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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L |
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管理番号 | 1352820 |
審判番号 | 不服2017-7564 |
総通号数 | 236 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-08-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-05-26 |
確定日 | 2019-06-17 |
事件の表示 | 特願2015- 93179「半導体ウェーハをプラズマ・ダイシングする方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月 1日出願公開,特開2015-173279〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,2012年3月12日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年3月14日,アメリカ合衆国,2012年3月5日,アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願(以下「原出願」という。)である特願2013-558089号の一部を平成27年4月30日に新たな特許出願とした特願2015-93179号であり,その手続の経緯は,概略,以下のとおりである。 平成27年 4月30日 :上申書 平成28年 7月 8日付け:拒絶理由通知 平成28年10月12日 :意見書 平成28年10月12日 :手続補正書(以下,この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。) 平成29年 1月25日付け:拒絶査定 平成29年 5月26日 :審判請求 平成30年 9月 6日付け:最後の拒絶理由通知 なお,当審において通知した拒絶理由に対して,請求人からは何らの応答もなかったものである。 第2 本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。 「【請求項1】 基板をプラズマ・ダイシングする方法であって, 移動アームを供給するステップと, 壁を有する処理チャンバを供給するステップと, 前記処理チャンバの前記壁に隣接してプラズマ源を供給するステップと, 前記処理チャンバ内に加工物支持部を供給するステップと, 前記加工物支持部内にリフト機構を供給するステップと, 上面と底面を有する前記基板を供給するステップであって,前記上面は複数のデバイス構造とストリート領域を有しているステップと, 加工物を形成するために前記基板の前記底面をフレーム上の支持フィルム上に配置するステップと, 前記移動アームを用いて前記加工物を前記処理チャンバ内の前記リフト機構上に移動するステップであって,前記加工物の前記処理チャンバ内への移動が真空中で行われる前記ステップと, 前記プラズマ源によってプラズマを生成するステップと, 前記生成されたプラズマによって,前記処理チャンバ内にある前記加工物の前記基板の前記上面の保護されていない前記ストリート領域をエッチングするステップと を含む方法。」 第3 拒絶の理由 平成30年9月6日付けで当審が通知した最後の拒絶理由は,次のとおりのものである。 本願の請求項1-2に係る発明は,本願の原出願の優先日前に日本国内又は外国において,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1-5に記載された発明に基づいて,その原出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。 1.国際公開03/071591号 2.特開平10-233296号公報 3.特開2004-273974号公報 4.特開2008-41985号公報 5.特開2003-282670号公報 第4 引用文献の記載及び引用発明 1 引用文献1の記載 (1)引用文献1には,図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は,当審で付した。以下同じ。) 「請求の範囲 1.