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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06Q
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06Q
管理番号 1352952
審判番号 不服2018-6454  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-05-10 
確定日 2019-07-17 
事件の表示 特願2015- 6814「飲食の無料提供施設を用いたマーケティング方法およびマーケティングシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 7月25日出願公開、特開2016-133884、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年1月16日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年 2月19日付け:拒絶理由通知書
平成30年 3月16日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年 4月23日付け:拒絶査定
平成30年 5月10日 :審判請求書の提出
平成31年 2月28日付け:拒絶理由通知書(最後)
平成31年 3月 7日 :意見書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(平成30年4月23日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-7に係る発明は、以下の引用文献1-4に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2003-167976号公報
2.特表2009-512059号公報
3.特開平9-62822号公報
4.特開2000-130001号公報

第3 本願発明
本願請求項1-7に係る発明(以下、「本願発明1」-「本願発明7」という。)は、平成31年3月7日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-7に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
飲食の無料提供施設を用いたマーケティングシステムであって、無料提供施設は、少なくともカフェスペース、企業ブース、ステージおよび厨房を一体に備え、施設の出入口に設置された施設入場者カウンタと、企業ブースの出入口に設置された企業ブース入場者カウンタと、施設内に設けられた管理サーバと、カフェスペースの各テーブル、企業ブースおよび厨房にそれぞれ配置され、前記管理サーバによって制御される専用端末と、ステージに設置されたディスプレイと、施設内に配置されたスピーカーを有しており、施設入場者カウンタおよび企業ブース入場者カウンタによって、それぞれの入場者数がカウントされ、管理サーバを介して、カフェスペースのテーブル上の専用端末から不特定の入場者のアンケート回答を受け付け、該アンケート回答を条件として前記テーブル上の専用端末から厨房の専用端末に対して無料の飲食のオーダーを送信し、該オーダーを受信した厨房の専用端末に表示される前記オーダーに基づいて、該厨房で飲食品が調理され、該飲食品が前記アンケート回答を行った不特定の入場者のテーブルに提供されるようにした、マーケティングシステム。」

また、本願発明2-7の概要は以下のとおりである。

本願発明2-4は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明5-7は、本願発明1-3のシステムを用いた方法の発明である。

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は当審において付加したものである。

ア 「【0016】本実施の形態のイベント効果測定システムは、各種情報を記録可能な記録媒体2に、イベント来場者4の個人情報等を記録して、そのイベント来場者4に発行する発行装置6と、イベント会場8内の出展ブースP1,P2,P3…毎に設置可能であって、且つ、来場者毎に発行された記録媒体2から各種の情報を読み取ることによって、その出展ブースP1,P2,P3…を訪れたイベント来場者4の個人情報を読み取ることが可能な情報読取装置M1,M2,M3…と、この情報読取装置M1,M2,M3…を介して取得した個人情報を収集して、様々な分析を行なう(イベントを企画したことによる様々な効果を測定する)ことが可能な情報処理装置10とを備えて構成されている。」

