• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H04N
審判 全部申し立て 2項進歩性  H04N
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  H04N
管理番号 1352277
異議申立番号 異議2017-701119  
総通号数 235 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-07-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-11-29 
確定日 2019-04-15 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6136171号発明「データ転送装置、データ転送方法、半導体装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6136171号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?7〕、〔8?10〕、11について訂正することを認める。 特許第6136171号の請求項〔1?4〕、〔8、9〕、11に係る特許を維持する。 特許第6136171号の請求項〔5?7〕、10に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6136171号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?11に係る特許についての出願は、平成24年10月2日に特許出願され、平成29年5月12日付けでその特許権の設定登録(特許公報発行日 平成29年5月31日)がされた。
その特許について、平成29年11月29日に特許異議申立人羽根均より請求項1?11に対して特許異議の申立てがされた。
その後の手続の経緯は以下のとおりである。

平成30年 2月22日 取消理由通知(起案日)
同年 4月25日 意見書の提出及び訂正請求(特許権者)
同年 7月 4日 意見書の提出(特許異議申立人)
同年 9月27日 訂正拒絶理由通知(起案日)
同年10月29日 意見書の提出及び手続補正(特許権者)

第2 手続補正の適否について
1.訂正拒絶理由の概要
当審が平成30年9月27日付けで特許権者に通知した訂正拒絶理由の要旨は、次のとおりである。

(1)訂正前の請求項5に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号ないし第4号に適合しない。
(2)訂正前の請求項5?請求項7及び請求項10に係る訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合しない。

2.手続補正の内容
特許権者が平成30年10月29日に提出した手続補正(以下、「本件補正」という。)は、訂正請求書及び訂正特許請求の範囲を補正対象とし、その補正事項は次のとおりである。

(補正事項)
訂正特許請求の範囲について、請求項5?請求項7及び請求項10を削除する。
訂正請求書について、訂正特許請求の範囲の請求項5?請求項7及び請求項10の削除に合わせて、「7.請求の理由」の記載を整合させた。

3.本件補正についての当審の判断
上記補正事項は、請求項の削除に係るものであるから、本件補正は訂正請求の要旨を変更するものではない。よって、本件補正は特許法第131条の2第1項の規定に適合するから、本件補正を認める。
そして、当審による上記訂正拒絶理由は、訂正拒絶理由の対象となっていた訂正事項が本件補正により削除されたから、いずれも解消した。

第3 訂正の適否について
1.訂正の内容
平成30年4月25日付けの訂正請求は、同年10月29日付けの手続補正によって補正されたものであり、その訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)の趣旨は、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?11について訂正することを求めるというものである。

2.訂正事項
2.1 請求項1?7からなる一群の請求項に係る訂正

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を以下のように訂正する。(下線は、訂正箇所である。以下同様。)

「【請求項1】
第1の格納部に格納された1フレームの画像データを含む出力データを転送先に転送するデータ転送装置であって、
前記出力データは、前記画像データと水平前ブランクデータと水平後ブランクデータと垂直前ブランクデータと垂直後ブランクデータとを含み、
前記第1の格納部の前記画像データを読み出す要求信号を出力し、前記要求信号に対する許可信号に基づいて前記第1の格納部の前記画像データを読み出して第2の格納部に格納し、前記第2の格納部の前記画像データをデータ要求信号に応答して出力し、前記第2の格納部に格納したデータ量に応じた状態信号を出力する転送制御回路と、
前記状態信号に基づいて、前記第2の格納部が第1の格納状態よりデータ量が少ない第2の格納状態のときに前記第2の格納部の状態が前記第1の格納状態となるまでブランク追加信号を出力するブランク制御部と、
前記出力データの数をカウントした水平カウント値と、前記水平後ブランクデータの数を調整しないラインデータにおけるデータの数であって水平前ブランクサイズと水平画像サイズと水平後ブランクサイズとを合計した標準データ数に応じて出力する水平同期信号を前記ブランク追加信号に応じて遅延する水平同期信号生成部と、
前記出力データを出力する出力データ生成部であって、前記水平同期信号に基づいて前記水平カウント値が前記水平前ブランクサイズとなるまで前記水平前ブランクデータを出力し、前記データ要求信号を出力し、水平画像サイズの画像データを前記転送制御回路から受け取って出力した後、次の前記水平同期信号まで前記水平後ブランクデータを出力する出力データ生成部と、
を有することを特徴とするデータ転送装置。」

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を以下のように訂正する。
「【請求項2】
前記ブランク制御部は、前記水平カウント値に基づいて、前記画像データの後に前記水平後ブランクデータを出力する期間において、前記状態信号に基づいて前記第2の格納部が第1の格納状態に応じてブランク削除信号を出力し、
前記水平同期信号生成部は、前記ブランク削除信号に応じて前記水平同期信号を出力し、前記水平カウント値をプリセットすること、を特徴とする請求項1に記載のデータ転送装置。」

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を以下のように訂正する。
「【請求項3】
前記ブランク制御部は、
データ数を調整しない水平後ブランクデータ及び垂直後ブランクデータのデータ数の合計値である全ブランクデータ数の初期値をレジスタに格納し、前記ブランク追加信号を出力する期間に応じて前記全ブランクデータ数をダウンカウントし、
前記画像データの後に前記ブランクデータを出力する期間において、前記状態信号に基づいて前記第2の格納部が第1の格納状態のとき、前記初期値から前記全ブランクデータ数を減算して削除数を算出し、前記標準データ数と前記水平カウント値の差に応じた第1の値と前記削除数を比較し、比較結果に応じてブランク削除位置を決定し、前記ブランク削除位置にて前記ブランク削除信号を出力すること、
を特徴とする請求項2に記載のデータ転送装置。」

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4を以下のように訂正する。
「【請求項4】
前記ブランク制御部は、前記画像データの後に前記水平後ブランクデータを出力する期間において、前記状態信号に基づいて前記第2の格納部が第1の格納状態のとき、前記全ブランクデータ数が前記初期値と等しい場合に前記ブランク削除信号を出力しないこと、を特徴とする請求項3に記載のデータ転送装置。」

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5を削除する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6を削除する。

(7) 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7を削除する。

(8)訂正事項8
明細書の段落【0005】を以下のように訂正する。

「【0005】
本発明の一観点によれば、第1の格納部に格納された1フレームの画像データを含む出力データを転送先に転送するデータ転送装置であって、前記出力データは、前記画像データと水平前ブランクデータと水平後ブランクデータと垂直前ブランクデータと垂直後ブランクデータとを含み、前記第1の格納部の前記画像データを読み出す要求信号を出力し、前記要求信号に対する許可信号に基づいて前記第1の格納部の前記画像データを読み出して第2の格納部に格納し、前記第2の格納部の前記画像データをデータ要求信号に応答して出力し、前記第2の格納部に格納したデータ量に応じた状態信号を出力する転送制御回路と、前記状態信号に基づいて、前記第2の格納部が第1の格納状態よりデータ量が少ない第2の格納状態のときに前記第2の格納部の状態が前記第1の格納状態となるまでブランク追加信号を出力するブランク制御部と、前記出力データの数をカウントした水平カウント値と、前記水平後ブランクデータの数を調整しないラインデータにおけるデータの数であって水平前ブランクサイズと水平画像サイズと水平後ブランクサイズとを合計した標準データ数に応じて出力する水平同期信号を前記ブランク追加信号に応じて遅延する水平同期信号生成部と、前記出力データを出力する出力データ生成部であって、前記水平同期信号に基づいて前記水平カウント値が前記水平前ブランクサイズとなるまで前記水平前ブランクデータを出力し、前記データ要求信号を出力し、水平画像サイズの画像データを前記転送制御回路から受け取って出力した後、次の前記水平同期信号まで前記水平後ブランクデータを出力する出力データ生成部と、を有する。」

2.2 請求項8?10からなる一群の請求項に係る訂正

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項8を以下のように訂正する。(下線は、訂正箇所である。以下同様。)

「【請求項8】
第1の格納部に格納された1フレームの画像データを含む出力データを転送先に転送するデータ転送方法であって、
前記出力データは、前記画像データと水平前ブランクデータと水平後ブランクデータと垂直前ブランクデータと垂直後ブランクデータとを含み、
前記第1の格納部の前記画像データを読み出す要求信号を出力し、前記要求信号に対する許可信号に基づいて前記第1の格納部の前記画像データを読み出して第2の格納部に格納し、前記第2の格納部の前記画像データをデータ要求信号に応答して出力し、前記第2の格納部に格納したデータ量に応じた状態信号を生成し、
前記状態信号に基づいて、前記第2の格納部が第1の格納状態よりデータ量が少ない第2の格納状態のときに前記第2の格納部の状態が前記第1の格納状態となるまでブランク追加信号を生成し、
前記出力データの数をカウントした水平カウント値、前記水平後ブランクデータの数を調整しないラインデータにおけるデータの数であって水平前ブランクサイズと水平画像サイズと水平後ブランクサイズとを合計した標準データ数に応じて出力する水平同期信号を前記ブランク追加信号に応じて遅延し、
前記水平同期信号に基づいて前記水平カウント値が前記水平前ブランクサイズとなるまで前記水平前ブランクデータを出力し、前記データ要求信号を出力し、水平画像サイズの画像データを受け取って出力した後、次の前記水平同期信号まで前記水平後ブランクデータを出力することを特徴とするデータ転送方法。」

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項9を以下のように訂正する。
「【請求項9】
前記水平カウント値に基づいて、前記画像データの後に前記水平後ブランクデータを出力する期間において、前記状態信号に基づいて前記第2の格納部が第1の格納状態に応じてブランク削除信号を出力し、
前記ブランク削除信号に応じて前記水平同期信号を出力し、前記水平カウント値をプリセットすること、を特徴とする請求項8に記載のデータ転送方法。」

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項10を削除する。

2.3 請求項11に係る訂正

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項11を以下のように訂正する。(下線は、訂正箇所である。)

「【請求項11】
第1の格納部をそれぞれアクセスする複数の処理部と、
前記第1の格納部をアクセスするために前記複数の処理部からそれぞれ出力される要求信号を調停する調停部と、
を含み、
少なくとも1つの前記処理部は、前記第1の格納部に格納された1フレームの画像データを含む出力データを処理回路に転送するデータ転送部を有し、
前記出力データは、前記画像データと垂直前ブランクデータと垂直後ブランクデータと水平前ブランクデータと水平後ブランクデータを含み、
前記データ転送部は、
前記第1の格納部の前記画像データを読み出す要求信号を出力し、前記要求信号に対する許可信号に基づいて前記第1の格納部の前記画像データを読み出して第2の格納部に格納し、前記第2の格納部の前記画像データをデータ要求信号に応答して出力し、前記第2の格納部に格納したデータ量に応じた状態信号を出力する転送制御回路と、
前記状態信号に基づいて、前記第2の格納部が第1の格納状態よりデータ量が少ない第2の格納状態のときに前記第2の格納部の状態が前記第1の格納状態となるまでブランク追加信号を出力するブランク制御部と、
前記出力データの数をカウントした水平カウント値と、前記水平後ブランクデータの数を調整しないラインデータにおけるデータの数であって水平前ブランクサイズと水平画像サイズと水平後ブランクサイズとを合計した標準データ数に応じて出力する水平同期信号を前記ブランク追加信号に応じて遅延する水平同期信号生成部と、
前記出力データを出力する出力データ生成部であって、前記水平同期信号に基づいて前記水平カウント値が前記水平前ブランクサイズとなるまで前記水平前ブランクデータを出力し、前記データ要求信号を出力し、水平画像サイズの画像データを前記転送制御回路から受け取って出力した後、次の前記水平同期信号まで前記水平後ブランクデータを出力する出力データ生成部と、
を有する、半導体装置。」

3 訂正の適否の判断

本件訂正請求による訂正の適否について検討する。以下、上記2.1(1)?(7)の訂正事項を「本件訂正1」?「本件訂正7」と、上記2.2(1)?(3)の訂正事項を「本件訂正8」?「本件訂正10」と、上記2.3(1)の訂正事項を「本件訂正11」と、上記2.1(8)の訂正事項を「本件訂正12」いう。

3.1 一群の請求項について

(1)訂正前の請求項1?7について、訂正前の請求項2?7は訂正前の請求項1を引用するものであって、本件訂正1によって記載が訂正される請求項1について連動して訂正されるものである。
したがって、訂正後の請求項1?7は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

(2)訂正前の請求項8?10について、 訂正前の請求項9及び10は、訂正前の請求項8を引用するものであって、本件訂正8によって記載が訂正される請求項8について連動して訂正されるものである。
したがって、訂正後の請求項8?10は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

3.2 訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について

(1)本件訂正1、8、11について
本件訂正1、8、11は、以下の訂正事項を含むものである。以下、(ア)?(エ)の訂正事項を、訂正事項ア?訂正事項エと称する。

(ア)「水平カウント値」について
訂正前の「水平カウント値」を、「前記出力データの数をカウントした水平カウント値」とする訂正

(イ)「データ」について
(イ-1)訂正前の「第1の格納部に格納されたデータ」、「前記第1の格納部のデータ」及び「前記第2の格納部のデータ」を、それぞれ「第1の格納部に格納された1フレームの画像データを含む出力データ」、「前記第1の格納部の前記画像データ」及び「前記第2の格納部の前記画像データ」とする訂正
(イ-2)「前記出力データは、前記画像データと水平前ブランクデータと水平後ブランクデータと垂直前ブランクデータと垂直後ブランクデータとを含み、」を追加する訂正

(ウ)「出力データの標準データ数」について
訂正前の「出力データの標準データ数」を、「前記水平後ブランクデータの数を調整しないラインデータにおけるデータ数であって水平前ブランクサイズと水平画像サイズと水平後ブランクサイズとを合計した標準データ数」とする訂正

(エ)「前記データ要求信号を出力」について
(エ-1)訂正前の「前記水平同期信号に基づいて前記水平カウント値にしたがって前記データ要求信号を出力し」を、「前記水平同期信号に基づいて前記水平カウント値が前記水平前ブランクサイズとなるまで前記水平前ブランクデータを出力し、前記データ要求信号を出力し」と訂正し、訂正前の「ブランクデータを出力する」を「前記水平後ブランクデータを出力する」とする訂正
(エ-2)訂正前の請求項1及び11に「前記出力データを出力する出力データ生成部であって、」を追加する訂正

訂正事項ア?訂正事項エは、訂正前の(ア)「水平カウント値」、(イ)「データ」、(ウ)「出力データの標準データ数」及び(エ)「前記データ要求信号を出力」について、その内容を明確にするとともに限定する訂正である。
したがって、本件訂正1、8、11は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に規定する特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、本件訂正1、8、11は、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的としており、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は何ら実質的な内容の変更を伴うものでないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。

(2)本件訂正2、4、9について
本件訂正2、4、9は、訂正前の「ブランクデータ」について、その内容を明確にするとともに限定する訂正である。
したがって、本件訂正2、4、9は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に規定する特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、本件訂正2、4、9は、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的としており、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は何ら実質的な内容の変更を伴うものでないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。

(3)本件訂正3について
本件訂正3は、訂正前の「全ブランクデータ数」について、その内容を明確にするとともに限定する訂正である。
したがって、本件訂正3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に規定する特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、本件訂正3は、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的としており、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は何ら実質的な内容の変更を伴うものでないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。

(4)本件訂正5?7、10について
本件訂正5?7、10は、それぞれ、請求項5?請求項7、請求項10を削除する訂正である。
したがって、本件訂正5?7、10は、請求項を削除するというものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、本件訂正5?7、10は、特許請求の範囲の減縮を目的としており、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は何ら実質的な内容の変更を伴うものでないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。

(5)本件訂正12について
本件訂正12は、本件訂正1に係る訂正に伴って、訂正後の特許請求の範囲と明細書との整合を図るためにする訂正である。
したがって、本件訂正12は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、本件訂正12は、明瞭でない記載の釈明を目的としており、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は何ら実質的な内容の変更を伴うものでないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。

3.3 新規事項の有無

(1)本件訂正1、8、11について
(ア)「水平カウント値」について
訂正事項アの「前記出力データの数をカウントした水平カウント値」については、明細書の段落0042に、水平同期信号生成部52は、出力データの数をカウントしたカウント値(水平カウント値)を出力することが記載されている。

(イ)「データ」について
(イ-1)訂正事項イの「1フレームの画像データを含む出力データ」については、明細書の段落0026、0042、0044に、出力データ生成部54が出力する出力データである画像データは1フレームの画像データを含むことが記載されている。また、訂正事項イの「第1の格納部に格納された1フレームの画像データを含む出力データ」、「前記第1の格納部の前記画像データ」及び「前記第2の格納部の前記画像データ」については、明細書の段落0011及び段落0030に、第1の格納部の一例であるメモリ13と、第2の格納部の一例であるFIFOメモリ32dには、画像データが格納されることが記載されている。
(イ-2)訂正事項イの「前記出力データは、前記画像データと水平前ブランクデータと水平後ブランクデータと垂直前ブランクデータと垂直後ブランクデータとを含み、」については、明細書の段落0027に、信号生成部32bはブランクデータと画像データを出力すること、及び、ブランクデータは、垂直前ブランクデータ、垂直後ブランクデータ、水平前ブランクデータ、水平後ブランクデータを含むこと、明細書の段落0044に、出力データ生成部54は、画像データとブランクデータを含む画像データを出力することが記載されている。