ストリートによって区画された多数の領域に回路が形成された半導体ウェーハを個々の回路ごとの半導体チップに分割する半導体ウェーハの分割方法であって, 少なくとも該半導体ウェーハの回路面をマスキング部材でマスキングするマスキング工程と, 該ストリートの上部を被覆しているマスキング部材をレーザ一光線の照射により除去するマスキング部材除去工程と, 該ストリートの上部を被覆しているマスキング部材が除去された半導体ウェーハに化学的エッチングを施し該ス卜リートを浸食して個々の半導体チップに分割する化学的エッチング処理工程と から少なくとも構成される半導体ウェーハの分割方法。」(請求の範囲) 「マスキング工程においては,例えば第2図に示すスピンコータ10を用いて半導体ウェーハWの表面にマスキング部材を形成する。スピンコータ10においては,半導体ウェーハWが保持される保持テーブル11は駆動部12に駆動されて回転可能となっており,リング状のフレームFの開口部を塞ぐように裏側から貼着されたテープTの粘着面に半導体ウェーハWの裏面が貼着されることによりテープTを介してフレームFと一体となった半導体ウェーハWが,回路面を上にして保持テーブル11に保持される。 そして,保持テーブル11を高速回転させながら滴下部13からレジストポリマー14を半導体ウェーハWの回路面に滴下することにより,第1図Aに示したように,回路面の一面にマスキング部材15がマスキングされる(マスキング工程)。・・・ 次にマスキング部材除去工程において,マスキング工程で被覆したマスキング部材15のうち,半導体ウェーハWの回路面に形成されたストリートの上部を被覆している部分のみを除去する。 ・・・ すべての半導体ウェーハについてマスキング部材除去工程が終了すると,カセット21ごと次の化学的エッチング工程に搬送される。化学的エッチング工程においては,例えば第4図に示すドライエッチング装置30を使用する。 第4図に示すドライエッチング装置30は,レーザー加工装置20から搬送されてきたカセット21からの半導体ウェーハWの搬出及び化学的エッチング工程終了後の半導体ウェーハWのカセット21への搬入を行う搬出入手段31と,搬出入手段31によって搬出入される半導体ウェーハWが収容される搬出入チャンバー32と,ドライエッチングを行う処理チャンバー33と,エッチングガスを処理チャンバー33内に供給するガス供給部34とから概ね構成される。 マスキング部材除去工程が終了した半導体ウェーハWは,搬出入手段31によってカセット21から搬出される。そして,搬出入チャンバー32に備えた第一のゲート35が開き,図5に示す搬出入チャンバー32内に位置付けられた保持部36に半導体ウェーハWが載置される。 第5図に示すように,搬出入チャンバー32と処理チャンバー33とは第二のゲート37によって遮断されているが,第二のゲート37を開いたときは,保持部36が搬出入チャンバー32の内部と処理チャンバー33の内部との間を移動可能となっている。 第6図に示すように,処理チャンバー33には,高周波電源及び同調機38に接続されプラズマを発生する一対の高周波電極39が上下方向に対峙して配設されており,本実施の形態においては片方の高周波電極39が保持部36を兼ねた構成となっている。また保持部36には,保持された半導体ウェーハを冷却する冷却部40を設けている。 ・・・ マスキング部材除去工程が終了した半導体ウェーハWをドライエッチングする際は,搬出入チャンバー32に設けた第一のゲート35を開け,搬出入手段31が半導体ウェーハWを保持して第5図における矢印の方向に移動することにより,搬出入チャンバー32内に位置付けられた保持部36に半導体ウェーハWが,表面を上にして載置される。そして,第一のゲート35を閉じ,搬出入チャンバー32内を真空にする。 次に,第二のゲート37を開いて保持部36が処理チャンバー33内に移動することにより,半導体ウェーハWが処理チャンバー33内に収容される。処理チャンバー33内には,ポンプ42によってエッチングガス,例えば希薄なフッ素系ガスを供給すると共に,高周波電源及び同調器38から高周波電極39に高周波電圧を供給することにより,半導体ウェーハWの表面をプラズマによりドライエッチングする。このとき,冷却部40には冷却水循環器43によって冷却水が供給される。 このようにしてドライエッチングが行われると,半導体ウェーハWの表面のうち,ストリートの上部に被覆されていたマスキング部材は,マスキング部材除去工程において除去されているが,その他の部分はマスキング部材で覆われているため,ストリートのみがエッチング処理により浸食され,第1図Cに示すように,個々の半導体チップCに分割される(化学的エッチング処理工程)。 ・・・ このようにして形成された個々の半導体チップCは,回転ブレードを用いて切削により分割されたものではないため,欠けやストレスがない高品質なものとなる。