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審決分類 |
審判 全部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 B60T 審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 B60T 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 B60T 審判 全部申し立て 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張 B60T 審判 全部申し立て ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 B60T 審判 全部申し立て 2項進歩性 B60T 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 B60T |
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管理番号 | 1352311 |
異議申立番号 | 異議2018-700220 |
総通号数 | 235 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2019-07-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-03-12 |
確定日 | 2019-05-17 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6195578号発明「車両の緊急ブレーキ状況を判定するための方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6195578号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?15〕について訂正することを認める。 特許第6195578号の請求項1、6?8、14及び15に係る特許を維持する。 特許第6195578号の請求項2?5及び9?13に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6195578号の請求項1?15に係る特許についての出願は、2013年(平成25年)2月1日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2012年2月14日、独国(DE))を国際出願日として出願され、平成29年8月25日にその特許権の設定登録がされ、平成29年9月13日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、平成30年3月12日に特許異議申立人 クノル-ブレムゼ ジステーメ フューア ヌッツファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング(以下、「特許異議申立人」という。)によりその全請求項に対して特許異議の申立てがされ、当審は、平成30年8月24日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である平成30年11月26日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)を行い、その訂正の請求に対して、特許異議申立人は、平成31年3月14日に意見書を提出した。 第2 訂正の適否についての判断 1.訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は次のとおりである(下線は訂正箇所である。なお、数式は表記上の都合により等価な式として記載している場合がある。)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「少なくとも以下の状態変数: 前記自車両(1)の絶対走行速度(v1)と、 前記自車両(1)の絶対縦加速度(a1)と、 前方の物体(2)に対する前記自車両(1)の相対距離(dx) 【数1】 dx=(x2_0-x1_0)+(v2-v1)・t+1/2・(a2-a1)・t^(2) と、 前記前方の物体(2)の第2速度(v2)と第2加速度(a2)とを算出し、 」 と記載されているのを、 「少なくとも以下の実際(t=0)の状態変数: 前記自車両(1)の実際(t=0)の絶対走行速度、v1と、 前記自車両(1)の実際(t=0)の絶対縦加速度、a1と、 前方の物体(2)に対する前記自車両(1)の実際(t=0)の相対距離、dx_0と、 前記前方の物体(2)の実際(t=0)の第2速度、v2と実際(t=0)の第2加速度、a2とを算出し、前記実際(t=0)の相対距離(dx_0)は以下の式で表され、 【数1】 dx_0=x2_0-x1_0 dx=dx_0+(v2-v1)・t+(1/2)・(a2-a1)・t^(2) 方程式3 ここで、 x1_0は前記自車両(1)の実際(t=0)の位置、 x2_0は前記前方の物体(2)の実際(t=0)の位置、 dxは時刻tにおける前記前方の物体(2)に対する前記自車両(1)の相対距離、」 に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項14、15も同様に訂正する。)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に 「緊急ブレーキ状況が存在するかどうかが、判定方法(BV1,BV2)を用いて実際の前記状態変数(v1,a1、dx,v2,a2)から判定される当該方法において、 緊急ブレーキ状況が存在するかどうかを判定するため、少なくとも2つの異なる判定方法(BV1,BV2)が、前記状態変数(v1,a1、dx,v2,a2)に応じて使用され、 前記少なくとも2つの異なる判定方法(BV1,BV2)のうちのどの判定方法が使用されるかが、前記状態変数(v1,a1、dx,v2,a2)に応じて決定されること」 と記載されているのを、 「緊急ブレーキ状況が存在するかどうかが、判定方法(BV1,BV2)を用いて実際の前記状態変数(v1,a1、dx_0,v2,a2)から判定される当該方法において、 緊急ブレーキ状況が存在するかどうかを判定するため、少なくとも2つの異なる判定方法(BV1,BV2)が、前記状態変数(v1,a1、dx_0,v2,a2)に応じて使用され、 前記少なくとも2つの異なる判定方法(BV1,BV2)のうちのどの判定方法が使用されるかが、前記状態変数(v1,a1、dx_0,v2,a2)に応じて決定されること」 に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項14、15も同様に訂正する。)。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項1に 「前記異なる判定方法(BV1,BV2)は、少なくとも以下の判定方法: 前記自車両(1)と前記前方の物体(2)との移動方程式系が算出される移動方程式の判定方法(BV1)と、前記自車両(1)の制動距離(s1_br)が算出される制動距離の判定方法(BV2)とを有すること、」と記載されているのを 「前記異なる判定方法(BV1,BV2)は、少なくとも以下の判定方法: 前記自車両(1)と前記前方の物体(2)との移動方程式系が算出される移動方程式の判定方法(BV1)と、前記自車両(1)の許容制動距離(s1_br)が算出される許容制動距離の判定方法(BV2)とを有し、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項14、15も同様に訂正する。)。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項1の訂正事項3の後に 「複数の前記判定方法(BV1,BV2)によってそれぞれ1つの目標加速度(a1_d_1,a2_d_2)が、算出され、」と記載する(請求項1の記載を引用する請求項14、15も同様に訂正する。)。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項1の訂正事項4の後に 「緊急ブレーキ状況が判定された場合は、自動的に、緊急ブレーキ過程が開始され、及び/又は、警報表示信号(Si1)が出力されるようにし、」 と記載する(請求項1の記載を引用する請求項14、15も同様に訂正する。)。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項1の訂正事項5の後に 「その自動緊急ブレーキの起動後の車両内のブレーキ系の応答時間(t1)及び/又は警報表示部(9)による前記警報表示信号(Si1)の出力後の運転者の応答時間(t1)が、複数の前記判定方法(BV1,BV2)のうちのどの判定方法を使用する必要があるかの決定、及び/又は個々の判定方法にさらに、算入され、」 と記載する(請求項1の記載を引用する請求項14、15も同様に訂正する。)。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項1の訂正事項6の後に 「前記第1判定方法(BV1)では、前記自車両(1)の移動方程式と前記前方の物体(2)の移動方程式とが、時間の二次関数として立てられ、且つ: 実際(t=0)の相対距離(dx_0)、前記自車両(1)の実際(t=0)の前記絶対縦加速度(a1)及び前記前方の物体(2)の実際(t=0)の第2加速度(a2)並びに前記自車両(1)の実際(t=0)の絶対走行速度(v1)及び前記前方の物体(2)の実際(t=0)の第2速度(v2)を有し、」 と記載する(請求項1の記載を引用する請求項14、15も同様に訂正する。)。 (8)訂正事項8 特許請求の範囲の請求項1の訂正事項7の後に 「前記第1判定方法(BV1)では、 t1が前記応答時間であり、dvが実際(t=0)の前記自車両(1)に対する前記前方の物体(2)の相対速度(v2-v1)であり、dv_t1が、前記応答時間(t1)後の前記自車両(1)に対する前記前方の物体(2)の相対速度であり、dx_t1が、前記応答時間(t1)後の前記相対距離であり、dx_minが、前方の物体(2)に対する前記自車両(1)の相対距離として許容できる最短距離であるとして、時刻tにおける前記前方の物体(2)に対する前記自車両(1)の相対距離(dx)に関する方程式(方程式3)に基づいて、前記最短距離(dx_min)が得られるときに前記自車両(1)に対する前記前方の物体(2)の相対速度が零になる条件から、第1目標加速度(a1_d_1)が、方程式 【数2】 dv_t1=dv+(a2-a1)・t1 方程式5 dx_t1=dx_0+dv・t1+(a2-a1)・t1^(2)/2 方程式6 a1_d_1=a2-(dv_t1)^(2)/(2・(dx_t1-dx_min)) (方程式7) を使用して算出され、」 と記載する(請求項1の記載を引用する請求項14、15も同様に訂正する。)。 (9)訂正事項9 特許請求の範囲の請求項1の訂正事項8の後に 「前記第2判定方法(BV2)では、前記応答時間(t1)後に前記自車両(1)が制動を起動する際にどのくらいの制動距離(s1_br)が残されているかという、絶対走行速度(v1)と第2速度(v2)と絶対縦加速度(a1)と第2加速度(a2)との実際(t=0)の値及び実際(t=0)の相対距離(dx_0)並びに一定の最短距離(dx_min)に基づく計算から、第2目標加速度(a1_d_2)が算出され、」 と記載する(請求項1の記載を引用する請求項14、15も同様に訂正する。)。 (10)訂正事項10 特許請求の範囲の請求項1の訂正事項9の後に 「前記第2目標加速度(a1_d_2)は、前記応答時間(t1)後の前記自車両(1)の、実際(t=0)の絶対走行速度(v1)と実際(t=0)の絶対縦加速度(a1)とから算出された絶対走行速度(v1_t1)と、前記応答時間(t1)後の制動の起動時の前記自車両(1)の許容制動距離(s1_br)とを有する方程式 【数3】 a1_d_2=(v1_t1)^(2)/(2・sl_br) に基づいて算出され、 ここで、 v1_t1は応答時間t1後の絶対走行速度であり、」 と記載する(請求項1の記載を引用する請求項14、15も同様に訂正する。)。 (11)訂正事項11 特許請求の範囲の請求項1に 「制動距離(s1_br)は、 【数2】 s1_br=dx+s2_stop-s1_react-dx_min 方程式10 s2_stop=-v2^(2)/(2・a2) 方程式11 s1_react=v1・t1+1/2・a1・t1^(2) 方程式12 によって算出される」 と記載されているのを、 「 s1_brは許容制動距離であり、応答時間をt1として、 【数4】 s1_br=dx_0+s2_stop-s1_react-dx_min 方程式10 s2_stop=-v2^(2)/(2・a2) 方程式11 s1_react=v1・t1+1/2・a1・t1^(2) 方程式12 によって算出され、」 に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項14、15も同様に訂正する。)。 (12)訂正事項12 特許請求の範囲の請求項1の訂正事項11の後に 「前記第1判定方法(BV1)が適切であり且つ使用されるかどうか、又は、少なくとも前記第2判定方法(BV2)が適切であり且つ使用されるかどうかが、1つの許容基準(Zk1)に基づいて決定され、」 と記載する(請求項1の記載を引用する請求項14、15も同様に訂正する。)。 (13)訂正事項13 特許請求の範囲の請求項1の訂正事項12の後に 「当該許容基準(Zk1)では、 前記第1判定方法(BV1)で算出された前記第1目標加速度a1_d_1を用いて、 前記自車両(1)が最短距離(dx_min)に達し、且つ前記前方の物体(2)と同じ速度(dv=0)に達するまでに要される絶対制動時間(t1_dv)が以下の方程式 【数5】 t1_dv=(2(dx_t1-dx_min)/(a2-a1_d_1))^(1/2)+t1 方程式9 ここで、t1_dvは絶対制動時間 に基づいて算出され、 他方、停止(v2(t2_stop)=0)までに制動のために要する前記前方の物体(2)の物体制動時間(t2_stop)が以下の方程式 【数6】 t2_stop=(0km/h-v2)/a2=-v2/a2 方程式8 ここで、t2_stopは物体制動時間 に基づいて算出され、 前記許容基準(Zk1)が満たされている場合、すなわち、前記絶対制動時間(t1_dv)が前記物体制動時間(t2_stop)より短いか又は当該物体制動時間(t2_stop)に等しい場合は、前記第1判定方法(BV1)において算出された前記第1目標加速度(a1_d_1)が、適正であり且つ使用され、 前記許容基準(Zk1)が満たされていない場合、すなわち、前記絶対制動時間(t1_dv)が前記物体制動時間(t2_stop)より長い場合は、少なくとも前記第2判定方法(BV2)において算出された前記第2目標加速度(a1_d_2)が、適切であり且つ使用され、」 と記載する(請求項1の記載を引用する請求項14、15も同様に訂正する。)。 (14)訂正事項14 特許請求の範囲の請求項1の訂正事項13の後に 「前記第1判定方法(BV1)において算出された前記第1目標加速度(a1_d_1)が適切であり使用される場合は、前記第1目標加速度(a1_d_1)が限界値を超えるときに前記自車両(1)の自動制御の必要性が生じると判定し、 前記第2判定方法(BV2)において算出された前記第2目標加速度(a1_d_2)が適切であり使用される場合は、前記第2目標加速度(a1_d_2)が限界値を超えるときに前記自車両(1)の自動制御の必要性が生じると判定する」 と記載する(請求項1の記載を引用する請求項14、15も同様に訂正する。)。 (15)訂正事項15 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (16)訂正事項16 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (17)訂正事項17 特許請求の範囲の請求項4を削除する。 (18)訂正事項18 特許請求の範囲の請求項5を削除する。 (19)訂正事項19 特許請求の範囲の請求項6の冒頭に 「 第1自車両(1)の緊急ブレーキ状況を判定するための方法であって、前記自車両(1)は、少なくとも以下の実際(t=0)の状態変数: 前記自車両(1)の実際(t=0)の絶対走行速度、v1と、 前記自車両(1)の実際(t=0)の絶対縦加速度、a1と、 前方の物体(2)に対する前記自車両(1)の実際(t=0)の相対距離、dx_0と、 前記前方の物体(2)の実際(t=0)の第2速度、v2と実際(t=0)の第2加速度、a2とを算出し、前記実際(t=0)の相対距離(dx_0)は以下の式で表され、 【数7】 dx_0=x2_0-x1_0 dx=dx_0+(v2-v1)・t+(1/2)・(a2-a1)・t^(2) 方程式3 ここで、 x1_0は前記自車両(1)の実際(t=0)の位置、 x2_0は前記前方の物体(2)の実際(t=0)の位置、 dxは時刻tにおける前記前方の物体(2)に対する前記自車両(1)の相対距離、 緊急ブレーキ状況が存在するかどうかが、判定方法(BV1,BV2)を用いて実際の前記状態変数(v1,a1、dx_0,v2,a2)から判定される当該方法において、 緊急ブレーキ状況が存在するかどうかを判定するため、少なくとも2つの異なる判定方法(BV1,BV2)が、前記状態変数(v1,a1、dx_0,v2,a2)に応じて使用され、 前記少なくとも2つの異なる判定方法(BV1,BV2)のうちのどの判定方法が使用されるかが、前記状態変数(v1,a1、dx_0,v2,a2)に応じて決定されること、 前記異なる判定方法(BV1,BV2)は、少なくとも以下の判定方法: 前記自車両(1)と前記前方の物体(2)との移動方程式系が算出される移動方程式の判定方法(BV1)と、前記自車両(1)の許容制動距離(s1_br)が算出される制動距離の判定方法(BV2)とを有し、 許容制動距離、s1_brは、 【数8】 s1_br=dx_0+s2_stop-s1_react-dx_min 方程式10 s2_stop=-v2^(2)/(2・a2) 方程式11 s1_react=v1・t1+1/2・a1・t1^(2) 方程式12 によって算出され、」 と記載する(請求項6の記載を引用する請求項7、8、14、15も同様に訂正する。)。 (20)訂正事項20 特許請求の範囲の請求項6の訂正事項19の後に 「ここで、dx_minが、前方の物体(2)に対する前記自車両(1)の相対距離として許容できる最短距離であり、」 と記載する(請求項6の記載を引用する請求項7、8、14、15も同様に訂正する。)。 (21)訂正事項21 特許請求の範囲の請求項6の訂正事項20の後に 「自動緊急ブレーキの起動後の車両内のブレーキ系の応答時間、t1及び/又は警報表示部(9)による前記警報表示信号(Si1)の出力後の運転者の応答時間、t1が、複数の前記判定方法(BV1,BV2)のうちのどの判定方法を使用する必要があるかの決定、及び/又は個々の判定方法にさらに、算入され、」と記載する(請求項6の記載を引用する請求項7、8、14、15も同様に訂正する。)。 (22)訂正事項22 特許請求の範囲の請求項6に 「自車両(1)の実際の相対距離(dx)」 と記載されているのを、 「自車両(1)の相対距離(dx_t1)」 に訂正する(請求項6の記載を引用する請求項7、8、14、15も同様に訂正する。)。 (23)訂正事項23 特許請求の範囲の請求項6に 「決定されることを特徴とする請求項5に記載の方法。」 と記載されているのを、 「決定される方法。」 に訂正する(請求項6の記載を引用する請求項7、8、14、15も同様に訂正する。)。 (24)訂正事項24 特許請求の範囲の請求項7に 「応答時間(dv_t1)後の相対速度とに基づいて、判定が実行され、 前記応答時間(dv_t1)後の前記相対速度(dv)が」 と記載されているのを、 「応答時間(t1)後の相対速度(dv_t1)とに基づいて、判定が実行され、 前記応答時間(t1)後の前記相対速度(dv_t1)が」 に訂正する(請求項7の記載を引用する請求項8、14、15も同様に訂正する。)