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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1352090
審判番号 不服2018-6183  
総通号数 235 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-05-07 
確定日 2019-06-18 
事件の表示 特願2016-157723「半導体処理チャンバーのための銀リフレクタ」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 1月12日出願公開、特開2017- 11282、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成21年(2009年)2月20日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2008年2月22日 米国,以下「本願優先日」という。)を国際出願日とする特願2010-547781号の一部を平成26年10月10日に新たな出願である特願2014-208871号とし,さらに,その一部を平成28年8月10日に新たな出願としたものであって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年 8月19日 翻訳文提出・手続補正
平成29年 4月21日付け 拒絶理由通知
平成29年 7月25日 意見書・手続補正
平成29年12月27日付け 拒絶査定(以下,「原査定」という。)
平成30年 5月 7日 審判請求・手続補正
平成30年10月24日 上申書
平成31年 1月23日付け 拒絶理由通知(以下,「当審拒絶理由」という。)
平成31年 4月 9日 意見書・手続補正(以下,「当審補正」という。)

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
本願の請求項1-9に係る発明は,本願優先日前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,本願優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特表2004-536457号公報
2.特開2002-198319号公報
3.特開平10-116793号公報
4.特開2005-258050号公報
5.特開2002-261038号公報
6.特表2006-505123号公報
7.米国特許第6232580号明細書
8.特開平10-056008号公報
9.特開2000-019313号公報

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。
本願の請求項1-9に係る発明は,本願優先日前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,本願優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特表2004-536457号公報
4.特開2005-258050号公報
A.特開2004-012892号公報
B.特開2005-015893号公報
7.米国特許第6232580号明細書
8.特開平10-056008号公報
2.特開2002-198319号公報

第4 本願発明
本願の請求項1-8に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明8」という。)は,当審補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-8に記載された事項により特定される次のとおりのものと認められる。
「【請求項1】
半導体処理チャンバー内での使用のためのリフレクタであって,
前記半導体処理チャンバー(12)内に取り付けられた加熱ランプ(36,212)から生じる放射を反射するために,前記処理チャンバー(12)内に配置されたリフレクタ基板(88,601,701)と,
前記リフレクタ基板(88,601,701)上に配置された,銀を含む反射層(602,702)と,
前記反射層(602,702)を前記リフレクタ基板(88,601,701)に接着する接着層と,
前記反射層(602,702)と前記リフレクタ基板(88,601,701)との間の拡散障壁であって,ニッケル,ニッケル-クロム合金,および窒化クロム合金から選択された拡散障壁と
を備え,
前記反射層は,99.99%を越える銀含有量を含み,
前記反射層を被覆する透光性被覆層は形成されていない,リフレクタ。
【請求項2】
前記リフレクタ基板は,その中にランプを受け入れるように適合された,複数の空洞を有する一体型ランプヘッドの一部を備える,請求項1に記載のリフレクタ。
