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審決分類 |
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 G01T 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G01T 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01T |
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管理番号 | 1352906 |
審判番号 | 不服2018-7267 |
総通号数 | 236 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-08-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-05-29 |
確定日 | 2019-07-09 |
事件の表示 | 特願2015-526558「エラストマ後方散乱シールドを有するデジタルX線検出器アセンブリ」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 2月13日国際公開、WO2014/025543、平成27年11月12日国内公表、特表2015-532711、請求項の数(18)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2013年(平成25年)7月25日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2012年8月8日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。 平成28年 7月15日 :手続補正書 平成29年 5月24日付け:拒絶理由通知書 平成29年 8月29日 :意見書、手続補正書 平成30年 1月23日付け:拒絶査定(同年1月30日送達) 平成30年 5月29日 :審判請求書 平成31年 1月28日付け:拒絶理由通知書 平成31年 4月24日 :意見書、手続補正書 第2 原査定の概要 原査定は、請求項1-5、8-10について引用文献1、2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、及び、請求項6、7、11-18について引用文献1-3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。 <引用文献等一覧> 1.特開2006-91016号公報 2.特開2006-38974号公報 3.米国特許出願公開第2010/0158197号明細書 第3 本願発明 本願の請求項1-18に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明18」という。)は、平成31年4月24日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-18に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1、11、17は以下のとおりである。 「 【請求項1】 外側アセンブリ(52)と、前記外側アセンブリ(52)内に配された検出器アセンブリとを有する可搬式デジタルX線検出器であって、 前記検出器アセンブリは、 放射線エネルギーを光に変換するように構成されたシンチレータ、および前記シンチレータからの前記光を検出するように構成された1つ以上の検出器要素を含む検出器アレイを含む、撮像素子(70)と、 少なくとも1つの印刷回路基板に実装され、データの取得中および読出中に前記撮像素子(70)の動作を制御するように構成された電子回路(76)と、 前記撮像素子(70)と前記電子回路(76)との間に配され、X線遮蔽特性を有する少なくとも1つの金属および弾性特性を有する少なくとも1つの高分子を含むエラストマアセンブリ(72)であって、X線照射中に前記撮像素子(70)を通過するまたは前記外側アセンブリ(52)の一部から離れる後方散乱したX線を吸収するとともに、前記撮像素子を前記電子回路から熱的に絶縁するように構成されるエラストマアセンブリ(72)と、 を有する、可搬式デジタルX線検出器(22)。」 