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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 A21D 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 A21D 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 A21D 審判 全部申し立て 2項進歩性 A21D |
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管理番号 | 1353135 |
異議申立番号 | 異議2018-700844 |
総通号数 | 236 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2019-08-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-10-17 |
確定日 | 2019-05-30 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6311151号発明「パン用穀粉組成物、パン類の製造方法及びパン類」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6311151号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1ないし7〕及び8について訂正することを認める。 特許第6311151号の請求項1、2、4、5、6及び7に係る特許を維持する。 特許第6311151号の請求項3及び8に係る特許についての申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6311151号の請求項1ないし8に係る特許は、平成25年10月22日に出願され、平成30年3月30日にその特許権の設定登録がされ、平成30年4月18日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、平成30年10月17日に特許異議申立人 石井 宏司(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、平成31年1月8日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である平成31年3月8日に意見書の提出及び訂正の請求を行なった。 その後、平成31年3月20日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)を行い、異議申立人は、平成31年4月23日に意見書を提出した。 第2 訂正の請求 1 訂正の内容 平成31年3月8日付けの訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次の訂正事項よりなる。(なお、下線を付した箇所は訂正箇所である。) (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「小麦粉と、加工澱粉と、小麦蛋白とを含有するパン用穀粉組成物であって、 前記小麦粉、前記加工澱粉及び前記小麦蛋白の総含有量100質量部に占める前記加工澱粉の含有量が20?40質量部であり、 前記小麦蛋白の含有量と前記加工澱粉の含有量が、質量比で下記式を満たす、パン用穀粉組成物。 12≦[加工澱粉の含有量]/[小麦蛋白の含有量]≦20」とあるのを、 「小麦粉と、加工澱粉と、小麦蛋白とを含有するパン用穀粉組成物であって、 前記パン用穀粉組成物中、前記小麦粉、前記加工澱粉及び前記小麦蛋白の総含有量が80?100質量%、前記小麦粉、前記加工澱粉及び前記小麦蛋白の総含有量100質量部に占める前記加工澱粉の含有量が25?40質量部であり、 前記小麦蛋白の含有量と前記加工澱粉の含有量が、質量比で下記式を満たし、 12≦[加工澱粉の含有量]/[小麦蛋白の含有量]≦20 前記小麦粉の蛋白含有率が10.0?15.0質量%であり、 前記加工澱粉がエステル化澱粉又はエーテル化澱粉であり、 前記小麦蛋白中の蛋白質の含有量が60質量%以上である、パン用穀粉組成物。」と訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項4が引用する請求項につき、「請求項3に記載の」とあるのを、「請求項1又は2に記載の」と訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項6が引用する請求項につき、「請求項1?5のいずれか1項に記載の」とあるのを、「請求項1、2、4及び5のいずれか1項に記載の」と訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項8を削除する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1 ア 訂正の目的について 訂正事項1は、訂正前の請求項1の「パン用穀粉組成物」に対して、「前記小麦粉、前記加工澱粉及び前記小麦蛋白の総含有量が80?100質量%」であることを限定し、以下同様に、「前記小麦粉、前記加工澱粉及び前記小麦蛋白の総含有量100質量部に占める前記加工澱粉の含有量」が「20?40質量部」であったのを「25?40質量部」に、「小麦粉」に対して「蛋白含有率が10.0?15.0質量%」であることを、「加工澱粉」に対して「エステル化澱粉又はエーテル化澱粉」であることを、「小麦蛋白」に対して、「蛋白質の含有量が60質量%以上である」ことをそれぞれ限定するというものである。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項1は、訂正前の特許請求の範囲の請求項3、特許明細書の段落【0014】、【0024】、【0025】及び【0028】に記載されたものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した範囲内の訂正である。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項1は、上記アのように訂正前の請求項1における記載をさらに限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 (2)訂正事項2 ア 訂正の目的について 訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項3を削除するというものである。 したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記アに記載したとおり、訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項3を削除するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した範囲内の訂正である。 したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記アに記載したとおり、訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項3を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 (3)訂正事項3 ア 訂正の目的について 訂正事項3は、特許請求の範囲の請求項4が引用する請求項につき、「請求項3に記載の」とあるのを、特許請求の範囲の請求項3を削除することに伴って訂正前の特許請求の範囲の請求項3が引用していた特許請求の範囲の請求項1又は2を引用するために「請求項1又は2に記載の」と訂正するというものである。 したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記アに記載したとおり、訂正事項3は、特許請求の範囲の請求項4が引用する請求項につき、特許請求の範囲の請求項3を削除することに伴って訂正前の特許請求の範囲の請求項3が引用していた特許請求の範囲の請求項1又は2を引用するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した範囲内の訂正である。 したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記アに記載したとおり、訂正事項3は、特許請求の範囲の請求項4が引用する請求項につき、特許請求の範囲の請求項3を削除することに伴って訂正前の特許請求の範囲の請求項3が引用していた特許請求の範囲の請求項1又は2を引用するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 (4)訂正事項4 ア 訂正の目的について 訂正事項4は、特許請求の範囲の請求項6が引用する請求項につき、「請求項1?5のいずれか1項に記載の」とあるのを、「請求項1、2、4及び5のいずれか1項に記載の」と訂正することにより特許請求の範囲の請求項6の引用請求項数を削減するというものである。 したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記アに記載したとおり、訂正事項4は、特許請求の範囲の請求項6の引用請求項数を削減するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した範囲内の訂正である。 したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記アに記載したとおり、訂正事項4は、特許請求の範囲の請求項6の引用請求項数を削減するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 (5)訂正事項5 ア 訂正の目的について 訂正事項5は、特許請求の範囲の請求項8を削除するというものである。 したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記アに記載したとおり、訂正事項5は、特許請求の範囲の請求項8を削除するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した範囲内の訂正である。 したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記アに記載したとおり、訂正事項5は、特許請求の範囲の請求項8を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 3 一群の請求項について 訂正事項1ないし4に係る訂正前の請求項1ないし7について、請求項2ないし7はそれぞれ請求項1を直接または間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。 そして、本件訂正は、訂正前の請求項〔1ないし7〕という一群の請求項について請求されたものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合するものである。 4 むすび 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号または第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1ないし7〕及び8について訂正することを認める。 第3 特許異議の申立てについて 1 本件訂正発明 本件訂正の請求により訂正された請求項1、2、4、5、6及び7に係る発明(以下それぞれ「本件訂正発明1」、「本件訂正発明2」、「本件訂正発明4」、「本件訂正発明5」、「本件訂正発明6」及び「本件訂正発明7」という。また、これらを総称して「本件訂正発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1、2、4、5、6及び7に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。(なお、下線を付した箇所は訂正箇所である。) 「【請求項1】 小麦粉と、加工澱粉と、小麦蛋白とを含有するパン用穀粉組成物であって、 前記パン用穀粉組成物中、前記小麦粉、前記加工澱粉及び前記小麦蛋白の総含有量が80?100質量%、前記小麦粉、前記加工澱粉及び前記小麦蛋白の総含有量100質量部に占める前記加工澱粉の含有量が25?40質量部であり、 前記小麦蛋白の含有量と前記加工澱粉の含有量が、質量比で下記式を満たし、 12≦[加工澱粉の含有量]/[小麦蛋白の含有量]≦20 前記小麦粉の蛋白含有率が10.0?15.0質量%であり、 前記加工澱粉がエステル化澱粉又はエーテル化澱粉であり、 前記小麦蛋白中の蛋白質の含有量が60質量%以上である、パン用穀粉組成物。 【請求項2】 小麦粉が強力粉である、請求項1に記載のパン用穀粉組成物。 【請求項3】(削除) 【請求項4】 エステル化澱粉がアセチル化澱粉であり、エーテル化澱粉がヒドロキシプロピル化澱粉である、請求項1又は2に記載のパン用穀粉組成物。 【請求項5】 アセチル化澱粉がアセチル化架橋澱粉であり、ヒドロキシプロピル化澱粉がヒドロキシプロピル化架橋澱粉である、請求項4に記載のパン用穀粉組成物。 【請求項6】 請求項1、2、4及び5のいずれか1項に記載のパン用穀粉組成物を用いてパン生地を調製し、該生地を焼成することを含む、パン類の製造方法。 【請求項7】 パン生地が、パン用穀粉組成物100質量部に対して乳化剤を0.1?2.0質量部含有する、請求項6に記載のパン類の製造方法。 【請求項8】(削除)」 2 取消理由の概要 取消理由の概要は以下のとおりである。 [理由1]本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された以下の甲第1号証ないし甲第3号証のいずれかに記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 [理由2]本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された以下の甲第1号証ないし甲第6号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 [理由3]本件特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条6項1号に規定する要件を満たしていないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 (1)小麦粉、加工澱粉及び小麦蛋白のパン用穀粉組成物中の総含有量について、発明の詳細な説明において、段落【0028】には、「パン用穀粉組成物中、小麦粉、加工澱粉、小麦蛋白の総含有量は80?100質量%であることが好ましく・・」、段落【0015】には「パン用穀粉組成物中、小麦粉の含有量は60?80質量%であることが好ましく、・・」と記載され、段落【0094】【表1】に「小麦粉」、「加工澱粉」及び「小麦蛋白」の配合量がそれぞれ示されているところ、特許請求の範囲の請求項1の記載「小麦粉と、加工澱粉と、小麦蛋白とを含有するパン用穀粉組成物」、及び同請求項8の記載「少なくとも小麦粉と、加工澱粉と、小麦蛋白と、水と、イーストとを配合し(た)パン生地」に使用するパン用穀粉組成物中の小麦粉、加工澱粉及び小麦蛋白をあわせた総含有量(質量%)については規定されておらず、小麦粉、加工澱粉及び小麦蛋白をあわせた総含有量が極少量の例えば10質量%で、残部が米粉、イースト、イーストフード、ショートニング等である場合などを含むことを勘案すると、パン用穀粉組成物中の小麦粉、加工澱粉及び小麦蛋白をあわせた総含有量(質量%)の全ての範囲において「十分な体積のパンに焼き上げることができると同時に、よりソフトで、しっとり感、口溶け及び風味のいずれも良好であり、しかも、澱粉の劣化に伴う経時的な品質の低下が少ないパンに仕上げることができる」という課題を解決できると当業者が理解することはできない。 したがって、本件請求項1及び8並びに請求項1を直接あるいは間接的に引用する請求項2ないし7に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に記載された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。 (2)段落【0094】の【表1】などの実施例(本発明品)に関する記載に対応して示された「小麦粉」、「加工澱粉」及び「小麦蛋白」は、それぞれ「強力粉」、「ヒドロキシプロピル化リン酸架橋タピオカ、ヒドロキシプロピル化タピオカ、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋ワキシーコーン、アセチル化アジピン酸架橋ワキシーコーン」、「活性グルテン1(エマソフト(登録商標)EX-100)、活性グルテン2(A-グル(登録商標)G)についてのみ官能評価により効果が確認されているところ、特許請求の範囲の請求項1及び請求項8に記載された「小麦粉」、「加工澱粉」及び「小麦蛋白」の全ての種類について、「十分な体積のパンに焼き上げることができると同時に、よりソフトで、しっとり感、口溶け及び風味のいずれも良好であり、しかも、澱粉の劣化に伴う経時的な品質の低下が少ないパンに仕上げることができる」という課題を解決できると当業者が理解することはできない。 したがって、本件請求項1及び8並びに請求項1を直接あるいは間接的に引用する請求項2ないし7に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に記載された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。 <甲号証一覧> 甲第1号証:特開平11-42044号公報 甲第2号証:特開平9-271313号公報 甲第3号証:特開平11-103757号公報 甲第4号証:土山守安、「加工でん粉の特徴と主な用途」、食品と開発、UBMメディア株式会社、2012年8月1日、Vol.47、NO.8、p.4-6 甲第5号証:鈴木千景、「ユニークな食感をもたらす加工澱粉」、月刊 フードケミカル、株式会社 食品化学新聞社、2005年8月1日、Vol.21、No.8、p.34-37 甲第6号証:田中康夫、松本博編、「製パンの科学<I> 製パンプロセスの科学」、株式会社 光琳、平成3年3月15日、p.254-259 特許異議申立書において証拠として挙げられたが取消理由において採用しなかったものとして、 甲第7号証:柴田茂久、中江利昭編、「小麦粉製品の知識」、株式会社幸書房、1990年3月20日初版第1刷、p.72-81 (当審注:取消理由における甲第1号証ないし甲第6号証は、異議申立書において挙げられた甲第1号証ないし甲第6号証と同一のものである。以下、上記「甲第〇号証」を略して「甲〇」という。) 3 甲1ないし3の記載 (1)甲1 本件特許の出願前に頒布された甲1には「パンの製造法」に関して次の記載がある(なお、下線は理解の一助のために当審が付与した。以下同様)。 ア 甲1の記載(その1) 1a)「【請求項1】パンの製造に際し、小麦粉に対し膨潤度7?11mlの小麦蛋白を0.3?5重量%添加するパンの製造法。 【請求項2】小麦粉に対し、加工澱粉を0.5?30重量%添加する請求項1に記載のパンの製造法。」 1b)「【0010】本発明で使用する小麦粉は、一般にパンの製造に使用されている蛋白含量が約11?13重量%の準強力乃至強力小麦粉を用いるが、パンの種類によっては、中力小麦粉、薄力小麦粉を一部混用することもできる。・・・」 1c)「【0016】本発明に使用する加工澱粉とは、澱粉に何らかの加工を施したものを総称し、具体的には架橋澱粉、エーテル化澱粉、エステル化澱粉、架橋エーテル化澱粉、架橋エステル化澱粉など化学的処理をした澱粉及びこれらをドラムドライヤーやエクストルーダなどでアルファー化したアルファー化澱粉があげられる。これ等いずれの加工澱粉もほぼ同じようにパンの内相改善に寄与するが、パンの食感を変えたいなどの目的には、加工澱粉の種類を選択して用いる。」 1d)上記1a)から、小麦粉に対する加工澱粉の割合を30重量%、小麦蛋白の割合を1.5重量%とすると、小麦粉、加工澱粉及び小麦蛋白の総含有量の100質量部に占める加工澱粉の含有量は、30/(100+30+1.5)×100=22.8質量部となることが分かる。 1e)上記1a)から、加工澱粉の含有量/小麦蛋白の含有量=30/1.5=20となることが分かる。 1f)上記1b)から、小麦粉の蛋白含有率が約11?13重量%であることが分かる。 1g)上記1c)から、加工澱粉として、エーテル化澱粉、エステル化澱粉を用いることが分かる。 1h)上記1a)から、小麦粉、加工澱粉及び小麦蛋白は、パンの原料粉であることが分かる。 イ 甲1発明1 上記アからみて、甲1には次の発明(以下、「甲1発明1」という。)が記載されている。 「小麦粉と、加工澱粉と、小麦蛋白とを含有するパンの原料粉であって、 小麦粉、加工澱粉及び小麦蛋白の総含有量の100質量部に占める加工澱粉の含有量が22.8質量部であり、加工澱粉の含有量/小麦蛋白の含有量は20、小麦粉の蛋白含有率が約11?13重量%であり、加工澱粉がエステル化澱粉又はエーテル化澱粉であるパンの原料粉。」 ウ 甲1の記載(その2) 1i)「【0041】 【参考例4】攪拌下の水120部に硫酸ナトリウム10部を溶解し、小麦澱粉100部を分散し、これに3%水酸化ナトリウム溶液を滴下し、pH11.2?11.4に維持しながらトリメタリン酸ソーダ0.05部を加えて41℃で10時間反応後、10%硫酸で中和、水洗、脱水、乾燥して架橋小麦澱粉を得た。これを試料No.7とする。 【0042】 【実施例1】蛋白含量12%の小麦粉100部と市販グルテン(膨潤度14.5mlの乾燥小麦蛋白)または試料No.1?No.5の小麦蛋白を用い、下記割合の中種法で餡パンを製造した。その際、餡としては市販品を使用した。 【0043】 <配合割合> 中種 対照区 実施例区及び比較例区 小麦粉 70 部 70 部 イーストフード 0.1部 0.1部 イースト 3 部 3 部 水 31 部 31 部 本捏 小麦粉 30 部 30 部 小麦蛋白 - 可変 砂糖 21 部 21 部 食塩 1 部 1 部 脱脂粉乳 2 部 2 部 マーガリン 8 部 8 部 水 19 部 19部+小麦蛋白使用量と等量*1 *1:対照区程度の生地の硬さになるように幾分多めに添加」 1j)「【0047】 【実施例2】実施例1に於て、本捏時の配合割合を下記の割合にした以外、実施例1と同じようして餡パンを製造した。小麦蛋白には試料No.2、加工澱粉には試料No.6、アミラーゼとしてはグルコチームDB(ナガセ生化学工業(株)製のアミラーゼ製剤でアミラーゼ活性が20000単位/g)を用い、加工澱粉とグルコチームDBの添加量及び得られた餡パンの評価については表4に示した。尚、表4のグルコチームDBの添加量は、小麦粉1kgに対するアミラーゼ活性で表示し、餡パンの評価は実施例1に準じた 【0048】一方、食感に関して、小麦粉に対する加工澱粉の添加量が8重量%の餡パンでは対照区の餡パンと殆ど差はみられなかったが、小麦粉に対する加工澱粉の添加量が25%では対照区の餡パンに比してもちもち感が強く感じられた。 【0049】 <本捏時の配合割合> 対照区 実施例区 小麦粉 30部 30 部 小麦蛋白(試料No.2) - 1.5部 砂糖 21部 21 部 食塩 1部 1 部 脱脂粉乳 2部 2 部 加工澱粉(試料No.6) - 可変 グルコチームDB - 可変 マーガリン 8部 8部 水 19部 20.5部+加工澱粉使用量の約70%」 1k)「【0050】 【表4】 」 1l)上記1i)ないし1j)から、パンの原料粉中の小麦粉、小麦蛋白及び加工澱粉の含有量は、小麦粉70部(中種)+30部(本捏時)=100部、小麦蛋白含量は1.5部、上記1k)【表4】の下2段から、加工澱粉は25部であって、[100(小麦粉)+1.5(小麦蛋白)+25(加工澱粉)]/[100(小麦粉)+1.5(小麦蛋白)+25(加工澱粉)+21(砂糖)+1(食塩)+2(脱脂粉乳)+0.1(イーストフード)+3(イースト)]×100=126.5/153.6×100=82%となることが分かる。 1m)上記1i)ないし1j)から、パンの製造原料中の小麦粉、小麦蛋白及び加工澱粉の含有量は、小麦粉70部(中種)+30部(本捏時)=100部、小麦蛋白含量は1.5部、1k)【表4】の下2段から、加工澱粉は25部であるから、小麦粉、加工澱粉、小麦蛋白の総含有量100質量部に占める加工澱粉の割合は、25(加工澱粉)/ [100(小麦粉)+25(加工澱粉)+1.5(小麦蛋白)]×100=19.8質量部であることが分かる。 1n)上記1i)ないし1j)から、パンの製造原料中の小麦蛋白含量は1.5部、1k)【表4】の下2段から、加工澱粉は25部であるから、加工澱粉の含有量に対する小麦蛋白の含有量は、25(加工澱粉)/1.5(小麦蛋白)=16.7であることが分かる。 エ 甲1発明2 上記ウ及びアの1f)、1g)からみて、甲1には次の発明(以下、「甲1発明2」という。)が記載されている。 「小麦粉と、加工澱粉と、小麦蛋白とを含有するパンの原料粉であって、 パンの製造原料中の小麦粉、加工澱粉及び小麦蛋白の総含有量が82%、小麦粉、加工澱粉及び小麦蛋白の総含有量の100質量部に占める加工澱粉の含有量が19.8質量部であり、加工澱粉の含有量/小麦蛋白の含有量は16.7、小麦粉の蛋白含有率が約11?13重量%であり、加工澱粉がエステル化澱粉又はエーテル化澱粉であるパンの原料粉。」 (2)甲2 本件特許の出願前に頒布された甲2には「パン」に関して次の記載がある。 ア 甲2の記載 2a)「【0034】 【実施例】 【参考例1】水120部に硫酸ソーダ20部を溶解し、市販の馬鈴薯澱粉100部を加えてスラリ-とし、攪拌下4%の苛性ソーダ水溶液30部、プロピレンオキサイド4部、エピクロルヒドリン0.1部(試料No.1)、0.14部(試料No.2)、0.4部(試料No.3)、0.8部(試料No.4)をそれぞれ加え、41℃で21時間反応せしめた後、硫酸で中和、水洗した。これらの約500cpsを示す濃度はそれぞれ約8.5%、10%、15%、16.5%であり、膨潤開始温度は約53℃であった。次いで、それぞれ25%の水性スラリ-とし、表面温度150℃のダブルドラムドライヤーで加熱処理し、乾燥した。この時の加熱処理温度は102℃であった。次いでこの乾燥物を粉砕して試料No.1?4の冷水膨潤澱粉を得た。その物性を表1に示す。尚これらのエーテル化度(DS)は0.08?0.85の範囲にあった。また、表1で膨潤度比は冷水膨潤度/加熱膨潤度を表す。」 