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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 B66F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B66F
管理番号 1352635
審判番号 不服2018-8528  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-06-21 
確定日 2019-07-03 
事件の表示 特願2015-24193「スクリュージャッキ」拒絶査定不服審判事件〔平成28年8月18日出願公開、特開2016-147724、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年2月10日の出願であって、平成29年6月14日付け(発送日:同年7月11日)で拒絶の理由が通知され、同年8月25日に手続補正がされ、同年12月5日付け(発送日:平成30年1月9日)で最後の拒絶の理由が通知され、同年2月21日に手続補正がされたが、同年2月28日付けで平成30年2月21日付けの手続補正が却下されるともに、同日付け(発送日:同年3月27日)で拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対して同年6月21日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、その審判の請求と同時に手続補正がされ、平成31年2月8日付け(発送日:同年3月5日)で当審より拒絶の理由が通知され、同年3月6日に手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

(進歩性)本願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

請求項1及び2に対して:引用文献1ないし4

引用文献等一覧
1.米国特許第2096050号明細書
2.実公昭10-163号公報
3.特開2003-12280号公報
4.独国特許出願公開第1955575号明細書

第3 本願発明
本願の請求項1及び2に係る発明(以下、「本願発明1」及び「本願発明2」という。)は、平成31年3月6日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定された、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
中央にスラスト軸受が設けられ、ジャッキアップ時には地面に置かれるベッド上にケースを取付け、前記スラスト軸受上には、外周面にネジが形成されており、上端部にストッパピンを設けた主ネジ軸を直立させた大傘歯車を設け、その大傘歯車には、ケースの外部からの駆動で回転する小傘歯車を噛合せる一方、大傘歯車を介して回転する主ネジ軸の外周面に設けられた主ネジ外周ネジ部には補助ネジ筒下部の内側面に設けられた補助ネジ内周ネジ部を噛合せる一方、その補助ネジ筒外周面に設けられた補助ネジ外周ネジ部には、内筒下部の内周面に設けられた内筒内周ネジ部を噛合せ、
前記小傘歯車の回転により前記大傘歯車および前記主ネジ軸が回転し、前記主ネジ軸の回転により前記補助ネジ筒が昇降する一方、前記補助ネジ筒の回転により前記内筒を昇降させると共に、前記内筒下部の外周面側に設けた内筒側ストッパ部が外筒上部の内周面側に設けた外筒側ストッパ部に当接することにより当該外筒も上昇させ、前記内筒の上部には車両等を受ける車両等受部が設けられたスクリュージャッキであって、
前記ケースは、
ベッド上に固定されるお椀を反転させたような逆カップ形状のケース本体部と、
そのケース本体部の上部から鉛直方向に延びる所定の長さを有し、前記内筒や前記外筒、前記主ネジ軸および前記補助ネジ筒を収容する円筒状の筒状ケース部と、
ハンドル継手が挿入され、ハンドル継手を回転可能に支持するハンドル継手支持円筒部とを備え、
前記ケース本体部と前記ハンドル継手支持円筒部とが接合する前記ケース本体部の接合面を平面で構成し、
前記ベッドは、
正方形の4つの角をそれぞれ当該ベッドの中心より偏芯させ、ほぼ、その正方形の対角線のほぼ1/2の長さの半径の円弧により切り取った4つの直線縁部および曲線縁部を有する8角形に近似した近似8角形であり、中央に前記スラスト軸受を受けるための凹部が形成されており、当該凹部は、前記曲線縁部に対向する曲線縁部対向凹部内側面と前記直線縁部に対向する直線縁部対向凹部内側面とを備えていて、前記曲線縁部対向凹部内側面は当該ベッドの中心に対し前記直線縁部対向凹部内側面よりも離れており、前記直線縁部対向凹部内側面と前記曲線縁部対向凹部内側面とは径方向凹部内側面によって連続していることを特徴とするスクリュージャッキ。
【請求項2】
請求項1記載のスクリュージャッキにおいて、
前記ベッドは、
幅がほぼ109mmの正方形の4つの角をそれぞれ当該ベッドの中心より偏芯させ、ほぼ、その正方形の対角線のほぼ1/2の長さの半径の円弧により切り取った4つの直線縁部および曲線縁部を有する8角形に近似した近似8角形であり、
当該ベッドの中心を挟み対向する曲線縁部間の間隔をほぼ120mm以上にしたことを特徴とするスクリュージャッキ。」


