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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1352267
審判番号 不服2018-9173  
総通号数 235 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-07-03 
確定日 2019-06-25 
事件の表示 特願2014-186000「制御システム、および中継装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年12月 3日出願公開、特開2015-215863、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成26年9月12日(優先権主張平成26年4月25日(以下,「優先日」という。))の出願であって,平成29年9月29日付けで拒絶理由通知がされ,平成29年11月27日付けで手続補正がされ,平成30年4月27日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,平成30年7月3日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成30年4月27日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-3,5-7,10,12に係る発明は,以下の引用文献1-2に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2013- 12094号公報
2.特開2009-181308号公報(周知技術を示す文献)

第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は,特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
審判請求時の補正によって請求項1,12に追加された「互いに直接」という事項は,本願明細書の段落0022,段落0031,及び図1等に記載されているから,新規事項を追加するものではない。また,「互いに直接」という事項を追加する補正は,補正前の請求項1の発明特定事項である「前記第1の中継装置と前記第2の中継装置を接続するケーブル」を「前記第1の中継装置と前記第2の中継装置を互いに直接接続するケーブル」に限定し,また,補正前の請求項12の発明特定事項である「前記中継装置と前記他の中継装置を接続するケーブル」を「前記中継装置と前記他の中継装置を互いに直接接続するケーブル」に限定するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして,「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように,補正後の請求項1-12に係る発明は,独立特許要件を満たすものである。

