された特開2013-111217号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

「【0019】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態の遊技機の説明図である。
本実施形態の遊技機10は前面枠12を備え、該前面枠12は本体枠(外枠)11にヒンジ13を介して開閉回動可能に組み付けられている。遊技盤30(図2参照)は前面枠12の表側に形成された収納部(図示省略)に収納されている。また、前面枠(内枠)12には、遊技盤30の前面を覆うカバーガラス(透明部材)14を備えたガラス枠15が取り付けられている。」

「【0025】
遊技領域32のセンターケース40の左側には、普通図柄始動ゲート(普図始動ゲート)34が設けられている。センターケース40の左下側には、三つの一般入賞口35が配置され、センターケース40の右下側には、一つの一般入賞口35が配置されている。
これら一般入賞口35、…には、各一般入賞口35に入った遊技球を検出するための入賞口スイッチ35a?35n(図3参照)が配設されている。
また、センターケース40の下方には、特図変動表示ゲームの開始条件を与える始動入賞口36が設けられ、その直下には上部に逆「ハ」の字状に開いて遊技球が流入し易い状態に変換する一対の可動部材37b、37bを備えるとともに内部に第2始動入賞口を有する普通変動入賞装置(普電)37が配設されている。
【0026】
普通変動入賞装置37の一対の開閉部材37b,37bは、常時は遊技球の直径程度の間隔をおいた閉じた閉状態(遊技者にとって不利な状態)を保持している。ただし、普通変動入賞装置37の上方には、始動入賞口36が設けられているので、閉じた状態では遊技球が入賞できないようになっている。
そして、普図変動表示ゲームの結果が所定の停止表示態様となった場合には、駆動装置としての普電ソレノイド37c(図3参照)によって、逆「ハ」の字状に開いて普通変動入賞装置37に遊技球が流入し易い開状態(遊技者にとって有利な状態)に変化させられるようになっている。
さらに、普通変動入賞装置37の下方には、特図変動表示ゲームの結果によって遊技球を受け入れない状態と受け入れ易い状態とに変換可能な特別変動入賞装置(大入賞口)38が配設されている。
【0027】
特別変動入賞装置38は、上端側が手前側に倒れる方向に回動して開放可能になっているアタッカ形式の開閉扉を有しており、補助遊技としての特図変動表示ゲームの結果如何によって大入賞口を閉じた状態(遊技者にとって不利な閉塞状態)から開放状態(遊技者にとって有利な状態)に変換する。
即ち、特別変動入賞装置38は、例えば、駆動装置としての大入賞口ソレノイド38b(図3参照)により駆動される開閉扉によって開閉される大入賞口を備え、特別遊技状態中は、大入賞口を閉じた状態から開いた状態に変換することにより大入賞口内への遊技球の流入を容易にさせ、遊技者に所定の遊技価値(賞球)を付与するようになっている。」

「【0035】
普図始動ゲート34への通過検出時に抽出した普図乱数値が当たり値であるときには、LED表示部53の普図表示器に表示される普通図柄が当たり状態で停止し、当たり状態となる。このとき、普通変動入賞装置37は、内蔵されている普電ソレノイド37c(図3参照)が駆動されることにより、可動部材37bが所定の時間(例えば、0.3秒間)だけ開放する状態に変換され、遊技球の入賞が許容される。
始動入賞口36への入賞球及び普通変動入賞装置37への入賞球は、それぞれは内部に設けられた始動口1スイッチ36aと始動口2スイッチ37aによって検出される。始動入賞口36へ入賞した遊技球は第1特図変動表示ゲームの始動入賞球として検出され、所定の上限数(例えば、4個)を限度に記憶されるとともに、普通変動入賞装置37へ入賞した遊技球は第2特図変動表示ゲームの始動入賞球として検出され、所定の上限数(例えば、4個)を限度に記憶される。
【0036】
また、この始動入賞球の検出時にそれぞれ大当り乱数値や大当り図柄乱数値、並びに各変動パターン乱数値が抽出され、抽出された乱数値は、遊技制御装置100(図3参照)内の特図記憶領域(RAMの一部)に特図始動記憶として各々所定回数(例えば、最大で4回分)を限度に記憶される。そして、この特図始動記憶の記憶数は、一括表示装置50の始動入賞数報知用の記憶表示部に表示されるとともに、センターケース40の表示装置41においても表示される。
【0037】
遊技制御装置100は、始動入賞口36若しくは普通変動入賞装置37への入賞、又はそれらの始動記憶に基づいて、一括表示装置50に設けられた特図1表示器または特図2表示器(変動表示装置)で第1または第2特図変動表示ゲームを行う。
第1特図変動表示ゲーム及び第2特図変動表示ゲームは、複数の特別図柄(特図、識別情報)を変動表示したのち、所定の結果態様を停止表示することで行われる。また、表示装置41にて各特図変動表示ゲームに対応して複数種類の識別情報(例えば、数字、記号、キャラクタ図柄など)を変動表示させる飾り特図変動表示ゲームが実行されるようになっている。
そして、特図変動表示ゲームの結果として、特図1表示器若しくは特図2表示器の表示態様が特別結果態様となった場合には、大当りとなって特別遊技状態(いわゆる、大当り状態)となる。また、これに対応して表示装置41の表示態様も特別結果態様となる。」

「【0083】
また、演出制御装置300は、遊技制御装置100からの制御信号に基づき、表示装置41で特図変動表示ゲームに対応した飾り特図変動表示ゲームを表示する処理を行う。さらに、演出制御装置300では、遊技制御装置100からの制御信号に基づき、スピーカ19a,19bからの音の出力、各種LEDの発光を制御する処理等を行う。
また、遊技制御装置100のCPU111Aは、特図変動表示ゲームの結果が当たりの場合は、特図1表示器や特図2表示器に特別結果態様を表示するとともに、特別遊技状態を発生させる処理を行う。
特別遊技状態(大当り)を発生させる処理においては、CPU111Aは、例えば、大入賞口ソレノイド38bにより特別変動入賞装置38の開閉扉38cを開放させ、大入賞口内への遊技球の流入を可能とする制御を行う。
【0084】
そして、大入賞口に所定個数(例えば、10個)の遊技球が入賞するか、大入賞口の開放から所定時間(例えば、25秒又は1秒)が経過するかの何れかの条件が達成されるまで大入賞口を開放することを1ラウンドとし、これを所定ラウンド回数(例えば、16回又は12回)継続する(繰り返す)制御(サイクル遊技)を行う。
また、2R当りや小当りが発生すると、大入賞口を例えば2回開放する制御を行う。なお、特図変動表示ゲームの結果がはずれの場合は、特図1表示器や特図2表示器にはずれの結果態様を表示する制御を行う。」

