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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1352196
審判番号 不服2018-13095  
総通号数 235 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-10-02 
確定日 2019-06-06 
事件の表示 特願2014-36030号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成27年9月7日出願公開、特開2015-159911号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年2月26日の出願であって、平成29年11月10日付けで拒絶の理由が通知され、平成30年1月12日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年6月5日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、同年10月2日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成30年10月2日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年10月2日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
本件補正は特許請求の範囲の請求項1の記載の補正を含むものであり、本件補正前の平成30年1月12日にされた手続補正の特許請求の範囲の請求項1の記載と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、それぞれ以下のとおりである(下線部は補正箇所を示す。また、A?Kについては発明を分説するため当審で付与した。)。

(本件補正前)
「【請求項1】
A 遊技機を構成する複数の電気部品と、
B 前記電気部品を利用して遊技機にて所定の動作を行わせる所定制御手段と、
C を備えた遊技機において、
D 異常事象の発生を検知する異常検知手段と、
E 前記電気部品に対応させて設けられ、固有のアドレスを有する複数の通信手段と、
を備え、
F 前記所定制御手段は、
F1 前記複数の通信手段のうち通信対象となる通信手段に対応する所定データを設定する設定手段と、
F2 当該設定手段により設定された所定データに基づき、前記複数の通信手段にアドレスデータを送信するアドレス送信手段と、
F3 当該アドレス送信手段により前記アドレスデータが送信された後に、通信対象の通信手段に対応するデータの送信及び通信対象の通信手段からのデータの受信のうち少なくとも一方である送信後処理を実行する送信後手段と、
を備え、
J 前記異常検知手段の検知信号は、プログラムを利用した処理を実行する他の制御手段を介することなく前記所定制御手段に入力される構成であり、
K 前記異常検知手段の検知信号は、前記複数の通信手段と前記所定制御手段との間の通信経路とは別の通信経路であって前記異常検知手段の検知信号以外の信号が送信されない通信経路を通じて前記所定制御手段に入力される
ことを特徴とする遊技機。」

(本件補正後)
「【請求項1】
A 遊技機を構成する複数の電気部品と、
B 前記電気部品を利用して遊技機にて所定の動作を行わせる所定制御手段と、
C を備えた遊技機において、
D 異常事象の発生を検知する異常検知手段と、
E 前記電気部品に対応させて設けられ、固有のアドレスを有する複数の通信手段と、
を備え、
F 前記所定制御手段は、
F1 前記複数の通信手段のうち通信対象となる通信手段に対応する所定データを設定する設定手段と、
F2 当該設定手段により設定された所定データに基づき、前記複数の通信手段にアドレスデータを送信するアドレス送信手段と、
F3 当該アドレス送信手段により前記アドレスデータが送信された後に、通信対象の通信手段に対応するデータの送信及び通信対象の通信手段からのデータの受信のうち少なくとも一方である送信後処理を実行する送信後手段と、
を備え、
G 前記複数の電気部品には、前記異常事象とは異なる所定事象の発生を検知する所定検知手段が含まれており、
H 前記複数の通信手段には、前記所定検知手段に対応させて設けられた所定通信手段が含まれており、
I 前記送信後手段は、前記通信対象の通信手段が前記所定通信手段である場合、前記送信後処理として、前記所定検知手段の検知結果に対応するデータを前記所定通信手段から受信するための処理を実行するものであり、
J 前記異常検知手段の検知信号は、プログラムを利用した処理を実行する他の制御手段を介することなく前記所定制御手段に入力される構成であり、
K 前記異常検知手段の検知信号は、前記複数の通信手段と前記所定制御手段との間の通信経路とは別の通信経路であって前記異常検知手段の検知信号以外の信号が送信されない通信経路を通じて前記所定制御手段に入力される
ことを特徴とする遊技機。」

2 補正の適否
本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「複数の電機部品」について、「G 前記複数の電気部品には、前記異常事象とは異なる所定事象の発生を検知する所定検知手段が含まれて」いることを付加して限定し、補正前の同発明特定事項である「複数の通信手段」について、「H 前記複数の通信手段には、前記所定検知手段に対応させて設けられた所定通信手段が含まれて」いることを付加して限定し、補正前の同発明特定事項である「送信後手段」について、「I 前記送信後手段は、前記通信対象の通信手段が前記所定通信手段である場合、前記送信後処理として、前記所定検知手段の検知結果に対応するデータを前記所定通信手段から受信するための処理を実行するものであ」ることを付加して限定する補正を含むものである。
そして、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
そうすると、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
また、本件補正は、本願の願書に最初に添付した明細書の段落【0300】、【0301】、【0305】及び【0320】?【0327】の記載に基づいており、新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。

そこで、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本願補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、前記1(本件補正後)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2013-128546号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

「【0002】
遊技盤に形成された遊技領域における遊技の進行を制御する遊技制御手段と遊技盤に設けられた液晶ディスプレイのような画像表示装置(変動表示装置)の表示制御を行う表示制御手段とを備えた遊技機が知られている。
この遊技機において、遊技制御装置から画像表示装置の表示制御を行う演出制御装置へ指示を与えることで、画像表示装置上に形成される複数の変動表示領域に識別情報を変動表示させ、演出制御装置が、遊技の状況に合わせて、各種ランプやLED等で構成される装飾装置を作動させるために、装飾制御装置に装飾制御データを出力して、装飾制御装置を制御していた。」

