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審決分類 審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  G01N
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G01N
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  G01N
審判 全部申し立て 2項進歩性  G01N
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G01N
管理番号 1353178
異議申立番号 異議2016-700611  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-08-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-07-13 
確定日 2019-06-13 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5845033号発明「マイコプラズマ・ニューモニエ検出用イムノクロマトグラフィー試験デバイスおよびキット」の特許異議申立事件についてされた平成29年4月18日付け異議の決定に対し、知的財産高等裁判所において決定取消しの判決(平成29年(行ケ)第10117号、平成30年11月6日判決言渡、同月20日判決確定)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり決定する。 
結論 特許第5845033号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕、〔7、8〕について訂正することを認める。 特許第5845033号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第5845033号の請求項1ないし8に係る特許についての出願は、平成23年9月26日に出願され、平成27年11月27日にその特許権の設定登録がされ、平成28年1月20日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。

平成28年 7月13日 :特許異議申立人 松下 亮 による請求項1
ないし8に係る特許に対する特許異議の申立

同年 同月19日 :特許異議申立人 秋本 悠太 による請求項
1ないし8に係る特許に対する特許異議の申
立て
同年 同月 同日 :特許異議申立人 木村 愛子 による請求項
1ないし8に係る特許に対する特許異議の申
立て
同年 同月20日 :特許異議申立人 秋元 正哉 による請求項
1ないし8に係る特許に対する特許異議の申
立て
同年 9月16日付け:取消理由通知
同年11月22日 :特許権者による意見書の提出
平成29年 1月19日付け:取消理由通知(決定の予告)
同年 3月27日 :特許権者による意見書の提出及び訂正の請求
同年 4月18日付け:異議の決定「特許第5845033号の特許
請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特
許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1-
6〕、〔7、8〕について訂正することを認
める。特許第5845033号の請求項1な
いし8に係る特許を取り消す。」
同年 5月26日 :決定取消訴訟提起(平成29年(行ケ)10
117号)
平成30年11月 6日 :判決言渡「特許庁が異議2016-7006
11号事件について平成29年4月18日に
した異議の決定を取り消す。」
同年 同月20日 :判決確定
同年12月13日 :特許異議申立人 秋元 正哉 による上申書
の提出
同年 同月18日付け:取消理由通知(決定の予告)
平成31年 2月25日 :特許権者による意見書の提出
同年 3月18日付け:審尋(対特許異議申立人)
同年 4月16日 :特許異議申立人 松下 亮 による回答書の
提出
同年 同月23日 :特許異議申立人 木村 愛子 による回答書
の提出
同年 同月24日 :特許異議申立人 秋元 正哉 による回答書
の提出
同年 同月 同日 :特許異議申立人 秋本 悠太 による回答書
の提出

以下、「特許異議申立人 松下 亮」を「申立人A」と、「特許異議申立人 秋本 悠太」を「申立人B」と、「特許異議申立人 木村 愛子」を「申立人C」と、「特許異議申立人 秋元 正哉」を「申立人D」という。


第2 訂正の適否についての判断

1 訂正の内容

(1)訂正事項1

特許権者は、特許請求の範囲の請求項1を以下の事項により特定されるとおりに訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2ないし6も同様に訂正する)ことを請求する。なお、下線は当審が付したものであり、訂正箇所を示す(訂正事項に係る記載において以下同様。)。

「 イムノクロマトグラフィー試験デバイスおよび検出キットにおける抗体として、マイコプラズマ・ニューモニエ由来のP1タンパク質抗原に対して特異的なモノクローナル抗体を含む、検体からマイコプラズマ・ニューモニエ感染検出用のイムノクロマトグラフィー試験デバイスであって、
第一のモノクローナル抗体および第一のモノクローナル抗体とは異なる第二のモノクローナル抗体、ならびに膜担体を備え、
該第一のモノクローナル抗体が、該膜担体に固定されて検出部位を構成し、
該第二のモノクローナル抗体が、標識物質で標識されており、かつ該検出部位とは離れた位置に、該膜担体中を移動可能に配置され、
該検体であって、濃縮処理物を除く該検体中にマイコプラズマ・ニューモニエ抗原が存在する場合に、該マイコプラズマ・ニューモニエ抗原と該標識物質で標識された該第二のモノクローナル抗体とを標識担持部材において結合させて、複合体を形成させる手段と、
該複合体を、該膜担体を介して展開させ、該検出部位において固定された該第一のモノクローナル抗体と結合させ、集積させることで発色させる手段と、を有する、
マイコプラズマ・ニューモニエ感染検出用のイムノクロマトグラフィー試験デバイス。」

(2)訂正事項2

特許権者は、特許請求の範囲の請求項4を以下の事項により特定されるとおりに訂正する(請求項4の記載を引用する請求項5及び6も同様に訂正する)ことを請求する。

「 前記イムノクロマトグラフィー試験デバイスがマイコプラズマ・ニューモニエ感染診断用であり、生体由来材料またはその濃縮処理物を除く前処理物を検体とする、請求項1から3のいずれかに
記載のイムノクロマトグラフィー試験デバイス。」

(3)訂正事項3

特許権者は、特許請求の範囲の請求項7を以下の事項により特定されるとおりに訂正する(請求項7の記載を引用する請求項8も同様に訂正する)ことを請求する。

「 マイコプラズマ・ニューモニエP1タンパク質を検出することにより、検体からマイコプラズマ・ニューモニエの感染を検出する方法であって、
イムノクロマトグラフィー試験デバイスおよび検出キットにおける抗体として、マイコプラズマ・ニューモニエ由来の該P1タンパク質に対して特異的に結合でき、膜担体の検出部位に固定された第一のモノクローナル抗体と、前記マイコプラズマ・ニューモニエ由来の該P1タンパク質に対して特異的に結合でき、標識物質で標識され、かつ標識担持部材に担持された、第一のモノクローナル抗体とは異なる第二のモノクローナル抗体と、を有し、該第一のモノクローナル抗体および該第二のモノクローナル抗体のいずれかまたは両方が該P1タンパク質に特異的に結合できるモノクローナル抗体である、イムノクロマトグラフィー試験デバイスにおいて、
該検体であって、濃縮処理物を除く該検体を該イムノクロマトグラフィー試験デバイスの検体添加部材に添加する工程と、
該検体中に該マイコプラズマ・ニューモニエが存在する場合に、該マイコプラズマ・ニューモニエ由来のタンパク質と該標識物質で標識された第二のモノクローナル抗体とを標識担持部材において結合させて、複合体を形成させる工程と、
該複合体を、該膜担体を介して展開させ、該検出部位において固定された該第一のモノクローナル抗体と結合させ、集積させることで発色させる工程と、
を有する、マイコプラズマ・ニューモニエの感染を検出する方法。」

(4)訂正の単位について

訂正事項1及び2は、訂正前に引用関係を有する請求項1ないし6に対して、訂正事項3は、訂正前に引用関係を有する請求項7及び8に対して請求されたものである。
よって、本件訂正は、一群の請求項〔1-6〕、〔7、8〕ごとに請求されている。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1)訂正事項1について

ア 訂正事項1は、以下の訂正事項1-1ないし訂正事項1-5からなる。

(訂正事項1-1)冒頭の「マイコプラズマ・ニューモニエ由来のP1タンパク質抗原に対して特異的な」の前に、「イムノクロマトグラフィー試験デバイス及び検出キットにおける抗体として、」を加える訂正。

(訂正事項1-2)「抗体」を、「モノクローナル抗体」とする訂正。

(訂正事項1-3)「第二の抗体」を、「第一のモノクローナル抗体と異なる第二のモノクローナル抗体」とする訂正。

(訂正事項1-4)「マイコプラズマ・ニューモニエ感染検出用」を、「検体からマイコプラズマ・ニューモニエ感染検出用」とする訂正。

(訂正事項1-5)「検体」を、「該検体であって、濃縮処理物を除く該検体」とする訂正。

イ 訂正事項1-1は、「抗体」が、「イムノクロマトグラフィー試験デバイス及び検出キットにおける」ものである点を限定し、訂正事項1-2は、「抗体」が、「モノクローナル抗体」であると限定し、訂正事項1-3は、「第二のモノクローナル抗体」が「第一のモノクローナル抗体」と異なるものであると限定し、訂正事項1-4は、「マイコプラズマ・ニューモニエ感染検出」が、「検体」からの検出であると限定し、訂正事項1-5は、「検体」が、「濃縮処理物」を除くものであると限定しているから、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的としているといえる。

ウ 訂正事項1-1は、段落【0022】に「・・・本発明のマイコプラズマ・ニューモニエのイムノクロマトグラフィー試験デバイスおよび検出用キットにおける抗体として、・・・」と記載され、訂正事項1-2は、段落【0023】に「マイコプラズマ・ニューモニエ由来のタンパク質抗原に対して特異的な抗体、例えば、抗マイコプラズマ・ニューモニエP1タンパク質抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のいずれでもよいが、モノクローナル抗体が好ましい。」と記載され、訂正事項1-3は、段落【0032】に「・・・第一の抗体および第二の抗体は、マイコプラズマ・ニューモニエ由来のタンパク質抗原に対して特異性の異なる抗体、例えば、別個の異なる抗マイコプラズマ・ニューモニエP1タンパク質抗体であることが好ましい。・・・」と記載され、訂正事項1-4は、段落【0051】、【0063】?【0065】、【0069】?【0070】に、「マイコプラズマ・ニューモニエ感染検出」を、「液体状の検体」、「鼻腔吸引液検体」、「咽頭拭い液検体」などの「検体」から行う点が記載されているから、新規事項の追加に該当しない。
また、訂正事項1-5は、請求項1に記載された「検体」から「濃縮処理物」を除外することを明記したものであり、「検体」から「濃縮処理物」を除外することが新たな技術的事項を導入しないことは明らかであるから、新規事項の追加に該当しない。

エ 訂正事項1-1ないし訂正事項1-5は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2について

訂正事項2は、訂正事項1-5と同様の内容の訂正であるから、訂正事項2は、上記(1)で検討したとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項3について

訂正事項3は、訂正事項1-1ないし訂正事項1-5と同様の内容の訂正であるから、訂正事項3は、上記(1)で検討したとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3 小括

上記のとおり、訂正事項1ないし3に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕、〔7、8〕について訂正することを認める。


第3 訂正後の本件発明

上記のとおり訂正が認められるから、本件特許の請求項1ないし8に係る発明(以下、それぞれ請求項の番号に応じて「本件特許発明1」などという。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

(本件特許発明1)
「 【請求項1】
イムノクロマトグラフィー試験デバイスおよび検出キットにおける抗体として、マイコプラズマ・ニューモニエ由来のP1タンパク質抗原に対して特異的なモノクローナル抗体を含む、検体からマイコプラズマ・ニューモニエ感染検出用のイムノクロマトグラフィー試験デバイスであって、
第一のモノクローナル抗体および第一のモノクローナル抗体とは異なる第二のモノクローナル抗体、ならびに膜担体を備え、
該第一のモノクローナル抗体が、該膜担体に固定されて検出部位を構成し、
該第二のモノクローナル抗体が、標識物質で標識されており、かつ該検出部位とは離れた位置に、該膜担体中を移動可能に配置され、
該検体であって、濃縮処理物を除く該検体中にマイコプラズマ・ニューモニエ抗原が存在する場合に、該マイコプラズマ・ニューモニエ抗原と該標識物質で標識された該第二のモノクローナル抗体とを標識担持部材において結合させて、複合体を形成させる手段と、
該複合体を、該膜担体を介して展開させ、該検出部位において固定された該第一のモノクローナル抗体と結合させ、集積させることで発色させる手段と、を有する、
マイコプラズマ・ニューモニエ感染検出用のイムノクロマトグラフィー試験デバイス。」

(本件特許発明2)
「 【請求項2】
前記標識物質が不溶性粒状物質である、請求項1に記載のイムノクロマトグラフィー試験デバイス。」

(本件特許発明3)
「 【請求項3】
前記不溶性粒状物質が、着色合成高分子粒子または金属コロイド粒子である、請求項2に記載のイムノクロマトグラフィー試験デバイス。」

(本件特許発明4)
「 【請求項4】
前記イムノクロマトグラフィー試験デバイスがマイコプラズマ・ニューモニエ感染診断用であり、生体由来材料またはその濃縮処理物を除く前処理物を検体とする、請求項1から3のいずれかに
記載のイムノクロマトグラフィー試験デバイス。」

(本件特許発明5)
「 【請求項5】
前記生体由来材料が、咽頭拭い液または鼻腔吸引液である、請求項4に記載のイムノクロマトグラフィー試験デバイス。」

(本件特許発明6)
「 【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のイムノクロマトグラフィー試験デバイスを備える、マイコプラズマ・ニューモニエ検出用キット。」

(本件特許発明7)
「 【請求項7】
マイコプラズマ・ニューモニエP1タンパク質を検出することにより、検体からマイコプラズマ・ニューモニエの感染を検出する方法であって、
イムノクロマトグラフィー試験デバイスおよび検出キットにおける抗体として、マイコプラズマ・ニューモニエ由来の該P1タンパク質に対して特異的に結合でき、膜担体の検出部位に固定された第一のモノクローナル抗体と、前記マイコプラズマ・ニューモニエ由来の該P1タンパク質に対して特異的に結合でき、標識物質で標識され、かつ標識担持部材に担持された、第一のモノクローナル抗体とは異なる第二のモノクローナル抗体と、を有し、該第一のモノクローナル抗体および該第二のモノクローナル抗体のいずれかまたは両方が該P1タンパク質に特異的に結合できるモノクローナル抗体である、イムノクロマトグラフィー試験デバイスにおいて、
該検体であって、濃縮処理物を除く該検体を該イムノクロマトグラフィー試験デバイスの検体添加部材に添加する工程と、
該検体中に該マイコプラズマ・ニューモニエが存在する場合に、該マイコプラズマ・ニューモニエ由来のタンパク質と該標識物質で標識された第二のモノクローナル抗体とを標識担持部材において結合させて、複合体を形成させる工程と、
該複合体を、該膜担体を介して展開させ、該検出部位において固定された該第一のモノクローナル抗体と結合させ、集積させることで発色させる工程と、
を有する、マイコプラズマ・ニューモニエの感染を検出する方法。」

(本件特許発明8)
「 【請求項8】
前記標識物質が不溶性粒状物質である、請求項7に記載のマイコプラズマ・ニューモニエの感染を検出する方法。」


第4 取消理由通知に記載した取消理由について

1 取消理由の概要

請求項1ないし8に係る特許に対して、当審が平成30年12月18日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の概要は、次のとおりである。

