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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 B29C
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B29C
管理番号 1353429
審判番号 不服2018-8789  
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-06-27 
確定日 2019-07-30 
事件の表示 特願2016-564941「三次元物体の生成」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 7月23日国際公開、WO2015/108551、平成29年 5月25日国内公表、特表2017-512689、請求項の数(15)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)3月31日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2014年1月16日、欧州特許庁、2014年1月31日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成29年11月15日付けで拒絶理由が通知され、平成30年2月8日に意見書及び手続補正書が提出され、同年同月20日付けで拒絶査定がされ、同年6月27日に拒絶査定不服審判の請求がされ、令和元年6月14日に最後の拒絶理由が通知され、同年6月21日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成30年2月20日付け拒絶査定)の概要は、次のとおりである。

(進歩性)この出願の請求項1ないし15に係る発明は、その優先日前に日本国内において、頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特開2006-312310号公報
2.特表2009-508723号公報
3.特開2007-98947号公報
(以下、順に、「引用文献1」のようにいう。)

第3 令和元年6月14日に通知された最後の拒絶理由の概要
令和元年6月14日に通知された最後の拒絶理由の概要は次のとおりである。

(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

・請求項 10ないし15
1 請求項10の「造形造形室」という記載は、明確でない。
したがって、請求項10に係る発明は明確であるとはいえない。
また、請求項10を直接又は間接的に引用する請求項11ないし15に係る発明も同様に明確であるとはいえない。
2 請求項12の「前記造形材料供給器は、前記造形モジュールが取り外し可能に挿入可能である前記積層造形システムの一部である、請求項1?10の何れか一項に記載の造形モジュール。」という記載では、「造形材料供給器」が「積層造形システム」ではなく、「造形モジュール」に含まれる請求項2を直接又は間接的に引用しているので、明確でない。
したがって、請求項12に係る発明は明確であるとはいえない。
また、請求項12を直接又は間接的に引用する請求項13ないし15に係る発明も同様に明確であるとはいえない。

第4 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1ないし15に係る発明(以下、順に「本願発明1」のようにいう。)は、令和元年6月21日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された次の事項により特定されるとおりのものであると認められる。

「【請求項1】
造形モジュールであって、
ハウジングと、
造形材料を保持するために前記ハウジングに設けられた造形材料室と、
前記ハウジングに設けられた造形室であって、前記造形材料室が、前記造形室の下にあり、前記造形室が、前記造形材料室から独立しており、かつ、造形材料供給器から前記造形材料の連続した層を受け取るための可動支持部材を含む、造形室と
を含み、
前記造形モジュールは、積層造形システムの造形レシーバの中に取り外し可能に挿入可能であり、それによって、前記積層造形システムは、前記可動支持部材上に受け取られた前記連続した層の一部を硬化させることができる、造形モジュール。
【請求項2】
前記造形材料室から前記造形室の前記支持部材上に前記造形材料の連続した層を提供するための前記造形材料供給器をさらに含む、請求項1に記載の造形モジュール。
【請求項3】
前記ハウジングは、前記積層造形システムのハウジングに取り付けられた第2の固定具と結合し、前記積層造形システムの前記ハウジングの中に前記造形モジュールを固定するための第1の固定具を含む、請求項1または請求項2に記載の造形モジュール。
【請求項4】
造形モジュールであって、
ハウジングと、
造形材料を保持するために前記ハウジングに設けられた造形材料室と、
前記ハウジングに設けられた造形室であって、前記造形室が、前記造形材料室から独立しており、かつ、造形材料供給器から前記造形材料の連続した層を受け取るための可動支持部材を含む、造形室と、
前記ハウジングに設けられたコンピュータ読み取り可能媒体であって、前記コンピュータ読み取り可能媒体が、前記造形モジュールの特徴を表す造形モジュールデータを含む、コンピュータ読み取り可能媒体と
を含み、
前記造形モジュールは、積層造形システムの造形容量の中に取り外し可能に挿入可能であり、それによって、前記積層造形システムは、前記可動支持部材上に受け取られた前記連続した層の一部を硬化させることができる、造形モジュール。
【請求項5】
前記積層造形システムのコントローラは、
前記造形材料供給器によって前記造形室に前記造形材料を提供すること、及び
前記造形モジュールデータに基づく、薬剤供給器による前記造形材料への合体助剤の選択的供給
のうちの少なくとも一方を制御するように構成される、請求項4に記載の造形モジュール。
【請求項6】
前記特徴は、前記造形室に保持されるべき前記造形材料のタイプを含む、請求項4または請求項5に記載の造形モジュール。
【請求項7】
前記造形材料の前記タイプを検出するためのセンサをさらに含む、請求項6に記載の造形モジュール。
【請求項8】
前記特徴は、前記コンピュータ読み取り可能媒体においてユーザからの入力として受け取られる、請求項4?7の何れか一項に記載の造形モジュール。
【請求項9】
積層造形システムのための造形モジュールであって、前記造形モジュールが、
ハウジングと、
造形材料を保持するために前記ハウジングに設けられた造形材料室と、
前記ハウジングに設けられた造形室であって、前記造形室が、前記造形材料室から独立しており、かつ、造形材料供給器から前記造形材料の連続した層を受け取るための可動支持部材を含む、造形室と
を含み、
前記造形モジュールが、もう一つのそのような造形モジュールと同時に、積層造形システムの造形容量の中に取り外し可能に挿入可能であり、それによって、前記積層造形システムは、前記可動支持部材上に受け取られた前記連続した層の一部を硬化させることができる、造形モジュール。
【請求項10】
造形アセンブリを含み、前記造形アセンブリは、前記造形材料室及び前記造形室を含み、前記ハウジングは、前記造形アセンブリを取り外し可能に受け入れる、請求項1?9の何れか一項に記載の造形モジュール。
【請求項11】
前記造形アセンブリは、前記造形材料供給器をさらに含む、請求項10に記載の造形モジュール。
【請求項12】
前記造形材料供給器は、前記造形モジュールが取り外し可能に挿入可能である前記積層造形システムの一部である、請求項1、請求項3(但し、請求項2を引用する場合を除く)、及び請求項4?9の何れか一項に記載の造形モジュール。
【請求項13】
前記ハウジングに取り外し可能に結合されたカバーを含む、請求項1?12の何れか一項に記載の造形モジュール。
【請求項14】
前記造形材料室は、前記造形材料を保持するための可動支持部材を含む、請求項1?13の何れか一項に記載の造形モジュール。
【請求項15】
請求項1?14の何れか一項に記載の造形モジュールを取り外し可能に受け入れるための積層造形システム。」