。 (25)訂正事項25 特許請求の範囲の請求項7に 「第2速度(v2)-絶対速度(v1)の差として算定」 と記載されているのを、 「前記応答時間(t1)における第2速素-絶対走行速度の差として算定」 に訂正する(請求項7の記載を引用する請求項8、14、15も同様に訂正する。)。 (26)訂正事項26 特許請求の範囲の請求項8に 「 前記第1基準(K1)を満たさないときは、適切な判定方法(BV1,BV2)が,別の基準(K2a,K2b,K2c,K2d)に応じて決定され、 前記別の基準(K2a,K2b,K2c,K2d)は、以下の複数の基準: ・第2基準(K2a)と、 ・第3基準(K2b)と、 ・第4基準(K2c)と、 ・第5基準(K2d)とのうちの1つの基準又は複数の基準から成り、 前記前方の物体(2)の加速度(a2)が、負であり、且つ、前記応答時間(dv_t1)後の相対速度が、負であるときに、前記第2基準(K2a)は満たされていて、 前記第2基準(K2a)を満たすときは、1つの許容基準(Zk1)が、前記第1判定方法(BV1)に対して判定され、この許容基準(Zk1)を満たすときは、この第1判定方法(BV1)が実行され、 前記許容基準(Zk1)を満たさないときは、前記第2判定方法(BV2)が実行され、 前記第2加速度(a2)が、負であり、且つ、前記応答時間(dv_t1)後の相対速度が、零以上であるときに、前記第3基準(K2b)は満たされていて、 前記第3基準(K2b)を満たすときは、前記第2判定方法(BV2)が使用され、 前記第2加速度(a2)が、零以上であり、且つ、前記応答時間(dv_t1)後の相対速度が、負であるときに、前記第4基準(K2c)は満たされていて、 前記第4基準(K2c)を満たすときは、前記第1判定方法(BV1)が使用され、 前記第2加速度(a2)が、零以上であり、且つ、前記応答時間(dv_t1)後の相対速度が、零以上であるときに、前記第5基準(K2d)は満たされていて、 前記第5基準(K2d)を満たすときは、緊急ブレーキ状況の判定は実行されないことを特徴とする請求項6又は7に記載の方法。」 と記載されているのを 「 前記第1基準(K1)を満たさないときは、適切な判定方法(BV1,BV2)が,別の基準(K2a,K2b,K2c,K2d)に応じて決定され、 前記別の基準(K2a,K2b,K2c,K2d)は、以下の複数の基準: ・第2基準(K2a)と、 ・第3基準(K2b)と、 ・第4基準(K2c)と、 ・第5基準(K2d)とのうちの1つの基準又は複数の基準から成り、 前記前方の物体(2)の第2加速度(a2)が、負であり、且つ、前記応答時間(t1)後の相対速度(dv_t1)が、負であるときに、前記第2基準(K2a)は満たされていて、 前記第2基準(K2a)を満たすときは、前記許容基準(Zk1)が、前記第1判定方法(BV1)に対して判定され、この前記許容基準(Zk1)を満たすときは、この第1判定方法(BV1)が実行され、 前記許容基準(Zk1)を満たさないときは、前記第2判定方法(BV2)が実行され、 前記第2加速度(a2)が、負であり、且つ、前記応答時間(t1)後の相対速度(dv_t1)が、零以上であるときに、前記第3基準(K2b)は満たされていて、 前記第3基準(K2b)を満たすときは、前記第2判定方法(BV2)が使用され、 前記第2加速度(a2)が、零以上であり、且つ、前記応答時間(t1)後の相対速度(dv_t1)が、負であるときに、前記第4基準(K2c)は満たされていて、 前記第4基準(K2c)を満たすときは、前記第1判定方法(BV1)が使用され、 前記第2加速度(a2)が、零以上であり、且つ、前記応答時間(t1)後の相対速度(dv_t1)が、零以上であるときに、前記第5基準(K2d)は満たされていて、 前記第5基準(K2d)を満たすときは、緊急ブレーキ状況の判定は実行されないことを特徴とする請求項6又は7に記載の方法。」 に訂正する(請求項8の記載を引用する請求項14、15も同様に訂正する。)。 (27)訂正事項27 特許請求の範囲の請求項9を削除する。 (28)訂正事項28 特許請求の範囲の請求項10を削除する。 (29)訂正事項29 特許請求の範囲の請求項11を削除する。 (30)訂正事項30 特許請求の範囲の請求項12を削除する。 (31)訂正事項31 特許請求の範囲の請求項13を削除する。 (32)訂正事項32 特許請求の範囲の請求項14に 「請求項1?13のいずれか1項に記載の方法」 と記載されているのを、 「請求項1、6?8のいずれか1項に記載の方法」 に訂正する。 (33)訂正事項33 特許請求の範囲の請求項14に 「前記制御装置(6)は、状態変数(v1,a1,dx,v2,a2)を算出するために、前方を走行する前方の物体(2)に対する相対距離(dx)を算出するための距離センサ(4)の相対距離測定信号(M1)と、前記自車両(1)の絶対速度(v1)を算出するための速度センサ(7)の速度測定信号(M2)とを受け取り、 前記制御装置(6)は、さらに状態変数として、前記自車両(1)の絶対加速度(a1)と、前記前方の物体(2)の第2速度(v2)と、前記前方の物体(2)の第2加速度(a2)とを算出又は測定し、応答時間(t1)と前記相対距離に対して維持すべき最短距離(dx_min)とに関する、内部又は外部に記憶されたデータを受け取り、 前記制御装置(6)は、緊急ブレーキ状況が存在するかどうかを1つの判定方法(BV1,BV2)を用いて前記状態変数(v1,a1,dx,v2,a2)から判定し、 前記制御装置(6)は、緊急ブレーキ状況が存在するかどうかを判定するために、前記状態変数(v1,a1,dx,v2,a2)に応じて、異なる判定方法(BV1,BV2)を使用し、 前記制御装置(6)は、複数の前記判定方法(BV1,BV2)のうちのどの判定方法を使用する必要があるかを前記状態変数(v1,a1,dx,v2,a2)に応じて決定し、」 と記載されているのを、 「前記制御装置(6)は、実際(t=0)の状態変数(v1,a1,dx_0,v2,a2)を算出するために、前方を走行する前方の物体(2)に対する相対距離(dx_0)を算出するための距離センサ(4)の相対距離測定信号(M1)と、前記自車両(1)の絶対速度(v1)を算出するための速度センサ(7)の速度測定信号(M2)とを受け取り、 前記制御装置(6)は、さらに前記状態変数として、前記自車両(1)の絶対加速度(a1)と、前記前方の物体(2)の第2速度(v2)と、前記前方の物体(2)の第2加速度(a2)とを算出又は測定し、前記応答時間(t1)と前記相対距離に対して維持すべき最短距離(dx_min)とに関する、内部又は外部に記憶されたデータを受け取り、 前記制御装置(6)は、緊急ブレーキ状況が存在するかどうかを1つの判定方法(BV1,BV2)を用いて前記状態変数(v1,a1,dx_0,v2,a2)から判定し、 前記制御装置(6)は、緊急ブレーキ状況が存在するかどうかを判定するために、前記状態変数(v1,a1,dx_0,v2,a2)に応じて、異なる判定方法(BV1,BV2)を使用し、 前記制御装置(6)は、複数の前記判定方法(BV1,BV2)のうちのどの判定方法を使用する必要があるかを前記状態変数(v1,a1,dx_0,v2,a2)に応じて決定し、」 に訂正する。 (34)訂正事項34 特許請求の範囲の請求項15に 「請求項1?13のいずれか1項に記載の方法」 と記載されているのを、 「請求項1、6?8のいずれか1項に記載の方法」 に訂正する。 (35)訂正事項35 明細書の段落【0080】に 「 【数11】 s1_br=dx+s2_stop-s1_react-dx_min 方程式10 このとき、」 とあるのを、 「 【数11】 s1_br=dx_0+s2_stop-s1_react-dx_min 方程式10 このとき、」に訂正する。 (36)その他 上記訂正事項1?33は、一群の請求項〔1?15〕に対して請求されたものである。 また、明細書に係る訂正は、一群の請求項〔1?15〕について請求されたものである。 2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1 ア 訂正事項1は、請求項1における各状態変数について、括弧書きを外すあるいは改めて請求項中に定義として記載するとともに、請求項中の方程式が表す意味が明確となるように方程式中の各変数がどの時点におけるもの(例えば、現時点である実際(t=0)のものあるいは時刻tにおけるものなど)であるのかを明記し、明瞭にするものである。 したがって、訂正事項1は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 訂正事項1は、明細書の段落【0012】、【0045】?【0049】、及び【符号の説明】などの記載内容に基づいて記載を明瞭にするものであるから、何ら新規事項を追加するものではなく、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなる、という事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (2)訂正事項2 訂正事項2は、請求項1における状態変数dvについて、訂正の対象となっているdvが、現時点での実際(t=0)のものであることを明記することで明瞭にするものであり、これにともなって括弧書き中での「dx」についても、実際(t=0)のものであることを明瞭にするための訂正である。 したがって、訂正事項2は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、上記(1)イをも踏まえれば、訂正事項2は何ら新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (3)訂正事項3 訂正事項3は、請求項1において、「s1_br」が「許容制動距離」であることを明記するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、「s1_br」が「許容制動距離」であることは、明細書の段落【0079】及び【符号の説明】などの記載内容から明らかであるから、訂正事項3は、何ら新規事項を追加するものではなく、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなる、という事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (4)訂正事項4 訂正事項4は、訂正前の請求項9に記載されていた事項を請求項1に追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、何ら新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (5)訂正事項5 訂正事項5は、訂正前の請求項4に記載されていた事項を請求項1に追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、何ら新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (6)訂正事項6 訂正事項6は、訂正前の請求項5に記載されていた事項を請求項1に追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、何ら新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (7)訂正事項7 訂正事項7は、訂正前の請求項10に記載されていた事項を請求項1に追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、何ら新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (8)訂正事項8 訂正事項8は、訂正前の請求項1の「第1判定方法(BV1)」について、明細書の段落【0051】?【0059】の記載に基づいて、技術的に限定する事項を追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項8は、明細書の段落【0051】?【0059】の記載に基づいているから、何ら新規事項を追加するものではなく、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなる、という事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (9)訂正事項9 訂正事項9は、訂正前の請求項12に記載されていた事項を請求項1に追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、何ら新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (10)訂正事項10 訂正事項10は、訂正前の請求項13に記載されていた事項を請求項1に追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、何ら新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (11)訂正事項11 訂正事項11は、訂正事項3との整合を図るためと、方程式10について、訂正事項1との整合を図るための訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、何ら新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (12)訂正事項12 訂正事項12は、訂正前の請求項2に記載されていた事項を請求項1に追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、何ら新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (13)訂正事項13 訂正事項13は、訂正事項12で追加された「許容基準(Zk1)」について、明細書の段落【0071】?【0076】の記載に基づいて、技術的に限定する事項を追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項13は、明細書の段落【0071】?【0076】の記載に基づいているから、何ら新規事項を追加するものではなく、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなる、という事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (14)訂正事項14 訂正事項14は、訂正前の請求項1の「第1判定方法(BV1)」及び「第2判定方法(BV2)」について、明細書の段落【0100】?【0103】の記載に基づいて、技術的に限定する事項を追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項14は、明細書の段落【0100】?【0103】の記載に基づいているから、何ら新規事項を追加するものではなく、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなる、という事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (15)訂正事項15?18 訂正事項15?18は、それぞれ請求項2、3、4及び5を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、何ら新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (16)訂正事項19 訂正事項19は、訂正前の請求項6が間接的に請求項1の記載を引用する形式であったものを当該請求項1の記載を引用しないものとするための訂正であるとともに、引用する訂正前の請求項1について、上記訂正事項1?3及び11と同様に明りょうな記載とするための訂正である。 したがって、訂正事項19は、明瞭でない記載の釈明を目的とし、かつ、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 訂正事項1?3及び11に関する上記(1)?(3)及び(11)をも踏まえれば、訂正事項19は、何ら新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (17)訂正事項20 訂正事項20は、訂正前の請求項6における「dx_min」の技術的意味を明らかにするための訂正であり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、訂正事項20は、明細書の段落【0051】及び【0078】の記載に基づいているから、何ら新規事項を追加するものではなく、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなる、という事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (18)訂正事項21 訂正事項21は、訂正前の請求項6が直接的に請求項5の記載を引用する形式であったものを当該請求項5の記載を引用しないものとするための訂正であるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、何ら新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (19)訂正事項22 訂正事項22は、訂正前の請求項6の「実際の相対距離(dx)」が、直前の記載から、「相対距離(dx_t1)」の誤記であることが明らかであり、当該誤記を訂正するものである。 したがって、訂正事項22は、誤記の訂正を目的とするものであり、何ら新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (20)訂正事項23 訂正事項23は、訂正前の請求項6の記載を、訂正後において他の請求項の記載を引用しないものとするために、訂正前の請求項6の末尾の引用請求項の記載を削除するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、何ら新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (21)訂正事項24 訂正事項24は、訂正前の請求項7の「応答時間(dv_t1)後の相対速度」という記載が、「応答時間(t1)後の相対速度(dv_t1)」の誤記であることが明らかであるから、当該誤記を訂正するものである。 したがって、訂正事項24は、誤記の訂正を目的とするものであり、何ら新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (22)訂正事項25 訂正事項25は、訂正前の請求項7の「相対速度」について、技術的に明確にするものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、「相対速度」が応答時間(t1)後の相対速度であることは、訂正事項24によって訂正された「応答時間(t1)後の相対速度(dv_t1)」の記載から明らかであり、上記(21)をも踏まえると、何ら新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (23)訂正事項26 訂正事項26のうち、「応答時間(dv_t1)」及び「相対速度(dv)」の記載を、「応答時間(t1)」及び「相対速度(dv_t1)」に訂正するのは、訂正事項24と同様に、誤記の訂正を目的とするものである。 また、訂正事項26のうち、「加速度(a2)」の記載を「第2加速度(a2)」に訂正するのは、「加速度(a2)」が「第2加速度(a2)」の誤記であることは、訂正前の請求項8の「第2加速度(a2)」との記載から明らかであるから、誤記の訂正を目的とするものである。 