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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G05B |
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管理番号 | 1351914 |
審判番号 | 不服2018-6140 |
総通号数 | 235 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-07-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-05-07 |
確定日 | 2019-06-11 |
事件の表示 | 特願2016-75687「プロセス制御情報を表示する方法及び装置、機械がアクセス可能な媒体、及びデバイス記述ファイル内にスクリプト拡張機能を作成する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年8月12日出願公開、特開2016-146204、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成23年9月12日(パリ条約による優先権主張2010年9月13日、アメリカ合衆国)に出願した特願2011-198548号の一部を平成28年4月5日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成29年 4月12日付け:拒絶理由通知書 平成29年 7月18日 :意見書、手続補正書の提出 平成29年12月 7日付け:拒絶査定 平成30年 5月 7日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 原査定の概要 原査定(平成29年12月7日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 請求項1-12に係る発明は、以下の引用文献1-4に基づいて、その発明の属する技術分野における通常の技術を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2010-191964号公報 2.特表2007-536631号公報 3.特開2010-67132号公報 4.橋本 良,"PlantWebデジタルアーキテクチャ「AMSデバイス・マネージャ」",計装,2007年,Vol.50, No.11,p.47-p.48 第3 本願発明 本願請求項1-12に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明12」という。)は、平成30年5月7日提出の手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1-12に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1、3、6及び9は以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 プロセス制御情報を表示する方法であって、 フィールドデバイスに関連付けられるプロセス制御情報の閲覧要求を受信することと、 データベースを介して、前記フィールドデバイスに関連付けられるデバイス記述ファイルであって、電子デバイス記述言語(EDDL)に準拠するようにフォーマットされる、デバイス記述ファイルにアクセスすることと、 前記デバイス記述ファイル内に記憶されたスクリプト拡張機能を含む前記デバイス記述ファイルを使用して、前記プロセス制御情報に対する表示を生成することと、 を含み、 前記スクリプト拡張機能は、前記プロセス制御情報が前記スクリプト拡張機能の中の条件と合致する場合に、図形に値を表示する機能、前記プロセス制御情報が前記条件と合致する場合に、データソースに値を書き込む機能、前記プロセス制御情報の一部分に対して少なくとも1つの数学演算を実施する表現、前記プロセス制御情報の前記一部分が前記条件と合致する場合に、前記プロセス制御情報の前記一部分を前記図形に変更することによって前記図形を表示するコンバータ、及び、前記条件が前記プロセス制御情報の前記一部分と合致する場合に、前記図形を表示する機能のグループから選択され、 前記スクリプト拡張機能は、前記プロセス制御情報の一部に対して少なくとも1つの数学演算を実行して値を取得する機能、前記プロセス制御情報の前記一部が前記条件と一致する場合に、図形を表示する機能、及び、前記図形に前記値を表示する機能を含む、 方法。」 