「【0089】
図5において、「電サポ」とは前記普電サポート状態のことである。また、「特定期間」とは、所定条件の成立で、始動記憶として記憶された乱数に基づいて、当該始動記憶に基づく特図変動表示ゲームの実行前にゲームの結果を事前に判定して報知するいわゆる先読み予告制御を実行すると決定した期間(以下、これを先読みモード期間と称する)である。
なお、図5(F)の選択テーブルは、これの代わりに、図6(F’)に示すような選択テーブルとしてもよい。図5(F)の選択テーブルを使用することで、電サポがある状態では特定期間の前半よりも後半の特図変動表示ゲームでリーチとなる率を低くすることができる一方、図6(F’)の選択テーブルを使用することで、電サポがある状態では特定期間(先読みモード期間)の前半よりも後半の特図変動表示ゲームでリーチとなる率を高くすることができる。
従って、本実施例では、先読みモード期間の前半と後半で、遊技制御装置100による変動表示ゲームの制御モードが異なると言える。後述のように、この制御モードの切り替えや先読みモードの終了(通常モードへの復帰)は、演出制御装置300へ送信する確率情報コマンドで知らせるようにすることができる。」

「【0091】
ここで、図8?図11を用いて、本実施例における先読みモード中の先読み予告の具体的な例について説明する。本実施例においては、先読み予告は、表示装置41の保留表示部(図では画面下部)RDに表示される始動記憶(保留)を示すマーク(図では○印)を利用して行うものを含む。保留表示部RDの左側の表示部DPは、実行中の変動表示ゲームの始動記憶(保留)を示す。
図8は、所定の条件が成立して先読みモードを開始する際に表示する画面の例を示す。ここで、「所定条件成立」としては、例えば特図変動表示ゲームの変動結果が大当りとなる場合や、小当りの場合、大当りの発生後所定ゲーム数経過などが考えられる。
先読みモードが開始されると、その後に発生した始動記憶を先読みして特定の結果となる(例えば、リーチを伴う変動、大当りとなる変動等、もしくは抽選によって先読み演出を行うと決定された変動等)であれば、図9に示すように、始動記憶(保留)を示すマークに特別な特図変動表示ゲームであることを報知する記号もしくは模様を付記して表示する。また、例えば画面の右上隅に、先読みモードに滞在する特図変動表示ゲームの数をダウンカウント方式で報知するカウンタ表示CDを表示する。
【0092】
なお、図9の変動表示装置41の画面の外(右方もしくは上方)に示されているのは、図7(B)の「先読み回転数領域」に記憶される回数の値である。つまり、カウンタ表示CDの値から始動記憶数を引いたものが「先読み回転数領域」の値となる。図9(G)?(I)は、図9(C)において表示されている左から3番目の「?」が付記された始動記憶により開始された特図変動表示ゲームの途中の様子(結果ははずれ)を表している。図9(H)より、このゲームではリーチが発生していることが分かる。
図10(J)?(O)には、図9(B)において表示されている左から4番目の「!!」が付記された始動記憶により開始された特図変動表示ゲームの発展の様子を表している。このゲームでは図9(G)?(I)よりも期待度の高いリーチが発生していることが分かる。
【0093】
図11には、先読みモードのゲーム数が50回であってそのうち40回を消化した時点で選択テーブルを図5(C)から図5(D)へ切り替える制御を行う際に、本発明を適用しない場合と適用した場合の先読みの結果の違いを説明する図面が示されている。図11(A)において、テーブル切替え直後の先読み変動回数が「10」の始動記憶に着目すると、この始動記憶の変動パターンの乱数値は「45000」であるため、発生時点で選択している図5(C)のテーブルを使用して判定すると、図11(B)のようにSP3リーチ(スペシャルリーチ3:予告の記号は「!!」)となる。
【0094】
しかし、実際にこの始動記憶に基づく特図変動表示ゲームが開始される時点では選択テーブルが切り替わっており、図5(D)のテーブルになっている。そして、図5(D)のテーブルでは乱数値が「45000」であれば、ゲームはSP1リーチ(スペシャルリーチ1)ということになる。従って、本発明を適用しない場合すなわちテーブル切替え前の図5(C)のテーブルで判定した結果に基づいて先読み予告を行うと、実際の特図変動表示ゲームの結果と矛盾が生じることとなる。
そこで、この発明は、「先読み回転数領域」で回数を管理し、先読み変動回数が「10」の始動記憶については、切替え後の図5(D)のテーブルを使用して先読みの判定を行うようにしたものである。これにより、始動記憶のマークは図11(C)のように「?」が付記されたSP1リーチとなり、先読み予告の内容と実際の特図変動表示ゲームの結果とに矛盾が生じるのを回避することができる。
【0095】
以下、上記のような遊技制御を実行する上記遊技制御装置100の遊技用マイクロコンピュータ(遊技用マイコン)111によって実行される処理について説明する。遊技用マイコン111による制御処理は、主に図12及び図13に示すメイン処理と、所定時間周期(例えば4msec)で行われる図14に示すタイマ割込み処理とからなる。
先ず、メイン処理について説明する。メイン処理は、電源が投入されることで開始される。このメイン処理においては、図12に示すように、まず、割込み禁止する処理(ステップS1)を行ってから、割込みが発生したときに実行するジャンプ先のベクタアドレスを設定する割込みベクタ設定処理(ステップS2)、割込みが発生したときにレジスタ等の値を退避する領域の先頭アドレスであるスタックポインタを設定するスタックポインタ設定処理(ステップS3)、割込み処理のモードを設定する割込みモード設定処理(ステップS4)を行う。」

