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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E21D
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 E21D
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 E21D
管理番号 1352085
審判番号 不服2017-12514  
総通号数 235 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-08-23 
確定日 2019-06-10 
事件の表示 特願2014-193861「トンネルの構造」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 4月28日出願公開、特開2016- 65381〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年9月24日の出願であって、平成28年2月1日付けで拒絶理由が通知され、これに対して、同年4月27日に意見書及び手続補正書が提出され、さらに同年9月28日付けで拒絶理由が通知され、これに対して、同年12月17日に意見書が提出され、その後、平成29年4月25日付けで拒絶査定がなされ、同査定の謄本は同年5月23日に請求人に発送された。これに対して、同年8月23日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 平成29年8月23日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年8月23日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のように補正された。
「天井板12と天井板13を角θで突き合わせ、前記突き合わせ部分14とトンネル1の天井の間に隔壁15を設ける。前記天井板12、13と隔壁15とトンネル1天井の3つに囲まれた2つの排気ダクトA、Bを形成する事を特徴とするトンネルの構造」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、平成28年4月27日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「2枚の天井板をそれぞれ一端で合わせ込み、他端をトンネルの側壁に所定の角度で押しつける構成であって、前記合わせ込み部からトンネルの天井に排気用の隔壁を取り付けたことによりこれとトンネル天井壁で形成される複数の排気ダクトを形成し得ることを特徴とするトンネルの構造。」

2 補正の適否
(1)新規事項の追加について
本件補正により追加された「天井板12、13と隔壁15とトンネル1天井の3つに囲まれた2つの排気ダクトA、Bを形成する事」について、新規事項の追加か否か検討する。
本願の願書に最初に添付された(以下「当初」という。)明細書には、換気、排気、ダクトについて【背景技術】には「【0002】・・・このように、天井板2でトンネルを2分しているのは、排気を行なうためである。・・・【0003】即ち、吊り金具3に沿って隔壁を設け、その一方を送風ダクト、他方を排気ダクトとして、トンネル内の換気を行なっているものである。」との記載があり、【発明を実施するための形態】には「【0008】・・・結合部14から天井1に換気用の隔壁15が設けられている。・・・【0009】・・・なお、換気用の側壁15は空間を仕切るだけでよいので、強固な構造とする必要はない。」との記載がある。また、これらの記載及び当初図面の図2から、天井板12(又は天井板13)、隔壁15、天井1の3部材で囲まれた2つの部分が換気用のダクトとして用いられることが看て取れる。
ここで、トンネルの換気構造において、本件のように天井板裏部を隔壁で2つの部分に分けて換気用ダクトとして用いる場合には、一方を送風ダクト、他方を排気ダクトとしてトンネル内の換気を行うことが技術常識であり(必要があれば、下記引用文献2?4参照)、当初明細書の【0003】にも当該技術常識に沿った「その一方を送風ダクト、他方を排気ダクトとして、トンネル内の換気」を行うことが記載されている。
そして、当初明細書の【発明を実施するための形態】において、天井板12(又は天井板13)、隔壁15、天井1の3部材で囲まれた2つの部分について、当該技術常識以外の換気の使用態様を示唆する記載はないことから、当初明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)には、天井板12(又は天井板13)、隔壁15、天井1の3部材で囲まれた2つの部分について、他の特別な使用態様、例えば、両方を排気ダクトとして用いるようなことは開示ないし示唆されていないというべきである。
したがって、本件補正後の特許請求の範囲の「天井板12、13と隔壁15とトンネル1天井の3つに囲まれた2つの排気ダクトA、Bを形成する事」は当初明細書等には記載がなく、当初明細書等の記載から自明でもないから、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。
請求人は、審判請求書において「・・・この図2は出願当初の図面である。・・・この図を見ると明らかなように、トンネルの天井部1から天井板12,13の突き合わせ部14に設けた隔壁15でAとBなる2つの排気ダクトが形成されていることが分かる。この図は出願当初から変更していない図であり、明らかにAとBなる複数(2つ)の排気ダクトが示されている。従って手続補正書の請求項1の補正「天井板12と天井板13を角θで突き合わせ、前記突き合わせ部分14とトンネル1の天井の間に隔壁15を設ける。前記天井板12、13と隔壁15とトンネル1天井の3つに囲まれた2つの排気ダクトA、Bを形成する事を特徴とするトンネルの構造」は新規事項を追加するものではない。」(審判請求書[2](1)(b)参照)と主張するが、上述したように「2つの排気ダクトA、Bを形成する事」は当初明細書等には記載がなく、自明な事項ともいえない。
よって、本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

