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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1352796
審判番号 不服2018-8256  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-06-15 
確定日 2019-06-20 
事件の表示 特願2014-67142号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月2日出願公開、特開2015-188545号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年3月27日の出願であって、平成29年11月13日付けで拒絶の理由が通知され、平成30年1月9日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年5月7日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、同年6月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされ、これに対し、当審において、平成31年2月20日付けで拒絶の理由が通知され、平成31年3月29日に意見書及び手続補正書(以下、この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願発明は以下のとおりのものである。なお、A?Mは本願発明の構成を分説するため当審で付した。

「【請求項1】
A 遊技を行うことが可能な遊技機であって、
B 識別情報の可変表示を実行する可変表示手段と、
C 可変表示に関する情報を保留記憶として記憶する保留記憶手段と、
D 前記保留記憶手段に記憶された保留記憶に対応する保留表示を表示する保留表示手段と、
E 前記保留表示の表示態様の変化を示唆する特定演出を実行する特定演出実行手段と、
を備え、
F 前記特定演出の実行中に、保留表示の表示態様を変化させる変化演出と、保留表示の表示態様を変化させない非変化演出とを実行可能であり、
G 前記変化演出は前記特定演出の実行中に複数回実行される場合があり、
H 前記特定演出実行手段は、複数回の可変表示において前記特定演出を実行可能であると共に、前記変化演出が実行された場合に前記特定演出を継続して実行可能であり、
I 前記可変表示手段は、通常態様の識別情報の可変表示と、通常態様よりも小さい所定態様の識別情報の可変表示とを実行可能であり、
J 前記特定演出実行手段は、通常態様の識別情報の可変表示が実行される特定領域において前記特定演出を実行可能であり、
K 前記可変表示手段は、前記特定領域において前記特定演出が実行される場合、所定態様の識別情報の可変表示を実行し、
L 保留表示の表示態様を段階的に変化可能であり、
M 保留表示の最終段階の表示態様に基づいて、最終段階までの段階における保留表示の表示態様と、最終段階までの段階において前記変化演出と前記非変化演出とのいずれを実行するかと、を決定する、
ことを特徴とする遊技機。」

第3 拒絶の理由
平成31年2月20日付けで当審が通知した拒絶の理由の概略は、以下のとおりである。

(進歩性)本件出願の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された以下の引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2014-23552号公報
引用文献2:特開2014-30549号公報(周知技術を示す文献)
引用文献3:特開2010-35769号公報(周知技術を示す文献)

第4 引用文献の記載及び引用発明
ア 引用文献1には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

「【0012】
(第1実施形態)
以下、本発明をその一種であるパチンコ遊技機に具体化した第1実施形態を図1?図17に従って説明する。
【0013】
図1に示すように、パチンコ遊技機の遊技盤10のほぼ中央には、液晶ディスプレイ型の画像表示部GHを有する表示手段としての演出表示装置11が装着されている。」

「【0015】
また、演出表示装置11には、図柄列毎に複数種類の飾り図柄(飾図)が表示される。そして、各図柄列は、図柄変動ゲームが開始すると、所定の変動方向に図柄の変動(縦スクロール変動)が開始される。
【0016】
演出表示装置11は、特別図柄表示装置12に比較して大きい表示領域で構成されるとともに、飾図は特図に比較して遥かに大きく表示される。このため、遊技者は、演出表示装置11に確定停止表示された飾図から大当り又ははずれを認識し得る。そして、演出表示装置11には、特図変動ゲームの表示結果に応じた表示結果が表示される。特図変動ゲームで大当り図柄(大当り表示結果)が確定停止表示される場合には、演出表示装置11にも大当り図柄(大当り表示結果)が確定停止表示される。」

「【0083】
一方、ステップS12の判定結果が肯定の場合、主制御用CPU30aは、保留記憶数を1加算し、保留記憶数を書き換える(ステップS13)。ステップS13において、主制御用CPU30aは、1加算後の保留記憶数となるように特別図柄保留表示装置13の表示内容を制御する。本実施形態では、図柄変動ゲームの始動保留球の記憶数を記憶する主制御用RAM30cが、記憶手段として機能する。
【0084】
続いて、主制御用CPU30aは、大当り判定用乱数、特図振分用乱数、リーチ判定用乱数、変動パターン振分用乱数F1?F3の各種乱数の値を主制御用RAM30cから読み出して取得し、該値を保留記憶数に対応付けられた主制御用RAM30cの所定の記憶領域に記憶する(ステップS14)。ステップS14において、主制御用CPU30aは、特図振分用乱数に対応する大当りの種類を、主制御用RAM30cの所定の記憶領域に記憶している特図振分用乱数に対応する大当りの種類を示す特図種別フラグに設定する。この特図種別フラグには、特図振分用乱数に対応する特別図柄、すなわち図柄A?Cを区別する値が設定される。さらに主制御用CPU30aは、1加算後の保留記憶数を示す保留指定コマンドを送信バッファにセットする。この保留指定コマンドは、次周期以後の制御周期において出力される。その後、主制御用CPU30aは、特別図柄入力処理を終了する。」

「【0087】
一方、保留判定の判定結果が肯定、すなわち保留記憶数が「0(零)」よりも大きい(「1」以上)の場合、主制御用CPU30aは、保留中の図柄変動ゲームが存在するので、保留記憶数を1減算する。なお、主制御用CPU30aは、保留記憶数の1減算に合わせて該1減算後の保留記憶数となるように特別図柄保留表示装置13の表示内容を制御する。また、主制御用CPU30aは、1減算後の保留記憶数を指示する保留指定コマンドを送信バッファにセットする。この保留指定コマンドは、次周期以後の制御周期において出力される。」

「【0105】
そして、演出制御用CPU31aは、画像データをもとに図柄変動ゲームを画像表示させるように演出表示装置11の表示内容を制御する。その後、図柄変動ゲーム中に全図柄停止コマンドを入力すると、演出制御用CPU31aは、決定した飾図を演出表示装置11に確定停止表示させて図柄変動ゲームを終了させる。また、演出制御用CPU31aは、演出表示装置11の飾図による図柄変動ゲームの開始に伴って該ゲームの開始からの経過時間を計時し、その計時した時間と画像表示用データをもとに画像表示部GHに映し出す画像を所定の制御周期毎(例えば、4ms毎)に切り替える。
【0106】
また、演出制御用CPU31aは、保留指定コマンドを入力すると、該保留指定コマンドにより指定された表示態様で保留画像を演出表示装置11の画像表示部GHに表示させる制御を行う。具体的に説明すると、保留記憶数の加算に伴って出力される保留指定コマンドを入力する場合、演出制御用CPU31aは、保留有表示の態様とする個別表示領域の個数を1つ増加させるように、演出表示装置11の表示内容を制御する。一方、保留記憶数の1減算に伴って出力される保留指定コマンドを入力する場合、演出制御用CPU31aは、個別表示領域を保留無の態様で表示させ、保留有表示の態様とする個別表示領域の個数を1つ減少させるように、演出表示装置11の表示内容を制御する。本実施形態では、保留画像表示領域Hが、実行が保留されている図柄変動ゲームの実行保留回数を報知する保留球数表示手段として機能する。」

