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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02F
管理番号 1352718
審判番号 不服2018-12285  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-09-12 
確定日 2019-07-09 
事件の表示 特願2017-160005「透過型液晶表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 1月18日出願公開、特開2018- 10308、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、
平成19年5月17日の出願である特願2007-132126号の一部を
平成26年5月7日に新たな出願とした特願2014-96038号の一部を
平成27年4月3日に新たな出願とした特願2015-76538号の一部を
平成28年4月4日に新たな出願とした特願2016-75178号の一部を
平成28年12月1日に新たな出願とした特願2016-234347号の一部を
平成29年8月23日に新たな出願としたものであって、
その手続の経緯は次のとおりである。

平成29年 9月 8日 :手続補正書
平成29年 9月26日付け:拒絶理由通知書
平成29年10月17日 :意見書
平成29年12月20日付け:拒絶理由通知書(最初)
平成30年 4月24日 :意見書・手続補正書(期間延長2月)
平成30年 6月 8日付け:拒絶査定(同年6月12日送達)
平成30年 9月12日 :審判請求書

第2 原査定の概要
原査定が説示した拒絶の理由の概要は、次のとおりである。
本願の請求項1?8に係る発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された発明、引用文献3に記載された発明及び引用文献4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.中国特許出願公開第1866087号明細書
2.特開2001-222027号公報
3.特開2004-48029号公報
4.特開2001-194646号公報

第3 当審の判断
1 本願発明の認定
本願の請求項1?8に係る発明(以下、「本願発明1」?「本願発明8」という。)は、平成30年4月24日に提出された手続補正書により補正された請求項1?8に記載された事項により特定される発明であり、そのうち独立項に係る発明である本願発明1?4,6及び7は、次のとおりである。
なお、本願発明5は、本願発明1をさらに限定したものであり、本願発明8は、本願発明6又は7をさらに限定したものである。

[本願発明1]
「画素を有し、
前記画素は、
第1のトランジスタと、
第2のトランジスタと、
第3のトランジスタと、
第1の液晶素子と、
第2の液晶素子と、
第1の容量素子と、
第2の容量素子と、を有し、
前記第1の液晶素子は、第1の画素電極を有し、
前記第2の液晶素子は、第2の画素電極を有し、
前記第1のトランジスタのソース又はドレインの一方は、前記第1の画素電極に直接接続され、
前記第2のトランジスタのソース又はドレインの一方は、前記第2の画素電極に直接接続され、
前記第2のトランジスタのソース又はドレインの一方は、前記第3のトランジスタのソース又はドレインの一方に直接接続され、
前記第1のトランジスタのソース又はドレインの他方は、ソース線に直接接続され、
前記第3のトランジスタのソース又はドレインの他方は、第1の配線に直接接続され、
前記第1のトランジスタのゲートは、ゲート線に直接接続され、
前記第2のトランジスタのゲートは、前記ゲート線に直接接続され、
前記第3のトランジスタのゲートは、前記ゲート線に直接接続され、
前記第1の容量素子の第1の電極は、前記第1の画素電極に直接接続され、
前記第2の容量素子の第1の電極は、前記第2の画素電極に直接接続され、
前記第1の容量素子の第2の電極は、前記第1の配線に直接接続され、
前記第2の容量素子の第2の電極は、前記第1の配線に直接接続され、
前記第1のトランジスタ、前記第2のトランジスタ、及び前記第3のトランジスタがオンしたまま、前記第2の画素電極には、前記第2のトランジスタのオン抵抗の大きさと前記第3のトランジスタのオン抵抗の大きさとに基づいて、前記ソース線の電位と前記第1の配線の電位との電位差を分割して得られた電位が供給され、
前記第1の画素電極は、透光性を有し、
前記第2の画素電極は、透光性を有する透過型液晶表示装置。」

