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審決分類 審判 査定不服 特39条先願 補正却下を取り消す 原査定を取り消し、特許すべきものとする  A63F
審判 査定不服 2項進歩性 補正却下を取り消す 原査定を取り消し、特許すべきものとする  A63F
管理番号 1352002
審判番号 不服2018-15321  
総通号数 235 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-11-19 
確定日 2019-06-11 
事件の表示 特願2016-102058号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成29年11月30日出願公開、特開2017-209123号、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年5月23日の出願であって、平成29年12月28日に手続補正書が提出され、平成30年3月9日付けで拒絶の理由が通知され、同年5月16日に意見書及び手続補正書が提出され、同年6月1日付けで最後の拒絶の理由が通知され、同年7月31日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年8月13日付け(送達日:同年8月21日)で、同年7月31日付け手続補正が却下されるとともに拒絶査定がなされ、それに対して、同年11月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 原審における補正の却下の決定の当否について
審判請求人は、審判請求書の請求の趣旨において、「原査定を取り消す、本願は特許をすべきものであるとの審決を求める」としており、請求の理由において、「平成30年8月13日付けの補正の却下の決定は取り消されるべきである」と主張しているので、平成30年8月13日付けの補正の却下の決定の当否について検討する。

[補正の却下の決定の当否の結論]
平成30年8月13日付け補正の却下の決定を取り消す。

[理由]
1 補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲
平成30年7月31日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲は次のとおり補正された(下線部は,補正箇所である。)。

「【請求項1】
画像を表示する画像表示装置と、
少なくとも所定の動作を行う可動部材と、音を出力する音出力装置と、を含む演出装置と、
前記画像表示装置の制御を行う第1制御手段と、
前記第1制御手段から送信される動作指示コマンドにもとづいて、前記演出装置を動作させる第2制御手段と、を備え、
前記第1制御手段は、
画像データと音データとを対応付けて別々に記憶する記憶手段を備え、
前記画像データにもとづいて前記画像表示装置に画像を表示させる制御を行い、
前記画像データに対応付けられた音データが切り替わるときに第2制御手段に動作指示コマンドを送信し、
前記第2制御手段は、
前記第1制御手段から動作指示コマンドを受信したことにより、前記音出力装置に対して音を出力するように制御可能で、
該動作指示コマンドを受信したときに、前記演出装置を動作させられない場合には、受信した動作指示コマンドを無効化し、
同一の動作指示コマンドを連続して受信した場合には、後に受信した動作指示コマンドを無効化する
ことを特徴とする遊技機。

【請求項2】
遊技の進行を制御する遊技制御手段を備え、
第2制御手段は、前記遊技制御手段から送信されるコマンドにもとづいて、第1制御手段にコマンドを送信し、
前記第1制御手段は、前記第2制御手段から送信されるコマンドにもとづいて、演出装置の動作に関する決定を行い、決定結果にもとづいて、前記第2制御手段に動作指示コマンドを送信する
請求項1記載の遊技機。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成30年5月16日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の記載は次のとおりである。

「【請求項1】
画像を表示する画像表示装置と、
少なくとも所定の動作を行う可動部材と、音を出力する音出力装置と、を含む演出装置と、
前記画像表示装置の制御を行う第1制御手段と、
前記第1制御手段から送信される動作指示コマンドにもとづいて、前記演出装置を動作させる第2制御手段と、を備え、
前記第1制御手段は、
画像データと音データとを対応付けて記憶する記憶手段を備え、
前記画像データにもとづいて前記画像表示装置に画像を表示させる制御を行い、
前記画像データに対応付けられた音データが切り替わるときに第2制御手段に動作指示コマンドを送信し、
前記第2制御手段は、
前記第1制御手段から動作指示コマンドを受信したときに、前記演出装置を動作させられない場合には、受信した動作指示コマンドを無効化し、
同一の動作指示コマンドを連続して受信した場合には、後に受信した動作指示コマンドを無効化する
ことを特徴とする遊技機。

