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審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載  B26B
審判 全部無効 2項進歩性  B26B
管理番号 1352871
審判番号 無効2018-800061  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-08-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2018-05-17 
確定日 2019-06-17 
事件の表示 上記当事者間の特許第5647324号発明「刃部収納式鋏」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯

特許第5647324号(以下「本件特許」という。)についての手続の経緯は、概ね次のとおりである。

平成25年11月 8日 本件特許出願
平成26年11月14日 特許権の設定登録
(特許第5647324号)
平成30年 5月17日 審判請求書提出
同 年 8月17日 審判事件答弁書提出
同 年10月31日付け 審理事項通知
同 年12月 3日 [請求人]口頭審理陳述要領書提出
同 年12月 4日 [被請求人]口頭審理陳述要領書提出
同 年12月18日 口頭審理

なお、両当事者が提出した文書を、以下単に「答弁書」、「要領書」という。


第2 本件特許発明

本件特許の特許請求の範囲に記載された発明(以下「本件特許発明」といい、各請求項に係る発明を「特許発明1」などという。)は、特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
(A)長手をなす刃部であって、長手方向に先端と該先端とは反対側の基端とを有する刃部と、該刃部の基端に取り付けられる操作部とを有する一対の鋏本体と、
(B)該一対の鋏本体のそれぞれの操作部を互いに離間させる方向に付勢する付勢部材と、
(C)一対の鋏本体のそれぞれを第一方向でスライド可能に内装するケースであって、第一方向に第一端と該第一端とは反対側の第二端とを有するケースとを備え、
(D)一対の鋏本体のそれぞれは、刃部と操作部との間の部分同士が枢結されるとともに、各鋏本体の刃部全体がケースから進出する第一の限界位置と、各鋏本体の刃部全体がケース内に退避する第二の限界位置との間でスライド可能に構成され、
(E)ケースは、該ケースの第一端側に形成されるとともに第一方向で貫通する挿通口であって、一対の鋏本体のそれぞれの刃部を挿通可能な挿通口と、
(F)一方の鋏本体の操作部をケース内で第一方向に案内する案内部と、
(G)第一方向で長手をなし且つ第一方向と直交する第二方向で貫通する長穴部と、
(H)ケースの第一端側で該長穴部と連続する導出部であって、第二方向で貫通する導出部とを有し、
(I)長穴部は、他方の鋏本体の操作部を部分的にケースから露出させつつ第一方向に案内し、
(J)導出部は、第一の限界位置に配置された他方の鋏本体の操作部を一方の鋏本体の操作部に対して接離可能にし、
(K)一方の鋏本体の操作部には、凸部又は凹部の何れか一方が形成され、
(L)ケースは、第一の限界位置に位置する一方の鋏本体の第一方向での移動を規制可能な第一のロック部であって、該ケース内部に形成される凸部又は凹部の何れか他方によって構成される第一のロック部を有し、
(M)第一の限界位置に位置する一方の鋏本体の操作部の凸部又は凹部の何れか一方と、前記第一のロック部を構成する凸部又は凹部の何れか他方とは、互いに嵌合可能に構成される、
(N)ことを特徴とする刃部収納式鋏。
【請求項2】
(O)ケースは、第二の限界位置に位置する一方の鋏本体の第一方向での移動を規制可能な第二のロック部を有する
(P)請求項1に記載の刃部収納式鋏。」

なお、両当事者の主張の整理のために,請求人が使用した分説記号A?Pを各分説箇所の書き出しに括弧書きで加え、分説した範囲毎に改行を施した。


第3 無効理由、無効理由に対する答弁及び証拠方法

1.請求人主張の無効理由
請求人は、審判請求書において、本件特許の特許発明1ないし2についての特許を無効とする、との審決を求め、以下の無効理由1ないし3を主張している。
(1)無効理由1(新規性)
本件特許の請求項1に係る発明、及び、請求項2に係る発明は,本件出願日前に頒布された甲第1号証に記載された発明と相違点がないから,特許法第29条第1項第3号の規定により,特許を受けることができない。
(2)無効理由2(新規性)
本件特許の請求項1に係る発明、及び、請求項2に係る発明は,本件出願日前に頒布された甲第2号証に記載された発明と相違点がないから,特許法第29条第1項第3号の規定により,特許を受けることができない。
(3)無効理由3(進歩性)
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、甲第3号証に記載された発明に対して、甲第1号証に記載された事項又は甲第2号証に記載された事項を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

2.無効理由に対する被請求人の答弁
被請求人は、答弁書において、本件審判請求は成り立たない、審判費用は審判請求人の負担とする、との審決を求めている。

3.証拠方法
(1)請求人
請求人は、証拠方法として、審判請求書に添付して、以下の甲第1号証ないし甲第3号証(以下,各甲号証を指摘する場合は、「甲1」などという。)を提出した。
甲第1号証:実公平7-44297号公報
甲第2号証:実願昭63-166665号(実開平2-86471号)のマイクロフィルム
甲第3号証:実願平2-73591号(実開平4-32667号)のマイクロフィルム

(2)被請求人
被請求人は、証拠方法として、答弁書に添付して、以下の乙第1号証(以下、「乙1」という。)を提出した。
乙第1号証:特許第5647324号公報


第4 当事者の主張
1.無効理由1(新規性)について
[請求人]
請求人は、審判請求書にて以下の主張をした。
(1)審判請求書(4)イ(ア)a.?n.に示すとおり、甲第1号証には本件特許発明1の発明特定事項である分説A?Nに相当する事項についての記載ないし図の開示がある。また審判請求書(4)イ(イ)に示すとおり、甲第1号証に記載された発明の作用効果は、本件特許発明1の作用効果と同一である。
(2)審判請求書(4)イ(ア)a.?n.及びo.?p.に示すとおり、甲第1号証には本件特許発明2の発明特定事項である分説A?Pに相当する事項についての記載ないし図の開示がある。また審判請求書(4)イ(イ)に示すとおり、甲第1号証に記載された発明の作用効果は、本件特許発明2の作用効果と同一である。

また、要領書にて次の(3)の主張を、口頭審理調書にて(4)の主張をした。
(3)本件特許の請求項1に係る発明の、分説I「部分的にケースから露出させた箇所」に対応する甲第1号証に記載の箇所は、下記参考図1の色塗り部分である、「スライダ(4b)」の(側面視における)前下部を除く部分である。

(4)平成30年12月3日付け口頭審理陳述要領書の参考図1においてスライダ(4b)の部分的な露出はケース左側の開口と動刃体3が干渉して行われる。

[被請求人]
被請求人は、答弁書にて以下の主張をした。
(1)答弁書「第4 無効理由1について」の2(2)、(3)、(4)、(5)に示すとおり、甲1発明は,「案内部」(構成要件F),「導出部」(構成要件H及び構成要件J)及び「第一のロック部」(構成要件L及び構成要件M)が開示されていないのが明らかである。
よって,請求人の無効理由1に関する主張は,事実に反し,著しく合理性を欠くものであり,明らかに失当である。
したがって,本件特許発明1の新規性は,無効理由1によっては否定されず,無効理由1は,断じて存在しない。