「【0017】
≪実施形態1≫
以下、図1から図11までを参照しつつ、本発明の実施形態1に係る遊技機について説明する。 図1は、実施形態1の遊技機10を正面側から見た斜視図である。
実施形態1の遊技機10は、本体枠(外枠)11及び前面枠(内枠)12を備え、該前面枠12は本体枠11にヒンジ13を介して開閉回動可能に組み付けられている。遊技盤30(図2参照)は前面枠12の表側に形成された収納部(図示省略)に収納されている。また、前面枠12には、遊技盤30の前面を覆うカバーガラス(透明部材)14を備えたガラス枠15が取り付けられている。
【0018】
また、ガラス枠15の上部には、内部にランプ及びモータを内蔵した照明装置(ムービングライト)16や払出異常報知用のランプ(LED)17が設けられている。また、ガラス枠15の左右には内部にランプ等を内蔵し装飾や演出のための発光をする枠装飾装置18や、音響(例えば、効果音)を発するスピーカ(上スピーカ)19aが設けられている。さらに、前面枠12の下部にもスピーカ(下スピーカ)19bが設けられている。
また、前面枠12の下部には、図示しない打球発射装置に遊技球を供給する上皿21、遊技機10の裏面側に設けられている球払出装置から払い出された遊技球が流出する上皿球出口22、上皿21が一杯になった状態で払い出された遊技球を貯留する下皿23及び打球発射装置の操作部24等が設けられている。さらに、上皿21の上縁部には、遊技者からの操作入力を受け付けるための操作スイッチを内蔵した演出ボタン25が設けられている。さらに、前面枠12下部右側には、前面枠12を開放したり施錠したりするための鍵26が設けられている。
【0019】
この実施形態1の遊技機10においては、遊技者が上記操作部24を回動操作することによって、打球発射装置が、上皿21から供給される遊技球を遊技盤30前面の遊技領域32(図2参照)に向かって発射する。また、遊技者が演出ボタン25を操作することによって、表示装置41(図2参照)における変動表示ゲーム(飾り特図変動表示ゲーム)において、遊技者の操作を介入させた演出等を行わせることができる。さらに、上皿21上方のガラス枠15の前面には、遊技者が隣接する球貸機から球貸しを受ける場合に操作する球貸ボタン27、球貸機のカードユニットからプリペイドカードを排出させるために操作する排出ボタン28、プリペイドカードの残高を表示する残高表示部(図示省略)等が設けられている。」

「【0040】
図3は、本実施形態1のパチンコ遊技機10の制御システムのブロック図である。
遊技機10は遊技制御装置100を備える。遊技制御装置100は、遊技を統括的に制御する(主に、始動入賞領域への遊技球の入賞に基づき前記変動表示ゲームの進行制御を行う)主制御装置(主基板)であって、遊技用マイクロコンピュータ(以下、遊技用マイコンと称する)111を有するCPU部110と、入力ポートを有する入力部120と、出力ポートやドライバなどを有する出力部130、CPU部110と入力部120と出力部130との間を接続するデータバス140などからなる。」

「【0053】
また、入力部120には、遊技機10の前面枠12等に設けられた不正検出用の磁気センサスイッチ61及び振動センサスイッチ62からの信号及び上記近接I/F121により変換された始動入賞口36内の始動口1スイッチ36a、普通変動入賞装置37内の始動口2スイッチ37a、ゲートスイッチ34a、一般入賞口スイッチ35a?35n、カウントスイッチ38aからの信号を取り込んでデータバス140を介して遊技用マイコン111に供給する第2入力ポート122が設けられている。第2入力ポート122が保持しているデータは、遊技用マイコン111が第2入力ポート122に割り当てられているアドレスをデコードすることによってイネーブル信号CE1をアサート(有効レベルに変化)することよって、読み出すことができる。後述の他のポートも同様である。」

「【0064】
≪演出制御装置の構成≫
次に、図4を用いて、演出制御装置300の構成について説明する。
演出制御装置300は、遊技制御装置100からの指令情報に基づき装飾表示装置の表示制御を行うもので、遊技用マイコン111と同様にアミューズメントチップ(IC)からなる制御用マイコン(CPU)311と、該CPU311からのコマンドやデータに従って表示装置41への映像表示のための画像処理を行うグラフィックプロセッサとしてのVDP(Video Display Processor)313と、各種のメロディや効果音などをスピーカ19a,19bから再生させるため音の出力を制御する音源LSI314を備えている。
なお、図4において、演出制御装置300を矩形で囲っている部分は、装置全体として一つの筐体に納められており、不正行為(不正を行う遊技者がひそかに店内に持ち込む程度の短絡目的の器具)からその内部が保護されている。
【0065】
上記制御用マイコン(CPU)311には、CPUが実行するプログラムを格納したPROM(プログラマブルリードオンリメモリ)からなる制御ROM321がデータバス340を介して接続される。VDP313にはキャラクタ画像や映像データが記憶された画像ROM323が接続される。音源LSI314には音声データが記憶された音ROM324が接続されている。制御用マイコン(CPU)311は、遊技用マイコン111からのコマンドを解析し、演出内容を決定してVDP313へ出力映像の描画を指示する。また、制御用マイコン(CPU)311は、データバス340及び後述する第3マスタIC353を介して音源LSI314への再生音の指示を与える。さらに、制御用マイコン(CPU)311は、後述する第1マスタIC351、第1マスタIC352(当審注:「第1マスタIC352」は「第2マスタIC352」の誤記と認められる。)を介して、遊技盤30、前面枠12にある装飾制御装置に指示を与え、装飾ランプの点灯、モータの駆動制御、演出時間の管理などの処理を実行する。制御用マイコン(CPU)311の作業領域を提供するRAM331は、データバス340を介して接続されている。なお、作業領域を提供するRAMは制御用マイコン311のチップ内部に設けるようにしてもよい。」

