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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B65H
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B65H
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B65H
管理番号 1353150
異議申立番号 異議2018-700384  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-08-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-05-08 
確定日 2019-05-30 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6228477号発明「用紙搬送装置およびそれを備える画像形成装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6228477号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔2-8〕について訂正することを認める。 特許第6228477号の請求項1及び4ないし8に係る特許を維持する。 特許第6228477号の請求項2及び3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第6228477号(以下「本件特許」という。)に係る特許出願は、平成26年2月10日に特許出願され、平成29年10月20日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、平成30年5月8日に特許異議申立人幡谷宣男(以下「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、同年7月25日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年9月28日に特許権者より意見書が提出され、平成31年2月26日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、その指定期間内である同年4月24日に特許権者より訂正の請求(以下、この訂正の請求を「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)がなされたものである。

第2 訂正の適否についての判断

1.訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に、
「請求項1から3までのいずれか1項に記載の用紙搬送装置」
とあるのを、
「請求項1記載の用紙搬送装置」
と訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に、
「請求項1から4までのいずれか1項に記載の用紙搬送装置」
とあるのを、
「請求項1または4記載の用紙搬送装置」
と訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6に、
「請求項1から5までのいずれか1項に記載の用紙搬送装置」
とあるのを、
「請求項1、4、5のいずれか1項に記載の用紙搬送装置」
と訂正する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項7に、
「請求項1から5までのいずれか1項に記載の用紙搬送装置」
とあるのを、
「請求項1、4、5のいずれか1項に記載の用紙搬送装置」
と訂正する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項8に、
「請求項1から7までのいずれか1項に記載の用紙搬送装置を備える」
とあるのを、
「請求項1、4から7までのいずれか1項に記載の用紙搬送装置を備える」
と訂正する。

(8)訂正事項8
明細書の段落【0008】に、
「請求項1の発明は、湾曲領域と非湾曲領域とを含む用紙搬送路を形成する搬送ガイドを備える用紙搬送装置において、搬送ガイドは、用紙搬送路が湾曲する箇所の外周側において、湾曲領域に配置される第1搬送部と非湾曲領域に配置される第2搬送部とを含み、用紙搬送路を搬送される用紙との用紙搬送方向における単位長さ当たりの接触面積が、第2搬送部よりも第1搬送部の方が大きく、第1搬送部および第2搬送部のそれぞれは、用紙搬送方向と直交する方向に所定間隔で設けられて、当該用紙搬送方向に沿って延びる複数のリブを有し、第1搬送部に形成されるリブ間に第2搬送部に形成されるリブ間の溝部よりも浅い浅溝部を形成することによって、第1搬送部における接触面積を第2搬送部よりも大きくしたことを特徴とする、用紙搬送装置である。
請求項2の発明は、湾曲領域と非湾曲領域とを含む用紙搬送路を形成する搬送ガイドを備える用紙搬送装置において、搬送ガイドは、用紙搬送路が湾曲する箇所の外周側において、湾曲領域に配置される第1搬送部と非湾曲領域に配置される第2搬送部とを含み、用紙搬送路を搬送される用紙との用紙搬送方向における単位長さ当たりの接触面積が、第2搬送部よりも第1搬送部の方が大きく、第2搬送部は、用紙搬送方向と直交する方向に所定間隔で設けられて、当該用紙搬送方向に沿って延びる複数のリブを有し、第1搬送部の用紙案内面の全体をリブ無しの平坦面とすることによって、第1搬送部における接触面積を第2搬送部よりも大きくしたことを特徴とする、用紙搬送装置である。
請求項3の発明は、湾曲領域と非湾曲領域とを含む用紙搬送路を形成する搬送ガイドを備える用紙搬送装置において、搬送ガイドは、用紙搬送路が湾曲する箇所の外周側において、湾曲領域に配置される第1搬送部と非湾曲領域に配置される第2搬送部とを含み、用紙搬送路を搬送される用紙との用紙搬送方向における単位長さ当たりの接触面積が、第2搬送部よりも第1搬送部の方が大きく、第1搬送部および第2搬送部のそれぞれは、用紙搬送方向と直交する方向に所定間隔で設けられて、当該用紙搬送方向に沿って延びる複数のリブを有し、用紙搬送方向と直交する方向において、第1搬送部に形成するリブの数を第2搬送部に形成するリブの数よりも多くすることによって、第1搬送部における接触面積を第2搬送部よりも大きくしたことを特徴とする、用紙搬送装置である。」
とあるのを、
「請求項1の発明は、湾曲領域と非湾曲領域とを含む用紙搬送路を形成する搬送ガイドを備える用紙搬送装置において、搬送ガイドは、用紙搬送路が湾曲する箇所の外周側において、湾曲領域に配置される第1搬送部と非湾曲領域に配置される第2搬送部とを含み、用紙搬送路を搬送される用紙との用紙搬送方向における単位長さ当たりの接触面積が、第2搬送部よりも第1搬送部の方が大きく、第1搬送部および第2搬送部のそれぞれは、用紙搬送方向と直交する方向に所定間隔で設けられて、当該用紙搬送方向に沿って延びる複数のリブを有し、第1搬送部に形成されるリブ間に第2搬送部に形成されるリブ間の溝部よりも浅い浅溝部を形成することによって、第1搬送部における接触面積を第2搬送部よりも大きくしたことを特徴とする、用紙搬送装置である。」
と訂正する。

(9)訂正事項9
明細書の段落【0009】に、
「請求項1から3までのいずれかの発明によれば、」
とあるのを、
「請求項1の発明によれば、」
と訂正する。

(10)訂正事項10
明細書の段落【0010】に、
「請求項4の発明は、請求項1から3までのいずれかの発明に従属し、」
とあるのを、
「請求項4の発明は、請求項1の発明に従属し、」
と訂正する。

(11)訂正事項11
明細書の段落【0017】に、
「請求項5の発明は、請求項1から4までのいずれかの発明に従属し、」
とあるのを、
「請求項5の発明は、請求項1または4の発明に従属し、」
と訂正する。

(12)訂正事項12
明細書の段落【0019】に、
「請求項6の発明は、請求項1から5までのいずれかの発明に従属し、」
とあるのを、
「請求項6の発明は、請求項1、4、5のいずれかの発明に従属し、」
と訂正する。

(13)訂正事項13
明細書の段落【0021】に、
「請求項7の発明は、請求項1から5までのいずれかの発明に従属し、」
とあるのを、
「請求項7の発明は、請求項1、4、5のいずれかの発明に従属し、」
と訂正する。

(14)訂正事項14
明細書の段落【0023】に、
「請求項8の発明は、請求項1から7までのいずれか1項に記載の用紙搬送装置を備える」
とあるのを、
「請求項8の発明は、請求項1、4から7までのいずれか1項に記載の用紙搬送装置を備える」
と訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
(1)訂正事項1及び2
上記訂正事項1及び2に係る訂正は、いずれも請求項を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、当該訂正は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」と総称する 。また、本件特許の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項1及び2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(2)訂正事項3ないし7
上記訂正事項3ないし7に係る訂正は、それぞれ請求項2及び3を含む複数の請求項を引用するものであった訂正前の請求項4ないし8について、引用する請求項から請求項2及び3を削除して引用請求項を減少させたものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、当該訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項3ないし7は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(3)訂正事項8ないし14
上記訂正事項8ないし14に係る訂正は、いずれも上記訂正事項1ないし7に係る訂正に伴い特許請求の範囲と明細書の記載を整合させる訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、当該訂正は、上記訂正事項1ないし7に係る訂正と同様に、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項8ないし14は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

3.独立特許要件について
本件特許異議の申立は、訂正前の全ての請求項に対してされているので、本件訂正に関して、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。

4.一群の請求項について
訂正事項1に係る訂正前の請求項2及び4ないし8は、請求項4ないし8がそれぞれ請求項2を引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項2に連動して訂正されるものであり、訂正事項2に係る訂正前の請求項3ないし8は、請求項4ないし8がそれぞれ請求項3を引用するものであって、訂正事項2によって記載が訂正される請求項3に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項2及び4ないし8、並びに、請求項3ないし8はそれぞれ一群の請求項である。
そして、当該訂正前の請求項2及び4ないし8と請求項3ないし8とは、共通する請求項4ないし8を介して一体として特許請求の範囲の一部を形成するように連関している関係にあるから、訂正前の請求項2ないし8に対応する訂正後の請求項2ないし8は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
また、訂正事項8ないし14による本件明細書の訂正に係る請求項は、訂正前の請求項2ないし8であるから、本件訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第4項に規定する一群の請求項の全てについて行うものである。

5.小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔2-8〕について訂正することを認める。

第3 特許異議の申立てについて

1.本件特許発明
本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に係る発明(以下「本件特許発明1」ないし「本件特許発明8」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
湾曲領域と非湾曲領域とを含む用紙搬送路を形成する搬送ガイドを備える用紙搬送装置において、
前記搬送ガイドは、前記用紙搬送路が湾曲する箇所の外周側において、前記湾曲領域に配置される第1搬送部と前記非湾曲領域に配置される第2搬送部とを含み、
前記用紙搬送路を搬送される用紙との用紙搬送方向における単位長さ当たりの接触面積が、前記第2搬送部よりも前記第1搬送部の方が大きく、
前記第1搬送部および前記第2搬送部のそれぞれは、前記用紙搬送方向と直交する方向に所定間隔で設けられて、当該用紙搬送方向に沿って延びる複数のリブを有し、
前記第1搬送部に形成されるリブ間に前記第2搬送部に形成されるリブ間の溝部よりも浅い浅溝部を形成することによって、前記第1搬送部における前記接触面積を前記第2搬送部よりも大きくしたことを特徴とする、用紙搬送装置。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
前記第1搬送部と前記第2搬送部とは一体的に形成される、請求項1記載の用紙搬送装置。
【請求項5】
前記第1搬送部の前記用紙搬送方向における両端部の少なくとも一方には、当該用紙搬送方向に対して傾斜する傾斜部が形成される、請求項1または4記載の用紙搬送装置。
【請求項6】
前記第1搬送部の用紙案内面と前記第2搬送部の用紙案内面とは、面一に形成される、請求項1、4、5のいずれか1項に記載の用紙搬送装置。
【請求項7】
前記第1搬送部の用紙案内面は、前記第2搬送部の用紙案内面よりも窪む、請求項1、4、5のいずれか1項に記載の用紙搬送装置。
【請求項8】
請求項1、4から7までのいずれか1項に記載の用紙搬送装置を備える、画像形成装置。」

2.平成30年7月25日付け取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
(1)取消理由の概要
本件特許の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。

・請求項 2
・引用文献 1又は2

・請求項 3
・引用文献 3又は4

・請求項 4
・引用文献 1又は3

・請求項 5
・引用文献 1又は2

・請求項 6
・引用文献 1又は3

・請求項 7
・引用文献 1

・請求項 8
・引用文献 1、2、3又は4

引用文献等一覧
1.実願昭59-186418号(実開昭61-101547号)のマイクロフィルム(特許異議申立書における甲第4号証)
2.特開2013-41169号公報(同甲第5号証)
3.特開昭60-26560号公報(同甲第7号証)
4.特開2006-321650号公報(同甲第8号証)

(2)判断
本件取消理由はその内容からみて、本件訂正前の請求項2及び3、並びに、請求項2又は3を引用する場合の請求項4ないし8に係る特許に対するものであるところ、上記「第2」のとおり、本件訂正は請求項2及び3を削除するものであり、かつ、本件訂正は認められるものである。
そうすると、請求項2及び3に係る特許についての本件取消理由は、本件訂正によってその対象となる請求項が存在しないものとなった。
また、上記「第2」のとおり、本件訂正により請求項4ないし8は請求項1を引用し請求項2又は3を引用しないものとされたから、本件訂正後の本件特許発明4ないし8は、実質的に本件取消理由を通知していない発明に係るものに減縮された。
そうすると、本件特許発明4ないし8は、本件取消理由によっては、取り消すことはできない。

3.取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)特許法第29条第1項第3号及び第2項
ア.特許異議申立理由の概要
取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許法第29条第1項第3号及び第2項に関する特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。

(ア)請求項1
a.本件特許発明1は、甲第2号証(特開2006-111364号公報)に記載された発明である。
b.本件特許発明1は、甲第1号証(特開平11-153919号公報)及び甲第3号証(特開平7-291479号公報)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
c.本件特許発明1は、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(イ)請求項2及び3
a.本件特許発明2は、甲第1号証に記載された発明である。
b.本件特許発明2は、甲第1号証、甲第4号証、甲第5号証及び甲第6号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
c.本件特許発明3は、甲第6号証、甲第7号証及び甲第8号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(ウ)請求項4ないし8
本件特許発明4ないし8は、甲第1号証ないし甲第8号証に記載された発明である。また、本件特許発明4ないし8は、甲第1号証ないし甲第8号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