また、要領書にて次の(2)の主張をし、口頭審理調書に示すとおり,(3)の主張をした。

(2)【特許発明1の「長穴部」の構造についての補足】
本件特許発明1における「長穴部」は、「第一方向で長手をなし且つ第一方向と直交する第二方向で貫通する」構造であり、また、「他方の鋏本体の操作部を部分的にケースから露出させつつ第一方向に案内」する構造を有する。
すなわち、長穴部は、その機能・役割から、鋏本体の操作部を第一方向に案内することに限定されており、その目的を達成するための構造となっている。
具体的には、「長穴部」は、「他方の鋏本体の操作部を部分的にケースから露出させつつ第一方向に案内」する機能を果たすための構造であり、その実施例として、長穴部の幅は、鋏本体の操作部の幅より狭くなっている構造が紹介されている。
これに対し、「導出部」は、「ケースの第一端側で該長穴部と連続」し「第二方向で貫通する」もので、「第一の限界位置に配置された他方の鋏本体の操作部を一方の鋏本体の操作部に対して接離可能」にする構造を有する。
具体的には、導出部は、他方の鋏本体の操作部を一方の鋏本体の操作部に対して接離可能にするための構造となっており、その実施例として、導出部の幅を鋏本体の操作部の幅より広く設定されている構造が紹介されている(乙1の図9など参照)。
かかる構造により、導出部は、鋏の操作部が他方の鋏本体の操作部に対して接離可能にしている。
したがって、「導出部」と「長穴部」は、役割が全く異なるため、異なる構造となっている。

なお、被請求人は答弁書にて、特許発明1の「導出部」は甲1発明に開示されていないとする主張もしているが、後記(3)で主張を変更しているため、省略する。

(3)甲第1号証には導出部が記載されているとしても長穴部は記載されていない。

2.無効理由2(新規性)について
[請求人]
請求人は、審判請求書にて以下の主張をした。

(1)審判請求書(4)ウ(ア)a.?n.に示すとおり、甲第2号証には本件特許発明1の発明特定事項である分説A?Nに相当する事項についての記載ないし図の開示がある。また審判請求書(4)ウ(イ)に示すとおり、甲第2号証に記載された発明の作用効果は、本件特許発明1の作用効果と同一である。

(2)審判請求書(4)ウ(ア)a.?n.及びo.?p.に示すとおり、甲第2号証には本件特許発明2の発明特定事項である分説A?Pに相当する事項についての記載ないし図の開示がある。また審判請求書(4)ウ(イ)に示すとおり、甲第2号証に記載された発明の作用効果は、本件特許発明1の作用効果と同一である。

また、要領書にて次の(3)の主張をした。

(3)本件特許の請求項1に係る発明の、分説I「部分的にケースから露出させた箇所」に対応する甲第2号証に記載の箇所は、下記参考図2の色塗り部分である、「操作部(13)及び指掛部(15)」の一部が部分的にケースから露出させた箇所である。

[被請求人]
被請求人は、答弁書にて以下の主張をした。

(1)答弁書「第5 無効理由2について」の2(1)、(2)、(3)、(4)に示すとおり、甲2発明は、「案内部」(構成要件F)、「導出部」(構成要件H及び構成要件J)及び「第一のロック部」(構成要件L及び構成要件M)が開示されていないのが、明らかである。
よって,請求人の無効理由2に関する主張は、事実に反し、著しく合理性を欠くものであり、明らかに失当である。
したがって,本件特許発明1の新規性は、無効理由2によっては否定されず、無効理由2により本件特許発明1は無効になることは想定し難い。

また、要領書にて補足の主張をし、口頭審理調書に示すとおり、次の(2)の主張をした。
なお、要領書の主張は、後に口頭審理にて異なる主張とされたため、概要を省略する。

(2)甲第2号証には導出部が記載されているとしても長穴部は記載されていない。

3.無効理由3(進歩性)について
[請求人]
請求人は、審判請求書にて以下の主張をした。

(1)審判請求書(4)エ(ア)a.?j.及びn.に示すとおり、甲第3号証には本件特許発明1の発明特定事項である分説A?J及びNに相当する事項についての記載ないし図の開示がある。
本件特許発明1と甲第3号証に記載の発明とは、審判請求書(4)エ(ア)k.?m.に示す点で相違するが、審判請求書(4)エ(イ)b.及びc.に示すとおり、本件特許発明1の相違点に係る事項はいずれも甲第1号証に記載された公知の事項、あるいは、甲第2号証に記載された公知の事項であるから、それらいずれの公知の事項を甲第3号証に記載の発明に適用することは、その発明の属する分野における通常の知識を有する者が容易に推考し得るものである。また審判請求書(4)エ(ウ)に示すとおり、本件特許発明1により得られる作用効果も、甲第3号証に記載された発明、及び、上記の公知の事項から予測し得る範囲内であり、格別な作用効果を奏するものとはいえない。

(2)審判請求書(4)エ(ア)a.?j.及びn.?p.に示すとおり、甲第3号証には本件特許発明2の発明特定事項である分説A?J及びN?Pに相当する事項についての記載ないし図の開示がある。
本件特許発明2と甲第3号証に記載の発明とは、審判請求書(4)エ(ア)k.?m.に示す点で相違するが、審判請求書(4)エ(イ)b.及びc.に示すとおり、本件特許発明2の相違点に係る事項はいずれも甲第1号証に記載された公知の事項,あるいは、甲第2号証に記載された公知の事項であるから、それらいずれの公知の事項を甲第3号証に記載の発明に適用することは、その発明の属する分野における通常の知識を有する者が容易に推考し得るものである。また審判請求書(4)エ(ウ)に示すとおり、本件特許発明2により得られる作用効果も、甲第3号証に記載された発明、及び、上記の公知の事項から予測し得る範囲内であり、格別な作用効果を奏するものとはいえない。

[被請求人]
被請求人は、答弁書にて以下の主張をした。

(1)答弁書「第6 無効理由3について」の2?5に示すとおり、甲第3号証に記載された発明は、「案内部」(構成要件F)、「長穴部」(構成要件G)、「導出部」(構成要件H及び構成要件J)を開示しない上に、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された発明のいずれについても「第一のロック部」(構成要件L)を開示していない。
よって、甲第3号証に記載された発明と甲第1号証に記載された発明又は甲第2号証に記載された発明を組み合わせることが当業者において想到できると仮定しても本件特許発明1は、進歩性を欠如することにならない以上,本件無効審判請求は不成立とすべきことは、火を見るに明らかである。
また、本件特許発明2についてみると、甲第3号証に記載された発明は、「案内部」(構成要件F)、「長穴部」(構成要件G)、「導出部」(構成要件H及び構成要件J)を開示しない上に、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された発明のいずれについても「第一のロック部」(構成要件L)を開示していない。
また、甲第2号証に記載された発明においては、上記第5・3において主張した通り、「第二のロック部」(構成要件O)も開示していない。
よって、甲第3号証に記載された発明と甲第1号証に記載された発明又は甲第2号証に記載された発明を組み合わせることが当業者において想到できると仮定しても本件特許発明2は、進歩性を欠如することにならない以上、本件無効審判請求は不成立とすべきことは、火を見るに明らかである。
更に、(請求人の主張には)なぜ、甲第3号証に記載された発明と甲第1号証に記載された発明、または、甲第2号証に記載された発明を組み合わせることができるのかについて一切の立証がないことは勿論主張すら全くない。
よって、請求人において主引例発明である甲第3号証に記載された発明に副引用発明である甲第2号証に記載された発明及び甲第1号証に記載された発明を適用する論理付けすら一切主張がない以上、本件特許発明の有利な効果や阻害要因を論じるまでもなく、これらを組み合わせることは当業者にとって容易に想到できないことは明らかである。

