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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B65D 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D |
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管理番号 | 1353022 |
審判番号 | 不服2018-11042 |
総通号数 | 236 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-08-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-08-10 |
確定日 | 2019-07-04 |
事件の表示 | 特願2014-24787「パッケージ」拒絶査定不服審判事件〔平成27年8月24日出願公開、特開2015-151142〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成26年2月12日の出願であって、平成29年12月18日付けで拒絶理由が通知され、平成30年3月5日に意見書及び補正書が提出され、平成30年4月18日付けで拒絶査定がされた。これに対し、平成30年8月10日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。 第2 平成30年8月10日付けの手続補正の補正却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成30年8月10日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1の 「トレー、および、前記トレーの開口を密封するシートを有するパッケージであって、 前記シートが前記トレーの天面にシールされた部分であるシール部に、前記トレーの外形に沿うように延びた一般部、および、前記トレーの内部の蒸気を外部に逃がすための通蒸予定部が存在し、 前記通蒸予定部は、その内縁が前記一般部の内縁に対して前記開口側に突き出るように形成されていることにより、その内縁に尖った部分である先端が形成された山型の部分であり、前記通蒸予定部の内縁のうちの前記先端に対して一方の側を構成する部分、および、前記通蒸予定部の内縁のうちの前記先端に対して他方の側を構成する部分が、互いに接近するように湾曲し、 前記通蒸予定部の外縁が前記内縁に相似した湾曲形状を有していることにより、その外縁に尖った部分である先端が形成され、 前記通蒸予定部における前記外縁の先端と前記内縁の先端との間の部分は、前記山型の頂上に相当する合流部であり、前記通蒸予定部のうちの前記合流部よりも前記一般部側の部分である非合流部は、前記一般部側から前記合流部に向かうにつれて幅が狭くなる パッケージ。」を 「トレー、および、前記トレーの開口を密封するシートを有するパッケージであって、 前記シートが前記トレーの天面にシールされた部分であるシール部に、前記トレーの外形に沿うように延びた一般部、および、前記トレーの内部の蒸気を外部に逃がすための通蒸予定部が存在し、 前記通蒸予定部は、その内縁が前記一般部の内縁に対して前記開口側に突き出るように形成されていることにより、その内縁に尖った部分である先端が形成された山型の部分であり、前記通蒸予定部の内縁のうちの前記先端に対して一方の側を構成する部分、および、前記通蒸予定部の内縁のうちの前記先端に対して他方の側を構成する部分が、互いに接近するように湾曲し、 前記通蒸予定部の外縁が前記内縁に相似した湾曲形状を有していることにより、その外縁に尖った部分である先端が形成され、 前記通蒸予定部における前記外縁の先端と前記内縁の先端との間の部分は、前記山型の頂上に相当する合流部であり、前記通蒸予定部のうちの前記合流部よりも前記一般部側の部分である非合流部は、前記一般部側から前記合流部に向かうにつれて幅が狭くなり、 前記一般部のシール幅が、前記内縁の先端と前記外縁の先端との距離よりも広い パッケージ。」と補正した。 そして、この補正は、特許請求の範囲に記載した発明を特定するために必要な事項である、通蒸予定部と一般部について、通蒸予定部の「前記内縁の先端と前記外縁の先端との距離よりも」、「前記一般部のシール幅が、」「広い」ことの限定を付加するものであり、この補正により、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題を変更するものでもないことは明らかである。 よって、本件補正における請求項1に係る発明の補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項(特許請求の範囲のいわゆる限定的減縮)を目的とするものである。 