(ウ)「出力データの標準データ数」について
訂正事項ウの「前記水平後ブランクデータの数を調整しないラインデータにおけるデータ数であって水平前ブランクサイズと水平画像サイズと水平後ブランクサイズとを合計した標準データ数」については、明細書の段落0054に、標準データ数は、ブランクデータの数を調整しないラインデータにおけるデータの数であり、水平前ブランクサイズと水平画像サイズと水平後ブランクサイズを合計した値であることが記載されている。

(エ)「前記データ要求信号を出力」について
訂正事項エの「前記出力データを出力する出力データ生成部であって、前記水平同期信号に基づいて前記水平カウント値が前記水平前ブランクサイズとなるまで前記水平前ブランクデータを出力し、前記データ要求信号を出力し」、「前記水平後ブランクデータを出力する」及び「前記出力データを出力する出力データ生成部であって、」については、明細書の段落0090?0093に、出力データ生成部54は、水平同期信号がアサートされると、水平カウント値が水平前ブランクサイズと等しくなるまで、水平前ブランクデータを出力すること、また、明細書の段落0094?0095に、出力データ生成部54は、データ要求信号をアサートし、明細書の段落0096に、出力データ生成部54は、画像データの出力後に出力するブランクデータである水平後ブランクデータを出力することが記載されている。

よって、本件訂正1、8、11は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

(2)本件訂正2、4、9について
本件訂正2、4、9の「水平後ブランクデータ」については、明細書の段落0049及び0050に、ブランク制御部51は、水平後ブランクデータを出力している場合に、図6のステップ107におけるブランク制御処理を実行し、明細書の段落0056及び0063に、ブランク制御処理では水平カウント値がブランクデータ削除位置と等しい場合に、ブランク削除信号を出力することが記載されている。
よって、本件訂正2、4、9は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

(3)本件訂正3について
本件訂正3の「データ数を調整しない水平後ブランクデータ及び垂直後ブランクデータのデータ数の合計値である全ブランクデータ数」については、明細書の段落0047に、データ数を調整しない場合の1フレームの画像データにおいて、水平後ブランクデータのデータ数と、垂直後ブランクデータのデータ数の合計値であることが記載されている。
よって、本件訂正3は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

(4)本件訂正5?7、10について
本件訂正5?7、10は、請求項を削除する訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

(5)本件訂正12について
本件訂正12は、本件訂正1に係る訂正に伴って、訂正後の特許請求の範囲と明細書との整合を図るためにする訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

3.4 小括
以上のとおり、本件訂正請求に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的としており、かつ、同条第4項、及び第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?11について訂正することを認める。

第4 特許異議の申立てについて

1 本件訂正発明
本件訂正請求により訂正された訂正後の請求項1?4、8、9、11に係る発明(以下「本件訂正発明1?4、8、9、11」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?4、8、9、11に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
なお、請求項5?7,10は削除された。
各請求項中の(1A)?(11H)は当審で付与した。以下、本件訂正発明の各構成を「構成1A」?「構成11H」と称する。

(本件訂正発明1)【請求項1】
(1A)第1の格納部に格納された1フレームの画像データを含む出力データを転送先に転送するデータ転送装置であって、
前記出力データは、前記画像データと水平前ブランクデータと水平後ブランクデータと垂直前ブランクデータと垂直後ブランクデータとを含み、
(1B)前記第1の格納部の前記画像データを読み出す要求信号を出力し、前記要求信号に対する許可信号に基づいて前記第1の格納部の前記画像データを読み出して第2の格納部に格納し、前記第2の格納部の前記画像データをデータ要求信号に応答して出力し、前記第2の格納部に格納したデータ量に応じた状態信号を出力する転送制御回路と、
(1C)前記状態信号に基づいて、前記第2の格納部が第1の格納状態よりデータ量が少ない第2の格納状態のときに前記第2の格納部の状態が前記第1の格納状態となるまでブランク追加信号を出力するブランク制御部と、
(1D)前記出力データの数をカウントした水平カウント値と、前記水平後ブランクデータの数を調整しないラインデータにおけるデータの数であって水平前ブランクサイズと水平画像サイズと水平後ブランクサイズとを合計した標準データ数に応じて出力する水平同期信号を前記ブランク追加信号に応じて遅延する水平同期信号生成部と、
(1E)前記出力データを出力する出力データ生成部であって、前記水平同期信号に基づいて前記水平カウント値が前記水平前ブランクサイズとなるまで前記水平前ブランクデータを出力し、前記データ要求信号を出力し、水平画像サイズの画像データを前記転送制御回路から受け取って出力した後、次の前記水平同期信号まで前記水平後ブランクデータを出力する出力データ生成部と、
(1A)を有することを特徴とするデータ転送装置。

(本件訂正発明2)【請求項2】
(2A)前記ブランク制御部は、前記水平カウント値に基づいて、前記画像データの後に前記水平後ブランクデータを出力する期間において、前記状態信号に基づいて前記第2の格納部が第1の格納状態に応じてブランク削除信号を出力し、
(2B)前記水平同期信号生成部は、前記ブランク削除信号に応じて前記水平同期信号を出力し、前記水平カウント値をプリセットすること、を特徴とする請求項1に記載のデータ転送装置。


(本件訂正発明3)【請求項3】
(3A)前記ブランク制御部は、
データ数を調整しない水平後ブランクデータ及び垂直後ブランクデータのデータ数の合計値である全ブランクデータ数の初期値をレジスタに格納し、前記ブランク追加信号を出力する期間に応じて前記全ブランクデータ数をダウンカウントし、
(3B)前記画像データの後に前記ブランクデータを出力する期間において、前記状態信号に基づいて前記第2の格納部が第1の格納状態のとき、前記初期値から前記全ブランクデータ数を減算して削除数を算出し、前記標準データ数と前記水平カウント値の差に応じた第1の値と前記削除数を比較し、比較結果に応じてブランク削除位置を決定し、前記ブランク削除位置にて前記ブランク削除信号を出力すること、
を特徴とする請求項2に記載のデータ転送装置。

(本件訂正発明4)【請求項4】
(4A)前記ブランク制御部は、前記画像データの後に前記水平後ブランクデータを出力する期間において、前記状態信号に基づいて前記第2の格納部が第1の格納状態のとき、前記全ブランクデータ数が前記初期値と等しい場合に前記ブランク削除信号を出力しないこと、を特徴とする請求項3に記載のデータ転送装置。

(本件訂正発明8)【請求項8】
(8A)第1の格納部に格納された1フレームの画像データを含む出力データを転送先に転送するデータ転送方法であって、
前記出力データは、前記画像データと水平前ブランクデータと水平後ブランクデータと垂直前ブランクデータと垂直後ブランクデータとを含み、
(8B)前記第1の格納部の前記画像データを読み出す要求信号を出力し、前記要求信号に対する許可信号に基づいて前記第1の格納部の前記画像データを読み出して第2の格納部に格納し、前記第2の格納部の前記画像データをデータ要求信号に応答して出力し、前記第2の格納部に格納したデータ量に応じた状態信号を生成し、
(8C)前記状態信号に基づいて、前記第2の格納部が第1の格納状態よりデータ量が少ない第2の格納状態のときに前記第2の格納部の状態が前記第1の格納状態となるまでブランク追加信号を生成し、
(8D)前記出力データの数をカウントした水平カウント値、前記水平後ブランクデータの数を調整しないラインデータにおけるデータの数であって水平前ブランクサイズと水平画像サイズと水平後ブランクサイズとを合計した標準データ数に応じて出力する水平同期信号を前記ブランク追加信号に応じて遅延し、
(8E)前記水平同期信号に基づいて前記水平カウント値が前記水平前ブランクサイズとなるまで前記水平前ブランクデータを出力し、前記データ要求信号を出力し、水平画像サイズの画像データを受け取って出力した後、次の前記水平同期信号まで前記水平後ブランクデータを出力する
(8A)ことを特徴とするデータ転送方法。

(本件訂正発明9)【請求項9】
(9A)前記水平カウント値に基づいて、前記画像データの後に前記水平後ブランクデータを出力する期間において、前記状態信号に基づいて前記第2の格納部が第1の格納状態に応じてブランク削除信号を出力し、
(9B)前記ブランク削除信号に応じて前記水平同期信号を出力し、前記水平カウント値をプリセットすること、を特徴とする請求項8に記載のデータ転送方法。

(本件訂正発明11)【請求項11】
(11A)第1の格納部をそれぞれアクセスする複数の処理部と、
(11B)前記第1の格納部をアクセスするために前記複数の処理部からそれぞれ出力される要求信号を調停する調停部と、
を含み、
(11C)少なくとも1つの前記処理部は、前記第1の格納部に格納された1フレームの画像データを含む出力データを処理回路に転送するデータ転送部を有し、
前記出力データは、前記画像データと垂直前ブランクデータと垂直後ブランクデータと水平前ブランクデータと水平後ブランクデータを含み、
(11D)前記データ転送部は、
前記第1の格納部の前記画像データを読み出す要求信号を出力し、前記要求信号に対する許可信号に基づいて前記第1の格納部の前記画像データを読み出して第2の格納部に格納し、前記第2の格納部の前記画像データをデータ要求信号に応答して出力し、前記第2の格納部に格納したデータ量に応じた状態信号を出力する転送制御回路と、
(11E)前記状態信号に基づいて、前記第2の格納部が第1の格納状態よりデータ量が少ない第2の格納状態のときに前記第2の格納部の状態が前記第1の格納状態となるまでブランク追加信号を出力するブランク制御部と、
(11F)前記出力データの数をカウントした水平カウント値と、前記水平後ブランクデータの数を調整しないラインデータにおけるデータの数であって水平前ブランクサイズと水平画像サイズと水平後ブランクサイズとを合計した標準データ数に応じて出力する水平同期信号を前記ブランク追加信号に応じて遅延する水平同期信号生成部と、
(11G)前記出力データを出力する出力データ生成部であって、前記水平同期信号に基づいて前記水平カウント値が前記水平前ブランクサイズとなるまで前記水平前ブランクデータを出力し、前記データ要求信号を出力し、水平画像サイズの画像データを前記転送制御回路から受け取って出力した後、次の前記水平同期信号まで前記水平後ブランクデータを出力する出力データ生成部と、
(11H)を有する、半導体装置。

2 取消理由の概要
訂正前の請求項1?11に係る特許に対して平成30年2月22日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。

理由1及び理由2:訂正前の請求項1?11に係る特許は、下記(1)?(7)について不明確であり、また、発明の詳細な説明及び図面に記載されたものではないから、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。

理由3:本件の特許明細書又は図面は、下記(7)について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。


(1)「水平カウント値」(構成1D、8D、11F)
(2)「出力データの標準データ数」(構成1D、8D、11F)
(3)「前記データ要求信号を出力」(構成1E、8E、11G)
(4)「全ブランクデータ数」(構成3A)
(5)「水平後ブランク」(請求項5、請求項10)
(6)「前記全ブランクデータ数と前記全ブランクデータ数の初期値の差に応じたタイミングでブランク削除信号を出力」(請求項6)
(7)「前記初期値から前記全ブランクデータ数を減算し、その減算結果の値を前記水平後ブランクのサイズにて除算し、その除算結果の値を前記標準データ数から減算した値と前記水平カウント値が一致したときに前記ブランク削除信号を出力する」(請求項7)

3 当審の判断

3.1 取消理由通知に記載した取消理由について

(1)理由1及び理由2(1)?(3)について
理由1及び理由2の(1)「水平カウント値」、(2)「出力データの標準データ数」及び(3)「前記データ要求信号を出力」は、本件訂正請求による本件訂正1、8、11によって、発明の詳細な説明に記載したものとなり、かつ、明確な記載となった。

(2)理由1及び理由2(4)について
理由1及び理由2の(4)「全ブランクデータ数」は、本件訂正請求による本件訂正3によって、発明の詳細な説明に記載したものとなり、かつ、明確な記載となった。

(3)理由1及び理由2(5)?(7)について
理由1及び理由2の(5)?(7)は、本件訂正請求による本件訂正5?7、10によって請求項5?7、10が削除されたから、取消理由が存在しないこととなった。

(4)理由3について
理由3の(7)は、本件訂正請求による本件訂正7によって請求項7が削除されたから、取消理由が存在しないこととなった。

(5)特許異議申立人の主張について
ア 特許異議申立人の主張内容
特許異議申立人は、平成30年7月4日付けの意見書において、訂正後の請求項1?4、8、9,11について、以下のとおり主張している。以下、(ア)?(ウ)の主張を、主張ア?主張ウと称する。

(ア)「出力データ」について
『「水平前ブランクデータ」「水平後ブランクデータ」「垂直前ブランクデータ」「垂直後ブランクデータ」なる用語それ自体は、確かに明細書に記載があるが(段落【0027】)、それらの用語は当業者に一般的な技術用語ではなく、それらのデータがいったい何を意味するデータなのか、明細書にはなんら開示されていない。
したがって、訂正後の請求項1は不明確であるとともに特許請求の範囲に記載された発明が発明の詳細な説明に記載されていないため、特許法第36条6項第1号及び第2号の規定により本件特許は取り消されるべきものである。』

(イ)「水平カウント値」について
『「出力データ」は上記したとおり、前記画像データと水平前ブランクデータと水平後ブランクデータと垂直前ブランクデータと垂直後ブランクデータとを含」むものであることは特許権者が自ら訂正により明らかにした内容であり、ここでいう「水平カウント値」が「前記出力データの数をカウントした」ものであるとするならば、画像データの他に、前記画像データと水平前ブランクデータと水平後ブランクデータと垂直前ブランクデータと垂直後ブランクデータのすべてを含めた全体のデータの数をカウントしたものが水平カウント値となることになる。
しかし、垂直前ブランクデータや垂直後ブランクデータが、水平同期信号の生成を遅延させることにどのように作用するのかについて詳細な説明に対応する記載が全く存在しないため、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に開示されているとはいえない。このため、特許法第36条第6項第1号の規定により本件特許は取り消されるべきものである。』

(ウ)「前記ブランクデータ」
『訂正後の請求項3における「前記画像データの後に前記ブランクデータを出力する期間において、」とある箇所の「前記ブランクデータ」は、引用する訂正後の請求項2にも、訂正後の請求項2において引用する訂正後の請求項1にも「ブランクデータ」が登場しない以上、「水平前ブランクデータ」、「水平後ブランクデータ」、「垂直前ブランクデータ」、「垂直後ブランクデータ」又は「全ブランクデータ」のうち、何を示しているのか不明確である。
したがって、特許法第36条第6項第2号の規定により本件特許は取り消されるべきものである。』

イ 主張ア?主張ウの判断
(ア)主張アについて
明細書の段落0027に、「水平前ブランクデータ」、「水平後ブランクデータ」、「垂直前ブランクデータ」及び「垂直後ブランクデータ」は、画像データPDを同期信号VD,HDに従って2次元的(マトリックス状)に配列した場合に、画像データGDの周囲に配列したブランクデータBDであることが記載されている。また、「水平前」、「水平後」、「垂直前」及び「垂直後」という語句は、同期信号VD,HDに従った2次元マトリックス状のデータにおける位置関係を意味する語句として明確である。
よって、訂正後の請求項1?4、8、9,11に記載の『「水平前ブランクデータ」、「水平後ブランクデータ」、「垂直前ブランクデータ」及び「垂直後ブランクデータ」』は、発明の詳細な説明に記載したものであり、かつ、明確な記載である。

(イ)主張イについて
明細書の段落0042に、水平同期信号生成部は、出力データの数をカウントする水平カウンタを含み、そのカウント値である「水平カウント値」を出力すること、段落0079に、「ブランク追加信号」がアサートされている場合に待機する(即ち、水平同期信号の出力を遅延させる)ことが記載されている。
また、当該「ブランク追加信号」については、段落0064?0070に、ブランク制御部は、標準データ数(水平前ブランクデータのサイズ、水平画像サイズ及び水平後ブランクデータのサイズの合計値)と、状態信号に基づいて、ブランク追加信号をアサートすることが記載されている。
よって、発明の詳細な説明には、「水平前ブランクデータと水平後ブランクデータと垂直前ブランクデータと垂直後ブランクデータ」を含めた出力データの数をカウントすること、また、「水平同期信号の出力を遅延させる」ことは、「画像データと水平前ブランクデータと水平後ブランクデータ」をカウントすることに基づくこと、が記載されている。
よって、訂正後の請求項1?4、8、9,11に記載の「前記出力データの数をカウントした水平カウント値」は、発明の詳細な説明に記載したものである。

(ウ)主張ウについて
訂正後の請求項3の「前記ブランクデータを出力する期間」は、「前記ブランク削除信号を出力する」ことに係る構成であり、当該「前記ブランク削除信号」は、訂正後の請求項2の「ブランク制御部」が出力する「ブランク削除信号」を前記するものである。
そして、訂正後の請求項2の「ブランク制御部」は、「前記水平カウント値に基づいて、前記画像データの後に前記水平後ブランクデータを出力する期間において、前記状態信号に基づいて前記第2の格納部が第1の格納状態に応じてブランク削除信号を出力」するものであって、当該「ブランク制御部」に係る記載中には「水平後ブランクデータ」のみ記載されていることから、訂正後の請求項3の「前記ブランクデータ」は、訂正前の請求項2の「水平後ブランクデータ」を前記することは明らかである。