また、口頭審理調書に示すとおり、(2)の主張をした。

(2)甲第1号証、甲第2号証には導出部が記載されているとしても長穴部は記載されていない。


第5 当審の判断
1.無効理由1について
(1)甲第1号証の記載事項、甲1発明
甲第1号証には、図1及び2と共に、以下の事項が記載されている。

ア「【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】静刃体の長穴に係合する枢軸を介して静刃体と動刃体とを開閉動及び相対スライド自在に連結したうえで、その静刃体と動刃体を前記長穴の延びる方向に出没可能に握りケース内に収納し、しかも、その握りケースから突出した状態の動刃体を静刃体に対し拡開させるべく付勢するスプリングを備えて成り、前記長穴と枢軸とは、静刃体と動刃体が握りケース内に没入している場合において、動刃体が繰り出されるときには静刃体を動刃体に従動させて握りケースから突出させる一方、静刃体が繰り出されるときには静刃体だけを握りケースから突出させ得るように形成されていることを特徴とする切断具。」

イ「【0007】
【実施例】本考案の一実施例を図面を参照して説明する。図1及び図2に示すように、切断具の握りケース1(以下、単に「ケース」という)には、長手方向に、断面コ字状のスライド溝1aが形成され、さらにスライド溝1aに重ねてやや幅広のスライド溝1a’が形成されている。スライド溝1aの一側面には長手方向に延びる窓穴1bと係止凹部1eとが形成され、スライド溝1a’の一側面には長手方向に延びる開口部1cと、係合穴1dとが形成されている。上記スライド溝1aには図示形状の静刃体2がスライド自在に嵌まり込んでいて、静刃体2の本体部2a側部に形成された突部2bは、指で操作するためのスライダ4aが被せられたうえで前記窓穴1bに差し込まれている。また、本体部2aの中央から後方にかけて長穴2dが形成され、本体部2aの後端部には係止突部2cとスリット2eが形成されている。この係止突部2cは、スライド溝1aの係止凹部1eあるいは窓穴1bに係止して静刃体2のスライドを没入位置と突出位置との2位置で止めるためのものである。
【0008】さらに、前記スライド溝1a’には図示形状の動刃体3がスライド自在に嵌まり込んでいて、静刃体2の長穴2dと動刃体3の丸穴3aとに挿通された上下一対のリベット5a,5b(枢軸ともいう)が、重なり合う両刃体2,3を相対スライド自在に連結し、かつ、両刃体2,3の開閉動の支点となっている。なお、リベット5a,5bと長穴2dとの位置関係は、図2(a),(b)に示されるように、両刃体2,3が共に没入位置あるいは突出位置にあるときには、リベット5a,5bが長穴2dの図示左端側に位置する一方、図2(c)に示されるように、動刃体3が没入位置にあり、かつ静刃体2が突出位置にあるときには、リベット5a,5bが長穴2dの図示右端側に位置するように設定されている。
【0009】前記動刃体3の側部に形成された突部3bは、指で操作するためのスライダ4bが被せられたうえで、ケース1の開口部1cに差し込まれている。また、動刃体3の後端部には係合穴1dに係脱可能な突部3cが形成されるとともに、細幅板状のスプリング6が取り付けられている。このスプリング6は先端部をスライド溝1a’の側面に当接させて動刃体3を図示反時計回転方向に付勢するようになっている。そして、両刃体2、3を収納したケース1には、上面開口部と後端部とを塞ぐ蓋7が被せられている。
【0010】次に、上記構成の切断具の作用について図2を参照して説明する。図2(a)に示すように、ケース1には静刃体2と動刃体3とが収納されており、ケース1の側部からはスライダ4a,4bの頭部が突き出している。この状態の切断具を「鋏」として使用したい場合には、ケース1を手で持ち、スライダ4bを親指で押し下げ、突部3cを係合穴1dから離脱させたうえで、スライダ4bを前方(図示左側)に押す。動刃体3が押されると、リベット5aが長穴2dの端部に当接して静刃体2を押す。すると、係止突部2cはスリット2eの分だけ変位できるから係止凹部1eから外れ、続いて、動刃体3とこれに従動する静刃体2がスライド溝1a,1a’に沿ってスライドして、両刃体2,3がケース1から突出する。
【0011】そして、スライダ4bが窓穴1b(図1参照)の端部に当接するとともに、係止突部2cが窓穴1bの縁部に係止して静刃体2の位置が決まる。このとき、動刃体3はスプリング6にて付勢されているから、親指の力を緩めれば、図2(b)に示すように、スライダ4bとともに動刃体3の後端部が開口部1cから飛び出し、両刃体2,3は拡開状態になる。そこで、スライダ4bを親指で押し下げて動刃体3を閉じ方向に回転させ、被切断物を切断する。
【0012】続いて、両刃体2,3がケース1から突出している場合において、スライダ4bを親指で押下げて後方に引き戻せば、図2(c)に示すように、動刃体3は、スライド溝1a’内をスライドしたうえで、突部3cと係合穴1dとが係合する位置に保持される。しかして、静刃体2のみが突出している状態の切断具は「ナイフ」として使用できる。その後、スライダ4aを後方に引き戻せば、係止突部2cと窓穴1bとの係合が外れ、静刃体2はスライド溝1a内をスライドして、図2(a)に示した収納状態になる。
【0013】すなわち、本実施例の切断具では、スライダ4bを操作することによって、ケース1から静刃体2と動刃体3とを同時に突出させ得、続いて、動刃体3だけをケース1内に没入させ得るようにしたものであるから、親指によるワンタッチ式の操作にて「鋏」と「ナイフ」とを切替えることができるのである。なお、両刃体2,3が突出状態にあるときスライダ4aを操作すれば、静刃体2と動刃体3とを一挙にケース1内に収納することができ、また、スライダ4aを操作して静刃体2だけをケース1から出没させることもできる。
【0014】ところで、上記の実施例においては、係止突部2cはスリット2eの存在により弾性変位が容易なものとなっており、静刃体2がスライド溝1a内をスライドする際、係止突部2cは係止凹部1eあるいは窓穴1bと係脱できるように形成されているが、このストッパー機構の別例について、図3を参照して、以下に説明する。なお、前述の実施例と対応する部位には同一符号を付してある。図3に示す樹脂製のケース1にはスライド溝1aの溝底に突起1f,1fが形成される一方、静刃体2には突起1fに対応する大きさの係止穴2fが形成されている。そして、ケース1は突起1f近傍が薄肉になっていて、突起1fが図示矢印方向に弾性変位し易いようになっている。なお、前述の実施例における係合穴1dを、本例では溝としている。すなわち、本例では前述の実施例と比べ、ケース1の樹脂成形型の単純化を図ったものであり、成形金型の製作コストを抑えるのに効果的である。同様の理由から、図示は省略するが、静刃体2側の係止穴2fを突起に、スライド溝1a側の突起1fを穴にそれぞれ置き換えることもできるし、窓穴1bの形状も金型が抜き易いものにすることができる。
【0015】なお、以上説明した実施例では、静刃体2及び動刃体3の各板面内に突設した突部2b,3bにスライダ4a,4bを装着しているが、突部2b,3bを折り曲げた状態にしてケース1から突出させることもでき、さらに、突部2b,3bを直接指で操作することにしてスライダ4a,4bの装着を省いても良い。また、スプリング6を板ばねとしたが、これに代えてつる巻きばね等を用いることもできる。その他、当業者の知識に基づき、種々の変更を加えた態様で本考案を実施し得ることは勿論である。」