「【請求項3】 プロセス制御情報を表示する装置であって、 データベースを介して、フィールドデバイスに関連付けられるデバイス記述ファイルにアクセスする、電子デバイス記述プロセッサであって、前記デバイス記述ファイルは、電子デバイス記述言語(EDDL)に関連付けられる、電子デバイス記述プロセッサと、 前記デバイス記述ファイルおよび前記フィールドデバイスから受信されるプロセス制御情報を使用して、前記プロセス制御情報の表示を生成する、図形プロセッサであって、前記デバイス記述ファイルは、スクリプト拡張機能を含む、図形プロセッサと、 を備え、 前記デバイス記述ファイル内に記憶された前記スクリプト拡張機能は、前記プロセス制御情報が前記スクリプト拡張機能の中の条件と合致する場合に、図形に値を表示する機能、前記プロセス制御情報が前記条件と合致する場合に、データソースに値を書き込む機能、前記プロセス制御情報の一部分に対して少なくとも1つの数学演算を実施する表現、前記プロセス制御情報の前記一部分が前記条件と合致する場合に、前記プロセス制御情報の前記一部分を前記図形に変更することによって前記図形を表示するコンバータ、及び、前記条件が前記プロセス制御情報の前記一部分と合致する場合に、前記図形を表示する機能のグループから選択され、 前記スクリプト拡張機能は、前記プロセス制御情報の一部に対して少なくとも1つの数学演算を実行して値を取得する機能、前記プロセス制御情報の前記一部が前記条件と一致する場合に、図形を表示する機能、及び、前記図形に前記値を表示する機能を含む、 装置。」 「【請求項6】 実行されると、機械に、少なくとも、 フィールドデバイスから送信されるプロセス制御情報の閲覧要求を受信させ、 データベースを介して、前記フィールドデバイスに関連付けられるデバイス記述ファイルであって、電子デバイス記述言語(EDDL)に準拠するようにフォーマットされる、デバイス記述ファイルにアクセスさせ、 前記デバイス記述ファイル内に記憶されたスクリプト拡張機能を含むデバイス記述ファイルを使用して、前記プロセス制御情報の表示を生成させる、 その上に記憶される命令を有する、機械がアクセス可能な媒体であって、 前記スクリプト拡張機能は、前記プロセス制御情報が前記スクリプト拡張機能の中の条件と合致する場合に、図形に値を表示する機能、前記プロセス制御情報が前記条件と合致する場合に、データソースに値を書き込む機能、前記プロセス制御情報の一部分に対して少なくとも1つの数学演算を実施する表現、前記プロセス制御情報の前記一部分が前記条件と合致する場合に、前記プロセス制御情報の前記一部分を前記図形に変更することによって前記図形を表示するコンバータ、及び、前記条件が前記プロセス制御情報の前記一部分と合致する場合に、前記図形を表示する機能のグループから選択され、 前記スクリプト拡張機能は、前記プロセス制御情報の一部に対して少なくとも1つの数学演算を実行して値を取得する機能、前記プロセス制御情報の前記一部が前記条件と一致する場合に、図形を表示する機能、及び、前記図形に前記値を表示する機能を含む、 機械がアクセス可能な媒体。」 「【請求項9】 デバイス記述ファイル内にスクリプト拡張機能を作成する方法であって、 フィールドデバイスに関連付けられる情報を受信することと、 前記フィールドデバイスからのプロセス制御情報が、いつ図形として表示されるかを識別する、前記情報内の条件を決定することと、 前記フィールドデバイスからの前記プロセス制御情報が前記条件と合致する場合に、前記図形を表示するために、前記条件に基づいて、スクリプト拡張機能を作成することと、 前記スクリプト拡張機能を前記フィールドデバイスに関連付けられるデバイス記述ファイルに記憶することと、 を含み、 前記スクリプト拡張機能は、前記プロセス制御情報の一部に対して少なくとも1つの数学演算を実行して値を取得する機能、前記プロセス制御情報の前記一部が前記スクリプト拡張機能の中の条件と一致する場合に、図形を表示する機能、及び、前記図形に前記値を表示する機能を含む、 方法。」 また、本願発明2、4-5、7-8及び10-12の概要は以下のとおりである。 本願発明2は、本願発明1の構成全てを引用した発明である。 本願発明4-5は、本願発明3の構成全てを引用した発明である。 本願発明7-8は、本願発明6の構成全てを引用した発明である。 本願発明10-12は、本願発明9の構成全てを引用した発明である。 第4 引用文献、引用発明等 1.引用文献1について (1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は理解の便のため当審にて付与。以下同)。 ア 段落【0001】 「本開示は、概して、プロセス制御システムに関し、より具体的には、電子記述言語(EDL)スクリプトを使用してプロセス制御システムを構成する方法および装置に関する。」 