「【0146】
なお、演出制御用CPU31aは、各種先読みコマンドで指示される情報から図柄変動ゲームの実行時の変動パターンが不明の場合、保留変化演出で保留画像X1を変化させない「なし」とする演出内容を決定する。この場合には、「なし」の演出内容に対して全1000通りの乱数が振分けられていることと同意であって、そもそもこういった決定自体を行わない仕様でもよい。
【0147】
そして、演出制御用CPU31aは、図柄変動ゲームの実行時の変動パターンとして、はずれであってグループEDに振分けられる変動パターンP4?P6、すなわちノーマルリーチの変動内容を特定する場合、保留変化演出で保留画像X1を「紫色」を上限に変化させる「紫」、「なし」の何れかの演出内容を決定する。この場合には、グループEDに振分けられる変動パターンの種類に関係なく、「紫」<「なし」の順に決定し易くなるように乱数が振分けられている。
【0148】
また、演出制御用CPU31aは、図柄変動ゲームの実行時の変動パターンとして、はずれであってグループEE及びグループEFに振分けられる変動パターンP7,P8及び変動パターンP10,P11、すなわちスーパーリーチの変動内容を特定する場合、「紫」、「なし」の何れかの演出内容を決定する。また、演出制御用CPU31aは、はずれであってグループEE及びグループEFに振分けられる変動パターンP9及び変動パターンP12、すなわちスーパーリーチの変動内容を特定する場合、保留変化演出で保留画像X1を「赤色」を上限に変化させる「赤」、「紫」、「なし」の何れかの演出内容を決定する。この場合には、変動パターンP7,P10、変動パターンP8,P11、変動パターンP9,P12のそれぞれの組み合わせの間で、乱数が同一態様で振分けられている。
【0149】
そして、「なし」の演出内容を変動パターンP9,P12<変動パターンP8,P11<変動パターンP7,P10の順に決定し易くなるように乱数が振分けられている。また、ノーマルリーチよりも大当り期待度を高く設定するスーパーリーチに分類されているが、各変動グループの中で大当り期待度が最も低い演出内容となる変動パターンP7,P10に関しては、ノーマルリーチとなる変動パターンP4?P6に比べて、「なし」を決定し易くなるように乱数が振分けられている。一方、変動パターンP8,P11及び変動パターンP9,P12に関しては、変動パターンP4?P6に比べて、「なし」を決定し難く、変動パターンP9,P12に至っては変動パターンP4?P8,P10,P11で決定しえない「赤」を決定しうるように乱数が振分けられている。
【0150】
また、演出制御用CPU31aは、図柄変動ゲームの実行時の変動パターンとして、大当りであってグループEG?EIに振分けられる変動パターンP13?P21、すなわち大当り変動の変動内容を特定する場合、保留変化演出で保留画像X1を「金色」を上限に変化させる「金」、「赤」、「紫」、「なし」の何れかの演出内容を決定する。この場合には、変動パターンP13?P21の間で、乱数が同一態様で振分けられている。」