以上を総合すると、甲第1号証には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
(甲1発明)
「鋏を形成する動刃体3及び静刃体2の対である刃体であって、該動刃体3及び静刃体2は共に先端に刃が形成され、動刃体3の後部中程には親指で押し下げ操作するスライダ4bが設けられ、静刃体2の中央には突部2bがスライダ4aを伴い設けられるとした刃体と、
該刃体の対となる動刃体3及び静刃体2の後端同士を互いに離間させる方向に付勢するスプリング6と、
前記動刃体3及び静刃体2をスライド可能に収納する、握りケース1とを備え、
対で鋏を形成する動刃体3及び静刃体2は、動刃体3に設けられた丸穴3aに挿入されたリベット5aが静刃体2の長穴2dを介してリベット5bで止められて開閉動の支点となる枢軸とされることにより、動刃体3と静刃体2とは、静刃体2の後端に設けた長穴2d内をリベット5a及び5bによる連結された枢軸が前後方向にスライド自在とされ、両刃体が共に先端方向まで前進して鋏として機能する突出位置と、両刃体が共に後退して握りケース1内に収納される位置との間で握りケース1内に形成された長手方向に断面コ字状に形成されたスライド溝1a内を静刃体2が嵌り込んでスライド可能とされ、
握りケース1には、握りケース1突出端部に両刃体が突出する開口が設けられ、
握りケース1には、静刃体2のスライダ4aが差し込まれる窓穴1bが設けられ、
握りケース1には、動刃体3のスライダ4bが差し込まれる開口部1cが設けられ、
動刃体3のスライダ4bを親指で押し下げ、突部3cを係合穴1dから離脱させたうえで、スライダ4bを前方に押すことで動刃体3が前方に動き、動刃体3に従動して静刃体2がスライド溝1a、1a’に沿ってスライドすることで、両刃体2,3の刃が握りケース1から突出し、
前記静刃体2の後端には係止突部2cが形成され、該係止突部2cは前記握りケース1の後方端部に設けられた係止凹部1eと静刃体2の没入位置で止められ、かつ、握りケース1に設けられた前記窓穴1bの後方縁部にも突出位置で止められることにより静刃体2の突出位置が決まるものであり、
前記突出位置で、動刃体3の後端部はスプリング6の付勢力で開口部1cから飛び出し、両刃体2、3は拡開状態になる
切断具。」

(2)対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
最初に、本件特許発明1の主要構成、すなわち、分説(A)?(D)について対比を行う。
甲1発明の「鋏を形成する動刃体3及び静刃体2の対である刃体」は、全形が長手をなし、先端及び基端を有することが明らかであるから、本件特許発明1の「長手をなす刃部」であり、「長手方向に先端と該先端とは反対側の基端とを有」する、「一対の鋏本体」に相当し、
以下、同様に、
「動刃体3」に「設けられ」た「スライダ4b」及び「静刃体2の中央の突部2b」に「設けられる」「スライダ4a」は、「刃部」に「取り付けられる操作部」に、
「該刃体の対となる動刃体3及び静刃体2の後端同士を互いに離間させる方向に付勢するスプリング6」は、「該一対の鋏本体のそれぞれの操作部を互いに離間させる方向に付勢する付勢部材」に、各々相当する。
また、甲1発明の「両刃体が共に先端方向まで前進して鋏として機能する突出位置」が、本件特許発明1の「各鋏本体の刃部全体がケースから進出する第一の限界位置」に相当し、甲1発明の「両刃体が共に後退して握りケース1内に収納される位置」が、本件特許発明1の「各鋏本体の刃部全体がケース内に待避する第二の限界位置」に相当するから、甲1発明の「前記動刃体3及び静刃体2をスライド可能に収納する、握りケース1」は、本件特許発明1の「一対の鋏本体のそれぞれを第一方向でスライド可能に内装するケースであって、第一方向に第一端と該第一端とは反対側の第二端とを有するケース」に相当する。
更に、甲1発明の「動刃体3及び静刃体2」が、「動刃体3に設けられた丸穴3aに挿入されたリベット5aが静刃体2の長穴2dを介してリベット5bで止められて開閉動の支点となる枢軸とされることにより、動刃体3と静刃体2とは、静刃体2の後端に設けた長穴2d内をリベット5a及び5bによる連結された枢軸が前後方向にスライド自在とされ」ることは、本件特許発明1の「一対の鋏本体のそれぞれは、刃部と操作部との間の部分同士が枢結される」ことに相当する。

次に、甲1発明の「握りケース1」と本件特許発明1の「ケース」の細部、すなわち、本件特許発明1で分説(E)?(J)について対比を続ける。
甲1発明の「握りケース1突出端部に両刃体が突出する開口が設けられ」たことは、本件特許発明1の「該ケースの第一端側に形成されるとともに第一方向で貫通する挿通口であって、一対の鋏本体のそれぞれの刃部を挿通可能な挿通口」に相当する。
また、甲1発明の「静刃体2のスライダ4aが差し込まれる窓穴1b」は、スライダ4aは窓穴1bに差し込まれる状態でスライドするため、「操作部をケース内で案内」する点を除き、本件特許発明1の「一方の鋏本体の操作部を」「第一方向に案内する案内部」に相当する。
さらに、甲1発明の「動刃体3のスライダ4bが差し込まれる開口部1c」であって「前記突出位置で、動刃体3の後端部はスプリング6の付勢力で開口部1cから飛び出し、両刃体2、3は拡開状態になる」ことは、握りケース1の内外を貫通する長穴形状という点、及び、突出位置で動刃体3が握りケース1から飛び出して拡開する点で、本件特許発明1の「第一方向で長手をなし且つ第一方向と直交する第二方向で貫通する長穴部」及び、「ケースの第一端側で該長穴部と連続する導出部であって、第二方向で貫通する導出部」であって「第一の限界位置に配置された他方の鋏本体の操作部を一方の鋏本体の操作部に対して接離可能にし」たことに相当するものの、本件特許発明1の「長穴部」が「他方の鋏本体の操作部を部分的にケースから露出させつつ第一方向に案内」する機能作用の特定事項を有する点は除かれる。

最後に、ケースが有するロック部について、すなわち、本件特許発明1の分説(L)及び(M)について対比を行う。
甲1発明の「握りケース1に設けられた前記窓穴1bの前方縁部」は、「ケース内部に形成される凸部又は凹部の何れか他方によって構成される」点及び「第一の限界位置に位置する一方の鋏本体の操作部の凸部又は凹部の何れか一方と、前記第一のロック部を構成する凸部又は凹部の何れか他方とは、互いに嵌合可能に構成される」点を除き、本件発明1の「第一の限界位置に位置する一方の鋏本体の第一方向での移動を規制可能な第一のロック部」に一致する。

そうすると、両者は以下の点で一致し、かつ、相違する。
(一致点)
「(A’)長手をなす刃部であって、長手方向に先端と該先端とは反対側の基端とを有する刃部と、該刃部に取り付けられる操作部とを有する一対の鋏本体と、
(B)該一対の鋏本体のそれぞれの操作部を互いに離間させる方向に付勢する付勢部材と、
(C)一対の鋏本体のそれぞれを第一方向でスライド可能に内装するケースであって、第一方向に第一端と該第一端とは反対側の第二端とを有するケースとを備え、
(D)一対の鋏本体のそれぞれは、刃部と操作部との間の部分同士が枢結されるとともに、各鋏本体の刃部全体がケースから進出する第一の限界位置と、各鋏本体の刃部全体がケース内に退避する第二の限界位置との間でスライド可能に構成され、
(E)ケースは、該ケースの第一端側に形成されるとともに第一方向で貫通する挿通口であって、一対の鋏本体のそれぞれの刃部を挿通可能な挿通口と、
(F’)一方の鋏本体の操作部を第一方向に案内する案内部と、
(G)第一方向で長手をなし且つ第一方向と直交する第二方向で貫通する長穴部と、
(H)ケースの第一端側で該長穴部と連続する導出部であって、第二方向で貫通する導出部とを有し、
(J)導出部は、第一の限界位置に配置された他方の鋏本体の操作部を一方の鋏本体の操作部に対して接離可能にし、
(L’)ケースは、第一の限界位置に位置する一方の鋏本体の第一方向での移動を規制可能な第一のロック部を有する
(N)刃部収納式鋏。」

