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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05K 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K |
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管理番号 | 1351834 |
審判番号 | 不服2018-1070 |
総通号数 | 235 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-07-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-01-26 |
確定日 | 2019-05-15 |
事件の表示 | 特願2016-127204「防滴構造および電子機器」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月 1日出願公開、特開2016-201553〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成24年1月26日に出願した特願2012-013765号の一部を平成28年6月28日に新たな出願としたものであって、平成29年3月14日付けで拒絶理由が通知され、同年5月11日付けで手続補正がなされたが、同年11月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成30年1月26日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。 第2 補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成30年1月26日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.本件補正 平成30年1月26日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、明細書及び特許請求の範囲についてするものであって、特許請求の範囲の請求項1については、本件補正前(平成29年5月11日付け手続補正書参照。)に、 「【請求項1】 メモリカードを投入するためのメモリカード投入口を有し、該メモリカード投入口から投入されたメモリカードが装着されるメモリカード装着部と、 前記メモリカード投入口を開閉可能に塞ぐメモリカード蓋と、 前記メモリカード蓋の周囲に沿ってまたは前記メモリカード投入口に沿って設けられ、前記メモリカード投入口を前記メモリカード蓋で塞いだ際に前記メモリカード装着部を密閉し水滴の浸入を防ぐための第1防滴部材と、 電池を投入するための電池投入口を有しているとともに前記メモリカード投入口に対応する位置が底部とされ、前記電池投入口から投入された電池が収納される電池収納部と、 前記電池投入口を開閉可能に塞ぐ電池蓋と、 前記電池蓋の周囲に沿ってまたは前記電池投入口に沿って設けられ、前記電池投入口を前記電池蓋で塞いだ際に前記電池収納部を密閉し水滴の浸入を防ぐための第2防滴部材と、 を備え、 前記電池投入口から前記メモリカード投入口を介してメモリカードが前記メモリカード装着部に投入されるように構成されていることを特徴とする防滴構造。」 とあったものが、 「【請求項1】 メモリカードを投入するためのメモリカード投入口を有し、該メモリカード投入口から投入されたメモリカードが装着されるメモリカード装着部と、 前記メモリカード投入口を開閉可能に塞ぐメモリカード蓋と、 前記メモリカード蓋の周囲に沿ってまたは前記メモリカード投入口に沿って設けられ、前記メモリカード投入口を前記メモリカード蓋で塞いだ際に前記メモリカード装着部を密閉し水滴の浸入を防ぐための第1防滴部材と、 電池を投入するための電池投入口を有しているとともに前記メモリカード投入口に対応する位置が底部とされ、前記電池投入口から投入された電池が収納される電池収納部と、 前記電池投入口を開閉可能に塞ぐ電池蓋と、 前記電池蓋の周囲に沿ってまたは前記電池投入口に沿って設けられ、前記電池投入口を前記電池蓋で塞いだ際に前記電池収納部を密閉し水滴の浸入を防ぐための第2防滴部材と、 を備え、 前記電池投入口から前記メモリカード投入口を介してメモリカードが前記メモリカード装着部に投入されるように構成され、 前記メモリカード蓋は、長手方向が前記電池収納部に収納された際の前記電池の長手方向と揃うように且つ前記電池によって全体が覆われるように取り付けられることを特徴とする防滴構造。」 