「【0156】
図11に示すように、演出制御用CPU31aは、決定した保留変化演出の具体的な演出内容と該保留変化演出を実行させる図柄変動ゲームの回数、すなわち先読み実行回数に基づき、該演出内容への変化態様を決定する。このような保留変化演出の具体的な演出内容への変化態様の決定は、決定された演出内容と先読み実行回数に基づいて所定の当選確率となるように、決定可能な変化態様に乱数を振分けて行われる。また、本実施形態では、事前判定の結果として大当り及びはずれの何れが指示されるかに関係なく、決定された演出内容と先読み実行回数に基づいて変化態様が決定される。なお、本実施形態の保留変化演出の具体的な演出内容への変化態様の決定では、全1000通りの乱数をそれぞれの状況で決定可能な変化態様に振分けているとともに、決定可能な変化態様に対し、乱数がほぼ同一態様(同一でない場合もあるが、同一態様とする変化態様が占める割合の方が大きい)で振分けられている。なお、本実施形態では、決定可能な変化態様に対し、乱数を異なる態様で振分けることで、変化態様による大当り期待度や、保留変化演出で保留画像X1の変化に対する期待度等を設定することもできる。
【0157】
そして、演出制御用CPU31aは、保留変化演出の具体的な演出内容として、先読み実行回数が「1回」であって「紫」、「赤」、「金」の演出内容を決定する場合、個別表示領域H1の保留画像X1を変化させるそれぞれの演出内容に応じた変化態様CP1,CP5,CP15を決定する。
【0158】
この場合におけるこれら変化態様CP1,CP5,CP15では、先読み実行回数と個別表示領域の保留画像X1の変化を実際に伴わせる図柄変動ゲームの回数が一致することから、事前判定の対象としている入球検知から図柄変動ゲームの開始を挟むことなく保留変化演出による変化を発生させる。以下の説明で、事前判定の対象としている入球検知から図柄変動ゲームの開始を挟むことなく保留変化演出による変化を発生させる変化態様を、「直後の変化態様」という。例えば、変化態様CP1では、個別表示領域H1の保留画像X1が「紫」に変化する。
【0159】
また、演出制御用CPU31aは、保留変化演出の具体的な演出内容として、先読み実行回数が「2回」であって「紫」の演出内容を決定する場合、個別表示領域H2→個別表示領域H1の順に保留画像X1を変化させる変化態様CP2、変化態様CP1の何れかを決定する。また、演出制御用CPU31aは、「赤」の演出内容を決定する場合、個別表示領域H2→個別表示領域H1の順に保留画像X1を変化させる変化態様CP6,CP7、変化態様CP5の何れかを決定する。また、演出制御用CPU31aは、「金」の演出内容を決定する場合、個別表示領域H2→個別表示領域H1の順に保留画像X1を変化させる変化態様CP16?CP18、変化態様CP15の何れかを決定する。
【0160】
この場合におけるこれら変化態様CP1,CP5,CP15では、先読み実行回数よりも個別表示領域の保留画像X1の変化を実際に伴わせる図柄変動ゲームの回数が少ないことから、事前判定の対象としている入球検知から図柄変動ゲームの開始(1回)を挟んで保留変化演出による変化を発生させる。以下の説明で、事前判定の対象としている入球検知から図柄変動ゲームの開始を挟んで保留変化演出による変化を発生させる変化態様を、「遅延の変化態様」という。例えば、変化態様CP1では、個別表示領域H2の保留画像X1の表示後、次の図柄変動ゲームの開始を契機に個別表示領域H1の保留画像X1が「紫」に変化する。
【0161】
また、この場合におけるこれら変化態様CP2,CP6,CP7,CP16?CP18では、先読み実行回数と個別表示領域の保留画像X1の変化を実際に伴わせる図柄変動ゲームの回数が一致することから、直後の変化態様となる。例えば、変化態様CP2では、個別表示領域H2→個別表示領域H1の順に保留画像X1が「紫」に変化する。
【0162】
また、特に変化態様CP6,CP16,CP17では、直後の変化態様であって、決定している演出内容よりも特定の演出内容となる可能性が低いことを示唆する色から順に、決定している演出内容への変化を発生させる。以下の説明で、決定している演出内容よりも特定の演出内容となる可能性が低いことを示唆する色から順に、決定している演出内容への変化を複数回発生させる変化態様を、「再変化の変化態様」という。例えば、変化態様CP6では、個別表示領域H2→個別表示領域H1の順に保留画像X1が「紫」→「赤」に変化する。
【0163】
また、演出制御用CPU31aは、保留変化演出の具体的な演出内容として、先読み実行回数が「3回」であって「紫」の演出内容を決定する場合、個別表示領域H3→個別表示領域H2→個別表示領域H1の順に保留画像X1を変化させる変化態様CP3、変化態様CP1,CP2の何れかを決定する。また、演出制御用CPU31aは、「赤」の演出内容を決定する場合、個別表示領域H3→個別表示領域H2→個別表示領域H1の順に保留画像X1を変化させる変化態様CP8?CP10、変化態様CP5?CP7の何れかを決定する。また、演出制御用CPU31aは、「金」の演出内容を決定する場合、個別表示領域H3→個別表示領域H2→個別表示領域H1の順に保留画像X1を変化させる変化態様CP19?CP24、変化態様CP15?CP18の何れかを決定する。
【0164】
この場合におけるこれら変化態様CP1,CP2,CP5?CP7,CP15?CP18では、遅延の変化態様(図柄変動ゲームの開始を1回又は2回挟む)となる。例えば、変化態様CP1では、個別表示領域H3の保留画像X1の表示後、次のさらに次の図柄変動ゲームの開始を契機に個別表示領域H1の保留画像X1が「紫」に変化する。
【0165】
また、特に変化態様CP6,CP16,CP17では、遅延の変化態様であって、再変化の変化態様となる。例えば、変化態様CP6では、個別表示領域H3→個別表示領域H2→個別表示領域H1の順に保留画像X1が「なし」→「紫」→「赤」に変化する。
【0166】
また、この場合におけるこれら変化態様CP3,CP8?CP10,CP19?CP24では、先読み実行回数と個別表示領域の保留画像X1の変化を実際に伴わせる図柄変動ゲームの回数が一致することから、直後の変化態様となる。例えば、変化態様CP3では、個別表示領域H3→個別表示領域H2→個別表示領域H1の順に保留画像X1が「紫」に変化する。
【0167】
また、特に変化態様CP8,CP9,CP19?CP23では、直後の変化態様であって、再変化の変化態様となる。例えば、変化態様CP8では、個別表示領域H3→個別表示領域H2→個別表示領域H1の順に保留画像X1が「紫」→「紫」→「赤」に変化する。
【0168】
また、演出制御用CPU31aは、保留変化演出の具体的な演出内容として、先読み実行回数が「4回」であって「紫」の演出内容を決定する場合、変化態様CP1?CP3の何れかを決定する。また、演出制御用CPU31aは、「赤」の演出内容を決定する場合、変化態様CP5?CP10の何れかを決定する。また、演出制御用CPU31aは、「金」の演出内容を決定する場合、変化態様CP15?CP24の何れかを決定する。
【0169】
この場合におけるこれら変化態様CP1?CP3,CP5?CP10,CP15?CP24では、遅延の変化態様(図柄変動ゲームの開始を1回?3回挟む)となる。例えば、変化態様CP1では、個別表示領域H4の保留画像X1の表示後、次のさらに次のまたさらに次の図柄変動ゲームの開始を契機に個別表示領域H1の保留画像X1が「紫」に変化する。
【0170】
また、特に変化態様CP6,CP8,CP9,CP16,CP17,CP19?CP23では、遅延の変化態様であって、再変化の変化態様となる。例えば、変化態様CP6では、個別表示領域H4→個別表示領域H3→個別表示領域H2→個別表示領域H1の順に保留画像X1が「なし」→「なし」→「紫」→「赤」に変化する。」

「【0177】
本実施形態では、上記のように保留変化演出の実行に係る制御を行う演出制御用CPU31aが、事前演出実行手段として機能する。
また、本実施形態では、保留変化演出で保留画像X1が変化するか否かを報知する報知演出を伴わせる場合がある。この報知演出は、保留変化演出で保留画像X1が変化するタイミングに先立って行われ、報知演出を伴って実際に保留画像X1の変化へと繋がる実報知演出となる場合と、報知演出を伴って保留画像X1の変化へと繋がらない偽報知演出となる場合とがある。また、偽報知演出では、さらに今回の図柄変動ゲーム、すなわち偽報知演出を伴っている図柄変動ゲームが遊技者にとって有利な特定の演出内容となる可能性の高低を示唆する示唆演出へと派生(発展)させる場合がある。この示唆演出では、保留変化演出同様に遊技者にとって有利な特定の演出内容を、大当り抽選に当選、又はリーチ演出が行われることとしている。
【0178】
図12(a)?(h)に示すように、このような報知演出は、演出表示装置11の画像表示部GHで行われる。そして、報知演出では、画像表示部GHに表示される個別表示領域の何れかの保留画像X1めがけて武器画像G1が飛んで行く「狙い撃ち演出」が行われる。」

「【0182】
例えば、図12(a)に示すように、画像表示部GHでは、個別表示領域H1?H3に3つの保留画像X1めがけて表示画面の右上方から武器画像G1(ここでは、「くない」を模した画像)が飛んで行く狙い撃ち演出が行われる。なお、この図12(a)に示す状況の直前において、画像表示部GHでは、個別表示領域H1?H4に4つの保留画像X1が画像表示されており、図12(a)に示す状況への移行に伴って、個別表示領域H1?H3に3つの保留画像X1が画像表示される状況となる。この狙い撃ち演出が行われる状況までは、実報知演出及び偽報知演出で共通の流れを辿る。
【0183】
その後、図12(b)に示すように、画像表示部GHでは、武器画像G1が個別表示領域H3の保留画像X1に突き刺さる結果、該保留画像X1が「紫」へと変化する保留変化演出が発生する。また、図12(c)に示すように、画像表示部GHでは、武器画像G1が既に変化している個別表示領域H2の保留画像X1めがけて飛んで行って突き刺される結果、該保留画像X1が「紫」から「赤」へと再変化する保留変化演出が発生する。このように保留画像X1の変化又は再変化へと繋がる流れが、実報知演出の流れであって該実報知演出が実行される場合の態様となる。なお、この図12(c)に示す状況では、保留画像X1の再変化が先に保留画像X1を変化させるのとは異なる図柄変動ゲームの開始が必要なことから、個別表示領域が一つ減少した個別表示領域H1,H2に2つの保留画像X1が画像表示される状況を例示している。」