「【0076】
≪演出制御装置と遊技盤との接続≫
図5は、実施形態1における演出制御装置300と遊技盤30との接続を詳しく描いたブロック図である。
・・・
【0077】
上述のコマンドレジスタ555が保持する4つのビットの意味を説明する。STAは、マスタICがスタート条件の出力を指示するためのビットである。STOは、マスタICがストップ条件の出力を指示するためのビットである。SIは、マスタICから演出制御装置に割込みを発生させるときに設定されるビットである。MODEは、データを送信するモードを指定するビットである。
データを送信するモードには、バッファモードとバイトモードとが含まれる。バッファモードは連続する複数バイトのデータを一度にまとめて送信するモードである。最大68バイトのデータの送信が可能である。装飾データ(当審注:「装飾データ」は段落【0002】の「装飾制御データ」と同義と認められる。)のように、送信の途中においてデータの内容が損なわれたとしてもさほど問題が大きくないものについてはバッファモードで送信される。
バイトモードは、1回の送信で1バイト(8ビット)のデータだけが送信可能なモードである。初期化信号などの重要な送信についてはバイトモードが用いられる。
バッファモードもバイトモードも8ビットごとに受信側からACK信号を返すことにおいて共通である。バイトモードでは、ACK信号を受けるたびにCPU311へ割込みをかける。バッファモードでは、ACK信号を受信できているうちはCPU311への割込み信号をその都度送ることはしないで、ACK信号が返ってこない場合のみCPU311への割込み信号を送るようになっている。
・・・
【0079】
スレーブ側について次に説明する。図5で第1マスタIC351の制御下にあるスレーブ機器は、中継基板670、装飾制御装置614である。図5で中継基板(装飾制御装置)670と書いたのは、中継基板が単に信号の通過体として設けられたものであってもよいし、それ自体の中に装飾制御装置の構成を備えたものであってもよいことを意味する。役物駆動モータ駆動回路621とモータ位置検出センサ623とは、第1マスタIC351のスレーブ機器ではない。
【0080】
中継基板670は、第1マスタIC351と他のスレーブとのやり取りを中継する基板である。必要な電源をそれぞれのスレーブに供給するとともに、第1マスタIC351が通信を開始したときに、SDA信号線を介してアドレスとRead/Write要求(マスタが受信するのか、送信するのかの区別)を、SCL信号線を介してクロック信号を、すべての他のスレーブに引渡す役割を果たすのが中継基板670である。それを受けた各スレーブは、送られてきたアドレスと自己のアドレスとが一致する場合に、SDA信号線を介してACK信号を送り、データを送る(又は受ける)準備をする。これによりSDA信号線を独占してマスタICとの間で1対1の信号を始める準備ができる。マスタ側は、SCL信号線を介してクロック信号を送るのを再開するとともに、SDA信号線を介して次のデータのやりとりをする。
I^(2)C通信についての詳細は、図10と図11のタイムチャートを参照しつつ後述するが、おおまかにはマスタとスレーブとの間でこのようなやりとりがなされることで通信が開始される。装飾制御装置614は、図7に示す装飾制御装置514ともほぼ同じ構成である。
【0081】
役物駆動モータ駆動回路621は、CPU311からバス340、出力インタフェース回路371、ドライバ381、中継基板670を介して送られる役物駆動モータのための情報を受け取って、それに基づいて当該モータを駆動するための信号を生成し、その信号を当該モータに供給することにより役物駆動モータを動作させ、それにより演出部材を駆動させて演出を実行する。モータでなくてソレノイドを用いる場合にも同様の処理がなされる。
モータ位置検出センサ623は、必要な電源の供給を受けて、モータの位置を検出するセンサであって、検出した信号を中継基板670、フィルタ383、入力インタフェース回路372、バス340を介してCPU311へ入力する。」

「【0084】
また、CPU311からの照明駆動に関する情報の出力がバス340、出力インタフェース回路371、ドライバ382、中継基板770を介して照明駆動第1モータ駆動回路721及び照明駆動第1モータ駆動回路722に送られ、当該回路ではそれに基づいてモータ駆動信号を生成し、それぞれのモータを駆動する。ここで照明駆動とはムービングライト16を駆動させることをいう。
そして、モータ位置検出センサ723からの検出信号及び演出ボタン25を遊技者が操作して生ずる操作信号は、中継基板770、フィルタ384、入力インタフェース回路372、バス340を介してCPU311へ入力する。ここでは、演出ボタン25の操作信号を入力インタフェース回路372を経由してCPU311へ入力することとして図6を描いてあるが、演出ボタン25のすぐ近くには装飾装置があるので、装飾制御装置、マスタICを介してCPU311へ入力することとしてもよい。その場合の構成について図7を参照しつつ後述する。
【0085】
スピーカ19へは、音源LSI314の出力信号が中継基板770を素通りして入力される。スピーカ19へそのまま入力することが適切でない場合には、中間に設けるべき回路を中継基板770上に設けてもよい。
図6の構成にあっては、前面枠12側に設けられたI^(2)Cのスレーブ機器は装飾制御装置514である。装飾制御装置514は第2マスタIC352の制御下にあるスレーブであり、そのバス(I^(2)Cバス)は、演出制御装置300の外部に露出している。
【0086】
≪演出ボタンと装飾装置を含む装飾制御装置の構成≫
図7は、実施形態1における装飾制御装置の構成を示すブロック図である。I^(2)C I/Oエクスパンダ514は、マスタICのスレーブ機器として機能すべくI^(2)C通信機能を有し、スレーブアドレスを有するICである。I^(2)Cは、そもそもInter Integrated Circuitを意味し、ICとICとの間の通信を目的として開発されたものである。I^(2)C I/Oエクスパンダは、図7における装飾装置18のように、通信機能を有しない装置をI^(2)CのマスタICの制御下に置く目的で、当該装置にI^(2)C通信機能を与える目的で使用される。
図7のブロック図にあっては、I^(2)C I/Oエクスパンダ514と装飾装置18と演出ボタン25を含む全体で装飾制御装置を構成している。」

