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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1352800
審判番号 不服2018-13249  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-10-04 
確定日 2019-06-20 
事件の表示 特願2016- 35108「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 8月31日出願公開、特開2017-148349〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年2月26日の出願であって、平成29年2月27日に手続補正書が提出され、同年11月27日付けで拒絶の理由が通知され、平成30年2月5日に意見書及び手続補正書が提出され、同年3月15日付けで最後の拒絶の理由が通知され、同年5月14日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年7月17日付け(発送日:同年7月24日)で、同年5月14日付け手続補正が却下されるとともに拒絶査定がなされ、それに対して、同年10月4日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。


第2 平成30年10月4日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

本件補正を却下する。

[理由]

1.本件補正について
本件補正は、特許請求の範囲を補正する内容を含んでおり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
(補正前:平成30年2月5日付け手続補正)
「【請求項1】
始動入賞領域への遊技球の入賞に基づき、複数の識別情報を変動表示する変動表示ゲームを実行し、前記変動表示ゲームの結果が特別結果となった場合に、遊技者に所定の遊技価値を付与する特別遊技を発生する遊技機において、
遊技に関する情報を表示可能な表示装置と、
前記始動入賞領域への遊技球の入賞に基づき前記変動表示ゲームの実行権利を始動記憶として所定の上限数まで記憶可能な始動記憶手段と、
前記始動記憶手段に記憶された始動記憶に関する情報を示す保留表示を前記表示装置に表示可能な始動記憶表示手段と、
動作が可能であり、前記表示装置の前面に重なった状態となることが可能な演出装置と、を備え、
前記始動記憶表示手段は、
前記保留表示として、各始動記憶と一対一に対応する始動記憶表示を表示することにより前記始動記憶に関する情報を示す第1保留表示と、前記始動記憶手段に記憶された始動記憶の数を表示することにより前記始動記憶に関する情報を示す第2保留表示と、を表示可能であり、
前記変動表示ゲームの実行中において、前記第2保留表示は前記演出装置と重ならない位置で継続して表示し、前記第1保留表示は前記演出装置と重なる場合には当該演出装置の動作に対応して非表示とするように構成され、
前記第1保留表示が非表示であるときに新たな始動記憶が発生した場合には、該新たな始動記憶が前記変動表示ゲームの結果態様を示唆する予告報知の対象となる始動記憶である場合には、予告報知の対象となる始動記憶が発生したことを強調する報知を実行可能であり、前記第2保留表示については前記新たな始動記憶の発生に伴う表示を行い、前記第1保留表示については非表示の状態が終了して当該第1保留表示の表示が再開された後、前記新たな始動記憶に対応して実行される変動表示ゲームの結果態様を示唆する予告報知が認識可能となるように構成されることを特徴とする遊技機。」
から、
(補正後:本件補正である平成30年10月4日付け手続補正)
「【請求項1】
A 始動入賞領域への遊技球の入賞に基づき、複数の識別情報を変動表示する変動表示ゲームを実行し、前記変動表示ゲームの結果が特別結果となった場合に、遊技者に所定の遊技価値を付与する特別遊技を発生する遊技機において、
B 遊技に関する情報を表示可能な表示装置と、
C 前記始動入賞領域への遊技球の入賞に基づき前記変動表示ゲームの実行権利を始動記憶として所定の上限数まで記憶可能な始動記憶手段と、
D 前記始動記憶手段に記憶された始動記憶に関する情報を示す保留表示を前記表示装置に表示可能な始動記憶表示手段と、
E 動作が可能であり、前記表示装置の前面に重なった状態となることが可能な演出装置と、を備え、
F 前記始動記憶表示手段は、
前記保留表示として、各始動記憶と一対一に対応する始動記憶表示を表示することにより前記始動記憶に関する情報を示す第1保留表示と、前記始動記憶手段に記憶された始動記憶の数を表示することにより前記始動記憶に関する情報を示す第2保留表示と、を表示可能であり、
G 前記変動表示ゲームの実行中において、前記第2保留表示は前記演出装置と重ならない位置で継続して表示し、前記第1保留表示は前記演出装置と重なる場合には当該演出装置の動作に対応して非表示とするように構成され、
H 前記変動表示ゲームの結果態様を示唆する予告報知の対象となる新たな始動記憶が発生したときであって前記第1保留表示が非表示でない場合には、前記第2保留表示において当該新たな始動記憶の発生に伴う表示を直ちに行うとともに、当該第1保留表示において当該新たな始動記憶に対応して実行される変動表示ゲームの結果態様を示唆する予告報知が直ちに認識可能となるように構成され、
I 前記変動表示ゲームの結果態様を示唆する予告報知の対象となる新たな始動記憶が発生したときであって前記第1保留表示が非表示である場合には、前記第2保留表示において当該新たな始動記憶の発生に伴う表示を直ちに行うとともに、予告報知の対象となる始動記憶が発生したことを強調する報知を実行可能であり、当該第1保留表示において、当該第1保留表示の非表示の状態が終了して当該第1保留表示の表示が再開された後であって次回の変動表示ゲームが開始するときに、当該新たな始動記憶に対応して実行される変動表示ゲームの結果態様を示唆する予告報知が認識可能となるように構成されることを特徴とする遊技機。」
に補正された(下線は、補正箇所を明示するために当審で付した。また、A?Iは、当審にて分説して付した。)。

2.補正の適否
(1)本件補正
本件補正は、補正前の請求項1について、発明を特定するために必要な事項である「始動記憶表示手段」に表示可能な「第1保留表示」と「第2保留表示」に関して、「前記変動表示ゲームの結果態様を示唆する予告報知の対象となる新たな始動記憶が発生したときであって前記第1保留表示が非表示でない場合には、前記第2保留表示において当該新たな始動記憶の発生に伴う表示を直ちに行うとともに、当該第1保留表示において当該新たな始動記憶に対応して実行される変動表示ゲームの結果態様を示唆する予告報知が直ちに認識可能となるように構成され、」という限定を加えるとともに、 「前記第1保留表示が非表示であるときに新たな始動記憶が発生した場合には、該新たな始動記憶が前記変動表示ゲームの結果態様を示唆する予告報知の対象となる始動記憶である場合には、」を「前記変動表示ゲームの結果態様を示唆する予告報知の対象となる新たな始動記憶が発生したときであって前記第1保留表示が非表示である場合には、」と書き改め、さらに、変動表示ゲームの結果態様を示唆する予告報知の対象となる新たな始動記憶が発生したときであって前記第1保留表示が非表示である場合の「第2保留表示」に関し、「前記第2保留表示については前記新たな始動記憶の発生に伴う表示を行い、」とあったものを、「前記第2保留表示において当該新たな始動記憶の発生に伴う表示を直ちに行うとともに、」と限定し、同場合の「第1保留表示」に関し、「当該第1保留表示の表示が再開された後」に「新たな始動記憶に対応して実行される変動表示ゲームの結果態様を示唆する予告報知が認識可能となる」時期に関し、「次回の変動表示ゲームが開始するときに、」という限定を加えるものである。

(2)補正目的
そして、補正後の請求項1に係る発明は、補正前の請求項1に係る発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。

(3)新規事項
本件補正は、願書に最初に添付した明細書の【0370】?【0376】、【0378】?【0384】、【0433】、【0439】、【0441】、【0466】、【0448】の記載からみて新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。

3.本件補正発明の独立特許要件についての検討
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、その請求項1に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。
(1)引用文献1に記載された発明
原査定の拒絶理由において提示された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2012-125341号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審にて付した。)。

ア 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技盤に設けられた可動役物を動作させて演出を行うパチンコ遊技機等の遊技機に関する。・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
遊技機における演出部材の形状や動作は、様々に設定することが可能であるが、演出部材によって上記の入賞球の保留数を報知するための表示を隠すことは許されない。そのため、演出部材の動作は、この保留数表示を行う表示手段を覆わない範囲の、限定的なものとなっていた。
【0006】
そこで本発明は、入賞球の保留数を遊技者に報知しつつ、演出部材の、より自由な動作を実現することを目的とする。・・・
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、入賞球の保留数を遊技者に報知しつつ、演出部材の、より自由な動作を実現することができる。」

イ 「【0016】
・・・本実施の形態では、遊技者により視認され易い遊技領域111の位置に、演出のための各種の画像を表示する画像表示部114が配設されている。この画像表示部114は、液晶ディスプレイ等による表示画面を備え、遊技者によるゲームの進行に伴い、例えば、図柄抽選結果(図柄変動結果)を遊技者に報知するための装飾図柄を表示したり、キャラクタの登場やアイテムの出現による演出画像を表示したりする。
また、遊技盤110の前面に、各種の演出に用いられる可動役物115および盤ランプ116を備えている。可動役物115は、遊技盤110上で動作することにより各種の演出を行い、・・・
【0024】
・・・パチンコ遊技機100の表示器130は、図2の(a)に示すように、第1始動口121の入賞に対応して作動する第1特別図柄表示器221と、第2始動口122の入賞に対応して作動する第2特別図柄表示器222と、ゲート124の通過に対応して作動する普通図柄表示器223と、を備えている。第1特別図柄表示器221は、第1始動口121の入賞による特別図柄を変動表示しその抽選結果を表示する。第2特別図柄表示器222は、第2始動口122の入賞による特別図柄を変動表示しその抽選結果を表示する。・・・」

ウ 「【0028】
〔制御ユニットの構成〕
次に、パチンコ遊技機100での動作制御や信号処理を行う制御ユニットについて説明する。
図3は、制御ユニットの内部構成を示すブロック図である。同図に示すように、制御ユニットは、メイン制御手段として、内部抽選および当選の判定等といった払い出す賞球数に関する各種制御を行う遊技制御部200を備えている。また、サブ制御手段として、演出を統括的に制御する演出制御部300と、画像および音響を用いた演出を制御する画像/音響制御部310と、各種のランプおよび可動役物115を用いた演出を制御するランプ制御部320と、払出球の払い出し制御を行う払出制御部400と、を備えている。・・・
【0030】
〔遊技制御部の構成・機能〕
遊技制御部200は、内部抽選および当選の判定等といった払い出し賞球数に関連する各種制御を行う際の演算処理を行うCPU201と、CPU201にて実行されるプログラムや各種データ等が記憶されたROM202と、CPU201の作業用メモリ等として用いられるRAM203と、を備えている。
遊技制御部200は、第1始動口121または第2始動口122に遊技球が入賞すると特別図柄抽選を行い、特別図柄抽選での当選か否かの判定結果を演出制御部300に送る。・・・また、遊技球が連続的に第1始動口121または第2始動口122へ入賞したときの未抽選分の限度個数(例えば4個)までの保留や、遊技球が連続的にゲート124を通過したときの未抽選分の限度個数(例えば4個)までの保留を設定する。・・・
【0031】
さらに、遊技制御部200は、第1始動口121、第2始動口122、大入賞口125および普通入賞口126に遊技球が入賞すると、遊技球が入賞した場所に応じて1つの遊技球当たり所定数の賞球を払い出すように、払出制御部400に対する指示を行う。・・・」