(1)本件特許に係る出願の発明の詳細な説明は、捕捉抗体及び検出抗体として、「抗マイコプラズマ・ニューモニエP1タンパク質モノクローナル抗体(セントラルリサーチ株式会社製)」を用いたことが記載されているが、抗体を製造した会社名が記載されていることをもって、直ちにその抗体を特定することができるとはいえない。
また、発明の詳細な説明の他の部分の記載を見ても、一般的なモノクローナル抗体の製造方法が記載されているにとどまり、捕捉抗体及び検出抗体として用いることができる抗体を特定することができる記載は見当たらない。
そうすると、本件特許に係る出願の発明の詳細な説明は、本件特許発明1ないし8に係る「イムノクロマトグラフィー試験デバイス」において捕捉抗体及び検出抗体として用いることができる「マイコプラズマ・ニューモニエ由来のP1タンパク質抗原に対して特異的なモノクローナル抗体」を特定することができるように記載されているとはいえないから、当業者が本件特許発明1ないし8の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでない。
よって、請求項1ないし8に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

(2)マイコプラズマ・ニューモニエ感染検出用のイムノクロマトグラフィー試験デバイスにおける捕捉抗体及び検出抗体として、抗マイコプラズマ・ニューモニエP1タンパク質モノクローナル抗体を使用することは困難であるということが、本件特許に係る出願当時の技術常識であったことに鑑みると、実施例デバイスで用いた抗マイコプラズマ・ニューモニエP1タンパク質モノクローナル抗体とは異なるマイコプラズマ・ニューモニエ由来のP1タンパク質抗原に対して特異的なモノクローナル抗体を、第一のモノクローナル抗体及び第二のモノクローナル抗体として用いることを包含する本件特許発明1ないし8の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化するための根拠は見いだせないから、本件特許発明1ないし8は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものである。
よって、請求項1ないし8に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

2 当審の判断

(1)特許法第36条第4項第1号について

特許権者は、平成31年2月25日付け意見書において、セントラルリサーチ株式会社のモノクローナル抗体製品のカタログには、2009年から現在まで、抗P1タンパク質抗体としては、商品コードP-11-AB及びP-12-ABの2種類のみが記載されており、これらの抗体は市販品であって一般に入手可能であることから、セントラルリサーチ株式会社製の抗体というだけで一般に入手可能な上記の2種類の抗体に特定されるのであるから、本件特許の明細書の記載は、実施可能要件を満たすものである旨主張し、その証拠として、乙第21号証として、本件特許に係る発明の発明者 土居 洋介 の発明当時の実験ノートの写しを提出した。
そして、乙第21号証の実験ノートには、セントラルリサーチ株式会社の製品紹介カタログが添付されており、そこには、抗P1タンパク質抗体として、商品コードP-11-AB及びP-12-ABの2種類のみが記載されている。
これを参照するに、発明の詳細な説明に記載されている「抗マイコプラズマ・ニューモニエP1タンパク質モノクローナル抗体(セントラルリサーチ株式会社製)」とは、上記商品コードP-11-AB及びP-12-ABの抗体を指していることは明らかであり、発明者が上記製品紹介カタログに記載された商品コードP-11-AB及びP-12-ABの抗体を使用して、本件特許に係る発明のマイコプラズマ・ニューモニエ感染検出用のイムノクロマトグラフィー試験デバイスを製造することができていたことは、発明の詳細な説明の実施例及び上記実験ノートの記載から、否定することはできない。
してみれば、当業者が、発明の詳細な説明の「抗マイコプラズマ・ニューモニエP1タンパク質モノクローナル抗体(セントラルリサーチ株式会社製)」との記載を基に、セントラルリサーチ株式会社の商品コードP-11-AB及びP-12-ABの抗体を使用して、マイコプラズマ・ニューモニエ感染検出用のイムノクロマトグラフィー試験デバイスを製造することができないとまではいえない。

特許権者の上記主張について、申立人AないしDに対して審尋を行い意見を求めたところ、セントラルリサーチ株式会社が、本件特許の出願前に抗P1タンパク質モノクローナル抗体を市販していなかったことを示す証拠や、相当程度多数の抗P1タンパク質モノクローナル抗体を市販していたことを示す証拠は提出されなかった。
そして、申立人AないしDは、特許権者が提出した、本件特許に係る発明の発明者 土居 洋介 の伝聞に係る陳述書である乙第22号証を根拠に、セントラルリサーチ株式会社製の抗体を使用しただけでは、マイコプラズマ・ニューモニエ感染検出用のイムノクロマトグラフィー試験デバイスを製造することはできない旨主張しているが、セントラルリサーチ株式会社の商品コードP-11-AB及びP-12-ABの抗体を使用しても、本件特許に係る発明のマイコプラズマ・ニューモニエ感染検出用のイムノクロマトグラフィー試験デバイスを製造することができないことを示す証拠は提出していない。

そうすると、本件特許の発明の詳細な説明の「抗マイコプラズマ・ニューモニエP1タンパク質モノクローナル抗体(セントラルリサーチ株式会社製)」という記載によっては、本件特許発明1ないし8を実施することができるマイコプラズマ・ニューモニエ由来のP1タンパク質抗原に対して特異的なモノクローナル抗体を特定することができないとまではいえず、当業者が、発明の詳細な説明の記載を参照しても、本件特許に係る発明のマイコプラズマ・ニューモニエ感染検出用のイムノクロマトグラフィー試験デバイスを製造することができないとまではいえない。
よって、本件特許に係る出願の発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないとまではいえない。

(2)特許法第36条第6項第1号について

特許権者は、平成31年2月25日付け意見書において、イムノクロマトグラフィーに使用し得るモノクローナル抗体の組合せが1つでも知られている場合には、その抗体のエピトープの決定とポリペプチド合成及び通常のスクリーニングにより、イムノクロマトグラフィーに使用し得る他のモノクローナル抗体の組合せを取得することが可能であると主張するとともに、乙第25号証として実験成績証明書を提出して、通常のモノクローナル抗体の取得方法でも利用可能な抗P1タンパク質抗体の組合せを見い出せたことを示し、セントラルリサーチ株式会社製の抗体以外の抗体にも拡張ないし一般化可能であり、本件特許の特許請求の範囲の記載は、サポート要件を満たす旨主張している。

これに対し、申立人B及びDは、それぞれの回答書において、特許権者が提出した乙第25号証の実験成績証明書は、本件特許の出願後のものであって、これによって明細書の記載内容を補充することは許されない旨主張し、申立人Cは、回答書において、本件特許発明1等はマイコプラズマ・ニューモニエ由来のP1タンパク質抗原に対して特異的なモノクローナル抗体の全てで課題が解決できると認識できなければならないところ、乙第25号証の表1は検出不能な抗体の組合せを含んでいるから、P1タンパク質抗原に対して特異的なモノクローナル抗体を用いても本件特許発明1等の課題を解決することはできないことを示している旨主張している。

そこで検討するに、乙第25号証に記載されている実験結果については、本件特許の出願後に行った事後的な実験に関するものであるため考慮できないものの、乙第25号証に記載の実験で使用されているスクリーニング方法は従来周知の方法であり、セントラルリサーチ株式会社製の抗体である商品コードP-11-AB及びP-12-ABの抗体が見いだされている状況において、これらの抗体と組み合わせて使用できる抗体を上記周知の方法により見いだすことができないとまではいえない。
また、本件特許発明1が、「該検体であって、濃縮処理物を除く該検体中にマイコプラズマ・ニューモニエ抗原が存在する場合に、該マイコプラズマ・ニューモニエ抗原と該標識物質で標識された該第二のモノクローナル抗体とを標識担持部材において結合させて、複合体を形成させる手段」を発明特定事項として含んでいるように、本件特許発明1ないし8は、第一の抗体及び第二の抗体として、マイコプラズマ・ニューモニエ由来のP1タンパク質抗原に対して特異的なモノクローナル抗体の全てを使用することができることを特定しているとも解されない。
そうすると、第一の抗体及び第二の抗体として実施例で用いた抗体以外の抗体を含み得る記載まで、発明の詳細な説明に記載された内容を拡張ないし一般化できないとまではいえない。
よって、本件特許に係る出願の特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないとまではいえない。

(3)特許異議申立人の主張について

申立人AないしDは、それぞれの回答書において、特許権者が提出した乙第22号証によれば、特許権者以外の数社が、セントラルリサーチ株式会社製の抗体を使用してもP1タンパク質を検出可能なイムノクロマトグラフィーデバイスを作成することができなかったのであるから、本件特許の発明における課題解決手段は、抗体以外の構成要件にあると認められるところ、発明の詳細な説明にはそのような構成要件に係る記載はなく、実施可能要件及びサポート要件に係る取消理由は解消していない旨主張している。

しかしながら、セントラルリサーチ株式会社製の抗体を使用して通常の方法で作成したイムノクロマトグラフィーデバイスでは、P1タンパク質を検出することができないことを客観的に示す実験データ等の証拠はなく、乙第22号証に記載されている発明者の伝聞に係る陳述を基に、直ちに実施可能要件及びサポート要件を満たしていないとすることはできない。

(4)小括
以上のとおりであるから、本件特許に係る出願の発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないとはいえず、また、本件特許に係る出願の特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないとはいえない。
よって、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由によっては、本件請求項1ないし8に係る特許を取り消すことはできない。


第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について

1 申立人Cの甲第1号証に基づく特許法第29条第1項第3号及び同条第2項について

申立人Cは、特許異議申立書において、本件訂正前の請求項1ないし8に係る発明は、甲第1号証(以下「甲1C」という。)に記載された発明であるから特許法第29条第1項第3号に該当し、その特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである旨主張している。
また、申立人Cは、本件訂正前の請求項1ないし8に係る発明は、甲1Cに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである旨も主張しているので、ここで、当該主張についても合わせて検討する。

(1)甲1Cの記載

甲1C:国際公開第2008/021862号

甲1Cには、以下の記載がある(標題を除き、下線は当審で付加した。)。
(甲1C-ア)「BACKGROUND
[0002] Mycoplasma pneumoniae is an extracellular pathogen that attaches to and destroys ciliated epithelial cells of the respiratory tract mucosa. M. pneumoniae is believed to be responsible for approximately 20% to 30% of community acquired pneumonia infections and has been implicated in asthma and chronic obstructive pulmonary disease. ・・・
[0003] Diagnosis of the M. pneumoniae pathogen responsible in these cases is difficult and is usually based on comparison of serum antibody titers between acute and convalescent phases. A fourfold or greater rise in antibody titer in the latter compared to the former indicates the patient was infected with the organism. Improved methods of detecting M. pneumoniae are thus needed.」
(当審訳:背景
[0002]マイコプラズマ・ニューモニエは、気道粘膜の繊毛上皮細胞に付着してこれを破壊する細胞外病原体である。M・ニューモニエは、市中肺炎感染症の約20%?30%の原因となっていると考えられており、喘息および慢性閉塞性肺疾患に関与している。…
[0003]このような症状の原因となるM・ニューモニエ病原体の診断は困難であり、その診断は、通常、血清抗体価の急性期と回復期との比較に基づいている。急性期と比較し回復期の抗体価が4倍以上上昇した場合、その患者がこの微生物に感染したことが示される。従って、M・ニューモニエを検出する改良法が必要とされる。)

(甲1C-イ)「SUMMARY
[001] Provided are compositions, methods and devices for detecting M. pneumoniae. We have discovered novel epitopes of M. pneumoniae that may be used to generate antibodies and other agents capable of specifically binding the epitopes. These antibodies and other compounds may be incorporated into a variety of methods for the standardized, sensitive and/or specific detection of M. pneumoniae.」
(当審訳:概要
[001]M・ニューモニエを検出するための組成物、方法及びデバイスを提供する。我々は、M・ニューモニエのエピトープに特異的に結合する能力を持つ抗体及びその他の物質を作り出すために利用し得るM・ニューモニエの新規エピトープを発見した。このような抗体及びその他の複合物は、標準化された、高感度及び/又は特異的なM・ニューモニエ検出のための様々な方法に組み込まれ得る。)

(甲1C-ウ)「BRIEF DESCRIPTION OF THE DRAWINGS
・・・
[0012] FIGURE 7 depicts the sequence of a fragment of recombinant P1 (“rP1”) protein (SEQ ID NO: 7). The full-length sequence of P1, an approximately 165 kDa protein, may be found at GenBank Accession Nos. AAK92039, AAK92040, AAK92038, AAK92037, NP_1 09829, and AAB95661. The epitopes recognized by polyclonal anti-rP1 rabbit antisera in italics, and the epitope recognized by monoclonal H136E7 in bold. The monoclonal antibody is described in U.S. Patent No. 4,945,041 and Kahane, et al. (1985) IAI 50:944. Only two overlapping peptides were recognized by the monoclonal antibody H136E7. The sequence in common between these peptides is shown in underlined bold.」
(当審訳:図面の簡単な説明
・・・
[0012]図7は、組み換えP1(「rP1」)タンパク質の断片の配列を示している(配列ID番号:7)。約165kDaのタンパク質であるP1の完全長配列は、ジェンバンク受入番号AAK32039、AAK92040、AAK92038、AAK92037、NP_109829及びAAB95661で見ることができる。ポリクローナル抗rP1ウサギ抗血清によって認識されるエピトープはイタリック体、モノクローナル抗体H136E7によって認識されるエピトープは太字で示す。本モノクローナル抗体は、米国特許第4,945,041号及びKahaneら(1985年)IAI 50:944に記載されている。2つのオーバーラップするペプチドのみがモノクローナル抗体HI136E7によって認識された。これらのペプチド間で共通の配列を下線付き太字で示す。)

(甲1C-エ)「DETAILED DESCRIPTION
・・・
[0029] The term “sample” refers to any sample potentially containing Mycoplasma pneumoniae bacteria. For example, a sample may be a bodily fluid such as blood, urine, mucous or saliva, or a respiratory sample, such as a nasopharyngeal wash or aspirate, nasal swab, nasopharyngeal swab, nasal wash, throat swab, transtracheal aspirate, broncho alveolar lavage, elution buffer used to wash a respiratory sample, etc.
[0030] 1. Epitopes of M. pneumoniae and Agents that Bind Epitopes of M. pneumoniae
[0031] Provided are isolated and/or purified polypeptides comprising epitopes of proteins from M. pneumoniae. These polypeptides are referred to herein collectively as “polypeptide epitopes of M. pneumoniae.” In certain embodiments, provided are isolated and/or purified polypeptides comprising epitopes of rCARDS protein (SEQ ID NO: 1) and rPl protein (SEQ ID NO: 7) from M. pneumoniae. For example, polypeptide sequences comprising epitopes of rCARDS protein are SEQ ID NOs: 2 through 6, and polypeptide sequences comprising epitopes of rPl protein are SEQ ID NOs: 8 through 10. Additional epitopes may be identified using the procedures outlined in the Exemplification for other M. pneumoniae proteins, as well as using methods for epitope identification as known to those of skill in the art. ・・・」
(当審訳:詳細な説明
・・・
[0029]用語「サンプル」は、マイコプラズマニューモニエ細菌を含む可能性のある任意のサンプルを言う。例えば、サンプルは、血液、尿、粘液もしくは唾液などの体液、又は呼吸器サンプル、例えば鼻咽頭洗浄液若しくは吸引液、鼻腔拭い液、鼻咽頭拭い液、鼻腔洗浄液、咽頭拭い液、経気管吸引液、気管支肺胞洗浄液、呼吸器サンプルを洗浄するために用いた溶出緩衝液などであってもよい。
[0030]1. M・ニューモニエのエピトープ及びM・ニューモニエのエピトープに結合する物質
[0031]M・ニューモニエ由来のタンパク質のエピトープを含んでいる単離された及び/又は精製されたポリペプチドを提供する。このようなポリペプチドは、本願ではまとめて「M・ニューモニエのポリペプチドエピトープ」と称する。特定の実施形態においては、M・ニューモニエ由来のrCARDSタンパク質(配列ID番号:1)及びrP1タンパク質(配列ID番号:7)のエピトープを含んでいる単離された及び/又は精製されたポリペプチドを提供する。例えば、rCARDSタンパク質のエピトープを含んでいるポリペプチドの配列は、配列ID番号:2?6であり、rP1タンパク質のエピトープを含んでいるポリペプチドの配列は、配列ID番号:8?10である。付加的なエピトープは、当業者に知られているエピトープ特定のための方法を用いるのみならず、その他のM・ニューモニエタンパク質に関する実施例において概説する手順を用いて特定され得る。…)