第4 本願発明
本願請求項1-12に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明12」という。)は,平成30年7月3日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-12に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
第1および第2のネットワークに接続された1または複数の機器から監視データを収集し,該監視データに基づいて制御を行う制御システムにおいて,
一方は稼働系となって前記制御を行い,他方は待機系となる第1および第2の制御装置と,
前記第1の制御装置と前記第1のネットワークに接続された第1の中継装置と,
前記第2の制御装置と前記第2のネットワークに接続された第2の中継装置と,
前記第1の中継装置と前記第2の中継装置の通信を,前記第1の中継装置と前記第2の中継装置を互いに直接接続するケーブルによって仲介する中継装置間通信手段と,
を有し,
前記第1および第2の中継装置の各々は,前記1または複数の機器から受信した監視データを接続先の制御装置へ転送するとともに,当該監視データを等値化するための通信を前記中継装置間通信手段を介して行い,
前記第1の制御装置と前記第2の制御装置のうち稼働系となっている方は,接続先の中継装置から受信した監視データを用いて前記制御を行う
ことを特徴とする制御システム。
【請求項2】
前記第1および第2の中継装置のうちの一方は,
監視データを等値化する処理として,接続先のネットワークから受信した監視データを前記中継装置間通信手段を介して待機系の中継装置へ転送する処理を実行し,
前記第1および第2の中継装置のうちの他方は,監視データを等値化する処理として,接続先のネットワークから受信した監視データを当該監視データに対応するものとして前記中継装置間通信手段経由で受信した監視データで置き換える処理を実行する
ことを特徴とする請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記第1の制御装置と前記第2の制御装置の通信を仲介する制御装置間通信手段を備え,
前記第1および第2の制御装置は,
前記制御装置間通信手段を介した通信が可能であるか否かを判定し,可能であれば,自装置における故障の有無を示す状態データを前記制御装置間通信手段を介して送受信することにより他方の故障の有無を監視し,不可能であれば,前記中継装置間通信手段を介して前記状態データを送受信することにより他方の故障の有無を監視する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の制御システム。
【請求項4】
前記第1および第2の中継装置は,複数の機器の各々から送信された監視データを受信し,
前記複数の機器の各々について,当該機器から送信された監視データの等値化を中継装置側で行うのかそれとも制御装置側で行うのかが予め定められており,
前記第1および第2の中継装置の各々は,中継装置側で等値化を行うと定められている機器から受信した監視データについては前記中継装置間通信手段を介した通信により等値化を行い,
前記第1および第2の制御装置の各々は,接続先の中継装置を介して受信した監視データのうち制御装置側で等値化を行うと定められている機器から送信された監視データを前記制御装置間通信手段を介した通信により等値化を行う
ことを特徴とする請求項3に記載の制御システム。
【請求項5】
前記第1および第2の中継装置は,
前記中継装置間通信手段を介した通信の可否を判定する判定手段を備え,
前記第1および第2の中継装置は,
前記判定手段により可能と判定された場合に前記中継装置間通信手段を介した通信により監視データの等値化を行い,前記判定手段により不可能と判定された場合には前記制御装置間通信手段を介した通信により監視データの等値化を行う
ことを特徴とする請求項3に記載の制御システム。
【請求項6】
前記第1および第2の中継装置の各々は,
接続先のネットワークから受信した監視データを前記中継装置間通信手段経由で他方の中継装置へ転送する第1の処理手段と,
前記中継装置間通信手段経由で他方の中継装置から受信した監視データの送信元の機器との通信が可能であるか否かを判定し,通信不能と判定された機器から受信するはずであった監視データを前記中継装置間通信手段経由で受信した監視データで補完する第2の処理手段と,
を有することを特徴とする請求項1に記載の制御システム。
【請求項7】
前記第2の処理手段は,
通信不能であると判定した機器を示す識別情報を記憶装置に記憶させ,当該記憶装置に識別情報が記憶されてくる機器については前記中継装置間通信手段経由で受信した監視データによる補完または置き換えを行う一方,自装置の電源断またはリセットを契機として前記記憶装置の記憶内容を初期化する
ことを特徴とする請求項6に記載の制御システム。
【請求項8】
前記第1および第2の中継装置は,
接続先の制御装置にかかっている処理負荷を計測する負荷計測手段を備え,
前記第1および第2の中継装置の各々は,
前記負荷計測手段により計測された処理負荷が所定に閾値を上回っていれば前記中継装置間通信手段を介した通信により監視データの等値化を行い,前記閾値未満であれば前記制御装置間通信手段を介した通信により監視データの等値化を行う
ことを特徴とする請求項3に記載の制御システム。
【請求項9】
前記第1および第2の中継装置は,接続先の制御装置にかかっている処理負荷を計測する負荷計測手段を備えるとともに,
前記第1および第2の制御装置の処理負荷が高いほど中継装置側で等値化を行う監視データが多くなるように,監視データの等値化を中継装置側で行うのかそれとも制御装置側で行うのかの振り分けパターンが前記処理負荷に応じて複数通り定められており,
前記第1および第2の中継装置の各々は,前記負荷計測手段により計測された処理負荷に応じた振り分けパターンにおいて中継装置側で等値化を行うと定められている監視データのみを前記中継装置間通信手段を介した通信により等値化し,
前記第1および第2の制御装置の各々は,自装置の処理負荷に応じた振り分けパターンにおいて制御装置側で等値化を行うと定められている監視データを前記制御装置間通信手段を介した通信により等値化する
ことを特徴とする請求項8に記載の制御システム。
【請求項10】
前記第1および第2の中継装置の何れか一方には,第3のネットワークが接続されており,
前記第3のネットワークに接続された中継装置は,前記第3のネットワークに接続されている機器から監視データを収集し,収集した監視データを自装置に接続されている制御装置に転送するとともに,前記中継装置間通信手段を介して他方の中継装置に転送する
ことを特徴とする請求項1に記載の制御システム。
【請求項11】
前記中継装置間通信手段を介して通信する前記第1の中継装置および前記第2の中継装置よりなる中継装置対を複数有することを特徴とする請求項1に記載の制御システム。
【請求項12】
一方が稼働系となって制御を行い他方が待機系となる第1および第2の制御装置の一方に接続されるとともに,監視データを送信する1または複数の機器が接続された第1のネットワークに接続され,前記1または複数の機器から送信される監視データを接続先の制御装置へ転送する中継装置において,
前記1または複数の機器が接続された第2のネットワークと前記第1および第2の制御装置のうちの他方とに接続される他の中継装置との通信を,前記中継装置と前記他の中継装置を互いに直接接続するケーブルによって仲介する中継装置間通信手段に接続される通信インタフェース部と,
前記第1のネットワークを介して前記1または複数の機器から受信した監視データを接続先の制御装置へ転送するとともに,当該監視データを等値化するための通信を前記中継装置間通信手段を介して行う制御部と,
を有することを特徴とする中継装置。」