【請求項3】
前記リフレクタ基板は,半導体処理チャンバーのライトパイプ内に配置されるように適合されたスリーブを備える,請求項1または2に記載のリフレクタ。
【請求項4】
前記半導体処理チャンバーは,急速熱処理チャンバーである,請求項1から3のいずれか一項に記載のリフレクタ。
【請求項5】
前記半導体処理チャンバーは,エピタキシャル処理チャンバーである,請求項1から4のいずれか一項に記載のリフレクタ。
【請求項6】
基板の処理中に基板がその上に位置決めされる支持部を有する処理チャンバーと,
放射エネルギーを放射する加熱ランプと,
前記ランプからの放射を反射するように位置決めされた請求項1から5のいずれか一項に記載のリフレクタとを備える,半導体処理装置。
【請求項7】
前記リフレクタ基板は,その中にランプを受け入れるように適合された,複数の空洞を有する一体型ランプヘッドの一部を備える,請求項6に記載の半導体処理装置。
【請求項8】
ランプヘッドと流体が連通するチャネルをさらに備え,前記ランプヘッドは,硫化物形成または硫化物触媒材料の量を最小限にするように制御される雰囲気によって囲まれる,請求項6に記載の半導体処理装置。」

第5 引用文献及び引用発明
1 引用文献1について
(1)引用文献1
当審拒絶理由及び原査定に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付加した。以下同じ。)
ア 「【0002】
(発明の所属する分野)
本発明は半導体製造装置に関し,さらに詳しくは半導体ウエハの高速熱処理システム及び方法に関する。」
「【0037】
図5Aは本発明の原理に基づくRTP反応装置システム500の実施例の簡略図である。この実施例において,反応システム500は処理室502及びリフレクタアセンブリ504を有する。リフレクタアセンブリ504はリフレクタ506及び放射エネルギー源508を含んで良い。リフレクタアセンブリ504はウエハ510に近接して処理室502内部に配置されて良く,動作時にリフレクタアセンブリ504がウエハ510を適切に処理するべく作成され得る。一実施例において,放射エネルギー源508はランプ加熱操作において従来用いられてきたタイプの高輝度ランプであってよい。この実施例において,放射エネルギー源508はキセノンアークランプ(以下“ランプ508”と表記)のようなフィラメントレスランプである。ランプ508はウエハ510の直径に少なくとも等しい長さを有するチューブ形状のランプなどのような好適な形状のランプであっても良い。一実施例において,ランプ508はフローチューブ512によって取り囲まれてもよい。フローチューブ512は脱イオン水のような冷却流体522を含み得る。冷却流体522はランプ508が操作中にオーバーヒートしないように用いられる。例えば冷却流体はランプ508の温度を100℃より低く維持し,ランプ508のあらゆる水晶構成要素が溶けないようにする。別の実施例においては,冷却用流体522が非導電性のダイ(die)と混合されても良い。非導電性のダイは,フローチューブ512を介してランプ508よりのある波長のみを発散させないようにするためのフィルターとして作用し得る。
【0038】
図5Bは別の実施例の簡略図であり,複数のランプ508がリフレクタ506に近接して配置されている。特定の処理に要求される所望の過熱レベルを達成するため,これらランプ508の数は任意である。
【0039】
図5Aを再び参照するとリフレクタアセンブリ504はウエハ510とともに操作可能な配置をとる。リフレクタ506は内部表面514を有し,ある波長に高い反射性を有し,また別のものに対しては反射性を有さず吸収的であり得る。一実施例において,内部表面514は金もしくは銀によってコーティングされても良く,ここで銀は更にSiNまたは透明なコーティングによって保護コーティングされて良く,そのことで銀の酸化を妨げる。コーティングは900nmより短い波長を効果的に反射し,約900nmから200nmの間で平均波長を生成する。別の実施例においては,内部表面は紫外線(UV),赤外線(IR),及び可視光線の全てのスペクトルにわたって高い反射性を有する。
【0040】
リフレクタ506はどのような好適な形状で形成されても良い。例えばリフレクタ506は,平面,円形,楕円形,または放射型の形状であっても良い。ランプ508よりの光エネルギーはリフレクタ506の中心又は焦点で焦点合わせされ,ウエハ510へと配向される。ランプ508より発光され,リフレクタ506の内部表面514より反射された放射はウエハ510に衝当し,光線516,518,及び520で簡潔かつ代表的に図示されているが,それによってウエハのアクティブ層224が加熱される(図2Dで参照された通りである)。」
イ 図5Aには,リフレクタ506が板状であること,が記載されていると認められる。
