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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1351796
審判番号 不服2018-11651  
総通号数 235 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-08-29 
確定日 2019-05-16 
事件の表示 特願2015-226478号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成29年6月1日出願公開、特開2017-93585号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯の概要
本願は、平成27年11月19日の出願であって、平成29年10月5日付けで拒絶の理由が通知され、平成29年12月22日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成30年5月22日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、平成30年8月29日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされ、その後、平成31年1月15日に上申書が提出されたものである。

第2 平成30年8月29日にされた手続補正についての補正却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年8月29日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について

(1)補正の内容
本件補正により、平成29年12月22日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1における
「遊技の開始契機となり得る操作が可能な第1操作手段と、
遊技媒体をクレジットとして記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されているクレジットの中から複数の遊技媒体を遊技に賭ける操作が可能な第2操作手段と、
制御手段と、を備え、
前記制御手段が行う処理には、
前記クレジットを減算する減算処理と、
前記第2操作手段の操作を契機とした減算処理の終了後に、前記第1操作手段の操作を受付け可能とする受付処理と、
遊技において遊技媒体の払出しを定めた役に入賞した場合であって、前記クレジットが上限に達していないときに、前記クレジットを加算する加算処理と、が少なくともあり、
前記第2操作手段の操作を契機とした減算処理においては、前記クレジットを減算する単位減算処理を複数回行うようになっており、1の単位減算処理を行った後に次の単位減算処理を行うタイミングを遅延させるためのタイマ以外のタイマのみを備え、
前記第2操作手段の操作を契機とした減算処理において、所定数のクレジットを減算するのに要する時間は、前記加算処理において、前記所定数のクレジットを加算するのに要する時間に比して、短いことを特徴とする遊技機。」は、
審判請求時に提出された手続補正書(平成30年8月29日付け)における
「遊技の開始契機となり得る操作が可能な第1操作手段と、
遊技媒体をクレジットとして記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されているクレジットの中から複数の遊技媒体を遊技に賭ける操作が可能な第2操作手段と、
制御手段と、を備え、
前記制御手段が行う処理には、
前記クレジットを減算する減算処理と、
前記第2操作手段の操作を契機とした減算処理の終了後に、前記第1操作手段の操作を受付け可能とする受付処理と、
遊技において遊技媒体の払出しを定めた役に入賞した場合であって、前記クレジットが上限に達していないときに、前記クレジットを加算する加算処理と、
遊技において遊技媒体の払出しを定めた役に入賞した場合であって前記クレジットが上限に達しているとき、又は所定の払出操作があった場合に遊技媒体を払い出す払出処理と、が少なくともあり、
前記第2操作手段の操作を契機とした減算処理においては、前記クレジットを減算する単位減算処理を複数回行うようになっており、1の単位減算処理を行った後に次の単位減算処理を行うタイミングを遅延させるためのタイマ以外のタイマのみを備え、
前記第2操作手段の操作を契機とした減算処理において、所定数のクレジットを減算するのに要する時間は、前記加算処理において、前記所定数のクレジットを加算するのに要する時間に比して、短く、
前記制御手段は、前記加算処理において前記クレジットを加算する単位加算処理を複数回行う場合、前記クレジットを1加算する1の単位加算処理を行った後に次の単位加算処理を行うタイミングを遅延させるための特定タイマを設定し、
前記特定タイマにより遅延される時間は、前記払出処理が行われることによって1の遊技媒体が払い出される時間と同じ時間であり、
前記単位加算処理が複数回行われる場合に前記特定タイマにより遅延される時間は、同じ特定時間であることを特徴とする遊技機。」に補正された(下線は、補正箇所を明示するために当審にて付した。)。

(2)補正の適否
本件補正は、補正前の請求項1について、発明を特定するために必要な事項である「制御手段が行う処理」に関して、「遊技において遊技媒体の払出しを定めた役に入賞した場合であって前記クレジットが上限に達しているとき、又は所定の払出操作があった場合に遊技媒体を払い出す払出処理」があることを限定し、同じく、発明を特定するために必要な事項である「制御手段」に関して、「前記制御手段は、前記加算処理において前記クレジットを加算する単位加算処理を複数回行う場合、前記クレジットを1加算する1の単位加算処理を行った後に次の単位加算処理を行うタイミングを遅延させるための特定タイマを設定し」、「前記特定タイマにより遅延される時間は、前記払出処理が行われることによって1の遊技媒体が払い出される時間と同じ時間であり」、「前記単位加算処理が複数回行われる場合に前記特定タイマにより遅延される時間は、同じ特定時間である」ことを限定するものである。
そして、補正後の請求項1に係る発明は、補正前の請求項1に係る発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。
また、本件補正は、願書に最初に添付した明細書の【0058】?【0059】、【0072】、【0076】、【0078】、【図4】、及び、【図5】の記載からみて新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。

2 独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか、すなわち、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するかについて、以下に検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、次のとおりのものであると認める(記号A?Gは、分説するため審決にて付した。)。
「A 遊技の開始契機となり得る操作が可能な第1操作手段と、
B 遊技媒体をクレジットとして記憶する記憶手段と、
C 前記記憶手段に記憶されているクレジットの中から複数の遊技媒体を遊技に賭ける操作が可能な第2操作手段と、
D 制御手段と、を備え、
E 前記制御手段が行う処理には、
E1 前記クレジットを減算する減算処理と、
E2 前記第2操作手段の操作を契機とした減算処理の終了後に、前記第1操作手段の操作を受付け可能とする受付処理と、
E3 遊技において遊技媒体の払出しを定めた役に入賞した場合であって、前記クレジットが上限に達していないときに、前記クレジットを加算する加算処理と、
E4 遊技において遊技媒体の払出しを定めた役に入賞した場合であって前記クレジットが上限に達しているとき、又は所定の払出操作があった場合に遊技媒体を払い出す払出処理と、が少なくともあり、
F 前記第2操作手段の操作を契機とした減算処理においては、前記クレジットを減算する単位減算処理を複数回行うようになっており、1の単位減算処理を行った後に次の単位減算処理を行うタイミングを遅延させるためのタイマ以外のタイマのみを備え、
G 前記第2操作手段の操作を契機とした減算処理において、所定数のクレジットを減算するのに要する時間は、前記加算処理において、前記所定数のクレジットを加算するのに要する時間に比して、短く、
H 前記制御手段は、前記加算処理において前記クレジットを加算する単位加算処理を複数回行う場合、前記クレジットを1加算する1の単位加算処理を行った後に次の単位加算処理を行うタイミングを遅延させるための特定タイマを設定し、
I 前記特定タイマにより遅延される時間は、前記払出処理が行われることによって1の遊技媒体が払い出される時間と同じ時間であり、
J 前記単位加算処理が複数回行われる場合に前記特定タイマにより遅延される時間は、同じ特定時間であることを特徴とする遊技機。」