エ 「【0036】
〔演出制御部の構成・機能〕
次に、演出制御部300は、演出を制御する際の演算処理を行うCPU301と、CPU301にて実行されるプログラムや各種データ等が記憶されたROM302と、CPU301の作業用メモリ等として用いられるRAM303と、日時を計測するリアルタイムクロック(RTC)304と、を備えている。
演出制御部300は、例えば遊技制御部200から送られる特別図柄抽選での当選か否かの判定結果に基づいて、演出内容を設定する。・・・
また、演出制御部300は、設定した演出内容の実行を指示するコマンドを画像/音響制御部310およびランプ制御部320に送る。
【0037】
〔画像/音響制御部の構成・機能〕
画像/音響制御部310は、演出内容を表現する画像および音響を制御する際の演算処理を行うCPU311と、CPU311にて実行されるプログラムや各種データ等が記憶されたROM312と、CPU311の作業用メモリ等として用いられるRAM313と、を備えている。
そして、画像/音響制御部310は、演出制御部300から送られたコマンドに基づいて、画像表示部114に表示する画像およびスピーカ156から出力する音響を制御する。・・・」

オ 「【0042】
特別図柄抽選部231は、第1始動口121や第2始動口122に遊技球が入賞した場合に、特別図柄の抽選を行う。
普通図柄抽選部232は、ゲート124を遊技球が通過した場合に、普通図柄抽選を行う。
特別図柄変動制御部233は、特別図柄の抽選が行われた場合に、その抽選結果に応じて特別図柄の変動を制御する。
【0043】
特別図柄抽選結果判定部234は、特別図柄の抽選が行われた場合に、その抽選結果が「大当たりか否か」、「大当たりに当選した場合の大当たりの種類」、「大当たりに当選していない場合での小当たりかはずれか」を判定する。
ここで、「大当たり」は、大当たり遊技の終了後に発生する遊技状態に応じて複数の種類に分けられる。具体的には、特別図柄の変動時間が短縮される時短遊技状態の有無および大当たりの当選確率が高確率に変動した確変遊技状態の有無の組み合わせによって大当たりの種類が決まる。すなわち、大当たりの種類としては、大当たり遊技の終了後に、時短遊技状態および確変遊技状態の両方が発生する大当たり、時短遊技状態のみが発生する大当たり、確変遊技状態のみが発生する大当たり、時短遊技状態および確変遊技状態のいずれも発生しない大当たりが有り得る。以下、これらの大当たりを区別する場合は、大当たり遊技の終了後に発生する遊技状態に基づき、「時短有り」、「時短無し」、「確変有り」、「確変無し」等と記載して区別する。これらの大当たりは、各々個別の特別図柄に対応付けられており、特別図柄抽選において当選した特別図柄の種類に応じて大当たりの種類が確定する。」

カ 「【0050】
〔遊技機の基本動作〕
次に、上記のように構成されたパチンコ遊技機100の基本動作を説明する。
パチンコ遊技機100の基本的な動作は、メイン制御手段である遊技制御部200により行われる。そして、この遊技制御部200の制御の下、サブ制御手段である演出制御部300により遊技上の演出の制御が行われ、払出制御部400により賞球の払い出しの制御が行われる。・・・
【0053】
スイッチ処理(ステップ502)としては、始動口スイッチ処理、ゲートスイッチ処理が行われる。
始動口スイッチ処理では、遊技制御部200の特別図柄抽選部231は、図2の第1始動口スイッチ211および第2始動口スイッチ212の状態を監視し、スイッチがONとなった場合に、特別図柄抽選のための処理を実行する。・・・
【0057】
〔遊技制御部での始動口スイッチ処理〕
図6は、図5のステップ502に示したスイッチ処理のうちの始動口スイッチ処理の内容を示すフローチャートである。
この始動口スイッチ処理は、第1始動口121における入賞に対する処理と、第2始動口122における入賞に対する処理とが順次行われる。図6を参照すると、遊技制御部200の特別図柄抽選部231は、まず、第1始動口121に遊技球が入賞して第1始動口スイッチ211がONとなったか否かを判断する(ステップ601)。第1始動口スイッチ211がONとなったならば、次に特別図柄抽選部231は、第1始動口121の入賞における未抽選分の保留数U1が上限値未満か否かを判断する(ステップ602)。図6に示す例では、上限値を4個としている。保留数U1が上限値に達している場合は(ステップ602でNo)、それ以上未抽選分の入賞を保留することができないので、第1始動口121における入賞に対する処理を終了する。
【0058】
一方、保留数U1が上限値未満である場合(ステップ602でYes)、次に特別図柄抽選部231は、保留数U1の値を1加算する(ステップ603)。そして、今回の入賞による抽選のための乱数値を取得し、RAM203に格納する(ステップ604)。ここでは、第1始動口121の入賞なので、特別図柄抽選のための乱数値が取得される。このとき取得される乱数値は、ステップ501の乱数更新処理で更新された値である。そして、この乱数値により特別図柄抽選の結果が確定される。ここにいう乱数値としては、大当たり、小当たりまたはハズレを決定する大当たり乱数値、大当たりの種類(大当たり遊技の終了後における時短遊技状態の有無、確変遊技状態の有無、長当たり、短当たり)を決定する図柄乱数値(大当たり図柄乱数値)、図柄変動における変動パターンを特定するための変動パターン乱数、リーチ有り演出をするか否かを決定するリーチ乱数値、等が含まれる。
【0059】
次に、特別図柄抽選部231は、特別図柄の変動表示動作が保留されている(すなわち未抽選の)入賞球(保留球)に対して、抽選結果の予告演出を行うための事前判定処理を行う(ステップ605)。この事前判定処理は、抽選結果の判定を図柄変動開始時ではなく始動口入賞時に(すなわちステップ605において)行うものである。・・・
この後、特別図柄抽選部231は、ステップ603による保留数U1の増加を演出制御部300に通知するための保留数U1増加コマンドをRAM203にセットし(ステップ606)、第1始動口121における入賞に対する処理を終了する。ステップ605の事前判定処理が行われた場合は、保留数U1増加コマンドには、ステップ605で得られた事前判定の判定結果の情報が含まれる。また、ステップ603による保留数U1の増加は第1特別図柄保留表示器218にも通知される。
【0060】
次に、第2始動口122における入賞に対する処理が行われる。図6を参照すると、次に特別図柄抽選部231は、第2始動口122に遊技球が入賞して第2始動口スイッチ212がONとなったか否かを判断する(ステップ607)。第2始動口スイッチ212がONとなったならば、次に特別図柄抽選部231は、第2始動口122の入賞における未抽選分の保留数U2が上限値未満か否かを判断する(ステップ608)。図6に示す例では、上限値を4個としている。保留数U2が上限値に達している場合は(ステップ608でNo)、それ以上未抽選分の入賞を保留することができないので、第2始動口122における入賞に対する処理を終了する。
【0061】
一方、保留数U2が上限値未満である場合(ステップ608でYes)、次に特別図柄抽選部231は、保留数U2の値を1加算する(ステップ609)。そして、今回の入賞による抽選のための乱数値を取得し、RAM203に格納する(ステップ610)。ここでは、第2始動口122の入賞なので、上記のステップ604と同様に、特別図柄抽選のための乱数値(大当たり乱数、大当たり図柄乱数、リーチ乱数、変動パターン乱数など)が取得される。・・・
【0062】
次に、特別図柄抽選部231は、特別図柄の変動表示動作が保留されている(すなわち未抽選の)入賞球(保留球)に対して、抽選結果の予告演出を行うための事前判定処理を行う(ステップ611)。この事前判定処理の内容は、上記のステップ605と同様である。この事前判定処理も、抽選結果の予告演出を行わない遊技機においては、この事前判定処理を省略する場合がある。
この後、特別図柄抽選部231は、ステップ609による保留数U2の増加を演出制御部300に通知するための保留数U2増加コマンドをRAM203にセットし(ステップ612)、第2始動口122における入賞に対する処理を終了する。ステップ611の事前判定処理が行われた場合は、保留数U2増加コマンドには、ステップ611で得られた事前判定の判定結果の情報が含まれる。また、ステップ609による保留数U2の増加は第2特別図柄保留表示器219にも通知される。」

