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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G02F
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 G02F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02F
管理番号 1352598
審判番号 不服2018-6270  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-05-08 
確定日 2019-07-08 
事件の表示 特願2016-533084「熱的隔離および熱制限ピラーを有する集積熱光学スイッチ」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 9月11日国際公開、WO2015/131805、平成29年 1月 5日国内公表、特表2017-500601、請求項の数(15)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年3月3日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 平成26年3月5日 アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概要は、以下のとおりである。

平成29年 4月28日付け:拒絶理由通知書
平成29年 7月28日 :意見書、手続補正書
平成29年12月20日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。平成3
0年1月9日送達)
平成30年 5月 8日 :審判請求書
平成31年 2月19日付け:拒絶理由通知書
令和 元年 5月24日 :意見書、手続補正書

第2 本願発明
本願の請求項1-請求項15に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明15」という。)は、令和元年5月24日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-請求項15に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち請求項1は以下のものである。

「 【請求項1】
熱光学スイッチであって、
光導波管と、
前記光導波管の表面との熱的接点における抵抗性ヒータと、
前記光導波管と基盤との間に形成されたギャップによって前記光導波管の下にある前記基盤から前記光導波管が実質的に熱的に隔離されるように、前記光導波管の側面に接続されるとともに前記光導波管を支持する複数の熱フロー制限ピラーであって、前記ピラーが前記光導波管から前記ピラーを支持する支持構造への熱フローを制限する、複数の熱フロー制限ピラーとを備え、
前記ピラーの各々の前記光導波管により近い断面は、前記ピラーの各々の前記光導波管からより遠い断面より小さく、前記ピラーの各々は、基盤側およびその反対側が台形形状である四角柱を含む、熱光学スイッチ。」

なお、本願発明2-15の概要は以下のとおりである。
本願発明2-5は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明6は、請求項1の熱光学スイッチを備えたネットワークコンポーネントであり、本願発明7-10は、本願発明6を減縮した発明である。
本願発明11は、請求項1の熱光学スイッチを備えた光集積回路であり、本願発明12-15は、本願発明11を減縮した発明である。

第3 原査定の概要及び原査定について当審の判断
1 原査定の概要
この出願の請求項1-21に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開平1-158413号公報
2.特開平11-109157号公報
3.米国特許出願公開第2004/0258344号明細書

2 原査定について当審の判断
ア 引用文献、引用発明
(ア)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開平1-158413号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同じ。)。

「実施例2
第2図に本発明の第2の実施例の構成例を示す。第2図(a)はその平面図、第2図(b)および(c)は、第2図(a)における、それぞれ、C-C′線およびD-D′線に沿った断面図である。
第2図(b)に示したC-C′線断面の部分は第1図に示した構成と同じである。本実施例では、実施例1と異なって、複数の溝21a,21b,22a,22b,23a,23bを設け、溝21a,21bと22a,22bおよび溝22a,22bと23a,23bの間にブリッジ構造部31a,31bおよび32a,32b(第2図(a)参照)を配設する。これら溝21a,21b,22a,22b,23aおよび23bでの断面は第2図(b)に示すようになるのに対し、ブリッジ構造部31a,31b,32a,32bにおいては、第2図(c)に示すように、クラッド層3はブリッジ状をなしている。そのために、薄膜ヒータ4の配置されている部分に対応する分離光導波路部13は各ブリッジ構造部31a,31b,32a,32bによってシリコン基板1に支持されている。
このような構成をとることにより、加熱された光導波路部13から基板1への熱伝導を抑制するように構成することができる。ここで、分離光導波路部13はコア部2の長手方向に沿って複数個に分割され、ブリッジ構造部31a,31b,32aおよび32bによってシリコン基板1により支持される。
本実施例のコア部2の断面寸法は実施例1と同様に定めることができる。また、本例では、各溝21a,21b,22a,22b,23aおよび23bの長手方向の長さは440μmと定め、ブリッジ構造部31a,31b,32aおよび32bの幅は60μmとした。このようにして、溝とブリッジ構造部の幅との合計長である500μmを周期としてブリッジ構造を繰り返して、10mmの長さの分離光導波路部13およびシリコン基板除去領域12を形成した。第2図(a)においては、図示を簡単にするために、3周期のブリッジ構造のみを示した。分離光導波路部13の上面には、クロム金属薄膜蒸着を基本として約10mm長の薄膜ヒータ4を形成した。
上述のようなブリッジ構造の採用により、数mm長以上に及ぶ比較的長い薄膜ヒータ4を装荷した分離光導波部13も破損することなく形成維持することができた。」 (第3頁右上欄第16行-右下欄第18行)