(2)刊行物1
原査定の拒絶理由において引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2007-20721号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線部は当審で付した。以下同様。)。

ア 記載事項
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明はスロットマシン、パチンコ機等の遊技台に関するものである。」

(イ)「【0035】
ベットボタン130、131は、スロットマシン100に電子的に貯留されているメダル(クレジットという。)を所定の枚数分投入するためのボタンである。本実施形態においては、ベットボタン130が押下される毎に1枚ずつ最大3枚まで投入され、ベットボタン131が押下されると3枚投入されるようになっている。以下、ベットボタン131はMAXベットボタンとも言う。本実施形態では、このMAXベットボタンを操作手段としてメダルの投入のみならず、後述するように演出内容に関する遊技者の操作を受け付ける手段としても兼用する。
【0036】
メダル投入口134は、遊技を開始するに当たって遊技者がメダルを投入するための投入口である。すなわち、メダルの投入は、ベットボタン130又は131により電子的に投入することもできるし、メダル投入口134から実際のメダルを投入(投入操作)することもでき、投入とは両者を含む意味である。貯留枚数表示器125は、スロットマシン100に電子的に貯留されているメダルの枚数を表示するための表示器である。表示器126は、各種の内部情報を数値で表示するための表示器である。払出枚数表示器127は、何らかの入賞役に入賞した結果、遊技者に払出されるメダルの枚数を表示するための表示器である。
【0037】
スタートレバー135は、リール110乃至112の回転を開始させるためのレバー型のスイッチである。即ち、メダル投入口134に所望するメダル枚数を投入するか、ベットボタン130、131を操作して、スタートレバー135を操作すると、リール110乃至112が回転を開始することとなる。ストップボタンユニット136には、ストップボタン137乃至139が設けられている。ストップボタン137乃至139は、スタートレバー135の操作によって回転を開始したリール110乃至112を個別に停止させるためのボタン型のスイッチである。なお、各ストップボタン137乃至139の内部に発光体を設けてもよく、ストップボタン137乃至139の操作が可能である場合、該発光体を点灯させて遊技者に知らせることもできる。
【0038】
メダル返却ボタン132は、投入されたメダルが詰まった場合に押下してメダルを取り除くためのボタンである。精算ボタン133は、スロットマシン100に電子的に貯留されたメダル、ベットされたメダルを精算し、メダル払出口155よりメダル受皿210に排出するためのボタンである。ドアキー140は、スロットマシン100の前面扉102のロックを解除するためのキーを挿入する孔である。メダル払出口155は、メダルを払出すための払出口である。メダル受皿210は、メダル払出口155から払出されたメダルを溜めるための器である。なお、メダル受皿210は、本実施形態では発光可能な受皿を採用しており、以下受け皿ランプと呼ぶこともある。」

(ウ)「【0043】
<制御部>
次に、図3乃至図5を参照してスロットマシン100の制御部の回路構成について詳細に説明する。スロットマシン100制御部は、大別すると遊技の中枢部分を制御する主制御部300と、主制御部300より送信された信号に応じて各種機器を制御する副制御部400と、から構成されている。また、副制御部400には演出装置制御部500が通信可能に設けられており、演出装置制御部500はLCD600の表示制御及び扉183の移動制御を行う。
【0044】
<主制御部>
まず、図3を参照してスロットマシン100の主制御部300について説明する。主制御部300は、主制御部300の全体を制御するための演算処理装置であるCPU310や、CPU310が各ICや各回路と信号の送受信を行うためのデータバス及びアドレスバスを備え、その他、以下に述べる構成を有する。クロック補正回路314は、水晶発振器311から発振されたクロックを分周してCPU310に供給する回路である。例えば、水晶発振器311の周波数が12MHzの場合に、分周後のクロックは6MHzとなる。CPU310は、クロック回路314により分周されたクロックをシステムクロックとして受け入れて動作する。
【0045】
また、CPU310には、後述するセンサやスイッチの状態を常時監視するための監視周期やリールを回転駆動するモータの駆動パルスの送信周期を設定するためのタイマ回路315がバスを介して接続されている。CPU310は、電源が投入されると、データバスを介してROM312の所定エリアに格納された分周用のデータをタイマ回路315に送信する。タイマ回路315は、受信した分周用のデータを基に割り込み時間を決定し、この割り込み時間ごとに、割り込み要求をCPU310に送信する。CPU310は、この割込み要求を契機に、各センサ等の監視や駆動パルスの送信を実行する。例えば、CPU310のシステムクロックを6MHz、タイマ回路315の分周値を1/256、ROM312の分周用のデータを44に設定した場合、この割り込みの基準時間は、256×44÷6MHz=1.877msとなる。
【0046】
また、CPU310には各ICを制御するためのプログラム、入賞役の内部抽選時に用いる抽選データ、リールの停止制御データ等の各種データを記憶しているROM312や、一時的なデータを保存するためのRAM313が接続されている。RAM313は、遊技者が所有するメダルをその投入操作によって電子的にクレジットとして貯留するために、該クレジットの数を記憶する記憶手段としても機能する。これらのROM312やRAM313については他の記憶手段を用いてもよく、この点は後述する副制御部400、演出装置制御部500においても同様である。また、CPU310には、外部の信号を受信するための入力インタフェース360が接続され、割込み時間ごとに入力インタフェース360を介して、メダル投入センサ320、スタートレバーセンサ321、ストップボタンセンサ322、ベットボタンセンサ323、精算スイッチ324、メダル払い出しセンサ326の状態を検出し、各センサを監視している。
【0047】
メダル投入センサ320は、メダル投入口134の内部の通路に2個設置されており、メダルの通過有無を検出する。スタートレバーセンサ321は、スタートレバー135に設置されており、遊技者によるスタート操作を検出する。ストップボタンセンサ322は、各々のストップボタン137乃至139に設置されており、遊技者によるストップボタンの操作を検出する。ベットボタンセンサ323は、ベットボタン130、131のそれぞれに設置されており、これらに対する遊技者の操作を検出する。精算スイッチ324は、精算ボタン133に対する操作を検出し、精算ボタン133が一回押されると、精算可能なメダルが払い出されることになる。本実施形態では、精算可能なメダルとは貯留されているメダルとベットされているメダルの双方であるが、貯留されているメダルのみとしてもよい。メダル払い出しセンサ326はメダル払い出し口161から払い出されるメダルを検出するためのセンサである。なお、以上の各センサは、非接触式のセンサであっても接点式のセンサであってもよい。
【0048】
・・・出力インタフェース370には、リールを回転駆動するステッピングモータ等を駆動させるためのリールモータ駆動部330と、ホッパー(バケットにたまっているメダルをメダル払出口155から払出すための装置。図示せず。)のモータを駆動するためのホッパーモータ駆動部331と、遊技ランプ340(具体的には、入賞ライン表示ランプ120、告知ランプ121、スタートランプ122、再遊技ランプ123、メダル投入ランプ124等)と、7セグメント表示器341(貯留枚数表示器125、表示器126、払出枚数表示器127等)が接続されている。」