2b)「【0037】 【参考例3】水120部に硫酸ソーダ10部、タピオカ澱粉100部を加えたスラリ-を4点用意し、これらに攪拌下3%の苛性ソーダ水溶液を加えてpH11.1?11.3に保持しながら、トリメタリン酸ソーダ1.1部(試料、No.6)、0.2部(試料No.7)、0.1部(試料No.8)、0.03部(試料No.9)をそれぞれに加え、39℃で10時間反応した後、塩酸で中和し、水洗、脱水、乾燥して試料No.6?9の架橋澱粉を得た。これらの物性を表2に示す。」 2c)「【0051】 【実施例3】実施例1に於て、澱粉類として試料No.3の冷水膨潤澱粉と試料No.7の架橋澱粉を用い、小麦粉として超強力小麦粉(蛋白質含量14.5%)と薄力小麦粉(蛋白質含量8.0%)を用い、これらを表5に示す使用割合(部で表す)の原料粉及び加水量(卵黄の水分に由来する9部を含む)にて実施例1に従ってパンを製造した。尚、原料粉の蛋白質含量は一部活性グルテン(蛋白質含量76.5%、以下別の実施例でも同じものを使用)を使用して7.5-8.0重量%になる使用割合にした。」 2d)「【0055】 【実施例4】実施例3に於て、表7に示す使用割合(部で表す)の原料粉を使用し、加水量を卵黄由来の水分を含めて75部にて実施例3に従ってパンを製造して評価し、その結果を表8に示す。 【0056】 【表7】 【0057】 【表8】 」 2e)「【0066】 <配合割合> 超強力小麦粉(蛋白質含量14.5%) 40 薄力小麦粉(蛋白質含量7.5%) 28 冷水膨潤澱粉(試料No.2) 9 架橋澱粉(試料No.6) 23 イーストフード 0.1 B.B.J(S.I.Lesaffre社製,生地改良剤) 0.9 砂糖 23 食塩 1.1 脱脂粉乳 2.7 卵黄 18 冷凍イースト 5.5 水 60 マーガリン 18」 2f)上記2d)の段落【0056】における表7における原料粉No.9の組成から、原料粉No.9には、小麦粉に関して5部(超強力小麦粉)+59部(薄力小麦粉)=64部、エーテル化された加工澱粉(冷水膨潤澱粉)=11部、及び小麦蛋白(活性グルテン)が2部含まれることから、小麦粉、加工澱粉及び小麦蛋白の総含有量100質量部に占めるエーテル化された加工澱粉の含有量は、11/[64+11+2]×100=14質量部となること、及び加工澱粉の含有量/小麦蛋白の含有量=11/2=5.5となることが分かる。 2g)上記2e)には、超強力小麦粉の蛋白質含量が14.5%、薄力小麦粉の蛋白質含量が7.5%であることが示されている。また、上記2d)における表7の組成から、超強力小麦粉は5部、薄力小麦粉は59部であるから、小麦粉の蛋白含有率は、[5×0.145+59×0.075]/[5+59]×100=8%であることが分かる。 2h)上記2c)によると、小麦蛋白(活性グルテン)中の蛋白質の含有量は、76.5%であることが分かる。 イ 甲2発明 上記アからみて、甲2には次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されている。 「小麦粉と、冷水膨潤澱粉と、活性グルテンとを含有するパンの原料粉であって、 小麦粉、冷水膨潤澱粉及び活性グルテンの総含有量の100質量部に占める冷水膨潤澱粉の含有量が14質量部であり、冷水膨潤澱粉の含有量/活性グルテンの含有量は5.5、小麦粉の蛋白含有率が約8重量%であり、冷水膨潤澱粉がエーテル化澱粉であって、活性グルテンの蛋白質の含有量が76.5%である、パンの原料粉。」 (3)甲3 本件特許の出願前に頒布された甲3には「マイクロ波加熱用のパン」に関して次の記載がある。 ア 甲3の記載(その1) 3a)「【0019】 【参考例1】水120部に硫酸ソーダ10部、タピオカ澱粉100部を加えたスラリーを5点用意し、これらに攪拌下3%苛性ソーダ水溶液を加えてpH11.1?11.3に維持しながら、トリメタリン酸ソーダを1.5部(試料No.1)、0.75部(試料No.2)、0.2部(試料No.3)、0.1部(試料No.4)、0.03部(試料No.5)それぞれに加え、39℃で10時間反応した後、塩酸で中和し、水洗、脱水、乾燥して試料No.1?5の架橋澱粉を得た。これらの加熱膨潤度及び加熱溶解度を表1に示す。」 3b)「【0021】 【参考例5】水120部に硫酸ソーダ20部を溶解し、市販の馬鈴薯澱粉100部を加えてスラリーとし、攪拌下4%の苛性ソーダ水溶液30部、プロピレンオキサイド4部、エピクロルヒドリン0.1部(試料No.11)、0.14部(試料No.12)、0.4部(試料No.13)、0.8部(試料No.14)をそれぞれ加え、41℃で21時間反応せしめた後、硫酸で中和、水洗した。これらの約500cpsを示す濃度はそれぞれ約8.5%、10%、15%、16.5%であり、膨潤開始温度は約53℃であった。次いで、それぞれ25%の水性スラリーとし、表面温度150℃のダブルドラムドライヤーで加熱処理し、乾燥した。この時の加熱処理温度は102℃であった。次いでこの乾燥物を粉砕して試料No.11?14の冷水膨潤澱粉を得た。その加熱溶解度(%)、冷水膨潤度及び膨潤度比(冷水膨潤度/加熱膨潤度)を表2に示す。尚これらのエーテル化度(DS)は0.08?0.85の範囲にあった。」 3c)「【0024】 【実施例1】蛋白質含量12.2%の小麦粉、加熱膨潤度と加熱溶解度の異なる澱粉製品として試料No.1?No.8の膨潤抑制澱粉、試料No.9の小麦澱粉、試料No.10のコーンスターチ、冷水膨潤澱粉として試料No.13(加熱溶解度2.5%、冷水膨潤度8.5、膨潤度比1.02)を用い、小麦粉と膨潤抑制澱粉または原料澱粉の合計量を100部とし、下記配合割合の中種法でロールパンを製造した。」 「【0028】 【実施例2】実施例1で使用した小麦粉と、試料No.2の膨潤抑制澱粉の合計量を100部、試料No.13の冷水膨潤澱粉1.2部、市販の活性グルテン(蛋白含量76.5%)を用い、下記配合割合の直捏法でロールパンを製造した。可変した原材料の添加量及び得られたロールパンを実施例1に準じて評価した。結果を表4に示す。尚、加水量は対照区と同じ程度の生地粘性になるような割合で添加した。 【0029】 <配合割合> 対照区 実施例区及び比較例区 小麦粉 100 部 可変 膨潤抑制澱粉(試料No.2) - 可変 冷水膨潤澱粉(試料No.13) - 1.2 部 活性グルテン - 可変 イーストフード 0.12部 0.12部 イースト 3 部 3 部 砂糖 10 部 10 部 食塩 1.8 部 1.8 部 脱脂粉乳 3 部 3 部 全卵 7 部 7 部 水 16 部 可変 ショートニング 8 部 8 部 <製造条件> 捏上温度 27℃ ホイロ 発酵時間 90分 焼成(電気オーブン) ベンチタイム 20分 上火 190℃ 分割 75g 下火 180℃ 時間 13分 時間 13分 【0030】 【表4】 小麦粉 膨潤 活性 加水量 外観 外皮 食感 抑制澱粉 グルテン 対照区 100 - - 57 △ × × 比較例区 97 3 - 56 △ ○ △ 実施例区 93 7 - 55 ○ ○ ○ 実施例区 87 13 - 54 ◎ ◎ ◎ 実施例区 75 25 1.0 54 ◎ ◎ ◎ 実施例区 65 35 2.7 54 ○ ○ ○ 比較例区 55 45 4.5 55 △ ○ × 」 3d)上記3c)において、パンの原料粉には、小麦粉65部、活性グルテン2.7部、膨潤抑制澱粉35部(表4下から2番目の実施例区参照)、エーテル化された加工澱粉として冷水膨潤澱粉1.2部、イーストフード0.12部、イースト3部、砂糖10部、食塩1.8部、脱脂粉乳3部、ショートニング8部が含まれていることが示されており、 パンの原料粉中の小麦粉、エーテル化された加工澱粉(冷水膨潤澱粉)及び小麦蛋白(活性グルテン)の含有量は、[65(小麦粉)+1.2(冷水膨潤澱粉)+2.7(活性グルテン)]/[65(小麦粉)+1.2(冷水膨潤澱粉)+2.7(活性グルテン)+35(膨潤抑制澱粉)+0.12(イーストフード)+3(イースト)+10(砂糖)+1.8(食塩)+3(脱脂粉乳)+8(ショートニング)]×100=53質量% 小麦粉、エーテル化された加工澱粉(冷水膨潤澱粉)及び小麦蛋白(活性グルテン)の総含有量100質量部に占めるエステル化又はエーテル化された加工澱粉(冷水膨潤澱粉)の含有量は、1.2(冷水膨潤澱粉)/[65(小麦粉)+1.2(冷水膨潤澱粉)+2.7(活性グルテン)]×100=1.7質量部 エーテル化された加工澱粉(冷水膨潤澱粉)の含有量/小麦蛋白(活性グルテン)=1.2(冷水膨潤澱粉)/2.7(活性グルテン)=0.4であることが分かる。 3e)上記3c)段落【0024】の記載から、小麦粉の蛋白質含量は12.2質量%であることが分かる。 3f)上記3c)段落【0028】の記載から、活性グルテンの蛋白質含量は、76.5質量%であることが分かる。 イ 甲3発明1 上記アからみて、甲3には次の発明(以下、「甲3発明1」という。)が記載されている。 「小麦粉と、冷水膨潤澱粉と、活性グルテンとを含有するパンの原料粉であって、 パンの原料粉中、小麦粉、冷水膨潤澱粉及び活性グルテンの総含有量が53質量%、小麦粉、冷水膨潤澱粉及び活性グルテンの総含有量100質量部に占める冷水膨潤澱粉の含有量が1.7質量部、冷水膨潤澱粉の含有量/活性グルテンの含有量は0.4、小麦粉の蛋白質含有率は12.2質量%であり、冷水膨潤澱粉がエーテル化澱粉であり、活性グルテン中の蛋白質含量は76.5質量%であるパンの原料粉。」 