ウ 「For example, inner surface 514 may be coated with gold or silver, where the silver is further coated with a protection coating, such as SiN or any transparent coating, which prohibits oxidation of the silver.」(30頁11-13行)
(2)引用発明
前記(1)ウは「国際公開パンフレット」(引用文献1の19頁参照)の内容であり,同アの日本語翻訳文の原文である。すると,「内部表面514は金もしくは銀によってコーティングされても良く,ここで銀は更にSiNまたは透明なコーティングによって保護コーティングされて良く,そのことで銀の酸化を妨げる。」(同ア【0039】)は誤訳であり,正訳は「内部表面514は金もしくは銀によってコーティングされても良く,ここで銀は更に,SiNまたは透明なコーティング膜のような,保護コーティング膜でコーティングされ,そのことで銀の酸化を妨げる。」であると認められる。
すると,引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「処理室及びリフレクタアセンブリを有するRTP反応装置システムのリフレクタアセンブリに含まれるリフレクタであって,リフレクタアセンブリの放射エネルギー源は高輝度ランプであり,リフレクタは板状であり,リフレクタは内部表面を有し,ある波長に高い反射性を有し,内部表面は銀によってコーティングされ,ここで銀は更に,保護コーティング膜でコーティングされ,そのことで銀の酸化を妨げること。」
2 引用文献2の記載
当審拒絶理由及び原査定に引用された引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,単結晶基板,ガラス基板などの被処理体を加熱処理する熱処理装置に関する。本発明は,例えば,メモリやICなどの半導体装置の製造に適した急速熱処理(RTP:Rapid Thermal Processing)装置に好適である。ここで,RTPは,急速熱アニーリング(RTA),急速クリーニング(RTC),急速熱化学気相成長(RTCVD),急速熱酸化(RTO),及び急速熱窒化(RTN)などを含む技術である。」
「【0039】以下,図1,図2,図12乃至図14を参照して,本発明の加熱部140を説明する。加熱部140は,ランプ130と,リフレクタ160と,これらを収納するランプハウス142とを含む。ここで,図12は,図1に示す加熱部140のリフレクタ160の部分拡大断面図である。図13は,図12に示すリフレクタ160の変形例としてのリフレクタ160Aの部分拡大断面図である。図14は,加熱部140の指向性を説明するため,被処理体Wの中心を(0,0)として図2に示すX及びY方向に関する距離と,被処理体Wに照射される放射光の照度との関係を3次元的に示す図である。図15は,図14に示すグラフの一部断面図である。」
「【0044】リフレクタ160はランプ130から出射した光を石英ウインドウ120を介して被処理体Wに反射する機能を有する。リフレクタ160はほぼ中空円筒形状を有し,その断面には,図12に示すように,長方形断面の一部切り欠いた傾斜部163が形成されている。なお,図12に示すリフレクタ160は,図1に示す最外周のリフレクタではないことに留意する必要がある。リフレクタ160は,例えば,SUSやアルミニウムからなる基部162と,基部162の上に形成された反射部164とを有する。但し,図1に示す最外周のリフレクタの基部はランプハウス142を利用しているため,基部162がランプハウス142と独立の部材であるかどうかは選択的である。」
「【0046】反射部164は,例えば,金,銀などの高反射率膜から構成され,例えば,各種メッキ法その他の方法により形成される。リフレクタ160が金メッキ膜からなる場合,それは電気メッキ(硬質金メッキや純金金メッキ)により形成されるであろう。反射部164の膜厚は,例えば,約10μmである。なお,リフレクタ160はランプ130の指向性を高めれば足り,高反射率の範囲については限定されない。」
「【0120】アニールであればガス源はN_(2),Arなど,酸化処理であればO_(2),H_(2),H_(2)O,NO_(2),窒化処理であればN_(2),NH_(3)など,成膜処理であればNH_(3),SiH_(2)Cl_(2)やSiH_(4)などを使用するが,処理ガスはこれらに限定されないことはいうまでもない。(後略)」
3 引用文献3の記載
原査定に引用された引用文献3には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,半導体プロセスチャンバに配置されるリフレクタに関する。」
「【0023】