キ 「【0130】
〔演出制御部の動作〕
次に、演出制御部300の動作を説明する。
図18-1は、遊技制御部200からコマンドを受信した際の演出制御部300の動作を示すフローチャートである。・・・
【0132】
ところで、演出制御部300は、図6のステップ606、612で送られた保留数増加コマンドをステップ1811で受信すると、ステップ1813で保留数コマンドを画像/音響制御部310等に送信する。これにより、画像表示部114では、保留数表示が行われる。ここで、保留数表示とは、先に入賞した遊技球に対する図柄の変動表示動作中に入賞した他の遊技球に対する図柄の変動表示動作の保留の数の表示である。
一方、演出制御部300は、図8のステップ811で送られた変動開始コマンド、図11のステップ1118で送られたオープニングコマンド、図14のステップ1413で送られたエンディングコマンドをステップ1811で受信すると、ステップ1813で、それぞれ、変動演出開始コマンド、当たり演出開始コマンド、エンディング演出開始コマンドを画像/音響制御部310等に送信する。これにより、画像表示部114では、変動演出、当たり演出、エンディング演出が行われる。これらの演出では、可動役物115が動作することがあり、可動役物115は、その動作パターンによっては、画像表示部114上の保留数表示を隠してしまう。
そこで、本実施の形態では、保留数表示の少なくとも一部が可動役物115で隠されるのに備えて、可動役物115で隠されない場所に別の保留数表示を用意しておくことで、遊技者が保留数を引き続き認識できるようにする。以下では、可動役物115で隠される可能性のある場所に設けられた保留数表示を「擬似保留数表示」と称し、可動役物115で隠されない場所に用意された別の保留数表示を「本保留数表示」と称する。
【0133】
本実施の形態における画像表示部114の表示について具体的に説明する。
図18-2は、画像表示部114上の保留数表示と可動役物115との位置関係を示した図である。
可動役物115が画像表示部114の右側に静止している時点では、図18-2(a)に示すように、画像表示部114の中央下部に、保留数U1(図6参照)を表す擬似保留数表示351と、保留数U2(図6参照)を表す擬似保留数表示352とが表示されている。図示の例では、保留数U1が2であるものとし、擬似保留数表示351に2つの保留表示を含めており、保留数U2が3であるものとし、擬似保留数表示352に3つの保留表示を含めている。なお、ここでは、保留表示を白丸で表示したが、他の図形で表示してもよい。あるいは、保留数を数字で表示してもよい。・・・
【0135】
本実施の形態では、擬似保留数表示351、352および本保留数表示361、362の表示を、擬似保留数表示351、352の各々と本保留数表示361、362の各々とが関連していることを示す態様で行う。図示の例では、擬似保留数表示351および本保留数表示361の背景を白色とし、擬似保留数表示352および本保留数表示362の背景を黒色とすることで、擬似保留数表示351と本保留数表示361とが関連し、擬似保留数表示352と本保留数表示362とが関連していることが分かるようになっている。
また、図からは明らかでないが、本実施の形態では、保留数の増減に応じて、擬似保留数表示351、352および本保留数表示361、362を、擬似保留数表示351、352の各々と本保留数表示361、362の各々とが関連していることを示す態様で変化させる。例えば、保留数U1が1増えると、擬似保留数表示351内の保留表示を1増加させ、これと同期して、本保留数表示361の数字を1カウントアップする。また、保留数U2が1増えると、擬似保留数表示352内の保留表示を1増加させ、これと同期して、本保留数表示362の数字を1カウントアップする。この場合、例えば、擬似保留数表示351、352内の保留表示を増加させるときの画像の変化と、本保留数表示361、362の数字をカウントアップするときの画像の変化とに同じエフェクトを与えることで、同期していることを示せばよい。これにより、擬似保留数表示351と本保留数表示361とが関連し、擬似保留数表示352と本保留数表示362とが関連していることが分かるようになっている。
【0136】
この後、可動役物115が擬似保留数表示351、352の少なくとも一部を隠す位置に動いてきたとすると、図18-2(b)に示すように、擬似保留数表示351、352は、画像表示部114に表示されないようになる。しかし、本保留数表示361、362は表示されたままになっているので、遊技者は引き続き保留数を認識することが可能である。」

ク 「【0137】
〔演出制御部によるコマンド受信処理〕
図19-1は、コマンド受信処理(図18-1(b)のステップ1811)の内容を示すフローチャートである。
このコマンド受信処理において、演出制御部300は、まず、受信したコマンドが保留数を増加するためのコマンド(保留数増加コマンド)か否かを判断する(ステップ1901)。この保留数増加コマンドは、遊技制御部200において、図6に示した始動口スイッチ処理においてセットされ(ステップ606、612)、図5に示した出力処理(ステップ506)で演出制御部300へ送信される。
受信したコマンドが保留数増加コマンドであった場合(ステップ1901でYes)、演出制御部300は、保留数加算処理を実行する(ステップ1902)。保留数加算処理の詳細については後述する。・・・
【0143】
図19-2は、図19-1の保留数加算処理(ステップ1902)の内容を示すフローチャートである。
この保留数加算処理において、演出制御部300は、まず、RAM303に保持されている保留数の値を1加算する(ステップ1921)。保留数増加コマンドが図6のステップ606で送られた保留数U1増加コマンドであれば、擬似保留数表示351および本保留数表示361に対応する保留数の値を1加算し、保留数増加コマンドが図6のステップ612で送られた保留数U2増加コマンドであれば、擬似保留数表示352および本保留数表示362に対応する保留数の値を1加算する。そして、演出制御部300は、RAM303に保持されている擬似保留数表示フラグを参照する(ステップ1922)。擬似保留数表示フラグとして、初期状態では、図18-2(a)のように擬似保留数表示351、352を表示することを示すONがセットされているが、擬似保留数表示351、352の少なくとも一部が可動役物115で隠される場合は、後述する図21、図23、図24の処理で、図18-2(b)のように擬似保留数表示351、352を表示しないことを示すOFFに書き換えられるので、そのときの状態に応じて、擬似保留数表示351、352を表示するか否かを参照する。最後に、演出制御部300は、ステップ1921での加算後の保留数の値と、ステップ1922で参照した擬似保留数表示フラグとを示す保留数コマンドをRAM303にセットする(ステップ1923)。」

ケ 図18-2の図示内容及び上記キに摘記した事項のうち参照した以下の記載事項から認定される事項
(キに摘記した事項のうち参照した記載事項)
「【0132】
・・・可動役物115は、その動作パターンによっては、画像表示部114上の保留数表示を隠してしまう。
そこで、本実施の形態では、保留数表示の少なくとも一部が可動役物115で隠されるのに備えて、可動役物115で隠されない場所に別の保留数表示を用意しておくことで、遊技者が保留数を引き続き認識できるようにする。以下では、可動役物115で隠される可能性のある場所に設けられた保留数表示を「擬似保留数表示」と称し、可動役物115で隠されない場所に用意された別の保留数表示を「本保留数表示」と称する。
・・・
【0136】
この後、可動役物115が擬似保留数表示351、352の少なくとも一部を隠す位置に動いてきたとすると、図18-2(b)に示すように、擬似保留数表示351、352は、画像表示部114に表示されないようになる。しかし、本保留数表示361、362は表示されたままになっているので、遊技者は引き続き保留数を認識することが可能である。」

図18-2は、画像表示部114上の保留数表示と可動役物115との位置関係を示した図であり、図18-2(a)には、画像表示部114の左上隅部に本保留数表示361、362が表示され、画像表示部114の中央下部に、擬似保留数表示351、352が表示され、この時点では、可動役物115が画像表示部114の右外側である右辺中央部にかくれて位置して静止している状態であることが図示され、この後、図18-2(b)には、可動役物115が静止していた位置である画像表示部114の右外側である右辺中央部から画像表示部114の内側の下辺中央部へと移動し、擬似保留数表示351、352の少なくとも一部を隠す位置に動いてくると、擬似保留数表示351、352は、画像表示部114に表示されないようになる一方、画像表示部114の左上隅部に本保留数表示361、362は表示されたままになっていることが図示されている。


したがって、引用文献1には、「可動役物115で隠される可能性のある場所である画像表示部114の中央下部に設けられた擬似保留数表示351、352とは別の保留数表示として、可動役物115で隠されない画像表示部114の左上隅部に本保留数表示361、362を表示しておくことで遊技者が引き続き保留数を認識可能としており、
可動役物115は、画像表示部114の右外側である右辺中央部にかくれて位置して静止している状態から画像表示部114の内側の下辺中央部に移動することで画像表示部114上に表示された保留擬似保留数表示351、352の少なくとも一部を隠す位置に動いてくると、擬似保留数表示351、352は、画像表示部114に表示されないようになる一方、画像表示部114の左上隅部に本保留数表示361、362は表示されたままになっているように構成」されることが記載されているものと認められる。

コ 上記ア?クの記載事項及び上記ケの認定事項から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる(a?iは、本件補正発明のA?Iに対応させて付与した。)。

引用発明
「a 第1始動口121の入賞に対応して作動する第1特別図柄表示器221と、第2始動口122の入賞に対応して作動する第2特別図柄表示器222とを備え、第1始動口121および第2始動口122に遊技球が入ると入賞して特別図柄抽選が始動し、第1特別図柄表示器221は第1始動口121の入賞による特別図柄を変動表示しその抽選結果を表示し、第2特別図柄表示器222は第2始動口122の入賞による特別図柄を変動表示しその抽選結果を表示するとともに、画像表示部114に特別図柄抽選の抽選結果を遊技者に報知するための装飾図柄を表示し、特別図柄抽選では、「大当たりか否か」、「大当たりに当選した場合の大当たりの種類」、「大当たりに当選していない場合での小当たりかはずれか」を判定し、「大当たり」は、大当たり遊技の終了後に発生する遊技状態に応じて「時短有り」、「時短無し」、「確変有り」、「確変無し」に分けられ、これらの大当たりは、各々個別の特別図柄に対応付けられており、特別図柄抽選において当選した特別図柄の種類に応じて大当たりの種類が確定し、特別図柄抽選の結果に応じて大入賞口125が開放し、大入賞口125に遊技球が入賞すると所定数の賞球を払い出すパチンコ遊技機100において(【0016】、【0024】、【0030】、【0031】、【0043】)、

b 遊技者によるゲームの進行に伴い、特別図柄抽選の抽選結果を遊技者に報知するための装飾図柄を表示したり、キャラクタの登場やアイテムの出現による演出画像を表示したりする画像表示部114と(【0016】)、

c 第1始動口121における入賞に対する処理と、第2始動口122における入賞に対する処理とが順次行われる始動口スイッチ処理において、
まず、第1始動口121における入賞に対する処理として、第1始動口121に遊技球が入賞して第1始動口スイッチ211がONとなったか否かを判断し、第1始動口スイッチ211がONとなったならば、第1始動口121の入賞における未抽選分の保留数U1が上限値を4個としている上限値未満か否かを判断し、保留数U1が上限値に達している場合は、それ以上未抽選分の入賞を保留することができないので、第1始動口121における入賞に対する処理を終了する一方、保留数U1が上限値未満である場合、保留数U1の値を1加算し、今回の入賞による特別図柄抽選のための乱数値を取得しRAM203に格納し、次に未抽選の入賞球に対して、抽選結果の予告演出を行うための事前判定処理を行い、この後、保留数U1の増加を演出制御部300に通知するための保留数U1増加コマンドに前記事前判定の判定結果の情報を含めてRAM203にセットすることで第1始動口121における入賞に対する処理を終了し、
次に、第2始動口122における入賞に対する処理として、第2始動口122に遊技球が入賞して第2始動口スイッチ212がONとなったか否かを判断し、第2始動口スイッチ212がONとなったならば、第2始動口122の入賞における未抽選分の保留数U2が上限値を4個としている上限値未満か否かを判断し、保留数U2が上限値に達している場合は、それ以上未抽選分の入賞を保留することができないので、第2始動口122における入賞に対する処理を終了する一方、保留数U2が上限値未満である場合、保留数U2の値を1加算し、今回の入賞による特別図柄抽選のための乱数値を取得しRAM203に格納し、次に未抽選の入賞球に対して、抽選結果の予告演出を行うための事前判定処理を行い、この後、保留数U2の増加を演出制御部300に通知するための保留数U2増加コマンドに前記事前判定の判定結果の情報を含めてRAM203にセットすることで、第2始動口122における入賞に対する処理を終了する遊技制御部200の特別図柄抽選部231と(【0030】、【0057】-【0062】)、

