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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 B62J 審判 全部申し立て 2項進歩性 B62J 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 B62J 審判 全部申し立て 特174条1項 B62J 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 B62J |
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管理番号 | 1353153 |
異議申立番号 | 異議2018-700642 |
総通号数 | 236 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2019-08-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-08-03 |
確定日 | 2019-06-10 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6275060号発明「鞍乗型車両用バッグ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6275060号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?12〕について訂正することを認める。 特許第6275060号の請求項1、4?12に係る特許を維持する。 特許第6275060号の請求項2、3に係る特許について特許異議申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6275060号の請求項1?12に係る特許についての出願は、平成27年1月16日に出願され、平成30年1月19日に本件特許の設定登録がされ、同年2月7日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、特許異議申立人角田朗(以下「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、同年11月2日付けで取消理由が通知され、平成31年1月7日に意見書の提出及び訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)がされ、同年2月19日付けで、異議申立人に対し訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされたが、その指定期間内に異議申立人より意見書の提出はなかったものである。 第2 本件訂正請求の趣旨及び訂正内容 本件訂正請求の趣旨は、特許第6275060号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?12について訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は以下のとおりである。 1 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、請求項2及び3の記載内容を追加すると共に、「前記複数のベルト単体は、前記接合部材を中心として回転自在である」を追加する。 2 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2及び3を削除する。 3 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項4に「請求項1乃至3のいずれか一項に記載の取付用ベルト」とあるのを、「請求項1に記載の取付ベルト」に訂正する。 4 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項5に「第1の単体ベルト及び第2の単体ベルト」とあるのを「第1のベルト単体及び第2のベルト単体」に訂正する。 5 訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5に「を備えていて」とあるのを「により構成されていて」に訂正する。 6 訂正事項6 特許請求の範囲の請求項5に「請求項1乃至4のいずれか一項に記載の取付用ベルト」とあるのを、「請求項1又は4に記載の取付用ベルト」に訂正する。 7 訂正事項7 特許請求の範囲の請求項8に「前記シート上に架け渡される第3のベルト単体を備えていて」とあるのを、「前記シート上に架け渡される第3のベルト単体により構成されていて」に訂正する。 8 訂正事項8 特許請求の範囲の請求項9に「前記シート上に架け渡される第4のベルト単体を更に備えていて」とあるのを、「前記シート上に架け渡される第4のベルト単体と前記第3のベルト単体により構成されていて」に訂正する。 9 訂正事項9 特許請求の範囲の請求項12に「請求項1乃至11のいずれか一項に記載の取付用ベルトと」とあるのを、「請求項1、4乃至11のいずれか一項に記載の取付用ベルトと」に訂正する。 第3 訂正の適否についての判断 1 訂正の目的の適否について 訂正事項1は、訂正前の請求項1に、訂正前の請求項2及び3の記載内容を追加すると共に、「前記複数のベルト単体は、前記接合部材を中心として回転自在である」ことを特定するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 訂正事項2は、訂正事項1による訂正に伴い、請求項2及び3を削除するものであり、同項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 訂正事項3は、訂正事項2による訂正に伴い、引用する請求項を「請求項1乃至3のいずれか一項」から「請求項1」にするものであり、同項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 訂正事項4は、訂正前の「第1の単体ベルト及び第2の単体ベルト」との誤記を、「第1のベルト単体及び第2のベルト単体」にするものであり、同項ただし書第2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものである。 