「【0108】
〔特図ゲーム処理〕
次に、上述のタイマ割込み処理における特図ゲーム処理(ステップS58)の詳細について説明する。
特図ゲーム処理では、始動口1スイッチ36a及び始動口2スイッチ37aの入力の監視と、特図変動表示ゲームに関する処理全体の制御、特図の表示の設定を行う。
図15に示すように、特図ゲーム処理では、先ず、始動口1スイッチ36a及び始動口2スイッチ37aの入賞を監視する始動スイッチ監視処理(ステップA1)を行う。
この始動口スイッチ監視処理では、始動入賞口36、第2始動入賞口をなす普通変動入賞装置37に遊技球の入賞があると、各種乱数(大当り乱数など)の抽出を行う。また、当該乱数を用いて、始動入賞に基づく特図変動表示ゲームの開始前に、ゲーム結果を事前に判定する遊技結果事前判定を行い、判定結果を演出制御装置300へ知らせるため判定結果に応じた先読みコマンド(事前判定コマンドおよび事前入賞演出コマンド)を送信する。」

「【0130】
すなわち、ステップA277a,A277bにて事前判定コマンドが準備され、ステップA279aにて入賞事前演出図柄コマンドが準備されることで、始動記憶に対応した結果関連情報の判定結果(先読み結果)を、対応する始動記憶に基づく特図変動表示ゲームの開始タイミングより前に演出制御装置300に対して知らせることができ、演出制御装置300は表示装置41に表示される始動記憶(特図保留)の図柄を変化させるなどして、その特図変動表示ゲームの開始タイミングより前に遊技者に結果関連情報(リーチの発生やモードの変更等)を事前に報知することが可能となる。
以上の説明より、遊技制御装置100の遊技用マイコン111が、始動入賞記憶手段に始動記憶として記憶される乱数を、当該始動記憶に基づく変動表示ゲームが実行されるよりも前に判定する事前判定手段(第1事前判定手段、第2事前判定手段)として機能することが分かる。」

「【0206】
[第2変形例]
次に、前記実施形態の第2の変形例について説明する。
前記実施形態においては、始動口1(始動入賞口36)への入賞に基づく特図1の変動表示ゲームと始動口2(普通変動入賞装置37)への入賞に基づく特図2の変動表示ゲームを区別することなく、発生順に従ってゲームを実行する場合の先読み制御であるのに対し、第2の変形例は、始動口2への入賞が発生するとこの始動入賞に基づく特図2の変動表示ゲームを、始動口1への入賞に基づく特図1の変動表示ゲームに優先して実行する場合(優先消化機能)における先読み制御に関するものである。なお、このように、特図2の変動表示ゲームを優先して実行する場合、一般的には、特図2の変動表示ゲームにより発生する大当りによって遊技者が得られる利益を、特図1の変動表示ゲームにより発生する大当りによって遊技者が得られる利益よりも多くするような制御が行われる。」

(認定事項ア)
図8(A)、図9(D)?(I)及び図10(J)並びに段落【0091】の記載から、「!!」を付記した○印が、始動記憶(保留)の変動表示ゲームの実行に伴って、保留表示部RDから実行保留表示部DPに亘り左方に移動することが見て取れる。

(認定事項イ)
図8(A)、図9(I)及び図10(J)から、「!!」を付記した○印を、保留表示部RDから実行保留表示部DPに移動することに伴い、四角形の枠で囲まれる態様に変更することが見て取れる。

(認定事項ウ)
図8(A)及び図9(F)?(G)から、保留表示部RDにおいて「?」を付記した○印を、実行保留表示部DPにおいて、四角形の枠で囲まれる態様に変更することが見て取れる。

(認定事項エ)
図8(A)及び図9(D)?(E)保留表示部RDにおいて「斜線」を付記した○印を、実行保留表示部DPにおいて、斜線を省いて四角形の枠で囲まれる態様に変更することが見て取れる。

(認定事項オ)
図5(C)?(F)及び図6(B)並びに段落【0091】?【0094】の記載、特に、段落【0093】の「SP3リーチ(スペシャルリーチ3:予告の記号は「!!」)」及び段落【0094】の「「?」が付記されたSP1リーチ」の記載を参酌すれば、図8や図9の保留表示部RDの「斜線」を付記した○印や実行保留表示部DPの四角形の枠で囲まれた○印は、「リーチなし」や「ノーマルリーチ」を多く含む変動表示ゲームに対応するものと把握できる。
また、図5(C)?(F)及び図6(B)から、「SP1リーチ」が、「SP3リーチ」に比べて期待度が低く、特定期間における「リーチなし」や「ノーマルリーチ」に比べて大当りとなる割合が高いこと、が把握できる。
これらより、「SP1リーチ」に対応する「?」を付記した○印が、SP3リーチに対応する「!!」を付記した○印に比べて期待度が低く、且つ特定期間における「リーチなし」や「ノーマルリーチ」を多く含む変動表示ゲームに対応する「斜線」を付記した○印に比べて期待度が高くなること、が認められる。

上記記載事項及び認定事項を総合すれば、引用文献1には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる(a?i4については本件補正発明のA?I4に対応させて付与した。)。