第5 引用文献に記載された事項等
1 引用文献1に記載された事項及び引用発明
(1)引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先日前に日本国内において、頒布された引用文献1には、「レーザ焼結システムに使用するための取外し可能な構築チャンバのための温度管理システム」に関して、おおむね次の記載(以下、「引用文献1に記載された事項」という。)がある。なお、下線は当審で付したものである。

・「【請求項1】
レーザ焼結装置に用いられる構築チャンバの温度を制御する方法であって、
a. 第1の構築チャンバを温度管理ステーションに接続して、該構築チャンバを、前記レーザ焼結装置の動作温度またはそれに近い温度に予熱する工程、
b. 前記構築チャンバを前記温度管理ステーションから外し、前記レーザ焼結装置中に挿入する工程、
c. 前記レーザ焼結装置を動作させて、溶融粉末と未溶融粉末からなる部品入りケーキ内に少なくとも1つの部品を形成することによって、構築を完了する工程、
d. 前記レーザ焼結装置から前記構築チャンバを取り出す工程、
e. 前記取り出された構築チャンバを前記温度管理ステーションに接続する工程、
f. 前記構築チャンバの冷却を制御して、該構築チャンバと前記部品入りケーキの温度を、該部品入りケーキを壊してその内の前記少なくとも1つの部品を取り出すことのできる温度まで低下させる工程、
を有してなる方法。
【請求項2】
前記レーザ焼結装置から前記第1の構築チャンバを取り出す工程の前に、交換用構築チャンバを予熱する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記構築チャンバを前記レーザ焼結装置内のプロセス・チャンバ中に挿入する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記構築チャンバに選択的に熱を供給して、前記部品入りケーキとその中の前記少なくとも1つの部品の温度を制御可能に低下させることによって、前記部品入りケーキの冷却を制御して、前記少なくとも1つの部品の熱歪みを防ぐ工程をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記部品入りケーキの周囲の選択された位置で該部品入りケーキの温度をモニタすることによって、該部品入りケーキの冷却を制御する工程をさらに含むことを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記構築チャンバ内の前記部品入りケーキを含む構築シリンダの周りに配置されたバンド・ヒータ内のサーミスタにより該部品入りケーキの温度をモニタする工程をさらに含むことを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記モニタした温度に応答して前記部品入りケーキの冷却を制御する工程をさらに含むことを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
レーザ焼結装置の取外可能な構築チャンバのための温度管理装置において、
a. レーザ焼結装置に取外可能に連結できる構築チャンバであって、部品の構築中に溶融粉末材料と未溶融粉末材料から形成された部品入りケーキを保持するように適合された、周囲を有する構築シリンダを備えた構築チャンバ、
b. 前記構築シリンダに選択的に熱を供給するのに効果的な、該構築シリンダに連結された少なくとも1つのヒータ、
c. 前記構築シリンダの周囲の温度を検出するのに効果的な、前記少なくとも1つのヒータ内の少なくとも1つのサーミスタ、
d. 電源、および
e. 前記電源に接続された温度管理ステーションであって、構築を開始する前に、前記取外可能な構築チャンバを所望の温度に予熱するように前記少なくとも1つのヒータに選択的にエネルギーを供給するのに効果的に、かつ構築の完了した際に、前記少なくとも1つのサーミスタから受け取った検出値に応答して前記構築チャンバと前記構築シリンダに選択的に熱を供給して、レーザ焼結中に前記溶融粉末材料から形成された部品の熱歪みを防ぐのに効果的な様式で前記構築シリンダ内の該部品入りケーキの冷却を制御するのに効果的に、前記構築チャンバに接続可能な温度管理ステーション、を備えた温度管理装置。
【請求項9】
温度と現在の検出値を受信し、それらを前記温度管理ステーションにリレーする、前記取外可能な構築チャンバに接続されたコントロール・ボックスをさらに含むことを特徴とする請求項8記載の装置。
【請求項10】
前記構築シリンダの周囲に配列された複数のバンド・ヒータをさらに含むことを特徴とする請求項8記載の装置。
【請求項11】
前記構築チャンバが、レーザ焼結装置に取外可能に連結できる可動性構築台車に取り付けられていることを特徴とする請求項8記載の装置。
【請求項12】
前記取外可能な構築チャンバがレーザ焼結装置内のプロセス・チャンバに連結できることを特徴とする請求項8記載の装置。」

