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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61C
審判 全部申し立て 2項進歩性  A61C
管理番号 1352289
異議申立番号 異議2018-700567  
総通号数 235 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-07-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-07-12 
確定日 2019-04-25 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6261865号発明「3次元デジタル歯内治療」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6261865号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?6〕、7、〔8?14〕、15について訂正することを認める。 特許第6261865号の請求項1ないし15に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6261865号(以下「本件特許」という。)の請求項1?15に係る特許についての出願は、平成23年2月18日(パリ条約による優先権主張 2010年2月18日 英国)を国際出願日とする出願であって、平成29年12月22日にその特許権の設定登録がされたものである(平成30年1月17日特許掲載公報の発行)。
これに対し、平成30年7月12日に特許異議申立人土田裕介より、本件特許の請求項1?15に係る特許について特許異議の申立てがされ、同年9月6日付けで特許権者に取消理由が通知され、同年12月7日に特許権者より意見書が提出されるとともに訂正の請求(以下、この訂正の請求を「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)がされた。
なお、平成31年1月22日に特許異議申立人より意見書が提出されている。


第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正の内容は、以下の訂正事項1?5のとおりである(下線は訂正箇所を示すため合議体が付した。)。
(1)訂正事項1
請求項1に
「表示部において当該歯根管系を視覚化するユーザインターフェース」
とあるのを、
「表示部において当該歯根管系を視覚化するとともに、前記歯根管の3次元図を表示可能に構成されているユーザインターフェース」
に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2?6も同様に訂正する。)。

(2)訂正事項2
請求項7を
「感染している歯の画像をデジタル化して画像データを生成するために、3次元イメージング装置を用いる、3次元デジタル歯内治療のためのコンピュータが実行する方法であって、
前記画像データから歯根管系の3次元表現を抽出し、表示部において当該歯根管系を視覚化するユーザインターフェースを提供するステップと、
歯内治療のために使用される複数の歯根管機器の、複数のデジタルテンプレートとの、前記ユーザインターフェースを介したアクセスを提供するステップと、
前記ユーザインターフェースを介して、治療計画および機器選択のために、前記複数の歯根管機器の、前記複数のデジタルテンプレートのうちのいずれかと、歯根管の形状または歯根管の断面図との2次元の重畳図を提供するステップと、を含み、
前記画像データから前記歯根管系を抽出することによって、根管口の位置が決定され、
前記根管口は、歯に特異的な座標系における座標として表現されることを特徴とする、コンピュータが実行する方法。」
に訂正する。

(3)訂正事項3
請求項8に
「表示部において当該歯根管系を視覚化するユーザインターフェース」
とあるのを、
「表示部において当該歯根管系を視覚化するとともに、前記歯根管の3次元図を表示可能に構成されているユーザインターフェース」
に訂正する(請求項8の記載を引用する請求項10?14も同様に訂正する。)。

(4)訂正事項4
請求項9を
「感染している歯の画像をデジタル化して画像データを生成するために、3次元イメージング装置を用いる、3次元デジタル歯内治療のためのコンピュータを利用したシステムであって、
前記画像データから歯根管系の3次元表現を抽出し、表示部において当該歯根管系を視覚化するユーザインターフェースと、
メモリに格納された、歯内治療のために使用される複数の歯根管機器のデジタルテンプレートと、
治療計画および機器選択のために、前記歯根管機器のデジタルテンプレートと、歯根管の形状または歯根管の断面図との2次元の重畳図を提供する手段と、を含むとともに、
濃淡値を用いて、前記画像データから前記歯根管系を勾配法に基づいて抽出する手段と、
歯根管に含まれる組織に拡散する造影剤を使用し、続いてCBCTイメージングを行った後、前記画像データにおいて、側面のチャネルを任意に含む前記歯根管を強調する手段と、
前記濃淡値に基づいて、感染している/炎症を起こしている組織の体積を自動的に識別およびトレースする手段と、の少なくともいずれかを含むことを特徴とする、コンピュータを利用したシステム。」
に訂正する。

(5)訂正事項5
請求項15を
「感染している歯の画像をデジタル化して画像データを生成するために、3次元イメージング装置を用いる、3次元デジタル歯内治療のためのコンピュータを利用したシステムであって、
前記画像データから歯根管系の3次元表現を抽出し、表示部において当該歯根管系を視覚化するユーザインターフェースと、
メモリに格納された、歯内治療のために使用される複数の歯根管機器のデジタルテンプレートと、
治療計画および機器選択のために、前記歯根管機器のデジタルテンプレートと、歯根管の形状または歯根管の断面図との2次元の重畳図を提供する手段と、を含み、
前記画像データから前記歯根管系を抽出することによって、根管口の位置を特定する手段と、
前記根管口を、歯に特異的な座標系における座標として表現する手段をさらに含むことを特徴とする、コンピュータを利用したシステム。」
に訂正する。

2 訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1、3について
訂正事項1、3に係る訂正は、訂正前の「ユーザインターフェース」を「歯根管の3次元図を表示可能に構成されているユーザインターフェース」と技術的に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。
また、この訂正は、訂正前の【請求項2】、【請求項10】等の記載に基づくものであるから、本件訂正前の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。そして、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

