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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16K
管理番号 1353454
審判番号 不服2018-2811  
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-28 
確定日 2019-07-10 
事件の表示 特願2016-537523「ボール弁アセンブリ」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 6月18日国際公開、WO2015/088546、平成28年12月22日国内公表、特表2016-540168〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2013年(平成25年)12月13日を国際出願日とする出願であって、平成29年6月30日付けの拒絶理由の通知に対し、平成29年9月25日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、平成29年11月7日付けで拒絶査定がなされ(発送日:平成29年11月14日)、これに対して平成30年2月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされたものである。

第2 平成30年2月28日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年2月28日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「【請求項1】
チャンバ(113)の形態のボールシート(119)、前記チャンバ(113)と連通する入口(115)、前記チャンバ(113)と連通する出口(117)、および前記チャンバ(113)と連通するステム通路を画定するハウジング(112)であって、
前記入口(115)、前記チャンバ(113)、および前記出口(117)は、前記ハウジング(112)を通る流路(123)を画定する、ハウジング(112)と、
ボール(114)であって、通過通路(121)と、前記ボール(114)から延びるステム(126)とを有し、前記ボール(114)は前記ボールシート(119)内に着座し、前記ステム(126)は前記ステム通路を通って延び、
開位置と閉位置との間の前記ステム(126)の回転は、前記通過通路(121)を通る流体の流れを所望の流量に制御するために前記通過通路(121)と前記流路(123)の位置合わせおよび位置ずれにそれぞれ作用する、ボール(114)と、
第1の位置と第2の位置との間を直線的に移動可能なピストン(138)を有するリニアアクチュエータ(118)と、
前記ピストン(138)を前記ステム(126)に連結し、前記ピストン(138)の直線運動を前記ステム(126)の回転運動に変換する回転変換器(116)とを備え、
前記回転変換器(116)が、相補的なチャネルおよびフォロワを備え、
前記チャネルが、ピンを備え、
前記リニアアクチュエータ(118)の作動は、前記第1の位置と第2の位置との間の前記ピストン(138)の相対的な直線運動に作用して前記開位置と閉位置との間の前記ステム(126)の対応する相対的な回転運動に作用し、前記通過通路(121)と前記流路(123)の相対的な位置合わせを制御することにより前記流路(123)を通る流体の流れを制御し、
前記ハウジング(112)がさらに、前記ピストン(138)の両側に前記ピストン(138)を収容するピストンチャンバ(136)に対する流体入口と流体出口とを備え、
前記ピストン(138)の両側の前記ピストンチャンバ(136)に選択的に供給され、放出される流体圧力は、ピストン(138)の2方向の直線運動に作用する、ボール弁アセンブリ(100)。
【請求項2】
前記ピストンチャンバ(136)が、前記ステム通路の少なくとも一部を形成する請求項3に記載のボール弁アセンブリ(100)。
【請求項3】
単一の前記ハウジング(112)を備える請求項1または2に記載のボール弁アセンブリ(100)。
【請求項4】
前記チャネルが、前記ピストン(138)および前記ステム(126)の一方に位置し、前記フォロワが、前記ピストン(138)および前記ステム(126)の他方に位置する請求項1乃至3のいずれかに記載のボール弁アセンブリ(100)。
【請求項5】
前記フォロワが、少なくとも1つのピンを備える請求項3に記載のボール弁アセンブリ(100)。
【請求項6】
前記フォロワが、第1のねじ山(132)を備える請求項3に記載のボール弁アセンブリ(100)。
【請求項7】
前記チャネルが、前記第1のねじ山(132)に相補的な第2のねじ山(134)を備える請求項6に記載のボール弁アセンブリ(100)。
【請求項8】
チャンバ(113)の形態のボールシート(119)、前記チャンバ(113)と連通する入口(115)、前記チャンバ(113)と連通する出口(117)、および前記チャンバ(113)と連通するステム通路を画定するハウジング(112)であって、
前記入口(115)、前記チャンバ(113)、および前記出口(117)は、前記ハウジング(112)を通る流路(123)を画定する、ハウジング(112)と、
ボール(114)であって、通過通路(121)と、前記ボール(114)から延びるステム(126)とを有し、前記ボール(114)は前記ボールシート(119)内に着座し、前記ステム(126)は前記ステム通路を通って延び、
開位置と閉位置との間の前記ステム(126)の回転は、前記通過通路(121)を通る流体の流れを所望の流量に制御するために前記通過通路(121)と前記流路(123)の位置合わせおよび位置ずれにそれぞれ作用する、ボール(114)と、
第1の位置と第2の位置との間を直線的に移動可能な作動要素を有する空気圧アクチュエータと、
前記作動要素を前記ステム(126)に連結し、前記作動要素の直線運動を前記ステム(126)の回転運動に変換する回転変換器(116)とを備え、
前記回転変換器(116)が、相補的なチャネルおよびフォロワを備え、
前記チャネルが、ピンを備え、
前記空気圧アクチュエータの作動は、前記第1の位置と第2の位置との間の前記作動要素の相対的な直線運動に作用して前記開位置と閉位置との間の前記ステム(126)の対応する相対的な回転運動に作用し、前記通過通路(121)と前記流路(123)の相対的な位置合わせを制御することにより前記流路(123)を通る流体の流れを制御し、
前記ハウジング(112)がさらに、前記ピストン(138)の両側に前記ピストン(138)を収容するピストンチャンバ(136)に対する流体入口と流体出口とを備え、
前記ピストン(138)の両側の前記ピストンチャンバ(136)に選択的に供給され、放出される流体圧力は、ピストン(138)の2方向の直線運動に作用する、ボール弁アセンブリ(100)。
【請求項9】
少なくとも部分的に前記ステム(126)を包含する請求項8に記載のボール弁アセンブリ(100)。
【請求項10】
前記チャネルが、前記作動要素およびステム(126)の一方に位置し、前記フォロワが、前記作動要素およびステム(126)の他方に位置する請求項8または9に記載のボール弁アセンブリ(100)。
【請求項11】
前記フォロワが、少なくとも1つのピン、または少なくとも1つのねじ山(132,134)の少なくとも1つを備える請求項10に記載のボール弁アセンブリ(100)。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、平成29年9月25日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】
チャンバ(113)の形態のボールシート(119)、前記チャンバ(113)と連通する入口(115)、前記チャンバ(113)と連通する出口(117)、および前記チャンバ(113)と連通するステム通路を画定するハウジング(112)であって、
前記入口(115)、前記チャンバ(113)、および前記出口(117)は、前記ハウジング(112)を通る流路(123)を画定する、ハウジング(112)と、
ボール(114)であって、通過通路(121)と、前記ボール(114)から延びるステム(126)とを有し、前記ボール(114)は前記ボールシート(119)内に着座し、前記ステム(126)は前記ステム通路を通って延び、
開位置と閉位置との間の前記ステム(126)の回転は、前記通過通路(121)を通る流体の流れを所望の流量に制御するために前記通過通路(121)と前記流路(123)の位置合わせおよび位置ずれにそれぞれ作用する、ボール(114)と、
第1の位置と第2の位置との間を直線的に移動可能なピストン(138)を有するリニアアクチュエータ(118)と、
前記ピストン(138)を前記ステム(126)に連結し、前記ピストン(138)の直線運動を前記ステム(126)の回転運動に変換する回転変換器(116)とを備え、
前記回転変換器(116)が、相補的なチャネルおよびフォロワを備え、
前記チャネルが、ピンを備え、
前記リニアアクチュエータ(118)の作動は、前記第1の位置と第2の位置との間の前記ピストン(138)の相対的な直線運動に作用して前記開位置と閉位置との間の前記ステム(126)の対応する相対的な回転運動に作用し、前記通過通路(121)と前記流路(123)の相対的な位置合わせを制御することにより前記流路(123)を通る流体の流れを制御する、ボール弁アセンブリ(100)。
【請求項2】
