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審決分類 |
審判 判定 判示事項別分類コード:なし 属さない(申立て成立) E04F |
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管理番号 | 1353217 |
判定請求番号 | 判定2018-600036 |
総通号数 | 236 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許判定公報 |
発行日 | 2019-08-30 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2018-12-21 |
確定日 | 2019-06-27 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3986273号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | イ号図面及び説明書に示す「フロアポスト」は、特許第3986273号の請求項1に係る発明の技術的範囲に属しない。 |
理由 |
第1 請求の趣旨と手続の経緯 本件判定請求の趣旨は、イ号図面及び説明書に示すフロアポストは、特許第3986273号の技術的範囲に属しない、との判定を求めるものである。 本件特許に係る手続の経緯は、平成13年8月31日に出願され、平成19年7月20日に特許権の設定登録がなされ、平成30年12月21日に本件判定請求がなされ、その後、平成31年3月27日に被請求人から判定事件答弁書が提出されたものである。 なお、判定請求書において、「5 請求の趣旨」には判定の対象となる請求項の記載はないものの、「6 請求の理由」の「(3)本件特許発明の説明」には、「本件特許発明は、本件明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりである(以下「構成要件A」などという)」と記載され、そして、請求項1に係る発明の構成要件をA?Dに分けており、同じく「(5)本件特許発明と、イ号との技術的対比」では、構成要件A?Dとイ号との対比を行っていることからみて、判定を求める請求項は請求項1であることは明らかである。 第2 本件特許発明 本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件特許発明」という。)は、本件特許明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(構成要件ごとに分説し、記号AないしDを付した。)。 「A スクリューロッドを正逆回転させることによってフロア材Fのレベルを昇降調節可能なフロアポストPであって、 B 当該フロアポストPの上端には前記フロア材Fを支持固定する合成樹脂製の床受け板1を備え、かつ、 C この床受け板1における支持面にはグリッドパネル12が配設され、 D フロアポストPを設置した状態で、フロア材F上から床受け板1に向けて止着タッピンネジ2を螺入貫通せしめるとき、この止着タッピンネジ2のスクリュースレッド21が前記グリッドパネル12のリブ間に食込み挟持して螺入されることによって、バリを前記リブ間の空隙に逃した状態で床受け板1とフロア材Fとを略均圧に密着固定できることを特徴とするフロアポストにおける床受け板のバリ浮き防止機構。」 第3 イ号物件 1 請求人によるイ号物件の特定 判定請求書の「6 請求の理由」の「(4)イ号の説明」の記載によれば、請求人が特定したイ号物件の構成は、次のとおりである。 「(a) スクリューロッドを正逆回転させることによってフロア材のレベルを昇降調節可能なフロアポストであって、 (b) 該フロアポストの上端には前記フロア材を支持固定する合成樹脂製の床受け板を備え、かつ、 (c) この床受け板における支持面には、複数の凹部が設けられており、前記複数の凹部は、略中心付近に複数の異なる円周上に配置された複数の環溝状の凹部と、前記複数の環溝状の凹部の外部に複数の異なる円周上に配置された複数の略円状の凹部とから構成されている、フロアポスト。」 