イ.各甲号証の記載
(ア)甲第1号証
本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第1号証(特開平11-153919号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている。

a.「【0003】特に、記録紙を排紙トレイに排紙する排紙部においては、記録紙の搬送方向を案内するガイド板が設けている。このガイド板は、記録紙との接触抵抗を低減するために、凸部を設けられていたり、所定間隔でスリットを設けたリブ状構造になっている。このため、高温の記録紙がガイド板に部分的に接触すると接触抵抗が当該接触箇所に集中し、画像の剥がれが起こりやすい。」

b.「【0012】請求項3に記載の発明によれば、前記画像形成部、前記熱定着部および前記搬送部を垂直方向に配置しているので、出力媒体の搬送距離が短縮され、装置全体が小型になる。熱定着後の出力媒体の搬送距離が短くなることにより、出力媒体は高温のまま搬送部に到達するが、その画像面は、凹凸がない連続平滑面で構成したガイド板の表面に面接触するので、接触抵抗が画像面の局所に集中せず、分散される。従って、画像の剥がれや汚れの発生が起こり難い。」

c.「【0016】図1は、本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置を示す概略図である。
【0017】画像形成装置11は、最下部に給紙部13を具備する。給紙部13は、出力媒体として例えば普通紙、OHPシート等の記録紙15を収納するカセット17を複数有し、各々に設けられた給紙機構19により、給紙経路21へ記録紙15を送り出し、給紙経路21の各所に設けた搬送ローラ対23で上方に向かって搬送するようになっている。
【0018】給紙部13の上方には、転写部31、熱定着部51および排紙部61が略垂直方向に順次配置してある。転写部31は、感光ドラム33を有し、その外周部には、帯電装置35、露光装置37、現像装置39、除電装置41およびクリーニング装置43を配置している。また、感光ドラム33に接触するように加圧ベルト45を設けている。
【0019】熱定着部51は、定着ローラ53および加圧ローラ55を具備する。定着ローラ53は、加熱手段(図示せず)により所定温度(例えば、185℃)に設定する。
【0020】排紙部61は、図2に示すように、熱定着部51の直上に設けた駆動ローラ63と、これと接触して回転する搬送ローラ65を有する。駆動ローラ63および搬送ローラ65の下流側には、2枚のガイド板67a、67bが互いに対向して配置している。これらのガイド板67a、67bは湾曲し、記録紙15の搬送方向を垂直方向から水平方向へ方向転換するようになっている。
【0021】ガイド板67a、67bの表面の、少なくとも記録紙15と接触可能性がある領域、好ましくは全面を、記録紙15の画像面と面接触する、凹凸がなく連続して平滑な面(以下、「連続平滑面」という)で構成している。」

d.図1

e.上記「c.」の記載を踏まえると、図1からは「2枚のガイド板67a、67bにつながる給紙経路21が湾曲していない」ことを看取することができる。

上記の記載事項を総合すると、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。

「記録紙を給紙経路の各所に設けた搬送ローラ対で上方に向かって搬送し、
排紙部は、熱定着部の直上に設けた駆動ローラと、これと接触して回転する搬送ローラを有し、
駆動ローラおよび搬送ローラの下流側には、2枚のガイド板が互いに対向して配置しており、
これらのガイド板は湾曲し、記録紙の搬送方向を垂直方向から水平方向へ方向転換するようになっており、
ガイド板の表面の、少なくとも記録紙と接触可能性がある領域、好ましくは全面を、記録紙の画像面と面接触する、凹凸がなく連続して平滑な面である連続平滑面で構成しており、
2枚のガイド板につながる給紙経路が湾曲していない
画像形成装置。」

(イ)甲第2号証
本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第2号証(特開2006-111364号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている。

a.「【0039】
次に図1?3を用いてシート再搬送部3の構成を述べる。図2はスイッチバックローラ14から再給紙ローラ22までのシート再搬送部3のシート搬送路を平面に展開して上から見た図、図3はスイッチバックローラ14から湾曲反転部40へとシートSを案内するガイドリブ50を示す斜視図である。
【0040】
ここで、シート再搬送部3はスイッチバックローラ14と排出コロ15からなるニップN1から始まって、湾曲反転部40及び横レジ補正部23を経て、カセット4からの搬送路との合流点21に至るまでの搬送路を中心に構成される。
【0041】
本発明の狭持搬送手段としてのスイッチバックローラ14及び排出コロ15は、搬送中、シートSの回転運動を抑えるためにシート幅方向に4個ずつ配設されており、それぞれにニップN1を形成している。
【0042】
ニップN1から横レジ補正部23までの搬送路には、略鉛直方向から水平方向へとシートの搬送方向を変更するためのガイド手段として湾曲反転部40が設けられており、さらにニップN1から湾曲反転部40へとシートSを案内するガイド部材としてガイドリブ50が設けられている。
【0043】
ガイドリブ50は、図3に示すように、搬送面を構成する15本のリブであり、シートSの幅方向両端部を案内する4本の外側ガイドリブ50aと、シートSの幅方向中央部を案内する11本の内側ガイドリブ50bによって構成される。また、ガイドリブ50は、図1のように側面から見ると、外側リブ50aの方が内側リブ50bよりも高くなっており、シートSの幅方向両端部を持ち上げるように搬送面を構成している。即ち、スイッチバックローラ14および排出ローラ15から湾曲反転部40へとシートを案内するガイド面としてのガイドリブ50は、シート幅方向の両端部が中央部よりも湾曲反転部40曲率中心側にある。」

b.「【0058】
両面画像形成信号を受けると、定着後ローラ17から片面画像形成済みのシートS後端が抜けた後にスイッチバックローラ14が逆回転し、シートSは先端後端が逆転した状態でスイッチバックローラ14と排出コロ15からなるニップN1によって挟持搬送される。N1により挟持搬送されたシートSの先端は、ガイドリブ50に沿って進み、湾曲反転部40で略鉛直方向から水平方向に向きを変えるよう案内され、横レジ補正部23に到達する。
【0059】
このとき、シートS先端が幅方向において基準板24に近い側に搬送されてきた場合、シートSの先端角部はテーパ面24bを含むシート側端部ガイド24dに案内されると同時に搬送抵抗を受ける。ここで、ガイドリブ50の外側ガイドリブ50aが内側ガイドリブ50bよりも高くなっているため、図4に示すように、シートSの搬送方向に腰が与えられ、スイッチバックローラ14による搬送力をシートSの先端まで充分に伝えて、搬送抵抗に屈することなくシートS先端はニップN2に到達する。」

c.図3


d.上記「a.」の記載を踏まえると、図3からは、「ガイドリブ50がシートの搬送方向に沿って等間隔に設けられている」こと、「ガイドリブ50が湾曲した部分と湾曲していない部分を有し、湾曲していない部分の高さが湾曲した部分の高さより高い」こと、及び、「湾曲した部分と湾曲していない部分を有」する「ガイドリブは搬送路の外周側に設けられる」ことを看取することができる。

上記の記載事項を総合すると、甲第2号証には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているものと認められる。

「スイッチバックローラと排出コロからなるニップから始まって、湾曲反転部及び横レジ補正部を経て、カセットからの搬送路との合流点に至るまでの搬送路を中心に構成され、
ニップから横レジ補正部までの搬送路には、ニップから湾曲反転部へとシートを案内するガイド部材としてガイドリブが設けられており、
ガイドリブはシートの搬送方向に沿って等間隔に設けられており、
ガイドリブは搬送路の外周側に設けられ、湾曲した部分と湾曲していない部分を有し、ガイドリブの湾曲していない部分の高さが湾曲した部分の高さより高い
シート再搬送部。」

(ウ)甲第3号証
本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第3号証(特開平7-291479号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている。

a.「【請求項1】U字型に屈曲された板状体からなり、その内周面に沿って用紙が搬送されるペーパガイド本体と、該ペーパガイド本体の少なくともU字型の屈曲部に、前記用紙搬送方向に沿って形成された溝状のリブ遊挿部と、前記ペーパガイドの外周面側に、前記屈曲部のリブ遊挿部に対向して設けられたリブと、を備えるとともに、
前記リブを、前記ペーパガイド本体の内周面に突出する位置と、前記ペーパガイド本体の外周面へ退避する位置と、の間で移動させるリブ移動手段を備えたことを特徴とするペーパガイド装置。」

b.「【0019】アクチュエータ3は、リブ2のR形成部2aの反対辺側である作用辺2bに備えられ、リブ2のR形成部2aを図中矢印b,cで示すように、ペーパガイド1の内周面に突出する位置(矢印b方向)、および、ペーパガイド1の内周面から退避した外周面の位置(矢印c方向)へ移動させる(リブ移動手段)。」

c.「【0028】まず、通常の状態ではリブ2は、図1(A)に示すようにリブ遊挿部4a,4bから突出した状態になっている。ここで、用紙センサ6によって用紙の先端が検知されると、タイマがT1時間を計時する(n1→n2)。この間、用紙7は図1(A)、および図2(A)に示すように、リブ2によって用紙7の一部がペーパガイド本体1から浮き上がっており、ペーパガイド1およびリブ2と、用紙7との接触面が少ないため、摩擦が少ない。しかし、この状態が続くと用紙7の決まった部分がこすられ続け、用紙7の表面からトナー剥がれが生じて易い(当審注:「生じて易い」は「生じ易い」の誤記と認める。)。そこで、次のように動作する。
【0029】前記タイマT1がタイムアップすると、アクチュエータ3によってリブ2が矢印c方向に移動する(n3→n4)。すると、図1(B),(C)および図2(B)に示すように、リブ2がペーパガイド本体1の内周面から退避し、用紙7をペーパガイド本体1にほぼ密接する状態で搬送させる。この状態では、ペーパガイド本体1と用紙7との接触面が多く、摩擦が多くなるが、用紙7の表面のトナーがリブ2によってこすられることがないので、トナー剥がれが生じ難い。この状態で、T2時間搬送された後、再びリブ2が矢印b方向へ移動して、図1(A),図2(A)の状態に戻る(n4→n5)。」

d.上記「b.」の記載から見て、「アクチュエータ3」は「リブ移動手段」であるといえる。

上記の記載事項を総合すると、甲第3号証には、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されているものと認められる。

「U字型に屈曲された板状体からなり、その内周面に沿って用紙が搬送されるペーパガイド本体と、該ペーパガイド本体の少なくともU字型の屈曲部に、前記用紙搬送方向に沿って形成された溝状のリブ遊挿部と、前記ペーパガイドの外周面側に、前記屈曲部のリブ遊挿部に対向して設けられたリブと、を備えるとともに、
前記リブを、前記ペーパガイド本体の内周面に突出する位置と、前記ペーパガイド本体の外周面へ退避する位置と、の間で移動させるリブ移動手段を備え、
通常の状態ではリブはリブ遊挿部から突出した状態になっており、用紙は、リブによって用紙の一部がペーパガイド本体から浮き上がっており、ペーパガイドおよびリブと、用紙との接触面が少ないため、摩擦が少ないが、この状態が続くと用紙の決まった部分がこすられ続け、用紙の表面からトナー剥がれが生じ易く、
リブ移動手段によってリブが移動すると、リブがペーパガイド本体の内周面から退避し、用紙をペーパガイド本体にほぼ密接する状態で搬送させる状態では、ペーパガイド本体と用紙との接触面が多く、摩擦が多くなるが、用紙の表面のトナーがリブによってこすられることがないので、トナー剥がれが生じ難い
ペーパガイド装置。」