「 【請求項11】 可搬式X線検出器(22)を製造する方法であって、 外側アセンブリ(52)を用意するステップと、 前記外側アセンブリ(52)内に、放射線エネルギーを光に変換するように構成されたシンチレータと前記シンチレータからの前記光を検出するように構成された1つ以上の検出器要素を有する検出器アレイとを含む撮像素子を配するステップと、 少なくとも1つの印刷回路基板に実装され、データの取得中および読出中に前記撮像素子(70)の動作を制御するように構成された電子回路(76)を用意するステップと、 前記撮像素子(70)と前記電子回路(76)との間に、X線照射中に前記撮像素子(70)を通過するまたは前記外側アセンブリ(52)の一部から離れる後方散乱したX線を吸収する特性を有する少なくとも1つの金属を含むエラストマアセンブリ(72)を配するステップと、 前記エラストマアセンブリと前記電子回路との間にヒートスプレッダ(74)を配するステップと、 を含む方法。」 「 【請求項17】 外側アセンブリ(52)と前記外側アセンブリ(52)内に配された検出器アセンブリとを有する可搬式デジタルX線検出器であって、 前記検出器アセンブリは、 放射線エネルギーを光に変換するように構成されたシンチレータ、および前記シンチレータからの前記光を検出するように構成された1つ以上の検出器要素を含む検出器アレイを含む、撮像素子(70)と、 少なくとも1つの印刷回路基板に実装され、データの取得中および読出中に前記撮像素子(70)の動作を制御するように構成された電子回路(76)と、 前記撮像素子(70)と前記電子回路(76)との間に配され、X線照射中に前記撮像素子(70)を通過するまたは前記外側アセンブリ(52)の一部から離れる後方散乱したX線を吸収する特性を有する少なくとも1つの金属を含むエラストマアセンブリ(72)と、 前記エラストマアセンブリ(72)と前記電子回路(76)との間に配され、前記外側アセンブリ(52)の幅に沿って熱を拡散させるように構成されるヒートスプレッダ(74)と、 を有する、可搬式デジタルX線検出器(22)。」 なお、本願発明2-10、12-16、18の概要は以下のとおりである。 本願発明2-10は、本願発明1を減縮した発明である。 本願発明12-16は、本願発明11を減縮した発明である。 本願発明18は、本願発明17を減縮した発明である。 第4 引用文献、引用発明等 1 引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【請求項1】 放射線エネルギーを光に変換するように構成されたシンチレータ(58)と、 前記シンチレータ(58)からの光を検出する複数の検出器素子(62)を有する検出器アレイ(60)と、 データ収集及びデータ読取り中に前記検出器アレイを制御する複数の電子構成部品を有する制御盤(72)と、 前記検出器アレイ(60)と制御盤(72)との間に配置され、少なくとも部分的に放射線吸収材料(78)で形成されたパネル支持体(70)と、 を含むX線検出器システム(30)。」 「【請求項9】 前記シンチレータ(58)、検出器アレイ(60)、制御盤(72)及びパネル支持体(70)を収納するカバー(54、56)をさらに含み、前記カバー(54、56)が、その可搬性を可能にするハンドル(50)を有する、請求項1記載のX線検出器システム(30)。」 「【0011】 したがって、1つの態様によると、本発明は、放射線検出器パネル支持体を含む。パネル支持体は、放射線検出器の構成部品を構造的に支持するのに十分な複合材料で構成された本体を有する。パネル支持体はまた、本体内に散在させた放射線吸収材料を有する。」 「【0021】 次に図3を参照すると、本発明を組込んだ可搬式フラットパネルX線検出器30を斜視図で示す。検出器30は、X線入射時に光を放出するシンチレータによる光の照射によりイメージング被検体を通るX線の減弱度を測定する間接検出型半導体デジタル検出器が好ましい。検出器30は、軽量で耐久性がある複合材料で形成したカバー48を含む。カバー内にハンドル50を組込んで、検出器の可搬性を支援する。図示するように、検出器30は、固定テザーなしで構成することができる。この点において、検出器は、使用中に読取り電子機器に接続されるテザー(図示せず)に結合することができる。未使用時には、検出器は、テザーから容易に取外し、イメージング・システムから離して保管することができる。カバーの上部は、検出器のシンチレータ層の表面寸法を視覚的に定めるテンプレート52を含む。テンプレート52は、データ収集のための検出器の位置決めの際にユーザを視覚的に支援するように設計される。 【0022】 本発明は特に間接検出型デジタル検出器に適用可能であるが、本発明はまた、直接検出型デジタル検出器にも実施することができる。直接検出型デジタル検出器は、薄膜トランジスタ・アレイに結合した非晶質セレン又は同様な材料の光伝導体の層を使用する。セレン層におけるX線相互作用は、電子(すなわち正孔)を放出し、この電子を用いて信号を直接形成する。多くの場合、セレン層にわたって電場を形成するように電極を用いて電子の横方向の拡大を最小限にして、空間分解能を保持するようにする。セレンに加えて、ヨウ化水銀、テルル化カドミウム及びヨウ化鉛を用いることができる。