「【0187】
演出制御用CPU31aは、保留変化演出の実行状況、すなわち保留変化演出で実際に保留画像X1の変化又は再変化が発生するか否かを判定する状況判定処理を行う。その結果、保留変化演出の実行中の場合、演出制御用CPU31aは、今回の図柄変動ゲームの開始に伴って保留画像X1の変化又は再変化が発生するか否かを判定し、この判定結果によりその後の処理の内容が異なる。すなわち、状況判定処理において、演出制御用CPU31aは、保留変化演出の実行中であって、今回の図柄変動ゲームの開始に伴って保留画像X1の変化又は再変化が発生すること(肯定)を判定する、すなわち遅延の変化態様や再変化の変化態様に基づく場合、報知演出の中でも実報知演出を行わせるための実報知演出処理を行う。
【0188】
一方、状況判定処理において、演出制御用CPU31aは、保留変化演出の実行中であって、今回の図柄変動ゲームの開始に伴って保留画像X1の変化又は再変化が発生しないこと(否定)を判定する、すなわち直後の変化態様に基づく場合、報知演出の中でも偽報知演出を行わせるための偽報知演出処理を行う。また、状況判定処理において、演出制御用CPU31aは、保留変化演出の実行中でないこと(否定)を判定する、すなわち保留画像X1の変化又は再変化が発生しない場合、報知演出の中でも偽報知演出を行わせるための偽報知演出処理を行う。」

「【0196】
そして、演出制御用CPU31aは、遅延の変化態様に基づく保留変化演出の実行中、遊技球の入球後の図柄変動ゲームの開始のうち、変化態様に基づく保留画像X1を変化させるタイミングとなる該図柄変動ゲームの開始に合わせ、該保留画像X1の変化に先立って、実報知演出を行わせるように制御する。この場合に演出制御用CPU31aは、保留変化演出で変化させる保留画像X1めがけて武器画像G1を飛んで行かせるように制御する。」

「【0224】
そして、演出制御用CPU31aは、保留変化演出で保留画像X1の変化を伴わない場合、偽報知演出の実行を決定していれば、図柄変動ゲームの開始に合わせて偽報知演出を行わせるように制御する。この場合に演出制御用CPU31aは、偽報知演出で画像表示されている何れかの保留画像X1めがけて武器画像G1を飛んで行かせるように制御し、決定している武器SU演出を行わせるように制御する。」


以上の記載事項から、引用文献1には、以下の発明が記載されていると認められる。なお、引用発明の構成a?m2は本願発明の構成A?Mに対応している。

「a パチンコ遊技機(【0012】)であって、
b 演出表示装置11において飾り図柄による図柄変動ゲームを画像表示させ、飾り図柄を確定停止表示させて図柄変動ゲームを終了させる演出制御用CPU31a(【0015】、【0105】)と、
c 図柄変動ゲームの始動保留球の記憶数を記憶し、大当り判定用乱数、特図振分用乱数、リーチ判定用乱数、変動パターン振分用乱数F1?F3の各種乱数の値を保留記憶数に対応付けられた所定の記憶領域に記憶する主制御用RAM30cと、1加算後の保留記憶数を示す保留指定コマンドがセットされる送信バッファと、1減算後の保留記憶数を指示する保留指定コマンドがセットされる送信バッファ(【0083】、【0084】、【0087】)と、
d 保留記憶数の加算に伴って出力される保留指定コマンドを入力すると、保留有表示の態様とする個別表示領域の個数を1つ増加させるように、演出表示装置11の保留画像表示領域Hの表示内容を制御し、一方、保留記憶数の1減算に伴って出力される保留指定コマンドを入力すると、個別表示領域を保留無の態様で表示させ、保留有表示の態様とする個別表示領域の個数を1つ減少させるように、演出表示装置11の保留画像表示領域Hの表示内容を制御する前記演出制御用CPU31a(【0106】)と、
e 保留変化演出で保留画像X1が変化するか否かを報知する報知演出を実行する前記演出制御用CPU31a(【0177】、【0187】、【0188】)と、
を備え、
f 前記報知演出は、保留変化演出で保留画像X1が変化するタイミングに先立って行われ、報知演出を伴って実際に保留画像X1の変化へと繋がる実報知演出となる場合と、報知演出を伴って保留画像X1の変化へと繋がらない偽報知演出となる場合とがあり(【0177】)、
g、h 例えば、画像表示部GHでは、実報知演出として、個別表示領域H1?H3に3つの保留画像X1めがけて表示画面の右上方から武器画像G1が飛んで行く狙い撃ち演出が行われ、武器画像G1が個別表示領域H3の保留画像X1に突き刺さる結果、該保留画像X1が「紫」へと変化する保留変化演出が発生し、また、異なる図柄変動ゲームが開始し、個別表示領域が一つ減少して、実報知演出として、武器画像G1が既に変化している個別表示領域H2の保留画像X1めがけて飛んで行って突き刺される結果、該保留画像X1が「紫」から「赤」へと再変化する保留変化演出が発生する場合があり(【0182】、【0183】)、
i 前記演出制御用CPU31aは、特別図柄表示装置12に比較して大きい表示領域で構成される演出表示装置11の画像表示部GHで、特図に比較して遥かに大きく表示される飾り図柄の図柄変動ゲームを実行可能であり(【0013】、【0015】、【0016】、【0105】)、
j 前記演出制御用CPU31aは、飾り図柄の図柄変動ゲームが実行される演出表示装置11の画像表示部GHにおいて前記報知演出を実行可能であり(【0013】、【0015】、【0178】、【0188】)、
k 前記演出制御用CPU31aは、図柄変動ゲームの開始に合わせて前記演出表示装置11の前記画像表示部GHにおいて前記報知演出を実行し(【0178】、【0196】、【0224】)、
l 決定している演出内容よりも特定の演出内容となる可能性が低いことを示唆する色から順に、決定している演出内容への変化を複数回発生させる「再変化の変化態様」として、例えば、変化態様CP6では、個別表示領域H2→個別表示領域H1の順に保留画像X1が「紫」→「赤」に変化する場合があり(【0162】)、
m1 決定した保留変化演出の具体的な演出内容である(【0156】)「なし」、「紫」、「赤」、「金」の何れか(【0146】?【0150】)と、該保留変化演出を実行させる図柄変動ゲームの回数、すなわち先読み実行回数(【0156】)に基づき、演出内容への変化態様(【0156】)である保留画像X1が個別表示領域H1?H3で「紫」、「赤」、「金」の何れかに変化又は再変化するか否か(【0157】?【0170】)、及び変化の変化態様を事前判定の対象としている入球検知から図柄変動ゲームの開始を挟むことなく保留変化演出による変化を発生させる直後の変化態様とするか(【0158】)、事前判定の対象としている入球検知から図柄変動ゲームの開始を挟んで保留変化演出による変化を発生させる遅延の変化態様とするか(【0160】)を決定し(【0157】?【0170】)、
m2 遅延の変化態様や再変化の変化態様に基づく場合、報知演出の中でも実報知演出を行い(【0187】)、直後の変化態様に基づく場合と、変化又は再変化が発生しない場合に、報知演出の中でも偽報知演出を行う(【0188】)
パチンコ遊技機」(以下「引用発明」という。)