(エ)「【0065】
<遊技の基本的制御>
図8は、本実施形態のスロットマシン100における遊技の基本的制御を示すフローチャートである。遊技の基本的制御はCPU310が中心になって行い、電源断等を検知しないかぎり、同図の遊技処理を実行する。以下、この遊技処理について説明する。なお、特に説明しないが主制御部300は各処理を経る毎に副制御部400へ処理結果等を示すコマンドを送信し、副制御部400が主制御部300の処理状況を把握できるようにする。
【0066】
S1では遊技開始処理を行なう。ここでは、主としてメダルのベットに関する処理と、スタートレバー135に対する遊技の開始操作の検知に関する処理等を行う。詳細は後述する。S2では入賞ライン確定処理を行なう。ここではS1の遊技開始処理の結果に応じてその遊技で有効となる入賞ライン114を確定し、対応する入賞ライン表示ランプ120を点灯させる。」

(オ)「【0073】
図8に戻り、S7では入賞判定処理を行う。ここでは、有効化された入賞ライン114上に、内部当選した入賞役又はフラグ持越し中の入賞役に対応する絵柄組合せが表示された場合にその入賞役に入賞したと判定する。例えば、有効化された入賞ライン114上に、「俵-俵-俵」が揃っていたならば俵(小役)入賞と判定する。また、入賞した入賞役に対応するフラグがリセットされる。S8では、払い出しのある何らかの入賞役に入賞していれば、その入賞役に対応する枚数のメダルを払い出す払出処理を行なう。S9では、遊技状態制御処理を実行する。この遊技状態制御処理では、遊技状態を移行するための制御が行われ、例えば、ビッグボーナスやレギュラーボーナスのようなボーナス入賞の場合に次回から対応するボーナスゲームを開始できるよう準備し、それらの最終遊技では、次回から通常遊技が開始できるよう準備する。以上により1ゲームの処理が終了し、S1へ戻って同様の処理を繰り返すことにより遊技が進行することになる。
【0074】
<遊技開始処理>
次に、S1の遊技開始処理について説明する。図9はS1の遊技開始処理を示すフローチャートである。S11では遊技開始コマンドを副制御部400へ送信する。S12では現在の遊技状態に応じてベット可能なメダルの数を示す規定枚数を設定する。現在の遊技状態が通常遊技、BB一般遊技の場合は規定枚数として3が設定され、役物遊技の場合は1が設定される。S13では前回のゲームでリプレイ(再遊技)に入賞したか否かを判定する。該当する場合はS14へ進み、そのゲームのベット数としてS12で設定した規定枚数を設定する。該当しない場合はS15へ進む。
【0075】
S15では現在の処理状況としてベット処理中を設定する。また、ベット処理中が設定されたことを示すコマンドを副制御部400へ送信する。S16では現在のベット数が規定枚数であるか否かを判定する。該当する場合はS17へ進み、該当しない場合は待ちとなる。ここで、ベット数は前回の遊技で再遊技に入賞した場合の他、メダル投入口134へメダルが投入されることによりメダルがベットされた場合、ベットボタン130、131(ベットボタン)に対する操作でクレジットのメダルが投入されることによりメダルがベットされた場合に設定される。以下、ベットボタン130、131に対する操作によりベットされる場合の処理について説明する。
【0076】
図10は主制御部300の割り込み処理を示すフローチャートである。本実施形態の場合、ベットボタン130、131に対する操作によるベットは割り込み処理で処理される。S21ではベットボタン130、131に対する操作があったか否かが判定される。該当する場合はS23へ進み、該当しない場合はS22へ進む。S22では他の処理を行い、その後、割り込み処理が終了する。

【図10】


【0077】
S23では現在の処理状況が処理中か否かを判定する。該当する場合はS25へ進み、該当しない場合はS24へ進む。S24ではベットボタン130、131に対する操作があったことを示す操作情報をコマンドとして副制御部400へ送信する。S25では現在のベット数がS12で設定された規定枚数未満か否かを判定する。該当する場合はS26へ進み、該当しない場合はS27へ進む。S26では現在のクレジット数が1以上か否かを判定する。該当する場合はS28へ進み、該当しない場合はS27へ進む。なお、クレジット数に関する情報は上述した通りRAM313の所定の記憶エリアに格納されている。
・・・
【0079】
S28ではベットボタン130、131に対する操作があったことを示す操作情報をコマンドとして副制御部400へ送信する。操作情報には上述した識別情報が含まれ、S28ではその後S30のクレジット管理処理が実行されるので、メダルが1枚受付けられた(つまり、1枚有効にベットされ、クレジットの数が減算された)ことを示す識別情報が含まれる。S29では現在のベット数を更新してこれを1つ加算する。S30ではクレジット管理処理を行なう。ここではRAM313の所定の記憶エリアに格納されているクレジット数に関する情報において、クレジット数を1つ減算する。
【0080】
S31では今回操作されたベットボタン130、131がMAXベットボタン131であったか否かを判定する該当する場合はS32へ進み、該当しない場合はS22へ進む。S32ではS25乃至S30の処理が3回繰り返されたか否かを判定する。MAXベットボタン131が操作された場合には、1回の操作で3枚のメダルのベットが可能であるため、S25乃至S30の処理を3回繰り返すことになる。該当する場合はS22へ進み、該当しない場合はS25へ戻る。以上により1単位の割り込み処理が終了する。」