[本願発明2]
「画素を有し、
前記画素は、
第1のトランジスタと、
第2のトランジスタと、
第3のトランジスタと、
第1の液晶素子と、
第2の液晶素子と、
第1の容量素子と、
第2の容量素子と、を有し、
前記第1の液晶素子は、第1の画素電極を有し、
前記第2の液晶素子は、第2の画素電極を有し、
前記第1のトランジスタのソース又はドレインの一方は、前記第1の画素電極に直接接続され、
前記第2のトランジスタのソース又はドレインの一方は、前記第2の画素電極に直接接続され、
前記第2のトランジスタのソース又はドレインの一方は、前記第3のトランジスタのソース又はドレインの一方に直接接続され、
前記第1のトランジスタのソース又はドレインの他方は、ソース線に直接接続され、
前記第3のトランジスタのソース又はドレインの他方は、第1の配線に直接接続され、
前記第1のトランジスタのゲートは、ゲート線に直接接続され、
前記第2のトランジスタのゲートは、前記ゲート線に直接接続され、
前記第3のトランジスタのゲートは、前記ゲート線に直接接続され、
前記第1の容量素子の第1の電極は、前記第1の画素電極に直接接続され、
前記第2の容量素子の第1の電極は、前記第2の画素電極に直接接続され、
前記第1の容量素子の第2の電極は、前記第1の配線に直接接続され、
前記第2の容量素子の第2の電極は、前記第1の配線に直接接続され、
前記第2のトランジスタ及び前記第3のトランジスタを介して前記ソース線と前記第1の配線との間に電流が流れている期間において、前記第2の画素電極には、前記第2のトランジスタのオン抵抗の大きさと前記第3のトランジスタのオン抵抗の大きさとに基づいた電位が供給され、
前記第1の画素電極は、透光性を有し、
前記第2の画素電極は、透光性を有する透過型液晶表示装置。」

[本願発明3]
「画素を有し、
前記画素は、
第1のトランジスタと、
第2のトランジスタと、
第3のトランジスタと、
第1の液晶素子と、
第2の液晶素子と、
第1の容量素子と、
第2の容量素子と、を有し、
前記第1の液晶素子は、第1の画素電極を有し、
前記第2の液晶素子は、第2の画素電極を有し、
前記第1のトランジスタのソース又はドレインの一方は、前記第1の画素電極に直接接続され、
前記第2のトランジスタのソース又はドレインの一方は、前記第2の画素電極に直接接続され、
前記第2のトランジスタのソース又はドレインの一方は、前記第3のトランジスタのソース又はドレインの一方に直接接続され、
前記第1のトランジスタのソース又はドレインの他方は、ソース線に直接接続され、
前記第3のトランジスタのソース又はドレインの他方は、第1の配線に直接接続され、
前記第1のトランジスタのゲートは、ゲート線に直接接続され、
前記第2のトランジスタのゲートは、前記ゲート線に直接接続され、
前記第3のトランジスタのゲートは、前記ゲート線に直接接続され、
前記第1の容量素子の第1の電極は、前記第1の画素電極に直接接続され、
前記第2の容量素子の第1の電極は、前記第2の画素電極に直接接続され、
前記第1の容量素子の第2の電極は、前記第1の配線に直接接続され、
前記第2の容量素子の第2の電極は、前記第1の配線に直接接続され、
前記第1のトランジスタ、前記第2のトランジスタ、及び前記第3のトランジスタがオンしたまま、前記第2の画素電極には、前記第2のトランジスタのオン抵抗の大きさと前記第3のトランジスタのオン抵抗の大きさとに基づいて、前記ソース線の電位と前記第1の配線の電位との電位差を分割して得られた電位が供給され、
前記第2のトランジスタのチャネル長に対するチャネル幅の割合は、前記第3のトランジスタのチャネル長に対するチャネル幅の割合よりも大きく、
前記第1の画素電極は、透光性を有し、
前記第2の画素電極は、透光性を有する透過型液晶表示装置。」

