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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D
管理番号 1353012
審判番号 不服2018-5304  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-04-18 
確定日 2019-07-04 
事件の表示 特願2017-127182「輸送方法及び保冷方法」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 1月24日出願公開,特開2019- 11069〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成29年6月29日の出願であって,平成29年8月30日付けで拒絶理由が通知され,平成29年11月1日に意見書が提出されるとともに手続補正がされ,平成30年1月17日付けで拒絶査定がされ,これに対し,平成30年4月18日に拒絶査定不服審判の請求がされ,平成30年12月19日付けで当審より拒絶理由が通知され,平成31年2月15日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?5に係る発明は,平成31年2月15日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1?5にそれぞれ記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は以下のとおりである。
「【請求項2】
保冷対象物である鮮魚と-100℃以下の氷とを共に容器に収容するステップと、
前記鮮魚と、少なくとも前記収容するステップにおいて-100℃以下の氷であったものとを収容している前記容器を輸送するステップと、
を備えており、
前記収容するステップでは、前記保冷対象物と前記氷との間に、スポンジからなる厚さ1mm以上の可撓性シートを、前記保冷対象物の形状に応じてその形状が変化する態様で介在させる
輸送方法。」

第3 当審の拒絶理由の概要
平成30年12月19日付けで当審が通知した拒絶理由の理由1(特許法第29条第2項)のうち,本願発明に関する部分の概要は,以下のとおりである。

本願の請求項2に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献2に記載された発明及び引用文献1に記載された発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:国際公開第2004/042295号
引用文献2:実願昭59-135693号(実開昭61-51378号)のマイクロフィルム

第4 引用文献及び引用発明
1.引用文献2について
(1)引用文献2の記載事項
当審の拒絶理由で引用され,本願出願前に,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献2には,図面とともに以下の記載がある。

ア 「〔考案が解決しようとする問題点〕
魚介類の品質は鮮度と密接な関係があることは良く知られており、特に漁獲後すぐに解体されず配送又は流通過程で内蔵やエラを付けた丸ごとの魚介類の良好な鮮度の維持を保冷保存によつて行う場合の保存時間は夏場の場合、赤身の魚では一般に1昼夜前後であり、その後は鮮度の低下が著しくなるのが普通である。本考案の目的は、上述の保存時間を遥かに越えて鮮度を維持することの出来る魚介類を配送するための包装体の構造を提供するにある。」(第5頁第1?11行)

イ 「〔考案の構成〕
本考案は上記の目的を達成するため、麦飯石のような鮮度保存剤を含んだ透水性の被覆シートで魚介類を被包し、水分の存在下でその食品を包装容器に密閉することを含む。魚介類の場合は保冷のため上記の被覆シートを介して砕氷で魚介類を冷却する。本考案の理論的解明は未だされていないが、本考案に従つた包装体の構造は魚介類の鮮度の維持時間を大幅に延ばすことが出来る。」(第5頁第12?20行)

ウ 「上に述べられた被覆シートは単なる1例であつて、2枚の布地で袋状にする必要はなく、要は、被覆シートは容易に水を通すこと、付着した麦飯石の粉末が容易に離脱しないこと、厚さは薄く且つ柔軟性があり、水に漏れても(当審注:「水に濡れても」の誤記と認める。)容易に破れないことが大切な要素である。」(第7頁第10?15行)

エ 「第3図は従来から使われている発泡スチロール製の魚介類の保冷用容器11の1例を示し、魚体の大きさ、その収容数、砕氷の量に応じた寸法を有する箱体12とそれを被う蓋体13とから成つており、本実施例の場合に用いられた包装体は1.7kg程度の丸ごとの鰹を3匹収容するに適した市販の長さ53cm、幅32cm、深さ18cmの発泡スチロール製の容器である。第4図は本考案に従つた包装体構造1に魚体8を示すため、構造の一部を破断して示す図で、第1図は第4図をA-A線に沿つて切断し、包装体の構造を説明する図である。説明の簡略化のため、同様な部分は同じ参照数字を使って説明を省略する。9は砕氷、8'、8''及び8'''は鰹の断面を簡略化して示したものである。」(第8頁第4?17行)