d 前記始動口スイッチ処理において遊技制御部200の特別図柄抽選部231のRAM203にセットされた事前判定の判定結果の情報等を含めた前記保留数U1増加コマンド及び保留数U2増加コマンド等のコマンドが出力処理で演出制御部300へ送信されると、保留数加算処理が実行され、保留が行われている遊技球の個数である保留数を表す保留数表示として、擬似保留数表示351、352及び保留数を表す数字の画像で表示する本保留数表示361、362を画像表示部114に表示する演出制御部300と(【0132】、【0133】、【0135】、【0137】、【0143】)、

e 動作することがあり、その動作パターンによっては、画像表示部114上に表示された擬似保留数表示351、352の少なくとも一部を隠してしまう可動役物115と、を備え(【0132】、【0133】、【0135】)、

f 前記演出制御部300は、
前記保留数表示として、画像表示部114の中央下部に保留数に対応する個数の画像で表示する擬似保留数表示351、352と、画像表示部114の左上隅部に保留数を表す数字の画像で表示する本保留数表示361、362を表示し(【0132】、【0133】、【0135】、認定事項ケ)、

g 画像表示部114では、変動演出、当たり演出、エンディング演出が行われ、これらの演出では可動役物115が動作することとその動作パターンによっては画像表示部114上に表示された擬似保留数表示351、352の少なくとも一部を隠してしまうことがあるため、可動役物115で隠される可能性のある場所である画像表示部114の中央下部に設けられた擬似保留数表示351、352とは別の保留数表示として、可動役物115で隠されない画像表示部114の左上隅部に本保留数表示361、362を表示しておくことで遊技者が引き続き保留数を認識可能としており、
可動役物115は、画像表示部114の右外側である右辺中央部にかくれて位置して静止している状態から画像表示部114の内側の下辺中央部に移動することで画像表示部114上に表示された保留擬似保留数表示351、352の少なくとも一部を隠す位置に動いてくると、擬似保留数表示351、352は、画像表示部114に表示されないようになる一方、画像表示部114の左上隅部に本保留数表示361、362は表示されたままになっているように構成され(【0132】、【0133】、【0136】、認定事項ケ)、

h、i 前記保留数表示として表示される擬似保留数表示351、352と本保留数表示361、362とは、保留数U1が1増えると擬似保留数表示351内の保留表示を1増加させるのと同期して本保留数表示361の数字を1カウントアップし、保留数U2が1増えると擬似保留数表示352内の保留表示を1増加させるのと同期して本保留数表示362の数字を1カウントアップし、加えて、保留数の増減に応じて擬似保留数表示351、352内の保留表示を増加させるときの画像の変化と、本保留数表示361、362の数字をカウントアップするときの画像の変化とに同じエフェクトを与えることで擬似保留数表示351と本保留数表示361とが関連し、擬似保留数表示352と本保留数表示362とが関連していることを示す態様で保留数の増減の表示を行う、パチンコ遊技機100(【0024】、【0135】)。」

(2)引用文献2に記載の技術
原査定の拒絶理由において提示された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2012-217546号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審にて付した。)。

ア 「 【0034】
またリーチ変動パターンは、図3に示すように、リーチ状態が成立するまでのリーチ前シナリオと、リーチ状態が成立してから変動停止するまでのリーチシナリオと、変動停止から確定までの確定シナリオとで構成され、それらリーチ前シナリオ、リーチシナリオ、確定シナリオが夫々1又は複数種類設けられており、それら各シナリオの組み合わせによって複数種類のリーチ変動パターンが形成されている。・・・
【0036】
第1,第2特別保留個数表示手段(保留個数情報表示手段)38a,38bは、第1,第2特別保留個数分の第1,第2保留個数報知画像X,Yの表示個数により第1,第2特別保留個数を表示するもので、同一の表示画面21a上の所定部分、例えば下部側に、第1,第2保留個数分の第1,第2保留個数報知画像X,Yを互いに上下に対応させて表示するようになっている。即ち、第1,第2特別保留個数表示手段38a,38bは、第1,第2保留個数報知画像X,Yの表示数によって保留個数情報を表示するようになっている。」

イ 「【0070】
以上の特別保留個数表示管理処理により、リーチ変動パターンにおけるリーチシナリオ実行中は保留非表示期間となり、それ以外、即ちリーチ変動パターンにおけるリーチ前シナリオ、確定シナリオ実行中、及びリーチなし変動パターンによる変動中は保留表示期間となる(図12)。・・・
【0075】
本実施形態では、第1,第2保留個数報知画像X,Yの表示態様として、先読み表示態様と先読み非表示態様とが設けられている。先読み表示態様は、先読み演出の抽選に当選した保留記憶に使用される表示態様で、図6に示すように、外れ保留記憶に対応する例えば緑色(図面上では斜線)の外れ表示態様と、通常確率時大当たり保留記憶に対応する例えば黄色(図面上では網掛け)の通常確率時大当たり表示態様と、確変時大当たり保留記憶に対応する例えば赤色(図面上では黒塗り)の確変時大当たり表示態様との3種類設けられている。また、先読み非表示態様は、先読み演出の抽選に当選していない保留記憶に使用される表示態様で、図6に示すように、例えば先読み表示態様の何れとも異なる白色(図面上では白抜きで示す)の表示態様となっている。即ち、第1,第2特別保留個数表示手段38a,38bは、第1,第2保留個数報知画像X,Yの表示色によって先読み判定情報を表示するようになっている。」

ウ 「【0087】
以上説明した特別保留個数表示管理手段84による特別保留個数表示管理処理(図7)及び特別保留個数表示制御手段85による特別保留個数表示制御処理(図8?図11)における、第1,第2保留個数報知画像X,Yの表示状態の変化の具体例を図12に示す。図12(a)(b)において、第2演出図柄がリーチ変動パターン3で変動を開始した段階では保留表示期間中であるため、画像表示手段21の表示画面21a上に第1,第2保留個数報知画像X,Yが通常表示状態で表示された状態となっている。
【0088】
その後、リーチが成立してリーチシナリオの実行が開始されると、保留表示期間から保留非表示期間に変化するため(S5,S41)、第1,第2保留個数報知画像X,Yが共に画像表示手段21の表示画面21aから消去される(S42)。この保留非表示期間中に例えば第2特別図柄始動手段18bに遊技球が入賞すると、第2特別保留個数が例えば1から2に増加し、第2保留増加コマンドが主制御基板51から演出制御基板52に送信されるが(S21)、保留非表示期間中であるため、この時点では第1,第2保留個数報知画像X,Yは非表示のままである。・・・
【0090】
一方、保留非表示期間中の始動入賞時の先読み演出抽選(S24)で当選した場合には、その保留記憶に対して先読み表示態様が抽選により選択されると共に(S27)、表示変更待機フラグはONとなり(S31)、図12(b)に示すように、確定シナリオの開始時、即ち保留非表示期間から保留表示期間に変化した時点で、非表示状態であった第1,第2保留個数報知画像X,Yがその時点での第1,第2特別保留個数分だけ画像表示手段21の表示画面21aに先読み非表示状態で表示される(S48)。即ち、先読み演出抽選に当選した保留記憶であるか否かに拘わらず、その時点の全ての保留記憶に対応する第1,第2保留個数報知画像X,Yが先読み非表示態様で表示される。
【0091】
そして、次の図柄変動の開始時に主制御基板51から演出制御基板52に第2保留減少コマンドが送信されると(S51:Yes)、第1,第2保留個数報知画像X,Yが先読み非表示状態から通常表示状態に変更される(S54)。即ち、保留非表示期間中に先読み演出抽選に当選した保留記憶に対応する第2保留個数報知画像Yが、先読み非表示態様から先読み表示態様に切り換えられる。続いて、新たな図柄変動に係る第2特別保留個数が1減少し、第2保留個数報知画像Yが、画像表示手段21の表示画面21a上で前側にシフトされる(S64)。
【0092】
以上説明したように、本実施形態のパチンコ機では、保留非表示期間中に第1,第2特別図柄始動手段18a,18bに遊技球が入賞し、その保留記憶について先読み演出抽選に当選した場合(先読み演出実行条件が成立した場合)には、その後に保留非表示期間が終了して第1,第2特別保留個数表示手段38a,38bによる保留個数情報の表示が開始された時点では先読み判定情報を表示させず、その後に主制御基板51から第1,第2保留減少コマンドを受信した時点で先読み判定情報を表示させるように構成されているため、保留非表示期間が設けられているにも拘わらず、遊技者がその保留非表示期間中の先読み判定情報等の変化を容易に認識することが可能である。
【0093】
図13?図15は本発明の第2の実施形態を例示し、保留非表示期間中に先読み演出実行条件が成立した場合には、その時点から保留個数情報を所定期間表示させ、その所定期間開始後の所定のタイミングで更に先読み判定情報の表示を開始させるように構成した例を示している。なお、本実施形態が第1の実施形態と異なるのは、保留増加時処理及び保留表示制御処理の夫々一部のみであるため、それら第1の実施形態との相違部分を中心に説明する。」

エ 「【0105】
図16?図18は本発明の第3の実施形態を例示し、保留非表示期間中に先読み演出実行条件が成立した場合には、その時点で第1,第2特別保留個数表示手段(保留個数情報表示手段)38a,38b以外の報知手段、例えば音声出力手段81によって先読み判定情報を報知するように構成した例を示している。なお、本実施形態が第2の実施形態と異なるのは、保留増加時処理及び保留表示制御処理の夫々一部のみであるため、それら第2の実施形態との相違部分を中心に説明する。・・・
【0110】
本実施形態における第1,第2保留個数報知画像X,Yの表示状態の変化等の具体例を図18に示す。図18の例は、図15と同じ条件設定となっているが、第2の実施形態に係る図15の場合には、保留非表示期間中に先読み演出抽選(S24)で当選すると、第1,第2保留個数報知画像X,Yが一時的に表示されるのに対し、本実施形態に係る図18の場合には、保留非表示期間中に先読み演出抽選(S24)で当選すると、第1,第2保留個数報知画像X,Yは非表示のままで音声により先読み判定情報、例えば「大当たりかな?」が出力される。
【0111】
以上のように、保留非表示期間中に先読み演出実行条件が成立した場合には、その時点で第1,第2特別保留個数表示手段(保留個数情報表示手段)38a,38b以外の報知手段、例えば音声出力手段81によって先読み判定情報を報知するように構成しても、第1の実施形態と同様、保留非表示期間が設けられているにも拘わらず、遊技者がその保留非表示期間中の先読み判定情報等の変化を容易に認識することが可能である。・・・
【0114】
第3の実施形態のように、保留非表示期間中に先読み演出実行条件が成立したときにその時点で第1,第2特別保留個数表示手段(保留個数情報表示手段)38a,38b以外の報知手段による報知を行う場合、その報知手段は音声出力手段の他、ランプ手段、可動体等でもよいし、それらを組み合わせて使用してもよい。」