(甲1C-オ)「[0047] 2. Methods of Using Agents that Bind Epitopes of M. pneumoniae to Detect M. pneumoniae
[0048] Provided also are methods comprising the use of one or more antibodies, antibody fragments, or other agents specific for a polypeptide epitope of an M. pneumoniae to detect M. pneumoniae bacteria, e.g., that may have infected a subject. The antibodies, antibody fragments, or other agents may bind M. pneumoniae proteins in a sample prepared from lysed bacteria, or M. pneumoniae proteins present on M. pneumoniae bacteria.
[0049] In one embodiment, a method for detection of M. pneumoniae bacteria comprises the steps of providing a sample, preferably a respiratory sample, suspected of containing M. pneumoniae bacteria and/or proteins. A sample can be tested by any known methods in order to confirm the presence of M. pneumoniae bacteria and/or proteins in the sample. ・・・ By way of example a general immuno chromatographic test device that is able to detect M. pneumoniae bacteria and/or proteins may be used in order to confirm that the sample contains M. pneumoniae bacteria and/or proteins.
[0050] In certain embodiments, the sample may be a respiratory sample, such as a swab. The swab may be directly used in an assay method or device, or washed with an elution buffer and the eluate used in the assay method or device.
[0051] In embodiments, the sample is a throat swab, or is prepared therefrom. A sample may be prepared from a throat swab as follows. A throat swab is taken from a patient presenting with respiratory symptoms consistent with M. pneumoniae infection. The throat swab may be then placed in a buffer, for example, comprising a detergent such as Brij 58, Zwittergen 3-14 or cholate. Preferably, where a detergent is used, Zwittergen 3-14 is used. If appropriate, insoluble components may be removed from the sample, and the supernatant used as the test sample.
[0052] In certain embodiments, the sample may comprise M. pneumoniae proteins extracted from M. pneumoniae bacteria. Methods for bacterial cell lysis and subsequent protein extraction are well-known in the art.
[0053] Generally, the methods may include providing an antibody, antibody fragment or other agent specific for a polypeptide epitope of M. pneumoniae, wherein the antibody, antibody fragment or other agent binds to the epitope as present on the M. pneumoniae protein from which the polypeptide epitope was derived, if present in the sample being tested, to form complexes. In the event that the sample does not contain the epitope, no complex is formed.
・・・
[0055] The methods may further comprise contacting a sample potentially containing complexes with a second antibody, antibody fragment or other agent specific for a polypeptide epitope of M. pneumoniae. The second antibody, antibody fragment or other agent may be the same or different as the first antibody, antibody fragment or other agent specific for a polypeptide epitope of M. pneumoniae. The second antibody or antibody fragment or agent may be labeled for ease of detection, and the label can be any suitable label that is able to be detected. By way of example, the label may be a radiolabel, fluorescent label, colloidal label, enzymatic label, particulate label or molecule that is readily detectable either by its presence or activity.
[0056] The methods may further comprise detecting the presence or absence of the first antibody-M pneumoniae protein or bacteria-second antibody complexes, wherein the presence of such complexes indicates the presence of M. pneumoniae. In the detection step, the sample mixture can be tested by any known methods able to detect the complexes. ・・・ For example, the sample can be tested by a general immuno chromatographic test device.
[0057] In one embodiment, a method comprises: (a) contacting a sample with a first antibody, antibody fragment or agent specific for a polypeptide epitope of M. pneumoniae to form, if M. pneumoniae protein comprising the epitope or M. pneumoniae bacterium is present in the sample, a first complex comprising the first antibody, antibody fragment or other binding agent and M. pneumoniae protein comprising the epitope or M. pneumoniae bacterium; (b) contacting the sample with a second antibody, antibody fragment or agent specific for a polypeptide epitope of M. pneumoniae to form, if the sample comprises the first complex, a second complex comprising the first complex and a first antibody, antibody fragment or agent specific for a polypeptide epitope of M. pneumoniae; and (c) detecting whether the second complex is formed.
[0058] In certain embodiments, detection of a M pneumoniae protein is accomplished by one of the three following specific methods: (1) direct enzyme immunoassay (“EIA”); (2) Western blot; and (3) lateral flow.
[0059] For example, for the direct enzyme immunoassay, EIA plates may be coated with a first antibody, antibody fragment or other agent specific for a polypeptide epitope of M. pneumoniae and washed, then blocked and washed. A patient sample may be added to the plate, which is then incubated and washed. A second antibody, antibody fragment or other agent specific for a polypeptide epitope of M. pneumoniae that is conjugated to a reporter system may be then added, and the plate incubated and washed. Substrate for the reporter system may then be added, and substrate development allowed. The development may then be stopped and the degree of substrate development read on a plate reader or other suitable device. The presence of the polypeptide epitope of M. pneumoniae is indicated by signal development higher than reaction produced in the absence of the organism.
(当審訳:[0047]2. M・ニューモニエを検出するためのM・ニューモニエのエピトープに結合する物質を用いる方法
[0048]例えば、ある被験者に感染した可能性のあるM・ニューモニエ細菌を検出するためのM・ニューモニエのポリペプチドエピトープに特異的な1個以上の抗体、抗体断片、又はその他の物質の使用を含んでいる方法も提供する。これらの抗体、抗体断片、又はその他の物質は、溶解した細菌から調整されたサンプル中のM・ニューモニエタンパク質、又は肺炎マイコブラズマ細菌上に存在するM・ニューモニエタンパク質に結合し得る。
[0049]1つの実施形態において、M・ニューモニエ細菌の検出方法には、サンプル、好ましくはM・ニューモニエ細菌及び/又はタンパク質を含むことが疑われる呼吸器系のサンプルの供給段階が含まれる。サンプルは、そのサンプル中のM・ニューモニエ細菌及び/又はタンパク質の存在を確認するために、既知のあらゆる方法によって検査され得る。・・・例として、サンプルがM・ニューモニエ細菌及び/又はタンパク質を含むことを確認するために、M・ニューモニエ細菌及び/又はタンパク質が検出可能な一般的なイムノクロマトグラフィー検査デバイスを利用してもよい。
[0050]特定の実施形態においては、サンプルは、スワブのような呼吸器系のサンプルとなり得る。スワブは、測定方法又はデバイスにおいて直接使用でき、又は溶出緩衝液で洗浄し、その溶出液を測定方法又はデバイスにおいて使用することができる。
[0051]実施形態において、サンプルは咽頭スワブであるか、それから調整されたものである。サンプルは、以下のように咽頭スワブから調整され得る。咽頭スワブは、M・ニューモニエ感染に相応する呼吸器症状を示す患者から採取される。その後、咽頭スワブは、例えばBrij58、Zwittergen 3-14又はコール酸塩のような界面活性剤を含む緩衝液中に置くことができる。好ましくは、界面活性剤を使用する場合は、Zwittergen 3-14が用いられる。適切な場合には、不溶性成分はサンプルから除去でき、その上清が検査サンプルとして使用され得る。
[0052]特定の実施形態において、サンプルは、M・ニューモニエ細菌から抽出されたM・ニューモニエタンパク質を含み得る。細菌の細胞溶解及びそれに続くタンパク質抽出の方法は、当該技術分野では周知である。
[0053]一般的に、方法には、M・ニューモニエのポリペプチドエピトープに特異的な抗体、抗体断片又はその他の物質の供給が含まれ得る。それらの抗体、抗体断片又は物質は、そのポリペプチドエピトープが由来するM・ニューモニエタンパク質上に存在するエピトープに結合し、検査されるサンプル中にこのエピトープが存在する場合、複合体を形成する。サンプルにこのエピトープが含まれない場合は、複合体は形成されない。
・・・
[0055]方法には、さらに、潜在的に複合体を含むサンプルに、M・ニューモニエのポリペプチドエピトープに特異的な二次抗体、二次抗体断片又はその他の二次物質を接触させることが含まれ得る。二次抗体、二次抗体断片又はその他の二次物質は、M・ニューモニエのポリペプチドエピトープに特異的な第1の抗体、抗体断片又はその他の作用物質と同じもの又は異なるものとなり得る。第2の抗体又は抗体断片又は作用物質は、検出しやすいように標識を付してもよく、その標識は、検出可能なあらゆる適切な標識であり得る。例として、標識は、放射性標識、蛍光標識、コロイド標識、酵素標識、微粒子標識又はその存在若しくは活性のいずれかによって容易に検出可能な分子であり得る。
[0056]方法には、さらに、第1の抗体-M・ニューモニエタンパク質又は細菌-第2の抗体複合体の存在又は非存在を検出することが含まれ得る。ここで、そのような複合体の存在は、M・ニューモニエの存在を表す。検出段階において、サンプル混合物は、複合体を検出することができる既知のあらゆる方法によって検査され得る。…例えば、サンプルは、一般的なイムノクロマトグラフィー検査デバイスによって検査され得る。
[0057]1つの実施形態において、方法は、(a)サンプルとM・ニューモニエのポリペプチドエピトープに特異的な第1の抗体、抗体断片又は作用物質との接触であり、そのエピトープを含むM・ニューモニエタンパク質又はM・ニューモニエ細菌が当該サンプル中に存在する場合、第1の抗体、抗体断片又はその他の作用物質とそのエピトープを含むM・ニューモニエタンパク質又はM・ニューモニエ細菌から成る第1の複合体を形成する;(b)当該サンプルとM・ニューモニエのポリペプチドエピトープに特異的な第2の抗体、抗体断片又は作用物質との接触であり、当該サンプルが第1の複合体を含む場合、第1の複合体とM・ニューモニエのポリペプチドエピトープに特異的な第2の抗体、抗体断片又は作用物質から成る第2の複合体を形成する;そして(c)第2の複合体が形成されるかどうかの検出、を含む。
[0058]特定の実施形態において、M・ニューモニエタンパク質の検出は、以下の3種の特定の方法のいずれかによって達成される。(1)直接的な酵素免疫測定法(「EIA」)、(2)ウェスタン・ブロット法、及び(3)ラテラルフロー法。
[0059]例えば、直接的な酵素免疫測定法に関しては、M・ニューモニエのポリペプチドエピトープに特異的な第1の抗体、抗体断片又はその他の作用物質でEIAプレートの表面を覆い、洗浄後ブロッキングを行い、洗浄し得る。患者のサンプルをそのプレートに添加し、その後インキュベートし洗浄し得る。その後、レポーター・システムにコンジュゲートさせたM・ニューモニエのポリペプチドエピトープに特異的な二次抗体、二次抗体断片又はその他の二次物質を添加し、そのプレートをインキュベートし洗浄し得る。その後、レポーター・システムの基質を添加し、基質の反応を起こさせる。その後、その反応を停止させ、基質の反応の程度をプレート・リーダー又はその他の適切なデバイスで読み取り得る。M・ニューモニエのポリペプチドエピトープの存在は、その有機体の非存在下で生じた反応より高いシグナルの発生によって示される。)