(カ)「【0083】
次に、図9に戻り、S17ではスタートレバー135が操作されたか否かを判定する。該当する場合はS18へ進み、該当しない場合は待ちとなる。S18では現在の処理状況としてベット処理中をクリアし、また、その旨を副制御部400へコマンドとして送信する。以上により遊技開始処理が終了する。なお、遊技開始処理で設定されたベット数はS2の入賞ライン確定処理の後、クリアされる。」

(キ)「【0090】
ここで、本実施形態では、図10に示したように、S31及びS32の処理により、3枚のメダルのベットを指示するMAXベットボタン131に対する1回のベット操作に対して、S30の処理が3回行なわれ、また、S27及びS28の処理が合計で3回行なわれる。つまり、MAXベットボタン131に対する1回のベット操作に対して予め定めた複数のクレジットの数が減算され、その複数分だけ、操作情報が主制御部300から副制御部へ送信される。」

イ 認定事項
(ク)【0065】に「図8は、本実施形態のスロットマシン100における遊技の基本的制御を示すフローチャートである。」と記載され、
【0074】に「S1の遊技開始処理について説明する。・・・現在の遊技状態が通常遊技、BB一般遊技の場合は規定枚数として3が設定され・・・」と記載され、
【0075】に、「S16では現在のベット数が規定枚数であるか否かを判定する。該当する場合はS17へ進み・・・」と記載され、
【0080】に「MAXベットボタン131が操作された場合には、1回の操作で3枚のメダルのベットが可能である・・・」と記載され、
【0083】に「図9に戻り、S17ではスタートレバー135が操作されたか否かを判定する。」と記載されている。
これらの記載からみて、刊行物1には、「現在の遊技状態が通常遊技、BB一般遊技の場合、MAXベットボタン131の操作により現在のベット数が規定枚数の3となった後(S16)、スタートレバー135が操作されたか否かを判定する(S17)遊技開始処理」について記載されているものと認められる。

ウ 刊行物発明
上記アの記載事項、上記イの認定事項、及び、図面の図示内容を総合勘案すると、刊行物1には、次の発明(以下「刊行物発明」という。)が記載されていると認められる(a?gは、本件補正発明の構成A?Gに対応させて付与した。)。
「a リール110乃至112の回転を開始させるためのスタートレバー135(【0037】)と、
b 遊技者が所有するメダルをその投入操作によって電子的にクレジットとして貯留するために、該クレジットの数を記憶するRAM313(【0046】)と、
電子的に貯留されているメダルの枚数を表示するための貯留枚数表示器125(【0036】)と、
c 押下されることにより、スロットマシン100に電子的に貯留されているクレジットを3枚投入するためのMAXベットボタン131(【0035】)と、
d 遊技の中枢部分を制御する主制御部300(【0043】)と、を備え、
e 主制御部300が行う処理には、
e1 割り込み処理における、現在のベット数が規定枚数未満か否かを判定する処理(S25)から、RAM313の所定の記憶エリアに格納されているクレジット数を1つ減算する処理までを含むクレジット管理処理(S30)(【0076】?【0077】、【0079】)と、
e2 MAXベットボタン131の操作により、現在のベット数が規定枚数の3となった場合(S16)、スタートレバー135が操作されたか否かを判定する(S17)遊技開始処理(認定事項(ク))と、
e4 入賞役に入賞していれば、その入賞役に対応する枚数のメダルをホッパーにより払い出す払出処理(S8)(【0048】、【0073】)と、
精算ボタン133が一回押されると、スロットマシン100に電子的に貯留されているメダルを、メダル払出口155よりメダル受皿210に排出する処理(【0038】、【0047】)とが有り、
f、g MAXベットボタン131が操作された場合には、1回の操作で3枚のメダルのベットが可能であるため、S25乃至S30の減算処理が3回繰り返される処理が、割り込みの基準時間を1.877msとする1単位の割り込み処理において実行される(【0045】、【0080】)、
遊技台。」

(3)刊行物2
前置報告書において提示された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2002-346042号公報(以下「刊行物2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

ア 「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、スロットマシンに関し、特に有価価値の付与とそれに関連した指数の表示手段への表示との関係に関する。
・・・
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
・・・
【0008】本発明は、制御負荷を抑えつつ、有価価値の付与に伴って増加または減少する指数を、遊技者に違和感を感じさせることなく更新表示することができるスロットマシンを提供することを目的とする。」

イ 「【0089】次に、上記したステップS7の払出処理について詳しく説明する。図9は、CPU111がステップS7で実行する払出処理を詳細に示すフローチャートである。払出処理では、まず、ステップS6の入賞判定処理における各種設定に基づいて、メダルを払い出すべき役、すなわちリプレイ以外のいずれかの役に入賞したかどうかを判定する(ステップS201)。メダルを払い出すべき役に入賞していない場合は、このまま払出処理を終了し、1ゲーム分の処理が終了することとなる。
【0090】メダルを払い出すべき役のいずれかに入賞した場合には、払出変数PyOに初期値として0を代入する(ステップS202)。さらに、ペイアウト表示器53を制御することにより、払出変数PyOの値(ここでは、0)をペイアウト表示部23に表示させる(ステップS203)。さらに、ステップS6の入賞判定処理で設定された予定変数Payの値をメダルの払出予定数として示す払出コマンドを、演出制御基板102に送信する(ステップS204)。
【0091】次に、クレジット変数Cdtの値が、クレジットとして蓄積可能な最大の数である50に達しているかどうかを判定する(ステップS205)。クレジット変数Cdtの値が50に達していなければ、ホッパー80がメダルを1枚払い出すのに要する時間として予め計測された時間だけ待機する(ステップS206)。
【0092】メダルを1枚払い出すのに必要な時間が経過すると、払出変数PyOの値と、クレジット変数Cdtの値とを、それぞれ1ずつ加算する(ステップS207)。さらに、ペイアウト表示器53とクレジット表示器52とをそれぞれ制御することにより、払出変数PyOの値とクレジット変数Cdtの値とを、それぞれペイアウト表示部23とクレジット表示部22とに表示させる(ステップS208)。そして、ステップS212の処理に進む。
【0093】一方、クレジット変数Cdtの値が50に達していれば、電源基板100を介してホッパー80を制御し、メダルを1枚払い出させる(ステップS209)。払出センサ81からの検知信号により、1枚分のメダルの払出が完了すると、払出変数PyOの値を1だけ加算する(ステップS210)。さらに、ペイアウト表示器53を制御することにより、払出変数PyOの値をペイアウト表示部23に表示させる(ステップS211)。そして、ステップS212の処理に進む。
【0094】ステップS212では、払出変数PyOの値が予定変数Payの値に等しくなったかどうかを判定する。払出変数PyOの値が予定変数Payの値に達していなければ、入賞した役に応じた数だけのメダルの払い出しを完了していないので、ステップS205の処理に戻る。払い出し変数PyOの値が予定変数Payの値に達した場合には、払出処理を終了し、1ゲーム分の処理が終了することとなる。」