・「【0001】
本発明は、広く、高速試作および製造の方法に関し、より詳しくは、レーザ焼結および最初の部品を構築し終わった後に続いての構築を開始するためにレーザ焼結システムをより迅速に次の準備をする能力に関する。
【背景技術】
【0002】
高速試作および製造(RP&M)は、三次元物体を、その物体を表すコンピュータ・データから高速かつ自動的に形成するのに使用できる技術分野に与えられた名称である。一般に、高速試作および製造技法では、形成すべき物体の断面を表すスライスされたデータ・セットを用いて、作業媒質から三次元物体を層毎に構築する。典型的に、物体の表示は、コンピュータ支援設計(CAD)システムにより最初に提供される。RP&M技法は、固体イメージングとも呼ばれ、ステレオリソグラフィー、固体イメージングに適用されるインクジェット・プリンティング、およびレーザ焼結を含む。
【0003】
レーザ焼結装置は、粉末床を形成するために、プロセス・チャンバに亘って、熱可溶性粉末、しばしば熱可溶性高分子粉末、高分子被覆金属、またはセラミックの薄層を分配する。次いで、レーザ焼結装置は、熱エネルギーを施して、その粉末層に構築されている物品の断面に対応する粉末層の部分を溶融する。「部品入りケーキ」と一般に呼ばれる粉末塊内に物品が形成される。レーザは一般に、変調と正確な方向制御によって、熱エネルギーを粉末層の目的区域に供給する。スリー・ディー・システムズ社(3D Systems, Inc.)から市販されているVanguard(商標)システムなどの従来の選択的レーザ焼結装置では、二酸化炭素レーザを使用し、このレーザビームを偏向するガルバノ・ミラーを手段としてレーザビームを位置決めする。
【0004】
この部品入りケーキは取外し可能な構築台上に支持されており、この構築台上に粉末床が配置される。粉末層が溶融した後、構築台はある距離だけ下方に移動し、次いで、装置が、粉末床に亘って、先に溶融された層の上に追加の粉末層を分配し、この次の層における粉末の溶融と選択的融合のプロセスを繰り返す。物品が完成するまで、後の層の溶融部分が、物品に適切なだけ先の層の溶融部分に融合する。これらの物品は、「構築部品」と呼ばれることもある。追加の粉末層の各々は、一般に、粉末床の上に測定された量の粉末を分配する粉末供給装置から分配される。次いで、ブレードやローラなどのスプレッダーがその粉末を拾い上げ、粉末床に亘り均一な様式で広げる。」

・「【0011】
本発明のある態様では、構築の完了後、構築チャンバがプロセス・チャンバから取り外せるようになっており、部品を有する部品入りケーキは構築チャンバ内で冷却することができ、新たな予熱された構築チャンバがレーザ焼結システム中に挿入されるようになっている取外し可能な構築チャンバを有するレーザ焼結装置が提供される。」