(2)訂正事項2、4、5について
訂正事項2、4、5に係る訂正は、いずれも引用関係の解消を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)一群の請求項について
訂正前の請求項1?7は、請求項2?7が、それぞれ請求項1を引用する関係にあることから、訂正前において一群の請求項に該当するものである。
訂正前の請求項8?15は、請求項9?15が、それぞれ請求項8を引用する関係にあることから、訂正前において一群の請求項に該当するものである。
また、訂正事項2、4、5に係る訂正は、上記のとおり認められるものである。そして、特許権者から、請求項7について訂正が認められるときは請求項1?7とは別の訂正単位として扱われること、及び請求項15について訂正が認められるときは請求項8?15とは別の訂正単位として扱われることの求めがあったことから、訂正後の請求項7、15について請求項ごとに訂正することを認める。

(4)まとめ
本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に規定する事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?6〕、7、〔8?14〕、15について、一群の請求項ごと又は請求項ごとに訂正することを認める。


第3 特許異議の申立てについて
1 本件発明
本件訂正は上記のとおり認められるので、本件特許の請求項1?15に係る発明(以下、それぞれ請求項に対応して「本件発明1」などといい、本件発明1?15をまとめて「本件発明」という。)は、平成30年12月7日提出の訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1?15に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
感染している歯の画像をデジタル化して画像データを生成するために、3次元イメージング装置を用いる、3次元デジタル歯内治療のためのコンピュータが実行する方法であって、
前記画像データから歯根管系の3次元表現を抽出し、表示部において当該歯根管系を視覚化するとともに、前記歯根管の3次元図を表示可能に構成されているユーザインターフェースを提供するステップと、
歯内治療のために使用される複数の歯根管機器の、複数のデジタルテンプレートとの、前記ユーザインターフェースを介したアクセスを提供するステップと、
前記ユーザインターフェースを介して、治療計画および機器選択のために、前記複数の歯根管機器の、前記複数のデジタルテンプレートのうちのいずれかと、歯根管の形状または歯根管の断面図との2次元の重畳図を提供するステップと、を含むことを特徴とする、コンピュータが実行する方法。
【請求項2】
歯根管系の3次元表現を取得するためにセグメンテーション技術が提供され、
前記ユーザインターフェースは、前記歯根管の3次元図および断面図を冠状面、矢状面、および横断面の少なくともいずれかで表示可能に構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記画像データから前記歯根管系を抽出することによって、根管口の位置が決定されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記抽出のステップは、前記画像の1または複数の断面図において、前記歯根管の軸に沿って点を示すことによって実行されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記点が接続され、前記歯の歯根管系を表す3次元の線グラフを構成することを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
それぞれの前記根管口は、識別可能な色の点として3次元内で視覚化されることを特徴とする、請求項3から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
感染している歯の画像をデジタル化して画像データを生成するために、3次元イメージング装置を用いる、3次元デジタル歯内治療のためのコンピュータが実行する方法であって、
前記画像データから歯根管系の3次元表現を抽出し、表示部において当該歯根管系を視覚化するユーザインターフェースを提供するステップと、
歯内治療のために使用される複数の歯根管機器の、複数のデジタルテンプレートとの、前記ユーザインターフェースを介したアクセスを提供するステップと、
前記ユーザインターフェースを介して、治療計画および機器選択のために、前記複数の歯根管機器の、前記複数のデジタルテンプレートのうちのいずれかと、歯根管の形状または歯根管の断面図との2次元の重畳図を提供するステップと、を含み、
前記画像データから前記歯根管系を抽出することによって、根管口の位置が決定され、
前記根管口は、歯に特異的な座標系における座標として表現されることを特徴とする、コンピュータが実行する方法。
【請求項8】
感染している歯の画像をデジタル化して画像データを生成するために、3次元イメージング装置を用いる、3次元デジタル歯内治療のためのコンピュータを利用したシステムであって、
前記画像データから歯根管系の3次元表現を抽出し、表示部において当該歯根管系を視覚化するとともに、前記歯根管の3次元図を表示可能に構成されているユーザインターフェースと、
メモリに格納された、歯内治療のために使用される複数の歯根管機器のデジタルテンプレートと、
治療計画および機器選択のために、前記歯根管機器のデジタルテンプレートと、歯根管の形状または歯根管の断面図との2次元の重畳図を提供する手段と、を含むことを特徴とする、コンピュータを利用したシステム。
【請求項9】
感染している歯の画像をデジタル化して画像データを生成するために、3次元イメージング装置を用いる、3次元デジタル歯内治療のためのコンピュータを利用したシステムであって、
前記画像データから歯根管系の3次元表現を抽出し、表示部において当該歯根管系を視覚化するユーザインターフェースと、
メモリに格納された、歯内治療のために使用される複数の歯根管機器のデジタルテンプレートと、
治療計画および機器選択のために、前記歯根管機器のデジタルテンプレートと、歯根管の形状または歯根管の断面図との2次元の重畳図を提供する手段と、を含むとともに、
濃淡値を用いて、前記画像データから前記歯根管系を勾配法に基づいて抽出する手段と、
歯根管に含まれる組織に拡散する造影剤を使用し、続いてCBCTイメージングを行った後、前記画像データにおいて、側面のチャネルを任意に含む前記歯根管を強調する手段と、
前記濃淡値に基づいて、感染している/炎症を起こしている組織の体積を自動的に識別およびトレースする手段と、の少なくともいずれかを含むことを特徴とする、コンピュータを利用したシステム。
【請求項10】
前記歯根管系の3次元表現を取得するためにセグメンテーション手段をさらに含み、
前記ユーザインターフェースは、歯根管の3次元図および断面図を冠状面、矢状面、および横断面の少なくともいずれかで表示可能に構成されていることを特徴とする、請求項8または9に記載のシステム。
【請求項11】
前記画像データから前記歯根管系を抽出することによって、根管口の位置を特定する手段をさらに含むことを特徴とする、請求項8から10のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
前記根管口の位置を特定する手段は、1または複数の断面図において、前記歯根管の軸に沿って点を示すよう構成されていることを特徴とする、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記点が接続され、前記歯の歯根管系を表す3次元の線グラフを構成することを特徴とする、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
それぞれの前記根管口を、識別可能な色の点として3次元内で視覚化する手段をさらに含むことを特徴とする、請求項11から13のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項15】
感染している歯の画像をデジタル化して画像データを生成するために、3次元イメージング装置を用いる、3次元デジタル歯内治療のためのコンピュータを利用したシステムであって、
前記画像データから歯根管系の3次元表現を抽出し、表示部において当該歯根管系を視覚化するユーザインターフェースと、
メモリに格納された、歯内治療のために使用される複数の歯根管機器のデジタルテンプレートと、
治療計画および機器選択のために、前記歯根管機器のデジタルテンプレートと、歯根管の形状または歯根管の断面図との2次元の重畳図を提供する手段と、を含み、
前記画像データから前記歯根管系を抽出することによって、根管口の位置を特定する手段と、
前記根管口を、歯に特異的な座標系における座標として表現する手段をさらに含むことを特徴とする、コンピュータを利用したシステム。」

