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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C12N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C12N
管理番号 1352235
審判番号 不服2017-6699  
総通号数 235 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-05-10 
確定日 2019-06-05 
事件の表示 特願2013-557138「無カプシドAAVベクター、組成物ならびにベクター製造および遺伝子運搬のための方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 9月20日国際公開、WO2012/123430、平成26年 6月19日国内公表、特表2014-513928〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年(平成24年)3月12日(パリ条約による優先権主張 2011年3月11日 米国、2011年3月12日 欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成29年5月10日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、平成30年5月24日付けで当審より拒絶理由が通知され、これに対して同年11月28日に意見書および同日付の手続補正書が提出された。

第2 本願発明
本願の請求項1?13に係る発明は、平成30年11月28日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?13に記載の事項により特定される発明であり、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、請求項1に記載される以下のとおりのものと認める。
「【請求項1】
ポリペプチドの発現の低減もしくは停止による又はポリペプチドの非機能的もしくは機能不良類似体の発現による症状を現す遺伝的欠損に関わる疾患の治療を必要とする患者における、疾患の治療のための医薬の製造における、第1アデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向反復(ITR)、関心のあるヌクレオチド配列および第2 AAV ITRからなる単離されたカプシド不含線状核酸分子の使用であって、該カプシド不含線状核酸分子は、第1アデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向反復(ITR)、関心のあるヌクレオチド配列および第2 AAV ITRをこの順序で含み、
外因性DNAをコードする関心のあるヌクレオチド配列が、欠損をスキップ、矯正、サイレンシング又は遮蔽することで疾患または障害に付随する症状の改善をもたらすオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを含む、単離されたカプシド不含線状核酸分子の使用。」

第3 拒絶の理由
平成30年5月24日付けで当審が通知した拒絶理由は、以下の理由を含むものである。
本願発明は、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献6に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができず、また、本願発明は、優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献6に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない

引用文献6:特表2008-503590号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献6の記載
引用文献6には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。)。

(1)「【請求項51】
蛋白質不在下で引き起こされる神経疾患を治療する方法であって、当該方法は、
患者の脳に供給する血管内に配置された遠位エンドを有する神経血管カテーテルを用意し;そして
生物学上活性な因子をコードするDNAを含む人工アデノ随伴ウイウス(AAV)ベクター;及び
血液-脳バリヤーを通して少なくともDNAをデリバリーするための成分を含む組成物をカテーテルにデリバリーすること
を含む方法。」(【特許請求の範囲】)

(2)「【請求項86】
人工アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを作成するための方法であって、
5-プライムから3-プライム方向に向かって、5-プライムAAVインバーテッドターミナルリピート(AAV-ITR)、生物学上活性な因子をコードするDNA、及び3-プライムAAV-ITRをDNAプラスミド中にDNAクローニング方法により集合させ;
インビトロ転写方法を用いてDNAプラスミドから単鎖DNAの単鎖RNA転写物を生成させ;
逆転写反応方法を用いて逆転写によりRNA転写物から単鎖DNAを生成させ;
RNase酵素を用いたRNAの消化により反応産物からRNA転写物を取り出すこと
を含む方法。」(【特許請求の範囲】)

(3)「簡単に言えば、本発明において開示されて使用された組成物は、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター(単鎖また二重鎖ベクター;好ましくは単鎖ベクター)であって、生物学上活性な因子をコードするDNA;及び血液-脳バリヤーを通して少なくともDNAをデリバリーする成分(例えば、本明細書にて記載された受容体-特異的リポソーム)を含む。いくつかの態様において、人工AAVベクターは、5プライムから3プライム方向に、5プライムAAVインバーテッドターミナルリピート(AAV-ITR);生物学上活性な因子をコードするDNA;及び3プライムAAV-ITRを含む。別の態様において、人工AAVベクターは、5プライムから3プライム方向に、5プライムAAV-ITR;内部AAV-ITR;生物学上活性な因子をコードする単鎖DNAの逆相補鎖;及び3プライムAAV-ITRを含む。また別の態様において、人工AAVベクターは、各鎖の5プライム及び3プライムエンドにAAV-ITRを有する直鎖状二重鎖DNAを含む。好ましくは、人工AAVベクターは、キャプシッドをコードするためのコーディング配列を含まず、即ち、好ましいベクターはウイルスキャプシッド構造内に封入されない。」(【0049】)