ウ.対比・判断
(ア)上記「ア.(ア)a.」の特許異議申立理由について
本件特許発明1と甲2発明とを対比する。

a.後者の「搬送路」は前者の「用紙搬送路」に相当し、同様に、「シート」は「用紙」に、「シート再搬送部」は「用紙搬送装置」にそれぞれ相当する。
b.後者においては「ニップから横レジ補正部までの搬送路には、ニップから湾曲反転部へとシートを案内するガイド部材としてガイドリブが設けられて」いるから、「ガイドリブ」は「搬送路」を形成するといえ、後者の当該「ガイドリブ」は、前者の「用紙搬送路を形成する搬送ガイド」に相当する。
c.そして、後者は「ガイドリブは湾曲した部分と湾曲していない部分を有」するから、「ガイドリブ」が設けられた「搬送路」も湾曲した部分と湾曲していない部分を有することは明らかであって、後者の「搬送路」の湾曲した部分及び湾曲していない部分はそれぞれ前者の「(用紙搬送路の)湾曲領域」及び「(用紙搬送路の)非湾曲領域」に相当する。
d.後者の「ガイドリブは搬送路の外周側に設けられ、湾曲した部分と湾曲していない部分を有」する点は、前者の「搬送ガイドは、用紙搬送路が湾曲する箇所の外周側において、湾曲領域に配置される第1搬送部と非湾曲領域に配置される第2搬送部とを含」む点に相当する。
e.後者においては「ガイドリブはシートの搬送方向に沿って等間隔に設けられて」いるから、「ガイドリブ」間には溝が存するものと認められ、「ガイドリブの湾曲していない部分の高さが湾曲した部分の高さより高い」から「湾曲した部分」のガイドリブ間の溝の深さは「湾曲していない部分」のガイドリブ間の溝の深さよりも浅いものと認められる。そうすると、後者の「「湾曲した部分」のガイドリブ間の溝」は、前者の「第1搬送部に形成されるリブ間に」形成された「第2搬送部に形成されるリブ間の溝部よりも浅い浅溝部」に相当する。

そうすると、両者は、
「湾曲領域と非湾曲領域とを含む用紙搬送路を形成する搬送ガイドを備える用紙搬送装置において、
前記搬送ガイドは、前記用紙搬送路が湾曲する箇所の外周側において、前記湾曲領域に配置される第1搬送部と前記非湾曲領域に配置される第2搬送部とを含み、
前記第1搬送部および前記第2搬送部のそれぞれは、前記用紙搬送方向と直交する方向に所定間隔で設けられて、当該用紙搬送方向に沿って延びる複数のリブを有し、
前記第1搬送部に形成されるリブ間に前記第2搬送部に形成されるリブ間の溝部よりも浅い浅溝部を形成する、
用紙搬送装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
前者においては「用紙搬送路を搬送される用紙との用紙搬送方向における単位長さ当たりの接触面積が、第2搬送部よりも第1搬送部の方が大きく」、前記第1搬送部に形成されるリブ間に前記第2搬送部に形成されるリブ間の溝部よりも浅い浅溝部を形成することによって、「前記第1搬送部における前記接触面積を第2搬送部よりも大きくした」のに対して、後者においてはその点が明らかでない点。

そうすると、両者は相違点1において相違するから、本件特許発明1が甲第2号証に記載された発明であるということはできない。

(イ)上記「ア.(ア)b.」の特許異議申立理由について
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。

a.後者の「給紙経路」は前者の「用紙搬送路」に相当し、同様に、「記録紙」は「用紙」に、「ガイド板」は「搬送ガイドにそれぞれ相当する。
b.後者の「画像形成装置」は「記録紙を給紙経路の各所に設けた搬送ローラ対で上方に向かって搬送」するものであるから、前者の「用紙搬送装置」に相当する。
c.後者は「2枚のガイド板が互いに対向して配置しており、これらのガイド板は湾曲し、記録紙の搬送方向を垂直方向から水平方向へ方向転換する」ものであり、「2枚のガイド板につながる給紙経路が湾曲していない」から、後者の当該「ガイド板」及び「ガイド板につながる給紙経路」は、前者の「湾曲領域と非湾曲領域とを含む用紙搬送路を形成する搬送ガイド」に相当し、上記「第3 2.(1)ア.」における「外周側」についての検討を踏まえると、後者の「これらのガイド板は湾曲し、記録紙の搬送方向を垂直方向から水平方向へ方向転換するようになっており、……2枚のガイド板につながる給紙経路が湾曲していない」点は、前者の「用紙搬送路が湾曲する箇所の外周側において、湾曲領域に配置される第1搬送部と非湾曲領域に配置される第2搬送部とを含み」の点に相当する。

そうすると、両者は、
「湾曲領域と非湾曲領域とを含む用紙搬送路を形成する搬送ガイドを備える用紙搬送装置において、
前記搬送ガイドは、前記用紙搬送路が湾曲する箇所の外周側において、前記湾曲領域に配置される第1搬送部と前記非湾曲領域に配置される第2搬送部とを含む、用紙搬送装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点2]
前者は「用紙搬送路を搬送される用紙との用紙搬送方向における単位長さ当たりの接触面積が、第2搬送部よりも第1搬送部の方が大きく」、「第1搬送部および前記第2搬送部のそれぞれは、前記用紙搬送方向と直交する方向に所定間隔で設けられて、当該用紙搬送方向に沿って延びる複数のリブを有」するものであって、「第1搬送部に形成されるリブ間に第2搬送部に形成されるリブ間の溝部よりも浅い浅溝部を形成することによって、第1搬送部における接触面積を第2搬送部よりも大きくした」のに対して、後者のガイド板(前者の「第1搬送部」に相当)は連続平滑面で構成するものでリブを有さず、また、後者は2枚のガイド板につながる給紙経路の部位(前者の「第2搬送部」に相当)の表面がどのような形状であるかが不明であって、当該部位と対比したガイド板の接触面積が明らかでない点。

相違点2について検討する。

甲1発明は「画像に悪影響を与えることなく、処理時間を短縮しかつ小型化が容易な画像形成装置を提供すること」(段落【0006】)を課題として、「高温のままの出力媒体の画像面は、凹凸がない連続平滑面で構成したガイド板の表面に面接触するので、接触抵抗が画像面の局所に集中せず、分散される」ことにより、「熱定着部および搬送部の距離を短くして出力媒体が高温のままガイド板に到達しても、画像の剥がれや汚れの発生が起こり難い」(段落【0008】)ものである。
一方、甲3発明は上記「イ.(ウ)」のとおり「リブ遊挿部」及び「リブ」を備えるものであって、甲1発明に甲3発明を適用すれば、ガイド板の表面に「リブ遊挿部」及び「リブ」が設けられて、甲3発明のように「ペーパガイドおよびリブと、用紙との接触面が少ないため、摩擦が少ないが、この状態が続くと用紙の決まった部分がこすられ続け、用紙の表面からトナー剥がれが生じ易く」なって、甲1発明の上記課題を解決できないものとなるから、甲1発明に甲3発明を適用することには阻害要因があるといえる。

また、甲3発明は「U字型の屈曲部」に形成された「リブ遊挿部」において、「通常の状態ではリブはリブ遊挿部から突出した状態になっており、用紙は、リブによって用紙の一部がペーパガイド本体から浮き上がっており、ペーパガイドおよびリブと、用紙との接触面が少な」く、「リブ移動手段によってリブが移動すると、リブがペーパガイド本体の内周面から退避し、用紙をペーパガイド本体にほぼ密接する状態で搬送させる状態では、ペーパガイド本体と用紙との接触面が多い」ものであるから、「ペーパガイド本体」の湾曲領域においてリブが突出及び退避することによって、ペーパガイド及びリブと用紙との接触面積を異ならせる点が開示されているといえるものの、湾曲領域と非湾曲領域において用紙の接触面積を異ならせる点を開示するものではないから、仮に甲1発明に甲3発明を適用したとしても、相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項を備えるものとはならない。

そうすると、本件特許発明1は、甲1発明及び甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

なお、甲第4号証ないし甲第8号証にも、上記相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項は記載されていない。

(ウ)上記「ア.(ア)c.」の特許異議申立理由について
本件特許発明1と甲2発明とを対比すると上記「(ア)」のとおりであって、両者は上記相違点1において相違し、その余の点で一致する。

相違点1について検討する。

本件明細書には「用紙は、搬送時に外側搬送ガイド74に押し付けられることによって、用紙搬送方向と直交する方向に少し撓むので、リブ84の頂部と共に浅溝部90の頂部に接触する。つまり、浅溝部90の頂部でも用紙が受けられる。このように、第1搬送部78のリブ84間に浅溝部90を形成することによっても、用紙搬送路Sを搬送される用紙との用紙搬送方向における単位長さ当たりの接触面積は、第2搬送部80よりも第1搬送部78の方が大きくなり、用紙搬送路Sの湾曲領域C2における用紙と外側搬送ガイド74との接触圧が小さくなる。」(段落【0074】)と記載されているから、本件特許発明1は、「前記第1搬送部に形成されるリブ間に前記第2搬送部に形成されるリブ間の溝部よりも浅い浅溝部を形成することによって」、用紙が浅溝部の頂部に接触して、「用紙搬送路を搬送される用紙との用紙搬送方向における単位長さ当たりの接触面積が、第2搬送部よりも第1搬送部の方が大きく」した、すなわち、「前記第1搬送部における前記接触面積を第2搬送部よりも大きくした」ものと認められる。
一方、甲2発明は上記「イ.(イ)」のとおりであって、甲第2号証には「シート」が「ガイドリブ」間の溝に接触することは記載されておらず、また、図3及び4からも「シート」が「ガイドリブ」間の溝に接触する態様で搬送されることを看取することはできないから、甲2発明はガイドリブのいずれの部位においてもシートがガイドリブ間に存する溝に接触するものではない。
そうすると、甲2発明は「ガイドリブ」が「搬送路の外周側に設けられ、湾曲した部分と湾曲していない部分を有し、ガイドリブの湾曲していない部分の高さが湾曲した部分の高さより高い」ものの、そもそもシートがガイドリブ間に存する溝に接触しないから、ガイドリブの高さに応じて用紙との接触面積が異なるものではなく、相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を備えるものではない。

また、上記「(イ)」において検討したように、甲3発明は「U字型の屈曲部」に形成された「リブ遊挿部」において、「通常の状態ではリブはリブ遊挿部から突出した状態になっており、用紙は、リブによって用紙の一部がペーパガイド本体から浮き上がっており、ペーパガイドおよびリブと、用紙との接触面が少な」く、「リブ移動手段によってリブが移動すると、リブがペーパガイド本体の内周面から退避し、用紙をペーパガイド本体にほぼ密接する状態で搬送させる状態では、ペーパガイド本体と用紙との接触面が多い」ものであるから、「ペーパガイド本体」の湾曲領域においてリブが突出及び退避することによって、ペーパガイド及びリブと用紙との接触面積を異ならせる点が開示されているといえるものの、湾曲領域と非湾曲領域において用紙の接触面積を異ならせる点を開示するものではないから、仮に甲2発明に甲3発明を適用したとしても、相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を備えるものとはならない。

そうすると、本件特許発明1は、甲2発明及び甲3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

なお、甲第4号証ないし甲第8号証にも、上記相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項は記載されていない。

(エ)上記「ア.(イ)」の特許異議申立理由について
本件請求項2及び3は訂正により削除されたため、対象となる請求項が存在しない。

(オ)上記「ア.(ウ)」の特許異議申立理由について
本件特許発明4ないし8は、本件特許発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに発明特定事項を付加したものである。
そして、本件特許発明1については、上記「(ア)ないし(ウ)」で検討したとおりであって、甲第1号証ないし甲第8号証に記載された発明であるということはできず、また、甲第1号証ないし甲第8号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたともいえないから、本件特許発明4ないし8は、上記本件特許発明1についてと同様の理由により、甲第1号証ないし甲第8号証に記載された発明であるということはできず、また、甲第1号証ないし甲第8号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたともいえない。

エ.小括
以上のとおりであるから、本件特許発明1及び4ないし8に係る特許は、異議申立人が主張する上記「ア.」の理由によっては、特許法第29条第1項第3号及び第2項の規定に違反してされたものであるということはできない。
なお、本件請求項2及び3は訂正により削除されたため、対象となる請求項が存在しない。

(2)特許法第36条第6項第1号及び第2号
次に、取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった請求項1ないし8についての特許法第36条第6項第1号及び第2号に関する特許異議申立理由について検討する。

ア.湾曲領域、非湾曲領域、用紙搬送路及び搬送ガイドの関係について
(ア)特許異議申立理由の概要
本件特許発明1ないし3は、「用紙搬送路」が「湾曲領域と非湾曲領域とを含む」こと、及び、「搬送ガイドは、前記用紙搬送路が湾曲する箇所の外周側において、前記湾曲領域に配置される第1搬送部と前記非湾曲領域に配置される第2搬送部とを含」むことを発明特定事項としている。
一方、本件特許明細書には、「外側搬送ガイド74は、案内ゲート70の上方から搬送ローラ66bまで略水平方向に直線状に延びるように設けられる」(段落【0052】)、及び、「第1搬送部78および第2搬送部80の全体に亘る矩形平板状に形成されるベース部82を備える」(段落【0053】)と記載されるとともに、図面の図3ないし図10には搬送ガイドが非湾曲領域及び湾曲領域のいずれにおいても「平板状」であるとして記載されている。
よって、本件特許発明1ないし3は、発明を実施するための形態(実施例及び図面)に記載したものと相違し、特許を受けようとする発明が明確でないから、請求項1ないし3に係る特許は、特許法第36条第6項第1号又は第2号に違反している(特許異議申立書「VI.(i)」(第22ページ第17行ないし第25ページ第4行))。

