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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1352576
審判番号 不服2018-11586  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-08-28 
確定日 2019-06-13 
事件の表示 特願2013-124132号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成26年12月25日出願公開、特開2014-239839号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯の概要
本願は、平成25年6月12日の出願であって、平成29年1月31日付けで拒絶の理由が通知され、同年4月13日に意見書及び手続補正書が提出され、同年9月27日付けで最後の拒絶の理由が通知され、同年12月1日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成30年5月21日付けで、平成29年12月1日付け手続補正が却下されるとともに拒絶査定がなされ、それに対して、平成30年8月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成30年8月28日にされた手続補正についての補正却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年8月28日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
(1)補正の内容
本件補正により、平成29年4月13日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1における
「遊技中に第1作動契機が発生すると、所定の第1作動時間中において第1入賞口に遊技球が入球困難な閉鎖状態から前記第1入賞口に遊技球が入球容易な開放状態に少なくとも1回変化する第1開放動作を実行する第1電動役物と、
遊技中に前記第1作動契機とは別の第2作動契機が発生すると、所定の第2作動時間中において前記第1入賞口とは別の第2入賞口に遊技球が入球困難な閉鎖状態から前記第2入賞口に遊技球が入球容易な開放状態に所定の回数変化する第2開放動作を実行する第2電動役物と、
前記第1入賞口及び前記第2入賞口に遊技球が不正に入球したか否かを所定の判定基準に基づいて判定する不正入球判定手段と、
前記不正入球判定手段により不正な入球があったと判定がなされた場合、不正な入球に対する報知処理を実行する報知処理実行手段と、
前記第1電動役物による前記第1開放動作の実行、及び前記第2電動役物による前記第2開放動作の実行がそれぞれ無い状況に応じて前記不正入球判定手段による前記第1入賞口及び前記第2入賞口に対する前記判定基準を個別に設定する状態別不正入球判定基準設定手段とを備え、
前記報知処理実行手段は、
前記第1開放動作の実行が無い状況で前記第1入賞口に所定個数以上の遊技球が入球した場合、又は、前記第2開放動作の実行が無い状況で前記第2入賞口に所定個数以上の遊技球が入球した場合、前記不正入球判定手段により不正な入球があったと判定されたことに基づき、警告音の出力又はLEDランプによる不正な入球を報知する演出のうち少なくとも一方を所定の終了条件が満たされるまで前記報知処理として実行し、
前記不正入球判定手段は、
前記第1入賞口に対する前記報知処理が実行中であっても、前記第1入賞口とは異なる個別の前記判定基準に基づいて前記第2入賞口に対する不正な入球の判定を行うことを特徴とする遊技機。」は、
審判請求時に提出された手続補正書(平成30年8月28日付け)における
「遊技中に第1作動契機が発生すると、所定の第1作動時間中において第1入賞口に遊技球が入球困難な閉鎖状態から前記第1入賞口に遊技球が入球容易な開放状態に少なくとも1回変化する第1開放動作を実行する第1電動役物と、
遊技中に前記第1作動契機とは別の第2作動契機が発生すると、所定の第2作動時間中において前記第1入賞口とは別の第2入賞口に遊技球が入球困難な閉鎖状態から前記第2入賞口に遊技球が入球容易な開放状態に所定の回数変化する第2開放動作を実行する第2電動役物と、
前記第1入賞口及び前記第2入賞口に遊技球が不正に入球したか否かを前記第1入賞口については個別の第1の判定基準に基づいて判定し、前記第2入賞口については前記第1の判定基準とは異なる個別の第2の判定基準に基づいて判定する不正入球判定手段と、
前記不正入球判定手段により不正な入球があったと判定されると、不正な入球に対する報知として警告音を出力する第1報知処理を実行するか、もしくは遊技盤の外側の遊技機本体に配置されたLEDランプの第1の態様による点灯制御及び遊技盤に配置されたLEDランプの前記第1の態様と異なる第2の態様による点灯制御の少なくとも一方で第2報知処理を実行する報知処理実行手段と、
前記第1電動役物による前記第1開放動作の実行、及び前記第2電動役物による前記第2開放動作の実行がそれぞれ無い状況に応じて前記不正入球判定手段による前記第1入賞口に対する前記第1の判定基準及び前記第2入賞口に対する前記第2の判定基準を個別に設定する状態別不正入球判定基準設定手段とを備え、
前記報知処理実行手段は、
前記第1開放動作の実行が無い状況で前記第1入賞口に所定個数以上の遊技球が入球した場合、又は、前記第2開放動作の実行が無い状況で前記第2入賞口に所定個数以上の遊技球が入球した場合、前記不正入球判定手段により不正な入球があったと判定されたことに基づき、警告音を出力する第1報知手段又はLEDランプを用いる第2報知手段による不正な入球を報知する演出のうち少なくとも一方を所定の終了条件が満たされるまで前記第1報知処理又は前記第2報知処理として実行し、
前記不正入球判定手段は、
前記第1入賞口に対する前記第1報知処理及び前記第2報知処理の少なくとも一方が実行中であっても、前記第1入賞口とは異なる個別の前記第2の判定基準に基づいて前記第2入賞口に対する不正な入球の判定を行う一方で、不正な入球があったとの判定に基づく前記第1報知処理及び前記第2報知処理を終了させる前記終了条件については、前記第1入賞口と前記第2入賞口とで共通であることを特徴とする遊技機。」に補正された(下線は、補正箇所を明示するために当審にて付した。)。

(2)補正の適否
本件補正は、補正前の請求項1について、発明を特定するために必要な事項である「第1入賞口及び第2入賞口に遊技球が不正に入球したか否かを」を判定する「不正入球判定手段」に関して、「所定の判定基準に基づいて判定する」とあったものを「前記第1入賞口については個別の第1の判定基準に基づいて判定し、前記第2入賞口については前記第1の判定基準とは異なる個別の第2の判定基準に基づいて判定する」と限定し、
発明を特定するために必要な事項である「報知処理実行手段」に関して、「前記不正入球判定手段により不正な入球があったと判定がなされた場合、不正な入球に対する報知処理を実行する」とあったものを「前記不正入球判定手段により不正な入球があったと判定されると、不正な入球に対する報知として警告音を出力する第1報知処理を実行するか、もしくは遊技盤の外側の遊技機本体に配置されたLEDランプの第1の態様による点灯制御及び遊技盤に配置されたLEDランプの前記第1の態様と異なる第2の態様による点灯制御の少なくとも一方で第2報知処理を実行する」と限定し、
発明を特定するために必要な事項である「状態別不正入球判定基準設定手段」が「個別に設定する」「判定基準」に関して、「前記第1入賞口及び前記第2入賞口に対する前記判定基準」とあったものを「前記第1入賞口に対する前記第1の判定基準及び前記第2入賞口に対する前記第2の判定基準」と限定し、
発明を特定するために必要な事項である「報知処理実行手段」に関して、さらに、「警告音の出力又はLEDランプによる不正な入球を報知する演出のうち少なくとも一方を所定の終了条件が満たされるまで前記報知処理として実行し」とあったものを「警告音を出力する第1報知手段又はLEDランプを用いる第2報知手段による不正な入球を報知する演出のうち少なくとも一方を所定の終了条件が満たされるまで前記第1報知処理又は前記第2報知処理として実行し」と限定し、
発明を特定するために必要な事項である「不正入球判定手段」に関して、さらに、「前記第1入賞口に対する前記報知処理が実行中であっても、前記第1入賞口とは異なる個別の前記判定基準に基づいて前記第2入賞口に対する不正な入球の判定を行うこと」とあったものを「前記第1入賞口に対する前記第1報知処理及び前記第2報知処理の少なくとも一方が実行中であっても、前記第1入賞口とは異なる個別の前記第2の判定基準に基づいて前記第2入賞口に対する不正な入球の判定を行う一方で、不正な入球があったとの判定に基づく前記第1報知処理及び前記第2報知処理を終了させる前記終了条件については、前記第1入賞口と前記第2入賞口とで共通であること」と限定するものである。
そして、補正後の請求項1に係る発明は、補正前の請求項1に係る発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。
また、本件補正のうち、「不正入球判定手段」及び「状態別不正入球判定基準設定手段」の発明特定事項を限定する補正は、願書に最初に添付した明細書の【0182】?【0190】、【0202】?【0211】、又は図面の【図13】、【図15】等の記載からみて新規事項を追加するものではなく、また、「報知処理実行手段」の発明特定事項を限定する補正は、願書に最初に添付した明細書の【0457】?【0458】、又は図面の【図1】、【図3】、【図5】、【図38】等の記載からみて新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。