[本願発明4]
「画素を有し、
前記画素は、
第1のトランジスタと、
第2のトランジスタと、
第3のトランジスタと、
第1の液晶素子と、
第2の液晶素子と、
第1の容量素子と、
第2の容量素子と、を有し、
前記第1の液晶素子は、第1の画素電極を有し、
前記第2の液晶素子は、第2の画素電極を有し、
前記第1のトランジスタのソース又はドレインの一方は、前記第1の画素電極に直接接続され、
前記第2のトランジスタのソース又はドレインの一方は、前記第2の画素電極に直接接続され、
前記第2のトランジスタのソース又はドレインの一方は、前記第3のトランジスタのソース又はドレインの一方に直接接続され、
前記第1のトランジスタのソース又はドレインの他方は、ソース線に直接接続され、
前記第3のトランジスタのソース又はドレインの他方は、第1の配線に直接接続され、
前記第1のトランジスタのゲートは、ゲート線に直接接続され、
前記第2のトランジスタのゲートは、前記ゲート線に直接接続され、
前記第3のトランジスタのゲートは、前記ゲート線に直接接続され、
前記第1の容量素子の第1の電極は、前記第1の画素電極に直接接続され、
前記第2の容量素子の第1の電極は、前記第2の画素電極に直接接続され、
前記第1の容量素子の第2の電極は、前記第1の配線に直接接続され、
前記第2の容量素子の第2の電極は、前記第1の配線に直接接続され、
前記第2のトランジスタ及び前記第3のトランジスタを介して前記ソース線と前記第1の配線との間に電流が流れている期間において、前記第2の画素電極には、前記第2のトランジスタのオン抵抗の大きさと前記第3のトランジスタのオン抵抗の大きさとに基づいた電位が供給され、
前記第2のトランジスタのチャネル長に対するチャネル幅の割合は、前記第3のトランジスタのチャネル長に対するチャネル幅の割合よりも大きく、
前記第1の画素電極は、透光性を有し、
前記第2の画素電極は、透光性を有する透過型液晶表示装置。」

[本願発明6]
「画素を有し、
前記画素は、
第1のトランジスタと、
第2のトランジスタと、
第3のトランジスタと、
第1の液晶素子と、
第2の液晶素子と、
第1の容量素子と、
第2の容量素子と、を有し、
前記第1の液晶素子は、第1の画素電極を有し、
前記第2の液晶素子は、第2の画素電極を有し、
前記第3のトランジスタは、複数のトランジスタが直列に接続されたマルチゲート構造を有し、
前記第1のトランジスタのソース又はドレインの一方は、前記第1の画素電極に直接接続され、
前記第2のトランジスタのソース又はドレインの一方は、前記第2の画素電極に直接接続され、
前記第2のトランジスタのソース又はドレインの一方は、前記第3のトランジスタのソース又はドレインの一方に直接接続され、
前記第1のトランジスタのソース又はドレインの他方は、ソース線に直接接続され、
前記第3のトランジスタのソース又はドレインの他方は、第1の配線に直接接続され、
前記第1のトランジスタのゲートは、ゲート線に直接接続され、
前記第2のトランジスタのゲートは、前記ゲート線に直接接続され、
前記第3のトランジスタのゲートは、前記ゲート線に直接接続され、
前記第1の容量素子の第1の電極は、前記第1の画素電極に直接接続され、
前記第2の容量素子の第1の電極は、前記第2の画素電極に直接接続され、
前記第1の容量素子の第2の電極は、前記第1の配線に直接接続され、
前記第2の容量素子の第2の電極は、前記第1の配線に直接接続され、
前記第1のトランジスタ、前記第2のトランジスタ、及び前記第3のトランジスタがオンしたまま、前記第2の画素電極には、前記第2のトランジスタのオン抵抗の大きさと前記第3のトランジスタのオン抵抗の大きさとに基づいて、前記ソース線の電位と前記第1の配線の電位との電位差を分割して得られた電位が供給され、
前記第1の画素電極は、透光性を有し、
前記第2の画素電極は、透光性を有する透過型液晶表示装置。」

[本願発明7]
「画素を有し、
前記画素は、
第1のトランジスタと、
第2のトランジスタと、
第3のトランジスタと、
第1の液晶素子と、
第2の液晶素子と、
第1の容量素子と、
第2の容量素子と、を有し、
前記第1の液晶素子は、第1の画素電極を有し、
前記第2の液晶素子は、第2の画素電極を有し、
前記第3のトランジスタは、複数のトランジスタが直列に接続されたマルチゲート構造を有し、
前記第1のトランジスタのソース又はドレインの一方は、前記第1の画素電極に直接接続され、
前記第2のトランジスタのソース又はドレインの一方は、前記第2の画素電極に直接接続され、
前記第2のトランジスタのソース又はドレインの一方は、前記第3のトランジスタのソース又はドレインの一方に直接接続され、
前記第1のトランジスタのソース又はドレインの他方は、ソース線に直接接続され、
前記第3のトランジスタのソース又はドレインの他方は、第1の配線に直接接続され、
前記第1のトランジスタのゲートは、ゲート線に直接接続され、
前記第2のトランジスタのゲートは、前記ゲート線に直接接続され、
前記第3のトランジスタのゲートは、前記ゲート線に直接接続され、
前記第1の容量素子の第1の電極は、前記第1の画素電極に直接接続され、
前記第2の容量素子の第1の電極は、前記第2の画素電極に直接接続され、
前記第1の容量素子の第2の電極は、前記第1の配線に直接接続され、
前記第2の容量素子の第2の電極は、前記第1の配線に直接接続され、
前記第2のトランジスタ及び前記第3のトランジスタを介して前記ソース線と前記第1の配線との間に電流が流れている期間において、前記第2の画素電極には、前記第2のトランジスタのオン抵抗の大きさと前記第3のトランジスタのオン抵抗の大きさとに基づいた電位が供給され、
前記第1の画素電極は、透光性を有し、
前記第2の画素電極は、透光性を有する透過型液晶表示装置。」