「実施例3
第3図は、本発明の第3の実施例の構成を示し、これは光スイッチアレイに応用した一例である。
第3図においては、4列の光スイッチが同一シリコン基板1上に密接して集積されている。」(第4頁左上欄第10行-第15行)

「第3図における光導波路の配置の概略寸法の一例を示すと、入力端41e,41f,42e,42f,43e,43f,44e,44fは250μmピッチとなし、出力端41g,41h,42g,42h,43g,43h,44g,44hのピッチも同様とした。本実施例の薄膜ヒータ付光導波路は、第2図示の実施例2と同様の分離光導波路構造を有しており、その実効的な加熱長は10mmとした。シリコン基板1の寸法は、縦1cm,横4cmとした。
一般に、同一シリコン基板上に複数個の光スイッチが集積されている構造においては、特定の光スイッチの切替動作のために薄膜ヒータに通電すると、発生した熱がシリコン基板を介して隣接する光スイッチにまで伝わり、隣接する光スイッチの誤動作を招く、すなわち相互干渉(クロストーク)が生ずるという問題が、従来の熱光学効果利用の光スイッチには見られた。」(第4頁右上欄第20行-左下欄第15行)

また、第2図(a)の記載から、分離光導波路部13の側面に接続されるとともに分離光導波路部13を支持するブリッジ構造部31a,31bおよび32a,32bが見て取れ、第2図(b)の記載から、分離光導波路部13とシリコン基板1との間に形成されたシリコン基板除去領域12が見て取れる。

したがって、上記引用文献1には、次の発明が記載されている

「分離光導波路部13と、
分離光導波路部13の上面に形成した薄膜ヒータ4と、
分離光導波路部13とシリコン基板1との間に形成されたシリコン基板除去領域12と、
複数の溝21a,21b,22a,22b,23a,23bを設け、溝21a,21bと22a,22bおよび溝22a,22bと23a,23bの間にブリッジ構造部31a,31bおよび32a,32bを配設し、
分離光導波路部13の側面に接続されるとともに分離光導波路部13を支持するブリッジ構造部31a,31bおよび32a,32bとを形成した、光スイッチ。」(以下、引用発明1という。)

(イ)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開平11-109157公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0017】図1は本発明のガラス導波路素子の一実施の形態を示す概観斜視図である。尚、具体的な数値を挙げて説明しているが限定されるものではない。
【0018】石英基板1上にアンダークラッド2が形成され、アンダークラッド2の上に光の伝搬方向に沿って屈折率が周期的に変化する回折格子を有するコア3が形成されている。コア3はオーバークラッド4で覆われている。コア3及びその周辺部には、石英基板1及び両クラッド2、4から断続的に離れた状態にするための凹字断面形状の空隙(ピット)5が形成されている。
【0019】尚、コア3の下に位置するアンダークラッド2と石英基板1との間は、後に述べる製造方法によって、ガラス導波路素子の長手方向全長にわたり空隙となっている。
【0020】オーバークラッド4上のコア3に対応する位置には回折格子のブラッグ波長を変化させるためのヒータ6が設けられている。ヒータ6の中央部(発熱領域)6aには、コア3に周期的な屈折率変化を生じさせるための紫外光を照射するための開口部7が形成されている。6bはヒータ6に電圧を印加するためのパッド領域である。」

また、図1の記載から、コア3の下に位置するアンダークラッド2と石英基板1との間は、ガラス導波路素子の長手方向全長にわたり空隙となるように、コア3に対応する位置のオーバークラッド4の側面に接続されるとともに、アンダークラッド2及びオーバークラッド4で覆われているコア3を支持する複数の部分であって、複数の空隙(ビット)5の間に設けられている複数の部分を備えるガラス導波路素子が見て取れる。