(エ)小括
以上のとおりであるから、特許異議申立人が主張する主張ア?主張ウを採用することができない。

(4)まとめ
よって、本件特許の訂正後の請求項1?4、8、9、11に係る発明(本件訂正発明1?4、8、9、11)は、発明の詳細な説明に記載したものであり、かつ、明確であるから、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしている。



3.2 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立理由について

特許異議申立人は、訂正前の請求項1-11に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証の記載事項及び甲第3号証に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであると主張する。
以下、訂正後の請求項1?4、8、9、11に係る発明(本件訂正発明1?4、8、9、11)が、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証の記載事項及び甲第3号証に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるか否か検討する。

甲第1号証 特開2002-49362号公報
甲第2号証 特開2012-128589号公報
甲第3号証 特開2012-70306号公報

3.2.1 甲第1号証?甲第3号証について
(1)甲第1号証
(1-1)甲第1号証に記載された事項
甲第1号証(特開2002-49362号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は強調のために当審で付したものである。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、画像処理装置及び画像処理方法に係り、特に、ディスプレイに表示する画像を処理する画像処理装置及び画像処理方法に関する。」

「【0058】画像表示装置48は、画像処理部45、LCDパネル47、発振器46で構成されている。画像表示装置48において、パソコン40から供給されるディジタルビデオ信号(RGB信号42、DE信号43、CLK信号44)は画像処理部45に供給される。
【0059】画像処理部45は、DE信号43、CLK信号44、発振器46からのクロック信号によりLCDパネル47に対応した解像度に変換する。LCDパネル47に対応した画像信号は、発振器46から発振されるクロック信号により同期され、LCDパネル47に供給する。」

「【0063】図5において、画像処理部45は、FIFO(First-In First-Out)450、ラインバッファ451、補間演算部452、FIFO制御部453、拡大率設定回路454、パネル水平・垂直解像度回路455、水平ブランキング設定回路456、DER発生部457、DE出力発生部458で構成されている。
【0064】FIFO450には、パソコン40からRGB信号42、DE信号43、CLK信号44が供給され、発振器46から読み出し用のクロックであるRCLK信号433、FIFO制御部453から制御信号が供給される。また、FIFO450には、DE信号の書き込みDE信号(DEW)430、CLK信号44の書き込みCLK信号(WCLK)440が供給される。FIFO450は、これらの入力信号により、メモリの書き込み、読み出しを行い、ラインバッファ451、補間演算部452に信号を供給する。(略)
【0066】補間演算部452は、FIFO450、ラインバッファ451からの画像信号により補間する。この補間演算部452は、垂直方向のLCDパネル47に対応した画像を作成し、LCDパネル47に出力する。また、補間演算部452は、LCDパネル47に応じて水平同期信号(PHS)、垂直同期信号(PVS)も生成する。
【0067】FIFO制御部453は、拡大率設定回路454からの信号と、DER発生部からの読み出しDE信号(DER)により、RGB信号42をLCDパネル47の特性(解像度、最大周波数、最大水平周波数等)に適応するように制御する制御信号を生成する。この制御信号は、FIFO450に送られる。
(略)
【0071】DER発生部457は、発振器46からのRCLK信号433、水平ブランキング設定回路456からの信号により、信号の読み出しを決定するDER信号432を生成し、DE出力発生部458とFIFO制御部453にDER信号432を供給する。」

「【0115】図10において、DER発生部457は、ブランキング期間微調回路80、水平ブランキングカウンタ800、コンパレータ801、805、809、微分回路802、806、OR回路803、810、水平有効期間カウンタ804、垂直有効期間カウンタ808、JK-FF807により構成されている。
【0116】DER発生部457では、水平ブランキング設定回路456からの水平ブランキング値、RCLK信号433、パネル解像度信号434、読み込みが開始した時のパルスであるR-START信号811が供給される。
【0117】ブランキング期間微調回路80では、図7、8、9に示す水平ブランク設定回路456により水平ブランキング値と、微分回路802からの信号が供給される。ブランキング期間微調回路80は、水平ブランキング値を調整し、調整された水平ブランキング値をコンパレータ801に供給する。
(略)
【0121】OR回路803では、R-START信号811と微分回路802の出力が供給され、出力信号が水平有効期間カウンタ804とJK-FF807に出力される。この出力は、水平有効期間カウンタ804のカウント値をクリアし、JK?FF807は、DER信号432として「1」を出力する。
(略)
【0123】コンパレータ805は、パネルの水平解像度と、水平有効期間カウンタ804からのカウンタ値とを比較し、水平有効期間カウンタ804のカウンタ値の方が大きくなると、出力がハイレベルとされる。コンパレータ805の出力は、OR回路810、微分回路806、垂直有効期間カウンタ808に供給される。
(略)
【0126】また、微分回路806は、コンパレータ805の出力を微分し、JK-FF807及び水平ブランキングカウンタ800に出力する。水平有効期間カウンタ800は、微分回路806の出力によりクリアされる。JK-FF807は、微分回路806からの信号によりDER信号432として「0」が出力される。」

「【0137】図13において、ブランキング期間微調回路80は、加算器(+1)830、減算器(-1)831、セレクタ832、レジスタ833により構成されている。
【0138】セレクタ832は、FIFO-E信号437とFIFO-F信号436、水平ブランキング設定回路456からの水平ブランキング値、加算器830の出力、減算器831の出力が供給される。
【0139】FIFO-E信号437は、FIFO450の容量が空(EMPTY)の時に出力される信号で、FIFO-F信号436は、FIFO450の容量が満杯(FULL)の時に出力される信号である。
【0140】セレクタ832は、FIFO-E信号437とFIFO-F信号436がローレベルの場合、水平ブランキング値をそのままレジスタ833に供給する。レジスタ833は、水平ブランキング値をDER発生部457のコンパレータ801に出力する。
【0141】また、FIFO450に対しデータ書き込みよりも読み出しが多くなり、FIFO-E信号437が発生した場合、セレクタ832は、加算器830の出力を選択してレジスタ833の値に1加算した値を出力する。即ち、出力値を1加算することにより、水平ブランキング期間を長くしてFIFO450でのデータの読み出しを遅らせる。
【0142】一方、FIFO450に対しデータ読み出しよりも読み込みが多くなり、FIFO-F信号436が発生した場合、セレクタ832は、減算器831の出力を選択してレジスタ833の値を1減算した値を出力する。即ち、出力値を1減算することにより、水平ブランキング期間を短くしてFIFO450でのデータの読み込みを速くする。」

「【0144】図14において、FIFO450は、書き込み側のアドレスカウンタ50、読み出し側のアドレスカウンタ51、Dual-Port-RAM52より構成されている。
(略)
【0146】アドレスカウンタ50では、DEW信号430とWCLK信号440が供給される。アドレスカウンタ50では、書き込み側のアドレスをカウントし、Dual-Port-RAM52に格納されるアドレスを設定する。アドレスカウンタ51は、DER信号432とRCLK信号433が供給され、読み出し側のアドレスをカウントし、Dual-Port-RAM52から出力するアドレスを設定する。アドレスカウンタ50、51の出力は、Dual-Port-RAM52、コンパレータ53、減算器54に供給される。
【0147】比較回路480は、コンパレータ53、57、58、減算器54、AND回路55、加算器56より構成されている。この比較回路480は、図13に示すブランキング期間微調回路80に入力されるFIFO-F信号436、FIFO-E信号437を生成する。
(略)
【0153】一方、コンパレータ58は、加算器56からの入力と、所定値MINを比較する。加算器56の値がMINよりも小さくなる場合、FIFO-E437として「1」を出力する。即ち、Dual-Port-RAM52に読み出されたデータと書き込まれたデータの差がMIN以下になるとFIFO-E437が出力される。」

(1-2)甲第1号証に記載された発明
上記(1-1)によると、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
(1a)?(1m)は、各構成を区別するために当審で付与した。各構成を以下「構成1a」?「構成1m」という。甲1発明の各構成の末尾に、各構成に対応する甲第1号証の段落番号を大括弧を用いて示した。

(甲1発明)
(a)パソコン40からRGB信号42及びDE信号43が供給され、LCDパネル47に対応した画像信号をLCDパネル47に供給する画像処理部45であって、[0058]、[0059]
(b)画像処理部45は、FIFO450、ラインバッファ451、補間演算部452、FIFO制御部453、DER発生部457で構成され、[0063]
(c)FIFO450には、パソコン40からRGB信号42及びDE信号43が供給され、FIFO制御部453から制御信号が供給され、これらの入力信号により、メモリの書き込み、読み出しを行い、ラインバッファ451、補間演算部452に信号を供給し、[0064]
(d)補間演算部452は、FIFO450、ラインバッファ451からの画像信号により補間して画像を作成し、LCDパネル47に出力し、LCDパネル47に応じて水平同期信号(PHS)も生成し[0066]、
(e)FIFO制御部453は、DER発生部457からの読み出しDE信号(DER)により、RGB信号42をLCDパネル47の特性(解像度、最大周波数、最大水平周波数等)に適応するように制御する制御信号を生成し、FIFO450に送り、[0067]
(f)DER発生部457は、信号の読み出しを決定するDER信号432を生成し、FIFO制御部453にDER信号432を供給し、[0071]
(g)DER発生部457は、ブランキング期間微調回路80、水平有効期間カウンタ804より構成され、[0115]
(h)DER発生部457では、水平ブランキング値、読み込みが開始した時のパルスであるR-START信号811が供給され、[0116]
R-START信号811が供給されると、DER信号432として「1」を出力し、水平有効期間カウンタ804のカウント値をクリアし、[0121]
パネルの水平解像度と水平有効期間カウンタ804からのカウンタ値とを比較し、水平有効期間カウンタ804のカウンタ値の方が大きくなると、DER信号432として「0」が出力され、[0123]、[0126]
(i)ブランキング期間微調回路80は、水平ブランキング値を調整し、調整された水平ブランキング値を供給し、[0117]
(j)ブランキング期間微調回路80は、FIFO-E信号437(EMPTY)及び水平ブランキング値が供給され、FIFO-E信号437(EMPTY)はFIFO450の容量が空(EMPTY)の時に出力される信号であり、FIFO450に対しデータ書き込みよりも読み出しが多くなり、FIFO-E信号437(EMPTY)が発生した場合、水平ブランキング期間を長くしてFIFO450でのデータの読み出しを遅らせ、[0137]?[0141]
(k)FIFO450は、書き込み側のアドレスカウンタ50、読み出し側のアドレスカウンタ51、Dual-Port-RAM52より構成され、[0144]
(l)FIFO450のアドレスカウンタ51は、DER信号432が供給され、読み出し側のアドレスをカウントし、Dual-Port-RAM52から出力するアドレスを設定し、[0146]
(m)FIFO450は、Dual-Port-RAM52に読み出されたデータと書き込まれたデータの差がMIN以下になると、ブランキング期間微調回路80に入力されるFIFO-E信号437(EMPTY)を生成する、[0147]、[0153]
(a)画像処理部45。


(2)甲第2号証
(2-1)甲第2号証に記載された事項
甲第2号証(特開2012-128589号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は強調のために当審で付したものである。

「【技術分野】
【0001】
データ転送装置、データ転送方法、及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタルスチルカメラ等の電子機器は、メモリに格納された画像データを表示する表示部を備えている。電子機器のデータ転送装置は、FIFO(first in first out)方式のメモリを有し、メモリから表示部に転送するデータ転送を調整する(例えば、特許文献1及び2参照)。」

「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、メモリからデータを読み出す処理が遅れると、表示部にデータを出力するタイミングに間に合わなくなる転送破綻が発生する。この転送破綻は表示部における表示画像の乱れを生じさせる。また、転送破綻は、データ転送装置以外の処理装置(例えばCPU)における処理の増加を招く。
【0005】
このデータ転送装置で、転送破綻の発生を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点によれば、ライトポインタに従って前記メモリから出力されるデータを記憶し、リードポインタに従ってデータを出力する複数のFIFOメモリと、前記ライトポインタと前記リードポインタとに基づいて複数の前記FIFOメモリの空き容量をそれぞれ監視し、所定量のデータが記憶可能な前記FIFOメモリに対応するデータを前記メモリから読み出すための読み出し信号を出力する入力制御部と、前記転送先の要求タイミングに応じたデータを出力するように複数の前記FIFOメモリを制御する出力制御部と、を含み、前記入力制御部は、複数の前記FIFOメモリのそれぞれに対応する複数の転送量を記憶し、複数の前記転送量に従って、前記メモリから出力されるデータを、複数の前記FIFOメモリのうちの1つに格納し、前記出力制御部は、複数の前記FIFOメモリのそれぞれに対応する複数の出力量を記憶し、複数の前記出力量に従って、複数の前記FIFOメモリを制御する。」

「【0011】
画像処理プロセッサ12は、撮像部11から入力される画像データをメモリ13に一時的に格納する。このメモリ13は、複数フレームの画像データを記憶可能なメモリ容量のメモリである。すなわち、メモリ13は共通フレームメモリ(作業メモリ)として機能する。このメモリ13は、例えばシンクロナスダイナミックランダムアクセスメモリ(SDRAM)などの書き替え可能なメモリである。画像処理プロセッサ12は、メモリ13に格納した画像データに対して各種画像処理を施す。すなわち、画像処理プロセッサ12は、メモリ13から読み出した画像データに対して各種画像処理を施し、処理後の画像データをメモリ13に格納する。」

「【0017】
出力部33は、メモリ13に格納された各フレームの画像データを表示部15に順次転送する。メモリ13には、複数ラインの画素データが各ライン毎に格納されている。1ラインの画像データは1フレームの水平方向の画素列であり、表示部15の1つの走査線に表示する画像に対応する。表示部15は、水平同期信号と垂直同期信号に従って各フレーム画像を表示する。従って、出力部33は、表示部15の表示順序に従ってメモリ13の画像データを、表示のタイミングに応じて転送する。」

「【0024】
(第一実施形態)
図2に示すように、出力部33は、複数(例えば2つ)のFIFOメモリ41,42と、両FIFOメモリ41,42のデータ入力を制御する入力制御部43と、両FIFOメモリ41,42のデータ出力を制御する出力制御部44とを備えている。」

「【0102】
以上記述したように、本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)出力部33は、リードポインタRP1,RP2に従ってデータを記憶し、ライトポインタに従ってデータを出力する2つのFIFOメモリ41,42と、FIFOメモリ41,42の入力を制御する入力制御部43と、FIFOメモリ41,42の出力を制御する出力制御部44を備える。入力制御部43は、FIFOメモリ41,42の空き容量をそれぞれ監視し、バースト転送量のデータが記憶可能なFIFOメモリ41,42に対応するデータをメモリ13から読み出すための要求信号RQ1,RQ2を出力する。また、入力制御部43は、転送する画像データFPを分割した分割画像データFP1,FP2に応じた要求回数RN1,RN2を記憶し、その要求回数RN1,RN2のブロックデータを対応するFIFOメモリ41,42に対して連続的に格納する。出力制御部44は、表示部15の要求タイミングに応じて、FIFOメモリ41,42を制御する。また、出力制御部44は、分割画像データFP1,FP2に応じた出力データ量を記憶し、その出力データ量に従ってFIFOメモリ41,42を制御する。」

(2-2)甲第2号証に記載された技術
上記(2-1)によると、甲第2号証には、次の技術(以下「甲第2号証に記載された技術」という。)が記載されていると認められる。

(甲第2号証に記載された技術)
データ転送装置において、転送破綻の発生を低減することを目的として、
メモリに格納された各フレームの画像データを表示部に順次転送する出力部を備え、
前記出力部は、2つのFIFOメモリと、両FIFOメモリのデータ入力を制御する入力制御部と、両FIFOメモリのデータ出力を制御する出力制御部とを備え、
入力制御部は、FIFOメモリの空き容量をそれぞれ監視し、バースト転送量のデータが記憶可能なFIFOメモリに対応するデータをメモリから読み出すための要求信号を出力し、転送する画像データFPを分割した分割画像データFP1,FP2に応じたブロックデータを対応するFIFOメモリに対して連続的に格納し、
出力制御部は、表示部の要求タイミングに応じて、分割画像データFP1,FP2に応じた出力データ量に従ってFIFOメモリのデータ出力を制御する技術。

(3)甲第3号証
(3-1)甲第3号証に記載された事項
甲第3号証(特開2012-70306号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は強調のために当審で付したものである。

「【0006】
本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、撮影センサーの出力データに基づいて生成された被写体の像を示す画像データを表示部に表示する際の画像の乱れを防止することを目的とする。」