2 取消理由の概要
平成30年9月6日付け取消理由通知により通知された取消理由は、要するに次のとおりである(特許異議申立書に記載された特許異議申立理由に同じ。)。
取消理由1:本件特許は、特許請求の範囲の請求項1?15の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、請求項1?15に係る特許は取り消されるべきものである。
取消理由2:本件特許は、特許請求の範囲の請求項1?15の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、請求項1?15に係る特許は取り消されるべきものである。
取消理由3:本件発明1?6、8、10?14は、その優先日前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記文献に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1?6、8、10?14に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。


甲第1号証:特開2001-51593号公報
甲第2号証:畑良明,外4名,「拡大におけるNTロータリーファイルとステンレスファイルの相違 マイクロCTにおける観察」,グローバル エンドドンティクス,クインテッセンス出版株式会社,2004年7月10日,p.92-93
甲第3号証:鈴木賢策校閲,石橋眞澄著,「歯内療法学」,改訂1刷,永末書店,1992年4月1日,p.236-237
甲第4号証:実願昭57-132225号(実開昭59-36319号)のマイクロフィルム
甲第5号証:特開昭51-57993号公報
(以下、甲各号証を付された数字に対応してそれぞれ「甲1」などという。)

3 取消理由についての検討
3-1 取消理由1について
本件特許の明細書には、次の記載がある。
「【0055】
3次元デジタル歯内治療のために、コンピュータ150は、コンピュータベースの方法において使用されてもよく、3次元イメージング装置は、画像データを形成するために、感染した歯の画像をデジタル化するために用いられる。上記3次元イメージング装置は、CTスキャナ、MRIスキャナ、または超音波スキャナなど、容積の測定データを生成するためのものである。
【0056】
上記ユーザインターフェースは、歯根管系の3次元表現が画像データから抽出され、視覚表示装置上で視覚化されるよう構成されていることが好ましい。上記ユーザインターフェースは、手術中に上記歯根管の位置を特定するための歯内治療機器を誘導するための外科用テンプレートの設計が可能なように構成されていることが好ましい。上記ユーザインターフェースは、上記歯根管系の3次元表現を取得するためのセグメンテーション技術を提供するよう構成されていることが好ましい。
【0057】
上記ユーザインターフェースは、上記歯根管の3次元図、および、冠状面、矢状面、および/または横断面の断面図を提供可能なように構成されていることが好ましい。
【0058】
上記ユーザインターフェースを介してアクセスするために、複数の歯根管機器の複数のデジタルテンプレートが提供されることが好ましい。例えば、上記デジタルテンプレートは、記憶装置に保存されていてもよく、または、LANまたはインターネットなどの広域データネットワークなどの電気通信ネットワークを介してアクセス可能であってもよい。上記ユーザインターフェースは、上記複数の歯根管機器の上記複数のデジタルテンプレートと協働して、治療計画および機器選択のために、機器と歯根管の形状または歯根管の断面図との2次元の重畳図を提供可能である。」