(4)「蛋白質の不在下で誘導される神経性疾患
代謝の先天的エラーとして知られる稀な遺伝的障害は、からだが食物をエネルギーに変換する(即ち、食物を代謝する)ことが不可能になる。当該障害は、通常、食物の成分を分解する生化学経路に関与する酵素の欠陥により引き起こされる。さらに、リソソーム蓄積症(LSD)は、リソソームの酵素の何れかの機能発現の欠陥により特徴付けされる遺伝的疾患を意味する。
そのような疾患は、遺伝子治療により治療されるかもしれない。特に、欠陥のある遺伝子又は失われた遺伝子は当業者には知られている方法により同定されるかもしれず、のちに、置換遺伝子を用意して失われた部位へ供給されるかもしれない。
欠陥のある酵素をコードする例示のポリヌクレオチド、及び欠陥酵素に付随する疾患を表2に掲載する。

表2に掲載された欠陥酵素をコードするポリヌクレオチドは、本発明の人工AAVベクターに含まれ得るポリヌクレオチドの例である。しかしながら、表2に掲載されたポリヌクレオチドに限定されることを意図しないものであり、当業者は、蛋白質の不在により誘導される追加の疾患を同定し、そして欠陥酵素をコードする追加のポリヌクレオチドを同定することができる。」(【0078】?【0091】)

2 引用発明
上記1(1)【請求項51】の「人工アデノ随伴ウイウス(AAV)ベクター」は「人工アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター」の誤記と認められる。また、上記1(1)には、蛋白質不在下で引き起こされる神経疾患を治療する方法に使用される、生物学上活性な因子をコードするDNAを含む人工アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを含む組成物が記載されており、換言すれば、蛋白質不在下で引き起こされる神経疾患を治療する方法に使用される組成物の製造において、生物学上活性な因子をコードするDNAを含む人工アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを使用することが記載されているといえる。
また、上記1(4)より、蛋白質不在下で引き起こされる神経疾患である遺伝的障害において欠陥のある酵素をコードするポリヌクレオチドが人工AAVベクターに含まれ得ることが理解され、当該ポリヌクレオチドは、上記1(2)、(3)における「生物学上活性な因子をコードするDNA」に相当するものと認められる。

そうすると、上記1(1)?(4)より、引用文献6には以下の発明が記載されているといえる(以下「引用発明」という。)。
「蛋白質不在下で引き起こされる神経疾患である遺伝的障害を治療する方法に使用される組成物の製造における、生物学上活性な因子をコードするDNAを含む人工アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターの使用であって、
前記人工アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターは、
5プライムから3プライム方向に、5プライムAAVインバーテッドターミナルリピート(AAV-ITR);生物学上活性な因子をコードするDNA;及び3プライムAAV-ITRを含み、
5-プライムから3-プライム方向に向かって、5-プライムAAVインバーテッドターミナルリピート(AAV-ITR)、生物学上活性な因子をコードするDNA、及び3-プライムAAV-ITRをDNAプラスミド中にDNAクローニング方法により集合させ;
インビトロ転写方法を用いてDNAプラスミドから単鎖DNAの単鎖RNA転写物を生成させ;
逆転写反応方法を用いて逆転写によりRNA転写物から単鎖DNAを生成させ;
RNase酵素を用いたRNAの消化により反応産物からRNA転写物を取り出すことによって得られ、
キャプシッドをコードするためのコーディング配列を含まず、ウイルスキャプシッド構造内に封入されない、
前記生物学上活性な因子をコードするDNAは、前記遺伝的障害において欠陥のある酵素をコードするポリヌクレオチドである、使用。」