2 独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか、すなわち、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するかについて、以下に検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、次のとおりのものであると認める(記号A?Gは、分説するため審決にて付した。)。
「A 遊技中に第1作動契機が発生すると、所定の第1作動時間中において第1入賞口に遊技球が入球困難な閉鎖状態から前記第1入賞口に遊技球が入球容易な開放状態に少なくとも1回変化する第1開放動作を実行する第1電動役物と、
B 遊技中に前記第1作動契機とは別の第2作動契機が発生すると、所定の第2作動時間中において前記第1入賞口とは別の第2入賞口に遊技球が入球困難な閉鎖状態から前記第2入賞口に遊技球が入球容易な開放状態に所定の回数変化する第2開放動作を実行する第2電動役物と、
C 前記第1入賞口及び前記第2入賞口に遊技球が不正に入球したか否かを前記第1入賞口については個別の第1の判定基準に基づいて判定し、前記第2入賞口については前記第1の判定基準とは異なる個別の第2の判定基準に基づいて判定する不正入球判定手段と、
D 前記不正入球判定手段により不正な入球があったと判定されると、不正な入球に対する報知として警告音を出力する第1報知処理を実行するか、もしくは遊技盤の外側の遊技機本体に配置されたLEDランプの第1の態様による点灯制御及び遊技盤に配置されたLEDランプの前記第1の態様と異なる第2の態様による点灯制御の少なくとも一方で第2報知処理を実行する報知処理実行手段と、
E 前記第1電動役物による前記第1開放動作の実行、及び前記第2電動役物による前記第2開放動作の実行がそれぞれ無い状況に応じて前記不正入球判定手段による前記第1入賞口に対する前記第1の判定基準及び前記第2入賞口に対する前記第2の判定基準を個別に設定する状態別不正入球判定基準設定手段とを備え、
F 前記報知処理実行手段は、
前記第1開放動作の実行が無い状況で前記第1入賞口に所定個数以上の遊技球が入球した場合、又は、前記第2開放動作の実行が無い状況で前記第2入賞口に所定個数以上の遊技球が入球した場合、前記不正入球判定手段により不正な入球があったと判定されたことに基づき、警告音を出力する第1報知手段又はLEDランプを用いる第2報知手段による不正な入球を報知する演出のうち少なくとも一方を所定の終了条件が満たされるまで前記第1報知処理又は前記第2報知処理として実行し、
G 前記不正入球判定手段は、
前記第1入賞口に対する前記第1報知処理及び前記第2報知処理の少なくとも一方が実行中であっても、前記第1入賞口とは異なる個別の前記第2の判定基準に基づいて前記第2入賞口に対する不正な入球の判定を行う一方で、不正な入球があったとの判定に基づく前記第1報知処理及び前記第2報知処理を終了させる前記終了条件については、前記第1入賞口と前記第2入賞口とで共通であることを特徴とする遊技機。」

(2)刊行物1
原査定の拒絶理由において引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2009-89803号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同様。)。

ア 記載事項
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技球を用いて所定の遊技を行うことが可能であり、所定の移行条件の成立にもとづいて遊技者にとって有利な特定遊技状態に移行させるパチンコ遊技機やスロット機等の遊技機に関する。」

(イ)「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のような特許文献1に記載された遊技機では、大当り遊技状態に移行されているときも、大当り遊技状態に移行されていないときも、同一処理である大入賞口の異常判定処理を実行する。ここで、大当り遊技状態に移行されているときには、大入賞口の各開放(各ラウンド)で所定個(例えば10個)以上の遊技球が入賞してしまうことがあるのに対し、大当り遊技状態に移行されていないときには、大入賞口への入賞が本来生じるはずがない。このため、大当り遊技状態に移行されていないときよりも大当り遊技状態に移行されているときの方が異常入賞の判定における入賞数を多めに設定する必要がある。しかし、特許文献1に記載された遊技機では、同一処理で大入賞口の異常判定を行うように構成されているので、異常入賞を検出できない事態が生じるおそれがある。
【0009】
そこで、本発明は、いずれの遊技状態においても異常入賞を的確に検出し判定することができる遊技機を提供することを目的とする。
【0010】
本発明による遊技機は、遊技球を用いて所定の遊技を行うことが可能であり、所定の移行条件の成立(例えば、ステップS62の大当り判定で「大当り」または「小当り」と決定されたこと)にもとづいて遊技者にとって有利な状態(例えば、大当り遊技状態または小当り遊技状態(始動動作状態))に移行させる遊技機であって、第1移行条件の成立(例えば、ステップS62の大当り判定で「大当り」と決定されたこと)にもとづいて遊技球が入賞しない閉鎖状態と遊技球が入賞可能な開放状態とに変化可能な第1可変入賞球装置(例えば、第1大入賞口すなわち下大入賞口)と、第2移行条件の成立(例えば、ステップS62の大当り判定で「小当り」と決定されたこと)にもとづいて遊技球が入賞しない閉鎖状態と遊技球が入賞可能な開放状態とに変化可能な第2可変入賞球装置(例えば、第2大入賞口すなわち可変入賞球装置20)と、第1可変入賞球装置または第2可変入賞球装置が開放動作を実行するとき(例えば、小当り遊技状態において第2大入賞口が開放動作を行うとき、第1大当り遊技状態において第1大入賞口が開放動作を行うとき、または第2大当り遊技状態において第2大入賞口が開放動作を行うとき)に、当該開放動作を実行する第1可変入賞球装置または第2可変入賞球装置への異常入賞を報知するために用いられる閾値(例えば、小当り遊技状態のときは5個または10個を示す値、16ラウンドの第1大当り遊技状態のときは192個を示す値、3ラウンドの第2大当り遊技状態のときは36個を示す値、7ラウンドの第2大当り遊技状態のときは84個を示す値、11ラウンドの第2大当り遊技状態のときは132個を示す値)を記憶する閾値記憶手段(例えば、遊技制御用マイクロコンピュータ560におけるステップS412,S474を実行する部分)と、第1可変入賞球装置に入賞した遊技球を検出して第1検出信号を出力する第1検出手段(例えば、カウントスイッチ23)と、第2可変入賞球装置に入賞した遊技球を検出して第2検出信号を出力する第2検出手段(例えば、役物入賞スイッチ71a?73a)と、第1可変入賞球装置の開放動作の実行中に第1検出手段から第1検出信号が出力されたことにもとづいて第1可変入賞球装置への入賞数を計測する第1入賞数計測手段(例えば、遊技制御用マイクロコンピュータ560におけるステップS489B,S514,S533を実行する部分)と、第2可変入賞球装置の開放動作の実行中に第2検出手段から第2検出信号が出力されたことにもとづいて第2可変入賞球装置への入賞数を計測する第2入賞数計測手段(例えば、遊技制御用マイクロコンピュータ560におけるステップS490を実行する部分)と、第1可変入賞球装置および第2可変入賞球装置のいずれも開放動作を実行していない通常遊技状態(例えば、大当り遊技状態・小当り遊技状態以外の遊状態;具体的には特別図柄通常処理におけるステップS300?S303の処理が実行されている状態)において第1検出手段または第2検出手段から第1検出信号または第2検出信号が出力されたことにもとづいて異常入賞と判定する通常異常入賞判定手段(例えば、遊技制御用マイクロコンピュータ560において、ステップS585のNのときにステップS586のYとなったことにもとづいて第1大入賞口または第2大入賞口への異常入賞が発生したと判定する処理(ステップS588)を実行する部分)と、第1可変入賞球装置の開放動作の実行中に第1入賞数計測手段により計測された入賞数が第1可変入賞球装置への異常入賞を報知するために用いられる第1閾値を超えたこと、または第2可変入賞球装置の開放動作の実行中に第2入賞数計測手段により計測された入賞数が第2可変入賞球装置への異常入賞を報知するために用いられる第2閾値を超えたことにもとづいて異常入賞と判定する特定異常入賞判定手段(例えば、遊技制御用マイクロコンピュータ560において、ステップS585のYのときに異常入賞判定カウンタの値が0であるか否か判定する処理(ステップS588)を実行する部分)と、通常異常入賞判定手段または特定異常入賞判定手段により異常入賞と判定された場合(例えばステップS588のY)に異常報知を実行する異常報知実行手段(例えば、遊技制御用マイクロコンピュータ560におけるステップS589の処理を実行する部分、および演出制御用マイクロコンピュータ100におけるステップS707の処理を実行する部分)とを備え、閾値記憶手段は、第1可変入賞球装置の開放動作における第1可変入賞球装置への入賞の標準値(例えば、16ラウンドの第1大当り遊技状態のときは、ラウンド中に遊技球が第1大入賞口に10個入賞すれば次のラウンドに移行されるので標準値は160個(10個×16ラウンド)を示す値)よりも多い値である第1閾値(例えば、16ラウンドの第1大当り遊技状態のときは192個を示す値)を記憶し、第2可変入賞球装置の開放動作における第2可変入賞球装置への入賞の標準値(小当り遊技状態のときは、1回の開放あたり平均1個の遊技球が第2大入賞口に入賞すると想定した場合に標準値は1個(役物開放回数が1回のとき)または2個(役物開放回数が2回のとき)を示す値、3ラウンド、7ラウンドまたは11ラウンドの第2大当り遊技状態のときは、ラウンド中に遊技球が第2大入賞口に10個入賞すれば次のラウンドに移行されるので標準値はそれぞれ30個(10個×3ラウンド)、70個(10個×7ラウンド)または110個(10個×11ラウンド)を示す値)よりも多い値であって第1閾値とは異なる値の第2閾値(例えば、小当り遊技状態のときは5個(役物開放回数が1回のとき)または10個(役物開放回数が2回のとき)を示す値、3ラウンドの第2大当り遊技状態のときは36個を示す値、7ラウンドの第2大当り遊技状態のときは84個を示す値、11ラウンドの第2大当り遊技状態のときは132個を示す値)を記憶することを特徴とする。」