以上の記載を参照すれば、本件発明を特定するための事項であって、全ての発明に共通する事項である「3次元イメージング装置」、「3次元デジタル歯内治療のためのコンピュータ」、「画像データから歯根管系の3次元表現を抽出し、」「前記歯根管の3次元図を表示可能に構成されているユーザインターフェース」、「歯内治療のために使用される複数の歯根管機器の」「デジタルテンプレート」、「治療計画および機器選択のために、前記複数の歯根管機器の、前記複数のデジタルテンプレートのうちのいずれかと、歯根管の形状または歯根管の断面図との2次元の重畳図を提供する」等の事項(以下「共通特定事項」)は、いずれも上記の【0055】?【0058】に開示されている事項といえる。
また、明細書【0014】によれば、本件発明の解決すべき課題として、「(イ)治療に先立って、より正確な3次元の解剖情報を用いる方法およびシステムを提供することによって過誤を回避すること」、「(ロ)根管口と末端部との間において、さまざまな水準における歯根管の断面の大きさおよび形状の情報が欠落することを回避すること」等を掲げることができるところ、本件発明が、上記の共通特定事項、特に「治療計画および機器選択のために、前記複数の歯根管機器の、前記複数のデジタルテンプレートのうちのいずれかと、歯根管の形状または歯根管の断面図との2次元の重畳図を提供する」事項により当該(イ)の課題を、あるいは、特に「画像データから歯根管系の3次元表現を抽出し、」「前記歯根管の3次元図を表示可能に構成されているユーザインターフェース」を具備することにより、当該(ロ)の課題を、それぞれ解決し得ることは、当業者であれば普通に認識できるところである。
そうすると、本件発明は、「外科用テンプレート」までをも発明特定事項とするものではないが、「外科用テンプレート」の有無にかかわらず、発明の詳細な説明の記載により当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
よって、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないとすることはできず、取消理由1によっては、本件発明に係る特許を取り消すことはできない。

3-2 取消理由2について
例えば、請求項1における「視覚化するユーザインターフェース」、「歯根管機器の、複数のデジタルテンプレートとの、前記ユーザインターフェースを介したアクセス」、「ユーザインターフェースを介して、・・・歯根管機器の、前記複数のデジタルテンプレートのうちのいずれかと、歯根管の形状または歯根管の断面図との2次元の重畳図を提供する」等の記載を技術常識を踏まえつつ解釈すれば、「歯根管機器の」「デジタルテンプレート」が、歯根管機器という物自体ではなく、ユーザインターフェースである画面上に、二次元の図としてに提供される歯根管機器の画像に関するデジタル情報を意味するものと、当業者であれば普通に認識し、また、理解できるものといえる。
また、「デジタルテンプレート」が物ではなく、物を表示するための情報であるという上記の解釈は、「デジタルテンプレートは、治療計画および機器選択のために、機器と歯根管の形状または歯根管の断面図とを2次元に重畳して視認可能にするという利点を有する。」(【0021】)、「デジタルテンプレートは、記憶装置に保存されていてもよく、・・・」(明細書【0058】)等の明細書の記載とも整合するところである。
そうすると、特許請求の範囲に記載された「デジタルテンプレート」なる用語が何を意味するのか不明であるとも、「デジタルテンプレート」を発明特定事項として含む本件発明が明確でないともいえない。
よって、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとすることはできず、理由2によっては、本件発明に係る特許を取り消すことはできない。

3-3 取消理由3について
3-3-1 甲1に記載された発明
甲1には、【0118】?【0136】の記載があり、【図6】?【図11】の図示がある。
これらの記載及び図示を参照すれば、甲1の記載内容につき次の事項を認めることができる。
ア)コンピュータは、人体の歯顎Rの画像をデジタル化して3次元データを生成するために、CTを用いる(【0118】?【0120】)。術者の行う治療は、インプラント治療である(【0129】?【0136】)。
イ)画像表示手段7は、3次元データから歯顎Rを視覚化するとともに表示可能である(【0125】、【図6】、【図9】(a)?【図10】(b))。
ウ)術者は、インプラント治療に使用される複数のインプラントIの複数の画像表示と、画像表示手段7を介してアクセスできる(【0130】、【図10】(a))。
エ)画像表示手段7では、インプラント治療の計画及びインプラントIの選択のために、複数のインプラントIの画像表示のうちのいずれかと歯顎Rの断面図との2次元の重畳図が提供される(【0131】、【0132】、【図10】(a)?(b))。

してみると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明A」という。)が記載されている。
「人体の歯顎Rの画像をデジタル化して3次元データを生成するために、CTを用いる、インプラント治療のためのコンピュータが実行する方法であって、
前記3次元データから歯顎Rを視覚化するとともに表示可能に構成されている画像表示手段7を提供するステップと、
インプラント治療に使用される複数のインプラントIの、複数の画像表示を画像表示手段7を介したアクセスを提供するステップと、
画像表示手段7を介して、インプラント治療の計画およびインプラントIの選択のために、複数のインプラントIの画像表示のうちのいずれかと歯顎Rの断面図との2次元の重畳図を提供するステップと、を含む、コンピュータが実行する方法。」

また、甲1には、次の発明(以下「甲1発明B」という。)が記載されている。
「人体の歯顎Rの画像をデジタル化して3次元データを生成するために、CTを用いる、インプラント治療のためのコンピュータを利用するシステムであって、
前記3次元データから歯顎Rを視覚化するとともに表示可能に構成されている画像表示手段7と、
複数のインプラントIの複数の画像表示と、
インプラント治療の計画およびインプラントIの選択のために、前記インプラントIの画像表示と、歯顎Rの断面図との2次元の重畳図を提供することと、を含むコンピュータを利用するシステム。」