前記ハウジング(112)が、前記ピストン(138)が収容されるピストンチャンバ(136)を画定する請求項1に記載のボール弁アセンブリ(100)。
【請求項3】
前記ハウジング(112)がさらに、前記ピストン(138)の両側に前記ピストンチャンバ(136)に対する流体入口と流体出口とを備え、それにより流体圧力を前記ピストン(138)の前記直線運動に作用するように使用することができる請求項2に記載のボール弁アセンブリ(100)。
【請求項4】
前記ピストンチャンバ(136)が、前記ステム通路の少なくとも一部を形成する請求項3に記載のボール弁アセンブリ(100)。
【請求項5】
単一の前記ハウジング(112)を備える請求項1乃至4のいずれかに記載のボール弁アセンブリ(100)。
【請求項6】
前記チャネルが、前記ピストン(138)および前記ステム(126)の一方に位置し、前記フォロワが、前記ピストン(138)および前記ステム(126)の他方に位置する請求項1乃至5のいずれかに記載のボール弁アセンブリ(100)。
【請求項7】
前記フォロワが、少なくとも1つのピンを備える請求項5に記載のボール弁アセンブリ(100)。
【請求項8】
前記フォロワが、第1のねじ山(132)を備える請求項5に記載のボール弁アセンブリ(100)。
【請求項9】
前記チャネルが、前記第1のねじ山(132)に相補的な第2のねじ山(134)を備える請求項8に記載のボール弁アセンブリ(100)。
【請求項10】
前記ボール(114)が通常閉位置に維持されるように、前記ピストン(138)を前記第2の位置に付勢する付勢要素をさらに備える請求項1乃至9のいずれかに記載のボール弁アセンブリ(100)。
【請求項11】
チャンバ(113)の形態のボールシート(119)、前記チャンバ(113)と連通する入口(115)、前記チャンバ(113)と連通する出口(117)、および前記チャンバ(113)と連通するステム通路を画定するハウジング(112)であって、
前記入口(115)、前記チャンバ(113)、および前記出口(117)は、前記ハウジング(112)を通る流路(123)を画定する、ハウジング(112)と、
ボール(114)であって、通過通路(121)と、前記ボール(114)から延びるステム(126)とを有し、前記ボール(114)は前記ボールシート(119)内に着座し、前記ステム(126)は前記ステム通路を通って延び、
開位置と閉位置との間の前記ステム(126)の回転は、前記通過通路(121)を通る流体の流れを所望の流量に制御するために前記通過通路(121)と前記流路(123)の位置合わせおよび位置ずれにそれぞれ作用する、ボール(114)と、
第1の位置と第2の位置との間を直線的に移動可能な作動要素を有する空気圧アクチュエータと、
前記作動要素を前記ステム(126)に連結し、前記作動要素の直線運動を前記ステム(126)の回転運動に変換する回転変換器(116)とを備え、
前記回転変換器(116)が、相補的なチャネルおよびフォロワを備え、
前記チャネルが、ピンを備え、
前記空気圧アクチュエータの作動は、前記第1の位置と第2の位置との間の前記作動要素の相対的な直線運動に作用して前記開位置と閉位置との間の前記ステム(126)の対応する相対的な回転運動に作用し、前記通過通路(121)と前記流路(123)の相対的な位置合わせを制御することにより前記流路(123)を通る流体の流れを制御する、ボール弁アセンブリ(100)。
【請求項12】
少なくとも部分的に前記ステム(126)を包含する請求項11に記載のボール弁アセンブリ(100)。
【請求項13】
前記チャネルが、前記作動要素およびステム(126)の一方に位置し、前記フォロワが、前記作動要素およびステム(126)の他方に位置する請求項11または12に記載のボール弁アセンブリ(100)。
【請求項14】
前記フォロワが、少なくとも1つのピン、または少なくとも1つのねじ山(132,134)の少なくとも1つを備える請求項13に記載のボール弁アセンブリ(100)。
【請求項15】
前記ボール(114)が通常閉位置に維持されるように、前記作動要素を前記第2の位置に付勢する付勢要素をさらに備える請求項11乃至14のいずれかに記載のボール弁アセンブリ(100)。」

2.補正の適否
本件補正前の特許請求の範囲は、請求項の数が15であり、請求項1及び請求項11が「ボール弁アセンブリ」についての物の発明に係る独立形式の請求項であり、一方、本件補正後の特許請求の範囲は、請求項の数が11であり、請求項1及び請求項8が「ボール弁アセンブリ」についての物の発明に係る独立形式の請求項である。
請求項1についての本件補正は、本件補正前の請求項1に「前記ハウジング(112)がさらに、前記ピストン(138)の両側に前記ピストン(138)を収容するピストンチャンバ(136)に対する流体入口と流体出口とを備え、前記ピストン(138)の両側の前記ピストンチャンバ(136)に選択的に供給され、放出される流体圧力は、ピストン(138)の2方向の直線運動に作用する」という事項(以下、「補正事項」という。)を加入するものである。そして、補正事項の一部である「前記ハウジング(112)がさらに、前記ピストン(138)の両側に前記ピストン(138)を収容するピストンチャンバ(136)に対する流体入口と流体出口とを備え」ることは、本件補正前の請求項1を引用する請求項2を引用する請求項3に係る発明を特定する事項である「前記ハウジング(112)が、前記ピストン(138)が収容されるピストンチャンバ(136)を画定」し、「前記ハウジング(112)がさらに、前記ピストン(138)の両側に前記ピストンチャンバ(136)に対する流体入口と流体出口とを備え」ることに相当し、更に補正事項のその余の事項である「前記ピストン(138)の両側の前記ピストンチャンバ(136)に選択的に供給され、放出される流体圧力は、ピストン(138)の2方向の直線運動に作用する」ことは、本件補正前の請求項1を引用する請求項2を引用する請求項3に係る発明を特定する事項である「それにより流体圧力を前記ピストン(138)の前記直線運動に作用するように使用する」ことを、前記ピストンの前記直線運動に作用するように前記流体圧力が使用される態様の点において限定したものである。
そうすると、本件補正後の請求項1は、本件補正前の請求項3を減縮したものであって、本件補正前の請求項3に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、前記「1(1)」に記載した、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
(2)引用例の記載事項
ア.引用例1
(ア)原査定の拒絶理由で引用された本願出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用例である、特公昭48-4326号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の記載がある(下線は、当審が付与した。)。
ア-a.「図面において、数字10はノーマン・エフ・ブラウンの米国特許第3384337号に記載される型式の回転玉弁を総体的に示す。弁はハウジング11を備え、該ハウジングは横孔14と連通する入口通路12及び出口通路13を有し、前記孔の中には玉型回転プラグ閉鎖部材15が回転自在に配設される。玉閉鎖部材は弁座部材16及び17と係合し、弁座部材は玉部材の中央球状部分19と接触すべくばね18によって弾性的に偏倚される。」(第1ページ第2欄第22?31行)
ア-b.「閉鎖部材のトラニオン20及び21は転り軸受22及び23によって回転自在に支持される。」(第1ページ第2欄第31?32行)
ア-c.「閉鎖部材15は横断流路乃至孔35を有し、これは弁座16及び17と連通すべく回動されるようになっており、連通した時に弁を介する流れを許容する。閉鎖部材が第1図に示す位置へと90°回転せしめられると、入口12と出口13の間で本体を介する流れは遮断阻止される。」(第2ページ第3欄第7?12行)
ア-d.「遠隔点からの流体圧力によって弁を作動させるために、モータ組立体乃至作動機構40が設けられる。この機構はモータ機構乃至部分41と回転子機構乃至部分42とを包含する。モータ機構が往復線運動を生じさせるために流体圧力で制御される適当な手段であり得るのに対して、回転子機構は弁10のトラニオン21をその長手方向軸線の周りに回転させるために前記線運動を回転運動に変換する。」(第2ページ第3欄第13?21行)
ア-e.「モータ機構は内部を摺動自在のピストン46を有する本体乃至ハウジング45を備える。密封リング部材47及び48がピストンを取巻き、そしてピストンと円筒状本体の内壁49との間を密封する。細長いコイルばね50がハウジング内に配設され、そしてピストンの下側51と、回転子機構の上端にあってハウジング45がねじ53によって連結される閉鎖連結用フランジ52との間に拘束される。ピストン棒54がピストン46の下側の中央ボス46aにねじ55によって連結され、ハウジング45の内壁49の軸線方向に、回転子機構43のスプール状本体58の長手方向孔57の上端にある軸線方向開口56を通って下向きに延びる。」(第2ページ第3欄第22?35行)