第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された米国特許第2096050号明細書(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は、理解の一助のために当審が付与した。以下同様。)

(1)「In Figs. 1 and 2 there is shown an extensible bottom drive lifting jack of the general type disclosed in my prior patent, Reissue Patent No.17,527, dated December 17, 1929. As shown, a generally cylindrical elongated casting 10 has formed in the bottom portion thereof a bearing for receiving a rotatable shaft 11 to which there is secured at the inner end and within the casting, a driving pinion 12. To the other end of the shaft 11 there is secured a member having a squared socket 14 adapted to receive a suitable handle by which the shaft and the pinion 12 may be rotated to extend the jack. Secured to the bottom of the casting 10 in a suitable manner is a base cap member 16, upon which there is supported a rotatable gear 18 in engagement with and adapted to be rotated by pinion 12. The gear 18 is centered with respect to cap member 16 by means of an upstanding circular ridge 19 formed on the cap member which engages the under side of the bevelled flange of the gear, as shown particularly in Fig. 1.
The inner or small solid screw 21 of the jack is carried upon the gear 18 and is secured thereto and constrained for rotation there with by means of an attachment lug consisting of a generally rectangular or oblong extension 23, extending axially from the lower end thereof through a similarly shaped opening, best shown in Fig. 18, formed in the central part of the gear, and a projection 24, formed angularly at the end of the extension. The attachment lug co-operates with pinion 12 and an inwardly struck projection 26 formed in casting member 10 to hold screw 21 and the gear 18 in non-separable relation, as will be more particularly pointed out hereinafter. Screw 21 is threaded througtout its length, the threads at the upper end of the screw being deformed to form a thread stop.
The threads of screw 21 engage threads formed internally on the lower upset or thickened end of an intermediate screw sleeve 28. The screw sleeve 28 is threaded externally throughout its length, the external threads at the upper end of the sleeve having some suitable thread stop arranged therewith. In the instance show a taper pin 29 arranged between the threads is used. The external thread on the screw sleeve 28 co-operates with the thread formed internally on the lower upset or thickened end on an outer or large threaded sleeve member 30. At the upper end of sleeve 30 is secured a cap 31 which is adapted to engage the object to be lifted by the jack. The cap member 31 may be suitably secured to sleeve 30 by heading over a flange on the cap into an annular recess 32 cut in the upper end of sleeve 30. Sleeve 30 is not externally threaded, but has at its lower extremity a radially extending projection 34 which slides within an elongated channel 35 running substantially through the length of a non-threaded sleeve member 37, which embraces sleeve 30. Channel 35 is struck inwardly at its upper end, as indicated at 38, Fig. 2, to prevent the withdrawal of projection 34 upwardly from the channel. Channel 35 fits within and slides longitudinally of a co-operating channel 40, formed longitudinally substantially throughout the length of casting member 10. Channel 35 is formed with an outwardly struck portion 41 at its lower end which co-operates with an inwardly projecting portion 42 formed at the upper end of the channel 40 in casting 10, to prevent withdrawal of sleeve 37 upwardly from casting 10.」(第1ページ右欄第16行ないし第2ページ左欄第34行)
(当審仮訳)
図1及び2において、一般的なタイプの、私の前の特許である1929年12月17日に公開された再発行特許No.17,527のリフティングジャッキが示される。示されるように、概ね筒状の鋳造物10の底部に軸受が形成され、そこで回転軸11を受けている。回転軸11はその内端に、鋳造物10内で、駆動ピニオン12を保持している。回転軸11の他端に矩形のソケット14があり、そこにハンドルが取り付けられ、それにより回転軸11及びピニオン12が回転させられ、ジャッキが伸びる。鋳造物10の底に取り付けられているのはキャップ要素16であって、その上に、ピニオン12に噛み合い回転させられる回転歯車18が支持されている。歯車18は、キャップ要素16上に形成された立ち上がり環状隆起部19によって、図1に示されるように、その斜めのフランジの下側が該立ち上がり環状隆起部19に係合することで、キャップ要素16に対してセンタリングされている。
ジャッキの、内側又は小中実ネジ21が、概ね矩形又は長方形の伸び出し部23からなる取付けラグによって、歯車18上にそれに対して相対回転不能に取り付けられている。伸び出し部23は、図18に最もよく示されるような同形状の開口から、歯車18に対して軸方向下側に伸びている。そして、突起24がその端部に形成されている。取付けラグはピニオン12と協働する。そして、ネジ21と歯車18が分離しないように保持するために内部鋳造突起26が鋳造物10に形成されている。この詳細は後述する。ネジ21にはその長さ方向に沿ってネジ山が形成され、そのネジ山は上端にネジ止めが形成されている。
ネジ21のネジ山は 中間ネジ筒28の内側の下方又は厚い端部に形成された内ネジに係合している。ネジ筒28は、その外側に長さ方向に沿って外ネジが形成され、外ネジは上端にネジ止めを持っている。例は、ネジ山の間に設けられたテーパーピン29の使用を示す。ネジ筒28の外ネジは、外側又は大ネジ筒状要素30の内側の下方又は厚い端部に形成された内ネジと協働する。筒状要素30の上端にはキャップ31が係合しており、キャップ31は、持ち上げ対象物に係合するようになっている。キャップ31は筒状要素30の上端に切除された環状凹部32に、そのフランジが係合することで、係合するようになっている。筒状要素30には外ネジは無いが、その下端に径方向突起34があり、径方向突起34は、筒状要素30を取り囲むネジ無し筒状要素37の長手方向に形成された長手方向溝35内をスライドする。溝35は、図2の38で示されるように、その上端に径方向突起が鋳造され、径方向突起34が上方向に抜け出ないようにされている。溝35は、鋳造物10の長手方向に形成された協働溝40に入り込み長手方向にスライドする。溝35には、その下端に、外向き鋳造突起41が形成され、突起41は鋳造物10に設けられた溝40の上端に形成された突起42と協働して、筒状要素37が上方に抜け出ることを防止する。