3-3-1 本件発明1について
本件発明1に対し、当審の通知した取消理由は、より具体的には、本件発明1は、甲1発明A及び甲2?3に記載された事項ないし周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである、というものであるので、以下に検討する。
(1)対比
本件発明1(前者)と甲1発明A(後者)とを対比する。
ア)後者の「3次元データ」、「CT」は、前者の「画像データ」、「3次元イメージング装置」にそれぞれ相当する。
また、後者の「人体の歯顎R」は、“人体の特定部分”である点で前者の「感染している歯」と共通する。同様に、後者の「インプラント治療」は、“歯科治療”である点で前者の「3次元デジタル歯内治療」と共通する。
イ)前者の「歯根管系」は、人体の一部分である「感染している歯」の一部であるから、後者の「画像表示手段7」は、“人体の特定部分を表示可能に構成されている”点で前者の「ユーザインターフェース」と共通する。
ウ)後者の「インプラントI」は、“医療機器”の点で前者の「歯内治療のために使用される複数の歯根管機器」と共通する。同様に、後者の「複数のインプラントIの、複数の画像表示」は、“複数の医療機器の、複数のデジタルテンプレート”の点で前者の「複数の歯根管機器の、複数のデジタルテンプレート」と共通する。
エ)後者の「インプラント治療の計画およびインプラントIの選択」は、“歯科治療計画および医療機器選択”の点で前者の「治療計画および機器選択」と共通する。
また、後者の「複数のインプラントIの表示のうちのいずれかと歯顎Rの断面図との2次元の重畳図」は、“前記複数の医療機器の、前記複数のデジタルテンプレートのうちのいずれかと、人体の特定部分の断面図との2次元の重畳図”の点で前者の「前記複数の歯根管機器の、前記複数のデジタルテンプレートのうちのいずれかと、歯根管の形状または歯根管の断面図との2次元の重畳図」と共通する。

以上によれば、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
人体の特定部分の画像をデジタル化して画像データを生成するために、3次元イメージング装置を用いる、歯科治療のためのコンピュータが実行する方法であって、
前記人体の特定部分を表示可能に構成されているユーザインターフェースを提供するステップと、
歯科治療のために使用される複数の医療機器の、複数のデジタルテンプレートとの、前記ユーザインターフェースを介したアクセスを提供するステップと、
前記ユーザインターフェースを介して、歯科治療計画および医療機器選択のために、前記複数の医療機器の、前記複数のデジタルテンプレートのうちのいずれかと、人体の特定部分の断面図との2次元の重畳図を提供するステップと、を含む、コンピュータが実行する方法。

<相違点1>
前者においては、歯科治療が「3次元デジタル歯内治療」であり、このため、人体の特定部分が「感染している歯」であり、かつ、ユーザインタフェースには、人体の特定部分として、「画像データから歯根管系の3次元表現を抽出し、表示部において当該歯根管系を視覚化するとともに、前記歯根管の3次元図」が表示可能であるのに対し、後者においては、歯科治療がインプラント治療であり、このため、人体の特定部分が人体の歯顎Rであり、かつ、ユーザインタフェースには、当該歯顎R自体が表示可能である点。

<相違点2>
前者においては、歯科治療が「3次元デジタル歯内治療」であり、このため、医療機器が「歯内治療のために使用される複数の歯根管機器」であり、かつ、「治療計画および機器選択のために、前記複数の歯根管機器の、前記複数のデジタルテンプレートのうちのいずれかと、歯根管の形状または歯根管の断面図との2次元の重畳図」が提供されるのに対し、後者においては、歯科治療がインプラント治療であり、このため、医療機器がインプラント治療のために使用される複数のインプラントIであり、かつ、複数のインプラントIの画像表示のうちのいずれかと歯顎Rの断面図との2次元の重畳図が提供される点。

(2)判断
ア)甲1【0136】の示唆について
甲1【0136】には、「以上の説明では、再構成画像を充填治療、インプラント治療に用いる例を説明したが、歯牙の内部構造を希望の断面で治療器具の切削部と同時に再構成画像として見ることができるので、従来、経験と勘にたよりながら、ほとんど手探り状態で行ってきた根管治療にも、このシステムは非常に有効である。」と、「インプラント治療に用いる例」を「根管治療」にも適用できるかのような記載がある(下線は当審による。以下同様。)。
そこで【0136】の上記記載を検討するに、同記載に加え、「歯科治療では、剛体である歯牙などの虫歯部分を切削で除去して代替の充填物を埋め込むのが通例であるが、この場合、治療部位において、治療器具がどの程度歯牙などの虫歯部分を除去したかを検知することは非常に難しく、切削音の変化などを基に、術者の長年の勘や経験によって判断しているのが、現状であり、その切削部分の位置や形状を定量的に正確に把握をすることはできなかった。」(【0003】)、「図2に示すように、治療器具4の切削部4a縦断面と、その縦断面と同一面の治療部位の歯牙S7の断面の画像を重畳させた画像を選択し表示させるようにすると、治療器具による歯顎に垂直方向の治療状況の把握に便利である。」(【0093】)の各記載を併せみると、根管治療に関し、当業者が甲1から把握できる事項としては、「このシステム」(【0136】)を根管治療に適用した結果、根管治療中に、歯牙の内部構造とリーマ等の歯根管機器とが同時に再構成画像として表示されるので、術者は、治療状況を把握しながら根管治療を行うことができる、という程度に留まるのであって、根管治療において使用される治療機器につき、どの機器をどのような順序で適切に選択し、どのように根管治療計画を作成するのかという点についてまでは、甲1に記載も示唆もない。
してみると、甲1【0136】の記載をもって、「インプラント治療に用いる例」を根管治療へとそのまま適用できることが示唆されているとまではいえないし、仮に、「インプラント治療に用いる例」が根管治療へと適用できたとしても、その場合の根管治療が具体的にどのように行われるのかについては、甲1に何ら記載も示唆もされてない。