【課題を解決するための手段】本発明は,半導体プロセスチャンバ内に配置されるリフレクタに関し,このリフレクタは,リフレクタ基板と,この基板上に配置されたアルミニウム反射層と,このアルミニウム層の上に配置された反射増強コーティングとを備え,アルミニウム層と反射増強層との間には,機械的な結合が形成される。随意,接着層をアルミニウム層と基板と反射増強層との間に配置してもよい。」
「【0027】図3に示されるように,リフレクタ10はリフレクタ基板20を有しており,このリフレクタ基板20は,例えばアルミニウム製である。この基板の上には,随意,ニッケル層21を配置してもよい。
【0028】ニッケル層21の上には,接着層22を随意配置させてもよいが,接着層は用いない方が好ましい。接着層により,アルミニウム層23のニッケル層21への接着が改善され,アルミニウム層の酸化が抑止される。この接着層は,弗化アルミニウムや弗化マグネシウム等の弗化物,窒化アルミニウムや窒化珪素等の窒化物,あるいは酸化アルミニウムや二酸化チタン等の酸化物から成っていてもよい。
【0029】接着層22の上には,アルミニウム層23が配置されている。アルミニウム層23により,リフレクタ10が高い反射率の面を有するようになる。このアルミニウム層は,純粋なアルミニウム製であってもよく,あるいは,アルミニウム合金製であってもよい。アルミニウム層の厚さは,例えば,700?1000オングストロームであってもよい。
【0030】アルミニウム層23の上には,随意,接着層24が配置されてもよいが,接着層は用いない方が好ましい。接着層により,反射増強コーティング25のアルミニウム層への接着が改善され,アルミニウム層の酸化が抑止される。この接着層は,弗化アルミニウムや弗化マグネシウム等の弗化物,窒化アルミニウムや窒化珪素等の窒化物,あるいは酸化アルミニウムや二酸化チタン等の酸化物から成っていてもよい。
【0031】反射増強コーティング25は,アルミニウム層23の上に配置されてもよく,あるいは,接着層24があればその上でもよい。反射増強コーティング25により,アルミニウム層23の反射率を上げる一方,更にアルミニウム層を酸化から保護する。反射増強コーティングは,屈折率の異なる誘電層を交互に積み重ねた誘電体スタックであってもよい。誘電体スタックは,例えば,二酸化珪素と,二酸化チタン又は五酸化タンタルとを交互に重ねた層で形成されていてもよい。これら誘電層の厚さは,着目する波長(例えば950nm)の1/4であってもよい。
【0032】反射増強コーティング25はアルミニウム層23に対し,この両者の間でアルミニウムの酸化物に対する親和力により形成された機械的結合によって,強力に接着される。その結果,反射増強コーティング25は,RTPチャンバ等の半導体処理チャンバ内に存在し得る厳しい熱サイクルの下であっても,リフレクタ10から剥離することに対して耐性を有する。」
4 引用文献4の記載
当審拒絶理由及び原査定に引用された引用文献4には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は,光学機器に使用される反射鏡に関し,とくに液晶プロジェクタ等の画像投影装置に適用されるS偏光のみを反射光として利用する反射鏡に関する。」
「【0013】
また,基体とAg膜またはAgを主成分とする合金膜との間に接着層を設けることが好ましい。接着層としては,Cr,Pt,Ti,NiCr合金,ステンレス合金など,あるいはZnOを主成分とする複合酸化物,In_(2)O_(3)を主成分とする複合酸化物を用いることができる。」
5 引用文献5の記載
原査定に引用された引用文献5には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【0002】
【発明の属する技術分野】本発明は,単結晶基板,ガラス基板などの被処理体を加熱処理する加熱装置及び熱処理装置に関する。本発明は,例えば,メモリやICなどの半導体装置の製造に適した急速熱処理(RTP:Rapid Thermal Processing)装置に好適である。ここで,RTPは,急速熱アニーリング(RTA),急速クリーニング(RTC),急速熱化学気相成長(RTCVD),急速熱酸化(RTO),及び急速熱窒化(RTN)などを含む技術である。」
「【0039】
(中略)一方,溝143に反射膜が設けられる場合,溝146に設けられる反射膜はコートされたコーティングの材料分子には高温になると下地金属と相互に拡散しあって合金を作る性質がある。これが反射膜の反射率の低下につながるため,リフレクタ141を所定の温度以下に維持する必要がある(例えば,Niメッキが施されている場合,300℃以下が好ましい)。」
6 引用文献6の記載
原査定に引用された引用文献6には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は,急速熱処理用装置の加熱モジュールに関し,特に,ランプなどのための冷却手段が備えられた急速熱処理装置の加熱モジュールに関する。」