「【0090】
それに対して、図7の場合は、CPU311の1stメイン処理の演出ボタン入力処理(図13のステップB19)では、第2マスタIC352に演出ボタン25の操作信号の取得を指示する。第2マスタIC352は、それを受けて第2マスタIC352の制御下にあるすべてのスレーブ機器に宛ててI^(2)C通信を開始し、SCL信号線でクロック信号を送ると共に、SDA信号線において図7の装飾制御装置(I^(2)C I/Oエクスパンダ514)が有するアドレスを7ビットで送り、8ビット目にRead要求(マスタが受信側になること)を送る。アドレスが異なるスレーブは何ら応答せずに、図7の装飾制御装置(I^(2)C I/Oエクスパンダ514)のみがこのとき応答し、SDA信号線で9ビット目にACK信号を返す。バスコントローラ515は、演出ボタン25からフィルタ525を介してバスコントローラ515に取得された演出ボタン25の操作信号を、ドライバ519、SDA端子のオープンドレイン、SDA信号線を介して送信する。このとき第2マスタIC352からACK信号を返す形でI^(2)C通信が進む。スタート条件、ストップ条件を生成するなどのI^(2)C通信の主導権は常に第2マスタIC352が有する。
【0091】
第2マスタIC352が、演出ボタン25の操作信号を取得すると、それを入力用バッファ552に書き込む。そして、割込み信号INTをCPU311へ送る。CPU311は、1stメイン処理のうちのメインループ処理を行っているので、割込みが許可された状態にある。CPU311からの割込み信号を受けると、割込み処理をすることにより第2マスタIC352の入力用バッファにある演出ボタン25の操作信号を取得する。そして、再び1stメイン処理のメインループ処理を繰り返し実行することで、当該演出ボタンの操作信号を生かした演出処理(音量変更処理)を行う。」

「【0097】
≪I^(2)C通信についての説明≫
以下、図10と図11とを参照しつつ、I^(2)C通信について説明する。図10は、I^(2)C通信の一般的なタイムチャートである。図10(a)は、スタート条件とストップ条件とを説明するタイムチャートであり、図10(b)は、8ビット(1バイト)のデータを転送する際にACK信号が返される様子を示すタイムチャートである。図11は、I^(2)C通信によってデータを送る様子を示すタイムチャートである。
I^(2)C通信の特徴は、第一に個々のスレーブ機器がアドレスを持っていること、第二にSDA(データ)とSCL(クロック)との二つの信号線(I^(2)Cバス)を用いるシリアル同期通信であること、第三にデータの中に(スレーブの)アドレスが含まれていること、第四に1バイト転送時に受信側からACK信号の返送をすることである。」

「【0103】
≪本願の目的、課題≫
本願の目的は、制御装置の外部から制御装置内に設けられた報知制御手段の動作を阻害するような行為を防止することにある。
このことを、図21を参照しつつ、説明する。図21は、演出制御装置が外部に露出したバス(I^(2)Cバス)を介して演出制御装置の外部に設けられた装飾制御装置を制御する構成を備えた遊技機の従来例を示すブロック図である。従来の遊技機の構成であるがこれまで積極的に公開してきたものではないので、ここで図21を参照しつつ述べる。煩雑を避けるため、本発明に用いる装置、部材、部品、回路等とハードウェア的に見て同じものについては、同一の符号を用いる。
演出制御装置300は、遊技制御装置100の指示に基づいて、いくつかの演出装置を制御するものであって、CPU311及びそのバス340に接続する回路を有している。演出装置には、遊技盤のセンターケース40の後方に配置される表示装置41のほか、遊技盤30に配置される発光手段(LED)、前面枠12に配置される発光手段(LED)、スピーカなどを含む。
【0104】
図21の遊技機の演出制御装置は、外部(遊技盤、前面枠)に設けられた装飾制御装置との間でI^(2)C通信を採用している。当該通信規格にあっては、CPU311のバス340に、マスタIC(第1マスタIC351)という通信に特化した機能を有するICを設けて、遊技盤30、前面枠12の側には、I^(2)C I/Oエクスパンダと呼ばれるICを設けて装飾制御装置を構成し、LED、スピーカ、役物などを制御する。I^(2)C I/OエクスパンダはマスタICのスレーブ機器として機能する。マスタICは、幾つかのスレーブ機器を統合的に制御する機能を有する。図12では、第1マスタIC351は、遊技盤30内の装飾制御装置、前面枠12内の装飾制御装置、音源LSI314の三つをスレーブ機器として統合的に制御している。I^(2)Cでは、クロック信号とデータ信号とをシリアル通信によりやり取りする。図21では、遊技盤30と遊技盤との接続端子391との間に描かれた一番上の双方向矢印、及び前面枠12と前面枠との接続端子392との間に描かれた一番上の双方向矢印がI^(2)Cバスである。演出制御装置300は、一つの筐体で覆われているが、このI^(2)Cバスは、演出制御装置300の外部に露出している。」


また、引用文献1に記載された事項から以下の事項が認定できる。

(認定事項ア)
図5から、遊技盤30において、中継基板(装飾制御装置)670に接続する装飾装置基板611?613及び装飾制御装置614内の装飾装置618が見て取れる。

(認定事項イ)
段落【0103】?【0104】に、従来例として、演出制御装置と、遊技盤、前面枠に設けられた装飾制御装置との間でI^(2)C通信を採用し、当該通信規格にあっては、CPU311のバス340に、マスタICを設けて、遊技盤30、前面枠12の側には、I^(2)C I/Oエクスパンダと呼ばれるICを設けて装飾制御装置を構成し、LED、スピーカ、役物などを制御し、I^(2)C I/OエクスパンダはマスタICのスレーブ機器として機能すると記載されていること、段落【0097】に、I^(2)C通信についての説明として、I^(2)C通信の特徴は第一に個々のスレーブ機器がアドレスを持っていると記載されていること及び段落【0080】に、装飾制御装置614は、図7に示す装飾制御装置514ともほぼ同じ構成であると記載されていることに鑑みれば、段落【0079】における、第1マスタIC351の制御下にあるスレーブ機器である装飾制御装置の構成を備えた中継基板(装飾制御装置)670及び装飾制御装置614が、それぞれ、装飾装置基板611?613及び装飾装置618に対応させてI^(2)C通信機能を有しスレーブアドレスを有するI^(2)C I/Oエクスパンダを備えることは自明である。

上記記載事項及び認定事項を総合すれば、引用文献1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる(a?kについては本願補正発明のA?Kに対応させて付与した。)。