オ 引用文献2の記載事項から、第3の実施形態を基に認定される技術、及び、第1の実施形態を基に認定される技術という二の技術を認定することができる。
上記ア?エの記載事項から、引用文献2には、
「弾球遊技機において、第1、第2特別保留個数分の第1、第2保留個数報知画像X、Yの表示個数により第1、第2特別保留個数を表示する第1、第2保留個数情報表示手段38a、38bを備え(【0034】、【0036】)、
第1、第2保留個数報知画像X、Yの表示態様として、先読み表示態様と先読み非表示態様とが設けられ、リーチ変動パターンは、リーチ状態が成立するまでのリーチ前シナリオと、リーチ状態が成立してから変動停止するまでのリーチシナリオと、変動停止から確定までの確定シナリオとで構成され、リーチ変動パターンにおけるリーチシナリオの実行中は保留非表示期間となり(【0034】、【0070】、【0075】)、
保留非表示期間中に第1、第2特別図柄始動手段18a、18bに遊技球が入賞し、その保留記憶について先読み演出実行条件が成立した場合には、その時点で第1、第2保留個数報知画像X、Yは非表示のままで、音声出力手段81が先読み判定情報として「大当たりかな?」を音声により出力するほかランプ手段及び可動体を組み合わせて報知を行う(【0088】、【0091】、【0105】、【0110】、【0114】)技術。」(以下、「引用文献2の第3の実施形態の技術」という。)、
及び、
上記ア?ウの記載事項から、引用文献2には、
「弾球遊技機において、第1、第2特別保留個数分の第1、第2保留個数報知画像X、Yの表示個数により第1、第2特別保留個数を表示する第1、第2保留個数情報表示手段38a、38bを備え(【0034】、【0036】)、
第1、第2保留個数報知画像X、Yの表示態様として、先読み表示態様と先読み非表示態様とが設けられ、リーチ変動パターンは、リーチ状態が成立するまでのリーチ前シナリオと、リーチ状態が成立してから変動停止するまでのリーチシナリオと、変動停止から確定までの確定シナリオとで構成され、リーチ変動パターンにおけるリーチシナリオの実行中は保留非表示期間となり(【0034】、【0070】、【0075】)、
保留非表示期間中に第1、第2特別図柄始動手段18a、18bに遊技球が入賞し、その保留記憶について先読み演出実行条件が成立した場合には、その時点で第1、第2保留個数報知画像X、Yは非表示のままで、確定シナリオの開始時に先読み非表示態様であった第1、第2保留個数報知画像X、Yがその時点での第1、第2特別保留個数分だけ画像表示手段21の表示画面21aに先読み非表示態様で表示され、次の図柄変動の開始時に主制御基板51から演出制御基板52に第2保留減少コマンドが送信されると、第1、第2保留個数報知画像X、Yが先読み非表示態様から先読み判定情報を表示する先読み表示態様に切り換えられることで、遊技者がその保留非表示期間中の先読み判定情報の変化を認識することが可能となる(【0088】、【0091】、【0092】)技術。」(以下、「引用文献2の第1の実施形態の技術」という。)、が記載されていると認められる。

(3)対比
本件補正発明と引用発明とを、分説に従い対比する。

(a)引用発明の「第1始動口121および第2始動口122」、「特別図柄」、「変動表示しその抽選結果を表示する」、「大当たり」、「大入賞口125が開放し、大入賞口125に遊技球が入賞すると所定数の賞球を払い出す」、「大当たり遊技」、「パチンコ遊技機100」は、それぞれ、本件補正発明の「始動入賞領域」、「識別情報」、「変動表示する変動表示ゲーム」、「特別結果」、「遊技者に所定の遊技価値を付与する」、「特別遊技」、「遊技機」に相当する。
また、引用発明は、「「大当たり」は、大当たり遊技の終了後に発生する遊技状態に応じて「時短有り」、「時短無し」、「確変有り」、「確変無し」に分けられ、これらの大当たりは、各々個別の特別図柄に対応付けられており、特別図柄抽選において当選した特別図柄の種類に応じて大当たりの種類が確定」するものであるから、「特別図柄」が、「時短有り」、「時短無し」、「確変有り」、「確変無し」という4種類の遊技状態に分けられる「大当たり」と、各々個別に対応するためには、少なくとも4種類の「特別図柄」が存在する。したがって、これら少なくとも4種類の「特別図柄」が変動表示する引用発明は、本件補正発明の「複数の識別情報を変動表示する」に相当する構成を備えるということができる。
よって、引用発明における構成aの「・・・所定数の賞球を払い出すパチンコ遊技機」は、本件補正発明における構成Aの「・・・遊技者に所定の遊技価値を付与する特別遊技を発生する遊技機」に相当する。

(b)引用発明の「装飾図柄」や「キャラクタの登場やアイテムの出現による演出画像」、「画像表示部114」は、それぞれ、本件補正発明の「遊技に関する情報」、「表示装置」に相当する。
したがって、引用発明における構成bの「・・・画像表示部114」は、本件補正発明の構成Bの「遊技に関する情報を表示可能な表示装置」に相当する。

(c)引用発明の「第1始動口121」と「第2始動口122」、「4個としている上限値」、 「特別図柄抽選部231」は、それぞれ、本件補正発明の「始動入賞領域」、「所定の上限数」、「始動記憶手段」に相当する。
そして、引用発明の「1始動口121における入賞に対する処理」において「今回の入賞による特別図柄抽選のための乱数値を取得しRAM203に格納し、次に未抽選の入賞球に対して、抽選結果の予告演出を行うための事前判定処理を行い、この後、保留数U1の増加を演出制御部300に通知するための保留数U1増加コマンドに前記事前判定の判定結果の情報を含めてRAM203にセットすること」、及び、「第2始動口122における入賞に対する処理」において 「今回の入賞による特別図柄抽選のための乱数値を取得しRAM203に格納し、次に未抽選の入賞球に対して、抽選結果の予告演出を行うための事前判定処理を行い、この後、保留数U2の増加を演出制御部300に通知するための保留数U2増加コマンドに前記事前判定の判定結果の情報を含めてRAM203にセットすること」は、本件補正発明の「変動表示ゲームの実行権利を始動記憶として」「記憶」することに相当する。
したがって、引用発明における構成cの「・・・遊技制御部200の特別図柄抽選部231」は、本件補正発明の構成Cの「前記始動入賞領域への遊技球の入賞に基づき前記変動表示ゲームの実行権利を始動記憶として所定の上限数まで記憶可能な始動記憶手段」に相当する。

(d)引用発明の「保留が行われている遊技球の個数である保留数」、「保留数表示」 、「演出制御部30」は、それぞれ、本件補正発明の「始動記憶に関する情報」、「保留表示」、「始動記憶表示手段」に相当する。
したがって、引用発明における構成dの「・・・保留数を表す保留数表示を画像表示部114に表示する演出制御部300」は、本件補正発明における構成Dの「前記始動記憶手段に記憶された始動記憶に関する情報を示す保留表示を前記表示装置に表示可能な始動記憶表示手段」に相当する。

(e)引用発明の「画像表示部114」、「その動作パターンによっては、画像表示部114上に表示された擬似保留数表示351、352の少なくとも一部を隠してしまう」こと、「可動役物115」は、それぞれ、本件補正発明の「表示装置」、「表示装置の前面に重なった状態となることが可能」であること、「演出装置」に相当する。
したがって、引用発明における構成eの「動作することがあり、その動作パターンによっては、画像表示部114上に表示された擬似保留数表示351、352の少なくとも一部を隠してしまう可動役物115」は、本件補正発明における構成Eの「動作が可能であり、前記表示装置の前面に重なった状態となることが可能な演出装置」に相当する。

(f)引用発明の「擬似保留数表示351、352」、「保留数を表す数字の画像で表示する」、「本保留数表示361、362」は、それぞれ、本件補正発明の「第1保留表示」、「始動記憶の数を表示することにより前記始動記憶に関する情報を示す」、「第2保留表示」に相当する。
そして、引用発明の「擬似保留数表示351、352」は、第1始動口121及び第2始動口122における始動口スイッチ処理において、「遊技制御部200の特別図柄抽選部231のRAM203にセットされた事前判定の判定結果の情報等を含めた前記保留数U1増加コマンド及び保留数U2増加コマンド等のコマンドが出力処理で演出制御部300へ送信されると、保留数加算処理が実行され、保留が行われている遊技球の個数である保留数を表す保留数表示を画像表示部114に表示する」という処理を経て(引用発明の構成c、d)、 「保留数に対応する個数の画像で表示」されるものであるから、これを、「各始動記憶と一対一に対応する始動記憶表示を表示する」と称することができる。
したがって、引用発明における構成fの「前記演出制御部300は、・・・本保留数表示361、362を表示」することは、本件補正発明における構成Fの「前記始動記憶表示手段は、・・・第2保留表示と、を表示可能」にすることに相当する。

(g)引用発明は、「第1特別図柄表示器221は第1始動口121の入賞による特別図柄を変動表示しその抽選結果を表示し、第2特別図柄表示器222は第2始動口122の入賞による特別図柄を変動表示しその抽選結果を表示するとともに、画像表示部114に特別図柄抽選の抽選結果を遊技者に報知するための装飾図柄を表示」し(引用発明の構成a)、「変動演出」では「可動役物115が動作することとその動作パターンによっては画像表示部114上に表示された擬似保留数表示351、352の少なくとも一部を隠してしまうこと」があるから、 引用発明の「画像表示部114」で「変動演出」が行われているときを「変動表示ゲームの実行中」と言い換えることができる。
そして、引用発明は、「可動役物115で隠されない画像表示部114の左上隅部に本保留数表示361、362を表示しておくことで遊技者が引き続き保留数を認識可能として」いるものであるから、「本保留数表示361、362」(本件補正発明の「第2保留表示」に相当。)は「可動役物115」(同「演出装置」に相当。)で「隠されない画像表示部114の左上隅部」に引き続き保留数が表示されている、すなわち、「演出装置と重ならない位置で継続して表示」されていると言い換えることができる。
また、引用発明は、変動表示ゲームの実行中に、「可動役物115」(本件補正発明の「演出装置」に相当。)が「擬似保留数表示351、352」(同「第1保留表示」に相当。)の「少なくとも一部を隠す位置に動いてくる」場合には、「擬似保留数表示351、352は、画像表示部114に表示されないようになる」から、これを、「前記第1保留表示は前記演出装置と重なる場合には当該演出装置の動作に対応して非表示とするように構成され」と言い換えることができる。
したがって、引用発明における構成gの「画像表示部114では、・・・表示されたままになっているように構成され」ることは、本件補正発明における構成Gの「前記変動表示ゲームの実行中において、・・・非表示とするように構成され」ることに相当する。