直接検出型デジタル検出器は後方散乱を受けやすい状態にあるので、本発明は直接検出型デジタル検出器に適用可能であると思われる。 【0023】 次に図4を参照すると、検出器30の内部構成を分解図で示す。検出器30は、バックカバー56と共にその内部構成部品のためのシェル又はエンクロージャを形成する上部カバー54を含む。両カバー54、56は、例えば300ポンドの荷重に曝されたときに検出器の構成部品を破砕から保護するのに十分な複合材料で形成するのが好ましい。しかしながら、カバーはマグネシウムなど他の材料で製作することができることに留意されたい。加えて、カバー54及び56は、緩衝装置、発泡挿入体又は他の衝撃吸収材料で構成して、落下したときの検出器構成部品の破砕を抑制することができる。組立て時に、上部カバー54は、検出器を床面上に配置し、取付け対象物を支持することができるような方法で組立てられる。この点において、上部カバー54は、荷重を受けたときにたわみが最小になるように設計される。 【0024】 組立てられると、上部カバー54及びバックカバー56は、まとまってハンドル50を形成する。ハンドルは検出器の可搬性を支援する。加えて、検出器は、データ収集及び読取り中に検出器をスキャナに接続するのに用いるテザー(図示せず)から迅速に取外されるように構成される。従って、検出器30は、互いに離れた複数のスキャン・ステーションに又は該スキャン・ステーションから移動させることができる。このことは、特に緊急治療室及び他のトリアージ施設に有利である。さらに、検出器の可搬性及び着脱性は、図1に示す可動式X線イメージング・システムような可動式X線イメージング・システムの可動性をさらに増強する。しかしながら、検出器は、スキャナに固定的に接続することもできることを理解されたい。 【0025】 検出器30はさらに、入射X線又はガンマ線を可視光に変換するように設計したシンチレータ層58を含む。CsI又は他のシンチレーション材料で製作することができるシンチレータ層58は、受信したX線の数及びエネルギーに比例した光を照射するように設計される。従って、多くのX線が受信されたか又は受信したX線のエネルギーレベルが高いかのいずれかであるそれらシンチレータ層58の領域では光の照射はより高くなることになる。被検体の組成がX線管によって投射したX線を減弱することになるので、シンチレータ層上に衝突するX線のエネルギーレベルは、シンチレータ層にわたって均一でないことになる。光照射のこの変動を用いて、再構成画像のコントラストを捉えるようにする。 【0026】 シンチレータ層58によって照射された光は、検出器素子アレイ60の検出器素子により検出される。各検出器素子62は、再構成画像の画素すなわちピクセルに対応する。各検出器素子62は、感光又は光伝導領域64と電子機器領域66とを含む。X線への曝露中に、感光領域64で検出された光に比例して該感光領域64内に電子が放出される。電子機器領域66は、感光領域によって蓄積された電荷を蓄えるキャパシタ(図示せず)を含む。曝露後に、電子機器領域66の薄膜トランジスタ(図示せず)は、キャパシタをX線スキャナの読取り電子機器に接続するためにバイアスをかけられる。一般的に、マルチプレクサ(図示せず)を用いて、順次ラスタ方式で別個の検出器素子の読取りを制御する。この点において、各検出器素子の出力は、後続の画像再構成のデジタル化のために順次デジタイザに入力される。 【0027】 検出器素子62の薄膜トランジスタは、ガラス基板68によって支持される。基板68にエッチングしたリード線(図示せず)は、検出器素子の電気出力を薄膜トランジスタに送りかつ該薄膜トランジスタにバイアス電圧を印加するために用いられる。ガラス基板は一般的に、非常に薄くかつ壊れやすい。この点において、上述のように、上部カバー及びバックカバー54及び56は、ガラス基板の破砕防止に役立つように衝撃吸収材料で設計される。加えて、検出器30は、例えば平均的体格の成人男性の足のイメージングのようなイメージング中に比較的大きな荷重を支持するように用いる場合があるので、さらに検出器の応力を低減するように上部カバー54を設計して、ガラス基板の破砕をさらに防止する。 【0028】 ガラス基板68は、検出器パネル支持体70によって支持される。パネル支持体70は、基板68を支持するように設計されるだけでなく、X線変換及び光検出構成部品を電子機器72から分離するためにも用いられる。以下でより詳細に説明するように、パネル支持体70は、構造的支持材料に加えて放射線吸収材料(X線吸収材料)を含むように構成される。さらに説明すると、放射線吸収材料による検出器の厚さ及び重量の増加は、あるとしても無視し得る程度である。 【0029】 放射線吸収材料をパネル支持体内に組み込むことにより、後方散乱したX線の検出を低減又は排除する。