ウ 甲3の記載(その2) 3g)「【0033】 【実施例4】蛋白質含量11.5%の小麦粉を使用し、下記の配合割合で、中種法を用いて、バンズを製造し、実施例1と同じように評価した。結果を表6に示す。尚、本捏時に使用した活性グルテン(蛋白質含量76.5%)と水の添加量も表6に記載した。 <配合割合> 中種 対照区 実施例区及び比較例区 小麦粉 70 部 70 部 イーストフード 0.1部 0.1部 イースト 2.5部 2.5部 水 42 部 42 部 本捏 小麦粉 30 部 8 部 膨潤抑制澱粉(試料No.3) - 22 部 冷水膨潤澱粉(試料No.14) - 1.5部 砂糖 10 部 10 部 食塩 2 部 2 部 脱脂粉乳 4 部 4 部 モノグリ 0.3部 0.3部 活性グルテン - 可変 水 24 部 可変 ショートニング 8 部 8 部 【0034】 <製造条件> 中捏上温度 26℃ ベンチタイム 20分 中種発酵時間 1.5時間 ホイロ 50分 本捏捏上温度 28℃ 焼成(電気オーブン) フロアータイム 20分 上火 220℃ 分割 70g 下火 210℃ 時間 5分 【0035】 【表6】 活性グルテン 加水量 蛋白質含量*1外観 外皮 食感 対照区 - 57部 11.5 % △ × × 実施例区 - 54部 8.84% ○ ○ ○ 実施例区 1.3部 55部 9.69% ◎ ◎ ◎ 実施例区 3.0部 58部 10.78% ◎ ◎ ◎ 実施例区 4.0部 60部 11.40% ○ ○ ○ 比較例区 6.0部 64部 12.61% △ × × *1小麦粉、膨潤抑制澱粉、冷水膨潤澱粉、活性グルテンの合計量に対する小麦粉由来の蛋白質含量。」 3h)上記3g)において、パンの原料粉には、小麦粉70部(中種)+8部(本捏)=78部、活性グルテン1.3部(表6の実施例区の上から2番目参照)、膨潤抑制澱粉22部、冷水膨潤澱粉1.5部、イーストフード0.1部、イースト2.5部、砂糖10部、食塩2部、脱脂粉乳4部、モノグリ0.3部、ショートニング8部が含まれていることが示されており、 パンの原料粉中の小麦粉、エステル化又はエーテル化された加工澱粉(冷水膨潤澱粉)及び小麦蛋白(活性グルテン)の含有量は、[78(小麦粉)+1.5(冷水膨潤澱粉)+1.3(活性グルテン)]/[78(小麦粉)+1.5(冷水膨潤澱粉)+1.3(活性グルテン)+22(膨潤抑制澱粉)+0.1(イーストフード)+2.5(イースト)+10(砂糖)+2(食塩)+4(脱脂粉乳)+0.3(モノグリ)+8(ショートニング)]×100=62質量% 小麦粉、エーテル化された加工澱粉(冷水膨潤澱粉)及び小麦蛋白(活性グルテン)の総含有量100質量部に占めるエステル化又はエーテル化された加工澱粉(冷水膨潤澱粉)の含有量は、1.5(冷水膨潤澱粉)/[78(小麦粉)+1.5(冷水膨潤澱粉)+1.3(活性グルテン)]×100=1.8質量部 エステル化又はエーテル化された加工澱粉(冷水膨潤澱粉)の含有量/小麦蛋白(活性グルテン)=1.5(冷水膨潤澱粉)/1.3(活性グルテン)=1.2であることが分かる。 3i)上記3g)の段落【0033】の記載から、小麦粉の蛋白質含量は、11.5質量%であることが分かる。 3j)上記3g)の段落【0033】の記載から、活性グルテンの蛋白質含量は、76.5質量%であることが分かる。 エ 甲3発明2 上記ウからみて、甲3には次の発明(以下、「甲3発明2」という。)が記載されている。 「小麦粉と、冷水膨潤澱粉と、活性グルテンとを含有するパンの原料粉であって、 パンの原料粉中、小麦粉、冷水膨潤澱粉及び活性グルテンの総含有量が62質量%、小麦粉、冷水膨潤澱粉及び活性グルテンの総含有量100質量部に占める冷水膨潤澱粉の含有量が1.8質量部、冷水膨潤澱粉の含有量/活性グルテンの含有量は1.2、小麦粉の蛋白質含有率は11.5質量%であり、冷水膨潤澱粉がエーテル化澱粉であり、活性グルテン中の蛋白質含量は76.5質量%であるパンの原料粉。」 4 取消理由([理由1]、[理由2])についての判断 [1]本件訂正発明1 (1)甲1発明1との対比・判断 本件訂正発明1と甲1発明1とを対比する。 甲1発明1における「パンの原料粉」は、その構成、機能又は技術的意義からみて、本件訂正発明1における「パン用穀粉組成物」に相当し、甲1発明1における「加工澱粉の含有量/小麦蛋白の含有量は20」であることは、本願訂正発明1における「小麦蛋白の含有量と前記加工澱粉の含有量が、質量比で」、「12≦[加工澱粉の含有量]/[小麦蛋白の含有量]≦20」を満たすことに相当し、甲1発明1における「小麦粉の蛋白含有率が約11?13重量%」であることは、本件訂正発明1における「小麦粉の蛋白含有率が10.0?15.0質量%」であることに相当する。 そうすると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。 [一致点] 「小麦粉と、加工澱粉と、小麦蛋白とを含有するパン用穀粉組成物であって、 前記小麦蛋白の含有量と前記加工澱粉の含有量が、質量比で下記式を満たし、 12≦[加工澱粉の含有量]/[小麦蛋白の含有量]≦20 前記小麦粉の蛋白含有率が10.0?15.0質量%であり、 前記加工澱粉がエステル化澱粉又はエーテル化澱粉である、パン用穀粉組成物。」 [相違点1] 本件訂正発明1においては「パン用穀粉組成物中、小麦粉、加工澱粉及び小麦蛋白の総含有量が80?100質量%」であるのに対して、甲1発明1においては、パンの製造原料中の小麦粉、加工澱粉及び小麦蛋白の総含有量について不明である点。 [相違点2] 本件訂正発明1においては「小麦粉、加工澱粉及び小麦蛋白の総含有量100質量部に占める前記加工澱粉の含有量が25?40質量部」であるのに対して、甲1発明1においては「小麦粉、加工澱粉及び小麦蛋白の総含有量の100質量部に占める加工澱粉の含有量が22.8質量部」である点。 [相違点3] 本件訂正発明1においては「小麦蛋白中の蛋白質の含有量が60質量%以上」であるのに対して、甲1発明1においては、小麦蛋白中の蛋白質の含有量について不明である点。 以下、事案に鑑み、まず相違点2について検討する。 [相違点2について] 本件訂正発明1は、甲1発明1と上記相違点2において相違するから、本件訂正発明1は甲1発明1であるとはいえない。 また、甲1の段落【0026】及び【0027】には、「【0026】小麦粉に対する加工澱粉の添加量が0.5重量%未満では殆ど変化がみられず、30重量%を越えると逆に内相の膜が厚くなる。 【0027】内相の改善以外にパンの食感を変える目的で従来から加工澱粉の添加は行われてきた。この目的の場合には、小麦粉に対して加工澱粉を10重量%程度以上添加し、例えばもちもち感にはエーテル化澱粉やエステル化澱粉、さくさく感には架橋澱粉、架橋エーテル化澱粉や架橋エステル化澱粉というように加工澱粉の種類を選択して用いることがより効果的である。従って、本発明においては、加工澱粉を併用する場合には、10%以下では主に内相の厚みの改良であり、10?30重量%では、従来の目的の効果と内相の改良という2つの効果を発揮することなる。」と記載されており、この記載からみて、甲1発明1において予定される小麦粉に対する加工澱粉の添加量の上限は30%であると認められる。 そうすると、甲1発明1において、小麦粉に対する加工澱粉の添加量を30%を超える割合とすることにより、小麦粉、加工澱粉及び小麦蛋白の総含有量の100質量部に占める加工澱粉の含有量を25?40質量部とすることは、当業者が容易になし得たとすることはできない。 さらに、甲4ないし甲6の記載も、甲1発明1の小麦粉に対する加工澱粉の添加量を30%を超える割合とすることを示唆するものではないから、甲1発明1及び甲4ないし甲6の記載に基いて上記相違点2に係る本件訂正発明1の発明特定事項とすることは当業者が容易になし得たとすることはできない。 したがって、他の相違点について検討するまでもなく本件訂正発明1は甲1発明1であるとはいえず、また、甲1発明1及び甲4ないし甲6の記載に基いて当業者が容易に発明することができたとはいえない。 (2)甲1発明2との対比・判断 本件訂正発明1と甲1発明2とを対比する。 甲1発明2における「パンの原料粉」は、その構成、機能又は技術的意義からみて、本件訂正発明1における「パン用穀粉組成物」に相当し、甲1発明2における「パンの製造原料中の小麦粉、加工澱粉及び小麦蛋白の総含有量が82%」であることは、本件訂正発明1における「パン用穀粉組成物中、小麦粉、加工澱粉及び小麦蛋白の総含有量が80?100質量%」であることに相当し、甲1発明2における「加工澱粉の含有量/小麦蛋白の含有量は16.7」であることは、本件訂正発明1における「小麦蛋白の含有量と加工澱粉の含有量が、質量比で」、「12≦[加工澱粉の含有量]/[小麦蛋白の含有量]≦20」を満たすことに相当し、甲1発明2における「小麦粉の蛋白含有率が約11?13重量%」であることは、本件訂正発明1における「小麦粉の蛋白含有率が10.0?15.0質量%」であることに相当する。 