【請求項2】
遊技の進行を制御する遊技制御手段を備え、
第2制御手段は、前記遊技制御手段から送信されるコマンドにもとづいて、第1制御手段にコマンドを送信し、
前記第1制御手段は、前記第2制御手段から送信されるコマンドにもとづいて、演出装置の動作に関する決定を行い、決定結果にもとづいて、前記第2制御手段に動作指示コマンドを送信する
請求項1記載の遊技機。」


2 本件補正の適否
本件補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「画像データと音データとを対応付けて記憶する記憶手段」に関して、「別々に」記憶すると限定すると共に、「第2制御手段」に関して、「前記第1制御手段から動作指示コマンドを受信したときに、」とあったものを「前記第1制御手段から動作指示コマンドを受信したことにより、前記音出力装置に対して音を出力するように制御可能で、該動作指示コマンドを受信したときに、」と限定することを含むものである。
そして、本件補正後の請求項1に係る発明は、本件補正前の請求項1に係る発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。
また、本件補正は、願書に最初に添付した明細書の段落【0317】、【0322】、【0323】、【0327】、図面【図39】等の記載からみて、新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
そして、本件補正後の請求項2は請求項1を引用した従属請求項であり、本件補正のうち、「特許請求の範囲の減縮」を目的として請求項1についてされた補正により、請求項2も実質的に「特許請求の範囲の減縮」を目的とした補正がされたものということができる。
そこで、本件補正後の請求項1-2に記載された発明(以下、それぞれ「本件補正発明1」、「本件補正発明2」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。


(1)本件補正発明1
本件補正発明1は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)先願1発明
平成30年8月13日付けの補正の却下の決定の理由で引用された、本願の出願前に出願され、その後設定の登録がされた出願である特願2015-31548号(以下、「先願1」という。)の平成30年6月19日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1には、次の発明が記載されている。

「【請求項1】
演出装置と、
第1制御手段と、
前記第1制御手段から送信される動作指示コマンドにもとづいて、前記演出装置を動作させる第2制御手段とを備え、
前記演出装置として、所定の動作を行う複数の可動部材があり、
前記第2制御手段は、
前記第1制御手段から動作指示コマンドを受信したときに、前記演出装置を動作させられない場合には、受信した動作指示コマンドを無効化し、
複数の可動部材のうちの一の可動部材を初期位置から動作させる動作指示コマンドを受信したときに、他の可動部材が初期位置にあるか否かを確認し、他の可動部材が初期位置にない場合には、受信した動作指示コマンドを無効化し、
同一の動作指示コマンドを所定期間内に連続して受信したときには、後に受信した動作指示コマンドを無効化する
ことを特徴とする遊技機。」(以下、この発明を「先願1発明」という。)

(3)本件補正発明1と先願1発明との対比
本件補正発明1と先願1発明とを対比すると、両者の請求項1の記載における、「可動部材」、「演出装置」、「第1制御手段」、「前記第1制御手段から送信される動作指示コマンドにもとづいて、前記演出装置を動作させる第2制御手段」及び「遊技機」は、文言が一致しており、それぞれの構成は互いに相当していると認められる。
そして、先願1の請求項1の「前記演出装置として、所定の動作を行う複数の可動部材があり、」との記載から、先願1発明の「演出装置」は、少なくとも所定の動作を行う可動部材を含むものであると認められる。
また、本件補正発明1の「該動作指示コマンドを受信したときに、前記演出装置を動作させられない場合には、受信した動作指示コマンドを無効化し、同一の動作指示コマンドを連続して受信した場合には、後に受信した動作指示コマンドを無効化する」における「該動作指示コマンド」が、第1制御手段から受信した動作指示コマンドであることは、請求項1の「前記第1制御手段から動作指示コマンドを受信したことにより、」との記載から明らかで、本件補正発明1における第2制御手段が「該動作指示コマンドを受信したときに、前記演出装置を動作させられない場合には、受信した動作指示コマンドを無効化し、同一の動作指示コマンドを連続して受信した場合には、後に受信した動作指示コマンドを無効化する」という構成は、先願1発明の第2制御手段が「前記第1制御手段から動作指示コマンドを受信したときに、前記演出装置を動作させられない場合には、受信した動作指示コマンドを無効化し、」「同一の動作指示コマンドを所定期間内に連続して受信したときには、後に受信した動作指示コマンドを無効化する」という構成に相当していると認められる。
ここで、同一の動作指示コマンドの受信に関して、本件補正発明1では、「連続して受信した場合には、」と記載されているのに対して、先願1発明では、「所定期間内に連続して受信したときには、」と記載されているが、
「受信した場合」と「受信したとき」とでは実質的に相違なく、「所定期間内に」に関しても、本件補正発明1における、同一の動作指示コマンドの連続した受信が「所定期間内」であることは明らかである。