(2)「In operation pinion 12 is rotated to effect the extension of the jack. The operation of pinion 12 rotates gear l8 meshing therewith and operation of geat 18 rotates screw 21. Sleeve 30 is held from rotation by virtue of the engagement of its extension 34 with channel 35 in Sleeve 37, and by virtue of the engagement of this channel 35 with the larger channel 40 formed in casting 10. Screw 21 is in threaded engagement with sleeve 28, and sleeve 28 is in turn in threaded engagement with sleeve 30. As screw 21 is rotated therefore, and sleeve 30 held from rotation, it will be seen that, due to the threaded engagement of the parts, sleeves 28 and 30 will be extended from screw 21 from the FIg.1 to the Fig.2 position of the parts. During this operation sleeve 28 may at times rotate with screw 21 and at times be held non-rotatable with sleeve 30. Ultimately, however, the parts will reach their Fig.2 position.
The mutilated or deformed threads at the upper end of screw 21 and the stop 29 on sleeve 28 limit the upward movement of the parts. Due to the fact that the thread deformations or mutilations on screw 21 are sharply formed, the mutilated portions have no tendency to wedge or jam with their co-operating threads. The thread stop which is thus formed by the thread mutilation is strong and is positive in action inasmuch as a double stop is formed, one stop being, the widened top 62 of the mutilated threads, and the other stop being the outwardly extending bottom portion 62 of the threads. 」(第3ページ右欄第33行ないし第65行)
(当審仮訳)
動作において、ピニオン12はジャッキを伸ばすために回転させられる。ピニオン12の動作は、それと噛み合う歯車18を回転させ、歯車18の動作はネジ21を回転させる。筒状部材30は、突起34と筒状部材37の溝35との係合により、そして、この溝35と、鋳造物10に形成されたより大きな溝40との係合により、その回転が防止される。ネジ21は、筒状部材28のネジ山と係合し、筒状部材28は、回転中、筒状部材30のネジ山と係合する。ネジ21の回転中、筒状部材30の回転は防止される。それにより、筒状部材28と筒状部材30は、図1の位置から図2の位置へと、ネジ21から伸びることが理解できるであろう。この動作中、筒状部材28は、時には、ネジ21とともに回転し、時には、筒状部材30とともに非回転の状態となる。最終的には、各部品は、図2の位置に到達する。
ネジ21のネジ山の上端部の削り又は変形と筒状部材28のストッパ29が、各部品の上限位置を決める。このネジ山の変形又は削りは鋭く形成されるという事実により、削り部分で、食い込んだり動かなくなったりすることはない。このように削りにより形成されたネジストッパは強固であるとともに、一つは削られたネジ山の広い頂部62からなり、もう一つは62の外側への広がりからなる、という二重ストッパが形成されるために、動作において確実である。」