そうすると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。 [一致点] 「小麦粉と、加工澱粉と、小麦蛋白とを含有するパン用穀粉組成物であって、 前記パン用穀粉組成物中、前記小麦粉、前記加工澱粉及び前記小麦蛋白の総含有量が80?100質量%、 前記小麦蛋白の含有量と前記加工澱粉の含有量が、質量比で下記式を満たし、 12≦[加工澱粉の含有量]/[小麦蛋白の含有量]≦20 前記小麦粉の蛋白含有率が10.0?15.0質量%であり、 前記加工澱粉がエステル化澱粉又はエーテル化澱粉である、パン用穀粉組成物。」 [相違点4] 本件訂正発明1においては「小麦粉、加工澱粉及び小麦蛋白の総含有量100質量部に占める前記加工澱粉の含有量が25?40質量部」であるのに対して、甲1発明2においては「小麦粉、加工澱粉及び小麦蛋白の総含有量の100質量部に占める加工澱粉の含有量が19.8質量部」である点。 [相違点5] 本件訂正発明1においては「小麦蛋白中の蛋白質の含有量が60質量%以上」であるのに対して、甲1発明2においては、小麦蛋白中の蛋白質の含有量について不明である点。 以下、相違点について検討する。 [相違点4について] 本件訂正発明1は、甲1発明2と上記相違点4において相違するから、本件訂正発明1は甲1発明2であるとはいえない。 また、甲1の段落【0026】及び【0027】には、「【0026】小麦粉に対する加工澱粉の添加量が0.5重量%未満では殆ど変化がみられず、30重量%を越えると逆に内相の膜が厚くなる。 【0027】内相の改善以外にパンの食感を変える目的で従来から加工澱粉の添加は行われてきた。この目的の場合には、小麦粉に対して加工澱粉を10重量%程度以上添加し、例えばもちもち感にはエーテル化澱粉やエステル化澱粉、さくさく感には架橋澱粉、架橋エーテル化澱粉や架橋エステル化澱粉というように加工澱粉の種類を選択して用いることがより効果的である。従って、本発明においては、加工澱粉を併用する場合には、10%以下では主に内相の厚みの改良であり、10?30重量%では、従来の目的の効果と内相の改良という2つの効果を発揮することなる。」と記載されており、この記載からみて、甲1発明2において予定される小麦粉に対する加工澱粉の添加量の上限は30%であると認められる。 そうすると、甲1発明2において、小麦粉に対する加工澱粉の添加量を30%を超える割合とすることにより、小麦粉、加工澱粉及び小麦蛋白の総含有量の100質量部に占める加工澱粉の含有量を25?40質量部とすることは、当業者が容易になし得たとすることはできない。 さらに、甲4ないし甲6の記載も、甲1発明2の小麦粉に対する加工澱粉の添加量を30%を超える割合とすることを示唆するものではないから、甲1発明2及び甲4ないし甲6の記載に基いて上記相違点4に係る本件訂正発明1の発明特定事項とすることは当業者が容易になし得たとすることはできない。 したがって、他の相違点について検討するまでもなく本件訂正発明1は甲1発明2であるとはいえず、また、甲1発明2及び甲4ないし甲6の記載に基いて当業者が容易に発明することができたとはいえない。 (3)甲2発明との対比・判断 本件訂正発明1と甲2発明とを対比する。 甲2発明における「冷水膨潤澱粉」は、その構成、機能又は技術的意義からみて、本件訂正発明1における「加工澱粉」に相当し、以下同様に、「活性グルテン」は「小麦蛋白」に、「パンの原料粉」は「パン用穀粉組成物」に、それぞれ相当する。 そして、甲2発明における「活性グルテンの蛋白質の含有量が76.5%である」ことは、本件訂正発明1における「小麦蛋白中の蛋白質の含有量が60質量%以上である」ことに相当する。 そうすると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。 [一致点] 「小麦粉と、加工澱粉と、小麦蛋白とを含有するパン用穀粉組成物であって、 前記加工澱粉がエーテル化澱粉であり、 前記小麦蛋白中の蛋白質の含有量が60質量%以上である、パン用穀粉組成物。」 [相違点6] 本件訂正発明1においては「パン用穀粉組成物中、小麦粉、加工澱粉及び小麦蛋白の総含有量が80?100質量%」であるのに対して、甲2発明においては、パンの原料粉中の、小麦粉、冷水膨潤澱粉及び小麦蛋白の総含有量について不明である点。 [相違点7] 本件訂正発明1においては「小麦粉、加工澱粉及び小麦蛋白の総含有量100質量部に占める加工澱粉の含有量が25?40質量部」であるのに対して、甲2発明においては「小麦粉、冷水膨潤澱粉及び活性グルテンの総含有量の100質量部に占める冷水膨潤澱粉の含有量が14質量部」である点。 [相違点8] 本件訂正発明1においては「小麦蛋白の含有量と前記加工澱粉の含有量が、質量比で」、「12≦[加工澱粉の含有量]/[小麦蛋白の含有量]≦20」を満たすのに対して、甲2発明においては「冷水膨潤澱粉の含有量/活性グルテンの含有量は5.5」である点。 [相違点9] 本件訂正発明1においては「小麦粉の蛋白含有率が10.0?15.0質量%」であるのに対して、甲2発明においては「小麦粉の蛋白含有率が約8重量%」である点。 以下、事案に鑑み、まず相違点7について検討する。 [相違点7について] 本件訂正発明1は、甲2発明と上記相違点7において相違するから、本件訂正発明1は甲2発明であるとはいえない。 また、甲2発明において「小麦粉、冷水膨潤澱粉及び活性グルテンの総含有量の100質量部に占める冷水膨潤澱粉の含有量が14質量部」であるところ、該冷水膨潤澱粉の含有量を25?40質量部とする動機付けを甲2の記載や技術常識から見出すことはできない。 さらに、甲4ないし甲6の記載も、甲2発明における「小麦粉、冷水膨潤澱粉及び活性グルテンの総含有量の100質量部に占める冷水膨潤澱粉の含有量」を25?40質量部とすることを示唆するものではないから、甲2発明及び甲4ないし甲6の記載に基いて上記相違点7に係る本件訂正発明1の発明特定事項とすることは当業者が容易になし得たとすることはできない。 したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明1は甲2発明であるとはいえず、また、甲2発明及び甲4ないし甲6の記載に基いて当業者が容易に発明することができたとはいえない。 (4)甲3発明1との対比・判断 本件訂正発明1と甲3発明1とを対比する。 甲3発明1における「冷水膨潤澱粉」は、その構成、機能又は技術的意義からみて、本件訂正発明1における「加工澱粉」に相当し、以下同様に、「活性グルテン」は「小麦蛋白」に、「パンの原料粉」は「パン用穀粉組成物」に、それぞれ相当する。 さらに、甲3発明1における「小麦粉の蛋白質含有率は12.2質量%」であることは、本件訂正発明1における「小麦粉の蛋白含有率が10.0?15.0質量%」であることに相当し、甲3発明1における「活性グルテン中の蛋白質含量は76.5質量%である」ことは、本件訂正発明1における「小麦蛋白中の蛋白質の含有量が60質量%以上である」ことに相当する。 そうすると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。 [一致点] 「小麦粉と、加工澱粉と、小麦蛋白とを含有するパン用穀粉組成物であって、 前記小麦粉の蛋白含有率が10.0?15.0質量%であり、 前記加工澱粉がエーテル化澱粉であり、 前記小麦蛋白中の蛋白質の含有量が60質量%以上である、パン用穀粉組成物。」 [相違点10] 本件訂正発明1においては「パン用穀粉組成物中、前記小麦粉、前記加工澱粉及び前記小麦蛋白の総含有量が80?100質量%」であるのに対して、甲3発明1においては「パンの原料粉中、小麦粉、冷水膨潤澱粉及び活性グルテンの総含有量が53質量%」である点。 [相違点11] 本件訂正発明1においては「小麦粉、加工澱粉及び小麦蛋白の総含有量100質量部に占める前記加工澱粉の含有量が25?40質量部」であるのに対して、甲3発明1においては「小麦粉、冷水膨潤澱粉及び活性グルテンの総含有量100質量部に占める冷水膨潤澱粉の含有量が1.7質量部」である点。 [相違点12] 本件訂正発明1においては「小麦蛋白の含有量と前記加工澱粉の含有量が、質量比で」、「12≦[加工澱粉の含有量]/[小麦蛋白の含有量]≦20」であるのに対して、甲3発明1においては「冷水膨潤澱粉の含有量/活性グルテンの含有量は0.4」である点。 以下、事案に鑑み、まず相違点11について検討する。 [相違点11について] 本件訂正発明1は甲3発明1と上記相違点11において相違するから、本件訂正発明1は甲3発明1であるとはいえない。 また、甲3発明1において「小麦粉、冷水膨潤澱粉及び活性グルテンの総含有量100質量部に占める冷水膨潤澱粉の含有量は1.7質量部」であるところ、該冷水膨潤澱粉の含有量を25?40質量部とする動機付けを甲3の記載や技術常識から見出すことはできない。 