ウ 刊行物2に記載された技術事項
上記アの記載事項、及び、図面の図示内容を総合勘案すると、刊行物2には、次の技術事項について記載されている(以下「刊行物2の記載事項」という。)。
「メダルを払い出すべき役のいずれかに入賞した場合、払出予定数のメダルを払い出す払出処理(【0089】?【0090】)において、
クレジットとして蓄積可能な最大の数である50に達しているかどうかを判定し(ステップS205)(【0091】)、
クレジット変数Cdtの値が50に達していなければ、ホッパー80がメダルを1枚払い出すのに要する時間として予め計測された時間だけ待機し(ステップS206)(【0091】)、
メダルを1枚払い出すのに必要な時間が経過すると、払出変数PyOの値と、クレジット変数Cdtの値とを、それぞれ1ずつ加算し(ステップS207)、クレジット変数Cdtの値を、クレジット表示部22に表示させ(ステップS208)(【0092】)、
払出変数PyOの値が予定変数Payの値に等しくなったかどうかを判定し、払出変数PyOの値が予定変数Payの値に達していなければ、入賞した役に応じた数だけのメダルの払い出しを完了していないので、ステップS205の処理に戻る(ステップS212)(【0094】)
スロットマシン(【0008】)。」

(4)対比
本件補正発明と刊行物発明とを対比する(対比にあたっては、本件補正発明の構成A?Gと刊行物発明の構成a?gについて、それぞれ(a)?(g)の見出しを付して行った。)。
(a)
刊行物発明における「リール110乃至112の回転を開始させるため」との特定事項は、本件補正発明における「遊技の開始契機となり得る」ことに相当する。
したがって、刊行物発明における構成aの「スタートレバー135」は、本件補正発明における構成Aの「操作が可能な第1操作手段」に相当する。

(b)
刊行物発明における「遊技者が所有するメダル」は、本件補正発明における「遊技媒体」に相当する。
そして、刊行物発明における「電子的にクレジットとして貯留するために、該クレジットの数を記憶する」ことは、本件補正発明における「クレジットとして記憶する」ことに相当する。
したがって、刊行物発明における構成bの「RAM313」は、本件補正発明における構成Bの「記憶手段」に相当する。

(c)
刊行物発明における「押下されることにより、スロットマシン100に電子的に貯留されているクレジットを3枚投入する」ことは、本件補正発明における「記憶手段に記憶されているクレジットの中から複数の遊技媒体を遊技に賭ける」ことに相当する。
したがって、刊行物発明における構成cの「MAXベットボタン131」は、本件補正発明における構成Cの「操作が可能な第2操作手段」に相当する。

(d)
刊行物発明における構成dの「遊技の中枢部分を制御する主制御部300」は、本件補正発明における構成Dの「制御手段」に相当する。

(e1)
刊行物発明における「RAM313の所定の記憶エリアに格納されているクレジット数を1つ減算する処理を実行する」ことは、本件補正発明における「クレジットを減算する」ことに相当する。
したがって、刊行物発明における構成e1の「現在のベット数が規定枚数未満か否かを判定する処理(S25)から、RAM313の所定の記憶エリアに格納されているクレジット数を1つ減算する処理までを含むクレジット管理処理(S30)」は、本件補正発明における構成E1の「クレジットを減算する減算処理」に相当する。

(e2)
刊行物発明における「現在のベット数が規定枚数の3である場合(S16)」は、構成fより、「MAXベットボタン131の操作によ」る3回の「S25乃至S30の減算処理」の終了したことを意味するから、本件補正発明における「第2操作手段の操作を契機とした減算処理の終了後」に相当する。
そして、刊行物発明における「スタートレバー135が操作されたか否かを判定する(S17)」ことは、「スタートレバー135」が操作可能な状態にあることを前提とするものであるから、「第1操作手段の操作を受付け可能とする」ことに相当する。

(e4)
刊行物発明における「入賞役に入賞していれば、その入賞役に対応する枚数のメダルをホッパーにより払い出す払出処理(S8)」と、本件補正発明における「遊技において遊技媒体の払出しを定めた役に入賞した場合であってクレジットが上限に達しているとき」「遊技媒体を払い出す払出処理」とは、「遊技において遊技媒体の払出しを定めた役に入賞したとき、遊技媒体を払い出す払出処理」である点で共通する。
そして、刊行物発明における「精算ボタン133が一回押される」ことは、本件補正発明における「所定の払出操作があった場合」に相当する。
また、刊行物発明における「スロットマシン100に電子的に貯留されているメダルが、メダル払出口155よりメダル受皿210に排出する処理」は、本件補正発明における「所定の払出操作があった場合に遊技媒体を払い出す払出処理」に相当する。
したがって、刊行物発明における構成e4の「入賞役に入賞していれば、その入賞役に対応する枚数のメダルを払い出す払出処理(S8)と、精算ボタン133が一回押されると、スロットマシン100に電子的に貯留されているメダルが、メダル払出口155よりメダル受皿210に排出する処理」と、本件補正発明における構成E4の「遊技において遊技媒体の払出しを定めた役に入賞した場合であってクレジットが上限に達しているとき、又は所定の払出操作があった場合に遊技媒体を払い出す払出処理」とは、「遊技において遊技媒体の払出しを定めた役に入賞した」「とき、又は所定の払出操作があった場合に遊技媒体を払い出す払出処理と、が少なくともあ」る点で共通する。

(f)
刊行物発明における「MAXベットボタン131が操作された場合」に実行される「S25乃至S30の減算処理」は、本件補正発明における「第2操作手段の操作を契機とした減算処理」に相当する。
そして、刊行物発明における「S25乃至S30の減算処理」は、本件補正発明における「単位減算処理」に相当することから、刊行物発明における「1回の操作で3枚のメダルのベットが可能であるため、S25乃至S30の減算処理が3回繰り返される」ことは、本件補正発明における「クレジットを減算する単位減算処理を複数回行うようになって」いることにも相当する。