「a、g 装飾装置基板611?613、装飾装置618(認定事項ア)、装飾装置18及び遊技者からの操作入力を受け付けるための操作スイッチを内蔵した演出ボタン25(【0018】)と、
b 遊技の状況に合わせて、各種ランプやLED等で構成される前記装飾装置基板611?613、前記装飾装置618、前記装飾装置18を作動させ(【0002】、認定事項ア、【0018】)、遊技者が前記演出ボタン25を操作することによって表示装置41における変動表示ゲームにおいて遊技者の操作を介入させた演出等を行わせる(【0019】)演出制御装置300(【0002】、【0064】)と、
c を備えた遊技機10(【0017】)において、
d 遊技制御装置100の入力部120(【0040】)に信号が取り込まれる不正検出用の磁気センサスイッチ61及び振動センサスイッチ62(【0053】)と、
e、h 第1マスタIC351の制御下にあるスレーブであり(【0079】)遊技盤30において前記装飾装置基板611?613に対応させて設けられる中継基板(装飾制御装置)670を構成するI^(2)C通信機能を有しスレーブアドレスを有するI^(2)C I/Oエクスパンダ(認定事項ア、イ)、第1マスタIC351の制御下にあるスレーブであり(【0079】)遊技盤30において装飾装置618に対応させて設けられる装飾制御装置614を構成するI^(2)C通信機能を有しスレーブアドレスを有するI^(2)C I/Oエクスパンダ(認定事項ア、イ)、第2マスタIC352の制御下にあるスレーブであり前面枠12において装飾装置18及び演出ボタン25に対応させて設けられる装飾制御装置514を構成するI^(2)C通信機能を有しスレーブアドレスを有するI^(2)C I/Oエクスパンダ(【0085】、【0086】)と、
を備え、
f 前記演出制御装置300は、
f1 前記第1マスタIC351、前記第2マスタIC352を介して、遊技盤30、前面枠12にある装飾制御装置に装飾制御データを出力して、装飾ランプの点灯、モータの駆動制御、演出時間の管理などの処理を実行するCPU311(【0002】、【0065】)と、
f2、f3、i 通信を開始したときにアドレスを中継基板(装飾制御装置)670に送信し、それらを中継基板(装飾制御装置)670を介してすべての他のスレーブに送信した後、次のデータのやりとりをする前記第1マスタIC351(【0079】、【0080】)と、制御下にあるすべてのスレーブ機器に宛ててI^(2)C通信を開始し、装飾制御装置514(I^(2)C I/Oエクスパンダ)が有するアドレスを送信した後、演出ボタン25の操作信号を受信する前記第2マスタIC352(【0090】、【0091】)と、
を備え、
j 役物駆動モータ駆動回路621とモータ位置検出センサ623とは、第1マスタIC351のスレーブ機器ではなく(【0079】)、役物駆動モータ駆動回路621は、CPU311からバス340、出力インタフェース回路371、ドライバ381、中継基板670を介して送られる役物駆動モータのための情報を受け取り、モータ位置検出センサ623は、検出した信号を中継基板670、フィルタ383、入力インタフェース回路372、バス340を介してCPU311へ入力し(【0081】)、また、照明駆動第1モータ駆動回路721及び照明駆動第1モータ駆動回路722には、CPU311からの照明駆動に関する情報の出力がバス340、出力インタフェース回路371、ドライバ382、中継基板770を介して送られ、モータ位置検出センサ723からの検出信号は、中継基板770、フィルタ384、入力インタフェース回路372、バス340を介してCPU311へ入力し(【0084】)、
k 装飾制御データは、送信の途中においてデータの内容が損なわれたとしてもさほど問題が大きくないものである(【0077】)
遊技機10。」

(3)対比・判断
ア 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。なお、見出し(a)?(i)は、本願補正発明のA?Iに対応させている。

(a)引用発明において、構成aの「装飾装置基板611?613」、「装飾装置618」、「装飾装置18」及び「遊技者からの操作入力を受け付けるための操作スイッチを内蔵した演出ボタン25」は、それぞれ、構成cの「遊技機10」を構成する電気部品といえる。
したがって、引用発明の「a、g 装飾装置基板611?613、装飾装置618、装飾装置18及び遊技者からの操作入力を受け付けるための操作スイッチを内蔵した演出ボタン25」は、本願補正発明の「A 遊技機を構成する複数の電気部品」に相当する。

(b)引用発明の「b 遊技の状況に合わせて、各種ランプやLED等で構成される前記装飾装置基板611?613、前記装飾装置618、前記装飾装置18を作動させ、遊技者が前記演出ボタン25を操作することによって表示装置41における変動表示ゲームにおいて遊技者の操作を介入させた演出等を行わせる演出制御装置300」は、本願補正発明の「B 前記電気部品を利用して遊技機にて所定の動作を行わせる所定制御手段」に相当する。

(c)引用発明の構成cの「遊技機10」は、本願補正発明の構成Cの「遊技機」に相当する。

(d)引用発明の構成dの「不正検出用の磁気センサスイッチ61及び振動センサスイッチ62」は、磁気や振動による異常事象の発生を検知するものといえるから、本願補正発明の「D 異常事象の発生を検知する異常検知手段」に相当する。