イ 段落【0002】 「電子デバイス記述言語(EDDL)は、ホストプロセス制御システムの制御コンポーネントによるフィールドデバイスの解釈、制御および/または管理を容易にするために、プロセスプラントのフィールドデバイスを記述および規定する構造化および標準化された形式を提供するために使用されている。したがって、EDDLは、典型的に、フィールドデバイスに関連するデータのパラメータ化および視覚化するための標準化されたインターフェースを組み込む。最近になって、EDDLはフィールドデバイスデータを表す高度なディスプレイおよび/またはグラフィックを記述および/または規定するように強化されている。」 ウ 段落【0007】 「一般的に、本明細書に説明される例示的な装置、方法、および製造品は、電子記述言語(EDL)スクリプトおよび/またはインタープリティティブなシステムレベルスクリプトを用いて、プロセスプラント制御システムの全てまたは任意の部分を定義、記述、および/または別様に規定するために使用することができる。拡張可能なマーク付け言語(XML)に従って構築されるような一部のEDLスクリプト言語においては、このようなEDLスクリプトもスキーマと呼ばれる。これまで、電子デバイス記述言語(EDDL)およびEDLスクリプトは、プロセス制御システムのフィールドデバイスを定義、記述および/または別様に規定するためだけに使用された。対照的に、本明細書に説明される例示的なEDLスクリプトは、プロセス制御システムの任意の数および/またはタイプの追加および/または代替の制御および/または非制御コンポーネントを定義、記述および/または別様に規定するために使用可能である。さらに、例示的なEDLスクリプトは、プロセス制御システムのいずれか、または全てのコンポーネント間の任意の数および/またはタイプの相互接続を定義、記述および/または規定するために使用可能である。したがって、一部の実施例においては、単一のスキーマがプロセス制御システムの全体を定義するために使用され得る。EDLスクリプトを用いてこれまでに定義されていないプロセス制御システムの例示的なコンポーネントは、コントローラ、操作ワークステーション、入力/出力(I/O)カード、ルータ、スイッチ、ハブ、ファイアウォール、電源装置、および/またはI/Oゲートウェイを含むがこれらに限定されない。」 エ 段落【0010】 「図1の例示的な操作ステーション115によって、プロセスプラントの操作者は、プロセスプラントの可変値を見ること、プロセスプラントの状況を見ること、プロセスプラントの状態を見ること、プロセスプラントの警告を見ること、および/またはプロセスプラントの設定を変更すること(例えば、ポイントおよび/または操作状況を設定、警告をクリア、警告を消音する等)をプロセスプラントの操作者に可能にする、1つ以上の操作ディスプレイ画面および/またはアプリケーションを確認および/または操作することが可能になる。このような画面および/またはアプリケーションは、典型的に、プロセス構成技術者によって設計および/または実装される。」 オ 段落【0018】 「図2は、図1の例示的なプロセス制御システムの構成システム150を実現する例示的な方式を示す。ユーザが図1の例示的システム100等、プロセス制御システムを表すEDLスクリプトおよび/またはスキーマ205を作成することを可能にするために、図2の例示的な構成システムは、任意の数および/またはタイプのEDLエディタ(そのうちの1つが参照番号210で示される)と、EDLライブラリ215とを含む。図1の例示的なプロセス制御システム100を表すために使用することができる例示的なスキーマおよびEDLスクリプト205は、以下でそれぞれ図4および5を参照しながら説明される。図1の例示的なEDLライブラリ215は、例示的なEDLスクリプト205を作成するために選択および/または使用することができる、任意の数およびタイプのプロセス制御システムコンポーネントおよび/またはプロセス制御システムを相互接続するための複数のEDLベーススキーマおよび/または記述を含む。例示的なEDLライブラリ215に含まれ得る、一部の例示的なプロセス制御システムコンポーネント用の例示的なスキーマが、以下の図5?9に示される。図8および9の例示的なスキーマ要素から作成され得る、別の例示的なEDLスクリプト205の一部が、図10に示される。」 カ 段落【0022】 「図2に示されるように、例示的なデバイスデータベース230は、ベンダー固有の構成システム240に関連して実現される。図2の例示的なシステム固有の構成システム240は、Emerson Process ManagementのFisher‐Rosemount Systems,Inc.により販売されているDeltaVプロセス制御システムの一部である。