「【0013】
加熱炉100は,その下側に複数の反射体110が刻まれており,複数の第1ガス流路120が形成されている。これらのガス流路120は,反射体110の内側と加熱炉100の上部外側が連通する役目をする。各反射体110は,その内側に一対一の方法でランプ200が各々設置されている。この場合,反射体110とランプ200は第1ガス流路120を介して流入する冷却ガスによって冷却されるように構成されている。必要であれば,反射体110は,各々そこに反射板を備えられてもよく,その内側面が反射材料でコーティングされてもよい。」
7 引用文献7の記載
当審拒絶理由及び原査定に引用された引用文献7には,図面とともに次の事項が記載されている。
「1. Field of the Invention
The present invention is directed generally to rapid thermal processing devices and, more particularly, to an apparatus used in the fabrication of solid state devices to uniformly disburse gases and distortion-free radiant energy.」(第1欄20-24行)
(訳:発明の分野
本発明は,一般的に急速加熱処理装置に関し,さらに詳しくは,ガス及び歪みのない放射エネルギーを分配して,半導体デバイスの製造に使用する装置に関する。)
「A housing 62 is in good thermal contact with the light sources 28 and reflectors 60, and fixes their position within lamp openings 61, which are formed in the housing 62. The housing 62 includes a coolant passageway 64 which is adjacent to the reflectors 60 and the light sources 28. The coolant passageway 64 houses a liquid coolant, such as water, which flows through the housing 62, carrying away heat generated by the light sources 28. Satisfactory results are achieved with flow rates between 1 and 3 gallons of water per minute. The water may be cooled, for example, in a heat exchanger 30 (shown in FIG. 1), or it may be a non-recirculating system, wherein cool water constantly enters the system and hot water is discarded.」(第6欄11-23行)
(訳:ハウジング62は,光源28及び反射器60と良好な熱接触状態にあり,ハウジング62に形成された,ランプ開口部61の内部でのそれらの位置を固定する。ハウジング62は,反射器60及び光源28に隣接する冷媒通路64を備えている。冷媒通路64は,水などの液体冷媒を収容しハウジング62の中を流す。光源28によって発生された熱を運び去る。満足な結果は,毎分1から3ガロンの流量で達成される。水は,例えば,熱交換器30(図1に示す)で冷却されてもよいし,非循環システムであってもよく,この場合,冷却水が常に,システムに入り熱水が廃棄される。)
8 引用文献8の記載
当審拒絶理由及び原査定に引用された引用文献8には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,一般に急速加熱装置及び基板を急速に加熱する方法に関し,特に放射エネルギ源からのエネルギを反射させることによって基板の空間(spatial) 加熱の制御可能性を改善した放射エネルギ加熱源に関する。」