特に,厚さが50μm以下のような薄い半導体ウェーハの場合は,切削して分割する方法によると欠けやストレスが生じやすいので,本発明を利用すると特に効果的である。 また,半導体ウェーハWが,半導体基板の上に極薄の層間絶縁膜が複数積層された多層構造の半導体ウェーハである場合には,レーザー光線を用いることにより,切削時のような衝撃力が層間絶縁膜に加わることがないため,層間絶縁膜が雲母のように剥がれ落ちるおそれもない。 また,ドライエッチング処理は,半導体ウェーハの厚さが厚くなるほど時間がかかることになるが,厚さが50μm以下のような薄い半導体ウェーハであれば,ドライエッチング処理にそれほどの時間を要さないため,生産性を確保することができ,この点においても本発明は有用である。 なお,エッチング処理では除去できないパターン等の被覆層がストリートに形成されている場合には,レジスト膜除去工程においてレーザー光線をその被覆層に照射すれば,その被覆層を除去することができるため,そのようなパターンが形成された半導体ウェーハもエッチングによって分割することができる。」(明細書第5ページ第18行-第10ページ第8行) (2) したがって,上記記載から,引用文献1には,引用文献1の請求の範囲の「1.」に記載された発明の実施例である以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「少なくとも半導体ウェーハの回路面をマスキング部材でマスキングするマスキング工程と, ストリートの上部を被覆しているマスキング部材をレーザー光線の照射により除去するマスキング部材除去工程と, 該ストリートの上部を被覆しているマスキング部材が除去された半導体ウェーハに化学的エッチングを施し該ストリートを浸食して個々の半導体チップに分割する化学的エッチング処理工程と から少なくとも構成される,ストリートによって区画された多数の領域に回路が形成された半導体ウェーハを個々の回路ごとの半導体チップに分割する半導体ウェーハの分割方法であって, 前記半導体ウェーハは,リング状のフレームの開口部を塞ぐように裏側から貼着されたテープの粘着面に半導体ウェーハの裏面が貼着されることによりテープを介してフレームと一体となった半導体ウェーハであり, 前記マスキング部材は,回路面の一面にマスキングされ,その後,マスキング部材除去工程において,マスキング工程で被覆したマスキング部材のうち,半導体ウェーハの回路面に形成されたストリートの上部を被覆している部分のみを除去したものであり, 前記化学的エッチング処理工程は,搬出入チャンバーと,ドライエッチングを行う処理チャンバーとエッチングガスを処理チャンバー内に供給するガス供給部とを含むドライエッチング装置を使用するものであって,前記処理チャンバーには,高周波電源及び同調機に接続されプラズマを発生する一対の高周波電極が上下方向に対峙して配設されており,片方の高周波電極が,保持された半導体ウェーハを保持する保持部を兼ねた構成となっており, 前記搬出入チャンバー内に位置付けられた保持部に半導体ウェーハが,表面を上にして載置され,第一のゲートを閉じ,搬出入チャンバー内が真空にされ,次に,第二のゲートを開いて保持部が処理チャンバー内に移動することにより,半導体ウェーハが処理チャンバー内に収容されるものであり, このようにしてドライエッチングが行われると,半導体ウェーハの表面のうち,ストリートの上部に被覆されていたマスキング部材は,マスキング部材除去工程において除去されているが,その他の部分はマスキング部材で覆われているため,ストリートのみがエッチング処理により浸食され,個々の半導体チップに分割される半導体ウェーハの分割方法。」 2 引用文献2の記載 (1)引用文献2には,図面とともに以下の事項が記載されている。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明はプラズマ処理装置のコイル配置構造に関し,特に,プラズマを利用して薄膜形成あるいはエッチングを行うプラズマ処理装置に用いられ,プラズマ処理装置の基板処理能力の高めることができるコイル配置構造に関する。 【0002】 【従来の技術】半導体装置の製造では,薄膜形成やエッチングの処理にプラズマを利用する目的で,プラズマ処理装置が用いられている。プラズマ処理装置で,プラズマを発生させる機構としては,近年,高いプラズマ密度を達成できる誘導結合型プラズマ発生機構が使用されている。誘導結合型プラズマ発生機構では,処理チャンバ内に電力を与える手段としてコイルが使用される。 【0003】図5を参照して従来の誘導結合型プラズマ処理装置の一例を説明する。図示例は,処理対象である基板51が搬送機構52によって処理チャンバ53の内部に搬入されつつある状態を示す。