・「【0021】
図1を参照すると、取外し可能な構築チャンバを有するレーザ焼結装置またはシステムが、示されており、概して参照番号10で表されている。レーザ焼結装置10は、プロセス・チャンバ15、関連する支持ハウジング20、および構築台車30により支持されている取外し可能な構築チャンバ25を備えている。構築台車30は、構築チャンバ25と共に、支持ハウジング20中に取外し可能に挿入されている。ある実施の形態において、レーザ焼結装置10は、構築チャンバ25を装填位置と構築位置との間で移動するように適合された昇降装置(図1には示されていない)を備えていてよい。ここに用いたように、「構築位置」という用語は、構築台の垂直移動が粉末床に対して実質的に垂直であるような構築台が粉末床に対して適切に位置決めされている構築チャンバ25の位置を称する。構築位置において、レーザ焼結装置10は、部品を構築する準備ができている。昇降装置は、水圧または油圧シリンダ、空気圧シリンダ、電気モータなどを備えていて差し支えない。レーザ焼結装置10は、プロセス・チャンバ15内でレーザビームを生成し、標的に当てるためのレーザおよび関連する機構を含む関連したレーザ・ユニット40も備えている。
【0022】
構築チャンバ25は、支持ハウジングの対応する表面に解放可能に係合するようにそれぞれが適合した複数の位置決め表面(図1では見えない)を含んでよい。構築チャンバ25が構築位置に動かされるときに、位置決め表面が支持ハウジングの対応する表面と係合し、プロセス・チャンバに対して適切に位置決めされているように構築チャンバを配置する。取外し可能な構築チャンバの設計および動作は、2005年3月23日に出願され、本発明の譲受人に譲渡された同時係属出願である米国特許出願第11/088133号により詳しく述べられている。
【0023】
構築チャンバ15は、粉末床(図示せず)、および粉末供給ホッパーと底部供給機構(両方とも図示せず)を有する関連する粉末分配システムを備えている。プロセス・チャンバ15は、粉末床に亘り分配された粉末を拾い上げ、均一な様式で広げるように適合された粉末スプレッダーを備えている。この粉末スプレッダーは逆回転ローラ(図示せず)の形態にあることが好ましい。粉末床は、構築チャンバ25内の構築シリンダを解放可能に受け入れるように適合された開口部を含む。本発明に関して、「粉末スプレッダー」という用語は、ローラ、ワイパー、ドクター・ブレード、または粉末を粉末床に亘り均一な様式で広げるために用いられる任意の他の適切な装置を含む。
【0024】
構築チャンバ25は、可動性構築台(図示せず)を有する構築シリンダ60(手短に図3参照)を備えている。プロセス・チャンバ15は、粉末を広げている操作中に過剰の粉末を受け入れるように適合された1つ以上の溢れ受入容器(これも図示せず)を備えていてもよい。動作中、粉末スプレッダーは、粉末を粉末床の表面に亘り広げ、可動性構築台の表面上に個別の粉末層を堆積させて、部品入りケーキを形成する。ここに用いているように、「部品入りケーキ」という用語は、焼結粉末および未溶融粉末を含む、構築台の表面上に堆積された可溶性粉末の層を称する。この構築台は、加工すべき各粉末層の厚さを定義するために、小さな段階、例えば、0.125mmずつ、粉末床の下に移動するようにモータ(図示せず)により制御されていてよい。この動きは一方向には限られない。例えば、下方への0.500mmの動きとその後の上方への0.375mmの動きによって、最後の段階から0.125mm低い最終的な下方の位置が得られる。一般に、構築台は、垂直移動の軸(図示せず)に沿って構築シリンダ内で移動可能である。
【0025】
粉末床は、構築チャンバ25が適切に配置され、構築位置に位置決めされたときに、構築シリンダ60内において構築台の垂直移動に実質的に垂直な水平面を画成する。ここに用いたように、「垂直移動」という用語は、構築シリンダ60内で移動するときの、構築台の移動を称する。部品が歪められないことを確実にするために、構築サイクル中ずっと、粉末床を構築台の垂直移動に対して適切に位置決めする必要がある。例えば、構築動作中、分配装置が、測定された量の粉末を粉末床上に分配する。次いで、粉末スプレッダーが、一回以上、粉末床を横断し、構築台の表面に亘って粉末層を均一に分布させて、部品入りケーキを形成する。構築台の垂直移動が、粉末床の表面に対して適切に位置決めされないか、または不適切に位置決めされた場合、構築台上に堆積された溶融粉末から形成された各層は、層の公称位置または予測位置からずれるであろう。その結果、その上に構築される部品の寸法は歪み、その部品が使用できなくなってしまう。
【0026】
レーザ焼結装置10内で構築チャンバ25の配置を行うために、構築チャンバ25は、プロセス・チャンバ15の方向に上方に動かされる。構築チャンバ25を連続的に上方に動かすことによって、構築チャンバ25と支持ハウジング20の両方の位置決め表面が互いに接触して、構築チャンバが粉末床と粉末床内の開口部(図示せず)に対して位置決めされる。プロセス・チャンバ15は、粉末床と構築シリンダ60との間に封止関係を形成するためのシールを含んでもよい(手短に図3参照のこと)。典型的に、そのシールは、粉末床と構築シリンダ60の界面を粉末が通過するのを防ぐのに効果的である耐熱性エラストマー材料からなる。ある実施の形態において、構築チャンバ25は、水平経路に沿って、装填位置と構築位置との間で動かされてもよい。そのような実施の形態において、構築チャンバ25の横方向の動きによって、位置決め表面が互いに接触して、構築チャンバが粉末床に対して位置決めされる。
【0027】
プロセス・チャンバ15と構築チャンバ25の連結前に、取外し可能な構築チャンバ25は、図2に示すように、温度管理ステーション26に接続されることによって、予熱される。温度管理ステーション26は、取外し可能な構築チャンバ25が装置10のプロセス・チャンバ15内に挿入されたときに構築を開始するのに要する時間を減少させるために、構築チャンバ25をレーザ焼結装置10の動作温度にあるかまたはその近くの温度まで予熱することを制御するマイクロプロセッサを備えている。電力は、適切なコンセントに接続された220ボルトの電力供給ライン27から温度管理ステーション26に供給される。温度管理ステーション26のオン/オフ・スイッチ28が、このユニットへの電気の流れを制御する。電源コード29は、構築台車30のコード31に繋がり、コード31は、取外し可能な構築チャンバ25内の構築シリンダ60の周りに配列された3または4個のバンド・ヒータ44(1つのみが図3に示されている)およびピストン・ヒータに取り付けられたヒータ(図示せず)への電気エネルギーの流れを制御するコントロール・ボックス32に繋がっている。バンド・ヒータ44は、例えば、3個のバンド・ヒータ・システムでは、シリンダ60の底部から頂部への高さの約30%、60%および90%の位置で構築シリンダ60の周りに垂直に配列されている。
・・・(略)・・・
【0031】
プロセス・チャンバ15と構築チャンバ25が接合された後、レーザビームがレーザ(図示せず)によって発せられ、走査システム(図示せず)を経由して標的表面または区域に向けられる。この走査システムは、一般に、レーザビームを偏向させるガルバノ・ミラーを含む。ここに用いているように、「標的区域」という用語は、部品入りケーキの頂面を称する。レーザ・システムおよびガルバノメータ・システムは通常は、レーザ窓によってプロセス・チャンバ15から隔てられている。ある実施の形態において、プロセス・チャンバ15は、部品入りケーキおよび部品入りケーキに隣接した粉末床のある区域を加熱する放射加熱器(図示せず)を1つ以上備えていてよい。レーザビームの偏向と焦点距離は、レーザエネルギーをその層に形成すべき部品の断面に対応する可溶性粉末層の位置に方向付けるために、レーザの変調と共に、制御できるものである。
【0032】
ある実施の形態において、プロセス・チャンバ15は、下にある粉末床上に落とされる粉末の量を調節するためにモータ(図示せず)により制御された底部供給機構を有する1つの粉末供給ホッパーを備えた粉末分配システムを含む。この供給機構は、例えば、スター・フィーダ、オーガ・フィーダ、または回転ドラム・フィーダを含むいくつかのタイプのものであってよい。ある実施の形態において、粉末分配システムは、構築チャンバ内に配置された1つ以上の供給ピストンを含んでもよい。この最後の実施の形態において、1つ以上の供給ピストンは、測定した量の粉末を粉末床中に押し上げる。その後、粉末スプレッダーがその粉末を拾い上げ、粉末床と構築台に亘り均一な様式で広げる。別の実施の形態において、粉末供給システムは、粉末を送達し、次いで広げるための、ホッパー開口部の底部に取り付けられたブレードを有する往復運動式オーバーヘッド・ホッパー・システムから構成されてもよい。
・・・(略)・・・
【0044】
動作の際、構築チャンバ25は、温度管理ステーション26に接続されることによって予熱される。電力が温度管理ステーション26に提供され、コード29および31を介してコントロール・ボックス32にリレーされ、構築チャンバ25のバンド・ヒータ44とピストン・ヒータに最大のエネルギーを提供して、構築チャンバを、レーザ焼結装置10の動作温度またはそれに近い温度まで加熱する。一旦予熱されたら、電気接続が外され、構築台車30を含む構築チャンバ25が、開口部23を通して支持ハウジング20の内部に挿入される。ガイドレール24は、構築台車30を位置決めし、装填位置に案内するのに役立つ。構築台車30は、オペレータが、構築チャンバ25を動かし、位置決めし直すのに役立つであろう1つ以上のローラ33およびレール45またはハンドルを含んでよい。
【0045】
一旦、構築チャンバ25が支持ハウジング20の内部空間内に挿入され、装填位置に配置されたら、昇降装置36,38は、上方に移動し、構築台車30の表面に接触する。次いで、昇降装置36,38は、プロセス・チャンバ15の方向に上方に構築チャンバ25を動かすように進む。各位置決めボール35は、支持ハウジング20上で係合した受入部34a,34bおよび34c内の対応する凹部に解放可能に係合する。各凹部は、構築チャンバ25のある程度の初期ずれを許容する面取り部を含むであろう。連続して上方に動かされると、位置決めボール35が面取り部に沿って上方に移動し、それぞれ、位置決め対の受入部の凹部中に入る。その結果、構築チャンバ25がゆっくりと、プロセス・チャンバ15に対して正確に位置決めされる。構築チャンバ25は、各位置決めボール35が対応する凹部内に着座するまで上方に動き続ける。この着座した時点で、構築チャンバ25の上方の動きは停止される。今では、構築チャンバ25は構築位置にある。構築台は、構築位置にある間に、粉末床に対して水平と垂直に位置決めされており、構築シリンダと粉末床との間には封止関係が存在する。次いで、上述したように、部品が構築される。
【0046】
部品の完成後、昇降装置36,38が下方に動き、構築チャンバ25がプロセス・チャンバ15から分かれ、装填位置に下方に動く。新たに形成された部品45(または一組の部品)が図3の構築シリンダ60内に示されている。構築チャンバ25は、支持ハウジング20から取り出され、電源コード29を介して温度管理ステーション26に接続される準備ができている。プロセス・チャンバ15は、新たに形成された部品45が、取り出された構築チャンバ25内で冷却され続けている間に、今では、第2の部品を構築するのに使用できる。ある実施の形態において、構築チャンバ25の内部空間をカバー42で囲むことが望ましいであろう。このカバー42は、制御された速度での部品の冷却を促進するのに役立つであろう。構築チャンバ25はさらに、部品を、制御された速度で冷却するのに役立つ断熱裏地を備えていてもよい。ある実施の形態において、構築チャンバ25および/またはカバー42は、制御された環境における部品の冷却をさらに促進する放射加熱器および/または不活性ガス供給源をさらに含む。これらの両方は、温度管理ステーション26により制御されている。」