(相違点)
1.本件特許発明1の「ケース」が有する「案内部」は、「一方の鋏本体の操作部をケース内で」第一方向に案内するとしているのに対して、甲1発明の「窓穴1b」は、静刃体2の一部である「スライダ4a」が「差し込まれ」た状態でスライド方向に案内されるのであって、該スライダ4aをケース内で案内するとはされていない点。
2.本件特許発明1の「長穴部」は、「他方の鋏本体の操作部を部分的にケースから露出させつつ第一方向に案内」するものとしているのに対して、甲1発明の「動刃体3のスライダ4bが差し込まれる開口部1c」は、スライダ4bを部分的に露出させつつ案内するものであるか不明な点。
3.本件特許発明1は、「一方の鋏本体の操作部には、凸部又は凹部の何れか一方が形成され」ているのに対して、甲1発明の静刃体2は、何らかの操作を行う部分を考慮すると、スライダ4aが操作部に該当するものの、スライダ4aには凸部も凹部も形成されていない点。
4.本件特許発明1の「第一のロック部」は、「該ケース内部に形成される凸部又は凹部の何れか他方によって構成される」ものであり、かつ、「第一の限界位置に位置する一方の鋏本体の操作部の凸部又は凹部の何れか一方と、前記第一のロック部を構成する凸部又は凹部の何れか他方とは、互いに嵌合可能に構成される」としているのに対して、甲1発明の「握りケース1」の「窓穴1b」による刃体の係止は、握りケース1の内部に形成されず、外部と貫通するよう形成されているためこれを凹部とはいえず、また、係止に必要な鋏側には係止凸部2cが形成されてはいるものの、刃部の基端に取り付けられたスライダに形成されてはいない上、嵌合を果たさない点。
5.本件特許発明1の操作部は、「刃部の基端部」に取り付けられているのに対して、甲1発明のスライダ4a及びスライダ4bは、動刃体や静刃体の刃が設けられていない側には取り付けられているものの、端部にはいずれも取り付けられていない点。

(3)判断
上記相違点について検討する。
(相違点1について)
甲1発明の「窓穴1b」と「スライダ4a」との関係が「差し込まれ」ていることについて更に検討すると、甲第1号証には「スライダ4a」の使用に関して、上記(1)イの【0013】に記載されているとおり、当該「スライダ4a」のみを操作して、静刃体2を単独でケース1から出没させることができ、この場合甲第1号証の切断具は「ナイフ」として使用できるとされている。
そうすると、当該「スライダ4a」は操作可能なようにケース1の外に部分的に飛び出るもの、すなわち、図2(a)?(c)の図示のとおり、「スライダ4a」の一部はケース1の外部に常時飛び出る態様にて窓穴1bに差し込まれるものであることが明らかであるから、相違点1は実質的な相違である。
(相違点2について)
甲1発明の「動刃体3のスライダ4bが差し込まれる開口部1c」について検討する。
スライダ4bがケース1に対してスライダ4bの一部を露出させるようにされているか否かについては、請求人が提出した口頭審理陳述要領書の上記第4の1.(3)で示したとおりである。
ただし、スライダ4bの一部がケース1から露出を果たしているのは、甲1発明の切断具のどの部分の働きによるのかを口頭審理で請求人に聴取したところでは、上記第4の1.(4)にて口頭審理調書に記したとおり、ケース左側開口と動刃体3が干渉することでスライダ4bの部分的な露出が果たされる関係にあるとされ、「開口部1c」がスライダ4bの部分的な露出を積極的に行っているものではない。
上記相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項は、あくまで「ケース」の「長穴部」が、「他方の鋏本体の操作部を部分的にケースから露出させつつ第一方向に案内」するとされているのであり、甲1発明で「長穴部」に対応する「開口部1c」は、スライダ4bの一部露出を主導して行うものではない以上、当該相違点2に係る本件特許発明1の構成を、甲1発明は備えていないというべきである。
よって、上記相違点2は実質的な相違点である。
(相違点3及び4について)
請求人は審判請求書の14?15ページにて、甲第1号証の係止突部2cが「操作部」に「形成」された「凸部」であり、甲第1号証の「握りケース1」の内部に形成された「窓穴1b」が、「該ケース内部に形成される」「第1のロック部」に当たるとの主張を行っている。
しかしながら、甲第1号証に記載された「係止突部2c」は、上記第5の1.(1)の【図1】に図示され、1.(1)イの【0007】に記載されているとおり、静刃体2の本体部2a側部に形成されているのであり、スライダ4aに係止突部2cは形成されているものではない。
また、本件特許発明の「第一のロック部」は、「第一の限界位置に位置する一方の鋏本体の第一方向での移動を規制可能」とするものであるが、他方で甲第1号証でスライド方向への移動を止める機構は、【0011】に記載されているとおり、窓穴1bに差し込まれたスライダ4aが窓穴1bの端部に当接するとともに、係止突部2cが窓穴1bの縁部に係止することで果たされるとしているのであり、ロックの態様は、凸部と凹部の嵌合とした事項を満足していないことが明らかである。
よって、上記相違点3及び4に係る相違は、実質的な相違である。
(相違点5について)
当該相違点5に関して、請求人は甲1発明の「静刃体2」の「スライダ4aを含む後部全体」が、本件特許発明1、2の操作部に相当すると主張(審判請求書11ページイ(ア)a参照)しているが、操作部は、刃部に「取り付けられる」ものであるから、静刃体2と一体の部分を含めて、後部全てが操作部に相当する旨の主張は失当というほかない。
よって、相違点5に係る相違は、実質的な相違である。

以上のことから、上記相違点1ないし5はいずれも実質的な相違であるから、甲1発明をもって、本件特許発明1が甲1に記載された発明であるということはできない。

また、本件特許発明2は、本件特許発明1を引用し、そのすべての発明特定事項を有する関係にあるため、同様の理由により、本件特許発明2が甲1に記載された発明であるということはできない。

2.無効理由2について
(1)甲第2号証の記載事項、甲2発明
甲第2号証には、図面と共に、以下の事項が記載されている。
なお、記載については、請求人の指摘する誤記(要領書5?6ページ参照)を踏まえて認定した。

ア(明細書4ページ下から2行?6ページ12行)
「第1図に示すように、金属製の板材により長四角筒状に形成した外側ケース1の基端部には、紐などの挿通孔2aを有する尻金2が嵌入され、ピン3により固定されている。
前記外側ケース1の前端開口部から該ケース1内に挿入される内側ケース4は、同じく金属板材により横断面がU字状に形成され、その基端部には第2図に示すように該内側ケース4を使用(突出)状態に係止するための係止手段としての板バネよりなる係止部材5がピン6により保持されている。この係止部材5は外側ケース1の底部に透設した係止孔1aに係止されるようになっており、内側ケース4を第2図において右方へ移動すると、係止部材5の斜面5aが係止孔1aから離脱され、内側ケース4が外側ケース1内に収納される。なお、外側ケース1から内側ケース4を取外す場合には、係止部材5の弾性力に抗して係止部5aを係止孔1aから離脱させればよい。
前記内側ケース4の先端部にはハサミ7が装着されている。このハサミ7は内側ケース4内に挿入された第一ハサミ片8と、該ハサミ片8に対し軸10により回動可能に連結された第二ハサミ片9とにより構成されている。さらに、前記第一ハサミ片8の基端部11に取り付けた案内ピン12は、内側ケース4の側壁に設けた案内用の長孔4a内に所定の範囲内で前後方向の往復動可能に挿入され、内側ケース4の前端上部に形成した係止部4cにより上方への移動が規制され、第一ハサミ片8が前後方向のみ往復動可能に挿入されている。
前記第一ハサミ片の基端部11と第二ハサミ片9の操作部13との間には、両ハサミ片8、9を開放方向に付勢する開放付勢バネ14が介在されている。」