2 引用文献の記載事項等の認定
(1)引用文献1(中国特許出願公開第1866087号明細書)
ア 原査定が引用した引用文献1には、次の記載がある。
なお、引用文献1は、中国語文献であり、そのままでの摘記が困難であるため、以下、そのパテントファミリに属する特開2007-156429号公報に基づいた日本語訳をもって、摘記をする。段落番号は、日本語公報のものである。
「【発明を実施するための最良の形態】」、
「本発明は、分圧器によりカラーサブピクセル中の反射電極の電圧レベルを低下させる。特に、反射領域中の反射電極下の分圧器の抵抗は、ポリシリコンを用いて製造される。」(【0018】)、
「本発明に係るノーマリーブラック(NB)半透過型液晶ディスプレイパネルのサブピクセルが図8に示される。図8に示されるように、サブピクセル100は、データライン202、ゲートライン212及びコモンライン214を有する。データライン202は、データライン信号をサブピクセル100に提供する。ゲートライン212は、ゲートライン信号を切り換えユニットに提供し、サブピクセル中の液晶層を制御する。コモンライン214は、コモンライン電圧レベルV_(com)を上電極(図示しない)に提供する。サブピクセル100は透過領域TA及び反射領域RAに分けられる。透過領域TAは透過電極170を有し、切り換えユニット240(TFT-1)によりデータライン202に電気的に接続され、データライン信号を受信する。切り換えユニット240(TFT-1)は電気的にデータライン202に接続される切り換え端241と、導孔184により透過電極170に接続されるもう一つの切り換え端243を有する。電荷蓄積コンデンサC_(1)は、切り換え端243に電気的に接続される。切り換えユニット240(TFT-1)は、ゲートライン212に電気的に接続される制御端242を有する。
反射領域RAは反射電極160を有し、切り換えユニット250(TFT-2)によりデータライン202に電気的に接続され、データライン信号を受信する。切り換えユニット250(TFT-2)と切り換えユニット240(TFT-1)は、切り換え端241及び制御端242を共用する。切り換えユニット250(TFT-2)は、電気的に分圧器(R_(1)+R_(2))に電気的に接続されるもう一つの切り換え端249を有する。」(【0019】)、
「反射領域RA中の液晶層を越える電圧を低下させるため、分圧器(R_(1)+R_(2))は、抵抗R_(1)及び抵抗R_(2)からなり、かつ反射領域RAに設置され、もう一つの切り換えユニット260(TFT-3)により、切り換えユニット250(TFT-2)とコモンライン214間に電位を形成する。図8で示されるように、抵抗R_(1)の一端は切り換えユニット250(TFT-2)の切り換え端249に電気的に接続され、抵抗R_(1)のもう一端は、導孔182により反射電極160に電気的に接続される。電荷蓄積コンデンサC_(2)は、反射電極160に電気的に接続される。抵抗R_(2)の一端は、反射電極160に電気的に接続され、抵抗R_(2)のもう一端は、切り換えユニット260(TFT-3)の切り換え端261に電気的に接続される。切り換えユニット260(TFT-3)のもう一つの切り換え端263はコモンライン214に電気的に接続され、切り換えユニット260(TFT-3)の制御端262はゲートライン212に電気的に接続される。」(【0020】)、