(甲1C-カ)「[0061] For use in the methods described above, kits and devices for the practice of the above-described methods are also provided. Devices for practice of the methods include lateral flow devices (wherein the reagents employed in the reaction may be dried or immobilized onto a chromatographic support contained within the device), a test strip, or other support for practice of the methods.
[0062] A method incorporating lateral flow may be practiced as follows. A patient sample may be added to the sample pad of a lateral flow device. The sample pad or other component may contain an extractant such as the detergent Zwittergen 3-14. In the device, the sample moves into the conjugate pad where an antibody, antibody fragment or other agent specific for a polypeptide epitope of M. pneumoniae reacts with any protein comprising the polypeptide epitope of M. pneumoniae in the patient sample. The antibody, antibody fragment or other agent is conjugated to a reporter (for example, gold, latex, or other microparticle, or any other type of reporter system) in a dried format. The patient sample moves through the device. If the epitope is present in the sample, the polypeptide comprising it will be captured by the antibody, antibody fragment or other agent specific for a polypeptide epitope of M. pneumoniae localized on the membrane. Signal may be generated by the reporter on the conjugate antibody, antibody fragment or other agent, which indicates the presence of M. pneumoniae in the patient sample. In other embodiments, the interaction of the conjugate antibody may be accomplished in a liquid format, in which case the patient sample is added to the conjugate solution.
[0063] A kit for the practice of the above methods may include a support, reagents and wash and incubation buffers. Such kits and devices can contain any number or combination of reagents or components. The kits can comprise one or more of the above components in any number of separate containers, tubes, vials and the like or such components can be combined in various combinations in such containers. Kit components may be packaged for either manual or partially or wholly automated practice of the foregoing methods. Further, instructions for the use of a device or kit may be included with the device or kit. Such kits and devices may have a variety of uses, including, for example, diagnosis, therapy, and other applications.
[0064] By way of example, generally, an immunoassay device for determining the presence or amount of an analyte of interest in a sample includes a sample application member, which is in liquid communication with a conjugate pad, which is in liquid communication with a nitrocellulose test strip having a test result zone and a control zone. The immunoassay can also include a distal sink at the end opposite to the sample application pad to absorb any excess liquid after testing has run to completion.
[0065] The sample application pad is a porous pad able to absorb the sample to be tested and transfer the absorbed sample to the conjugate pad by capillary action. The conjugate pad includes one or more dried labeled molecules or reagents, such as antibodies, capable of specifically binding to the one or more analytes of interest forming a analyte-labeled reagent complex. The conjugate pad may also include one or more stabilizing compounds that are able to induce thermal stability and also stability as to conditions imposed by humidity and temperature. The conjugate pad is a porous pad able to absorb the transferred sample from the sample application pad and transfer the sample to the nitrocellulose strip by capillary action. The nitrocellulose strip is able to absorb the sample from the conjugate pad and transfer the sample by capillary action downstream to the test result zone and the control zone. The test result zone of the immunoassay device includes one or more immobilized molecules or reagents, such as antibodies or antibody fragments, capable of specifically binding to the one or more analytes of interest or any portion of the analyte- labeled reagent complex. The control zone of the immunoassay device may include one or more immobilized molecules or reagents, such as antibodies or antibody fragments, capable of specifically binding to the one or more labeled reagent. The immunoassay device may also comprise agents to prevent non-specific binding, as well as liquid reagents to aid in sample flow, pH control, control of non-specific binding, etc.
[0066] When a liquid test sample is applied to the sample application pad of the device, the sample travels through the sample application pad, the conjugate pad, and nitrocellulose strip by capillary action. When the sample travels through the conjugate pad, the sample solublizes the dried labeled molecule or reagent, and if the analyte of interest is present in the sample, the solublized labeled molecule or reagent binds the analyte of interest forming an analyte-labeled reagent complex, otherwise, if the analyte of interest is not present in the sample, no complex is formed. The analyte-labeled reagent complex in the case of a positive test, or the labeled reagent alone in the case of a negative test, then travel to the nitrocellulose strip and travel through and pass the test result zone and the control zone of the device. If the analyte of interest is present in the sample, the analyte-labeled reagent complex binds to the immobilized reagent of the test result zone forming a detectable line, and if the analyte of interest is not present in the sample, no analyte labeled reagent complex is formed and therefore no binding occurs at the test result zone. Whether or not the analyte of interest is present in the sample to form a complex, the labeled reagent binds to the immobilized reagent of the control zone forming a detectable line indicating that the test has run to completion. Any excess liquid sample, after the testing has run to completion, can be absorbed the distal sink of the device.
[0067] The analyte may be a protein or other component from M. pneumoniae or M. pneumoniae bacterium.
[0068] In one embodiment, a device may comprise a carrier upon which is disposed (a) a sample receiving zone comprising mobilizable labeled first antibodies, antibody fragments or agents specific for a polypeptide epitope of M. pneumoniae; and (b) a capture zone comprising immobilized second antibodies, antibody fragments or agents specific for a polypeptide epitope of M. pneumoniae. The first and second antibody, antibody fragment or agent specific for a polypeptide epitope of M. pneumoniae may be the same, or different.
[0069] In other embodiments, a device may comprise a carrier defining a flow path extending at least from a sample receiving zone to a capture zone, mobilizable labeled first antibodies, antibody fragments or agents specific for a polypeptide epitope of M. pneumoniae, and second antibodies, antibody fragments or agents specific for a polypeptide epitope of M. pneumoniae disposed along the flow path; wherein: a liquid sample received by the receiving zone migrates along the flow path mobilizing the labeled antibodies, antibody fragments or agents, and in the presence of M. pneumoniae bacteria or protein, the labeled and second antibodies, antibody fragments or agents cooperate to capture the antibodies, antibody fragments or agents in the capture zone.
[0070] The second antibodies, antibody fragments or agents may be disposed in the capture zone when the device is in the unused state.」
(当審訳:「[0061]上記の方法における使用のため、上記の方法の実施のためのキット及びデバイスもまた提供される。方法の実施のためのデバイスは、ラテラルフローデバイス(反応に用いられる試薬は、デバイス内に含まれているクロマトグラフィー担体上に乾燥又は固定化させ得る)、テストストリップ、又は方法の実施のための他の担体を包含する。
[0062]ラテラルフローを組み入れる方法は以下のとおり実施され得る。患者サンプルはラテラルフローデバイスのサンプルパッドに添加され得る。サンプルパッド又は他の構成要素は、界面活性剤Zwittergen3-14などの抽出剤を含有することができる。デバイス内において、患者サンプルはコンジュゲートパッドに移動し、そこでM・ニューモニエのポリペプチドエピトープに特異的な抗体、抗体断片、又は他の作用物質が、患者サンプル中のM・ニューモニエのポリペプチドエピトープを含んでいるあらゆるタンパク質と反応する。抗体、抗体断片、又は、他の作用物質は、乾燥形態でレポーター(例えば、金、ラテックス、若しくは他の微粒子、又は他の任意の種類のレポーターシステム)にコンジェゲーションされている。患者サンプルは本デバイス中を移動する。サンプル中にエピトープが存在する場合には、エピトープを含有しているポリペプチドは、メンブレン上に局在する、M・ニューモニエのポリペプチドエピトープに特異的な抗体、抗体断片、又は他の作用物質によって捕捉される。抗体、抗体断片、又は他の作用物質にコンジュゲートしたレポーターによってシグナルが発生し得、それは患者サンプル中にM・ニューモニエが存在することを示す。他の実施態様において、コンジュゲート抗体の相互作用は液体中で行うことができ、その場合、患者サンプルはコンジュゲート溶液に添加される。
[0063]上記の方法の実施のためのキットは、担体、試薬、並びに洗浄及びインキュベーション用緩衝液を包含し得る。かかるキット及びデバイスは任意の数又は組み合わせの試薬又は構成要素を含むことができる。キットは、任意の数の個別の容器、チューブ、バイアルなどの中に上記構成要素の1つ以上を含むようにしてもよく、又は、かかる容器を様々に組み合わせた中にかかる構成要素の組み合わせを含み得る。前述の方法を手動、又は部分的もしくは全面的に自動で実施するためのキットの構成要素を梱包してもよい。さらに、デバイス又はキットの使用のための説明書をデバイス又はキットと共に含んでいてもよい。かかるキット及びデバイスは、例えば診断、治療、及び他の活用を含む様々な用途があり得る。
[0064]例として、一般的に、サンプル中の目的の分析物の存在又は量を決定するためのイムノアッセイデバイスは、サンプル添加部材、サンプル添加部材と液体連通しているコンジュゲートパッド、試験結果部位及び対照部位を有し、コンジュゲートパッドと液体連通しているニトロセルロース・テストストリップを含む。イムノアッセイは、試験が完了した後に過剰な液体を吸収するために、サンプル添加パッドと反対側の端部に端部液だめを含むこともできる。
[0065]サンプル添加パッドは、試験されるサンプルを吸収し、吸収したサンプルを毛細管現象によってコンジュゲートパッドに移送することができる多孔質パッドである。コンジュゲートパッドは、1以上の目的分析物に特異的に結合して分析物-標識試薬複合体を形成することができる、1以上の乾燥化標識分子又は標識試薬(例えば抗体)を包含する。コンジュゲートパッドは、熱安定性、並びに湿度及び温度によって課される条件に対する安定性を誘導することが可能な1以上の安定化化合物を含んでもよい。コンジュゲートパッドは、サンプル添加パッドから移送されたサンプルを吸収し、毛細管現象によってニトロセルロースストリップにサンプルを移送することができる多孔質パッドである。ニトロセルロースストリップは、コンジュゲートパッドから移送されたサンプルを吸収し、毛細管現象によってサンプルを下流の試験結果部位及び対照部位まで移送することができる。イムノアッセイデバイスの試験結果部位は、1以上の目的分析物又は分析物-標識試薬複合体の任意の部分に特異的に結合することができる、例えば抗体又は抗体断片のような、1以上の固定化された分子又は試薬を包含する。イムノアッセイデバイスの対照部位は、1以上の標識試薬に特異的に結合することができる、例えば抗体又は抗体断片のような、1以上の固定化された分子又は試薬を包含し得る。イムノアッセイデバイスは、非特異的結合を防止するための作用物質、さらにはサンプルの流れ、pHの調整、非特異的結合の抑制などを補助するための液体試薬を含むこともできる。
[0066]液体試験サンプルを本デバイスのサンプル添加パッドに添加した場合、サンプルは毛細管現象によってサンプル添加パッド、コンジュゲートパッド、及びニトロセルロースストリップを通って移動する。サンプルがコンジュゲートパッドを通過するとき、サンプルは乾燥化標識分子又は標識試薬を溶解し、目的の分析物がサンプル中に存在する場合には、溶解された標識分子又は標識試薬が目的の分析物に結合し、分析物-標識試薬複合体を形成する。他方、目的の分析物がサンプル中に存在しない場合には、複合体は形成されない。陽性試験の場合には、分析物-標識試薬複合体が、そして陰性試験の場合は単独の標識試薬が、ニトロセルロースストリップに移動し、デバイスの試験結果部位及び対照部位を移動して通過する。サンプル中に目的の分析物が存在する場合、分析物-標識試薬複合体が試験結果部位の固定化試薬に結合して検出可能なラインを形成する。目的の分析物がサンプル中に存在しない場合、分析物-標識試薬複合体は形成されず、そのため試験結果部位において結合は起こらない。目的の分析物がサンプル中に存在して複合体を形成するか否かにかかわらず、標識試薬は対照部位の固定化試薬に結合し、試験が完了したことを示す検出可能なラインを形成する。過剰な液体サンプルは、試験が完了した後に、デバイスの端部液だめによって吸収することができる。
[0067]分析物は、M・ニューモニエ由来のタンパク質若しくは他の成分又はM・ニューモニエ細菌であり得る。
[0068]1つの実施態様において、デバイスは、(a)M・ニューモニエのポリペプチドエピトープに特異的な、移動可能に標識された第1の抗体、抗体断片、又は作用物質を含んでいるサンプル受容部位、及び、(b)M・ニューモニエのポリペプチドエピトープに特異的な第2の抗体、抗体断片、又は作用物質が固定されている捕捉部位、が配置されている担体を含み得る。M・ニューモニエのポリペプチドエピトープに特異的な第1及び第2の抗体、抗体断片、又は作用物質は同じものとすることも異なるものとすることもできる。
[0069]他の実施態様において、デバイスは、少なくともサンプル受容部位から捕捉部位に亘る流路を画定する担体を含み、M・ニューモニエのポリペプチドエピトープに特異的な、標識され移動可能な第1の抗体、抗体断片、又は作用物質と、M・ニューモニエのポリペプチドエピトープに特異的な第2の抗体、抗体断片、又は作用物質とを、流路に沿って配置することができる。受容部位で受容された液体サンプルは流路に沿って移動し、標識された抗体、抗体断片、又は作用物質を移動させ、M・ニューモニエ細菌又はタンパク質の存在下では、標識された抗体、抗体断片又は作用物質と第2の抗体、抗体断片、又は作用物質が協調して、抗体、抗体断片、又は作用物質を捕捉部位において捕捉する。
[0070]第2の抗体,抗体断片,又は作用物質は,デバイスが未使用状態にあるときには捕捉部位内に配置され得る。」)