・「【図1】

【図2】

【図3】



(2)引用発明
引用文献1に記載された事項を整理すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「プロセス・チャンバ15、支持ハウジング20及び構築台車30により支持されている取外し可能な可動性構築台を備えた構築チャンバ25を備えているレーザ焼結装置10。」

2 引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先日前に日本国内において、頒布された引用文献2には、「三次元物品を構築する装置及び三次元物品を構築する方法」に関して、おおむね次の記載(以下、「引用文献2に記載された事項」という。)がある。

・「【0017】
図1及び図2において、粉末供給システムは、粉末材料(2)を供給するための容器;フィルターメッシュ(7)へ、また粉末投与器(3)へ導く粉末移送システム(32);粉末を構築チャンバー(1)に適用するためのローラー(16)を含む拡散システム、を含む。構築チャンバー(1)は内壁(8)及び外壁(9);例えば、ピストンにより、該構築チャンバーの内壁に沿って移動可能な構築プラットホーム(10)を含む。前記構築プラットホームは、グリッドを含む上部及び折り畳み可能なフラップを含む下部から造られている。」

・「【図1】



3 引用文献3に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先日前に日本国内において、頒布された引用文献3には、「改良された高速試作製造装置および方法」に関して、おおむね次の記載(以下、「引用文献3に記載された事項」という。)がある。

・「【0023】
本発明の装置および方法は、1つの樹脂槽、またはある層が選択された槽内で固化されている間に他の層がリコートされているような、1つのレーザにより動作される2つ以上の樹脂槽に適用できる。一般に、2つの樹脂槽は、次々にレーザが当てられるが、適切なスキャナおよびビームスプリッタを用いて、3つ以上にレーザを当てることも可能である。」