「a 遊技領域32に配設した始動入賞口36若しくは普通変動入賞装置37(【0025】)への入賞に基づき複数の識別情報を変動表示したのち所定の結果態様を停止表示する第1特図変動表示ゲーム及び第2特図変動表示ゲームを行い、特図変動表示ゲームの結果として、大当り(【0037】)や小当りが発生すると(【0084】)前記遊技領域に配設された特別変動入賞装置38(【0026】)が備える大入賞口を閉じた状態から開いた状態に変換することにより大入賞口内への遊技球の流入を容易にさせ、遊技者に所定の遊技価値(賞球)を付与する(【0027】、【0083】、【0084】)遊技機10(【0019】)において、
b 大当りが発生すると、大入賞口に所定個数(例えば、10個)の遊技球が入賞するか、大入賞口の開放から所定時間(例えば、25秒又は1秒)が経過するかの何れかの条件が達成されるまで大入賞口を開放することを1ラウンドとし、これを所定ラウンド回数(例えば、16回又は12回)継続する(繰り返す)制御(サイクル遊技)を行い、また、小当りが発生すると、大入賞口を例えば2回開放する制御を行い(【0083】、【0084】)、
c 特図変動表示ゲームの変動結果が小当りの場合、特定期間、先読みモードを実行し(【0089】、【0091】)、
d 始動入賞口36へ入賞した遊技球を第1特図変動表示ゲームの始動入賞球として所定の上限数(例えば、4個)を限度に、普通変動入賞装置37へ入賞した遊技球を第2特図変動表示ゲームの始動入賞球として所定の上限数(例えば、4個)を限度に(【0035】)、それぞれ抽出した大当り乱数値や大当り図柄乱数値、並びに各変動パターン乱数値を特図始動記憶として記憶する遊技制御装置100内の特図記憶領域(RAMの一部)(【0036】)と、
e 始動入賞口36への入賞に基づく特図1の変動表示ゲームと普通変動入賞装置37への入賞に基づく特図2の変動表示ゲームを区別することなく、発生順に従ってゲームを実行する(【0206】)前記遊技制御装置100(【0037】)と、
f 始動入賞に基づく特図変動表示ゲームの開始前に、ゲーム結果を事前に判定する遊技結果事前判定をタイマ割り込み処理において行う(【0108】)前記遊技制御装置100(【0095】)と、
g 始動記憶(保留)を示すマークである○印を利用した保留表示部RD及び実行中の変動表示ゲームの始動記憶(保留)を示す表示部DP(【0091】)と、
h、i1 前記先読みモードが開始されると、その後に発生した始動記憶を先読みしてSP3リーチとなるのであれば、始動記憶(保留)を示す○印に特別な変動表示ゲームであることを報知する「!!」を付記して表示し(【0091】?【0093】、図9(D)?(I)、図10(J)?(O))、その特図変動表示ゲームの開始タイミングより前に遊技者に結果関連情報を事前に報知することが可能な演出制御装置300(【0130】)と、
を備え、
i2 「!!」を付記した○印が、始動記憶(保留)の変動表示ゲームの実行に伴って、保留表示部RDから実行保留表示部DPに亘り左方に移動し(認定事項ア)、
i3 「!!」を付記した○印を、保留表示部RDから実行保留表示部DPに変更することに伴い、四角形の枠で囲まれる態様に変更し(認定事項イ)、
i4 保留表示部RDにおいて前記SP3リーチに対応する「!!」を付記した○印に比べて期待度が低く、且つ前記先読みモードにおける「リーチなし」及び「ノーマルリーチ」を多く含む変動表示ゲームに対応する「斜線」を付記した○印よりも期待度の高いSP1リーチに対応する「?」を付記した○印及び前記先読みモードにおける「リーチなし」や「ノーマルリーチ」を多く含む変動表示ゲームに対応する「斜線」を付記した○印を、実行保留表示部DPにおいて、それぞれ、四角形の枠で囲まれる態様に変更及び斜線を省いて四角形の枠で囲まれる態様に変更する(【0089】、認定事項ウ?オ)
遊技機10。」

(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。なお、見出し(a)?(i4)は、本件補正発明のA?I4に対応させている。

(a)引用発明のaの「始動入賞口36若しくは普通変動入賞装置37」、「第1特図変動表示ゲーム及び第2特図変動表示ゲーム」、「大当りや小当り」、「特別変動入賞装置38」及び「大入賞口を閉じた状態から開いた状態に変換することにより大入賞口内への遊技球の流入を容易にさせ、遊技者に所定の遊技価値(賞球)を付与する」ことは、それぞれ、本件補正発明のAの「特別始動領域」、「特図変動表示ゲーム」、「特別結果」、「変動入賞部」及び「特別遊技状態」に相当する。
したがって、引用発明の「a 遊技領域32に配設した始動入賞口36若しくは普通変動入賞装置37への入賞に基づき複数の識別情報を変動表示したのち所定の結果態様を停止表示する第1特図変動表示ゲーム及び第2特図変動表示ゲームを行い、特図変動表示ゲームの結果として、大当りや小当りが発生すると前記遊技領域に配設された特別変動入賞装置38が備える大入賞口を閉じた状態から開いた状態に変換することにより大入賞口内への遊技球の流入を容易にさせ、遊技者に所定の遊技価値(賞球)を付与する遊技機10」は、本件補正発明の「A 遊技領域に設けた特別始動領域への遊技球の入賞に基づき複数の識別情報を変動表示する特図変動表示ゲームを実行し、該特図変動表示ゲームが予め定めた識別情報が停止表示される特別結果となった場合に、前記遊技領域に設けた変動入賞部を閉状態から開状態に変換することに関連して遊技者に有利な特別遊技状態を発生させることが可能な遊技機」に相当する。

(b)引用発明の「b 大当りが発生すると、大入賞口に所定個数(例えば、10個)の遊技球が入賞するか、大入賞口の開放から所定時間(例えば、25秒又は1秒)が経過するかの何れかの条件が達成されるまで大入賞口を開放することを1ラウンドとし、これを所定ラウンド回数(例えば、16回又は12回)継続する(繰り返す)制御(サイクル遊技)を行」うこと及び「小当りが発生すると、大入賞口を例えば2回開放する制御を行」うことは、それぞれ、本件補正発明のBの「第1特別遊技状態」及び「該第1特別遊技状態よりも遊技者に不利な第2特別遊技状態」に相当する
したがって、引用発明の「b 大当りが発生すると、大入賞口に所定個数(例えば、10個)の遊技球が入賞するか、大入賞口の開放から所定時間(例えば、25秒又は1秒)が経過するかの何れかの条件が達成されるまで大入賞口を開放することを1ラウンドとし、これを所定ラウンド回数(例えば、16回又は12回)継続する(繰り返す)制御(サイクル遊技)を行い、また、小当りが発生すると、大入賞口を例えば2回開放する制御を行」うことは、本件補正発明の「B 前記特別遊技状態は、第1特別遊技状態と、該第1特別遊技状態よりも遊技者に不利な第2特別遊技状態とが含まれ」ることに相当する。

