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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B60J
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 B60J
管理番号 1351867
審判番号 不服2018-7470  
総通号数 235 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-05-31 
確定日 2019-06-11 
事件の表示 特願2015-8034号「レインガーターモール構造」拒絶査定不服審判事件〔平成28年7月25日出願公開、特開2016-132346号、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年1月19日の出願であって、平成29年10月13日付けで拒絶理由通知がされ、平成29年12月18日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成30年2月28日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、平成30年5月31日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。


第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

理由1:本願請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

理由2:本願請求項1-2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2000-142100公報

第3 本願発明
本願請求項1-2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明2」という。)は、平成30年5月31日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-2に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
ウインドシールドガラスの車幅方向端部に沿って設けられ、車幅方向内側へ向かって突出した突出部を有すると共に、車幅方向に沿った幅が他の一般部と比べて狭くされた幅狭部を下部に有するモールと、
前記突出部によって形成され、前記モールに沿って延在する流水路と、
を備え、
前記流水路の車幅方向に沿った幅が、前記幅狭部において他の一般部より狭く形成され、
前記ウインドシールドガラスに対する前記突出部の高さが、前記幅狭部において他の一般部よりも高く設定されている、
レインガーターモール構造。」

本願発明2は、本願発明1を減縮した発明である。


第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。
なお、下線は当審で付与した。以下同様。

・「【0014】図1および図2に示すように、第1実施形態である枠体付き透明板状体10は、ガラス板からなる透明板状体72の上辺73および側辺74に沿って周縁部にモール11が取り付けられていて、自動車のフロントウインドウとして用いられる。モール11は、上辺モール11Aと側辺モール11Bとから構成されている。そして、この枠体付き透明板状体10は、自動車のデザインに基づいてモール11の平面幅寸法が制限されている。
【0015】上辺モール11Aは、透明板状体72の上辺73に対して係合する断面略コ字状の上辺取付部12を有している。一方、側辺モール11Bは、透明板状体72の側辺74に対して係合する断面略コ字状の側辺取付部13と、側辺取付部13から透明板状体72の厚み方向に沿って立ち上がる側辺立上部14と、側辺立上部14の内側面から突出する鍔部15とを備え、透明板状体72の表面72Bと鍔部15との間にレインガータ16が形成されている。
【0016】側辺立上部14は、透明板状体72の面方向に対して所定の交差角度で離れる方向に側辺取付部13の上面から立ち上がり、先端部がボディパネル70Aから大幅に突出しないよう形成されている。この側辺立上部14は、側辺取付部13の長手方向に沿って連続している。
【0017】鍔部15は断面略半円形状とされ、平坦面15Aが透明板状体72の面方向に対して所定の角度で交差するように、側辺立上部14に対して断面略L字状に接続されている。このような鍔部15は、側辺立上部14の長手方向に沿って所定位置まで連続している。なお、鍔部15は、その断面形状あるいは断面寸法を適宜選択するとともに、側辺立上部14に対して断面略T字状に接続することにより、モール11と開口部75との間を覆うカバー部15Bを設けてもよい(図1および図2中鎖線参照)。」
・「【0018】このような枠体付き透明板状体10は、側辺モール11Bの平面幅寸法W2が上辺モール11Aの平面幅寸法W1よりも小さく設定されているとともに、側辺モール11Bの立上寸法H2が上辺モール11Aの立上寸法H1よりも大きく設定されている。そして、側辺モール11Bは、レインガータ16の断面積が所定値以上になることを前提として、レインガータ16の幅寸法W3が深さ寸法Dよりも大きく設定されている。
【0019】このようなモール11は、図3に示す押出成形ダイ30により、上辺取付部12,側辺取付部13,側辺立上部14および鍔部15を連続的に押出成形することにより製造される。押出成形ダイ30は、ダイ本体31と、ダイ本体31に設けられた成形空間32と、成形空間32に対して突没可能な第1スライドコア33および第2スライドコア34とを備えている。この押出成形ダイ30は、図中奥行側から図中手前側に向かって成形空間32を通過するように樹脂が押し出されているとき、成形空間32に対して第1スライドコア33および第2スライドコア34を相互排他的に適宜突没させることにより、所望のモール11を製造する。」