2 被請求人によるイ号物件の特定 被請求人は、請求人が特定する上記1のa及びbの内容については争わないものの、本件特許発明の構成要件C及びDに対応する構成については、判定事件答弁書の「7 理由」の「(2)被請求人の主張」の「(ア) イ号物件の説明について」の(c)及び(d)に記載された以下のとおりに特定している。 「(c) 前記床受け板も支持面中央には、円形状の窪み部が形成されると共に、この窪み部内に直径が異なる5つの環状凸条が入れ子状に形成され、更に中央部の環状凸条から最も外側の環状凸条に向けて8つの直線状凸条が放射状に形成されて、これら環状凸条と直線状凸条によって区切られた領域に扇形の凹部が形成されており、 また上記床受け板の支持面の窪み部外側には、多数の丸穴が直径の異なる4つの円周上に等間隔で近接して設けられており、 (d) フロアポストを設置した状態で、フロア材上から床受け板に向けて止着タッピンネジを螺入貫通したとき、この止着タッピンネジのスクリュースレッドが前記環状凸条または直線状凸条に食い込み挟持して螺入されることによって、バリを前記環状凸条または直線状凸条の間の空隙に逃した状態で床受け板とフロア材とを略均圧に密着固定できるバリ浮き防止機構を備えたフロアポスト。」 3 当審によるイ号物件の特定 (1)イ号図面及び説明書から読み取れる構成 請求人及び被請求人によるイ号物件の特定は、(a)及び(b)は、実質的に本件特許発明の構成を書き下したものであって、また、(c)の両者の違いは、表現上の差異程度のものといえる。 さらに、(d)については、請求人は特定しておらず、被請求人のみが特定しているが、イ号図面及び説明書には、イ号物件の「フロアポスト」が説明されているものの、本件特許発明のフロア材Fや止着タッピンネジ2に対応する構成は直接記載されていない。 以上の点、請求人が提出したイ号の現物、及び技術常識を勘案すると、イ号図面及び説明書からは、以下のとおりの事項が看取できる。 なお、イ号物件の部材の名称は、一部、本件特許発明と同様のものを用いている。 ア イ号物件のフロアポストは、合成樹脂製であって、外周に雄ネジが形成された筒状体と、該筒状体の上端に設けられた略円形の板状体と、該雄ネジに螺合する雌ネジが内周に形成された雌ネジ筒台からなる。 イ フロアポストの一般的な使用態様を考慮すると、筒状体の上端に設けられた略円形の板状体は、フロア材を支持固定するものであるから、床受け板といえ、該床受け板の上面は、フロア材の支持面といえる。 また、雄ネジと雌ネジの関係から、雌ネジ筒台に対して筒状体を正逆回転させることによって、床受け板が昇降して、フロア材のレベルを昇降調節可能であることは明らかである。 ウ 支持面には、径の約半分程度である中心側の中央部には、中心に小孔が形成され、そして該小孔の外側の部分を、円周方向に延びる4つの異なる径の隔壁で径方向に5つに区切られ、さらに、径方向に延びる8つの隔壁で円周方向に8つに区切られた形状の複数の扇形の凹部が形成されている。 エ 支持面の中央部の外側には、4つの異なる径の円周上に略等間隔で並んだ複数の丸穴の列が形成され、内側から数えて2列目と3列目の間隔は、1列目と2列目の間隔及び3列目と4列目の間隔よりも大きく、さらに丸穴の径よりも大きい。 オ フロアポストにフロア材を取り付ける一般的な方法を考慮すると、フロアポストを設置した状態で、フロア材上から床受け板に向けてタッピンネジを螺入貫通せしめることは明らかである。 (2)イ号物件の特定 上記(1)を踏まえて、上記構成要件A?Dに対応させて整理すると、イ号物件は以下のとおり分説した構成を具備するものと認める(構成ごとに記号aないしdを付した。)。 a 外周に雄ネジが形成された筒状体を、該雄ネジに螺合する雌ネジが内周に形成された雌ネジ筒台に対して正逆回転させることによってフロア材のレベルを昇降調節可能なフロアポストであって、 b 当該筒状体の上端には前記フロア材を支持固定する合成樹脂製の床受け板を備え、かつ、 c この床受け板における支持面には、 径の約半分程度である中心側の中央部には、中心に小孔が形成され、そして、該小孔の外側の部分を、円周方向に延びる4つの異なる径の隔壁で径方向に5つに区切れられ、さらに、径方向に延びる8つの隔壁で円周方向に8つに区切られた形状の複数の扇形の凹部が形成され、 中央部の外側に、4つの異なる径の円周上に略等間隔で並んだ複数の丸穴の列が形成され、内側から数えて2列目と3列目の間隔は、1列目と2列目の間隔及び3列目と4列目の間隔よりも大きく、さらに丸穴の径よりも大きく、 d フロアポストを設置した状態で、フロア材上から床受け板に向けてタッピンネジを螺入貫通せしめる、フロアポスト。」 