「低温ポリシリコン(LTPS)工程により、分圧器(R_(1)+R_(2))が実現される。低温ポリシリコンは、切り換えユニット240、切り換えユニット250及び切り換えユニット260の製造にも用いられる。図9は、図8中の線Aに沿った断面図である。図9は、ポリシリコンがいかにして抵抗R_(1)、抵抗R_(2)、一部の切り換えユニット250及び一部の切り換えユニット260を製造するかを示す。図8及び図9で示されるように、抵抗R_(1)、抵抗R_(2)は反射電極160の下に設置される。これにより、分圧器は、サブピクセル100中で製造され、反射領域RAの反射率又は透過領域TAの透過率に影響しない。図10は、図8中の線Bに沿った断面図である。図10は、ポリシリコンがいかにして一部の切り換えユニット240を製造するかを示す。」(【0021】)、


「図11は、図8中のサブピクセル100の等価回路を示す図である。図11中、C_(T)は透過電極170と上電極(図3中の電極150を参照)の間の液晶層キャパシタンスで、C_(R)は反射電極160と上電極間の液晶層キャパシタンスである。図11で示されるように、電荷蓄積コンデンサC_(1)とC_(T)は並列され、C_(2)はC_(R)と並列される。切り換えユニット240(TFT-1)がGate_(n-1)上のゲートライン信号により導通し、かつコンデンサC_(2)及びC_(R)がほぼ充電完了時、透過電極の電圧レベルは、V_(T)=V_(Data)で、V_(Data)は、Data_(m)の電圧レベルである。透過領域TAの液晶層を越える電圧は(V_(Data)-V_(com))である。切り換えユニット250(TFT-2)及び切り換えユニット260(TFT-3)が、Gate_(n-1)上のゲートライン信号により導通し、かつ、コンデンサC_(1)及びC_(T)がほぼ充電完了時、反射電極の電圧レベルは、V_(R)=(V_(Data)-V_(com))(R_(1)/(R_(1)+R_(2)))である。これにより、反射領域RA中の液晶層を越える電圧はV_(R)-V_(com)である。V_(com)がV_(Data)より小さい場合、反射領域RA中の液晶層を越える電位は、R_(1)/(R_(1)+R_(2))に下降する。その結果、反射率は図12で示されるように、V-R曲線の高電圧端に向かってシフトする。上述のシフトは、比率R_(1)/(R_(1)+R_(2))に基づく。図12は、比率0.33、0.4及び0.5のシフトを示す。これにより、反射率の反転問題は、液晶層の適当な電圧範囲を制御することにより回避される。」(【0022】)


イ 図11は、シングルギャップ半透過型液晶ディスプレイパネルのサブピクセル100を示す図8に等価な回路を示す図であるところ、図11に係るシングルギャップ半透過型液晶ディスプレイパネルについて、【0019】?【0022】、図8及び図11の記載を総合すると、次の事実が認められる。
(ア)図11の各部位に名称を付すると、次のとおりである。

(イ)シングルギャップ半透過型液晶ディスプレイパネルは、サブピクセル100を有している。
(ウ)サブピクセル100は、TFT-1とTFT-2とTFT-3とを有している。
(エ)サブピクセル100は、透過領域TAに属する液晶層(液晶層コンデンサC_(T))に係る素子(以下「透過液晶素子」という。)と反射領域RAに属する液晶層(液晶層コンデンサC_(R))に係る素子(以下「反射液晶素子」という。)とを有している。
(オ)サブピクセル100は、電荷蓄積コンデンサC_(1)と電荷蓄積コンデンサC_(2)とを有している。
(カ)透過液晶素子は、透過電極170を有している。
(キ)反射液晶素子は、反射電極160を有している。
(ク)TFT-1の切り換え端243は、透過電極170に、他の素子や他の回路を介在せずに電気的に接続されている。
(ケ)TFT-2の切り換え端249は、反射電極160に、抵抗R_(1)を介して電気的に接続されている。
(コ)TFT-2の切り換え端249は、TFT-3の切り換え端261に、抵抗R_(1)と抵抗R_(2)とを介して電気的に接続されている。
(サ)TFT-1の切り換え端241は、データライン202に、他の素子や他の回路を介在せずに電気的に接続されている。
(シ)TFT-3の切り換え端263は、コモンライン214に、他の素子や他の回路を介在せずに電気的に接続されている。
(ス)TFT-1の制御端242は、ゲートライン212に、他の素子や他の回路を介在せずに電気的に接続されている。
(セ)TFT-2の制御端242は、ゲートライン212に、他の素子や他の回路を介在せずに電気的に接続されている。
(ソ)TFT-3の制御端262は、ゲートライン212に、他の素子や他の回路を介在せずに電気的に接続されている。
(タ)電荷蓄積コンデンサC_(1)の第1の電極は、透過電極170に、他の素子や他の回路を介在せずに電気的に接続されている。
(チ)電荷蓄積コンデンサC_(2)の第1の電極は、反射電極160に、他の素子や他の回路を介在せずに電気的に接続されている。
(ツ)電荷蓄積コンデンサC_(1)の第2の電極は、コモンライン214に、他の素子や他の回路を介在せずに電気的に接続されている。
(テ)電荷蓄積コンデンサC_(2)の第2の電極は、コモンライン214に、他の素子や他の回路を介在せずに電気的に接続されている。
(ト)TFT-1、TFT-2、TFT-3がオンしたまま、反射電極160には、V_(R)=(V_(Data)-V_(com))(R_(1)/(R_(1)+R_(2)))の電位が供給される(【0022】)。
(ナ)透過電極170は、透光性を有する。
(ニ)反射電極160は、透光性を有さない。