次に、本件補正発明における「次の単位減算処理を行うタイミングを遅延させるためのタイマ以外のタイマ」について検討する。本願明細書の【0067】に「MAXベットボタン19の操作を契機とした減算処理(ステップS213?S218の処理)において、主制御用CPU401は、ステップS215の処理を複数回行うようになっている。そして、この減算処理には、待機タイマを設定して行う待機処理が含まれていない。換言すれば、この実施形態のスロットマシン10は、MAXベットボタン19の操作を契機とした減算処理において1の単位減算処理(ステップS215の処理)を行った後に次の単位減算処理(ステップS215の処理)を行うタイミングを遅延させるためのタイマ以外のタイマのみを備えているといえる。このため、MAXベットボタン19の操作を契機とした減算処理におけるクレジットの減算間隔Teは、きわめて短時間となる。この減算間隔Teは、例えば前述した検出間隔Tdよりも短い時間になる。」と記載されている。
この記載によると、本件補正発明における「タイミングを遅延させるためのタイマ以外のタイマのみを備え」ることは、「待機タイマを設定して行う待機処理が含まれていない」ことであると解される。
一方、刊行物発明における「S25乃至S30の減算処理」は、「1単位の割り込み処理において実行され」るものであって、「減算処理が3回繰り返される」際に、タイマによる遅延処理を伴うものでない。
したがって、刊行物発明における「1単位の割り込み処理において実行され」る「減算処理」は、本件補正発明における「タイミングを遅延させるためのタイマ以外のタイマのみを備え」るものといえる。

したがって、刊行物発明における構成f、gは、本件補正発明における構成Fに相当する。

(g)
本件補正発明の構成H?Iから、1枚のクレジットを加算するのに要する時間が、「1の遊技媒体が払い出される時間」に等しいことが導かれることから、本件補正発明における「加算処理において、所定数のクレジットを加算するのに要する時間」は、所定数の遊技媒体を払い出すのに要する時間に等しいと解される。
一方、刊行物発明において、「S25乃至S30の減算処理」の「3回」の「繰り返」しは、「割り込みの基準時間を1.877msとする1単位の割り込み処理」において実行されるものであることから、1回の減算処理に要する時間は、1.877ms÷3の0.626msよりも短いといえる。
そして、この0.626msが、ホッパーを用いた1枚のメダルを払い出すのに要する時間よりも短いことは、当業者にとって自明である。
したがって、刊行物発明における構成f、gの「MAXベットボタン131が操作された場合には、1回の操作で3枚のメダルのベットが可能であるため、S25乃至S30の減算処理が3回繰り返される処理が、割り込みの基準時間を1.877msとする1単位の割り込み処理において実行される」ことと、本件補正発明における「第2操作手段の操作を契機とした減算処理において、所定数のクレジットを減算するのに要する時間は、加算処理において、所定数のクレジットを加算するのに要する時間に比して、短」いこととは、「第2操作手段の操作を契機とした減算処理において、所定数のクレジットを減算するのに要する時間は、所定数のクレジットを払い出すのに要する時間に比して、短」いことで共通する。
また、刊行物発明における「遊技台」は、本件補正発明における「遊技機」に相当する。

上記(a)?(g)より、両者の一致点および相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「A 遊技の開始契機となり得る操作が可能な第1操作手段と、
B 遊技媒体をクレジットとして記憶する記憶手段と、
C 前記記憶手段に記憶されているクレジットの中から複数の遊技媒体を遊技に賭ける操作が可能な第2操作手段と、
D 制御手段と、を備え、
E 前記制御手段が行う処理には、
E1 前記クレジットを減算する減算処理と、
E2 前記第2操作手段の操作を契機とした減算処理の終了後に、前記第1操作手段の操作を受付け可能とする受付処理と、
E4’遊技において遊技媒体の払出しを定めた役に入賞したとき、又は所定の払出操作があった場合に遊技媒体を払い出す払出処理と、が少なくともあり、
F 前記第2操作手段の操作を契機とした減算処理においては、前記クレジットを減算する単位減算処理を複数回行うようになっており、1の単位減算処理を行った後に次の単位減算処理を行うタイミングを遅延させるためのタイマ以外のタイマのみを備え、
G’前記第2操作手段の操作を契機とした減算処理において、所定数のクレジットを減算するのに要する時間は、前記払出処理において、前記所定数のクレジットを払い出すのに要する時間に比して、短い
遊技機。」

[相違点1](構成E3)
本件補正発明の制御手段が行う処理には、遊技において遊技媒体の払出しを定めた役に入賞した場合であって、クレジットが上限に達していないときに、クレジットを加算する加算処理を含むのに対して、刊行物発明は、そのような加算処理を備えるか否か明らかでない点。

[相違点2](構成E4)
制御手段が行う処理が有する払出処理に関して、
本件補正発明は、遊技において遊技媒体の払出しを定めた役に入賞した場合であってクレジットが上限に達しているときに遊技媒体が払い出されるのに対して、
刊行物発明は、そのような構成を備えるか否か明らかでない点。

[相違点3](構成G)
制御手段が行う処理である加算処理に関して、
本件補正発明は、第2操作手段の操作を契機とした減算処理において、所定数のクレジットを減算するのに要する時間は、加算処理において、所定数のクレジットを加算するのに要する時間に比して、短いのに対して、
刊行物発明は、加算処理を備えるか否か明らかでないため、本件補正発明のような構成を備えるか否か明らかでない点。

[相違点4](構成H?J)
加算処理において用いられる特定タイマに関して、
本件補正発明は、制御手段が、加算処理においてクレジットを加算する単位加算処理を複数回行う場合、クレジットを1加算する1の単位加算処理を行った後に次の単位加算処理を行うタイミングを遅延させるための特定タイマを設定し、
特定タイマにより遅延される時間は、払出処理が行われることによって1の遊技媒体が払い出される時間と同じ時間であり、
記単位加算処理が複数回行われる場合に特定タイマにより遅延される時間は、同じ特定時間であるのに対して、
刊行物発明は、そのような構成を備えるか否か明らかでない点。