つまり、放射線吸収材料は、シンチレータ層、検出器素子アレイ及びガラス基板を透過するX線、並びに検出器のバックカバーから偏向するX線を吸収する。この点において、電子機器72は撮像されない。 【0030】 1つの実施形態では、電子機器72はL字形状を有し、検出器の処理及び論理制御電子機器を支持するように配置される。電子機器は、検出器の動作及び診断を監視するLEDを含むのが好ましい。マザーボードはまた、検出器の温度及び被検体の温度に関するフィードバックを行うための温度センサを含むことができる。電子機器はまた、検出器の加速度を検出し、それに応じてデータを記憶するように設計した加速度計を支持することができる。この点において、加速度計を用いて、検出器の加速度が飛躍的に増加したとき、すなわち落下したときのデータ及び時間を記録することができる。電子機器はまた、フラッシュ記憶装置を含む様々な記憶装置を含むことができる。無線の実施では、電子機器は、データをX線スキャナに無線で送信するためのアンテナ及びトランシーバを含むことができる。加えて、電子機器は、検出器電子機器に電力を供給するためのバッテリ又は他のDC電源を含むことができる。電子機器は、パネル支持体及びバックカバー56によって支持される。」 「【0033】 従って、本発明はまた、放射線吸収材料を組込んだ検出器パネル支持体の製造方法を対象とする。パネル支持体は、それに限定されないが、化学気相蒸着、射出成形などを含む多数の公知の製作法の1つを用いて構成することができる。例えば、再び図5を参照すると、非X線吸収材料の単一の構造体を機械加工して、単一の構造体を貫通して延びる平面チャネルを形成することができる。平面チャネルは次に、パネル支持体に放射線吸収特性をもたらす放射線吸収材料の粉末又は封止剤で充填することができる。別の考えられる方法では、化学気相蒸着及び同様の原理を用いて、非放射線吸収性構造的支持材料の層の表面上に放射線吸収材料の層を蒸着することができる。放射線吸収材料の層が非放射線吸収材料の層上に蒸着されると、非放射線吸収材料の別の層で、鉛、硫酸バリウム、タングステン又は他の放射線吸収材料の層を密封することができる。 【0034】 さらに、パネル支持体は、別個の放射線吸収層なしで構成されるが、放射線吸収粒子をパネル支持体全体にわたって均一に配置するような方法で構成することができると考えられる。例示的な構成を、図6に示す。図示するように、パネル支持体本体70(a)は、その中に放射線吸収粒子78(a)が混合された非X線吸収材料76(a)で主に形成される。このような構造は、積層又は層状構成の利点が劣るが、効率的に製作することができる。具体的には、タングステンなどの放射線吸収材料の粉末は、検出器構成部品を構造的に支持するように設計した複合材料の粉末と混合することができる。混合処理中に、放射線吸収粒子と非放射線吸収粒子とが混合される。混合処理は、放射線吸収材料の分布が混合物全体にわたって均一になるように実行するのが好ましい。混合物は次に、硬化又は他の方法で単一の構造体にされる。構造体は、硬化させた後に従来の機械加工法を用いて成形するか、又は硬化処理中に成形することができる。例えば、混合物を液状化させ、鋳型内に注入して、パネル支持体の所望の形状を形成することができる。乾燥後、鋳型を除去して、入射X線を吸収することが可能なX線検出器パネル支持体を得ることができる。」 「【0038】 X線検出器システムもまた提示され、本X線検出器システムは、放射線エネルギーを光に変換するように構成されたシンチレータと、シンチレータからの光を検出する複数の検出器素子を有する検出器アレイとを含む。制御盤は、データ収集及びデータ読取り中に検出器アレイを制御する複数の電子構成部品を有するものとして設けられる。本X線検出器システムはさらに、検出器アレイと制御盤との間に配置されたパネル支持体を有する。パネル支持体は、少なくとも部分的に放射線吸収材料で形成される。」 図4の記載から、検出器素子アレイ60と電子機器72との間に配置された検出器支持体70が見て取れる。 したがって、上記引用文献1には次の発明が記載されていると認められる。 「シンチレータ層(58)、検出器素子アレイ(60)、電子機器(72)及び検出器パネル支持体(70)を収納するカバー(54、56)を含み、 入射X線又はガンマ線を可視光に変換するように設計したシンチレータ層(58)を含み、 シンチレータ層(58)からの光を検出する複数の検出器素子を有する検出器素子アレイ(60)とを含み、 データ収集及びデータ読取り中に検出器素子アレイを制御する複数の電子構成部品を有する電子機器(72)が配置され、 検出器素子アレイ(60)と電子機器(72)との間に配置された検出器パネル支持体(70)とを含み、 検出器パネル支持体(70)は、パネル支持体本体(70(a))を有し、 パネル支持体本体(70(a))は、その中にタングステンなどの放射線吸収粒子(78(a))が混合された非X線吸収材料(76(a))で主に形成され、 後方散乱したX線の検出を低減又は排除する、 可搬式フラットパネルX線検出器(30)。」