第5 引用文献,引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は,当審で付したものである。以下,同様。)

A 「【0011】
実施の形態1.
実施の形態1は,二重化されたA系,B系制御装置,A系,B系プロセスIO装置,A系,B系IOネットワークとIO切替部から構成され,制御系として運用している装置に故障が発生した場合および設備点検時には待機系の装置に切り替える二重化制御装置に関するものである。
以下,本願発明の実施の形態1の構成,動作について,二重化制御装置のシステム構成図である図1に基づいて説明する。
【0012】
まず,本願発明の実施の形態1に係る二重化制御装置1を含むプラント監視制御システムについて図1に基づいて説明する。
図1において,プラント監視制御システムは,二重化制御装置1を中心として,運転員がプラント全体の監視,制御を行うための表示装置や操作パネル等を備えた監視装置2,監視装置2と二重化制御装置1と間で授受される監視,制御信号の経路となる制御バス3,および各種ポンプ,モータ,バルブや各種プロセスセンサを有する設備4から構成される。
なお,図中において,入出力信号,故障情報などの主要なデータの流れを矢印付き太線で示している。
【0013】
次に,二重化制御装置1の構成について説明する。
まず,二重化制御装置1は,大きく二重化されたA系制御装置11,B系制御装置12と,A系プロセスIO装置13,B系プロセスIO装置14と,A系IOネットワーク15,B系IOネットワーク16と,さらにIO切替部18から構成される。
なお,A系制御装置11とB系制御装置12の間には,後で説明するA系,B系間のデータ等値化などの信号の授受を行うための系間接続ケーブル17が設けられている。
【0014】
次に,A系制御装置11,B系制御装置12の内部の構成について説明する。
A系制御装置11は,制御バス3との通信処理を行うバス通信I/F部101,監視および制御信号の処理を行う監視制御処理部102,A系IOネットワーク15経由でA系プロセスIO装置13と入出力信号の授受を行う入出力I/F部103,他系であるB系IOネットワーク16経由でB系プロセスIO装置14と入出力信号の授受を行う他系入出力I/F部104,A系制御装置11,B系制御装置12間のデータ同一化を行う等値化部105,制御系で発生した故障情報を取得して制御系/待機系の切替条件の判断を行い制御系/待機系の切替を行う系切替部106,および監視制御データの格納を行う監視制御データ部107から構成される。
B系制御装置12は,A系制御装置11と同じ構成で,バス通信I/F部121,監視制御処理部122,入出力I/F部123,他系入出力I/F部124,等値化部125,系切替部126,および監視制御データ部127から構成される。
(途中省略)
【0018】
次に,二重化制御装置1の動作について説明する。
以下の動作の説明では,A系が制御系,B系が待機系とする。
制御系であるA系制御装置11は,設備4からの入力信号をA系プロセスIO装置13,A系IOネットワーク15経由で入出力I/F部103にて受け,監視制御処理部102にて演算を行う。監視制御処理部102は,演算結果を監視制御データ部107に格納するとともに,設備4の制御のための出力信号を入出力I/F部103からA系IOネットワーク15,A系プロセスIO装置13経由で設備4へ出力する。
また,系の切替が発生した際に不正な出力が出ないように,A系制御装置11は設備4への出力信号を他系出力I/F部104からB系IOネットワーク16経由でB系プロセスIO装置14へも出力する。
A系制御装置11の監視制御データ部107のデータを,B系制御装置12の監視制御データ部127にデータ一致化させるために,A系制御装置11の等値化部105とB系制御装置12の等値化部125が系間接続ケーブル17経由で通信を行う。
待機系であるB系制御装置12は,バス通信I/F部121,監視制御処理部122,入出力I/F部123,および他系出力I/F部124は動作させず,A系制御装置11からのデータ一致化により,両系の監視制御データ部107と127のデータの同一性を保証する。
監視装置2とのデータの授受は,制御バス3経由して制御系となっているA系制御装置11がバス通信I/F部101にて,監視制御データ部107のデータの送受信処理を行う。
B系が制御系に切り替わった場合は,B系制御装置12が上記で説明したA系制御装置11と同様の動作を行う。」