「【0042】
一方、当該エリアイメージセンサー15から線順次に出力される出力データに基づいて液晶パネル42における表示を行うため、画像データ出力部201とVRAM51とリードバッファー56とタイミング情報取得部30aと表示制御部30bとを備えている。VRAM51は少なくとも1フレーム分の画像データを蓄積可能である。
VRAM51は様々な処理部からアクセスされるため、表示部40が画像データを表示しようとするタイミングでVRAM51にアクセスしても実際に画像データを取得できるまで時間がかかる可能性がある。そのため本実施形態では、VRAM51と表示部40との画像データの受け渡しはリードバッファー56を介して行われる。
画像データ出力部201は、ラインバッファー52dに記録された画像データ(Data)をVRAM51に対して線順次に出力する。画像データのVRAM51への出力が完了した時点で画像データ出力部201はメモリー書き込み終了信号(第一記憶部出力タイミング情報に相当)をタイミング情報取得部30aに出力する。リードバッファー56はVRAM51から後述するタイミングで画像データを予め読み出して蓄積しておく。そして表示制御部30bから指示されたタイミング(水平同期信号DHsync)で、液晶パネルドライバー41によってリードバッファー56から線順次に1ラインずつ画像データが読み出される。この結果、エリアイメージセンサー15で撮影された被写体の像が被写体像表示領域R1(液晶パネル42の1?682ライン)に表示される。また、CPU50は、少なくとも情報表示領域R2での表示を行う以前においてVRAM51に対してOSDデータを記録しておく。そして、液晶パネル42の683ライン?768ラインの表示を行う際に、VRAM51に記録されたOSDデータはDataとして液晶パネルドライバー41から線順次に読み出される。この結果、撮影条件等の文字が情報表示領域R2に表示される。」

「【0049】
被写体像表示領域R1内の最終ラインでない場合は、次に表示するラインをNとすると(N+1)ライン目の画像データがVRAM51に出力完了したことを示すメモリー書き込み終了信号が出力されたか否かをタイミング情報取得部30aが判定し(ステップS125)、出力されるまでの間、表示制御部30bは水平方向のフロントポーチ期間HFPを延長する(ステップS130)。すなわち、次の水平同期信号DHsyncを出力するまでの期間を延長する。」

(3-2)甲第3号証に記載された周知技術
上記(3-1)によると、、甲第3号証には、次の周知技術(以下「甲第3号証に記載された周知技術」という。)が記載されていると認められる。

(甲第3号証に記載された周知技術)
画像データを表示部に表示する際の画像の乱れを防止するために、画像データがVRAMに出力完了されるまでの間、次の水平同期信号を出力するまでの期間を延長する技術。

3.2.2 判断

(1)本件訂正発明1について
本件訂正発明1を再掲する。

(本件訂正発明1)【請求項1】
(1A)第1の格納部に格納された1フレームの画像データを含む出力データを転送先に転送するデータ転送装置であって、
前記出力データは、前記画像データと水平前ブランクデータと水平後ブランクデータと垂直前ブランクデータと垂直後ブランクデータとを含み、
(1B)前記第1の格納部の前記画像データを読み出す要求信号を出力し、前記要求信号に対する許可信号に基づいて前記第1の格納部の前記画像データを読み出して第2の格納部に格納し、前記第2の格納部の前記画像データをデータ要求信号に応答して出力し、前記第2の格納部に格納したデータ量に応じた状態信号を出力する転送制御回路と、
(1C)前記状態信号に基づいて、前記第2の格納部が第1の格納状態よりデータ量が少ない第2の格納状態のときに前記第2の格納部の状態が前記第1の格納状態となるまでブランク追加信号を出力するブランク制御部と、
(1D)前記出力データの数をカウントした水平カウント値と、前記水平後ブランクデータの数を調整しないラインデータにおけるデータの数であって水平前ブランクサイズと水平画像サイズと水平後ブランクサイズとを合計した標準データ数に応じて出力する水平同期信号を前記ブランク追加信号に応じて遅延する水平同期信号生成部と、
(1E)前記出力データを出力する出力データ生成部であって、前記水平同期信号に基づいて前記水平カウント値が前記水平前ブランクサイズとなるまで前記水平前ブランクデータを出力し、前記データ要求信号を出力し、水平画像サイズの画像データを前記転送制御回路から受け取って出力した後、次の前記水平同期信号まで前記水平後ブランクデータを出力する出力データ生成部と、
(1A)を有することを特徴とするデータ転送装置。

ア 甲1発明との対比
本件訂正発明1と甲1発明とを対比する。

(ア)構成1Aについて
構成aの「RGB信号」は、ディジタルビデオ信号であってLCDパネル47で画像を表示するから、構成1Aの「1フレームの画像データ」に相当する。構成aの「パソコン40」は、RGB信号を格納しているといえるから、構成1Aの「第1の格納部」に相当する。
そして、構成aの「画像処理部45」は、画像データを含む出力データを転送先のLCDパネル47に転送するといえるから、構成1Aの「データ転送装置」に相当する。
構成aの「LCDパネル47に対応した画像信号」は、転送先であるLCDパネル47に供給するから、「転送先に出力するデータ」といえる。ここで、構成aの「LCDパネル47に対応した画像信号」は、構成dによれば、補間演算部452が、「FIFO450、ラインバッファ451からの画像信号により補間して」作成した画像データであり、当該画像信号はパソコン40から供給された画像信号であるから、「画像データとラインバッファ451からの画像信号により補間して作成した画像データ」といえる。
よって、構成1Aと構成aとは、「第1の格納部に格納された1フレームの画像データを含む転送先に出力するデータを転送先に転送するデータ転送装置」である点で共通する。
しかしながら、「転送先に出力するデータ」について、構成1Aは、「前記画像データと水平前ブランクデータと水平後ブランクデータと垂直前ブランクデータと垂直後ブランクデータとを含み」という構成であるのに対して、構成aは、「画像データとラインバッファ451からの画像信号により補間して作成した画像データ」である点で相違する(相違点1)。

(イ)構成1Bについて
構成b?構成e及び構成j?構成mの「FIFO450」は、構成1Bの「第2の格納部」に相当する。
構成eの「DER発生部457からの読み出しDE信号(DER)」及び構成fの「信号の読み出しを決定するDER信号432」は、その供給先の「FIFO制御部453」からFIFO450のアドレスカウンタ51に供給され、出力するアドレスを設定することで、FIFO450から画像データを出力させるといえるから、構成1Bの「データ要求信号」に相当する。
また、構成mのFIFO450が生成する「FIFO-E信号437」は、FIFO450の格納したデータ量に応じた信号といえる。
そして、構成eの「FIFO制御部453」は、FIFO450に制御信号を送り、構成cの「読み出しを行い、ラインバッファ451、補間演算部452に信号を供給」することを行う。
よって、構成eの「FIFO制御部453」及び構成j?構成mの「FIFO450」は、構成1Bの「前記第2の格納部の前記画像データをデータ要求信号に応答して出力し、前記第2の格納部に格納したデータ量に応じた状態信号を出力する転送制御回路」に相当する。
したがって、構成1Bと、構成b?構成e及び構成j?構成mの「FIFO450」及び構成eの「FIFO制御部453」とは、「前記第2の格納部の前記画像データをデータ要求信号に応答して出力し、前記第2の格納部に格納したデータ量に応じた状態信号を出力する転送制御回路」である点で一致する。
しかしながら、構成1Bは、「前記第1の格納部の前記画像データを読み出す要求信号を出力し、前記要求信号に対する許可信号に基づいて前記第1の格納部の前記画像データを読み出して第2の格納部に格納」する構成であるのに対して、甲1発明は、そのような構成を有していない点で相違する(相違点2)。

(ウ)構成1Cについて
構成mのFIFO450が生成する「FIFO-E信号437(EMPTY)」は、「読み出されたデータと書き込まれたデータの差がMIN以下になる」と生成される信号であるから、「前記第2の格納部が第1の格納状態よりデータ量が少ない第2の格納状態のときに前記第2の格納部の状態が前記第1の格納状態となるまで」生成される「状態信号」といえる。
構成i及び構成jの「ブランキング期間微調回路80」は、FIFO-E信号437(EMPTY)が発生した場合、水平ブランキング期間を長くするから、構成kの「調整された水平ブランキング値」は、「水平ブランキング期間」を追加する追加信号といえる。
よって、構成1Cと、構成i及び構成jの「ブランキング期間微調回路80」とは、「前記状態信号に基づいて、前記第2の格納部が第1の格納状態よりデータ量が少ない第2の格納状態のときに前記第2の格納部の状態が前記第1の格納状態となるまで追加信号を出力するブランク制御部」である点で共通する。
しかしながら、「追加信号」について、構成1Aは、「ブランク追加信号」であるのに対して、構成i及び構成jは、「調整された水平ブランキング値」である点で相違する(相違点3)。

(エ)構成1Dについて
構成hのDER発生部457の「水平有効期間カウンタ804のカウント値」は、DER信号432として「0」が出力されるまでのカウント値であり、当該「DER信号432」は、FIFO450からの画像信号の読み出しを制御するから、構成hの「水平有効期間カウンタ804のカウント値」は、「転送先に出力するデータ」の数をカウントした値である点で、構成1Dの「水平カウント値」に相当する。
構成dの補間演算部452が生成する「水平同期信号」は、転送先であるLCDパネル47に応じたものであるから、構成1Dの「水平同期信号」に相当する。
したがって、構成1Dと、構成e?構成hの「DER発生部457」及び構成dの「補間演算部452」とは、「転送先に出力するデータの数をカウントした水平カウント値と、出力する水平同期信号を前記追加信号に応じて遅延する水平同期信号生成部」である点で共通する。
しかしながら、上記(ア)の「転送先に出力するデータ」に係る相違点、及び、上記(ウ)の「追加信号」に係る相違点に加えて、「水平同期信号」について、構成1Dは、「前記水平後ブランクデータの数を調整しないラインデータにおけるデータの数であって水平前ブランクサイズと水平画像サイズと水平後ブランクサイズとを合計した標準データ数に応じて出力する水平同期信号」であるのに対して、構成e?構成h及び構成dは、そのような構成ではない点で相違する(相違点4)。

(オ)構成1Eについて
上記(イ)で検討したとおり、構成eのDER発生部457が生成する「DER信号432」は、構成1Eの「データ要求信号」に相当する。
構成dの「補間演算部452」は、FIFO450、ラインバッファ451からの画像信号を受け取って出力するものといえる。
したがって、構成1Eと、構成e?構成hの「DER発生部457」及び構成dの「補間演算部452」とは、「転送先に出力するデータを出力する出力データ生成部であって、前記データ要求信号を出力し、水平画像サイズの画像データを前記転送制御回路から受け取って出力する出力データ生成部」である点で共通する。
しかしながら、上記(ア)の「転送先に出力するデータ」に係る相違点、及び、上記(エ)の「水平同期信号」に係る相違点に加えて、「出力データ生成部」について、構成1Eは「前記水平同期信号に基づいて前記水平カウント値が前記水平前ブランクサイズとなるまで前記水平前ブランクデータを出力し、画像データを出力した後、次の前記水平同期信号まで前記水平後ブランクデータを出力する」構成であるのに対して、構成e?構成h及び構成dは、そのような構成ではない点で相違する(相違点5)。

イ 一致点、相違点
上記アによれば、本件訂正発明1と甲1発明との一致点、相違点は次のとおりである。

(一致点)
(1A’)第1の格納部に格納された1フレームの画像データを含む転送先に出力するデータを転送先に転送するデータ転送装置であって、
(1B’)前記第2の格納部の前記画像データをデータ要求信号に応答して出力し、前記第2の格納部に格納したデータ量に応じた状態信号を出力する転送制御回路と、
(1C’)前記状態信号に基づいて、前記第2の格納部が第1の格納状態よりデータ量が少ない第2の格納状態のときに前記第2の格納部の状態が前記第1の格納状態となるまで追加信号を出力するブランク制御部と、
(1D’)転送先に出力するデータの数をカウントした水平カウント値と、出力する水平同期信号を前記追加信号に応じて遅延する水平同期信号生成部と、
(1E’)前記転送先に出力するデータを出力する出力データ生成部であって、前記データ要求信号を出力し、水平画像サイズの画像データを前記転送制御回路から受け取って出力する出力データ生成部と、
(1A’)を有することを特徴とするデータ転送装置。

(相違点1)
「転送先に出力するデータ」について、本件訂正発明1は、「前記画像データと水平前ブランクデータと水平後ブランクデータと垂直前ブランクデータと垂直後ブランクデータとを含み」という構成であるのに対して、甲1発明は、「画像データとラインバッファ451からの画像信号により補間して作成した画像データ」である点。

(相違点2)
「転送制御回路」について、本件訂正発明1は「前記第1の格納部の前記画像データを読み出す要求信号を出力し、前記要求信号に対する許可信号に基づいて前記第1の格納部の前記画像データを読み出して第2の格納部に格納」する構成であるのに対して、甲1発明は、そのような構成を有していない点

(相違点3)
「追加信号」について、本件訂正発明1は、「ブランク追加信号」であるのに対して、甲1発明は、「調整された水平ブランキング値」である点。

(相違点4)
「水平同期信号」について、本件訂正発明1は、「前記水平後ブランクデータの数を調整しないラインデータにおけるデータの数であって水平前ブランクサイズと水平画像サイズと水平後ブランクサイズとを合計した標準データ数に応じて出力する水平同期信号」であるのに対して、甲1発明は、そのような構成ではない点。

(相違点5)
「出力データ生成部」について、本件訂正発明1は、「前記水平同期信号に基づいて前記水平カウント値が前記水平前ブランクサイズとなるまで前記水平前ブランクデータを出力し、画像データを出力した後、次の前記水平同期信号まで前記水平後ブランクデータを出力する」構成であるのに対して、甲1発明は、そのような構成ではない点。

ウ 判断
相違点1及び相違点5について、検討する。

上記3.2.1(2)及び(3)のとおり、甲第2号証に記載された技術及び甲第3号証に記載された周知技術は、「水平前ブランクデータと水平後ブランクデータとを出力する出力データ生成部」を備えておらず、また、データ出力先である表示部に出力する「転送先に出力するデータ」に「水平前ブランクデータと水平後ブランクデータと垂直前ブランクデータと垂直後ブランクデータ」とを含む構成を有していない。

よって、甲1発明に甲第2号証に記載された技術及び甲第3号証に記載された周知技術を適用しても、相違点1及び相違点5の構成になり得るといえない。
したがって、相違点2?4について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲1発明に甲第2号証に記載された技術及び甲第3号証に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。

エ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、特許異議申立書の第26頁第6?12行目において、『本件特許発明1の「ブランクデータ」は、本件特許公報の段落0027に、「画像データPDを同期信号VD,HDに従って2次元的(マトリックス状)に配列した場合、画像データGDの周囲にブランクデータBDが配列される。」との記載があることから、表示に寄与しない何らかのデータであり、その値について何等の制約もない。水平ブランキング期間において表示に寄与しない何らかのデータを出力することは、単なる設計事項に過ぎない。』と主張している。

本件訂正発明1は、「表示部に画像データを転送する場合、メモリからデータを読み出す処理が遅れると、表示部にデータを出力するタイミングに間に合わなくなる転送破綻が生じる」(段落0004)ことを課題とし、この課題を解決するために、「ブランク追加信号に応じて」変更される「ブランクデータを出力する」構成を採用し、「転送破綻を低減することができる」という発明の効果を生じさせるものである。
本件訂正発明1の「出力データ」が、「水平前ブランクデータと水平後ブランクデータと垂直前ブランクデータと垂直後ブランクデータ」を含む構成は、上記の課題を解決するための構成として効果を有するものであり、甲1発明と構成上の相違を有するものである。
よって、当該構成は、単なる設計事項とすることはできず、特許異議申立人の主張を採用することはできない。

オ 小括
以上のとおり、当業者であっても、本件訂正発明1は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された技術及び甲第3号証に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものとは認められない。

(2)本件訂正発明2?4について
本件訂正発明2?4は、本件訂正発明1を引用する発明であるから、少なくとも、相違点1及び相違点5に係る構成を有している発明である。
したがって、本件訂正発明2?4は、甲1発明に甲第2号証に記載された技術及び甲第3号証に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。

(3)本件訂正発明8、9について
本件訂正発明8、9は、本件訂正発明1、2の装置に対応する方法の発明である。
したがって、本件訂正発明8、9は、甲1発明に甲第2号証に記載された技術及び甲第3号証に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。

(4)本件訂正発明11について
本件訂正発明11は、本件訂正発明1にさらに構成11A及び構成11Bを含む装置に対応する半導体装置の発明であるから、少なくとも、相違点1及び相違点5に係る構成を有している発明である。
したがって、本件訂正発明11は、甲1発明に甲第2号証に記載された技術及び甲第3号証に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。

(5)本件訂正発明5?7、10について
本件訂正請求による本件訂正5?7、10によって、請求項5?7、10に係る特許は削除されたため、取消理由が存在しないこととなった。本件特許の請求項5?7、10に対して、特許異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。