(以下「引用発明1A」という。) 「引用発明1Aを製造する方法。」(以下「引用発明1B」という。) 2 引用文献2について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0016】 図2に示す複合材料は、樹脂材料にタングステン粉末を分散し、全体の比重を例えば3.5としたものである。この複合材料はタングステンの厚さ0.1mm分の粉末を樹脂材料に分散したものであり、図2から鉛当量0.13mmを満足する複合材料の厚さは0.5mmである。このタングステン粉末を樹脂材料に分散した複合材料により、鉛を使用せず、かつ、鉛と同等のX線遮蔽・後方散乱防止機能を得ることができる。従って、かかる複合材料を用いてカセッテを構成することで、鉛を用いずに、鉛と同等のX線遮蔽・後方散乱防止効果を得ることができる。」 「【0024】 図4の医療用カセッテ2は、被写体側に位置し被写体を介してX線が照射される矩形平面状のフロント部材21と、フロント部材21と対向するように位置する矩形平面状のバック部材22と、を備える。フロント部材21は回動部26を中心にバック部材22に対し相対的に回動可能に構成されている。 【0025】 フロント部材21とバック部材22とから形成される内部空間内に、被写体を透過したX線画像を記録する矩形状のX線撮影用フィルム20が収容される。バック部材22とフレーム部材23とから構成される空間内にクッション材として弾性部材24が収容されており、この弾性部材24の上に増感スクリーン25が載置され、増感スクリーン25とフロント部材21との間にX線撮影用フィルム20が配置される。 【0026】 弾性部材24は、発泡樹脂等の発泡材に鉛を除く比重4g/cm^(3)以上の重金属を1種以上含んで構成されており、例えば、タングステン粉末を発泡樹脂に混練させ発泡させることでつくることができる。 【0027】 医療用カセッテ2を用いてX線撮影を行う前に、フロント部材21を回動部26を中心にして回動させて開放し、バック部材22側の弾性部材24の上に増感スクリーン25と未撮影のX線撮影用フィルム20をセットしてから、フロント部材21を回動させて内部を閉塞するが、このとき、弾性部材24がクッションの機能を果たし、増感スクリーン25とX線撮影用フィルム20が均一に密着できるようになっている。 【0028】 図4の医療用カセッテ2によれば、増感スクリーン25とX線撮影用フィルム20とを均一に密着するための弾性部材24が鉛を除く比重4g/cm^(3)以上の重金属を含むことで、従来よりもX線遮蔽効果を得ることができ、このため、カセッテ2を従来よりも薄く構成できる。また、カセッテを廃棄処分するときに、カセッテ2は鉛を使用してないので、特別な廃棄管理は不要となる。 【0029】 以上のように本発明を実施するための最良の形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。例えば、図3のカセッテ構造を用いて図3の記録媒体プレート10の代わりにフラットパネルデテクタ(FPD)を内部空間13内に収容するようにしてもよい。」 したがって、上記引用文献2には次の発明が記載されていると認められる。 「フロント部材21とバック部材22とフレーム部材23とから構成される空間内にクッション材として弾性部材24が収容されており、この弾性部材24の上に増感スクリーン25が載置され、増感スクリーン25とフロント部材21との間にX線撮影用フィルム20が配置され、 弾性部材24は、タングステン粉末を発泡樹脂に混練させ発泡させることでつくることができ、 弾性部材24がクッションの機能を果たし、増感スクリーン25とX線撮影用フィルム20が均一に密着できるようになっている医療用カセッテ2。」(以下「引用発明2」という。) 3 引用文献3について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。 引用文献3には、鉛遮蔽体2108(lead shield 2108)とASIC2114との間に、熱分解グラファイトシートからなる熱伝導部材2112(thermally conductive member 2112)を設け、当該熱伝導部材2112の面方向に熱を伝達させる技術的事項が記載されている(段落【0067】、図21)。 第5 対比、判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明1Aを対比すると、次のとおりである。 