第4 属否の判断 イ号物件が、本件特許発明の構成要件を充足するか否かについて検討する。 1 構成要件Aについて 構成aの「外周に雄ネジが形成された筒状体」、「フロア材」、「フロアポスト」は、それぞれ、構成要件Aの「スクリューロッド」、「フロア材F」、「フロアポストP」に相当し、構成aの「筒状体を、」「雌ネジ筒台に対して正逆回転させることによってフロア材のレベルを昇降調節可能な」ことは、構成要件Aの「スクリューロッドを正逆回転させることによってフロア材Fのレベルを昇降調節可能な」ことに相当するから、イ号物件の構成aは、本件特許発明の構成要件Aを充足する。 2 構成要件Bについて 構成bの「床受け板」は、構成要件Bの「床受け板1」に相当する。 構成aのフロアポストにおいて、「筒状体」と「雌ネジ筒台」とは、「筒状体」の「該雄ネジに螺合する雌ネジが内周に形成された雌ネジ筒台」という関係にあり、また、「筒状体の上端には」「床受け板を備え」ていることからみて、「雌ネジ筒台」は「筒状体」の上方から螺合するものではないことは明らかであるから、「床受け板」は、「フロアポスト」の上端に備えているものといえる。 よって、イ号物件の構成bは本件特許発明の構成要件Bを充足する。 3 構成要件Cについて (1)本件特許発明の構成要件Cは、「この床受け板1における支持面にはグリッドパネル12が配設され」たことであるが、イ号物件の構成cは、「この床受け板における支持面に」「複数の扇形の凹部」や「複数の丸穴が形成され」たことであって、つまり、支持面に別体のパネルが配設されたものではない点で、構成要件Cと相違している。 (2)上記(1)の相違はあるものの、構成cの「扇形の凹部」や「丸穴」が形成された「支持面」の構造(支持面側の所定厚み部分)と、構成要件Cの「グリッドパネル」との比較について、さらに検討する。 ア 本件特許発明の「グリッドパネル」 (ア)「グリッドパネル」との用語は一般的に使用されるものではないが、少なくとも「グリッド」については、「格子」との意味を持つ(判定請求書の6頁下から3行?7頁3行、判定事件答弁書の7頁10?11行参照。)ものであって、さらに「格子」は、例えば、「細い角材を縦横に間をすかして組んだもの。」(広辞苑第三版)を意味するから、「グリッドパネル」は、略全体を細長い部材で縦横に一様に組んだ構造のパネルと解することができる。 (イ)次に、「グリッドパネル」について、本件特許明細書の記載を参照すると、 「【0025】 『第3実施形態』 次に、本発明の第3実施形態を図5から図12に基いて説明する。本実施形態では、床受け板1におけるフロア材Fの支持面にグリッドパネル12が配設されており、このグリッドパネル12には浮し突起11としてのリブが直交した格子状に形成されている。 【0026】 本実施形態においては、止着タッピンネジ2のスクリュースレッド21を前記グリッドパネル12の浮し突起11としてのリブ間に食込み挟持して螺入する。なお、図8に示すようにスクリュースレッド21がリブ間に確実に挟持されることから、止着タッピンネジ2を安定的な直立状態に螺入することができる。 【0027】 また、止着タッピンネジ2の螺入による床受け板1の刳り抜き余肉の体積が小さくなることから、バリBの発生そのものを減少させることができる。仮にバリBが発生したとしても食込み分がリブ間に若干発生するだけであるので、バリBが表面への突出することを防ぐことができ、グリッドパネル12の支持面をフロア材Fに密接させることができるので、床受け板1とフロア材Fとを略均圧に密着固定できるのである。 【0028】 本実施形態では、床受け板1のグリッドパネル12の浮し突起11としてのリブを直交する格子状に形成しているが、図10に示すように亀甲状に形成することも可能であるし、図示しない多角形状や楕円形状になっていても良い。 