通常の基板処理のとき,処理チャンバ53は密閉されている。このとき,搬送機構52を搬入または搬出するための口部54はバルブ(図示せず)によって閉じられた状態にある。処理チャンバ53内の下側には,基板を載置する基板保持体55が配置される。搬送機構52で処理チャンバ53内へ搬入された基板51は,最初,基板保持体55の上方で,基板保持体55から突き出たリフトピン56によって支えられる。リフトピン56は,基板保持体55に,上下に移動自在に設けられる。図示例では,リフトピン56は,基板51を支えるため上方に移動した状態を示している。 【0004】その後,搬送機構52は図中左側に退く。次に,リフトピン56に支えられた基板51は,リフトピン56が下方へ移動し基板保持体55内に収容されることによって,基板保持体55はリフトピン56を上下動させるための駆動機構57を備えている。 【0005】処理チャンバ53はその上壁53aの側に反応ガス供給機構(図示せず)を備える。反応ガス供給機構の供給管58が上壁53aに接続されている。反応ガス供給機構によって処理チャンバ53の内部に反応ガスが供給される。また基板処理時に処理チャンバ53の内部は所定レベルの真空状態に保持されている。処理チャンバ53の内部は排気口59を介して排気機構(図示せず)によって減圧される。 【0006】上記の構成によれば,処理チャンバ53内に搬送機構52によって基板51が搬入され,処理チャンバ53が密閉され,排気機構によって処理チャンバ53内が所定レベルに減圧され,反応ガス供給機構によって処理チャンバ53内に必要な反応ガスが導入される。 【0007】処理チャンバ53に対しては,その側壁53bの周囲に一巻きのコイル60が巻かれている。コイル60は,処理チャンバ53内にプラズマを生成するための電力を供給するアンテナとして機能する。コイル60はプラズマ生成用の電力供給機構61に接続されている。コイル60から供給される電力(電場)は,基板51の上方空間に導入された反応ガスを活性化し,プラズマを生成する。処理チャンバ53の側壁53bは,コイル60から内部空間への給電が効果的に行われる誘電体等の材料で形成される。さらに,基板保持体55は,バイアス印加用の電力供給機構62に接続されている。基板保持体55に対してバイアスを与えることによって基板51へのプラズマ処理の効果を高める。」 (2)したがって,上記記載から,引用文献2には,次の技術的事項が記載されていると認められる。 ・プラズマを利用して薄膜形成あるいはエッチングを行うプラズマ処理装置に用いられるプラズマ処理装置において,プラズマを発生させる機構としては,近年,高いプラズマ密度を達成できる誘導結合型プラズマ発生機構が使用されており,誘導結合型プラズマ発生機構では,処理チャンバ内に電力を与える手段としてコイルが使用されること,及び,前記処理チャンバに対しては,その側壁の周囲に一巻きのコイルが巻かれており,コイルは,処理チャンバ内にプラズマを生成するための電力を供給するアンテナとして機能し,コイルはプラズマ生成用の電力供給機構に接続されており,コイルから供給される電力(電場)は,基板の上方空間に導入された反応ガスを活性化し,プラズマを生成すること。 ・プラズマを利用して薄膜形成あるいはエッチングを行うプラズマ処理装置に用いられるプラズマ処理装置において,搬送機構で処理チャンバ内へ搬入された基板は,最初,基板保持体の上方で,基板保持体から突き出たリフトピンによって支えられ,その後,搬送機構は側方に退き,次に,リフトピンに支えられた基板は,リフトピンが下方へ移動し基板保持体内に収容されることによって,基板保持体に載置されること,及び,基板保持体はリフトピンを上下動させるための駆動機構を備えていること。 3 引用文献3の記載 (1)引用文献3には,図面とともに,以下の記載がある。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明はプラズマ処理装置に係り,特に,プラズマにより被処理体をエッチングするプラズマエッチング装置として構成する場合に好適な装置構成に関する。」 「【0016】本発明において,前記処理チャンバは,前記サセプタを収容する処理部と,プラズマを形成可能なプラズマ形成部とを有し,前記プラズマ形成部は絶縁体壁により画成され,前記絶縁体壁の外側に配置され前記絶縁体壁の内側に誘導電磁界を形成する誘導電磁界形成手段とを有することが好ましい。これによれば,プラズマ密度が高いために処理効率が良好で,バイアス電圧が低く被処理体へのダメージが少ない誘導結合プラズマによる処理が可能になる。」 