・図1および図2のモール11は、「【0014】図1および図2に示すように、第1実施形態である枠体付き透明板状体10は、ガラス板からなる透明板状体72の上辺73および側辺74に沿って周縁部にモール11が取り付けられていて、自動車のフロントウインドウとして用いられる。モール11は、上辺モール11Aと側辺モール11Bとから構成されている。」、「【0015】上辺モール11Aは、透明板状体72の上辺73に対して係合する断面略コ字状の上辺取付部12を有している。一方、側辺モール11Bは、透明板状体72の側辺74に対して係合する断面略コ字状の側辺取付部13と、側辺取付部13から透明板状体72の厚み方向に沿って立ち上がる側辺立上部14と、側辺立上部14の内側面から突出する鍔部15とを備え、透明板状体72の表面72Bと鍔部15との間にレインガータ16が形成されている。」、「【0018】・・・側辺モール11Bの平面幅寸法W2が上辺モール11Aの平面幅寸法W1よりも小さく設定されている」ものであるので、フロントウインドウのガラス板からなる透明板状体72の上辺73および側辺74に沿って周縁部に取り付けられ、上辺モール11Aと側辺モール11Bとから構成され、
上辺モール11Aは、透明板状体72の上辺73に対して係合する断面略コ字状の上辺取付部12を有し、
側辺モール11Bは、透明板状体72の側辺74に対して係合する断面略コ字状の側辺取付部13と、側辺取付部13から透明板状体72の厚み方向に沿って立ち上がる側辺立上部14と、側辺立上部14の内側面から突出する鍔部15とを備え、
側辺モール11Bの平面幅寸法W2が上辺モール11Aの平面幅寸法W1よりも小さく設定されているモール11といえる。

・図1および図2のレインガータ16は、「【0015】・・・透明板状体72の表面72Bと鍔部15との間にレインガータ16が形成されている。」ものであるので、透明板状体72の表面72Bと鍔部15との間に形成されているレインガータ16といえる。

・図2のレインガータ16の幅寸法W3は、「【0018】・・・側辺モール11Bは、レインガータ16の断面積が所定値以上になることを前提として、レインガータ16の幅寸法W3が深さ寸法Dよりも大きく設定されている。」ものであるので、レインガータ16の幅寸法W3が深さ寸法Dよりも大きく設定されているといえる。

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「フロントウインドウのガラス板からなる透明板状体72の上辺73および側辺74に沿って周縁部に取り付けられ、上辺モール11Aと側辺モール11Bとから構成され、
上辺モール11Aは、透明板状体72の上辺73に対して係合する断面略コ字状の上辺取付部12を有し、
側辺モール11Bは、透明板状体72の側辺74に対して係合する断面略コ字状の側辺取付部13と、側辺取付部13から透明板状体72の厚み方向に沿って立ち上がる側辺立上部14と、側辺立上部14の内側面から突出する鍔部15とを備え、
側辺モール11Bの平面幅寸法W2が上辺モール11Aの平面幅寸法W1よりも小さく設定されているモール11と、
透明板状体72の表面72Bと鍔部15との間に形成されているレインガータ16と、
を備え、
レインガータ16の幅寸法W3が深さ寸法Dよりも大きく設定されている
枠体付き透明板状体10。」

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア.引用発明の「フロントウインドウのガラス板からなる透明板状体72」は、本願発明1の「ウインドシールドガラス」に相当する。
引用発明の「側辺モール11B」の「透明板状体72の側辺74に対して係合する」構成は、本願発明1の「モール」の「ウインドシールドガラスの車幅方向端部に沿って設けられ」る構成に相当する。
そして、引用発明の「側辺モール11B」は、本願発明1の「ウインドシールドガラスの車幅方向端部に沿って設けられ」る「モール」に相当する。
さらに、引用発明の「側辺モール11B」の「側辺立上部14の内側面から突出する鍔部15」は、フロントウインドウの側辺モールの側辺立上部14の内側面から突出する、すなわち、車幅方向内側へ向かって突出するものであるので、本願発明1の「車幅方向内側へ向かって突出した突出部」に相当する。
そうすると、引用発明の「側辺モール11B」と、本願発明1の「ウインドシールドガラスの車幅方向端部に沿って設けられ、車幅方向内側へ向かって突出した突出部を有すると共に、車幅方向に沿った幅が他の一般部と比べて狭くされた幅狭部を下部に有するモール」とは、「ウインドシールドガラスの車幅方向端部に沿って設けられ、車幅方向内側へ向かって突出した突出部を有するモール」である点で共通する。

イ.引用発明の「透明板状体72の表面72Bと鍔部15との間に形成されているレインガータ16」は、本願発明1の「前記突出部によって形成され、前記モールに沿って延在する流水路」に相当する。

ウ.「レインガータ16」を「備え」た「側辺モール11B」を含む「枠体付き透明板状体10」の構造は、本願発明1の「レインガーターモール構造」に相当する。

エ.引用発明の「側辺モール11Bの平面幅寸法W2」は、本願発明1の「車幅方向に沿った幅」に相当する。
引用発明の「レインガータ16」の「深さ寸法D」は、本願発明1の「流水路の車幅方向に沿った幅」に相当する。
引用発明の「レインガータ16の幅寸法W3」は、本願発明1の「ウインドシールドガラスに対する前記突出部の高さ」に相当する。

以上によれば、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「ウインドシールドガラスの車幅方向端部に沿って設けられ、車幅方向内側へ向かって突出した突出部を有するモールと、
前記突出部によって形成され、前記モールに沿って延在する流水路と、
を備える、
レインガーターモール構造。」