訂正事項5は、「を備えていて」との不明確な記載を、「により構成されていて」にするものであり、同項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 訂正事項6は、訂正事項2による訂正に伴い、引用する請求項を「請求項1乃至4のいずれか一項」から「請求項1」にするものであり、同項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 訂正事項7は、訂正前の「前記シート上に架け渡される第3のベルト単体を備えていて」との不明確な記載を、「前記シート上に架け渡される第3のベルト単体により構成されていて」にするものであり、同項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 訂正事項8は、訂正前の「前記シート上に架け渡される第4のベルト単体を更に備えていて」との不明確な記載を、「前記シート上に架け渡される第4のベルト単体と前記第3のベルト単体により構成されていて」にするものであり、同項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 訂正事項9は、訂正事項2による訂正に伴い、引用する請求項を「請求項1乃至11のいずれか一項」から「請求項1、4乃至11のいずれか一項」にするものであり、同項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 訂正前の請求項1?12について、請求項2?12は請求項1を直接的または間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1?12に対応する訂正後の請求項1?12は一群の請求項である。 2 新規事項の有無について 訂正事項1、4、5、7、8は、願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。また、本件明細書に特許請求の範囲及び図面を併せたものを「本件明細書等」という。)の段落【0006】、【0017】、【0018】、【0043】、【0044】等に記載した事項より導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。 訂正事項2は、訂正前の請求項2及び3を削除するものであり、訂正事項3、6、9は、訂正事項2による訂正に伴い、引用する請求項から請求項2、3を削除するものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。 したがって、訂正事項1?9は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 3 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 上記1のとおり、訂正事項1?3、6、9は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、訂正事項4は「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものであり、訂正事項5、7、8は「明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 4 小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書き第1?3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?12〕について訂正を認める。 第4 特許異議の申立てについて 1 本件特許発明 特許第6275060号の請求項1、4?12に係る発明(以下それぞれ「本件発明1」等という。また、まとめて「本件発明」ともいう。)は、本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1、4?12に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項1】 車体本体の上方に着脱自在に装着されたライダー着座用のシートを備えた鞍乗型車両に装着され、バッグ本体と、前記バッグ本体を前記シートに取付ける取付用ベルトと、を備える鞍乗型車両用バッグ、のための前記取付用ベルトであって、 前記取付用ベルトは、 複数の端部が鞍乗型車両の外方に延出させた状態で前記車体本体と前記シートとの間に着脱自在に配設可能である、前記バッグ本体を前記シート上に取付けるための複数のベルト単体と、 該複数のベルト単体を相互に接合し、前記車体本体と前記シートとの間に配置される接合部材と、 を備え、 前記複数のベルト単体は、 前記バッグ本体を前記シート上に取り付ける少なくとも一本のバック本体取付用ベルト単体と、 前記シート上に架け渡され、前記取付用ベルトの位置保持に寄与する少なくとも一本の架け渡し用ベルト単体と、 を含み、 前記架け渡し用ベルト単体は、前記鞍乗型車両の側部に装着される補助バッグが前記側部に存在しない状態で前記シート上に架け渡されることと、前記補助バッグを前記側部に取り付けることに兼用でき、 前記複数のベルト単体は、長さ方向の両端部が前記シートを挟んで相対する側に延出し、 前記接合部材は、前記複数のベルト単体における長さ方向の中央部分においてこれらのベルト単体を相互に接合し、 前記複数のベルト単体は、前記接合部材を中心として回転自在である、 取付用ベルト。 【請求項4】 前記取付用ベルトは、前記複数のベルト単体における前記バッグ本体と連結される前記端部と前記接合部材との間の長さを調整自在である、 請求項1に記載の取付用ベルト。 【請求項5】 前記バック本体取付用ベルト単体は、前記バック本体を前記シート上に取付ける、第1のベルト単体及び第2のベルト単体により構成されていて、第1のベルト単体は、長さ方向の第1端及び第2端に第1の連結部材及び第2の連結部材を有していると共に、第2のベルト単体は、長さ方向の第1端及び第2端に第3の連結部材及び第4の連結部材を有し、 前記バック本体は、第5の連結部材と第6の連結部材と第7の連結部材と第8の連結部材とを備え、 前記第1の連結部材は、前記第5の連結部材と相互に係脱自在に連結可能であり、前記第2の連結部材は、前記第6の連結部材と相互に係脱自在に連結可能であり、前記第3の連結部材は、前記第7の連結部材と相互に係脱自在に連結可能であり、前記第4の連結部材は、前記第8の連結部材と相互に係脱自在に連結可能である、 請求項1又は4に記載の取付用ベルト。 