(甲1C-キ)「EXEMPLIFICATION
・・・
[0078] Example 1: Identification of Epitopes in Recombinant CARDS
[0079] Dr. Joel Baseman and colleagues have described a toxin molecule produced by M. pneumoniae (Kannan et al, 2005, Inf. Immun. 73: 5 2828-34; Kannan and Baseman, 2006, PNAS 103: 6724-9). Detection of the toxin during infection might be an approach for diagnosis of the pathogen. ・・・
[0080] The sequence (SEQ ID NO: 1) of recombinant CARDS ("rCARDS") from M. pneumoniae is depicted in FIGURE 1. Rabbits were immunized and boosted with rCARDS protein using standard protocols. An array of overlapping peptides encompassing the rCARDS sequence was purchased. Each peptide contained 17 amino acids of the rCARDS sequence and overlapped each of its neighbor sequences by 10 amino acids. Each peptide was synthesized with a cysteine residue at its C-terminus which is used to covalently couple the peptide to commercially available microtiter plates. Peptides were bound to the microtiter plates in solvent. ・・・
[0081] Polyclonal anti-rCARDS rabbit antisera were subjected to a serial dilution series. A control antiserum raised against a second M. pneumoniae protein was included in the experiment. Each dilution was applied to the immobilized peptide and allowed to react. Plates were washed. Appropriate, commercially available, secondary anti-rabbit antibodies were pre-coupled to a reporter system, horseradish peroxidase, which was added in a fixed concentration and allowed to react. The plates were washed. The substrate for horseradish peroxidase was added and color development was noted. The reaction was terminated by addition of inorganic acid. The color produced was read using a microtiter plate reader. The sequences of peptides which allowed production of more color in dilution series of anti-rCARDS or anti-CARDS antibodies compared to control reaction indicated peptide epitopes. The regions of rCARDS so determined to be epitopes are indicated in italics in FIGURE 1.
[0082] Example 2: Synthesis and Evaluation of rCARDS Epitopes
[0083] Synthesis of Epitopes of rCARDS
[0084] The work in Example 1 identified epitopes in recombinant CARDS (rCARDS) using polyclonal anti-rCARDS rabbit antisera, which are potential sites for targeting antigen capture and detection of M. pneumoniae CARDS toxin.
[0085] Peptides encompassing the identified rCARDS epitopes were synthesized (FIGURE 2). ・・・
[0086] Purification of Antibodies against Epitopes of rCARDS
[0087] Rabbit IgG antibodies were enriched from the rabbit anti-rCARDS polyclonal antisera of Example 1 using standard techniques. A portion was set aside and used as the starting IgG pool. Five individual columns were prepared, each containing one of the five peptides described in FIGURE 3 linked to the solid phase through the terminal cysteine. Portions of the purified IgG antibody preparation are subjected to affinity purification on each of the five immobilized peptides using standard protocols. Twenty-five to fifty micrograms of each affinity purified antibody and starting IgG preparation were conjugated to the reporter enzyme, horseradish peroxidase. The remaining affinity purified antibodies and starting IgG were utilized in a non-modified form.
[0088] Antigen capture and detection
[0089] Solid phase antigen capture and detection was performed in plastic microtiter plates. ・・・
[0090] Purified anti-rCARDS IgG or affinity purified anti-peptide antibodies were absorbed to the solid phase using standard methods. In some experiments, a combination of affinity purified antibodies was immobilized on the solid phase. ・・・ Unreacted sites on the solid phase were blocked by incubation in the presence of an irrelevant protein. rCARDS protein was added to the solid phase in PBST containing irrelevant protein. A dilution series of rCARDS was simultaneously made to permit definition of the lowest detection limit of rC ARDS. In some experiments, similar dilution series of a second recombinant M. pneumoniae protein (rPl) was used to challenge the specificity of the assay. Incubation allowed antigen capture by immobilized antibody. Washing was employed to remove unreacted antigen. Affinity purified anti-peptide antibodies or starting IgG pool coupled to HRP were added in individual reactions. The conjugated antibodies were allowed to bind to captured rCARDS by incubation. Washing was used to remove excess conjugate. Conjugate binding was determined with a suitable reporter substrate. The reactions were terminated by addition of inorganic acid. Antigen capture and detection were quantitated using a microtiter plate reader. The data were analyzed and plots were made. In some cases, the background reactions resulting when antigen is not included were subtracted for ease of comparison.
[0091] FIGURE 4 shows the results of all possible combinations of antigen capture and detection using the starting IgG pool and affinity purified anti-peptide antibodies. All combinations were successful. The strongest reactions are observed using the IgG pool as both capture and detection reagents. Anti-peptide 2-HRP conjugate antibodies for detection is generally as effective as use of the IgG pool conjugate. In most cases, use of the same affinity purified antibody as capture and detection reagent is not as efficacious as use of heterologous reagents.
[0092] FIGURE 5 shows that antigen capture using the starting IgG pool, a combination of anti peptide (3, 4, and 6) antibodies and anti-peptide 4 antibodies were all equally efficacious. Anti-peptide 2 conjugate was used for detection.
[0093] Contaminating bacterial proteins produced during production of recombinant molecules are usually of concern. To exclude the possibility that the anti-rCARDS antisera shows reaction to such contaminants, the assay was challenged using a second recombinant protein, rPl (FIGURE 6). Antigen capture is effected using the starting IgG pool; a combination of anti-peptides 3, 4, and 5; or anti-peptide 4 antibodies. Anti-peptide 2 or the IgG pool conjugate were used for detection. All possible combinations showed utility. Significant reaction with rPl was not observed. The latter observation suggests assay specificity and indicates that antibody directed against contaminating bacterial proteins are not of concern.
[0094] Example 3: Identification of Epitopes in Recombinant Pl
[0095] M. pneumoniae Pl adhesion protein has been described in the literature. Diagnosis of M. pneumoniae by detection of Pl protein may be a viable alternative to existing assays. Anti-recombinant Pl polyclonal antisera and antibodies may be useful reagents for this approach.
[0096] The sequence (SEQ ID NO: 7) of recombinant Pl (“rPl”) fromM pneumoniae is depicted in FIGURE 7. Rabbits were immunized and boosted with rPl protein using standard protocols. Samples of mouse, monoclonal anti-authentic Pl protein were obtained. An array of overlapping peptides encompassing the rPl sequence was purchased. Each peptide contained 14 amino acids of the rPl sequence and overlapped each of its neighbor sequences by 10 amino acids. Each peptide was synthesized with a C (cysteine, cys) residue at its C-terminus which is used to covalently couple the peptide to commercially available microtiter plates. Peptides were bound to the microtiter plates in solvent. Unreacted sites were rendered inert using a cysteine solution, and plastic, protein binding sites were blocked with a solution of bovine serum albumen. Microtiter plates were washed using standard conditions.
[0097] Polyclonal anti-rPl rabbit antisera were subjected to a serial dilution series. A control antiserum raised against a second M. pneumoniae protein was included in the experiment. Samples of the monoclonal antibodies were also subjected to serial dilutions; a control was an irrelevant monoclonal antibody. Each dilution was applied to the immobilized peptide and allowed to react. Plates were washed. Appropriate, commercially available, secondary antibody (anti-rabbit or anti-mouse IgG) each coupled to a reporter system, horseradish peroxidase, was added in a fixed concentration and allowed to react. Plates were washed. Substrate for horseradish peroxidase was added and color development was noted. The reaction was terminated by addition of inorganic acid. Produced color was read using a microtiter plate reader. The sequence of peptides which allowed production of more color in dilution series of anti-rPl or anti-Pi antibodies compared to control reaction indicated peptide epitopes. Confirmation of relevant sequences was made in a second experiment; in this case, polyclonal anti-rPl antisera were pooled prior to construction of the dilution series. The data indicate the regions shown in FIGURE 7 are epitopes. The epitope sequences are as follows:
[0098] SEQ ID NO: 8: MAFRGSWVNRLGRVESVWDLKGVWAD
[0099] SEQ ID NO: 9: EHPNALAFQ VS VVE
[00100] SEQ ID NO: 10: STNSSPYLHLVKPKKVTQSDKLDDDLKNLLDPNQ
[00101] Example 4: Anti-rCARDS ICT Device
[00102] Immuno chromatography (ICT) may be more easily used in physician office laboratories than microtiter plate formats. Experiments were designed to examine the efficacy of this approach. The anti-rCARDS IgG pool was applied to two types of nitrocellulose differing in pore size at 3 concentrations. The nitrocellulose was incorporated into dipstick type devices consisting of a porous sample pad, nitrocellulose, and an absorbent pad at the distal end. Conjugates used in this work were colloidal gold coupled to the IgG pool or to antibodies that had affinity purified on SEQ ID NO: 2. In this experiment, the conjugates were maintained in a liquid state; conjugate solutions included a detergent and exogenous proteins to help prevent non-specific binding.
[00103] The strips were used in assays as follows. rCARDS was serially diluted in PBS containing BSA. rPl was used for a specificity challenge in a subsequent experiment. Liquid conjugate was added to the sample. Strips were placed into the conjugate/sample mixture; fluid flow was initiated and allowed to procede for 5-10 min. Next, strips were transferred to a PBST wash for 10 min. The assays were scored after 15 and 30 minutes against an arbitrary set of intensity standards (FIGURE 11). Note that a score of 3.0 is considered saturating. Scores of 0 indicate no reaction was seen. The data presented represent the average of two scores at 15 min. The limit of detection of rC ARDS was between 0.2 and 2.0 ng/ml. Little reaction was observed with rPl, even at high levels, suggesting that rCARDS detection is specific.
[00104] Example 5: Extraction of CARDS from cultured M. pneumoniae cells
[00105] Cultured, γ-irradiated cells were used since these organisms could be safely handled on the laboratory bench without risk of infection. Gamma- irradiation is believed to preserve protein native structure.
[00106] Suitable methods of extraction were examined by adjusting aliquots of γ- irradiated M. pneumoniae to desired concentrations of the potential extraction reagent. The aliquots were subjected to micro centrifugation at 10,000-15,000 xg to pellet material not solubilized by the extraction. The supernatant from each extraction was made suitable for electrophoresis under denaturing conditions. The pellet was dispersed in PBS using the same volume as the original aliquot and was then adjusted for denaturing gel electrophoresis. A control consisted of fractionation in the absence of extraction reagent (not-treated). The supernatants and pellets were subjected to electrophoresis and were transferred to nitrocellulose via Western blotting (FIGURE 12). Nitrocellulose membranes were reacted with rabbit polyclonal-anti-rCARDS antisera followed by goat-anti rabbit IgG-horse radish conjugate. Filters were then developed with a precipitating substrate for horse radish peroxidase. An increase in intensity of the band observed in the supernatant lane compared to its paired pellet and to the untreated supernatant indicated which extraction reagent was a good candidate. Of potential extraction reagents examined, the detergents Brij 58, Zwittergen 3-14 and cholate showed efficacy. A dose response with each of these 3 reagents was observed. Zwittergen 3-14 showed almost complete solubilization using 0.1 % or more detergent.
[00107] Antigen capture EIA was also used to determine the efficacy of Zwittergen extraction (FIGURE 13). An IgG preparation of an-rCARDS antisera was bound to plastic microtiter plate wells, γ- irradiated M. pneumoniae cells were adjusted to 1% Zwittergen followed by micro centrifugation. The supernatant was subjected to a five fold serial dilution series in a buffer containing 1% carrier protein (BSA), 1% Zwittergen 3-14 in PBS on the microtiter plate. The pellet after extraction was dispersed in the same buffer using the starting volume and was also serially diluted. Comparison of the curves indicates that the supernatant contained at least 25 fold more CARDS than the pellet. Additional plots reflect rCARDS spiked into various buffers serving as controls for the buffer formulations.
[00108] Example 6: Detection of M. pneumoniae in spiked specimens
[00109] Several throat and oral swabs were taken from one individual and placed into a buffer consisting of 1% Zwittergen 3-14 in PBS or in PBS alone, γ-irradiated M. pneumoniae were spiked into aliquots of these buffers and the spiked specimens were subjected to serial dilution. Negative control series were set up by spiking γ-irradiated M. salivarium, a commensal Mycoplasma found in human oral and respiratory specimens. Antigen capture EIA was performed using affinity purified anti-peptide 2 antibodies for capture and anti-rCARDS IgG-HRP conjugate antibodies for detection (FIGURE 14). A positive control employed rCARDS spiked into swab-conditioned 1% Zwittergen 3-14, PBS. Higher signal from M. pneumoniae is produced in the presence of detergent compared to swab conditioned PBS, confirming the efficacy of Zwittergen extraction (FIGURE 14). The lack of signal for M. salivarium indicates assay specificity.
[00110] Example 7: Detection of CARDS in Respiratory Specimens
[00111] Twenty-seven patient respiratory specimens were examined. These included transport media after elution of pharyngeal swabs, nasal aspirates, sputa and broncho alveolar lavage (BAL) specimens. Nine specimens were purported to have been taken from patients with M. pneumoniae infection. Four specimens were from patients stated to have Chlamydia pneumoniae infection; no pathogen was stated for the remaining specimens. These specimens were adjusted to 0.1% Zwittergen 3-14 and were subjected to antigen capture EIA for the presence of CARDS. One of the 9 M. pneumoniae specimens and 18 non-M pneumoniae specimens each gave an EIA signal above background (data not shown).
[00112] Overall, these data suggest Zwittergen extraction of CARDS and antigen capture detection is a means of specifically detecting the presence of M. pneumoniae in a specimen.
(当審訳:実施例
・・・
[0078]実施例1:組換えCARDS中のエピトープの特定
[0079]Joel Baseman博士及び共同研究者は、M・ニューモニエが産生する毒素分子について記述した(Kannanら、2005年、Inf.Immun.73:52828-34;Kannan及びBaseman、2006年、PNAS 103:6724-9)。感染期間での本毒素の検出は、病原体の診断のための手段となり得る。…
[0080]M・ニューモニエ由来の組換えCARDS(「rCARDS」)の配列(配列ID番号:1)が図1に示されている。標準的な手順を用い、rCARDSタンパク質でウサギを免疫及び追加免疫した。rCARDS配列を含む重複ペプチドのアレイを取得した。各ペプチドは、rCARDS配列の17個のアミノ酸を含んでおり、その近傍配列は、それぞれ10個のアミノ酸が重複していた。市販のマイクロタイター・プレートにペプチドを共有結合させるために用いるシステイン残基をC末端に有する各ペプチドを合成した。ペプチドを溶媒中でマイクロタイター・プレートに結合させた。…
[0081]ポリクローナル抗rCARDSウサギ抗血清の連続希釈系列を作製した。本試験には、二番目のM・ニューモニエタンパク質に対して作製した対照抗血清を含めた。各希釈液を固定化ペプチドに添加し、反応させた。プレートを洗浄した。適切な市販の二次抗ウサギ抗体にレポーター・システムである西洋ワサビペルオキシダーゼを事前に結合させ、それを一定の濃度で添加し、反応させた。そのプレートを洗浄した。西洋ワサビペルオキシダーゼの基質を添加し、発色を認めた。無機酸を添加して反応を終了させた。マイクロタイター・プレート・リーダーを用いて呈色を測定した。抗rCARDS抗体又は抗CARDS抗体の希釈系列において、対照の反応と比較しより強い呈色を示したペプチドの配列がペプチドのエピトープを示唆した。このようにしてエピトープとして決定されたrCARDSの領域が図1にイタリック体で示されている。
[0082]実施例2:rCARDSのエピトープの合成及び評価
[0083]rCARDSのエピトープの合成
[0084]実施例1の研究は、ポリクローナル抗rCARDSウサギ抗血清を用いて、M・ニューモニエCARDS毒素の対象となる抗原の捕捉および検出のための潜在的部位である組換えCARDS(rCARDS)中のエピトープを特定した。
[0085]特定されたrCARDSのエピトープを含むペプチドを合成した(図2)。…
[0086]rCARDSのエピトープに対する抗体の精製
[0087]標準的な技術を用いて、実施例1のウサギ抗rCARDSポリクローナル抗血清から、ウサギIgG抗体を濃縮した。一部を残し、出発IgGプールとして使用した。図3に記載されている5種のペプチドの1つをそれぞれ含み、末端のシステインを介して固相に結合させた5種の個別カラムを用意した。標準的な手順を用いて、精製IgG抗体調整品の一部をこの5種の固定化した各ペプチドのアフィニティー精製に掛ける。25?50μgのアフィニティー精製されたそれぞれの抗体及び出発IgG調整品をレポーター酵素である西洋ワサビペルオキシダーゼにコンジュゲートさせた。残りのアフィニティー精製抗体及び出発IgGは、非変性形で利用した。
[0088]抗原の捕捉及び検出
[0089]固相での抗原の捕捉及び検出をプラスチック製のマイクロタイター・プレートで実施した。…
[0090]精製抗rCARDS IgG又はアフィニティー精製抗ペプチド抗体は、標準的な方法を用いて固相に吸着させた。いくつかの試験では、アフィニティー精製抗体を組み合わせて固相に固定化した。…無関係なタンパク質の存在下で固相をインキュベートすることによって、固相上の非反応部位をブロックした。無関係なタンパク質を含むPBST中で、固相にrCARDSタンパク質を添加した。rCARDSの最低検出限界を決定できるように、rCARDSの希釈系列を同時に作製した。いくつかの試験では、測定系の特異性を検証するために、2番目の組換えM・ニューモニエタンパク質(rP1)の同様の希釈系列を用いた。インキュベートし、固定化抗体により抗原を捕捉した。反応しなかった抗原を除くために、洗浄を行った。西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)を結合させたアフィニティー精製抗ぺプチド抗体又は出発IgGプールを個々の反応に添加した。これらのコンジュゲート抗体は、インキュベーションによってrCARDSを捕捉するために結合することが可能であった。過剰のコンジュゲートを除くために、洗浄を行った。適切なレポーター基質を用いてコンジュゲートの結合を測定した。無機酸を添加して反応を終了させた。マイクロタイター・プレート・リーダーを用いて抗原の捕捉及び検出を定量した。データを分析し、図表を作成した。場合によっては、抗原が含まれていないときに発生するバックグラウンドの反応は、比較を容易にするために、差し引かれた。
[0091]図4は、出発IgGプールとアフィニティー精製抗ペプチド抗体を用いた抗原の捕捉及び検出のための可能なすべての組み合わせの結果を示している。すべての組み合わせが成功した。捕捉及び検出の試薬の両方にIgGプールを使用した場合、最強の反応が観察されている。検出のための.抗ペプチド2-HRPコンジュゲート抗体は、全体的にIgGプールコンジュゲート体の使用と同程度に有効である。ほとんどの場合において、捕捉試薬と検出試薬として同じアフィニティー精製抗体を使用した場合は、異種の試薬を使用した場合ほど有効ではない。
[0092]図5は、出発IgGプール、抗ペプチド(3、4及び6)抗体の組み合わせ及び抗ペプチド4抗体を用いた抗原の捕捉が、すべて同等に有効であったことを示している。抗ペプチド2コンジュゲートが検出用に用いられた。
[0093]通常、組換え分子の生産の間に生ずる夾雑細菌タンパク質が懸念される。抗rCARDS抗血清がこのような夾雑物に対し反応を示す可能性を排除するために、2番目の組換えタンパク質のrP1を用いて測定系を検証した(図6)。抗原の捕捉は、出発IgGプール、抗ペプチド3、4及び5抗体の組み合わせ、又は抗ペプチド4抗体の使用によって達成されている。抗ペプチド2又はIgGプールコンジュゲートが検出用に用いられた。可能なすべての組み合わせは、有用性を示した。rP1との有意な反応は、観察されなかった。後者の観察は測定系の特異性を示唆しており、夾雑している細菌タンパク質に対する抗体の懸念はないことを示している。
[0094]実施例3:組換えP1中のエピトープの特定
[0095]M・ニューモニエP1接着タンパク質は、文献に記載されている。P1タンパク質の検出によるM・ニューモニエの診断は、既存の測定法との実行可能な代替法であり得る。抗組換えP1ポリクローナル抗血清及び抗体は、この手法のための有益な試薬であり得る。
[0096]M・ニューモニエ由来の組換えP1(「rP1」)の配列(配列ID番号:7)が図7に示されている。標準的な手順を用い、rP1タンパク質でウサギを免疫及び追加免疫した。マウスのモノクローナル抗真正P1タンパク質抗体サンプルを取得した。rP1配列を含む重複ペプチドのアレイを取得した。各ペプチドは、rP1配列の14個のアミノ酸を含んでおり、その近傍配列は、それぞれ10個のアミノ酸が重複していた。市販のマイクロタイター・プレートにペプチドを共有結合させるために用いるC(システイン、cys)残基をC末端に有する各ペプチドを合成した。ペプチドを溶媒中でマイクロタイター・プレートに結合させた。システイン溶液を用いて非結合部位を不活化し、ウシ血清アルブミン溶液を用いてプラスチックのタンパク質結合部位をブロックした。マイクロタイター・プレートを標準的な条件を用いて洗浄した。
[0097]ポリクローナル抗rP1ウサギ抗血清の連続希釈系列を作製した。本試験には、二番目のM・ニューモニエタンパク質に対して作製した対照抗血清を含めた。モノクローナル抗体のサンプルも連続希釈した。対照は無関係のモノクローナル抗体であった。各希釈液を固定化ペプチドに添加し、反応させた。プレートを洗浄した。適切な市販の二次抗体(抗ウサギ又は抗マウスIgG)にそれぞれレポーター・システムである西洋ワサビペルオキシダーゼを結合させ、それを一定の濃度で添加し、反応させた。プレートを洗浄した。西洋ワサビペルオキシダーゼの基質を添加し、発色を認めた。無機酸を添加して反応を終了させた。マイクロタイター・プレート・リーダーを用いて呈色を測定した。抗rP1抗体又は抗P1抗体の希釈系列において、対照の反応と比較しより強い呈色を示したペプチドの配列がペプチドのエピトープを示唆した。関連する配列の確認は、2番目の試験で行った。この場合、希釈系列の作製に先立ち、ポリクローナル抗rP1抗血清がプールされた。データは、図7に示される領域がエピトープであることを示している。エピトープ配列は、以下の通りである。
[0098]配列ID番号:8:MAFRGSWVNRLGRVESVWDLKGVWAD
[0099]配列ID番号:9:EHPNALAFQVSVVE
[00100]配列ID番号:10:STNSSPYLHLVKPKKVTQSDKLDDDLKNLLDPNQ
[00101]実施例4:抗rCARDS ICTデバイス
[00102]イムノクロマトグラフィー(ICT)は、診療検査室ではマイクロタイター・プレート形式より容易に使用され得る。この手法の有効性を検討するために試験を計画した。抗rCARDS IgGプールを細孔の大きさの異なる2種類のニトロセルロースに3種類の濃度で添加した。このニトロセルロースを、多孔質サンプルパッド、ニトロセルロース、及び遠位端の吸収パッドから成るディップスティック型のデバイスに組み入れた。この研究に使用したコンジュゲートは、IgGプール又は配列ID番号:2でアフィニティー精製した抗体に結合した金コロイドであった。本試験では、コンジュゲートは溶液状態;非特異的反応を防ぐための界面活性剤及び外来性タンパク質を含むコンジュゲート溶液で維持した。
[00103]ストリップは、以下の通り、測定に使用した。rCARDSは、BSAを含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に連続希釈した。rP1は、その後の試験における特異性の検証のために使用した。液体のコンジュゲートをこのサンプルに添加した。ストリップは、コンジュゲート/サンプル混合液中に置き、液体流動を開始し、5?10分間継続した。次に、ストリップは、10分間のPBSTによる洗浄に移した。測定は、15分及び30分後に任意の一組の強度標準に対してスコア化された(図11)。スコア3.0が飽和状態と見なされることに留意すること。スコア0は、反応が認められなかったことを示す。表示されているデータは、15分での2回のスコアの平均値を示している。rCARDSの検出限界は、0.2?2.0ng/mlの間であった。rP1に対しては、高濃度であってもほとんど反応が観察されず、これはrCARDSの検出が特異的であることを示唆している。
[00104]実施例5:培養M・ニューモニエ感染細胞からのCARDSの抽出
[00105]γ線照射した培養細胞は、感染の危険性無しに実験台上で思慮深く取り扱うことができることから、このような有機体を使用した。γ線照射は、タンパク質の天然構造を保持すると考えられている。
[00106]γ線照射したM・ニューモニエの一定分量を可能性のある抽出試薬の望ましい濃度に適合させることによって、適切な抽出方法を検討した。抽出によって可溶化されなかった物質を沈殿させるために、一定分量を10、000?15、000xgで微量遠心した。各抽出から、変性条件での電気泳動に適した上清を作製した。沈殿は、最初の一定分量と同体積のPBSに分散させ、その後、変性条件のゲル電気泳動用に調整した。対照は、抽出試薬非存在下(未処理)での分画とした。上清及び沈殿物を電気泳動し、ニトロセルロースに転写させてウェスタン・ブロットを実施した(図12)。ニトロセルロース膜をウサギポリクローナル抗rCARDS抗血清と反応させた後、ヤギ抗ウサギIgG-西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲートと反応させた。その後、西洋ワサビペルオキシダーゼに対する沈降性基質でフィルターを発色させた。対となる沈殿物及び未処理上清と比較した場合の上清レーンに認められるバンドの強度の増加は、どの抽出試薬が良好な候補であるかを示した。検討した可能性のある抽出試薬の内、界面活性剤Brij58、Zwittergen 3-14及びコール酸塩が有効性を示した。これら3種類の各試薬での用量反応性が確認された。Zwittergen 3-14は、0.1%以上の界面活性剤の使用でほとんど完全な可溶化を示した。
[00107]Zwittergen抽出の有効性を判断するために、抗原捕捉EIAも用いられた(図13)。抗rCARDS抗血清のIgG調整品をプラスチック製のマイクロタイター・プレートのウェルに結合させた。γ照射したM・ニューモニエ感染細胞を1%のZwittergenに合わせて調整した後、微量遠心した。PBS中に1%の担体タンパク質(BSA)、1%のZwittergen 3-14を含む緩衝液を用い、マイクロタイター・プレート上で、上清の5段階の連続希釈系列を作製した。抽出後の沈殿は、出発時の体積の同一緩衝液に分散させ、同様に連続的に希釈した。反応曲線の比較により、上清は、沈殿より少なくとも25倍多くCARDSを含むことが示された。付加的なグラフは、緩衝液配合の対照としての役割を果たす様々な緩衝液に加えたrCARDSを示している。
[00108]実施例6:検体中に加えられたM・ニューモニエの検出
[00109]いくつかの咽頭スワブ及び口腔スワブを一人の個人から採取し、1%のZwittergen 3-14含有PBS緩衝液又はPBS単独緩衝液に入れた。γ線照射したM・ニューモニエを一定分量のこれらの緩衝液に加え、この添加検体を連続希釈した。陰性対照は、ヒトの口腔及び呼吸器検体に見られる片利共生マイコプラズマであるマイコプラズマ・サリバリウム(M.salivarium)をγ照射して加えることによって設定した。抗原捕捉EIAは、捕捉用にアフィニティー精製抗ペプチド2抗体を用い、検出用に抗rCARDS IgG-HRPコンジュゲート抗体を用いて実施した(図14)。陽性対照には、1%のZwittergen 3-14含有PBSで調整したスワブに加えられたrCARDSを用いた。PBSで調整したスワブと比較し、M・ニューモニエ由来のより強いシグナルが界面活性剤の存在下で生じており、これは、Zwittergen抽出の有効性を裏付けている(図14)。マイコプラズマ・サリバリウムに対するシグナルはなく、これは測定系の特異性を示している。
[00110]実施例7:呼吸器系検体中のCARDSの検出
[00111]27名の患者の呼吸器系検体を試験した。これらには、咽頭スワブの溶出後の移送溶媒、鼻吸引物、唾液及び気管支肺胞洗浄(BAL)検体が含まれた。9検体は、M・ニューモニエ感染患者からの採取とされていた。4検体は肺炎クラミジア(Chlamydia pneumoniae)感染のあることが言明された患者由来であり、残りの検体については病原体のないことが言明されていた。これらの検体は0.1%のZwittergen 3-14に調整し、CARDSの存在に関して抗原捕捉EIAを行った。M・ニューモニエ感染の9検体の内の1検体及び非M・ニューモニエ感染の18検体が、それぞれバックグラウンドを超えるEIAシグナルを示した(データは示されていない)。
[00112]全体として、これらのデータは、CARDSのZwittergen抽出及び抗原の捕捉検出が検体中のM・ニューモニエの存在を特異的に検出する手段であることを示唆している。)