(イ)検討
a.本件明細書の段落【0052】の記載について
本件明細書の段落【0050】には、「外側搬送ガイド74および内側搬送ガイド76は、互いに対向するように配置され、定着ユニット46と搬送ローラ66bとの間において、湾曲領域C2と非湾曲領域Lとを含む用紙搬送路Sを形成する。」と記載されているから、「湾曲領域C2と非湾曲領域Lとを含む用紙搬送路S」は「定着ユニット46と搬送ローラ66bとの間」の部分であって、段落【0052】の「外側搬送ガイド74は、案内ゲート70の上方から搬送ローラ66bまで略水平方向に直線状に延びるように設けられる」との記載は、この部分のうちの一部である「案内ゲート70の上方から搬送ローラ66bまで」の形状を説明したものと認められる。そして、このことは、図2から「案内ゲート70の上方から搬送ローラ66bまで」が湾曲していない一方、案内ゲート70と定着ユニット46の間に湾曲した領域がある点を看取できることからも裏付けられる。
そうすると、本件明細書の段落【0052】の記載と、本件特許発明1の発明特定事項とは、矛盾するものではない。

b.本件明細書の段落【0053】の記載及び図面の図3ないし図10について

例えば、甲第2号証に「図2はスイッチバックローラ14から再給紙ローラ22までのシート再搬送部3のシート搬送路を平面に展開して上から見た図」(段落【0039】)、甲第6号証(特開2007-99480号公報)に「図8は本実施例の第1湾曲部のガイドリブの構成を示す湾曲部を展開した平面図」(段落【0092】)と記載されているように、「用紙搬送装置」及び「画像形成装置」の技術分野において、湾曲部を平面に展開して図示することは従来一般に行われていることである。
一方、本件明細書には、例えば、図3及び4について、「図3は、外側搬送ガイド74を用紙案内面側から見た様子を概略的に示す図解図である。また、図4は、外側搬送ガイド74を示す断面図であり、(a)は図3のIVa‐IVa線における断面を示し、(b)は図3のIVb‐IVb線における断面を示し、(c)は図3のIVc‐IVc線における断面を示す。」(段落【0052】)、「図3および図4に示すように、外側搬送ガイド74は、一体成形によって一体的に形成される、湾曲領域C2に配置される第1搬送部78と非湾曲領域Lに配置される第2搬送部80とを含み、第1搬送部78および第2搬送部80の全体に亘る矩形平板状に形成されるベース部82を備える。」(段落【0053】)と記載されており、当業者であれば従来一般に行われている上記の図示の態様を踏まえて、図3等において符号「C(C2)」で示された部分や図4等においてこれに対応する部分が「湾曲領域C2」であって、これらの図が「湾曲領域C2」を平面に展開してその概略を示した図であることや、段落【0053】の記載がこのような図示を前提としたものであることを当然理解するものといえる。
そうすると、本件明細書の段落【0053】の記載及び図面の図3ないし図10と、本件特許発明1の発明特定事項とは、矛盾するものではない。

c.小括
以上のとおりであるから、異議申立人が主張する上記「(ア)」の理由によっては、請求項1及び4ないし8に係る特許が、特許法第36条第6項第1号又は第2号に違反してされたものであるということはできない。

イ.湾曲領域及び非湾曲領域の定義について
(ア)特許異議申立理由の概要
本件明細書(段落【0049】)では、「湾曲領域C」を「所定以上の曲率で湾曲する領域」及び「用紙が外側搬送ガイドGoに押し当てられて用紙に対して大きな圧力がかかる領域」と規定しており、「所定以上の曲率」の例示として「1/100[1/mm]以上」を挙げている。
しかしながら、これらの規定では、本件特許発明1ないし3の「湾曲領域」と「非湾曲領域」の構成を特定することができない。
よって、請求項1ないし3の記載は、特許法第36条第6項第1号又は第2号に違反している(特許異議申立書「VI.(ii)」(第25ページ第5行ないし第27ページ第5行))。

(イ)検討
本件特許発明1は、「用紙搬送路が湾曲している領域(湾曲領域)では、用紙の腰(剛度または弾力性)によって搬送ガイドに用紙が強く押し当てられる。このため、リブによる用紙へのダメージが大きくなり、用紙にリブ状の筋(リブ痕)が形成されてしまう場合がある。」(段落【0002】)ことを前提として、「簡単な構成で用紙に与えるダメージを軽減でき、トナーの転写不良および定着不良を防止できる、用紙搬送装置およびそれを備える画像形成装置を提供すること」(段落【0007】)を課題とするものであるから、当業者であれば、請求項において曲率等が特定されていなくても、「湾曲領域」が「リブによる用紙へのダメージが大きくなり、用紙にリブ状の筋(リブ痕)が形成され」る程度の曲率で湾曲した領域であると理解することができる。
そうすると、異議申立人が主張する上記「(ア)」の理由によっては、請求項1及び4ないし8に係る特許が、特許法第36条第6項第1号又は第2号に違反してされたものであるということはできない。

ウ.第1搬送部と第2搬送部の関係について
(ア)特許異議申立理由の概要
請求項1ないし3においては第1搬送部と第2搬送部が搬送方向において互いに隣り合ったものであることが規定されていないが、本件明細書には、第1搬送部と第2搬送部とが互いに隣接して設けられた形態のみが開示されている。
そうすると、本件特許発明1ないし3の範囲まで発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえず、また、本件特許発明1ないし3は発明の詳細な説明に開示した範囲を超えるものである。
よって、請求項1ないし3に係る発明は、開示した範囲を超えるものなので、特許法第36条第6項第1号に違反している(特許異議申立書「VI.(iii)」(第27ページ第6行ないし第19行))。

(イ)検討
本件特許発明1は、「湾曲領域と非湾曲領域とを含む用紙搬送路を形成する搬送ガイドを備える用紙搬送装置」との発明特定事項を有するところ、「非湾曲領域」はその語義から見て「湾曲領域」以外の領域であって、「用紙搬送路」に含まれる領域は「湾曲領域」か「非湾曲領域」かのいずれかでありその他の領域は存しないから、「湾曲領域と非湾曲領域とを含む用紙搬送路」においては、当然、「湾曲領域」と「非湾曲領域」とが隣接するものと認められる。
そうすると、異議申立人が主張する上記「(ア)」の理由によっては、請求項1及び4ないし8に係る特許が、特許法第36条第6項第1号に違反してされたものであるということはできない。

エ.その他
(ア)a.異議申立人は、請求項1の浅溝部によってシートの接触面積を増やす具体的な構成が不明である旨主張する(特許異議申立書「VI.(iv)(ア)」(第27ページ第20行ないし第28ページ第11行))。

b.しかしながら、請求項1には「浅溝部」が「浅溝部を形成することによって、前記第1搬送部における前記接触面積を前記第2搬送部よりも大きく」するものであることが特定されており、本件明細書の段落【0074】には「用紙は、搬送時に外側搬送ガイド74に押し付けられることによって、用紙搬送方向と直交する方向に少し撓むので、リブ84の頂部と共に浅溝部90の頂部に接触する。」との記載があって、用紙が浅溝部に接触する作用機序も示されているから、請求項1の「前記用紙搬送路を搬送される用紙との用紙搬送方向における単位長さ当たりの接触面積が、前記第2搬送部よりも前記第1搬送部の方が大きく」するとの事項が明確でないとまでいうことはできない。

(イ)a.異議申立人は、請求項1の「第2搬送部に形成される浅溝部」の第2搬送部に対する範囲、及び、請求項3の「第2搬送部に形成するリブ」の第2搬送部に対する範囲が不明である旨主張する(特許異議申立書「VI.(iv)(イ)」(第28ページ第12行ないし第14行))。

b.しかしながら、請求項1は「前記用紙搬送路を搬送される用紙との用紙搬送方向における単位長さ当たりの接触面積が、前記第2搬送部よりも前記第1搬送部の方が大き」いことを発明特定事項とするところ、請求項1の「第2搬送部に形成される浅溝部」の第2搬送部に対する範囲は、このような接触面積の大小関係を満たすものであればよいことは当業者にとって明らかである。
このことは、本件明細書の段落【0078】に「 なお、この第3実施例では、第1搬送部78に形成される全てのリブ84間の用紙搬送方向の全長に亘って浅溝部90を形成するようにしたが、第1搬送部78に形成される全てのリブ84間に浅溝部90を形成する必要はなく、また、第1搬送部78の用紙搬送方向の全長に亘って浅溝部90を形成する必要もない。」との記載があることからも裏付けられる。
そうすると、請求項1の「第2搬送部に形成される浅溝部」との事項が明確でないとまでいうこと
はできない。

(ウ)a.異議申立人は、請求項5は「前記第1搬送部の前記用紙搬送方向における両端部の少なくとも一方には、……傾斜部が形成される」ことを発明特定事項とするものであるが、図2および図3における搬送ローラ66bから第2用紙搬送路S2に用紙を搬送する場合には用紙は湾曲せず、用紙が第1搬送部の両端部を搬送されることはないから、このような場合における第1搬送部の構成は不明確である旨主張する(特許異議申立書「VI.(iv)(ウ)」(第28ページ第15行ないし第29ページ第7行))。


b.しかしながら、請求項5が引用する請求項1の「湾曲領域に配置される第1搬送部」との事項によれば、「第1搬送部」は「湾曲領域」に配置されるところ、本件明細書の段落【0046】には、図2及び図3の態様について「特に、定着ユニット46の用紙搬送方向の下流側における、第1用紙搬送路S1と第2用紙搬送路S2との合流部分となる湾曲領域C2においては、第1用紙搬送路S1の曲率が大きくなって、用紙がこの湾曲領域C2を通過する際に外側搬送ガイド74(Go)に強く押し当てられる。」と記載されており、「湾曲領域C2においては、第1用紙搬送路S1の曲率が大きくなって」との記載から、この態様における「湾曲領域C2」は用紙が「第1用紙搬送路S1」を通過する場合に搬送される領域を意味していることは明らかである。
そうすると、用紙が「湾曲領域」を通過するのは「第1用紙搬送路S1」を搬送される場合であり、「湾曲領域」が形成される「第1搬送部」は「第1用紙搬送路S1」に存するのであって、「第2用紙搬送路S2」に存するのではない。
してみると、「第2用紙搬送路S2」における「第1搬送部」の構成が不明確であるとする異議申立人の主張には前提において誤りがあり、採用することができない。

(エ)a.異議申立人は、本件特許発明の発明の効果は「用紙搬送路の湾曲領域における用紙と搬送ガイドとの接触圧を小さくして、……用紙へのトナーの転写不良及び定着不良を防止すること」であるが、特許請求の範囲に定着及びトナーに関する記載はなく、発明の効果と特許請求の範囲に記載された構成とが対応しないため、本件特許発明は不明確である旨主張する(特許異議申立書「VI.(iv)(エ)」(第29ページ第8行ないし第12行))。

b.しかしながら、本件明細書には、【発明の効果】の項(段落【0025】)に「この発明によれば、用紙搬送路の湾曲領域における用紙と搬送ガイドとの接触圧を小さくできるので、搬送ガイドが用紙に与えるダメージを軽減でき、用紙へのトナーの転写不良および定着不良を防止できる。また、搬送ガイドの第1搬送部と用紙との接触面積を第2搬送部よりも大きくするという簡単な構成であるので、装置が大型化することを防止でき、用紙の搬送不良も生じ難い。」と記載されているものの、当業者であれば本件特許発明1の効果は「搬送ガイドが用紙に与えるダメージを軽減でき」ること等であって、「用紙へのトナーの転写不良及び定着不良を防止できる」ことが本件特許発明1の効果として記載されていないことを当然理解するものといえる。
また、本件明細書の段落【0060】には「トナーの転写不良及び定着不良」に関して「この第1実施例によれば、用紙搬送路Sの湾曲領域C1における用紙と外側搬送ガイド74との接触圧を小さくできるので、外側搬送ガイド74が用紙に与えるダメージを軽減でき、用紙へのトナーの転写不良および定着不良を防止できる。」との記載もあるが、当該記載は第1実施例の効果についてのものであって、本件特許発明1の効果を記載したものではない。
そうすると、異議申立人の上記主張は本件特許発明1の効果を正解しないものであるから、採用することができない。