と補正された。 (下線部は、補正箇所である。) 2.補正の適否 上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「メモリカード蓋」について、上記下線のとおり限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか)否かについて以下検討する。 (1)本願補正発明 本願補正発明は、上記「第2 1.」に補正後の請求項1として記載したとおりのものである。 (2)引用例 ア.引用例1 原査定の拒絶の理由に引用された特開2007-312255号公報(平成19年11月29日公開。以下「引用例1」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審において付与した。) (ア)「【0001】 本発明は、電子機器における電池収納部の防水構造と、その防水構造に用いられる電池パックに関する。」 (イ)「【0010】 以下、図を参照して本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。 図1及び図2は本発明を適用した電子機器の一実施形態として携帯電話機を示したもので、第一の筐体1と第二の筐体2はヒンジ部3を介して互いに折り畳み自在に連結されている。 第一の筐体1には、電池収納凹部4が設けられ、この電池収納凹部4に電池パック5が収納される。 【0011】 図3は電池パック5の分解状態を示し、図4は電池バック5の縦横方向の中央断面を示したもので、電池パック5は、図示のように、電池51、上ケース(アウターケース)52、下ケース(インナーケース)53及び枠部材54から構成されている。電池パック5には、その外周面に弾性リングである防水リング(Oリング)55が設けられている。 すなわち、一面側に一対の電池端子51aと一端側に一対の充電端子51bとを有する電池51を、アウターケースとなる上ケース52とインナーケースとなる下ケース53で覆って、上ケース52及び下ケース53を合体している。」 (ウ)「【0014】 図5は電池収納凹部4を有する第一の筐体1の縦横方向の中央断面を示したもので、第一の筐体1は、図示のように、上ケース11、下ケース12及び中ケース13をビス止めにより合体して構成されている。 そして、中ケース13に形成した電池収納凹部4が、下ケース12に形成した開口14から露出している。 【0015】 ・・・(中略)・・・ そして、電池収納凹部4の底部において、一対の電源コネクタ42間の位置に設けた識別カードコネクタ44にUIMカードのような識別カード9が接続されて、反対側に設けたメモリカードコネクタ45にメモリカード10が接続されており、これらの間に識別カード9の抜け止めバネ46が配置されている。なお、電池収納凹部4の底部において、識別カード9やメモリカード10が位置し、また抜け止めバネ46が配置されている領域は、一段低くなっている。 【0016】 以上において、電池パック5は、第一の筐体1の電池収納凹部4に対し、その開口14から一端側の一対の係合凸部52dを差し込むとともに、他端側の一対の半円状切欠52cをロック操作部材6に沿って重ねる。 そして、一対のロック操作部材6をそれぞれ回転操作して、各々のロック爪61を半円状切欠52cの溝52eにそれぞれ係合させることで、電池パック5の装填保持がなされる。」 (エ)「【0020】 以上のとおり、電池収納凹部4の段部41の内端側に沿って突条47を設けることで、例えば防水リング55よりも外側の隙間に水が残っている状態で電池パック5を外しても、水が電池収納凹部4の段部41において突条47により留まり、電源コネクタ42が窓43ら露出するとともに、UIMカードコネクタ44、メモリカードコネクタ45及び識別カード9の抜け止めバネ46が露出している底部には流れ込まない。 さらに、電池収納凹部4の底部にも突条48を設けておくことで、万一、底部に水滴が入っても、突条48により留まり、電源コネクタ42が露出する窓43やUIMカードコネクタ44やメモリカードコネクタ45や識別カード9の抜け止めバネ46には流れ込まない。 【0021】 なお、以上の実施形態においては、携帯電話機としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、ノート型PC、パームトップPC、PDA、その他の携帯用等の電子機器であっても良い。 