4 むすび
以上のとおりであるから、本件特許の訂正後の請求項1?4、8、9、11に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に本件特許の訂正後の請求項1?4、8、9、11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件特許の請求項5?7、10に対して、特許異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
データ転送装置、データ転送方法、半導体装置
【技術分野】
【0001】
データ転送装置、データ転送方法、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像データを扱う機器は、動画や静止画などの画像データを、同期信号(水平同期信号,垂直同期信号)にしたがって転送する(例えば、特許文献1及び2参照)。画像データを受信した機器はその画像データをメモリに格納する。そして、機器は、メモリから読み出した画像データに対する復号処理等の画像処理を行う。例えば、デジタルスチルカメラ等の機器は、メモリから読み出した画像データを表示部に表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-63136号公報
【特許文献2】特開2009-200938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、機器に含まれる各種の処理回路は、メモリに対してアクセス、即ちデータの書き込みやデータの読み出しを行う。これらのアクセスは、同時に発生する、つまりアクセスが競合する場合がある。すると、画像データを必要とするタイミングに対してメモリに対するアクセスが遅れる場合がある。このようなアクセスの遅れは、各種の処理回路において、必要とする画像データが間に合わない、所謂転送破綻を招く。例えば表示部に画像データを転送する場合、メモリからデータを読み出す処理が遅れると、表示部にデータを出力するタイミングに間に合わなくなる転送破綻が生じる。この転送破綻は表示部における表示画像の乱れを生じさせる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一観点によれば、第1の格納部に格納された1フレームの画像データを含む出力データを転送先に転送するデータ転送装置であって、前記出力データは、前記画像データと水平前ブランクデータと水平後ブランクデータと垂直前ブランクデータと垂直後ブランクデータとを含み、前記第1の格納部の前記画像データを読み出す要求信号を出力し、前記要求信号に対する許可信号に基づいて前記第1の格納部の前記画像データを読み出して第2の格納部に格納し、前記第2の格納部の前記画像データをデータ要求信号に応答して出力し、前記第2の格納部に格納したデータ量に応じた状態信号を出力する転送制御回路と、前記状態信号に基づいて、前記第2の格納部が第1の格納状態よりデータ量が少ない第2の格納状態のときに前記第2の格納部の状態が前記第1の格納状態となるまでブランク追加信号を出力するブランク制御部と、前記出力データの数をカウントした水平カウント値と、前記水平後ブランクデータの数を調整しないラインデータにおけるデータの数であって水平前ブランクサイズと水平画像サイズと水平後ブランクサイズとを合計した標準データ数に応じて出力する水平同期信号を前記ブランク追加信号に応じて遅延する水平同期信号生成部と、前記出力データを出力する出力データ生成部であって、前記水平同期信号に基づいて前記水平カウント値が前記水平前ブランクサイズとなるまで前記水平前ブランクデータを出力し、前記データ要求信号を出力し、水平画像サイズの画像データを前記転送制御回路から受け取って出力した後、次の前記水平同期信号まで前記水平後ブランクデータを出力する出力データ生成部と、を有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一観点によれば、転送破綻を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】撮像装置の概略図である。
【図2】画像処理部の一部ブロック図である。
【図3】(a)は撮像部の出力画像の説明図、(b)は撮像部の出力を示すタイミング図である。
【図4】(a)は再入力データの説明図、(b)は再入力データの転送を示すタイミング図である。
【図5】信号生成部のブロック図である。
【図6】ブランク制御部の処理を示すフローチャートである。
【図7】ブランク制御部の処理を示すフローチャートである。
【図8】ブランク制御部の処理を示すフローチャートである。
【図9】ブランク制御部の処理を示すフローチャートである。
【図10】ブランク制御部の処理を示すフローチャートである。
【図11】水平同期信号生成部の処理を示すフローチャートである。
【図12】水平同期信号生成部の処理を示すフローチャートである。
【図13】(a)(b)は垂直同期信号生成部の動作を示すフローチャートである。
【図14】画像データ出力部の動作を示すフローチャートである。
【図15】信号生成部の動作を示すタイミング図である。
【図16】信号生成部の動作を示すタイミング図である。
【図17】信号生成部の動作を示すタイミング図である。
【図18】(a)(b)は、1フレームの画像データの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、一実施形態を添付図面に従って説明する。
図1に示すように、この撮像装置は例えばデジタルスチルカメラであり、撮像部11、画像処理部(ISP:Image Signal Processor)12、メモリ(記憶部)13、表示デバイス14を有している。
【0009】
撮像部11は、撮像光学系21と、撮像素子部22と、アナログフロントエンド(AFE:Analog Front End)23を有している。
撮像光学系21は、被写体からの光を集光する複数のレンズ(フォーカスレンズなど),これらのレンズを通過した光の量を調整する絞り,等を含み、光学的な被写体像を撮像素子部22に導く。撮像素子部22は、例えば、ベイヤ配列のカラーフィルタと、撮像素子とを含む。撮像素子は、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサである。撮像素子は、カラーフィルタを介して入射する光の量に応じた撮像信号(アナログ信号)を出力する。アナログフロントエンド(AFE)23は、撮像素子部22から出力されるアナログの撮像信号をデジタルの撮像データに変換するA/D変換回路を含み、撮像データを出力する。また、アナログフロントエンド(AFE)23は、画像処理部(ISP)12から供給される制御信号を、同期信号に応じて撮像素子部22へ出力する。同期信号は、1つのフィールドの区切りを示す垂直同期信号と、1ラインの区切りを示す水平同期信号を含む。
【0010】
画像処理部12は、複数の処理部31?37、DMA調停部38、メモリコントローラ39、CPU(制御部)40を有している。例えば、各処理部31?37は、センサインタフェース(センサI/F)31、入力画像補正部32、補正部33、画像処理部34、静止画コーデック部35、メモリカードインタフェース(メモリカードI/F)36、表示インタフェース(表示I/F)37である。センサI/F31,入力画像補正部32,補正部33,画像処理部34,静止画コーデック部35,メモリカードI/F36,表示I/F37,DMA調停部38は、内部バス41を介して互いに接続されている。
【0011】
DMA調停部38はメモリコントローラ39を介してメモリ13と接続されている。メモリ13は第1の格納部の一例である。図1に示すメモリ13は、例えば同期式半導体メモリ(SDRAM:Synchronous Dynamic Random Access Memory)である。メモリ13には、撮像部11から出力される撮像データがセンサI/F31によって格納される。また、メモリ13には、各処理部32?35による処理後の画像データが格納される。
【0012】
センサI/F31は、撮像部11から出力される撮像データ(RGB形式の画像データ(ベイヤデータ))を受け取り、メモリ13に格納する。入力画像補正部32は、メモリ13に格納された画像データに対して補正処理を行い、補正後の画像データを出力する。画像データに対する補正は、例えば明るさやコントラストを調整するガンマ補正処理、輝度むらを補正するシェーディング補正処理、等である。入力画像補正部32から出力される補正後の画像データは、撮像装置の動作状態に応じた回路に対して供給される。例えば、補正後の画像データは、第1の動作モードにおいてメモリ13に格納され、第2の動作モードにおいて表示I/F37に供給され、第3の動作モードにおいて補正部33に供給される。
【0013】
補正部33は、メモリ13から読み出した画像データ、又は入力画像補正部32から供給される画像データに対して補正処理を行い、補正後の画像データをメモリ13に格納する。補正部33が行う補正処理は、例えば、光学系による画像の歪みを補正する処理、設定に基づく色調変更などの色補正処理、等である。画像処理部34は、1つ又は複数の処理部である。画像処理部34が行う処理は、例えば、画素数を増減する解像度変換処理、画像の輪郭(エッジ)を強調するエッジ強調処理、画像データに含まれるノイズを除去するノイズ除去処理、等が含まれる。静止画コーデック部35は、メモリ13に格納された画像データを読み出し、その画像データを所定の方式(例えばJPEG(Joint Photographic Experts Group)方式)により符号化し、符号化後の画像データ(符号化データ)をメモリ13に格納する。なお、画像処理部12に含まれる処理部31?35、各処理部31?35の処理内容は一例を示すものであり、画像処理部12が含む処理部の種類や処理内容は、適宜設定されてもよい。
【0014】
メモリカードI/F36は、撮像装置に装着されるメモリカード15と接続される。メモリカードI/F36は、メモリ13に格納されたデータ(例えば圧縮された画像データ)をメモリカード15に格納する。表示I/F37には、表示デバイス14が接続されている。表示デバイス14は、例えば液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)である。表示デバイス14は、撮影する画像(撮影フレーム)の確認、撮影された画像の表示、撮像装置の駆動源であるバッテリの残量、撮影モード、等に用いられる。例えば、表示I/F37は、メモリ13に格納された画像データを読み出し、その画像データを表示デバイス14に出力する。なお、表示デバイス14を、電子ビューファインダ(EVF:Electronic View Finder)や、外部接続ためのインタフェース(例えばHDMI:High-Definition Multimedia Interface)としてもよい。
【0015】
センサI/F31,入力画像補正部32,補正部33,画像処理部34,静止画コーデック部35,メモリカードI/F36,表示I/F37は、それぞれダイレクトメモリアクセスコントローラ(DMAC:Direct Memory Access Controller)31a?37aを有している。DMAC31a?37aは、各回路31?37が行う処理に応じたアクセス要求を出力する。例えば、センサI/F31は、撮像部11から出力される撮像データを、メモリ13に格納する。このため、センサI/F31のDMAC31aは、書き込み要求(ライトリクエスト)を出力する。表示I/F37は、表示デバイス14に表示する画像データをメモリ13から読み出す。このため、表示I/F37のDMAC37aは、読み出し要求(リードリクエスト)を出力する。DMAC31a?37aは、転送制御回路の一例である。
【0016】
DMA調停部38は、各回路31?37のDMAC31a?37aから出力され競合する要求(リクエスト)を、例えば各処理部31?37に対応して設定された優先度に従って調停し、1つの回路に対するアクセスを許可する。アクセスが許可された回路は、メモリ13に対するアクセスのための制御信号を出力する。読み出し要求の場合、メモリコントローラ39は、制御信号に応じてメモリ13からデータを読み出し、その読み出したデータを要求元に出力する。メモリコントローラ39は、書き込み要求と、その要求元から出力されるデータをメモリ13に出力し、メモリ13はそのデータを記憶する。
【0017】
CPU40は、画像処理部12全体を統括制御する。CPU40は、処理に必要な情報の各処理部への設定及びデータの書き込み/読み出し制御等を行う。また、CPU40は、図示しない操作部の操作に応じて動作モードや各処理において必要な情報(パラメータ)を設定する。
【0018】
次に、画像データの流れの概略を説明する。
図2に示すように、撮像部11から出力される画像データGDは、センサI/F31の補正回路31b及び転送制御回路(TRFch)31aとメモリインタフェース(メモリI/F)45を介してメモリ13に格納される。補正回路31bは、画像データGDに対して、所定の補正処理を行う。補正処理は、例えばホワイトバランス調整やゲイン調整、欠陥信号の補正などである。
【0019】
転送制御回路(TRFch)31aは、図1に示すDMAC31aに対応する。メモリI/F45は、図1に示すDMA調停部38及びメモリコントローラ39に対応する。転送制御回路31aは、メモリ13に対する書き込みのための要求信号REQを出力する。メモリI/F45は、メモリ13に対するアクセスの許可信号ACKを出力する。そして、転送制御回路31aは、画像データを書き込む領域を示すアドレス信号ADDRと、画像データMDTを出力する。アドレス信号ADDR及び画像データMDTは、メモリI/F45を介してメモリ13に供給される。メモリ13は、供給されるアドレス信号ADDRに応じた記憶領域に画像データMDTを記憶する。
【0020】
入力画像補正部32は、転送制御回路32a、信号生成部32b、補正回路32cを含む。転送制御回路32aは、補正処理を開始する信号に応答してメモリ13から画像データを読み出すための要求信号REQを出力する。メモリI/F45は、メモリ13に対するアクセスの許可信号ACKを出力する。そして、転送制御回路32aは、画像データを読み出す領域を示すアドレス信号ADDRを出力する。メモリ13は、このアドレス信号ADDRに応じた領域に格納されたデータを出力する。このメモリ13から出力されるデータは、メモリI/F45を介してデータMDTとして転送制御回路32aに供給される。
【0021】
転送制御回路32aは、信号生成部32bのデータ要求に応答して信号生成部32bに対して画像データを出力する。信号生成部32bは、補正回路32cに対して、同期信号VD,HDと画像データPDを出力する。転送制御回路32aと信号生成部32bはデータ転送部の一例である。補正回路32cは同期信号VD,HDにしたがって画像データPDを受け取り、その画像データPDに対して補正処理を行う。補正処理によって生成された画像データは、表示デバイス14に供給される。なお、補正処理によって生成された画像データは、1つの動作モードに応じてメモリ13に格納され、また別の動作モードに応じて破線にて示すように補正部33の補正回路33bに供給される。
【0022】
このように、画像処理部12は、撮像部11から入力した画像データを、外部のメモリ13に一旦格納し、そのメモリ13から再び入力する。また、画像処理部12は、メモリ13から読み出した画像データに対して処理を行い、処理後の画像データをメモリ13に格納する。そして、画像処理部12は、別の処理のために、メモリ13の画像データ、つまり処理後の画像データを入力する。このため、外部のメモリ13から画像データを入力する処理は、再入力処理と呼ばれる。
【0023】
補正部33は、転送制御回路33aと補正回路33bを含む。転送制御回路33aは、上記の転送制御回路31a,32aと同様に、メモリI/F45に対して各種の信号の授受を行い、メモリ13をアクセスする。補正回路33bは、メモリ13から読み出した画像データ、又は補正回路32cから供給される画像データに対して補正処理を行い、補正後の画像データをメモリ13に格納する。同様に、画像処理部34は転送制御回路34aと処理回路34bを含む。転送制御回路34aは、上記の転送制御回路31a,32aと同様に、メモリI/F45に対して各種の信号の授受を行い、メモリ13をアクセスする。処理回路34bは、メモリ13から読み出した画像データに対して処理の処理を行い、処理後の画像データをメモリ13に格納する。
【0024】
上記の信号生成部32bから出力される画像データPDは、メモリ13から読み出された画像データと、その画像データに対して信号生成部32bが付加したブランクデータを含む。このブランクデータは、例えば補正回路32cにおける補正処理において利用される。
【0025】
ここで、画像データGD,PDを説明する。
図3(a)に示すように、画像データGDは、複数の画素データGPを含む。この複数の画素データGPは、図1に示す撮像部11の撮像素子部22に含まれる撮像素子に対応する。撮像部11は、撮像素子部22の各撮像素子のアナログ信号に対応する画素データGPを、複数の撮像素子の配列にしたがって、図3(a)に示す矢印に示す順序で出力する。このとき、撮像部11は、図3(b)に示すように、クロック信号CLKと垂直同期信号VDsと水平同期信号HDsに応じたタイミングで画像データGDを出力する。垂直同期信号VDsの1周期が1フレーム(1画面)の画像データGDを出力する期間であり、水平同期信号HDsの1周期が1ラインの画像データGDを出力する期間である。
【0026】
図4(a)に示すように、画像データPDは、1フレームの画像データGDと、ブランクデータBDを含む。画像データGDの水平方向のデータ数を水平画像サイズHIMGとする。画像データGDの垂直方向のデータ数、つまり画像データGDのライン数を垂直画像サイズVIMGとする。
【0027】
図2に示す信号生成部32bは、図4(b)に示すように、クロック信号CLKと垂直同期信号VDと水平同期信号HDに従ってブランクデータと画像データを出力する。図4(a)に示すように、ブランクデータBDは、画像データGDを含むラインより前に出力される垂直前ブランクデータVSB、画像データGDを含むラインより後に出力される垂直後ブランクデータVEB、各ラインにおいて、画像データGDより前に出力される水平前ブランクデータHSB、画像データGDより後に出力される水平後ブランクデータHEBを含む。つまり、画像データPDを同期信号VD,HDに従って2次元的(マトリックス状)に配列した場合、画像データGDの周囲にブランクデータBDが配列される。
【0028】
