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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 E02B |
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管理番号 | 1352664 |
審判番号 | 不服2018-10657 |
総通号数 | 236 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-08-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-08-03 |
確定日 | 2019-07-04 |
事件の表示 | 特願2014- 30940「止水ゴム用押さえ板」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 8月27日出願公開、特開2015-155613、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成26年2月20日の出願であって、平成29年10月10日付けで拒絶理由通知がされ、平成29年11月13日付けで手続補正がされ、平成30年4月23日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成30年8月3日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成30年4月23日付け拒絶査定)の概要は以下のとおりである。 本願請求項1?6に係る発明は、以下の引用文献1、3?6に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開平1-192928号公報 2.特開平4-182532号公報 3.特開2013-079543号公報 4.特開昭60-115725号公報 5.特開平11-158984号公報 6.特開2008-280748号公報 第3 本願発明 本願請求項1?6に係る発明(以下「本願発明1」などという。)は、平成29年11月13日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1?6は以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 目地止水ゴムを固定するための押さえ板であって、 固定する止水ゴムの固定用側縁部に沿って延びる長尺状の金属製平板と、 前記平板の長さ方向に所定の間隔を開けて穿孔された複数のボルト挿通用の孔と、 前記平板の長さ方向において、前記ボルト挿通用の孔が形成された位置に対応する位置であって、前記平板の下面の一方側縁部に突設され、平板を押し下げる際の支点として作用し得る複数個の突起と、 を備えることを特徴とする止水ゴム用押さえ板。 【請求項2】 前記平板の上面の他方側縁部には、平板の上面から略垂直に立ち上がり、所定の高さで平板から遠ざかる方向に略直角に曲がった断面視L字状の膨らみ防止板が備えられていることを特徴とする、請求項1記載の止水ゴム用押さえ板。 【請求項3】 前記押さえ板が止水ゴムを固定するために、止水ゴムの固定用側縁部にボルトを用いて取り付けられた状態において、 前記突起は、止水ゴム側縁部の外側に設置されることを特徴とする、請求項1または2に記載の止水ゴム用押さえ板。 【請求項4】 前記突起の突出寸法は、固定する止水ゴムの側縁部の厚み以上であることを特徴とする、請求項1?3のいずれか一項に記載の止水ゴム用押さえ板。 【請求項5】 前記固定する止水ゴムの固定用側縁部の上に載せられる長尺状の金属製平板であって、 当該平板の長さ方向に前記所定の間隔を開けて複数のボルト挿通用の孔が穿孔されている第1押さえ板をさらに有し、 前記突起の突出寸法は、固定する止水ゴムの側縁部の厚みBと、その上に設置される前記第1押さえ板の厚みAとの和以上であることを特徴とする、請求項1?3のいずれか一項に記載の止水ゴム用押さえ板。 【請求項6】 接合部を備えたコンクリート構造物と、 前記接合部の目地を止水するための目地止水ゴムと、 前記目地止水ゴムを固定するための請求項1?5のいずれか一項に記載の止水ゴム用押さえ板と、 を含むことを特徴とする、浄水センターなどの公共施設。」 第4 引用文献、引用発明等 1 引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の記載があり、以下の発明が記載されていると認められる。 (1)「産業上の利用分野 本発明は暗渠に用いられるシールドセグメント用可撓継手、ボックスカルバート用可撓継手等における弾性部材の取付構造に関するものである。」(1頁左欄下から3行?右欄1行) (2)「実施例 以下第1図および第2図に図示した本発明に係る一実施例について説明する。 第1図は暗渠における鋼製または鉄筋コンクリート製の標準セグメント1どうしを可撓セグメント2が接続している状態を示す断面図である。 