オ 「第1図及び第4図を参照して明らかなように、本考案の包装体の構造は、保冷用容器の箱体12の底部に麦飯石を含んだ被覆シート2を置き、その上に鰹の魚体8を3匹横に並べて置き、更にその上に被覆シート2を被せた上、その上に、砕氷9を容器一杯に埋める。次に発泡スチロールの蓋体13を被せた後、合せ目にマスキンテープ10を貼り付けて保冷用容器11を密閉する。被覆シートは予め水で濡らした物を使つてもよいが、解けた氷の水が被覆シートに水分を与えるので鮮度維持の機能が生ずる。」(第8頁第18行?第9頁第8行)

カ 第1図の記載から,包装体において,箱体12の底部に置かれた被覆シート2が概ね平らであり,鰹の魚体8と砕氷9との間に介在された被覆シート2が魚体8の形状に応じた形状であることを見て取れる。

キ 上記オのとおりに密閉された保冷用容器11は,上記アの記載及び上記イの記載によれば,魚介類である鰹を配送するための包装体であると解されるから,この密閉された保冷用容器11を配送する配送方法も,引用文献2に記載されているのに等しい事項であるといえる。

(2)引用発明2
上記(1)から,引用文献2には次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「保冷用容器の箱体12の底部に麦飯石を含んだ被覆シート2を置き,その上に鰹の魚体8を3匹横に並べて置き,更にその上に被覆シート2を被せた上,その上に,砕氷9を容器一杯に埋め,次に発泡スチロールの蓋体13を被せた後,合せ目にマスキンテープ10を貼り付けて保冷用容器11を密閉し,
密閉された保冷用容器11を配送する配送方法であって,
鰹の魚体8と砕氷9との間に介在された被覆シート2が魚体8の形状に応じた形状である,
配送方法。」

2.引用文献1について
(1)引用文献1の記載事項
当審の拒絶理由で引用され,本願出願前に,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1には,図面とともに以下の記載がある。なお,「・・・」は省略を意味する。

ア 「The present invention concerns a procedure and system for producing a cryogenic product, more precisely supercooled ice, and application of this product.」(第1頁第7?8行)
(当審訳:本発明は,低温生成物,より正確には超低温氷,を製造するための方法及びシステム,並びにこの生成物の適用に関する。)

イ 「GB 2,146,943 concerns production of composite pellets consisting of dry ice particles coated with water. The water forms an ice film that envelops the dry ice particles and delays their sublimation. The dry ice particles will have a temperature of down to around -80℃. One disadvantage of this product is that it will have a relatively low temperature for a period of time until the surrounding layer of ice is broken down. Subsequently, the dry ice will sublimate relatively fast with the associated rise in temperature. The product's usefulness in connection with storage of easily perishable goods seems therefore to be low.」(第1頁第19?25行)
(当審訳:英国特許第2146943号は,水で被覆されたドライアイス粒子からなる複合ペレットの製造に関する。水はドライアイス粒子を包み込む氷膜を形成し,昇華を遅延させる。ドライアイス粒子は,約-80℃までの温度を有するだろう。この製品の1つの欠点は,氷の周囲層が破壊されるまでの一時期の間比較的低い温度を有するだろうということである。その後,ドライアイスは,関連する温度上昇を伴って比較的速く昇華するだろう。したがって,容易に腐敗しやすい品物の貯蔵に関する製品の有用性は低いと思われる。)