ア 引用発明1Aの「カバー(54、56)」は、本願発明1の「外側アセンブリ」に、引用発明1Aの「シンチレータ層(58)、検出器素子アレイ(60)、電子機器(72)及び検出器パネル支持体(70)」は、本願発明1の「検出器アセンブリ」に、引用発明1Aの「『カバー(54、56)』に『検出器素子アレイ(60)、電子機器(72)及び検出器パネル支持体(70)を収納する』」は、本願発明1の「外側アセンブリ(52)内に配された検出器アセンブリとを有する」に、引用発明1Aの「可搬式フラットパネルX線検出器(30)」は、本願発明1の「可搬式デジタルX線検出器」に、引用発明1Aの「入射X線又はガンマ線を可視光に変換するように設計したシンチレータ層(58)」は、本願発明1の「放射線エネルギーを光に変換するように構成されたシンチレータ」に、引用発明1Aの「シンチレータ層(58)からの光を検出する複数の検出器素子を有する検出器素子アレイ(60)」は、本願発明1の「前記シンチレータからの前記光を検出するように構成された1つ以上の検出器要素を含む検出器アレイ」に、引用発明1Aの「『シンチレータ層(58)』と『検出器素子アレイ(60)』」は、本願発明1の「撮像素子」に、引用発明1Aの「データ収集及びデータ読取り中に検出器素子アレイを制御する複数の電子構成部品を有する電子機器(72)」は、本願発明1の「データの取得中および読出中に前記撮像素子(70)の動作を制御するように構成された電子回路」に、それぞれ相当する。 イ 引用発明1Aの「検出器素子アレイ(60)と電子機器(72)との間に配置された検出器パネル支持体(70)とを含み、検出器パネル支持体(70)は、パネル支持体本体(70(a))を有し、パネル支持体本体(70(a))は、その中にタングステンなどの放射線吸収粒子(78(a))が混合された非X線吸収材料(76(a))で主に形成され、後方散乱したX線の検出を低減又は排除する」と、本願発明1の「前記撮像素子(70)と前記電子回路(76)との間に配され、X線遮蔽特性を有する少なくとも1つの金属および弾性特性を有する少なくとも1つの高分子を含むエラストマアセンブリ(72)であって、X線照射中に前記撮像素子(70)を通過するまたは前記外側アセンブリ(52)の一部から離れる後方散乱したX線を吸収するとともに、前記撮像素子を前記電子回路から熱的に絶縁するように構成されるエラストマアセンブリ(72)」とは、「前記撮像素子と前記電子回路との間に配され、X線遮蔽特性を有する少なくとも1つの金属を有するアセンブリであって、前記外側アセンブリの一部から離れる後方散乱したX線を吸収するように構成されるアセンブリ」の点で一致する。 ウ したがって、本願発明1と引用発明1Aとを対比すると、次のことがいえる。 (一致点) 「外側アセンブリと、前記外側アセンブリ内に配された検出器アセンブリとを有する可搬式デジタルX線検出器であって、 前記検出器アセンブリは、 放射線エネルギーを光に変換するように構成されたシンチレータ、および前記シンチレータからの前記光を検出するように構成された1つ以上の検出器要素を含む検出器アレイを含む、撮像素子と、 データの取得中および読出中に前記撮像素子の動作を制御するように構成された電子回路と、 前記撮像素子と前記電子回路との間に配され、X線遮蔽特性を有する少なくとも1つの金属を有するアセンブリであって、前記外側アセンブリの一部から離れる後方散乱したX線を吸収するように構成されるアセンブリと、 を有する、可搬式デジタルX線検出器。」 (相違点) (相違点1) 電子回路について、本願発明1は、少なくとも1つの印刷回路基板に実装されているのに対し、引用発明1Aは、そのようなものか明らかでない点。 (相違点2) X線遮蔽特性を有する少なくとも1つの金属を有するアセンブリについて、本願発明1は、弾性特性を有する少なくとも1つの高分子を含むエラストマアセンブリであって、前記撮像素子を前記電子回路から熱的に絶縁するように構成されるエラストマアセンブリであるのに対し、引用発明1Aは、そのようなものか明らかでない点。 (2)判断 事案に鑑みて、上記相違点2について先に検討する。 ア 引用発明2には、「タングステン粉末を発泡樹脂に混練させ発泡させることでつくることができ」る「弾性部材」の特定がされ、当該弾性部材は、フロント部材とバック部材とフレーム部材とから構成される空間内にクッション材として収容されており、当該弾性材料の上に、増感スクリーンが載置され、増感スクリーンとフロント部材との間にX線撮影用フィルムが配置されている。 そうすると、引用発明2の弾性部材の配置場所は、引用発明1Aの検出器素子アレイと電子機器との間に配置された検出器パネル支持体の配置場所とは異なり、配置場所だけを考慮した場合には、引用発明1Aの検出器パネル支持体に換えて引用発明2の弾性部材を採用することは考えにくい。 イ そこで、引用発明2の「弾性部材」の機能を検討すると、引用発明2の 弾性部材は、クッション材であり、クッションの機能を果たし、増感スクリーンとX線撮影用フィルムが均一に密着できるようにするものである。 