さらに、訂正事項26のうち、「1つの許容基準(Zk1)」の記載を「前記許容基準(Zk1)」に訂正し、「この許容基準(Zk1)」の記載を「この前記許容基準(Zk1)」に訂正するのは、「許容基準(Zk1)」が前記されたものであることを明確にするための訂正であり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 したがって、訂正事項26は、誤記の訂正及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、何ら新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (24)訂正事項27?31 訂正事項27?31は、それぞれ請求項9、10、11、12及び13を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、何ら新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (25)訂正事項32 訂正事項32は、訂正事項15?18及び27?31による訂正に伴って、訂正前の請求項14において引用されていた請求項が削除されたこととの整合を図るための訂正であり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、何ら新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (26)訂正事項33 訂正事項33は、訂正前の請求項14において、訂正前の請求項1における訂正事項2と同様の訂正を行うものである。 したがって、上記(2)を踏まえれば、訂正事項33は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、何ら新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (27)訂正事項34 訂正事項34は、訂正事項15?18及び27?31による訂正に伴って、訂正前の請求項15において引用されていた請求項が削除されたこととの整合を図るための訂正であり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、何ら新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (28)訂正事項35 訂正事項35は、訂正前の明細書の段落【0080】の方程式10のdxについて、明細書の段落【0048】の方程式3において、時刻tにおける相対距離dx(左辺)と時刻t=0における相対距離dx_0(右辺)とが明確に区別されていることから、方程式10のdxについても、時刻t=0における相対距離dx_0であることを明確にするものである。 したがって、訂正事項35は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、方程式10におけるs1_brが、実際の時刻t=0からの許容制動距離であることは明らかであるから、訂正事項35は、何ら新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 3.小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?15〕について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項1、6?8、14及び15に係る発明(以下、「本件発明1」、「本件発明6」?「本件発明8」、「本件発明14」及び「本件発明15」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1、6?8、14及び15に記載された次の事項により特定されるとおりのものである(なお、請求項2?5及び9?13は本件訂正請求により削除された。)。 「【請求項1】 第1自車両(1)の緊急ブレーキ状況を判定するための方法であって、前記自車両(1)は、少なくとも以下の実際(t=0)の状態変数: 前記自車両(1)の実際(t=0)の絶対走行速度、v1と、 前記自車両(1)の実際(t=0)の絶対縦加速度、a1と、 前方の物体(2)に対する前記自車両(1)の実際(t=0)の相対距離、dx_0と、 前記前方の物体(2)の実際(t=0)の第2速度、v2と実際(t=0)の第2加速度、a2とを算出し、前記実際(t=0)の相対距離(dx_0)は以下の式で表され、 【数1】 dx_0=x2_0-x1_0 dx=dx_0+(v2-v1)・t+(1/2)・(a2-a1)・t^(2) 方程式3 ここで、 x1_0は前記自車両(1)の実際(t=0)の位置、 x2_0は前記前方の物体(2)の実際(t=0)の位置、 dxは時刻tにおける前記前方の物体(2)に対する前記自車両(1)の相対距離、 緊急ブレーキ状況が存在するかどうかが、判定方法(BV1,BV2)を用いて実際の前記状態変数(v1,a1、dx_0,v2,a2)から判定される当該方法において、 緊急ブレーキ状況が存在するかどうかを判定するため、少なくとも2つの異なる判定方法(BV1,BV2)が、前記状態変数(v1,a1、dx_0,v2,a2)に応じて使用され、 前記少なくとも2つの異なる判定方法(BV1,BV2)のうちのどの判定方法が使用されるかが、前記状態変数(v1,a1、dx_0,v2,a2)に応じて決定されること、 前記異なる判定方法(BV1,BV2)は、少なくとも以下の判定方法: 前記自車両(1)と前記前方の物体(2)との移動方程式系が算出される移動方程式の判定方法(BV1)と、前記自車両(1)の許容制動距離(s1_br)が算出される許容制動距離の判定方法(BV2)とを有し、 複数の前記判定方法(BV1,BV2)によってそれぞれ1つの目標加速度(a1_d_1,a2_d_2)が、算出され、 緊急ブレーキ状況が判定された場合は、自動的に、緊急ブレーキ過程が開始され、及び/又は、警報表示信号(Si1)が出力されるようにし、その自動緊急ブレーキの起動後の車両内のブレーキ系の応答時間(t1)及び/又は警報表示部(9)による前記警報表示信号(Si1)の出力後の運転者の応答時間(t1)が、複数の前記判定方法(BV1,BV2)のうちのどの判定方法を使用する必要があるかの決定、及び/又は個々の判定方法にさらに、算入され、 前記第1判定方法(BV1)では、前記自車両(1)の移動方程式と前記前方の物体(2)の移動方程式とが、時間の二次関数として立てられ、且つ: 実際(t=0)の相対距離(dx_0)、前記自車両(1)の実際(t=0)の前記絶対縦加速度(a1)及び前記前方の物体(2)の実際(t=0)の第2加速度(a2)並びに前記自車両(1)の実際(t=0)の絶対走行速度(v1)及び前記前方の物体(2)の実際(t=0)の第2速度(v2)を有し、 前記第1判定方法(BV1)では、 t1が前記応答時間であり、dvが実際(t=0)の前記自車両(1)に対する前記前方の物体(2)の相対速度(v2-v1)であり、dv_t1が、前記応答時間(t1)後の前記自車両(1)に対する前記前方の物体(2)の相対速度であり、dx_t1が、前記応答時間(t1)後の前記相対距離であり、dx_minが、前方の物体(2)に対する前記自車両(1)の相対距離として許容できる最短距離であるとして、時刻tにおける前記前方の物体(2)に対する前記自車両(1)の相対距離(dx)に関する方程式(方程式3)に基づいて、前記最短距離(dx_min)が得られるときに前記自車両(1)に対する前記前方の物体(2)の相対速度が零になる条件から、第1目標加速度(a1_d_1)が、方程式 【数2】 dv_t1=dv+(a2-a1)・t1 方程式5 dx_t1=dx_0+dv・t1+(a2-a1)・t1^(2)/2 方程式6 a1_d_1=a2-(dv_t1)^(2)/(2・(dx_t1-dx_min)) (方程式7) を使用して算出され、 前記第2判定方法(BV2)では、前記応答時間(t1)後に前記自車両(1)が制動を起動する際にどのくらいの制動距離(s1_br)が残されているかという、絶対走行速度(v1)と第2速度(v2)と絶対縦加速度(a1)と第2加速度(a2)との実際(t=0)の値及び実際(t=0)の相対距離(dx_0)並びに一定の最短距離(dx_min)に基づく計算から、第2目標加速度(a1_d_2)が算出され、 前記第2目標加速度(a1_d_2)は、前記応答時間(t1)後の前記自車両(1)の、実際(t=0)の絶対走行速度(v1)と実際(t=0)の絶対縦加速度(a1)とから算出された絶対走行速度(v1_t1)と、前記応答時間(t1)後の制動の起動時の前記自車両(1)の許容制動距離(s1_br)とを有する方程式 【数3】 a1_d_2=(v1_t1)^(2)/(2・sl_br) に基づいて算出され、 ここで、 v1_t1は応答時間t1後の絶対走行速度であり、 s1_brは許容制動距離であり、応答時間をt1として、 【数4】 s1_br=dx_0+s2_stop-s1_react-dx_min 方程式10 s2_stop=-v2^(2)/(2・a2) 方程式11 s1_react=v1・t1+1/2・a1・t1^(2) 方程式12 によって算出され、 前記第1判定方法(BV1)が適切であり且つ使用されるかどうか、又は、少なくとも前記第2判定方法(BV2)が適切であり且つ使用されるかどうかが、1つの許容基準(Zk1)に基づいて決定され、 当該許容基準(Zk1)では、 前記第1判定方法(BV1)で算出された前記第1目標加速度a1_d_1を用いて、 前記自車両(1)が最短距離(dx_min)に達し、且つ前記前方の物体(2)と同じ速度(dv=0)に達するまでに要される絶対制動時間(t1_dv)が以下の方程式 【数5】 t1_dv=(2(dx_t1-dx_min)/(a2-a1_d_1))^(1/2)+t1 方程式9 ここで、t1_dvは絶対背同時間 に基づいて算出され、 他方、停止(v2(t2_stop)=0)までに制動のために要する前記前方の物体(2)の物体制動時間(t2_stop)が以下の方程式 【数6】 t2_stop=(0km/h-v2)/a2=-v2/a2 方程式8 ここで、t2_stopは物体制動時間 に基づいて算出され、 前記許容基準(Zk1)が満たされている場合、すなわち、前記絶対制動時間(t1_dv)が前記物体制動時間(t2_stop)より短いか又は当該物体制動時間(t2_stop)に等しい場合は、前記第1判定方法(BV1)において算出された前記第1目標加速度(a1_d_1)が、適正であり且つ使用され、 前記許容基準(Zk1)が満たされていない場合、すなわち、前記絶対制動時間(t1_dv)が前記物体制動時間(t2_stop)より長い場合は、少なくとも前記第2判定方法(BV2)において算出された前記第2目標加速度(a1_d_2)が、適切であり且つ使用され、 前記第1判定方法(BV1)において算出された前記第1目標加速度(a1_d_1)が適切であり使用される場合は、前記第1目標加速度(a1_d_1)が限界値を超えるときに前記自車両(1)の自動制御の必要性が生じると判定し、 前記第2判定方法(BV2)において算出された前記第2目標加速度(a1_d_2)が適切であり使用される場合は、前記第2目標加速度(a1_d_2)が限界値を超えるときに前記自車両(1)の自動制御の必要性が生じると判定することを特徴とする方法。 【請求項6】 第1自車両(1)の緊急ブレーキ状況を判定するための方法であって、前記自車両(1)は、少なくとも以下の実際(t=0)の状態変数: 前記自車両(1)の実際(t=0)の絶対走行速度、v1と、 前記自車両(1)の実際(t=0)の絶対縦加速度、a1と、 前方の物体(2)に対する前記自車両(1)の実際(t=0)の相対距離、dx_0と、 前記前方の物体(2)の実際(t=0)の第2速度、v2と実際(t=0)の第2加速度、a2とを算出し、前記実際(t=0)の相対距離(dx_0)は以下の式で表され、 【数7】 dx_0=x2_0-x1_0 dx=dx_0+(v2-v1)・t+(1/2)・(a2-a1)・t^(2) 方程式3 ここで、 x1_0は前記自車両(1)の実際(t=0)の位置、 x2_0は前記前方の物体(2)の実際(t=0)の位置、 dxは時刻tにおける前記前方の物体(2)に対する前記自車両(1)の相対距離、 緊急ブレーキ状況が存在するかどうかが、判定方法(BV1,BV2)を用いて実際の前記状態変数(v1,a1、dx_0,v2,a2)から判定される当該方法において、 緊急ブレーキ状況が存在するかどうかを判定するため、少なくとも2つの異なる判定方法(BV1,BV2)が、前記状態変数(v1,a1、dx_0,v2,a2)に応じて使用され、 前記少なくとも2つの異なる判定方法(BV1,BV2)のうちのどの判定方法が使用されるかが、前記状態変数(v1,a1、dx_0,v2,a2)に応じて決定されること、 前記異なる判定方法(BV1,BV2)は、少なくとも以下の判定方法: 前記自車両(1)と前記前方の物体(2)との移動方程式系が算出される移動方程式の判定方法(BV1)と、前記自車両(1)の許容制動距離(s1_br)が算出される制動距離の判定方法(BV2)とを有し、 許容制動距離、s1_brは、 【数8】 s1_br=dx_0+s2_stop-s1_react-dx_min 方程式10 s2_stop=-v2^(2)/(2・a2) 方程式11 s1_react=v1・t1+1/2・a1・t1^(2) 方程式12 によって算出され、 ここで、dx_minが、前方の物体(2)に対する前記自車両(1)の相対距離として許容できる最短距離であり、 自動緊急ブレーキの起動後の車両内のブレーキ系の応答時間、t1及び/又は警報表示部(9)による前記警報表示信号(Si1)の出力後の運転者の応答時間、t1が、複数の前記判定方法(BV1,BV2)のうちのどの判定方法を使用する必要があるかの決定、及び/又は個々の判定方法にさらに、算入され、 第1ステップでは、まず、最初の判定方法(BV0)が使用され、この判定方法(BV0)では、前記応答時間(t1)後の前記前方の物体(2)に対する前記自車両(1)の相対距離(dx_t1)が、維持すべき最短距離(dx_min)より短いことにしたがう第1基準(K1)が満たされているかどうかが評価され、 前記第1基準(K1)を満たすときは、緊急ブレーキ状況と判定し、前記第1基準(K1)を満たさないときは、その後に、その他の前記複数の判定方法(BV1,BV2)のうちのどの判定方法を使用する必要があるかが決定される方法。 【請求項7】 前記第1基準(K1)を満たさないときは、その後に、前記前方の物体(2)の第2加速度(a2)と、前記自車両(1)に対する前記前方の物体(2)の前記応答時間(t1)後の相対速度(dv_t1)とに基づいて、判定が実行され、 前記応答時間(t1)後の前記相対速度(dv_t1)が、前記応答時間(t1)における第2速度-絶対走行速度の差として算定されていることを特徴とする請求項6に記載の方法。 【請求項8】 前記第1基準(K1)を満たさないときは、適切な判定方法(BV1,BV2)が,別の基準(K2a,K2b,K2c,K2d)に応じて決定され、 前記別の基準(K2a,K2b,K2c,K2d)は、以下の複数の基準: ・第2基準(K2a)と、 ・第3基準(K2b)と、 ・第4基準(K2c)と、 ・第5基準(K2d)とのうちの1つの基準又は複数の基準から成り、 前記前方の物体(2)の第2加速度(a2)が、負であり、且つ、前記応答時間(t1)後の相対速度(dv_t1)が、負であるときに、前記第2基準(K2a)は満たされていて、 前記第2基準(K2a)を満たすときは、前記許容基準(Zk1)が、前記第1判定方法(BV1)に対して判定され、この前記許容基準(Zk1)を満たすときは、この第1判定方法(BV1)が実行され、 前記許容基準(Zk1)を満たさないときは、前記第2判定方法(BV2)が実行され、 前記第2加速度(a2)が、負であり、且つ、前記応答時間(t1)後の相対速度(dv_t1)が、零以上であるときに、前記第3基準(K2b)は満たされていて、 前記第3基準(K2b)を満たすときは、前記第2判定方法(BV2)が使用され、 前記第2加速度(a2)が、零以上であり、且つ、前記応答時間(t1)後の相対速度(dv_t1)が、負であるときに、前記第4基準(K2c)は満たされていて、 前記第4基準(K2c)を満たすときは、前記第1判定方法(BV1)が使用され、 前記第2加速度(a2)が、零以上であり、且つ、前記応答時間(t1)後の相対速度(dv_t1)が、零以上であるときに、前記第5基準(K2d)は満たされていて、 前記第5基準(K2d)を満たすときは、緊急ブレーキ状況の判定は実行されないことを特徴とする請求項6又は7に記載の方法。 【請求項14】 請求項1、6?8のいずれか1項に記載の方法を実行するための、自車両(1)のドライビングダイナミクス制御システム(5)用の制御装置(6)において、 前記制御装置(6)は、実際(t=0)の状態変数(v1,a1,dx_0,v2,a2)を算出するために、前方を走行する前方の物体(2)に対する相対距離(dx_0)を算出するための距離センサ(4)の相対距離測定信号(M1)と、前記自車両(1)の絶対速度(v1)を算出するための速度センサ(7)の速度測定信号(M2)とを受け取り、 前記制御装置(6)は、さらに前記状態変数として、前記自車両(1)の絶対加速度(a1)と、前記前方の物体(2)の第2速度(v2)と、前記前方の物体(2)の第2加速度(a2)とを算出又は測定し、前記応答時間(t1)と前記相対距離に対して維持すべき最短距離(dx_min)とに関する、内部又は外部に記憶されたデータを受け取り、 前記制御装置(6)は、緊急ブレーキ状況が存在するかどうかを1つの判定方法(BV1,BV2)を用いて前記状態変数(v1,a1,dx_0,v2,a2)から判定し、 前記制御装置(6)は、緊急ブレーキ状況が存在するかどうかを判定するために、前記状態変数(v1,a1,dx_0,v2,a2)に応じて、異なる判定方法(BV1,BV2)を使用し、 前記制御装置(6)は、複数の前記判定方法(BV1,BV2)のうちのどの判定方法を使用する必要があるかを前記状態変数(v1,a1,dx_0,v2,a2)に応じて決定し、 前記異なる判定方法(BV1,BV2)は、少なくとも以下の判定方法: 前記自車両(1)と前記前方の車両(2)との移動方程式系を算出するための移動方程式の判定方法(BV1)と、前記自車両(1)の許容制動距離(s1_br)を算出するための制動距離の判定方法(BV2)とを有し、 前記制御装置(6)は、当該算出に応じて、制動制御信号(M3)を車両ブレーキ(8)に出力し、及び/又は警報表示信号(Si1)を運転者に出力する当該制御装置。 【請求項15】 特に請求項1、6?8のいずれか1項に記載の方法を実行するための、ドライビングダイナミクス制御システム(5)、特にブレーキ制御システム又は縦列走行システムにおいて、 前記ドライビングダイナミクス制御システム(5)は、請求項14に記載の制御装置(6)、距離センサ(4)、速度センサ(7)及び車両ブレーキ(8)を有する当該ドライビングダイナミクス制御システム(5)。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 1.取消理由の概要 訂正前の請求項1?15に係る特許に対して、当審が平成30年8月24日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は次のとおりである。 [取消理由1]本件出願の請求項1?5、9?15に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の引用文献1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。 [取消理由2]本件出願の請求項5に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。 [引用文献] 引用文献1:特表2006-500270号公報 上記引用文献1は、特許異議申立人による特許異議申立書での甲第1号証である。 2.引用文献1に記載の発明 引用文献1の、段落【0001】、【0008】?【0023】、【0030】?【0031】、【0038】、【0041】、【0043】?【0100】、【図1】及び【図2a】の記載内容からみて、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。 