(ウ)「【0035】
遊技球が始動入賞口に入賞し始動口スイッチによって検出され小当りとなった場合には、可変入賞球装置20が1回または2回開閉制御される。開閉制御によって、左側の開放扉76Aが初期位置から左方向に移動し、右側の開放扉76Bが初期位置から右方向に移動することによって、可変入賞球装置20は開放状態になり、開放扉76A,76Bが初期位置に戻ることによって可変入賞球装置20は閉鎖状態になる。このように始動口スイッチの入賞検出に応じて可変入賞球装置20が開放動作を行う状態を始動動作状態という。以下、可変入賞球装置20を、大入賞口(第2大入賞口、上大入賞口)または役物ということがある。また、遊技盤6には種々の役物が設けられているが、以下、役物という場合には、可変入賞球装置20を意味する。
【0036】
また、可変入賞球装置20は、大当り遊技の開始条件(例えば、始動動作状態において遊技球が特定領域に入賞したこと。)が成立すると、所定回数すなわち所定ラウンド数、開閉制御される。その状態を大当り遊技状態(特定遊技状態)という。大当り遊技状態では、高い割合で入賞が生じ、多数の遊技球が遊技者に払い出される。なお、始動動作状態を除き、可変入賞球装置20が開閉制御される状態(大当り遊技状態)を第2大当り遊技状態ということがある。」

(エ)「【0044】
また、遊技領域7の外側の左右上部には、効果音を発する2つのスピーカ27が設けられている。遊技領域7の外周には、天枠ランプ28a、左枠ランプ28bおよび右枠ランプ28cが設けられている。さらに、遊技領域7における各構造物(可変入賞球装置20等)の周囲には装飾LEDが設置されている。天枠ランプ28a、左枠ランプ28bおよび右枠ランプ28cおよび装飾用LEDは、遊技機に設けられている装飾発光体の一例である。
【0045】
そして、この例では、左枠ランプ28bの近傍に、賞球払出中に点灯する賞球LED51が設けられ、右枠ランプ28cの近傍に、補給球が切れたときに点灯する球切れLED52が設けられている。さらに、プリペイドカードが挿入されることによって球貸しを可能にするプリペイドカードユニットが、パチンコ遊技機1に隣接して設置される(図示せず)。
【0046】
打球発射装置から発射された遊技球は、打球レールを通って遊技領域7に入り、その後、遊技領域7を落下する。打球が始動入賞口(第1始動入賞口11、第2始動入賞口12または第3始動入賞口13)に入り始動口スイッチ(第1始動口スイッチ11a、第2始動口スイッチ12aまたは第3始動口スイッチ13a)で検出されると、図柄の可変表示を開始できる状態であれば、特別図柄表示器8において特別図柄が可変表示を始めるとともに、演出表示装置9において飾り図柄が可変表示を始める。図柄の可変表示を開始できる状態でなければ、特別図柄表示器8での特別図柄の可変表示の保留記憶である始動入賞記憶数が上限数でない場合には、始動入賞記憶数を1増やす。すなわち、特別図柄保留記憶表示器18における点灯するLEDを1増やす。
【0047】
特別図柄表示器8における特別図柄(「0」?「9」)の可変表示は、所定時間が経過したときに停止する。停止時の特別図柄が大当り図柄(特定表示結果:具体的には、例えば「7」)であると、大当り遊技状態のうちの第1大当り遊技状態(始動動作状態を経ずに開始される大当り遊技状態)に移行する。また、停止時の特別図柄が小当り図柄(開放表示結果:具体的には、例えば「0」「1」「2」「4」「5」「6」「8」「9」)である場合には、始動動作状態に移行する。なお、始動動作状態のことを小当り遊技状態ともいう。始動動作状態において、可変入賞球装置20の内部に設けられている特別領域に遊技球が入賞すると、第2大当り遊技状態(始動動作状態を経た後に開始される大当り遊技状態)に移行する。」

(オ)「【0064】
なお、この実施の形態では、小当り遊技状態および第2大当り遊技状態において、遊技球が役物入賞スイッチで検出された場合に入賞が生じたとする。すなわち、3つの役物入賞スイッチ71a,72a,73aが設けられている領域が入賞領域に相当する。しかし、可変入賞球装置20の内部において役物入賞スイッチとは別に遊技球を検出するスイッチを設け、遊技球がそのスイッチで検出された場合に入賞が生じたとしてもよい。」

(カ)「【0069】
図12は、この実施の形態の遊技機の遊技の進み方の一例を示す説明図である。図12に示すように、始動入賞口に遊技球が入賞していずれかの始動口スイッチ11a,12a,13aの検出信号がオン状態になると、すなわち始動入賞が生ずると、遊技の進行を制御する遊技制御手段によって抽選が実行される。抽選の結果は、「大当り」「小当り」または「はずれ」となる。そして、特別図柄および飾り図柄の変動(可変表示)が開始される。特別図柄および飾り図柄の変動が終了すると、大当りに決定されている場合(大当り図柄が導出表示された場合)には、遊技状態が大当り遊技状態(第1大当り遊技状態)に移行される。第1大当り遊技状態では、開閉板16による大入賞口(第1大入賞口)が16回(16ラウンド、1ラウンドの開放許容時間は29秒)開閉制御される。なお、この実施の形態では、大当り遊技状態におけるラウンド数は16で一定あるが、ラウンド数(例えば、2ラウンド、7ラウンド、16ラウンドのいずれか)を抽選等によって決定するようにしてもよい。
【0070】
小当りに決定されている場合(小当り図柄が導出表示された場合)には、遊技制御手段は、役物20を開放状態に制御して始動動作を開始させる。始動動作状態において、役物20は、0.9秒間開放状態になる。開放状態になる回数(開放回数)は、1回または2回である。始動動作状態において、遊技球が役物20に入賞し、さらに、遊技球が特定入賞口66に入賞して特定領域スイッチ66aで検出されるとV入賞が発生する。V入賞が発生すると、遊技状態が大当り遊技状態(第2大当り遊技状態)に移行される。第2大当り遊技状態では、役物20(可変入賞球装置、第2大入賞口)が3回、7回または11回(3ラウンド、7ラウンドまたは11ラウンド:1ラウンドの開放許容時間は29秒)開閉制御される。V入賞が発生しなかった場合には、第2大当り遊技状態に移行しない。なお、この実施の形態では、小当り図柄の種類に応じて、第2大当り遊技状態におけるラウンド数が決定される(図22参照)。」