(h)引用発明の「擬似保留数表示351、352」(本件補正発明の「第1保留表示」に相当。)及び「本保留数表示361、362」(同「第2保留表示」に相当。)は、「第1始動口121における入賞に対する処理と、第2始動口122における入賞に対する処理とが順次行われる始動口スイッチ処理において」(引用発明の構成c)、「遊技制御部200の特別図柄抽選部231のRAM203にセットされた事前判定の判定結果の情報等を含めた前記保留数U1増加コマンド及び保留数U2増加コマンド等のコマンドが出力処理で演出制御部300へ送信されると、保留数加算処理が実行され、保留が行われている遊技球の個数である保留数を表す保留数表示を画像表示部114に表示する」という処理を経て(引用発明の構成d)、 「前記保留数表示として表示される擬似保留数表示351、352と本保留数表示361、362とは、保留数U1が1増えると擬似保留数表示351内の保留表示を1増加させるのと同期して本保留数表示361の数字を1カウントアップし、保留数U2が1増えると擬似保留数表示352内の保留表示を1増加させるのと同期して本保留数表示362の数字を1カウントアップすることで擬似保留数表示351と本保留数表示361とが関連し、擬似保留数表示352と本保留数表示362とが関連していることを示す態様で保留数の増減の表示が行われる」ものである。
したがって、新たな始動記憶が発生したときであって、「擬似保留数表示351、352」(同「第1保留表示」に相当。)が「可動役物115」(同「演出装置」に相当。)によって隠されていない場合には、引用発明は、上記のように、擬似保留数表示351、352と本保留数表示361、362とが関連していることを示す態様で保留数の増減の表示を行うから、「新たな始動記憶が発生したときであって前記第1保留表示が非表示でない場合には、前記第2保留表示において当該新たな始動記憶の発生に伴う表示を直ちに行うとともに、当該第1保留表示において当該新たな始動記憶の発生に伴う表示を直ちに行うように構成され」という限りにおいて本件補正発明の構成Hと共通する。

(i)引用発明は、変動表示ゲームの実行中に、「可動役物115」(本件補正発明の「演出装置」に相当。)が「擬似保留数表示351、352」(同「第1保留表示」に相当。)の「少なくとも一部を隠す位置に動いてくる」場合には、「擬似保留数表示351、352は、画像表示部114に表
示されないようになる」ものであり、「本保留数表示361、362」(本件補正発明の「第2保留表示」に相当。)は「可動役物115」(同「演出装置」に相当。)で「隠されない画像表示部114の左上隅部」に引き続き保留数が表示されるものである。
したがって、新たな始動記憶が発生したときであって、「擬似保留数表示351、352」(本件補正発明の「第1保留表示」に相当。)が「可動役物115」(同「演出装置」に相当。)によって隠されていて表示されない場合には、引用発明は、「新たな始動記憶が発生したときであって前記第1保留表示が非表示である場合には、前記第2保留表示において当該新たな始動記憶の発生に伴う表示を直ちに行うように構成される遊技機」という限りにおいて本件補正発明の構成Iと共通する。

(4)一致点・相違点
上記(a)?(i)によれば、本件補正発明と引用発明は、
「A 始動入賞領域への遊技球の入賞に基づき、複数の識別情報を変動表示する変動表示ゲームを実行し、前記変動表示ゲームの結果が特別結果となった場合に、遊技者に所定の遊技価値を付与する特別遊技を発生する遊技機において、
B 遊技に関する情報を表示可能な表示装置と、
C 前記始動入賞領域への遊技球の入賞に基づき前記変動表示ゲームの実行権利を始動記憶として所定の上限数まで記憶可能な始動記憶手段と、
D 前記始動記憶手段に記憶された始動記憶に関する情報を示す保留表示を前記表示装置に表示可能な始動記憶表示手段と、
E 動作が可能であり、前記表示装置の前面に重なった状態となることが可能な演出装置と、を備え、
F 前記始動記憶表示手段は、
前記保留表示として、各始動記憶と一対一に対応する始動記憶表示を表示することにより前記始動記憶に関する情報を示す第1保留表示と、前記始動記憶手段に記憶された始動記憶の数を表示することにより前記始動記憶に関する情報を示す第2保留表示と、を表示可能であり、
G 前記変動表示ゲームの実行中において、前記第2保留表示は前記演出装置と重ならない位置で継続して表示し、前記第1保留表示は前記演出装置と重なる場合には当該演出装置の動作に対応して非表示とするように構成され、
H’ 新たな始動記憶が発生したときであって前記第1保留表示が非表示でない場合には、前記第2保留表示において当該新たな始動記憶の発生に伴う表示を直ちに行うとともに、当該第1保留表示において当該新たな始動記憶の発生に伴う表示を直ちに行うように構成され、
I’ 新たな始動記憶が発生したときであって前記第1保留表示が非表示である場合には、前記第2保留表示において当該新たな始動記憶の発生に伴う表示を直ちに行うように構成される遊技機。」
の点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1] (構成Hに関する)
本件補正発明は、「H 前記変動表示ゲームの結果態様を示唆する予告報知の対象となる新たな始動記憶が発生したときであって前記第1保留表示が非表示でない場合には、前記第2保留表示において当該新たな始動記憶の発生に伴う表示を直ちに行うとともに、当該第1保留表示において当該新たな始動記憶に対応して実行される変動表示ゲームの結果態様を示唆する予告報知が直ちに認識可能となるように構成され」るのに対して、
引用発明は、前記第1保留表示が非表示でない場合には、「新たな始動記憶が発生したとき」に「第2保留表示」及び「第1保留表示」とも「当該新たな始動記憶の発生に伴う表示を直ちに行う」のみで、当該「新たな始動記憶」が「前記変動表示ゲームの結果態様を示唆する予告報知の対象となる」場合に、「第1保留表示」において、「当該新たな始動記憶に対応して実行される変動表示ゲームの結果態様を示唆する予告報知が直ちに認識可能となるように」構成されたものでない点。

[相違点2] (構成Iに関する)
本件補正発明は、「I 前記変動表示ゲームの結果態様を示唆する予告報知の対象となる新たな始動記憶が発生したときであって前記第1保留表示が非表示である場合には、前記第2保留表示において当該新たな始動記憶の発生に伴う表示を直ちに行う」ように構成されるのに対して、
引用発明は、前記第1保留表示が非表示である場合には、「新たな始動記憶が発生したとき」に「第2保留表示」において「当該新たな始動記憶の発生に伴う表示を直ちに行う」のみで、当該「新たな始動記憶」が「前記変動表示ゲームの結果態様を示唆する予告報知の対象となる」場合に、「予告報知の対象となる始動記憶が発生したことを強調する報知を実行可能」としていない点。

[相違点3] (構成Iに関する)
本件補正発明は、「I 前記変動表示ゲームの結果態様を示唆する予告報知の対象となる新たな始動記憶が発生したときであって前記第1保留表示が非表示である場合には」、「当該第1保留表示において、当該第1保留表示の非表示の状態が終了して当該第1保留表示の表示が再開された後であって次回の変動表示ゲームが開始するときに、当該新たな始動記憶に対応して実行される変動表示ゲームの結果態様を示唆する予告報知が認識可能となるように構成される」のに対して、
引用発明は、「当該第1保留表示の非表示の状態が終了して当該第1保留表示の表示が再開された後であって次回の変動表示ゲームが開始するときに、当該新たな始動記憶に対応して実行される変動表示ゲームの結果態様を示唆する予告報知が認識可能となるように構成される」ものでない点。

(5)当審の判断
[相違点1について]
パチンコ遊技機の技術分野において、新たな始動記憶が変動表示ゲームの結果態様を示唆する予告報知の対象となる場合に、保留表示において当該新たな始動記憶に対応して実行される変動表示ゲームの結果態様を示唆する予告報知を実行することは、本願出願前に周知の技術事項であって、例えば、特開2010-194186号公報(段落【0022】-【0023】、図7を参照。パチンコ遊技機の保留表示について、事前判定手段102の事前判定の結果に基づいて、保留画像82により、その保留画像に対応する特別図柄の変動表示における大当たり期待度を示唆する技術が記載されている。)、特開2000-135332号公報(段落【0058】-【0061】、図12-図13を参照。パチンコ遊技機における特別図柄可変表示装置4の入賞記憶表示領域4bにキャラクタを使用して始動記憶数を表示するに際し、始動記憶が増えるとき、入賞記憶表示領域4bでは始動記憶数に応じて記憶表示領域が変化し新たなキャラクタを表示するとともに、当該始動記憶がリーチ発生に結びつくものであるか否かに応じて女の子キャラあるいはおやじキャラのいずれかのキャラクタを表示する技術が記載されている。)に示されるとおりである。
そして、引用発明と上記周知の技術事項とは、保留表示を行うと共に大当たり等の抽選結果の予告を行うパチンコ遊技機という共通の技術分野に属し、かつ、始動入賞時に取得した大当たり乱数等の抽選結果の判定を行う事前判定処理を行うことにより大当たり等の抽選結果の予告演出を行うという点で機能が共通し、さらに、面白みのある遊技の実現のため、始動記憶の演出効果を高めることは周知の課題である(例えば、上記特開2010-194186号公報【0023】及び特開2000-135332号公報【0009】参照。)。
したがって、引用発明の「擬似保留数表示351、352」(本件補正発明の「第1保留表示」に相当。)が「可動役物115」(同「演出装置」に相当。)によって隠されていない場合には、保留数に対応する個数の画像で保留数を表示する「擬似保留数表示351、352」(同「第1保留表示」に相当。)に、上記周知の技術事項を適用して、上記相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。