ウ 上記イによれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「サブピクセル100を有し、
サブピクセル100は、TFT-1とTFT-2とTFT-3とを有し、
サブピクセル100は、透過液晶素子と反射液晶素子とを有し、
サブピクセル100は、電荷蓄積コンデンサC_(1)と電荷蓄積コンデンサC_(2)とを有し、
透過液晶素子は、透過電極170を有し、
反射液晶素子は、反射電極160を有し、
TFT-1の切り換え端243は、透過電極170に、他の素子や他の回路を介在せずに電気的に接続され、
TFT-2の切り換え端249は、反射電極160に、抵抗R_(1)を介して電気的に接続され、
TFT-2の切り換え端249は、TFT-3の切り換え端261に、抵抗R_(1)と抵抗R_(2)とを介して電気的に接続され、
TFT-1の切り換え端241は、データライン202に、他の素子や他の回路を介在せずに電気的に接続され、
TFT-3の切り換え端263は、コモンライン214に、他の素子や他の回路を介在せずに電気的に接続され、
TFT-1の制御端242は、ゲートライン212に、他の素子や他の回路を介在せずに電気的に接続され、
TFT-2の制御端242は、ゲートライン212に、他の素子や他の回路を介在せずに電気的に接続され、
TFT-3の制御端262は、ゲートライン212に、他の素子や他の回路を介在せずに電気的に接続され、
電荷蓄積コンデンサC_(1)の第1の電極は、透過電極170に、他の素子や他の回路を介在せずに電気的に接続され、
電荷蓄積コンデンサC_(2)の第1の電極は、反射電極160に、他の素子や他の回路を介在せずに電気的に接続され、
電荷蓄積コンデンサC_(1)の第2の電極は、コモンライン214に、他の素子や他の回路を介在せずに電気的に接続され、
電荷蓄積コンデンサC_(2)の第2の電極は、コモンライン214に、他の素子や他の回路を介在せずに電気的に接続され、
TFT-1、TFT-2、TFT-3がオンしたまま、反射電極160には、V_(R)=(V_(Data)-V_(com))(R_(1)/(R_(1)+R_(2)))の電位が供給され、
透過電極170は、透光性を有し、
反射電極160は、透光性を有さない、
シングルギャップ半透過型液晶ディスプレイパネル。」

(2)引用文献2(特開2001-222027号公報)について
原査定が引用した引用文献2には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「マトリクス状に形成された複数の走査線および複数のデータ線、該複数の走査線および複数のデータ線にそれぞれ電気的に接続された複数の画素スイッチング素子、および該複数の画素スイッチング素子にそれぞれ電気的に接続された複数の画素電極を備える第1の基板と、対向電極が形成された第2の基板と、前記第1の基板と前記第2の基板との間に挟持された電気光学物質とを有する電気光学装置において、
前記第1の基板は、複数の画素の各々が、前記データ線からの信号伝達経路の時定数が異なる複数の領域に分かれた画素電極を備えていることを特徴とする電気光学装置。」(【請求項1】)、
「電気光学装置は、透過型液晶表示装置であってよく、その場合、第1の画素電極91と第2の画素電極92は、透明であること。」(【0034】?【0071】)、
「電気光学装置は、反射型液晶表示装置であってよく、その場合、第1の画素電極91と第2の画素電極92は、反射性を有する導電膜であること。」(【0072】?【0092】)、
「データ線からの信号伝達経路の時定数を異ならせるために、TFTのオン抵抗の相違を用いることができること。」(【0078】)