ウ 「In the previous examples, the initial temperature of the ice may be 0 ℃ or lower. Solid carbon dioxide will have a temperature of approximately -79℃. Liquid air has a temperature of -194℃. Liquid nitrogen has a temperature of -196℃. With different mixing ratios of the quantities of cryogenic agent and ice in the mixture, it is possible, in accordance with the present invention, to produce ice with a temperature that, in theory, will lie between -0℃ and -79℃ or -194℃ or -196℃ respectively.」(第6頁第9?14行)
(当審訳:先の例では,氷の初期温度は0℃以下であってもよい。固体二酸化炭素は約-79℃の温度を有するだろう。液体空気は-194℃の温度を有する。液体窒素は-196℃の温度を有する。本発明に従って,混合物中の低温剤と氷の量の異なる混合比によって,理論的には-0℃と,-79℃,-194℃又は-196℃のそれぞれとの間にある温度で氷を生成することができる。)

エ 「Supercooled ice at a temperature of between -10℃ and -180℃ in accordance with the present invention will have very favourable areas of application.」(第6頁第16?17行)
(当審訳:本発明に従う-10℃と-180℃との間の温度を有する超低温氷は,非常に好ましい適用領域を有するだろう。)

オ 「Supercooled ice can have a number of areas of application such as cooling in bleeding containers and cooling in containers after cleaning, processing, transport and storage of fish in the ratio 1 part supercooled ice to 1 to 2 parts fish (by weight). The product is particularly well suited for treating roundfish that are delivered to the market as fresh fish (not frozen).」(第6頁第22?25行)
(当審訳:超低温氷は,(重量で)1?2部の魚に対して超低温氷を1部の割合で,魚の血抜き容器内での冷却及び洗浄後の容器内での冷却,加工,輸送並びに貯蔵のような多数の適用領域を有することができる。生成物は,(冷凍されていない)鮮魚として市場に配送される魚を処理するために特によく適している。)

カ 「・・・supercooled ice (SICE)」(第8頁第4行)
(当審訳:・・・超低温氷(SICE))

キ 「The SICE is first placed on the bottom of the storage crates and on the heads and tails after the fish have been placed in the crates. This may vary.」(第9頁第7?9行)
(当審訳:超低温氷は,最初に貯蔵クレートの底部に配置され,魚がクレート内に配置された後に頭部及び尾部の上に配置される。これは変更してもよい。)

ク 「The fish were packed in crates with SICE when they were brought ashore.」(第10頁第2?3行)
(当審訳:魚は,超低温氷とともにクレート内に梱包され,海岸まで運ばれた。)

ケ 「The product proposed (SICE) will cover a number of advantageous applications:
・・・
- More cold per weight unit.
・・・
- Lower freight costs on account of lower gross weight.
・・・
- The low temperature of the product extends the period of inactivity of bacteria and, with fish, for example, postpones rigor mortis.」(第11頁第12?25行)
(当審訳:提案された生成物(超低温氷)は,多数の有利な適用を含むであろう。・・・。重量単位当たりでより冷たい。・・・。より低い総重量のため,より低い運送コスト。・・・。生成物の低温は,細菌の非活動期間を延長し,魚については,例えば,死後硬直を遅らせる。)

コ 「A procedure for producing a cryogenic product based on ice in various forms/pieces,
characterised in that
ice is made from fresh water and/or salt water, possibly with additives, and is mixed with a cryogenic agent such as carbon dioxide in solid form or liquid form (LCO_(2)) and/or nitrogen in liquid form (LIN) and/or liquid air to form a mixture with the desired temperature, ・・・.」(第12頁第3?10行)
(当審訳:種々の形態/小片の氷をもとに低温生成物を製造するための方法であって,氷が,場合により添加物を伴って,真水及び/又は塩水から製造され,所望温度の混合物を形成するために,固体又は液体の二酸化炭素(LCO_(2))及び/又は液体窒素(LIN)及び/又は液体空気のような低温剤と混合され,・・・。)

サ 「Application of a cryogenic product produced in accordance with claims 1-7,
characterised in that
it is used for the processing/treatment/transport/storage of products such as foods, including fish.」(第14頁第4?7行)
(当審訳:魚を含む食品のような生産物の加工/処理/輸送/貯蔵のために使用されることを特徴とする,請求項1-7に従って製造された低温生成物の適用。)