(3)図1及び2の図示内容から、鋳造物10は、キャップ要素16が取り付けられる底広がり部分と、ネジ21および中間ネジ筒28を収容する筒状の部分を備えているといえる。

上記記載事項及び認定事項並びに図面の図示内容からみて、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「中央に立ち上がり環状隆起部19が設けられ、ジャッキアップ時には地面に置かれるキャップ要素16上に鋳造物10を取付け、前記立ち上がり環状隆起部19上には、外周面にネジが形成されており、上端部にネジ山の広い頂部62を設けたネジ21を直立させた回転歯車18を設け、その回転歯車18には、鋳造物10の外部からの駆動で回転するピニオン12を噛合せる一方、回転歯車18を介して回転するネジ21の外周面に設けられたネジ21のネジ山には中間ネジ筒28下部の内側面に設けられた内ネジを噛合せる一方、その中間ネジ筒28外周面に設けられた外ネジには、筒状要素30の内周面に設けられた内ネジを噛合せ、
前記ピニオン12の回転により前記回転歯車18および前記ネジ21が回転し、前記ネジ21の回転により前記中間ネジ筒28が昇降する一方、前記中間ネジ筒28の回転により前記筒状要素30を昇降させると共に、前記筒状要素30下部の外周面側に設けた径方向突起34が筒状要素37の内周面側に設けた溝35の径方向突起38に当接することにより当該筒状要素37も上昇させ、前記筒状要素30の上部には持ち上げ対象物を受けるキャップ要素31が設けられたリフティングジャッキであって、
前記鋳造物10は、
キャップ要素16上に固定される底広がり部分と、
その底広がり部分の上部から鉛直方向に延びる所定の長さを有し、前記筒状要素30や前記筒状要素37、前記ネジ21および前記中間ネジ筒28を収容する筒状部分と、
回転軸11が挿入され、ハンドル継手を回転可能に支持する軸受とを備える、
リフティングジャッキ。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された実公昭10-163号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、一部の漢字は、新字体で表記した。

(1)「本案ハ複式ニ伸長セシムル「ヂャツキ」ニシテ基臺(1)ノ中央部ニ具備スル玉受(イ)ニ竪溝(ハ)ヲ穿設シ該竪溝(ハ)ニ囘轉停止用ノ角型固定杆(7)ノ下端ナル固定部(8)ヲ上下ニ摺動スヘク嵌入シ該固定杆(7)ノ他端ハ上端ニ荷物受(9)ヲ下端外側ニ螺絲ヲ有スル圓筒杆(6)ノ底部中央に穿設セル角型孔ニ上下ニ摺動スヘク嵌入シ該圓筒杆(6)ハ更ニ上端ハ圓型孔内面及ヒ外側下半部ニ螺絲ヲ刻セル大圓筒杆(5)内ニ螺合シ該大圓筒杆(5)ヲ更ニ「スラスト」軸受(12)ヲ介在シテ前記玉受(イ)ヲ被覆スル如ク形成装着セル下側ニ斜齒列ヲ具備スル大斜齒輪(3)ノ内側ニ螺合シ更ニ該大斜齒輪(3)ニ傳動スヘキ小斜齒輪(4)ヲ装着セル基鈑(2)ヲ被着シテナル構造ヲ要旨トスルモノナリ尚ホ圖中(10)ハ把手挿入管(11)ハ基鈑(2)ノ基臺(1)ヘノ螺着杆又(ロ)ハ把手挿入管軸受ナリ」(第1ページ第4行ないし第9行)