2 独立特許要件についての検討 (1)そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反しないか)について検討する。 (2)引用例 ア 引用例1 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である実願昭62-164883号(実開平1-69773号)のマイクロフィルム(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。 (ア)「2.実用新案登録請求の範囲 容器開口部がシール域においてヒートシールされて閉じられる容器であって、前記シール域は、帯状シール域と、前記帯状シール域に隣接し前記隣接部において前記帯状シール域よりも容器の内側に突出している突出シール域とを有し、前記突出シール域は、先端の角度をα、前記隣接部における前記突出シール域の内縁と外縁との間の幅をa、及び前記突出シール域の前記帯状シール域と前記隣接する両端間の幅をb、とするとき、 a≦5mm b≦5mm α=10°?60° であることを特徴とする易開封性加熱用密封容器。」(1頁4?末行) (イ)「[産業上の利用分野] この考案はそのまま温水中や電子レンジで加熱可な易開封性加熱用密封容器に関するものである。」(2頁3?5行) (ウ)「[作用] このように構成されたスタンディング・パウチ1においては、収納された内容物を温めるためにそのまま温水中に入れまたは電子レンジにかけると、スタンディング・パウチ1内の高まった内圧により突出シール域12の先端14に剥離力が集中する。突出シール域12はその先端14から剥離が開始し、その剥離が次第に突出シール域12の全体に進行して、遂にはエアー抜けが形成され、設定値以上の内圧は、そのエアー抜けを通して解放される。」(6頁6?16行) (エ)「[他の実施例] 第4図及び第5図にはこの考案の第2の実施例が示され、第6図にはこの考案の第3の実施例が示され、第7図にはこの考案の第4の実施例が示されている。この第4図及び第5図に示す第2の実施例は第3図に示す突出シール部の形成を平面視で円形をなすカップ容器に適用した例である。 すなわち、カップ容器21は、上端が開口部22をなす有底の容器胴部23と、開口部22の外側に張出すフランジ24と、が一体に成形されている。 フランジ24上には、シール突条25が開口部22を一周して形成されている。シール突条25はフランジ24の上面24aより僅かに上方に突出したリブ状であり、ほぼフランジ24の幅の中央部を通って形成されているが、途中にこの考案の核心をなす略V字状形の内向き突出部26を有しており、この突出部26に蓋(図示せず)がヒートシールされて、突出シール域12が形成されるものである。第6図に示す第3の実施例は第3図に示す突出シール部の形成を平面視で矩形をなすカップ容器に適用した例であり、第7図に示す第4の実施例は平面視で楕円形をなすカップ容器に適用した例である。」(9頁1行?10頁4行) (オ)「第7図 」 (カ)第7図から、以下の点が看取できる。 ・突出シール域12は、内縁に尖った部分である先端を有しており、当該内縁のうち先端に対して一方の側を構成する部分と他方の側を構成する部分とが互いに接近する方向に湾曲している点 ・シール突状25は、ヒートシールされるシール域であるから、突出シール域12以外のシール域、すなわち、帯状シール域が、カップ容器の外形に沿うように設けられている点、 ・突出シール域12の内縁は、帯状シール域の内縁に対して容器開口側に突出している点、 ・突出シール域12の外縁は、その内縁に相似した湾曲形状であって、尖った部分である先端が形成されている点 ・突出シール域12は、帯状シール域側から、内縁及び外縁の尖った部分に向けて幅が略一定である点 イ 引用例1に記載された発明 引用例1の第7図の実施例に着目すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「容器開口部がシール域において蓋をヒートシールして閉じられるカップ容器であつて、前記シール域は、カップ容器の外形に沿うように設けられた帯状シール域と、前記帯状シール域に隣接し前記隣接部において前記帯状シール域よりもカップ容器の内側に突出している突出シール域とを有し、前記突出シール域は、先端の角度をα、前記隣接部における前記突出シール域の内縁と外縁との間の幅をa、及び前記突出シール域の前記帯状シール域と前記隣接する両端間の幅をb、とするとき、 a≦5mm b≦5mm α=10°?60° であり、 突出シール域の内縁は、帯状シール域の内縁に対して容器開口側に突出し、 突出シール域は、内縁に尖った部分である先端を有し、前記内縁のうち、先端に対して一方の側を構成する部分と他方の側を構成する部分とが互いに接近する方向に湾曲しており、 突出シール域の外縁は、その内縁に相似した湾曲形状であって、尖った部分である先端が形成されており、 突出シール域12の幅は、帯状シール域側から、内縁及び外縁の尖った部分に向けて略一定である 易開封性加熱用密封容器。」 