例示的なプロセス制御システム構成スクリプトおよび/または情報225のインポートを可能にするために、図2の例示的なDeltaV構成システム240は、インポートおよび/またはデータベース入力投入モジュール250を有するデータベースサーバ245を含む。図2の例示的なインポートモジュール250は、例示的なシステム固有のスクリプト225からデータ、ファイルおよび/または他の構成情報をインポートし、インポートしたデータ、ファイルおよび/または構成情報をDeltaV構成データベース255に格納する。例えば、1つ以上の構成ツール260を用いて設定されるように、図2の例示的なデータベースサーバ245は、DeltaV構成データベース255に格納されたデータ、ファイルおよび/または他の構成情報に基づいて、および/またはこれらから、DeltaV操作データベース265を作成する。プロセス制御システム100の実際の(つまり、物理的)プロセス制御コンポーネントは、このように形成された例示的DeltaV操作データベース265に基づいて、ロード、構成および/またはプログラムされる。図2の例示的なシステム固有の構成スクリプト225は例示的なコンパイラ220により生成されるが、システム固有の構成スクリプト225のいかなる部分も、これに加えて、または代替として、例えば、DeltaVプロセス制御システムの他のツールおよび/またはインターフェースを使用して生成することができる。」 (2)上記(1)ア、イ、ウ、エ、カの記載から、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 (引用発明) 「プロセス制御システムに関し、電子記述言語(EDL)スクリプトを使用してプロセス制御システムを構成する方法および装置であって、電子デバイス記述言語(EDDL)は、フィールドデバイスに関連するデータのパラメータ化および視覚化するための標準化されたインターフェースを組み込み、電子デバイス記述言語(EDDL)およびEDLスクリプトは、プロセス制御システムのフィールドデバイスを定義、記述および/または別様に規定するために使用され、EDLスクリプトは、プロセス制御システムの任意の数および/またはタイプの追加および/または代替の制御および/または非制御コンポーネントを定義、記述および/または別様に規定するために使用可能であり、操作ステーションによって、プロセスプラントの操作者は、プロセスプラントの可変値を見ること、プロセスプラントの状況を見ること、プロセスプラントの状態を見ること、プロセスプラントの警告を見ること、および/またはプロセスプラントの設定を変更することをプロセスプラントの操作者に可能にする、1つ以上の操作ディスプレイ画面を確認および/または操作することが可能であり、プロセス制御システム構成スクリプトおよび/または情報のインポートを可能にするために、DeltaV構成システムは、インポートおよび/またはデータベース入力投入モジュールを有するデータベースサーバを含み、インポートモジュールは、システム固有のスクリプトからデータ、ファイルおよび/または他の構成情報をインポートし、インポートしたデータ、ファイルおよび/または構成情報をDeltaV構成データベースに格納し、DeltaV構成データベースに格納されたデータ、ファイルおよび/または他の構成情報に基づいて、DeltaV操作データベースを作成する方法および装置。」 2.引用文献2について 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2の段落【0046】等の記載からみて、当該引用文献2には、スクリプトや他のルーチンが図形エレメントと関連付けられて、図形エレメントの、関連する物理的エンティティベースのパラメータの内の1つ以上のパラメータに関するある状況を検出し、これらの検出された状況や状態は、スクリプトによって生成された状態や値に結び付けられたアニメーションまたは他のアクションもしくは動作を用いて図形に反映されるという技術的事項が記載されていると認められる。 3.その他の文献について 原査定において周知技術を示す文献として引用された上記引用文献3の段落【0035】-段落【0036】には 「例えば、図9に一部を示すように、非SI単位定義辞書ファイル703には、非SI単位のコードと、これに対応するSI単位のコードと、非SI単位の工業単位コードおよび対応するSI単位の工業単位コードの間の変換を行うための変換式とが格納されている。非SI単位検出置換部705は、非SI単位定義辞書ファイル703に格納されている非SI単位のコードに一致するものを、上記デバイス仕様113の中に探索する。