(c)引用発明のcの「特図変動表示ゲームの変動結果が小当りの場合」、「特定期間」及び「先読みモード」は、それぞれ、本件補正発明のCの「前記第2特別遊技状態の終了後」、「所定期間」及び「特定の遊技モード」に相当する。
したがって、引用発明の「c 特図変動表示ゲームの変動結果が小当りの場合、特定期間、先読みモードを実行」することは、本件補正発明の「C 前記第2特別遊技状態の終了後、所定期間に亘って特定の遊技モードを発生可能と」することに相当する。

(d)引用発明の「d 始動入賞口36へ入賞した遊技球を第1特図変動表示ゲームの始動入賞球として所定の上限数(例えば、4個)を限度に、普通変動入賞装置37へ入賞した遊技球を第2特図変動表示ゲームの始動入賞球として所定の上限数(例えば、4個)を限度に、それぞれ抽出した大当り乱数値や大当り図柄乱数値、並びに各変動パターン乱数値を特図始動記憶として記憶する遊技制御装置100内の特図記憶領域(RAMの一部)」は、本件補正発明の「D 前記特別始動領域への遊技球の入賞に基づき前記特図変動表示ゲームの実行権利を始動記憶として規定数の範囲内で記憶することが可能な始動記憶手段」に相当する。

(e)引用発明において、eの「始動入賞口36への入賞に基づく特図1の変動表示ゲームと普通変動入賞装置37への入賞に基づく特図2の変動表示ゲームを区別することな」い「発生順」は、dの「始動入賞口36へ入賞した遊技球を第1特図変動表示ゲームの始動入賞球として所定の上限数(例えば、4個)を限度に記憶し、普通変動入賞装置37へ入賞した遊技球を第2特図変動表示ゲームの始動入賞球として所定の上限数(例えば、4個)を限度に記憶」した順序となることは明らかである。
したがって、引用発明の「e 始動入賞口36への入賞に基づく特図1の変動表示ゲームと普通変動入賞装置37への入賞に基づく特図2の変動表示ゲームを区別することなく、発生順に従ってゲームを実行する前記遊技制御装置100」は、本件補正発明の「E 前記始動記憶手段に記憶された始動記憶を記憶された順序で消化して前記特図変動表示ゲームを実行することが可能な変動表示手段」に相当する。

(f)引用発明において、fの「始動入賞」は、dの「始動入賞口36へ入賞した遊技球を第1特図変動表示ゲームの始動入賞球として所定の上限数(例えば、4個)を限度に記憶し、普通変動入賞装置37へ入賞した遊技球を第2特図変動表示ゲームの始動入賞球として所定の上限数(例えば、4個)を限度に記憶」したものに対応することは明らかである。
また、引用発明のfの「ゲーム結果」に引用発明の「大当り」や「小当たり」が含まれることも明らかである。
したがって、引用発明の「f 始動入賞に基づく特図変動表示ゲームの開始前に、ゲーム結果を事前に判定する遊技結果事前判定を」「行う前記遊技制御装置100」は、本件補正発明の「F 前記始動記憶に対応する特図変動表示ゲームが前記特別結果となるか否かを当該特図変動表示ゲームの実行以前に事前判定することが可能な事前判定手段」に相当する。

(g)引用発明の「g 始動記憶(保留)を示すマークである○印を利用した保留表示部RD及び実行中の変動表示ゲームの始動記憶(保留)を示す表示部DP」が、その始動記憶(保留)の数に対応した数の複数のものとなることは明らかである。
したがって、引用発明の「g 始動記憶(保留)を示すマークである○印を利用した保留表示部RD及び実行中の変動表示ゲームの始動記憶(保留)を示す表示部DP」と、本件補正発明の「G 前記始動記憶手段に記憶される始動記憶及び前記変動表示手段によって特図変動表示ゲームが実行されている始動記憶に対応する数の演出部を表示可能に設定されるとともに前記変動入賞部からの距離がそれぞれ異なるように設定される複数の演出部」とは、「G 前記始動記憶手段に記憶される始動記憶及び前記変動表示手段によって特図変動表示ゲームが実行されている始動記憶に対応する数の演出部を表示可能に設定される複数の演出部」の点で共通する。

(h)引用発明のhの「SP3リーチとなる」こと、「「!!」を付記し」た「○印」及び「演出制御装置300」は、それぞれ、本件補正発明のHの「予告条件」、「特定の態様」及び「予告演出手段」に相当する。
したがって、引用発明の「h、i1 前記先読みモードが開始されると、その後に発生した始動記憶を先読みしてSP3リーチとなるのであれば、始動記憶(保留)を示す○印に特別な変動表示ゲームであることを報知する「!!」を付記して表示し、その特図変動表示ゲームの開始タイミングより前に遊技者に結果関連情報を事前に報知することが可能な演出制御装置300」は、本件補正発明の「H 予告条件を成立させる特定の始動記憶に対応する前記演出部に特定の態様で演出を行わせることで予告演出を実行することが可能な予告演出手段」に相当する。

(i1)引用発明のh、i1の「前記演出制御手段300」が「前記先読みモードが開始されると、その後に発生した始動記憶を先読みしてSP3リーチとなるのであれば、始動記憶(保留)を示す○印にSP3リーチを伴う変動表示ゲームであることを報知する「!!」を付記して表示し、その特図変動表示ゲームの開始タイミングより前に遊技者に結果関連情報を事前に報知することが可能」であることは、本件補正発明の「I 前記予告演出手段」が「I1 前記特定の遊技モードにおいて前記予告演出を実行可能であ」ることに相当する。