(2)独立特許要件について
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「排気ダクト」について、上記1(1)のとおり「複数の」から「2つの」との限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

ア 本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

イ 引用文献の記載事項
(ア)引用文献1
a 原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願日前に頒布された引用文献である、特開2014-118742号公報(平成26年6月30日出願公開。以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある(下線は審決で付与。以下同様。)。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの上部に天井板を設けて換気洞を形成するトンネルの天井構造において、トンネルの側壁に基端を固定し、上向き傾斜される左右の天井板の先端を連結したことを特徴とするトンネルの天井構造。
【請求項2】
天井板の先端を突き合わせたことを特徴とする請求項1に記載のトンネルの天井構造。」
「【技術分野】【0001】
本発明はトンネル内の自動車排ガスを排気することができる換気洞を形成したトンネルの天井構造に関するものである。」
「【0004】
しかし、天井板は普通コンクリートで製作され、天井板を2枚連結したものを水平に張設している。しかし、天井板に要求される強度上、極めて厚く重量が1トンを超えるものとなる。このため、側壁に基端を固定した天井板の先端連結部をトンネル頂部と吊金具で繋いで荷重を受けるようにしている。ところが、経年変化によりコンクリートが劣化して吊金具のボルトが抜け落ちたり、地下水によりボルトが腐食して強度が低下したりすると、天井板の荷重を支えることができず天井板が落下するという問題がある。また、吊金具の点検作業は、暗く排ガスが充満する換気洞内で行わねばならず、点検が不十分となりやすいという問題がある。」
「【0013】
次に、本発明の第1の実施形態を図1、2に基づいて詳細に説明する。
1はトンネルであり、該トンネル1の上部には左右の天井板2で仕切られた換気洞3が形成されている。4は土台5に形成される排水管、6は路面である。
【0014】
7は天井板2、2の基端をトンネル側壁に固定する取付金具、8は左右の天井板2の先端を連結する連結金具である。なお、第1の実施形態では図2に示すように、天井板2の先端は突き合わせ状態として、連結金具8だけではなく天井板2の先端突き合わせ面を密接させて天井板2の荷重を受けるようにして、連結金具8にかかる荷重を低減しているが、図3に示す第2の実施形態のように、天井板2の先端を突き合わせず間隙2aを有するものとしてもよい。こうすることにより、地震等による振動により天井板2同士がぶつかり合って天井板2に圧縮応力が繰り返し作用して疲労破壊を起こすことを防止できる。
【0015】
このようなトンネル1は、トラス構造状に組み合わされた左右の天井板2を並設してゆくことにより上部を仕切り換気洞3を形成し、該換気洞3を通じて通行する自動車の排ガスは排気され、新鮮な外気を取り込むことができる。
【0016】
また、左右の天井板2は上向き傾斜されて、先端を突き合わせた連結したものとしているので、天井板2の荷重の大半は天井板2の基端とトンネル1の側壁とを固定する取付金具7に加わることとなるので、左右一対の天井板2の中央を支える必要はない。
【0017】
このため、トンネル1の側壁の取付金具7のボルトを重点的に目視や打音検査を行えばよい。しかもこの点検作業は、トンネル1内の低所で、照明された環境下で行うため作業員の負担が少なく、確実に点検を行うことができる。また、比較的荷重のかからない連結金具8の通常の検査は遠望目視検査を行い。一定期間ごと目視または打音検査を行うものとする。」

b 上記記載及び図面から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
(a) 「【0004】・・・暗く排ガスが充満する換気洞内」、「【0015】このようなトンネル1は、トラス構造状に組み合わされた左右の天井板2を並設してゆくことにより上部を仕切り換気洞3を形成し、該換気洞3を通じて通行する自動車の排ガスは排気され、新鮮な外気を取り込むことができる。」の記載から、換気洞3は排気ダクトである。

(b) 図1から、換気洞3は天井板2とトンネル1に囲まれていることが看て取れる。

(c) トンネルの天井構造は、トンネルの構造の一部分であるから、トンネルの構造ということができる。

c 上記a、bから、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「トンネルの上部に天井板2を設けて換気洞3を形成するトンネルの構造において、トンネルの側壁に基端を固定し、上向き傾斜される左右の天井板2の先端は突き合わせ状態として連結し、換気洞3は天井板2とトンネル1に囲まれた排気ダクトである、トンネルの構造」