(キ)「【0081】
なお、役物20は、始動動作状態および大当り遊技状態においてのみ開放状態に制御される。従って、それらの状態以外の遊技状態では、遊技球は役物に入賞しない。よって、それらの状態以外の遊技状態(平常状態)で役物の内部において入賞が検出されたということは、その入賞は正規の入賞でない(異常入賞である)ことになる。そこで、この実施の形態では、異常入賞が生じた場合には、その旨の報知を行う。よって、役物20を備えた遊技機において、不正行為を発見しやすくなっている。」

(ク)「【0101】
次に、遊技機の動作について説明する。図19は、主基板31における遊技制御用マイクロコンピュータ560が実行するメイン処理を示すフローチャートである。遊技機に対して電源が投入され電力供給が開始されると、リセット信号が入力されるリセット端子の入力レベルがハイレベルになり、遊技制御用マイクロコンピュータ560(具体的には、CPU56)は、プログラムの内容が正当か否か確認するための処理であるセキュリティチェック処理を実行した後、ステップS1以降のメイン処理を開始する。メイン処理において、CPU56は、まず、必要な初期設定を行う。
・・・
【0113】
また、CPU56は、異常入賞数をカウントする異常入賞判定カウンタに閾値として「3」の値を設定する(ステップS46)。ステップS46で設定される閾値は、大当り遊技状態(第1大当り遊技状態、第2大当り遊技状態)・小当り遊技状態(始動動作状態)以外の平常状態における大入賞口(第1大入賞口16、第2大入賞口20)への遊技球の入賞を許容する値である。すなわち、平常状態においては、本来、大入賞口(第1大入賞口16、第2大入賞口20)に遊技球が入賞するはずがないが、大入賞口(第1大入賞口16、第2大入賞口20)内に遊技球が詰まり、大当り遊技状態・小当り遊技状態が終了した後に詰まりが解消したことによって遊技球の入賞が検出されるような場合も考えられる。また、ノイズ等によってカウントスイッチ23や役物入賞スイッチ71a?73aから検出信号が出力されたと誤検出されるような場合も考えられる。そこで、この実施の形態では、平常状態においてカウントスイッチ23等が遊技球を検出したとしても、検出数が2回まで(つまり大入賞口への入賞数が2個まで)は、大入賞口への遊技球の入賞を許容すべく、ステップS46において閾値として「3」の値が設定されている。後述するように、カウントスイッチ23等の検出数が3回になると、異常入賞が発生したと判定して異常報知を実行するための処理を実行する(図67のステップS588、S589参照)。なお、異常入賞判定カウンタは、RAM55の所定領域に形成されている。」

(ケ)「【0239】
その後、CPU56は、入賞個数カウンタを初期化する(ステップS475A)。すなわち、入賞個数カウンタの値を0にする。そして、開放時間タイマに開放時間(例えば、29秒)に相当する値を設定する(ステップS475B)。さらに、大入賞口(役物)を開放状態に制御する。具体的には、第1大入賞口(開閉板16による大入賞口)を開放するラウンドでは、ソレノイド21を駆動して開閉板16を開状態にする(ステップS476,S477)。そして、特別図柄プロセスフラグの値を、大入賞口開放中処理(ステップS309)に対応した値に更新する(ステップS478)。また、第2大入賞口(役物20)を開放するラウンドでは、開閉モータ75を駆動して開放扉76A,76Bを開放状態にする(ステップS476,S479)。また、役物20に入賞した遊技球を計数する役物内遊技球個数カウンタをクリア(0に初期化)し(ステップS480)、ステップS478に移行する。」

(コ)「【0316】
異常入賞判定カウンタの値を-1した後(ステップS587の処理の実行後)または特別図柄プロセス処理の値が4以上である場合は(ステップS585のY)、CPU56は、異常入賞判定カウンタの値が0であるかどうか確認する(ステップS588)。ここで、異常入賞判定カウンタの値が0であるということは、平常状態において大入賞口(第1大入賞口、第2大入賞口)への入賞数が「3」に達したこと、小当り遊技状態において第2大入賞口への入賞数が「5」または「10」に達したこと、16ラウンドの第1大当り遊技状態において第1大入賞口への入賞数が「192」に達したこと、3ラウンドの第2大当りにおいて第2大入賞口への入賞数が「36」に達したこと、7ラウンドの第2大当りにおいて第2大入賞口への入賞数が「84」に達したこと、11ラウンドの第2大当りにおいて第2大入賞口への入賞数が「132」に達したことを意味する。この場合、上述したように、各々の遊技状態において大入賞口への入賞が許容されている閾値(許容数)に達したこととなり、異常入賞が生じたと判定する。そこで、CPU56は、演出制御基板に異常入賞の報知を指示する異常入賞報知指定コマンドを送信する制御を行う(ステップS589)。」

(サ)「【0324】
また、第1大当り遊技の実行中(第1大入賞口の開放中)に第2大入賞口への遊技球の入賞数が所定数に達した場合に、異常入賞が発生したと判定するようにしてもよく、また、第2大当り遊技の実行中(第2大入賞口の開放中)に第1大入賞口への遊技球の入賞数が所定数に達した場合に、異常入賞が発生したと判定するようにしてもよい。例えば、上記の例では、異常入賞判定カウンタは1つだけしか設けられていないが、第1大入賞口に対する異常入賞を判定するための第1異常入賞判定カウンタと、第2大入賞口に対する異常入賞を判定するための第2異常入賞判定カウンタとを設ける。そして、ステップS412において、第2異常入賞判定カウンタに「5」又は「10」の値を設定し、第1異常入賞判定カウンタに「3」の値を設定する。また、ステップS474において、第1大当りが発生したときは、第1異常入賞判定カウンタに「192」の値を設定し、第2異常入賞判定カウンタに「3」の値を設定する。また、ステップS474において、第2大当りが発生したときは、第2異常入賞判定カウンタに「36」、「84」または「132」の値を設定し、第1異常入賞判定カウンタに「3」の値を設定する。そして、小当り遊技中および大当り遊技(第1大当り遊技または第2大当り遊技)中に、カウントスイッチ23がオンするごとに第1異常入賞判定カウンタの値を-1し、役物入賞スイッチ71a?73aがオンするごとに第2異常入賞判定カウンタの値を-1する。そして、ステップS588において、第1異常入賞判定カウンタの値が0であるか否か判定するとともに、第2異常入賞判定カウンタの値が0であるか否か判定する。いずれか一方または双方の異常入賞判定カウンタの値が0である場合は、異常入賞指定コマンドを送信する制御を実行する。このような構成によっても、小当り遊技および大当り遊技中における異常入賞を確実に検出して報知することができるとともに、ノイズ等による誤検出により異常入賞と判定してしまうのを防止することができる。」

(シ)「【0400】
図88は、演出表示装置9における表示演出およびスピーカ27による音演出の状況の例を示す説明図である。図88(A)には、演出表示装置9において演出図柄の可変表示が行われているときの例が示されている。図88(B)には、演出表示装置9において初期化報知が行われている場合の例が示されている。
【0401】
図88(C)には、演出表示装置9において異常報知が行われ、スピーカ27によって異常報知音の出力がなされている場合の例が示されている。演出制御用マイクロコンピュータ100は、遊技制御用マイクロコンピュータ560から異常入賞報知指定コマンドを受信すると、演出表示装置9に異常報知画面を表示する制御を行うとともに、スピーカ27から異常報知音を出力させる制御を行う。また、変動パターンコマンドの受信に応じて演出図柄の可変表示が開始されても、演出表示装置9における異常報知画面の表示とスピーカ27からの異常報知音の出力とを継続させる。また、演出図柄の可変表示が終了しても、演出表示装置9における異常報知画面の表示とスピーカ27からの異常報知音の出力とを継続させる。
【0402】
演出制御用マイクロコンピュータ100は異常報知画面を消去する制御および異常報知音の出力を停止する制御を実行しないので、演出表示装置9における異常報知画面の表示とスピーカ27からの異常報知音の出力とは、遊技機に対する電力供給が停止するまで継続する。ただし、演出制御用マイクロコンピュータ100は、異常報知画面の表示と異常報知音の出力とが開始されてから所定時間が経過すると、異常報知画面の表示と異常報知音の出力とを停止するように制御してもよい。また、この実施の形態では、異常報知は、演出表示装置9とスピーカ27とによってなされるが、ランプ・LEDも用いて異常報知を行うように構成してもよい。その場合、演出制御用マイクロコンピュータ100は、異常入賞報知指定コマンドを受信すると、ランプ・LEDを、通常状態(異常入賞が発生していないとき)における態様とは異なる態様で点滅させるように制御する。また、ランプ・LEDも用いて異常報知を行うように構成する場合にも、変動パターンコマンドの受信に応じて演出図柄の可変表示が開始されても、ランプ・LEDを用いた異常報知を継続する。」