したがって、本件補正発明1と先願1発明は、

「少なくとも所定の動作を行う可動部材を含む演出装置と、
第1制御手段と、
前記第1制御手段から送信される動作指示コマンドにもとづいて、前記演出装置を動作させる第2制御手段とを備え、
前記第2制御手段は、
前記第1制御手段から動作指示コマンドを受信したときに、前記演出装置を動作させられない場合には、受信した動作指示コマンドを無効化し、
同一の動作指示コマンドを連続して受信した場合には、後に受信した動作指示コマンドを無効化する
遊技機。」

である点で一致し、以下の点で相違する。


<相違点1>
本件補正発明1は、画像を表示する画像表示装置を備えているのに対して、先願1発明では、画像表示装置を備えるかどうかについて限定されていない点。

<相違点2>
本件補正発明1では、演出装置が、音を出力する音出力装置を含んでいるのに対して、先願1発明では、演出装置が、音を出力する音出力装置を含むかどうかについて限定されていない点。

<相違点3>
先願1発明では、第2制御手段は、複数の可動部材のうちの一の可動部材を初期位置から動作させる動作指示コマンドを受信したときに、他の可動部材が初期位置にあるか否かを確認し、他の可動部材が初期位置にない場合には、受信した動作指示コマンドを無効化するのに対して、本件補正発明1では、そのような構成を備えていない点。

<相違点4>
本件補正発明1では、第1制御手段は、画像データと音データとを対応付けて別々に記憶する記憶手段を備えているのに対して、先願1発明では、そのような構成を備えていない点。

<相違点5>
本件補正発明1では、第1制御手段は、画像データにもとづいて画像表示装置に画像を表示させる制御を行い、前記画像データに対応付けられた音データが切り替わるときに第2制御手段に動作指示コマンドを送信するのに対して、先願1発明では、そのような構成を備えていない点。

<相違点6>
本件補正発明1では、第2制御手段は、第1制御手段から動作指示コマンドを受信したことにより、音出力装置に対して音を出力するように制御可能であるのに対して、先願1発明では、そのような構成を備えていない点。

(4)判断
以下、相違点1?6について検討する。

ア 相違点1について
遊技機の技術分野において、画像を表示する画像表示装置は引用文献を挙げるまでもなく周知の技術であり、先願1発明に画像を表示する画像表示装置を備えさせることは周知技術の付加であって、周知技術そのものが奏する効果を超える新たな効果を生じさせるものではなく、この点に関して、本件補正発明1と先願1発明は実質同一であると認められる。

イ 相違点2について
音を出力する音出力装置は、遊技機の技術分野において、引用文献を挙げるまでもなく周知の技術であり、先願1発明に音を出力する音出力装置を備えさせることは周知技術の付加であって、周知技術そのものが奏する効果を超える新たな効果を生じさせるものではなく、この点に関して、本件補正発明1と先願1発明は実質同一であると認められる。