【0029】 また、実施変形例として、床受け板1のリブは、図11に示すように貫通するように形成することも可能であるし、図12に示すように上面および下面を格子状に形成することも可能であって、構造的に剛性を大きくしつつも、使用材料を減少させることができるので、製造コストダウンをすることができる。」と記載されており、本件特許発明の「グリッドパネル」は、浮し突起11としてのリブを直交した格子状に形成された態様に加えて、亀甲状、多角形状、楕円形状も例示され、リブが格子状に直交したものに限るものではないといえる。 なお、「突起」とは、「部分的につきでること。」(広辞苑第三版)との意味を有する。 そして、グリッドパネルに関する第3実施形態を表す【図5】?【図12】を参照すると、直交した格子状であるリブまたは亀甲状を呈したリブは、グリッドパネル12の略全面に一様に形成されており、また、本件特許明細書の 「【0007】 【発明が解決しようとする課題】 本発明は、従来のフロアポストの床受け板に上記のような不満があったことに鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、フロア材をフロアポストの床受け板に固定する際に、止着タッピンネジのスクリュースレッドの刳り抜きの余肉によるバリによるフロア材レベルの偏倚を防ぎ、要に応じて、その表面をリブ構造にすることによって優れた剛性を付与することができ、更に、使用材料も節約されてコスト削減も可能なフロアポストにおける床受け板のバリ浮き防止機構を提供することにある。」、及び 「【0035】 【発明の効果】 以上、実施形態をもって説明したとおり、本発明においては、床受け板の支持面に浮し突起を形成して床受け板とフロア材との間に空隙を作出したことによって、バリを逃すことができてフロア材レベルの偏倚を防止することができる。」との記載、及び上記段落【0029】の記載からみて、本件特許発明は、「表面をリブ構造にすることによって優れた剛性を付与」し、「床受け板とフロア材との間に空隙を作出したことによって、バリを逃すことができ」るものであって、「使用材料を減少させることができるので、製造コストダウンをすることができる」との課題も考慮されているから、浮し突起としてのリブは、グリッドパネルの一部分ではなく略全面に一様に形成されていると解するのが自然である。 (ウ)してみると、上記(ア)の用語の意味や、上記(イ)の本件特許明細書の記載事項からみて、本件特許発明のグリッドパネルとは、直交した格子状、もしくは亀甲状、多角形状、楕円形状となる浮し突起としてのリブが略全面に一様に形成されたものであるといえる。 イ イ号物件の「支持面」の構造 これに対して、イ号物件の「支持面」の構造は、以下のとおりである。 (ア)「径の約半分程度である中心側の中央部」についてみると、「中心に小孔が形成され、そして、該小孔の外側の部分を、円周方向に延びる4つの異なる径の隔壁で径方向に5つに区切られ、さらに、径方向に延びる8つの隔壁で円周方向に8つに区切られた形状の複数の扇形の凹部が形成され」ているが、仮に、複数の扇形の凹部を径方向及び円周方向に区切る隔壁が、該扇形の凹部の底面を基準にみて、上記アでいうところのリブに相当するとしても、該中央部は、支持面における径の約半分程度でしかないから、該隔壁は、本件特許発明のように略全面に設けられるものではない。 (イ)また、「中央部の外側」について、「4つの異なる径の円周上に略等間隔で並んだ複数の丸穴の列が形成され」ていることからすると、「中央部の外側」では、表面側から奥側方向に向けて丸穴を形成したと解することができる。 さらに、「内側から数えて2列目と3列目の間の間隔は、1列目と2列目の間隔及び3列目と4列目の間隔よりも大きく、さらに丸穴の径よりも大きい」ことも加味すれば、丸穴間の部分は、突起(部分的につきでること。)となるものではない。また、丸穴間の部分は、直交した格子状、もしくは亀甲状、多角形状、楕円形状であると解することには無理がある。 ウ よって、支持面において、「中央部」よりも多くの面積を占める「中央部の外側」に、浮かし突起としてのリブが形成されておらず、本件特許発明のように、該リブが略全面に一様に形成されたものではないから、構成cの「支持面」の構造は、構成要件Cの「グリッドパネル」に相当しない。 (3)したがって、上記(1)のとおり、イ号物件は支持面にパネルを配設したものではなく、さらに、上記(2)のとおり、イ号物件の「支持面」の構造も、本件特許発明の「グリッドパネル」に相当しないことから、イ号物件の構成cは、本件特許発明の構成要件Cを充足しない。 4 構成要件Dについて イ号物件の構成dにおいて、「フロアポストを設置した状態で、フロア材上から床受け板に向けてタッピンネジを螺入貫通せしめる」ものであるが、タッピンネジが床受け板にどの様に螺入するのかの特定はない。 そこで、該螺入することについて検討する。 (1)本件特許発明のリブの態様である直交した格子状、亀甲状、多角形状または楕円形状であれば、止着タッピンネジ2を螺入した場合、スクリュースレッド21の周方向における複数の箇所が該リブに食込むこととなって、該スクリュースレッド21は、「リブ間に食込み挟持して螺入される」ものとなる。 (2)次に、イ号物件の支持面の中央部において、扇形の凹部を区切る隔壁(「リブ」に相当。)とタッピンネジとの関係についてみると、円周方向に延びる隔壁同士の間隔や径方向に延びる隔壁同士の間隔に対するタッピンネジの径の大きさや、螺入したタッピンネジの両隔壁に対する位置にもよるが、スクリュースレッドは、必ずしも周方向の複数の隔壁に食込むとは限らない。よって、スクリュースレッドは、隔壁間に食込み挟持するものとは限らない。 (3)続いて、イ号物件の支持面の中央部の外側を検討すると、複数の丸穴の列が形成されているものの、上記3イ(イ)のとおり、該丸穴間の部分は、本件特許発明の浮し突起としてのリブに相当するものではないから、スクリュースレッドがリブ間に食い込み挟持して螺入されるものとはならない。 また、タッピンネジが螺入した状態について検討すると、該螺入した位置によっては、スクリュースレッドが丸穴間の部分に食込んだとしても、タッピンネジの側面の多くは、丸穴同士の間の部分に位置することとなるため、タッピンネジの螺入により発生したバリの多くは、丸穴間の部分の上に形成されてしまい、丸穴内に逃げるバリは少なくなり、特に、2列目と3列目の間では、その列の間隔が丸穴の径よりも大きいことから、発生したバリのほとんどは、2列目と3列目の間の部分の上に形成され、丸穴内に逃げるバリは無いに等しくなる。 そして、タッピンネジの径が丸穴の径よりも小さい場合には、タッピンネジが丸穴にすっぽりと入ってしまう可能性があり、その場合は、スクリュースレッドが丸穴間の部分に食い込まないこととなる。 してみると、タッピンネジが螺入したとしても発生したバリが丸穴内に逃げることはあまりないものと認められる。 (4)以上のことから、イ号物件の構成dの「フロアポストを設置した状態で、フロア材上から床受け板に向けてタッピンネジを螺入貫通せしめる」としても、構成cの「支持面」の構造からみて、上記(3)のとおり、中央部において、隔壁間に食込み挟持するものとは限らないし、そして、中央部の外側においては、そもそもスクリュースレッドが食い込み挟持して螺入されるものはリブではなく、タッピンネジが螺入した状態をみても、タッピンネジを螺入したことで形成されるバリが丸穴内に逃げることはあまりないものと認められるから、構成要件Dのように、「止着タッピンネジ2のスクリュースレッド21が前記グリッドパネル12のリブ間に食込み挟持して螺入される」ものや、「バリを前記リブ間の空隙に逃した状態で床受け板1とフロア材Fとを略均圧に密着固定できる」ものとはならない。 加えて、上記(3)からみて、構成要件Dのように、「フロアポストにおける床受け板のバリ浮き防止機構」でもないことは明らかである。 したがって、イ号物件の構成dは、本件特許発明の構成要件Dを充足しない。 5 被請求人の主張について 判定事件答弁書における被請求人の主張について検討する。 ア 本件特許発明の構成要件Cの「グリッドパネル12」と、イ号物件の構成cの中央部の隔壁及び扇形の凹部の対比について、 「イ号物件の構成cの『窪み部内に直径が異なる5つの環状凸条が入れ子状に形成され、更に中央部の環状凸条から最も外側の環状凸状に向けて8つの直線状凸条が放射状に形成されて、これら環状凸条と直線状凸条によって区切られた領域に扇形の凹条が形成され』は、本件特許発明の『グリッドパネルが配設され』に該当する。」