シ 「Application in accordance with claim 11,
characterised in that
the temperature in the cryogenic product is between -10℃ and -180℃.」(第14頁第9?11行)
(当審訳:低温生成物中の温度が-10℃と-180℃との間であることを特徴とする,請求項11に記載の適用。)

(2)引用発明1
上記(1)から,引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「真水及び/又は塩水から製造された氷を,固体二酸化炭素,液体窒素及び/又は液体空気と混合して製造される超低温氷であって,
-10℃と-180℃との間の温度を有し,
魚とともにクレート内に配置されて,魚の輸送又は貯蔵のために使用される超低温氷。」

第5 対比
1.本願発明と引用発明2とを対比する。
(1)引用発明2の「鰹」は,上記第4の1.(1)ア,イ及びオの記載から,保冷のために被覆シート2を介して砕氷9で冷却されて,その鮮度が維持されるものと解されるから,本願発明の「保冷対象物である鮮魚」に相当する。

(2)引用発明2の「砕氷9」は,本願発明の「-100℃以下の氷」と,「氷」である限りにおいて一致する。

(3)引用発明2の「保冷用容器11」は,本願発明の「容器」に相当する。

(4)引用発明2の「保冷用容器の箱体12の底部に麦飯石を含んだ被覆シート2を置き,その上に鰹の魚体8を3匹横に並べて置き,更にその上に被覆シート2を被せた上,その上に,砕氷9を容器一杯に埋め,次に発泡スチロールの蓋体13を被せた後,合せ目にマスキンテープ10を貼り付けて保冷用容器11を密閉し」は,鰹と砕氷9とを共に保冷用容器11に収容することを伴うステップであるといえる。

(5)引用発明2の「被覆シート2」は,上記第4の1.(1)ウのとおり,厚さは薄く且つ柔軟性があることが大切な要素とされたものであるから,可撓性を有することが明らかであって,本願発明の「スポンジからなる厚さ1mm以上の可撓性シート」と,「可撓性シート」である限りにおいて一致する。

(6)上記第4の1.(1)カのとおり,箱体12の底部に置かれた被覆シート2は概ね平らである一方,鰹の魚体8と砕氷9との間に介在された被覆シート2は魚体8の形状に応じた形状であることから,引用発明2の「鰹の魚体8と砕氷9との間に介在された被覆シート2」は,あらかじめ魚体8の形状に応じた形状をしていたものではなく,魚体8の形状に応じてその形状が変化したものであることが明らかである。そうすると,引用発明2は,鰹の魚体8と砕氷9との間に,被覆シート2を,魚体8の形状に応じてその形状が変化する態様で介在させるものであるといえる。

(7)引用発明2の「密閉された保冷用容器11を配送する」は,鰹と砕氷9を収容した保冷用容器11を配送することであって,この保冷用容器11を配送先まで輸送することを伴うことが明らかである。よって,引用発明2の「密閉された保冷用容器11を配送する」は,鰹と,収容するステップにおいて砕氷9であったものとを収容している保冷用容器11を輸送するステップであるといえる。

(8)引用発明2の「配送方法」は,配送先までの輸送を伴う方法であることが明らかであるから,本願発明の「輸送方法」に相当する。

2.上記1.から,本願発明と引用発明2との一致点及び相違点は以下のとおりである。
[一致点]
「保冷対象物である鮮魚と氷とを共に容器に収容するステップと,
前記鮮魚と,少なくとも前記収容するステップにおいて氷であったものとを収容している前記容器を輸送するステップと,
を備えており,
前記収容するステップでは、前記保冷対象物と前記氷との間に,可撓性シートを,前記保冷対象物の形状に応じてその形状が変化する態様で介在させる
輸送方法。」