さらに、甲4ないし甲6の記載も該冷水膨潤澱粉の含有量を25?40質量部とすることについて示唆するものではないから、甲3発明1及び甲4ないし甲6の記載に基いて上記相違点11に係る本件訂正発明1の発明特定事項とすることは当業者が容易になし得たとすることはできない。 したがって、本件訂正発明1は、他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明1は甲3発明1であるとはいえず、また、甲3発明1及び甲4ないし甲6の記載に基いて当業者が容易に発明することができたとはいえない。 (5)甲3発明2との対比・判断 本件訂正発明1と甲3発明2とを対比する。 甲3発明2における「冷水膨潤澱粉」は、その構成、機能又は技術的意義からみて、本件訂正発明1における「加工澱粉」に相当し、以下同様に、「活性グルテン」は「小麦蛋白」に、「パンの原料粉」は「パン用穀粉組成物」に、それぞれ相当する。 さらに、甲3発明2における「小麦粉の蛋白質含有率は11.5質量%」であることは、本件訂正発明1における「小麦粉の蛋白含有率が10.0?15.0質量%」であることに相当し、甲3発明2における「活性グルテン中の蛋白質含量は76.5質量%である」ことは、本件訂正発明1における「小麦蛋白中の蛋白質の含有量が60質量%以上である」ことに相当する。 そうすると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。 [一致点] 「小麦粉と、加工澱粉と、小麦蛋白とを含有するパン用穀粉組成物であって、 前記小麦粉の蛋白含有率が10.0?15.0質量%であり、 前記加工澱粉がエーテル化澱粉であり、 前記小麦蛋白中の蛋白質の含有量が60質量%以上である、パン用穀粉組成物。」 [相違点13] 本件訂正発明1においては「パン用穀粉組成物中、前記小麦粉、前記加工澱粉及び前記小麦蛋白の総含有量が80?100質量%」であるのに対して、甲3発明2においては「パンの原料粉中、小麦粉、冷水膨潤澱粉及び活性グルテンの総含有量が62質量%」である点。 [相違点14] 本件訂正発明1においては「小麦粉、加工澱粉及び小麦蛋白の総含有量100質量部に占める前記加工澱粉の含有量が25?40質量部」であるのに対して、甲3発明2においては「小麦粉、冷水膨潤澱粉及び活性グルテンの総含有量100質量部に占める冷水膨潤澱粉の含有量が1.8質量部」である点。 [相違点15] 本件訂正発明1においては「小麦蛋白の含有量と前記加工澱粉の含有量が、質量比で」、「12≦[加工澱粉の含有量]/[小麦蛋白の含有量]≦20」であるのに対して、甲3発明2においては「冷水膨潤澱粉の含有量/活性グルテンの含有量は1.2」である点。 以下、事案に鑑み、まず相違点14について検討する。 [相違点14について] 本件訂正発明1は、甲3発明2と上記相違点14において相違するから、本件訂正発明1は甲3発明2であるとはいえない。 また、甲3発明2において「小麦粉、冷水膨潤澱粉及び活性グルテンの総含有量100質量部に占める冷水膨潤澱粉の含有量は1.8質量部」であるところ、該冷水膨潤澱粉の含有量を25?40質量部とする動機付けを甲3の記載や技術常識から見出すことはできない。 さらに、甲4ないし甲6の記載も該冷水膨潤澱粉の含有量を25?40質量部とすることについて示唆するものではないから、甲3発明2及び甲4ないし甲6の記載に基いて上記相違点14に係る本件訂正発明1の発明特定事項とすることは当業者が容易になし得たとすることはできない。 したがって、本件訂正発明1は甲3発明2であるとはいえず、また、甲3発明2及び甲4ないし甲6の記載に基いて当業者が容易に発明することができたとはいえない。 [2]本件訂正発明2、4、5、6及び7 本件訂正特許請求の範囲における請求項2、4、5、6及び7は、いずれも請求項1の記載を他の記載に置き換えることなく引用して記載されたものであるから、本件訂正発明2、4、5、6及び7は本件訂正発明1の発明特定事項を全て含むものである。 したがって、本件訂正発明2、4、5、6及び7は、本件訂正発明1と同様の理由で、甲1発明1、甲1発明2、甲2発明、甲3発明1または甲3発明2のいずれかであるとはいえず、甲1発明1、甲1発明2、甲2発明、甲3発明1または甲3発明2のいずれかと甲4ないし甲6の記載に基いて当業者が容易に発明することができたとはいえない。 5 取消理由([理由3])についての判断 (1)上記「2 取消理由の概要、[理由3]、(1)」について 小麦粉、加工澱粉及び小麦蛋白のパン用穀粉組成物中の総含有量について、本件特許明細書の段落【0028】には、「パン用穀粉組成物中、小麦粉、加工澱粉、小麦蛋白の総含有量は80?100質量%であることが好ましく・・」と記載されているところ、本件訂正発明1において「パン用穀粉組成物中、小麦粉、加工澱粉、小麦蛋白の総含有量は80?100質量%」とパン用穀粉組成物中の小麦粉、加工澱粉、小麦蛋白の総含有量について特定された。 したがって、本件訂正特許請求の範囲における請求項1及び請求項1を直接あるいは間接的に引用する請求項2、4、5、6及び7に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に記載された内容を拡張ないし一般化できないとはいえない。 (2)上記「2 取消理由の概要、[理由3]、(2)」について 本件訂正発明1において「小麦粉」、「加工澱粉」及び「小麦蛋白」に対して、「小麦粉の蛋白含有率が10.0?15.0質量%」、「加工澱粉がエステル化澱粉又はエーテル化澱粉」、「小麦蛋白中の蛋白質の含有量が60質量%」であることがそれぞれ特定された。 したがって、「十分な体積のパンに焼き上げることができると同時に、よりソフトで、しっとり感、口溶け及び風味のいずれも良好であり、しかも、澱粉の劣化に伴う経時的な品質の低下が少ないパンに仕上げることができる」という課題を解決するための「小麦粉」、「加工澱粉」及び「小麦蛋白」がどのようなものであるかが本件訂正発明1において特定されたのであるから、本件訂正特許請求の範囲における請求項1及び請求項1を直接あるいは間接的に引用する請求項2、4、5、6及び7に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に記載された内容を拡張ないし一般化できないとはいえない。 6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について (1)異議理由(概要) ア 異議理由1 本件特許は、下記の点で特許法第36条第6項第2号の規定に違反してされたものであり、同法第113条第4号に該当する。 記 特許請求の範囲における請求項1及び8に記載された「小麦蛋白」の意味が明瞭ではないから、請求項1及び請求項1を引用する請求項2ないし7並びに請求項8に係る発明は明確でない。 イ 異議理由2 本件特許は、下記の点で特許法第36条第4項第1号の規定に違反してされたものであり、同法第113条第4号に該当する。 記 発明の詳細な説明において請求項に記載された発明の「パン用穀粉組成物」中の「小麦粉、加工澱粉及び小麦蛋白」それぞれの配合量が明確ではなく、「パン用穀粉組成物」中に占める「小麦粉」由来のタンパク質含有量が不明確であり、また「加工澱粉」として実施例で用いられた特定の澱粉以外の「加工澱粉」を用いる場合に所望の効果を奏する「パン用穀粉組成物」を製造できるように記載されていないので、発明の詳細な説明の記載は、本件特許発明についてその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。 (2)異議理由についての判断 ア 異議理由1について 本件訂正特許請求の範囲における請求項1に記載された「小麦蛋白」の用語の意味について特許明細書の記載を参酌すると、段落【0025】には「本発明に用いる小麦蛋白は、小麦粉より抽出した蛋白画分の製剤である。また、本発明においては、本発明のパン用穀粉組成物の一成分である、上述の小麦粉に含まれる蛋白質は、本発明で規定する小麦蛋白ではない。本発明の小麦蛋白は、小麦粉として配合されるものではなく、小麦粉より抽出した蛋白画分の製剤として配合されるものである。 本発明に用いる小麦蛋白は、蛋白質の含有量が60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、75質量%以上であることがさらに好ましい。 本発明に用いる小麦蛋白中、小麦蛋白質以外の残部は、糖質、灰分、水分等で構成される。 本発明に用いる小麦蛋白としては、市販品を用いることができる。例えば、グリコ栄養食品社製のA-グルシリーズ(A-グルWP、A-グルG、A-グルK等)やファイングルVP、理研ビタミン社製のエマソフトシリーズ(エマソフトEX-100、エマソフトEX-95、エマソフトA-2000、エマソフトVE等)が挙げられる。」と記載されている。 この特許明細書の記載によれば、本件訂正発明における「小麦蛋白」とは「小麦粉より抽出した蛋白画分の製剤」であって、「小麦粉として配合されるものではなく、小麦粉より抽出した蛋白画分の製剤として配合されるもの」であって、小麦蛋白は、小麦蛋白質のほか、糖質、灰分、水分等で構成されるものであることは明らかである。 