ア-f.「回転子機構のスプール状本体58はその下端に外環状フランジ59を有し、そして適当なボルト60がフランジの開口を通って延びて弁ハウジング11に挿入され、回転子機構を回転閉鎖部材15のトラニオン21と心合させて弁ハウジング上の適所に保持する。閉鎖部材15を回転させるために、細長い管状作動子乃至回転スリーブ65がスプール状本体58の孔57内に回転自在に配設される。スリーブの孔の下方部分は平部65a(第5図)を備え、または六角乃至他の非円形状を有し、それはトラニオン21の突出端にある相補形状のボス66と係合するようになっており、しかしてスリーブ65の回転によりトラニオン及び閉鎖部材15が回転せしめられる。スリーブはボス66にしまり嵌合し、そしてボスの下端にある肩部67の係合によって下向き移動しないように保持される。スリーブの上端は孔57の上端で軸線方向開口56を取巻く内環状肩部56aの下方で孔57内に収容され、そしてスリーブは本体の孔57内で自由に回転し得る。細長くて長手方向に延びるスロット68が、横断作動ピン70に取付けたスライド軸受部材69を受容するためにスリーブの直径方向両側に設けられ、前記ピンはスリーブを横切って直径方向に延び、そして閉鎖ヘッド72に形成した横開口71ならびに軸受シンプル75の懸下裾部74に形成した開口73内に係合せしめられる。軸受シンプルの上端部分は内環状フランジ76を形成する滅径孔を有し、該フランジは、保持ピン79によりピストン棒54の下端に連結された延長部78の外環状軸受フランジ77を覆って係合する。軸受80が軸受フランジ77の上表面と内環状フランジ76との間、ならびに閉鎖ヘッド72の上端と軸受フランジ77の下表面との間に配設され、かくてシンプル及び閉鎖ヘッドとこれに連結されたピン70はピストン棒54の長手方向軸線に関して自由に回転し得る。転り玉又はころ軸受90がピン70の外方減径端に取付けられ、そして本体58の壁の直径方向対向側に形成した弓状乃至螺旋状カムスロット91内を移動する。スロット91は角配向において好ましくは螺旋状であって、内部に位置する玉またはころ軸受90をしてピストン棒54及びスリーブ65の長手方向軸線の周りの90°の弧にわたり移動せしめるに十分な長さの弧にわたって延在する。
スリーブ65に設けた垂直スロット68とのスライド軸受部材69の係合は、ピストン棒54が長手方向に移動せしめられ且つ軸受90が螺旋カムスロット91に沿って移動する時、スリーブをその長手方向軸線の周りに回転せしめる。かくて、ピストン棒54の長手方向運動は作動スリーブ65の回転運動に、従ってまた閉鎖部材15のトラニオン21の回転に変換される。」(第2ページ第3欄第35行?第4欄第43行)
ア-g.「加圧下の作動用流体が導管100、ならびにハウジング45の開口102内に取付けた取付具101を介してハウジングの孔49の中、ピストン46の上に導入される。このように導入された流体はピストンをばねの力に抗してハウジング内を下向きに移動させ、かくて閉鎖部材をして90°の弧にわたり回転せしめて通常閉鎖の位置から弁を介する流れを許す開放位置へ移動させる。」(第2ページ第4欄第44行?第3ページ第5欄第7行)
ア-h.「従って、回転玉弁は作動機構40によって開放位置と閉鎖位置との間を回転自在であり、そしてモータ機構のハウジング45のピストン46の上方に導入される流体圧力により開放位置に通常保持されることが判るであろう。ハウジング内の圧力が導管100を介して減少乃至解放されると、ばね50がピストンを上向きに移動させ、回転子機構42をして閉鎖部材を閉鎖位置へ回転せしめ、しかしてばねは通常の条件下で閉鎖部材を回転させるに十分な程度強力である。」(第3ページ第5欄第36行?第6欄第1行)
ア-i.「特許請求の範囲
1 弁ハウジング;トラニオンを取付けそして前記弁ハウジング内を通る流路を有し、前記トラニオンの軸線の周りに開放位置と閉鎖位置との間を回転自在の弁部材;弁部材のトラニオンの軸線方向で直線状に可動の作動部材を有する流体圧力モータユニット;前記直線状可動の作動部材と連結されそして作動部材の直線運動を前記トラニオンの軸線の周りの自己の回転運動に変換するための手段を有する回転子機構;前記トラニオンの軸線の周りに弁部材を回転させるために前記回転子機構を回転自在弁部材の前記トラニオンと連結する手段;前記流体圧力モータユニット内に設けられて前記作動部材と連結された内部を可動の圧力応答部材を有する室;弁部材を開放位置へと回転させるべく回転子機構をしてトラニオン及び弁部材を回転せしめるよう前記作動部材を直線状に移動させるために前記圧力応答部材を移動させるべく前記室へ圧力下の制御流体を導入するための手段;前記室からの制御流体圧力の解放と共に弁を閉鎖位置へ移動させるために回転子機構を反対方向に回転するよう作動させるべく前記制御流体圧力による運動の方向と反対の直線状方向に前記圧力応答部材を作動させるための前記モータユニット内の弾性手段;ならびに弁の閉鎖に際して弾性手段を補助すべく前記トラニオンに設けられたブースタ手段を包含し;前記ブースタ手段が、前記弁部材の前記トラニオン内に設けられて弁部材の流路と流体連通状態にある室;ならびに該室内を摺動自在であって、前記弁部材を閉鎖位置へ回転させるべく前記弾性手段と協働して前記回転子機構を移動させるために前記直線状可動作動部材との作動係合状態へと移動すべく、弁部材流路を通じて室に入る弁ハウジング内の流体の圧力により作動可動なブースタピストンより成ることを特徴とする弁作動装置。」
そして、記載事項ア-a及びア-b並びに第1図の記載からみて、引用例1には次の事項が開示されていると理解できる。
ア-j.ハウジング11は、横孔14と、横孔14と連通する入口通路12及び出口通路13と、横孔14と連通し、玉型回転プラグ閉鎖部材15のトラニオン21がその中を通って延びる第3の通路とを有し、弁座部材16及び17が横孔14内に配設されている。
記載事項ア-aないしア-c及び第1図の記載からみて、引用例1には次の事項が開示されていると理解できる。
ア-k.玉型回転プラグ閉鎖部材15は、横断流路35と、トラニオン21とを有し、中央球状部分19が弁座部材16及び17と接触する。
記載事項ア-b、ア-c及びア-fないしア-h並びに第1図の記載からみて、引用例1には次の事項が開示されていると理解できる。
ア-l.玉型回転プラグ閉鎖部材15は、トラニオン21がその長手方向軸線の周りに回転されることにより、入口通路12と出口通路13との間で横断流路35を介する流れを許容する開放位置と当該流れを遮断阻止する閉鎖位置との間で回転する。
記載事項ア-d、ア-e、ア-g及びア-h並びに第1図の記載からみて、引用例1には次の事項が開示されていると理解できる。
ア-m.モータ機構は、
開口102を備えるハウジング45と、
ハウジング45の内部を摺動自在のピストン46と、
ハウジング45に連結される閉鎖連結用フランジ52と、
ハウジング内に配設され、ピストン46の下側51と閉鎖連結用フランジ52との間に拘束されるコイルばね50とを備え、
開口102は、ピストン46より上でハウジング45の内部に開口しており、
加圧下の作動用流体が開口102を介してピストン46の上に導入されると、ハウジング45内の圧力がピストン46をコイルばね50の力に抗して下向きに移動させ、
ハウジング45内の圧力が開口102を介して減少乃至解放されると、コイルばね50がピストン46を上向きに移動させる。
記載事項ア-f及び第1図の記載からみて、引用例1には次の事項が開示されていると理解できる。
ア-n.ピン70は、ピストン棒54の長手方向軸線に関して自由に回転し得るとともに、該長手方向についてピストン棒54と一体に移動する。
記載事項ア-d、ア-f及び第1図の記載並びに事項ア-nからみて、引用例1には次の事項が開示されていると理解できる。
ア-o.回転子機構42は、
壁の直径方向対向側に螺旋状カムスロット91が形成されたスプール状本体58と、
スプール状本体58の孔57内に回転自在に配設され、孔の下方部分がトラニオン21の突出端と係合するようになっており、その回転によりトラニオン21が回転せしめられる、長手方向に延びるスロット68が設けられた回転スリーブ65と、
ピストン46に連結されたピストン棒54の長手方向軸線に関して自由に回転し得、該長手方向についてピストン棒54とともに移動するピン70とを備え、
ピン70が螺旋状カムスロット91とスロット68とに受容され、
ピストン棒54の往復線運動を回転スリーブ65の回転運動に、従ってまたトラニオン21の回転に変換する。
記載事項ア-e及びア-f並びに第1図の記載からみて、引用例1には次の事項が開示されていると理解できる。
ア-p.スプール状本体58は、その上端に閉鎖連結用フランジ52を、その下端に外環状フランジ59を有し、ハウジング11とハウジング45は、スプール状本体58を介して互いに連結されている。
(イ)そうすると、これらの事項からみて、本件出願の請求項1の記載に倣って整理すれば、引用例1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「横孔14と、横孔14と連通する入口通路12及び出口通路13と、横孔14と連通する第3の通路とを有し、弁座部材16及び17が横孔14内に配設されているハウジング11と、
横断流路35と、トラニオン21とを有し、中央球状部分19が弁座部材16及び17と接触し、トラニオン21が前記第3の通路の中を通って延び、トラニオン21がその長手方向軸線の周りに回転されることにより、入口通路12と出口通路13との間で横断流路35を介する流れを許容する開放位置と当該流れを遮断阻止する閉鎖位置との間で回転する玉型回転プラグ閉鎖部材15と、
往復線運動を生じさせるために流体圧力で制御されるモータ機構と、
ピストン46に連結されたピストン棒54の往復線運動をトラニオン21の回転に変換する回転子機構42とを備え、
回転子機構42は、
壁の直径方向対向側に螺旋状カムスロット91が形成されたスプール状本体58と、