(甲1C-キ)「Claimed are:
1. An isolated agent that specifically binds an epitope from a M. pneumoniae protein.
2. The isolated agent of claim 1, wherein the agent is an antibody.
3. The isolated agent of claim 1, wherein the agent is an antibody fragment.
4. The isolated agent of any of claims 1, 2 or 3, wherein the M. pneumoniae protein is CARDS.
5. The isolated agent of any of claims 1, 2 or 3, wherein the M. pneumoniae protein is P1.
6. The isolated agent of claim 4, wherein the epitopes comprises any of SEQ ID NOs: 2, 3, 4, 5, or 6.
7. The isolated agent of claim 5, wherein the epitopes comprises any of SEQ ID NOs: 8, 9 or 10.
8. A method for detecting the presence of M. pneumoniae protein or bacterium in a sample, comprising contacting at least one isolated agent of any one of claims 1 through 7 with a sample, and detecting a complex between the at least one isolated agent of any one of claims 1 through 7 and the M. pneumoniae protein or bacterium.
9. The method of claim 8, wherein the method further comprises extracting M. pneumoniae protein from the sample.
10. A device, comprising a porous test strip comprising: at least one zone comprising an agent of any one of claims 1 through 7.
11. The device of claim 10, wherein one zone comprises a mobilizable agent of any one of claims 1 through 7 and another zone comprises an immobilized agent of any one of claims 1 through 7.
12. The device of claim 10, wherein the device is a lateral flow device.
13. The device of claim 10, wherein the device is an opposable-element, detachable- element or multiple component chromatographic test device.」
(当審訳「特許請求の範囲
1.M・ニューモニエタンパク質由来のエピトープに特異的に結合する単離された作用物質。
2.前記作用物質が抗体である、請求項1に記載の単離された作用物質。
3.前記作用物質が抗体断片である、請求項1に記載の単離された作用物質。
4.前記M・ニューモニエタンパク質がCARDSである、請求項1、2、又は3のいずれか一項に記載の単離された作用物質。
5.前記M・ニューモニエタンパク質がP1である、請求項1、2、又は3のいずれか一項に記載の単離された作用物質。
6.前記エピトープが配列番号2、3、4、5、又は6のいずれかを含む、請求項4に記載の単離された作用物質。
7.前記エピトープが配列番号8、9、又は10のいずれかを含む、請求項5に記載の単離された作用物質。
8.サンプル中のM・ニューモニエタンパク質又は細菌の存在を検出するための方法であって、請求項1?7のいずれか一項に記載の少なくとも1つの単離された作用物質とサンプルを接触させること、及び前記M・ニューモニエタンパク質又は細菌と請求項1?7のいずれか一項に記載の前記少なくとも1つの単離された作用物質との間の複合体を検出することを含む、方法。
9.前記方法が、前記サンプルからM・ニューモニエタンパク質を抽出することをさらに含む、請求項8に記載の方法。
10.請求項1?7のいずれか一項に記載の作用物質を含む少なくとも1つの部位を包含する多孔質テストストリップを含む、デバイス。
11.1つの部位が請求項1?7のいずれか一項に記載の移動可能な作用物質を含み、別の部位が請求項1?7のいずれか一項に記載の固定された作用物質を含む、請求項10に記載のデバイス。
12.前記デバイスがラテラルフローデバイスである、請求項10に記載のデバイス。
13.前記デバイスが対向可能エレメント、取外し可能エレメント、又はマルチコンポーネントクロマトグラフィー試験デバイスである、請求項10に記載のデバイス。)

(甲1C-キ) FIGURE 3




(甲1C-ク) FIGURE 11




(2)甲1Cに記載された発明

甲1Cに記載された具体的なイムノクロマトグラフィー(ICT)デバイスについての唯一の実施例である実施例4の記載を基に、甲1Cに記載された発明を認定する。

ここで、甲1Cの実施例4([00102])の「抗rCARDS IgGプール」は、実施例2([0087])で作成した「ウサギ抗rCARDSポリクローナル抗血清から、ウサギIgG抗体を濃縮した」ものの一部であると認められる。

そうすると、甲1Cには、

「 抗rCARDS イムノクロマトグラフィーデバイスであって、
多孔質サンプルパッド、ニトロセルロース、及び遠位端の吸収パッドから成るディップスティック型のデバイスと、
コンジュゲート溶液と、を含み、
ニトロセルロースには、M・ニューモニエ由来の組換えCARDS(「rCARDS」)タンパク質でウサギを免疫及び追加免疫して得たウサギ抗rCARDSポリクローナル抗血清から、ウサギIgG抗体を濃縮して得た抗rCARDS IgGプールが添加してあり、
コンジュゲート溶液は、コンジュゲート並びに非特異的反応を防ぐための界面活性剤及び外来性タンパク質を含み、
コンジュゲートは、IgGプールを配列ID番号:2のペプチドでアフィニティー精製した抗体に結合した金コロイドであり、
コンジュゲート溶液をサンプルに添加し、ストリップをコンジュゲート/サンプル混合液中に置き、液体流動を開始させて試験するものであり、
rCARDSの検出限界は、0.2?2.0ng/mlの間であり、
rP1に対しては、高濃度であってもほとんど反応が観察されない、
抗rCARDS イムノクロマトグラフィーデバイス。