B 「【0057】
実施の形態5.
実施の形態5の二重化制御装置81は,実施の形態4の二重化制御装置61に対して,さらにA系IO制御装置53にIO制御装置間通信I/F部501を追加し,B系IO制御装置54にIO制御装置間通信I/F部521を追加し,それぞれ他系のA系,B系IO制御装置91,92,A系,B系プロセスIO装置13,14,A系,B系IOネットワーク15,16の故障情報を制御装置間ネットワーク55経由で通知する構成としたものである。
【0058】
図9は,実施の形態5に係る二重化制御装置81のシステム構成図である。図9において,図8と同一あるいは相当部分には,同一の符号を付している。
【0059】
実施の形態5に係る二重化制御装置81と実施の形態4に係る二重化制御装置61の違いは,A系IO制御装置91およびB系IO制御装置92にそれぞれIO制御装置間通信I/F部501,521を追加したことである。
A系IO制御装置91は,A系IO制御装置53にIO制御装置間通信I/F部501を追加した構成であり,B系IO制御装置92は,B系IO制御装置54にIO制御装置間通信I/F部521を追加した構成である。
【0060】
次に,実施の形態5に係る二重化制御装置81の動作について説明する。実施の形態4に係る二重化制御装置61との差異部のみ説明する。
実施の形態4と同様に,A系が制御系,B系が待機系とする。
A系IO制御装置91のIO制御装置間通信I/F部501とB系IO制御装置92のIO制御装置間通信I/F部521は,お互いのA系,B系プロセスIO装置13,14,A系,B系IOネットワーク15,16の状態を監視制御処理部102,122に送る。
改造工事中などでA,B系バス通信制御装置71,72の両系が停止中に,B系IO制御装置92の監視制御処理部122にてA系IOネットワーク15,A系プロセスIO装置13の故障を検出した場合,B系プロセスIO装置14経由で設備4への出力信号をB系プロセスIO装置14側に切り替えることで,設備4の運転を継続する。
【0061】
以上説明したように,実施の形態5に係る二重化制御装置81では,二重化されたA系,B系バス通信制御装置,A系,B系IO制御装置,A系,B系プロセスIO装置,A系,B系IOネットワークから構成されており,A系,B系バス通信制御装置に他系故障監視部を追加し,A系,B系IO制御装置にIO制御装置間通信I/F部を追加しているため,故障発生時も自動運転の継続が可能で,また設備の自動運転を継続したまま,プロセスIO装置関連のH/W交換,点検作業およびS/Wの変更,IOカード追加を伴う改造工事が可能であり,点検,改造工事の工期短縮および工数削減を図ることができる効果がある。」