各ブランクデータが含まれる領域の大きさ(画素数又はライン数であってサイズ)を、各領域に含まれるブランクデータの符号を用いるものとする。例えば、垂直前ブランクデータVSBのライン数、つまり垂直方向のデータ数を垂直前ブランクサイズVSB、垂直後ブランクデータVEBのライン数を垂直後ブランクサイズVEBとする。そして、各ラインにおいて、水平前ブランクデータHSBのデータ数を水平前ブランクサイズHSB、水平後ブランクデータHEBのデータ数を水平後ブランクサイズHEBとする。
【0029】
図2に示す補正回路32cは、例えば、各画素データに対する補正処理において、補正処理の対象とする画素データと、その画素データの周囲の画素データを必要とする。このような補正処理において、例えば図3(a)に示す画像データGDを用いると、画像データGDの周辺の画素データについて補正処理を行うことができないため、補正後の画素数が少なくなる。一方、補正処理において、図4(a)に示す画像データPDを用いた場合、画像データGDの周辺の画素データについて補正処理を行うことが可能となり、補正後の画素数の低下を防止することができる。なお、このような補正処理は、ブランクデータBDを付加する理由の一例である。
【0030】
上記したように、各転送制御回路31a?34aは、メモリI/F45を介してメモリ13をアクセスする。したがって、転送制御回路32aに対する画像データの転送は、断続的となる。信号生成部32bは、同期信号VD,HDに従って画像データPDを順次出力する。つまり、メモリ13から転送制御回路32aへ転送される画像データのタイミングと、信号生成部32bが要求する画像データのタイミングが異なる。このため、転送制御回路32aは、画像データを一時的に記憶するFIFO(first in first out)メモリ32dを有している。FIFO(first in first out)メモリ32dは記憶部の一例である。転送制御回路32aは、メモリ13から転送される画像データをFIFOメモリ32dに格納する。そして、転送制御回路32aは、信号生成部32bのデータ要求に従ってFIFOメモリ32dの画像データを出力する。FIFOメモリ32dは第2の格納部の一例である。
【0031】
次に、転送制御回路32aと信号生成部32bの詳細を説明する。
図5に示すように、信号生成部32bは、ブランク制御部(「BLNK Ctrl 」と表記)51、水平同期信号生成部(「HD Gen」と表記)52、垂直同期信号生成部(「VD Gen」と表記)53、出力データ生成部(「IMG Gen 」と表記)54を有している。
【0032】
転送制御回路32aは、起動信号OPENに応答して処理を開始する。まず、転送制御回路32aは、要求信号REQを出力する。そして、転送制御回路32aは、図2に示すメモリI/F45から許可信号ACKを受け取ると、アドレス信号ADDRを出力する。そして、転送制御回路32aは、図2に示すメモリI/F45を介してメモリ13から出力される画像データMDTを受け取り、画像データMDTをFIFOメモリ32dに格納する。そして、転送制御回路32aは、出力データ生成部54から供給されるデータ要求信号DTENに応答してFIFOメモリ32dから読み出した画像データRDTをクロック信号CLKにしたがって出力データ生成部54に出力する。このように、転送制御回路32aは、図2に示すメモリ13に格納された画像データを出力データ生成部54へ転送する。そして、転送制御回路32aは、設定レジスタ32eに格納された水平画像サイズHIMGと垂直画像サイズVIMGに応じた数の画像データを転送すると、1フレームの画像データに対する処理を終了する。
【0033】
また、転送制御回路32aは、FIFOメモリ32dの状態に対応する状態信号FSTを出力する。FIFOメモリ32dは、ライトポインタWPが示す位置(アドレス)に入力データMDTを記憶し、ライトポインタWPを更新する。また、FIFOメモリ32dは、リードポインタRPが示す位置(アドレス)のデータRDTを出力し、リードポインタRPを更新する。ポインタWP,RPの更新は、次のデータを書き込む位置又は読み出す位置を示す値に変更することである。データRDTは第1の出力データの一例である。データを順次書き込む又は読み出す場合、FIFOメモリ32dは、各ポインタWP,RPの値に所定値(例えば「1」)を加算した結果を、次のポインタWP,RPの値とする。
【0034】
FIFOメモリ32dは、ライトポインタWP及びリードポインタRPを循環的に管理する。FIFOメモリ32dは、1つの入力データMDTをライトポインタWPが示す位置に記憶し、ライトポインタWPを更新(+1)する。そして、FIFOメモリ32dは、ライトポインタWPがメモリ容量に対応する値n(例えば512)以上になると、ライトポインタWPの値をリセット(=0)する。従って、FIFOメモリ32dは、ライトポインタWPをメモリ容量に応じた値(例えば0?511)で循環させる。
【0035】
同様に、FIFOメモリ32dは、リードポインタRPが示す位置のデータRDTを出力し、次の読み出しデータの位置を示すようにリードポインタRPを更新(例えば、リードポインタRPを「+1」)する。そして、FIFOメモリ32dは、リードポインタRPの値がメモリ容量に対応する値(例えば512)になると、リードポインタRPの値をリセット(=0)にする。従って、FIFOメモリ32dは、リードポインタRPをメモリ容量に応じた値(例えば0?511)で循環させる。
【0036】
転送制御回路32aは、ライトポインタWPとリードポインタRPに基づいて、FIFOメモリ32dのデータ量を監視し、FIFOメモリ32dに対するデータの書き込みを制御する。また、転送制御回路32aは、FIFOメモリ32dのデータ量に応じた状態信号FSTを出力する。
【0037】
転送制御回路32aは、ライトポインタWPとリードポインタRPに基づいて、FIFOメモリ32dに格納されたデータの数MNMを算出する。このデータ数MNMは、FIFOメモリ32dに格納されたデータのうち、読み出しが行われていないデータの数である。そして、転送制御回路32aは、FIFOメモリ32dの記憶容量MMXと、データ数MNMに基づいて空き容量MEP(=記憶容量MMX-データ数MNM)を算出する。転送制御回路32aは、空き容量MEPと1回の要求信号REQに応じてメモリ13から転送制御回路32aに転送されるデータの数(=バースト転送量)とを比較する。そして、転送制御回路32aは、空き容量MEPがバースト転送量以上のとき、図2に示すメモリI/F45に対して要求信号REQを出力する。
【0038】
また、転送制御回路32aは、FIFOメモリ32dの記憶容量MMXと、データ数MNMに基づいて,データ格納率MRTを算出する。データ格納率MRTは、空き容量MEPに対するデータ数MNMの比率(百分率:%)である。データ格納率MRTは、FIFOメモリ32dにおけるデータの格納状態を示す。転送制御回路32aは、データ格納率MRTに基づいて状態信号FSTを出力する。
【0039】
例えば、データ格納率MRTが20[%]未満の場合、FIFOメモリ32dはほぼ空の状態(EMPTY)である。また、データ格納率MRTが20[%]以上,80[%]未満の場合、FIFOメモリ32dはある程度満たされている状態(HALF)である。そして、データ格納率MRTが80[%]以上の場合、FIFOメモリ32dはほぼ満たされている状態(FULL)である。転送制御回路32aは、これら3つの状態を示す状態信号FSTを出力する。例えば、転送制御回路32aは、第1の状態(EMPTY)に応じて値「0」の状態信号FSTを出力し、第2の状態(HALF)に応じて値「1」の状態信号FSTを出力し、第3の状態(FULL)に応じて値「2」の状態信号FSTを出力する。なお、FIFOメモリ32dの状態に対するデータ格納率MRTの値、状態信号FSTの値は一例である。
【0040】
上記の設定レジスタ32eには、転送制御回路32aと信号生成部32bの動作にかかる各種パラメータが記憶されている。各種パラメータは、上記した各種のサイズHIMG,VIMG,VSB,サイズVEB,サイズHSB,サイズHEBと、同期信号間ブランクサイズVHBを含む。同期信号間ブランクサイズVHBは、垂直同期信号VDと、1ライン目の水平同期信号HDの間に転送されるブランクデータの数を示す。
【0041】
ブランク制御部51は、起動信号OPENに応答して処理を開始する。ブランク制御部51は、クロック信号CLK、転送制御回路32aから出力される状態信号FSTを入力する。また、転送制御回路32aは、設定レジスタ32eに格納された垂直前ブランクサイズVSB,垂直後ブランクサイズVEB,水平前ブランクサイズHSB,水平後ブランクサイズHEBを入力する。また、転送制御回路32aは、水平同期信号生成部52から出力される水平カウント値HCNTと、垂直同期信号生成部53から出力される垂直カウント値VCNTを入力する。ブランク制御部51は、状態信号FST,垂直前ブランクサイズVSB,垂直後ブランクサイズVEB,水平前ブランクサイズHSB,水平後ブランクサイズHEB,水平カウント値HCNT,垂直カウント値VCNTに基づいて生成したブランク追加信号BADとブランク削除信号BSKを出力する。
【0042】
水平同期信号生成部52は、起動信号OPENに応答して処理を開始する。水平同期信号生成部52は、設定レジスタ32eに格納された水平前ブランクサイズHSB,水平後ブランクサイズHEB,同期信号間ブランクサイズVHB,水平画像サイズHIMGを入力する。また、水平同期信号生成部52は、クロック信号CLK、ブランク制御部51から出力されるブランク追加信号BAD及びブランク削除信号BSK、垂直同期信号生成部53から出力される垂直同期信号VDを入力する。また、水平同期信号生成部52は、出力データ生成部54から出力される出力データPDを入力する。水平同期信号生成部52は、クロック信号CLKにしたがって、水平前ブランクサイズHSB,水平後ブランクサイズHEB,同期信号間ブランクサイズVHB,水平画像サイズHIMG,ブランク追加信号BAD,ブランク削除信号BSK,垂直同期信号VDに基づくタイミングで水平同期信号HDを出力する。また、水平同期信号生成部52は、出力データPDの数をカウントする水平カウンタを含み、そのカウント値(水平カウント値)HCNTを出力する。そして、水平同期信号生成部52は、垂直同期信号VD及び水平同期信号HDに応答して水平カウント値HCNTを所定値(例えば「1」)にプリセットする。
【0043】
垂直同期信号生成部53は、起動信号OPENに応答して処理を開始する。垂直同期信号生成部53は、設定レジスタ32eに格納された垂直前ブランクサイズVSB,垂直後ブランクサイズVEB,垂直画像サイズVIMGを入力する。また、垂直同期信号生成部53は、クロック信号CLK、水平同期信号生成部52から出力される水平同期信号HD及び水平カウント値HCNTを入力する。垂直同期信号生成部53は、クロック信号CLKにしたがって、垂直前ブランクサイズVSB,垂直後ブランクサイズVEB,垂直画像サイズVIMG,水平同期信号HD,水平カウント値HCNTに基づくタイミングで垂直同期信号VDを出力する。また、垂直同期信号生成部53は、水平同期信号HDをカウントする垂直カウンタを含み、そのカウント値(垂直カウント値)VCNTを出力する。そして、垂直同期信号生成部53は、垂直同期信号VDに応答して垂直カウント値VCNTを所定値(例えば「0」)にプリセットする。
【0044】
出力データ生成部54は、転送制御回路32aにデータ要求信号DTENを出力し、転送制御回路32aから出力される画像データRDTを入力する。出力データ生成部54は、設定レジスタ32eに格納された垂直前ブランクサイズVSB,垂直画像サイズVIMG,水平前ブランクサイズHSB,水平画像サイズHIMGを入力する。また、出力データ生成部54は、垂直同期信号生成部53から出力される垂直同期信号VD,垂直カウント値VCNT、水平同期信号生成部52から出力される水平同期信号HD,水平カウント値HCNTを入力する。出力データ生成部54は、垂直前ブランクサイズVSB,垂直画像サイズVIMG,水平前ブランクサイズHSB,水平画像サイズHIMG,垂直同期信号VD,垂直カウント値VCNT,水平同期信号HD,水平カウント値HCNTに基づいて、画像データPDを出力する。画像データPDは、転送制御回路32aから入力した画像データRDTと、ブランクデータBDを含む。
【0045】
次に、ブランク制御部51の処理を説明する。
図6に示すように、先ず、ステップ101において、再入力開始か否かを判定する。例えば、Hレベルの起動信号OPENにより再入力開始が示される。従って、起動信号OPENがLレベルの場合、再入力開始ではないと判定し(判定:NO)、待機(ステップ101にてループ)する。そして、起動信号OPENがHレベルの場合、再入力開始と判定し(判定:YES)、次のステップへ移行する。
【0046】
次に、ステップ102において、垂直同期信号VDがアサートした(例えば、Hレベル)か否かを判定する。例えば、アサートされていない場合(判定:NO)、待機する。そして、垂直同期信号VDがアサートされると、次のステップへ移行する。
【0047】
次いで、ステップ103において、増減可能な全ブランクデータ数BRMを算出する。この全ブランクデータ数BRMは、図4(a)に示す画像データPDにおいて、水平後ブランクデータHEBのデータ数と、垂直後ブランクデータVEBのデータ数の合計値である。所定の期間(例えば、垂直同期信号VDがアサートされてから次の垂直同期信号VDがアサートされるまでの期間:1垂直走査期間)において、画像データGDを転送しなければならない。そして、垂直前ブランクデータVSBは、1フレームの画像データPDにおいて、画像データGDを含むラインデータを判定するために必要である。また、水平前ブランクデータHSBは、各ラインデータにおいて、画像データGDの開始を判定するために必要である。一方、各ラインデータにおいて、画像データGDの転送が終了した後は、次の水平同期信号HDまでのブランクデータの数は変更可能である。同様に、1フレームの画像データにおいて、画像データGDの転送が終了した後は、次の垂直同期信号VDまでのブランクの数は変更可能である。従って、水平後ブランクデータHEBと垂直後ブランクデータVEBは増減可能なブランクデータである。全ブランクデータ数BRMを、
BRM=HEB×VIMG+(HSB+HIMG+HEB)×VEB
により算出する。
【0048】
そして、ステップ104において、上記のステップ103において算出した全ブランクデータ数BRMを初期値IBRMとして、例えば設定レジスタ32eに記憶する。
次に、ステップ105において、VEB出力領域、すなわち垂直後ブランクデータVEBを出力しているか否かを判定する。垂直後ブランクデータVEBを出力していない場合(判定:NO)、ステップ106へ移行し、垂直後ブランクデータVEBを出力している場合(判定:YES)、図7に示すステップ109へ移行する。
【0049】
図6に示すステップ106において、HEB出力領域、即ち水平後ブランクHEBを出力しているか否かを判定する。水平後ブランクデータHEBを出力している場合(判定:YES)、ステップ107へ移行し、水平後ブランクデータHEBを出力していない場合(判定:NO)、ステップ108へ移行する。
【0050】
そして、ステップ107において、ブランク数制御処理を実行する。そして、処理後、ステップ105へ移行する。
次に、ステップ108において、1フレームに対する処理を終了したか否かを判定する。例えば、垂直カウント値VCNTと画像データPDの垂直方向のサイズ(=VSB+VIMG+VEB)を比較し、垂直カウント値VCNTが垂直方向のサイズより小さい場合に1フレーム終了していないと判定し(判定:NO)、ステップ105へ移行する。一方、垂直カウント値VCNTが垂直方向のサイズと等しい場合、1フレーム終了と判定し(判定YES)、図7のステップ110へ移行する。
【0051】
次に、図7に示すように、ステップ109において、全ブランクデータ数BRMが初期値IBRMと等しいが否かを判定する。全ブランクデータ数BRMが初期値IBRMと等しい場合(判定:YES)、ステップ110へ移行する。一方、全ブランクデータ数BRMが初期値IBRMと等しくない場合(判定:NO)、ステップ111へ移行する。
【0052】
ステップ110において、再入力処理終了か否かを判定する。例えば、Lレベルの起動信号OPENにより処理終了が示される。従って、起動信号OPENがHレベルの場合、処理終了ではない(再入力開始)と判定し(判定:NO)、図6に示すステップ102へ移行する。一方、起動信号OPENがLレベルの場合、処理終了と判定し(判定:YES)、再入力処理を終了する。
【0053】
上記のステップ109において、全ブランクデータ数BRMが初期値IBRMと同じ値ではない場合、ステップ111へ移行する。このステップ111において、ブランクデータの削除数を算出する。詳述すると、垂直後ブランクデータVEBを出力する場合において、各ラインにおける垂直後ブランクデータVEBを削除する数(削除数)SKCNを算出する。例えば、削除数SKCNは、
SKCN=roundup((IBRM-BRM)/(VSB+VIMG+VEB-VCNT+1))
により算出される。なお、「roundup」は、除算結果の値を切り上げる関数である。
【0054】
次に、ステップ112において、水平カウント値HCNTがブランクデータ削除位置か否かを判定する。ブランクデータ削除位置は、1ラインに含めるデータ数の標準データ数RLNから削除数SKCNを減算した値に対応する。標準データ数RLNは、ブランクデータの数を調整しないラインデータにおけるデータの数であり、水平前ブランクサイズHSBと水平画像サイズHIMGと水平後ブランクサイズHEBを合計した値(=HSB+HIMG+HEB)である。つまり、水平カウント値HCNTとブランクデータ削除位置(=(HSB+HIMG+HEB-SKCN)-1)を比較する。そして、水平カウント値HCNTがブランクデータ削除位置と異なる場合(判定:NO)、待機(ループ)する。一方、水平カウント値HCNTがブランクデータ削除位置と等しい場合(判定:YES)、次のステップへ移行する。
【0055】
そして、ステップ113において、次のラインに対する処理に移行するため、ブランク削除信号BSKをアサート、つまりHレベルのブランク削除信号BSKを出力する。
また、ステップ114において、削除したブランクデータの数を全ブランクデータ数BRMに加算(BRM=BRM+SKCN)する。そして、ステップ109へ移行する。
【0056】
次に、図6のステップ107におけるブランク制御処理の詳細を説明する。
図8に示すように、先ず、ステップ120において、FIFOメモリ32dのデータ格納状態を確認する。例えば、状態信号FSTの値を確認し、その値に基づいて、処理を実行する。例えば、状態信号FSTに基づくFIFOメモリ32dの状態が「FULL」の場合、ステップ121へ移行する。また、状態信号FSTに基づくFIFOメモリ32dの状態が「EMPTY」の場合、図9に示すステップ131へ移行する。そして、状態信号FSTに基づくFIFOメモリ32dの状態が「HALF」の場合、図10に示すステップ141へ移行する。