[相違点2について]
まず、発明特定事項Iは、「前記変動表示ゲームの結果態様を示唆する予告報知の対象となる新たな始動記憶が発生したときであって前記第1保留表示が非表示である場合」に、当該「新たな始動記憶」が発生したことに伴って、「第2保留表示において・・・」及び「第1保留表示において・・・」と構文上分けて保留表示又は報知の内容を特定するよう特許請求の範囲を記載していること、及び、「始動記憶に関する情報を示す」ために、「各始動記憶と一対一に対応する始動記憶表示を表示することにより」示す「第1保留表示」と「始動記憶手段に記憶された始動記憶の数を表示することにより」示す「第2保留表示」とは、それぞれ始動記憶に関する情報を示す態様が異なることから、引用発明との相違点のうち、「第2保留表示」に関わる発明特定事項を相違点2として検討し、「第1保留表示」に関わる発明特定事項を相違点3として分けて検討することとした。
次に本件補正発明の「予告報知の対象となる始動記憶が発生したことを強調する報知を実行可能」とすることに関し、「強調する報知」について、明細書には、「・・・また、第4変形例や第5変形例のような強調表示(示唆報知)は、第1保留表示部83や第2保留表示部86で行うものに限られず、その他の表示領域やランプ、LEDによって行うようにしても良いし音声によって行うようにしても良い。」(段落【0474】、下線は当審が付した。)と記載されることから、本件補正発明の「予告報知の対象となる始動記憶が発生したことを強調する報知」を行う報知手段について、表示手段以外のランプ、LED、音声等の手段が含まれるものと解される。そこで、当該報知手段が「表示手段以外の場合」を(理由1)として、当該報知手段が「表示手段」である場合を(理由2)として当審の判断を示す。

(理由1)「本件補正発明の「予告報知の対象となる始動記憶が発生した ことを強調する報知」を行う報知手段について、表示手段以外 の手段を含むとした場合」
引用文献2の第3実施形態の技術の「第1、第2保留個数情報表示手段38a、38b」は「第1、第2特別保留個数分の第1、第2保留個数報知画像X、Yの表示個数により第1、第2特別保留個数を表示する」ものであるから、「第1、第2保留個数報知画像X、Yの表示個数」は本件補正発明の「第1保留表示」に相当し、同様に、「保留非表示期間」は「第1保留表示が非表示である場合」に、「第1、第2特別図柄始動手段18a、18bに遊技球が入賞」することは、「新たな始動記憶が発生したとき」に、「その保留記憶について先読み演出実行条件が成立した場合」は「前記変動表示ゲームの結果態様を示唆する予告報知の対象となる」場合に、にそれぞれ相当する。
本件補正発明の「予告報知の対象となる始動記憶が発生したことを強調する報知」には、表示手段以外の手段による報知を含むことから、引用文献2の第3実施形態の技術の「音声出力手段81が先読み判定情報として「大当たりかな?」を音声により出力するほかランプ手段及び可動体を組み合わせて報知を行う」ことは、先読み判定の結果を複数の報知手段を用いることにより強調して報知することであるから、本件補正発明の「予告報知の対象となる始動記憶が発生したことを強調する報知を実行可能」とすることに相当する。
そして、引用発明と引用文献2の第3実施形態の技術はともに、保留表示を行うパチンコ遊技機という共通の技術分野に属し、かつ、始動入賞時に取得した大当たり乱数等の抽選結果の判定を行う事前判定処理を行うことにより大当たり等の抽選結果の予告演出を行うという点、及び、変動表示ゲーム中に保留表示を非表示とする演出を行う点で機能が共通するものである。
よって、引用発明の変動表示ゲームの実行中に、「可動役物115」(本件補正発明の「演出装置」に相当。)が「擬似保留数表示351、352」(同「第1保留表示」に相当。)の「少なくとも一部を隠す位置に動いてきた」場合には、「擬似保留数表示351、352は、画像表示部114に表示されない」ものとしている引用発明に対し、引用文献2の第3実施形態の技術を適用することによって、上記相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(理由2)「本件補正発明の「予告報知の対象となる始動記憶が発生した ことを強調する報知」を行う報知手段について、表示手段以外 の手段を含まないとした場合」
請求人は、平成30年10月4日付け審判請求書において、「第2保留表示において当該始動記憶の発生を強調する報知を行う・・・これにより、遊技店のように音声を聞き取りにくい環境においても確実に遊技者に認識させることができ、引用文献2のように音声による報知を行う場合のような問題が生じることもありません。」と主張している。明細書を参酌すると、「音声」による報知も「強調する報知」に含まれることは、上記(理由1)に判断を示したとおりであるが、請求人の主張に即して、第2保留表示の表示自体で強調する報知である趣旨の特定であると限定的に解釈した場合の判断について、すなわち、「第2保留表示」において「予告報知の対象となる始動記憶が発生したことを強調する報知を実行可能」とすることを相違点とした場合についての判断も念のため示しておく。
引用文献2の第3実施形態の技術の「第1、第2保留個数情報表示手段38a、38b」は「第1、第2特別保留個数分の第1、第2保留個数報知画像X、Yの表示個数により第1、第2特別保留個数を表示する」ものであるから、「第1、第2保留個数報知画像X、Yの表示個数」は本件補正発明の「第1保留表示」に相当し、同様に、「保留非表示期間」は「第1保留表示が非表示である場合」に、「第1、第2特別図柄始動手段18a、18bに遊技球が入賞」することは、「新たな始動記憶が発生したとき」に、「その保留記憶について先読み演出実行条件が成立した場合」は「前記変動表示ゲームの結果態様を示唆する予告報知の対象となる」場合に、にそれぞれ相当する。
また、引用文献2の第3実施形態の技術の「音声出力手段81が先読み判定情報として「大当たりかな?」を音声により出力するほかランプ手段及び可動体を組み合わせて報知を行う」ことは、「第2保留表示」において、「予告報知の対象となる始動記憶が発生したことの報知を実行可能」としている点で、本件補正発明と共通する。したがって、引用文献2の第3実施形態の技術は、「新たな始動記憶」が「前記変動表示ゲームの結果態様を示唆する予告報知の対象となる」場合に、「予告報知の対象となる始動記憶が発生したことの報知を実行可能」とする技術であると言い換えることができる。
ここで、パチンコ遊技機の技術分野において、数字で保留記憶数を表示可能である保留表示において、始動記憶が発生したことを遊技者に認識させるために強調する報知を実行可能とすることは、本願出願前に周知の技術事項であって、例えば、特開2010-131108号公報(段落【0044】、【0045】、【0076】、【0077】、図18参照。パチンコ遊技機の保留表示について、各保留表示部52a?52dの点灯表示により始動記憶の数及び予告報知を表示する保留表示部52と、飾り特図1変動表示ゲームと飾り特図2変動表示ゲームの保留記憶数とをそれぞれ数字で表示可能な飾り特図1保留表示部43a4と飾り特図2保留表示部43a5とを備え、保留表示部52が飾り特図1変動表示ゲーム又は飾り特図2変動表示ゲームのいずれの変動表示ゲームの始動記憶を表示しているかを示すために、飾り特図1保留表示部43a4又は飾り特図2保留表示部43a5において保留記憶数として表示された数字を囲った状態で表示することにより強調して表示する技術が記載されている。)に示されるとおりである。
そして、引用発明と引用文献2の第3実施形態の技術、上記従来周知の技術事項はいずれも、保留表示を行うパチンコ遊技機という共通の技術分野に属し、かつ、始動入賞時に取得した大当たり乱数等の抽選結果の判定を行う事前判定処理を行うことにより大当たり等の抽選結果の予告演出を行うという点で機能が共通するものである。
よって、引用発明の変動表示ゲームの実行中に、「可動役物115」(本件補正発明の「演出装置」に相当。)が「擬似保留数表示351、352」(同「第1保留表示」に相当。)の「少なくとも一部を隠す位置に動いてきた」場合には、「擬似保留数表示351、352は、画像表示部114に表示されない」ものとしている引用発明に対し、引用文献2の第3実施形態の技術である「新たな始動記憶」が「前記変動表示ゲームの結果態様を示唆する予告報知の対象となる」場合に、「予告報知の対象となる始動記憶が発生したことの報知を実行可能」とする技術を適用するに際し、上記従来周知の技術事項である「数字で保留記憶数を表示可能である保留表示」、すなわち、「第2保留表示」において「始動記憶が発生したことを強調する報知を実行可能」とする技術を併せて適用するとともに、当該報知の対象を、単に「始動入賞が発生したこと」ではなく、引用文献2の第3実施形態の技術の「予告報知の対象となる始動記憶が発生したこと」に条件を加重することにより、上記相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