(5頁3?7行)、 「明細書の段落[0028]及び図10の記載から『グリッドパネル』という用語が、本件明細書中において『格子状のパネル』という意味を超えて使用されていることが理解できる。また上記明細書中の記載から『リブ』についても、平面状に形成される浮かし突起の形状の一種、つまり、リブ形状として一般的な凸条(直線状または曲線状の突起)を指す用語として使用されていることが理解できる。」(7頁16?下から3行)、及び 「イ号物件の環状凸条および直線状凸条は床受け板の支持面全体に形成されているとはいえないが、本件特許権の明細書中においてリブを支持面全体にわたって形成することについて限定する記載はなく、また『グリッドパネル』の技術的意義を踏まえると、スクリュースレッドが打ち込まれるであろう部位に上記凸条が形成されていれば、それが部分的であったとしても本件特許発明の課題を解決できることから、イ号物件の環状凸条および直線状凸条が形成された部位は『グリッドパネル』に該当すると解するのが相当といえる。」(8頁下から2行?9頁6行)と主張する。 しかしながら、本件特許発明の「グリッドパネル」は、上記3(2)アのとおりであって、イ号物件の「支持面」の構造は、上記3(2)イのとおりであるから、イ号物件の「支持面」の構造は、本件特許発明のグリッドパネルに相当せず、被請求人の主張は採用できない。 イ 本件特許発明の構成要件Cの「グリッドパネル12」と、イ号物件の構成cの中央部の外側の複数の丸穴及び丸穴間の部分について、 「イ号物件の床受け板の支持面上には、多数の丸穴が近接して円周上に設けられており、隣り合う丸穴間には隔壁が形成されている。これらの隔壁は、後述するように本件特許発明のグリッドパネルのリブと同様の作用・効果を有する。」(10頁5?8行)、と主張する。 しかしながら、上記4(3)及び(4)のとおりであるから、イ号物件の丸穴間の部分は、本件特許発明のグリッドパネルのリブと同様の作用・効果を有するとは認められず、被請求人の主張は採用できない。 ウ 本件特許発明の構成要件Dとイ号物件の構成dの対比について、 「イ号物件の構成dの『止着タッピンネジのスクリュースレッドが前記環状凸条または直線状凸条に食い込み挟持して螺入される』は、本件特許発明の構成要件Dの『止着タッピンネジのスクリュースレッドが前記グリッドパネルのリブ間に食い込み挟持して螺入される』に該当し、同じく『バリを前記環状凸条または直線状凸条の間の空隙に逃した状態で』は、『バリを前記リブ間の空隙に逃した状態で』に該当する」(5頁10?16行)、と主張する。 しかしながら、上記3(2)ア?ウのとおり、イ号物件の「支持面」の構造は、グリッドパネルではなく、また、上記4(1)?(4)のとおり、イ号物件の構成dは、構成要件Dのように、「止着タッピンネジ2のスクリュースレッド21が前記グリッドパネル12のリブ間に食込み挟持して螺入される」ものや、「バリを前記リブ間の空隙に逃した状態で床受け板1とフロア材Fとを略均圧に密着固定できる」ものではなく、さらに、「フロアポストにおける床受け板のバリ浮き防止機構」でもないから、被請求人の主張は採用できない。 第5 むすび 以上のとおり、イ号物件の構成c及びdは、それぞれ本件特許発明の構成要件C及びDを充足しないから、イ号物件は、本件特許発明の技術的範囲に属しない。 よって、結論のとおり判定する。 |
別掲 |
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判定日 | 2019-06-19 |
出願番号 | 特願2001-264639(P2001-264639) |
審決分類 |
P
1
2・
-
ZA
(E04F)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 大谷 純 |
特許庁審判長 |
小野 忠悦 |
特許庁審判官 |
井上 博之 住田 秀弘 |
登録日 | 2007-07-20 |
登録番号 | 特許第3986273号(P3986273) |
発明の名称 | フロアポストにおける床受け板のバリ浮き防止機構 |
代理人 | 樋口 喜弘 |
代理人 | 高岡 亮一 |
復代理人 | 岡倉 誠 |
復代理人 | 岡倉 誠 |
代理人 | 戸川 公二 |
代理人 | 戸川 公二 |