「車両の自動非常制動プロセスを起動する方法であって、 前記自動非常制動プロセスが、与えられた非常制動条件が満たされた場合にのみ起動されるものであって、 非常制動減速度(a_(NB))を予め設定し、 a_(v)(0)を、時間t=0における前方走行車両の加速度、 v_(rel)(0)を、時間t=0における車両と前方走行車両との相対速度、 d(0)を、時間t=0における車両と前方走行車両との間の距離、 d_(z)を、目標安全距離、 v(0)を、時間t=0における車両の速度、 v_(v)(0)を、時間t=0における前方走行車両の速度、 として、 式(25) a_(NB)=a_(v)(0)-v^(2)_(rel)(0)/(2(d(0)-d_(z)))、 式(32) a_(NB)=v^(2)(0)/(v^(2)_(v)(0)/a_(v)(0)-2(d(0)-d_(z)))とし、 第1の場合には、自動非常制動プロセスが起動される予め設定された時間前に、運転者に対する視覚的及び/又は聴覚的警告が起動され、その後、式(25)に記述されている関係式が満たされると自動非常制動プロセスが起動され、 第2の場合には、自動非常制動プロセスが起動される予め設定された時間前に、運転者に対する視覚的及び/又は聴覚的警告が起動され、その後、式(32)に記述されている関係式が満たされると自動非常制動プロセスが起動され、 るものである方法。」 3.当審の判断 (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明の「車両」は、本件発明1の「第1自車両」に相当する。また、引用発明の「自動非常制動プロセス」は、本件発明1の「緊急ブレーキ」に相当し、引用発明の「前記自動非常制動プロセスが、与えられた非常制動条件が満たされた場合にのみ起動されるもので」あることは、本件発明1の「緊急ブレーキ状況を判定する」ことに相当する。 したがって、引用発明の「車両の自動非常制動プロセスを起動する方法であって、前記自動非常制動プロセスが、与えられた非常制動条件が満たされた場合にのみ起動されるもので」あることは、本件発明1の「第1自車両(1)の緊急ブレーキ状況を判定するための方法で」あることに相当する。 (イ)引用発明の 「非常制動減速度(a_(NB))を予め設定し、 a_(v)(0)を、時間t=0における前方走行車両の加速度、 v_(rel)(0)を、時間t=0における車両と前方走行車両との相対速度、 d(0)を、時間t=0における車両と前方走行車両との間の距離、 d_(z)を、目標安全距離、 v(0)を、時間t=0における車両の速度、 v_(v)(0)を、時間t=0における前方走行車両の速度、 として、 ここで、式(25)a_(NB)=a_(v)(0)-v^(2)_(rel)(0)/(2(d(0)-d_(z)))、 式(32)a_(NB)=v^(2)(0)/(v^(2)_(v)(0)/a_(v)(0)-2(d(0)-d_(z)))とし、 第1の場合には、自動非常制動プロセスが起動される予め設定された時間前に、運転者に対する視覚的及び/又は聴覚的警告が起動され、その後、式(25)に記述されている関係式が満たされると自動非常制動プロセスが起動され、 第2の場合には、自動非常制動プロセスが起動される予め設定された時間前に、運転者に対する視覚的及び/又は聴覚的警告が起動され、その後、式(32)に記述されている関係式が満たされると自動非常制動プロセスが起動され、 るものである」ことは、自動非常制動プロセスを起動するか否か、すなわち緊急ブレーキ状況が存在するかどうかを、「非常制動減速度(a_(NB))を予め設定し」たうえで、「式(25)」あるいは「式(32)に記述されている関係式が満たされる」か否かという判定方法を用いて判定するものであるといえる。 そして、引用発明においても、非常制動プロセスを起動させる条件を判定する(式(25)あるいは式(32)の関係式を満足するか否かを判定する)のは、車両が走行している実際の時刻(t=0)においてである。 したがって、引用発明の「非常制動減速度(a_(NB))を予め設定し、ここで、式(25)a_(NB)=a_(v)(0)-v^(2)_(rel)(0)/(2(d(0)-d_(z)))、式(32)a_(NB)=v^(2)(0)/(v^(2)_(v)(0)/a_(v)(0)-2(d(0)-d_(z)))とし、第1の場合には、自動非常制動プロセスが起動される予め設定された時間前に、運転者に対する視覚的及び/又は聴覚的警告が起動され、その後、式(25)に記述されている関係式が満たされると自動非常制動プロセスが起動され、第2の場合には、自動非常制動プロセスが起動される予め設定された時間前に、運転者に対する視覚的及び/又は聴覚的警告が起動され、その後、式(32)に記述されている関係式が満たされると自動非常制動プロセスが起動され、るものである」ことは、本件発明1の「前記自車両(1)は、少なくとも以下の実際(t=0)の状態変数: 前記自車両(1)の実際(t=0)の絶対走行速度、v1と、 前記自車両(1)の実際(t=0)の絶対縦加速度、a1と、 前方の物体(2)に対する前記自車両(1)の実際(t=0)の相対距離、dx_0と、 前記前方の物体(2)の実際(t=0)の第2速度、v2と実際(t=0)の第2加速度、a2とを算出し、前記実際(t=0)の相対距離(dx_0)は以下の式で表され、 【数1】 dx_0=x2_0-x1_0 dx=dx_0+(v2-v1)・t+(1/2)・(a2-a1)・t^(2) 方程式3 ここで、 x1_0は前記自車両(1)の実際(t=0)の位置、 x2_0は前記前方の物体(2)の実際(t=0)の位置、 dxは時刻tにおける前記前方の物体(2)に対する前記自車両(1)の相対距離、 緊急ブレーキ状況が存在するかどうかが、判定方法(BV1,BV2)を用いて実際の前記状態変数(v1,a1、dx_0,v2,a2)から判定される当該方法において」との対比において、「緊急ブレーキ状況が存在するかどうかが、判定方法を用いて判定される当該方法において」の限度で共通する。 (ウ)引用発明の「非常制動減速度(a_(NB))を予め設定し、ここで、式(25)a_(NB)=a_(v)(0)-v^(2)_(rel)(0)/(2(d(0)-d_(z)))、式(32)a_(NB)=v^(2)(0)/(v^(2)_(v)(0)/a_(v)(0)-2(d(0)-d_(z)))とし、第1の場合には、自動非常制動プロセスが起動される予め設定された時間前に、運転者に対する視覚的及び/又は聴覚的警告が起動され、その後、式(25)に記述されている関係式が満たされると自動非常制動プロセスが起動され、第2の場合には、自動非常制動プロセスが起動される予め設定された時間前に、運転者に対する視覚的及び/又は聴覚的警告が起動され、その後、式(32)に記述されている関係式が満たされると自動非常制動プロセスが起動され、るものである」ことは、これによって、自動非常制動プロセスを起動するか否か(緊急ブレーキ状況が存在するか否か)を、式(25)または式(32)という2つの異なる判定方向を使用しているものといえる。 したがって、引用発明の「非常制動減速度(a_(NB))を予め設定し、ここで、式(25)a_(NB)=a_(v)(0)-v^(2)_(rel)(0)/(2(d(0)-d_(z)))、式(32)a_(NB)=v^(2)(0)/(v^(2)_(v)(0)/a_(v)(0)-2(d(0)-d_(z)))とし、第1の場合には、自動非常制動プロセスが起動される予め設定された時間前に、運転者に対する視覚的及び/又は聴覚的警告が起動され、その後、式(25)に記述されている関係式が満たされると自動非常制動プロセスが起動され、第2の場合には、自動非常制動プロセスが起動される予め設定された時間前に、運転者に対する視覚的及び/又は聴覚的警告が起動され、その後、式(32)に記述されている関係式が満たされると自動非常制動プロセスが起動され、るものである」ことは、本件発明1の「緊急ブレーキ状況が存在するかどうかを判定するため、少なくとも2つの異なる判定方法(BV1,BV2)が、前記状態変数(v1,a1、dx_0,v2,a2)に応じて使用され、 前記少なくとも2つの異なる判定方法(BV1,BV2)のうちのどの判定方法が使用されるかが、前記状態変数(v1,a1、dx_0,v2,a2)に応じて決定される」こととの対比において、「緊急ブレーキ状況が存在するかどうかを判定するため、2つの異なる判定方法が使用される」という限度で共通する。 (エ)引用発明の「第1の場合には、自動非常制動プロセスが起動される予め設定された時間前に、運転者に対する視覚的及び/又は聴覚的警告が起動され、その後、式(25)に記述されている関係式が満たされると自動非常制動プロセスが起動され、第2の場合には、自動非常制動プロセスが起動される予め設定された時間前に、運転者に対する視覚的及び/又は聴覚的警告が起動され、その後、式(32)に記述されている関係式が満たされると自動非常制動プロセスが起動され、るものである」ことは、自動非常制動プロセスが起動される条件を満たし、自動非常制動プロセスを起動させる場合に先だって、警報表示信号が出力されるようにするものであるといえるから、本件発明1の「緊急ブレーキ状況が判定された場合には、自動的に、緊急ブレーキ過程が開始され、及び/又は、警報表示信号(Si1)が出力されるように」することに相当する。 (オ)以上のとおりであるので、本件発明1と引用発明との一致点及び相違点は次のとおりであるといえる。 <一致点1> 「第1自車両の緊急ブレーキ状況を判定するための方法であって、 緊急ブレーキ状況が存在するかどうかが、判定方法を用いて判定される当該方法において、 緊急ブレーキ状況が存在するかどうかを判定するため、2つの異なる判定方法が使用され、 緊急ブレーキ状況が判定された場合には、自動的に、緊急ブレーキ過程が開始され、及び/又は、警報表示信号(Si1)が出力されるようにした、 方法。」 <相違点1> 本件発明1は、「前記自車両(1)は、少なくとも以下の実際(t=0)の状態変数: 前記自車両(1)の実際(t=0)の絶対走行速度、v1と、 前記自車両(1)の実際(t=0)の絶対縦加速度、a1と、 前方の物体(2)に対する前記自車両(1)の実際(t=0)の相対距離、dx_0と、 前記前方の物体(2)の実際(t=0)の第2速度、v2と実際(t=0)の第2加速度、a2とを算出し、前記実際(t=0)の相対距離(dx_0)は以下の式で表され、 【数1】 dx_0=x2_0-x1_0 dx=dx_0+(v2-v1)・t+(1/2)・(a2-a1)・t^(2) 方程式3 ここで、 x1_0は前記自車両(1)の実際(t=0)の位置、 x2_0は前記前方の物体(2)の実際(t=0)の位置、 dxは時刻tにおける前記前方の物体(2)に対する前記自車両(1)の相対距離、 緊急ブレーキ状況が存在するかどうかが、判定方法(BV1,BV2)を用いて実際の前記状態変数(v1,a1、dx_0,v2,a2)から判定される」ものであるのに対し、 引用発明では、「非常制動減速度(a_(NB))を予め設定し、 a_(v)(0)を、時間t=0における前方走行車両の加速度、 v_(rel)(0)を、時間t=0における車両と前方走行車両との相対速度、 d(0)を、時間t=0における車両と前方走行車両との間の距離、 d_(z)を、目標安全距離、 v(0)を、時間t=0における車両の速度、 v_(v)(0)を、時間t=0における前方走行車両の速度、 として、 ここで、式(25)a_(NB)=a_(v)(0)-v^(2)_(rel)(0)/(2(d(0)-d_(z)))、 式(32)a_(NB)=v^(2)(0)/(v^(2)_(v)(0)/a_(v)(0)-2(d(0)-d_(z)))と」するという判定方法を用いているものである点。 <相違点2> 本件発明1は、「前記少なくとも2つの異なる判定方法(BV1,BV2)のうちのどの判定方法が使用されるかが、前記状態変数(v1,a1、dx_0,v2,a2)の応じて決定され」、「使用され」るものであるのに対し、引用発明は、「第1の場合」の判定方法(式(25))、「第2の場合」の判定方法(式(32))が使用されるものであるということが特定されているのに留まる点。 <相違点3> 本件発明1は、「前記異なる判定方法(BV1,BV2)は、少なくとも以下の判定方法: 前記自車両(1)と前記前方の物体(2)との移動方程式系が算出される移動方程式の判定方法(BV1)と、前記自車両(1)の許容制動距離(s1_br)が算出される制動距離の判定方法(BV2)とを有し、 複数の前記判定方法(BV1,BV2)によってそれぞれ1つの目標加速度(a1_d_1,a2_d_2)が、算出され、 前記第1判定方法(BV1)では、前記自車両(1)の移動方程式と前記前方の物体(2)の移動方程式とが、時間の二次関数として立てられ、且つ: 実際(t=0)の相対距離(dx_0)、前記自車両(1)の実際(t=0)の前記絶対縦加速度(a1)及び前記前方の物体(2)の実際(t=0)の第2加速度(a2)並びに前記自車両(1)の実際(t=0)の絶対走行速度(v1)及び前記前方の物体(2)の実際(t=0)の第2速度(v2)を有し、 前記第1判定方法(BV1)では、 t1が前記応答時間であり、dvが実際(t=0)の前記自車両(1)に対する前記前方の物体(2)の相対速度(v2-v1)であり、dv_t1が、前記応答時間(t1)後の前記自車両(1)に対する前記前方の物体(2)の相対速度であり、dx_t1が、前記応答時間(t1)後の前記相対距離であり、dx_minが、前方の物体(2)に対する前記自車両(1)の相対距離として許容できる最短距離であるとして、時刻tにおける前記前方の物体(2)に対する前記自車両(1)の相対距離(dx)に関する方程式(方程式3)に基づいて、前記最短距離(dx_min)が得られるときに前記自車両(1)に対する前記前方の物体(2)の相対速度が零になる条件から、第1目標加速度(a1_d_1)が、方程式 【数2】 dv_t1=dv+(a2-a1)・t1 方程式5 dx_t1=dx_0+dv・t1+(a2-a1)・t1^(2)/2 方程式6 a1_d_1=a2-(dv_t1)^(2)/(2・(dx_t1-dx_min)) (方程式7) を使用して算出され、 前記第2判定方法(BV2)では、前記応答時間(t1)後に前記自車両(1)が制動を起動する際にどのくらいの制動距離(s1_br)が残されているかという、絶対走行速度(v1)と第2速度(v2)と絶対縦加速度(a1)と第2加速度(a2)との実際(t=0)の値及び実際(t=0)の相対距離(dx_0)並びに一定の最短距離(dx_min)に基づく計算から、第2目標加速度(a1_d_2)が算出され、 前記第2目標加速度(a1_d_2)は、前記応答時間(t1)後の前記自車両(1)の、実際(t=0)の絶対走行速度(v1)と実際(t=0)の絶対縦加速度(a1)とから算出された絶対走行速度(v1_t1)と、前記応答時間(t1)後の制動の起動時の前記自車両(1)の許容制動距離(s1_br)とを有する方程式 【数3】 a1_d_2=(v1_t1)^(2)/(2・sl_br) に基づいて算出され、 ここで、 v1_t1は応答時間t1後の絶対走行速度であり、 s1_brは許容制動距離であり、応答時間をt1として、 【数4】 s1_br=dx_0+s2_stop-s1_react-dx_min 方程式10 s2_stop=-v2^(2)/(2・a2) 方程式11 s1_react=v1・t1+1/2・a1・t1^(2) 方程式12 によって算出され」るものであり、しかも、「前記第1判定方法(BV1)が適切であり且つ使用されるかどうか、又は、少なくとも前記第2判定方法(BV2)が適切であり且つ使用されるかどうかが、1つの許容基準(Zk1)に基づいて決定され、 当該許容基準(Zk1)では、 前記第1判定方法(BV1)で算出された前記第1目標加速度a1_d_1を用いて、 前記自車両(1)が最短距離(dx_min)に達し、且つ前記前方の物体(2)と同じ速度(dv=0)に達するまでに要される絶対制動時間(t1_dv)が以下の方程式 【数5】 t1_dv=(2(dx_t1-dx_min)/(a2-a1_d_1))^(1/2)+t1 方程式9 ここで、t1_dvは絶対制動時間 に基づいて算出され、 他方、停止(v2(t2_stop)=0)までに制動のために要する前記前方の物体(2)の物体制動時間(t2_stop)が以下の方程式 【数6】 t2_stop=(0km/h-v2)/a2=-v2/a2 方程式8 ここで、t2_stopは物体制動時間 に基づいて算出され、 前記許容基準(Zk1)が満たされている場合、すなわち、前記絶対制動時間(t1_dv)が前記物体制動時間(t2_stop)より短いか又は当該物体制動時間(t2_stop)に等しい場合は、前記第1判定方法(BV1)において算出された前記第1目標加速度(a1_d_1)が、適正であり且つ使用され、 前記許容基準(Zk1)が満たされていない場合、すなわち、前記絶対制動時間(dv_t1)が前記物体制動時間(t2_stop)より長い場合は、少なくとも前記第2判定方法(BV2)において算出された前記第2目標加速度(a1_d_2)が、適切であり且つ使用され」るものであるのに対し、引用発明では、「第1の場合」の判定方法は、「非常制動減速度(a_(NB))を予め設定し」、「式(25)に記述されている関係式が満たされる」か否かであり、「第2の場合」の判定方法は、「非常制動減速度(a_(NB))を予め設定し」、「式(32)に記述されている関係式が満たされる」か否かであり、しかも、「第1の場合」が適切であり且つ使用されるかどうか、又は「第2の場合」が適切であり且つ使用されるかどうかについて判定するものとはされていない点。 <相違点4> 本件発明1では、「自動緊急ブレーキの起動後の車両内のブレーキ系の応答時間(t1)及び/又は警報表示部(9)による前記警報表示信号(Si1)の出力後の運転者の応答時間(t1)が、複数の前記判定方法(BV1,BV2)のうちのどの判定方法を使用する必要があるかの決定、及び/又は個々の判定方法にさらに、算入され」るものであるのに対し、引用発明では、かかる点について特定されていない点。 <相違点5> 本件発明1は、「前記第1判定方法(BV1)において算出された前記第1目標加速度(a1_d_1)が適切であり使用される場合は、前記第1目標加速度(a1_d_1)が限界値を超えるときに前記自車両(1)の自動制御の必要性が生じると判定し、 前記第2判定方法(BV2)において算出された前記第2目標加速度(a1_d_2)が適切であり使用される場合は、前記第2目標加速度(a1_d_2)が限界値を超えるときに前記自車両(1)の自動制御の必要性が生じると判定する」ものであるのに対し、引用発明ではかかる点について特定されていない点。 イ 判断 事案に鑑み、相違点3について検討する。 (ア)本件発明1も引用発明も、等加速度運動を行う二つの第1及び第2の物体からなる系において、二つの物体の速度が同じになるときに、二つの物体間の相対距離が所定の許容最短距離になるという条件(判定基準)の下に緊急ブレーキ状況を判断しており(本件明細書段落【0050】?【0059】、及び、甲第1号証段落【0056】?【0061】を参照。)、しかも、本件発明も引用発明も、かかる条件のみでは、第1の物体が停止した後逆方向に進むという、実際には存在し得ない状況を考慮していないことに伴う判定の不都合が生じるので、そのような状況になる場合を想定して、別の判定基準を用いるという点(本件明細書段落【0071】?【0076】、及び、甲第1号証段落【0062】?【0068】を参照。)では技術的に軌を一にするといえる。 しかしながら、本件発明1が2つの異なる判定方法(BV1,BV2)のどちらを使用するかを、まず、第1目標加速度(a1_d_1)を算出し、許容基準(Zk1)において、この第1目標加速度(a1_d_1)を用いて、自車両が最短距離(dx_min)に達し、且つ前方の物体と同じ速度(dv=0)に達するまでに要する絶対制動時間(t1_dv)を求める一方、前方の物体が停止するまでに要する物体制動時間(t2_stop)を求め、絶対制動時間(t1_dv)と物体制動時間(t2_stop)とを比較し、絶対制動時間(t1_dv)≦物体制動時間(t2_stop)の場合には、第1の判定方法(BV1)を採用し、第1目標加速度(a1_d_1)を緊急ブレーキに必要な加速度として使用し、絶対制動時間(t1_dv)>物体制動時間(t2_stop)の場合には、第2の判定方法(BV2)により、第2目標加速度(a1_d_2)を算出し、この第2目標加速度(a1_d_2)を緊急ブレーキに必要な加速度とし使用するものであるのに対し、引用発明は、「第1の場合」も「第2の場合」もどちらも、非常制動減速度(a_(NB))を予め設定し、式(25)に記述されている関係式が満たされる、あるいは、式(32)に記述されている関係式が満たされると自動非常制動プロセスが起動されるものであるという点で異なる。 