イ)相違点1について
上記ア)で示したように、甲1では、インプラント治療に係る甲1発明Aを歯内治療に適用することが示唆されているとはいえないが、仮に、甲1発明Aを歯内治療に適用できたとしても、甲1には、ユーザインターフェース」を「画像データから歯根管系の3次元表現を抽出し、表示部において当該歯根管系を視覚化するとともに、前記歯根管の3次元図を表示可能に構成」する点について何らの記載はなく、また、この点が甲2、甲3に記載されているとも、周知技術であるともいえないのであるから、甲1発明A及び甲2、3に記載の事項に基づいて当業者が相違点1における本件発明1に係る事項を容易に想到できたものとはいえない。
そして、相違点1に係る前者の事項を具備することにより、本件発明1は、「施術者が治療計画のために、歯根管の3次元の形状を正確に認識できる」(平成30年12月7日付け意見書第13頁最終行)という作用効果が期待できるものである。

ウ)相違点2について
本件明細書及び図面の記載を参酌すれば、本件発明1における「治療のために使用される」「歯根管機器」が、インプラントなどの補綴物としての機器ではなく、歯根管を切削、研磨するための加工機器を意味するものといえるところ、甲1には、「治療のために使用される」「機器」である加工機器に関し、「治療計画および機器選択のために」、その「機器の、複数のデジタルテンプレート」を提供する点について、何らの記載はなく、さらに、この点が、甲2、甲3に記載されているとも、周知技術であるともいえない。
また、上記ア)で示したように、甲1では、インプラント治療に係る甲1発明Aを歯内治療に適用することが示唆されているとはいえないが、仮に、甲1発明Aを歯内治療に適用できたとしても、甲1には、その場合における根管治療の具体的内容については何らの記載はないのであるから、甲1発明A及び甲2、3に記載の事項に基づいて、当業者が相違点2における本件発明1に係る事項までをも容易に想到できたものとはいえない。
そして、この相違点2に係る前者の事項を具備することにより、本件発明1は、「施術者は、歯根管の3次元の形状を正確に認識した上で、『ユーザインターフェースを介して、治療計画および機器選択のために、前記複数の歯根管機器の、前記複数のデジタルテンプレートのうちのいずれか』を選択し、『歯根管の形状または歯根管の断面図との2次元の重畳図』を確認することができるから、個別の治療について適切な歯根管機器の選択と治療計画とを、治療前に十分に検討することができるようになる。」(平成30年12月7日付け意見書第22?27行)という作用効果が期待できるものである。

(3)まとめ
したがって、本件発明1は、甲1発明A及び甲2?3に記載された事項ないし周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3-3-2 本件発明2?3について
本件発明2?3に対し、当審の通知した取消理由は、より具体的には、本件発明2?3は、甲1発明A及び甲2?3に記載された事項ないし周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである、というものである。
本件発明2?3は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、甲1発明Aとは、少なくとも上記相違点1、2において相違することから、上記「3-3-1」で示した理由と同様の理由により、甲1発明A及び甲2?3に記載された事項ないし周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3-3-3 本件発明4?5について
本件発明4?5に対し、当審の通知した取消理由は、より具体的には、本件発明4?5は、甲1発明A、甲2?3に記載された事項ないし周知技術及び甲4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである、というものである。
本件発明4?5は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、甲1発明Aとは、少なくとも上記相違点1、2において相違する。
甲4には、「根管長測定装置」に係る事項が記載されているが、相違点1、2における本件発明4?5に係る事項については、記載も示唆もない。
そうすると、本件発明4?5は、上記「3-3-1」で示した理由と同様の理由により、甲1発明A、甲2?3に記載された事項ないし周知技術及び甲4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3-3-4 本件発明6について
本件発明6に対し、当審の通知した取消理由は、より具体的には、本件発明6は、甲1発明A、甲2?3に記載された事項ないし周知技術及び甲5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである、というものである。
本件発明6は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、甲1発明Aとは、少なくとも上記相違点1、2において相違する。
甲5には、「歯科実習用歯根管模型」に係る事項が記載されているが、相違点1、2における本件発明6に係る事項については、記載も示唆もない。
そうすると、本件発明6は、上記「3-3-1」で示した理由と同様の理由により、甲1発明A、甲2?3に記載された事項ないし周知技術及び甲5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3-3-5 本件発明8について
本件発明8に対し、当審の通知した取消理由は、より具体的には、本件発明1は、甲1発明B及び甲2?3に記載された事項ないし周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである、というものであるので、以下に検討する。
(1)対比
上記「2-3-1」の「(1)対比」における検討を踏まえつつ、本件発明8(前者)と甲1発明B(後者)とを対比する。
後者の「システム」は、「複数のインプラントIの複数の画像表示」を含むのであるから、同「システム」が、「複数のインプラントIの複数の画像表示」のためのデジタルデータを有することは明らかであるところ、斯かるデジタルデータが適宜の記憶媒体により保持されることは技術常識である。
そうすると、後者は、“メモリに格納された、歯科治療のために使用される複数の医療機器のデジタルテンプレート”を含む点で前者と共通する。
また、後者は、「重畳図を提供すること」を含むのであるから、「重畳図を提供する」ための適宜の手段を有していることは明らかといえるので、後者は、“歯科治療計画および医療機器の選択のために、前記医療機器のデジタルテンプレートと、人体の特定部分の断面図との2次元の重畳図を提供する手段と、を含む”点で前者と共通する。