イ 「【0022】上記発行装置6(登録部16)と情報処理装置10との間の信号の受け渡し方式としては、ケーブル、無線LAN、インターネット等の各種の通信網Pを介して行なわれる。また、図面上において、情報処理装置10は、イベント会場8内に設置しているが、他の場所に設置しておいても良い。なお、発行されるICカードが、必要とされる全ての個人情報を格納している場合等は、発行装置6(登録部16)と情報処理装置10との間は、接続されていなくても良い(個人情報を情報処理装置10に送信しない方式であっても良い)。
【0023】イベント会場8内にある出展ブースP1,P2,P3…には、来場者4が携行するICカードに記録されている個人情報を読み取る情報読取部(カードリーダ)22を具備し、前記情報処理装置10に接続された情報読取装置M1,M2,M3…が設置されている。カードリーダ22は、各ブースの入口や、各展示品の近傍に設置されており(例えば、製品群毎に複数箇所設置してあっても良い)、少なくとも各来場者の個人情報を読み取るようになっている。
【0024】なお、カードリーダの読取方法としては、例えばICカードを接触させて読み取る接触方式や、ICカードを接触させること無く読み取る非接触方式等が考えられるが、来場者の手間を省き、入場口付近での混雑を避けるためには、非接触方式を用いることが好ましい。
【0025】また、図示されていないが、イベント会場8の入場口にも、来場者4が通過する際に、各々が所持するICカードを読み取るカードリーダを設置して、実際の入場者数を正確にカウントするようにしておくのが好ましい。これは、例えば、ICカードをイベント会場8での受付前に、前以って取得しているイベント来場者4では、その個人情報を登録部16に登録したもののイベント当日に欠席する場合、或いは、当日受付はしたもののイベント会場8に入場すること無く帰宅又は帰社してしまう場合等が考えられるからである。このような場合でも、イベント来場者4が入場口を通過する際にICカードを読み取ることで、実際にイベント会場8に入場したイベント来場者数を正確に把握することが可能となる。
【0026】各出展ブースに設置された情報読取装置M1,M2,M3…のカードリーダ22によって読み取られたイベント来場者4の個人情報は、データ入出力部32、及び前記通信網Pを介して、情報処理装置10のデータ入出力部20に送信され、個人情報データベース18に収集される。なお、情報読取装置M1,M2,M3…に情報記録部24を設けておき、読み取った個人情報を各出展ブースで把握できるようにしておいても良い。」

ウ 「【0028】また、各情報読取装置M1,M2,M3…には、出展ブースP1,P2,P3…を来訪したイベント来場者4に対して、所定のアンケートを提示することが可能なアンケート提示部26を設けておくことが好ましい。このアンケート提示部26には、情報処理装置10のアンケート項目データベース28に予め登録されている各種のアンケート項目、或いは出展ブース毎に設置されている情報読取装置M1,M2,M3…の情報記録部24に、出展者が予め記録しておいたアンケート項目を提示することができるようになっている。すなわち、出展ブース毎に、効果を測定するに際して必要とされるアンケート項目を適宜選択することが可能となっている。
【0029】前記アンケート提示部26は、例えば、情報読取装置M1,M2,M3…と一体化したディスプレイ等によって構成されており、イベント来場者4が提示されたアンケート項目に回答できるように、情報読取装置M1,M2,M3…には、アンケート回答部34が設けられている。このアンケート回答部34は、例えば、前記ディスプレイ上に表示されるタッチパネル、或いはキーボード等を適用することが可能であり、イベント来場者4は、タッチパネル上のアイコンにタッチしたりキーボードを操作することによって、アンケート項目に回答することが可能となっている。なお、アンケート提示部26は、例えば、展示品毎や任意の展示品群に対応して設置しておくことで、製品毎に各種の分析を行なうことも可能となる。
【0030】そして、その回答結果は、個人情報と共にデータ入出力部32を介して情報処理装置10に送信され、この情報処理装置10のデータ入出力部20を介してアンケート結果データベース36に収集される。」

エ 「【0033】情報処理装置10のイベント効果測定部38では、上記した個人情報データベース18、及びアンケート結果データベース36に収集された各種データから必要なものを抽出して、そのイベントに関し各種の効果測定が行われる。」

オ 「【0038】そして、上記したイベント効果測定部38において、解析された結果(効果測定結果)は、データ出力部30から所定の形式で出力される。」

カ 「【0040】このような効果測定結果表によれば、各イベント参加者14にとっては自己の出展ブースを訪問した来場者の個人情報が多数得られるようになる。すなわち、従来では、イベント来場者は、各出展ブースで、個人情報を重複して記入するのを避ける傾向にありブース訪問者の一部の個人情報しか得られなかったが、個人情報を記録媒体で管理したことで、ブースを訪問した多数の個人情報が得られるようになる。」

キ 「【0042】一方、上記したような効果測定結果表をイベント参加者14に配布することでイベント参加者に対するサービスの向上が図れるようになり、これによって、企業等に、積極的に各種のイベントに参加させる機運を高めることが可能となる。」