「【0029】処理チャンバ120の外側には,電動モータや流体圧シリンダ等で構成される駆動源131が配置され,この駆動源131が駆動部材132を介して複数の支持ピン133を昇降動作させる用に構成されている。支持ピン133が上昇すると,被処理体Wはサセプタ120の支持表面から離間し,上方に持ち上げられる。これらの支持ピン133は,サセプタ120に対して被処理体Wを供給する場合,及び,サセプタ120から被処理体Wを取り外す場合に,被処理体Wを上昇させる。」 (2)したがって,上記記載から,引用文献3には,次の技術的事項が記載されていると認められる。 ・プラズマにより被処理体をエッチングするプラズマエッチング装置において,絶縁体壁により画成され,前記絶縁体壁の外側に配置され前記絶縁体壁の内側に誘導電磁界を形成する誘導電磁界形成手段であるプラズマ形成部を有することは,プラズマ密度が高いために処理効率が良好で,バイアス電圧が低く被処理体へのダメージが少ない誘導結合プラズマによる処理が可能になることから好ましいこと。 ・プラズマにより被処理体をエッチングするプラズマエッチング装置において,サセプタに対して被処理体を供給する場合,及び,サセプタから被処理体を取り外す場合に,被処理体を上昇させる支持ピンを用いること。 4 引用文献4の記載 (1)引用文献4には,図面とともに,以下の記載がある。 「【0035】 同図においてサポートプレート1の下部に位置するウエハ5の下面には,ダイシングフレーム14が貼り合わされている。このダイシングフレーム14は,ウエハ5に当接するダイシングテープ14aと,このダイシングテープ14aの周縁に位置し,ダイシングフレーム14の載置時或いは移動時に保持される保持部14bとから構成されている。 【0036】 図8A及び図8Bは,上記サポートプレートと上記ウエハとの剥離工程を示す概略説明図である。 【0037】 まず,図7に示す状態のサポートプレート1,ウエハ5及びダイシングテープ14を,吸着プレート15上で吸着する。この吸着された状態において,ダイシングフレーム14の保持部14bは,上下動可能なリフトピン16上に設けられたフレームガイド16aに保持されている。リフトピン16は,吸着プレート15と共にベース部17に配設されている。」 (2)したがって,上記記載から,引用文献4には,次の技術的事項が記載されていると認められる。 ・ウエハの下面には,ダイシングフレームが貼り合わされており,このダイシングフレームは,ウエハに当接するダイシングテープと,このダイシングテープの周縁に位置し,ダイシングフレームの載置時或いは移動時に保持される保持部とから構成されている場合において,前記ダイシングフレームの保持部は,上下動可能なリフトピン上に設けられたフレームガイドに保持されており,リフトピンは,吸着プレートと共にベース部に配設されていること。 5 引用文献5の記載 (1)引用文献5には,図面とともに,以下の記載がある。 「【0004】また,このような位置決めステージを排除するために,搬送ロボットの基板保持アームにウエハを把持するグリップ機構を設けたり,基板保持アーム上にウエハを位置決めするためのガイド部材が設けられる場合がある。ガイド部材は,たとえば,ウエハ下面の周縁を支持する支持部と,この支持部から立ち上がってウエハの端面を規制する規制面と,この規制面の上端縁に連なり,上記支持部へとウエハの端部を案内する案内傾斜面とを備えている。このようなガイド部材が,ウエハの周端面に対応した4箇所に設けられて,この4箇所においてウエハの周端面が規制された状態で当該ウエハが保持されることになる。」 (2)したがって,上記記載から,引用文献5には,次の技術的事項が記載されていると認められる。 ・基板保持アーム上にウエハを位置決めするためのガイド部材が設けられる場合があること。 第5 対比 本願発明と引用発明を対比すると,以下のとおりとなる。 1 引用発明の「搬出入チャンバーと,ドライエッチングを行う処理チャンバーとエッチングガスを処理チャンバー内に供給するガス供給部とを含むドライエッチング装置」であって,「前記処理チャンバーには,高周波電源及び同調機に接続されプラズマを発生する一対の高周波電極が上下方向に対峙して配設されており,片方の高周波電極が,保持された半導体ウェーハを保持する保持部を兼ねた構成となって」いる「ドライエッチング装置を使用」した「ストリートのみがエッチング処理により浸食され,個々の半導体チップに分割される半導体ウェーハの分割方法」は,本願発明の「基板をプラズマ・ダイシングする方法」に相当する。 2 引用発明の「ドライエッチングを行う処理チャンバー」が,「壁」を有することは自明である。 