スプール状本体58の孔57内に回転自在に配設され、孔の下方部分がトラニオン21の突出端と係合するようになっており、その回転によりトラニオン21が回転せしめられる、長手方向に延びるスロット68が設けられた回転スリーブ65と、
ピストン棒54の長手方向軸線に関して自由に回転し得、該長手方向についてピストン棒54とともに移動するピン70とを備え、
ピン70が螺旋状カムスロット91とスロット68とに受容され、
ピストン棒54の往復線運動を回転スリーブ65の回転運動に、従ってまたトラニオン21の回転に変換し、
モータ機構は、
開口102を備えるハウジング45と、
ハウジング45の内部を摺動自在のピストン46と、
ハウジング45に連結される閉鎖連結用フランジ52と、
ハウジング内に配設され、ピストン46の下側51と閉鎖連結用フランジ52との間に拘束されるコイルばね50とを備え、
開口102は、ピストン46より上でハウジング45の内部に開口しており、
加圧下の作動用流体が開口102を介してピストン46の上に導入されると、ハウジング45内の圧力がピストン46をコイルばね50の力に抗して下向きに移動させ、
ハウジング45内の圧力が開口102を介して減少乃至解放されると、コイルばね50がピストン46を上向きに移動させ、
ハウジング11とハウジング45は、スプール状本体58を介して互いに連結されている、弁作動装置。」
イ.引用例2
(ア)原査定の拒絶理由で引用された本願出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用例である、独国特許出願公開第19815008号明細書(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、以下の記載がある(下線は、当審が付与した。)。なお、アー・ウムラウトは「ae」で、ウー・ウムラウトは「ue」で、オー・ウムラウトは「Oe」「oe」で、エスツェットは「ss」で、それぞれ、代替表示している。
イ-a.「Die Erfindung betrifft eine Betaetigungsvorrichtung fuer eindrehbares Bauelement, insbesondere einen Verschlusskoerpereines Drosselklappenventils, nach dem Oberbegriff von Anspruch 1.
Derartige Betaetigungsvorrichtungen koennen beispielsweise imBereich der Nahrungsmittelindustrie und chemischen Industrie ueberall dort eingesetzt werden, wo es gilt, drehbare Verschlusskoerper von Ventilen, beispielsweise von Fluegelhaehnen, Kugelhaehnen oder dgl. in Fluidleitungen zu betaetigen.」(第1欄第3?12行)
(仮訳:本発明は、請求項1の前提部分に記載した形式の、回転可能な構成部材、特に絞り弁の閉鎖部材のための作動装置に関するものである。
このような作動装置は、例えば食品産業や化学産業の分野において、例えば、バルブの回転可能な閉鎖部材、流体管路における、例えばフラップのようなコック、ボール弁等の弁の回転可能な閉鎖部材を作動させるために使用される。)
イ-b.「In Fig. 1 ist in teilweisem Laengsschnitt eine Betaetigungsvorrichtung 1 fuer ein drehbares Verschlussstueck eines Ventils gezeigt. Es kann sich dabei um ein Drosselklappenventilhandeln, das beispielsweise in einer Fluidleitung einer Anlage zur Verarbeitung von Nahrungsmitteln eingesetzt ist. Die auch als Stellorgan oder Stellantrieb bezeichenbare Betaetigungsvorrichtung 1 hat ein kreiszylindrisch geformtes Gehaeuse 2 mit einem kreiszylinderfoermigen oder rundrohrfoermigen Zylinder bzw. Mantel 3 und einem einstueckig mit diesem ausgebildeten, plattenfoermig ebenen Zylinderdeckel 4, indessen Mitte ein mit einem Innengewinde ausgestatteter Pneumatikanschluss 5 vorgesehen ist. Ein unterer Abschlussdeckel 6 ist mittels eines Befestigungsringes 7 am anderenEnde des Mantels 3, in den der Abschlussdeckel 6 axial einschiebbar ist, von innen festgelegt.」
」(第4欄第17?31行)
(仮訳:図1は、弁の回転可能な閉鎖部材のための作動装置1の部分的な縦断面図である。この絞り弁は、例えば食品を処理するための設備の流体導管内で使用される絞り弁であってよい。調節部材または調節駆動部としても特徴づけられる作動装置1は、円筒状に形成されたハウジング2を有しており、該ハウジングは、円筒状もしくは円形管状のシリンダであるシェル3と、このシェルと一体に形成されたプレート状の平面状のシリンダカバー4とを備え、該シリンダーカバーの中央には内側ねじ山を備えた空気圧接続部5が設けられている。下側の閉鎖カバー6は、シェル3の他端部に軸方向に挿入され、固定リング7によって内側から固定されている。)
イ-c.「Der Edelstahl-Mantel 3 bildet einen Pneumatikzylinder, in dem ein Pneumatikkolben 10 parallel zur zentralen Zylinderachse 11 verschiebbar ist.」(第4欄第32?34行)
(仮訳:ステンレス綱製のシェル3は空気圧シリンダを形成しており、この空気圧シリンダ内では空気圧ピストン10が中央シリンダ軸線11に平行に移動可能である。)
イ-d.「An der der Ausnehmung 13 bzw. dem Zylinderdeckel 4 abgewandten Unterseite des Kolbenkoerpers 12 ist ein im Querschnitt runder, zapfenfoermiger Ansatz 20 vorgesehen, der einstueckig mit dem Kolbenkoerper 12 aus schweissbarem Edelstahl ausgebildet ist, dessen Laenge etwa der Haelfte der Laenge des Zylinders 3 und dessen Durchmesser etwa einem Viertel des Zylinder-Innendurchmessers entspricht. Die zur zentralen Zylinderachse 11 parallel versetzt verlaufende Mittelachse 21 des zylindrischen Ansatzes ist gegenueber der Mittelachse 11 um einen Exzenterabstand 22 seitlich versetzt, wobei der Exzenterabstand 22 bei der gezeigten Ausfuehrungsform etwa 12% des Innenradius des zylindrischen Mantels 3 und ca. die Haelfte des Radius des Zapfens 20 betraegt.」(第4欄第67行?第5欄第12行)
(仮訳:ピストン本体12の、凹部13もしくはシリンダカバー4とは反対側の下面には、断面が円形のピン状の突出部20が設けられており、この突出部は、溶接可能なステンレス鋼から成るピストン本体12と一体的に形成されており、その長さはシリンダ3の長さのほぼ半分であり、その直径はシリンダ内径のほぼ4分の1である。中心軸線11に対して偏心して平行に延びる、円筒状の突出部の中心軸線21は、中心軸線11に対して偏心距離22だけ偏心している。図示の実施形態では、偏心距離22は、円筒状のシェル3の内径の約12%であり、ピン20の半径のほぼ半分である。)
イ-e.「Durch das untere Ende des Zapfens laeuft senkrecht zur Zapfenachse 21 ein runder Querbolzen 25 hindurch, an dessen beiden Enden jeweils eine Mitnehmerrolle 26, 27, z.B. in Form eines Kugellagers, drehbar angebracht ist. Die Mitnehmerrollen 26, 27 drehen sich um eine gemeinsame Mitnehmerachse 28, die inRichtung des Exzenterabstandes 22 ausgerichtet ist.」(第5欄第13?19行)