イ 認定事項
(ス)【0044】に「遊技領域7の外周には、天枠ランプ28a、左枠ランプ28bおよび右枠ランプ28cが設けられている。」と記載され、パチンコ遊技機を正面からみた正面図である【図1】に


ガラス扉枠2に天枠ランプ28c(ここで「28c」は、【0044】の記載からみると「28a」の誤記と認められる。)、左枠ランプ28bおよび右枠ランプ28cが設けられていることが図示されている。
したがって、刊行物1には、遊技領域7の外周のガラス扉枠2に天枠ランプ28a、左枠ランプ28bおよび右枠ランプ28cが設けられていることが示されているものと認められる。

(セ)【0101】に「図19は、主基板31における遊技制御用マイクロコンピュータ560(具体的には、CPU56)が実行するメイン処理を示すフローチャートである。」「遊技制御用マイクロコンピュータ560・・・は、・・・」と記載され、
【0113】に「CPU56は、異常入賞数をカウントする異常入賞判定カウンタに」「閾値」「を設定する」ことが記載され、
【0324】に「上記の例では、異常入賞判定カウンタは1つだけしか設けられていないが、第1大入賞口に対する異常入賞を判定するための第1異常入賞判定カウンタと、第2大入賞口に対する異常入賞を判定するための第2異常入賞判定カウンタとを設ける。」と記載されている。
したがって、刊行物1には、平常状態において、異常入賞判定カウンタとして設けられている、第1大入賞口に対する異常入賞を判定するための第1異常入賞判定カウンタと、第2大入賞口に対する異常入賞を判定するための第2異常入賞判定カウンタに閾値を設定可能とする遊技制御用マイクロコンピュータ560について記載されているものと認められる。

ウ 刊行物発明
上記アの記載事項、上記イの認定事項、及び、図面の図示内容を総合勘案すると、刊行物1には、次の発明(以下「刊行物発明」という。)が記載されていると認められる(a?gは、本件補正発明の構成A?Gに対応させて付与した。)。
「a 大当り遊技の開始条件(例えば、始動動作状態において遊技球が特定領域に入賞したこと。)が成立すると移行される第2大当り遊技状態において、第2大入賞口が3回、7回または11回(3ラウンド、7ラウンドまたは11ラウンド:1ラウンドの開放許容時間は29秒)開閉制御される可変入賞球装置20(【0036】、【0070】)と、

b 打球が始動口スイッチで検出されることにより始まる特別図柄表示器8における特別図柄の可変表示が大当り図柄で停止すると移行される第1大当り遊技状態において、第1大入賞口が16回(16ラウンド、1ラウンドの開放許容時間は29秒)開閉制御される第1大入賞口(【0046】?【0047】、【0069】)と、

c 始動動作状態および大当り遊技状態以外の遊技状態である平常状態において、大入賞口(第1大入賞口、第2大入賞口)への入賞数をカウントする異常入賞判定カウンタの値が「3」に達すると、異常入賞が発生したと判定し、演出制御基板に異常入賞の報知を指示する異常入賞報知指定コマンドを送信する制御を行うCPU56(【0081】、【0113】、【0316】)と、

d 遊技制御用マイクロコンピュータ560から異常入賞報知指定コマンドを受信すると、演出表示装置9に異常報知画面を表示する制御を行うとともに、スピーカ27から異常報知音を出力させる制御を行い、さらに、遊技領域7の外周のガラス扉枠2に設けられている天枠ランプ28a、左枠ランプ28bおよび右枠ランプ28cや、遊技領域7における各構造物の周囲に設置されている装飾LED等のランプ・LEDを用いて、異常入賞が発生していないときにおける態様とは異なる態様で点滅させるように制御する異常報知を行う演出制御用マイクロコンピュータ100(認定事項(ス)、【0401】、【0402】)とを備え、

e 遊技制御用マイクロコンピュータ560は、
平常状態において、異常入賞判定カウンタとして設けられている、第1大入賞口に対する異常入賞を判定するための第1異常入賞判定カウンタと、第2大入賞口に対する異常入賞を判定するための第2異常入賞判定カウンタに閾値を設定可能とし(認定事項(セ))、

f 演出制御用マイクロコンピュータ100は、平常状態において異常入賞が生じた場合、
演出表示装置9における異常報知画面の表示とスピーカ27からの異常報知音の出力とランプ・LEDを用いた異常報知とを、遊技機に対する電力供給が停止するまで継続し不正行為を発見しやすくし、
また、異常報知画面の表示と異常報知音の出力とランプ・LEDを用いた異常報知とが開始されてから所定時間が経過すると、異常報知画面の表示と異常報知音の出力とを停止するように制御してもよい(【0081】、【0402】)、

g 第1大当り遊技の実行中(第1大入賞口の開放中)に第2大入賞口への遊技球の入賞数が所定数に達した場合に、異常入賞が発生したと判定するようにしてもよく、また、第2大当り遊技の実行中(第2大入賞口の開放中)に第1大入賞口への遊技球の入賞数が所定数に達した場合に、異常入賞が発生したと判定するようにしてもよい(【0324】)
遊技機(【0001】)。」

(3)対比
本件補正発明と刊行物発明とを対比する(対比にあたっては、本件補正発明の構成A?Gと刊行物発明の構成a?gについて、それぞれ(a)?(g)の見出しを付して行った。)。
(a)
刊行物発明における「大当り遊技の開始条件(例えば、始動動作状態において遊技球が特定領域に入賞したこと。)が成立する」ことは、本件補正発明における「遊技中に第1作動契機が発生する」ことに相当する。
そして、刊行物発明における「第2大入賞口」は、本件補正発明における「第1入賞口」に相当する。そうすると、刊行物発明における「第2大入賞口が3回、7回または11回(3ラウンド、7ラウンドまたは11ラウンド:1ラウンドの開放許容時間は29秒)開閉制御される」ことは、「第2大入賞口」の閉状態から、遊技球の入球を29秒の間許容する開放状態に複数回変化されることであるから、本件補正発明における「第1入賞口に遊技球が入球困難な閉鎖状態から第1入賞口に遊技球が入球容易な開放状態に少なくとも1回変化する」ことに相当する。
また、刊行物発明における「第2大当り遊技状態」は、「1ラウンドの開放許容時間」が「29秒」の開放を伴う複数のラウンド遊技を所定の期間に亘って複数回行うものであるから、本件補正発明における「所定の第1作動時間中において」「実行」されることに相当する。
したがって、刊行物発明における構成aの「可変入賞球装置20」は、本件補正発明における構成Aの「第1電動役物」に相当する。

(b)
刊行物発明における構成bの「打球が始動口スイッチで検出されることにより始まる特別図柄表示器8における特別図柄の可変表示が大当り図柄で停止する」なる「第1大当り遊技状態」の開始条件は、構成aの「第2大当り遊技状態」の「開始条件」とは異なるものであるから、本件補正発明における「遊技中に第1作動契機とは別の第2作動契機が発生する」ことに相当する。
そして、刊行物発明における「第1大入賞口」は、構成aの「第2大入賞口」とは別の入賞口であることから、本件補正発明における「第1入賞口とは別の第2入賞口」に相当する。そうすると、刊行物発明における「第1大入賞口が16回(16ラウンド、1ラウンドの開放許容時間は29秒)開閉制御される」ことは、29秒の間、「第1大入賞口」への遊技球の入球を許容する開放状態に、閉状態から16回変化されることであるから、本件補正発明における「第2入賞口に遊技球が入球困難な閉鎖状態から第2入賞口に遊技球が入球容易な開放状態に所定の回数変化する」ことに相当する。
また、刊行物発明における「第1大当り遊技状態」は、「1ラウンドの開放許容時間」が「29秒」の開放を伴う16回のラウンド遊技を所定の期間に亘って行うものであるから、本件補正発明における「所定の第1作動時間中において」「実行」されることに相当する。
したがって、刊行物発明における構成bの「第1大入賞口」は、本件補正発明における構成Bの「第2電動役物」に相当する。