C 「【図1】



D 「【図9】



したがって,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「二重化されたA系制御装置11,B系制御装置12,A系プロセスIO装置13,B系プロセスIO装置14,A系IOネットワーク15,B系IOネットワーク16とIO切替部18から構成され,制御系として運用している装置に故障が発生した場合および設備点検時には待機系の装置に切り替える二重化制御装置であって,
A系制御装置11内の監視制御処理部102は入出力I/F部103を介してA系IOネットワーク15に接続され,B系制御装置12内の監視制御処理部122は入出力I/F部123を介してB系IOネットワーク16に接続され,
A系が制御系,B系が待機系とすると,
制御系では,設備4からの入力信号をA系プロセスIO装置13,A系IOネットワーク15経由で入出力I/F部103にて受け,監視制御処理部102にて演算を行い,監視制御処理部102は,設備4の制御のための出力信号を入出力I/F部103からA系IOネットワーク15,A系プロセスIO装置13経由で設備4へ出力し,
二重化されたA系制御装置11,B系制御装置12を,二重化されたA系バス通信制御装置71,B系バス通信制御装置72,A系IO制御装置91,B系IO制御装置92とした二重化制御装置81においては,
A系IO制御装置91のIO制御装置間通信I/F部501とB系IO制御装置92のIO制御装置間通信I/F部521は,お互いのA系,B系プロセスIO装置13,14,A系,B系IOネットワーク15,16の状態を,制御装置間ネットワーク55経由で監視制御処理部102,122に送り,
改造工事中などでA,B系バス通信制御装置71,72の両系が停止中に,B系IO制御装置92の監視制御処理部122にてA系IOネットワーク15,A系プロセスIO装置13の故障を検出した場合,B系プロセスIO装置14経由で設備4への出力信号をB系プロセスIO装置14側に切り替えることで,設備4の運転を継続し,
A系IO制御装置91,B系IO制御装置92にそれぞれ,IO制御装置間通信I/F部501,IO制御装置間通信I/F部521を追加しているため,故障発生時も自動運転の継続が可能である,
二重化制御装置。」

2.引用文献2について
また,原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている。

E 「【0003】
ストレージに格納される画像データを管理するサーバは,負荷を分散してレスポンスを向上させるために複数台設けられ,ロードバランサ(負荷分散装置)によってそれぞれのサーバに均等に負荷がかかるように分散処理が行われる。また,サーバ間の同期処理によって,複数のサーバに別々に保存されたデータのうち,不足している情報を互いに補完している。これにより,全く同一の情報をもつサーバが複数台存在することになり,障害発生時のリスク管理にも役立つ。」

第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。

(ア)引用発明における「設備4」は,監視及び制御の対象となる機器であるから,本願発明1における「機器」に相当し,引用発明は,「制御系では,設備4からの入力信号をA系プロセスIO装置13,A系IOネットワーク15経由で入出力I/F部103にて受け,監視制御処理部102にて演算を行い,監視制御処理部102は,設備4の制御のための出力信号を入出力I/F部103からA系IOネットワーク15,A系プロセスIO装置13経由で設備4へ出力し」ているから,「設備4」から受ける「入力信号」が本願発明1における「監視データ」に相当し,また,「設備4」が接続される「A系IOネットワーク15」,「B系IOネットワーク16」がそれぞれ本願発明1における「第1のネットワーク」,「第2のネットワーク」に相当する。
また,引用発明の「二重化制御装置」は,監視制御処理部102で入力信号の演算を行って,設備4の制御のための出力信号を出力しているから,入力信号(本願発明1の「監視データ」)に基づいて,設備4の“制御を行う制御システム”であるといえる。
してみれば,引用発明と本願発明1とは,「第1および第2のネットワークに接続された1または複数の機器から監視データを収集し,該監視データに基づいて制御を行う制御システム」である点で一致する。

(イ)引用発明の「二重化制御装置」は,「二重化されたA系制御装置11,B系制御装置12,A系プロセスIO装置13,B系プロセスIO装置14,A系IOネットワーク15,B系IOネットワーク16とIO切替部18から構成され,制御系として運用している装置に故障が発生した場合および設備点検時には待機系の装置に切り替える」ものであり,例えば,A系,B系の“一方”であるA系を制御系とし,“他方”であるB系を待機系とするものである。そして,制御系では,設備4からの入力信号を入出力I/F部103にて受け,「監視制御処理部102」にて演算を行い,「監視制御処理部102」は,設備4の制御のための出力信号を設備4へ出力しているから,引用発明のA系の「監視制御処理部102」が本願発明1における「稼動系となって制御を行」う「第1」の「制御装置」に相当し,B系の「監視制御処理部122」が本願発明1における「待機系となる」「他方」の「第2の制御装置」に相当する。
してみれば,引用発明と本願発明1とは,「一方は稼働系となって前記制御を行い,他方は待機系となる第1および第2の制御装置」を有する点で一致する。