(仮訳:ピンの下端部を貫通して、ピン軸線21に対して垂直に円形の横方向ボルト25が貫通しており、この横方向ボルトの両端部には、例えば玉軸受の形態の駆動ローラ26, 27がそれぞれ一つ回転可能に取り付けられている。駆動ローラ26, 27は、偏心距離22の方向に整列する共通の駆動軸線28を中心にして回転する。)
イ-f.「Der Zapfen 12 greift axial beweglich in eine koaxial mit der Achse 21 verlaufende, zylindrische Bohrung 30 eines im kolbenzugewandten Bereich zylinderhuelsenfoermig ausgebildeten Drehelementes 31 ein. Das Drehelement 31 ist aus rostfreiem Stahl gefertigt und hat einen die Bohrung 30 aufweisenden,huelsenfoermigen oberen Teil 32, in dem die Kurvenfuehrung alsein Paar die Huelsenwandung ganz durchbrechender, diametraler Schlitze 33, 34 vorgesehen ist. Die Schlitze gehen, wie in Fig.2 zu erkennen, bis zur oberen Stirnseite 35 des Drehelementes durch. Dadurch ist es moeglich, das Drehelement 31 nach unten von dem Zapfen 20 zu entkoppeln, ohne Veraenderungen an der Mitnehmeranordnung 26, 27 vornehmen zu muessen. Der huelsenfoermige Mantel 32 des Drehelementes 31 geht an seinem der freien Stirnflaeche 35 gegenueberliegenden Ende in eine wellenstumpfartige Abtriebswelle 36 ueber, die ueber die Unterseite des Abschlussdeckels 6 hinausragt und die durch beliebige Kupplungsmittel, beispielsweise durch in eine Querbohrung 37 eingesteckte Stifte, mit einem Verschlusskoerper eines nicht gezeigten Ventils gekuppelt werden kann.」(第5欄第20?39行)
(仮訳:ピン12は、円筒スリーブ状に形成された回転部材31の、円筒スリーブ状に形成された部分の、軸線21と同軸的に延びる円筒状の孔30内に軸線方向で可動に係合している。回転部材31は、ステンレス鋼で形成され、孔30を有するスリーブ状の上側部分32を有し、この上側部分には、カム案内部が一対のスリーブ壁を完全に貫通する直径方向スリット33, 34として形成されている。スロットは、図2に示すように、回転部材の上端面35に至るまで延びる。これにより、回転部材31を、駆動装置26, 27を変更することなく、下方に向かってピン20から分離することができる。回転部材31のスリーブ状のシェル32は、その自由端面35と反対側の端部で、軸線方向に突出した出力軸36に接続されており、この出力軸は、閉鎖カバー6の下側から突出し、任意の連結手段、例えば横孔37内に挿入されたピンによって、図示されていない弁の閉鎖部材に連結することができる。)
イ-g.「Das die Kurvenfuehrungshuelse 32 aufweisende Drehelement 31 ist in dem Abschlussdeckel 6 exzentrisch um die Achse 21 drehbar gelagert. Hierzu weist das Drehelement unterhalb des Huelsenabschnitts 32 einen im Durchmesser duenneren, zylindrischen Fuehrungsabschnitt 38 auf, der sich in einer formangepassten, zylindrischen Bohrung 39 des Abschlussdeckels drehen kann. Fuer die axiale Festlegung des Drehelementes sorgt eine drehfest mit der Abtriebswelle 36 verbundene, an die Unterseite des Zylinderabschnitts 38 angrenzende Scheibe 40, die sich in einer flachzylindrischen Ausnehmung 41 an der Unterseite des Abschlussdeckels 6 dreht. Im Bereich des Gleitlagers 38, 39 sind zwischen der Unterseite der Huelse 32 und dem Abschlussdeckel bzw. der Oberseite der Scheibe 40 und dem Abschlussdeckel Gleitringe 42, 43 aus reibungsarmem Kunststoff, wie PTFE, eingelegt.」(第5欄第40?55行)
(仮訳:カム案内スリーブ32を有する回転部材31は、閉鎖カバー6内で偏心的に軸線21を中心に回転可能に支承されている。このために、回転部材は、スリーブ部分32の下方に、直径がより小さい円筒状の案内部分38を有し、この案内部分は、閉鎖カバーの形状適合した円筒状の孔39内で回転可能である。回転部材を軸方向に固定するために、ディスク40が、円筒状部分38の下側に隣接して出力軸36に相対回動不能に結合されており、このディスクは、閉鎖カバー6の下側の扁平円筒状の切欠き41内で回転する。滑り軸受38,39の領域には、スリーブ32の底面と閉鎖カバーの間及びディスク40の上面と閉鎖カバーの間に、PTFEのような低摩擦プラスチック製の滑りリング42, 43が挿入されている。)
イ-h.「 Die Betaetigungsvorrichtung arbeitet nach folgendem Verfahren. Die in Fig. 1 dargestellte Ruheposition entspricht im Beispiel der Schliessstellung des angekuppelten Ventils. Der Kolben 10 liegt am Zylinderdeckel 4 unter der Kraft einer vorgespannten, sowohl das Drehelement 31, als auch den Zapfen 20 umgebenden Schraubenfeder 23 an, die sich auf der Oberseite des Abschlussdeckels 6 und an der Unterseite des Kolbenkoerpers 12 abstuetzt. Wenn ueber den Pneumatikanschluss 5 Druckluft in den Zylinder eingelassen wird, bewegen sich der Kolben 10 und damit auch der Ansatz 20 und die Mitnehmer 26, 27 entgegen der Federkraft nach unten. Die Mitnehmerrollen rollen dabei auf den jeweils unten liegenden Begrenzungsflaechen der Fuehrungsschlitze 33, 34 der Kurvenfuehrung ab, wobei beispielsweise der Mitnehmer 27 auf der in Fig. 1 sichtbaren Kurvenflaeche 45 abrollt. Sofern sich ein Mitnehmernicht auf einer vertikal verlaufenden Fuehrungsflaeche, sondern auf einer schraeg zur Drehachse 21 des Drehelementes verlaufenden Fuehrungsflaeche abrollt, ueben der Mitnehmer und die von diesem beruehrte Fuehrungsflaeche entgegengesetzt gerichtete Kraefte aufeinander aus.