配列ID番号:2・・・VEPGHAHHPAGRVVETTRINEPEMHNPHYQELQTQA」

の発明(以下「甲1C発明」という。)が記載されているものと認められる。

(3)当審の判断

(3-1)特許法第29条第1項第3号について

ア 本件特許発明1について

(ア)本件特許発明1と甲1C発明とを対比する。
a 甲1C発明の「rCARDS」はM・ニューモニエ由来のものであるから、本件特許発明1の「マイコプラズマ・ニューモニエ由来のP1タンパク質抗原」及び「マイコプラズマ・ニューモニエ抗原」のそれぞれと、「マイコプラズマ・ニューモニエ由来の抗原」の点で共通する。

b 甲1C発明の「抗rCARDS イムノクロマトグラフィーデバイス」と、本件特許発明1の「マイコプラズマ・ニューモニエ感染検出用のイムノクロマトグラフィー試験デバイス」とは、「マイコプラズマ・ニューモニエ由来の抗原検出用のイムノクロマトグラフィー試験デバイス」の点で共通する。

c 甲1C発明の「ニトロセルロース」は、本件特許発明1の「膜担体」に相当する。

d 甲1C発明の「ニトロセルロース」に「添加してあ」る「抗rCARDS IgGプール」と、本件特許発明1の「第一のモノクローナル抗体」とは、「捕捉抗体」の点で共通する。

e 甲1C発明の「抗rCARDS IgGプールが添加してあ」る「ニトロセルロース」の部分は、本件特許発明1の「検出部位」に相当する。

f 甲1C発明の「コンジュゲート」を構成する「IgGプールを配列ID番号:2のペプチドでアフィニティー精製した抗体」と、本件特許発明1の「第二のモノクローナル抗体」とは、「検出抗体」の点で共通する。

g 甲1C発明の「金コロイド」は、本件特許発明1の「標識物質」に相当する。

h 甲1C発明の「サンプル」は、本件特許発明1の「検体」に相当する。

i 甲1C発明において、「コンジュゲート溶液をサンプルに添加し」、「コンジュゲート/サンプル混合液」を作成する部分は、本件特許発明1の「該検体であって、濃縮処理物を除く該検体中にマイコプラズマ・ニューモニエ抗原が存在する場合に、該マイコプラズマ・ニューモニエ抗原と該標識物質で標識された該第二のモノクローナル抗体とを標識担持部材において結合させて、複合体を形成させる手段」と、「検体中にマイコプラズマ・ニューモニエ由来の抗原が存在する場合に、該マイコプラズマ・ニューモニエ由来の抗原と該標識物質で標識された該検出抗体とを結合させて、複合体を形成させる手段」の点で共通する。

j 甲1C発明が、本件特許発明1の「該複合体を、該膜担体を介して展開させ、該検出部位において固定された該第一のモノクローナル抗体と結合させ、集積させることで発色させる手段」と、「該複合体を、該膜担体を介して展開させ、該検出部位において固定された該捕捉抗体と結合させ、集積させることで発色させる手段」の点で共通する構成を備えていることは明らかである。

(イ)そうすると、本件特許発明1と甲1C発明とは、

「 イムノクロマトグラフィー試験デバイスにおける抗体として、マイコプラズマ・ニューモニエ由来の抗原に対して特異的な抗体を含む、検体からマイコプラズマ・ニューモニエ由来の抗原検出用のイムノクロマトグラフィー試験デバイスであって、
捕捉抗体および捕捉抗体とは異なる検出抗体、ならびに膜担体を備え、
該捕捉抗体が、該膜担体に固定されて検出部位を構成し、
該検出抗体が、標識物質で標識されており、かつ該検出部位とは離れた位置に配置され、
該検体中にマイコプラズマ・ニューモニエ由来の抗原が存在する場合に、該マイコプラズマ・ニューモニエ由来の抗原と該標識物質で標識された該検出抗体とを結合させて、複合体を形成させる手段と、
該複合体を、該膜担体を介して展開させ、該検出部位において固定された該捕捉抗体と結合させ、集積させることで発色させる手段と、を有する、
マイコプラズマ・ニューモニエ由来の抗原検出用のイムノクロマトグラフィー試験デバイス。」

の発明である点において一致し、次の4点において相違する。

(相違点1)
マイコプラズマ・ニューモニエ由来の抗原検出用のイムノクロマトグラフィー試験デバイスが、本件特許発明1においては、「マイコプラズマ・ニューモニエ感染検出用」であるのに対し、甲1C発明においては、「M・ニューモニエ由来の」「rCARDS」を検出するものの、「マイコプラズマ・ニューモニエ感染検出用」であることは特定されていない点。

(相違点2)
捕捉抗体及び検出抗体が、本件特許発明1においては、「マイコプラズマ・ニューモニエ由来のP1タンパク質抗原に対して特異的な」「第一のモノクローナル抗体および第一のモノクローナル抗体とは異なる第二のモノクローナル抗体」であるのに対し、甲1発明においては、「M・ニューモニエ由来の組換えCARDS(「rCARDS」)タンパク質でウサギを免疫及び追加免疫して得たウサギ抗rCARDSポリクローナル抗血清から、ウサギIgG抗体を濃縮して得た抗rCARDS IgGプール」及び「IgGプールを配列ID番号:2のペプチドでアフィニティー精製した抗体」であり、「rP1に対しては、高濃度であってもほとんど反応が観察されない」ものである点。

(相違点3)
検出抗体の配置に関して、本件特許発明1においては、「検出部位とは離れた位置」であって「標識担持部材」に「膜担体中を移動可能に配置され」ているのに対し、甲1C発明においては、「コンジュゲート溶液」に含まれている点。

(相違点4)
検体に関して、本件特許発明1においては、「濃縮処理物を除く」ことが特定されているのに対し、甲1C発明においては、「rCARDSの検出限界は、0.2?2.0ng/mlの間であ」るものの、濃縮処理物を除くことは特定されていない点。

(ウ)少なくとも上記相違点2は、実質的な相違点であるから、本件特許発明1は甲1C発明と同一ではない。
よって、本件特許発明1は甲1Cに記載された発明ではない。

(エ)甲1Cのその他の実施例

上記では、甲1Cの実施例4の記載を基に認定した発明に対する判断を示したが、念のため、本件特許発明1に関連する他の実施例についても検討しておく。

a 実施例3について

甲1CにおけるP1タンパク質に対する抗体に関する具体的な記載は、実施例3のみであるが、実施例3における抗原の検出(エピトープの特定)は、P1タンパク質(ペプチド)のサンドイッチ複合体を形成するものとは異なり、市販の二次抗体である抗ウサギ又は抗マウス抗体を用いてP1タンパク質(ペプチド)に結合したマウスのモノクローナル抗真性P1タンパク質抗体を検出する方法によるものである。したがって、この実施例の記載から、サンドイッチ複合体を形成可能なモノクローナル抗体を知ることはできない。
また、甲1Cには、P1タンパク質に対するモノクローナル抗体として、モノクローナル抗体H136E7(【0012】)とマウスのモノクローナル抗真正P1タンパク質抗体(【0096】)に関する記載があるが、P1タンパク質に対する具体的なモノクローナル抗体は、H136E7が記載されているにとどまり、マウスのモノクローナル抗真正P1タンパク質抗体については、その当該モノクローナル抗体を生産する細胞株も、モノクローナル抗体のアミノ酸配列等の情報も、H136E7とのサンドイッチ複合体の形成の有無に関する手掛かりとなる情報も記載されていない。このような甲1Cの記載に基づいて、ラテラルフローデバイスを作るためには、モノクローナル抗体として一つはH136E7を用いるとしても、もう一つ、H136E7とサンドイッチ複合体を形成可能な別のモノクローナル抗体を用いる必要があるが、甲1Cには、そのようなモノクローナル抗体の構造について手掛かりとなる記載がなく、何らかの方法でモノクローナル抗体を入手し、それらのモノクローナル抗体が、H136E7とサンドイッチ複合体を形成可能であるかを調べ、試行錯誤によって、H136E7と組み合わせて患者サンプル中のマイコプラズマ・ニューモニエを検出するラテラルフローデバイスを構成できるモノクローナル抗体を見つけ出す必要がある。
以上を踏まえれば、たとえ様々なモノクローナル抗体を得る技術自体は周知技術であるとしても、抗P1タンパク質モノクローナル抗体を組み合わせてP1タンパク質のサンドイッチ複合体を形成するラテラルフローデバイスは、甲1Cの記載及び本件特許の出願時の技術常識から、直ちに作ることができるものとはいえない。したがって、甲1Cに抗P1タンパク質モノクローナル抗体を組み合わせてP1タンパク質のサンドイッチ複合体を形成するラテラルフローデバイスが記載されている(あるいは、記載されているに等しい)ということはできない。

b 実施例7について

患者サンプルからの患者サンプル中のマイコプラズマ・ニューモニエの検出については、甲1Cの実施例7に記載があるが、この方法は、CARDSを検出抗原とした抗原捕捉EIAに基づくものであって、P1タンパク質をサンドイッチ複合体の形成に基づいて検出するデバイスとは、抗原も検出手法も異なる。それだけではなく、以下のように、検体から感染が検出されているかどうかも定かではない。
すなわち、甲1Cの実施例7では、患者からの検体で試験したところ、M・ニューモニエ感染の9検体内の1検体と、非M・ニューモニエ感染の18検体が、それぞれバックグラウンドを超えるEIAシグナルを示したとの記載がある。ここで、甲1Cには、抗原捕捉EIAとのみ記載されており、具体的な検出系については記載されていないが、仮に、通常のサンドイッチ複合体の形成に基づく検出系であるとすると、抗原の存在によりシグナルが増大するので、実施例7の試験結果は、感染・非感染と、シグナルの増大とが正しく対応していないことになる。
この点に関し、競合法であれば、サンプル中の抗原が多くなるとシグナルが小さくなる検出法であるから、非M・ニューモニエ感染の18検体では抗原が存在しないためシグナルが大きくなり、M・ニューモニエ感染の9検体では抗原が多いためシグナルが小さくなることが予測されるところ、実施例7の記載は、これとほぼ一致しており、したがって、実施例7は、感染・非感染を検出できたことを示すものとして解釈すべきとする見方もあり得るかもしれない。
しかし、仮に、実施例7の試験が競合法によるものであるとすると、競合法は、標識抗体を用いるサンドイッチ法などの標識抗体を用いる検出方法とは異なり、標識抗原を用いる必要があるが、甲1Cには、標識抗原を製造したことや、標識抗原を入手したことについての記載が全くない。そして、そもそも、甲1Cには、実施例7がどのような検出系により検出を行ったのかについても記載されていない。したがって、試験結果との整合性のみから、競合法に基づくと断定することはできない。
以上の点からみて、甲1Cの実施例7の記載は、患者サンプル(臨床検体)からのマイコプラズマ・ニューモニエの検出が可能であったことを示すものとはいえない。
かかる観点からも、甲1Cに本件特許に係る発明が記載されている(あるいは、記載されているに等しい)ということはできない。

イ 本件特許発明2ないし6について

本件特許発明2ないし6は、本件特許発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件特許発明1と同様に甲1Cに記載された発明ではない。

ウ 本件特許発明7について

本件特許発明7は、本件特許発明1を使用したマイコプラズマ・ニューモニエの感染を検出する方法の発明に相当するものであるところ、本件特許発明1が甲1Cに記載された発明ではないことから、本件特許発明7は甲1Cに記載された発明ではない。

エ 本件特許発明8について

本件特許発明8は、本件特許発明7の発明特定事項を全て含むものであるから、本件特許発明7と同様に甲1Cに記載された発明ではない。

オ 申立人Cの主張について

申立人Cは、甲1Cの[0012]にポリクローナル抗rP1ウサギ抗血清及びモノクローナル抗体H136E7が記載されており、[0061]及び[0062]にM・ニューモニエのポリペプチドエピトープに特異的な抗体を用いたラテラルフローデバイスにより患者サンプルを試験する一般的な記載があることから、甲1Cには、マイコプラズマ・ニューモニエ由来のP1タンパク質抗原に対して特異的な抗体を含む、マイコプラズマ・ニューモニエ感染検出用のイムノクロマトグラフィー試験デバイスが記載されている旨主張している。
しかしながら、甲1Cには、ポリクローナル抗rP1ウサギ抗血清及びモノクローナル抗体H136E7を捕捉抗体及び検出抗体として用いたイムノクロマトグラフィー試験デバイスに関する具体的な記載は見当たらない。
そして、二種の抗体を捕捉抗体及び検出抗体として用いさえすれば、イムノクロマトグラフィーにおいて検出可能なサンドイッチ複合体を形成できると結論付けることはできないものであるところ、甲1Cには、P1タンパク質抗原に対して特異的な抗体を用いたサンドイッチ複合体の形成の有無に関する手掛かりとなる情報も記載されていない。
そうすると、甲1Cに、マイコプラズマ・ニューモニエ由来のP1タンパク質抗原に対して特異的な抗体を含む、マイコプラズマ・ニューモニエ感染検出用のイムノクロマトグラフィー試験デバイスが記載されているということはできない。

(3-2)特許法第29条第2項について

下記の2において、他の証拠に基づく特許法第29条第2項についての判断を述べるが、ここで、本件特許に係る発明が、上記甲1C発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるかについて検討する。

ア 本件特許発明1について

(ア)事案に鑑み、上記相違点2について検討する。
上記(3-1)ア(エ)aに記載したとおり、甲1Cの実施例3には、P1タンパク質に対する抗体に関する具体的な記載があるものの、それは、P1タンパク質(ペプチド)のサンドイッチ複合体を形成するものとは異なり、市販の二次抗体である抗ウサギ又は抗マウス抗体を用いてP1タンパク質(ペプチド)に結合したマウスのモノクローナル抗真性P1タンパク質抗体を検出する方法である。さらに、甲1Cには、P1タンパク質に対するモノクローナル抗体として、モノクローナル抗体H136E7(【0012】)とマウスのモノクローナル抗真正P1タンパク質抗体(【0096】)に関する記載があるが、P1タンパク質に対する具体的なモノクローナルは、H136E7が記載されているにとどまり、マウスのモノクローナル抗真正P1タンパク質抗体については、その当該モノクローナル抗体を生産する細胞株も、モノクローナル抗体のアミノ酸配列等の情報も、H136E7とのサンドイッチ複合体の形成の有無に関する手掛かりとなる情報も記載されていない。
このような甲1Cの記載に基づいて、抗P1タンパク質モノクローナル抗体の組合せによりP1タンパク質サンドイッチ複合体を形成するラテラルフローデバイスを作るためには、モノクローナル抗体として一つはH136E7を用いるとしても、もう一つ、H136E7とサンドイッチ複合体を形成可能な別のモノクローナル抗体を用いる必要があるが、甲1Cには、そのようなモノクローナル抗体の構造について手掛かりとなる記載がなく、何らかの方法でモノクローナル抗体を入手し、それらのモノクローナル抗体が、H136E7とサンドイッチ複合体を形成可能であるかを調べ、試行錯誤によって、H136E7と組み合わせて患者サンプル中のマイコプラズマ・ニューモニエを検出するラテラルフローデバイスを構成できるモノクローナル抗体を見つけ出す必要がある。
してみれば、実施例3においてマウスのモノクローナル抗真正P1タンパク質抗体を用いているからといって、実施例4の抗CARDS抗体に代えて抗P1タンパク質モノクローナル抗体を用いることはなく、その余の甲1Cの記載を参照しても、甲1C発明において、相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることを導く記載はない。
そして、下記2で述べるように、申立人AないしDが提出した証拠には、具体的に、マイコプラズマ・ニューモニエ感染検出用のイムノクロマトグラフィー試験デバイスにおける捕捉抗体及び検出抗体として使用し得る、マイコプラズマ・ニューモニエ由来のP1タンパク質抗原に対して特異的なモノクローナル抗体である第一のモノクローナル抗体及び第一のモノクローナル抗体とは異なる第二のモノクローナル抗体の組合せは記載されていないことから、上記相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項は、当業者が容易になし得たこととはいえない。