第5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。なお、見出しの(a)?(m)は本願発明の構成A?Mに対応している。

(a)引用発明の「a パチンコ遊技機」は、遊技を行うことが可能であることは明らかであるから、本願発明の「A 遊技を行うことが可能な遊技機」に相当する。

(b)引用発明の構成bの「飾り図柄」及び「図柄変動ゲーム」は、それぞれ、本願発明の構成Bの「識別情報」及び「可変表示」に相当する。
したがって、引用発明の「b 演出表示装置11において飾り図柄による図柄変動ゲームを画像表示させ、飾り図柄を確定停止表示させて図柄変動ゲームを終了させる演出制御用CPU31a」は、本願発明の「B 識別情報の可変表示を実行する可変表示手段」に相当する。

(c)引用発明の構成cの「図柄変動ゲームの始動保留球の記憶数」及び「大当り判定用乱数、特図振分用乱数、リーチ判定用乱数、変動パターン振分用乱数F1?F3の各種乱数の値」は、本願発明の構成Cの「可変表示に関する情報」に相当する。
したがって、引用発明の「c 図柄変動ゲームの始動保留球の記憶数を記憶し、大当り判定用乱数、特図振分用乱数、リーチ判定用乱数、変動パターン振分用乱数F1?F3の各種乱数の値を保留記憶数に対応付けられた所定の記憶領域に記憶する主制御用RAM30cと、1加算後の保留記憶数を示す保留指定コマンドがセットされる送信バッファと、1減算後の保留記憶数を指示する保留指定コマンドがセットされる送信バッファ」は、本願発明の「C 可変表示に関する情報を保留記憶として記憶する保留記憶手段」に相当する。

(d)引用発明の構成cにおいて、「主制御用RAM30c」に「記憶」される「図柄変動ゲームの始動保留球の記憶数」が「送信バッファ」にセットされる「1減算後」又は「1加算後」の「保留記憶数を示す」「保留コマンド」に対応することは明らかであることから、引用発明の構成dにおける、その「保留指定コマンド」の「入力」による「保留画像表示領域Hの表示内容」が引用発明の構成cの「主制御用RAM30c」に「記憶」される「図柄変動ゲームの始動保留球の記憶数」に対応することは明らかである。
したがって、引用発明の「d 保留記憶数の加算に伴って出力される保留指定コマンドを入力すると、保留有表示の態様とする個別表示領域の個数を1つ増加させるように、演出表示装置11の保留画像表示領域Hの表示内容を制御し、一方、保留記憶数の1減算に伴って出力される保留指定コマンドを入力すると、個別表示領域を保留無の態様で表示させ、保留有表示の態様とする個別表示領域の個数を1つ減少させるように、演出表示装置11の保留画像表示領域Hの表示内容を制御する前記演出制御用CPU31a」は、本願発明の「D 前記保留記憶手段に記憶された保留記憶に対応する保留表示を表示する保留表示手段」に相当する。

(e)引用発明の「e 保留変化演出で保留画像X1が変化するか否かを報知する報知演出を実行する前記演出制御用CPU31a」は、本願発明の「E 前記保留表示の表示態様の変化を示唆する特定演出を実行する特定演出実行手段」としての機能を有する。

(f)引用発明の「f 前記報知演出は、保留変化演出で保留画像X1が変化するタイミングに先立って行われ、報知演出を伴って実際に保留画像X1の変化へと繋がる実報知演出となる場合と、報知演出を伴って保留画像X1の変化へと繋がらない偽報知演出となる場合とがあ」ることは、本願発明のFの「F 前記特定演出の実行中に、保留表示の表示態様を変化させる変化演出と、保留表示の表示態様を変化させない非変化演出とを実行可能であ」ることに相当する。

(g、h)引用発明の「g、h 例えば、画像表示部GHでは、実報知演出として、個別表示領域H1?H3に3つの保留画像X1めがけて表示画面の右上方から武器画像G1が飛んで行く狙い撃ち演出が行われ、武器画像G1が個別表示領域H3の保留画像X1に突き刺さる結果、該保留画像X1が「紫」へと変化する保留変化演出が発生し、また、異なる図柄変動ゲームが開始し、個別表示領域が一つ減少して、実報知演出として、武器画像G1が既に変化している個別表示領域H2の保留画像X1めがけて飛んで行って突き刺される結果、該保留画像X1が「紫」から「赤」へと再変化する保留変化演出が発生する場合があ」ることは、本願発明の「G 前記変化演出は前記特定演出の実行中に複数回実行される場合があり、H 前記特定演出実行手段は、複数回の可変表示において前記特定演出を実行可能であると共に、前記変化演出が実行された場合に前記特定演出を継続して実行可能であ」ることに相当する。

(i)引用発明の「i 前記演出制御用CPU31aは、特別図柄表示装置12に比較して大きい表示領域で構成される演出表示装置11の画像表示部GHで、特図に比較して遥かに大きく表示される飾り図柄の図柄変動ゲームを実行可能であ」ることと、本願発明の「I 前記可変表示手段は、通常態様の識別情報の可変表示と、通常態様よりも小さい所定態様の識別情報の可変表示とを実行可能であ」ることとは、「I’前記可変表示手段は、通常態様の識別情報の可変表示を実行可能であ」る点で共通する。

(j)引用発明の「j 前記演出制御用CPU31aは、飾り図柄の図柄変動ゲームが実行される演出表示装置11の画像表示部GHにおいて前記報知演出を実行可能であ」ることと、本願発明の「J 前記特定演出実行手段は、通常態様の識別情報の可変表示が実行される特定領域において前記特定演出を実行可能であ」ることとは、「J’前記特定演出実行手段は、通常態様の識別情報の可変表示が実行される表示装置の画像表示部において前記特定演出を実行可能であ」る点で共通する。