イ(明細書6ページ12行?8ページ下から5行)
「又、前記操作部13の上部には親指を係止する指掛部15が一体的に形成され、その側面にはガイド溝15aが刻設されている。そして、前記第二ハサミ片9の指掛部15を第2図において付勢バネ14の弾力に抗して下方へ押圧することにより、両ハサミ8,9による切断作業が可能となる。
さらに、前記指掛部15を第2図において最下動位置へ移動した状態で、該指掛部15を第2図の後方(第3図右方)へ移動すると、外側ケース1の上部に形成したスリット1b、該スリット1bを形成する突条部1cに前記ガイド溝15aが係合された状態で移動され、内側ケース4及びハサミ片8、9が完全に収納位置に移動されると、前記指掛部15が外側ケース1の上面に形成した係合部としての係合穴1dから上方へ若干突出され、外側ケース1の突条部1cと係合穴1dの境界に形成された係止段部1eに指掛部15の前端縁15bが係止され、この状態で外側ケース1から内側ケース4及び両ハサミ片8,9の抜けが防止される。
反対に、第3図に示す収納状態において、指掛部15を親指により下方へ付勢バネ14の弾力に抗して押動すると、指掛部15のガイド溝15aが突条部1cに対応するので、この状態で指掛部15を前方(第3図左方向)へ押動すると、内側ケース4及び両ハサミ片8,9が同方向へ移動される。そして、内側ケース4に取着した係止部材5が外側ケース1の係止孔1aに係止されると、内側ケース4の移動が停止され、その後、さらに指掛部15を前方へ往動すると、案内ピン12が内側ケース4の長孔4aに沿って前方へ移動されるので、両ハサミ片8、9が内側ケース4から前方へ突出され使用状態となる。この状態で指掛部15を親指によりバネ14の弾力に抗して押動操作することにより切断作業が行われる。
このように本考案は、外側ケース1に対し内側ケース4を前後方向の往復動可能に装着し、該内側ケース4に対し第一及び第二のハサミ片8、9をさらに前後方向の往復動可能に装着したので、両ケース1、4を親指以外の4指により把持し、親指により前記指掛部15を操作することにより、切断作業を容易に行うことができるとともに、指掛部15を親指によりハサミの出し入れ操作をワンタッチで行うことができる。」









以上を総合すると、甲第2号証には次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されている。
(甲2発明)
「長四角筒状の金属製外側ケース1内に横断面U字状に形成された内側ケース4が挿入されたケース収納ハサミであって、
前記内側ケース4の先端にはハサミ7が装着されており、該ハサミ7は長手をなし先端に刃の部分を有する第一ハサミ片8と第二ハサミ片9とが軸10で回動可能に連結されており、
前記第一ハサミ片8の基端部11に設けられた案内ピン12は、内側ケース4の側壁に設けた案内用の長穴4a内を前後方向往復動可能となるよう挿入されており、
前記第二ハサミ片9の基端は操作部13とされ、該操作部13の上部には親指を係止する指掛部15が一体的に形成され、
前記指掛部15の側面には、ガイド溝15aが刻設され、
前記外側ケース1の上面には、前記外側ケース1に貫通形成された、先端側から順に狭い幅のスリット1b、該スリット1bより幅広の係合穴1dとして連接されるスリット1b及び係合穴1dを有すると共に、前記ガイド溝15aは該スリット1bを幅狭とするよう形成された突条部1cと係合し、
前記ハサミ7の第一ハサミ片8と第二ハサミ片9とは、第一ハサミ片8の基端部11と第二ハサミ片9の操作部13との間に、両ハサミ片8、9を開放方向に付勢する開放付勢バネ14が介在しており、
前記内側ケース4には、内側ケース4を突出状態に係止するための板バネよりなる係止部材5が内側ケース4内に設けたピン6により取着保持されており、内側ケース4を突出方向へ移動すると、係止部材5が外側ケース1の中程に設けられた係止孔1aに係止され、さらに前記指掛部15を前方に往動することで両ハサミ片8、9が内側ケース4の前方端から前方へ突出され内側ケース4の横断面U字状とされた開放上部から第二ハサミ片9の操作部15が拡開して飛び出ることにより使用状態となり、
前記指掛部15を最下動位置へ移動した状態で後方へ移動し、前記指掛部15の前端縁15bが外側ケース1の突条部1cと係合穴1dの境界に形成した係止段部1eに係止して、両ハサミ片8、9が完全に収納位置に移動される
ケース収納ハサミ。」

(2)対比
本件特許発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「長手をなし先端に刃の部分を有する第一ハサミ片8と第二ハサミ片9とが軸10で回動可能に連結され」た「ハサミ7」は、本件特許発明1の「長手をなす刃部であって、長手方向に先端と該先端とは反対側の基端とを有する刃部と」「を有する一対の鋏本体」に相当し、
以下、同様に、
「第一ハサミ片8の基端部11と第二ハサミ片9の操作部13との間」に「介在」する「両ハサミ片8、9を開放方向に付勢する開放付勢バネ14」は、「該一対の鋏本体」を「互いに離間させる方向に付勢する付勢部材」に、
「内側ケース4」は、「一対の鋏本体のそれぞれを第一方向でスライド可能に内装するケースであって、第一方向に第一端と該第一端とは反対側の第二端とを有するケース」に、
「第一ハサミ片8と第二ハサミ片9とが軸10で回動可能に連結され」ることは、「一対の鋏本体のそれぞれは、刃部と操作部との間の部分同士が枢結される」ことに、
「内側ケース4の前方端」は、「該ケースの第一端側に形成されるとともに第一方向で貫通する挿通口であって、一対の鋏本体のそれぞれの刃部を挿通可能な挿通口」に、
「内側ケース4の側壁に設けた案内用の長穴4a」は、「一方の鋏本体」を「ケース内で第一方向に案内する案内部」に、
「両ハサミ片8、9が内側ケース4の前方端から前方へ突出され」「使用状態となる」位置は、「各鋏本体の刃部全体がケースから進出する第一の限界位置」に、
「前記指掛部15の前端縁15bが外側ケース1の突条部1cと係合穴1dの境界に形成した係止段部1eに係止」する「両ハサミ片8、9が完全に収納」する位置は、「各鋏本体の刃部全体がケース内に退避する第二の限界位置」に、
「指掛部15」が形成された「操作部13」は、「他方の鋏本体の操作部」に、
「内側ケース4に設けた長穴4a」内に「前記第一ハサミ片8の基端部11に設けられた案内ピン12」が「挿入されて」いることは、「該ケース内部に形成される凸部又は凹部の何れか他方によって構成される」(L)点及び「第一の限界位置に位置する一方の鋏本体の操作部の凸部又は凹部の何れか一方と、前記第一のロック部を構成する凸部又は凹部の何れか他方とは、互いに嵌合可能に構成される」(M)点を除き、「第一の限界位置に位置する一方の鋏本体の第一方向での移動を規制可能な第一のロック部」に、
各々相当する。
そうすると、両者は以下の点で一致し、かつ、相違する。
(一致点)
「(A’)長手をなす刃部であって、長手方向に先端と該先端とは反対側の基端とを有する刃部を有する一対の鋏本体と、
(B’)該一対の鋏本体を互いに離間させる方向に付勢する付勢部材と、
(C)一対の鋏本体のそれぞれを第一方向でスライド可能に内装するケースであって、第一方向に第一端と該第一端とは反対側の第二端とを有するケースとを備え、
(D)一対の鋏本体のそれぞれは、刃部と基端部との間の部分同士が枢結されるとともに、各鋏本体の刃部全体がケースから進出する第一の限界位置と、各鋏本体の刃部全体がケース内に退避する第二の限界位置との間でスライド可能に構成され、
(E)ケースは、該ケースの第一端側に形成されるとともに第一方向で貫通する挿通口であって、一対の鋏本体のそれぞれの刃部を挿通可能な挿通口と、
(F’)一方の鋏本体をケース内で第一方向に案内する案内部と、
(L’)ケースは、第一の限界位置に位置する一方の鋏本体の第一方向での移動を規制可能な第一のロック部を有する
(N)刃部収納式鋏。」