引用文献1の【0023】には「両カバー54、56は、例えば300ポンドの荷重に曝されたときに検出器の構成部品を破砕から保護するのに十分な複合材料で形成するのが好ましい。しかしながら、カバーはマグネシウムなど他の材料で製作することができることに留意されたい。加えて、カバー54及び56は、緩衝装置、発泡挿入体又は他の衝撃吸収材料で構成して、落下したときの検出器構成部品の破砕を抑制することができる。」、【0027】には「上部カバー及びバックカバー54及び56は、ガラス基板の破砕防止に役立つように衝撃吸収材料で設計される。」と記載されているように、カバーが衝撃吸収の機能を備えており、カバーは、複合材料で形成し、マグネシウム、発泡挿入体又は他の衝撃吸収材料で構成することも示唆されている。 そうすると、衝撃吸収の点や引用発明2の弾性材料の上に、増感スクリーン、X線撮影用フィルムが配置されている点を考慮すれば、引用発明1Aのカバーのバックカバーに換えて引用発明2の弾性部材を採用することは容易に想到し得たことになるものの、機能から検討しても、引用発明1Aの検出器パネル支持体に換えて引用発明2の弾性部材を採用することは考えにくい。 したがって、本願発明1は、相違点1について検討するまでもなく、当業者であっても、引用発明1A及び引用発明2に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 2 本願発明2-10について 本願発明2-10は、請求項1を引用し本願発明1の発明特定事項の全てを含むものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1A及び引用発明2に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 3 本願発明11について (1)対比 本願発明11と引用発明1Bを対比すると、次のとおりである。 本願発明11は、概略、本願発明1の「エラストマアセンブリ」の「前記撮像素子を前記電子回路から熱的に絶縁するように構成される」との構成を除き、「前記エラストマアセンブリと前記電子回路との間にヒートスプレッダ」との特定事項を追加した可搬式デジタルX線検出器を製造する方法としたものであり、引用発明1Bは、引用発明1Aを製造する方法である。 そうすると、上記1(1)と同様に対比される。 (一致点) 「可搬式X線検出器を製造する方法であって、 外側アセンブリを用意するステップと、 前記外側アセンブリ内に、放射線エネルギーを光に変換するように構成されたシンチレータと前記シンチレータからの前記光を検出するように構成された1つ以上の検出器要素を有する検出器アレイとを含む撮像素子を配するステップと、 データの取得中および読出中に前記撮像素子の動作を制御するように構成された電子回路を用意するステップと、 前記撮像素子と前記電子回路との間に、前記外側アセンブリの一部から離れる後方散乱したX線を吸収する特性を有する少なくとも1つの金属を含むアセンブリを配するステップと、 を含む方法。」 (相違点) (相違点1) 電子回路について、本願発明11は、少なくとも1つの印刷回路基板に実装されているのに対し、引用発明1Bは、そのようなものか明らかでない点。 (相違点2) 本願発明11は、外側アセンブリの一部から離れる後方散乱したX線を吸収する特性を有する少なくとも1つの金属を含むエラストマアセンブリを配するステップを含むのに対し、引用発明1Bは、そのようなステップを含むのか明らかでない点。 (相違点3) 本願発明11は、エラストマアセンブリと電子回路との間にヒートスプレッダを配するステップを含むのに対し、引用発明1Bは、そのようなステップを含むのか明らかでない点。 (2)判断 事案に鑑みて、上記相違点2について先に検討する。 エラストマーとは「常温付近でゴム弾性を示す高分子物質の総称。合成ゴムが代表的。」(株式会社岩波書店 広辞苑第五版)を意味する用語であることから、本願発明11のエラストマアセンブリは、X線を吸収する特性を有する少なくとも1つの金属を含むだけではなく、常温付近でゴム弾性を示す高分子物質を含むものである。 そうすると、上記1(2)で検討したことと同様に、引用発明1Bの検出器パネル支持体に換えて引用発明2の弾性部材を採用することは考えにくい。 また、引用文献3の技術的事項は、熱伝導部材に関するものである。 したがって、本願発明1は、相違点1、3について検討するまでもなく、当業者であっても、引用発明1B、引用発明2及び引用文献3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものではあるとはいえない。 