また、本件特許明細書の段落【0094】、【表1】における比較品4においては、小麦粉(強力粉)が中種において70.0部であり、加工澱粉が30.0部であって、小麦蛋白(活性グルテン1、2)が配合されていないにもかかわらず、小麦粉、加工澱粉及び小麦蛋白の総配合量100質量部中の小麦蛋白量(質量部)が8.2部と記載されている。 しかし、小麦粉(強力粉)70.0部に含まれる小麦蛋白質量は、70.0×0.117(小麦粉(強力粉 1等粉)に含まれる小麦蛋白質の割合11.7%(段落【0093】))=8.2部であることからみて、「小麦蛋白量(質量部)」は「小麦蛋白質量(質量部)」の明らかな誤記である。 したがって、訂正特許請求の範囲における請求項1に記載された「小麦蛋白」の意味は、本件特許明細書の上記記載に照らせば明瞭であって、本件訂正発明1及び本件訂正発明1を直接あるいは間接的に引用する本件訂正発明2、4、5、6及び7は明確でないとはいえない。 イ 異議理由2について 本件訂正発明において、パン用穀粉組成物中の小麦粉、加工澱粉及び小麦蛋白に関して、「パン用穀粉組成物中、小麦粉、加工澱粉及び小麦蛋白の総含有量が80?100%」、「小麦粉の蛋白含有率が10.0?15.0質量%」、「加工澱粉がエステル化澱粉又はエーテル化澱粉」、「小麦蛋白中の蛋白質の含有量が60質量%以上である」ことが特定された。 そして、本件特許明細書の段落【0094】、【表1】における、本件訂正発明の実施例に相当する本発明品1の欄において、小麦粉(強力粉)70.0部、加工澱粉(ヒドロキシプロピル化リン酸架橋タピオカ)30.0部、小麦蛋白(活性グルテン)2.0部であり、それによって本件訂正発明による効果が得られることが示されている。 そうすると、本件特許明細書の段落【0094】、【表1】において、少なくとも本発明品1における小麦粉(強力粉)、加工澱粉(ヒドロキシプロピル化リン酸架橋タピオカ)、小麦蛋白(活性グルテン)及び他の成分の配合とすれば、官能評価結果にみられるように課題が解決できることが示されているから、発明の詳細な説明の記載は、本件訂正発明についてその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないとはいえない。 7 平成31年4月23日付け異議申立人の意見書における主張について 異議申立人は、平成31年4月23日付けで意見書及び下記参考文献3を提出して、本件訂正発明についての意見を述べている。 参考文献3:砂田美和、「ヒドロキシプロピル化デンプンの特性と応用」、月刊 フードケミカル、株式会社 食品化学新聞社、2010年2月1日、Vol.26、No.2、p.29-32 (1)新規性、進歩性について 異議申立人は、「甲1発明」の「小麦粉、加工澱粉、小麦蛋白の総含有量の100部に占める加工澱粉の含有量(以下、単に『加工澱粉配合量』ともいう。)」は、23質量部(23質量%)であって、今回の訂正で設定された要件(ウ)の下限値「25質量%」には、わずかに届かない。唯一この点が、『甲1発明1』と『本件訂正特許発明1』との一応の差異となっている。 しかしながら、23質量%と25質量%とではたかだか+-2%程度の誤差範囲ともいえる差異である上、以下に述べるように、特許権者が出願当初に実施例1?11に対応する本発明品1?11として示したパン製品の官能検査結果、及びパン体積の計測結果などからみて、上記下限値『25質量%』になんらの臨界的な意義が認められないことからも、この一応の相違点は実質的な相違点とはいえない。」(意見書第5ページ第4ないし14行)と主張している。 しかし、「上記4[1](1)甲1発明との対比・判断」において判断したとおり、甲1の記載からみて、小麦粉に対する加工澱粉の添加量は上限を30%とするものであり、甲1発明1における上記加工澱粉配合量の「23質量部」を「25ないし40質量部」とするために加工澱粉の添加量の上限である30%を越えるものとする動機付けは見出せない。 したがって、上記「一応の相違点」は実質的な相違点というべきであるから、上記新規性、進歩性に関する異議申立人の主張は採用できない。 (2)サポート要件について 異議申立人は、本件訂正発明1において、「小麦蛋白中の蛋白質の含有量が60質量%以上である」と特定されている。しかし、本件特許明細書の段落【0094】の【表1】で効果が確認された小麦蛋白である「活性グルテン1」、「活性グルテン2」の蛋白質含有量は、いずれも75質量%以上の活性グルテン製剤であるから、「小麦蛋白中の蛋白質の含有量が60質量%」付近のかなり純度が低い場合においても本件訂正発明における課題を解決できると当業者が理解することができない旨主張している。 しかし、本件特許明細書の段落【0025】「・・本発明に用いる小麦蛋白は、蛋白質の含有量が60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、75質量%以上であることがさらに好ましい。・・」と記載されているように、本発明に用いる小麦蛋白は、蛋白質の含有量が60質量%以上であれば好ましいのであって、蛋白質の含有量が70質量%以上、75質量%以上であればさらに好ましい、すなわち、蛋白質の含有量の増加とともに、よりよい効果が得られるというのであるから、「小麦蛋白中の蛋白質の含有量が60質量%」付近であることをもって、本件訂正発明における課題を解決できないとはいえない。 また、本件訂正発明が、その課題を解決できないとする証拠もない。 したがって、上記サポート要件に関する異議申立人の主張は採用できない。 第4 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、本件請求項1、2、4、5、6及び7に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1、2、4、5、6及び7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 また、請求項3及び8に係る特許は、本件訂正により削除された。これにより、本件特許の請求項3及び8に対して異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 小麦粉と、加工澱粉と、小麦蛋白とを含有するパン用穀粉組成物であって、 前記パン用穀粉組成物中、前記小麦粉、前記加工澱粉及び前記小麦蛋白の総含有量が80?100質量%、前記小麦粉、前記加工澱粉及び前記小麦蛋白の総含有量100質量部に占める前記加工澱粉の含有量が25?40質量部であり、 前記小麦蛋白の含有量と前記加工澱粉の含有量が、質量比で下記式を満たし、 12≦[加工澱粉の含有量]/[小麦蛋白の含有量]≦20 前記小麦粉の蛋白含有率が10.0?15.0質量%であり、 前記加工澱粉がエステル化澱粉又はエーテル化澱粉であり、 前記小麦蛋白中の蛋白質の含有量が60質量%以上である、パン用穀粉組成物。 【請求項2】 小麦粉が強力粉である、請求項1に記載のパン用穀粉組成物。 【請求項3】(削除) 【請求項4】 エステル化澱粉がアセチル化澱粉であり、エーテル化澱粉がヒドロキシプロピル化澱粉である、請求項1又は2に記載のパン用穀粉組成物。 【請求項5】 アセチル化澱粉がアセチル化架橋澱粉であり、ヒドロキシプロピル化澱粉がヒドロキシプロピル化架橋澱粉である、請求項4に記載のパン用穀粉組成物。 【請求項6】 請求項1、2、4及び5のいずれか1項に記載のパン用穀粉組成物を用いてパン生地を調製し、該生地を焼成することを含む、パン類の製造方法。 【請求項7】 パン生地が、パン用穀粉組成物100質量部に対して乳化剤を0.1?2.0質量部含有する、請求項6に記載のパン類の製造方法。 【請求項8】(削除) |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2019-05-21 |
出願番号 | 特願2013-219581(P2013-219581) |
審決分類 |
P
1
651・
537-
YAA
(A21D)
P 1 651・ 536- YAA (A21D) P 1 651・ 121- YAA (A21D) P 1 651・ 113- YAA (A21D) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 千葉 直紀 |
特許庁審判長 |
田村 嘉章 |
特許庁審判官 |
窪田 治彦 松下 聡 |
登録日 | 2018-03-30 |
登録番号 | 特許第6311151号(P6311151) |
権利者 | 花王株式会社 |
発明の名称 | パン用穀粉組成物、パン類の製造方法及びパン類 |
代理人 | 宮前 尚祐 |
代理人 | 飯田 敏三 |
代理人 | 赤羽 修一 |
代理人 | 飯田 敏三 |
代理人 | 宮前 尚祐 |
代理人 | 特許業務法人イイダアンドパートナーズ |
代理人 | 特許業務法人イイダアンドパートナーズ |
代理人 | 赤羽 修一 |