この探索で非SI単位の工業単位コードが検出されると(ステップS804)、非SI単位検出置換部705は、非SI単位定義辞書ファイル703に格納されている変換式により、検出した工業単位コードをSI単位の工業単位コードに置換する(ステップS805)。一方、上記探索で、非SI単位の工業単位コードが検出されない場合(ステップS804)、ステップS806に進む。 次に、ステップS806で、取得データ変換部106が、デバイス仕様にコードで記述されている工業単位を、工業単位辞書ファイル102を用い、表示のための表示文字列に変換する。この変換において、上述したステップS805の処理により、変換された表示文字列においては、非SI単位はない状態となる。次いで、取得データ変換部106は、変換したデータをパラメータ定義データベース107に格納する(ステップS807)。この後、例えば、データ出力制御部108が、パラメータ定義データベース107に格納されているデータを、表示部109に表示する。表示部109に表示されるデータにおいては、非SI単位がない状態となる。」 と記載され、上記引用文献4の第48頁左欄第20行-右欄第9行には 「弊社AMSの設備管理ツールとしての基本機能は大きく4つに分類できる。この4つの機能はエマソン計器のみに適用される機能ではなく、AMSデバイス・マネージャ自身がオープンなプラットフォームとして、HARTやFOUNDATIONフィールドバスに対応した他社計器にも等しく適応できる機能である。 その4つの機能とは、計器の上位システムからの構成(アラート設定、レンジ、工業単位確認・変更など)、キャリブレーション、計器の診断情報の提示およびアラートの表示、計装機器保全に関するデータベース、変更履歴管理、レポート作成、さらにハンド・ヘルド・コミュニケータで収集されたデータの一括管理機能である。さらにAMSデバイス・マネージャは拡張EDDLをサポートしているため、拡張EDDLに対応した計器では、基本機能に加えオンライントレンドや、各種の測定/診断の設定/表示をよりわかりやすいユーザインタフェースにて提供している(図2)。」と記載されている。 第5 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。 ア 引用発明における「プロセス制御システム構成スクリプトおよび/または情報」は、本願発明1における「フィールドデバイスに関連付けられるデバイス記述ファイル」に相当する。 イ 引用発明の「操作ステーションによって、プロセスプラントの操作者は、プロセスプラントの可変値を見ること、プロセスプラントの状況を見ること、プロセスプラントの状態を見ること、プロセスプラントの警告を見ること、および/またはプロセスプラントの設定を変更することをプロセスプラントの操作者に可能にする、1つ以上の操作ディスプレイ画面を確認および/または操作することが可能」は、引用発明の「プロセスプラントの可変値」、「プロセスプラントの状況」及び「プロセスプラントの警告」等が、本願発明1の「プロセス制御情報」に相当し、それらを操作ディスプレイ画面を介して見ることが可能であることを意味するから、本願発明1における「プロセス制御情報を表示する方法」を含む。 ウ 引用発明の「操作ステーションによって、プロセスプラントの操作者は、プロセスプラントの可変値を見ること、プロセスプラントの状況を見ること、プロセスプラントの状態を見ること、プロセスプラントの警告を見ること、および/またはプロセスプラントの設定を変更することをプロセスプラントの操作者に可能にする、1つ以上の操作ディスプレイ画面を確認および/または操作することが可能」について、各種情報を見る際には、当然そのデータの閲覧要求が受信されることから、本願発明1における「フィールドデバイスに関連付けられるプロセス制御情報の閲覧要求を受信すること」を含む。 エ 引用発明における「プロセス制御システム構成スクリプトおよび/または情報のインポートを可能にするために、DeltaV構成システムは、インポートおよび/またはデータベース入力投入モジュールを有するデータベースサーバを含み」は、「データベースサーバ」が「プロセス制御システム構成スクリプトおよび/または情報」にアクセスすることを意味することから、本願発明1の「データベースを介して、前記フィールドデバイスに関連付けられるデバイス記述ファイル」「にアクセスすること」を含む。 