3 本願発明1について
(1)引用発明1との対比
ア 引用発明1の特定事項と本願発明1の特定事項とは、次のとおりの相当関係があるものと認められる。
引用発明1 本願発明1
-----------------------
サブピクセル100 画素
TFT-1 第1のトランジスタ
TFT-2 第2のトランジスタ
TFT-3 第3のトランジスタ
透過液晶素子 第1の液晶素子
反射液晶素子 第2の液晶素子
透過電極170 第1の画素電極
反射電極160 第2の画素電極
TFT-1の切り換え端243 第1のトランジスタのソース
又はドレインの一方
TFT-2の切り換え端249 第2のトランジスタのソース
又はドレインの一方
TFT-3の切り換え端261 第3のトランジスタのソース
又はドレインの一方
TFT-1の切り換え端241 第1のトランジスタのソース
又はドレインの他方
TFT-3の切り換え端263 第3のトランジスタのソース
又はドレインの他方
データライン202 ソース線
コモンライン214 第1の配線
TFT-1の制御端242 第1のトランジスタのゲート
TFT-2の制御端242 第2のトランジスタのゲート
TFT-3の制御端262 第3のトランジスタのゲート
ゲートライン212 ゲート線
電荷蓄積コンデンサC_(1) 第1の容量素子
電荷蓄積コンデンサC_(2) 第2の容量素子
C_(1)の第1の電極 第1の容量素子の第1の電極
C_(2)の第1の電極 第2の容量素子の第1の電極
C_(1)の第2の電極 第1の容量素子の第2の電極
C_(2)の第2の電極 第2の容量素子の第2の電極

イ 引用発明1の「シングルギャップ半透過型液晶ディスプレイパネル」は、本願発明1の「透過型液晶表示装置」と、「液晶表示装置」である点で一致する。

ウ 引用発明1において、「他の素子や他の回路を介在せずに電気的に接続され」ている構造は、本願発明1の用語でいえば、「直接接続」されていることになる。

エ 本願発明1の「第2のトランジスタのソース又はドレインの一方は、前記第2の画素電極に直接接続され」、「第2のトランジスタのソース又はドレインの一方は、前記第3のトランジスタのソース又はドレインの一方に直接接続され」、「前記第1のトランジスタ、前記第2のトランジスタ、及び前記第3のトランジスタがオンしたまま、前記第2の画素電極には、前記第2のトランジスタのオン抵抗の大きさと前記第3のトランジスタのオン抵抗の大きさとに基づいて、前記ソース線の電位と前記第1の配線の電位との電位差を分割して得られた電位が供給され」ることと
引用発明1の「TFT-2の切り替え端249は、反射電極160に、抵抗R_(1)を介して電気的に接続され」、「TFT-2の切り換え端249は、TFT-3の切り換え端261に、抵抗R_(1)と抵抗R_(2)とを介して電気的に接続され」、「TFT-1、TFT-2、TFT-3がオンしたまま、反射電極160には、V_(R)=(V_(Data)-V_(com))(R_(1)/(R_(1)+R_(2)))の電位が供給され」ることとは、
「前記第1のトランジスタ、前記第2のトランジスタ、及び前記第3のトランジスタがオンしたまま、前記第2の画素電極には、」「前記ソース線の電位と前記第1の配線の電位との電位差を分割して得られた電位が供給され」る点で一致する。