[相違点1]
本願発明は,少なくとも収容するステップにおいて,氷が-100℃以下であるのに対し,引用発明2は,砕氷9の温度について特定されていない点。
[相違点2]
本願発明は,可撓性シートがスポンジからなる厚さ1mm以上のものであるのに対し,引用発明2は,被覆シート2がスポンジからなる厚さ1mm以上のものであると特定されていない点。

第6 当審の判断
相違点1及び相違点2について検討する。
1.相違点1について
引用発明1の超低温氷は,上記第4の2.(1)ケの記載から理解されるとおり,運送コストを低くし,細菌の非活動期間を延長する等の効果を奏するものであるところ,引用発明2においても,配送コストが低い方が望ましいことや細菌の非活動期間が長い方が望ましいことは当業者が当然に認識する事項であるといえる。
また,引用文献1の上記第4の2.(1)ケには,重量単位当たりでより冷たく,総重量がより低いことが記載されており,総重量を小さくして運送コストを低くするという観点からは,-10℃と-180℃との間の温度のうちなるべく低い温度のものを用いることが示唆されているといえる。
よって,引用発明2において,配送コストを低くし,細菌の非活動期間を長くするという観点から,砕氷9として,引用発明1の超低温氷のうちより低い温度である-100℃以下のものを用いることは,当業者であれば容易に想到し得ることである。

2.相違点2について
引用文献2の上記第4の1.(1)オの記載のうち「被覆シートは予め水で濡らした物を使つてもよいが、解けた氷の水が被覆シートに水分を与えるので鮮度維持の機能が生ずる。」の部分から,引用発明2の被覆シート2について,与えられた水分を保持するという特性が求められることを容易に把握することができる。そして,一般に,保冷対象物と氷とを共に容器に収容して輸送するものにおいて,容器内で水分を保持する部材として,スポンジからなるものを用いることは周知技術である。(必要であれば,特開2009-90983号公報(特に,段落【0030】及び【0035】),特開平1-289431号公報(特に,第5頁左下欄第9?18行)及び米国特許第4294079号明細書(特に,第3欄第20?51行)等を参照のこと。)
また,上記第4の1.(1)ウの記載から,引用発明2の被覆シート2について,厚さは薄くかつ柔軟性があり,水に濡れても容易に破れないことが大切な要素であることを理解できる。一方で,引用発明2の被覆シート2について,あまりに厚さが小さいと,水分を保持しにくく,破れやすくなることは明らかであるから,被覆シート2の厚さを,柔軟性を損なわない範囲で,ある程度以上に大きくすることは当業者が通常考慮する事項であるといえる。
よって,引用発明2において,被覆シート2について,与えられた水分を保持することができ,かつ,容易に破れないようにするという観点から,スポンジからなる厚さ1mm以上のものを採用することは,当業者であれば適宜なし得る設計的事項である。

3.効果の検討
相違点1及び相違点2を総合的に勘案しても,本願発明の奏する効果は,引用発明2,引用発明1及び周知技術から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。

4.請求人の主張について
請求人は,平成31年2月15日提出の意見書において,-100℃以下の氷を鮮魚の保冷に利用することに関して「3.1」で阻害要因について,また,「3.2」で示唆がないことについて主張した上で,「3.3」で
「以上のとおり、主たる引例である引用文献1には、-100℃以下の氷を鮮魚の保冷に利用することに関して、阻害要因があり、かつ示唆もありません。
従って、引用文献1及びその他の引用文献に基づいて本願発明に想到することは、当業者が容易になし得たことではないと思料します。」
と主張している。
しかしながら,出願人の上記主張は採用できない。その理由は以下の(1)及び(2)で指摘するとおりである。