上記キの記載から、引用文献1の「イベント参加者14」とは「企業等」であり、さらに、上記エ乃至カの記載から、引用文献1の「出展ブース」とは「イベント参加者14」つまり「企業等」の「出展ブース」であると認められる。

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「各種情報を記録可能な記録媒体2に、イベント来場者4の個人情報等を記録して、そのイベント来場者4に発行する発行装置6と、イベント会場8内の企業等の出展ブースP1,P2,P3…毎に設置可能であって、且つ、来場者毎に発行された記録媒体2から各種の情報を読み取ることによって、その企業等の出展ブースP1,P2,P3…を訪れたイベント来場者4の個人情報を読み取ることが可能な情報読取装置M1,M2,M3…と、この情報読取装置M1,M2,M3…を介して取得した個人情報を収集して、様々な分析を行なうことが可能なイベント会場8内に設置している情報処理装置10とを備えたイベント効果測定システムであって(【0016】【0028】【0040】【0042】)、
来場者4が携行するICカードに記録されている個人情報を読み取る情報読取部(カードリーダ)22は、各ブースの入口や、各展示品の近傍に設置されており(【0023】)、
イベント会場8の入場口にも、来場者4が通過する際に、各々が所持するICカードを読み取るカードリーダを設置して、実際の入場者数を正確にカウントするようにされており(【0025】)、
各出展ブースに設置された情報読取装置M1,M2,M3…のカードリーダ22によって読み取られたイベント来場者4の個人情報は、データ入出力部32、及び前記通信網Pを介して、情報処理装置10のデータ入出力部20に送信され、個人情報データベース18に収集され(【0026】)、
各情報読取装置M1,M2,M3…には、企業等の出展ブースP1,P2,P3…を来訪したイベント来場者4に対して、所定のアンケートを提示することが可能なアンケート提示部26が設けられており、このアンケート提示部26には、情報処理装置10のアンケート項目データベース28に予め登録されている各種のアンケート項目を提示することができるようになっており(【0028】)、
前記アンケート提示部26は、例えば、情報読取装置M1,M2,M3…と一体化したディスプレイ等によって構成されており、イベント来場者4が提示されたアンケート項目に回答できるように、情報読取装置M1,M2,M3…には、アンケート回答部34が設けられており(【0029】)、
その回答結果は、個人情報と共にデータ入出力部32を介して情報処理装置10に送信され、この情報処理装置10のデータ入出力部20を介してアンケート結果データベース36に収集される(【0030】)、
イベント効果測定システム。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2の【要約】及び段落【0004】【0019】の記載からみて、当該引用文献2には、「市場調査において多くの回答を得るために、質問への回答を条件に、回答者に無料の報酬(商品券、商品、食事等)を提供する」という事項が記載されていると認められる。

3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3の【要約】の記載からみて、当該引用文献3には、「出入口における通過人数を検知できる通過人数検知装置」が記載されていると認められる。

4.引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献4の段落【0002】【0018】の記載からみて、当該引用文献4には、「入場者数のカウントを行うターンスタイルゲート」が記載されていると認められる。

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)本願発明1と引用発明との対比
本願発明1を以下に示すA?Dに分節して検討する。

A
飲食の無料提供施設を用いたマーケティングシステムであって、無料提供施設は、少なくともカフェスペース、企業ブース、ステージおよび厨房を一体に備え、

B
施設の出入口に設置された施設入場者カウンタと、企業ブースの出入口に設置された企業ブース入場者カウンタと、施設内に設けられた管理サーバと、カフェスペースの各テーブル、企業ブースおよび厨房にそれぞれ配置され、前記管理サーバによって制御される専用端末と、ステージに設置されたディスプレイと、施設内に配置されたスピーカーを有しており、

C
施設入場者カウンタおよび企業ブース入場者カウンタによって、それぞれの入場者数がカウントされ、

D
管理サーバを介して、カフェスペースのテーブル上の専用端末から不特定の入場者のアンケート回答を受け付け、該アンケート回答を条件として前記テーブル上の専用端末から厨房の専用端末に対して無料の飲食のオーダーを送信し、該オーダーを受信した厨房の専用端末に表示される前記オーダーに基づいて、該厨房で飲食品が調理され、該飲食品が前記アンケート回答を行った不特定の入場者のテーブルに提供されるようにした、