(c)
刊行物発明における「異常入賞判定カウンタの値」である「3」は、本件補正発明における「判定基準」に相当する。
そして、刊行物発明は、構成eによると、「異常入賞判定カウンタ」として、「第1大入賞口に対する異常入賞を判定するための第1異常入賞判定カウンタ」、「第2大入賞口に対する異常入賞を判定するための第2異常入賞判定カウンタ」の2つのカウンタを備えるものである。そうすると、刊行物発明における「異常入賞判定カウンタの値」は、「第1異常入賞判定カウンタ」と「第2異常入賞判定カウンタ」とを用いて、第1大入賞口に対するものと、第2大入賞口に対するものとで別々に設定可能であって、それぞれの「異常入賞判定カウンタの値」として、互いに異なる値を取り得るものである。
また、刊行物発明における「異常入賞」は、構成d、fによると、不正行為に基づいて発生するものである。
したがって、刊行物発明における「大入賞口(第1大入賞口、第2大入賞口)への入賞数をカウントする異常入賞判定カウンタの値が「3」に達すると、異常入賞が発生したと判定する」ことは、本件補正発明における「第1入賞口及び第2入賞口に遊技球が不正に入球したか否かを第1入賞口については個別の第1の判定基準に基づいて判定し、第2入賞口については第1の判定基準とは異なる個別の第2の判定基準に基づいて判定する」ことに相当する。
よって、刊行物発明における構成cの「CPU56」は、本件補正発明における構成Cの「不正入球判定手段」としての機能を有するものである。

(d)
刊行物発明における「遊技制御用マイクロコンピュータ560から異常入賞報知指定コマンドを受信する」ことは、構成cより、「異常入賞が発生したと判定」されたことに基づくものであるから、上記(c)より、本件補正発明における「不正入球判定手段により不正な入球があったと判定される」ことに相当する。
そして、刊行物発明における「スピーカ27から異常報知音を出力させる制御」処理は、本件補正発明における「不正な入球に対する報知として警告音を出力する第1報知処理」に相当する。
また、刊行物発明における「遊技領域7の外周に設けられている天枠ランプ28a、左枠ランプ28bおよび右枠ランプ28c」、「遊技領域7における各構造物の周囲に設置されている装飾LED」は、それぞれ、本件補正発明における「遊技盤の外側の遊技機本体に配置されたLEDランプ」、「遊技盤に配置されたLEDランプ」に相当する。
さらに、刊行物発明における「遊技領域7の外周に設けられている天枠ランプ28a、左枠ランプ28bおよび右枠ランプ28c」「を用いて、異常入賞が発生していないときにおける態様とは異なる態様で点滅させるように制御する異常報知を行う」ことは、本件補正発明における「遊技盤の外側の遊技機本体に配置されたLEDランプの第1の態様による点灯制御及び遊技盤に配置されたLEDランプの第1の態様」「で第2報知処理を実行する」ことに相当する。
ここで、刊行物発明における構成Dの「第2報知処理」は、「遊技盤の外側の遊技機本体に配置されたLEDランプの第1の態様による点灯制御」、及び、「遊技盤に配置されたLEDランプの前記第1の態様と異なる第2の態様による点灯制御」のうちの「少なくとも一方で」実行される「点灯制御」を行うものであるから、「遊技盤の外側の遊技機本体に配置されたLEDランプの第1の態様による点灯制御」のみを行うもの、及び、「遊技盤に配置されたLEDランプの前記第1の態様と異なる第2の態様による点灯制御」のみを行うものを含むものである。
そうすると、刊行物発明における「遊技領域7の外周に設けられている天枠ランプ28a、左枠ランプ28bおよび右枠ランプ28c」「を用いて異常報知を行う」ことは、本件補正発明における「遊技盤の外側の遊技機本体に配置されたLEDランプの第1の態様による点灯制御」「で第2報知処理を実行するか、もしくは遊技盤の外側の遊技機本体に配置されたLEDランプの第1の態様による点灯制御で第2報知処理を実行する」ことに相当する。
したがって、刊行物発明における構成dの「演出制御用マイクロコンピュータ100」は、本件補正発明における構成Dの「報知処理実行手段」としての機能を有するものである。

(e)
刊行物発明における「平常状態」は、構成a?cより、「第2大入賞口」、若しくは、「第1大入賞口」の開放される「大当り遊技状態以外の遊技状態」のことであるから、本件補正発明における「第1電動役物による第1開放動作の実行、及び第2電動役物による第2開放動作の実行がそれぞれ無い状況」に相当する。そうすると、刊行物発明における「平常状態」であることは、本件補正発明における「第1電動役物による第1開放動作の実行、及び第2電動役物による第2開放動作の実行がそれぞれ無い状況に応じ」ることに相当する。
そして、刊行物発明における「異常入賞判定カウンタとして設けられている、第1大入賞口に対する異常入賞を判定するための第1異常入賞判定カウンタと、第2大入賞口に対する異常入賞を判定するための第2異常入賞判定カウンタに閾値を設定可能と」することは、上記(c)より、刊行物発明における「第1異常入賞判定カウンタ」の「閾値」と、「第2異常入賞判定カウンタ」の「閾値」とは、異なる値を取り得るものであるから、本件補正発明における「不正入球判定手段による第1入賞口に対する第1の判定基準及び第2入賞口に対する第2の判定基準を個別に設定可能とする」ことに相当する。
したがって、刊行物発明における構成eの「閾値を設定」する「遊技制御用マイクロコンピュータ560」は、本件補正発明における構成Eの「状態別不正入球判定基準設定手段」としての機能を有するものである。

(f)
刊行物発明における「平常状態において異常入賞が生じた場合」は、構成c、eより、「「平常状態」における「第1大入賞口」の入賞数が「3」に達した場合、又は、「第2大入賞口」の入賞数が「3」に達した場合のいずれであるから、本件補正発明における「第1開放動作の実行が無い状況で第1入賞口に所定個数以上の遊技球が入球した場合、又は、第2開放動作の実行が無い状況で第2入賞口に所定個数以上の遊技球が入球した場合」に相当する。
そして、刊行物発明は、構成d、fより、「スピーカ27からの異常報知音の出力」に加え、「遊技領域7の外周に設けられている天枠ランプ28a、左枠ランプ28bおよび右枠ランプ28cや、遊技領域7における各構造物の周囲に設置されている装飾LED等のランプ・LEDを用いて異常報知を行う」ものであると共に、刊行物発明における「異常報知」は、上記(d)より、不正な入賞があったと判定されたことに基づいて実行されるものである。
そうすると、刊行物発明における「ランプ・LEDを用いた異常報知」は、本件補正発明における「LEDランプを用いる第2報知手段による不正な入球を報知する演出」に相当する。
また、刊行物発明における「異常報知音の出力」を行う「スピーカ27」は、本件補正発明における「警告音を出力する第1報知手段」に相当し、刊行物発明における「遊技機に対する電力供給が停止するまで継続」すること、及び、「所定時間が経過する」ことは、本件補正発明における「所定の終了条件」に相当する。
そうすると、上記(e)より、刊行物発明における「演出表示装置9における異常報知画面の表示とスピーカ27からの異常報知音の出力とを、遊技機に対する電力供給が停止するまで継続」すること、及び、「異常報知画面の表示と異常報知音の出力とが開始されてから所定時間が経過すると、異常報知画面の表示と異常報知音の出力とを停止するように制御」することは、本件補正発明における「警告音を出力する第1報知手段又はLEDランプを用いる第2報知手段による不正な入球を報知する演出のうち少なくとも一方を所定の終了条件が満たされるまで第1報知処理又は第2報知処理として実行」することに相当する。
したがって、刊行物発明における構成fの「演出制御用マイクロコンピュータ100」は、本件補正発明における「報知処理実行手段」としての機能を有するものである。

(g)
刊行物発明は、構成c?eより、第1大入賞口、第2大入賞口のそれぞれに対して、平常状態において、演出表示装置9、スピーカ27、及び、ランプ・LEDを用いて異常入賞報知を行うものであって、構成fより、それぞれの報知手段による異常入賞報知は、いずれも、電力供給が停止すること、若しくは、異常出力開始後の所定時間が経過することによって終了するものである。
そして、上記(c)より、刊行物発明における「CPU56」は、本件補正発明における「不正入球判定手段」としての機能を有するものである。
したがって、刊行物発明は、本件補正発明における「不正な入球があったとの判定に基づく第1報知処理及び第2報知処理を終了させる終了条件については、第1入賞口と前記第2入賞口とで共通である」ことに相当する構成を備えるものである。
よって、刊行物発明の構成c?f、gの「CPU56」と、本件補正発明における構成Gの「不正入球判定手段」とは、「不正な入球があったとの判定に基づく第1報知処理及び第2報知処理を終了させる終了条件については、第1入賞口と第2入賞口とで共通である」「不正入球判定手段」であることで共通する。