したがって、上記引用文献2には、次の発明が記載されている

「アンダークラッド2の上に光の伝搬方向に沿って屈折率が周期的に変化する回折格子を有するコア3が形成され、コア3はオーバークラッド4で覆われ、コア3及びその周辺部には、石英基板1及び両クラッド2、4から断続的に離れた状態にするための凹字断面形状の空隙(ピット)5が形成されている、
オーバークラッド4上のコア3に対応する位置にヒータ6が設けられ、
コア3の下に位置するアンダークラッド2と石英基板1との間は、ガラス導波路素子の長手方向全長にわたり空隙となるように、コア3に対応する位置のオーバークラッド4の側面に接続されるとともに、アンダークラッド2及びオーバークラッド4で覆われているコア3を支持する複数の部分であって、複数の空隙(ビット)5の間に設けられている複数の部分を備える、ガラス導波路素子。」(以下、引用発明2という。)

(ウ)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(米国特許出願公開第2004/0258344号明細書)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「[0017] Referring to FIG. 6 , the trenches 18 may guide the anisotropic etching from the bottoms of the regions 20 . The etchant is more selective of the substrate 10 than of the cladding 11 or 14 . As a result, an anisotropically etched trench 22 extends below the regions 20 formed by isotropic etching. A substantial portion of the substrate 10 material underneath the core 12 and the heater 16 is removed, leaving a relatively thin pillar 24 of substrate 10 .
[0018] The inventors of the present invention have determined that a substantial portion of the heat loss from heater 16 occurs through the semiconductor substrate 10 . By reducing the amount of available substrate 10 underneath the heater 16 , this heat loss may be reduced. The heat loss may increase the power needs of the device and dispersed heat may adversely affect the optical properties of surrounding components. 」
「[0017] 図6 に関して、トレンチ18は、領域20の底部から異方性エッチングを進めてもよい。エッチング液はクラッド11又は14よりも基板10により選択的である。その結果、異方的にエッチングされたトレンチ22は、等方性エッチングによって形成された領域20の下に延びている。コア12及び加熱部16の下の基板10の材料の実質的な部分は除去され、基材10の比較的薄い支柱24を残す。
[0018] 本発明の発明者らは、ヒータ16からの熱損失の実質的な部分は、半導体基板10から生じると判断した。ヒータ16の下の利用可能な基材10の量を減少させることによって、この熱損失を低減することができる。熱損失は、デバイスの電力の必要性を増加させ、分散した熱は、周囲の構成要素の光学特性に悪影響を及ぼすことがある。」(当審訳)

したがって、上記引用文献3には、次の技術的事項が記載されている。

「コア12及び加熱部16の下の基板10の材料の実質的な部分は除去され、残された材10の比較的薄い支柱24。」

イ 対比・判断
(ア)本願発明1について
a 引用発明1の「光スイッチ」は、本願発明1の「熱光学スイッチ」に、引用発明1の「分離光導波路部13」は、本願発明1の「光導波管」に、引用発明1の「分離光導波路部13の上面に形成した薄膜ヒータ4」は、本願発明1の「前記光導波管の表面との熱的接点における抵抗性ヒータ」に、引用発明1の「『分離光導波路部13とシリコン基板1との間に形成されたシリコン基板除去領域12と、』『分離光導波路部13の側面に接続されるとともに分離光導波路部13を支持するブリッジ構造部31a,31bおよび32a,32b』」は、本願発明1の「前記光導波管と基盤との間に形成されたギャップによって前記光導波管の下にある前記基盤から前記光導波管が実質的に熱的に隔離されるように、前記光導波管の側面に接続されるとともに前記光導波管を支持する複数の熱フロー制限ピラー」に、それぞれ相当する。