すなわち、本件発明1が、まず、第1目標加速度(a1_d_1)を算出し、この第1目標加速度(a1_d_1)を使用すると、前方の物体が停止した後に逆方向に移動するという実際には起こりえない状況下で緊急ブレーキプロセスが終了するという不都合がある場合を許容基準(Zk1)を用いて判定し、かかる場合には、第2目標加速度(a1_d_2)を算出し使用するものであるのに対し、引用発明では、非常制動減速度(a_(NB))は、予め設定されており、この予め設定された非常制動減速度(a_(NB))を使用して、第1の場合の条件、あるいは、第2の条件が満たされた場合に、自動非常制動プロセスを起動するものであり、非常制動加速度(a_(NB))を、第1の条件、第2の条件に応じて各々算出するものではない。 (イ)そして、甲第1号証には、等加速度運動を行う二つの第1及び第2の物体からなる系において、二つの物体の速度が同じになるときに、二つの物体間の相対距離が所定の許容最短距離になるという条件(判定基準)の下に第1目標加速度を算出し、この第1目標加速度を使用すると、前方の物体が停止した後に逆方向に移動するという実際には起こりえない状況下で緊急ブレーキプロセスが終了するという不都合がある場合を第1目標加速度を用いて判定し、かかる場合には、第2目標加速度を算出し使用するという技術思想については、記載も示唆もされていない。 したがって、引用発明において、相違点3に係る本件発明1の構成となすことは当業者が容易になし得たものであるとはいえない。 よって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明、すなわち、甲第1号証に記載された発明ということはできないし、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 (2)本件発明14及び15について 本件発明14及び15は、請求項1を引用する限度において、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を付加したものである。 したがって、本件発明1が引用発明、すなわち、甲第1号証に記載された発明ということはできないし、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない以上、本件発明14及び15も、請求項1を引用する限度においては、引用発明、すなわち、甲第1号証に記載された発明ということはできないし、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 (3) 特許異議申立人の意見について 特許異議申立人は、平成31年3月14日に提出した意見書の中で、「即ち、第1の場合であるか、又は、第2の場合であるかは、第1の場合の非常制動減速度aNBを算出した後で、初めて判断されることになる。 よって、引用発明1の、第1の場合であるか第2の場合であるかを判断する時点と、本件発明の、第1計算方法と第2計算方法のいずれを採用するか決定する時点に差異はなく、本件発明における“第1判定方法(BV1)、第2判定方法(BV2)を用いる場合”と、引用発明における“第1、第2の場合”は同じである。」と主張する(意見書第4頁第11行?第18行)。 しかしながら、上記(1)イで説示のように、引用発明においては、a_(NB)は予め設定されたものであり、算出するものではないから、異議申立人の「第1の場合であるか、又は、第2の場合であるかは、第1の場合の非常制動減速度aNBを算出した後で、初めて判断されることになる。」という主張は採用できず、したがって、異議申立人の「引用発明1の、第1の場合であるか第2の場合であるかを判断する時点と、本件発明の、第1計算方法と第2計算方法のいずれを採用するか決定する時点に差異はなく、本件発明における“第1判定方法(BV1)、第2判定方法(BV2)を用いる場合”と、引用発明における“第1、第2の場合”は同じである。」との主張も採用できない。 第5 取消理由通知において採用しなかった取消理由について 1.特許異議申立人の主張する取消理由のうち、取消理由通知に採用しなかったものは、次のとおりである。 [取消理由A]本件出願の請求項1?15に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証?甲第11号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。 [取消理由B]本件出願の請求項1?15の記載は、論理的に矛盾する構成を含んでおり、特許を受けようとする発明が明確であるとはいえず、特許法第36条第6甲第2号の規定に違反するものであるから、請求項1?15に係る発明の特許は取り消されるべきものである。 2.当審の判断 (1)[取消理由A]について ア 請求項1について 訂正後の請求項1に係る発明(本件発明1)と、甲第1号証に記載された発明(引用発明)との一致点、及び、相違点は、上記「第4 3.(1)ア」で摘示のとおりである。 ここで、等加速度運動を行う二つの第1及び第2の物体からなる系において、二つの物体の速度が同じになるときに、二つの物体間の相対距離が所定の許容最短距離になるという条件(判定基準)の下に第1目標加速度を算出し、この第1目標加速度を使用すると、前方の物体が停止した後に逆方向に移動するという実際には起こりえない状況下で緊急ブレーキプロセスが終了するという不都合がある場合を第1目標加速度を用いて判定し、かかる場合には、第2目標加速度を算出し使用するという構成、すなわち、相違点3に係る本件発明1の構成が、甲第1号証に記載も示唆もされていないことは、上記「第4 3.(1)イ(イ)」で述べたとおりである。また、異議申立人の提出した甲第2号証?甲第11号証にも、当該構成については記載ないし示唆はされていない。 そうすると、訂正後の請求項1に係る発明(本件発明1)は、甲第1号証に記載された発明(引用発明)及び甲第2号証?甲第11号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明できたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものとはいえないから、特許異議申立人のかかる主張は採用することができない。 イ 請求項6について (ア)対比 訂正後の請求項6に係る発明(本件発明6)と、引用発明とを対比する。 上記「第4 3.(1)ア」を踏まえれば、本件発明6と引用発明との一致点及び相違点は次のとおりであるといえる。 <一致点A> 「第1自車両の緊急ブレーキ状況を判定するための方法であって、 緊急ブレーキ状況が存在するかどうかが、判定方法を用いて判定される当該方法において、 緊急ブレーキ状況が存在するかどうかを判定するため、2つの異なる判定方法が使用され、 緊急ブレーキ状況が判定された場合には、自動的に、緊急ブレーキ過程が開始され、及び/又は、警報表示信号(Si1)が出力されるようにした、 方法。」 <相違点A> 本件発明6は、「前記自車両(1)は、少なくとも以下の実際(t=0)の状態変数: 前記自車両(1)の実際(t=0)の絶対走行速度、v1と、 前記自車両(1)の実際(t=0)の絶対縦加速度、a1と、 前方の物体(2)に対する前記自車両(1)の実際(t=0)の相対距離、dx_0と、 前記前方の物体(2)の実際(t=0)の第2速度、v2と実際(t=0)の第2加速度、a2とを算出し、前記実際(t=0)の相対距離(dx_0)は以下の式で表され、 【数1】 dx_0=x2_0-x1_0 dx=dx_0+(v2-v1)・t+(1/2)・(a2-a1)・t^(2) 方程式3 ここで、 x1_0は前記自車両(1)の実際(t=0)の位置、 x2_0は前記前方の物体(2)の実際(t=0)の位置、 dxは時刻tにおける前記前方の物体(2)に対する前記自車両(1)の相対距離、 緊急ブレーキ状況が存在するかどうかが、判定方法(BV1,BV2)を用いて実際の前記状態変数(v1,a1、dx_0,v2,a2)から判定される」ものであるのに対し、 引用発明では、「非常制動減速度(a_(NB))を予め設定し、 a_(v)(0)を、時間t=0における前方走行車両の加速度、 v_(rel)(0)を、時間t=0における車両と前方走行車両との相対速度、 d(0)を、時間t=0における車両と前方走行車両との間の距離、 d_(z)を、目標安全距離、 v(0)を、時間t=0における車両の速度、 v_(v)(0)を、時間t=0における前方走行車両の速度、 として、 ここで、式(25)a_(NB)=a_(v)(0)-v^(2)_(rel)(0)/(2(d(0)-d_(z)))、 式(32)a_(NB)=v^(2)(0)/(v^(2)_(v)(0)/a_(v)(0)-2(d(0)-d_(z)))と」するという判定方法を用いているものである点。 <相違点B> 本件発明6は、「前記少なくとも2つの異なる判定方法(BV1,BV2)のうちのどの判定方法が使用されるかが、前記状態変数(v1,a1、dx_0,v2,a2)の応じて決定され」、「使用され」るものであるのに対し、引用発明は、「第1の場合」の判定方法(式(25))、「第2の場合」の判定方法(式(32))が使用されるものであるということが特定されているのに留まる点。 <相違点C> 本件発明6は、「前記異なる判定方法(BV1,BV2)は、少なくとも以下の判定方法: 前記自車両(1)と前記前方の物体(2)との移動方程式系が算出される移動方程式の判定方法(BV1)と、前記自車両(1)の許容制動距離(s1_br)が算出される制動距離の判定方法(BV2)とを有し、 許容制動距離、s1_brは、 【数8】 s1_br=dx_0+s2_stop-s1_react-dx_min 方程式10 s2_stop=-v2^(2)/(2・a2) 方程式11 s1_react=v1・t1+1/2・a1・t1^(2) 方程式12 によって算出され、 ここで、dx_minが、前方の物体(2)に対する前記自車両(1)の相対距離として許容できる最短距離であり」というものであるのに対し、引用発明では、「第1の場合」の判定方法は、「非常制動減速度(a_(NB))を予め設定し」、「式(25)に記述されている関係式が満たされる」か否かであり、「第2の場合」の判定方法は、「非常制動減速度(a_(NB))を予め設定し」、「式(32)に記述されている関係式が満たされる」か否かである点。 <相違点D> 本件発明6では、「自動緊急ブレーキの起動後の車両内のブレーキ系の応答時間(t1)及び/又は警報表示部(9)による前記警報表示信号(Si1)の出力後の運転者の応答時間(t1)が、複数の前記判定方法(BV1,BV2)のうちのどの判定方法を使用する必要があるかの決定、及び/又は個々の判定方法にさらに、算入され」るものであるのに対し、引用発明では、かかる点について特定されていない点。 <相違点E> 本件発明6は、「第1ステップでは、まず、最初の判定方法(BV0)が使用され、この判定方法(BV0)では、前記応答時間(t1)後の前記前方の物体(2)に対する前記自車両(1)の相対距離(dx_t1)が、維持すべき最短距離(dx_min)より短いことにしたがう第1基準(K1)が満たされているかどうかが評価され、 前記第1基準(K1)を満たすときは、緊急ブレーキ状況と判定し、前記第1基準(K1)を満たさないときは、その後に、その他の前記複数の判定方法(BV1,BV2)のうちのどの判定方法を使用する必要があるかが決定される」ものであるのに対し、引用発明ではかかる点について特定されていない点。 (イ)判断 事案に鑑み相違点Eについて検討する。 甲第1号証には、車両と前方走行車両との関係において、「第1の場合」及び「第2の場合」以前に、自動非常制動プロセス起動後の車両と前方走行車両との距離が目標安全距離d_(z)より短いか否かを判定し、「第1の場合」及び「第2の場合」以前に、自動非常制動プロセス起動後の車両と前方走行車両との距離が目標安全距離d_(z)より短いと判定された場合には、自動非常制動プロセスを起動し、そうでないと判定された場合には、その後に「第1の場合」及び「第2の場合」を判定するものであるという構成、すなわち、相違点Eに係る本件発明6の構成については記載も示唆もされていない。また、甲第2号証?甲第11号証にもかかる構成については記載も示唆もされていない。 (甲第5号証は、車両コントロールシステムにおいて、アダプティブスルーズコントロール(ACC)及び衝突準備システム(CPS)が具備されていることが開示されているが(甲第5号証の段落[0057]及び[0065]を参照。)、アダプティブスルーズコントロール(ACC)及び衝突準備システム(CPS)の一方あるいは他方が、本件発明6の「緊急ブレーキ状況が存在するかどうかが、判定方法(BV1,BV2)を用いて」「判定される」場合の一方の判定方法(BV1)あるいは他方の判定方法(BV2)に相当するものとはいえないし、まして、緊急ブレーキ状況が存在するかどうかを2つの判定方法を用いて判定する以前に、最初の判定方法を用いるということを開示するものでもない。 また、甲第10号証は、自動車の制動手段の動作方法に関し、事前の警告なしに制動手段の動作を開始する場合があることを開示するに留まり(甲第10号証の段落【0006】及び【0007】を参照。)、本件発明6のように、緊急ブレーキ状況が存在するかどうかを2つの判定方法を用いて判定する以前に、最初の判定方法を用いるということを開示するものではない。) したがって、引用発明において、甲第2号証?甲第11号証に記載された発明を適用して、相違点Eに係る本件発明6の構成となすことは当業者であっても容易にはなし得ない。 よって、その余の相違点について検討するまでもなく、訂正後の請求項6に係る発明(本件発明6)は、甲第1号証に記載された発明(引用発明)及び甲第2号証?甲第11号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明できたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものとはいえないから、特許異議申立人のかかる主張は採用することができない。 ウ 請求項7及び8について 訂正後の請求項7及び8に係る発明(本件発明7及び8)は、訂正後の請求項6に係る発明(本件発明6)の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を付加したものである。 したがって、本件発明6が甲第1号証に記載された発明(引用発明)及び甲第2号証?甲第11号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明できたものであるとはいえない以上、本件発明7及び8も、甲第1号証に記載された発明(引用発明)及び甲第2号証?甲第11号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明できたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものとはいえないから、特許異議申立人のかかる主張は採用することができない。 エ 請求項14及び15について 訂正後の請求項14及び15に係る発明(本件発明14及び15)は、訂正後の請求項1又は訂正後の請求項6を直接又は間接的に引用するものである。 したがって、上記ア及びイと同様の理由により、本件発明14及び15は、甲第1号証に記載された発明(引用発明)及び甲第2号証?甲第11号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明できたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものとはいえないから、特許異議申立人のかかる主張は採用することができない。 (2)[取消理由B]について ア 特許異議申立人は、特許異議申立書において、請求項1における、「緊急ブレーキ状況が存在するかどうかを判定するため、少なくとも2つの異なる判定方法(BV1,BV2)が」「使用され」るという記載と、「少なくとも2つの異なる判定方法のうちどの判定方法が使用されるかが」「決定される」という記載は互いに矛盾する、すなわち、前者は2つの判定方法の両者が使用されるものであるのに対し、後者は、2つの判定方法のいずれか一方が使用されるものと規定されており矛盾する。 したがって、請求項1及び請求項1を引用する各請求項に係る発明は、明確でないと主張する(特許異議申立書第15頁第20行?第16頁第4行)。 しかしながら、前者の記載は、2つの異なる判定方法の両者が必ず使用されると規定するものではないことは、その記載から明らかであり、前者の記載と後者の記載が互いに矛盾するものでないことは明らかである。 したがって、請求項1及び請求項1を引用する各請求項に係る発明は明確である。 また、特許異議申立人は、特許異議申立書において、請求項14についても、上記請求項1に関する主張と同様の主張をしている(特許異議申立書第16頁第5行?第12行)が、上記と同様の理由により、請求項14に係る発明は明確である。 イ 特許異議申立人は、特許異議申立書において、請求項6に関し次のa及びbのように主張し、請求項6及び請求項6を引用する各請求項に係る発明は明確でないと主張する。 a 請求項6に係る発明によれば、全部で3つの利用可能な判定方法(BV0、BV1、BV2)のうちから、2つの判定方法(BV0と、BV1もしくはBV2)が使用されることになるが、このことは、「緊急ブレーキ状況が存在するかどうかを判定するため、少なくとも2つの異なる判定方法(BV1,BV2)が」「使用され」るという記載と矛盾する、すなわち、前者は3つの判定方法のうち、2つ(BV0とBV1かBV0とBV2)が使用されるものであるのに対し、後者は、3つの判定方法の全てが使用されるものと規定されており矛盾する。 b 請求項6に係る発明における3つの判定方法(BV0、BV1、BV2)の全てにおいて、状態変数(v1,a1、dx,v2,a2)(なお、訂正後においては、状態変数(v1,a1、dx_0,v2,a2))の5つの状態変数を使用しなければならないと規定されているところ、最初の判定方法(BV0)では、相対距離(dxもしくはdx_t1)が一つの状態変数として評価されると記載されているから、矛盾すると主張する。 したがって、請求項6及び請求項6を引用する各請求項に係る発明は明確でない。 (a及びbあわせて、特許異議申立書第16頁第14行?第17頁第15行を参照) しかしながら、aについては、請求項6に係る発明における「緊急ブレーキ状況が存在するかどうかを判定するため、少なくとも2つの異なる判定方法(BV1,BV2)が」「使用され」るということは、2つの異なる判定方法の両者が必ず使用されると規定するものではないことは、その記載から明らかであり、そうだとすれば、前者の記載と後者の記載が互いに矛盾するものでないことは明らかである。 bについては、請求項6の記載からは、請求項6に係る発明における3つの判定方法(BV0、BV1、BV2)の全てにおいて、5つの状態変数を使用しなければならないと規定されているものではないといえるから、前者の記載と後者の記載が矛盾するものでないことは明らかである。 したがって、請求項6及び請求項6を引用する各請求項に係る発明は明確である。 以上のとおりであるから、請求項1、6及び14並びにこれらを引用する各請求項に係る発明は明確であり、本件の特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6甲第2号の要件を満たす。 