3 引用発明の「前記マスキング部材は,回路面の一面にマスキングされ,その後,マスキング部材除去工程において,マスキング工程で被覆したマスキング部材のうち,半導体ウェーハの回路面に形成されたストリートの上部を被覆している部分のみを除去したものであり」「ストリートのみがエッチング処理により浸食され,個々の半導体チップに分割」される工程は,本願発明の「上面と底面を有する前記基板を供給するステップであって,前記上面は複数のデバイス構造とストリート領域を有して」おり,「基板の前記上面の保護されていない前記ストリート領域をエッチングする」に相当する。 4 引用発明の「半導体ウェーハ」,「テープ」及び「リング状のフレーム」は,それぞれ本願発明の「基板」,「支持フィルム」及び「フレーム」に相当する。したがって,引用発明の「リング状のフレームの開口部を塞ぐように裏側から貼着されたテープの粘着面に半導体ウェーハの裏面が貼着されることによりテープを介してフレームと一体となった半導体ウェーハ」は,本願発明の「加工物」に相当する。 5 引用発明の「前記搬出入チャンバー内に位置付けられた保持部に半導体ウェーハが,表面を上にして載置され,第一のゲートを閉じ,搬出入チャンバー内が真空にされ,次に,第二のゲートを開いて保持部が処理チャンバー内に移動することにより,半導体ウェーハが処理チャンバー内に収容されるものであり」は,本願発明の「加工物の前記処理チャンバ内への移動が真空中で行われる」を満たす。 そうすると,引用文献1には,以下の範囲で,本願発明と,一致及び相違する発明が記載されている。 <一致点> 「基板をプラズマ・ダイシングする方法であって, 壁を有する処理チャンバを供給するステップと, 前記処理チャンバ内に加工物支持部を供給するステップと, 上面と底面を有する前記基板を供給するステップであって,前記上面は複数のデバイス構造とストリート領域を有しているステップと, 加工物を形成するために前記基板の前記底面をフレーム上の支持フィルム上に配置するステップと, 前記加工物の前記処理チャンバ内への移動が真空中で行われる前記ステップと, プラズマ源によってプラズマを生成するステップと, 前記生成されたプラズマによって,前記処理チャンバ内にある前記加工物の前記基板の前記上面の保護されていない前記ストリート領域をエッチングするステップと を含む方法。」 <相違点> ・相違点1:本願発明の処理チャンバが,「前記処理チャンバの前記壁に隣接してプラズマ源を供給する」ものであるのに対して,引用発明の「ドライエッチングを行う処理チャンバー」が,「処理チャンバーには,高周波電源及び同調機に接続されプラズマを発生する一対の高周波電極が上下方向に対峙して配設されており,片方の高周波電極が,保持された半導体ウェーハを保持する保持部を兼ねた構成」を有するものである点。 ・相違点2:本願発明は,「移動アームを供給するステップと」,「前記加工物支持部内にリフト機構を供給するステップと」,「前記移動アームを用いて前記加工物を前記処理チャンバ内の前記リフト機構上に移動するステップ」を含むのに対して,引用発明は,これらの特定がされていない点。 第6 判断 上記相違点について,判断する。 1 相違点1について 引用文献2に記載された「プラズマを利用して薄膜形成あるいはエッチングを行うプラズマ処理装置に用いられるプラズマ処理装置において,プラズマを発生させる機構としては,近年,高いプラズマ密度を達成できる誘導結合型プラズマ発生機構が使用されており,誘導結合型プラズマ発生機構では,処理チャンバ内に電力を与える手段としてコイルが使用されること,及び,前記処理チャンバに対しては,その側壁の周囲に一巻きのコイルが巻かれており,コイルは,処理チャンバ内にプラズマを生成するための電力を供給するアンテナとして機能し,コイルはプラズマ生成用の電力供給機構に接続されており,コイルから供給される電力(電場)は,基板の上方空間に導入された反応ガスを活性化し,プラズマを生成すること」(上記第4の2(2))との技術的事項,及び,引用文献3に記載された「プラズマにより被処理体をエッチングするプラズマエッチング装置において,絶縁体壁により画成され,前記絶縁体壁の外側に配置され前記絶縁体壁の内側に誘導電磁界を形成する誘導電磁界形成手段であるプラズマ形成部を有することは,プラズマ密度が高いために処理効率が良好で,バイアス電圧が低く被処理体へのダメージが少ない誘導結合プラズマによる処理が可能になることから好ましいこと」(上記第4の3(2))との技術的事項に照らして,プラズマを利用してエッチングを行うプラズマ処理装置において,近年,高いプラズマ密度を達成でき,処理効率が良好で,バイアス電圧が低く被処理体へのダメージが少ない誘導結合型プラズマ発生機構が使用されていること,及び,当該誘導結合型プラズマ発生機構が,壁の外側に配置され前記壁の内側に誘導電磁界を形成する誘導電磁界形成手段であるプラズマ形成部を有することが理解される。 