(2)図1及び2から、基鈑2と把手挿入管軸受(ロ)とが接合する前記基鈑(2)の接合面が平面で構成されていることが看取できる。

上記記載事項及び認定事項並びに図面の図示内容からみて、引用文献2には次の事項(以下、「引用文献2記載事項」という。)が記載されていると認められる。

「複式ヂャツキの基鈑(2)が、把手挿入管(10)が挿入され、前記把手挿入管(10)を回転可能に支持する把手挿入管軸受(ロ)を備えており、前記基鈑2と前記把手挿入管軸受(ロ)とが接合する前記基鈑(2)の接合面を平面で構成すること。」

3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された特開2003-12280号公報(以下、「引用文献3」という。)には、図面(特に、図1、6及び7を参照)とともに次の事項が記載されている。

(1)「【0019】前記基板1の内面中央に凹部27が形成され、該凹部27にスラストベアリング28が収容され、該ベアリング28に第1スクリュ-シャフト29の下端部が回動自在に支持されている。前記第1スクリュ-シャフト29の下端部の小径軸部29aに、略椀状のベベルギア30が同動可能に連結され、その下面が前記ベアリング28のインナ-レ-ス上に着座している。」

(2)図6及び7の図示内容から、基板1が、正方形の4つの角をほぼ円弧状の曲線により切り取った4つの直線縁部および曲線縁部を有する8角形に近似した近似8角形であることが看取できる。

上記記載事項及び認定事項並びに図面の図示内容からみて、引用文献3には次の事項(以下、「引用文献3記載事項」という。)が記載されていると認められる。

「基板1が、正方形の4つの角をほぼ円弧状の曲線により切り取った4つの直線縁部および曲線縁部を有する8角形に近似した近似8角形であり、中央にスラストベアリング28を受けるための凹部27が形成されている車載ジャッキ。」

4.引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された独国特許出願公開第1955575号明細書(以下、「引用文献4」という。)には、図面(特に、図1及び3を参照)とともに次の事項が記載されている。なお、aウムラウトはae、uウムラウトはue、エスツェットはssと表記した。

(1)「Wie insbesondere aus Fig.3 hervorgeht, besitzt der Gehaeuseboden 2' des Gehaeuses 12 drei um jeweils 120°zueinander versetzte Arretierungsnasen 17 zur Aufnahme des Axiallagers 8 sowie eine hierzu konzentrische Durchtrittsbohrung 18 (s. Fig. 1) fuer die Gewindespindel 3, wobei der Bohrungsumfang einen nach aussen bzw. unten tiefgezogenen Fuehrungsflansch 18' aufweist. Das aus dem Getriebegehaeuse 12 herausragende oberste Ende des Standrohres 1 ist von einer Kappe 19 aus Gummi oder Kunstsoff abgedeckt.」(第5ページ第19行ないし第27行)
(当審仮訳)
特に、図3に見られるように、ハウジング12のハウジング底部2’は、3個の120°間隔で配置された、スラスト軸受3を受けるための固定用凸部17、及びネジ軸3のための貫通孔18(図1を参照)を有する。前記貫通孔18は、その周囲に外側又は下側に引き延ばされたガイドフランジ18’を有する。ハウジング12から突き出したスタンドパイプ1の上端は、ゴム又は樹脂製のキャップ19で覆われている。