したがって、特許異議申立人のかかる主張は採用することができない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1、6?8、14及び15に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1、6?8、14及び15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 さらに、請求項2?5及び9?13に係る特許は、上記のとおり訂正により削除された。これにより特許異議申立人による特許異議申立てについて、請求項2?5及び9?13に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 車両の緊急ブレーキ状況を判定するための方法 【技術分野】 【0001】 本発明は、車両の緊急ブレーキ状況を判定するための方法、当該方法を実行するための制御装置、及び当該制御装置を有する走行動特性制御システムに関する。 【0002】 特に、本発明は、前方を走行する物体、特に車両が存在する道路上の走行時の追突の危険を判定するための方法に関する。 【背景技術】 【0003】 当該目的のために、移動方程式を立てて、自車両と前方の車両との現在の走行挙動時の衝突時間を算出することが基本的に公知である。さらに、目標減速度を算出して、起こり得る衝突を回避することも基本的に公知である。 【0004】 欧州特許第1539523号明細書又は独国特許第10258617号明細書は、車両の自動緊急ブレーキプロセスを起動させるための方法及び装置を開示する。この場合、車両の絶対速度及び絶対加速度が算出され、最短距離が、目標とする安全な車間距離として設定される。さらに、当該2台の車両間の目標とする相対速度が設定される。当該相対速度は、自動緊急ブレーキプロセスの終了と共に達成されなければならない。さらに、測定された実際の、当該両車両間の相対加速度が使用される。 【0005】 独国特許第102006019848号明細書は、車両の衝突の影響を少なくするための装置を開示する。この装置では、障害物と車両との相対距離及び相対速度が検出され、起こり得る衝突又は事故が判定され、それに基づいて、当該判断の直後に、場合によっては、乗員保護手段が起動され得る。当該システムは、プリクラッシュシステムとしても公知である。 【0006】 特開2004-038245号公報は、車両用の障害物検出装置を示す。この障害物検出装置では、検出されたハンドル操作が、さらに使用される。欧州特許第0891903号明細書は、自動緊急ブレーキ機能を開示する。この自動緊急ブレーキ機能では、障害物を回避する可能性も判定される。欧州特許第1625979号明細書は、緊急ブレーキを起動させるための方法及び装置を開示する。当該方法及び装置では、衝突の可能性と、さらに緊急ブレーキの起動時の自車両の危険性とが判定され、当該緊急ブレーキに対する起動閾値が、判定されたこの危険性に応じて変更可能である。欧州特許第1803109号明細書は、車両の近くの領域内にある物体を特定するための方法を開示する。当該方法では、衝突に関連する値が、可能な回避操縦又は制動過程を考慮に入れて、車両センサのデータ及び/又は周囲センサのデータから計算される。 【0007】 当該従来の方法の欠点は、一般に、当該方法が、多くの場合に、特定の走行状況だけに限定される結果、常にリアルタイムで、事故を自発制動で回避することに寄与しないことにある。さらに、緊急ブレーキの起動が、場合によっては非常に早い結果、場合によっては、当該緊急ブレーキが必要以上に実施され得る。 【0008】 さらに、緊急ブレーキを用いない様々な車間距離維持システムが公知である。前方を走行する車両に対する距離を一定に維持するため、Bendix(登録商標)Wingman(登録商標)ACB-制動特性を有する適応走行システムが、車間距離維持プロセスを実行する。この場合、警報表示信号及び緊急ブレーキプロセスを自動的に実行するための緊急ブレーキ信号も出力され得る。この目的のために、前方を走行する車両に対する距離が、例えばレーダー装置によって測定される。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0009】 【特許文献1】欧州特許第1539523号明細書 【特許文献2】独国特許第10258617号明細書 【特許文献3】独国特許第102006019848号明細書 【特許文献4】特開2004-038245号公報 【特許文献5】欧州特許第0891903号明細書 【特許文献6】欧州特許第1625979号明細書 【特許文献7】欧州特許第1803109号明細書 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0010】 本発明の課題は、緊急ブレーキ状況の確実な認識を可能にし、且つ不当な緊急ブレーキの可能性を極力抑える、方法、当該方法を実行するための適切な制御装置及び走行動特性制御システムを提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0011】 この課題は、請求項1に記載の方法及び請求項14に記載の制御装置によって解決される。その他の好適な構成は、従属請求項に記載されている。この場合、さらに、当該制御装置を有するか又は当該方法を実行するための走行動特性制御システムが提唱されている。 【0012】 したがって、本発明によれば、その都度の実際の走行状況に応じて、適切な判定方法を使用するため、様々な判定方法が使用される。 【0013】 移動方程式の判定方法を示す第1判定方法によれば、自車両の移動方程式とこの自車両の前方に存在する物体の移動方程式との双方が立てられ、緊急ブレーキ状況が存在するかどうかが、これらの移動方程式に応じて判定される。その後に、特に、必要な減速度が、この判定に応じて計算され得る。これらの移動方程式は、特に時間の二次関数として成立され得る、すなわち、初期値と線形項と二次項とを有する時間の二次関数として成立され得る。その結果、自車両と前方の物体とに共通の方程式系つまり共通の移動方程式が立てられ得る。下記の最短距離を下回ること及び/又は衝突が、当該方程式系つまり移動方程式から判定され得る。 【0014】 これに対して、第2判定方法によれば、制動距離が考慮される。この第2判定方法では、少なくとも自車両の制動距離が、算出されて判定され得る。 【0015】 本発明は、自車両が前方を走行する物体の後方にある典型的な走行状況においては、緊急ブレーキ状況が、当該自車両の移動方程式と当該前方の物体の移動方程式とによって判定され得るという技術的思想に基づく。当該移動方程式の判定方法に対しては、特に、時間の二次関数の複数の移動方程式が立てられ得る、すなわち、時間の零次項としての相対距離と時間の一次項としての速度(又は相対速度)と時間の二次項としての加速度とを有する複数の移動方程式が立てられ得る。したがって、1つの方程式系が、これらの移動方程式から立てられ得る。その後に、許容最短距離(例えば、1m又は零の最短距離)に近いかどうかが、この方程式系によって判定され得る。この場合、特に、(例えば、ブレーキを掛けるための)車両のブレーキ系の応答時間と、運転者の応答時間とがさらに算入され得る。何故なら、起動介入による変動が、当該応答時間後に初めて発生するからである。 【0016】 また、本発明によれば、方程式系のこのようなアプローチ、特に時間の二次関数の複数の移動方程式の当該アプローチが、誤った判定を引き起こし得ることが認識されている。自車両又は前方を走行する物体の負の加速度、すなわち制動つまり減速を伴う時間の二次関数の複数の移動方程式では、数学的には、自車両又は物体の完全な停止に続く仮定の逆走も表される。しかしながら、このような仮定の逆走は、物理的には起こり得ない。何故なら、ブレーキ介入又はエンジンブレーキ介入(又は、例えば空気摩擦)による車両の減速が、正の速度から停止するまでの制動(負の加速度)を引き起こし得るが、停止している車両は、後方に向かって加速されないからである。当該物理的に作用する制動作用、すなわち負の加速度は、車両の停止時に無くなる、すなわち車両が停止することになるが、逆走は起こらない。 【0017】 したがって、逆走中に起こる、特に前方を走行する前方の車両の仮定の逆走時に起こる、しかしながら起こり得ない仮定の衝突が、当該数学的な方程式系において算出され得る。 【0018】 それ故に、本発明によれば、当該移動方程式の複数の判定方法は、当該複数の判定方法が有効であると判定されるときにだけ使用される。好ましくは、様々な状況を判定するための複数の基準が、適切な判定方法を選択するために使用される。 【0019】 第1判定方法、すなわちこの移動方程式の判定方法が、有効でないと判定される場合、別の判定方法が、本発明にしたがって使用される。この場合、少なくとも1つの第2判定方法、つまり特に、制動距離を考慮する制動距離の判定方法が提唱されている。この場合、特に、自車両の正確な移動方程式と前方の物体の正確な移動方程式とを考慮することなしに、自車両の制動距離が算出されて判定される。特に、時間に依存する許容基準が規定される。この許容基準は、第1自車両の自己制動時間を前方の第2物体の物体制動時間と比較する。当該比較は、非常に簡単な判定であり、且つ実行可能な第1判定方法又は第2判定方法を決定する。したがって、まず、前方の第2物体に対する第1自車両の相対速度が完全に零になる時に、自車両制動時間が、最短距離に達するまでの間に算出される。当該物体制動時間とは、前方の第2物体が停止するまでに必要とする時間である。 【0020】 本発明によれば、まず、応答時間後の相対距離が、既に最短距離に達したか又は最短距離を下回ったかどうか、すなわち既に緊急ブレーキ状況が存在するかどうかという、最初の基準が使用されてもよい。つまり、当該最初の基準は、最初の(第0)判定方法として規定され得る。その結果、第1判定方法及び第2判定方法は、全く関与しない。 【0021】 第1絶対加速度が、縦加速度センサによって測定され得る、及び/又は第1絶対速度の時間微分によって算出され得る。前方の物体に対する相対距離が、特に距離センサによって検出され得る。当該物体の第2速度も、当該相対距離から算出され得る、すなわち当該相対距離の信号の経時変化から少なくとも算出され得る。当該物体の第2加速度が、当該第2速度の時間微分として算出され得る。しかしながら、基本的には、当該物体の第2速度は、例えばドップラーレーダ測定によって捕捉されてもよい。このとき、本発明の緊急ブレーキ状況の判定は、特に、自車両の必要な減速度を算出することによって決定され得る。 【0022】 したがって、時間に対する距離のグラフでは、時間の二次関数の運動方程式が、放物線を描く。つまり、当該放物線は、負の加速度時に、すなわち制動時に又は減速時に下側に向かって広がる。したがって、負の勾配を成す制動時には、対応する速度変化が直線を描く。 【0023】 本発明によれば、当該時間に対する距離のグラフにおける放物線の移動曲線の下降カーブと、対応する時間に対する速度のグラフにおける負の値とが、物理的に起こり得ないと判定される。つまり、本発明によれば、誤った判定を引き起こす当該状況は、適切な基準によって排除される。 【0024】 したがって、前方の車両の停止後に続く仮定の逆走中に、負の加速度、すなわち減速又は制動を伴って、当該前方の車両が、自車両に衝突するという仮定の状況は排除され得る。 【0025】 衝突を引き起こす仮定の逆走のこの状況を排除するため、好ましくは、物体及び自車両が、停止するまでに、どのくらいの時間又はどのくらいの制動距離を必要とするかが確認される。自車両が、前方の物体より早く停止する又は前方の物体と同時に停止する場合は、好適な構成によれば、好ましくは、第1判定方法が設定され得る。しかしながら、自車両が、前方の物体より遅く停止する場合は、好ましくは、当該移動方程式の判定方法は設定されない。何故なら、前方の物体のその後の逆走による仮定の衝突状況が確認されるからである。したがって、1つの許容基準が、移動方程式の判定方法に対して規定される。この場合、満たさないときに、その後に、当該第2判定方法が使用される。 【0026】 当該第2判定方法では、基本的には、制動距離が使用されるものの、当該両車両の停止までの間のこれらの車両の動特性は使用されない、すなわちこれらの車両の正確な移動方程式は使用されない。すなわち、停止した時点に対して計算された当該値において、自車両と前方の車両との間の安全な車間距離が維持されるという状況は、理論上は起こり得るものの、当該自車両の実際の動特性に起因して、衝突(又は最短距離を下回ること)が、当該両車両の停止までの間に発生する。しかしながら、本発明によれば、第1判定方法と第2判定方法とが理想的に補完し合うことが分かる。当該衝突は、既に移動方程式の判定方法によって把握され得る。したがって、この許容基準が、当該移動方程式の判定方法に対して満たされていて、且つこの移動方程式の判定方法が使用され得る場合は、衝突が、当該停止までの間に確実に把握される。しかしながら、この移動方程式の判定方法が、この許容基準を満たさないために使用され得ない場合は、第2判定方法では、その後は、安全な車間距離又は最短距離が、当該停止の時点に対して維持されるという誤った情報は出力され得ないものの、衝突は、当該停止までの間に起こる。当該衝突は、この移動方程式の判定方法で把握されたものである。 【0027】 したがって、確実で且つ比較的少ない計算労力で実行可能な方法が提供される。当該方法は、自車両と前方の物体との様々な初期移動状況も把握する。この場合、自車両と場合によってはこの自車両の後方を走行する車両との双方に発生する危険を伴う、必要以上に早い緊急ブレーキも、非常に安全に排除される。 【0028】 本発明によれば、当該方法によって、自動的な緊急ブレーキが起動され得るか、又は、警報表示信号が、運転者に出力され得る。正確な判定では、このときに、応答時間が算入され得る。したがって、当該応答時間には、自動緊急ブレーキ系の場合に、ブレーキに給気してアクチュエータを操作するために当該機器で要する時間が含まれる。警報表示信号を運転者に出力する場合は、さらに、当該運転者の応答時間も考慮される。 【0029】 特に好適な実施の形態によれば、様々な状況が、階層化されて細分される。第1の状況は、応答時間後の自車両と前方の物体との間の相対距離が、維持すべき最短距離より短いかどうかを基本的に確認できる。つまり、この第1基準が満たされている場合、緊急ブレーキが、常に即座に起動される。次いで、その後に初めて、例えば4つの状況が検討される。当該4つの状況のそれぞれでは、第1判定方法又は第2判定方法を設定すべきかどうかが判定される。これらの状況では、好ましくは、前方の物体の加速度及び相対速度、特に応答時間後の相対速度が使用される。したがって、全ての判定が、これらの2つの変数だけに基づいて、特に4つ又は5つの異なる状況で実行される。 【0030】 これらの状況では、場合によっては、まず、移動方程式の判定方法が判定され、当該判定方法が妥当でない場合、第2判定方法が使用される。その他の第2状況では、例えば、専ら、移動方程式の判定方法又は第2判定方法が使用され得る。さらに、前方の物体の加速度が正であり、且つ差速度つまり相対速度も正である状況が存在し得る。すなわち、全体として、衝突の危険がないことが確認され得る。 【0031】 本発明の制御装置は、特に本発明の方法の結果に応じて、エンジントルクを検出する。さらに、当該制御装置は、例えば制御信号をエンジン制御装置に出力する。 【0032】 以下に、本発明の幾つかの実施の形態を添付図面に基づいて説明する。 【図面の簡単な説明】 【0033】 【図1】2台の車両が前後して走行している道路を示す。 【図2】異なる初期条件による2台の車両の車間距離及び速度並びにこれらの車両の相対距離のグラフである。 【図3】異なる初期条件による2台の車両の車間距離及び速度並びにこれらの車両の相対距離のグラフである。 【図4】異なる初期条件による2台の車両の車間距離及び速度並びにこれらの車両の相対距離のグラフである。 【図5】異なる初期条件による2台の車両の車間距離及び速度並びにこれらの車両の相対距離のグラフである。 【図6】異なる初期条件による2台の車両の車間距離及び速度並びにこれらの車両の相対距離のグラフである。 【図7】異なる初期条件による2台の車両の車間距離及び速度並びにこれらの車両の相対距離のグラフである。 【発明を実施するための形態】 【0034】 第1自車両1が、車道3上で前方の物体2、ここでは前方の第2車両2の後方を走行する。以下では、共通の車両長手方向だけが考慮される。この第1自車両1は、位置x1上に存在し、速度v1と加速度a1とで走行する。したがって、制動が、負の値を取る加速度a1を表す。これに応じて、位置x2上の当該前方の第2車両2が、第2速度v2と第2加速度a2とで走行する。全ての変数x1,v1,a1;x2,v2,a2が、時間に依存する。当該2台の車両である第1自車両1と前方の車両2に対して、下記の時間の二次関数の移動方程式が成立する。この場合、当該自車両1の制動過程が開始するまで、特に、一定で絶対加速度a1及び第2加速度a2が維持される。 【0035】 当該自車両1は、この第1自車両1と前方の車両2との間の相対距離dxを測定するための距離センサ4、制御装置6を有するドライビングダイナミクス制御システム5、速度センサ7、及びこの制御装置6によって制御可能な車両ブレーキ8を有する。距離センサ4が、相対距離測定信号M1を制御装置6に出力し、これに応じて、速度センサ7が、速度測定信号M2をこの制御装置6に出力する。この場合、この速度センサ7は、ABS(アンチロックブレーキシステム)用の車輪回転センサによって構成されてもよい。さらに、この制御装置6が、ブレーキ制御信号M3を車両ブレーキ8に出力する。 【0036】 本発明では、様々な場面における状況が、異なる複数の基準に応じて判断される。当該場面では、衝突が起こり得るかどうかを判定するため、場合によっては緊急ブレーキを起動する必要があるかどうかを判定するため、異なる複数の判定方法又は評価手法が使用される。 【0037】 全ての計算が、後方の第1自車両1内で実行される。したがって、この第1自車両1は、前方の車両2との追突の危険を判定する。次いで、当該判定に応じて、緊急ブレーキが、第1自車両1の自発的な先進緊急ブレーキシステム(AEBS)によって自動的に起動され得る、及び/又は、警報信号Si1が、警報表示部9によってこの第1自車両1の運転者に出力され得る。 【0038】 応答時間t1が、これらの両場合に対してそれぞれ相違し得る。自動的な先進緊急ブレーキシステムでは、主にブレーキにブレーキ圧力を印加する(ブレーキを掛ける)ための時間によって決まる応答時間t1を、より短くすることができる。運転者に対する前方車両接近警報(FCW)では、まず、例えば、注意深い運転者の場合の1秒から注意散漫な又は不注意な運転者の場合の2秒までの当該運転者の応答時間を考慮する必要があり、さらに、ブレーキ装置内にブレーキ圧力を印加するために当該ブレーキ装置に必要な時間を考慮する必要がある。 【0039】 以下に、制動基準のための判定方法、すなわち、緊急ブレーキを起動する必要があるときの時点を判定するための判定方法を説明する。 【0040】 当該判定方法の基本概念は、好ましくは、第1自車両1の移動量の二次方程式と、前方の第2車両2の移動量の二次方程式とを作成すること、及び、これらの二次方程式から、緊急ブレーキを起動する必要があるかどうかを判定することである。すなわち、移動経路又は移動放物線が設定される。この移動経路又は移動放物線は、負の加速度の下で、場合によっては当該車両の停止まで維持され得るものの、この移動経路又は移動放物線は、計算上は、当該第1自車両1及び/又は当該前方の第2車両2が当該停止後に経過する期間内に逆走することを示す。しかしながら、当該制動作用による負の加速が、第1自車両1と前方の第2車両2との停止時に終わり、逆走を引き起こさないので、つまり逆方向(負の方向)にさらに継続する加速を引き起こさないので、当該移動放物線つまり移動量の二次方程式の設定の際、その後に逆走したと仮定した場合に、衝突(つまり最短距離を下回ること)を示す、場合によっては誤った運転状況を伴う、この物理的に起こり得ない状況が確認されるかどうかが、本発明にしたがって判定される。この状況が排除され得る場合は、当該移動量の二次方程式が、上記期間内に設定される。しかしながら、当該状況又は相当する状況が判定された場合は、制動距離が、本発明にしたがって観測される。 