(ウ)引用発明の「入出力I/F部103」は,「監視制御処理部102」(本願発明1の「第1の制御装置」に相当)と「A系IOネットワーク15」(本願発明1の「第1のネットワーク」に相当)との間に“接続され”たものである点で本願発明1の「第1の中継装置」に相当する。
同様に,引用発明の「入出力I/F部123」は,「監視制御処理部122」(本願発明1の「第2の制御装置」に相当)と「B系IOネットワーク16」(本願発明1の「第2のネットワーク」に相当)との間に“接続され”たものである点で本願発明1の「第2の中継装置」に相当する。
してみれば,引用発明と本願発明1とは,「前記第1の制御装置と前記第1のネットワークに接続された第1の中継装置」と,「前記第2の制御装置と前記第2のネットワークに接続された第2の中継装置」とを有する点で一致する。

(エ)引用発明において,「入出力I/F部103」(本願発明1の「第1の中継装置」に相当)及び「入出力I/F部123」(本願発明1の「第2の中継装置」に相当)は,設備4から受信した「入力信号」(本願発明1の「監視データ」に相当)をそれぞれの“接続先”の「監視制御処理部102」(本願発明1の「第1の制御装置」に相当)及び「監視制御処理部122」(本願発明1の「第2の制御装置」に相当)に“転送”する機能を備えているといえるので,引用発明と本願発明1とは,「前記第1および第2の中継装置の各々は,前記1または複数の機器から受信した監視データを接続先の制御装置へ転送する」点で一致する。

(オ)引用発明では,「A系が制御系,B系が待機系とすると,制御系では,設備4からの入力信号をA系プロセスIO装置13,A系IOネットワーク15経由で入出力I/F部103にて受け,監視制御処理部102にて演算を行い,監視制御処理部102は,設備4の制御のための出力信号を入出力I/F部103からA系IOネットワーク15,A系プロセスIO装置13経由で設備4へ出力し」ているところ,制御系であるA系の「監視制御処理部102」が本願発明1における「前記第1の制御装置と前記第2の制御装置のうち稼働系となっている方」に相当し,また,引用発明の「入出力I/F部103」が本願発明1における「前記第1の制御装置と前記第2の制御装置のうち稼働系となっている方」の「制御装置」の「接続先の中継装置」に相当するから,引用発明の「入出力I/F部103にて受け」た「入力信号」が本願発明1における「接続先の中継装置から受信した監視データ」に相当し,引用発明の「監視制御処理部102」は,当該入力信号を“用いて”設備4の“制御を行”うものであるといえる。
してみれば,引用発明と本願発明1とは,「前記第1の制御装置と前記第2の制御装置のうち稼働系となっている方は,接続先の中継装置から受信した監視データを用いて前記制御を行う」点で一致する。

(カ)上記(ア)?(オ)の検討から,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
「第1および第2のネットワークに接続された1または複数の機器から監視データを収集し,該監視データに基づいて制御を行う制御システムにおいて,
一方は稼働系となって前記制御を行い,他方は待機系となる第1および第2の制御装置と,
前記第1の制御装置と前記第1のネットワークに接続された第1の中継装置と,
前記第2の制御装置と前記第2のネットワークに接続された第2の中継装置と,
を有し,
前記第1および第2の中継装置の各々は,前記1または複数の機器から受信した監視データを接続先の制御装置へ転送し,
前記第1の制御装置と前記第2の制御装置のうち稼働系となっている方は,接続先の中継装置から受信した監視データを用いて前記制御を行う
ことを特徴とする制御システム。」

(相違点)
(相違点1)
本願発明1の制御システムが,「前記第1の中継装置と前記第2の中継装置の通信を,前記第1の中継装置と前記第2の中継装置を互いに直接接続するケーブルによって仲介する中継装置間通信手段」を有しているのに対して,
引用発明の二重化制御装置は,そのような手段を有していない点。