【0057】
次に、図8に示すステップ121へ移行した場合について説明する。
先ず、ステップ121において、全ブランクデータ数BRMが初期値IBRMと等しいか否かを判定する。全ブランクデータ数BRMが初期値IBRMと等しい場合(判定:YES)に処理を終了し、全ブランクデータ数BRMが初期値IBRMと異なる場合(判定:NO)にステップ122へ移行する。
【0058】
ステップ122において、全ブランクデータ数BRMからブランクデータをどれだけ削除するかを計算する。ブランクデータを削除する数(削除数SKCN)は、初期値IBRMから全ブランクデータ数BRMを減算すること(SKCN=IBRM-BRM)により得られる。
【0059】
次に、ステップ123において、削除数SKCNが削除可能な水平後ブランクのデータ数CBNよりも小さいか否かを判定する。削除可能な水平後ブランクのデータ数CBNは、標準データ数RLN(=HSB+HIMG+HEB)から、現時点における水平カウント値HCNTを減算した値に応じて設定される。つまり、1つのラインデータにおいて、現時点において未転送のブランクデータのデータ数に対応している。つまり、データ数CBNは、
CBN=(HSB+HIMG+HEB-HCNT)-1により算出される。なお、上記の式における「-1」は、処理上のタイミングを調整するものである。例えば、このステップ123において判定した結果に基づいてブランク削除信号BSKをアサートするまでに転送されるブランクデータの数を考慮したものである。
【0060】
そして、削除数SKCNとデータ数CBNのいずれの値を採用するかを判定する。未転送のブランクデータ以上に削除することはできないからである。削除数SKCNがデータ数CBNよりも小さい(SKCN<CBN)の場合(判定:YES)にステップ125へ移行し、削除数SKCNがデータ数CBN以上の場合(判定:NO)にステップ124へ移行する。
【0061】
ステップ124において、削除できるこの時点のブランクデータ数を削除数SKCNに設定する。つまり、削除数SKCNを、上記のステップ123におけるデータ数CBNと等しくする(SKCN=CBN)。
【0062】
次に、ステップ125において、水平カウント値HCNTがブランクデータ削除位置か否かを判定する。ブランクデータ削除位置は、1ラインにおいて転送するデータの数の標準データ数RLNから削除数SKCNを減算した値に対応する。つまり、水平カウント値HCNTとブランクデータ削除位置(=(HSB+HIMG+HEB-SKCN)-1)を比較する。そして、水平カウント値HCNTがブランクデータ削除位置と異なる場合(判定:NO)、待機(ループ)する。一方、水平カウント値HCNTがブランクデータ削除位置と等しい場合(判定:YES)、次のステップへ移行する。
【0063】
そして、ステップ126において、次のラインに対する処理に移行するため、ブランク削除信号BSKをアサート、つまりHレベルのブランク削除信号BSKを出力する。
次に、ステップ127において、削除したブランクデータの数を全ブランクデータ数BRMに加算(BRM=BRM+SKCN)する。そして、ブランク制御処理を終了する。
【0064】
次に、図9に示すステップ131へ移行した場合について説明する。
先ず、ステップ131において、水平カウント値HCNTがHEB出力領域を越えたか否かを判定する。つまり、水平カウント値HCNTがブランクデータの数を調整しないラインにおけるデータ数(標準データ数RLN)以上か否かを判定する。水平カウント値HCNTが標準データ数RLN以上の場合(判定:YES)に次のステップ132へ移行し、水平カウント値HCNTが標準データ数RLN未満の場合(判定:NO)に図8に示すステップ120へ移行する。
【0065】
次に、ステップ132において、ブランクデータを追加するためにブランク追加信号BADをアサート(例えばHレベルのブランク追加信号BADを出力)する。
そして、ステップ133において、全ブランクデータ数BRMをデクリメント(BRM=BRM-1)する。
【0066】
次に、ステップ134において、状態信号FSTに基づいて、FIFOメモリ32dが「FULL」状態か否かを判定する。FIFOメモリ32dが「FULL」状態ではない場合(判定:NO)、ステップ132へ移行する。一方、FIFOメモリ32dが「FULL」状態の場合、ブランク制御処理を終了する。
【0067】
次に、図10に示すステップ141へ移行した場合について説明する。
先ず、ステップ141において、水平カウント値HCNTがHEB出力領域を越えたか否かを判定する。つまり、水平カウント値HCNTがブランクデータの数を調整しないラインにおけるデータ数(標準データ数RLN)以上か否かを判定する。水平カウント値HCNTが標準データ数RLN以上の場合(判定:YES)に次のステップ142へ移行し、水平カウント値HCNTが標準データ数RLN未満の場合(判定:NO)に図8に示すステップ120へ移行する。
【0068】
次に、ステップ142において、ブランクデータを追加する設定か否かを判定する。例えば、図5に示す設定レジスタ32eにブランク追加モードBLMDが記憶される。このブランク追加モードBLMDは、ユーザにより設定される。例えば、ブランク追加モードBLMDが「1」に設定された場合、FIFOメモリ32dが「HALF」状態のときに「ENPTY」状態と同様にブランクデータを追加する。一方、ブランク追加モードBLMDが「0」に設定された場合、FIFOメモリ32dが「HALF」状態のときにブランクデータを追加しない。つまり、ブランクデータを追加するように設定されている場合(判定:YES)に次のステップ143へ移行し、ブランクデータを追加するように設定されていない場合(判定:NO)にブランク制御処理を終了する。
【0069】
次に、ステップ143において、ブランクデータを追加するためにブランク追加信号BADをアサート(例えばHレベルのブランク追加信号BADを出力)する。
そして、ステップ144において、全ブランクデータ数BRMをデクリメント(BRM=BRM-1)する。
【0070】
次に、ステップ145において、状態信号FSTに基づいて、FIFOメモリ32dが「FULL」状態か否かを判定する。FIFOメモリ32dが「FULL」状態ではない場合(判定:NO)、ステップ142へ移行する。一方、FIFOメモリ32dが「FULL」状態の場合、ブランク制御処理を終了する。
【0071】
次に、水平同期信号生成部52の処理を説明する。
図11は、水平カウント値HCNTにかかる処理を示す。
先ず、ステップ201において、起動信号OPENに基づいて再入力開始か否かを判定する。例えば、Hレベルの起動信号OPENに基づいて再入力開始と判定すると(判定:YES)、次のステップへ移行する。
【0072】
次に、ステップ202において、垂直同期信号VDがアサートした(例えば、Hレベル)か否かを判定する。例えば、アサートされていない場合(判定:NO)、待機する。そして、垂直同期信号VDがアサートされると、次のステップへ移行する。
【0073】
そして、ステップ203において、水平カウント値HCNTを所定値(例えば、「1」)にプリセットする。
次に、ステップ204において、水平同期信号HD及び垂直同期信号VDがネゲートしているか否かを判定する。水平同期信号HD及び垂直同期信号VDの少なくとも一方がアサートしている場合(判定:NO)にステップ203へ移行し、水平同期信号HD及び垂直同期信号VDがネゲートしている場合(判定:YES)に次のステップへ移行する。
【0074】
そして、ステップ205において、水平カウント値HCNTをインクリメントする。
次に、ステップ206において、起動信号OPENに基づいて再入力処理終了か否かを判定する。例えば、起動信号OPENがHレベルの場合、処理終了ではないと判定し(判定:NO)、ステップ204へ移行する。一方、起動信号OPENがLレベルの場合、再入力終了と判定し(判定:YES)、処理を終了する。
【0075】
図12は、水平同期信号HDにかかる処理を示す。
先ず、ステップ211において、起動信号OPENに基づいて再入力開始か否かを判定する。例えば、Hレベルの起動信号OPENに基づいて再入力開始と判定すると(判定:YES)、次のステップへ移行する。
【0076】
次に、ステップ212において、垂直同期信号VDがアサートした(例えば、Hレベル)か否かを判定する。例えば、垂直同期信号VDがアサートされていない場合(判定:NO)、待機する。そして、垂直同期信号VDがアサートされると、次のステップへ移行する。
【0077】
ステップ213において、水平カウント値HCNTが同期信号間ブランクサイズVHBと等しくか否かを判定する。等しくない場合(判定:NO)に待機し、等しくなると(判定:YES)次のステップへ移行する。
【0078】
そして、ステップ214において、水平同期信号HDをアサートする。例えば、Hレベルの水平同期信号HDをパルス出力する。
次に、ステップ215において、水平カウント値HCNTとブランク削除信号BSKを判定する。水平カウント値HCNTが標準データ数RLNと等しいか否かを判定する。また、ブランク削除信号BSKがアサートしているか否かを判定する。そして、水平カウント値HCNTが標準データ数RLNと等しいと判定した場合、次のステップ216へ移行する。また、ブランク削除信号BSKがアサートしている場合、次のステップ216へ移行する。そして、水平カウント値HCNTが等しくなく、且つブランク削除信号BSKがアサートしていない場合、ステップ217へ移行する。
【0079】
ステップ216において、ブランク追加信号BADがアサートした(例えば、Hレベル)か否かを判定する。アサートされていない場合(判定:NO)、ステップ214へ移行する。アサートされている場合(判定:YES)、待機する。
【0080】
次に、ステップ217において、起動信号OPENに基づいて再入力処理終了か否かを判定する。例えば、起動信号OPENがHレベルの場合、処理終了ではないと判定し(判定:NO)、ステップ218へ移行する。一方、起動信号OPENがLレベルの場合、再入力終了と判定し(判定:YES)、処理を終了する。
【0081】
そして、ステップ218において、垂直同期信号VDがアサートした(例えば、Hレベル)か否かを判定する。垂直同期信号VDがアサートした場合(判定:YES)、ステップ213へ移行する。一方、垂直同期信号VDがアサートしていない場合(判定:NO)、ステップ215へ移行する。
【0082】
次に、垂直同期信号生成部53の処理を説明する。
図13(a)は、垂直カウント値VCNTにかかる処理を示す。
先ず、ステップ301において、起動信号OPENに基づいて再入力開始か否かを判定する。例えば、Hレベルの起動信号OPENに基づいて再入力開始と判定すると(判定:YES)、次のステップへ移行する。
【0083】
次に、ステップ302において、垂直同期信号VDがアサートした(例えば、Hレベル)か否かを判定する。例えば、アサートされていない場合(判定:NO)、待機する。そして、垂直同期信号VDがアサートされると、次のステップへ移行する。
【0084】
そして、ステップ303において、垂直カウント値VCNTを所定値(例えば、「0」)にプリセットする。
次に、ステップ304において、水平同期信号HDがアサートしているか否かを判定する。水平同期信号HDがアサートしていない場合(判定:NO)にステップ303へ移行し、水平同期信号HDがアサートしている場合(判定:YES)に次のステップへ移行する。
【0085】
そして、ステップ305において、垂直カウント値VCNTをインクリメントする。
次に、ステップ306において、垂直カウント値VCNTが1フレーム分のライン値になったか否かを判定する。1フレーム分のライン値は、垂直前ブランクサイズVSBと垂直画像サイズVIMGと垂直後ブランクサイズVEBを合計した値である。従って、垂直カウント値VCNTが合計値と等しくない場合(判定:NO)にステップ303へ移行し、垂直カウント値VCNTが合計値と等しい場合(判定:YES)に次のステップへ移行する。
【0086】
次に、ステップ307において、起動信号OPENに基づいて再入力処理終了か否かを判定する。例えば、起動信号OPENがHレベルの場合、処理終了ではないと判定し(判定:NO)、ステップ302へ移行する。一方、起動信号OPENがLレベルの場合、再入力終了と判定し(判定:YES)、処理を終了する。
【0087】
図13(b)は、垂直同期信号VDにかかる処理を示す。
先ず、ステップ311において、起動信号OPENに基づいて再入力開始か否かを判定する。例えば、Hレベルの起動信号OPENに基づいて再入力開始と判定すると(判定:YES)、次のステップへ移行する。
【0088】
そして、ステップ312において、垂直同期信号VDをアサート(例えば、Hレベル)する。
次に、ステップ313において、1フレーム分の転送が終了したか否かを判定する。例えば、垂直カウント値VCNTと水平カウント値HCNTに基づいて判定を行う。垂直カウント値VCNTが1フレーム分のライン値と等しく、水平カウント値HCNTがブランクデータの追加・削除に応じて調整された垂直後ブランクデータVEBにおける水平方向のデータ数と等しい場合、1フレーム分の転送が終了したと判定する。1フレーム分の転送が終了した場合(判定:YES)にステップ312へ移行し、1フレーム分の転送が終了していない場合(判定:NO)にステップ314へ移行する。
【0089】
そして、ステップ314において、起動信号OPENに基づいて再入力処理終了か否かを判定する。例えば、起動信号OPENがHレベルの場合、処理終了ではないと判定し(判定:NO)、ステップ313へ移行する。一方、起動信号OPENがLレベルの場合、再入力終了と判定し(判定:YES)、処理を終了する。
【0090】
次に、出力データ生成部54の処理を説明する。
図14に示すように、先ず、ステップ401において、垂直同期信号VDがアサートした(例えば、Hレベル)か否かを判定する。例えば、アサートされていない場合(判定:NO)、待機する。そして、垂直同期信号VDがアサートされると、次のステップへ移行する。
【0091】
そして、ステップ402において、ブランクデータを出力する。
次に、ステップ403において、垂直カウント値VCNTが垂直前ブランクサイズVSBと等しくなったか否かを判定する。垂直カウント値VCNTが垂直前ブランクサイズVSBと等しくない場合(判定:NO)に待機し、垂直カウント値VCNTが垂直前ブランクサイズVSBと等しくなると(判定:YES)つぎのステップへ移行する。
【0092】
次いで、ステップ404において、水平同期信号HDがアサート(例えば、Hレベル)したか否かを判定する。そして、水平同期信号HDがアサートしていない場合(判定:NO)に待機し、水平同期信号HDがアサートすると(判定:YES)次のステップへ移行する。
【0093】
次に、ステップ405において、水平カウント値HCNTが水平前ブランクサイズHSBと等しくなったか否かを判定する。水平カウント値HCNTが水平前ブランクサイズHSBと等しくない場合(判定:NO)に待機し、水平カウント値HCNTが水平前ブランクサイズHSBと等しくなると(判定:YES)つぎのステップへ移行する。
【0094】
そして、ステップ406において、データ要求信号DTENをアサート(例えば、Hレベル)し、転送制御回路32aから入力する画像データRDTと等しい画像データPDを出力する。
【0095】
次に、ステップ407において、水平カウント値HCNTが水平前ブランクサイズHSBと水平画像サイズHIMGの合計値と等しくなったか否かを判定する。つまり、1つのラインにおける画像データGDの出力を完了したか否かを判定する。水平カウント値HCNTが合計値と等しくない場合(判定:NO)にステップ406へ移行し、水平カウント値HCNTが合計値と等しい場合(判定:YES)に次のステップへ移行する。
【0096】
そして、ステップ408において、ブランクデータを出力する。
次に、ステップ409において、垂直カウント値VCNTが垂直前ブランクサイズVSBと垂直画像サイズVIMGの合計値と等しくなったか否かを判定する。つまり、1つのフレームにおける画像データGDの出力を完了したか否かを判定する。垂直カウント値VCNTが合計値と等しくない場合(判定:NO)にステップ404へ移行し、垂直カウント値VCNTが合計値と等しい場合(判定:YES)にステップ401へ移行する。
【0097】
次に、上記の転送制御回路32a及び信号生成部32bの作用を説明する。
図15に示すように、先ず、垂直同期信号VDがアサートされると、1フレームあたりの増減可能なブランクデータの全ブランクデータ数BRMを算出する。なお、図15に示す例において、全ブランクデータ数BRMは「80」である。また、この例では、垂直前ブランクサイズVSBを「0」としている。つまり、垂直前ブランクデータVSBは出力されない。
【0098】
また、垂直同期信号VDに応答して同期信号間ブランクサイズVHBを出力する。この同期信号間ブランクサイズVHBを出力する期間において、図2に示す転送制御回路32aは、メモリI/F45に対して要求信号REQを出力し、メモリ13の画像データを読み出す。従って、状態信号FSTすなわち転送制御回路32aのFIFOメモリ32dの状態は、図15に示すように、「EMPTY」から「FULL」へと変化する。
【0099】
次に、水平同期信号HDがアサートされると、水平カウント値HCNTが所定値(例えば、「1」)にプリセットされ、1ライン目に対する処理が行われる。すなわち、水平前ブランクデータHSBが出力された後、画像データが出力される。画像データの出力に従って状態信号FSTは、「FULL」から「HALF」へと変化する。そして、所定数(水平画像サイズHIMG)の画像データを出力すると、水平後ブランクデータHEBを出力する。このとき、図2に示すメモリ13から読み出したデータに従って、状態信号FSTは、「EMPTY」,「HALF」,「FULL」と変化する。このように、水平後ブランクデータHEBを出力する期間内において、FIFOメモリ32dの状態が「FULL」となる。したがって、水平後ブランクfr-ysHEBの出力期間を終了すると、次のラインの処置のために水平同期信号HDがアサートされる。
【0100】
この水平同期信号HDのアサートにしたがって、水平カウント値HCNTが所定値(例えば、「1」)にプリセットされ、2ライン目に対する処理が行われる。すなわち、水平前ブランクデータHSBが出力された後、画像データが出力される。そして、所定数(水平画像サイズHIMG)の画像データを出力すると、水平後ブランクデータHEBを出力する。そして、状態信号FSTは、「EMPTY」,「HALF」と変化し、「FULL」になっていない。したがって、ブランク追加信号BADがアサートされる。アサートされたブランク追加信号BADに基づいてブランクデータが出力され、ブランクデータが出力される毎に全ブランクデータ数BRMがデクリメントされる。このとき、状態信号FSTは、図2に示すメモリ13から読み出したデータに従って「HALF」から「FULL」へと変化する。すると、ブランク追加信号BADがネゲートされ、水平同期信号HDがアサートされる。