上記(a)?(g)より、両者の一致点および相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「A 遊技中に第1作動契機が発生すると、所定の第1作動時間中において第1入賞口に遊技球が入球困難な閉鎖状態から前記第1入賞口に遊技球が入球容易な開放状態に少なくとも1回変化する第1開放動作を実行する第1電動役物と、
B 遊技中に前記第1作動契機とは別の第2作動契機が発生すると、所定の第2作動時間中において前記第1入賞口とは別の第2入賞口に遊技球が入球困難な閉鎖状態から前記第2入賞口に遊技球が入球容易な開放状態に所定の回数変化する第2開放動作を実行する第2電動役物と、
C 前記第1入賞口及び前記第2入賞口に遊技球が不正に入球したか否かを前記第1入賞口については個別の第1の判定基準に基づいて判定し、前記第2入賞口については前記第1の判定基準とは異なる個別の第2の判定基準に基づいて判定する不正入球判定手段と、
D 前記不正入球判定手段により不正な入球があったと判定されると、不正な入球に対する報知として警告音を出力する第1報知処理を実行するか、もしくは遊技盤の外側の遊技機本体に配置されたLEDランプの第1の態様による点灯制御及び遊技盤に配置されたLEDランプの前記第1の態様と異なる第2の態様による点灯制御の少なくとも一方で第2報知処理を実行する報知処理実行手段と、
E 前記第1電動役物による前記第1開放動作の実行、及び前記第2電動役物による前記第2開放動作の実行がそれぞれ無い状況に応じて前記不正入球判定手段による前記第1入賞口に対する前記第1の判定基準及び前記第2入賞口に対する前記第2の判定基準を個別に設定する状態別不正入球判定基準設定手段とを備え、
F 前記報知処理実行手段は、
前記第1開放動作の実行が無い状況で前記第1入賞口に所定個数以上の遊技球が入球した場合、又は、前記第2開放動作の実行が無い状況で前記第2入賞口に所定個数以上の遊技球が入球した場合、前記不正入球判定手段により不正な入球があったと判定されたことに基づき、警告音を出力する第1報知手段又はLEDランプを用いる第2報知手段による不正な入球を報知する演出のうち少なくとも一方を所定の終了条件が満たされるまで前記第1報知処理又は前記第2報知処理として実行し、
G’前記不正入球判定手段は、
不正な入球があったとの判定に基づく前記第1報知処理及び前記第2報知処理を終了させる前記終了条件については、前記第1入賞口と前記第2入賞口とで共通である遊技機。」

[相違点](構成G)
不正入球判定手段に関し、
本件補正発明は、第1入賞口に対する第1報知処理及び第2報知処理の少なくとも一方が実行中であっても、第1入賞口とは異なる個別の第2の判定基準に基づいて第2入賞口に対する不正な入球の判定を行うのに対して、
刊行物発明は、第1大当り遊技の実行中(第1大入賞口の開放中)に第2大入賞口への遊技球の入賞数が所定数に達した場合に、異常入賞が発生したと判定するようにしてもよく、また、第2大当り遊技の実行中(第2大入賞口の開放中)に第1大入賞口への遊技球の入賞数が所定数に達した場合に、異常入賞が発生したと判定してもよいが、本件補正発明の構成を備えるか否か明らかでない点。

(4)当審の判断
ア 相違点(構成G)について
上記相違点について検討する。
刊行物発明は、構成eより、「異常入賞判定カウンタ」として、「第1大入賞口に対する異常入賞を判定するための第1異常入賞判定カウンタ」と、「第2大入賞口に対する異常入賞を判定するための第2異常入賞判定カウンタ」とを備え、それぞれのカウンタに大入賞口の種類に応じた異常入賞判定のための閾値を設定可能とするものである。
つまり、構成cも考慮すると、刊行物発明は、平常状態において第1異常入賞判定と第2異常入賞判定とを行うものである。
そして、刊行物発明における「第1大入賞口に対する異常入賞」は、第2大入賞口が「大当り遊技状態」であるか、「平常状態」であるかにかかわらず、第1大入賞口が開放しない「平常状態」である場合に発生し得るものである。他方、刊行物発明における「第2大入賞口に対する異常入賞」は、第1大入賞口が「大当り遊技状態」であるか、「平常状態」であるかにかかわらず、第2大入賞口が開放しない「平常状態」である場合に発生し得るものである。
また、刊行物発明において、平常状態における第1大入賞口の異常入賞に伴う異常報知の際に、平常状態における第2大入賞口の異常検出を行うこと、及び、平常状態における第2大入賞口の異常入賞に伴う異常報知の際に、平常状態における第1大入賞口の異常検出を行うことを妨げるものではない。
よって、刊行物発明における構成gにおいて、第2大入賞口の異常入賞の判定を第1大当り遊技の実行中のみならず、平常状態においても「第2大入賞口への遊技球の入賞数が所定数に達した場合に」行うと共に、第1大入賞口の異常入賞の判定を第2大当り遊技の実行中のみならず、平常状態においても「第1大入賞口への遊技球の入賞数が所定数に達した場合に」行うようにし、上記相違点に係る本件補正発明の構成とすることは当業者が必要に応じてなし得たものである。

イ 請求人の審判請求書における主張について
請求人は、平成30年8月28日付け審判請求書において、次の点について主張する。
(ア)「本願請求項1における「報知処理実行手段」の構成は、「前記第1開放動作の実行が無い状況で前記第1入賞口に所定個数以上の遊技球が入球した場合、又は、前記第2開放動作の実行が無い状況で前記第2入賞口に所定個数以上の遊技球が入球した場合、前記不正入球判定手段により不正な入球があったと判定されたことに基づき」を前提としているから、「第1大当り遊技の実行中(第1大入賞口の開放中)に第2大入賞口への遊技球の入賞数が所定数に達した場合に、異常入賞が発生したと判定するようにしてもよく、また、第2大当り遊技の実行中(第2大入賞口の開放中)に第1大入賞口への遊技球の入賞数が所定数に達した場合に、異常入賞が発生したと判定するようにしてもよい」ことを発端とする引用文献1の上記記載(段落0324)が本願請求項1の構成に相当することはない。」(〔3〕引用発明の説明(1)引用文献1(特開2009-89803号公報))
(イ)「引用文献1には「異常報知は、演出表示装置9とスピーカ27とによってなされるが、ランプ・LEDも用いて異常報知を行うように構成してもよい。その場合、演出制御用マイクロコンピュータ100は、異常入賞報知指定コマンドを受信すると、ランプ・LEDを、通常状態(異常入賞が発生していないとき)における態様とは異なる態様で点滅させるように制御する」とは記載されている(段落0402)。しかし、本願請求項1に係る発明の「報知処理実行手段」が「遊技盤の外側の遊技機本体に配置されたLEDランプの第1の態様による点灯制御及び遊技盤に配置されたLEDランプの第1の態様と異なる第2の態様による点灯制御の少なくとも一方で第2報知処理を実行する」という構成に相当し得るほどの事項は引用文献1には記載されていない(〔相違点4〕)。
なお、本願請求項1の「報知処理実行手段」が「遊技盤の外側の遊技機本体に配置されたLEDランプの第1の態様による点灯制御」及び「遊技盤に配置されたLEDランプの前記第1の態様と異なる第2の態様による点灯制御」の複数で第2報知処理を実行可能であることには、「第1の態様と第2の態様とで、点灯制御する対象となるLEDランプの配置を異ならせているため、『各LEDランプの点灯制御の態様の違い』だけでなく、『点灯制御されるLEDランプの位置が大きく異なること』で第2報知処理の内容を強調し、第1の態様と第2の態様との違いを視覚的に識別・認識しやすくすることができる」との独自の技術的効果があるから、〔相違点4〕は単なる設計事項にはあたらない。」(〔4〕本願発明と引用発明との対比(1)引用文献1記載の発明)