(i2)引用発明のi2の「保留表示部RDから実行保留表示部DPに亘り左方に移動」することは、本件補正発明のI2の「前記演出部を変更」することに相当する。
したがって、引用発明の「i 前記演出制御手段300」が「i2 「!!」を付記した○印が、始動記憶(保留)の変動表示ゲームの実行に伴って、保留表示部RDから実行保留表示部DPに亘り左方に移動」することは、本件補正発明の「I 前記予告手段」が「I2 前記特定の始動記憶が消化される順序が進行することに伴って、前記特定の態様で演出を行わせる前記演出部を変更」することに相当する。

(i3)引用発明の「「!!」を付記した○印を」「四角形の枠で囲まれる態様に変更」することは、本件補正発明の「認識可能に反映すると共に演出の態様を一部変更」することに相当する。
したがって、引用発明の「i 前記演出制御手段300」が「i3 「!!」を付記した○印を、保留表示部RDから実行保留表示部DPに変更することに伴い、四角形の枠で囲まれる態様に変更」することは、本件補正発明の「I 前記予告手段」が「I3 前記特定の始動記憶が消化される順序に対応する前記演出部が、前記始動記憶手段に記憶される始動記憶に対応する演出部から前記変動表示手段によって特図変動表示ゲームが実行されている始動記憶に対応する演出部に変更されることに伴い、該始動記憶手段に記憶される始動記憶に対応する演出部において前記特定の態様で行われていた演出の態様を該特図変動表示ゲームが実行されている始動記憶に対応する演出部において認識可能に反映すると共に演出の態様を一部変更可能に」することに相当する。

(i4)引用発明のi4の「保留表示部RDにおいて」「SP1リーチに対応する「?」を付記した○印」「を、実行保留表示部DPにおいて」「四角形の枠で囲まれる態様に変更」することは、本件補正発明のI4の「前記始動記憶手段に記憶される始動記憶に対応する演出部において」「所定の態様で行われていた演出の態様」「を前記特図変動表示ゲームが実行されている始動記憶に対応する演出部において認識可能に反映させる」ことに相当する。
そして、引用発明i4の「保留表示部RDにおいて」「「リーチなし」や「ノーマルリーチ」を多く含む変動表示ゲームに対応する「斜線」を付記した○印を、実行保留表示部DPにおいて」「斜線を省いて四角形の枠で囲まれる態様に変更」したものは、斜線が省かれるだけで「!!」や「?」が付記されていないことから、「!!」や「?」が付記された○印に対応するものではなく「斜線」を付記した○印に対応するものであろうことは認識可能に反映されるといえるから、本件補正発明のI4の「前記始動記憶手段に記憶される始動記憶に対応する演出部において」「前記特定の遊技モードにおける通常の演出の態様を前記特図変動表示ゲームが実行されている始動記憶に対応する演出部において認識可能に反映させる」ことに相当する。
したがって、引用発明の「i4 保留表示部RDにおいて前記SP3リーチに対応する「!!」を付記した○印に比べて期待度が低く、且つ前記先読みモードにおける「リーチなし」や「ノーマルリーチ」を多く含む変動表示ゲームに対応する「斜線」を付記した○印よりも期待度の高いSP1リーチに対応する「?」を付記した○印及び前記先読みモードにおける「リーチなし」や「ノーマルリーチ」を多く含む変動表示ゲームに対応する「斜線」を付記した○印を、実行保留表示部DPにおいて、それぞれ、四角形の枠で囲まれる態様に変更及び斜線を省いて四角形の枠で囲まれる態様に変更する」ことは、本件補正発明の「I4 前記始動記憶手段に記憶される始動記憶に対応する演出部において前記特定の態様に比べて期待度が低く、且つ前記特定の遊技モードにおける通常の態様よりも期待度の高い所定の態様で行われていた演出の態様および前記特定の遊技モードにおける通常の演出の態様を前記特図変動表示ゲームが実行されている始動記憶に対応する演出部において認識可能に反映させる」ことに相当する。

そうすると、両者は、
「A 遊技領域に設けた特別始動領域への遊技球の入賞に基づき複数の識別情報を変動表示する特図変動表示ゲームを実行し、該特図変動表示ゲームが予め定めた識別情報が停止表示される特別結果となった場合に、前記遊技領域に設けた変動入賞部を閉状態から開状態に変換することに関連して遊技者に有利な特別遊技状態を発生させることが可能な遊技機において、
B 前記特別遊技状態は、第1特別遊技状態と、該第1特別遊技状態よりも遊技者に不利な第2特別遊技状態とが含まれ、
C 前記第2特別遊技状態の終了後、所定期間に亘って特定の遊技モードを発生可能とし、
D 前記特別始動領域への遊技球の入賞に基づき前記特図変動表示ゲームの実行権利を始動記憶として規定数の範囲内で記憶することが可能な始動記憶手段と、
E 前記始動記憶手段に記憶された始動記憶を記憶された順序で消化して前記特図変動表示ゲームを実行することが可能な変動表示手段と、
F 前記始動記憶に対応する特図変動表示ゲームが前記特別結果となるか否かを当該特図変動表示ゲームの実行以前に事前判定することが可能な事前判定手段と、
G’前記始動記憶手段に記憶される始動記憶及び前記変動表示手段によって特図変動表示ゲームが実行されている始動記憶に対応する数の演出部を表示可能に設定される複数の演出部と、
H 予告条件を成立させる特定の始動記憶に対応する前記演出部に特定の態様で演出を行わせることで予告演出を実行することが可能な予告演出手段と、
を備え、
I 前記予告演出手段は、
I1 前記特定の遊技モードにおいて前記予告演出を実行可能であり、
I2 前記特定の始動記憶が消化される順序が進行することに伴って、前記特定の態様で演出を行わせる前記演出部を変更し、
I3 前記特定の始動記憶が消化される順序に対応する前記演出部が、前記始動記憶手段に記憶される始動記憶に対応する演出部から前記変動表示手段によって特図変動表示ゲームが実行されている始動記憶に対応する演出部に変更されることに伴い、該始動記憶手段に記憶される始動記憶に対応する演出部において前記特定の態様で行われていた演出の態様を該特図変動表示ゲームが実行されている始動記憶に対応する演出部において認識可能に反映すると共に演出の態様を一部変更可能にし、
I4 前記始動記憶手段に記憶される始動記憶に対応する演出部において前記特定の態様に比べて期待度が低く且つ前記特定の遊技モードにおける通常の態様よりも期待度の高い所定の態様で行われていた演出の態様および前記特定の遊技モードにおける通常の演出の態様を前記特図変動表示ゲームが実行されている始動記憶に対応する演出部において認識可能に反映させる
遊技機。」
である点で一致し、以下の相違点で相違する。