Ein aus dem Abrollvorgang resultierendes Drehmoment will beidem gezeigten Verlauf der Kurvenfuehrung von oben gesehen (Fig. 2) eine Drehung des Drehelementes gegen den Uhrzeigersinn bewirken, waehrend die entgegengesetzt gerichtete Reaktionskraft eine Drehung des mit dem Mitnehmer gekoppelten Zapfens 20 um seine Zentralachse 21 in Gegenrichtung bewirken will. Die am Drehelement 31 angreifende Kraft fuehrt zu einer Drehung des drehbar gelagerten Drehelementes um einen durch die Kurvenfuehrung vorgegebenen Winkel, so dass in dem dargestellten Beispiel bei Erreichen des unteren Endes 46 der Kurvenfuehrung das Drehelement eine Drehung von etwa 90 Grad durchgefuehrt haben wird. Dabei wird der angekoppelte Ventilverschlusskoerper aus einer Schliessposition in eine Oeffnungsposition ueberfuehrt.」(第6欄第7?41行)
(仮訳:作動装置は、以下の方法で動作する。図1に示された休止位置は、連結された弁の閉鎖位置の例である。ピストン10は、回転部材31及びピン20の両方を取り囲む付勢されたコイルばね23の力によりシリンダカバー4に当接し、このコイルばねは、閉鎖カバー6の上側及びピストン本体12の下側に支持される。空気圧接続部5を介してシリンダ内に圧縮空気が導入されると、ピストン10、ひいては突出部20及び駆動体26, 27は、ばね力に抗して下方に移動する。この場合、駆動ローラは、カム案内部の案内スリット33, 34の下側に位置する制限面上を転動する。この場合、例えば、駆動体27は、図1に示されているカム面45上を転動する。駆動体が鉛直方向に延びる案内面上ではなく、回転部材の回転軸線21に対して斜めに延びる案内面上で転動する場合、駆動体と、この駆動体が接触する案内面とが、互いに反対方向の力を及ぼす。
転動過程の結果生ずる回転モーメントは、図2に示されているように、反時計方向に回転部材を回転させ、一方、反対方向の反力は、駆動体に連結されたピン20をその中心軸線21を中心として反対方向に回転させる。回転部材31に作用する力は、回転可能に支承された回転部材をカム案内部により規定される角度だけ回転させる。図示の実施例では、カム案内部の下端部46に達すると、回転部材は、約90°回転する。この場合、連結された弁閉鎖部材は、閉鎖位置から開放位置に移動される。)
イ-i「Wenn zum Schliessen des angekuppelten Ventils (oder durch eine Betriebsstoerung) der Pneumatikdruck soweit nachlaesst, dass derdurch die Feder 23 auf den Kolben ausgeuebte Aufwaertsdruck den Druck im Arbeitsraum 13 des Kolbens ueberwiegt, so drueckt die Feder den Kolben 10 nach oben. Dabei laufen wiederum die Mitnehmer 26, 27 in ihren zugeordneten Schlitzen 33, 34 der Kurvenfuehrung, jedoch diesmal an den in Fig. 1 oben liegenden Fuehrungsflaechen 47 entlang. Die auf das Drehelement bzw. den Zapfen 20 wirkenden Drehmomente kehren ihre jeweiligen Richtungen um, wodurch das Drehelement 31 in Richtung auf die in Fig. 1 gezeigte Ruhestellung zurueckgedreht wird, waehrend die auf den Zapfen 20 wirkende gegengleiche Kraft durch die Zylinderwandung 3 aufgenommen wird, ohne dass es zu einer Drehung des Kolbens 10 kommen kann.」(第7欄第6?20行)
(仮訳:連結弁の閉鎖(又は故障)により空気圧が減少し、ばね23によりピストンに加えられる上向き圧力が作動空間13内の圧力を超えると、ばね力がピストン10を押し上げる。この場合、駆動体26, 27は、カム案内部の対応するスリット33, 34内を走行するが、ここでは図1に示されている上側の案内面47上を走行する。回転部材又はピン20に作用する回転モーメントは、それぞれの方向を反転させ、回転部材31は、図1に示された休止位置の方向に逆回転され、一方、ピン20に作用する反力は、シリンダ壁3によって受けられ、ピストン10は回転しない。)
そして、記載事項イ-aないしイ-d、イ-f及びイ-g並びに図1の記載からみて、引用例2には次の事項が開示されていると理解できる。
イ-j.絞り弁の閉鎖部材のための作動装置は、空気圧シリンダと、前記空気圧シリンダ内を移動可能であるピストン10と、回転可能に支承され、絞り弁の閉鎖部材に連結される回転部材31と、を備える。
記載事項イ-eないし及び図1の記載からみて、引用例2には次の事項が開示されていると理解できる。
イ-k.ピストン10は、横方向ボルト25を有し、
回転部材31には一対の直径方向スリット33, 34であるカム案内部が形成され、
横方向ボルト25の両端部に取り付けられた駆動体26, 27が、それぞれ、スリット33, 34の上側又は下側の案内面46, 47上を転動するようにされており、
ピストン10が下方又は上方に移動することにより、回転部材31が回転され、弁閉鎖部材が閉鎖位置から開放位置に又は閉鎖位置から開放位置に移動される。
(イ)そうすると、これらの事項からみて、引用例2には次の技術が記載されていると認められる。
「空気圧シリンダと、前記空気圧シリンダ内を移動可能であるピストン10と、回転可能に支承され、絞り弁の閉鎖部材に連結される回転部材31と、を備える、絞り弁の閉鎖部材のための作動装置であって、
ピストン10は、横方向ボルト25を有し、
回転部材31には一対の直径方向スリット33, 34である一対のカム案内部が形成され、
横方向ボルト25の両端部に取り付けられた駆動体26, 27が、それぞれ、スリット33, 34の上側又は下側の案内面46, 47上を転動するようにされており、
ピストン10が下方又は上方に移動することにより、回転部材31が回転され、弁閉鎖部材が閉鎖位置から開放位置に又は閉鎖位置から開放位置に移動される、絞り弁の閉鎖部材のための作動装置。」
ウ.引用例3
(ア)本願出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用例である、米国特許第2998805明細書(以下、「引用例3」という。)には、図面とともに、以下の記載がある。
ウ-a.「This invention relates to the design and improvements in valve operators, particularly with reference to a remote control valve operator of the piston type.」(第1欄第9?11行)
(仮訳:本発明は、弁作動装置、特にピストン形式の遠隔制御弁作動装置の設計及び改良に関する。)
ウ-b.「The body 10 of the valve operator contains a chamber 11 to house the operator piston 12. The stem pin 13 of the stem 14 rides in the cam slots 15 cut into the piston cylinder 16. The lower end of the piston cylinder 16 is formed into a key 17 cooperating with key slots 18 in the lower walls 19 of the operator body 10.」(第1欄第40?45行)
(仮訳:弁作動装置の本体10は、作動装置ピストン12を収容するためのチャンバ11を含む。ステム14のステムピン13は、ピストンシリンダ16に刻設されたカムスロット15に係合している。ピストンシリンダ16の下端部には、作動装置本体10の下側壁19のキースロット18と協働するキー17が形成されている。)
ウ-c.「The operator body 10 is closed at its upper end by a cap nut 20 having threads 21 on its inside diameter meshing with corresponding threads 22 on the upper end of the operator body 10. The cap nut 20 contains an opening 23 to accommodate the upper end 24 of the stem 14 which is adapted to receive an indicator 25 which shows the position of the valve plug 26 in the valve 27 controlled by the operator.
The lower portion 28 of the operator body 10 fits into an adaptor member 29 which joins the operator to the body of the valve 27 controlled by the operator. The lower end of the operator stem 14 is formed into a stem socket 30 adapted to receive the stem 31 of the valve 27 controlled by the operator, thus providing a rigid stem to stem connection.」(第1欄第46?60行)
(仮訳:作動装置本体10は、その上端部が、作動装置本体10の上端部の対応するねじ山22と噛み合うねじ山21を内径部に有するキャップナット20により閉じられている。キャップナット20は、作動装置によって制御される弁27の弁プラグ26の位置を示すインジケータ25を受け入れるように適合したステム14の上端部24を収容する開口部23を含む。