(e)引用発明の「e 第1マスタIC351の制御下にあるスレーブであり遊技盤30において前記装飾装置基板611?613に対応させて設けられる中継基板(装飾制御装置)670を構成するI^(2)C通信機能を有しスレーブアドレスを有するI^(2)C I/Oエクスパンダ」、「第1マスタIC351の制御下にあるスレーブであり遊技盤30において装飾装置618に対応させて設けられる装飾制御装置614を構成するI^(2)C通信機能を有しスレーブアドレスを有するI^(2)C I/Oエクスパンダ」並びに「第2マスタIC352の制御下にあるスレーブであり前面枠12において装飾装置18及び演出ボタン25に対応させて設けられる装飾制御装置514を構成するI^(2)C通信機能を有しスレーブアドレスを有するI^(2)C I/Oエクスパンダ」は、それぞれ、「装飾装置基板611?613」、「装飾装置618」並びに「装飾装置18及び演出ボタン25」に対応させて設けられる通信手段といえる。
また、引用発明の構成e、hの各「スレーブアドレス」が固有のアドレスであることは、引用文献1の段落【0088】のスレーブアドレスの設定に係る記載からも明らかな技術常識である。
したがって、引用発明の「e 第1マスタIC351の制御下にあるスレーブであり遊技盤30において前記装飾装置基板611?613に対応させて設けられる中継基板(装飾制御装置)670を構成するI^(2)C通信機能を有しスレーブアドレスを有するI^(2)C I/Oエクスパンダ、第1マスタIC351の制御下にあるスレーブであり遊技盤30において装飾装置618に対応させて設けられる装飾制御装置614を構成するI^(2)C通信機能を有しスレーブアドレスを有するI^(2)C I/Oエクスパンダ並びに第2マスタIC352の制御下にあるスレーブであり前面枠12において装飾装置18及び演出ボタン25に対応させて設けられる装飾制御装置514を構成するI^(2)C通信機能を有しスレーブアドレスを有するI^(2)C I/Oエクスパンダ」は、本願補正発明の「E 前記電気部品に対応させて設けられ、固有のアドレスを有する複数の通信手段」に相当する。

(f1)引用発明において、構成f1の「CPU311」が「前記第1マスタIC351、前記第2マスタIC352を介して、遊技盤30、前面枠12にある装飾制御装置に装飾制御データを出力して、装飾ランプの点灯、モータの駆動制御、演出時間の管理などの処理を実行する」ためには、その「装飾制御データを出力」する前に、構成aの「装飾装置基板611?613」、「装飾装置618」、「装飾装置18」及び「演出ボタン25」のうちいずれを制御するかによって、「e 第1マスタIC351の制御下にあるスレーブであり遊技盤30において前記装飾装置基板611?613に対応させて設けられる中継基板(装飾制御装置)670を構成する通信機能を有しスレーブアドレスを有するI^(2)C I/Oエクスパンダ、前記第1マスタIC351の制御下にあるスレーブであり遊技盤30において装飾装置618に対応させて設けられる装飾制御装置614を構成するI^(2)C通信機能を有しスレーブアドレスを有するI^(2)C I/Oエクスパンダ、並びに、第2マスタIC352の制御下にあるスレーブであり前面枠12において装飾装置18及び演出ボタン25に対応させて設けられる装飾制御装置514を構成するI^(2)C通信機能を有しスレーブアドレスを有するI^(2)C I/Oエクスパンダ」に対応する、スレーブアドレスや装飾制御データを設定する必要があることは明らかである。
したがって、引用発明の「f 前記演出制御装置300」が「備え」る「f1 前記第1マスタIC351、前記第2マスタIC352を介して、遊技盤30、前面枠12にある装飾制御装置に装飾制御データを出力して、装飾ランプの点灯、モータの駆動制御、演出時間の管理などの処理を実行するCPU311」は、本願補正発明の「F 前記所定制御手段」が「備え」る「F1 前記複数の通信手段のうち通信対象となる通信手段に対応する所定データを設定する設定手段」に相当する。

(f2)引用発明の構成f2の「アドレス」を「送信する」ことは、上記(f1)で検討した、CPU311により設定されたスレーブアドレスに基づくことは明らかである。
したがって、引用発明の「f 前記演出制御装置300」が「備え」る構成f2、f3、iの「通信を開始したときにアドレスを中継基板(装飾制御装置)670に送信し、それらを中継基板670を介してすべての他のスレーブに送信」「する前記第1マスタIC351と、制御下にあるすべてのスレーブ機器に宛ててI^(2)C通信を開始し、装飾制御装置514(I^(2)C I/Oエクスパンダ)が有するアドレスを送信」「する前記第2マスタIC352」は、本願補正発明の「F 前記所定制御手段」が「備え」る「F2 当該設定手段により設定された所定データに基づき、前記複数の通信手段にアドレスデータを送信するアドレス送信手段」に相当する。

(f3)引用発明の「f 前記演出制御装置300」が「備え」る構成f2、f3、iの「アドレスを」「送信した後、次のデータのやりとりをする前記第1マスタIC351」と、「アドレスを送信した後、演出ボタン25の操作信号を受信する前記第2マスタIC352」は、本願補正発明の「F 前記所定制御手段」が「備え」る「F3 当該アドレス送信手段により前記アドレスデータが送信された後に、通信対象の通信手段に対応するデータの送信及び通信対象の通信手段からのデータの受信のうち少なくとも一方である送信後処理を実行する送信後手段」に相当する。

(g)引用発明の構成a、gの「遊技者からの操作入力を受け付けるための操作スイッチを内蔵した演出ボタン25」は、「d 不正検出用の磁気センサスイッチ61及び振動センサスイッチ62」が検知する磁気や振動による異常事象とは異なる遊技者からの操作の発生を検知するものといえるから、本願補正発明の構成Gの「前記異常事象とは異なる所定事象の発生を検知する所定検知手段」に相当する。

(h)引用発明の構成e、hに、「演出ボタン25に対応させて設けられI^(2)C通信機能を有しスレーブアドレスを有する装飾制御装置514のI^(2)C I/Oエクスパンダ」が含まれていることは、本願補正発明の「H 前記複数の通信手段には、前記所定検知手段に対応させて設けられた所定通信手段が含まれて」いることに相当する。

(i)引用発明の構成f3、iの「前記第2マスタIC352」が「アドレスを送信した後、演出ボタン25の操作信号を受信する」ことは、本願補正発明の「I 前記送信後手段は、前記通信対象の通信手段が前記所定通信手段である場合、前記送信後処理として、前記所定検知手段の検知結果に対応するデータを前記所定通信手段から受信するための処理を実行する」ことに相当する。