(オ)a.異議申立人は、請求項1ないし3及び5ないし8記載の搬送ガイドの湾曲領域は、請求項6記載の用紙搬送面の面一と矛盾しており、本件特許発明は不明確である旨主張する(特許異議申立書「VI.(iv)(オ)」(第29ページ第13行ないし第15行))。

b.しかしながら、異議申立人の上記主張は具体的根拠を伴わないものであり、請求項1及び5ないし8で特定された「湾曲領域」と、請求項6の「第1搬送部の用紙案内面と第2搬送部の用紙案内面とは、面一に形成される」との事項とに矛盾する点を見出すこともできないから、異議申立人の上記主張は採用することができない。

(カ)そうすると、異議申立人が主張する上記「(ア)ないし(オ)」の理由によっては、請求項1及び4ないし8に係る特許が、特許法第36条第6項第1号及び第2号に違反してされたものであるということはできない。

オ.小括
以上のとおりであるから、本件特許の特許請求の範囲の請求項1及び4ないし8の記載は、特許法第36条第6項第1号及び第2号の規定に適合するものである。
なお、本件請求項2及び3は訂正により削除されたため、対象となる請求項が存在しない。

第4 むすび

以上のとおり、本件請求項1及び4ないし8に係る特許は、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1及び4ないし8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、本件請求項2及び3は訂正により削除されたため、本件特許の請求項2及び3に対して特許異議申立人がした特許異議申立てについては、対象となる請求項が存在しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
用紙搬送装置およびそれを備える画像形成装置
【技術分野】
【0001】
この発明は用紙搬送装置およびそれを備える画像形成装置に関し、特にたとえば、湾曲領域と非湾曲領域とを含む用紙搬送路を形成する搬送ガイドを備える、用紙搬送装置およびそれを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置の用紙搬送路には、用紙の表裏面を挟むようにして案内する一対の搬送ガイドが設けられる。そして、この搬送ガイドには、用紙との接触面積を低減させ、用紙に作用する搬送抵抗を低減させるために、各用紙サイズに合わせたリブが設けられている。しかし、用紙搬送路が湾曲している領域(湾曲領域)では、用紙の腰(剛度または弾力性)によって搬送ガイドに用紙が強く押し当てられる。このため、リブによる用紙へのダメージが大きくなり、用紙にリブ状の筋(リブ痕)が形成されてしまう場合がある。リブからダメージを受けた用紙部分においては、トナーの転写不良および定着不良が生じる恐れがある。
【0003】
そこで、特許文献1の技術では、搬送ガイドの一部を可動リブとし、この可動リブを案内ローラと同じ浮動シャフトに配置することによって、搬送ガイド(リブ)が用紙に与えるダメージを軽減して、用紙にリブ痕が形成されることを防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-345746号公報[B65H 5/06]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の可動リブのように、搬送ガイドに対して移動機構を設けると、構成が複雑化するので、用紙搬送装置を小型化または薄型化していく上で支障が生じる。また、可動リブの移動により、その可動リブと接続される領域において用紙の先端がひっかかり易くなり、用紙ジャムや用紙の先端折れが生じ易くなってしまう。このように、搬送ガイドに対して移動機構を採用することには、支障が多い。
【0006】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、用紙搬送装置およびそれを備える画像形成装置を提供することである。
【0007】
この発明の他の目的は、簡単な構成で用紙に与えるダメージを軽減でき、トナーの転写不良および定着不良を防止できる、用紙搬送装置およびそれを備える画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、湾曲領域と非湾曲領域とを含む用紙搬送路を形成する搬送ガイドを備える用紙搬送装置において、搬送ガイドは、用紙搬送路が湾曲する箇所の外周側において、湾曲領域に配置される第1搬送部と非湾曲領域に配置される第2搬送部とを含み、用紙搬送路を搬送される用紙との用紙搬送方向における単位長さ当たりの接触面積が、第2搬送部よりも第1搬送部の方が大きく、第1搬送部および第2搬送部のそれぞれは、用紙搬送方向と直交する方向に所定間隔で設けられて、当該用紙搬送方向に沿って延びる複数のリブを有し、第1搬送部に形成されるリブ間に第2搬送部に形成されるリブ間の溝部よりも浅い浅溝部を形成することによって、第1搬送部における接触面積を第2搬送部よりも大きくしたことを特徴とする、用紙搬送装置である。
【0009】
請求項1の発明によれば、用紙搬送路の湾曲領域における用紙と搬送ガイドとの接触圧を小さくできるので、搬送ガイドが用紙に与えるダメージを軽減でき、用紙へのトナーの転写不良および定着不良を防止できる。また、搬送ガイドの第1搬送部と用紙との接触面積を第2搬送部よりも大きくするという簡単な構成であるので、装置が大型化することを防止でき、用紙の搬送不良も生じ難い。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1の発明に従属し、第1搬送部と第2搬送部とは一体的に形成される、用紙搬送装置である。
【0017】
請求項5の発明は、請求項1または4の発明に従属し、第1搬送部の用紙搬送方向における両端部の少なくとも一方には、用紙搬送方向に対して傾斜する傾斜部が形成される、用紙搬送装置である。
【0018】
請求項5の発明によれば、第1搬送部の用紙搬送方向における両端部の少なくとも一方には、第1搬送部の用紙搬送方向における先端側(第2搬送部側)に向かうに従ってその頂部が用紙から離れていくように、用紙搬送方向に対して傾斜する傾斜部が形成されるので、用紙の先端が第1搬送部の端部にひっかかってしまうことが防止され、用紙ジャムや用紙の先端折れが防止される。
【0019】
請求項6の発明は、請求項1、4、5のいずれかの発明に従属し、第1搬送部の用紙案内面と第2搬送部の用紙案内面とは、面一に形成される、用紙案内装置である。
【0020】
請求項6の発明によれば、第1搬送部の用紙搬送面と第2搬送部の用紙搬送面とが面一、つまり同じ高さになるように外側搬送ガイドが形成されるので、用紙を円滑に搬送することができる。
【0021】
請求項7の発明は、請求項1、4、5のいずれかの発明に従属し、第1搬送部の用紙案内面は、第2搬送部の用紙案内面よりも窪む、用紙案内装置である。
【0022】
請求項7の発明によれば、第1搬送部の用紙案内面が第2搬送部の用紙案内面よりも窪むように外側搬送ガイドが形成されるので、この部分を用紙が大回りして搬送されるようになる。したがって、外側搬送ガイドと用紙との接触圧を小さくでき、外側搬送ガイドが用紙に与えるダメージを低減することができる。
【0023】
請求項8の発明は、請求項1、4から7までのいずれか1項に記載の用紙搬送装置を備える、画像形成装置である。
【0024】
請求項8に発明によれば、用紙搬送路の湾曲領域における用紙と外側搬送ガイドとの接触圧を小さくできるので、外側搬送ガイドが用紙に与えるダメージを軽減でき、用紙へのトナーの転写不良および定着不良を防止できる。また、外側搬送ガイドの第1搬送部と用紙との接触面積を第2搬送部よりも大きくするという簡単な構成であるので、装置が大型化することを防止でき、用紙の搬送不良も生じ難い。
【発明の効果】
【0025】
この発明によれば、用紙搬送路の湾曲領域における用紙と搬送ガイドとの接触圧を小さくできるので、搬送ガイドが用紙に与えるダメージを軽減でき、用紙へのトナーの転写不良および定着不良を防止できる。また、搬送ガイドの第1搬送部と用紙との接触面積を第2搬送部よりも大きくするという簡単な構成であるので、装置が大型化することを防止でき、用紙の搬送不良も生じ難い。
【0026】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う後述の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明の第1実施例である用紙搬送装置を備える画像形成装置の断面を概略的に示す図解図である。
【図2】図1の画像形成装置の用紙搬送路を拡大して示す図解図である。
【図3】図1の用紙搬送装置が備える外側搬送ガイドを用紙案内面側から見た様子を概略的に示す図解図である。
【図4】図3の外側搬送ガイドを示す断面図であり、(a)は図3のIVa‐IVa線における断面を示し、(b)は図3のIVb‐IVb線における断面を示し、(c)は図3のIVc‐IVc線における断面を示す。
【図5】この発明の第2実施例である用紙搬送装置が備える外側搬送ガイドを用紙案内面側から見た様子を概略的に示す図解図である。
【図6】図5の外側搬送ガイドを示す断面図であり、(a)は図5のVIa‐VIa線における断面を示し、(b)は図5のVIb‐VIb線における断面を示し、(c)は図5のVIc‐VIc線における断面を示す。
【図7】この発明の第3実施例である用紙搬送装置が備える外側搬送ガイドを用紙案内面側から見た様子を概略的に示す図解図である。
【図8】図7の外側搬送ガイドを示す断面図であり、(a)は図7のVIIIa‐VIIIa線における断面を示し、(b)は図7のVIIIb‐VIIIb線における断面を示し、(c)は図7のVIIIc‐VIIIc線における断面を示す。
【図9】この発明の第4実施例である用紙搬送装置が備える外側搬送ガイドを用紙案内面側から見た様子を概略的に示す図解図である。
【図10】図9の外側搬送ガイドを示す断面図であり、(a)は図9のXa‐Xa線における断面を示し、(b)は図9のXb‐Xb線における断面を示し、(c)は図9のXc‐Xc線における断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[第1実施例]
以下、図面を適宜参照して、この発明の第1実施例である用紙搬送装置10について説明する。図1は、用紙搬送装置10を備える画像形成装置100の断面を概略的に示す図解図である。図2は、画像形成装置100の用紙搬送路Sを拡大して示す図解図である。
【0029】
図1および図2を参照して、用紙搬送装置10は、複写機、ファクシミリ、プリンタおよびこれらの複合機などの画像形成装置100に用いられる。詳細は後述するように、この第1実施例では、用紙搬送装置10は、用紙搬送路Sを形成する一対の搬送ガイドG(外側搬送ガイド74および内側搬送ガイド76)を備え、画像形成装置100の用紙搬送路Sのうち、トナー像を定着させた用紙を排紙トレイ52に導く領域に配置される。
【0030】
先ず、画像形成装置100の構成について概略的に説明する。この実施例では、画像形成装置100は、複写機能、プリンタ機能、スキャナ機能およびファクシミリ機能などを有する複合機(MFP:Multifunction Peripheral)である。図1に示すように、画像形成装置100は、装置本体12およびその上方に配置される画像読取装置14を含み、画像読取装置14で読み込まれた画像データまたは外部コンピュータから送信された画像データに基づいて、所定の用紙(記録紙)に対して多色または単色の画像を形成する。
【0031】
画像読取装置14は、透明材によって形成される原稿載置台16を備え、原稿載置台16の上方には、ヒンジ等を介して原稿押さえカバー18が開閉自在に取り付けられる。この原稿押えカバー18には、原稿載置トレイ20に載置された原稿を画像読取位置22に対して1枚ずつ自動的に給紙するADF(自動原稿送り装置)24が設けられる。また、原稿載置台18の前面側には、ユーザによる入力操作を受け付けるタッチパネルおよび操作ボタン等の操作部(図示せず)が設けられる。
【0032】
また、画像読取装置14には、光源、複数のミラー、結像レンズおよびラインセンサ等を備える画像読取部26が内装される。画像読取部26は、原稿表面を光源によって露光し、原稿表面から反射した反射光を複数のミラーによって結像レンズに導く。そして、結像レンズによって反射光をラインセンサの受光素子に結像させる。ラインセンサでは、受光素子に結像した反射光の輝度や色度が検出され、原稿表面の画像に基づく画像データが生成される。ラインセンサとしては、CCD(Charge Coupled Device)やCIS(Contact Image Sensor)等を用いるとよい。