そこで、請求人の上記主張について検討する。
まず、請求人の上記主張(ア)について検討する。
請求人の主張(ア)は主に、本件補正発明の構成Gに関するものであって、上記相違点に関するものである。
そして、上記アにおいて検討したように、刊行物発明において、平常状態における第1大入賞口の異常入賞に伴う異常報知の際に、平常状態における第2大入賞口の異常検出を行うこと、及び、平常状態における第2大入賞口の異常入賞に伴う異常報知の際に、平常状態における第1大入賞口の異常検出を行うことを前提とすることは、当業者が適宜なし得たものである。
次に、請求人の上記主張(イ)について検討する。
請求人の主張(イ)は主に、本件補正発明の構成Dに関するものである。
そして、上記(3)対比(d)において検討したように、刊行物発明における構成Dの「第2報知処理」は、「遊技盤の外側の遊技機本体に配置されたLEDランプの第1の態様による点灯制御」のみを行うもの、及び、「遊技盤に配置されたLEDランプの前記第1の態様と異なる第2の態様による点灯制御」のみを行うものを含むものであって、刊行物発明における構成dは、本件補正発明における構成Dに相当する。
なお、遊技機の技術分野において、異常報知を遊技盤の外側の遊技機本体に配置されたLEDランプを用いた表示制御及び遊技盤に配置されたLEDランプを用いた表示制御により実行することは、刊行物発明における構成dが備える構成であるが、他にも、特開2012-213650号の【図40】、【図42】?【図46】や、特開2012-183231号公報の【図11】、【図19】?【図23】に示されているように、本願出願前に周知の技術事項である。
よって、請求人の上記主張を採用することはできない。

ウ 小括
本件補正発明により奏される効果は、刊行物発明、及び、上記周知の技術事項に基づいて当業者が予測できる効果の範囲内のものであり、格別なものではない。
よって、上記ア?イにおいて検討したとおり、本件補正発明は、刊行物発明と上記周知の技術事項に基づいて当業者が容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

(5)まとめ
上記(1)?(4)より、本件補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たさないものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されることとなったので、本願の請求項1に係る発明は、平成29年4月13日付け手続補正書における特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。記号A?G1は、分説するため当審で付した。)は、次のとおりのものと認める。
「A 遊技中に第1作動契機が発生すると、所定の第1作動時間中において第1入賞口に遊技球が入球困難な閉鎖状態から前記第1入賞口に遊技球が入球容易な開放状態に少なくとも1回変化する第1開放動作を実行する第1電動役物と、
B 遊技中に前記第1作動契機とは別の第2作動契機が発生すると、所定の第2作動時間中において前記第1入賞口とは別の第2入賞口に遊技球が入球困難な閉鎖状態から前記第2入賞口に遊技球が入球容易な開放状態に所定の回数変化する第2開放動作を実行する第2電動役物と、
C1 前記第1入賞口及び前記第2入賞口に遊技球が不正に入球したか否かを所定の判定基準に基づいて判定する不正入球判定手段と、
D1 前記不正入球判定手段により不正な入球があったと判定がなされた場合、不正な入球に対する報知処理を実行する報知処理実行手段と、
E1 前記第1電動役物による前記第1開放動作の実行、及び前記第2電動役物による前記第2開放動作の実行がそれぞれ無い状況に応じて前記不正入球判定手段による前記第1入賞口及び前記第2入賞口に対する前記判定基準を個別に設定する状態別不正入球判定基準設定手段とを備え、
F1 前記報知処理実行手段は、
前記第1開放動作の実行が無い状況で前記第1入賞口に所定個数以上の遊技球が入球した場合、又は、前記第2開放動作の実行が無い状況で前記第2入賞口に所定個数以上の遊技球が入球した場合、前記不正入球判定手段により不正な入球があったと判定されたことに基づき、警告音の出力又はLEDランプによる不正な入球を報知する演出のうち少なくとも一方を所定の終了条件が満たされるまで前記報知処理として実行し、
G1 前記不正入球判定手段は、
前記第1入賞口に対する前記報知処理が実行中であっても、前記第1入賞口とは異なる個別の前記判定基準に基づいて前記第2入賞口に対する不正な入球の判定を行うことを特徴とする遊技機。」

2 拒絶の理由(平成29年9月27日付け)
原査定の拒絶の理由は、概略、次のとおりのものである。
(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内において、頒布された下記の刊行物1?2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


〈引用文献等一覧〉
刊行物1:特開2009-89803号公報
刊行物2:特開2009-22363号公報

3 刊行物に記載された事項
原査定の拒絶理由において提示された、刊行物1である特開2009-89803号公報(前記「第2 2(2)刊行物1」における「刊行物1」に対応する。)の記載事項及び刊行物発明の認定については、前記「第2 2(2)刊行物1」に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記「第2[理由]2(1)本件補正発明」で検討した本件補正発明の「不正入球判定手段」(構成C)に関して、「前記第1入賞口については個別の第1の判定基準に基づいて判定し、前記第2入賞口については前記第1の判定基準とは異なる個別の第2の判定基準に基づいて判定する」とあったものを「所定の判定基準に基づいて判定する」とその限定を省き、
本件補正発明の「報知処理実行手段」(構成D)に関して、「前記不正入球判定手段により不正な入球があったと判定されると、不正な入球に対する報知として警告音を出力する第1報知処理を実行するか、もしくは遊技盤の外側の遊技機本体に配置されたLEDランプの第1の態様による点灯制御及び遊技盤に配置されたLEDランプの前記第1の態様と異なる第2の態様による点灯制御の少なくとも一方で第2報知処理を実行する」とあったものを「前記不正入球判定手段により不正な入球があったと判定がなされた場合、不正な入球に対する報知処理を実行する」とその限定を省き、
本件補正発明の「状態別不正入球判定基準設定手段」が「個別に設定する」「判定基準」(構成E)に関して、「前記第1入賞口に対する前記第1の判定基準及び前記第2入賞口に対する前記第2の判定基準」とあったものを「前記第1入賞口及び前記第2入賞口に対する前記判定基準」とその限定を省き、
本件補正発明の「報知処理実行手段」(構成F)に関して、「警告音を出力する第1報知手段又はLEDランプを用いる第2報知手段による不正な入球を報知する演出のうち少なくとも一方を所定の終了条件が満たされるまで前記第1報知処理又は前記第2報知処理として実行し」とあったものを「警告音の出力又はLEDランプによる不正な入球を報知する演出のうち少なくとも一方を所定の終了条件が満たされるまで前記報知処理として実行し」とその限定を省き、
本件補正発明の「不正入球判定手段」(構成G)に関して、「前記第1入賞口に対する前記第1報知処理及び前記第2報知処理の少なくとも一方が実行中であっても、前記第1入賞口とは異なる個別の前記第2の判定基準に基づいて前記第2入賞口に対する不正な入球の判定を行う一方で、不正な入球があったとの判定に基づく前記第1報知処理及び前記第2報知処理を終了させる前記終了条件については、前記第1入賞口と前記第2入賞口とで共通であること」とあったものを「前記第1入賞口に対する前記報知処理が実行中であっても、前記第1入賞口とは異なる個別の前記判定基準に基づいて前記第2入賞口に対する不正な入球の判定を行うこと」とその限定を省いたものである。
そうすると、本願発明と刊行物発明とは、次の相違点1において相違し、その余の点で一致するものである。

[相違点1](構成G1)
不正入球判定手段に関し、
本願発明は、第1入賞口に対する報知処理が実行中であっても、第1入賞口とは異なる個別の第2の判定基準に基づいて第2入賞口に対する不正な入球の判定を行うのに対して、
刊行物発明は、第1大当り遊技の実行中(第1大入賞口の開放中)に第2大入賞口への遊技球の入賞数が所定数に達した場合に、異常入賞が発生したと判定するようにしてもよく、また、第2大当り遊技の実行中(第2大入賞口の開放中)に第1大入賞口への遊技球の入賞数が所定数に達した場合に、異常入賞が発生したと判定するが、本願発明の構成を備えるか否か明らかでない点。

そこで、上記相違点1について検討する。
本願発明と刊行物発明との相違点1については、本件補正発明と刊行物発明との相違点についての上記検討内容(前記「第2 2(4)当審の判断 ア)と同様の理由により、刊行物発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-04-08 
結審通知日 2019-04-09 
審決日 2019-04-22 
出願番号 特願2013-124132(P2013-124132)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 武田 知晋  
特許庁審判長 奥 直也
特許庁審判官 長崎 洋一
大山 栄成
発明の名称 遊技機  
代理人 山崎 崇裕  

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