【請求項6】 前記第1の連結部材及び第2の連結部材は相互に係脱自在に連結可能であり、前記第3の連結部材及び第4の連結部材は相互に係脱自在に連結可能である、 請求項5に記載の取付用ベルト。 【請求項7】 前記取付用ベルト及びバッグ本体に設けられた連結部材は、雄型部材と該雄型部材を受け入れて係合する雌型部材とで構成されていて、前記第1の連結部材と前記第3の連結部材と前記第6の連結部材と前記第8の連結部材とは、前記雄型部材又は前記雌型部材うちのいずれか一方の相互に同じ型の部材であり、前記第2の連結部材と前記第4の連結部材と前記第5の連結部材と前記第7の連結部材とは、他方の相互に同じ型の部材である、請求項6に記載の取付用ベルト。 【請求項8】 前記架け渡し用ベルト単体は、前記シート上に架け渡される第3のベルト単体により構成されていて、前記第3のベルト単体は、長さ方向の第1端及び第2端に、相互に係脱自在に連結可能な第9の連結部材及び第10の連結部材を有している、請求項5乃至7のいずれか一項に記載の取付用ベルト。 【請求項9】 前記架け渡し用ベルト単体は、前記シート上に架け渡される第4のベルト単体と前記第3のベルト単体により構成されていて、前記第4のベルト単体は、長さ方向の第1端及び第2端に、相互に係脱自在に連結可能な第11の連結部材及び第12の連結部材を有し、 前記第9の連結部材と第12の連結部材とは相互に係脱自在に連結可能であると共に、前記第10の連結部材と第11の連結部材とが相互に係脱自在に連結可能である、請求項8に記載の取付用ベルト。 【請求項10】 前記鞍乗型車両用バッグは、前記鞍乗型車両の側部に装着される補助バッグを備えていて、前記第3のベルト単体及び前記第4のベルト単体は、前記補助バッグに設けられた貫通孔に挿通させた状態で、前記第9の連結部材と前記第10の連結部材又は前記第12の連結部材とが相互に連結されると共に、前記第11の連結部材と、前記第9の連結部材と連結されていない第12の連結部材又は第10の連結部材とを相互に連結されることにより、前記補助バッグを前記鞍乗型車両の側部において保持可能である、請求項9に記載の取付用ベルト。 【請求項11】 前記第3のベルト単体及び前記第4のベルト単体に設けられた連結部材は、雄型部材と該雄型部材を受け入れて係合する雌型部材とで構成されていて、前記第9の連結部材及び前記第11の連結部材は、前記雄型部材又は前記雌型部材うちのいずれか一方の相互に同じ型の部材であり、前記第10の連結部材及び前記第12の連結部材は、他方の相互に同じ型の部材である、請求項9又は請求項10に記載の取付用ベルト。 【請求項12】 車体本体の上方に着脱自在に装着されたライダー着座用のシートを備えた鞍乗型車両に装着される鞍乗型車両用バッグであって、 前記シート上に装着される、荷物を収容するためのバッグ本体と、 請求項1、4乃至11のいずれか一項に記載の取付用ベルトと、 を備える、 鞍乗型車両用バッグ。」 2 取消理由の概要 本件訂正請求による訂正前の請求項1?12に係る特許に対して平成30年11月2日付けで通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 理由1(新規事項)平成29年10月31日付けでした手続補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、請求項1?12に係る特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものであり、特許は取り消すべきである。 理由2(明確性)請求項5?12に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定により特許を受けることができない特許出願に対してされたから、特許は取り消すべきである。 (当審注;取消理由通知書で「請求項1?12」と記載していたが誤記である。) 理由3(進歩性)請求項1、2、4?7及び12に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない特許出願に対してされたから、その発明に係る特許は取り消すべきである。 記 引用文献1:最新モデル「積載性」オールアルバム、Motorcyclist2013年11月号 別冊付録、日本、八重洲出版、平成25年10月1日発行、第5頁 引用文献等2:Amazon、GOLDWIN(ゴールドウィン)タンデムシートバッグ20容量約17-20L ブラック GSM17002、[online]、平成22年2月25日、インターネット <URL:https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B003QWU1BC/idistaken-22> 上記引用文献1は、異議申立人が証拠として提出した甲第1号証であり、上記引用文献等2の平成30年6月1日に出力された写しが、証拠として提出した甲第21号証である。 3 取消理由について (1)理由1(新規事項)について 平成29年10月31日付けでした手続補正は、請求項1に記載される接合部材について、「該複数のベルト単体を相互に接合し、前記車体本体と前記シートとの間に配置される接合部材」(すなわち、「前記複数のベルト単体は、前記接合部材を中心として回転自在である」以外のものも包含するもの)とする補正を含むものであった。 しかしながら、本件訂正請求の訂正事項1により「前記複数のベルト単体は、前記接合部材を中心として回転自在である」ことが特定されたため、理由1は解消した。 (2)理由2(明確性)について 訂正前の請求項5には、「前記バック本体取付用ベルト単体は、前記バック本体を前記シート上に取付ける、第1の単体ベルト及び第2の単体ベルトを備えていて、」と記載されているが、「バック本体取付用ベルト単体」が、「第1の単体ベルト及び第2の単体ベルトを備え」るとは、いかなる構成であるのか不明であり、同請求項8には、「前記架け渡し用ベルト単体は、前記シート上に架け渡される第3のベルト単体を備えていて、」と記載されているが、「架け渡し用ベルト単体」が、「第3のベルト単体を備え」るとは、いかなる構成であるのか不明であり、同請求項9には、「前記架け渡し用ベルト単体は、前記シート上に架け渡される第4のベルト単体を更に備えていて、」と記載されているが、「架け渡し用ベルト単体」が、「第4のベルト単体を更に備え」るとは、いかなる構成であるのか不明であり、請求項5、8、9及びそれらを直接的又は間接的に引用する請求項6、7、10?12に係る発明は明確でなかった。 