(2)図1及び3の図示内容及び技術常識から、固定用凸部17は、その内側面でスラスト軸受8が横ずれしないように、スラスト軸受8の外周を3箇所で押さえているといえる。

上記記載事項及び認定事項並びに図面の図示内容からみて、引用文献4には次の事項(以下、「引用文献4記載事項」という。)が記載されていると認められる。

「ハウジング12のハウジング底部2’に、スラスト軸受8を受けるための3箇所の固定用凸部17が形成されており、当該固定用凸部17が、固定用凸部17内側面でスラスト軸受8が横ずれしないように、スラスト軸受8の外周を3箇所で押さえるようにされている、ジャッキ。」

第5 対比・判断
1.本願発明1について
本願発明1と引用発明とを対比すると、引用発明における「立ち上がり環状隆起部19」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願発明1における「スラスト軸受」に相当し、以下同様に、「キャップ要素16」は「ベッド」に、「鋳造物10」は「ケース」に、「ネジ止め」は「ストッパピン」に、「ネジ21」は「主ネジ軸」に、「回転歯車18」は「大傘歯車」に、「ピニオン12」は「小傘歯車」に、「ネジ21のネジ山」は「主ネジ外周ネジ部」に、「中間ネジ筒28」は「補助ネジ筒」に、「中間ネジ筒28の内側面に設けられた内ネジ」は「補助ネジ内周ネジ部」に、「中間ネジ筒28外周面に設けられた外ネジ」は「補助ネジ外周ネジ部」に、「筒状要素30」は「内筒」に、「筒状要素30下部の内周面に設けられた内ネジ」は「内筒下部の内周面に設けられた内筒内周ネジ部」に、「径方向突起34」は「内筒側ストッパ部」に、「筒状要素37」は「外筒」に、「溝35の径方向突起38」は「外筒側ストッパ部」に、「持ち上げ対象物」は「車両等」に、「リフティングジャッキ」は「スクリュージャッキ」に、「筒状部分」は「円筒状の筒状ケース部」に、「回転軸11」は「ハンドル継手」に、「軸受」は「ハンドル継手支持円筒部」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「底広がり部分」と、本願発明1の「お椀を反転させたような逆カップ形状のケース本体部」とは「ケース本体部」という限りにおいて一致している。

したがって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
[一致点]
「中央にスラスト軸受が設けられ、ジャッキアップ時には地面に置かれるベッド上にケースを取付け、前記スラスト軸受上には、外周面にネジが形成されており、上端部にストッパピンを設けた主ネジ軸を直立させた大傘歯車を設け、その大傘歯車には、ケースの外部からの駆動で回転する小傘歯車を噛合せる一方、大傘歯車を介して回転する主ネジ軸の外周面に設けられた主ネジ外周ネジ部には補助ネジ筒下部の内側面に設けられた補助ネジ内周ネジ部を噛合せる一方、その補助ネジ筒外周面に設けられた補助ネジ外周ネジ部には、内筒下部の内周面に設けられた内筒内周ネジ部を噛合せ、
前記小傘歯車の回転により前記大傘歯車および前記主ネジ軸が回転し、前記主ネジ軸の回転により前記補助ネジ筒が昇降する一方、前記補助ネジ筒の回転により前記内筒を昇降させると共に、前記内筒下部の外周面側に設けた内筒側ストッパ部が外筒上部の内周面側に設けた外筒側ストッパ部に当接することにより当該外筒も上昇させ、前記内筒の上部には車両等を受ける車両等受部が設けられたスクリュージャッキであって、
前記ケースは、
ベッド上に固定されるケース本体部と、
そのケース本体部の上部から鉛直方向に延びる所定の長さを有し、前記内筒や前記外筒、前記主ネジ軸および前記補助ネジ筒を収容する筒状ケース部と、
ハンドル継手が挿入され、ハンドル継手を回転可能に支持するハンドル継手支持円筒部とを備える、
スクリュージャッキ。」

[相違点1]
本願発明1においては、ケース本体部が「お椀を反転させたような逆カップ形状」であって、「前記ケース本体部と前記ハンドル継手支持円筒部とが接合する前記ケース本体部の接合面を平面で構成」されているのに対して、引用発明においては、かかる事項を備えていない点。