(5)当審の判断
上記相違点について検討する。
ア 相違点1?3(構成E3?E4、G)について
相違点1?3は、加算処理に関する構成であるのでまとめて検討する。
遊技機の技術分野において、遊技媒体の払出しを定めた役に入賞した場合であって、クレジットが上限に達していないときに、クレジットを加算する加算処理を制御手段が行い、クレジットが上限数に達したときに、メダルの払い出しを行うと共に、加算処理において、1のクレジットを加算する単位加算処理を複数回行う場合に、1の単位加算処理を行った後に次の単位加算処理を行うタイミングを遅延させることにより、遊技者にクレジット枚数を認識可能とさせることは、本願出願前に周知の技術事項である(例えば、特開2014-100188号公報の【0042】、【0246】?【0274】、【図87】?【図89】に、クレジット機能により内部の預けられたメダルの枚数が限度枚数(50枚)に達すると、その余のメダルがメダル払出口15から自動的に排出されると共に、ホッパー40の払出動作あるいはクレジット枚数の1加算表示によってメダルが1枚ずつ払い出されることにより、クレジット枚数更新表示のタイミングをメダルの払い出しのタイミングに応じて遅らせることが示され、特開2001-120791号公報の【0073】に「クレジットゲームである場合にはS63に進み、クレジットカウンタがその最大値である・・・「300」になっていない場合はS64に進み、払出枚数カウンタとクレジットカウンタとを「1」インクリメントする処理が行なわれ、S65に進み、クレジット加算待ち時間を経過させた後にS60に戻る。このS65によるクレジット加算待ち時間により、クレジット表示器30(図1参照)により表示されるクレジットカウンタの値の変化がクレジット加算待ち時間を挟みながらゆっくりと変化するようになり、遊技者がクレジットカウンタの値の変化を視覚的に認識できるようになる。」ことが記載されている。以下「周知の技術事項」という。)。
そして、刊行物発明における「貯留枚数表示器125」も、表示により、遊技者が保有するクレジットの数を遊技者に認識させる機能を有するものであって、上記周知の技術事項と同様の機能を奏するものである。
したがって、刊行物発明に上記周知の技術事項を適用して、遊技媒体の払出しを定めた役に入賞した場合であって、クレジットの数が上限数に達していないときに、クレジットを加算する加算処理を実行し、加算されたクレジットの数を貯留枚数表示器125に表示し、クレジットが上限に達したときに、メダルの払い出しを行うと共に、貯留枚数表示器125へのクレジットの数を、メダルの払い出し処理に応じて遅延させて加算表示し、上記相違点1?3に係る本件補正発明の構成とすることは当業者が容易になし得たものである。

イ 相違点4(構成H?J)について
本件補正発明と刊行物2の記載事項とを対比する。
刊行物2の記載事項の「クレジット変数Cdtの値」を「1ずつ加算する」処理は、本件補正発明における構成E3の「クレジットを加算する加算処理」に相当する。
したがって、刊行物2の記載事項の「クレジット変数Cdtの値が50に達していなければ、ホッパー80がメダルを1枚払い出すのに要する時間として予め計測された時間だけ待機し」「メダルを1枚払い出すのに必要な時間が経過すると」「クレジット変数Cdtの値」を「1ずつ加算」することにより「入賞した役に応じた数だけのメダルの払い出し」を行うことは、本件補正発明における構成E3の「遊技において遊技媒体の払出しを定めた役に入賞した場合であって、クレジットが上限に達していないときに、クレジットを加算する加算処理」を行うことに相当する。
そして、刊行物2の記載事項の「クレジット変数Cdtの値」を「1ずつ加算する」処理のうち、1「加算する」処理は、本件補正発明における「クレジットを1加算する1の単位加算処理」に相当する。
そうすると、刊行物2の記載事項の「メダルを払い出すべき役のいずれかに入賞した場合、払出予定数のメダルを払い出す払出処理」は、「クレジット変数Cdtの値」を1「加算する」処理を複数回行う処理であるから、本件補正発明の構成Hの「加算処理においてクレジットを加算する単位加算処理を複数回行う」ことに相当する。
また、刊行物2の記載事項の「メダルを1枚払い出すのに必要な時間が経過する」と「クレジット変数Cdtの値」を1「加算する」ことは、「クレジット変数Cdtの値」を1「加算する」処理を行ってから所定時間経過後に次の1「加算する」処理を行うことであるから、刊行物2の記載事項の「待機」する「時間」を「計測」することは、本件補正発明における構成Hの「クレジットを1加算する1の単位加算処理を行った後に次の単位加算処理を行うタイミングを遅延させるための特定タイマを設定」することに相当する。
さらに、刊行物2の記載事項の「クレジット変数Cdtの値が」「クレジットとして蓄積可能な最大の数である50」「に達していなければ、ホッパー80がメダルを1枚払い出すのに要する時間として予め計測された時間だけ待機する」ことは、本件補正発明における構成Iの「特定タイマにより遅延される時間は、払出処理が行われることによって1の遊技媒体が払い出される時間と同じ時間であ」ることに相当する。
また、刊行物2の記載事項の「払出変数PyOの値が予定変数Payの値に達していなければ、入賞した役に応じた数だけのメダルの払い出しを完了していないので、ステップS205の処理に戻る」ことは、「クレジット変数Cdtの値」を「1ずつ加算」する毎に「メダルを1枚払い出すのに要する時間として予め計測された時間だけ待機」することを繰り返すことであるから、本件補正発明における構成Jの「単位加算処理が複数回行われる場合に特定タイマにより遅延される時間は、同じ特定時間である」ことに相当する。
ゆえに、刊行物2の記載事項は、本件補正発明における構成E、E3、H?Jに相当する構成を備えるものである。
そして、上記アにおいて検討したように、刊行物発明における「貯留枚数表示器125」も、表示により、遊技者が保有するクレジットの数を遊技者に認識させる機能を有するものであるから、刊行物発明は、遊技者に違和感を感じさせることなく更新表示するという自明の課題を内在するものである。
一方、刊行物2の記載事項は、「有価価値の付与に伴って増加または減少する指数を、遊技者に違和感を感じさせることなく更新表示することができるスロットマシンを提供する」(【0008】)という課題を解決するものである。
また、刊行物発明と刊行物2の記載事項とは、予め遊技媒体をクレジットとして記憶し、クレジットの中から複数の遊技媒体を遊技に賭ける遊技機という共通の技術分野に属するものである。
よって、刊行物発明のクレジットを用いた処理に、クレジットの加算処理に関する刊行物2の記載事項を適用して、上記相違点4に係る本件補正発明の構成とすることは当業者が容易になし得たものである。