A
マーケティングシステム。

<本願発明1の各分節についての検討>
(Aについて)
引用発明は、「イベント会場8内の企業等の出展ブースP1,P2,P3」に設置された「情報読取装置M1,M2,M3」を介して「個人情報」やアンケートの「回答結果」を収集し、「情報処理装置10」において様々な分析を行う「イベント効果測定システム」であるから、引用発明の「イベント会場8」は、本願発明1の「施設」に相当し、引用発明の「企業等の出展ブースP1,P2,P3」は、本願発明1の「企業ブース」に相当し、引用発明の「個人情報」や「アンケート」の「回答結果」を収集する「イベント効果測定システム」は、本願発明1の「マーケティングシステム」に相当する。
ただし、引用発明の施設は、本願発明1のように、「飲食の無料提供」を行ったり、「カフェスペース」、「ステージ」及び「厨房」を備える、ものではない。

(B及びCについて)
引用発明では、「企業等の出展ブースP1,P2,P3」に設置された「情報読取装置M1,M2,M3」の「アンケート提示部26」に、「情報処理装置10のアンケート項目データベース28に予め登録されている各種のアンケート項目」を「提示することができるようになって」おり、さらに、前記「情報処理装置10」は「イベント会場8内に設置している」ことから、引用発明の「情報処理装置10」は、本願発明1の「施設内に設けられた管理サーバ」に相当し、引用発明の「情報読取装置M1,M2,M3」は、本願発明1の「企業ブース」「にそれぞれ設置され、前記管理サーバによって制御される専用端末」に相当する。

(Dについて)
引用発明では、「イベント来場者4が提示されたアンケート項目に回答できるように、情報読取装置M1,M2,M3…には、アンケート回答部34が設けらており」、「その回答結果」が「情報処理装置10に送信され」ることから、引用発明の「イベント効果測定システム」は、本願発明1のように、「管理サーバを介して」「専用端末から」「入場者のアンケート回答を受け付け」ているといえる。
ただし、引用発明におけるアンケート回答は、本願発明1のように、「カフェスペースのテーブル上の」専用端末から受け付ける、ものではない。また、本願発明1のように、「不特定の」入場者のアンケート回答、ではない。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

<一致点>
「施設を用いたマーケティングシステムであって、施設は、少なくとも企業ブースを備え、施設内に設けられた管理サーバと、企業ブースにそれぞれ配置され、前記管理サーバによって制御される専用端末を有しており、管理サーバを介して、専用端末から入場者のアンケート回答を受け付けるようにした、マーケティングシステム。」

<相違点>
<相違点1>
本願発明1の施設は、「飲料の無料提供」を行う施設であるのに対し、引用発明の施設は、そのような構成を備えていない点。

<相違点2>
本願発明1の施設は、企業ブースに加えて、少なくとも「カフェスペース」、「ステージ」及び「厨房」を「一体に」備えるのに対し、引用発明の施設は、そのような構成を備えていない点。

<相違点3>
本願発明1は、「施設の出入口に設置された施設入場者カウンタと、企業ブースの出入口に設置された企業ブース入場者カウンタ」を備えており、「施設入場者カウンタおよび企業ブース入場者カウンタによって、それぞれの入場者数がカウントされ」るのに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。

<相違点4>
本願発明1において、管理サーバによって制御される専用端末は、「カフェスペースの各テーブル」及び「厨房」にも配置されるのに対し、引用発明の専用端末は、そのような場所には配置されない点。

<相違点5>
本願発明1は、「ステージに設置されたディスプレイと、施設内に配置されたスピーカー」を備えるのに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。

<相違点6>
本願発明1は、「カフェスペースのテーブル上の」専用端末から「不特定の」入場者のアンケート回答を受け付けるのに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。