[相違点2]
本願発明1においては、ベッドは、「正方形の4つの角をそれぞれ当該ベッドの中心より偏芯させ、ほぼ、その正方形の対角線のほぼ1/2の長さの半径の円弧により切り取った4つの直線縁部および曲線縁部を有する8角形に近似した近似8角形であり、中央に前記スラスト軸受を受けるための凹部が形成されており、当該凹部は、前記曲線縁部に対向する曲線縁部対向凹部内側面と前記直線縁部に対向する直線縁部対向凹部内側面とを備えていて、前記曲線縁部対向凹部内側面は当該ベッドの中心に対し前記直線縁部対向凹部内側面よりも離れており、前記直線縁部対向凹部内側面と前記曲線縁部対向凹部内側面とは径方向凹部内側面によって連続している」のに対して、引用発明においては、かかる事項を備えていない点。

事案に鑑み、上記相違点2について検討する。
引用文献2記載事項は「複式ヂャツキの基鈑(2)が、把手挿入管(10)が挿入され、前記把手挿入管(10)を回転可能に支持する把手挿入管軸受(ロ)を備えており、前記基鈑2と前記把手挿入管軸受(ロ)とが接合する前記基鈑(2)の接合面を平面で構成すること。」であり、引用文献3記載事項は「基板1が、正方形の4つの角をほぼ円弧状の曲線により切り取った4つの直線縁部および曲線縁部を有する8角形に近似した近似8角形であり、中央にスラストベアリング28を受けるための凹部27が形成されている車載ジャッキ。」であり、引用文献4記載事項は「ハウジング12のハウジング底部2’に、スラスト軸受8を受けるための3箇所の固定用凸部17が形成されており、当該固定用凸部17が、固定用凸部17内側面でスラスト軸受8が横ずれしないように、スラスト軸受8の外周を3箇所で押さえるようにされている、ジャッキ。」であり、上記相違点2に係る本願発明1の構成を開示ないし示唆するものではない。また、上記相違点2に係る本願発明1の構成は、本願の出願時において周知の技術でもない。
そうすると、引用発明に、引用文献2記載事項ないし引用文献4記載事項を参酌しても、上記相違点2に係る本願発明1の構成とすることはできない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明及び引用文献2記載事項ないし引用文献4記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2.本願発明2について
本願の特許請求の範囲における請求項2は、請求項1の記載を他の記載に置き換えることなく引用して記載されたものであるから、本願発明2は、本願発明1の発明特定事項を全て含むものである。
したがって、本願発明2は、本願発明1と同様の理由により、引用発明及び引用文献2記載事項ないし引用文献4記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3.小括
したがって、本願発明1及び2は、原査定の引用文献1ないし4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第6 当審拒絶理由について
1.当審拒絶理由の概要

(サポート要件)本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

(明確性)本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。



●サポート要件について

請求項1に「前記直線縁部に対向する直線縁部対向凹部内側面で前記スラスト軸受が横ずれしないように押さえ、」との記載及び「当該ベッドの中心からほぼ径方向に延びる径方向凹部内側面」との記載があるが、これらの記載は、発明の詳細な説明には記載されていない。
よって、請求項1及び請求項1を引用する請求項2に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。

明確性について

請求項1に「そのケース本体の上部から鉛直方向に延びる所定の長さを有し、」との記載があるが、「そのケース本体」が何を指し示しているのか不明確である。
よって、請求項1及び請求項1を引用する請求項2に係る発明は明確でない。

2.当審拒絶理由についての判断
平成31年3月6日の手続補正により請求項1の記載が補正された結果、当審拒絶理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-05-27 
出願番号 特願2015-24193(P2015-24193)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (B66F)
P 1 8・ 121- WY (B66F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 今野 聖一  
特許庁審判長 金澤 俊郎
特許庁審判官 冨岡 和人
鈴木 充
発明の名称 スクリュージャッキ  
代理人 中島 重雄  

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