(相違点)
1.本件特許発明1の「鋏本体」を形成する対となる部材は、どちらも「刃部」と「刃部の基端に取り付けられる操作部」とを有するとしているのに対して、甲2発明の「ハサミ7」を形成する「第一ハサミ片8」の基端には「取り付けられる操作部」相当の部分は見られず、「第二ハサミ片9」にのみ「操作部13」が取り付けられており、これに伴い、本件特許発明1の分説(B)の「付勢部材」で特定した「該一対の鋏本体のそれぞれの操作部を互いに離間させる」について、及び分説(F)の「一方の鋏本体の操作部をケース内で第一方向に案内する案内部」についても、第一ハサミ片8に操作部らしき取り付け部材がない点。
2.本件特許発明1の「ケース」は、分説(G)ないし(J)を同時に満たす「長穴部」と「導出部」とを、「連続」して有するのに対して、甲2発明の「内側ケース4」は、「ハサミ7」が「接離可能」となるとした分説(J)の一部のみ、「内側ケース4の横断面U字状とされた開放上部から第二ハサミ片10の操作部15が拡開して飛び出ることにより」なされはするものの、外側ケース1と内側ケース4とが互いに移動することで、ハサミ7のハサミ片9が外側ケース1の押さえがとれて接離可能とされるのであり、内側ケース4の開放上部の単体作用ではなく、「内側ケース4の横断面U字状とされた開放上部」は、それ自体で分説(I)の「露出」及び「案内」の機能を果たす箇所と、分説(J)の「接離可能」の機能を果たす箇所とを連続(H)して有しない点。
3.「第一のロック部」に関し、本件特許発明1では分説(K)ないし(M)の事項を共に有するのに対して、甲2発明の対応する「内側ケース4に設けられた長穴4a」の前縁部と「前記第一ハサミ片8の基端部11に設けられた案内ピン12」との連結は、長穴4aの前縁部で案内ピン12がそれ以上前方へ移動しないことで移動の規制を果たすとされ、構造が異なる点。

(3)判断
上記相違点のうち、相違点2-3はいずれもケースの構造に関する相違点であることから、これら相違点をまとめてまず検討する。
(相違点2-3について)
分説(J)について先ず検討する。甲2発明のハサミ収納ケースは、上述のとおり外側ケース1と内側ケース4とが摺動可能に組み合わせて構成されている関係上、ハサミ片9の操作部15が拡開して飛び出すための機構は、両ケース1及び4のスライド位置に依存することとなり、相違点2に係る本件特許発明1の「導出部」を「長穴部と連続」するとした構成と、甲2発明が採用したハサミ片9の操作部15を飛び出させる構成とは、明らかに異なり、実質同一とは到底認められない。
また、分説(I)に係る本件特許発明1で採用されたケースの長穴部に関する構成は、該長穴部の働きにより他方の鋏の操作部のケース外への露出を部分的に保つものであるところ、甲2発明の内側ケース4は最終的に指掛部15が外側ケース1に飛び出すに足る開放上部とされているに留まり、指掛部15の露出を部分的に保つ役割及び前後方向への案内をする役割は、内側ケース4ではなく外側ケース1のスリット1bが果たしていると理解できる。そうすると、分説(I)に係る相違もまた実質同一とはいえないことが明らかである。
加えて、相違点3に係る本件特許発明1で採用されたケースによる鋏の自由な往復動を規制する第一のロック部についてみても、分説L及びMの記載で明らかなように、鋏本体とケース内部とで互いに凹部と凸部をなし、これらが嵌合することによりその規制が「ロック」の態様をするものであるところ、甲2発明のハサミの移動規制は、第一ハサミ片の案内ピン12が内側ケース4の長穴4aの前縁部でそれ以上前進しないストッパとして実現されているに留まり、規制の態様も構造も両者は明らかに相違すると認められる。

そうすると、相違点1を検討するまでもなく、本件特許発明1と甲2発明とは上記相違点2-3について実質的に相違するため、甲2発明をもって、本件特許発明1が甲2に記載された発明であるということはできない。

また、本件特許発明2は、本件特許発明1を引用し、そのすべての発明特定事項を有する関係にあるため、同様の理由により、本件特許発明2が甲2に記載された発明であるということはできない。


3.無効理由3について
(1)甲第3号証の記載事項、甲3発明
甲第3号証には、図面と共に、以下の事項が記載されている。

ア(明細書9ページ13行?10ページ16行)
「第7図、第8図は安全はさみ1の実施例3を示す。小型の収納ケース3は一方に刃先部5を突出可能に案内長溝23にはさみの支点に設けた係合軸24を嵌挿した案内手段15を介して前後に押動される滑り止め10を設けた一側のハンドル6bは実施例1に示す長手側のハンドル6aではなく柄の短い方のハンドル6bの後端部25を収納ケース3の一側の内側面16に拘束させた収納位置Iから押動することによって収納ケース3の一側の側面7に設けた開口部8により拘束を解放され弾撥的に構成されていた支点ばね18を介して刃先部の動刃Kdを開角させた使用位置IIおいて係脱自在の係止手段(図示省略)を介してセットされた上、同ハンドル6bを抑えて切断作用を行うことができる。一方、長手のハンドル6a柄ははさみの前後移動に際し、収納ケース3の他側の内側部に沿って移動できるよう案内ピン26をハンドル末端部37の内側面に当接して案内させると共に、別に設けた係脱自在の係止手段(図示省略)によって収納位置Iにおいて係止できるように収納ケース3に設け刃先部5の静刃KSを案内し突出させる。」