・「【0050】
樹脂レベルの制御に使用するための補給樹脂容器127,128,129を備えた槽21が、取外しできるカバー141と共に、図32に示されている。樹脂容器127,128および129は、取付けと取外しを容易にするために係合ハンドル136,137および138により槽から旋回式に離される傾けられる貯蔵部133,134および135内にそれぞれ保持されている。各容器127,128および129は、迅速取外二重切離し連結により、槽21に連結されている。各容器127,128および129は、連結されたときに、樹脂が容器から連結部を通って槽21中に流動できるように、槽21上の対応する貯蔵部133,134および135内の連結部と係合するノズル(両方とも示されていない)を有する。各ノズルにはRFIDタグが成形されているか、または他の様式でノズルに組み込まれている。各連結は「スマート・カプラ」である。何故ならば、樹脂タイプ、樹脂のバッチ番号、使用期限、樹脂容積および潜在的に容器が用いられている槽とステレオリソグラフィー装置の身元などの、容器とその中の樹脂についてのデータを検出し、ステレオリソグラフィー装置の制御コンピュータに送るためのリーダが、そのカプラに成形されているかまたは他の様式で組み込まれているからである。リーダは近接リーダであり、それゆえ、ステレオリソグラフィー装置の制御コンピュータは、間違った樹脂または期限の切れた樹脂が容器内に取り付けられている場合、容器のノズルが貯蔵部の連結を介して槽に継手連結される前に、オペレータに警告を発することができる。槽とステレオリソグラフィー装置のコンピュータとの間のこのデータフローは、槽とステレオリソグラフィー装置が適切なケーブルにより連結されたときに、データおよびパワーポート101を通じて行われる。各容器は、そこから槽中に流動する樹脂の量を追跡記録することもできる。補給樹脂容器の内の2つ(127,128)は、構築の間に槽を補充し、ベローズ・ポンプ102により動作して、420リットルの容量の槽について、毎分約1リットルの樹脂の十分な一回の動作量を供給する。槽21の壁に取り付けられた2つのオムロンの超音波センサ(図示せず)が、樹脂を加える必要があるか否かを知らせるために、構築前に樹脂が所定の最小値と最大値との間にあるか否かを決定する。各槽21も、図11および12の昇降機取付フック86が支持されている外壁に、リーダ81により読み取られるRFIDタグ19を有し、このリーダが、槽の身元、樹脂の初期量および取付け日に関するデータをステレオリソグラフィー装置の制御コンピュータに送る。」

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明を対比する。
ア 引用発明における「構築台車30」は本願発明1における「ハウジング」に相当し、同様に、「可動性構築台を備えた構築チャンバ25」は「造形室」に相当する。

イ 引用文献1の【0023】の「プロセス・チャンバ15は、粉末床に亘り分配された粉末を拾い上げ、均一な様式で広げるように適合された粉末スプレッダーを備えている。」及び【0032】の「プロセス・チャンバ15は、下にある粉末床上に落とされる粉末の量を調節するためにモータ(図示せず)により制御された底部供給機構を有する1つの粉末供給ホッパーを備えた粉末分配システムを含む。」という記載によると、引用発明における「プロセス・チャンバ15」は本願発明1における「造形材料室」に相当する。

ウ 引用発明における「可動性構築台を備えた構築チャンバ25」は、「構築台車30」により支持されたものであり、引用文献1の【0021】の「構築台車30は、構築チャンバ25と共に、支持ハウジング20中に取外し可能に挿入されている。」という記載によると、引用発明における「可動性構築台を備えた構築チャンバ25」と「構築台車30」を組み合わせたものは、一体として移動可能なものである。
また、引用文献1の【0027】の「プロセス・チャンバ15と構築チャンバ25の連結前に、取外し可能な構築チャンバ25は、図2に示すように、温度管理ステーション26に接続されることによって、予熱される。」、【0031】の「プロセス・チャンバ15と構築チャンバ25が接合された後、レーザビームがレーザ(図示せず)によって発せられ、走査システム(図示せず)を経由して標的表面または区域に向けられる。」という記載及び図2によると、引用発明における「プロセス・チャンバ15」は、「可動性構築台を備えた構築チャンバ25」と「構築台車30」を組み合わせたものとは一体としては移動しないものである。
したがって、引用発明における「可動性構築台を備えた構築チャンバ25」と「構築台車30」を一体として移動可能に組み合わせたものが、本願発明1における「造形モジュール」に相当する。

エ 引用文献1の【0024】の「この構築台は、加工すべき各粉末層の厚さを定義するために、小さな段階、例えば、0.125mmずつ、粉末床の下に移動するようにモータ(図示せず)により制御されていてよい。」という記載によると、引用発明における「可動性構築台を備えた構築チャンバ25」は、加工すべき各粉末層の厚さを定義するために、小さな段階、例えば、0.125mmずつ、粉末床の下に移動するようにモータにより制御されるものであるから、本願発明1における「造形材料供給器から前記造形材料の連続した層を受け取るための可動支持部材」に相当する部材を含むものである。

オ したがって、両者は次の点で一致する。
「造形モジュールであって、
ハウジングと、
前記ハウジングに設けられた造形室であって、造形材料供給器から造形材料の連続した層を受け取るための可動支持部材を含む、造形室とを含む、造形モジュール。」

カ そして、両者は次の点で相違する。
<相違点1>
本願発明1においては、「造形モジュール」が「造形材料を保持するために前記ハウジングに設けられた造形材料室」を含んだ上で、「前記造形材料室が、前記造形室の下にあり、前記造形室が、(前記ハウジングに設けられた)前記造形材料室から独立して」いるものであるのに対し、引用発明においては、「可動性構築台を備えた構築チャンバ25」と「構築台車30」は一体として移動可能に組み合わせられているものの、本願発明1における「造形材料室」に相当する「プロセス・チャンバ15」は「可動性構築台を備えた構築チャンバ25」及び「構築台車30」と一体として移動可能には組み合わせられていないため、「造形モジュール」が「造形材料を保持するために前記ハウジングに設けられた造形材料室」を含んでいるとはいえないし、「前記造形材料室が、前記造形室の下にあり、前記造形室が、(前記ハウジングに設けられた)前記造形材料室から独立して」いるともいえない点。