してみると、本願補正発明と引用発明とは、
「A 遊技機を構成する複数の電気部品と、
B 前記電気部品を利用して遊技機にて所定の動作を行わせる所定制御手段と、
C を備えた遊技機において、
D 異常事象の発生を検知する異常検知手段と、
E 前記電気部品に対応させて設けられ、固有のアドレスを有する複数の通信手段と、
を備え、
F 前記所定制御手段は、
F1 前記複数の通信手段のうち通信対象となる通信手段に対応する所定データを設定する設定手段と、
F2 当該設定手段により設定された所定データに基づき、前記複数の通信手段にアドレスデータを送信するアドレス送信手段と、
F3 当該アドレス送信手段により前記アドレスデータが送信された後に、通信対象の通信手段に対応するデータの送信及び通信対象の通信手段からのデータの受信のうち少なくとも一方である送信後処理を実行する送信後手段と、
を備え、
G 前記複数の電気部品には、前記異常事象とは異なる所定事象の発生を検知する所定検知手段が含まれており、
H 前記複数の通信手段には、前記所定検知手段に対応させて設けられた所定通信手段が含まれており、
I 前記送信後手段は、前記通信対象の通信手段が前記所定通信手段である場合、前記送信後処理として、前記所定検知手段の検知結果に対応するデータを前記所定通信手段から受信するための処理を実行するものである
遊技機。」
である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点)
本願補正発明では「J 前記異常検知手段の検知信号は、プログラムを利用した処理を実行する他の制御手段を介することなく前記所定制御手段に入力される構成であり、K 前記異常検知手段の検知信号は、前記複数の通信手段と前記所定制御手段との間の通信経路とは別の通信経路であって前記異常検知手段の検知信号以外の信号が送信されない通信経路を通じて前記所定制御手段に入力される」のに対し、引用発明ではそのようなものではない点。

イ 判断
(相違点について)
引用発明の構成dにおいて、「不正検出用の磁気センサスイッチ61及び振動センサスイッチ62」の「信号」は「遊技制御装置100」に「取り込まれる」ものであるが、遊技機においてそれらを演出制御装置に取り込むことは、例えば、

(ア)原査定時に周知技術として引用された本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2008-253669号公報(以下「引用文献2」という。下線は当審で付した。)
「【0001】
本発明は、たとえば、パチンコ遊技機やコイン遊技機等で代表される遊技機に関する。」
「【0081】
また、第1特別可変入賞球装置66内には、磁気を検出するための磁気センサが搭載されている。磁気センサは、リードスイッチにより構成されている。第1磁気センサ195aは、その下方の開口部82付近に磁石などが近づけられたことを検出可能な位置に設けられている。第1磁気センサ195aにより、たとえば磁石などを用いて開口部82から遊技球を入賞させようとするなどの不正行為が行なわれると、異常磁気の存在を検出し検出信号を出力する。
【0082】
また、第2磁気センサ195bは、第1特定進入口89付近に磁石などが近づけられたことを検出可能な位置に設けられている。第2磁気センサ195bにより、たとえば磁石などを用いて第1特定進入口89に遊技球を進入させようとするなどの不正行為が行なわれると、異常磁気の存在を検出し検出信号を出力する。
【0083】
また、第3磁気センサ195cは、第2領域88付近に磁石などが近づけられたことを検出可能な位置に設けられている。第3磁気センサ195cにより、たとえば磁石などを用いて第2領域88に設けられている第2特定進入口91に遊技球を進入させようとするなどの不正行為が行なわれると、異常磁気の存在を検出し検出信号を出力する。」
「【0127】
演出制御基板90には、振動センサ119、第1磁気センサ195a、第2磁気センサ195b、および第3磁気センサ195cからの検出信号が入力される。振動センサ119は、振動を検出すると演出制御基板90に検出信号を入力する。第1磁気センサ195a、第2磁気センサ195b、および第3磁気センサ195cは、磁気を検出すると演出制御基板90に検出信号を入力する。」

(イ)原査定時に周知技術として引用された本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2008-188156号公報(以下「引用文献3」という。下線は当審で付した。)
「【0034】
本実施例のパチンコ機は、上記不正行為を検知するために、遊技盤面の磁気変化を検知するための四つの磁気センサ20a?20dと、パチンコ機の振動を検知するための一つの振動センサ21を備えている。図4,5に示すように、二つの磁気センサ20a,20bは、センター役物5の上部の、大入賞口10の近傍位置に配設されており、残りの二つの磁気センサ20c,20dは、始動入賞口部材6の、始動入賞口9a?9c近傍位置に配設されている。各磁気センサ20a?20dは、後述する演出制御基板31に接続されており、大入賞口10や始動入賞口9a?9cに磁石を近づけるなどの行為が行われ、磁気センサ20a?20dが所定閾値以上の磁気を検知した場合には、磁気センサ20a?20dから演出制御基板31に検知信号が送信されるようになっている。一方、振動センサ21は、図2に示すように、集合樋部材18の背面下部に配設されている。この振動センサ21は、後述する演出制御基板31に接続されており、パチンコ機を叩くなどの行為が行われ、振動センサ21が所定閾値以上の振動を検知した場合には、振動センサ21から演出制御基板31に検知信号が送信されるようになっている。」