以上によれば、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
人体の特定部分の画像をデジタル化して画像データを生成するために、3次元イメージング装置を用いる、歯科治療のためのコンピュータを利用したシステムであって、
前記人体の特定部分を表示可能に構成されているユーザインターフェースと、
メモリに格納された、歯科治療のために使用される複数の医療機器のデジタルテンプレートと、
歯科治療計画および医療機器の選択のために、前記医療機器のデジタルテンプレートと、人体の特定部分の断面図との2次元の重畳図を提供する手段と、を含む、コンピュータを利用したシステム。

<相違点1’>
前者においては、歯科治療が「3次元デジタル歯内治療」であり、このため、人体の特定部分が「感染している歯」であり、かつ、ユーザインタフェースには、人体の特定部分として、「画像データから歯根管系の3次元表現を抽出し、表示部において当該歯根管系を視覚化するとともに、前記歯根管の3次元図」が表示可能であるのに対し、後者においては、歯科治療がインプラント治療であり、このため、人体の特定部分が人体の歯顎Rであり、かつ、ユーザインタフェースには、当該歯顎R自体が表示可能である点。

<相違点2’>
前者においては、歯科治療が「3次元デジタル歯内治療」であり、このため、医療機器が「歯内治療のために使用される複数の歯根管機器」であり、かつ、「治療計画および機器選択のために、前記歯根管機器のデジタルテンプレートと、歯根管の形状または歯根管の断面図との2次元の重畳図」が提供されるのに対し、後者においては、歯科治療がインプラント治療であり、このため、医療機器がインプラント治療のために使用される複数のインプラントIであって、かつ、複数のインプラントIの画像表示のうちのいずれかと歯顎Rの断面図との2次元の重畳図が提供される点。

(2)判断
相違点1’及び2’は、上記相違点1及び2と実質的に差異はないところ、相違点1、2については、上記「3-3-1」において検討したとおりである。
そうすると、本件発明8は、甲1発明B及び甲2?3に記載された事項ないし周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3-3-6 本件発明10?11について
本件発明10?11に対し、当審の通知した取消理由は、より具体的には、本件発明10?11は、甲1発明B及び甲2?3に記載された事項ないし周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである、というものである。
本件発明10?11は、本件発明8の発明特定事項を全て含むものであるから、甲1発明Bとは、少なくとも上記相違点1’、2’において相違することから、上記「3-3-5」で示した理由と同様の理由により、甲1発明B及び甲2?3に記載された事項ないし周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3-3-7 本件発明12?13について
本件発明12?13に対し、当審の通知した取消理由は、より具体的には、本件発明12?13は、甲1発明B、甲2?3に記載された事項ないし周知技術及び甲4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである、というものである。
本件発明12?13は、本件発明8の発明特定事項を全て含むものであるから、甲1発明Bとは、少なくとも上記相違点1’、2’において相違する。
甲4には、「根管長測定装置」に係る事項が記載されているが、相違点1’、2’における本件発明12?13に係る事項については、記載も示唆もない。
そうすると、本件発明12?13は、上記「3-3-5」で示した理由と同様の理由により、甲1発明B、甲2?3に記載された事項ないし周知技術及び甲4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3-3-8 本件発明14について
本件発明14に対し、当審の通知した取消理由は、より具体的には、本件発明14は、甲1発明B、甲2?3に記載された事項ないし周知技術及び甲5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである、というものである。
本件発明14は、本件発明8の発明特定事項を全て含むものであるから、甲1発明Bとは、少なくとも上記相違点1’、2’において相違する。
甲5には、「歯科実習用歯根管模型」に係る事項が記載されているが、相違点1’、2’における本件発明14に係る事項については、記載も示唆もない。
そうすると、本件発明14は、上記「3-3-5」で示した理由と同様の理由により、甲1発明B、甲2?3に記載された事項ないし周知技術及び甲5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3-3-9 小括
以上のとおり、本件発明1?6、8、10?14に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではなく、取消理由3によっては、本件発明1?6、8、10?14に係る特許を取り消すことはできない。