(k)引用発明の「k 前記演出制御用CPU31aは、図柄変動ゲームの開始に合わせて前記演出表示装置11の前記画像表示部GHにおいて前記報知演出を実行」することと、本願発明の「K 前記可変表示手段は、前記特定領域において前記特定演出が実行される場合、所定態様の識別情報の可変表示を実行」することとは、「K’前記可変表示手段は、前記表示装置の前記画像表示部において前記特定演出が実行される場合、所定態様の識別情報の可変表示を実行」する点で共通する。

(l)引用発明の「l 決定している演出内容よりも特定の演出内容となる可能性が低いことを示唆する色から順に、決定している演出内容への変化を複数回発生させる「再変化の変化態様」として、例えば、変化態様CP6では、個別表示領域H2→個別表示領域H1の順に保留画像X1が「紫」→「赤」に変化」することは、本願発明の「L 保留表示の表示態様を段階的に変化可能であ」ることに相当する。

(m)引用発明の構成m1の「決定した保留変化演出の具体的な演出内容である「なし」、「紫」、「赤」、「金」の何れか」及び「演出内容への変化態様である保留画像X1が個別表示領域H1?H3で「紫」、「赤」、「金」の何れかに変化又は再変化するか否か」は、本願発明の構成Mの「保留表示の最終段階の表示態様」及び「最終段階までの段階における保留表示の表示態様」に相当する。
また、引用発明において、構成m2の「実報知演出」をするか「偽報知演出」をするかは、構成m1の、「演出内容への変化態様である保留画像X1が個別表示領域H1?H3で「紫」、「赤」、「金」の何れかに変化又は再変化するか否か、及び変化の変化態様を事前判定の対象としている入球検知から図柄変動ゲームの開始を挟むことなく保留変化演出による変化を発生させる直後の変化態様とするか、事前判定の対象としている入球検知から図柄変動ゲームの開始を挟んで保留変化演出による変化を発生させる遅延の変化態様とするか」によるのであり、また、これは、構成m1の「決定した保留変化演出の具体的な演出内容である「なし」、「紫」、「赤」、「金」の何れか」「に基づ」くのであるから、結局、構成m2の「実報知演出」をするか「偽報知演出」をするかは、構成m1の「決定した保留変化演出の具体的な演出内容である「なし」、「紫」、「赤」、「金」の何れか」「に基づ」くものといえる。
したがって、引用発明の「m1 決定した保留変化演出の具体的な演出内容である「なし」、「紫」、「赤」、「金」の何れか」「に基づき」、「演出内容への変化態様である保留画像X1が個別表示領域H1?H3で「紫」、「赤」、「金」の何れかに変化又は再変化するか否か、及び変化の変化態様を事前判定の対象としている入球検知から図柄変動ゲームの開始を挟むことなく保留変化演出による変化を発生させる直後の変化態様とするか、事前判定の対象としている入球検知から図柄変動ゲームの開始を挟んで保留変化演出による変化を発生させる遅延の変化態様とするかを決定し、m2 遅延の変化態様や再変化の変化態様に基づく場合、報知演出の中でも実報知演出を行い、直後の変化態様に基づく場合と、変化又は再変化が発生しない場合に、報知演出の中でも偽報知演出を行う」ことは、本願発明の「M 保留表示の最終段階の表示態様に基づいて、最終段階までの段階における保留表示の表示態様と、最終段階までの段階において前記変化演出と前記非変化演出とのいずれを実行するかと、を決定する」ことに相当する。

してみると、本願発明と引用発明とは、
「A 遊技を行うことが可能な遊技機であって、
B 識別情報の可変表示を実行する可変表示手段と、
C 可変表示に関する情報を保留記憶として記憶する保留記憶手段と、
D 前記保留記憶手段に記憶された保留記憶に対応する保留表示を表示する保留表示手段と、
E 前記保留表示の表示態様の変化を示唆する特定演出を実行する特定演出実行手段と、
を備え、
F 前記特定演出の実行中に、保留表示の表示態様を変化させる変化演出と、保留表示の表示態様を変化させない非変化演出とを実行可能であり、
G 前記変化演出は前記特定演出の実行中に複数回実行される場合があり、
H 前記特定演出実行手段は、複数回の可変表示において前記特定演出を実行可能であると共に、前記変化演出が実行された場合に前記特定演出を継続して実行可能であり、
I’前記可変表示手段は、通常態様の識別情報の可変表示を実行可能であり、
J’前記特定演出実行手段は、通常態様の識別情報の可変表示が実行される表示装置の画像表示部において前記特定演出を実行可能であり、
K’前記可変表示手段は、前記表示装置の前記画像表示部において前記特定演出が実行される場合、所定態様の識別情報の可変表示を実行し、
L 保留表示の表示態様を段階的に変化可能であり、
M 保留表示の最終段階の表示態様に基づいて、最終段階までの段階における保留表示の表示態様と、最終段階までの段階において前記変化演出と前記非変化演出とのいずれを実行するかと、を決定する、
遊技機。」
である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
構成I’の「通常態様の識別情報の可変表示を実行可能であ」る「前記可変表示手段」が、本願発明は「通常態様よりも小さい所定態様の識別情報の可変表示とを実行可能であ」るのに対し、引用発明はそのようなものか否か不明な点。

(相違点2)
構成J’の「前記特定演出実行手段」により「表示装置の画像表示部において」「実行」される「通常態様の識別情報の可変表示」と「前記特定演出」とが、本願発明は共通の「特定領域」で実行されるのに対し、引用発明はそのようなものか否か不明な点。

(相違点3)
構成K’の「前記可変表示手段は、前記表示装置の前記画像表示部において前記特定演出が実行される場合」に「実行」される「識別情報の可変表示」が、本願発明は「所定態様」であるのに対し、引用発明はそのようなものか否か不明な点。

第6 判断
上記相違点1?3は、通常の可変表示の表示態様と、特定演出が実行されるときの特定演出の表示態様及び可変表示の態様に係る点で相互に関連するので、以下まとめて検討する。
遊技機に関する技術分野において、可変表示を通常態様と通常態様より小さい所定態様とで実行可能であり、保留表示の表示態様の変化を示唆する特定演出を、通常態様の可変表示が実行される特定領域において実行可能であり、特定領域において特定演出が実行される場合、所定態様の可変表示を実行することは、例えば、次のア及びイに記載のとおり、本願の出願前の周知技術である。