[相違点3について]
引用文献2の第1実施形態の技術の「第1、第2保留個数情報表示手段38a、38b」は、引用文献2の第3実施形態の技術と同様に、「第1、第2特別保留個数分の第1、第2保留個数報知画像X、Yの表示個数により第1、第2特別保留個数を表示する」ものであるから、「第1、第2保留個数報知画像X、Yの表示個数」は本件補正発明の「第1保留表示」に相当し、同様に、「保留非表示期間」は「第1保留表示が非表示である場合」に、「第1、第2特別図柄始動手段18a、18bに遊技球が入賞」することは、「新たな始動記憶が発生したとき」に、「その保留記憶について先読み演出実行条件が成立した場合」は「前記変動表示ゲームの結果態様を示唆する予告報知の対象となる」場合に、それぞれ相当することは、上記[相違点2について]で検討したとおりである。
引用文献2の第1実施形態の技術は、「保留非表示期間」に新たに遊技球が入賞しても、「その時点で第1、第2保留個数報知画像X、Yは非表示のまま」で、「保留非表示期間」であるリーチシナリオが終了した後に、「確定シナリオの開始時に先読み非表示態様であった第1、第2保留個数報知画像X、Yがその時点での第1、第2特別保留個数分だけ画像表示手段21の表示画面21aに先読み非表示態様で表示され」、さらに、「次の図柄変動の開始時に主制御基板51から演出制御基板52に第2保留減少コマンドが送信されると、第1、第2保留個数報知画像X、Yが先読み非表示態様から先読み判定情報を表示する先読み表示態様に切り換えられる」から、引用文献2の第1実施形態の技術は、「第1、第2保留個数報知画像X、Y」の表示に関し、「第1、第2保留個数報知画像X、Yは非表示のまま」から「先読み非表示態様」を経て「先読み判定情報を表示する先読み表示態様」に移行するものである。
そうすると、引用文献2の第1実施形態の技術の「第1、第2保留個数報知画像X、Yは非表示のまま」であることは本件補正発明の「当該第1保留表示の非表示の状態」に相当し、同様に、「第1、第2保留個数報知画像X、Yがその時点での第1、第2特別保留個数分だけ画像表示手段21の表示画面21aに先読み非表示態様で表示され」ることは「当該第1保留表示の表示が再開された」ことに、「次の図柄変動の開始時に」は「次回の変動表示ゲームが開始するときに」に、「第1、第2保留個数報知画像X、Y」が「先読み判定情報を表示する先読み表示態様に切り換えられること」は「当該新たな始動記憶に対応して実行される変動表示ゲームの結果態様を示唆する予告報知」にそれぞれ相当する。
したがって、引用文献2の第1実施形態の技術は、「第1、第2保留個数報知画像X、Y」が「先読み判定情報を表示する先読み表示態様に切り換えられること」により、「遊技者がその保留非表示期間中の先読み判定情報の変化を認識することが可能となる」から、本件補正発明のように「予告報知」が「認識可能となるように構成される」ものということができる。
そして、引用発明と引用文献2の第1実施形態の技術はともに、パチンコ機において、保留表示を行うパチンコ遊技機という共通の技術分野に属し、かつ、始動入賞時に取得した大当たり乱数等の抽選結果の判定を行う事前判定処理を行うことにより大当たり等の抽選結果の予告演出を行うという点で機能が共通するものである。
よって、変動表示ゲームの実行中に、「可動役物115」(本件補正発明の「演出装置」に相当。)が「擬似保留数表示351、352」(同「第1保留表示」に相当。)の「少なくとも一部を隠す位置に動いてきた」場合には、「擬似保留数表示351、352は、画像表示部114に表示されない」ものとしている引用発明に対し、引用文献2の第1実施形態の技術を適用して、保留表示に関し、「保留非表示期間」から「先読み非表示態様」を経て「先読み判定情報を表示する先読み表示態様」に移行する表示とすることで、上記相違点3に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(6)請求人の主張について
請求人は、平成30年10月4日付け審判請求書において、当審が分説したH及びIの構成を特徴とすること、及び、当該特有の構成上の特徴は、引用文献1及び2に記載も示唆もなく、これら引用文献1及び2を組み合わせたとしても容易に想到できるものではない旨主張しており、具体的には以下の主張をしている。
[構成Hについて]
「・・・第1保留表示が非表示でない場合には予告報知が直ちに認識可能となるようにしています。第1保留表示が非表示でない場合には始動記憶が発生した時点で第1保留表示において当該始動記憶に対応する始動記憶表示が表示されます。このため、始動記憶表示の数が増加する変化の過程を視認可能であるので、始動記憶が発生したことや発生した始動記憶表示がどれであるかを容易に識別でき、この始動記憶表示の開始に合わせて予告報知を開始とすることで、始動記憶の発生と当該始動記憶についての予告報知を同時に遊技者が認識することができて遊技者に予告報知を確実に認識させることができ、効果的に遊技の興趣を向上させることができます。」との作用効果を奏する。

[構成Iについて]
「・・・第1保留表示が非表示である場合には予告報知を開始するタイミングを次の変動表示ゲームの開始タイミングとしています。
・・・しかし、予告報知を認識可能とするタイミングを次の変動表示ゲームの開始タイミングとすることで、前の変動表示ゲームにおける非表示とする演出が確実に終了している状態で予告報知を開始することができます。・・・さらに、次の変動表示ゲームの開始時という遊技者にとってわかりやすいタイミングであるため、遊技者が予告報知の開始を見逃すこともありません。これらのことから、予告報知を遊技者に確実に認識させることができて効果的に遊技の興趣を向上させることができます。
・・・非表示である場合に予告報知の対象となる始動記憶が発生した場合には、第2保留表示において当該始動記憶の発生を強調する報知を行うようにしています。これにより、遊技店のように音声を聞き取りにくい環境においても確実に遊技者に認識させることができ、引用文献2のように音声による報知を行う場合のような問題が生じることもありません。」

上記請求人の主張について検討する。
[構成Hについての主張に対して]
引用発明は、「保留数の増減に応じて・・・擬似保留数表示351と本保留数表示361とが関連し、擬似保留数表示352と本保留数表示362とが関連していることを示す態様」で表示を行うものであるから、 「当該新たな始動記憶の発生に伴う表示を直ちに行う」ものといえ、この 「擬似保留数表示351、352」(本件補正発明の「第1保留表示」に相当。)に、パチンコ遊技機の技術分野において従来周知の技術である、新たな始動記憶が変動表示ゲームの結果態様を示唆する予告報知の対象となる場合に、保留表示において当該新たな始動記憶に対応して実行される変動表示ゲームの結果態様を示唆する予告報知を実行する技術を採用することが当業者が想到容易であることは、相違点1について検討したとおりであるから、「始動記憶の発生と当該始動記憶についての予告報知を同時に遊技者が認識することができ」るという作用効果は、引用発明及び上記従来周知の技術から予測し得るものであって格別顕著なものということはできない。

[構成Iについての主張に対して]
前者の「予告報知を認識可能とするタイミングを次の変動表示ゲームの開始タイミングとすること」は、相違点3について検討したとおり、引用文献2に記載の第1実施形態の技術として記載されるとおりである。
また、後者の「第2保留表示において当該始動記憶の発生を強調する報知を行う・・・これにより、遊技店のように音声を聞き取りにくい環境においても確実に遊技者に認識させることができ、引用文献2のように音声による報知を行う場合のような問題が生じることもありません。」という点について、上記(5)[相違点2について]の(理由1)で検討したとおり、本件補正発明の「強調する報知」について、明細書には、「・・・また、第4変形例や第5変形例のような強調表示(示唆報知)は、第1保留表示部83や第2保留表示部86で行うものに限られず、その他の表示領域やランプ、LEDによって行うようにしても良いし音声によって行うようにしても良い。」(段落【0474】)と記載されることから、本件補正発明は「強調する報知」として「音声」による報知を含めていることから、本件補正発明の特許請求の範囲の記載に基づく作用効果とはいえないし、そうでないとしても、引用文献2の第3実施形態の技術は、「・・・「大当たりかな?」を音声により出力するほかランプ手段及び可動体を組み合わせて報知を行う」ものであって、音声以外の報知手段を含めた報知を行うものであるから、「音声を聞き取りにくい環境においても確実に遊技者に認識させることができ」るという作用効果は、引用文献2の第3実施形態の技術から予測し得る作用効果である。
仮に、 「第2保留表示において・・・当該始動記憶の発生を強調する報知を行う」ことを、第2保留表示の表示自体で強調する趣旨の特定であると限定的に解釈するとしても、それは、(5)[相違点2について]の(理由2)において念のため検討したとおり、上記相違点2に係る本件補正発明の構成は、当業者が想到容易であるし、作用効果は引用発明、引用文献2の第3実施形態の技術、引用文献3記載の技術から予測し得るものであって格別顕著なものということはできない。

よって、請求人の主張を採用することはできない。

(7)小括
したがって、(5)[相違点1について]?[相違点3について]において検討したように、本件補正発明は、引用発明、引用文献2の第3実施形態の技術、引用文献2の第1実施形態の技術並びに周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、又は、引用発明、引用文献2の第3実施形態の技術、引用文献2の第1実施形態の技術並びに周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4.むすび
上記3.において検討したことからみて、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について

1.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成30年2月5日付けの手続補正書により補正された、上記第2の1.で示した特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである。

2.原査定(当審における)拒理の理由
原査定の拒絶の理由は、概略、次のとおりのものである。
(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内において、頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1.特開2012-125341号公報
引用文献2.特開2012-217546号公報

3.引用文献1?2に記載の事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1?2の記載事項は、上記第2の3.(1)?(2)に記載したとおりである。

4.対比・判断
本願発明は、上記「第2の2.(2)補正目的」において検討したとおり、本件補正発明において、「第1保留表示」と「第2保留表示」に関して、「前記変動表示ゲームの結果態様を示唆する予告報知の対象となる新たな始動記憶が発生したときであって前記第1保留表示が非表示でない場合には、前記第2保留表示において当該新たな始動記憶の発生に伴う表示を直ちに行うとともに、当該第1保留表示において当該新たな始動記憶に対応して実行される変動表示ゲームの結果態様を示唆する予告報知が直ちに認識可能となるように構成され、」という限定を省くとともに、「前記変動表示ゲームの結果態様を示唆する予告報知の対象となる新たな始動記憶が発生したときであって前記第1保留表示が非表示である場合には、」という記載を「前記第1保留表示が非表示であるときに新たな始動記憶が発生した場合には、該新たな始動記憶が前記変動表示ゲームの結果態様を示唆する予告報知の対象となる始動記憶である場合には、」と記載に戻し、さらに、変動表示ゲームの結果態様を示唆する予告報知の対象となる新たな始動記憶が発生したときであって前記第1保留表示が非表示である場合の 「第2保留表示」に関し、「前記第2保留表示において当該新たな始動記憶の発生に伴う表示を直ちに行うとともに、」から「直ちに」という限定を省き「前記第2保留表示については前記新たな始動記憶の発生に伴う表示を行い、」と記載を改め、同場合の「第1保留表示」に関し、「当該第1保留表示の表示が再開された後」に「新たな始動記憶に対応して実行される変動表示ゲームの結果態様を示唆する予告報知が認識可能となる」時期に関し、「次回の変動表示ゲームが開始するときに、」という限定を省いたものである。
そうすると、本願発明と引用発明とは、上記「第2の3.(3)対比」において検討したように、[相違点1]?[相違点3]の点で異なるものである。
ここで、上記[相違点2]における「強調する報知」という事項について、本願発明は、「前記第1保留表示が非表示であるときに新たな始動記憶が発生した場合には、該新たな始動記憶が前記変動表示ゲームの結果態様を示唆する予告報知の対象となる始動記憶である場合には、予告報知の対象となる始動記憶が発生したことを強調する報知を実行可能であり、」と特定するものであって、請求人が主張するように、「第2保留表示において・・・当該始動記憶の発生を強調する報知を行う」ことを、第2保留表示の表示自体で強調する趣旨の特定であると解釈する余地がなくなるから、上記第2の2.(5)[相違点2について]の(理由2)において念のため検討した事項が不要となり、同(理由1)の検討で足りることとなる。
そして、相違点1?3については、前記「第2の3.(5)[相違点1について]、「相違点2について]の(理由1)、及び、[相違点3について]において検討したように、引用発明、引用文献2の第3実施形態の技術、引用文献2の第1実施形態の技術並びに周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献2の第3実施形態の技術、引用文献2の第1実施形態の技術並びに周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

したがって、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-04-11 
結審通知日 2019-04-16 
審決日 2019-05-07 
出願番号 特願2016-35108(P2016-35108)
審決分類 P 1 8・ 575- WZ (A63F)
P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 野田 華代  
特許庁審判長 長崎 洋一
特許庁審判官 ▲吉▼川 康史
牧 隆志
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人光陽国際特許事務所  
代理人 荒船 良男  

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