<相違点7>
本願発明1は、「アンケート回答を条件として前記テーブル上の専用端末から厨房の専用端末に対して無料の飲食のオーダーを送信し、該オーダーを受信した厨房の専用端末に表示される前記オーダーに基づいて、該厨房で飲食品が調理され、該飲食品が前記アンケート回答を行った不特定の入場者のテーブルに提供される」のに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。

(2)相違点についての判断
ア 上記相違点2、6及び7について検討すると、上記相違点2に係る本願発明1の施設が、企業ブースに加えて、少なくとも「カフェスペース」、「ステージ」及び「厨房」を「一体に」備えるという構成、上記相違点6に係る本願発明1の、「カフェスペースのテーブル上の」専用端末から「不特定の」入場者のアンケート回答を受け付けるという構成、及び、上記相違点7に係る本願発明1の、「アンケート回答を条件として前記テーブル上の専用端末から厨房の専用端末に対して無料の飲食のオーダーを送信し、該オーダーを受信した厨房の専用端末に表示される前記オーダーに基づいて、該厨房で飲食品が調理され、該飲食品が前記アンケート回答を行った不特定の入場者のテーブルに提供される」という構成は、上記「第4」の引用文献2-4にも記載されていない。また、当該構成は周知技術であるともいえない。
さらに、上記相違点7に関して、市場調査において多くの回答を得るために、質問への回答を条件に回答者に無料の報酬(商品券、商品、食事等)を提供するという手法自体は周知であると仮定しても、その手法を具体化させて、本願発明1のように、アンケート回答を「カフェスペースのテーブル上の専用端末から」「受け付け」、この「専用端末から厨房の専用端末に対して」無料の飲食の「オーダーを送信」するという構成に想到する動機付けが見当たらない。

イ 上記アのとおり、本願発明1は、その他の相違点1、3-5について判断するまでもなく、当業者であっても、引用発明1及び引用文献2-4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2について
本願発明2-7も、本願発明1の施設が、企業ブースに加えて「カフェスペース」、「ステージ」及び「厨房」を「一体に」備えるという構成、本願発明1の、「カフェスペースのテーブル上の」専用端末から「不特定の」入場者のアンケート回答を受け付けるという構成、及び、本願発明1の「アンケート回答を条件として前記テーブル上の専用端末から厨房の専用端末に対して無料の飲食のオーダーを送信し、該オーダーを受信した厨房の専用端末に表示される前記オーダーに基づいて、該厨房で飲食品が調理され、該飲食品が前記アンケート回答を行った不特定の入場者のテーブルに提供される」という構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1及び引用文献2-4に示された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 原査定について
当審拒絶理由に対する平成31年3月7日の手続補正により、本願発明1-5は、施設が、企業ブースに加えて「カフェスペース」、「ステージ」及び「厨房」を「一体に」備えるという事項、「カフェスペースのテーブル上の」専用端末から「不特定の」入場者のアンケート回答を受け付けるという事項、及び、「アンケート回答を条件として前記テーブル上の専用端末から厨房の専用端末に対して無料の飲食のオーダーを送信し、該オーダーを受信した厨房の専用端末に表示される前記オーダーに基づいて、該厨房で飲食品が調理され、該飲食品が前記アンケート回答を行った不特定の入場者のテーブルに提供される」という事項を有するものとなっており、上記「第5」で示したとおり、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-4に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 当審拒絶理由について
当審では、請求項1の「厨房の専用端末に対して無料の飲食のオーダーが行え」という記載の意味が不明確であるとの拒絶の理由を通知しているが、平成31年3月7日の手続補正において、請求項1について「厨房の専用端末に対して無料の飲食のオーダーを送信し」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

第8 むすび
以上のとおり、本願発明1-7は、当業者が引用発明及び引用文献2-4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-07-03 
出願番号 特願2015-6814(P2015-6814)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G06Q)
P 1 8・ 121- WY (G06Q)
最終処分 成立  
前審関与審査官 宮地 匡人  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 石川 正二
田中 秀樹
発明の名称 飲食の無料提供施設を用いたマーケティング方法およびマーケティングシステム  
代理人 河野 修  

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