また、実施形態において、電池パックの外周面に弾性リングを設けたが、電池と別体の電池蓋を用い、その電池蓋の外周面に弾性リングを設けても良い。 さらに、実施形態では、電池パックにおいて、電池を2つのケース部材で覆い一体化して、枠部材との間に溝を設けたが、3つあるいはそれ以上のケース部材で覆って一体化したり、ケース部材に溝を形成したりしても良い。 また、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。」 上記(ア)ないし(エ)、及び図2、5の記載によれば、引用例1には以下の事項が記載されている。 ・上記(ア)によれば、電子機器の防水構造に関するものである。 ・上記(イ)によれば、電子機器には、電池パックが収納される電池収納凹部が設けられている。また、電池パックは、電池と、アウターケースとなる上ケースとインナーケースとなる下ケースで覆って、上ケースと下ケースを合体したものであり、その外周面に弾性リングである防水リングを設けたものである。 ・上記(ウ)や図2及び図5によれば、電池収納凹部は、筐体の下ケースに形成した開口から露出しており、電池パックは、当該開口から収納されるものと認められる。 ・上記(ウ)によれば、電池収納凹部の底部には、UIMカードのような識別カードが接続される識別カードコネクタやメモリカードが接続されるメモリカードコネクタが設けられており、識別カードコネクタやメモリカードコネクタが位置する領域は、電池収納凹部の底部において一段低くなっている。 ・図5の記載によれば、電池収納凹部の形状と電池パックの形状は、互いに合致した形状であり、電池パックが電池収納凹部に収納された際に、電池収納凹部の底部は、電池パックによって全体が覆われているものと認められる。そして、上記(イ)や図2、5(b)によれば、識別カードコネクタやメモリカードコネクタが位置する領域である一段低くなっている領域は、電池収納凹部の底部に設けられているのである。そうすると、一段低くなっている領域は、電池収納凹部に電池パックが収納された際に、電池パックによって全体が覆われるものと認められる。 ・上記(エ)によれば、万一、電池収納凹部の底部に水滴が入っても、水滴がUIMカードコネクタやメモリカードコネクタに流れ込まないように、電池収納凹部の底部に突条を設けている。なお、上記(ウ)によれば、UIMカードは識別カードであり、UIMカードコネクタと識別カードコネクタはともに符号44を用いていることから、UIMカードコネクタと識別カードコネクタは同じものである。 ・上記(エ)によれば、電池パックの外周面に弾性リングを設けることに代えて、電池と別体の電池蓋を用い、その電池蓋の外周面に弾性リングを設けても良い。そして、上記(イ)によれば、弾性リングとは防水リングである。そうすると、電池パックに代えて、電池と、電池と別体の電池蓋とを用いる場合、電池収納凹部に電池が収納され、電池収納凹部の開口は、外周面に防水リングを設けた電池蓋で塞がれるものと認められる。また、電池収納凹部に電池を収納する場合は、識別カードコネクタやメモリカードコネクタが位置する領域である一段低くなっている領域は、電池によって全体が覆われることになると認められる。 そうすると、上記摘示事項、図2、5を総合勘案し、電池パックの外周面に弾性リングを設けることに代えて、電池と別体の電池蓋を用い、その電池蓋の外周面に弾性リングを設けた場合に着目すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「電池が開口から収納される電池収納凹部と、 外周面に防水リングを設けた電池蓋と、 識別カードが接続される識別カードコネクタやメモリカードが接続されるメモリカードコネクタが設けられており、 識別カードコネクタやメモリカードコネクタが位置する領域は、電池収納凹部の底部において一段低くなっており、 電池収納凹部の底部における一段低くなっている領域は、電池が収納された際に電池によって全体が覆われているものであり、 万一、電池収納凹部の底部に水滴が入っても、水滴が識別カードコネクタやメモリカードコネクタに流れ込まないように、電池収納凹部の底部に突条を設けている、 防水構造。」 イ.引用例2 原査定の拒絶の理由に周知技術を示す文献として引用された特開平10-190803号公報(平成10年7月21日公開。