(2)一致点及び相違点の認定
上記(1)によれば、本願発明1と引用発明1とは、
「画素を有し、
前記画素は、
第1のトランジスタと、
第2のトランジスタと、
第3のトランジスタと、
第1の液晶素子と、
第2の液晶素子と、
第1の容量素子と、
第2の容量素子と、を有し、
前記第1の液晶素子は、第1の画素電極を有し、
前記第2の液晶素子は、第2の画素電極を有し、
前記第1のトランジスタのソース又はドレインの一方は、前記第1の画素電極に直接接続され、
前記第1のトランジスタのソース又はドレインの他方は、ソース線に直接接続され、
前記第3のトランジスタのソース又はドレインの他方は、第1の配線に直接接続され、
前記第1のトランジスタのゲートは、ゲート線に直接接続され、
前記第2のトランジスタのゲートは、前記ゲート線に直接接続され、
前記第3のトランジスタのゲートは、前記ゲート線に直接接続され、
前記第1の容量素子の第1の電極は、前記第1の画素電極に直接接続され、
前記第2の容量素子の第1の電極は、前記第2の画素電極に直接接続され、
前記第1の容量素子の第2の電極は、前記第1の配線に直接接続され、
前記第2の容量素子の第2の電極は、前記第1の配線に直接接続され、
前記第1のトランジスタ、前記第2のトランジスタ、及び前記第3のトランジスタがオンしたまま、前記第2の画素電極には、前記ソース線の電位と前記第1の配線の電位との電位差を分割して得られた電位が供給され、
前記第1の画素電極は、透光性を有する、
液晶表示装置。」である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
「前記第2の画素電極には、前記ソース線の電位と前記第1の配線の電位との電位差を分割して得られた電位が供給」されることについて、本願発明1は、「第2のトランジスタのソース又はドレインの一方は、前記第2の画素電極に直接接続され」、「前記第2のトランジスタのソース又はドレインの一方は、前記第3のトランジスタのソース又はドレインの一方に直接接続され」、「前記第1のトランジスタ、前記第2のトランジスタ、及び前記第3のトランジスタがオンしたまま、前記第2の画素電極には、前記第2のトランジスタのオン抵抗の大きさと前記第3のトランジスタのオン抵抗の大きさとに基づいて、前記ソース線の電位と前記第1の配線の電位との電位差を分割して得られた電位が供給され」るのに対し、引用発明1は、「TFT-2の切り替え端249は、反射電極160に、抵抗R_(1)を介して電気的に接続され」、「TFT-2の切り換え端249は、TFT-3の切り換え端261に、抵抗R_(1)と抵抗R_(2)とを介して電気的に接続され」、「TFT-1、TFT-2、TFT-3がオンしたまま、反射電極160には、V_(R)=(V_(Data)-V_(com))(R_(1)/(R_(1)+R_(2)))の電位が供給され」る点。

[相違点2]
「第2の画素電極」が、本願発明1では、「透光性を有する」のに対し、引用発明1では、透過性を有さず、反射性を有する点。

[相違点3]
「液晶表示装置」が、本願発明1では、「透過型」であるのに対し、引用発明1では、「シングルギャップ半透過型」である点。

(3)相違点2及び3の判断
ア 事案にかんがみ、相違点2及び3から判断する。
引用発明1は、シングルギャップ半透過型液晶ディスプレイパネルにおいて、透過電極の電圧レベルに対して、反射電極の電圧レベルを比率R_(1)/(R_(1)+R_(2))にすることにより、反射率の反転問題を回避するものであると認められる(引用文献1の【0022】)。
そうであれば、引用発明1は、液晶表示装置が「シングルギャップ半透過型」、すなわち、「半透過型」であることを不可欠とする技術思想であると認められる。他方で、相違点2及び相違点3に係る構成に至るためには、そのような引用発明1を、「半透過型」から「透過型」に置換する必要がある。
このような事情に照らせば、引用発明1から出発した当業者は、相違点2及び相違点3に係る構成を採用することを、阻害されるというべきである。
相違点2及び3は、当業者が容易に想到し得るものではない。

イ これに対し、原査定は、引用文献2が、1つの画素に複数の透明な画素電極を有する透過型液晶表示装置を開示しているから、引用発明1において、このような技術を採用することに格別の困難性はない旨判断する。
確かに、引用文献2は、1つの画素に複数の透明な画素電極を有する透過型液晶表示装置を開示するものであるけれども、そうであるからといって、上記アの判断を左右することはない。
原査定の判断を維持することはできない。

(4)本願発明1についての小括
したがって、相違点1について判断するまでもなく、本願発明1は、引用発明1及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
そして、引用文献3及び引用文献4に記載された事項を考慮しても、上記判断は、左右されない。

4 本願発明2?8について
本願発明2?8はいずれも、本願発明1と同様に、相違点2及び3に係る構成を備える。よって、本願発明2?8は、上記3と同様の理由で、引用発明1、引用文献2に記載された技術的事項、引用文献3に記載された技術的事項及び引用文献4に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第4 むすび
以上のとおり、原査定の拒絶の理由によっては、本願を拒絶することはできない。また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-06-24 
出願番号 特願2017-160005(P2017-160005)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G02F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 岸 智史  
特許庁審判長 西村 直史
特許庁審判官 森 竜介
山村 浩
発明の名称 透過型液晶表示装置  

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