【0033】
なお、画像読取部26は、画像読取位置22と対向する位置がホームポジションとされ、原稿載置トレイ20に載置された原稿の画像を読み取る場合には、ADFによって搬送される原稿が画像読取位置22を通過するときに当該原稿表面の画像を読み取り、その画像データを取得する。また、原稿載置台16に載置された原稿の画像を読み取る場合には、光源およびミラー等が原稿載置台16の下方を適宜移動することによって、当該原稿表面の画像を読み取り、その画像データを取得する。
【0034】
また、画像形成装置100の装置本体12には、制御部28および画像形成部30が内装される。制御部28は、CPUおよびメモリ等を備え、タッチパネル等の操作部への入力操作などに応じて、画像形成装置100の各部位に制御信号を送信し、画像形成装置100に種々の動作を実行させる。
【0035】
画像形成部30は、露光ユニット32、現像器34、感光体ドラム36、クリーナユニット38、帯電器40、中間転写ベルトユニット42、転写ローラ(2次転写ローラ)44および定着ユニット46等を備え、給紙カセット48または手差し給紙カセット50から搬送される用紙(記録紙)上に画像を形成し、画像形成済みの用紙を排出トレイ52に排出する。用紙上に画像を形成するための画像データとしては、上述のように、画像読取部26で読み取った画像データや外部コンピュータから送信された画像データ等が利用される。
【0036】
なお、画像形成装置100において扱われる画像データは、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)およびイエロー(Y)の4色のカラー画像に応じたものである。このため、現像器34、感光体ドラム36、クリーナユニット38および帯電器40のそれぞれは、各色に応じた4種類の潜像を形成するように4個ずつ設けられ、これらによって4つの画像ステーションが構成される。
【0037】
感光体ドラム36は、導電性を有する円筒状の基体の表面に感光層が形成された静電潜像担持体であり、帯電器40は、この感光体ドラム36の表面を所定の電位に帯電させるものである。また、露光ユニット32は、レーザ出射部および反射ミラー等を備えたレーザスキャニングユニット(LSU)として構成され、帯電された感光体ドラム36の表面を露光することによって、画像データに応じた静電潜像を感光体ドラム36の表面に形成する。現像器34は、感光体ドラム36の表面に形成された静電潜像を4色(YMCK)のトナーによって顕像化するものである。また、クリーナユニット38は、現像および画像転写後における感光体ドラム36の表面に残留したトナーを除去して回収する。
【0038】
中間転写ベルトユニット42は、中間転写ベルト54、駆動ローラ56、従動ローラ58および4つの中間転写ローラ60等を備え、感光体ドラム36の上方に配置される。中間転写ベルト54は、各感光体ドラム36に接触するように設けられており、中間転写ローラ60を用いて、各感光体ドラム36に形成された各色のトナー像を中間転写ベルト54に順次重ねて転写することによって、中間転写ベルト54上に多色のトナー像が形成される。また、駆動ローラ56の近傍には、転写ローラ44が配置されており、中間転写ベルト54と転写ローラ44との間のニップ域を用紙が通過することによって、中間転写ベルト54に形成されたトナー像が用紙に転写される。
【0039】
定着ユニット46は、ヒートローラ62および加圧ローラ64を備え、転写ローラ44の上方に配置される。ヒートローラ62は、所定の定着温度となるように設定されており、ヒートローラ62と加圧ローラ64との間のニップ域を用紙が通過することによって、用紙に転写されたトナー像が溶融、混合および圧接されて、用紙に対してトナー像が熱定着される。なお、定着ユニット46では、上記のようなトナー像の定着処理が行われる他に、ヒートローラ62と加圧ローラ64との間のニップ域に用紙を通過させることによって、用紙の平滑化処理を行うこともできる。
【0040】
図2からよく分かるように、このような装置本体12内には、給紙カセット48または手差し給紙カセット50に載置された用紙を転写ローラ44および定着ユニット46を経由させて排紙トレイ52に送るための第1用紙搬送路S1が設けられる。また、用紙に対して両面印刷を行う際に、片面印刷が終了して定着ユニット46を通過した後の用紙を、転写ローラ44の用紙搬送方向の上流側において第1用紙搬送路S1に戻すための第2用紙搬送路S2が設けられる。なお、説明の都合上、第1用紙搬送路S1と第2用紙搬送路S2とを区別する必要がない場合には、第1用紙搬送路S1と第2用紙搬送路S2とをまとめて用紙搬送路Sと呼ぶこととする。同様に、他の構成部分の名称についてもまとめて呼ぶことがある。
【0041】
第1用紙搬送路S1には、用紙に推進力を与える搬送機構として機能する、複数の搬送ローラ66a,66b、レジストローラ68、転写ローラ44および定着ユニット46等が設けられる。また、第2用紙搬送路S2には、用紙に推進力を与える搬送機構として機能する、複数の搬送ローラ66c,66d,66eが設けられる。さらに、定着ユニット46の用紙搬送方向における下流側において第1用紙搬送路S1から第2用紙搬送路S2が分岐する部分(第1用紙搬送路S1と第2用紙搬送路S2との合流部分)には、用紙の搬送方向を切り替えるための案内ゲート70が設けられる。
【0042】
また、用紙搬送路Sには、上述のような搬送機構と共に、用紙の表裏面を挟むようにして用紙を案内する複数の搬送ガイドGが用紙搬送路Sに沿って連続的に並ぶように設けられる。搬送ガイドGは、所定間隔(たとえば2mm程度のガイド幅)で対向するように配置される外側搬送ガイドGoと内側搬送ガイドGiとによって形成される。外側搬送ガイドGoは、用紙搬送路Sが湾曲する箇所の外周側(湾曲外側)を形成する搬送ガイドGであり、内側搬送ガイドGiは、用紙搬送路Sが湾曲する箇所の内周側(湾曲内側)を形成する搬送ガイドGである。外側搬送ガイドGoおよび内側搬送ガイドGiのそれぞれは、合成樹脂または金属などの適宜な材料によって形成される。なお、図2においては、外側搬送ガイドGoおよび内側搬送ガイドGiをそれぞれ簡略化して薄板状に示しているが、各搬送ガイドGの具体的形状としては、適宜な形状が採用される。また、後述するように、この実施例の用紙搬送装置10が備える搬送ガイドGは、用紙搬送路Sの一部を構成するものであるので、用紙搬送路Sの他の領域を構成する搬送ガイドGと区別するために、特別に別の参照符号(74,76)を付している。
【0043】
なお、搬送ガイドGにおける外周側(外側)および内周側(内側)とは、用紙搬送路Sの湾曲方向に対する外側および内側と言うこともできる。すなわち、用紙搬送路Sの湾曲方向によっては、用紙搬送路Sの上側を形成する搬送ガイドGが外側搬送ガイドGoとなり、用紙搬送路Sの下側を形成する搬送ガイドGが内側搬送ガイドGiとなる場合もあれば、用紙搬送路Sの下側を形成する搬送ガイドGが外側搬送ガイドGoとなり、用紙搬送路Sの上側を形成する搬送ガイドGが内側搬送ガイドGiとなる場合もある。同様に、用紙搬送路Sの右側を形成する搬送ガイドGが外側搬送ガイドGoとなり、用紙搬送路Sの左側を形成する搬送ガイドGが内側搬送ガイドGiとなる場合もあれば、用紙搬送路Sの左側を形成する搬送ガイドGが外側搬送ガイドGoとなり、用紙搬送路Sの右側を形成する搬送ガイドGが内側搬送ガイドGiとなる場合もある。また、S字状に湾曲している用紙搬送路Sにおいては、外側搬送ガイドGoと内側搬送ガイドGiとが連続することとなる。
【0044】
このような画像形成装置100の装置本体12では、片面印刷を行う際には、給紙カセット48または手差し給紙カセット50に載置された用紙が各ピックアップローラ72a,72bによって1枚ずつ第1用紙搬送路S1に導かれ、搬送ローラ66aによってレジストローラ68まで搬送される。そして、レジストローラ68によって、用紙の先端と中間転写ベルト54上の画像情報の先端とが整合するタイミングで転写ローラ44に搬送され、用紙上にトナー像が転写される。その後、定着ユニット46を通過することによって用紙上の未定着トナーが熱で溶融して固着され、搬送ローラ66bを経て排紙トレイ52上に用紙が排出される。
【0045】
一方、両面印刷を行う際には、片面印刷が終了して定着ユニット46を通過した用紙の後端部が搬送ローラ66bまで到達したとき、搬送ローラ66bを逆回転させると共に案内ゲート70を下側に切り替えることによって、用紙が逆走して第2用紙搬送路S2に導かれる。第2用紙搬送路S2に導かれた用紙は、搬送ローラ66c,66d,66eによって第2用紙搬送路S2を搬送されて、レジストローラ68の用紙搬送方向の上流側において第1用紙搬送路S1に導かれる。その後、用紙は、レジストローラ68によって所定のタイミングで転写ローラ44に搬送されるが、第2用紙搬送路S2から第1用紙搬送路S1に合流する段階で用紙の表裏は反転されるので、転写ローラ44では用紙の裏面に印刷が行われる。その後、定着ユニット46を通過することによって用紙の裏面側の未定着トナーが熱で溶融して固着され、搬送ローラ66bを経て排紙トレイ52上に用紙が排出される。
【0046】
ここで、用紙搬送路Sは、複数の湾曲領域C(C1,C2,C3,C4,C5)とそれら以外の領域である非湾曲領域Lとが組み合わされて形成されているが(図1参照)、用紙搬送路Sの湾曲領域Cでは、用紙の腰(剛度または弾力性)によって外側搬送ガイドGoに用紙が強く押し当てられる。このため、外側搬送ガイドGoの用紙案内面側の全長に亘ってリブが形成されていると、用紙にリブ状の筋(リブ痕)が形成されてしまう場合がある。特に、定着ユニット46の用紙搬送方向の下流側における、第1用紙搬送路S1と第2用紙搬送路S2との合流部分となる湾曲領域C2においては、第1用紙搬送路S1の曲率が大きくなって、用紙がこの湾曲領域C2を通過する際に外側搬送ガイド74(Go)に強く押し当てられる。
【0047】
そこで、この実施例では、用紙搬送路Sのうち、トナー像を定着させた用紙を排紙トレイ52に導く領域に用紙搬送装置10を配置している。そして、第1用紙搬送路S1と第2用紙搬送路S2との合流部分となる湾曲領域C2における外側搬送ガイド74と用紙との用紙搬送方向における単位長さ当たりの接触面積を、非湾曲領域Lにおける接触面積よりも大きくする。このことによって、この湾曲領域C2における外側搬送ガイド74と用紙との接触圧を小さくし、外側搬送ガイド74が用紙に与えるダメージを低減するようにしている。
【0048】
ただし、この発明の他の実施例として、用紙搬送路Sの他の湾曲領域C1,C3,C4,C5のいずれかを含む領域に用紙搬送装置10を配置することもできる。また、複数の湾曲領域Cを含むように用紙搬送装置10を構成することもできるし、用紙搬送路Sの全体を含むように用紙搬送装置10を構成することもできる。
【0049】
また、この発明でいう湾曲領域Cとは、用紙搬送路Sが所定以上(たとえば、1/100[1/mm]以上)の曲率で湾曲する領域、つまり用紙が外側搬送ガイドGoに押し当てられて用紙に対して大きな圧力がかかる領域を示す。また、非湾曲領域Lとは、直線状の領域、または所定未満(たとえば、1/100[1/mm]未満)の曲率で緩やかに湾曲するが直線状の領域と同視し得る領域を示す。すなわち、非湾曲領域Lには、この発明の趣旨を逸脱することのない範囲での緩やかな湾曲、つまり外側搬送ガイドGoと用紙との強い擦れ(押し当て)が生じ難いような多少の湾曲があってもよい。
【0050】
以下、用紙搬送装置10の構成について具体的に説明する。図2を参照して、用紙搬送装置10は、外側搬送ガイド74と内側搬送ガイド76とを備える。外側搬送ガイド74および内側搬送ガイド76は、互いに対向するように配置され、定着ユニット46と搬送ローラ66bとの間において、湾曲領域C2と非湾曲領域Lとを含む用紙搬送路Sを形成する。また、外側搬送ガイド74および内側搬送ガイド76の用紙搬送方向における下流側には、用紙に推進力を与える搬送機構(定着ユニット46)が設けられる。用紙は、この搬送機構から推進力を受けることによって、外側搬送ガイド74と内側搬送ガイド76との間に形成される用紙搬送路Sを排紙トレイ52側に向かって搬送される。
【0051】
内側搬送ガイド76は、湾曲板状に形成され、定着ユニット46の上方から搬送ローラ66bまで延びるように設けられる。図示は省略するが、内側搬送ガイド76の用紙案内面側には、用紙側(湾曲外側)に向かって突出する複数のリブが形成されている。これらリブは、用紙搬送方向と直交する方向に所定間隔(たとえば10?30mmの間隔)で設けられて、用紙搬送方向に沿って延びる。なお、内側搬送ガイド76は、その全体が一体成形されていてもよいし、複数の部材によって形成されていてもよい。