してみれば,引用発明において,プラズマを利用してエッチングを行うプラズマ処理装置における近年の技術傾向を踏まえて,高いプラズマ密度を達成でき,処理効率が良好で,バイアス電圧が低く被処理体へのダメージが少ないとされる,壁の外側に配置され前記壁の内側に誘導電磁界を形成する誘導電磁界形成手段であるプラズマ形成部を有する誘導結合型プラズマ発生機構を用いること,すなわち,相違点1について,本願発明の構成を採用することは当業者が容易になし得たことである。 2 相違点2について 引用文献2に記載された「プラズマを利用して薄膜形成あるいはエッチングを行うプラズマ処理装置に用いられるプラズマ処理装置において,搬送機構で処理チャンバ内へ搬入された基板は,最初,基板保持体の上方で,基板保持体から突き出たリフトピンによって支えられ,その後,搬送機構は側方に退き,次に,リフトピンに支えられた基板は,リフトピンが下方へ移動し基板保持体内に収容されることによって,基板保持体に載置されること,及び,基板保持体はリフトピンを上下動させるための駆動機構57を備えていること」(上記第4の2(2))との技術的事項,及び,引用文献3に記載された「プラズマにより被処理体をエッチングするプラズマエッチング装置において,サセプタに対して被処理体を供給する場合,及び,サセプタから被処理体を取り外す場合に,被処理体を上昇させる支持ピンを用いること」(上記第4の3(2))との技術的事項に照らして,「プラズマを利用してエッチングを行うプラズマ処理装置」において,「移動アームを供給するステップと」,「前記加工物支持部内にリフト機構を供給するステップと」,「前記移動アームを用いて前記加工物を前記処理チャンバ内の前記リフト機構上に移動するステップ」を含む方法によって被加工物を移動することは周知であったと認められる。 そして,「このようにしてドライエッチングが行われると,半導体ウェーハの表面のうち,ストリートの上部に被覆されていたマスキング部材は,マスキング部材除去工程において除去されているが,その他の部分はマスキング部材で覆われているため,ストリートのみがエッチング処理により浸食され,個々の半導体チップに分割される」ものである引用発明における「前記搬出入チャンバー内に位置付けられた保持部に半導体ウェーハが,表面を上にして載置され,第一のゲートを閉じ,搬出入チャンバー内が真空にされ,次に,第二のゲートを開いて保持部が処理チャンバー内に移動することにより,半導体ウェーハが処理チャンバー内に収容される」という作業と,引用文献2及び引用文献3から周知と認められる上記の方法とは,「プラズマを利用してエッチングを行うプラズマ処理装置」における,「被加工物」の「移動」に関するものであるという点で,技術分野及び作用・機能が共通するといえる。 してみれば,被加工物の移動方法が明記されていない引用発明において,前記周知の方法を採用して,「ドライエッチングを行う処理チャンバー」への「リング状のフレームの開口部を塞ぐように裏側から貼着されたテープの粘着面に半導体ウェーハの裏面が貼着されることによりテープを介してフレームと一体となった半導体ウェーハ」の移動を,「移動アームを供給するステップと」,「前記加工物支持部内にリフト機構を供給するステップと」,「前記移動アームを用いて前記加工物を前記処理チャンバ内の前記リフト機構上に移動するステップ」を含む方法によって行うこと,すなわち,相違点2について,本願発明の構成を採用することは当業者が適宜なし得たことである。 第7 むすび 以上のとおり,本願発明は,その原出願の優先日前に日本国内又は外国において,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1-5に記載された発明に基づいて,その原出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって,他の請求項に係る発明については検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2019-01-23 |
結審通知日 | 2019-01-24 |
審決日 | 2019-02-05 |
出願番号 | 特願2015-93179(P2015-93179) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 宮久保 博幸 |
特許庁審判長 |
飯田 清司 |
特許庁審判官 |
梶尾 誠哉 加藤 浩一 |
発明の名称 | 半導体ウェーハをプラズマ・ダイシングする方法及び装置 |
代理人 | 特許業務法人浅村特許事務所 |