(相違点)
「G’前記始動記憶手段に記憶される始動記憶及び前記変動表示手段によって特図変動表示ゲームが実行されている始動記憶に対応する数の演出部を表示可能に設定される複数の演出部」について、本件補正発明は「前記変動入賞部からの距離がそれぞれ異なるように設定される」のに対し、引用発明はそのようなものではない点。

(4)判断
以下、相違点について検討する。

(相違点について)
パチンコ機等の遊技機において、始動記憶に対応する数の保留表示を縦方向に並べて表示することは、例えば、以下の文献に示されるように周知技術である。

ア 当審による平成31年1月7日付けの最後の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された特開2013-128856号公報(以下「引用文献2」という。下線は当審で付した。以下同様。)
「【0234】
また、図26並びに後述する図27、図31、図32、図35および図36等において、装飾図柄表示装置208の演出表示領域208dのうち左端の縦長の領域は、特図保留数を表示する特図保留表示領域710として用いられる。特図保留表示領域710のうち下半分は特図1の保留数を表示する特図1保留表示領域711であり、上半分は特図2の保留数を表示する特図2保留表示領域712である。特図1保留表示領域711には、特図1の保留数に等しい個数の円形画像が縦方向に並んで表示される。特図1保留表示領域711において最下方の円形画像は最先の(最も過去に記憶された)特図1の保留に対応している。円形画像の表示柄は、例えば、後述する場合を除き白色柄である。特図2保留表示領域712についても同様である。」

イ 当審による平成31年1月7日付けの最後の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された特開2008-119037号公報(以下「引用文献3」という。)
「【0130】
また、本実施の形態では第一特別図柄記憶数表示部60及び第二特別図柄記憶数表示部61は、入賞順が早い順に左から横並びに保留球を表示させていたが、これに限られない。保留球の表示は縦並びや環状で行われてもよいし、手前から奥へ入賞が早い順に保留球が表示される構成としてもよい。」

そして、保留表示の態様は、遊技の興趣に合わせて当業者が適宜選択し得る設計的事項というべきであり、引用発明に上記周知技術を適用して、保留表示部RD及び実行保留表示部DPを縦方向に並ぶように表示することに格別の困難性はなく、そのようにして、保留表示部RD及び実行保留表示部DPの各保留について特別変動入賞装置38からの距離がそれぞれ異なる様に設定されるものとすることは当業者が容易になし得たものである。

(本件補正発明のI3の「演出の態様を一部変更」について)
上記(i3)では、引用発明の「「!!」を付記した○印を」「四角形の枠で囲まれる態様に変更」することが、本件補正発明の「演出の態様を一部変更」することに相当するものとしたが、仮に、請求人が平成30年12月17日の意見書において主張するように、これらが相当関係にない場合について、念のため検討すると、遊技機において、未だ変動表示ゲームが実行されていない保留表示部から変動表示ゲームが実行されている保留表示部に変更されることに伴い、演出の態様を一部変更することは、例えば、以下の文献に記載されているように周知技術である。

ア 当審による平成31年1月7日付けの最後の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された特開2013-208411号公報(以下「引用文献4」という。)
「【0378】
〔作動記憶消費演出〕
図30中(C):作動記憶の消費に伴い、表示画面下部の帯状領域の左側に表示されたマーカM1を当該変動中領域HAに移動させる演出が行われる(記憶数表示演出実行手段)。これにより、遊技者に対して作動記憶を1個消費して内部抽選が行われたことを演出上でわかりやすく教示することができる。なお、当該変動中領域HAに移動したマーカM1(参照符号なし)は拡大表示されることで、いわゆる「保留」との識別が図られている。また、このとき当該変動中領域HA内でのマーカM1の態様を変化させることで、期待度を予告的に教示することとしてもよい。」

イ 当審による平成31年1月7日付けの最後の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された特開2013-220361号公報(以下「引用文献5」という。)
「【0232】
同図(b)は、変形例2に係る特殊保留表示領域を示した図である。この変形例2では、演出表示領域208dの一部(3つの図柄表示領域208a?208cと重なり合わない表示領域)に特殊保留表示領域208kを配置している。また、特図保留表示領域(特殊保留表示領域)208kの全体の表示領域の大きさは、上述の特図保留表示領域(通常保留表示領域)208hの全体の表示領域の大きさよりも広い領域とされている。また、特図保留表示領域(特殊保留表示領域)208kを構成する5つの表示領域(特図変動中表示領域208k0、第1特図保留表示領域208k1?第4特図保留表示領域208k4)のうちの1つの表示領域(特図変動中表示領域208k0)の大きさが、特図保留表示領域(通常保留表示領域)208hを構成する4つの表示領域(第1特図保留表示領域208h1?第4特図保留表示領域208h4)の各々の表示領域よりも広い領域とされている。」

ウ 当審による平成31年1月7日付けの最後の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された特開2002-113160号公報(以下「引用文献6」という。)
「【0024】また、上記5個のランプの内、中央のランプは点滅した状態が表示状態で、その他のランプは点灯した状態が表示状態であるようにする(請求項7の構成)のがよく、そうすることにより、図柄変動中のものは点滅、保留分は点灯という区別がつき、遊技者に解りやすい表示となる。」

そして、保留表示の演出の態様は当業者が遊技の興趣に合わせて適宜選択し得る設計的事項というべきであり、仮に請求人の主張のとおり、引用発明の「「!!」を付記した○印を」「四角形の枠で囲まれる態様に変更」することが、本件補正発明の「演出の態様を一部変更」することに相当しないとしてもなお、引用発明の実行保留表示部DPの四角形の枠で囲まれる態様に代えてこの周知技術を適用することに格別の困難性はなく、そのようにして「演出の態様を一部変更可能に」することは当業者が容易になし得たものである。