<相違点2>
本願発明1においては、「前記造形モジュールは、積層造形システムの造形レシーバの中に取り外し可能に挿入可能であり、それによって、前記積層造形システムは、前記可動支持部材上に受け取られた前記連続した層の一部を硬化させることができる」ものであるのに対し、引用発明においては、「造形モジュール」に相当する「可動性構築台を備えた構築チャンバ25」と「構築台車30」を一体として移動可能に組み合わせたものは、「プロセス・チャンバ15」及び「支持ハウジング20」を備えている「レーザ焼結装置10」に挿入されるようになっている点。

(2)判断
ア 相違点1について
まず、相違点1について検討する。
引用発明は、引用文献1の【0001】の記載によると、「レーザ焼結および最初の部品を構築し終わった後に続いての構築を開始するためにレーザ焼結システムをより迅速に次の準備をする」ことを発明の課題とするものであって、【0011】の記載によると、「部品を有する部品入りケーキは構築チャンバ内で冷却することができ、新たな予熱された構築チャンバがレーザ焼結システム中に挿入されるようになっている取外し可能な構築チャンバを有するレーザ焼結装置を提供する」ものである。すなわち、引用発明は、本願発明1における「造形室」に相当する「可動性構築台を備えた構築チャンバ25」を冷却のために取り外し、新たな予熱された「可動性構築台を備えた構築チャンバ25」を挿入するものであって、本願発明1における「造形材料室」に相当する「プロセス・チャンバ15」を「可動性構築台を備えた構築チャンバ25」と一体にして取り外すものではなく、また、そうする動機付けはない。
また、引用文献2及び3にも、引用発明において、「プロセス・チャンバ15」を「可動性構築台を備えた構築チャンバ25」と一体にして取り外す動機付けとなるような記載はない。
したがって、引用発明において、引用文献2及び3に記載された事項に基づいて、相違点1に係る本願発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。

イ 効果について
本願発明1は、「多用途性が得られる場合がある。」、「連続したプリントジョブを、プリントジョブ間に僅かな時間遅延を有するだけで、又は時間遅延なしに完了することを可能にするといったように、システムの連続した使用におけるより高速な使用、及びより少ない回数の中断を可能にすることによって、高い生産性を実現することができる。」及び「造形モジュールのより迅速なクリーニングが可能になる場合がある。」(本願明細書の【0009】参照。)等の引用発明並びに引用文献2及び3に記載された事項からは予測し得ない格別顕著な効果を奏するものである。

ウ まとめ
したがって、相違点2について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明並びに引用文献2及び3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2及び3について
請求項2及び3は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、本願発明2及び3は、本願発明1をさらに限定したものといえる。
したがって、本願発明2及び3は、本願発明1と同様に、引用発明並びに引用文献2及び3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 本願発明4について
(1)対比
本願発明4と引用発明を対比する。
ア 本願発明4と引用発明との間には、本願発明1と引用発明との間と同様の相当関係が成り立つ。

イ したがって、両者は次の点で一致する。
「造形モジュールであって、
ハウジングと、
前記ハウジングに設けられた造形室であって、造形材料供給器から造形材料の連続した層を受け取るための可動支持部材を含む、造形室とを含む、造形モジュール。」

ウ そして、両者は次の点で相違する。
<相違点3>
本願発明4においては、「造形モジュール」が「造形材料を保持するために前記ハウジングに設けられた造形材料室」を含んだ上で、「前記造形室が、(前記ハウジングに設けられた)前記造形材料室から独立して」いるものであるのに対し、引用発明においては、「可動性構築台を備えた構築チャンバ25」と「構築台車30」は一体として移動可能に組み合わせられているものの、本願発明4における「造形材料室」に相当する「プロセス・チャンバ15」は「可動性構築台を備えた構築チャンバ25」及び「構築台車30」と一体として移動可能には組み合わせられていないため、「造形モジュール」が「造形材料を保持するために前記ハウジングに設けられた造形材料室」を含んでいるとはいえないし、「前記造形室が、(前記ハウジングに設けられた)前記造形材料室から独立して」いるともいえない点。

<相違点4>
本願発明4においては、「造形モジュール」が「前記ハウジングに設けられたコンピュータ読み取り可能媒体であって、前記コンピュータ読み取り可能媒体が、前記造形モジュールの特徴を表す造形モジュールデータを含む、コンピュータ読み取り可能媒体」を含むものであるのに対し、引用発明においては、そのようには特定されていない点。

<相違点5>
本願発明4においては、「前記造形モジュールは、積層造形システムの造形容量の中に取り外し可能に挿入可能であり、それによって、前記積層造形システムは、前記可動支持部材上に受け取られた前記連続した層の一部を硬化させることができる」ものであるのに対し、引用発明においては、「造形モジュール」に相当する「可動性構築台を備えた構築チャンバ25」と「構築台車30」を一体として移動可能に組み合わせたものは、「プロセス・チャンバ15」及び「支持ハウジング20」を備えている「レーザ焼結装置10」に挿入されるようになっている点。

(2)判断
ア 相違点3について
まず、相違点3について検討する。
引用発明は、上記第6 1(2)アのとおり、本願発明4における「造形室」に相当する「可動性構築台を備えた構築チャンバ25」を冷却のために取り外し、新たな予熱された「可動性構築台を備えた構築チャンバ25」を挿入するものであって、本願発明4における「造形材料室」に相当する「プロセス・チャンバ15」を「可動性構築台を備えた構築チャンバ25」と一体にして取り外すものではなく、また、そうする動機付けはない。
また、引用文献2及び3にも、引用発明において、「プロセス・チャンバ15」を「可動性構築台を備えた構築チャンバ25」と一体にして取り外す動機付けとなるような記載はない。
したがって、引用発明において、引用文献2及び3に記載された事項に基づいて、相違点3に係る本願発明4の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。