(1)阻害要因について
請求人は,平成31年2月15日提出の意見書の「3.1」において,
「特許文献1(当審注:「引用文献1」の誤記と認める。)の第1頁第19行?第25行においては、従来技術として水で被覆されたドライアイス粒子が挙げられ、このドライアイス粒子が約-80℃の温度を有することが述べられています。続いて、このドライアイス粒子の欠点として、被膜が破壊されるまでの期間において比較的低い温度であることなどが挙げられ、さらには、このドライアイス粒子について、生鮮品(perishable good)の貯蔵に対する有用性が低いと述べられています。
すなわち、引用文献1では、本願発明のように生鮮品に対して-100℃以下の氷を利用することについて、阻害要因があると言えます。」
と主張している。
しかしながら,引用文献1の第1頁第19行?第25行の記載(上記第4の2.(1)イを参照のこと)は,ドライアイス粒子の約-80℃という低い温度が,容易に腐敗しやすい品物の貯蔵に関して有用性が低いことを意味するものではなく,氷で被覆されたドライアイス粒子について,氷の周囲層が破壊された後,速く温度上昇するから,容易に腐敗しやすい品物の貯蔵に関して有用性が低いことを意味するものとして解釈すべきである。
よって,請求人の阻害要因についての上記主張は採用できない。

(2)示唆がないことについて
請求人は,平成31年2月15日提出の意見書の「3.2」において,
「引用文献1の第6頁第9行?第14行では、拒絶理由通知で指摘されているように、-0℃?-196℃の氷が製造できることが記載されています。しかし、ここでは、あくまで、引用文献1の発明に係る氷の製造方法の効果として、理論上(in theory)、そのような氷を製造することが可能であるということが述べられているだけであり、そのような氷を鮮魚の保冷に利用することまでは記載されていません。
続く第16行?第20行では、拒絶理由通知で指摘されているように、-10℃?-180℃の氷が有用であることが記載されています。しかし、上記の理論上の温度範囲を少し狭めた温度範囲を提示しつつ、一般論を述べているに留まり、-100℃以下の氷で鮮魚を保冷することまでは開示していません。
続く、第22行目以降においては、保冷対象物として鮮魚を例にとった場合について記載されています。拒絶理由通知で指摘されているように、第22行?第25行では、氷が魚の冷却、処理、輸送及び貯蔵に利用可能であること等が記載されています。
しかし、上記記載に続く具体的な態様に関する記載を精査すると、-60℃の氷を使うことについては開示されていますが(第9頁第18行)、-100℃以下の氷を使うことについては開示されていません。」
と主張している。
確かに,引用文献1には,鮮魚に対して-100℃以下の超低温氷を使用した具体的な態様の記載はない。
しかしながら,引用文献1において,-10℃?-180℃という超低温氷の温度範囲が記載され(上記第4の2.(1)エ及びシを参照のこと),超低温氷が鮮魚の処理に特によく適していることが記載され(上記第4の2.(1)オを参照のこと),超低温氷について魚の死後硬直を遅らせる等の具体的な効果も記載されている(上記第4の2.(1)ケを参照のこと)ことから,引用文献1には,-10℃と-180℃との間の温度のうち,-100℃以下である超低温氷を鮮魚に対して使用することが少なくとも示唆されているといえる。加えて,上記1.で指摘したとおり,引用発明1の超低温氷について,総重量を小さくして運送コストを低くするという観点からは,-10℃と-180℃との間の温度のうちなるべく低い温度を採用することも示唆されている。
そうすると,引用文献1に鮮魚に対して-100℃以下の超低温氷を使用した具体的な態様の記載がないとしても,上記1.で示したとおり,引用発明2において,配送コストを低くし,細菌の非活動期間を長くするという観点から,砕氷9として,引用発明1の超低温氷のうちより低い温度である-100℃以下のものを用いることは,当業者であれば容易に想到し得ることであるといえる。

第7 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明2,引用発明1及び周知技術に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-04-25 
結審通知日 2019-05-07 
審決日 2019-05-22 
出願番号 特願2017-127182(P2017-127182)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉澤 秀明  
特許庁審判長 井上 茂夫
特許庁審判官 佐々木 正章
白川 敬寛
発明の名称 輸送方法及び保冷方法  
代理人 飯島 康弘  
代理人 飯島 康弘  
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