に記載されているように周知技術である。
そして、引用発明において、遊技制御装置100における処理の負荷を軽減するために、上記周知技術を採用して、引用発明の構成dの「不正検出用の磁気センサスイッチ61及び振動センサスイッチ62」の「信号」の「取り込」みを「遊技制御装置100」に代えて「演出制御装置300」とすることに格別の困難性はなく、その際に、構成f1の「装飾制御データ」のようにマスタICの制御下に置くか、構成jの「役物駆動モータ駆動回路621」、「モータ位置検出センサ623」、「照明駆動第1モータ駆動回路721」、「照明駆動第1モータ駆動回路722」及び「モータ位置検出センサ723」のように、マスタICを介さずにCPU311に接続するかは、I^(2)C通信による信号線の削減のメリットと複数のスレーブによる通信能力低下のデメリットを勘案して当業者が適宜選択し得る設計的事項に過ぎず、引用発明の構成kの「送信の途中においてデータの内容が損なわれたとしてもさほど問題が大きくない」「装飾制御データ」に対して、データ内容の重要度が高い「不正検出用の磁気センサスイッチ61及び振動センサスイッチ62」の「信号」を、マスタICに接続される他のスレーブ機器の影響により通信能力が低下して遅延や脱漏が生じることのないように、直接CPU311に接続して相違点に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、
・引用文献1には、遊技を管理する遊技制御装置100と、演出の実行を制御するためにI^(2)C通信を行う演出制御装置300とを備えた構成において、磁気センサスイッチ61及び振動センサスイッチ62の検知信号が遊技制御装置100に入力される構成は記載されているものの、「所定検知手段からの検知信号については、アドレスにより識別される通信手段を介して所定制御手段に入力されるようにする一方、異常検知手段からの検知信号については、複数の通信手段と所定制御手段との間の通信経路とは別の通信経路であって異常検知手段の検知信号以外の信号が送信されない通信経路を通じて所定制御手段にて入力されるようにする」という相違点に係る構成は記載も示唆もされていない、
・また、引用文献1には、プログラムを利用した処理を実行する他の制御手段を介することなく所定制御手段に対して検知信号を出力する異常検知手段を備えた構成において、通信経路の数を抑える構成を当該異常検知手段に対してもそのまま適用してしまうと、所定制御手段における異常事象の発生の特定が遅れてしまうおそれがあるという、更なる課題も記載も示唆もされていない、
・また、引用文献2には振動センサ119、第1磁気センサ195a、第2磁気センサ195b及び第3磁気センサ195cからの検出信号が演出制御基板90に入力される構成が記載されており、引用文献3には磁気センサ20a?20d及び振動センサ21が演出制御基板31に接続されている構成が記載されているが、引用文献2において演出制御基板90が「アドレスにより識別される通信手段を介してデータの出力又は入力」を行う構成となっているか否かは不明であり、引用文献3において演出制御基板31が「アドレスにより識別される通信手段を介してデータの出力又は入力」を行う構成となっているか否かは不明であって、つまり、引用文献2及び3には、「所定検知手段からの検知信号については、アドレスにより識別される通信手段を介して所定制御手段に入力されるようにする一方、異常検知手段からの検知信号については、複数の通信手段と所定制御手段との間の通信経路とは別の通信経路であって異常検知手段の検知信号以外の信号が送信されない通信経路を通じて所定制御手段にて入力されるようにする」という上記相違点に係る構成は記載も示唆もされておらず、したがって、上記相違点に係る構成が周知技術であるとする客観的な根拠は存在していないと言わざるを得ず、また、引用文献2及び3には上記更なる課題も記載も示唆もされておらず、したがって、上記更なる課題が周知の課題であるとする客観的な根拠も存在していない、
・そうすると、引用文献1に接した当業者が何等かの動機付けによって引用文献1に記載された発明に対して、引用文献2及び3にて例示されるような周知技術を適用したとしても、I^(2)C通信の対象として磁気センサや振動センサを含めるようにする程度の構成が当業者にって導出可能な構成であり、「所定検知手段からの検知信号については、アドレスにより識別される通信手段を介して所定制御手段に入力されるようにする一方、異常検知手段からの検知信号については、複数の通信手段と所定制御手段との間の通信経路とは別の通信経路であって異常検知手段の検知信号以外の信号が送信されない通信経路を通じて所定制御手段にて入力されるようにする」という上記相違点に係る構成を導出することは不可能である
旨主張する。

しかしながら、上記(3)イで検討したとおり、引用発明において、遊技制御装置100における処理の負荷を軽減するために、周知技術を採用して、引用発明の構成dの「不正検出用の磁気センサスイッチ61及び振動センサスイッチ62」の「信号」の「取り込」みを「遊技制御装置100」に代えて「演出制御装置300」とすることに格別の困難性はなく、その際に、構成f1の「装飾制御データ」のようにマスタICの制御下に置くか、構成jの「役物駆動モータ駆動回路621」、「モータ位置検出センサ623」、「照明駆動第1モータ駆動回路721」、「照明駆動第1モータ駆動回路722」及び「モータ位置検出センサ723」のように、マスタICを介さずにCPU311に接続するかは、I^(2)C通信による信号線の削減のメリットと複数のスレーブによる通信能力低下のデメリットを勘案して当業者が適宜選択し得る設計的事項に過ぎず、引用発明の構成kの「送信の途中においてデータの内容が損なわれたとしてもさほど問題が大きくない」「装飾制御データ」に対して、データ内容の重要度が高い「不正検出用の磁気センサスイッチ61及び振動センサスイッチ62」の「信号」を、マスタICに接続される他のスレーブ機器の影響により通信能力が低下して遅延や脱漏が生じることのないように、直接CPU311に接続して相違点に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。

したがって、請求人の主張は採用することができない。

(5)本件補正についてのむすび
以上より、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成30年1月12日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1の(本件補正前)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶理由
原査定の請求項1に係る発明の拒絶の理由は、

(新規性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、

(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用例に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、

特開2013-128546号公報(引用文献1)

というものである。

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項は、前記第2[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本願補正発明から、「複数の電機部品」に係る限定事項G、「複数の通信手段」にかかる限定事項H、「送信後手段」に係る限定事項Iを削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに限定事項を付加したものに相当する本願補正発明が前記第2[理由]2(3)に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-04-01 
結審通知日 2019-04-02 
審決日 2019-04-15 
出願番号 特願2014-36030(P2014-36030)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 三田村 陽平  
特許庁審判長 安久 司郎
特許庁審判官 赤穂 州一郎
藤田 年彦
発明の名称 遊技機  
代理人 安藤 悟  

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