1.判定方法BV1:制動基準を移動量の二次方程式から決定する。 【0041】 前方の第2車両2(物体)の位置が、 【0042】 【数1】 x2_0は、時点t=0に対する位置 と表される。 【0043】 これに応じて、第1自車両1の位置が、以下のように表される: 【0044】 【数2】 この場合、x1は、第1自車両1の前方の端点を示す。これに対して、x2は、前方の第2車両2の後方の端点、すなわち後部を示す。その結果、相対距離dxが、距離センサ4によって直接に測定される。したがって、dx=0では、衝突つまり追突事故が発生する。 【0045】 当該相対距離dxは、方程式1及び2から 【0046】 【数3】 と表される。 【0047】 この相対距離dxから、 【0048】 【数4】 が得られる。 【0049】 dv=v2-v1、すなわち相対速度であり、dx_0=x2_0-x1_0は、時点t=0に測定された相対距離dx_0である。 【0050】 したがって、この方程式は、第1自車両1と前方の第2車両2との間の相対移動量を表す。第1自車両1と前方の第2車両2との間の衝突を可能な限りさらに遅く回避するため、方程式が、本発明にしたがって立てられる。 【0051】 つまり、許容最短距離dx_min、すなわちdx=dx_minが得られるときと同時に、相対速度dvを零にするため、自車両1の(負の値の)加速度a1が算出される。この場合の技術的思想は、相対速度dv=0のときに、第1自車両1が前方の第2車両2にもはや接近しない点にある。このことは、最短距離dx_minの達成時に実現されなければならない。 【0052】 したがって、これらの両条件dv=0及びdx=dx_minが、方程式3に算入されると、以下の値 【0053】 【数5】 が、第1目標加速度a1_d_1として得られる。 【0054】 この場合、当該値a1_d_1は、第1判定方法BV1にしたがって、すなわち当該判定方程式の判定方法にしたがって算出されるので、この値a1_d_1は、「第1」目標加速度と呼ばれ、且つ添字「_1」を有する。 【0055】 第1自車両1の必要な第1目標加速度a1_d_1を計算するため、応答時間t1後の相対速度が、dv_t1として測定される。この場合、上記方程式において、加速度a1及びa2が、時点t=0とt=t1との間で一定であると仮定する。したがって、 【0056】 【数6】 が得られる。 【0057】 さらに、当該第1目標加速度a1_d_1を算出するため、応答時間t1後の応答時間dx_t1が算出される。このため、同様に、加速度a1及びa2は一定であると仮定する。したがって、dx_t1が、時点t=0に対して距離センサ4によって測定された相対距離dxつまりdx_0を用いることで以下のように計算され得る。 【0058】 【数7】 したがって、自車両1の必要な第1目標加速度a1_d_1が、dv_t1及びdx_t1に基づいて以下のように計算され得る。 【0059】 【数8】 この方程式7は、必要な第1目標加速度a1_d_1を計算するために下記の例で使用される。この例では、先頭を走行する前方の第2車両2が、第2加速度a2=-3m/s^(2)で加速する。すなわち、当該前方の第2車両2が、第2初速度v2=60km/hから減速する。第1自車両1の初速度は、v1=90km/hである。最短距離dx_minが、1mに設定される。第1自車両1と前方の第2車両2との間の時点t=0に対する相対距離dx_t0が、距離センサ4によってdx_0=60mに決定される。この例では、方程式7に応答時間t1=1秒を算入することによって、a1_d_1=-4.3m/s^(2)の必要な第1目標加速度が算出される。これに対応する第1自車両1と前方の第2車両2との移動曲線が、図2に示されている。 【0060】 したがって、第1速度v1の速度曲線と第2速度v2の速度曲線とが、線形に低下し、零のラインに達する。放物曲線x1及びx2が、下方に向かって広がる放物線を描く。これらの距離曲線は、最初は、それらのそれぞれの最大値(頂点)S1又はS2まで上昇する。したがって、v1又はv2が、当該頂点のときに等しく0になる。つまり、当該放物線の右側は、本発明にしたがって物理的に起こり得ないと判定される。何故なら、当該放物線の右側のv1又はv2はそれぞれ、仮定の逆走に相当するからである。 【0061】 当該選択された例では、前方の第2車両2の停止、すなわちv2(t=5.5秒)=0が、t=5.5秒後に達成される。自車両1が、t=6.8秒に停止v1=0する。 【0062】 したがって、この例では、このグラフにおける禁止領域が、t=5.5秒から開始する、すなわち前方の第2車両2の仮定の逆走以降に開始する。 【0063】 図2のこの例では、2つの直線v1と直線v2とが交差するときのt=9.7秒に、当該交点がプロットされている。この交点では、条件であるdv=0及びdx=dx_minが満たされている。しかしながら、この仮定の交点は、既に禁止領域内に存在する。この場合、しかも、両車両速度は、v1=v2=-44.8km/hを成す、すなわち仮定の逆走を伴う負の車両速度である。したがって、当該結果が、本発明にしたがって不当であると判定される。 【0064】 しかしながら、最大値S1と最大値S2とを比較すると、すなわち位置x1(v1=0)=94.8mと位置x2(v2=0)=107.1mとを比較すると、この状況におけるa1_d_1に対するこの結果によって、衝突が回避されたであろうことが分かる。仮定された最小値dx_minより大きい107.1m-94.8m=12.3mを成す、停止の時点における両車両1及び2間の相対距離dxは、減速又はa1_d_1による加速が、非常に強かったことを示唆する、すなわち非常に大きい制動作用を示すことを示唆する。したがって、自動ブレーキ系が、非常に早期に起動されていた。 【0065】 この第1の方法又は第1のアプローチはの欠点は、特に、最初に、すなわちt=0に、第1自車両1と前方の第2車両との間の相対距離が長く、且つ当該前方の車両2の減速度が大きい状況で現われる。すなわち、当該状況では、前方の車両2の逆走時の後続する仮定の衝突を伴う当該前方の車両2の当該仮定の逆走が、より早期に起こることとなる。 図3には、図2と異なる状況が示されている。図2に対して、速度v2=60km/h、v1=90km/hが、時点t=0に一定に維持され、最短距離dx_min=1mが、一定に設定にされているものの、前方の車両2が、a2=-6m/s^(2)で加速する、すなわち、より大きく減速し、車両1及び2間の初期の相対距離dx_0は、dx_0=90mである。この場合には、-7.3m/s^(2)の第1目標加速度a1_d_1が、方程式7から算出される。当該移動曲線が、図3に示されている。 【0066】 図3のこの例では、当該2台の車両の最大値S1の位置と最大値S2の位置とを比較すると、すなわちx1(v1=0)=68.9mとx2(v2=0)=114mとを比較すると、これらの車両間の停止時の相対距離dxは、45.1mであることが分かる。図2の上記の例と同様に、前方の第2車両が、停止状態に達した後に、すなわち、t=11.8秒、v2=-195km/hのときに、条件であるdv=0とdx=dx_minを満たしている点が、同様に禁止領域内に存在する。 【0067】 したがって、本発明によれば、最短距離dx_minを同時に設定すると共に、制動によって相対速度dv=0(2台の車両の同じ速度)を達成するという制約条件を伴う、時間の二次関数の移動方程式によるこのアプローチは、当該状況に対して使用されないか又避けられる。 【0068】 図4には、別の例が示されている。この例では、前方の車両2が、停止状態に達する前に、条件であるdv=0とdx=dx_minが満たされる。当該前方の車両2は、v2=50km/hの最初の第2速度からa2=-2m/s^(2)で減速する。自車両1の最初の速度は、v1=90km/hである。dx_minの値が、1mに設定され、当該2台の車両1,2間の最初の相対距離dx_0は、dx_0=40mである。応答時間は、同様にt1=1秒である。この例に対しては、-5.2m/s^(2)の値a1_d_1が、方程式7から算出される。その結果としての移動量が、図4に示されている。当該前方の車両2が、t=7秒後に停止状態に達する。条件であるdv=0とdx=dx_minが、t=5.1秒に満たされる。この状況では、当該結果が、許可領域内に存在する時点を示す。つまり、方程式3及び4が、v1、v2>0を成す両車両1,2の実際の移動量を示す。したがって、方程式7に基づいて計算される値a1_d_1が、図4のこの状況において適切な値を示す。当該適切な値は、この状況を判定するために使用され得る。 【0069】 したがって、2台の車両1,2が、依然として走行する限り、すなわち停止状態に未だ達しない限り、方程式7が、適切な値を提供することが、本発明にしたがって提唱され得る。これに対して、これらの車両1,2のうちの一方の車両が、停止状態に達したときに、その結果は、不適切になる。 【0070】 したがって、当該図面のグラフでは、車両1,2のうちの一方の車両の放物線面の距離曲線x1又はx2が、その最大値S1又はS2に達したときに、つまりこれに応じて、複数の速度直線がそれぞれ、零点又は零軸と交差したときに、禁止領域が開始する。 【0071】 それ故に、本発明によれば、この第1判定方法の適合性を検査するため、適合性規準Zk1が提唱される。この目的のために、自車両1が条件であるdv=0とdx=dx_minまで必要とする自己制動時間t1_dvが、前方の第2車両2が停止状態までに制動するために必要とする目標の制動時間t2_stopと比較される。当該許容基準Zk1であるt1_dv≦t2_stopが満たされているならば、当該状況を図4に応じて判定することができることが保証されている。すなわち、前方の車両2が、停止状態に達する前に、自車両1が、dv=0とdx=dx_minに達する。したがって、これにより、結果が表示される、すなわち、当該移動方程式の判定方法(第1判定方法)が許容される。 【0072】 当該物体の制動時間t2は、その実際の第2速度v2と第2加速度a2とに基づいて計算される。 【0073】 【数9】 当該自車両1によって必要とされる自己制動時間t1_dvは、方程式7のa1_d_1に対する結果に基づき、且つ 【0074】 【数10】 として計算され得る。 【0075】 したがって、下記の適合性又は妥当性に対する判定基準が得られる。 【0076】 許容基準Zk1が満たされているならば、すなわち、t1_dv≦t2_stopならば、第1目標加速度a1_d_1が、妥当又は適切である。すなわち、方程式7を用いる当該判定方程式の判定方法(第1判定方法)BV1は適切である。 t1_dv>t2_stopならば、a1_d_1は、不適切である。 【0077】 上記の算出方法が適切な結果をもたらさない当該不適切な状況を適切に把握できるようにするため、及び、この状況において適切な第2目標加速度つまり必要な減速度a1_d_2を算出するため、下記の第2判定方法BV2又は判定手法が提唱される。 第2判定方法BV2: この第2判定方法BV2は、自車両1が前方の車両2の後方で停止するまでに要する距離を計算する。 【0078】 この距離内で停止するまでに必要である第2目標加速度a1_d_2が、この自車両1の実際の速度v1を初速度としてこの距離に基づいて計算される。この計算に寄与する全ての項が、この計算のために算入される。これらの項又は項区間は、以下の項又は項区間である。 ・自車両1と前方の車両2との間の現在の距離dx、 ・前方の車両2がその現在の第2加速度a2(減速度)で減速中にその現在の第2速度v2から停止するまで進む距離s2_stop、 ・自車両1がその応答時間t1中に進む走行距離s1_react、及び ・車両1及び車両2が停止した後に、この車両1とこの車両2との間で維持されなければならない最短距離dx_min。 【0079】 自車両1に対する最大の許容制動距離s1_brは、 【0080】 【数11】 このとき、 【0081】 【数12】 にしたがって計算される。 【0082】 自車両1の必要な第2目標加速度a1_d_2を計算するため、まず、応答時間t1後の自車両1の速度v1_t1が算出される。当該計算は、自車両1が、応答時間t1中に一定の加速度a1で走行するという仮定の下で実行される。 【0083】 【数13】 したがって、この方程式13は、応答時間t1後の自車両1の速度を示す。v1_t1及びs1_brに基づいて、自車両1の必要な加速度が、第2目標加速度a1_d_2として 【0084】 【数14】 によって算出される。 【0085】 したがって、この方程式14で算出された第2目標加速度a1_d_2は、第2判定方法VB2に必要な減速度を示し、以下の例で使用される。当該目標加速度又は減速度を計算するための上記2つのアプローチの直接の比較を可能にするため、この例の走行条件は、図2の例1と同じである。前方の車両2が、第2初速度v2=60km/hからa2=-3m/s^(2)で加速(制動)する。自車両1の初速度は、v1=90km/hである。dx_minに対する値が、1mに設定される。当該両車両1及び2間の最初の相対距離dx_0は、dx_0=60mである。応答時間t1は、1秒である。当該第2判定方法BV2では、-3.9m/s^(2)の必要な減速度(第2目標加速度)が、方程式14によって算出される。これに対して、移動方程式の判定方法BV1では、-4.3m/s^(2)の第1目標加速度の値が、方程式7によって算出される。この値は、上述したように不適切であると判断され得る。何故なら、当該方程式7の計算結果は、その計算結果の時点が第1自車両1と前方の第2車両との停止後に存在することを反映しているからである。当該停止では、第1自車両1と前方の第2車両2とが逆走する。図5には、これらの関係が、図2から既知の曲線つまりグラフによって、及びその他の曲線から示されている。 【0086】 したがって、第2判定方法BV2は、第1自車両1と前方の第2車両2とが停止したときに、当該状況のそれらの時点だけを考慮する。つまり、それらの制動段階は、第1自車両1と前方の車両2とに対して別々に考慮されない。当該前方の車両2の制動距離s2_stopが、s1_brを計算するために使用される。前方の車両2の逆走を不必要に考慮することが、この値を正確に計算することによって回避される。したがって、このアプローチでは、制動過程後の前方の第2車両2の停止が考慮される。このことは、図5の曲線x2によって示されている。この曲線2xは、この停止状態つまりこの停止位置を示す。この場合、図5では、前方の第2車両2が停止した後は、x2は一定であり、v2は零である。前方の車両2が停止した後に、自車両1が停止する状況における正確な目標加速度を計算することが、この方法によって可能になる。 【0087】 したがって、図5の曲線では、方程式14がこの状況における目標加速度に対する正確な値を表していることが分かる。何故なら、当該加速度14は、前方の車両2との衝突を回避し、第1自車両1が当該前方の車両2の後方で1mの間隔をあけて停止するために必要である加速度を表しているからである。全てのより強い制動は、前方の車両2との衝突が回避されるものの、当該停止を非常に早く起こさせうる、すなわちdx_min=1mの意図した値より大きい相対距離dxをあけて起こさせうる。したがって、先進緊急ブレーキシステム(AEBS)では、ブレーキ系を非常に早く起動させうる。 【0088】 上記の移動方程式の判定方法BV1の第2の例は、別の状況を示す。この状況では、第1目標加速度a1_d_1に対して非常に大きい値が、当該移動方程式の判定方法BV1によって算出される。この状況は、主に、第1自車両1と前方の第2車両2との間の大きい相対距離dx、及びこの前方の車両2の強い減速度a2を特徴とする。図3を参照して説明した例は、前方の車両2の第2初速度v2=60km/h、自車両1の初速度v1=90km/h、最短距離dx_min=1m、前方の車両2の第2加速度a2=-6m/s^(2)、及び初期の相対距離dx_0=90mを使用する。この例では、-7.3m/s^(2)の第1目標加速度a1_d_1が、方程式7によって算出される。これに対して、方程式14では、この状況において、-3.6m/s^(2)の第2目標加速度a1_d_2が算出される。当該両減速度の値にしたがって生じた移動量が、図6に示されている。 【0089】 当該前方の車両2が、t=2.8秒で停止状態に達する。上記の移動方程式の判定方法BV1にしたがうa1_d_1に対する値は、上述したように、非常に大きく、その停止時の距離は、45.1mになる。これに対して、第2判定方法BV2では、-3.6m/s^(2)の第2目標加速度値が算出される。この値は、この状況における前方の車両2との衝突を回避するために必要である最小減速度に相当する。図6は、自車両1がt=8秒に停止状態に達し、その相対距離は1mであることを示す。 【0090】 これに対して、移動方程式の判定方法BV1に関連して示された上記例は、当該移動方程式の判定方法BV1を用いて第1目標加速度a1_d_1に対する正確な結果を提供する。この場合、前方の車両2が、50km/hの初速度からa2=-2m/s^(2)で減速する。自車両1の初速度は、90km/hである。dx_minに対する値は、1mに設定され、自車両1と前方の第2車両2との間の相対初速度dx_0は、40mである。この例では、a1_d_1=-5.2m/s^(2)の第1目標加速度が、方程式7によって算出される。これに対して、方程式14では、この状況において、a1_d_2=-5.02m/s^(2)の結果が算出される。2つの減速度の値に対して生じた移動量が、図7に示されている。 【0091】 図7には、自車両1が、第2判定方法BV2にしたがって算出された第2目標加速度a1_d_2で減速すると、この自車両1はt=6秒に停止することが示されている。前方の車両2が、t=7秒後に停止しているときに、x1として示されている自車両1の走行距離が、前方の車両2の位置x2より1m小さい。しかし、自車両1が、第2目標加速度a1_d_2によって停止状態に達する前に、第2判定方法BV2によって算出された、自車両1と前方の第2車両2との間の相対距離dx_2が零未満になる。このことは、自車両1と前方の車両2とが、停止状態に達する前に、自車両1は、前方の車両2に衝突することを意味する。すなわち、この例における第2目標加速度a1_d_2に対する第2判定方法BV2の値は、正確でない。つまり、前方の車両2との衝突を回避するための減速度の値が、正確に計算されない。むしろ、この場合には、移動方程式の判定方法BV1、すなわち方程式7にしたがうa1_d_1を使用する必要がある。 【0092】 したがって、両車両1,2が停止したときに、第2判定方法BV2が、当該制動状況のそれらの停止時点だけを考慮する。しかしながら、この第2判定方法BV2は、制動過程中に生じ得る、両車両1,2の移動軌道の交点を評価しない、すなわち当該制動過程中に起こる衝突を評価しない。 【0093】 したがって、本発明によれば、両判定方法BV1,BV2が、制動基準を正確に計算するために使用される。 【0094】 前方の車両2が停止していて、自車両1が近づくという特殊な状況に対しては、両判定方法BV1,BV2は、同じ結果を算出する。何故なら、 -dv_t1=v1_t1, dx_t1-dx_min=s1_br a2=0 であるからである。 【0095】 したがって、その後に、上述の条件を考慮して、前方の車両2の加速度a2と、応答時間dv_t1の経過後の車両1と車両2との間の相対速度とに主に依存する様々な状況が、判定方法BV1及びBV2を使用するために区分される。 【0096】 衝突を回避するための自動制動操作の必要性を確認するため、以下の状況が確認される。 【0097】 第1基準では、応答時間t1後の車両1と車両2との間の距離dx_t1が、最短距離dx_min未満:dx_t1<dx_minであるかどうかが確認される。 【0098】 当該第1基準K1が満たされている場合、自動制動の必要性がある。何故なら、運転者が、自発的に減速を開始することができないからである。 【0099】 当該第1基準に該当しない場合、別の基準K2において、当該状況が、4つの状況:K2a、K2b、K2c、K2dに区分されて確認される。当該状況を区分するため、前方の車両2の加速度a2と、応答時間の経過後の相対速度dv_t1とがそれぞれ使用される。 