ア 引用文献2
「【0399】
まず、図44を用いて、先読み予告演出の前に共通演出が実行される場合の演出態様の具体例を説明する。図44(1)に示すように、演出表示装置9において左中右の飾り図柄の変動(可変表示)が停止している状態から、飾り図柄の変動が開始される(図44(2)参照)。次いで、飾り図柄の変動表示中に、図44(3)に示すように、演出表示装置9の表示画面においてキャラクタ画像200が登場することにより、共通演出が開始される。次いで、例えば、図44(4)に示すように、キャラクタ画像200が第1保留記憶表示部18c、演出エリア9Fおよび第2保留記憶表示部18dの間を往復するような態様の演出が実行され、図44(5)に示すように、最終的に第1保留記憶表示部18cの上でキャラクタ画像200が立ち止まるような演出が実行される。そして、図44(6)に示すように、第1保留記憶表示部18cにおいて、予告対象の保留表示が通常の表示態様から特殊保留表示に変化し(本例では、白色の丸形表示から金色の丸形表示に変化)、先読み予告演出が開始される。
【0400】
なお、図44(3)?(4)のキャラクタ画像200を用いた演出が実行されている期間が共通演出期間に相当する。また、この実施の形態では、図44(3)?(4)に示すように、共通演出の実行中には飾り図柄の変動表示が縮小表示される場合が示されている。」

「【0610】
また、この実施の形態によれば、共通演出としてキャラクタ(本例では、キャラクタ画像200)を表示する演出を実行するとともに、第1演出が実行される場合には共通演出においてキャラクタが保留表示に作用する態様の演出を実行する(図44参照)。そして、共通演出においてキャラクタが保留表示に作用する態様の演出を実行すると、第1演出として保留表示の表示態様を変化させる態様の演出を実行する。そのため、共通演出の態様によって、その後に第1演出が実行されることを認識することができ、遊技に対する興趣を向上させることができる。」

図44から、(1)、(2)及び(6)の通常時の飾り図柄の可変表示が実行される領域において、(3)?(5)のキャラクタ画像200による演出を実行可能であり、前記領域において前記キャラクタ画像200による演出が実行される場合、飾り図柄の変動表示が右上部に縮小表示されることが見て取れる。

イ 引用文献3
「【0092】
図12は、演出図柄表示装置に表示される示唆演出の画面例を表す図である。
演出図柄表示装置60の表示領域194には、その略中央の領域に装飾図柄190が変動表示される他、その装飾図柄190の変動表示に干渉しない下方の領域に第1保留画像202、第2保留画像204等が表示される。・・・」
「【0095】
図13は、表示領域に表示される特定の予告演出の具体例を表す図である。同図(a)?(c)は、この予告演出の演出過程の一例を表している。
本実施例では、図柄の変動表示に付加的に伴わせる特定の予告演出として、上述したステップアップ予告が表示される。装飾図柄190の変動とともにその予告演出の第1ステップ(SU1)が開始されると、同図(a)に示すように、表示領域194の左上領域に星の形をしたオブジェクト画像206が表示される。このとき、本実施例では装飾図柄190が表示領域194の右上領域に追いやられて小さく変動表示されるが、装飾図柄190を移動させることなく透過表示させるようにしてもよい。この予告演出が第2ステップ(SU2)に発展すると、同図(b)に示すように、オブジェクト画像206が表示領域194の中央に流れるように移動表示され、その移動過程で徐々に拡大される。さらに第3ステップ(SU3)に発展すると、同図(c)に示すように、その拡大されたオブジェクト画像206が分裂して小さな星の集まりになる。この予告演出は第3ステップが最終ステップとなっており、その第3ステップまで到達すると、大当たりが発生する期待度が相対的に大きくなる。
【0096】
図14は、表示領域に表示される画像連携演出の具体例を表す図である。同図(a)?(c)は、一例として予告演出の終了時に画像連携演出が行われる例が示されている。
すなわち、本実施例では、上記予告演出が選択されると、先読み情報に基づき、第1保留手段144および第2保留手段146が保留する抽選値のいずれかに、確変状態であるか否かにかかわらず大当たりとなり(以下、適宜「大当たり確定抽選値」という)、「スーパー1」を伴うものがあるか否かが判定され、ある場合には、各保留手段が保留する何番目の抽選値であるかが判定される。その大当たり確定抽選値がある場合、オブジェクト画像206を保留表示に連携表示させる画像連携演出がなされる。また、確変状態であるか否かにかかわらず外れとなるもの(以下、適宜「外れ確定抽選値」という)が保留された場合、つまり大当たりにも小当たりにも該当しない場合にも、「スーパー1」を伴う場合には、オブジェクト画像206をそれとは異なる形で保留表示に連携表示させる画像連携演出がなされる。なお、後者については当否判定の点でガセが表示されるものの、オブジェクト画像206そのものの動作は大当たり確定抽選値がある場合と同様である。このため、以下においては、大当たり確定抽選値がある場合の画像連携演出を中心に説明する。
【0097】
図示の例では、上述したステップアップ予告において第1ステップにて終了する演出内容が決定されている。この予告演出の終了時に画像連携演出を行わない場合、つまり通常のステップアップ予告が表示される場合には、同図(a)および(b)に示すように、オブジェクト画像206は、表示領域194の左上領域から右下領域へ流れ星のように移動表示される。このとき、オブジェクト画像206が第2保留画像204の背後において消滅する演出が行われる。
【0098】
一方、予告演出の開始までに第1保留手段144および第2保留手段146が保留する当否抽選値のいずれかが大当たり確定抽選値であり、かつ「スーパー1」を伴う場合、画像連携演出として、オブジェクト画像206が該当する保留対応画像に重ねて表示される。同図(c)に示す例では、第1保留手段144が保留する3つめの当否抽選値が大当たり確定抽選値であり「スーパー1」の演出を伴うものであったため、オブジェクト画像206が第1保留画像202の左から3番目のランプ画像の位置に移動表示されている。オブジェクト画像206は、ランプ画像に重ねられたときに保留対応画像として一体化する。」

そして、引用発明において、演出表示装置11における可変表示たる飾り図柄による図柄変動ゲームの表示態様と特定演出たる報知演出の表示態様との関係は示されていないが、その具体化手段として、上記周知技術を適用して、飾り図柄による図柄変動ゲームを通常態様と通常態様より小さい所定態様とで実行可能とし、保留画像X1の変化及び再変化を示唆する報知演出を、通常態様の飾り図柄による図柄変動ゲームが実行される特定領域において実行可能とし、特定領域において報知演出が実行される場合、所定態様の飾り図柄による図柄変動ゲームを実行するものとして、上記相違点1?3に係る本願発明の構成に相当することは当業者が容易になし得たものである。