一時覆工時の標準セグメント1aの端縁に円環状の外枠セグメント3が取付けられ、その外周をなして延設された外枠金具4どうしが接近した位置にある。 そして外枠金具4の先端内周面に押え板5によって端部を挟持されて1次止水用弾性部材6が本体部を弯曲させて両外枠金具4間に取付けられている。 また外枠金具4の内側に径が若干小さく幅の狭い円環状の第2の外枠金具7が外枠セグメント3に取付けられていて、押え板8によって端部が挟持されて2次止水用の蛇腹状の弾性部材9が両外枠金具7間に設けられている。 なお本可撓セグメント2は両外枠金具4の外側にスキンプレート10が仮付けされて覆工時に土砂等が両外枠金具4間に挟み込まれないようにするとともに、内側はカバー取付部材11を介して内面カバーゴム12が内張りされていて、蛇腹状の弾性部材9等に土石がつまらないよう予防している。 以上のような可撓セグメント2において、2次止水用の弾性部材9の取付部の詳細を第2図に図示する。 なお1次止水用の弾性部材6の取付構造も弾性部材9の場合と同じである。 弾性部材9はその本体部9aから取付部9bにかけて厚さが徐々に増して内周面と外周面はテーパしており、その後一定の厚さを保って端部に至っている。 外枠金具7および押え板8は前記第4図における外枠金具03と押え板04に対応し略同じ形状をしており、弾性部材9の取付部9bとの当接面がそれぞれ取付部9bの外周面および内周面に沿った形状をしており、外枠金具7および押え板8の先端部は互いに向き合う方向に突出して爪部7a,8aが形成され弾性部材9の本体部9aの基端部を挟んで、取付部9bが抜け落ちないようにしている。 押え板8の他端は外側に略取付部9bの厚さ分ほど突出した鍔部8bが設けられ、同鍔部8bと取付部9bとの間に空隙が形成されている。 同空隙において外枠金具7の内周面にナット15が固着され、同ナット15に対応する押え板8の位置に穿設された円孔をボルト16が貫通して該ナット15に螺合している。 ボルト16は押え板8の内側面との間に座金17を介在させ、その先端部はナット15に螺合貫通して外枠金具7の内部まで食い込んでいる。 このようにしてボルト16をナット15に螺合し緊締すると、押え板8はその鍔部8bの外側縁が外枠金具7の内面に当接して支点となって締め付けられるので弾性部材9の取付部9bを強力に挟持する。 以上のように外枠金具7と押え板8とを締め付けて弾性部材9の取付部9bを挟持するボルト16およびナット15が全て外枠金具7の内側に取付けられているので外枠金具7の外周面は平坦で水漏れの心配のある箇所は全くなく可撓継手のシールの信頼性を向上させることができる。 また外枠金具7の外周面にボルトの頭やナットが突設されることはないのでかかる部材を気密に密接する作業が不要で、製作工数を大幅に削減することが可能で作業効率を上げることができる。 ・・・ そして前記実施例の円環状をした押え板8の代わりに、その押え板8を周方向に亘って複数に分割した各押え片22を外枠金具7の内側より合わせ、押え片22の中央に設けられた円孔にボルト20の軸部を貫通させて一方の鍔部22bの外側縁を外枠金具7の内周面に当接し他方の爪部22aが弾性部材9の本体部9aの基端部を挟むようにする。 ・・・ したがって製作工数を削減できる前記効果とともに押え板31のズレにより弾性部材32のシール部分にズレまたは変形が生じシール性か悪化することを防止することができる。 なお前記同様ボルトとナットの位置を入れ替えた構造としてもよい。 さらに既成のボルトやナットのほかネジの切ってある円筒状のものや四角柱といった変形種のボルトやナットを使用することも考えられる。」(2頁右下欄7行?4頁右上欄7行) (3)上記(1)、(2)から、「押え板8」は、弾性部材9を固定するための押え板であるといえる。また、「円環状の第2の外枠金具7が外枠セグメント3に取付けられていて、押え板8によって端部が挟持されて2次止水用の蛇腹状の弾性部材9が両外枠金具7間に設けられている」ことと「押え板8」は「円環状」であることから、「押え板8」は固定する弾性部材9の側縁部に沿って延びる長尺状の平板であるといえる。 (4)上記(1)?(3)から、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「2次止水用の蛇腹状の弾性部材9が両外枠金具7間に設けられており、 弾性部材9を固定するための押え板8であって、 固定する弾性部材9の側縁部に沿って延びる長尺状の平板であり、 押え板8の他端は外側に略取付部9bの厚さ分ほど突出した鍔部8bが設けられ、 ナット15に対応する押え板8の位置に穿設された円孔を有し、 ボルト16をナット15に螺合し緊締すると、鍔部8bの外側縁が外枠金具7の内面に当接して支点となって締め付けられるので弾性部材9の取付部9bを強力に挟持する、 押え板。」 2 引用文献2について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1)「〔産業上の利用分野〕 この発明は地下道、暗渠等を構築するに用いるボックスカルバートに関する。」