(イ)引用文献2
同じく、原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願日前に頒布された引用文献である、特開2014-148882号公報(平成26年8月21日出願公開。以下「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
「【0004】
これらのうち、横流換気方式は、トンネル軸方向から見たときに全体が逆T字状断面となるように、トンネル内空間を天井で上下に仕切るとともに天井の上方に拡がる頂部空間をさらに隔壁で左右に仕切って該隔壁の一方の側を送気ダクト、他方の側を排気ダクトとしたものであり、トンネル軸方向に沿って送排気ダクトを設置しなければならない分、コスト高となるものの、交通量が多い場合には、十分かつ安定した換気性能を確保することが可能であるため、特に長大トンネルでは、数多く採用されてきた。」

(ウ)引用文献3
本願の出願日前に頒布された引用文献である、特開2014-132146号公報(平成26年7月17日出願公開。以下「引用文献3」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
a 「【0008】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
送気ダクト側天井板パネル(1)と排気ダクト側天井板パネル(2)は、それぞれの側でトンネル側面壁に設けられた天井板受台(3)と隔壁板下側受台(6)により支持される。送気ダクト側天井板パネル(1)と排気ダクト側天井板パネル(2)の長さを、天井板受台(3)と隔壁板下側受台(6)との水平距離より大きくすることにより、両側の天井板パネルは山型の構造をもち、送気ダクト側天井板パネル(1)と排気ダクト側天井板パネル(2)がお互いに押し合うことで、トンネル天井からのアンカーボルトと釣り金具による重量保持に依存することなく、隔壁板下側受台(6)と天井板受台(3)との位置ずれを防止する程度の固定で、通行部分(9)への落下を防止することができる。」

b 図1から、送気ダクト側天井板1と隔壁板4とトンネル天井により送気ダクト7が、排気ダクト側天井板2と隔壁板4とトンネル天井により排気ダクト8が形成されていることが看て取れる。

(エ)引用文献4
本願の出願日前に頒布された引用文献である、登録実用新案第3183422号公報(平成25年5月16日発行。以下「引用文献4」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
「【0001】
この考案は、自動車等が走行するトンネル内天井構造に関する。」
「【0015】
〔実施形態1〕
図1は、本考案の実施形態1に係るトンネル内天井構造を示す正面図である。図1に示すトンネル内天井構造は、トンネル1内の側壁部2a、2bの上方に天井支持部3a、3b部が設けられ、これら天井支持部3a,3bに天井板4,5のそれぞれの側端4a、5aが載置されるものであり、この天井支持部3a,3bを設ける天井構造は、従来のトンネル内天井構造においても、設けられていたものである。
【0016】
本実施形態1において、最も特徴とするところは、従来、天井板をトンネルの奥行き方向に加えて直角方向の左右方向も水平に形成していたものに代えて、トンネルの奥行き方向に直角の左右の幅がトンネル内の幅のほぼ1/2程度とした2枚の四辺形の天井板4,5を備え、この天井板4、5の中央部側の側端4b,5bを連結具6に挿着し、この天井板4,5の一方の側端4a,5aを天井支持部3a、3bに載置して保持し、この保持状態において連結部6で結合された部分4b、5bが最上方に位置し、その他の部分も、天井支持部3a、3bの水平面よりも上方に来るようにし、天井板4,5及び連結具6からなる天井構造が正面視山形となるように構成したことである。
【0017】
この天井構造の連結具6の頂部とトンネル1の最頂部1aの間に、仕切板7が張られており、仕切板7によって、天井板4,5の上方には、従来と同様に左右で送気路9,排気路10が形成されている。もっとも、この仕切板7には、従来のように、天井板を保持するつり棒を設ける必要はない。」

ウ 対比
本件補正発明と引用発明を対比する。
(ア)引用発明の「天井板」、「トンネル」は、それぞれ本件補正発明の「天井板」、「トンネル」に相当する。

(イ)引用発明の「上向き傾斜される左右の天井板2の先端は突き合わせ状態として連結し」ていることは、本件補正発明の「天井板12と天井板13を角θで突き合わせ」ることに相当する。

(ウ)引用発明において「換気洞3は天井板2とトンネル1に囲まれた排気ダクトである」ことは、本件補正発明の「天井板12、13と隔壁15とトンネル1天井の3つに囲まれた2つの排気ダクトA、Bを形成する事」と「天井板と」「トンネル天井に囲まれた排気ダクトを形成する」点で共通する。

(エ)上記(ア)?(ウ)から、本件補正発明と引用発明は、 以下の点で一致し、相違点で相違する。
<一致点>
「天井板と天井板を角θで突き合わせ、前記天井板とトンネル天井に囲まれた排気ダクトを形成する、トンネルの構造」