(相違点2)
本願発明1では,「監視データを等値化するための通信を前記中継装置間通信手段を介して行」うのに対して,
引用発明は,そのような動作を行うものではない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み,上記相違点1及び相違点2についてまとめて検討する。
引用発明において,「入出力I/F部103」は,監視制御処理部102とA系IOネットワーク15との間で設備4からの入力信号や設備4への出力信号を“中継”する動作を行っており,また,「入出力I/F部123」は,監視制御処理部122とB系IOネットワーク16との間で設備4からの入力信号や設備4への出力信号を“中継”する動作を行っているとは認められるものの,「入出力I/F部103」と「入出力I/F部123」との間で,何らかの通信を実行するための「通信手段」を設けることは記載されておらず,また,両者の間で,当該「通信手段」を介して「監視データを等値化するための通信」を行うことが,本願の優先日前に当該技術分野の周知技術であるということもできない。
この点は,引用文献2に記載された技術的事項を参酌しても変わらない。
したがって,本願発明1は,当業者であっても引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

なお,仮に,引用発明の「A系プロセスIO装置13」及び「B系プロセスIO装置14」を本願発明1の「第1の中継装置」及び「第2の中継装置」に対応付けてみた場合も,これら「A系プロセスIO装置13」及び「B系プロセスIO装置14」の間に「通信手段」を設けることは記載されておらず,また,両者の間で,当該「通信手段」を介して「監視データを等値化するための通信」を行うことが周知技術であるということもできない。
さらに,引用発明では,監視制御処理部102と監視制御処理部122が,IO制御装置間通信I/F部501,IO制御装置間通信I/F部521,及び制御装置間ネットワーク55を介して通信しているものの,ここでの,IO制御装置間通信I/F部501は,「第1の制御装置と第1のネットワークに接続された」ものではないから,本願発明1の「第1の中継装置」に対応付けることはできないうえ,IO制御装置間通信I/F部521も,「第2の制御装置と第2のネットワークに接続された」ものではないから,本願発明1の「第2の中継装置」に対応付けることはできない。そして,引用発明のIO制御装置間通信I/F部501とIO制御装置間通信I/F部521は,互いのA系,B系プロセスIO装置13,14,A系,B系IOネットワーク15,16の状態を,制御装置間ネットワーク55経由で監視制御処理部102,122に送り,改造工事中などでA,B系バス通信制御装置71,72の両系が停止中に,B系IO制御装置92の監視制御処理部122にてA系IOネットワーク15,A系プロセスIO装置13の故障を検出した場合,B系プロセスIO装置14経由で設備4への出力信号をB系プロセスIO装置14側に切り替えることで,設備4の運転を継続することができるようにするためのものであるから,引用発明において,上記のように利用されるIO制御装置間通信I/F部501,IO制御装置間通信I/F部521,及び制御装置間ネットワーク55を,「監視データを等値化するための通信」に利用することを当業者が容易に想到し得たことであるということはできない。

2.本願発明2-11について
本願発明2-11は,本願発明1を減縮した発明であり,本願発明1の「上記相違点1及び相違点2に係る構成」と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明12について
本願発明12は,本願発明1に対応する「中継装置」の発明であり,本願発明1の「上記相違点1及び相違点2に係る構成」に対応する構成を備えるものであるから,本願発明1と同様の理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第7 原査定について
(理由(特許法第29条第2項)について)
審判請求時の補正により,本願発明1-12は「上記相違点1及び相違点2に係る構成」を有するものとなっており,当業者であっても,拒絶査定において引用された引用文献1-2に基づいて,容易に発明できたものとはいえない。したがって,原査定の理由を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-06-10 
出願番号 特願2014-186000(P2014-186000)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 井上 宏一  
特許庁審判長 辻本 泰隆
特許庁審判官 須田 勝巳
山崎 慎一
発明の名称 制御システム、および中継装置  
代理人 伊東 忠重  
代理人 伊東 忠彦  
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