(1頁右欄6行?8行) (2)「〔実 施 例〕 第1図は実施例のボックスカルバートであり、2個のコンクリート製の筒形部材1,1の対向する端部間にまたがり配した帯状可撓性の連結材2で連結し構成されている。連結材2は第2,3図のごとく、断面方形の中空部を有する2つの筒形部材1,1の端部外周面をとり回き設けた段差部5,5において、両側縁部の断面方形をなす肉厚部6を押材7で押圧し、中央部にたるみ8をもたせて固定してある。押材7はボルト孔を挿通したボルト9の先端を筒形部材1端部の段差部5に開口する埋込ナット4に螺着、ボルト9の頭部に螺着したナット10を締付け締結されている。連結した2つの筒形部材1,1の端部外周面は、筒形部材1,1にまたがり配した鋼製カラー11で被覆してある。なお、ナット4の先端にはL形に折曲したアンカー12が固着してある。 押材7は第4,5図のごとく直線部の押材7および曲線部左右の押材7’,7’がある。いずれの押片も長尺であり、断面L形をなし直交する横片13と縦片14からなり、横片13には長さ方向に長いボルト孔15が穿孔してあり、それぞれの片13,14の先端にはL形内側に突出した突条16,16’が設けてある。なお、曲線部の押材7’,7’は、それぞれ対向する筒形部材端部外周面に対向するものであり、対称形をなす。 第6図は押材7’,7のボルト孔15に挿通し、埋込ナット4に螺着するボルト9であり、端面にθ溝17を有する。勿論、ボルト9の代りに六角形のボルト頭のあるボルトであっても差し支えない。 押材7は長いボルト孔15を挿通したボルト9を埋込みナット4に螺着し、その上端に螺着したナット10を締付けて、縦片14先端縁の突条16’を段差部5に押当て締結する。連結材2の両側縁部の肉厚部6は横片13の下面に位置し、横片13先端の突条16でその首部を押圧し固定されている。突条16の先端には、縦片14先端の突条16’を支点としたナット10の締付力が強く作用し、連結材2は押材7で筒形部材端部外周面に強く押圧し固定される。」(2頁右上欄13行?右下欄下から6行) 3 引用文献3について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1)「【技術分野】 【0001】 この発明は、管体継手用の止水ゴムに関する。」 (2)「【発明の効果】 【0012】 請求項1記載の発明によれば、両押さえ板と薄鋼板とにより、止水ゴムを覆うことができるので、常時水圧負荷による止水ゴムの膨出を確実に防ぐことができる。両押さえ板の先端の間隔Δが目地部の幅以上に設定されているので、地震等により目地部が狭くなる縮み変形時に、両押さえ板の先端同士の干渉が防止される。従って、地震時に止水ゴムの変形が妨げられることはない。また、止水ゴムの膨出の防止に、通例安価に製造できる一対の押さえ板および薄鋼板を利用するので、製造コストを安価にできる。 【0013】 請求項2の発明によれば、地震等により目地部が狭くなる縮み変形時に、薄鋼板が両押さえ板の基部間で突っ張ることがないので、押さえ板に対して変位可能であり、ひいては、止水ゴムの変形が妨げられることが防止される。」 (3)「【0018】 一対の押さえ板16,17は、同様に構成されている。それぞれの押さえ板16,17の同じ機能を有する構成については同じ名称および同じ符号を付す。 押さえ板16,17は、断面L字形形状の基部25と、軸方向Xについて基部25からの止水ゴム1の中央部1cに向かって所定長で延在する平板状の延設部26とを有している。基部25と延設部26とは、鋼製であり、溶接構造により一体に形成されている。 【0019】 一対の押さえ板16,17の基部25は、止水ゴム1の中間部14を挟んだ両側に配置されている。両押さえ板16,17の延設部26は、基部25から互いに逆向きに延びており、延設部26の先端同士は、目地部4の幅L以上の間隔Δ(Δ≧L)を開けて互いに対峙している。また、延設部26は、止水ゴム1の中間部14の波形の高さに見合う距離で、管体2,3の内面8,9から離れて、基部25により支持されている。」 4 引用文献4について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1)「(産業上の利用分野) 本発明は、地中に構築される筒状地下構造物の継手に関するものであって、この筒状地下構造物は例えば水道管、ガス管、電線等の収容に用いられるものである。」(1頁左欄下から2行?右欄3行) (2)「-実施例2- 第4図に示す継手21は第2シール板22および側板23の構成が実施例1と異なる。 第2シール板22は補強布11を埋設したゴムシールで構成され、撓み部24がW字状に形成されて実施例1のものよりも撓み量を多くしてある。側板23は撓み部24の側面と屈曲した2つの頂部を覆うべく先端に継目間隙側へ屈曲して延設された延設部25がある。この延設部25は撓み部24を撓み状態に保持する機能をもつ。」