ウ 請求人の上申書における主張について
請求人は、平成31年1月15日付け上申書において、請求項1?2に「前記記憶手段に記憶されているクレジットの中から複数の遊技媒体を遊技に賭ける操作を契機とした減算処理において、前記所定数のクレジットの減算に要する時間は、前記クレジットを精算するための操作を契機とした減算処理において、前記所定数のクレジットの減算に要する時間に比して、短い」なる構成を追加する補正案を提示し、本件補正発明における効果として次の効果を主張する。
効果1:「上記補正案における請求項1に係る発明(以下、補正発明1と示す)及び請求項2に係る発明(以下、補正発明2と示す)において、上記前置報告書では設計事項と指摘されているものの、単位加算処理が複数回行われる場合に特定タイマにより遅延される時間が同じ特定時間であることから、1のクレジットが加算されてから特定時間が経過するまでは、次の1のクレジットが加算されるか否かに対して注意させつつ、より多くのクレジットが加算されることに期待させることができる。」
効果2:「補正発明1及び2では、記憶手段に記憶されているクレジットの中から複数の遊技媒体を遊技に賭ける操作が行われる状況と、クレジットを精算するための操作が行われる状況という、状況の違いに応じて、所定数のクレジットの減算に要する時間を異ならせることで、遊技者の興趣を向上できる。」

そこで、請求人の上記主張について検討する。
(ア)効果1について
上記イにおいて検討したように、刊行物2の記載事項の「クレジット変数Cdtの値」を1「加算する」ために待機する時間である「ホッパー80がメダルを1枚払い出すのに要する時間として予め計測された時間」は、本件補正発明における構成Jの「単位加算処理が複数回行われる場合に特定タイマにより遅延される時間は、同じ特定時間である」ことに相当することから、請求人の主張する効果1は、刊行物発明、及び、刊行物2の記載事項に基づいて当業者が予測できる効果の範囲内のものであり、格別なものではない。
(イ)効果2について
上記(4)対比(g)において検討したように、刊行物発明において、1回の減算処理に要する時間は、0.626ms未満であって、この0.626msが、1枚のメダルを払い出すのに要する時間よりも短いことは、当業者にとって明らかである。
一方、刊行物発明は、構成e4より、精算ボタン133が一回押されると、メダルを排出する処理が行われるものである。
そして、精算に伴うメダルの排出(構成e4)も、入賞に伴うメダルの払い出し(構成e4)も、1枚のメダルの払い出しに要する時間は同程度である。
したがって、刊行物発明において、1回の減算処理に要する時間は、入賞に伴うメダルの払い出しに要する時間よりも短いことと同様に、精算に伴うメダルの排出に要する時間よりも短いことは、当業者にとって明らかである。
ゆえに、請求人の主張する効果2は、刊行物発明、及び、刊行物2の記載事項に基づいて当業者が予測できる効果の範囲内のものであり、格別なものではない。

よって、請求人の上記主張を採用することはできない。

エ 小括
上記ウにおいても検討したが、本件補正発明により奏される効果は、刊行物発明、及び、刊行物2の記載事項に基づいて当業者が予測できる効果の範囲内のものであり、格別なものではない。
よって、上記ア?ウにおいて検討したとおり、本件補正発明は、刊行物発明と刊行物2の記載事項に基づいて当業者が容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

(6)まとめ
上記(1)?(5)より、本件補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たさないものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されることとなったので、本願の請求項1に係る発明は、平成30年8月29日付け手続補正書における特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。記号A?Gは、分説するため当審で付した。)は、次のとおりのものと認める。
「A 遊技の開始契機となり得る操作が可能な第1操作手段と、
B 遊技媒体をクレジットとして記憶する記憶手段と、
C 前記記憶手段に記憶されているクレジットの中から複数の遊技媒体を遊技に賭ける操作が可能な第2操作手段と、
D 制御手段と、を備え、
E 前記制御手段が行う処理には、
E1 前記クレジットを減算する減算処理と、
E2 前記第2操作手段の操作を契機とした減算処理の終了後に、前記第1操作手段の操作を受付け可能とする受付処理と、
E3 遊技において遊技媒体の払出しを定めた役に入賞した場合であって、前記クレジットが上限に達していないときに、前記クレジットを加算する加算処理と、が少なくともあり、
F 前記第2操作手段の操作を契機とした減算処理においては、前記クレジットを減算する単位減算処理を複数回行うようになっており、1の単位減算処理を行った後に次の単位減算処理を行うタイミングを遅延させるためのタイマ以外のタイマのみを備え、
G 前記第2操作手段の操作を契機とした減算処理において、所定数のクレジットを減算するのに要する時間は、前記加算処理において、前記所定数のクレジットを加算するのに要する時間に比して、短いことを特徴とする遊技機。」

2 拒絶の理由(平成29年10月5日付け)
原査定の拒絶の理由は、概略、次のとおりのものである。
(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内において、頒布された下記の刊行物1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


〈引用文献等一覧〉
刊行物1:特開2007-20721号公報

3 刊行物に記載された事項
原査定の拒絶理由において提示された、刊行物1である特開2007-20721号公報(前記「第2 2(2)刊行物1」における「刊行物1」に対応する。)の記載事項及び刊行物発明の認定については、前記「第2 2(2)刊行物1」に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、実質的に変更とならない特定事項を除き、前記「第2[理由]2(1)本件補正発明」で検討した本件補正発明の「制御手段が行う処理」(構成E4)に関して、「遊技において遊技媒体の払出しを定めた役に入賞した場合であって前記クレジットが上限に達しているとき、又は所定の払出操作があった場合に遊技媒体を払い出す払出処理」がある(構成E3)との限定を省くと共に、「制御手段」に関して、「前記制御手段は、前記加算処理において前記クレジットを加算する単位加算処理を複数回行う場合、前記クレジットを1加算する1の単位加算処理を行った後に次の単位加算処理を行うタイミングを遅延させるための特定タイマを設定し」、「前記特定タイマにより遅延される時間は、前記払出処理が行われることによって1の遊技媒体が払い出される時間と同じ時間であり」、「前記単位加算処理が複数回行われる場合に前記特定タイマにより遅延される時間は、同じ特定時間である」(構成G?I)との限定を省いたものである。
そうすると、本願発明と刊行物発明とは、本件補正発明と刊行物発明との相違点である上記相違点1及び3において相違し、その余の点で一致するものである。
そして、上記相違点1及び3は、前記「第2 2(5)当審の判断 ア 相違点1?3(構成E3?E4、G)について」における検討内容と同様の理由により、刊行物発明及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-03-14 
結審通知日 2019-03-19 
審決日 2019-04-01 
出願番号 特願2015-226478(P2015-226478)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安藤 達哉  
特許庁審判長 安久 司郎
特許庁審判官 長崎 洋一
川崎 優
発明の名称 遊技機  
代理人 山本 実  
代理人 恩田 誠  
代理人 恩田 博宣  

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