また、引用発明1では「複数の溝21a,21b,22a,22b,23a,23bを設け、溝21a,21bと22a,22bおよび溝22a,22bと23a,23bの間にブリッジ構造部31a,31bおよび32a,32bを配設し」ていることから、複数の溝21a,21b,22a,22b,23a,23bにより、熱フローを制限している。そうすると、引用発明1の「分離光導波路部13とシリコン基板1との間に形成されたシリコン基板除去領域12と、複数の溝21a,21b,22a,22b,23a,23bを設け、溝21a,21bと22a,22bおよび溝22a,22bと23a,23bの間にブリッジ構造部31a,31bおよび32a,32bを配設し、分離光導波路部13の側面に接続されるとともに分離光導波路部13を支持するブリッジ構造部31a,31bおよび32a,32b」は、本願発明1の「前記光導波管と基盤との間に形成されたギャップによって前記光導波管の下にある前記基盤から前記光導波管が実質的に熱的に隔離されるように、前記光導波管の側面に接続されるとともに前記光導波管を支持する複数の熱フロー制限ピラーであって、前記ピラーが前記光導波管から前記ピラーを支持する支持構造への熱フローを制限する、複数の熱フロー制限ピラー」に相当する。

そうすると、本願発明1と引用発明1は、以下の構成で一致する。
「熱光学スイッチであって、
光導波管と、
前記光導波管の表面との熱的接点における抵抗性ヒータと、
前記光導波管と基盤との間に形成されたギャップによって前記光導波管の下にある前記基盤から前記光導波管が実質的に熱的に隔離されるように、前記光導波管の側面に接続されるとともに前記光導波管を支持する複数の熱フロー制限ピラーであって、前記ピラーが前記光導波管から前記ピラーを支持する支持構造への熱フローを制限する、複数の熱フロー制限ピラーとを備えた、熱光学スイッチ。」

本願発明1と引用発明1は、以下の構成で相違する。

相違点1
熱フロー制限ピラーについて、本願発明1は、前記ピラーの各々の前記光導波管により近い断面は、前記ピラーの各々の前記光導波管からより遠い断面より小さく、前記ピラーの各々は、基盤側およびその反対側が台形形状である四角柱を含むのに対し、引用発明1は、そのようなものか明らかでない点。

b 相違点1について
引用文献3では、ヒータ16からの熱損失の実質的な部分は、半導体基板10から生じると判断して、コア12及び加熱部16の下の基板10の材料の実質的な部分は除去され、基材10の比較的薄い支柱24を残している。
そうすると、引用発明1では、分離光導波路部13とシリコン基板1との間に形成されたシリコン基板除去領域12が設けられており、すでに、分離光導波路部13とシリコン基板1とは、実質的に熱的に隔離されているので、引用文献3の技術的事項を適用する動機はない。

また、断面積が他より小さい構造体を、光導波管の近くに配して、熱フロー制限に利用する旨が、引用文献3等から周知な技術思想だとしても、上記同様動機付けがなく、さらに、本願請求項1に係る発明では、ピラーの各々は、基盤側およびその反対側が台形形状である四角柱を含むとの特定の形状とすることで、光導波管を支持し、熱フローをより制限するとの効果を奏すると認められることを踏まえると、引用発明1において、「前記ピラーの各々の前記光導波管により近い断面は、前記ピラーの各々の前記光導波管からより遠い断面より小さく、前記ピラーの各々は、基盤側およびその反対側が台形形状である四角柱を含む」とすることは、周知の技術思想の具現化における微差とはいえない。

c したがって、本願発明1は、当業者であっても引用発明1及び引用文献3に記載された技術的事項又は引用発明1及び周知技術に基づいて容易に発明ができたものであるとはいえない。

d 引用発明2の「『アンダークラッド2』と『コア3』と『オーバークラッド4』」は、本願発明1の「光導波管」に、引用発明2の「『オーバークラッド4上のコア3に対応する位置に』『設けられ』た『ヒータ6』」は、本願発明1の「光導波管の表面との熱的接点における抵抗性ヒータ」に、引用発明2の「コア3の下に位置するアンダークラッド2と石英基板1との間は、ガラス導波路素子の長手方向全長にわたり空隙となるように、コア3に対応する位置のオーバークラッド4の側面に接続されるとともに、アンダークラッド2及びオーバークラッド4で覆われているコア3を支持する複数の部分であって、複数の空隙(ビット)5の間に設けられている複数の部分」は、本願発明1の「前記光導波管と基盤との間に形成されたギャップによって前記光導波管の下にある前記基盤から前記光導波管が実質的に熱的に隔離されるように、前記光導波管の側面に接続されるとともに前記光導波管を支持する複数の熱フロー制限ピラーであって、前記ピラーが前記光導波管から前記ピラーを支持する支持構造への熱フローを制限する、複数の熱フロー制限ピラー」に、それぞれ相当する。