「【0013】水のような冷却剤が,入口47を介してチャンバ46に導かれ,出口48で除去される。この流体は,様々な光パイプ41の間の空間を動き,これらを冷却する。バッフル(図示せず)が,チャンバ46を通る適切な流れを確実にするために設けられてもよい。図2を参照すると,各光パイプ41が,窓組立体37に近接する端部164に配置される正反射性リフレクタ159と壁152とを備える。壁152が,光パイプ41の構成部分であっても,光パイプ41内にある上方スリーブ31として形成されてもよい上方部分を備える。上方スリーブ31は,ステンレス鋼から形成されてもよい。正反射性リフレクタ159は,光パイプ41内にあるスリーブとして形成されることができる。代わりに,正反射性リフレクタが,光パイプ41の構成部分であってもよい。正反射性リフレクタ159が,アルミニウムから構成されることができる。リフレクタ159の表面をより反射性にすると,より多くのエネルギが反射されて,チャンバ33内の基板81に達する。従って,正反射性リフレクタ159の面160が,反射性を改善するために研磨される。研磨は,正反射性リフレクタ159をゆっくりと機械加工することによって行われてもよく,又は機械加工後にエメリーバフ又はバフ車を用いることによって行われてもよい。1つの具体例においては,研磨後に,表面160が金めっきされ,表面の酸化を防止するとともに,高いレベルの反射性を維持する。金が正反射性リフレクタに移行しないようにするために,ニッケル拡散バリアが,金めっきする前に,表面160に与えられる。ニッケルバリアが,標準無電解ニッケルめっき技術を用いて施され,その後,高純度の金が,めっきすることにより施される。」
「【0018】代わりに,ランプ囲い162が光パイプ41の端を超えて延びるように,ランプ39が光パイプ41に取りつけられてもよい。このタイプの長いランプの構成は,放射エネルギ組立体38の効率を改良する。図5に示されるように,放射エネルギ組立体38の効率を高めるために,光パイプ41は,フレア正反射性リフレクタスリーブ200を備えてもよい。フレア正反射性リフレクタは,別のスリーブとは異なり,光パイプ41の構成部分として形成されてもよい。フレア正反射性リフレクタスリーブ200は,ランプ囲い162に対向する(並行な)上部円筒領域202と,長さDを有する下部テーパ状領域204とを備える。下部テーパ状領域204が,およそ1?89°の,好適には1?30°となりうるテーパ角度αによって定められる。テーパ領域204は,好適には全体長さの30から50パーセントであるフレア正反射性リフレクタスリーブ200の長さの実質的な部分を構成する。テーパ角度が大きくなると,光パイプ41から逃げるエネルギ量が大きくなり,それによってランプ39の効率が大きくなる。テーパ角αは,均一な照明,所望の空間強度プロフィール又は所望のランプ効率を提供するように経験的に最適にされることができる。」
9 引用文献9の記載
原査定に引用された引用文献9には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は反射率の高い銀を用いた反射体及びそれを用いた曲面状反射体に関する。更に詳しくは,高温環境下においても反射面に白濁を生じない耐熱性に優れた反射体及びそれを用いた曲面状反射体に関する。本発明の反射体および曲面状反射体は,液晶表示装置のバックライトのランプリフレクター,プリンター及びFAX等に用いられる反射鏡,蛍光灯の反射傘,ストロボの反射傘,コンパクトの鏡等に用いられる。これ以外にもほとんどすべての光反射体に用いることができる。
【0002】
【従来の技術】銀は可視光域及び赤外域に高い反射率を持ち,また電気及び熱の伝導率が金属中で最大であることから,可視光線反射材料及び熱線反射材料,電気配線材料として注目されている。一般に,大気中で酸化することはないが,大気中の亜硫酸ガス,硫黄と反応し黒色の硫化銀を生成する。また,オゾンと反応し黒色の酸化銀(AgO)を生成する。
【0003】大気による銀の硫化を防止する方法としては,銀を合金化する方法が知られている。例えば,電気接点用には,3?40wt%のCuを含む銀が,また,Cdを含む銀が,更には10wt%のAuを含む銀が用いられている。また,歯科用には25wt%のPdと10wt%のCuを含む銀が,装飾用には5?20wt%のCuを含む銀が用いられている。また,銀の実用性能に関しては「貴金属の実際知識」山本勇三編著,東洋経済新報社 昭和57年 頁72?153に詳しく述べられている。
【0004】その他の硫化防止方法としては,銀を金属層または金属酸化物層,金属硫化物層,合金層,下塗り樹脂層,保護樹脂層により被覆する方法が知られている。例えばガラス上に銀を成膜した後に,CuとSnからなる合金層を積層し,更に樹脂層を積層することにより銀の腐食を防止し,また,耐スクラッチ性を高める方法が知られている(特開昭49-107547)。また,本発明者らも,銀薄膜層の両面にアルミ,チタン等からなる金属層を用いることにより,銀薄膜層の光,熱,ガス等による腐食を防止する方法を開示している(特開平1-279201)。」
10 引用文献Aの記載
当審拒絶理由に引用された引用文献Aには,図面とともに次の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,高分子フィルム上に設けた光拡散層の上に銀を主体とする反射層を積層した反射体に関するものであり,さらにはこれを用いた液晶表示装置などに適用されるサイドライト型バックライト装置に関する。」
「【0017】