【0052】
外側搬送ガイド74は、案内ゲート70の上方から搬送ローラ66bまで略水平方向に直線状に延びるように設けられる。以下、図3および図4を参照して、外側搬送ガイド74の構成について具体的に説明する。図3は、外側搬送ガイド74を用紙案内面側から見た様子を概略的に示す図解図である。また、図4は、外側搬送ガイド74を示す断面図であり、(a)は図3のIVa‐IVa線における断面を示し、(b)は図3のIVb‐IVb線における断面を示し、(c)は図3のIVc‐IVc線における断面を示す。
【0053】
図3および図4に示すように、外側搬送ガイド74は、一体成形によって一体的に形成される、湾曲領域C2に配置される第1搬送部78と非湾曲領域Lに配置される第2搬送部80とを含み、第1搬送部78および第2搬送部80の全体に亘る矩形平板状に形成されるベース部82を備える。
【0054】
第2搬送部80の用紙案内面側には、ベース部82から用紙側(湾曲内側)に向かって突出する断面略半円状の複数のリブ84が形成されている。これらリブ84は、用紙搬送方向と直交する方向に所定間隔(たとえば10?30mmの間隔)で設けられて、用紙搬送方向に沿って延びる。第2搬送部80では、これら複数のリブ84の頂部(先端部)が用紙案内面となる。リブ84のベース部82からの突出高さは、たとえば1?2mmであり、その基端部の幅(用紙搬送方向と直交する方向の長さ)は、たとえば2mmである。なお、図3および図4では、図面の簡略化のため、用紙搬送方向に延びる4本のリブ84を示しているが、リブ84の本数は任意であり、たとえば、第2搬送部80には、用紙搬送方向に延びる10-20本程度のリブ84が用紙搬送方向と直交する方向に所定間隔を開けて設けられる。
【0055】
一方、第1搬送部78の用紙案内面側には、ベース部82から用紙側に向かって突出する矩形平板状の平坦部86が形成される。平坦部86は、第1搬送部78の用紙案内面側の全体に形成されており、この平坦部86の頂部は、凹凸のない平坦面とされる。つまり、第1搬送部78の頂部(用紙案内面)は、リブなしの平坦面とされる。また、平坦部86と上述の複数のリブ84とは、ベース部82からの突出高さが同じであって、平坦部86の頂部と各リブ84の頂部、つまり第1搬送部78の用紙搬送面と第2搬送部80の用紙搬送面とは、面一に連続している。
【0056】
さらに、平坦部86(第1搬送部78)の用紙搬送方向における両端部(リブ84と面一に連続している部分は除く)には、用紙搬送方向に対して傾斜する傾斜部86aが形成される。傾斜部86aは、第1搬送部78の用紙搬送方向における先端側(第2搬送部80側)に向かうに従ってその頂部が用紙から離れていくように傾斜する。ただし、傾斜部86aは、図4(c)に示すように直線状に傾斜するだけでなく、用紙側に膨らむように円弧状に傾斜していてもよい。また、傾斜部86aは、平坦部86の両端部においてその頂部のみに形成されていてもよい。
【0057】
このように、第2搬送部80に複数のリブ84を形成するのに対して、第1搬送部78の用紙案内面をリブなしの平坦面とすることによって、用紙搬送路Sを搬送される用紙との用紙搬送方向における単位長さ当たりの接触面積は、第2搬送部80よりも第1搬送部78の方が大きくなる。これによって、用紙搬送路Sの湾曲領域C2における用紙と外側搬送ガイド74との接触圧が小さくなる。つまり、用紙が外側搬送ガイド74に対して押し付けられる力が分散されて小さくなる。このため、湾曲領域C2において外側搬送ガイド74が用紙に与えるダメージは軽減される。
【0058】
また、第1搬送部78の用紙搬送面と第2搬送部80の用紙搬送面とを面一(つまり同じ高さ)に形成することによって、用紙は、この外側搬送ガイド74を設けた領域を円滑に搬送される。
【0059】
さらに、第1搬送部78に傾斜部86aを形成することによって、用紙の先端が第1搬送部78の端部にひっかかってしまうことが防止され、用紙ジャムや用紙の先端折れが防止される。なお、傾斜部86aは、必ずしも第1搬送部78の用紙搬送方向における両端部に形成される必要はなく、少なくも第1搬送部78の用紙搬送方向における一方端部(上流側端部)に設けられていればよい。この第1実施例では、両面印刷を行うために用紙を逆走させて第2用紙搬送路S2に導く際に、第1搬送部78の搬送ローラ66b側(図2および図3における左側)の端部が用紙搬送方向における上流側端部となるので、第1搬送部78の搬送ローラ66b側の端部のみに傾斜部86aを形成することもできる。
【0060】
この第1実施例によれば、用紙搬送路Sの湾曲領域C1における用紙と外側搬送ガイド74との接触圧を小さくできるので、外側搬送ガイド74が用紙に与えるダメージを軽減でき、用紙へのトナーの転写不良および定着不良を防止できる。
【0061】
また、この第1実施例によれば、第1搬送部78の用紙案内面をリブなしの平坦面にすることによって、外側搬送ガイド74の第1搬送部78における用紙との接触面積を第2搬送部80よりも大きくするという簡単な構成であるので、装置の大型化を防止でき、用紙の搬送不良も生じ難い。
【0062】
なお、この第1実施例では、第1搬送部78の用紙案内面側の全体(つまり湾曲領域C2の全域)に平坦部86を形成するようにしたが、平坦部86は、必ずしも第1搬送部78の全体に形成される必要はない。要するに、用紙搬送路Sを搬送される用紙との用紙搬送方向における単位長さ当たりの接触面積が、第2搬送部80よりも第1搬送部78の方が大きくなるように、外側搬送ガイド74が形成されていればよい。たとえば、第1搬送部78の用紙搬送方向における長さが長い場合などには、用紙搬送方向に所定間隔で並ぶように、間欠的に平坦部86を形成してもよい。また、第1搬送部78の用紙搬送方向と直交する方向の全長に亘って平坦部86を形成するのではなく、用紙搬送方向と直交する方向における一部に平坦部86を形成する、たとえば用紙搬送方向と直交する方向における両端部を除く部分に平坦部86を形成することもできる。また、たとえば、第1搬送部78の用紙搬送方向における端部から中央部(または曲率が大きい部分)に向かって徐々に幅広となるように平坦部86を形成することもできる。なお、第1搬送部78の平坦部86を設けない部分には、ベース部82から突出するリブを適宜形成しておくとよい。つまり、第1搬送部78には、リブが形成されている部分があってもよい。
【0063】
[第2実施例]
次に、図5および図6を参照して、この発明の第2実施例である用紙搬送装置10について説明する。この第2実施例では、外側搬送ガイド74の第1搬送部78において用紙との接触面積を大きくするために、第1搬送部78に幅広のリブ88を形成した点が上述の第1実施例と異なる。その他の部分の構成については同様であるので、上述の第1実施例と共通する部分については、同じ参照番号を付し、重複する説明は省略または簡略化することとし、以下では、この第2実施例の用紙搬送装置10が備える外側搬送ガイド74の構成についてのみ説明する。図5は、外側搬送ガイド74を用紙案内面側から見た様子を概略的に示す図解図である。また、図6は、外側搬送ガイド74を示す断面図であり、(a)は図5のVIa‐VIa線における断面を示し、(b)は図5のVIb‐VIb線における断面を示し、(c)は図5のVIc‐VIc線における断面を示す。
【0064】
図5および図6に示すように、外側搬送ガイド74は、湾曲領域C2に配置される第1搬送部78と非湾曲領域Lに配置される第2搬送部80とを含み、第1搬送部78および第2搬送部80の全体に亘る矩形平板状に形成されるベース部82を備える。
【0065】
第2搬送部80の用紙案内面側には、ベース部82から用紙側に向かって突出する断面略半円状の複数のリブ84が形成されている。これらリブ84は、用紙搬送方向と直交する方向に所定間隔で設けられて、用紙搬送方向に沿って延びる。リブ84の基端部の幅(用紙搬送方向と直交する方向の長さ)は、たとえば2mmである。
【0066】
一方、第1搬送部78の用紙案内面側には、ベース部82から用紙側に向かって突出する断面略角丸矩形状の複数のリブ88が形成される。これらリブ88のそれぞれは、第2搬送部80に形成される複数のリブ84のそれぞれと用紙搬送方向に連続するように形成されている。つまり、複数のリブ88は、用紙搬送方向と直交する方向に所定間隔で設けられて、用紙搬送方向に沿って延びる。また、第1搬送部78に形成される複数のリブ88と第2搬送部80に形成される複数のリブ84とは、ベース部82からの突出高さが同じであって、各リブ88の頂部と各リブ84の頂部、つまり第1搬送部78の用紙搬送面と第2搬送部80の用紙搬送面とは、面一に連続している。
【0067】
そして、第1搬送部78に形成される各リブ88は、第2搬送部80に形成される各リブ84よりも用紙搬送方向と直交する方向に幅広に形成される。各リブ88の幅(用紙搬送方向と直交する方向の長さ)は、各リブ84の幅のたとえば2?5倍(つまり4?10mm)の大きさとされ、各リブ88の頂部には、たとえば2?8mmの幅を有する平坦面が形成される。これによって、用紙搬送路Sを搬送される用紙との用紙搬送方向における単位長さ当たりの接触面積は、第2搬送部80よりも第1搬送部78の方が大きくなり、用紙搬送路Sの湾曲領域C2における用紙と外側搬送ガイド74との接触圧が小さくなる。なお、各リブ88の側部(用紙搬送方向と直交する方向の両端部)の曲率は、各リブ84の側部の曲率と同じに設定しておくとよい。
【0068】
また、リブ88(第1搬送部78)の用紙搬送方向における両端部には、リブ84よりも用紙搬送方向と直交する方向に突出している部分において、用紙搬送方向に対して傾斜する傾斜部88aが形成される。傾斜部88aは、第2搬送部80側に向かうに従ってその頂部が用紙から離れていくように傾斜する。ただし、傾斜部88aは、図6(c)に示すように用紙側に膨らむように円弧状に傾斜するだけでなく、直線状に傾斜していてもよい。
【0069】
この第2実施例においても、上述の第1実施例と同様に、用紙搬送路Sの湾曲領域C1における用紙と外側搬送ガイド74との接触圧を小さくできるので、外側搬送ガイド74が用紙に与えるダメージを軽減でき、用紙へのトナーの転写不良および定着不良を防止できる。
【0070】
また、第1搬送部78のリブ88を第2搬送部80のリブ84よりも幅広に形成することによって、外側搬送ガイド74の第1搬送部78における用紙との接触面積を第2搬送部80よりも大きくするという簡単な構成であるので、装置の大型化を防止でき、用紙の搬送不良も生じ難い。
【0071】
なお、この第2実施例では、各リブ88を用紙搬送方向の全長に亘って幅広に形成するようにしたが、全てのリブ88を幅広に形成する必要はなく、また、用紙搬送方向の全長に亘ってリブ88を幅広とする必要もない。たとえば、第1搬送部78の用紙搬送方向における長さが長い場合などには、用紙搬送方向に所定間隔で並ぶように、間欠的に幅広となる部分をリブ88に形成してもよい。また、たとえば、用紙搬送方向と直交する方向に並ぶリブ88を1つおきに幅広に形成することもできる。さらに、たとえば、用紙搬送方向の全長に亘って一様に幅広とするのではなく、第1搬送部78の用紙搬送方向における端部から中央部に向かって徐々に幅広となるようにリブ88を形成することもできる。もちろん、各リブ88によって幅が異なるように形成することもできる。
【0072】
[第3実施例]
続いて、図7および図8を参照して、この発明の第3実施例である用紙搬送装置10について説明する。この第3実施例では、外側搬送ガイド74の第1搬送部78において用紙との接触面積を大きくするために、第1搬送部78に浅溝部90を形成した点が上述の第1および第2実施例と異なる。その他の部分の構成については同様であるので、上述の第1および第2実施例と共通する部分については、同じ参照番号を付し、重複する説明は省略または簡略化することとし、以下では、この第3実施例の用紙搬送装置10が備える外側搬送ガイド74の構成についてのみ説明する。図7は、外側搬送ガイド74を用紙案内面側から見た様子を概略的に示す図解図である。また、図8は、外側搬送ガイド74を示す断面図であり、(a)は図7のVIIIa‐VIIIa線における断面を示し、(b)は図7のVIIIb‐VIIIb線における断面を示し、(c)は図7のVIIIc‐VIIIc線における断面を示す。
【0073】
図7および図8に示すように、外側搬送ガイド74は、湾曲領域C2に配置される第1搬送部78と非湾曲領域Lに配置される第2搬送部80とを含み、第1搬送部78および第2搬送部80の全体に亘る矩形平板状に形成されるベース部82を備える。また、ベース部82の用紙案内面側には、ベース部82から用紙側に向かって突出する断面略半円状の複数のリブ84が形成されている。これらリブ84は、用紙搬送方向と直交する方向に所定間隔で設けられて、第1搬送部78および第2搬送部80の全長に亘ってその頂部が面一に連続するように、用紙搬送方向に沿って延びる。つまり、第1搬送部78の用紙搬送面と第2搬送部80の用紙搬送面とは、面一に連続している。