(効果について)
本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

(請求人の主張について)
請求人は、平成31年3月29日の意見書において(なお、ア?エは請求人の主張を分説するために当審で付した。)、
ア いずれの引用文献にも、本願の請求項1に係る発明の「保留表示の最終段階の表示態様に基づいて、最終段階までの段階における保留表示の表示態様と、最終段階までの段階において前記変化演出と前記非変化演出とのいずれを実行するかと、を決定する」との構成が記載されていない、
イ かかる構成上の相違により、本願発明は、最終段階までの段階における保留表示の表示態様と、最終段階までの段階において変化演出と非変化演出とのいずれを実行するかと、を一度に決定することができるので、処理を単純化することができ、その処理を実行するためのデータ容量も少なく抑えることができるという、引用文献に記載された発明と比較して有利な効果を奏する、
ウ 補正後の本願発明に関連して、引用文献1の段落【0186】には、「演出制御用CPU31aは、変動パターン指定コマンドを入力する、すなわち主制御用CPU30aが図柄変動ゲームの開始を指示する毎に、報知演出又は示唆演出を実行させるか否かを決定するための処理を行う。」と記載され、また、引用文献1の段落【0187】には、「演出制御用CPU31aは、保留変化演出の実行状況、すなわち保留変化演出で実際に保留画像X1の変化又は再変化が発生するか否かを判定する状況判定処理を行う。その結果、保留変化演出の実行中の場合、演出制御用CPU31aは、今回の図柄変動ゲームの開始に伴って保留画像X1の変化又は再変化が発生するか否かを判定し、この判定結果によりその後の処理の内容が異なる。すなわち、状況判定処理において、演出制御用CPU31aは、保留変化演出の実行中であって、今回の図柄変動ゲームの開始に伴って保留画像X1の変化又は再変化が発生すること(肯定)を判定する、すなわち遅延の変化態様や再変化の変化態様に基づく場合、報知演出の中でも実報知演出を行わせるための実報知演出処理を行う。」と記載され、これらの記載によれば、引用文献1には、「変化演出(保留変化演出)の実行状況に基づいて、今回の可変表示(図柄変動ゲーム)における保留表示(保留画像X1)の表示態様と、今回の可変表示において変化演出と非変化演出とのいずれを実行するかと(今回の図柄変動ゲームの開始に伴って保留画像X1の変化又は再変化が発生するか否か)、を決定する」との事項が開示されていると認められるところ、引用文献2、3のいずれにも、本願発明における上記の構成は、開示も示唆もされていないから、してみれば、引用文献1に記載の発明に、引用文献2、3に記載の事項を適用しても、「変化演出の実行状況に基づいて、今回の可変表示における保留表示の表示態様と、今回の可変表示において変化演出と非変化演出とのいずれを実行するかと、を決定する」との事項が導出されるに過ぎず、本願発明における「保留表示の最終段階の表示態様に基づいて、最終段階までの段階における保留表示の表示態様と、最終段階までの段階において前記変化演出と前記非変化演出とのいずれを実行するかと、を決定する、」との構成を導出することはできない、
エ したがって、引用文献1に記載の発明に、引用文献2、3に記載の事項を適用しても、可変表示を実行する度に、変化演出の実行状況に基づいて処理を行う必要があるため、最終段階までの段階における保留表示の表示態様と、最終段階までの段階において変化演出と非変化演出とのいずれを実行するかと、を一度に決定することはできず、処理が複雑なものとなり、その処理を実行するためのデータ容量も大きくなってしまう、
旨主張する。

しかしながら、上記アの請求人の主張について、上記第5(m)で検討したとおり、引用発明の「m1 決定した保留変化演出の具体的な演出内容である「なし」、「紫」、「赤」、「金」の何れか」「に基づき」、「演出内容への変化態様である保留画像X1が個別表示領域H1?H3で「紫」、「赤」、「金」の何れかに変化又は再変化するか否か、及び変化の変化態様を事前判定の対象としている入球検知から図柄変動ゲームの開始を挟むことなく保留変化演出による変化を発生させる直後の変化態様とするか、事前判定の対象としている入球検知から図柄変動ゲームの開始を挟んで保留変化演出による変化を発生させる遅延の変化態様とするかを決定し、m2 遅延の変化態様や再変化の変化態様に基づく場合、報知演出の中でも実報知演出を行い、直後の変化態様に基づく場合と、変化又は再変化が発生しない場合に、報知演出の中でも偽報知演出を行う」ことは、本願発明の「M 保留表示の最終段階の表示態様に基づいて、最終段階までの段階における保留表示の表示態様と、最終段階までの段階において前記変化演出と前記非変化演出とのいずれを実行するかと、を決定する」ことに相当するから、請求人の主張は採用できない。

また、上記ウの請求人の主張について、引用文献1の段落【0186】及び【0187】に記載されている「実報知演出」を「行」う条件である「遅延の変化態様」や「再変化の変化態様」は、上記第5(m)で検討したとおり、「決定した保留変化演出の具体的な演出内容である「なし」、「紫」、「赤」、「金」の何れか」「に基づき」「決定」されるものであるから、結局、「実報知演出」を「行」うか否かは、「決定した保留変化演出の具体的な演出内容である「なし」、「紫」、「赤」、「金」の何れか」「に基づ」くものといえるから、請求人の主張は採用できない。

また、上記イ及びエの請求人の主張について、請求項1には「M 保留表示の最終段階の表示態様に基づいて、最終段階までの段階における保留表示の表示態様と、最終段階までの段階において前記変化演出と前記非変化演出とのいずれを実行するかと、を決定する」と記載されているのみであり、「最終段階までの段階における保留表示の表示態様と、最終段階までの段階において変化演出と非変化演出とのいずれを実行するかと、を一度に決定する」ことは特定されておらず、請求人の主張は、請求項の記載に基づくものではないから、請求人の主張は採用できない。
なお、上記第5(m)で検討したとおり、引用発明は、「演出内容への変化態様である保留画像X1が個別表示領域H1?H3で「紫」、「赤」、「金」の何れかに変化又は再変化するか否か、及び変化の変化態様を事前判定の対象としている入球検知から図柄変動ゲームの開始を挟むことなく保留変化演出による変化を発生させる直後の変化態様とするか、事前判定の対象としている入球検知から図柄変動ゲームの開始を挟んで保留変化演出による変化を発生させる遅延の変化態様とするか)を」一度に「決定」するものといえ、実報知演出をするか偽報知演出をするかは、この「決定」により既に、「遅延の変化態様や再変化の変化態様に基づくか」、「直後の変化態様に基づく場合と、変化又は再変化が発生しない場合」により、一意に定められているといえるから、仮に、請求人の主張のとおり、引用発明において「最終段階までの段階における保留表示の表示態様と、最終段階までの段階において変化演出と非変化演出とのいずれを実行するかと、を一度に決定する」ことが特定されたとしても、本願発明と引用発明との間に格別の差異は認められないから、請求人の主張は採用できない。

(まとめ)
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-04-19 
結審通知日 2019-04-23 
審決日 2019-05-08 
出願番号 特願2014-67142(P2014-67142)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柴田 和雄最首 祐樹  
特許庁審判長 長崎 洋一
特許庁審判官 大山 栄成
藤田 年彦
発明の名称 遊技機  
代理人 田▲崎▼ 聡  
代理人 佐伯 義文  
代理人 松沼 泰史  
代理人 平野 昌邦  

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