本発明の反射体は,例えば上記のような特殊な表面形状を有する高分子フィルム上に,反射層を形成することにより得られる。反射層は特殊な形状を有する高分子フィルムすなわち光拡散層(B)側から順に,下地層(C),銀反射層(D),ネオジウムを含む銀を主体とする反射層(E),保護層(F)であることが好ましい。
【0018】
下地層(C)には,金,銅,ニッケル,鉄,コバルト,タングステン,モリブデン,タンタル,クロム,インジウム,マンガン,チタン,パラジウムなどの金属単体,もしくは2種以上からなる合金,または,酸化アルミニウムが5重量%以下ドープされた酸化亜鉛,ガリウムが10重量%以下ドープされた酸化亜鉛,インジウムとスズの酸化物(ITO)またはニ酸化珪素等の透明酸化物が好ましく用いられる。
銀反射層(D)には,銀単体或いは銀を主体とした,銅やパラジウムあるいは白金などとの合金が好ましく用いられる。また,これら銀あるいは銀を主体とする合金の純度は100%であることが好ましいが,その性能に害を及ぼさない程度の金,銅,ニッケル,鉄,コバルト,タングステン,モリブデン,タンタル,クロム,インジウム,マンガン,チタン,パラジウム等を不純物として含有してもよい。
保護層(F)には,金,銅,ニッケル,鉄,コバルト,タングステン,モリブデン,タンタル,クロム,インジウム,マンガン,チタン,パラジウムなどの金属単体,もしくは2種以上からなる合金,または,酸化アルミニウムが5重量%以下ドープされた酸化亜鉛,ガリウムが10重量%以下ドープされた酸化亜鉛,インジウムとスズの酸化物(ITO)またはニ酸化珪素等の透明酸化物が好ましく用いられる。
【0019】
金属薄膜層の形成法は,湿式法及び乾式法がある。湿式法とはメッキ法の総称であり,溶液から金属を析出させ膜を形成する方法である。具体例をあげるとすれば銀鏡反応などがある。一方,乾式法とは,真空成膜法の総称であり,具体的に例示するとすれば,抵抗加熱式真空蒸着法,電子ビーム加熱式真空蒸着法,イオンプレーティング法,イオンビームアシスト真空蒸着法,スパッタ法などがある。とりわけ,本発明には連続的に成膜するロール・ツー・ロール方式が可能な真空成膜法が好ましく用いられる。
【0020】
本発明の反射層における各層の厚みは,以下のようにすることが好ましい。
下地層(C)の厚みは1?20nmが好ましく,さらに好ましくは5?10nmである。かかる層の厚みが1nmより薄い場合は,所望のバリヤー効果が得られず,銀反射層(D)に凝集が生じ反射率を低下せしめるため好ましくない。また400nmより厚くしてもその効果に変化はない。(後略)」
11 引用文献Bの記載
当審拒絶理由に引用された引用文献Bには,図面とともに次の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,リフレクター用Ag合金反射膜,及び,このAg合金反射膜を用いたリフレクター,並びに,このAg合金反射膜のAg合金薄膜の形成用のAg合金スパッタリングターゲットに関する技術分野に属するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来からAg膜は反射率に優れていることから各種光学ミラー用途に用いられている。ここでの光学ミラーとは,自動車に搭載されるランプ類のリフレクター,照明機器のリフレクター,液晶パネルのバックライトを示す。さらに,カメラ,ビデオ等の民生機器や各種露光機などデバイス製造装置に用いられる光学機器部品を示している。
【0003】
これらの用途で,自動車用ランプや照明機器は,発光体から放出される熱により100 ?200 ℃程度の温度環境にさらされる為に,高い耐熱性が必要とされる。さらに,高温高湿環境下での耐食性が要求される。一方,液晶用バックライトや光学部品では,高温環境下にはさらされないものの,高い反射率が要求されることから,保護膜を用いないことがより望ましく,一層の耐環境性が要求される。
【0004】
しかしながら,Ag膜は環境に対する耐久性が十分でないため,湿気などによって劣化して長期間使用することが難しかった。そのため,Ag薄膜上にUV硬化樹脂やアクリル系樹脂,セラミックス系の保護膜を形成することでAgの劣化を防止しているが,樹脂系の保護膜はバリア性に劣ること,セラミクス系はピンホールやクラックなどの欠陥部から水分等が侵入することから,十分な耐久性を得ることは困難であった。さらに,Ag膜は加熱により容易に凝集が発生し,反射率が劣化することから,高い温度環境下での使用は困難であった。」
「【0028】
(2) Biを含有するAg合金薄膜は,純Ag膜に近い高反射率を持ちながら,純Ag膜に比較して化学的安定性(特に耐塩水性)に優れる。即ち,AgへのBi添加は,反射率の大幅な低下を招くことなく,純Ag膜に近い高反射率を確保しながら,耐候性(化学的安定性)を向上させる。特に,Biを0.01at%(原子%)以上含有するAg合金薄膜は,その効果が大きい。」