作動装置本体10の下方部分28は、作動装置によって制御される弁27の本体に作動装置を結合するアダプタ部材29内に嵌り込む。作動装置ステム14の下端部は、作動装置によって制御される弁27のステム31を受容するように適合したステムソケット30になっており、ステム接続のための剛性ステムが提供される。)
ウ-d.「Pressure inlet openings 32 and 33 are provided in the operator body 10 for introducing fluid material, pneumatic or hydraulic, to change the position of the piston. The orifices 34 and 35 connect the pressure inlet openings with the interior of the operator body 10. The connection is made directly in the lower portion of the operator body 10 and by means of the annular opening 36 in the cap nut 20.」(第1欄第61?68行)
(仮訳:ピストンの位置を変更するために空気圧又は液圧流体を導入するため、作動装置本体10に圧力入口開口32及び33が設けられている。オリフィス34及び35は、圧力入口開口を作動装置本体10の内部に接続する。この接続は、作動装置本体10の下部に直接行われ、キャップナット20に設けられた環状開口36によって行われる。)
ウ-e.「In the operation of the device, after the valve operator has been connected to the valve desired to be controlled, fluid pressure, hydraulic or pneumatic, is introduced into a pressure inlet opening. This pressure causes the piston to move up or down, as the case may be. As the piston moves, the stem pin 13, riding in the cam slots 15 of the piston cylinder 16, transmits to the stem 14 the movement of the piston by a cam follower action to produce a rotary movement of the operator stem 14, which in turn rotates the stem 31 of the valve 27 controlled by the operator. Reversing the direction of the fluid pressure instantly reverses the piston, thus producing a reverse rotary movement of the operator stem 14 and thus of the valve stem 31.」(第2欄第11?24行)
(仮訳:装置を動作させるにあたっては、制御しようとする弁に弁作動装置を結合し、その後、液圧又は空気圧を圧力入口開口に導入する。この圧力は、場合により、ピストンを上又は下に移動させる。ピストンが移動すると、ピストンシリンダ16のカムスロット15に係合しているステムピン13は、カムフォロワ作用によってピストンの動きをステム14に伝達し、作動装置ステム14の回転運動を生じさせ、もって、作動装置によって制御される弁27のステム31を回転させる。流体圧力の方向を逆転させると、ピストンは直ちに即座に逆転し、したがって、作動装置ステム14、したがって弁ステム31の逆回転運動を生成する。)
ウ-f.「In a valve operator for mounting on a valve unit to actuate the rotating stem of a valve, the combination of: a body having an enclosed cylinder cavity and a guide cavity with a common axis, said body having axially spaced fluid inlet passages communicating with said cylinder cavity adjacent the top and bottom respectively of said cylinder cavity; a shaft mounted in said body for rotation about said axis relative to said body, said shaft having a first cylindrical portion positioned within said cylinder cavity and a second cylindrical portion extending into said guide cavity; and a piston slidably positioned on said shaft within said cylindrical cavity for movement along said axis, said piston having a cam sleeve positioned about said second cylindrical portion of said shaft when said piston is in one of its extreme positions of movement and extending into said guide cavity, said sleeve and guide cavity having cooperating guide means for preventing rotational motion of said piston relative to said body, said cam sleeve having about a one-quarter revolution cam development, and said second cylindrical portion of said shaft having a radially projection pin engaging said cam development whereby one stroke of said piston produces about one-quarter revolution of said shaft.」(第2欄第33?56行)
(仮訳:弁の回転ステムを作動させるために弁ユニットに取り付ける弁作動装置であって、共通の軸線を有する密閉されたシリンダ空洞とガイド空洞とを有する本体であって、前記シリンダ空洞の頂部及び底部にそれぞれ隣接して前記シリンダ空洞と連通する軸方向に離間した流体入口通路を有する本体と、前記本体内に設けられ、前記本体に対して前記軸線の周りに回転するシャフトであって、前記シャフトは、前記シリンダ空胴内に配置された第1の円柱部と、前記ガイド空胴内に延びる第2の円柱部とを有するシャフトと、前記シリンダ空胴内で前記シャフト上に摺動可能に配置され、前記軸線に沿って移動するピストンであって、該ピストンが一方の移動端位置にあって前記ガイド空胴内に延びるときに前記シャフトの前記第2の円柱部の周りに位置するカムスリーブを有するピストンと、からなり、前記スリーブ及び前記ガイド空胴は、前記ピストンの前記本体に対する回転運動を防止するための協働するガイド手段を有し、前記カムスリーブは、約1/4回転のカム展開を有し、前記シャフトの前記第2の円筒部は、前記カム展開に係合する半径方向突出ピンを有し、前記ピストンの1ストロークにより前記シャフトの約1/4回転を生じる、弁作動装置。)
そして、記載ウ-eには、「流体圧力の方向を逆転させる」との記載もあるから、記載ウ-dないしウ-f並びに第2、3及び5図の記載からみて、引用例3には次の事項が開示されていると理解できる。
ウ-g.シリンダ空洞の頂部に隣接して該シリンダ空洞と連通する流体入口通路は、圧力入口開口32、オリフィス34及び環状開口36からなり、
前記シリンダ空洞の底部に隣接して前記シリンダ空洞と連通する流体入口通路は、圧力入口開口33及びオリフィス35からなり、
流体入口通路32,34,36に圧力を導入し、流体入口通路33,35から圧力を排出すると、ピストン12は下に移動し、
流体入口通路32,34,36から圧力を排出し、流体入口通路33,35に圧力を導入すると、ピストン12は上に移動する。
(イ)そうすると、これらの事項からみて、引用例3には次の技術が記載されていると認められる。
「弁27のステム31を作動させるために弁27に取り付ける弁作動装置であって、
その上端部がキャップナット20により閉じられ、共通の軸線を有するシリンダ空洞とガイド空洞とを構成するチャンバ11を含む本体10と、
本体10内に設けられ、本体10に対して前記軸線の周りに回転するステム14と、
前記シリンダ空胴内でステム14上に摺動可能に配置され、前記軸線に沿って移動するピストンと、からなり、
ピストン12が有するピストンシリンダ16に約1/4回転のカムスロット15が刻設され、
その下端部に弁27のステム31を受容するステム14が、カムスロット15に係合するステムピン13を有し、
本体10は、前記シリンダ空洞の頂部に隣接して前記シリンダ空洞と連通する流体入口通路32,34,36及び前記シリンダ空洞の底部に隣接して前記シリンダ空洞と連通する流体入口通路33,35を有し、
流体入口通路32,34,36に圧力を導入し、流体入口通路33,35から圧力を排出すると、ピストン12は下に移動し、ステム14を回転させ、もって、ステム31を回転させ、流体入口通路32,34,36から圧力を排出し、流体入口通路33,35に圧力を導入すると、ピストン12は上に移動し、ステム14を逆回転させ、もって、ステム31を逆回転させる、弁作動装置。」
エ.引用例4
原査定の拒絶理由で引用された本願出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用例である、特開平4-4367号公報(以下、「引用例4」という。)には、以下の記載がある。
エ-a.「【特許請求の範囲】
1)ハウジング内に開設された流通路を開閉する弁体と、この弁体に連結された弁軸と、この弁軸を支持する支持部と、この支持部に取付けられ前記弁軸を回動させる駆動部とを有するバタフライ開閉弁であって、
前記駆動部は、
前記支持部に取付けられたシリンダ部材と、
このシリンダ部材内に装着され、前記弁軸方向に往復動する非円形のピストンと、
このピストンに固着された第1ねじ部材及びこの第1ねじ部材の往復動を弁軸の回転動に変換するように螺合され、かつ前記弁軸に固着された第2ねじ部材からなるねじ変換機構とから成り、