【0100】 a2<0及びdv_t1<0であるときに、第2基準K2aが確認される。このとき、まず、当該確認は、移動方程式の判定方法BV1を用いて実行される。この判定方法BV1が該当しない場合、第2判定方法BV2が使用される。 【0101】 第2基準K2aが満たされている場合、すなわち、算出された目標加速度a1_d_1又はa_1_d2が、限界値を超える場合、自車両1の自動制動の必要性が生じる。何故なら、運転者の応答の経過後に、その運転者は、必要な大きさの減速度を自発的に設定することができないからである。 【0102】 a2<0及びdv_t1≧0であるときに、第3基準K2bが確認される。当該確認は、常に、第2判定方法BV2だけを用いて実行される。したがって、前方の車両2の減速度が大きい状況における移動方程式の判定方法BV1の欠点が回避される。第3基準K2bが満たされている場合、すなわち、算出された第2目標加速度a1_d_2が、限界値を超える場合、自車両1の自動制動の必要性が生じる。何故なら、運転者の応答の経過後に、その運転者は、必要な大きさの減速度を自発的に設定することができないからである。 【0103】 a2≧0及びdv_t1<0であるときに、第4基準K2cが確認される。当該確認は、常に、移動方程式の判定方法BV1だけを用いて実行される。何故なら、判定方法BV1だけが適切だからである。このとき、第2判定方法BV2は使用できない。何故なら、前方の車両2の加速度a2が正である場合、制動距離s2_stopが算出され得ないからである。前方の車両2の大きい減速度を特徴とする状況においては、移動方程式の判定方法BV1の上記欠点は、当該状況において問題とならない。何故なら、a2に対する正の値だけが考慮されるからである。この第4基準K2cが満たされている場合、すなわち、算出された第1目標加速度a1_d_1が、限界値を超える場合、自車両1の自動制動の必要性が生じる。何故なら、運転者の応答の経過後に、その運転者は、必要な大きさの減速度を自発的に設定することができないからである。 【0104】 a2≧0及びdv_t1≧0である場合、第5基準K2dが確認される。このとき、前方の車両2は、自車両1から離れるように加速して走行する。したがって、この状況は、全体として危険でない。すなわち、自動緊急ブレーキを起動させる必要性が全くない。 【0105】 この場合、上記用語「第1基準、...第5基準」は、順番又は重要度を意味しない。 【0106】 すなわち、制御アルゴリズムが、これらの基準K1、K2a?K2dにしたがって構成され得る。この制御アルゴリズムによれば、まず、第1基準K1が確認され、次いで、状況が、基準K2a、K2b、K2c及びK2dに区分される。次いで、各基準ごとに、説明したように、目標加速度(必要な減速度)が、方程式7にしたがってa1_d_1として算出される、又は、方程式14にしたがってa1_d_2として算出される。 【符号の説明】 【0107】 1自車両 2 前方物体/車両 3 車道 4 距離センサ 5 ドライビングダイナミクス制御システム 6 制御装置 7 速度センサ 8 車両ブレーキ 9 警報表示部 S1 X1の最大値 S2 X2の最大値 x1 第1車両の位置 x2 第2車両の位置 x1_0 時点t=0に対する第1車両の位置 x2_0 時点t=0に対する第2車両の位置 v1 第1車両の速度 v1_t1 応答時間t1後の第1車両の速度 v2 第2車両の速度 a1 第1車両の縦加速度 a2 第2車両の縦加速度 a1_d_1 第1目標加速度 a1_d_2 第2目標加速度 dx 相対距離 dx_min 最短距離 dx_0 時点t=0に対する初期の相対距離 dx_t1 応答時間t1後の相対距離 dx_2 BV2にしたがう相対距離 s1_br 第1車両の許容制動距離 s1_react 第1車両のt1中の走行距離 s2_stop 第2車両の停止までの制動距離 dv 相対速度 dv_t1 応答時間t1後の相対速度 M1 相対距離測定信号 M2 速度測定信号 M3 制動制御信号 Si1 警報表示信号 t 時間 t1 応答時間 t1_dv 第1車両の絶対制動時間(dv=0;dx=dx_min) t2_stop v2=0までの第2車両/物体の制動時間 BV1 判定方法1 BV2 判定方法2 BV0 先行する判定方法 K1 第1基準 K2 別の基準 K2a 第2基準 K2b 第3基準 K2c 第4基準 K2d 第5基準 Zk1 許容基準 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 第1自車両(1)の緊急ブレーキ状況を判定するための方法であって、前記自車両(1)は、少なくとも以下の実際(t=0)の状態変数: 前記自車両(1)の実際(t=0)の絶対走行速度、v1と、 前記自車両(1)の実際(t=0)の絶対縦加速度、a1と、 前方の物体(2)に対する前記自車両(1)の実際(t=0)の相対距離、dx_0と、 前記前方の物体(2)の実際(t=0)の第2速度、v2と実際(t=0)の第2加速度、a2とを算出し、前記実際(t=0)の相対距離(dx_0)は以下の式で表され、 【数1】 ここで、 x1_0は前記自車両(1)の実際(t=0)の位置、 x2_0は前記前方の物体(2)の実際(t=0)の位置、 dxは時刻tにおける前記前方の物体(2)に対する前記自車両(1)の相対距離、 緊急ブレーキ状況が存在するかどうかが、判定方法(BV1,BV2)を用いて実際の前記状態変数(v1,a1、dx_0,v2,a2)から判定される当該方法において、 緊急ブレーキ状況が存在するかどうかを判定するため、少なくとも2つの異なる判定方法(BV1,BV2)が、前記状態変数(v1,a1、dx_0,v2,a2)に応じて使用され、 前記少なくとも2つの異なる判定方法(BV1,BV2)のうちのどの判定方法が使用されるかが、前記状態変数(v1,a1、dx_0,v2,a2)に応じて決定されること、 前記異なる判定方法(BV1,BV2)は、少なくとも以下の判定方法: 前記自車両(1)と前記前方の物体(2)との移動方程式系が算出される移動方程式の判定方法(BV1)と、前記自車両(1)の許容制動距離(s1_br)が算出される制動距離の判定方法(BV2)とを有し、 複数の前記判定方法(BV1,BV2)によってそれぞれ1つの目標加速度(a1_d_1,a2_d_2)が算出され、 緊急ブレーキ状況が判定された場合は、自動的に、急ブレーキ過程が開始され、及び/又は、警報表示信号(Si1)が出力されるようにし、その自動緊急ブレーキの起動後の車両内のブレーキ系の応答時間(t1)及び/又は警報表示部(9)による前記警報表示信号(Si1)の出力後の運転者の応答時間(t1)が、複数の前記判定方法(BV1,BV2)のうちのどの判定方法を使用する必要があるかの決定、及び/又は個々の判定方法にさらに、算入され、 前記第1判定方法(BV1)では、前記自車両(1)の移動方程式と前記前方の物体(2)の移動方程式とが、時間の二次関数として立てられ、且つ: 実際(t=0)の前記相対距離(dx_0)、前記自車両(1)の実際(t=0)の前記絶対縦加速度(a1)及び前記前方の物体(2)の実際(t=0)の第2加速度(a2)並びに前記自車両(1)の実際(t=0)の絶対走行速度(v1)及び前記前方の物体(2)の実際(t=0)の第2速度(v2)を有し、 前記第1判定方法(BV1)では、 t1が前記応答時間であり、dvが実際(t=0)の前記自車両(1)に対する前記前方の物体(2)の相対速度(v2-v1)であり、dv_t1が、前記応答時間(t1)後の前記自車両(1)に対する前記前方の物体(2)の相対速度であり、dx_t1が、前記応答時間(t1)後の前記相対距離であり、dx_minが、前方の物体(2)に対する前記自車両(1)の相対距離として許容できる最短距離であるとして、時刻tにおける前記前方の物体(2)に対する前記自車両(1)の相対距離(dx)に関する方程式(方程式3)に基づいて、前記最短距離(dx_min)が得られるときに前記自車両(1)に対する前記前方の物体(2)の相対速度が零になる条件から、第1目標加速度(a1_d_1)が、方程式 【数2】 を使用して算出され、 前記第2判定方法(BV2)では、前記応答時間(t1)後に前記自車両(1)が制動を起動する際にどのくらいの制動距離(s1_br)が残されているかという、絶対走行速度(v1)と第2速度(v2)と絶対縦加速度(a1)と第2加速度(a2)との実際(t=0)の値及び実際(t=0)の相対距離(dx_0)並びに一定の最短距離(dx_min)に基づく計算から、第2目標加速度(a1_d_2)が算出され、 前記第2目標加速度(a1_d_2)は、前記応答時間(t1)後の前記自車両(1)の、実際(t=0)の絶対走行速度(v1)と実際(t=0)の絶対縦加速度(a1)とから算出された絶対走行速度(v1_t1)と、前記応答時間(t1)後の制動の起動時の前記自車両(1)の許容制動距離(s1_br)とを有する方程式 【数3】 に基づいて算出され、 ここで、 v1_t1は応答時間t1後の絶対走行速度であり、 s1_brは許容制動距離であり、応答時間をt1として、 【数4】 によって算出され、 前記第1判定方法(BV1)が適切であり且つ使用されるかどうか、又は、少なくとも前記第2判定方法(BV2)が適切であり且つ使用されるかどうかが、1つの許容基準(Zk1)に基づいて決定され、 当該許容基準(Zk1)では、 前記第1判定方法(BV1)で算出された前記第1目標加速度a1_d_1を用いて、 前記自車両(1)が最短距離(dx_min)に達し、且つ前記前方の物体(2)と同じ速度(dv=0)に達するまでに要される絶対制動時間(t1_dv)が以下の方程式 【数5】 ここで、t1_dvは絶対制動時間 に基づいて算出され、 他方、停止(v2(t2_stop)=0)までに制動のために要する前記前方の物体(2)の物体制動時間(t2_stop)が以下の方程式 【数6】 ここで、t2_stopは物体制動時間 に基づいて算出され、 前記許容基準(Zk1)が満たされている場合、すなわち、前記絶対制動時間(t1_dv)が前記物体制動時間(t2_stop)より短いか又は当該物体制動時間(t2_stop)に等しい場合は、前記第1判定方法(BV1)において算出された前記第1目標加速度(a1_d_1)が、適正であり且つ使用され、 前記許容基準(Zk1)が満たされていない場合、すなわち、前記絶対制動時間(t1_dv)が、前記物体制動時間(t2_stop)より長い場合は、少なくとも前記第2判定方法(BV2)において算出された前記第2目標加速度(a1_d_2)が、適切であり且つ使用され、 前記第1判定方法(BV1)において算出された前記第1目標加速度(a1_d_1)が適切であり使用される場合は、前記第1目標加速度(a1_d_1)が限界直を超えるときに前記自車両(1)の自動制御の必要性が生じると判定し、 前記第2判定方法(BV2)において算出された前記第2目標加速度(a1_d_2)が適切であり使用される場合は、前記第2目標加速度(a1_d_2)が限界値を超えるときに前記自車両(1)の自動制御の必要性が生じると判定することを特徴とする方法。 【請求項2】 (削除) 【請求項3】 (削除) 【請求項4】 (削除) 【請求項5】 (削除) 【請求項6】 第1自車両(1)の緊急ブレーキ状況を判定するための方法であって、前記自車両(1)は、少なくとも以下の実際(t=0)の状態変数: 前記自車両(1)の実際(t=0)の絶対走行速度、v1と、 前記自車両(1)の実際(t=0)の絶対縦加速度、a1と、 前方の物体(2)に対する前記自車両(1)の実際(t=0)の相対距離、dx_0と、 前記前方の物体(2)の実際(t=0)の第2速度、v2と実際(t=0)の第2加速度、a2とを算出し、前記実際(t=0)の相対距離(dx_0)は以下の式で表され、 【数7】 ここで、 x1_0は前記自車両(1)の実際(t=0)の位置、 x2_0は前記前方の物体(2)の実際(t=0)の位置、 dxは時刻tにおける前記前方の物体(2)に対する前記自車両(1)の相対距離、 緊急ブレーキ状況が存在するかどうかが、判定方法(BV1,BV2)を用いて実際の前記状態変数(v1,a1、dx_0,v2,a2)から判定される当該方法において、 緊急ブレーキ状況が存在するかどうかを判定するため、少なくとも2つの異なる判定方法(BV1,BV2)が、前記状態変数(v1,a1、dx_0,v2,a2)に応じて使用され、 前記少なくとも2つの異なる判定方法(BV1,BV2)のうちのどの判定方法が使用されるかが、前記状態変数(v1,a1、dx_0,v2,a2)に応じて決定されること、 前記異なる判定方法(BV1,BV2)は、少なくとも以下の判定方法: 前記自車両(1)と前記前方の物体(2)との移動方程式系が算出される移動方程式の判定方法(BV1)と、前記自車両(1)の許容制動距離(s1_br)が算出される制動距離の判定方法(BV2)とを有し、 許容制動距離、s1_brは、 【数8】 によって算出され、 ここで、dx_minが、前方の物体(2)に対する前記自車両(1)の相対距離として許容できる最短距離であり、 自動緊急ブレーキの起動後の車両内のブレーキ系の応答時間、t1及び/又は警報表示部(9)による前記警報表示信号(Si1)の出力後の運転者の応答時間、t1が、複数の前記判定方法(BV1,BV2)のうちのどの判定方法を使用する必要があるかの決定、及び/又は個々の判定方法にさらに、算入され、 第1ステップでは、まず、最初の判定方法(BV0)が使用され、この判定方法(BV0)では、前記応答時間(t1)後の前記前方の物体(2)に対する前記自車両(1)の相対距離(dx_t1)が、維持すべき最短距離(dx_min)より短いことにしたがう第1基準(K1)が満たされているかどうかが評価され、 前記第1基準(K1)を満たすときは、緊急ブレーキ状況と判定し、前記第1基準(K1)を満たさないときは、その後に、その他の前記複数の判定方法(BV1,BV2)のうちのどの判定方法を使用する必要があるかが決定される方法。 【請求項7】 前記第1基準(K1)を満たさないときは、その後に、前記前方の物体(2)の第2加速度(a2)と、前記自車両(1)に対する前記前方の物体(2)の前記応答時間(t1)後の相対速度(dv_t1)とに基づいて、判定が実行され、 前記応答時間(t1)後の前記相対速度(dv_t1)が、前記応答時間(t1)における第2速度-絶対走行速度の差として算定されていることを特徴とする請求項6に記載の方法。 【請求項8】 前記第1基準(K1)を満たさないときは、適切な判定方法(BV1,BV2)が,別の基準(K2a,K2b,K2c,K2d)に応じて決定され、 前記別の基準(K2a,K2b,K2c,K2d)は、以下の複数の基準: ・第2基準(K2a)と、 ・第3基準(K2b)と、 ・第4基準(K2c)と、 ・第5基準(K2d)とのうちの1つの基準又は複数の基準から成り、 前記前方の物体(2)の第2加速度(a2)が、負であり、且つ、前記応答時間(t1)後の相対速度(dv_t1)が、負であるときに、前記第2基準(K2a)は満たされていて、 前記第2基準(K2a)を満たすときは、前記許容基準(Zk1)が、前記第1判定方法(BV1)に対して判定され、この前記許容基準(Zk1)を満たすときは、この第1判定方法(BV1)が実行され、 前記許容基準(Zk1)を満たさないときは、前記第2判定方法(BV2)が実行され、 前記第2加速度(a2)が、負であり、且つ、前記応答時間(t1)後の相対速度(dv_t1)が、零以上であるときに、前記第3基準(K2b)は満たされていて、 前記第3基準(K2b)を満たすときは、前記第2判定方法(BV2)が使用され、 前記第2加速度(a2)が、零以上であり、且つ、前記応答時間(t1)後の相対速度(dv_t1)が、負であるときに、前記第4基準(K2c)は満たされていて、 前記第4基準(K2c)を満たすときは、前記第1判定方法(BV1)が使用され、 前記第2加速度(a2)が、零以上であり、且つ、前記応答時間(t1)後の相対速度(dv_t1)が、零以上であるときに、前記第5基準(K2d)は満たされていて、 前記第5基準(K2d)を満たすときは、緊急ブレーキ状況の判定は実行されないことを特徴とする請求項6又は7に記載の方法。 【請求項9】 (削除) 【請求項10】 (削除) 【請求項11】 (削除) 【請求項12】 (削除) 【請求項13】 (削除) 【請求項14】 請求項1、6?8のいずれか1項に記載の方法を実行するための、自車両(1)のドライビングダイナミクス制御システム(5)用の制御装置(6)において、 前記制御装置(6)は、実際(t=0)の状態変数(v1,a1,dx_0,v2,a2)を算出するために、前方を走行する前方の物体(2)に対する相対距離(dx_0)を算出するための距離センサ(4)の相対距離測定信号(M1)と、前記自車両(1)の絶対速度(v1)を算出するための速度センサ(7)の速度測定信号(M2)とを受け取り、 前記制御装置(6)は、さらに前記状態変数として、前記自車両(1)の絶対加速度(a1)と、前記前方の物体(2)の第2速度(v2)と、前記前方の物体(2)の第2加速度(a2)とを算出又は測定し、前記応答時間(t1)と前記相対距離に対して維持すべき最短距離(dx_min)とに関する、内部又は外部に記憶されたデータを受け取り、 前記制御装置(6)は、緊急ブレーキ状況が存在するかどうかを1つの判定方法(BV1,BV2)を用いて前記状態変数(v1,a1,dx_0,v2,a2)から判定し、 前記制御装置(6)は、緊急ブレーキ状況が存在するかどうかを判定するために、前記状態変数(v1,a1,dx_0,v2,a2)に応じて、異なる判定方法(BV1,BV2)を使用し、 前記制御装置(6)は、複数の前記判定方法(BV1,BV2)のうちのどの判定方法を使用する必要があるかを前記状態変数(v1,a1,dx_0,v2,a2)に応じて決定し、 前記異なる判定方法(BV1,BV2)は、少なくとも以下の判定方法: 前記自車両(1)と前記前方の車両(2)との移動方程式系を算出するための移動方程式の判定方法(BV1)と、前記自車両(1)の許容制動距離(s1_br)を算出するための制動距離の判定方法(BV2)とを有し、 前記制御装置(6)は、当該算出に応じて、制動制御信号(M3)を車両ブレーキ(8)に出力し、及び/又は警報表示信号(Si1)を運転者に出力する当該制御装置。 【請求項15】 特に請求項1、6?8のいずれか1項に記載の方法を実行するための、ドライビングダイナミクス制御システム(5)、特にブレーキ制御システム又は縦列走行システムにおいて、 前記ドライビングダイナミクス制御システム(5)は、請求項14に記載の制御装置(6)、距離センサ(4)、速度センサ(7)及び車両ブレーキ(8)を有する当該ドライビングダイナミクス制御システム(5)。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2019-05-08 |
出願番号 | 特願2014-555968(P2014-555968) |
審決分類 |
P
1
651・
852-
YAA
(B60T)
P 1 651・ 851- YAA (B60T) P 1 651・ 537- YAA (B60T) P 1 651・ 121- YAA (B60T) P 1 651・ 853- YAA (B60T) P 1 651・ 854- YAA (B60T) P 1 651・ 113- YAA (B60T) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 村上 聡 |
特許庁審判長 |
大町 真義 |
特許庁審判官 |
尾崎 和寛 内田 博之 |
登録日 | 2017-08-25 |
登録番号 | 特許第6195578号(P6195578) |
権利者 | ヴアブコ・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング |
発明の名称 | 車両の緊急ブレーキ状況を判定するための方法 |
代理人 | 鍛冶澤 實 |
代理人 | アインゼル・フェリックス=ラインハルト |
代理人 | 篠原 淳司 |
代理人 | 中村 真介 |
代理人 | 鍛冶澤 實 |
代理人 | 篠原 淳司 |
代理人 | 中村 真介 |
代理人 | 久野 琢也 |
代理人 | 江崎 光史 |
代理人 | 江崎 光史 |