以上を総合すると、甲第3号証には、次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されている。
(甲3発明)
「長手をなす静刃KSと動刃Kdとが支点に設けた係合軸24で枢着されて一対とされるはさみと、
前記一対のはさみの基端側ハンドル6a、6b間に設けられ、該各々のハンドル同士を互いに離間させる方向に付勢する支点ばね18と、
前記はさみを収納し、はさみの収納位置Iと使用位置IIの間をスライド可能に前記はさみを内装する収納ケース3であって、使用位置II方向である先端部に開口部が設けられ、該開口部から刃先部5のみを突設することではさみとして使用する収納ケース3とを備え、
前記動刃Kdのハンドル6bにはすべり止め10が設けられ、
前記収納ケース3の動刃Kd側には、動刃Kdのハンドル6bを収納ケース3の外方に開放させる開口部8が設けられ、
前記収納位置Iでは、前記動刃Kdのハンドル6bの後端部25は、開口部19より後ろ側の収納ケース3の一側の内側面16に拘束させておき、
前記はさみの係合軸24は、前記収納ケース3の側面に前後方向に設けられた案内長溝23に嵌挿され、
前記動刃Kdのハンドル6bを前進させハンドル6b後端部25の拘束を外し、係脱自在の係止手段を介して前記使用位置IIではさみの前進をセットした後、該ハンドル6bを抑えると切断が可能となり、
前記ハンドル6bの前進操作に伴い、前記収納ケース3内に収納された静刃KS側のハンドル6aは、該収納ケース3の開口部3と反対側の内側部に沿って移動できるよう、収納位置I及び使用位置IIの各々に対応する前後2つの案内ピン26を収納ケース3内に設け、ハンドル6a末端部37の内側面に当接させるようにし、
前記収納ケース3には、前記収納位置Iでハンドル6aの柄を係止する係止手段が設けられている
安全はさみ。」

(2)対比
本件特許発明1と甲3発明とを対比する。
甲3発明の「長手をなす静刃KSと動刃Kdとが支点に設けた係合軸24で枢着されて一対とされるはさみ」は、本件特許発明1の「長手をなす刃部であって、長手方向に先端と該先端とは反対側の基端とを有する刃部と、該刃部の基端」「とを有する一対の鋏本体」に相当し、

以下、同様に、
「支点ばね18」は、「該一対の鋏本体のそれぞれ」「を互いに離間させる方向に付勢する付勢部材」に、
「前記はさみを収納し、はさみの収納位置Iと使用位置IIの間をスライド可能に前記はさみを内装する収納ケース3」は、「一対の鋏本体のそれぞれを第一方向でスライド可能に内装するケースであって、第一方向に第一端と該第一端とは反対側の第二端とを有するケース」に、
「長手をなす静刃KSと動刃Kdとが支点に設けた係合軸24で枢着され」は、「一対の鋏本体のそれぞれ」「同士が枢結される」に、
「使用位置II」は、「各鋏本体の刃部全体がケースから進出する第一の限界位置」に、
「はさみの収納位置I」は、「各鋏本体の刃部全体がケース内に退避する第二の限界位置」に、
「前記動刃Kdのハンドル6b」の「すべり止め10」は、「他方の鋏本体の操作部」に、
「収納ケース3」の「開口部」は、「ケースの第一端側に形成されるとともに第一方向で貫通する挿通口であって、一対の鋏本体のそれぞれの刃部を挿通可能な挿通口」に、
「収納位置I及び使用位置IIの各々に対応する前後2つの案内ピン26」は、「一方の鋏本体」「をケース内で第一方向に案内する案内部」に、
「使用位置IIで」「動刃Kdのハンドル6bを収納ケース3の外方に開放させる開口部8」は、「ケース」が有する「第二方向に貫通する導出部」であり「第一の限界位置に配置された他方の鋏本体の操作部を一方の鋏本体」「に対して接離可能に」する「導出部」に、
「使用位置IIではさみの前進をセット」する「係脱自在の係止手段」は、「第一の限界位置に位置する一方の鋏本体の第一方向での移動を規制可能な第一のロック部」に、
各々相当する。
そうすると、両者は以下の点で一致し、かつ、相違する。
(一致点)
「(A’)長手をなす刃部であって、長手方向に先端と該先端とは反対側の基端とを有する刃部と、該刃部の基端とを有する一対の鋏本体と、
(B’)該一対の鋏本体のそれぞれを互いに離間させる方向に付勢する付勢部材と、
(C)一対の鋏本体のそれぞれを第一方向でスライド可能に内装するケースであって、第一方向に第一端と該第一端とは反対側の第二端とを有するケースとを備え、
(D’)一対の鋏本体のそれぞれ同士が枢結されるとともに、各鋏本体の刃部全体がケースから進出する第一の限界位置と、各鋏本体の刃部全体がケース内に退避する第二の限界位置との間でスライド可能に構成され、
(E)ケースは、該ケースの第一端側に形成されるとともに第一方向で貫通する挿通口であって、一対の鋏本体のそれぞれの刃部を挿通可能な挿通口と、
(F’)一方の鋏本体をケース内で第一方向に案内する案内部と、
(H’)第二方向で貫通する導出部とを有し、
(J’)導出部は、第一の限界位置に配置された他方の鋏本体の操作部を一方の鋏本体に対して接離可能にし、
(L’)ケースは、第一の限界位置に位置する一方の鋏本体の第一方向での移動を規制可能な第一のロック部を有する
刃部収納式鋏。」

(相違点)
1.一対の鋏本体を形成する刃部の基端に関し、本件特許発明1では一対の鋏本体をなす刃部それぞれの基端には、「取り付けられ」る「操作部」を有するとしているのに対し、甲3発明の「一対とされるはさみ」を形成する静刃KSと動刃Kdの基端側のハンドル6a、6bには、動刃Kd側のハンドル6bにのみ「すべり止め10」が設けられており、これに伴い、(B)、(D)、(J)及び(F)の「操作部」についても対応する部材が存在しない点。
2.本件特許発明1の「ケース」には「長穴部」(G)及び(I)を有するのに対し、甲3発明の収納ケース3には長穴部に相当する部分がなく、これに伴い(H)で「該長穴部と連続する」との事項も有さない点。
3.「第一のロック部」に関し、本件特許発明1では「一方の鋏本体の操作部には、凸部又は凹部の何れか一方が形成され」るとの事項(K)を伴いつつ、「ケース」は「該ケース内部に形成される凸部又は凹部の何れか他方によって構成される」(L)及び「第一の限界位置に位置する一方の鋏本体の操作部の凸部又は凹部の何れか一方と、前記第一のロック部を構成する凸部又は凹部の何れか他方とは、互いに嵌合可能に構成される」(M)との事項をも有するとしているのに対し、甲3発明の対応する「係脱自在の係止手段」はかかる事項を有さず、かつ、静刃KSのハンドル6aには凸部も凹部も有さない点。

(3)判断
上記相違点について検討する。
請求人は、審判請求書及び要領書並びに口頭審理調書記載事項で、甲3発明との間で生じる相違点は、いずれも甲第1号証あるいは甲第2号証に記載された公知の技術的事項にすぎないため、当業者がこれら甲3発明、甲第1号証または甲第2号証に記載の技術的事項により、本件特許発明1及び2は当業者が容易に想到し得た旨主張するが、上記1.(3)及び2.(3)の判断で示したとおり、少なくとも相違点2及び3を充足しない関係にあるから、これら甲第1号証ないし3号証に基づいて、当業者が本件特許発明1ないし2を容易に想到し得たとすることができないことは明らかである。
よって、他の相違点を検討するまでもなく、本件特許発明1及び2は、甲3発明及び甲第1号証並びに甲第2号証に記載した事項に基づいて、当業者が容易に発明できたとすることはできない。

4.まとめ
以上のとおりであるから、無効理由1ないし3はいずれも成り立たない。


第6 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する理由及び証拠方法によっては本件特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により,請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-03-28 
結審通知日 2019-04-01 
審決日 2019-05-07 
出願番号 特願2013-231982(P2013-231982)
審決分類 P 1 113・ 121- Y (B26B)
P 1 113・ 113- Y (B26B)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 刈間 宏信
特許庁審判官 西村 泰英
中川 隆司
登録日 2014-11-14 
登録番号 特許第5647324号(P5647324)
発明の名称 刃部収納式鋏  
代理人 白木 裕一  
代理人 宮澤 岳志  
代理人 赤澤 一博  
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