しかしながら、本件訂正請求の訂正事項4、5、7、8により、請求項5、8、9の記載は、上記「1」のとおりに訂正され、上記指摘に係る記載事項は明確となったため、理由2は解消した。 (3)理由3(進歩性)について ア 引用文献等の記載事項等 (ア)引用文献1の記載事項等 引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付与した。以下同様。)。 (1a)(第5頁右中段) 「写真は大型のサイドバッグとのセットアップもより確実に行える『GSM7301Bシートバック用X型装着ベルト(8個タイプ)』(1890円)。シートバッグ28に標準装備されるが、紛失や破損した場合、単体でも購入可能。バックルが4個の『GSM7303B シートバック用X型装着ベルト(4個タイプ)』(1890円)も設定」 (1b)(第5頁左中段「X型装着ベルトの取り付け」欄) 「X型装着ベルトの取り付け 1 シートを外してベルトの『X』マークがあるほうを上にして仮置きする。このとき進行方向に向かって『GOLDWIN』の文字が読めるように置かないとバックルのオス・メスが同じになってしまうので注意 2 シートの固定部やツメなどにベルトが干渉しないことや、シートとカウルの間にクリアランスがあることを確認し、シートをバイクに戻してベルトを挟み込む。これでベルト自体の装着は完了」 (1c)(第5頁左下段「シートバッグの場合」欄) 「シートバッグの場合 3 シートバッグをシートの上に載せ、Xベルト(当審注:「X型装着ベルト」の誤記と認める。以下同様。)とバック(当審注:「バッグ」の誤記と認める。)本体をバックルで固定し、アジャスターで緩みのないよう調整する」 (1d)(第5頁中下段及び右下段「サイドバッグの場合」欄) 「サイドバッグの場合 3’ シートの幅に合わせて装着フラップを重ね、クイックロン(ナイロン製面ファスナー)で留める。この時点ではあくまで仮留めなので、空荷(重量物が入っていない)状態で行うのがベターだ 4’ 装着フラップのスリット(穴)からXベルトのバックルを引き出す 5’ 左右のバッグをバックルで固定。アジャスターで調整し装着完了」 (1e)(第5頁左下段「シートバッグ+サイドバッグの組み合わせでセットアップ仕様に」欄) 「シートバッグ+サイドバッグの組み合わせでセットアップ仕様に バックルが横にあるシートバッグは、ひとつの装着ベルトでシートバッグを組み合わせて拡張できる『セットアップシステム』にも対応。セットアップする場合は必ずシートバック(当審注:「シートバッグ」の誤記と認める。)に付属される装着ベルトを使うこと」 (1f) 第5頁上段に記載された「X型装着ベルト」の写真から、以下の事項が看取される。 「2本の長手方向に延びた長いベルト単体が、それらの長手方向中央部で、互いが交差してX状の角度を成すように接合され、 前記長いベルト単体の各々の端部側には、雄または雌のバックルが設けられ、 前記長いベルト単体の中央部から両端部側の間に、4本の短いベルト単体が接合され、 前記短いベルト単体の各々の端部側には、雄または雌のバックルが設けられた X型装着ベルト」 「それぞれの長いベルト単体のバックル同士が連結可能である。」 上記(1a)?(1f)を総合すると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「2本の長手方向に延びた長いベルト単体が、それらの長手方向中央部で、互いが交差してX状の角度を成すように接合され、 前記長いベルト単体の各々の端部側には、雄または雌のバックルが設けられ、 前記長いベルト単体の中央部から両端部側の間に、4本の短いベルト単体が接合され、 前記短いベルト単体の各々の端部側には、雄または雌のバックルが設けられたX型装着ベルトであって、 前記X型装着ベルトをシートを外してベルトの『X』マークがある方を上にして仮置きし、 シートをバイクに戻してベルトを挟み込み、 シートバッグを取り付ける場合には、シートバッグをシートの上に載せ、X型装着ベルトとバッグ本体をバックルで固定し、アジャスターで緩みのないよう調整し、 サイドバッグを取り付ける場合には、シートの幅に合わせて装着フラップを重ね、クイックロン(ナイロン製面ファスナー)で留め、装着フラップのスリット(穴)からX型装着ベルトのバックルを引き出し、左右のバッグをバックルで固定し、アジャスターで調整し、 ひとつの前記X型装着ベルトで、シートバッグ+サイドバッグの組み合わせでセットアップ仕様にすることにも対応する X型装着ベルト。」 (イ)引用文献等2の記載事項 引用文献等2のウェブページに掲載された商品写真をクリックして表示される写真の左から4番目の写真には、以下の事項が記載されている。 (2a)(参考として、異議申立人が証拠として提出した甲第21号証の第11頁上中段) 「装着ベルトの取付方法(他のシートバッグと共通です) 1 シートの幅にあわせて、装着ベルトのアジャスターをゆるめる。 2 装着ベルトをシートに通し、下側のアジャスターで仮止めする。 3 シートをバイクに戻し、固定する。 4 上側のアジャスターを締めて固定する。 5 シートバッグ取付ベースのクイックロンをはがしシートの上に乗せる。 6 次に、取付ベースのスリットに装着ベルトを通し、バックルで固定する。 7 クッション部をかぶせて、クイックロンで固定する。 8 取付ベースのフラップを、バッグ底面のスリットに差し込む。 9 あとは、装着ベルトとバッグを、バックルで固定すれば、完了。」 (2b)(参考として、異議申立人が証拠として提出した甲第21号証の第11頁下段) 「セットアップシステム ひとつの装着ベルトで、サイドバッグとシートバッグが取り付けられます。 ・・・ まず、1?4の手順で、『シートバッグ付属の装着ベルト』を取り付ける。 次に、シートの幅にあわせて、『サイドバッグの装着フラップ』を重ね、クイックロンでとめる。 装着フラップの4カ所のスリット(穴)から、装着ベルトのバックルを引き出す。 