以下「引用例2」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審において付与した。) (オ)「【0007】すなわち、図15に示す携帯電話機8においては、外部インターフェースコネクター1は、電池パックを装着するための凹部9の携帯電話機本体10とは反対側の端部に、端子4が携帯電話機本体10側へ向き端子2,3が携帯電話機本体10の反対側(外側)へ向くよう装着されるようになっており、外部インターフェースコネクター1の端子2,3側は防塵用蓋11により遮蔽し得るようになっている。 【0008】又、図15に示す携帯電話機8においては、メモリーカードコネクター5は、凹部9の基板12面に形成した嵌入孔13に端子6,7(図14参照)の長手方向が携帯電話機8の幅方向へ向くよう収納されており、嵌入孔13には、メモリーカードコネクター5の上面に位置して端子6,7に接触するメモリーカード14を嵌入し得るようになっている。 【0009】更に、嵌入孔13に嵌入されたメモリーカード14の上面は、防塵キャップ15により遮蔽し得るようになっている。」 (カ)「【0018】 【発明が解決しようとする課題】従来の携帯電話機では i)外部インターフェースコネクター1とメモリーカードコネクター5は夫々別個の単独の部品であり、メモリーカードコネクター5及びメモリーカード14は基板12に形成した嵌入孔13或いは携帯電話機本体10のケースに設けた嵌入孔16に嵌入するようにしているため、メモリーカード収納部の実装面積が広くなり、製品の小型化を図ることが困難である、 ii)メモリーカード14を挿抜するための独自の嵌入孔13,16を設けているため、防塵や防滴のために防塵キャップ15或いは防塵用蓋17が必要となり、従って部品点数の増加、構造の複雑化を招来する虞れがある、 iii)通電状態でメモリーカード14を嵌入孔13,16から取外すとメモリーカード14に記憶されているデータに異常が生じる恐れがあるため、例えば図15に示すごとくバッテリー28が外されない限りメモリーカード14を嵌入孔13から取外すことのできない構造にする必要があり、この点からも携帯電話機8の構造が複雑化する虞れがある、等の問題がある。」 上記(オ)、(カ)、及び図15の記載によれば、「メモリーカードコネクタが収納される嵌入孔を、電池パックを装着するための凹部の基板面に形成し、嵌入孔に嵌入されたメモリーカードの上面を、防塵や防滴のための防塵キャップにより遮蔽する。」という技術的事項が記載されている。 (3)対比 本願補正発明と引用発明とを対比する。 ・引用発明の「防水構造」は、本願補正発明の「防滴構造」に相当する。 ・引用発明の「識別カードが接続される識別カードコネクタやメモリカードが接続されるメモリカードコネクタ」は本願補正発明の「メモリカードが装着されるメモリカード装着部」に相当する。また、引用発明の「電池収納凹部の底部において一段低くなって」いる「領域」は、その内部に識別カードコネクタやメモリカードコネクタが位置するのであるから、一段低くなっている「領域」の開口は、本願補正発明の「メモリカードを投入するためのメモリカード投入口」に相当する。 ・引用発明の「電池収納凹部」は、開口から電池が収納されるものであるから、本願補正発明の「電池を投入するための電池投入口を有しているとともに」「前記電池投入口から投入された電池が収納される電池収納部」に相当する。 ・引用発明において、識別カードコネクタやメモリカードコネクタが位置する一段低くなっている「領域」を、「電池収納凹部の底部」に有していることは、本願補正発明の電池収納部において、「前記メモリカード投入口に対応する位置が底部とされ」ることに相当する。 ・引用発明において、識別カードコネクタやメモリカードコネクタは、電池収納凹部の底部における一段低くなっている領域に設けられているから、識別カードやメモリカードは、電池収納凹部の開口から一段低くなっている領域の開口を介して識別カードコネクタやメモリカードコネクタに接続されることになる。このことは、本願補正発明の「前記電池投入口から前記メモリカード投入口を介してメモリカードが前記メモリカード装着部に投入されるように構成される」ことに相当する。 ・引用発明において、「防水リング」は電池蓋の外周面に設けられたものであって、防水のために設けられたものであるから、本願補正発明の「前記電池蓋の周囲に沿ってまたは前記電池投入口に沿って設けられ、前記電池投入口を前記電池蓋で塞いだ際に前記電池収納部を密閉し水滴の浸入を防ぐための第2防滴部材」に相当する。 ・引用発明は、「水滴が識別カードコネクタやメモリカードコネクタに流れ込まないように」するために、「電池収納凹部の底部に突条を設けている」ものであるところ、「水滴が識別カードコネクタやメモリカードコネクタに流れ込まないように」することは、本願補正発明における「メモリカード装着部」への「水滴の侵入を防ぐ」ことに相当する。そうすると、「メモリカード装着部」への「水滴の侵入を防ぐ」ために、本願補正発明では、「前記メモリカード投入口を開閉可能に塞ぐメモリカード蓋」及び「前記メモリカード蓋の周囲に沿ってまたは前記メモリカード投入口に沿って設けられ、前記メモリカード投入口を前記メモリカード蓋で塞いだ際に前記メモリカード装着部を密閉し水滴の浸入を防ぐための第1防滴部材」を備えているのに対して、引用発明は、「電池収納凹部の底部に突条を設けている」点で相違する。 ・本願補正発明は「前記メモリカード蓋は、長手方向が前記電池収納部に収納された際の前記電池の長手方向と揃うように且つ前記電池によって全体が覆われるように取り付けられる」のに対して、引用発明では、「電池収納凹部の底部における一段低くなっている領域」が、「電池収納凹部に収納された際に電池によって全体が覆われている」点で相違する。 よって、本願補正発明と引用発明とは、以下の点で一致ないし相違する。 <一致点> 「メモリカードを投入するためのメモリカード投入口を有し、該メモリカード投入口から投入されたメモリカードが装着されるメモリカード装着部と、 電池を投入するための電池投入口を有しているとともに前記メモリカード投入口に対応する位置が底部とされ、前記電池投入口から投入された電池が収納される電池収納部と、 前記電池投入口を開閉可能に塞ぐ電池蓋と、 前記電池蓋の周囲に沿ってまたは前記電池投入口に沿って設けられ、前記電池投入口を前記電池蓋で塞いだ際に前記電池収納部を密閉し水滴の浸入を防ぐための第2防滴部材と、 を備え、 前記電池投入口から前記メモリカード投入口を介してメモリカードが前記メモリカード装着部に投入されるように構成されることを特徴とする防滴構造。」 <相違点1> 「メモリカード装着部」への「水滴の侵入を防ぐ」ために、本願補正発明では、「前記メモリカード投入口を開閉可能に塞ぐメモリカード蓋」及び「前記メモリカード蓋の周囲に沿ってまたは前記メモリカード投入口に沿って設けられ、前記メモリカード投入口を前記メモリカード蓋で塞いだ際に前記メモリカード装着部を密閉し水滴の浸入を防ぐための第1防滴部材」を備えているのに対して、引用発明は、「電池収納凹部の底部に突条を設けている」点。 <相違点2> 本願補正発明は「前記メモリカード蓋は、長手方向が前記電池収納部に収納された際の前記電池の長手方向と揃うように且つ前記電池によって全体が覆われるように取り付けられる」のに対して、引用発明では、「電池収納凹部の底部における一段低くなっている領域」が、「電池収納凹部に収納された際に電池によって全体が覆われている」点で相違する点。 (4)判断 上記各相違点について検討する。 <相違点1>について メモリカード装着部に対する水滴の浸入を防ぐために、メモリカード投入口を開閉可能に塞ぐメモリカード蓋を設けることは、例えば引用例2に記載されている(上記「(2)イ.」参照)ように周知の技術事項であるから、引用発明におけるメモリカード装着部に対する水滴の浸入を防ぐために、突条に代えてメモリカード蓋を設けることで相違点1の構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。 なお、水滴の浸入を防ぐための蓋やその周辺に、例えば引用例1に記載されている「防水リング」のような防滴部材を設けることは周知の技術事項であるから、メモリカード蓋やその周辺に対して「防水リング」のような防滴部材を設けることに、格別な困難性があったとは認められない。 <相違点2>について 引用発明の、識別カードコネクタやメモリカードコネクタが位置する領域である一段低くなっている領域は、電池収納凹部に収納された際に電池によって全体が覆われているから、上記「<相違点1>について」で前述したように、当該領域をメモリカード蓋で塞いだ場合、メモリカード蓋の全体が、電池によって覆われることになるものと認められる。 また、電子機器の電池としては、長方形の電池も一般に用いられており、電子機器に対してどのような方向で収納させるかは、当業者が適宜決定しえた設計的事項に過ぎないから、メモリカード蓋の長手方向と電池収納部に収納された際の電池の長手方向とが揃うように取り付けることは、当業者が適宜なし得たことである。 