第5 対比・判断
本願発明と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。
引用発明の「蛋白質不在下で引き起こされる神経疾患である遺伝的障害」は、本願発明の「ポリペプチドの発現の低減もしくは停止による…症状を現す遺伝的欠損に関わる疾患」に相当し、引用発明の「…を治療する方法に使用される組成物の製造」は、本願発明の「…の治療を必要とする患者における、疾患の治療のための医薬の製造」に相当する。
また、引用発明の「人工アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター」に関して、以下のとおりである。
・「キャプシッドをコードするためのコーディング配列を含まず、ウイルス キャプシッド構造内に封入されない」ものであり、これは本願発明の「カ プシド不含」に相当する。
・「5プライムから3プライム方向に、5プライムAAVインバーテッドタ ーミナルリピート(AAV-ITR);生物学上活性な因子をコードする DNA;及び3プライムAAV-ITRを含」むものであり、これは本願 発明の「第1アデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向反復(ITR)、関心 のあるヌクレオチド配列および第2 AAV ITRをこの順序で含み」 に相当する。
・上記に加えて、DNAプラスミドからインビトロ転写方法及び逆転写反応 方法を経て単鎖DNAの形で得られたものであるから、本願発明の「第1 アデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向反復(ITR)、関心のあるヌクレ オチド配列および第2 AAV ITRからなる単離されたカプシド不含 線状核酸分子」に相当する。
また、引用発明の「前記生物学上活性な因子をコードするDNA」は、本願発明の「外因性DNAをコードする関心のあるヌクレオチド」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明とは、
「ポリペプチドの発現の低減もしくは停止による症状を現す遺伝的欠損に関わる疾患の治療を必要とする患者における、疾患の治療のための医薬の製造における、第1アデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向反復(ITR)、関心のあるヌクレオチド配列および第2 AAV ITRからなる単離されたカプシド不含線状核酸分子の使用であって、該カプシド不含線状核酸分子は、第1アデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向反復(ITR)、関心のあるヌクレオチド配列および第2 AAV ITRをこの順序で含み、
外因性DNAをコードする関心のあるヌクレオチドを含む、単離されたカプシド不含線状核酸分子の使用。」の点で一致し、以下の点で一応相違する。

(相違点)本願発明は、外因性DNAをコードする関心のあるヌクレオチド配列が、欠損をスキップ、矯正、サイレンシング又は遮蔽することで疾患または障害に付随する症状の改善をもたらすオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを含むのに対して、引用発明は、遺伝的障害において欠陥のある酵素をコードするポリヌクレオチドである点。