ウ 相違点3について
先願1発明における、第2制御手段は、「複数の可動部材のうちの一の可動部材を初期位置から動作させる動作指示コマンドを受信したときに、他の可動部材が初期位置にあるか否かを確認し、他の可動部材が初期位置にない場合には、受信した動作指示コマンドを無効化」するという構成は、本件補正発明1と先願1発明が共通して備える「第2制御手段は、前記第1制御手段から動作指示コマンドを受信したときに、前記演出装置を動作させられない場合には、受信した動作指示コマンドを無効化」するという構成における「前記演出装置を動作させられない場合」の態様のうちのひとつの態様であって、本件補正発明1は、先願1発明の、この相違点3に係る構成を削除し、「前記演出装置を動作させられない場合には、受信した動作指示コマンドを無効化」するという上位概念で表現したものとなっており、この点に関して、本件補正発明1と先願1発明は実質同一であると認められる。

エ 相違点4?6について

相違点4?6は関連するのでまとめて検討する。

画像データと音データとを対応付けて別々に記憶する記憶手段は、平成30年8月13日付けの補正の却下の決定の理由で引用された文献2(特開2009-34340号公報、段落【0203】等参照)等に示されるように、表示や音声といった演出制御の内容やその切替タイミング等を演出制御パターンテーブルに記憶する技術が周知であることを踏まえれば、先願1発明に、画像データと音データとを対応付けて別々に記憶する記憶手段を備えさせることは、周知技術の付加であって、周知技術そのものが奏する効果を超える新たな効果を生じさせるものではない。

しかしながら、本件補正発明1では、その記憶手段を、画像表示装置に画像を表示する制御を行う第1制御手段に備えており、記憶手段をどこに備えるかという点において、記憶手段を単に備えたという点を超えて相違している。

また、本件補正発明1では、音出力装置に対して音を出力するように制御可能な第2制御手段に、音データが切り替わるときに動作指示コマンドを送信しており、音データが動作指示コマンドを送信するタイミングに関わっているという点において、音データを記憶する記憶手段を備えたという点を超えて相違している。

更に、画像データと音データとを対応づけて記憶することが周知技術であるとしても、本件補正発明1では、画像データにもとづいて画像表示装置に画像を表示させる制御は、第1制御手段が行い、音データに基づく、音を出力する制御は、第2制御手段が行うというように、画像データと音データに基づく、それぞれの制御を別々の制御手段で行っており、画像データ及び音データに関する制御をどの制御手段が担うのかという点においても、画像データと音データとを対応付けて別々に記憶する記憶手段を備えたという点を超えて、本件補正発明1と先願1発明は相違している。

そして、本件補正発明1は、相違点4?6に係る上記構成によって、制御にかかる処理負担を第1制御手段と第2制御手段に分散させることができるという、新たな効果を奏するものであると認められる。

したがって、この相違点4?6において、本件補正発明1は、先願1発明と実質同一であるとはいえない。

よって、本件補正発明1と先願1発明は同一の発明ではない。

(5)本件補正発明2
本件補正後の請求項2は請求項1を引用した従属請求項であり、本件補正発明1と先願1発明が同一の発明でないことから、本件補正発明2と先願1の請求項2に記載された発明は同一の発明ではない。

(6)まとめ
したがって、本件補正後の請求項1-2に記載された発明は、特許法第39条第1項の規定によって、特許出願の際独立して特許を受けることができないものではなく、他に特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由もない。

よって、本件補正後の請求項1-2に記載された発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるから、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項(独立特許要件)に適合する。

3 むすび
以上のとおりであるので、平成30年8月13日付け補正の却下の決定は取り消す。


第3 本願発明について判断
以上のとおり、平成30年8月13日付け補正の却下の決定は取り消されたから、本願の請求項1-2に係る発明は平成30年7月31日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-2に記載された事項により特定されるとおりのものである。

そして、本願の請求項1-2に係る発明については、原査定の拒絶の理由を検討しても、その理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり、審決する。
 
審決日 2019-05-28 
出願番号 特願2016-102058(P2016-102058)
審決分類 P 1 8・ 121- WYA (A63F)
P 1 8・ 4- WYA (A63F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 清水 徹柴田 和雄  
特許庁審判長 石井 哲
特許庁審判官 ▲高▼橋 祐介
奥 直也
発明の名称 遊技機  
代理人 小原 博生  

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