なお、請求人は審判請求書の請求の理由において、「前記メモリカード蓋は、長手方向が前記電池収納部に収納された際の前記電池の長手方向と揃うように且つ前記電池によって全体が覆われるように取り付けられる」ことにより、「電池を介した電池蓋からの押圧力または電池からの押圧力をメモリカード蓋の表面に対してより均等に加えることが可能になるため、メモリカード蓋や第1防滴部材によって、メモリカード装着部への水滴の侵入を、より効果的に防止できる」と主張している。 しかし、本件補正後の請求項1には、メモリカード蓋の全体を電池によって「覆う」ことは記載されているものの、電池蓋や電池によってメモリカード蓋を「押圧する」ことまで限定されていない。また、一般に「覆われる」とは「露出するところがないように、全体にかぶせてしまう」(広辞苑第五版)という意味であり、かぶせたもので押圧することまで意味しているとは認められない。 よって、上記主張は、請求項の記載に基づくものとはいえないから、採用することはできない。 したがって、本願補正発明は、引用発明、及び、周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 そして、また、本願補正発明の作用効果も、引用例1及び引用例2から当業者が予測できる範囲のものである。 (5)むすび 以上のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 上記のとおり、平成30年1月26日付けの手続補正は却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成29年5月11日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである。 「【請求項1】 メモリカードを投入するためのメモリカード投入口を有し、該メモリカード投入口から投入されたメモリカードが装着されるメモリカード装着部と、 前記メモリカード投入口を開閉可能に塞ぐメモリカード蓋と、 前記メモリカード蓋の周囲に沿ってまたは前記メモリカード投入口に沿って設けられ、前記メモリカード投入口を前記メモリカード蓋で塞いだ際に前記メモリカード装着部を密閉し水滴の浸入を防ぐための第1防滴部材と、 電池を投入するための電池投入口を有しているとともに前記メモリカード投入口に対応する位置が底部とされ、前記電池投入口から投入された電池が収納される電池収納部と、 前記電池投入口を開閉可能に塞ぐ電池蓋と、 前記電池蓋の周囲に沿ってまたは前記電池投入口に沿って設けられ、前記電池投入口を前記電池蓋で塞いだ際に前記電池収納部を密閉し水滴の浸入を防ぐための第2防滴部材と、 を備え、 前記電池投入口から前記メモリカード投入口を介してメモリカードが前記メモリカード装着部に投入されるように構成されていることを特徴とする防滴構造。」 2.引用例 原査定の拒絶の理由で引用された引用例及びその記載事項は、上記「第2 2.(2)」に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、上記「第2」で検討した本願補正発明の「前記メモリカード蓋は、長手方向が前記電池収納部に収納された際の前記電池の長手方向と揃うように且つ前記電池によって全体が覆われるように取り付けられる」との限定を削除したものである。 そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2 2.(3)」及び「第2 2.(4)」に記載したとおり、引用例1に記載された発明、及び、周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1に記載された発明、及び、周知の技術事項により当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。 したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2019-01-24 |
結審通知日 | 2019-02-19 |
審決日 | 2019-03-05 |
出願番号 | 特願2016-127204(P2016-127204) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H05K)
P 1 8・ 575- Z (H05K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 佐久 聖子、岩間 直純 |
特許庁審判長 |
國分 直樹 |
特許庁審判官 |
山澤 宏 田中 慎太郎 |
発明の名称 | 防滴構造および電子機器 |