あとは、5?9の手順で、シートバッグを取り付け、セットアップ完了。」 (3)対比・判断 ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と引用発明とを対比する。 a 引用発明の「バイク」は、「シートを外して」「X型装着ベルト」を取り付けており、「シート」が「ライダー着座用」であることは明らかであることから、引用発明の「バイク」が、本件発明1の「車体本体の上方に着脱自在に装着されたライダー着座用のシートを備えた鞍乗型車両」に相当する。 b 上記aの相当関係を踏まえると、引用発明の「シートバッグ」及び「サイドバッグ」が、本件発明1の「バッグ本体」及び「鞍乗型車両の側部に装着される」「補助バッグ」に相当する。 c 引用発明の「X型装着ベルト」は、「シートバッグ」を「シート」に取り付けることに使用されるものであることから、引用発明の「X型装着ベルト」が、本件発明1の「前記バッグ本体を前記シートに取付ける取付用ベルト」に相当するとともに、上記aの相当関係を踏まえると、「鞍乗型車両用バッグ、のための前記取付用ベルト」にも相当する。 d 上記b及びcの相当関係を踏まえると、引用発明の「シートバッグ」及び「X型装着ベルト」が、本件発明1の「バッグ本体と、前記バッグ本体を前記シートに取付ける取付用ベルトと、を備える鞍乗型車両用バッグ」に相当する。 e 引用発明の「2本の長手方向に延びた長いベルト単体」及び「前記長いベルト単体の中央部から両端部側の間」に接合された「4つの短いベルト単体」は、「X型装着ベルト」を構成するものであり、「X型装着ベルト」は、「シートを外して・・・仮置きし、シートをバイクに戻してベルトを挟み込み、シートバッグを取り付ける場合には、シートバッグをシートの上に載せ、X型装着ベルトとバッグ本体をバックルで固定」するものであるから、「シートを外して・・・仮置きし、シートをバイクに戻してベルトを挟み込」んだ状態では、「2本の長手方向に延びた長いベルト単体」及び「前記長いベルト単体の中央部から両端部側の間」に接合された「4つの短いベルト単体」のそれぞれの「雄または雌のバックル」は、「バイク」の外方に延出した状態となっていることは明らかである。 また、本件発明1の「端部」に関し、 本件明細書には、「なお、本発明においては、後述する第2の実施の形態の第1?第4のベルト単体を含めて、取付用ベルトの端部、あるいは第1のベルト単体や第2のベルト単体の長さ方向の端部は、実質的に第1?第4の連結部材の部分を指す。」(段落【0024】)と記載されていることから、本件発明1の「端部」とは、「連結部材の部分」であり、引用発明の「雄または雌のバックル」が、本件発明1の「連結部材」に相当するとともに、その部分が本件発明1の「端部」に相当する。 そうすると、上記a?cの相当関係も踏まえれば、引用発明の「2本の長手方向に延びた長いベルト単体」及び「前記長いベルト単体の中央部から両端部側の間」に接合された「4つの短いベルト単体」が、本件発明の「複数の端部が鞍乗型車両の外方に延出させた状態で前記車体本体と前記シートとの間に着脱自在に配設可能である、前記バッグ本体を前記シート上に取付けるための複数のベルト単体」に相当する。 f 引用発明の「2本の長手方向に延びた長いベルト単体が、それらの長手方向中央部で、互いが交差してX状の角度を成すように接合され、・・・長いベルト単体の中央部から両端部側の間に、4本の短いベルト単体が接合され」の「接合」している部材と、本件発明1の「複数のベルト単体を相互に接合し、前記車体本体と前記シートとの間に配置される接合部材」とは、「複数のベルト単体を相互に接合する接合部材」である点で共通する。 g 引用発明の「X型装着ベルト」は、「サイドバッグを取り付ける場合には、シートの幅に合わせて装着フラップを重ね、クイックロン(ナイロン製面ファスナー)で留め、装着フラップのスリット(穴)からX型装着ベルトのバックルを引き出し、左右のバッグをバックルで固定し、アジャスターで調整」するものであるので、サイドバッグをバイク側部に取り付けることもできるものといえる。 そうすると、引用発明の「X型装着ベルト」と、本件発明1の「前記架け渡し用ベルト単体は、前記鞍乗型車両の側部に装着される補助バッグが前記側部に存在しない状態で前記シート上に架け渡されることと、前記補助バッグを前記側部に取り付けることに兼用でき」る取付用ベルトとは、「補助バッグを側部に取り付けることもでき」る取付用ベルトである点で共通する。 h 引用発明の「2本の長手方向に延びた長いベルト単体」及び「前記長いベルト単体の中央部から両端部側の間」に接合された「4つの短いベルト単体」の「バックル」が、「シート」を挟んで相対する側に延出していることは、「シート」に「バッグ」を取り付けるものである以上、当業者にとって自明な事項であることから、上記eの相当関係を踏まえると、引用発明は、本件発明1の「前記複数のベルト単体は、長さ方向の両端部が前記シートを挟んで相対する側に延出し」ている構成を実質的に有しているといえる。 上記a?hを総合すると、本件発明1と引用発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。 <一致点> 「車体本体の上方に着脱自在に装着されたライダー着座用のシートを備えた鞍乗型車両に装着され、バッグ本体と、前記バッグ本体を前記シートに取付ける取付用ベルトと、を備える鞍乗型車両用バッグ、のための前記取付用ベルトであって、 前記取付用ベルトは、 複数の端部が鞍乗型車両の外方に延出させた状態で前記車体本体と前記シートとの間に着脱自在に配設可能である、前記バッグ本体を前記シート上に取付けるための複数のベルト単体と、 該複数のベルト単体を相互に接合する接合部材と、 を備え、 補助バッグを側部に取り付けることもでき、 前記複数のベルト単体は、長さ方向の両端部が前記シートを挟んで相対する側に延出している、 取付用ベルト。」 <相違点1> 本件発明1は、「複数のベルト単体」が、「前記バッグ本体を前記シート上に取り付ける少なくとも一本のバック本体取付用ベルト単体と、前記シート上に架け渡され、前記取付用ベルトの位置保持に寄与する少なくとも一本の架け渡し用ベルト単体と、を含」んでいるのに対し、引用発明の「2本の長手方向に延びた長いベルト単体」及び「前記長いベルト単体の中央部から両端部側の間」に接合された「4つの短いベルト単体」は、「シートバッグを取り付ける場合には、シートバッグをシートの上に載せ、X型装着ベルトとバッグ本体をバックルで固定し」ていることは特定されているものの、「2本の長手方向に延びた長いベルト単体」及び「前記長いベルト単体の中央部から両端部側の間」に接合された「4つの短いベルト単体」のいずれか又は全てが「本体取付用ベルト単体」に相当するのか、いずれかが「本体取付用ベルト単体」であった時に、その余の「ベルト単体」が、本件発明1の「架け渡し用ベルト単体」に相当するのか特定されない点。 <相違点2> 本件発明1は、「接合部材」が、「該複数のベルト単体を相互に接合し、前記車体本体と前記シートとの間に配置される接合部材」であり、「該複数のベルト単体」が、「前記バッグ本体を前記シート上に取り付ける少なくとも一本のバック本体取付用ベルト単体と、前記シート上に架け渡され、前記取付用ベルトの位置保持に寄与する少なくとも一本の架け渡し用ベルト単体と、を含」んでいることを踏まえると、「バッグ本体取付用ベルト」と「架け渡し用ベルト単体」とを相互に接合する「接合部材」が、「前記車体本体と前記シートとの間に配置される」ものであるのに対し、引用発明は、「2本の長手方向に延びた長いベルト単体が、それらの長手方向中央部で、互いが交差してX状の角度を成すように接合され、」「前記長いベルト単体の中央部から両端部側の間に、4本の短いベルト単体が接合され」ているものの、「2本の長手方向に延びた長いベルト単体」及び「4つの短いベルト単体」のいずれか又は全てが「本体取付用ベルト単体」に相当するのか、いずれかが「本体取付用ベルト単体」であった時に、その余の「ベルト単体」が、本件発明1の「架け渡し用ベルト単体」に相当するのか特定されていないことから、どの「接合」部分を接合している部材が、本件発明1の「接合部材」に相当する構成であるのか特定されず、結果として、その配置についても特定されないものである点。 <相違点3> 本件発明1の「架け渡し用ベルト単体」は、「前記鞍乗型車両の側部に装着される補助バッグが前記側部に存在しない状態で前記シート上に架け渡されることと、前記補助バッグを前記側部に取り付けることに兼用できる」ものであるのに対し、引用発明は「サイドバッグをバイク側部に取り付け」ているといえるものの、「架け渡し用ベルト単体」に相当する構成が特定されておらず、その使用態様についても特定されていない点。 <相違点4> 本件発明1は、「前記接合部材は、前記複数のベルト単体における長さ方向の中央部分においてこれらのベルト単体を相互に接合し」ているものであって、「前記複数のベルト単体は、前記接合部材を中心として回転自在である」のに対し、引用発明は、「2本の長手方向に延びた長いベルト単体が、それらの長手方向中央部で、互いが交差してX状の角度を成すように接合され」ているものであるから、「前記長いベルト単体の中央部から両端部側の間に、」「接合され」た「4本の短いベルト単体」については、当然、「短いベルト単体」の長さ方向の中央部分において接合されるものではなく、さらに、「2本の長手方向に延びた長いベルト単体が、それらの長手方向中央部で、互いが交差してX状の角度を成すように接合され」た箇所、及び、「前記長いベルト単体の中央部から両端部側の間に、4本の短いベルト単体が接合され」た箇所は回転自在なものでもない点。 (イ)判断 a 事案に鑑み、上記相違点4について検討する。 引用発明の「短いベルト単体」は、「前記長いベルト単体の中央部から両端部側の間に、」「接合され」たものであるところ、当該「短いベルト単体」を、それらが接合された「長いベルト単体」から独立させて、元々の「長いベルト単体」と共に、それらの中央部分において相互に接合するように変更する動機付けとなるような記載ないし示唆は引用文献1にない。 仮に、そのように変更することが、当業者にとって容易想到といえたとしても、そのように変更したベルト単体をさらに「接合部材を中心として回転自在」と変更することの動機付けとなるような記載ないし示唆は引用文献1にない。 そして、取消理由通知で引用した引用文献2にも、上記(2)イから明らかなように、上記相違点4に係る本件発明1の発明特定事項に対応する技術的事項の開示はない。 したがって、引用発明において、上記相違点4に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることは、当業者であっても容易になし得たとはいえない。 b なお、上記相違点4に関連して、異議申立人は、特許異議申立書の第70頁下から2行?第71頁第15行において、「甲第27号証、甲第28号証及び甲第30号証に記載の技術に係る接続バックルは、交差する2つの短長バックルの接合部を中心として、接続するベルト同士の回転角度を調整できることが看取できる」(同第70頁下から2行?第71頁第2行)として、引用発明に適用することは容易想到である旨主張しているので、以下検討する。 上記主張に関するそれら各甲号証の記載は次の通りである。 (a)甲第27号証(タナックス株式会社 TANAX2011 NAPOLEON MOTOFIZZ[PITGEAR]、第17頁、第29頁) (甲第27号証の第4頁(カタログの第29頁)の右欄の上から9番目) (b)甲第28号証(Amazon、タナックス(TANAX)シートバッグ用パーツ接続バックルMP-124、[online]、平成23年1月18日、インターネット <URL:https://www.amazon.co.jp/%E3%82%BF%(以下略)> ) (甲第28号証の第1頁) (c)甲第30号証(ブログ「いつもコウチャンとダブロクからツーリングセロー、そしてサベージと一緒」、記事タイトル「タナックス モトフィズMOTOFIZZ キャンピングシートバッグ2が来た」、[online]、平成26年8月12日、インターネット <URL:http:/kotachantow650.blog.fc2.com/blog-entry-9.html>) (甲第30号証の第6頁) 上記(a)?(c)の開示内容からは、交差する2つの短長バックルの接合部を有する接続バックルは看取できるものの、交差する2つの短長ベルトの接合部を中心として、接続するベルト同士の回転角度を調整できることまで看取することはできない。 したがって、異議申立人の上記主張は採用できない。 