(3頁右上欄10行?19行) 5 引用文献5について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は暗渠等コンクリート構造物用の伸縮継手に関し、特にこれらのコンクリート構造物用継手の補修用継手として好適な伸縮継手に関する。」 (2)「【0015】 【発明の実施の形態】以下添付図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の1実施形態にかかる伸縮継手の一部を示す部分断面、図2は固定部材の平面図、図3はワッシャーの拡大断面図である。継手1は、接続される1対のコンクリート構造物2、2′の対向する端部2a、2a′の内周面2c、2c′に跨って配置されるゴム・合成樹脂等からなる短筒状の可撓止水部材3を備える。この可撓止水部材3は中央部に内周側に膨出する膨出部3aを有し、両端部3bの内周面上にはL形鋼等からなる環状の押え板4、4′が配される。さらにこの押え板4、4′の水平部4a、4a′の内周側には、鋼材等からなる断面L字状、平面視短形(図2参照)の固定部材5、5′がコンクリート構造物2,2′の周方向に所定の間隔で配設されている。この固定部材5,5′の継手の軸方向に延長する辺の一端部には外周側の面が押え板4、4′の水平部4a、4a′の内周面に接触する押え部5a、5a′が形成され、押え部5a、5a′と継手軸方向に隣接し可撓止水部材3の端縁から継手軸方向外側(コンクリート構造物2、2′の対向する端縁から遠ざかる側)の部分5b、5b′には継手軸方向に長径を有する長穴からなるアンカーボルト挿入孔5c、5c′が形成されている。また固定部材5、5′の継手軸方向に延長する辺の他端部には半径方向外側に折曲する支持部5d、5d′が形成されている。アンカーボルト6、6′(本実施形態ではホールインアンカーが使用されている)は可撓止水部材3の端縁から継手軸方向外側において周方向に所定間隔でコンクリート構造物2、2′に埋設されており、各固定部材5、5′のアンカーボルト挿通孔5c、5c′に挿通されている。また、アンカーボルト6、6′を螺合するナット7、7′と固定部材5、5′との間にはワッシャー8、8′が介挿されている。」 6 引用文献6について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献6には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1)「【技術分野】 【0001】 この発明は、可撓止水構造に関し、コンクリートで構築される、水路、水処理施設、トンネル、共同溝などのコンクリート構造物の目地部に設置して止水および相対変位を可能として構造物の破損を防止できるようにしたものである。」 (2)「【0032】 この可撓止水構造10では、可撓止水部材13の碇着部13bに当てられる押え部材17が用いられ、上方が開口したコ字状に横断面形状が構成してあり、例えば溝幅が60mm程度、溝高さが30mm程度、厚さが3mm程度とされる。この横断面形状により、平板状とする場合に比べ剛性を高めることができるとともに、軽量化を図ることができる。 【0033】 なお、さらに剛性を上げる必要がある場合には、溝底部上に平板状の板を介在させるようにすれば良い。 【0034】 この可撓止水構造10では、押え部材17をアンカーボルト14で直接コンクリート構造物11、11に固定することなく、固定部材18を用いて支持固定される。 【0035】 この固定部材18は、先後端部にほぼ垂直に同一側に突き出した先端突出部18aと後端突出部18bを備えるとともに、板状の中間部18cにアンカーボルト用の取り付け穴18dが形成されて構成されており、先端突出部18aは板状の中間部18cに対して上方に湾曲した湾曲部18eを介してほぼ垂直に突き出している。そして、この固定部材18では、中間部18cを取付位置として、作用点となる先端突出部18aと、固定部材18の支持点となる後端突出部18bまでの距離Lがアンカーボルト14の直径dの4倍以上なおかつアンカーボルト14の取付位置を中間部にすることで、これによって力点となるアンカーボルト18による締付け時に固定部材18に発生するたわみ量を大きくし、押え部材17を弾性バネ的に押えることができるようにしている。 【0036】 さらに、固定部材18の先端突出部18aに湾曲部18eを設けてあるので、一層たわみ易くすることができる。 【0037】 このような固定部材18は、例えば先端突出部18aから後端突出部18bまでの距離Lが200mm程度、横幅が40mm程度、板厚が12mm程度とされ、先端突き出し量が40mm程度としてある。」 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 ア 引用発明における「押え板8」、「弾性部材9」、「円孔」は、それぞれ本願発明1における「押さえ板」、「(目地)止水ゴム」、「孔」に相当する。 イ 引用発明における「固定する弾性部材9の側縁部に沿って延びる長尺状の平板であり」は、本願発明1における「固定する止水ゴムの固定用側縁部に沿って延びる長尺状の金属製平板」と、「固定する止水ゴムの固定用側縁部に沿って延びる長尺状の平板」の点で共通する。 