4 むすび
したがって、取消理由通知に記載した取消理由によっては、請求項1?15に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感染している歯の画像をデジタル化して画像データを生成するために、3次元イメージング装置を用いる、3次元デジタル歯内治療のためのコンピュータが実行する方法であって、
前記画像データから歯根管系の3次元表現を抽出し、表示部において当該歯根管系を視覚化するとともに、前記歯根管の3次元図を表示可能に構成されているユーザインターフェースを提供するステップと、
歯内治療のために使用される複数の歯根管機器の、複数のデジタルテンプレートとの、前記ユーザインターフェースを介したアクセスを提供するステップと、
前記ユーザインターフェースを介して、治療計画および機器選択のために、前記複数の歯根管機器の、前記複数のデジタルテンプレートのうちのいずれかと、歯根管の形状または歯根管の断面図との2次元の重畳図を提供するステップと、を含むことを特徴とする、コンピュータが実行する方法。
【請求項2】
歯根管系の3次元表現を取得するためにセグメンテーション技術が提供され、
前記ユーザインターフェースは、前記歯根管の3次元図および断面図を冠状面、矢状面、および横断面の少なくともいずれかで表示可能に構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記画像データから前記歯根管系を抽出することによって、根管口の位置が決定されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記抽出のステップは、前記画像の1または複数の断面図において、前記歯根管の軸に沿って点を示すことによって実行されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記点が接続され、前記歯の歯根管系を表す3次元の線グラフを構成することを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
それぞれの前記根管口は、識別可能な色の点として3次元内で視覚化されることを特徴とする、請求項3から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
感染している歯の画像をデジタル化して画像データを生成するために、3次元イメージング装置を用いる、3次元デジタル歯内治療のためのコンピュータが実行する方法であって、
前記画像データから歯根管系の3次元表現を抽出し、表示部において当該歯根管系を視覚化するユーザインターフェースを提供するステップと、
歯内治療のために使用される複数の歯根管機器の、複数のデジタルテンプレートとの、前記ユーザインターフェースを介したアクセスを提供するステップと、
前記ユーザインターフェースを介して、治療計画および機器選択のために、前記複数の歯根管機器の、前記複数のデジタルテンプレートのうちのいずれかと、歯根管の形状または歯根管の断面図との2次元の重畳図を提供するステップと、を含み、
前記画像データから前記歯根管系を抽出することによって、根管口の位置が決定され、
前記根管口は、歯に特異的な座標系における座標として表現されることを特徴とする、コンピュータが実行する方法。
【請求項8】
感染している歯の画像をデジタル化して画像データを生成するために、3次元イメージング装置を用いる、3次元デジタル歯内治療のためのコンピュータを利用したシステムであって、
前記画像データから歯根管系の3次元表現を抽出し、表示部において当該歯根管系を視覚化するとともに、前記歯根管の3次元図を表示可能に構成されているユーザインターフェースと、
メモリに格納された、歯内治療のために使用される複数の歯根管機器のデジタルテンプレートと、
治療計画および機器選択のために、前記歯根管機器のデジタルテンプレートと、歯根管の形状または歯根管の断面図との2次元の重畳図を提供する手段と、を含むことを特徴とする、コンピュータを利用したシステム。
【請求項9】
感染している歯の画像をデジタル化して画像データを生成するために、3次元イメージング装置を用いる、3次元デジタル歯内治療のためのコンピュータを利用したシステムであって、
前記画像データから歯根管系の3次元表現を抽出し、表示部において当該歯根管系を視覚化するユーザインターフェースと、
メモリに格納された、歯内治療のために使用される複数の歯根管機器のデジタルテンプレートと、
治療計画および機器選択のために、前記歯根管機器のデジタルテンプレートと、歯根管の形状または歯根管の断面図との2次元の重畳図を提供する手段と、を含むとともに、
濃淡値を用いて、前記画像データから前記歯根管系を勾配法に基づいて抽出する手段と、
歯根管に含まれる組織に拡散する造影剤を使用し、続いてCBCTイメージングを行った後、前記画像データにおいて、側面のチャネルを任意に含む前記歯根管を強調する手段と、
前記濃淡値に基づいて、感染している/炎症を起こしている組織の体積を自動的に識別およびトレースする手段と、の少なくともいずれかを含むことを特徴とする、コンピュータを利用したシステム。
【請求項10】
前記歯根管系の3次元表現を取得するためにセグメンテーション手段をさらに含み、
前記ユーザインターフェースは、歯根管の3次元図および断面図を冠状面、矢状面、および横断面の少なくともいずれかで表示可能に構成されていることを特徴とする、請求項8または9に記載のシステム。
【請求項11】
前記画像データから前記歯根管系を抽出することによって、根管口の位置を特定する手段をさらに含むことを特徴とする、請求項8から10のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
前記根管口の位置を特定する手段は、1または複数の断面図において、前記歯根管の軸に沿って点を示すよう構成されていることを特徴とする、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記点が接続され、前記歯の歯根管系を表す3次元の線グラフを構成することを特徴とする、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
それぞれの前記根管口を、識別可能な色の点として3次元内で視覚化する手段をさらに含むことを特徴とする、請求項11から13のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項15】
感染している歯の画像をデジタル化して画像データを生成するために、3次元イメージング装置を用いる、3次元デジタル歯内治療のためのコンピュータを利用したシステムであって、
前記画像データから歯根管系の3次元表現を抽出し、表示部において当該歯根管系を視覚化するユーザインターフェースと、
メモリに格納された、歯内治療のために使用される複数の歯根管機器のデジタルテンプレートと、
治療計画および機器選択のために、前記歯根管機器のデジタルテンプレートと、歯根管の形状または歯根管の断面図との2次元の重畳図を提供する手段と、を含み、
前記画像データから前記歯根管系を抽出することによって、根管口の位置を特定する手段と、
前記根管口を、歯に特異的な座標系における座標として表現する手段をさらに含むことを特徴とする、コンピュータを利用したシステム。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-04-15 
出願番号 特願2012-553333(P2012-553333)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (A61C)
P 1 651・ 121- YAA (A61C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 川島 徹  
特許庁審判長 林 茂樹
特許庁審判官 芦原 康裕
関谷 一夫
登録日 2017-12-22 
登録番号 特許第6261865号(P6261865)
権利者 マイレフェル インストルメンツ ホールディング エスアーアールエル デントスプリー インプランツ ナムローゼ フェンノートシャップ
発明の名称 3次元デジタル歯内治療  
代理人 荒井 寿王  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  
代理人 黒木 義樹  
代理人 阿部 寛  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  
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