ウ 引用例2 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である国際公開第2013/100058号(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。 (ア)「本発明は、液状物、固形物、あるいはこれらの混合物からなるレトルト食品等の内容物を充填した包装袋を電子レンジ等で加熱した際の蒸気圧により包装袋が開口し、その包装袋の内部に発生する水蒸気を外部に放出することが可能な包装袋に関する。」([0001]) (イ)「 (第1の実施形態の例3) 次に、第1の実施形態の例3について説明する。 第1の実施形態の例3の蒸気抜きシール部7は、例えば、図7(a)に示すように、内側湾曲形状7a1と第2の外側湾曲形状9a2とで挟まれた領域の一定幅を有するシール幅β2と、内側湾曲形状7a1と第1の外側湾曲形状9a1とで挟まれた領域の一定幅を有するシール幅β1と、を備え、且つ、シール幅β2よりもシール幅β1が細くなるように構成する。この図7(a)の形状の場合も、上述した第1の実施形態の例1及び例2と同様に、内側湾曲形状7a1と第1の外側湾曲形状9a1とで挟まれた領域の幅β1が、内側湾曲形状7a1と第2の外側湾曲形状9a2とで挟まれた領域の幅β2よりも狭くなっているため、電子レンジで加熱して膨張すると、蒸気抜きシール部7を構成する先端部β1の細くなっている部分のみが剥離し、先端部β1以外のその他の部分β2が帯状のエンドシール部8aと連結して残存し、該残存したその他の部分β2で、帯状のエンドシール部8aから内側方向に突出したエッジ部が形成されるため、包装袋100内の水蒸気等を外部に放出する際に、「ピー」という笛音を発することができる。 また、第1の実施形態の例3の蒸気抜きシール部7は、図7(b)に示すように、外側湾曲形状9a2を1つの湾曲形状9a2で構成し、内側湾曲形状7a1と外側湾曲形状9a2とで挟まれた領域のシール幅β1,β2は、蒸気抜きシール部7の先端に向かって狭くなるように構成する。これにより、内側湾曲形状7a1と外側湾曲形状9a2とで挟まれた領域のシール幅β1,β2を蒸気抜きシール部7の先端に向かって順次狭くすることができる。この図7(b)に示す形状の場合も、上述した第1の実施形態の例1及び例2と同様に、蒸気抜きシール部7の内側湾曲形状7a1と外側湾曲形状9a2とで挟まれた領域の幅β1,β2が、蒸気抜きシール部7の先端に向かって狭くなっているため、電子レンジで加熱して膨張すると、蒸気抜きシール部7を構成する略中央部までが剥離し、残存した蒸気抜きシール部7が帯状のエンドシール部8aと連結して、エッジ部が形成されるため、包装袋100内の水蒸気等を外部に放出する際に、「ピー」という笛音を発することができる。」([0066]?[0068]) (ウ)「ヒートシールする際の熱、圧力、シール部のシール幅等の少なくとも1つを異ならせることで、ヒートシールした各部7,8a,8bの剥離強度を異ならせることができる。例えば、ヒートシールする際の熱、圧力を小さくすることで、剥離強度を弱くすることができる。逆に、ヒートシールする際の熱、圧力を大きくすることで、剥離強度を強くすることができる。また、シール部のシール幅を短くすることで、剥離強度を弱くすることができる。逆に、シール幅を長くすることで、剥離強度を強くすることができる。」([0123]) (エ)「図7 」 (3)本願補正発明と引用発明の対比 ア 対比 本願補正発明と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明の「カップ容器」は、その構造及び作用から、本願補正発明の「トレー」に相当し、同様に、「容器開口部」は「トレーの開口」に相当する。 (イ)引用発明の「蓋」は、ヒートシールによりカップ容器を閉じるものであって、シート状であることは明らかであるから、本願補正発明の「トレーの開口を密封するシート」に相当する。 そして、「易開封性加熱用密封容器」は、「カップ容器」と「蓋」と有するものであるから、本願補正発明の「トレー、および、前記トレーの開口を密封するシートを有するパッケージ」に相当する。 (ウ)引用発明の「蓋をヒートシールして閉じられるカップ容器」の「シール域」は、カップ容器の天面に設けられているから、本願補正発明の「前記シートが前記トレーの天面にシールされた部分であるシール部」に相当する。 (エ)引用発明の「カップ容器の外形に沿ように設けられた帯状シール域」は、本願補正発明の「前記トレーの外形に沿うように延びた一般部」に相当する。 (オ)引用発明の「突出シール域」は、上記(2)アの摘記事項(ウ)を参照すると、収納された内容物を温めた際に設定値以上の内圧を開放するためのものであるから、本願補正発明の「前記トレーの内部の蒸気を外部に逃がすための通蒸予定部」に相当する。 (カ)そして、引用発明の「前記シール域は、カップ容器の外形に沿ように設けられた帯状シール域と、前記帯状シール域に隣接し前記隣接部において前記帯状シール域よりもカップ容器の内側に突出している突出シール域とを有」する態様は、本願補正発明の「前記シートが前記トレーの天面にシールされた部分であるシール部に、前記トレーの外形に沿うように延びた一般部、および、前記トレーの内部の蒸気を外部に逃がすための通蒸予定部が存在」する態様に相当する。 (キ)引用発明の「突出シール域の内縁は、帯状シール域の内縁に対して容器開口側に突出し」ている態様は、本願補正発明の「通蒸予定部は、その内縁が前記一般部の内縁に対して前記開口側に突き出るように形成されている」態様に相当する。 (ク)引用発明の「突出シール域は、内縁に尖った部分である先端を有し、前記内縁のうち、先端に対して一方の側を構成する部分と他方の側を構成する部分とが互いに接近する方向に湾曲している」態様は、内縁に尖った部分が山型と表現できるものであるから、本願補正発明の「その内縁に尖った部分である先端が形成された山型の部分であり、前記通蒸予定部の内縁のうちの前記先端に対して一方の側を構成する部分、および、前記通蒸予定部の内縁のうちの前記先端に対して他方の側を構成する部分が、互いに接近するように湾曲」する態様に相当する。 (ケ)引用発明の「突出シール域の外縁は、その内縁に相似した湾曲形状であって、尖った部分である先端が形成されて」いる態様は、本願補正発明の「前記通蒸予定部の外縁が前記内縁に相似した湾曲形状を有していることにより、その外縁に尖った部分である先端が形成され」ている態様に相当する。 イ 一致点 したがって、両者は、 「トレー、および、前記トレーの開口を密封するシートを有するパッケージであって、 前記シートが前記トレーの天面にシールされた部分であるシール部に、前記トレーの外形に沿うように延びた一般部、および、前記トレーの内部の蒸気を外部に逃がすための通蒸予定部が存在し、 前記通蒸予定部は、その内縁が前記一般部の内縁に対して前記開口側に突き出るように形成されていることにより、その内縁に尖った部分である先端が形成された山型の部分であり、前記通蒸予定部の内縁のうちの前記先端に対して一方の側を構成する部分、および、前記通蒸予定部の内縁のうちの前記先端に対して他方の側を構成する部分が、互いに接近するように湾曲し、 前記通蒸予定部の外縁が前記内縁に相似した湾曲形状を有していることにより、その外縁に尖った部分である先端が形成される パッケージ。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 ウ 相違点 <相違点> 本願補正発明は、「前記通蒸予定部における前記外縁の先端と前記内縁の先端との間の部分は、前記山型の頂上に相当する合流部であり、前記通蒸予定部のうちの前記合流部よりも前記一般部側の部分である非合流部は、前記一般部側から前記合流部に向かうにつれて幅が狭くなり、前記一般部のシール幅が、前記内縁の先端と前記外縁の先端との距離よりも広い」のに対し、引用発明は、突出シール域12の幅は、帯状シール域側から、内縁及び外縁の尖った部分に向けて略一定である点。 (4)当審の判断 ア 相違点の検討 上記相違点について以下検討する。 引用例2に、「シール部のシール幅を短くすることで、剥離強度を弱くすることができる。逆に、シール幅を長くすることで、剥離強度を強くすることができる。」([0123])と記載されているように、シール部の幅を短くすると剥離強度が弱くなり、長くすると剥離強度が高くなることは技術常識である。 また、引用例2は、[0067]に「内側湾曲形状7a1と第1の外側湾曲形状9a1とで挟まれた領域の幅β1が、内側湾曲形状7a1と第2の外側湾曲形状9a2とで挟まれた領域の幅β2よりも狭くなっているため、電子レンジで加熱して膨張すると、蒸気抜きシール部7を構成する先端部β1の細くなっている部分のみが剥離し、」と記載されており、[0068]に「蒸気抜きシール部7の内側湾曲形状7a1と外側湾曲形状9a2とで挟まれた領域の幅β1,β2が、蒸気抜きシール部7の先端に向かって狭くなっているため、電子レンジで加熱して膨張すると、蒸気抜きシール部7を構成する略中央部までが剥離し」と記載されており、内側湾曲形状と外側湾曲形状とで挟まれた領域(β1,β2)はシール部であるから、引用例2には、蒸気抜きシール部の先端部を剥離するために、先端部のシール幅を狭くする点が記載されているといえる。 そして、引用発明は、上記2(2)アの摘記事項(ウ)を参照すると、尖った部分から剥離するものであるところ、引用発明において、尖った部分の剥離をより確実にすることは当然の課題であるから、そのために上記引用例2記載の事項及び技術常識を用いて、尖った部分のシール幅を狭くすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 そして、引用発明において、尖った部分のシール幅を狭くすれば、尖った部分の両側の突出シール部の内縁と外縁との幅は、帯状シール側から尖った部分に向かうにつれて狭くなることとなる。 