4 本願発明12-16について 本願発明12-16は、請求項11を引用し本願発明11の発明特定事項の全てを含むものであるから、本願発明11と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1B、引用発明2及び引用文献3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 5 本願発明17について (1)対比 本願発明17と引用発明1Aを対比すると、次のとおりである。 本願発明17は、概略、本願発明1の「エラストマアセンブリ」の「前記撮像素子を前記電子回路から熱的に絶縁するように構成される」との構成を除き、「前記エラストマアセンブリと前記電子回路との間にヒートスプレッダ」との特定事項を追加した可搬式デジタルX線検出器としたものである。 そうすると、上記1(1)と同様に対比される。 (一致点) 「外側アセンブリと前記外側アセンブリ内に配された検出器アセンブリとを有する可搬式デジタルX線検出器であって、 前記検出器アセンブリは、 放射線エネルギーを光に変換するように構成されたシンチレータ、および前記シンチレータからの前記光を検出するように構成された1つ以上の検出器要素を含む検出器アレイを含む、撮像素子と、 データの取得中および読出中に前記撮像素子の動作を制御するように構成された電子回路と、 前記撮像素子と前記電子回路との間に配され、前記外側アセンブリの一部から離れる後方散乱したX線を吸収する特性を有する少なくとも1つの金属を含むアセンブリと、 を有する、可搬式デジタルX線検出器。」 (相違点) (相違点1) 電子回路について、本願発明17は、少なくとも1つの印刷回路基板に実装されているのに対し、引用発明1Aは、そのようなものか明らかでない点。 (相違点2) 本願発明17は、外側アセンブリの一部から離れる後方散乱したX線を吸収する特性を有する少なくとも1つの金属を含むエラストマアセンブリを有するのに対し、引用発明1Aは、そのようなものを有するのか明らかでない点。 (相違点3) 本願発明17は、エラストマアセンブリと電子回路との間に配され、外側アセンブリの幅に沿って熱を拡散させるように構成されるヒートスプレッダを有するのに対し、引用発明1Aは、そのようなものを有するのか明らかでない点。 (2)判断 事案に鑑みて、上記相違点2について先に検討する。 エラストマーとは「常温付近でゴム弾性を示す高分子物質の総称。合成ゴムが代表的。」(株式会社岩波書店 広辞苑第五版)を意味する用語であることから、本願発明17のエラストマアセンブリは、X線を吸収する特性を有する少なくとも1つの金属を含むだけではなく、常温付近でゴム弾性を示す高分子物質を含むものである。 そうすると、上記1(2)で検討したことと同様に、引用発明1Aの検出器パネル支持体に換えて引用発明2の弾性部材を採用することは考えにくい。 また、引用文献3の技術的事項は、熱伝導部材に関するものである。 したがって、本願発明17は、相違点1、3について検討するまでもなく、当業者であっても、引用発明1A、引用発明2及び引用文献3の技術的事項に基づいて容易に発明できたものではあるとはいえない。 6 本願発明18について 本願発明18は、請求項17を引用し本願発明17の発明特定事項の全てを含むものであるから、本願発明17と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1A、引用発明2及び引用文献3の技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 第6 当審拒絶理由について 当審では、請求項6、7、11-18について発明が不明確である、請求項11、15-17について発明の詳細な説明に記載したものでない、及び、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項11、15-17に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない、との拒絶の理由を通知しているが、平成31年4月24日の手続補正により補正された結果、この拒絶の理由は解消した。 第7 むすび 以上のとおり、原査定の理由及び当審で通知した拒絶の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2019-06-27 |
出願番号 | 特願2015-526558(P2015-526558) |
審決分類 |
P
1
8・
536-
WY
(G01T)
P 1 8・ 537- WY (G01T) P 1 8・ 121- WY (G01T) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 右田 純生 |
特許庁審判長 |
西村 直史 |
特許庁審判官 |
森 竜介 野村 伸雄 |
発明の名称 | エラストマ後方散乱シールドを有するデジタルX線検出器アセンブリ |
代理人 | 小島 猛 |
代理人 | 澤木 亮一 |
代理人 | 荒川 聡志 |