仮に、異議申立人が主張するように、それらが交差する2つの短長バックルの接合部を中心として、接続するベルト同士の回転角度を調整できるものであったとしても、上記aで述べたように、「短いベルト単体」を、それらが接合された「長いベルト単体」から独立させて、元々の「長いベルト単体」と共に、それらの中央部分において相互に接合するように変更する動機付けとなるような記載ないし示唆は引用文献1にないし、そのように変更することが、当業者にとって容易想到といえたとしても、当該2つの短長バックルに係る技術を、引用発明から変更したものにさらに適用する動機付けがあるともいえず、当業者であっても容易に想到し得たということはできない。 c なお、他の証拠(特に甲第8?12号証、甲第23?31号証)を検討しても、引用発明において、上記相違点4に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることが容易想到とする技術的事項の開示は見当たらない。 d よって、本件発明1は、引用発明及び引用文献等2に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえないものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。 イ 本件発明4?12について 本件発明4?12は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えたものであるから、本件発明1と同様の理由により、引用発明及び引用文献等2に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 よって、本件発明4?12は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。 (4)小括 以上のとおりであるから、取消理由で通知した理由1?3によっては、請求項1、4?12に係る特許を取り消すことはできない。 4 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について (1)異議申立人は、特許異議申立書第62頁第12行?第69頁第1行の「(○1 本件特許発明1乃至4、および発明12が新規性を有しないこと」(なお、丸囲みの1を「○1」と表記した。以下同様。)において、当該発明は、甲第1号証に記載された発明である旨主張する。 しかしながら、上記3(3)で述べたとおり本件発明1と引用発明との間には相違点1?4が存在するので、本件発明1、4?12は特許法第29条第1項第3号に該当するとはいえない。 したがって、異議申立人の主張は採用できない。 (2)異議申立人は、特許異議申立書第69頁第2行?第83頁第10行の「(○2 本件特許発明1乃至4、および発明12が進歩性を有しないこと」において、当該発明は、甲第1号証に記載された発明に、甲第8?12号証に記載された技術的事項、甲第23?31号証に記載された周知技術等を適用することとにより、容易想到である旨主張する。 しかしながら、上記3(3)で述べたとおり、引用発明において、少なくとも相違点4に係る発明特定事項を有するものとすることは、当業者であっても容易になし得たとはいえないので、本件発明1、4?12は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえない。 したがって、異議申立人の主張は採用できない。 (3)異議申立人は、特許異議申立書の第22頁下から4行?第25頁第16行の「(イ)甲第3?7号証:公然実施された発明」において、「甲1発明が公然実施された発明である」と主張する。そして、同第62頁以降の「III)異議申立理由について」においては、公然実施発明との異議申立理由の明示はないが、公然実施発明による新規性なし、あるいは、進歩性なしという趣旨の主張をするものと解される。 しかしながら、仮に、引用発明が公然実施発明であったとしても、上記3(3)で述べたとおり、本件発明1と引用発明との間には相違点1?4が存在するので、本件発明1、4?12は特許法第29条第1項第2号に該当するとはいえない。また、上記3(3)で述べたとおり、引用発明において、少なくとも相違点4に係る発明特定事項を有するものとすることは、当業者であっても容易になし得たとはいえないので、本件発明1、4?12は同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえない。 したがって、異議申立人の主張は採用できない。 (4)異議申立人は、特許異議申立書第85頁下から8行?第86頁末行の「○5 サポート要件違反の理由」において、本件明細書等には、相互に接続されるベルト単体が回転しない接合部材について記載されていないので、サポート要件違反を主張する。 しかしながら、本件発明は「前記複数のベルト単体は、前記接合部材を中心として回転自在である」ことが特定されているので、請求項1、4?12の記載は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないとはいえない。 したがって、異議申立人の主張は採用できない。 第5 むすび 以上検討したとおり、取消理由通知に記載した取消理由、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1、4?12に係る特許を取り消すことはできない。 さらに、他に請求項1、4?12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 また、請求項2、3に係る特許は、訂正により削除されたため、本件特許の請求項2、3に対して異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 車体本体の上方に着脱自在に装着されたライダー着座用のシートを備えた鞍乗型車両に装着され、バッグ本体と、前記バッグ本体を前記シートに取付ける取付用ベルトと、を備える鞍乗型車両用バッグ、のための前記取付用ベルトであって、 前記取付用ベルトは、 複数の端部が鞍乗型車両の外方に延出させた状態で前記車体本体と前記シートとの間に着脱自在に配設可能である、前記バッグ本体を前記シート上に取付けるための複数のベルト単体と、 該複数のベルト単体を相互に接合し、前記車体本体と前記シートとの間に配置される接合部材と、 を備え、 前記複数のベルト単体は、 前記バッグ本体を前記シート上に取り付ける少なくとも一本のバック本体取付用ベルト単体と、 前記シート上に架け渡され、前記取付用ベルトの位置保持に寄与する少なくとも一本の架け渡し用ベルト単体と、 を含み、 前記架け渡し用ベルト単体は、前記鞍乗型車両の側部に装着される補助バッグが前記側部に存在しない状態で前記シート上に架け渡されることと、前記補助バッグを前記側部に取り付けることに兼用でき、 前記複数のベルト単体は、長さ方向の両端部が前記シートを挟んで相対する側に延出し、 前記接合部材は、前記複数のベルト単体における長さ方向の中央部分においてこれらのベルト単体を相互に接合し、 前記複数のベルト単体は、前記接合部材を中心として回転自在である、 取付用ベルト。 