ウ 引用発明における「鍔部8b」は、「押え板8の他端」に設けられて、「ボルト16をナット15に螺合し緊締すると、鍔部8bの外側縁が外枠金具7の内面に当接して支点となって締め付けられるので弾性部材9の取付部9bを強力に挟持する」ので、引用発明の「鍔部8b」は、本願発明1「突起」に相当する。 また、引用発明の「押え板8の他端は外側に略取付部9bの厚さ分ほど突出した鍔部8bが設けられ」「ボルト16をナット15に螺合し緊締すると、鍔部8bの外側縁が外枠金具7の内面に当接して支点となって締め付けられるので弾性部材9の取付部9bを強力に挟持する」ことは、本願発明1の「前記平板の長さ方向において、前記ボルト挿通用の孔が形成された位置に対応する位置であって、前記平板の下面の一方側縁部に突設され、平板を押し下げる際の支点として作用し得る複数個の突起」を備えることと、「前記平板の長さ方向において、前記平板の下面の一方側縁部に突設され、平板を押し下げる際の支点として作用し得る突起」を備える点で共通する。 エ したがって、本願発明1と引用発明は、次の一致点で一致し、相違点1、2で相違する。 (一致点) 「目地止水ゴムを固定するための押さえ板であって、 固定する止水ゴムの固定用側縁部に沿って延びる長尺状の平板と、 前記平板の長さ方向に所定の間隔を開けて穿孔された複数のボルト挿通用の孔と、 前記平板の長さ方向において、前記平板の下面の一方側縁部に突設され、平板を押し下げる際の支点として作用し得る突起と、 を備える止水ゴム用押さえ板。」 (相違点1)押さえ板について、本願発明1は「金属製」平板であるのに対し、引用発明はそのような特定がなされていない点。 (相違点2)突起について、本願発明1は「ボルト挿通用の孔が形成された位置に対応する位置」に設けられた「複数個の」突起であるのに対し、引用発明はそのような特定がなされていない点。 (2)判断 相違点2について、検討する。 引用文献1において、「鍔部8b」が「押え板8の他端に」どのように設けられているか明記されていないものの、「ボルト16をナット15に螺合し緊締すると、鍔部8bの外側縁が外枠金具7の内面に当接して支点となって締め付けられる」ことや「鍔部8bと取付部9bとの間に空隙が形成されている」こと、及び「鍔」の「釜の胴のまわりに庇のように出ている部分、帽子の周辺に庇のように出ている部分」(広辞苑第三版)という意味からみて、「鍔部8b」は「押え板8の他端に」連続して設けられていると解することが自然である。 そして、(長尺状の平板において)「ボルト挿通用の孔が形成された位置に対応する位置」に「複数個の」突起を設けることは、引用文献2?6には記載されていない。また、引用発明において、「鍔部8b」は、すでに支点として機能しているわけであるから、その「鍔部8b」を「複数個」とし「ボルト挿通用の孔が形成された位置に対応する位置」に設ける動機付けはない。 なお、引用文献5には、「固定部材5、5′の継手軸方向に延長する辺の他端部には半径方向外側に折曲する支持部5d、5d′が形成されている」ことが記載されており、「固定部材5、5’」、「支持部5d、5d’」は、引用発明の「押え板8」、「鍔部8b」(あるいは、本願発明1の「押さえ板」、「突起」)に相当する部材であるが、「固定部材5、5’」は短尺状の部材であり、引用発明の(長尺状の)「押さ板8」とは、長さにおいて前提となる形状が異なるため、引用文献5の記載事項は、引用発明において、「鍔部8b」を「複数個」とし「ボルト挿通用の孔が形成された位置に対応する位置」に設けることを示唆するものではない。 したがって、上記相違点1について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2?6に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 2 本願発明2?6について 本願発明2?6は、本願発明1に従属し、本願発明1の発明特定事項をすべて含むものであるから、本願発明1と同じ理由(上記1参照)により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2?6に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明1?6は、当業者が引用発明及び引用文献2?6に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2019-06-19 |
出願番号 | 特願2014-30940(P2014-30940) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(E02B)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 大熊 靖夫、清藤 弘晃 |
特許庁審判長 |
小野 忠悦 |
特許庁審判官 |
井上 博之 秋田 将行 |
発明の名称 | 止水ゴム用押さえ板 |
代理人 | 特許業務法人あい特許事務所 |