また、引用発明2の「ガラス導波路素子」と本願発明1の「熱光学スイッチ」は、素子である点で一致する。

「素子であって、
光導波管と、
前記光導波管の表面との熱的接点における抵抗性ヒータと、
前記光導波管と基盤との間に形成されたギャップによって前記光導波管の下にある前記基盤から前記光導波管が実質的に熱的に隔離されるように、前記光導波管の側面に接続されるとともに前記光導波管を支持する複数の熱フロー制限ピラーであって、前記ピラーが前記光導波管から前記ピラーを支持する支持構造への熱フローを制限する、複数の熱フロー制限ピラーとを備えた、素子。」

本願発明1と引用発明2は、以下の構成で相違する。

相違点2
熱フロー制限ピラーについて、本願発明1は、前記ピラーの各々の前記光導波管により近い断面は、前記ピラーの各々の前記光導波管からより遠い断面より小さく、前記ピラーの各々は、基盤側およびその反対側が台形形状である四角柱を含むのに対し、引用発明2は、そのようなものか明らかでない点。

相違点3
本願発明1は、「熱光学スイッチ」であるのに対し、引用発明2は、そのようなものか明らかでない点。

e 相違点2について
引用文献3では、ヒータ16からの熱損失の実質的な部分は、半導体基板10から生じると判断して、コア12及び加熱部16の下の基板10の材料の実質的な部分は除去され、基材10の比較的薄い支柱24を残している。
そうすると、引用発明2では、コア3の下に位置するアンダークラッド2と石英基板1との間は、ガラス導波路素子の長手方向全長にわたり空隙となっており、すでに、コア3と石英基板1とは、実質的に熱的に隔離されているので、引用文献3の技術的事項を適用する動機はない。

また、断面積が他より小さい構造体を、光導波管の近くに配して、熱フロー制限に利用する旨が、引用文献3等から周知な技術思想だとしても、上記同様動機付けがなく、さらに、本願請求項1に係る発明では、ピラーの各々は、基盤側およびその反対側が台形形状である四角柱を含むとの特定の形状とすることで、光導波管を支持し、熱フローをより制限するとの効果を奏すると認められることを踏まえると、引用発明2において、「前記ピラーの各々の前記光導波管により近い断面は、前記ピラーの各々の前記光導波管からより遠い断面より小さく、前記ピラーの各々は、基盤側およびその反対側が台形形状である四角柱を含む」とすることは、周知の技術思想の具現化における微差とはいえない。

f したがって、相違点3について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明2及び引用文献3に記載された技術的事項又は引用発明2及び周知技術に基づいて容易に発明ができたものであるとはいえない。

(イ)本願発明2-15について
本願発明2-15も、相違点1-3に係る本願発明1の構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1及び引用文献3に記載された技術的事項又は引用発明1及び周知技術、又は、引用発明2及び引用文献3に記載された技術的事項又は引用発明2及び周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第4 当審拒絶理由について
平成31年2月19日付けで、請求項1-21について発明が不明確である、及び、この出願は、発明の詳細な説明の記載が不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない、との拒絶の理由を通知しているが、令和元年5月24日の手続補正により補正された結果、この拒絶理由は解消した。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の拒絶理由及び当審の拒絶理由によっては、拒絶することができない。
また、他に本件出願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-06-24 
出願番号 特願2016-533084(P2016-533084)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G02F)
P 1 8・ 536- WY (G02F)
P 1 8・ 121- WY (G02F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐藤 宙子  
特許庁審判長 西村 直史
特許庁審判官 野村 伸雄
星野 浩一
発明の名称 熱的隔離および熱制限ピラーを有する集積熱光学スイッチ  
代理人 実広 信哉  
代理人 木内 敬二  

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