【0074】
そして、第1搬送部78においては、各リブ84の間に形成される溝を埋めることによって、第2搬送部80のリブ84間に形成される溝よりも浅くした浅溝部90が形成される。浅溝部90の深さ、つまりリブ84の頂部と浅溝部90の頂部との高低差は、たとえば0.1?0.3mmである。一方、第2搬送部80におけるリブ84間の溝の深さ、つまりリブ84のベース部82からの突出高さは、たとえば1?2mmである。用紙は、搬送時に外側搬送ガイド74に押し付けられることによって、用紙搬送方向と直交する方向に少し撓むので、リブ84の頂部と共に浅溝部90の頂部に接触する。つまり、浅溝部90の頂部でも用紙が受けられる。このように、第1搬送部78のリブ84間に浅溝部90を形成することによっても、用紙搬送路Sを搬送される用紙との用紙搬送方向における単位長さ当たりの接触面積は、第2搬送部80よりも第1搬送部78の方が大きくなり、用紙搬送路Sの湾曲領域C2における用紙と外側搬送ガイド74との接触圧が小さくなる。
【0075】
また、浅溝部90の(第1搬送部78)の用紙搬送方向における両端部には、用紙搬送方向に対して傾斜する傾斜部90aが形成される。傾斜部90aは、第2搬送部80側に向かうに従ってその頂部が用紙から離れていくように傾斜する。
【0076】
この第3実施例においても、上述の第1実施例と同様に、用紙搬送路Sの湾曲領域C1における用紙と外側搬送ガイド74との接触圧を小さくできるので、外側搬送ガイド74が用紙に与えるダメージを軽減でき、用紙へのトナーの転写不良および定着不良を防止できる。
【0077】
また、第1搬送部78のリブ84間に浅溝部90を形成することによって、外側搬送ガイド74の第1搬送部78における用紙との接触面積を第2搬送部80よりも大きくするという簡単な構成であるので、装置の大型化を防止でき、用紙の搬送不良も生じ難い。
【0078】
なお、この第3実施例では、第1搬送部78に形成される全てのリブ84間の用紙搬送方向の全長に亘って浅溝部90を形成するようにしたが、第1搬送部78に形成される全てのリブ84間に浅溝部90を形成する必要はなく、また、第1搬送部78の用紙搬送方向の全長に亘って浅溝部90を形成する必要もない。
【0079】
[第4実施例]
続いて、図9および図10を参照して、この発明の第4実施例である用紙搬送装置10について説明する。この第4実施例では、外側搬送ガイド74の第1搬送部78において用紙との接触面積を大きくするために、第1搬送部78に形成するリブの数を第2搬送部80のリブの数よりも多くした点が上述の第1-第3実施例と異なる。その他の部分の構成については同様であるので、上述の第1-第3実施例と共通する部分については、同じ参照番号を付し、重複する説明は省略または簡略化することとし、以下では、この第4実施例の用紙搬送装置10が備える外側搬送ガイド74の構成についてのみ説明する。図9は、外側搬送ガイド74を用紙案内面側から見た様子を概略的に示す図解図である。また、図10は、外側搬送ガイド74を示す断面図であり、(a)は図9のXa‐Xa線における断面を示し、(b)は図9のXb‐Xb線における断面を示し、(c)は図9のXc‐Xc線における断面を示す。
【0080】
図9および図10に示すように、外側搬送ガイド74は、湾曲領域C2に配置される第1搬送部78と非湾曲領域Lに配置される第2搬送部80とを含み、第1搬送部78および第2搬送部80の全体に亘る矩形平板状に形成されるベース部82を備える。また、ベース部82の用紙案内面側には、ベース部82から用紙側に向かって突出する断面略半円状の複数のリブ84が形成されている。これらリブ84は、用紙搬送方向と直交する方向に所定間隔で設けられて、第1搬送部78および第2搬送部80の全長に亘ってその頂部が面一に連続するように、用紙搬送方向に沿って延びる。つまり、第1搬送部78の用紙搬送面と第2搬送部80の用紙搬送面とは、面一に連続している。
【0081】
また、第1搬送部78においては、複数のリブ84の他に、断面略半円状の複数のリブ92が形成される。これらリブ92は、リブ84間のそれぞれに形成されて、第1搬送部78の全長に亘って用紙搬送方向に沿って延びる。つまり、第1搬送部78においては、第2搬送部76よりも多くのリブ84,92が形成される。これによって、用紙搬送路Sを搬送される用紙との用紙搬送方向における単位長さ当たりの接触面積は、第2搬送部80よりも第1搬送部78の方が大きくなり、用紙搬送路Sの湾曲領域C2における用紙と外側搬送ガイド74との接触圧が小さくなる。
【0082】
また、各リブ92(第1搬送部78)の用紙搬送方向における両端部には、用紙搬送方向に対して傾斜する傾斜部92aが形成される。傾斜部92aは、第2搬送部80側に向かうに従ってその頂部が用紙から離れていくように傾斜する。
【0083】
この第4実施例においても、上述の第1実施例と同様に、用紙搬送路Sの湾曲領域C1における用紙と外側搬送ガイド74との接触圧を小さくできるので、外側搬送ガイド74が用紙に与えるダメージを軽減でき、用紙へのトナーの転写不良および定着不良を防止できる。
【0084】
また、第1搬送部78に形成するリブ84,92の数を第2搬送部80よりも多くすることによって、外側搬送ガイド74の第1搬送部78における用紙との接触面積を第2搬送部80よりも大きくするという簡単な構成であるので、装置の大型化を防止でき、用紙の搬送不良も生じ難い。
【0085】
なお、この第4実施例では、第1搬送部78に形成される全てのリブ84間の用紙搬送方向の全長に亘って他のリブ92を形成するようにしたが、第1搬送部78に形成される全てのリブ84間に他のリブ92を形成する必要はなく、また、第1搬送部78の用紙搬送方向の全長に亘って他のリブ92を形成する必要もない。
【0086】
なお、上述の第1-第4実施例の各々では、第1搬送部78の用紙搬送面と第2搬送部80の用紙搬送面とが面一に(つまり同じ高さで)連続するように外側搬送ガイド74(Go)を形成したが、これに限定されない。他の実施例として、第1搬送部78の用紙案内面が第2搬送部80の用紙案内面よりも外周側に窪む(つまり高さが低くされる)ように外側搬送ガイド74を形成することもできる。この際には、第1搬送部78と第2搬送部80との接続部分に傾斜部を形成することによって、第1搬送部78と第2搬送部80とを滑らかに連続させるようにするとよい。
【0087】
このように、第1搬送部78の用紙案内面が第2搬送部80の用紙案内面よりも窪むように外側搬送ガイド74を形成することによって、この部分を用紙が大回りして搬送されるようになる、つまり湾曲領域C2の曲率を小さくすることができるので、外側搬送ガイド74と用紙との接触圧を小さくでき、外側搬送ガイド74が用紙に与えるダメージを低減することができる。
【0088】
また、上述の第1-第4実施例の各々では、外側搬送ガイド74を用紙搬送方向に直線状に延びるように形成しているが、これに限定されない。たとえば、用紙搬送路Sの他の湾曲領域C1,C3,C4,C5を含む領域に用紙搬送装置10を配置する場合などには、用紙搬送経路Sに沿って湾曲するように外側搬送ガイド74を形成することもできる。
【0089】
さらに、上述の第1-第4実施例の各々では、ベース部82の形状を矩形平板状としたが、ベース部82の形状は、適宜変更可能であって特に限定されない。たとえば、ベース部82に肉盗み部を形成することもできるし、ベース部82を中空状に形成することもできる。また、たとえば、外側搬送ガイド74の周縁部に設けられる枠体状にベース部82を形成することできる。
【0090】
さらにまた、上述の第1-第4実施例の各々では、第1搬送部78と第2搬送部80とを一体的に形成しているが、第1搬送部78と第2搬送部80とは、必ずしも一体的に形成されている必要はなく、第1搬送部78と第2搬送部80とが分離可能な別部材を組み合わせて形成されていても構わない。
【0091】
また、外側搬送ガイド74には、適宜、通気孔(図示せず)を形成することもできる。たとえば、第1搬送部78に通気孔を形成する場合には、上述の第1実施例であれば、平坦部86およびその裏面側のベース部82を厚み方向に貫通する通気孔を形成するとよく、上述の第2-第4実施例であれば、リブ84,88間のベース部82(および浅溝部90)を厚み方向に貫通する通気孔を形成するとよい。また、第2搬送部80に通気孔を形成する場合には、リブ84間のベース部82を厚み方向に貫通する通気孔を形成するとよい。
【0092】
さらに、上述の第1-第4実施例の各々では、画像を印刷する用紙(記録紙)を搬送する用紙搬送路Sに用紙搬送装置10を配置するようにしたが、これに限定されない。たとえば、画像を読み取る用紙を搬送するADF(自動原稿送り装置)における用紙搬送路に用紙搬送装置10を配置することもできる。
【0093】
なお、上で挙げた寸法などの具体的数値は、いずれも単なる一例であり、製品の仕様などの必要に応じて適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0094】
10 …用紙搬送装置
12 …装置本体
14 …画像読取装置
24 …ADF(自動原稿送り装置)
28 …制御部
44 …転写ローラ
46 …定着ユニット
48 …給紙カセット
52 …排紙トレイ
66(66a?66e) …搬送ローラ
68 …レジストローラ
74,Go …外側搬送ガイド
76,Gi …内側搬送ガイド
78 …第1搬送部
80 …第2搬送部
82 …ベース部
84 …リブ
86 …平坦部
88 …幅広のリブ
90 …浅溝部
100 …画像形成装置(複合機)
S(S1,S2) …用紙搬送路
C(C1?C5) …湾曲領域
L …非湾曲領域
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾曲領域と非湾曲領域とを含む用紙搬送路を形成する搬送ガイドを備える用紙搬送装置において、
前記搬送ガイドは、前記用紙搬送路が湾曲する箇所の外周側において、前記湾曲領域に配置される第1搬送部と前記非湾曲領域に配置される第2搬送部とを含み、
前記用紙搬送路を搬送される用紙との用紙搬送方向における単位長さ当たりの接触面積が、前記第2搬送部よりも前記第1搬送部の方が大きく、
前記第1搬送部および前記第2搬送部のそれぞれは、前記用紙搬送方向と直交する方向に所定間隔で設けられて、当該用紙搬送方向に沿って延びる複数のリブを有し、
前記第1搬送部に形成されるリブ間に前記第2搬送部に形成されるリブ間の溝部よりも浅い浅溝部を形成することによって、前記第1搬送部における前記接触面積を前記第2搬送部よりも大きくしたことを特徴とする、用紙搬送装置。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
前記第1搬送部と前記第2搬送部とは一体的に形成される、請求項1記載の用紙搬送装置。
【請求項5】
前記第1搬送部の前記用紙搬送方向における両端部の少なくとも一方には、当該用紙搬送方向に対して傾斜する傾斜部が形成される、請求項1または4記載の用紙搬送装置。
【請求項6】
前記第1搬送部の用紙案内面と前記第2搬送部の用紙案内面とは、面一に形成される、請求項1、4、5のいずれか1項に記載の用紙搬送装置。
【請求項7】
前記第1搬送部の用紙案内面は、前記第2搬送部の用紙案内面よりも窪む、請求項1、4、5のいずれか1項に記載の用紙搬送装置。
【請求項8】
請求項1、4から7までのいずれか1項に記載の用紙搬送装置を備える、画像形成装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-05-21 
出願番号 特願2014-22998(P2014-22998)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (B65H)
P 1 651・ 537- YAA (B65H)
P 1 651・ 113- YAA (B65H)
最終処分 維持  
前審関与審査官 西本 浩司  
特許庁審判長 尾崎 淳史
特許庁審判官 畑井 順一
森次 顕
登録日 2017-10-20 
登録番号 特許第6228477号(P6228477)
権利者 シャープ株式会社
発明の名称 用紙搬送装置およびそれを備える画像形成装置  
代理人 大村 和史  
代理人 大村 和史  

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