したがって、引用発明において、上記引用例2記載の事項及び技術常識を用いて、上記相違点に係る本願補正発明の事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。 イ 本願補正発明の奏する作用効果 本願補正発明により奏されるとされる効果は、引用発明、引用例2記載事項及び技術常識からみて格別なものとはいえない。 ウ 審判請求人の主張について 審判請求人は、審判請求書において「引用発明1は蒸気抜きに関するシールの形状を容器胴部23の形状によって決定している一方、引用発明2は蒸気抜きに関するシールの形状をシールバーの形状によって決定しています。このため、引用発明1と引用発明2とが電子レンジで加熱する際に、空気や蒸気を逃がすシール部の構造に関するものであるという点では共通しているとはいえ、シールバーの形状の工夫を前提としている引用発明2の蒸気抜きシール部7の構成を引用発明1に対して転用することが容易とみなすことに合理性がありません。」と主張する。 しかしながら、引用例1には、前記(2)ア(ウ)に記載されたスタンディングパウチの例と引用発明であるカップ容器の例の両方が記載されており、蒸気抜き機構について、同様の機構を袋容器とカップ容器とに用いることも記載されており、袋容器とカップ容器とは当業者が共通しており、蒸気抜き機構について、転用できることの示唆もあるといえる。したがって、袋容器のシール構造をカップ容器のシール構造に転用することが困難であるとはいえない。ゆえに、審判請求人の主張は理由が無い。 エ まとめ したがって、本願補正発明は、引用発明、及び引用例2記載事項及び技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (5)小括 したがって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 3 むすび 以上のとおりであり、本件補正発明は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定により違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、願書に添付された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。(上記「第2 平成30年8月10日付けの手続補正の補正却下の決定」の「1 本件補正について」の記載参照。) 2 引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例1及び2記載事項並びに引用発明については、上記「第2 平成30年8月10日付けの手続補正の補正却下の決定」の「2 独立特許要件についての検討」の「(2)引用例」に記載したとおりである。 3 対比・判断 本願発明は、本願補正発明から、通蒸予定部と一般部について、通蒸予定部の「前記内縁の先端と前記外縁の先端との距離よりも」、「前記一般部のシール幅が、」「広い」ことの限定を省いたものである。 そうすると、本願発明を特定するための事項をすべて含み、更に他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2 平成30年8月10日付けの手続補正の補正却下の決定」の「2 独立特許要件についての検討」の「(3)本願補正発明と引用発明の対比」及び「(4)当審の判断」に記載したとおりの引用発明及び引用例2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び引用例2記載事項及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 まとめ 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定より特許を受けることができない。ゆえに、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2019-04-26 |
結審通知日 | 2019-05-07 |
審決日 | 2019-05-23 |
出願番号 | 特願2014-24787(P2014-24787) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B65D)
P 1 8・ 575- Z (B65D) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小川 悟史 |
特許庁審判長 |
井上 茂夫 |
特許庁審判官 |
門前 浩一 佐々木 正章 |
発明の名称 | パッケージ |
代理人 | 恩田 博宣 |
代理人 | 恩田 誠 |