【請求項2】(削除) 【請求項3】(削除) 【請求項4】 前記取付用ベルトは、前記複数のベルト単体における前記バッグ本体と連結される前記端部と前記接合部材との間の長さを調整自在である、 請求項1に記載の取付用ベルト。 【請求項5】 前記バック本体取付用ベルト単体は、前記バック本体を前記シート上に取付ける、第1のベルト単体及び第2のベルト単体により構成されていて、第1のベルト単体は、長さ方向の第1端及び第2端に第1の連結部材及び第2の連結部材を有していると共に、第2のベルト単体は、長さ方向の第1端及び第2端に第3の連結部材及び第4の連結部材を有し、 前記バック本体は、第5の連結部材と第6の連結部材と第7の連結部材と第8の連結部材とを備え、 前記第1の連結部材は、前記第5の連結部材と相互に係脱自在に連結可能であり、前記第2の連結部材は、前記第6の連結部材と相互に係脱自在に連結可能であり、前記第3の連結部材は、前記第7の連結部材と相互に係脱自在に連結可能であり、前記第4の連結部材は、前記第8の連結部材と相互に係脱自在に連結可能である、 請求項1又は4に記載の取付用ベルト。 【請求項6】 前記第1の連結部材及び第2の連結部材は相互に係脱自在に連結可能であり、前記第3の連結部材及び第4の連結部材は相互に係脱自在に連結可能である、 請求項5に記載の取付用ベルト。 【請求項7】 前記取付用ベルト及びバッグ本体に設けられた連結部材は、雄型部材と該雄型部材を受け入れて係合する雌型部材とで構成されていて、前記第1の連結部材と前記第3の連結部材と前記第6の連結部材と前記第8の連結部材とは、前記雄型部材又は前記雌型部材うちのいずれか一方の相互に同じ型の部材であり、前記第2の連結部材と前記第4の連結部材と前記第5の連結部材と前記第7の連結部材とは、他方の相互に同じ型の部材である、請求項6に記載の取付用ベルト。 【請求項8】 前記架け渡し用ベルト単体は、前記シート上に架け渡される第3のベルト単体により構成されていて、前記第3のベルト単体は、長さ方向の第1端及び第2端に、相互に係脱自在に連結可能な第9の連結部材及び第10の連結部材を有している、請求項5乃至7のいずれか一項に記載の取付用ベルト。 【請求項9】 前記架け渡し用ベルト単体は、前記シート上に架け渡される第4のベルト単体と前記第3のベルト単体により構成されていて、前記第4のベルト単体は、長さ方向の第1端及び第2端に、相互に係脱自在に連結可能な第11の連結部材及び第12の連結部材を有し、 前記第9の連結部材と第12の連結部材とは相互に係脱自在に連結可能であると共に、前記第10の連結部材と第11の連結部材とが相互に係脱自在に連結可能である、請求項8に記載の取付用ベルト。 【請求項10】 前記鞍乗型車両用バッグは、前記鞍乗型車両の側部に装着される補助バッグを備えていて、前記第3のベルト単体及び前記第4のベルト単体は、前記補助バッグに設けられた貫通孔に挿通させた状態で、前記第9の連結部材と前記第10の連結部材又は前記第12の連結部材とが相互に連結されると共に、前記第11の連結部材と、前記第9の連結部材と連結されていない第12の連結部材又は第10の連結部材とを相互に連結されることにより、前記補助バッグを前記鞍乗型車両の側部において保持可能である、請求項9に記載の取付用ベルト。 【請求項11】 前記第3のベルト単体及び前記第4のベルト単体に設けられた連結部材は、雄型部材と該雄型部材を受け入れて係合する雌型部材とで構成されていて、前記第9の連結部材及び前記第11の連結部材は、前記雄型部材又は前記雌型部材うちのいずれか一方の相互に同じ型の部材であり、前記第10の連結部材及び前記第12の連結部材は、他方の相互に同じ型の部材である、請求項9又は請求項10に記載の取付用ベルト。 【請求項12】 車体本体の上方に着脱自在に装着されたライダー着座用のシートを備えた鞍乗型車両に装着される鞍乗型車両用バッグであって、 前記シート上に装着される、荷物を収容するためのバッグ本体と、 請求項1、4乃至11のいずれか一項に記載の取付用ベルトと、 を備える、 鞍乗型車両用バッグ。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2019-05-30 |
出願番号 | 特願2015-7256(P2015-7256) |
審決分類 |
P
1
651・
113-
YAA
(B62J)
P 1 651・ 537- YAA (B62J) P 1 651・ 536- YAA (B62J) P 1 651・ 121- YAA (B62J) P 1 651・ 55- YAA (B62J) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 林 政道、田合 弘幸、山尾 宗弘 |
特許庁審判長 |
中川 真一 |
特許庁審判官 |
一ノ瀬 覚 中村 泰二郎 |
登録日 | 2018-01-19 |
登録番号 | 特許第6275060号(P6275060) |
権利者 | 株式会社ゴールドウイン 株式会社ゴールドウインテクニカルセンター |
発明の名称 | 鞍乗型車両用バッグ |
代理人 | 小野田 浩之 |
代理人 | 青木 篤 |
代理人 | 奥野 剛規 |
代理人 | 藤本 健治 |
代理人 | 青木 篤 |
代理人 | 奥野 剛規 |
代理人 | 三橋 真二 |
代理人 | 小野田 浩之 |
代理人 | 三橋 真二 |
代理人 | 藤本 健治 |
代理人 | 青木 篤 |
代理人 | 三橋 真二 |
代理人 | 奥野 剛規 |
代理人 | 小野田 浩之 |
代理人 | 藤本 健治 |