(イ)よって、本件特許発明1は、その余の相違点について検討するまでもなく、甲1C発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ 本件特許発明2ないし6について

本件特許発明2ないし6は、本件特許発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件特許発明1と同様に甲1C発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 本件特許発明7について

本件特許発明7は、本件特許発明1を使用したマイコプラズマ・ニューモニエの感染を検出する方法の発明に相当するものであるところ、本件特許発明1が甲1C発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないことから、本件特許発明7は甲1C発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

エ 本件特許発明8について

本件特許発明8は、本件特許発明7の発明特定事項を全て含むものであるから、本件特許発明7と同様に甲1C発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4)小括

以上のとおりであるから、本件特許発明1ないし8に係る特許は、特許法第29条第1項及び第2項の規定に違反してされたものではない。

2 その他の証拠に基づく特許法第29条第2項について

(1)申立人Aは、特許異議申立書において、本件訂正前の請求項1ないし8に係る発明は、甲第1号証ないし甲第9号証(以下「甲1A」ないし「甲9A」という。)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである旨主張している。

甲1A:国際公開第2011/068189号
甲2A:I.Kahana and A.Adoni,“Rapid Diagnosis of Mycoplasmas”,Plenum Press,1993,p.195-205
甲3A:甲2Aの訳文
甲4A:特開平5-304990号公報
甲5A:特開昭63-298号公報
甲6A:国際公開第2001/057199号
甲7A:特開2002-17397号公報
甲8A:特開2000-206117号公報
甲9A:特開2010-276441号公報

(2)申立人Bは、特許異議申立書において、本件訂正前の請求項1ないし8に係る発明は、甲第1号証ないし甲第7号証(以下「甲1B」ないし「甲7B」という。)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである旨主張している。

甲1B:特開平5-304990号公報(甲4Aと同じ)
甲2B:国際公開第2011/068189号(甲1Aと同じ)
甲3B:特公平2-39747号公報
甲4B:特公平4-21818号公報
甲5B:特公平6-14044号公報
甲6B:特公平7-78503号公報
甲7B:特公平7-13640号公報

(3)申立人Cは、特許異議申立書において、本件訂正前の請求項1ないし8に係る発明は、甲1C、甲第2号証及び甲第3号証(以下「甲2C」及び「甲3C」という。)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである旨主張している。

甲1C:国際公開第2008/021862号
甲2C:国際公開第2011/068189号(甲1A、甲2Bと同じ)
甲3C:特開平5-304990号公報(甲4A、甲1Bと同じ)

(4)申立人Dは、特許異議申立書において、本件訂正前の請求項1ないし8に係る発明は、甲第1号証ないし甲第4号証(以下「甲1D」ないし「甲4D」という。)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである旨主張している。

甲1D:“Mycoplasma adhesion”,Journal of General Microbiology,1992,Vol.138,p.407-422
甲2D:国際公開第2011/068189号(甲1A、甲2B、甲2Cと同じ)
甲3D:“ELISA for detection of Mycoplasma pneumoniae antigens using monoclonal antibodies”,APMIS,1991,Vol.99,p.475-481
甲4D:I.Kahana and A.Adoni,“Rapid Diagnosis of Mycoplasmas”,Plenum Press,1993,p.195-205(甲2Aと同じ)

(5)当審の判断

ア 訂正後の本件特許発明1ないし8は、マイコプラズマ・ニューモニエ感染検出用のイムノクロマトグラフィー試験デバイスの捕捉抗体及び検出抗体が、マイコプラズマ・ニューモニエ由来のP1タンパク質抗原に対して特異的なモノクローナル抗体である第一のモノクローナル抗体及び第一のモノクローナル抗体とは異なる第二のモノクローナル抗体であることを発明特定事項として含むものとなった。
これに対し、申立人AないしDが提出したいずれの証拠にも、マイコプラズマ・ニューモニエ感染検出用のイムノクロマトグラフィー試験デバイスにおける捕捉抗体及び検出抗体として使用し得る、マイコプラズマ・ニューモニエ由来のP1タンパク質抗原に対して特異的なモノクローナル抗体である第一のモノクローナル抗体及び第一のモノクローナル抗体とは異なる第二のモノクローナル抗体の組合せは記載されておらず、申立人AないしDが提出したいずれの証拠も、当業者が本件特許発明1ないし8に係るマイコプラズマ・ニューモニエ感染検出用のイムノクロマトグラフィー試験デバイスを容易に作れるようには記載されてはいない。
そして、二種の抗体を捕捉抗体及び検出抗体として用いさえすれば、イムノクロマトグラフィーにおいて検出可能なサンドイッチ複合体を形成できると結論付けることはできないものであることに鑑みれば、各甲号証記載されたモノクローナル抗体を組合せることにより、濃縮処理物を除く検体に対してマイコプラズマ・ニューモニエ感染を検出することができるイムノクロマトグラフィー試験デバイスを作成することができるかは、不明であるといわざるを得ない。
よって、本件特許発明1ないし8は、甲1Aないし甲9A、甲1Bないし甲7B、甲2C及び甲3C、甲1Dないし甲4Dのいずれの証拠に記載された発明を主引用発明とした場合でも、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ 小括

本件特許発明1ないし8は、申立人AないしDが提出したその他の証拠によっても、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

(6)申立人Aの参考資料1について

なお、申立人Aが提出した参考資料1のセントラルリサーチ株式会社の製品紹介カタログは、公知日が特定できないことから、本件特許発明1ないし8の新規性又は進歩性を否定するための証拠として採用することはできない。
また、上記参考資料1には、イムノクロマトグラフィーデバイスとして使用した場合の検出感度等に関する記載がないことから、その記載内容から直ちに濃縮処理物を除く検体に対してマイコプラズマ・ニューモニエ感染を検出することができるイムノクロマトグラフィー試験デバイスが記載されていると認定することもできない。

3 特許法第36条第4項第1号について

(1)申立人Bは、特許異議申立書において、本件特許に係る発明の詳細な説明の記載は、本件訂正前の請求項1ないし8に係る発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものでなく、その特許は、詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである旨主張している。
具体的な主張の概要は、発明の詳細な説明には、課題解決手段について、市販の2種類の抗体を使用して周知のイムノクロマトグラフィー試験デバイスを組み立てて、鼻腔吸引液を自社の呼吸器感染症検査キットの検体抽出液や器具を流用して処理して測定した実施例が記載されているのみであり、少ない抗原量でも検出可能な高感度なイムノクロマトグラフィー試験デバイスを開発するという課題を解決したとはいえないというものである。

(2)申立人Cは、特許異議申立書において、本件特許に係る発明の詳細な説明の記載は、本件訂正前の請求項1ないし8に係る発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものでなく、その特許は、詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである旨主張している。
具体的な主張の概要は、第一の抗体及び第二の抗体について、セントラルリサーチ株式会社製と記載されているのみであり、製品名やモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの寄託についての記載もなく、製造又は入手するための実質的な手段が開示されていないというものである。

(3)当審の判断

ア 申立人Bが主張する取消理由について

本件特許の発明の詳細な説明には、実施例1にセントラルリサーチ株式会社製抗体を用いてイムノクロマトグラフィー試験デバイスを作製したこと、実施例2に鼻腔吸引液検体からマイコプラズマ・ニューモニエを検出できたこと、実施例3に咽頭拭い液検体からマイコプラズマ・ニューモニエを検出できたこと、実施例4に他の微生物の菌体液に対して陰性結果が得られたことが記載されていることから、少ない抗原量でも検出可能な高感度なイムノクロマトグラフィー試験デバイスを作製することができたと認められる。
よって、申立人Bが主張する取消理由には理由がない。

イ 申立人Cが主張する取消理由について

申立人Cが主張する取消理由は、当審が通知した取消理由と同趣旨であり、上記第4の2(1)で説示したとおり理由がない。

ウ 小括

以上のとおりであるから、申立人B及びCが主張する特許法第36条第4項第1号に係る取消理由には、理由がない。

4 特許法第36条第6項第1号について

(1)申立人Bは、特許異議申立書において、本件訂正前の請求項1ないし8に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものでなく、その特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである旨主張している。
具体的な主張の概要は、発明の詳細な説明の記載からは、少ない抗原量でも検出可能な高感度なイムノクロマトグラフィー試験デバイスを開発するという課題を解決したとはいえないから、本件訂正前の請求項1ないし8に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものでないというものである。

(2)申立人Cは、特許異議申立書において、本件訂正前の請求項1ないし8に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものでなく、その特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである旨主張している。
具体的な主張の概要は、本件訂正前の請求項1ないし8に係る発明における第一の抗体及び第二の抗体は、特異的な診断のために不十分な抗体及び特異的な診断に適用可能か否か不明な抗体を含んでいるから、発明の詳細な説明に記載された範囲を超えるというものである。

(3)当審の判断

ア 申立人Bが主張する取消理由について

申立人Bが主張する取消理由は、特許法第36条第4項第1号に係る取消理由と同趣旨であり、上記3(3)アで説示したとおり理由がない。

イ 申立人Cが主張する取消理由について

申立人Cが主張する取消理由は、上記第4の2(2)で検討した申立人Cの主張と同趣旨であり、上記第4の2(2)で説示したとおり理由がない。

ウ 小括

以上のとおりであるから、申立人B及びCが主張する特許法第36条第6項第1号に係る取消理由には、理由がない。


第6 むすび

以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1ないし8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イムノクロマトグラフィー試験デバイスおよび検出キットにおける抗体として、マイコプラズマ・ニューモニエ由来のP1タンパク質抗原に対して特異的なモノクローナル抗体を含む、検体からマイコプラズマ・ニューモニエ感染検出用のイムノクロマトグラフィー試験デバイスであって、
第一のモノクローナル抗体および第一のモノクローナル抗体とは異なる第二のモノクローナル抗体、ならびに膜担体を備え、
該第一のモノクローナル抗体が、該膜担体に固定されて検出部位を構成し、
該第二のモノクローナル抗体が、標識物質で標識されており、かつ該検出部位とは離れた位置に、該膜担体中を移動可能に配置され、
該検体であって、濃縮処理物を除く該検体中にマイコプラズマ・ニューモニエ抗原が存在する場合に、該マイコプラズマ・ニューモニエ抗原と該標識物質で標識された該第二のモノクローナル抗体とを標識担持部材において結合させて、複合体を形成させる手段と、
該複合体を、該膜担体を介して展開させ、該検出部位において固定された該第一のモノクローナル抗体と結合させ、集積させることで発色させる手段と、を有する、
マイコプラズマ・ニューモニエ感染検出用のイムノクロマトグラフィー試験デバイス。
【請求項2】
前記標識物質が不溶性粒状物質である、請求項1に記載のイムノクロマトグラフィー試験デバイス。
【請求項3】
前記不溶性粒状物質が、着色合成高分子粒子または金属コロイド粒子である、請求項2に記載のイムノクロマトグラフィー試験デバイス。
【請求項4】
前記イムノクロマトグラフィー試験デバイスがマイコプラズマ・ニューモニエ感染診断用であり、生体由来材料またはその濃縮処理物を除く前処理物を検体とする、請求項1から3のいずれかに
記載のイムノクロマトグラフィー試験デバイス。
【請求項5】
前記生体由来材料が、咽頭拭い液または鼻腔吸引液である、請求項4に記載のイムノクロマトグラフィー試験デバイス。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のイムノクロマトグラフィー試験デバイスを備える、マイコプラズマ・ニューモニエ検出用キット。
【請求項7】
マイコプラズマ・ニューモニエP1タンパク質を検出することにより、検体からマイコプラズマ・ニューモニエの感染を検出する方法であって、
イムノクロマトグラフィー試験デバイスおよび検出キットにおける抗体として、マイコプラズマ・ニューモニエ由来の該P1タンパク質に対して特異的に結合でき、膜担体の検出部位に固定された第一のモノクローナル抗体と、前記マイコプラズマ・ニューモニエ由来の該P1タンパク質に対して特異的に結合でき、標識物質で標識され、かつ標識担持部材に担持された、第一のモノクローナル抗体とは異なる第二のモノクローナル抗体と、を有し、該第一のモノクローナル抗体および該第二のモノクローナル抗体のいずれかまたは両方が該P1タンパク質に特異的に結合できるモノクローナル抗体である、イムノクロマトグラフィー試験デバイスにおいて、
該検体であって、濃縮処理物を除く該検体を該イムノクロマトグラフィー試験デバイスの検体添加部材に添加する工程と、
該検体中に該マイコプラズマ・ニューモニエが存在する場合に、該マイコプラズマ・ニューモニエ由来のタンパク質と該標識物質で標識された第二のモノクローナル抗体とを標識担持部材において結合させて、複合体を形成させる工程と、
該複合体を、該膜担体を介して展開させ、該検出部位において固定された該第一のモノクローナル抗体と結合させ、集積させることで発色させる工程と、
を有する、マイコプラズマ・ニューモニエの感染を検出する方法。
【請求項8】
前記標識物質が不溶性粒状物質である、請求項7に記載のマイコプラズマ・ニューモニエの感染を検出する方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-05-31 
出願番号 特願2011-209919(P2011-209919)
審決分類 P 1 651・ 851- YAA (G01N)
P 1 651・ 537- YAA (G01N)
P 1 651・ 121- YAA (G01N)
P 1 651・ 536- YAA (G01N)
P 1 651・ 113- YAA (G01N)
最終処分 維持  
前審関与審査官 三木 隆海野 佳子  
特許庁審判長 三崎 仁
特許庁審判官 渡戸 正義
▲高▼見 重雄
登録日 2015-11-27 
登録番号 特許第5845033号(P5845033)
権利者 アルフレッサファーマ株式会社
発明の名称 マイコプラズマ・ニューモニエ検出用イムノクロマトグラフィー試験デバイスおよびキット  
代理人 大平 和幸  
代理人 大平 和幸  

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