オ 引用発明の「操作ステーションによって、プロセスプラントの操作者は、プロセスプラントの可変値を見ること、プロセスプラントの状況を見ること、プロセスプラントの状態を見ること、プロセスプラントの警告を見ること、および/またはプロセスプラントの設定を変更することをプロセスプラントの操作者に可能にする、1つ以上の操作ディスプレイ画面を確認および/または操作することが可能」及び「プロセス制御システム構成スクリプトおよび/または情報のインポートを可能にするために、DeltaV構成システムは、インポートおよび/またはデータベース入力投入モジュールを有するデータベースサーバを含み」から、ある情報を見るために、そのデータの閲覧要求が受信された場合には、「プロセス制御システム構成スクリプトおよび/または情報」にアクセスし、当該「プロセス制御システム構成スクリプトおよび/または情報」を使用して、プロセス制御情報に対する表示を生成するはずである。 したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 (一致点) 「プロセス制御情報を表示する方法であって、 フィールドデバイスに関連付けられるプロセス制御情報の閲覧要求を受信することと、 データベースを介して、前記フィールドデバイスに関連付けられるデバイス記述ファイルにアクセスすることと、 前記デバイス記述ファイルを使用して、前記プロセス制御情報に対する表示を生成することと、 を含む、方法。」 (相違点1) 本願発明1は、「デバイス記述ファイル」が「電子デバイス記述言語(EDDL)に準拠するようにフォーマットされる」のに対し、引用発明は、「プロセス制御システム構成スクリプトおよび/または情報」が電子デバイス記述言語(EDDL)に準拠するようにフォーマットされるか不明な点。 (相違点2) 本願発明1は、「デバイス記述ファイル内に記憶されたスクリプト拡張機能」を含み「スクリプト拡張機能は、前記プロセス制御情報が前記スクリプト拡張機能の中の条件と合致する場合に、図形に値を表示する機能、前記プロセス制御情報が前記条件と合致する場合に、データソースに値を書き込む機能、前記プロセス制御情報の一部分に対して少なくとも1つの数学演算を実施する表現、前記プロセス制御情報の前記一部分が前記条件と合致する場合に、前記プロセス制御情報の前記一部分を前記図形に変更することによって前記図形を表示するコンバータ、及び、前記条件が前記プロセス制御情報の前記一部分と合致する場合に、前記図形を表示する機能のグループから選択され、 前記スクリプト拡張機能は、前記プロセス制御情報の一部に対して少なくとも1つの数学演算を実行して値を取得する機能、前記プロセス制御情報の前記一部が前記条件と一致する場合に、図形を表示する機能、及び、前記図形に前記値を表示する機能を含む」のに対し、引用発明は当該構成を有していない点。 (2)相違点2についての判断 デバイス記述ファイル内に、プロセス制御情報の一部に対して少なくとも1つの数学演算を実行して値を取得する機能、前記プロセス制御情報の前記一部が条件と一致する場合に、図形を表示する機能、及び、前記図形に前記値を表示する機能を含むスクリプト拡張機能が記憶されることは、上記引用文献1-4には記載されていない。したがって、デバイス記述ファイル内に、プロセス制御情報の一部に対して少なくとも1つの数学演算を実行して値を取得する機能、前記プロセス制御情報の前記一部が条件と一致する場合に、図形を表示する機能、及び、前記図形に前記値を表示する機能を含むスクリプト拡張機能を記憶させることは、当業者といえども容易に想到することはできない。 以上から、上記相違点1について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明、引用文献2-4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 2.本願発明2について 本願発明2は、本願発明1の構成全てを引用した発明であるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2-4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 3.本願発明3について 本願発明3は、「デバイス記述ファイルは、スクリプト拡張機能を含」み、「前記デバイス記述ファイル内に記憶された前記スクリプト拡張機能は、前記プロセス制御情報が前記スクリプト拡張機能の中の条件と合致する場合に、図形に値を表示する機能、前記プロセス制御情報が前記条件と合致する場合に、データソースに値を書き込む機能、前記プロセス制御情報の一部分に対して少なくとも1つの数学演算を実施する表現、前記プロセス制御情報の前記一部分が前記条件と合致する場合に、前記プロセス制御情報の前記一部分を前記図形に変更することによって前記図形を表示するコンバータ、及び、前記条件が前記プロセス制御情報の前記一部分と合致する場合に、前記図形を表示する機能のグループから選択され、 前記スクリプト拡張機能は、前記プロセス制御情報の一部に対して少なくとも1つの数学演算を実行して値を取得する機能、前記プロセス制御情報の前記一部が前記条件と一致する場合に、図形を表示する機能、及び、前記図形に前記値を表示する機能を含む」ものであるから、本願発明1と同様の理由により、本願発明3は、当業者であっても、引用発明、引用文献2-4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 4.