イ 効果について
本願発明4は、本願発明1と同様に、上記第6 1(2)イのとおりの引用発明並びに引用文献2及び3に記載された事項からは予測し得ない格別顕著な効果を奏するものである。

ウ まとめ
したがって、相違点4及び5について検討するまでもなく、本願発明4は、引用発明並びに引用文献2及び3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

4 本願発明5ないし8について
請求項5ないし8は、請求項4を直接又は間接的に引用するものであって、本願発明5ないし8は、本願発明4をさらに限定したものといえる。
したがって、本願発明5ないし8は、本願発明4と同様に、引用発明並びに引用文献2及び3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

5 本願発明9について
(1)対比
本願発明9と引用発明を対比する。
ア 本願発明9と引用発明との間には、本願発明1と引用発明との間と同様の相当関係が成り立つ。

イ したがって、両者は次の点で一致する。
「積層造形システムのための造形モジュールであって、前記造形モジュールが、
ハウジングと、
前記ハウジングに設けられた造形室であって、造形材料供給器から造形材料の連続した層を受け取るための可動支持部材を含む、造形室とを含む、造形モジュール。」

ウ そして、両者は次の点で相違する。
<相違点6>
本願発明9においては、「造形モジュール」が「造形材料を保持するために前記ハウジングに設けられた造形材料室」を含んだ上で、「前記造形室が、(前記ハウジングに設けられた)前記造形材料室から独立して」いるものであるのに対し、引用発明においては、「可動性構築台を備えた構築チャンバ25」と「構築台車30」は一体として移動可能に組み合わせられているものの、本願発明9における「造形材料室」に相当する「プロセス・チャンバ15」は「可動性構築台を備えた構築チャンバ25」及び「構築台車30」と一体として移動可能には組み合わせられていないため、「造形モジュール」が「造形材料を保持するために前記ハウジングに設けられた造形材料室」を含んでいるとはいえないし、「前記造形室が、(前記ハウジングに設けられた)前記造形材料室から独立して」いるともいえない点。

<相違点7>
本願発明9においては、「前記造形モジュールが、もう一つのそのような造形モジュールと同時に、積層造形システムの造形容量の中に取り外し可能に挿入可能であり、それによって、前記積層造形システムは、前記可動支持部材上に受け取られた前記連続した層の一部を硬化させることができる」ものであるのに対し、引用発明においては、「造形モジュール」に相当する「可動性構築台を備えた構築チャンバ25」と「構築台車30」を一体として移動可能に組み合わせたものは、「プロセス・チャンバ15」及び「支持ハウジング20」を備えている「レーザ焼結装置10」に挿入されるようになっている点。

(2)判断
ア 相違点6について
まず、相違点6について検討する。
引用発明は、上記第6 1(2)アのとおり、「造形室」に相当する「可動性構築台を備えた構築チャンバ25」を冷却のために取り外し、新たな予熱された「可動性構築台を備えた構築チャンバ25」を挿入するものであって、「造形材料室」に相当する「プロセス・チャンバ15」を「可動性構築台を備えた構築チャンバ25」と一体にして取り外すものではなく、また、そうする動機付けはない。
また、引用文献2及び3にも、引用発明において、「プロセス・チャンバ15」を「可動性構築台を備えた構築チャンバ25」と一体にして取り外す動機付けとなるような記載はない。
したがって、引用発明において、引用文献2及び3に記載された事項に基づいて、相違点6に係る発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。

イ 効果について
本願発明9は、本願発明1と同様に、上記第6 1(2)イのとおりの引用発明並びに引用文献2及び3に記載された事項からは予測し得ない格別顕著な効果を奏するものである。

ウ まとめ
したがって、相違点7について検討するまでもなく、本願発明9は、引用発明並びに引用文献2及び3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

6 本願発明10及び11について
請求項10及び11は、請求項9を直接又は間接的に引用するものであって、本願発明10及び11は、本願発明9をさらに限定したものといえる。
したがって、本願発明10及び11は、本願発明9と同様に、引用発明並びに引用文献2及び3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

7 本願発明12ないし14について
請求項12ないし14は、請求項1、4又は9を直接又は間接的に引用するものであって、本願発明12ないし14は、本願発明1、4又は9をさらに限定したものといえる。
したがって、本願発明12ないし14は、本願発明1、4又は9と同様に、引用発明並びに引用文献2及び3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

8 本願発明15について
本願発明15は、「造形モジュール」の発明である本願発明1ないし14を取り外し可能に受け入れるための「積層造形システム」の発明であるから、本願発明1ないし14を前提とした発明である。
したがって、本願発明15は、本願発明1ないし14と同様に、引用発明並びに引用文献2及び3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第7 原査定についての判断
上記第6のとおり、本願発明1ないし15は、引用発明、すなわち引用文献1に記載された発明並びに引用文献2及び3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第8 令和元年6月14日に通知された最後の拒絶理由についての判断
令和元年6月21日に提出された手続補正書により、請求項10の「造形造形室」という記載は、「前記造形室」と補正され、請求項12の「請求項1?10の何れか一項に記載の造形モジュール。」という記載は、「請求項1、請求項3(但し、請求項2を引用する場合を除く)、及び請求項4?9の何れか一項に記載の造形モジュール。」と補正された。
したがって、令和元年6月14日に通知された最後の拒絶理由は解消した。

第9 むすび
以上のとおり、原査定の拒絶の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-07-17 
出願番号 特願2016-564941(P2016-564941)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (B29C)
P 1 8・ 121- WY (B29C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 田代 吉成  
特許庁審判長 須藤 康洋
特許庁審判官 植前 充司
加藤 友也
発明の名称 三次元物体の生成  
代理人 大西 昭広  
代理人 細井 玲  
代理人 古谷 聡  
代理人 西山 清春  

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