【0101】
すなわち、状態信号FSTを「FULL」とするように、ブランク追加信号BADがアサートされる。これにより、状態信号FSTが「FULL」になるまで水平後ブランクデータHEBを出力する期間が延長される。そして、水平後ブランクデータHEBを出力する期間の延長に応じて全ブランクデータ数BRMが減算される。
【0102】
図16に示すように、垂直同期信号VDがアサートされると、水平カウント値HCNTがプリセットされ、3ライン目に対する処理が行われる。すなわち、水平前ブランクデータHSBが出力された後、画像データが出力される。そして、所定数(水平画像サイズHIMG)の画像データを出力する。このとき、状態信号FSTは「HALF」である。したがって、水平後ブランクデータHEBを出力する期間において、状態信号FSTは、「HALF」から「FULL」へと変化する。このとき、全ブランクデータ数BRMが初期値IBRMより小さいため、削除数SKCNを算出する。このとき、削除数SKCNは例えば「4」である。この削除数SKCNに基づいて、ブランクデータを削除するタイミングでブランク削除信号BSKがアサートされる。このブランク削除信号BSKのアサートにしたがって水平同期信号HDがアサートされる。そして、削除数SKCNが全ブランクデータ数BRMに加算される。
【0103】
同様に、水平同期信号HDのアサートにしたがって水平カウント値HCNTが所定値にプリセットされ、4ライン目に対する処理が行われる。
すなわち、水平前ブランクデータHSBが出力された後、画像データが出力される。そして、所定数(水平画像サイズHIMG)の画像データを出力すると、水平後ブランクデータHEBを出力する。このとき、状態信号FSTは、「EMPTY」である。したがって、ブランク追加信号BADがアサートされる。アサートされたブランク追加信号BADに基づいてブランクデータが出力され、ブランクデータが出力される毎に全ブランクデータ数BRMがデクリメントされる。このとき、状態信号FSTは、図2に示すメモリ13から読み出したデータに従って「EMPTY」から「HALF」を経て「FULL」へと変化する。すると、ブランク追加信号BADがネゲートされ、水平同期信号HDがアサートされる。
【0104】
図17は、VEB出力領域、すなわち垂直後ブランクデータVEBを出力する期間における処理を示す。
先ず、水平同期信号HDがアサートされ、水平カウント値HCNTがプリセットされ、(VIMG+1)ライン目の処理が行われる。そして、ブランクデータが出力される毎に水平カウント値HCNTがインクリメントされる。
【0105】
そして、垂直後ブランクデータVEBの各ラインに対する削除数SKCNを算出する。例えば、初期値IBRMから全ブランクデータ数BRMを減算した結果を垂直前ブランクサイズVSBにて除算することにより、削除数SKCNが得られる。この削除数SKCNは、例えば「6」である。削除数SKCNと標準データ数RLNに基づいて、水平カウント値HCNTが標準データ数RLNから削除数SKCNを減算した値と等しい位置でブランク削除信号BSKをアサートする。このブランク削除信号BSKのアサートにしたがって水平同期信号HDがアサートされ、次のライン((VIMG+2)ライン目)の処理が開始される。また、削除数SKCNが全ブランクデータ数BRMに加算される。
【0106】
上記の処理が1フレームの最終のライン、すなわち(VIMG+VEB)ライン目まで繰り返し実行される。そして、この(VIMG+VEB)ライン目の処理が終了する、つまり1フレームの処理が終了すると、全ブランクデータ数BRMは初期値IBRMと等しくなる。したがって、2つの垂直同期信号VD間において出力される画像データPDの数は、ブランクデータを制御しない場合において出力される画像データPDの数と等しい。したがって、2つの垂直同期信号VDのあいだの時間、つまり垂直同期信号VDの周期は変化しない。
【0107】
図18(a)に示すように、1フレームの画像データPDにおいて、各画像データGDを含むラインにおける水平後ブランクデータHEBのサイズ(データ数)は、水平同期信号HDが出力されるタイミングに応じて変化する。この水平同期信号HDの出力タイミングは、ブランク追加信号BADとブランク削除信号BSK、すなわちFIFOメモリ32dにおけるデータ格納状態に基づいている。そして、各ラインにおける水平後ブランクデータHEBのサイズにしたがって、垂直後ブランクデータVEBの各ラインデータにおけるブランクデータBDのデータ数が調整される。
【0108】
図18(b)は、水平後ブランクデータHEBのデータ数及び垂直後ブランクデータVEBの各ラインデータにおけるブランクデータBDのデータ数を調整しない場合の1フレームの画像データPDを示す。図18(a)に示す画像データPDと、図18(b)に示す画像データPDにおいて、全体のデータ数は互いに同じである。
【0109】
以上記述したように、本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)転送制御回路32aは、メモリ13から読み出した画像データMDTをFIFOメモリ32dに格納する。また、転送制御回路32aは、出力データ生成部54から出力されるデータ要求信号DTENに応答してFIFOメモリ32dから読み出した画像データRDTを出力データ生成部54に出力する。そして、転送制御回路32aは、FIFOメモリ32dにおけるデータの格納状態に応じた状態信号FSTを出力する。出力データ生成部54は、水平カウント値HCNTにしたがって、水平画像サイズHIMGの出力データPD(画像データRDT)を出力した後、ブランクデータBDを出力する。
【0110】
ブランク制御部51は、状態信号FSTに基づいて、出力データ生成部54が水平後ブランクデータHEBを出力する期間において、FIFOメモリ32dの状態が「EMPTY」又は「HALF」のときに、FIFOメモリ32dの状態が「FULL」になるまでブランク追加信号BADをアサートする。
【0111】
これにより、メモリ13に記憶された画像データMDTを、補正回路32cに転送するデータ転送において、補正回路32cに対して出力する画像データRDTが間に合わなくなる転送破綻を抑制することができる。つまり、水平同期信号生成部52は、水平カウント値HCNTに基づいて水平同期信号HDを出力するタイミングにおいてブランク追加信号BADがアサートしているとき、そのブランク追加信号BADのネゲートに応じて水平同期信号HDを出力する。従って、水平同期信号HDが出力されるとき、FIFOメモリ32dの状態は「FULL」である。このため、メモリ13からのデータ読み出しが、図1に示す補正部33等のアクセスによって遅れても、FIFOメモリ32dのデータ量が「0」より少なくなり難くなる。したがって、転送破綻を抑制することができる。
【0112】
(2)転送制御回路32a及び信号生成部32bにおいて、転送破綻を低減する。これにより、補正回路32cにおける処理を確実に行うことができる。即ち、補正回路32cは、水平同期信号HDと垂直同期信号VDに従って画像データPDを受け取り、その画像データPDに対して処理を行う。水平同期信号HDによって1ライン分の画像データPDの転送中に転送破綻が発生すると、処理に誤りが生じてしまう場合がある。このような場合には、該当する1ラインの画像データ又は1フレームの画像データを再びメモリ13から読み出さなければならなくなり、処理の遅延が発生する。
【0113】
また、転送破綻によって例えば処理を中断するためのウエイト信号を生成することが考えられる。しかし、ウエイト信号を授受するための回路や、ウエイト信号によって処理の中断が可能なように補正回路32cを構成すると、その分、補正回路32cの回路規模が増大する。これに対し、本実施形態では、補正回路32cは水平同期信号HDによって1ライン分の画像データPDに基づく処理を行うため、ウエイト信号に対する回路が不要となり、1ライン分の画像データPDに基づく処理を中断するように回路を構成する必要がなり。このため、補正回路32cを含む画像処理部12の回路規模の増大を抑制することができる。
【0114】
(3)ブランク制御部51は、全ブランクデータ数BRM、すなわち画像データGDを含む各ラインにおいて増減したブランクデータBDの数に応じて、垂直後ブランクデータVEBを転送する期間において、水平同期信号HDの出力タイミングを調整して各ラインデータにおけるブランクデータBDのデータ数を調整するようにした。従って、垂直同期信号VDの間において出力データ生成部54から出力する画像データPDのデータ数は、ブランクデータBDの数を調整しない場合における画像データPDのデータ数と等しくなる。つまり、垂直同期信号VDの周期は変らない。このため、1つのフレームに対する処理時間が変らないので、例えば動画に対する処理のように、フレームを連続して処理する場合に、フレームレートを変更することなく処理を行うことができる。
【0115】
尚、上記各実施形態は、以下の態様で実施してもよい。
・上記実施形態に対し、要求信号REQを、データ量MNM,データ格納率MRTに従って出力するようにしてもよい。
【0116】
・上記実施形態に対し、状態信号FSTを、データ量MNM,空き容量MEPに従って出力するようにしてもよい。
・上記実施形態に対し、FIFOメモリ32dの状態を、2つの状態、又は4つ以上の状態に判定する。そして、判定した状態に応じて状態信号FSTを出力するようにしてもよい。
【0117】
・上記実施形態に対し、全ブランクデータ数BRMはユーザにより設定されてもよい。設定された値は、例えば設定レジスタ32eに格納される。この場合、ユーザにより設定された値、つまり設定レジスタ32eに格納された値を初期値IBRMとする。そして、図6に示すステップ103において、設定レジスタ32eに記憶された初期値IBRMを読み出し、その読み出した値を全ブランクデータ数BRMとする。この場合、図6に示すステップ104を省略することができる。
【0118】
・上記実施形態に対し、垂直後ブランクデータVEBを転送する期間において、各ラインデータにおけるブランクデータBDのデータ数を相異させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0119】
13 メモリ
32a 転送制御回路
32c 補正回路
32d FIFOメモリ
51 ブランク制御部
52 水平同期信号生成部
54 出力データ生成部
DTEN データ要求信号
FST 状態信号
BAD ブランク追加信号
HCNT 水平カウント値
PD 出力データ
RLN 標準データ数
HD 水平同期信号
HIMG 水平画像サイズ
RDT 画像データ
BD ブランクデータ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の格納部に格納された1フレームの画像データを含む出力データを転送先に転送するデータ転送装置であって、
前記出力データは、前記画像データと水平前ブランクデータと水平後ブランクデータと垂直前ブランクデータと垂直後ブランクデータとを含み、
前記第1の格納部の前記画像データを読み出す要求信号を出力し、前記要求信号に対する許可信号に基づいて前記第1の格納部の前記画像データを読み出して第2の格納部に格納し、前記第2の格納部の前記画像データをデータ要求信号に応答して出力し、前記第2の格納部に格納したデータ量に応じた状態信号を出力する転送制御回路と、
前記状態信号に基づいて、前記第2の格納部が第1の格納状態よりデータ量が少ない第2の格納状態のときに前記第2の格納部の状態が前記第1の格納状態となるまでブランク追加信号を出力するブランク制御部と、
前記出力データの数をカウントした水平カウント値と、前記水平後ブランクデータの数を調整しないラインデータにおけるデータの数であって水平前ブランクサイズと水平画像サイズと水平後ブランクサイズとを合計した標準データ数に応じて出力する水平同期信号を前記ブランク追加信号に応じて遅延する水平同期信号生成部と、
前記出力データを出力する出力データ生成部であって、前記水平同期信号に基づいて前記水平カウント値が前記水平前ブランクサイズとなるまで前記水平前ブランクデータを出力し、前記データ要求信号を出力し、水平画像サイズの画像データを前記転送制御回路から受け取って出力した後、次の前記水平同期信号まで前記水平後ブランクデータを出力する出力データ生成部と、
を有することを特徴とするデータ転送装置。
【請求項2】
前記ブランク制御部は、前記水平カウント値に基づいて、前記画像データの後に前記水平後ブランクデータを出力する期間において、前記状態信号に基づいて前記第2の格納部が第1の格納状態に応じてブランク削除信号を出力し、
前記水平同期信号生成部は、前記ブランク削除信号に応じて前記水平同期信号を出力し、前記水平カウント値をプリセットすること、を特徴とする請求項1に記載のデータ転送装置。
【請求項3】
前記ブランク制御部は、
データ数を調整しない水平後ブランクデータ及び垂直後ブランクデータのデータ数の合計値である全ブランクデータ数の初期値をレジスタに格納し、前記ブランク追加信号を出力する期間に応じて前記全ブランクデータ数をダウンカウントし、
前記画像データの後に前記ブランクデータを出力する期間において、前記状態信号に基づいて前記第2の格納部が第1の格納状態のとき、前記初期値から前記全ブランクデータ数を減算して削除数を算出し、前記標準データ数と前記水平カウント値の差に応じた第1の値と前記削除数を比較し、比較結果に応じてブランク削除位置を決定し、前記ブランク削除位置にて前記ブランク削除信号を出力すること、
を特徴とする請求項2に記載のデータ転送装置。
【請求項4】
前記ブランク制御部は、前記画像データの後に前記水平後ブランクデータを出力する期間において、前記状態信号に基づいて前記第2の格納部が第1の格納状態のとき、前記全ブランクデータ数が前記初期値と等しい場合に前記ブランク削除信号を出力しないこと、を特徴とする請求項3に記載のデータ転送装置。
【請求項5】(削除)
【請求項6】(削除)
【請求項7】(削除)
【請求項8】
第1の格納部に格納された1フレームの画像データを含む出力データを転送先に転送するデータ転送方法であって、
前記出力データは、前記画像データと水平前ブランクデータと水平後ブランクデータと垂直前ブランクデータと垂直後ブランクデータとを含み、
前記第1の格納部の前記画像データを読み出す要求信号を出力し、前記要求信号に対する許可信号に基づいて前記第1の格納部の前記画像データを読み出して第2の格納部に格納し、前記第2の格納部の前記画像データをデータ要求信号に応答して出力し、前記第2の格納部に格納したデータ量に応じた状態信号を生成し、
前記状態信号に基づいて、前記第2の格納部が第1の格納状態よりデータ量が少ない第2の格納状態のときに前記第2の格納部の状態が前記第1の格納状態となるまでブランク追加信号を生成し、
前記出力データの数をカウントした水平カウント値、前記水平後ブランクデータの数を調整しないラインデータにおけるデータの数であって水平前ブランクサイズと水平画像サイズと水平後ブランクサイズとを合計した標準データ数に応じて出力する水平同期信号を前記ブランク追加信号に応じて遅延し、
前記水平同期信号に基づいて前記水平カウント値が前記水平前ブランクサイズとなるまで前記水平前ブランクデータを出力し、前記データ要求信号を出力し、水平画像サイズの画像データを受け取って出力した後、次の前記水平同期信号まで前記水平後ブランクデータを出力することを特徴とするデータ転送方法。
【請求項9】
前記水平カウント値に基づいて、前記画像データの後に前記水平後ブランクデータを出力する期間において、前記状態信号に基づいて前記第2の格納部が第1の格納状態に応じてブランク削除信号を出力し、
前記ブランク削除信号に応じて前記水平同期信号を出力し、前記水平カウント値をプリセットすること、を特徴とする請求項8に記載のデータ転送方法。
【請求項10】(削除)
【請求項11】
第1の格納部をそれぞれアクセスする複数の処理部と、
前記第1の格納部をアクセスするために前記複数の処理部からそれぞれ出力される要求信号を調停する調停部と、
を含み、
少なくとも1つの前記処理部は、前記第1の格納部に格納された1フレームの画像データを含む出力データを処理回路に転送するデータ転送部を有し、
前記出力データは、前記画像データと垂直前ブランクデータと垂直後ブランクデータと水平前ブランクデータと水平後ブランクデータを含み、
前記データ転送部は、
前記第1の格納部の前記画像データを読み出す要求信号を出力し、前記要求信号に対する許可信号に基づいて前記第1の格納部の前記画像データを読み出して第2の格納部に格納し、前記第2の格納部の前記画像データをデータ要求信号に応答して出力し、前記第2の格納部に格納したデータ量に応じた状態信号を出力する転送制御回路と、
前記状態信号に基づいて、前記第2の格納部が第1の格納状態よりデータ量が少ない第2の格納状態のときに前記第2の格納部の状態が前記第1の格納状態となるまでブランク追加信号を出力するブランク制御部と、
前記出力データの数をカウントした水平カウント値と、前記水平後ブランクデータの数を調整しないラインデータにおけるデータの数であって水平前ブランクサイズと水平画像サイズと水平後ブランクサイズとを合計した標準データ数に応じて出力する水平同期信号を前記ブランク追加信号に応じて遅延する水平同期信号生成部と、
前記出力データを出力する出力データ生成部であって、前記水平同期信号に基づいて前記水平カウント値が前記水平前ブランクサイズとなるまで前記水平前ブランクデータを出力し、前記データ要求信号を出力し、水平画像サイズの画像データを前記転送制御回路から受け取って出力した後、次の前記水平同期信号まで前記水平後ブランクデータを出力する出力データ生成部と、
を有する、半導体装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-04-04 
出願番号 特願2012-220497(P2012-220497)
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (H04N)
P 1 651・ 121- YAA (H04N)
P 1 651・ 537- YAA (H04N)
最終処分 維持  
特許庁審判長 清水 正一
特許庁審判官 渡辺 努
鳥居 稔
登録日 2017-05-12 
登録番号 特許第6136171号(P6136171)
権利者 株式会社ソシオネクスト
発明の名称 データ転送装置、データ転送方法、半導体装置  
代理人 恩田 誠  
代理人 恩田 博宣  
代理人 恩田 博宣  
代理人 恩田 誠  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