本願発明4-5について 本願発明4-5は、本願発明3の構成全てを引用した発明であるから、本願発明3と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2-4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 5.本願発明6について 本願発明6は、「デバイス記述ファイル内に記憶されたスクリプト拡張機能」を含み、「前記スクリプト拡張機能は、前記プロセス制御情報が前記スクリプト拡張機能の中の条件と合致する場合に、図形に値を表示する機能、前記プロセス制御情報が前記条件と合致する場合に、データソースに値を書き込む機能、前記プロセス制御情報の一部分に対して少なくとも1つの数学演算を実施する表現、前記プロセス制御情報の前記一部分が前記条件と合致する場合に、前記プロセス制御情報の前記一部分を前記図形に変更することによって前記図形を表示するコンバータ、及び、前記条件が前記プロセス制御情報の前記一部分と合致する場合に、前記図形を表示する機能のグループから選択され、 前記スクリプト拡張機能は、前記プロセス制御情報の一部に対して少なくとも1つの数学演算を実行して値を取得する機能、前記プロセス制御情報の前記一部が前記条件と一致する場合に、図形を表示する機能、及び、前記図形に前記値を表示する機能を含む」ものであるから、本願発明1と同様の理由により、本願発明6は、当業者であっても、引用発明、引用文献2-4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 6.本願発明7-8について 本願発明7-8は、本願発明6の構成全てを引用した発明であるから、本願発明6と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2-4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 7.本願発明9について 本願発明9は「デバイス記述ファイル内にスクリプト拡張機能を作成する方法であって、 フィールドデバイスに関連付けられる情報を受信することと、 前記フィールドデバイスからのプロセス制御情報が、いつ図形として表示されるかを識別する、前記情報内の条件を決定することと、 前記フィールドデバイスからの前記プロセス制御情報が前記条件と合致する場合に、前記図形を表示するために、前記条件に基づいて、スクリプト拡張機能を作成することと、 前記スクリプト拡張機能を前記フィールドデバイスに関連付けられるデバイス記述ファイルに記憶することと、 を含み、 前記スクリプト拡張機能は、前記プロセス制御情報の一部に対して少なくとも1つの数学演算を実行して値を取得する機能、前記プロセス制御情報の前記一部が前記スクリプト拡張機能の中の条件と一致する場合に、図形を表示する機能、及び、前記図形に前記値を表示する機能を含む」ものであるから、本願発明1と同様の理由により、本願発明9は、当業者であっても、引用発明、引用文献2-4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 8.本願発明10-12について 本願発明10-12は、本願発明9の構成全てを引用した発明であるから、本願発明9と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2-4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明1-12は、当業者が引用発明、引用文献2-4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2019-05-27 |
出願番号 | 特願2016-75687(P2016-75687) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G05B)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 藤島 孝太郎、大野 明良 |
特許庁審判長 |
刈間 宏信 |
特許庁審判官 |
平岩 正一 青木 良憲 |
発明の名称 | プロセス制御情報を表示する方法及び装置、機械がアクセス可能な媒体、及びデバイス記述ファイル内にスクリプト拡張機能を作成する方法 |
代理人 | 加藤 和詳 |
代理人 | 中島 淳 |