上記相違点について検討する。
本願明細書【0002】には、「遺伝子治療は、疾患の発生の根底にある欠損遺伝子を矯正することを目的とする。この問題に対処する一般的アプローチは核への正常遺伝子の運搬を含む。ついで、この遺伝子は標的化細胞のゲノム内に挿入されることが可能であり、あるいはエピソームのままでありうる。」(下線は強調のために当審で付加した。)と記載されている。したがって、本願発明における「矯正」とは、正常遺伝子の核への運搬を含むものと認められる。
一方、引用発明において「遺伝的障害において欠陥のある酵素をコードするポリヌクレオチド」である「生物学上活性な因子をコードするDNA」を含むAAVベクターは、「遺伝的障害の治療」に用いられるものである。
ここで、上記1(4)の「蛋白質の不在下で誘導される神経性疾患
代謝の先天的エラーとして知られる稀な遺伝的障害は、からだが食物をエネルギーに変換する(即ち、食物を代謝する)ことが不可能になる。当該障害は、通常、食物の成分を分解する生化学経路に関与する酵素の欠陥により引き起こされる。さらに、リソソーム蓄積症(LSD)は、リソソームの酵素の何れかの機能発現の欠陥により特徴付けされる遺伝的疾患を意味する。」の記載からみて、上記「欠陥のある酵素をコードするポリヌクレオチド」の記載は、患者の有する欠陥のある酵素に対応する生物学上活性な欠陥のない酵素をコードする、正常型のポリヌクレオチドを意味すると認められる。
そして、引用発明の「遺伝的障害の治療」するとは、AAVベクターが患者の細胞の核内に送達することで欠陥のない酵素を発現させ、欠陥のある酵素を補うことで治療すること、すなわち、酵素の欠陥を「矯正」することであると認められるから、引用発明の「遺伝的障害において欠陥のある酵素をコードするポリヌクレオチド」である「生物学上活性な因子をコードするDNA」は、本願発明にいう「(疾患に関わる遺伝的)欠損を…矯正…することで疾患または障害に付随する症状の改善をもたらすオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド」に該当すると認められる。
そうすると、上記相違点は実質的な相違点とはいえない。
また、仮に、本願発明における「矯正」が、正常遺伝子が標的化細胞の核へ運搬されるだけでなく、ゲノム内に挿入されることを意味するとしても、引用文献6には「欠陥のある遺伝子又は失われた遺伝子は当業者には知られている方法により同定されるかもしれず、のちに、置換遺伝子を用意して失われた部位へ供給されるかもしれない。」(上記1(4)参照。下線は強調のために当審で付加した。)と記載されていることをも考慮すれば、引用発明のポリヌクレオチドを、ジンクフィンガーヌクレアーゼ等による本願優先日時に周知の遺伝子置換法に使用することは当業者が容易に想到し得たことといえる。
したがって、仮に上記の相違点があったとしても、本願発明は引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 請求人の主張について
請求人は、平成30年11月28日付けの意見書において、「引用文献6は、実施例7においてAAV ITRに隣接した発現カセットが、pAAV-antiBACE1-GFPプラスミドから線状断片として単離されたものであることを開示するとして引用されたものである。よって、5’-ITRの上流及び3’-ITRの下流には、追加のヌクレオチドが存在しているものと考えられる。よって、上述のとおり、新請求項1を「第1アデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向反復(ITR)、関心のあるヌクレオチド配列および第2 AAV ITRからなる単離されたカプシドを含まない線状核酸分子」の使用に関するものとし、線状核酸分子を構成する要素を「第1アデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向反復(ITR)」、「関心のあるヌクレオチド配列」および「第2 AAV ITR」に限定したため、引用文献6に対する新請求項1の新規性は明らかとなったものと思料する。」と主張する。
しかしながら、上記のとおり、引用文献6には、DNAプラスミドからインビトロ転写方法及び逆転写反応方法を経て単鎖DNAの形で得られた人工アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターが記載されている。そして、かかる方法で得られた人工アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターは、引用文献6の実施例7に記載された方法、すなわち、プラスミドから制限酵素を用いて線状断片として単離する方法で得られるものと異なり、5’-ITRの上流及び3’-ITRの下流に追加のヌクレオチドを有さないものと認められる。
したがって、引用文献6は「第1アデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向反復(ITR)、関心のあるヌクレオチド配列および第2 AAV ITRからなる」線状核酸分子の使用を開示するといえるから、上記主張は採用できない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献6に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
また、本願発明は、引用文献6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-12-21 
結審通知日 2019-01-08 
審決日 2019-01-21 
出願番号 特願2013-557138(P2013-557138)
審決分類 P 1 8・ 113- WZ (C12N)
P 1 8・ 121- WZ (C12N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 福間 信子  
特許庁審判長 中島 庸子
特許庁審判官 松浦 安紀子
高堀 栄二
発明の名称 無カプシドAAVベクター、組成物ならびにベクター製造および遺伝子運搬のための方法  
代理人 特許業務法人川口國際特許事務所  
代理人 特許業務法人川口國際特許事務所  
代理人 特許業務法人川口國際特許事務所  
代理人 特許業務法人川口國際特許事務所  
代理人 特許業務法人川口國際特許事務所  
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