(相違点)
本願発明1は、モールが「車幅方向に沿った幅が他の一般部と比べて狭くされた幅狭部を下部に有する」ものであり、「前記流水路の車幅方向に沿った幅が、前記幅狭部において他の一般部より狭く形成され」、「前記ウインドシールドガラスに対する前記突出部の高さが、前記幅狭部において他の一般部よりも高く設定されている」のに対して、引用発明の側辺モール11Bは、「側辺モール11Bの平面幅寸法W2が上辺モール11Aの平面幅寸法W1よりも小さく設定されている」ものであり、「レインガータ16の幅寸法W3が深さ寸法Dよりも大きく設定されている」(なお、「深さ寸法D」は本願発明1の「流水路の車幅方向に沿った幅」に、「幅寸法W3」は本願発明1の「突出部の高さ」に相当。)ものである点。

(2)相違点についての判断
ア.引用発明の側辺モール11Bは、「平面幅寸法W2が上辺モール11Aの平面幅寸法W1よりも小さく設定されている」ものであって、図2断面図の位置において平面幅寸法がW2であることが記載されていても、側辺モール11Bのその他の場所における平面幅寸法は記載されていない。
さらに、レインガータ16の幅寸法、深さ寸法も、図2断面図の位置において幅寸法W3、深さ寸法Dが記載されていても、側辺モール11Bのその他の場所における幅寸法、深さ寸法は記載されていない。

イ.引用文献1の図1の部分斜視図、図2の上辺モールおよび側辺モールを示す断面図には、側辺モール11Bの上部の断面形状が記載されていないものの、モール11の平面幅寸法が側辺モール11Bの上部で上辺モール11Aの平面幅寸法W1に等しく、レインガータ16の幅寸法W3が側辺モール11Bの上部で存在せず、中間部から下部に行くにしたがって大きくなるか如き形態で図示されており、【0019】にはモール11の成形について「このようなモール11は、図3に示す押出成形ダイ30により、上辺取付部12,側辺取付部13,側辺立上部14および鍔部15を連続的に押出成形することにより製造される。」と記載されており、上辺モール11A、側辺モール11Bが連続的に押出成形することにより製造されるものとして記載されている。
しかし、【0019】には「押出成形ダイ30は、ダイ本体31と、ダイ本体31に設けられた成形空間32と、成形空間32に対して突没可能な第1スライドコア33および第2スライドコア34とを備えている。この押出成形ダイ30は、図中奥行側から図中手前側に向かって成形空間32を通過するように樹脂が押し出されているとき、成形空間32に対して第1スライドコア33および第2スライドコア34を相互排他的に適宜突没させることにより、所望のモール11を製造する。」とも記載されており、第1スライドコア33および第2スライドコア34の突没が相互排他的になされるものとされており、当該記載に基づくと図1図示のレインガータ16の幅寸法W3が側辺モール11Bの上部で存在せず、中間部から下部に行くにしたがって大きくなるか如き形態は合理的に理解出来るものではない。
さらに、【0019】の押出成形は、どの様な手法で、上辺モール11Aの平面幅寸法W1とレインガータ16の幅寸法W3とを連続的に変化させるのかも不明であるので、上辺モール11A、側辺モール11Bが連続的に押出成形するものであるとしても、引用発明の「側辺モール11Bの平面幅寸法W2が上辺モール11Aの平面幅寸法W1よりも小さく設定」が、どの様に実現されるものであるのかも特定できる記載となっていない。

ウ.さらに、引用発明は「レインガータ16の幅寸法W3が深さ寸法Dよりも大きく設定されている」ものであるので、仮に、上記イ.の「レインガータ16の幅寸法W3が側辺モール11Bの上部で存在せず、中間部から下部に行くにしたがって大きくなるか如き形態」であるとしても、深さ寸法D(本願発明1「流水路の車幅方向に沿った幅」に相当)は、側辺モール11Bの上部で存在しない、若しくは、小とならざるを得ず、本願発明1のモール下部の幅狭部における「前記流水路の車幅方向に沿った幅が、前記幅狭部において他の一般部より狭く形成され」構成を示唆するものではない。

そうすると、本願発明1の上記相違点に係る、モールが「車幅方向に沿った幅が他の一般部と比べて狭くされた幅狭部を下部に有する」ものであり、「前記流水路の車幅方向に沿った幅が、前記幅狭部において他の一般部より狭く形成され」、「前記ウインドシールドガラスに対する前記突出部の高さが、前記幅狭部において他の一般部よりも高く設定されている」構成は、引用文献1に記載も示唆もされていないと言わざる得ない。
したがって、本願発明1は、引用文献1に記載された発明とはいえない。
また、本願発明1は、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1に基づいて、容易に発明できたものともいえない。

2.本願発明2について
本願発明2も、上記本願発明1の相違点に係る構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1-2は、当業者が引用発明及び引用文献1に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-05-27 
出願番号 特願2015-8034(P2015-8034)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (B60J)
P 1 8・ 121- WY (B60J)
最終処分 成立  
前審関与審査官 高島 壮基  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 中村 泰二郎
中川 真一
発明の名称 レインガーターモール構造  
代理人 福田 浩志  
代理人 中島 淳  
代理人 加藤 和詳  

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