<相違点>
本件補正発明が「突き合わせ部分14とトンネル1の天井の間に隔壁15を設け」、「前記天井板12、13と隔壁15とトンネル1天井の3つに囲まれた2つの排気ダクトA、Bを形成する」のに対し、引用発明がそのような特定がなされていない点。

エ 判断
(ア)相違点について
一般的に共通する技術分野に属する公知・周知技術を適用することは、当業者が容易に着想し得ることであるといえるところ、天井板とトンネルの天井の間に隔壁を設けて2つの部分に分けて換気を行うことは、引用文献2?4に記載されているように周知技術にすぎず、引用発明においては、天井板とトンネルの天井の間に排気ダクトを形成しているわけであるから、当該周知事項を適用して、本件補正発明のように隔壁を設けることにより、2つの排気ダクトを形成するようにすることは当業者が容易に想到しうる程度のことにすぎない。
また、引用文献2?4に記載されているように、隔壁により、2つの換気用ダクトを形成した場合には、一方を送風ダクト、他方を排気ダクトとすることが通常であるところ、本件補正発明のように同じ排気目的の排気ダクトを隔壁で分けて2つ形成することの作用効果は、本件明細書には記載されていないし、技術常識から類推できる事項でもない。よって、2つの排気ダクトを形成した点には格別の技術的意義は認められない。
さらに付言すれば、仮に「2つの排気ダクト」が「2つの換気ダクト」の意味で使われていたとしても、上記したとおり、「2つの換気ダクト」を形成することは周知事項であるから、本件補正発明は、引用発明及び上記周知事項から当業者が容易に想到しうる程度のことにすぎない。

(イ)効果について
上記(ア)において説示したように、「2つの排気ダクトA、Bを形成する」ことによる格別の効果は認められず、本件補正発明の作用効果は、引用発明及び上記周知事項の作用効果からみて、当業者が予測し得る程度のものである。

オ 小括
したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(3)本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
また、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成29年8月23日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成28年4月27日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、
(1)平成28年4月27日付け手続補正書でした補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない、
(2)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に頒布された引用文献1に記載された発明及び周知技術(引用文献2)に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、
というものである。

引用文献1:特開2014-118742号公報
引用文献2:特開2014-148882号公報

3 新規事項の追加について
平成28年4月27日付け手続補正書でした補正において特許請求の範囲の請求項1には「合わせ込み部からトンネルの天井に排気用の隔壁を取り付けたことによりこれとトンネル天井壁で形成される複数の排気ダクトを形成し得る」(以下「本件補正前記載事項」という。)との補正がなされている。本件補正前記載事項と本件補正における請求項1の「天井板12、13と隔壁15とトンネル1天井の3つに囲まれた2つの排気ダクトA、Bを形成する」の記載を比較すると、両記載事項は「複数の排気ダクト」と「2つの排気ダクト」の点で相違するが、排気ダクトを2つ形成する点では共通しているから、上記第2の[理由]2(1)と同様の理由から、本件補正前記載事項は当初明細書等には記載がなく、自明な事項ともいえない。なお、「複数の排気ダクト」は3つ以上の排気ダクトも包含するが、「2つの排気ダクト」を形成する場合であっても上記したように当初明細書等には記載がなく、自明な事項ともいえなかったわけであるから、「3つ以上の排気ダクト」を形成することは当初明細書等には記載がなく、自明な事項ともいえないことは明らかである。
したがって、平成28年4月27日付け手続補正書でした補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

4 進歩性について
(1)引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1、2及びその記載事項は、上記第2の[理由]2(2)イに記載したとおりである。また、上記第2の[理由]2(2)イで追加した周知文献である引用文献3、4及びその記載事項も、上記第2の[理由]2(2)イに記載したとおりである。

引用文献3:特開2014-132146号公報
引用文献4:登録実用新案第3183422号公報

(2)対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「排気ダクト」に係る「2つの」との限定事項を削除し「複数の」としたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおり、引用発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、平成28年4月27日付け手続補正書でした補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
また、本願発明は、引用発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-06-21 
結審通知日 2018-06-26 
審決日 2018-07-09 
出願番号 特願2014-193861(P2014-193861)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E21D)
P 1 8・ 561- Z (E21D)
P 1 8・ 55- Z (E21D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 苗村 康造  
特許庁審判長 小野 忠悦
特許庁審判官 大塚 裕一
井上 博之
発明の名称 トンネルの構造  

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