「【0034】
BiはAgへの固溶限が極めて低く,さらに容易に拡散するため,Ag合金薄膜の表面やAg合金薄膜と他層との界面(Ag合金薄膜上に他層がある場合)にBi層を形成し,あるいは更に酸化されてBi層およびBi酸化物層からなる層,あるいは,Bi酸化物層を形成する。このため,Biは0.01原子%程度の微量な添加量(含有量)でも,前述のようなバリア効果を発揮する。Bi量の増大と共に,Bi層やBi酸化物層の厚みが増大し,また,Ag合金薄膜中でのBiの残留量も多くなるために,Bi量が多くなり過ぎると反射率が低下して高反射率が維持できなくなる。かかる点からBiの含有量は0.01?3.0 原子%とすることが望ましい。」

第6 対比及び判断
1 本願発明1について
(1)本願発明1と引用発明との対比
ア 引用発明の「処理室及びリフレクタアセンブリを有するRTP反応装置システムのリフレクタアセンブリに含まれるリフレクタ」は本願発明1の「半導体処理チャンバー内での使用のためのリフレクタ」に相当する。
イ 引用発明において「リフレクタアセンブリの放射エネルギー源は高輝度ランプであり,リフレクタは板状であ」るから,引用発明の「リフレクタ」は,本願発明1の「前記半導体処理チャンバー内に取り付けられた加熱ランプから生じる放射を反射するために,前記処理チャンバー内に配置されたリフレクタ基板」に相当する。
ウ 引用発明において「リフレクタは内部表面を有し,ある波長に高い反射性を有し,内部表面は銀によってコーティングされ」ているから,引用発明の「銀によってコーティングされ」は,本願発明の「前記リフレクタ基板上に配置された,銀を含む反射層」に相当する。
エ そして,本願発明1と引用発明1とは,下記オの点で一致し,下記カの点で相違する。
オ 一致点
「半導体処理チャンバー内での使用のためのリフレクタであって,
前記半導体処理チャンバー内に取り付けられた加熱ランプから生じる放射を反射するために,前記処理チャンバー内に配置されたリフレクタ基板と,
前記リフレクタ基板上に配置された,銀を含む反射層と,
を備える,
リフレクタ。」
カ 相違点
(ア)相違点1
本願発明1では「前記反射層を前記リフレクタ基板に接着する接着層」を備えるのに対し,引用発明では接着層が明示されていない点。
(イ)相違点2
本願発明1では「前記反射層と前記リフレクタ基板との間の拡散障壁であって,ニッケル,ニッケル-クロム合金,および窒化クロム合金から選択された拡散障壁」を備えるのに対し,引用発明では拡散障壁が明示されていない点。
(ウ)相違点3
本願発明1では「前記反射層は,99.99%を越える銀含有量を含み,前記反射層を被覆する透光性被覆層は形成されていない」のに対し,引用発明では「銀は更に,保護コーティング膜でコーティングされ,そのことで銀の酸化を妨げる」ものである点。
(2)判断
相違点3について検討する。
引用発明では「銀の酸化を妨げる」ために銀を「保護コーティング膜でコーティング」することを必要としており,「保護コーディング膜でコーティング」しないことは動機づけがない。
そして,何れの引用文献にも「反射層に99.99%を越える銀含有量」を含ませることで「銀の酸化を防げる」という技術的思想が開示されていないから,引用発明における「銀の酸化を防げる」ための「保護コーティング膜」に代えて「反射層に99.99%を越える銀含有量」を含ませることは,当業者が容易になしうることではない。
(3)まとめ
よって,他の相違点について検討するまでもなく,本願発明1は,引用文献1-9,A及びBに記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
2 本願発明2-8について
本願発明2-8は,本願発明1を引用するものであり,本願発明1の発明特定事項をすべて備え,さらに他の発明特定事項を付加したものに相当するから,前記1と同様の理由により,引用文献1-9,A及びBに記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

第7 原査定についての判断
前記第6のとおり,本願発明1-8は,引用文献1-9に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって,原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-06-06 
出願番号 特願2016-157723(P2016-157723)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 桑原 清  
特許庁審判長 飯田 清司
特許庁審判官 深沢 正志
小田 浩
発明の名称 半導体処理チャンバーのための銀リフレクタ  
代理人 園田・小林特許業務法人  

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