(効果について)
本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

(まとめ)
したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(請求人の主張について)
請求人は、平成31年2月28日の意見書において、
ア 引用文献1では、先読みで特定の結果とならない始動記憶(○印に「斜線」マークが付された始動記憶)が保留表示部RDから実行保留表示部DPに移動した場合には(図9(D)から図9(E))、実行保留表示部DPにおいて、○印内の「斜線」が消え、○印内は「白」に変化し、四角形の枠で囲まれる態様に変更されることが見て取れ(図9(E))、すなわち、引用文献1では、全ての始動記憶に対して保留表示部RDから実行保留表示部DPに移動することにより四角形の枠で囲まれる態様に変更され、特定の結果となる(リーチを伴う変動、大当りとなる変動等、抽選によって先読み演出を行うと決定された変動等)始動記憶以外の始動記憶(○印内に「斜線」が付された始動記憶)については、保留表示部RDから実行保留表示部DPに移動した場合に、保留表示部RDの態様が全て変化してしまうため、その態様の遷移を認識することが困難となり、このように、引用文献1では、変動表示されている対象の始動記憶が、内部に「斜線」が描かれたものであるか否かが明確に報知されず、ここで、期待感が高いものは発生する頻度が低いことが一般的であるため、引用文献1では、遊技者は、変動表示されている対象の始動記憶のうち、先読み判定結果に基づいて、期待感が高い始動記憶(発生する頻度が低い)だけを把握でき、先読みモードにおける通常の演出(保留表示部RD内で○印内に「斜線」が付された始動記憶)等の期待感が低い始動記憶(発生する頻度は高い)については把握することができず、このように、引用文献1では、遊技者は、変動表示されている対象の始動記憶のうち、先読みモードにおける通常の演出(保留表示部RD内で○印内に「斜線」が付された始動記憶)等の期待感が低い始動記憶(発生する頻度は高い)については実行保留表示部DPでは把握できないため、変動表示中の遊技の興趣が低下してしまう、

イ これに対して、本件補正発明では、所定の態様(特定の態様に比べて期待度が低く且つ特定の遊技モードにおける通常の態様よりも期待度の高い態様)で行われていた演出の態様となる始動記憶と、特定の遊技モードにおける通常の演出の態様となる始動記憶とについても、特図変動表示ゲームが実行されている始動記憶に対応する演出部に変更された際には、この変更直前まで行われていた演出の態様を認識可能に反映することができ、これにより、特定の態様に比べて期待度の低い演出の態様となる各始動記憶についても、演出部の遷移を把握し易くすることができ、また、遊技者は現在行われている変動表示を、一部の始動記憶のみならず多くの始動記憶に対する変動表示に対して演出部の演出態様から様々な想定が可能であり、興趣ある遊技を行うことができる
旨を主張する。

しかしながら、請求人が主張する上記アの点について、上記(3)(i4)で説示したとおり、本件補正発明の「所定の態様で行われていた演出の態様」「を前記特図変動表示ゲームが実行されている始動記憶に対応する演出部において認識可能に反映させる」ことに相当するのは、引用発明のi4の「保留表示部RDにおいて前記SP3リーチに対応する「!!」を付記した○印に比べて期待度が低く、且つ前記先読みモードにおける「リーチなし」や「ノーマルリーチ」を多く含む変動表示ゲームに対応する「斜線」を付記した○印よりも期待度の高いSP1リーチに対応する「?」を付記した○印」「を、実行保留表示部DPにおいて」「四角形の枠で囲まれる態様に変更」することであり、保留表示部RDから実行保留表示部DPへの態様の遷移を認識可能であり、また、本件補正発明のI4の「前記特定の遊技モードにおける通常の演出の態様を前記特図変動表示ゲームが実行されている始動記憶に対応する演出部において認識可能に反映させる」ことに相当するのは、引用発明のi4の「保留表示部RDにおいて」「前記先読みモードにおける「リーチなし」や「ノーマルリーチ」を多く含む変動表示ゲームに対応する「斜線」を付記した○印を、実行保留表示部DPにおいて」「斜線を省いて四角形の枠で囲まれる態様に変更する」ことであるが、実行保留表示部DPにおいて、○印内の「斜線」が省かれ、四角形の枠で囲まれる態様に変更されたものは、斜線が省かれるだけで「!!」や「?」が付記されていないことから、「!!」や「?」が付記された○印に対応するものではなく「斜線」を付記した○印に対応するものであろうことは容易に把握でき、保留表示部RDから実行保留表示部DPへの態様の遷移を認識可能であるといえる。
そして、請求人の主張する上記イの本件補正発明の効果の点は、引用発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
したがって、請求人の主張は採用できない。

(5)本件補正についてのむすび
以上より、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成30年12月17日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1の(本件補正前)に記載のとおりのものである。

2 当審による拒絶の理由
当審による平成31年1月7日付けの最後の拒絶の理由の概要は、以下のとおりである。

この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

1.特開2013-111217号公報
2.特開2013-128856号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2008-119037号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2013-208411号公報(周知技術を示す文献)
5.特開2013-220361号公報(周知技術を示す文献)
6.特開2002-113160号公報(周知技術を示す文献)

3 引用文献
当審による最後の拒絶の理由で引用された引用文献1?6の記載事項は、前記第2[理由]2(2)及び(4)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、Aの「特図変動表示ゲーム」及び「特別結果」並びにI4の「前記特定の態様に比べて期待度の低い所定の態様」及び「前記特図変動表示ゲームが実行されている始動記憶に対応する演出部において認識可能に反映させる」対象に係る限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-03-13 
結審通知日 2019-03-19 
審決日 2019-04-01 
出願番号 特願2013-229517(P2013-229517)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
P 1 8・ 537- WZ (A63F)
P 1 8・ 536- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 秋山 斉昭  
特許庁審判長 石井 哲
特許庁審判官 川崎 優
藤田 年彦
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人後藤特許事務所  

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