前記ピストンと前記支持部との間を、前記ねじ変換機構の外周に位置するベローズで連結し、前記支持部と弁軸との間の隙間などを通じてバルブ外に漏洩しようとするバルブ内流体を前記ベローズで封止するようにしたことを特徴とするバタフライ開閉弁。
2)前記シリンダ部材内には、ピストンと支持部との間を弾撥するように設けられたスプリングを有する請求項第1項に記載のバタフライ開閉弁。」(第1ページ左下欄第4行(空白行除く)?右下欄第7行)
エ-b.「第1図に示すように、ハウジング1の内部には流通路2が形成され、この流通路2には該流通路2とほぼ同じ形状をした円盤状の弁体3が収納されている。この弁体3には、複数のボルト4を介して弁軸5の端部が連結されている。この弁軸5は、ハウジング1を貫通してバルブ外にまで伸延しているが、この弁軸5が挿通するハウジング1には、弁軸5を支持する支持部6がボルト7により取付けられている。この支持部6の上部には前記弁軸5を回動する駆動部8が取付けられている。」(第3ページ左上欄第17行?右上欄第6行)
エ-c.「前記駆動部8は、支持部6に断面逆U字状をした密閉構造のシリンダ部材10をボルト11に取付けることにより構成している。このシリンダ部材10内には、前記弁軸5の方向に往復動する非円形のピストン12が装着してある。このピストン12は、第2図に示すように、シリンダ部材10内を軸方向には摺動し得るが軸を中心として回転しないように断面略矩形に形成されている。また、その中心部分には、通孔13が開設され、この通孔13にベローズ受金具14より突出された凸部15が挿通され、ナット16によりベローズ受金具14がピストン12に連結されている。」(第3ページ右上欄第16行?左下欄第7行)
エ-d.「前記ベローズ受金具14,17と一体に構成されたベローズ18内に形成された空間内には、ピストン12の往復動を弁軸5の回転動に変換するねじ変換機構19が設けられている。このねじ変換機構19は、ベローズ受金具14にボルト20により固着された第1ねじ部材21と、この第1ねじ部材21に螺合された第2ねじ部材22とからなっている。
この第1ねじ部材21の内周面には、雌螺子部23が、第2ねじ部材22の外周面には、雌螺子部23と螺合する雄螺子部24がそれぞれ形成されている。この螺子部23,24は、いわゆる自動締り(ねじの噛み合いにより、ねじ変換機構が停止すること)にならないように、ねじのピッチを大きくするとともに、摩擦抵抗を減じる処理をすることが好ましい。
このような第1ねじ部材21の雌螺子部23と第2ねじ部材22の雄螺子部24とは、ピストン12が全ストロークだけ移動したとき、別言すれば、第1ねじ部材21が前記空間内で移動できるストロークs分だけ移動したときに、第2ねじ部材22が略90度回動するようにしている。このようにすると、ピストン12が1ストローク分移動すると、弁体3は、全開から全閉(あるいは全閉から全開とすることも可能)に移動することになる。しかも、弁体3が全閉時に、第2ねじ部材22の上端部22aがベローズ受け金具14の内端面14aに当接するように構成すれば、弁体3を所定位置に停止させる為のストッパ部材を設けなくても、弁体3を所定の停止位置で正確に停止させることが可能になる。」(第3ページ左下欄第15行?第4ページ左上欄第5行)
エ-e.「また、本実施例では、前記シリンダ部材10内であって、前記ベローズ受金具14と17の外周側には、ピストン12とベローズ受金具17との間を弾撥するように設けられたスプリング25が設けられている。このスプリング25は、通常の場合は、ピストン12が上昇する作動を補助するために使用されるが、前記シリンダ部材10の頂部に開設した圧力流体供給孔26から圧力流体が導入されないような緊急事態が生じた場合には、このスプリング25の弾撥力によりピストン12、ベローズ受金具14、第1ねじ部材21、第2ねじ部材22を介して弁体3を全開から全閉(あるいは全閉から全開)に移動することができるようになっている。なお、全開から全閉(あるいは全閉から全開)という方向性に関しては、前記第1ねじ部材21及び第2ねじ部材22に形成する雄螺子部24あるいは雌螺子部23のねじ方向を適宜選択すれば良い。」(第4ページ左上欄第6行?右上欄第3行)
エ-f.「また、圧力流体の供給は、シリンダ部材10の頂部に開設した圧力流体供給孔26からのみでなく、第1図に破線で示すような通孔27からも行っても良い。その場合には、スプリング25は、必ずしもなくてもよい。」(第4ページ右上欄第4?8行)
エ-g.「次に作用を説明する。
圧力流体供給孔26からシリンダ部材10とピストン12との間の圧力室Aに圧力流体として、例えばエアー等の圧力流体を導入すると、ピストン12がシリンダ部材10にガイドされ、回動することなく、スプリング25の弾撥力に抗して直線的に下降移動し、ベローズ受金具14及びねじ変換機構19を介して第1ねじ部材21を軸方向に移動させる。
この移動により、第2ねじ部材22は定位置を保ったままで回動し、これにより弁軸3も回動することになる。この弁軸3の回動により、弁体3は、全開から全閉(あるいは全閉から全開)に移動し、流通路2を流れる流体の流れを制御する。」(第4ページ右上欄第16行?左下欄第9行)
エ-h.「次に、上述の動作と逆の動きを弁体3にさせるには、圧力室A内のエアーを排出つつ、スプリング25の弾撥力を利用してピストン12を元の状態に戻す。なお、このスプリング25を設けない場合には、圧力室A内のエアーを排出つつ、反圧力室B内にエアーを導入することもできる。このようにすれば、前述の場合と略同様に作動して弁軸5は逆回転し、流路を閉鎖する動作、あるいは開口する動作が行なわれる。特に、弁体3が全閉時に、第2ねじ部材22の上端部22aがベローズ受け金具14の内端面14aに当接するように構成すれば、弁体3を所定位置に停止させる為のストッパ部材を設けなくても、弁体3を所定の停止位置で正確に停止させることが可能になる。このようにして弁体3を閉状態となるようにすると、従来必要としていたストッパ部材は必要でない。したがって、流通路2を流れる流体を邪魔する物はなくなり、流通抵抗が増大することはなく、円滑に流体も流通する。」(第4ページ右下欄第第6行?第5ページ左上欄第4行)
そして、記載エ-a、エ-e及び 並びに第1図の記載からみて、引用例4には次の事項が開示されていると理解できる。
エ-i.シリンダ部材10の頂部に圧力流体供給孔26を開設し、シリンダ部材10内にピストン12と支持部6との間を弾撥するスプリング25を設け、圧力流体供給孔26からシリンダ部材10とピストン12との間の圧力室Aに圧力流体を導入して、ピストン12をスプリング25の弾撥力に抗して直線的に下降移動させ、圧力流体供給孔26から圧力室A内の圧力流体を排出して、スプリング25の弾撥力を利用してピストン12を直線的に上昇させるか、
それに代えて、スプリング25をなくして、シリンダ部材10の頂部に開設した圧力流体供給孔26に加えてシリンダ部材10の支持部6側に通孔27を開設し、圧力流体供給孔26から圧力室Aに圧力流体を導入しつつ、通孔27から反圧力室B内の圧力流体を排出して、ピストン12を直線的に下降移動させ、圧力流体供給孔26から圧力室A内の圧力流体を排出しつつ、通孔27から反圧力室Bに圧力流体を導入して、ピストン12を直線的に上昇させる。
更に、記載エ-c及びエ-dにあるように、ベローズ受金具14がピストン12に連結され、ベローズ受金具14に第1ねじ部材21が固着されているから、次の事項がいえる。
エ-k.第1ねじ部材21は、ピストン12に固着されている。
(イ)そうすると、これらの事項からみて引用例4には次の技術が記載されていると認められる。
「内部に流通路2が形成されたハウジング1と、流通路2に収納されている弁体3と、端部が弁体3に連結されている弁軸5と、ハウジング1に取付けられ、弁軸5を支持する支持部6と、支持部6の上部に取付けられ、弁軸5を回動する駆動部8と、を有するバタフライ開閉弁であって、
前記駆動部が、支持部6に取付けられたシリンダ部材10と、シリンダ部材10内に装着され、弁軸5の方向に往復動するピストン12と、第1ねじ部材21とこの第1ねじ部材21に螺合された第2ねじ部材22とからなり、ピストン12の往復動を弁軸5の回転動に変換するねじ変換機構19と、を有する、バタフライ開閉弁において、
第1ねじ部材21をピストン12に固着し、第2ねじ部材22を弁軸3に固着し、
また、シリンダ部材10の頂部に圧力流体供給孔26を開設し、シリンダ部材10内にピストン12と支持部6との間を弾撥するスプリング25を設け、圧力流体供給孔26からシリンダ部材10とピストン12との間の圧力室Aに圧力流体を導入して、ピストン12をスプリング25の弾撥力に抗して直線的に下降移動させ、圧力流体供給孔26から圧力室A内の圧力流体を排出して、スプリング25の弾撥力を利用してピストン12を直線的に上昇させるか、
それに代えて、スプリング25をなくして、シリンダ部材10の頂部に開設した圧力流体供給孔26に加えてシリンダ部材10の支持部6側に通孔27を開設し、圧力流体供給孔26から圧力室Aに圧力流体を導入しつつ、通孔27から反圧力室B内の圧力流体を排出して、ピストン12を直線的に下降移動させ、圧力流体供給孔26から圧力室A内の圧力流体を排出しつつ、通孔27から反圧力室Bに圧力流体を導入して、ピストン12を直線的に上昇させる。」
(3)対比
本件補正発明と引用発明を対比する。
a.引用発明の「横孔14」、「横孔14と連通する入口通路12」、「横孔14と連通する」「出口通路13」、「横孔14と連通する第3の通路」並びに「弁座部材16及び17」は、それぞれ、本件補正発明の「チャンバ(113)」、「前記チャンバ(113)と連通する入口(115)」、「前記チャンバ(113)と連通する出口(117)」、「前記チャンバ(113)と連通するステム通路」及び「ボールシート(119)」に相当する。そして、引用例1の記載、特に第1図の記載からみて、引用発明においても、横孔14内に配設されている弁座部材16及び17は、横孔14の内部空間の一部を画成しているから、引用発明の「横孔14」「を有し、弁座部材16及び17が横孔14内に配設されている」ことは、本件補正発明の「チャンバ(113)の形態のボールシート(119)」「を画定する」ことに相当し、更に、引用発明において、横孔14と、横孔14と連通する入口通路12及び出口通路13とにより流路が画定されていることは、明らかである。そうすると、引用発明の「横孔14と、横孔14と連通する入口通路12及び出口通路13と、横孔14と連通する第3の通路とを有し、弁座部材16及び17が横孔14内に配設されている」ことは、本件補正発明の「チャンバ(113)の形態のボールシート(119)、前記チャンバ(113)と連通する入口(115)、前記チャンバ(113)と連通する出口(117)、および前記チャンバ(113)と連通するステム通路を画定」し、「前記入口(115)、前記チャンバ(113)、および前記出口(117)は、前記ハウジング(112)を通る流路(123)を画定する」ことと、まず、「チャンバの形態のボールシート、前記チャンバと連通する入口、前記チャンバと連通する出口、および前記チャンバと連通するステム通路を画定し、前記入口、前記チャンバ、および前記出口は、流路を画定する」点で一致する。
b.引用発明の「横断流路35」及び「トラニオン21」は、それぞれ、本件補正発明の「通過通路(121)」及び「ステム(126)」に相当する。そして、本件補正発明において、ボール(114)は、該ボール(114)から延びるステム(126)をも含むものであるから、引用発明の「玉型回転プラグ閉鎖部材15」は、本件補正発明の「ボール(114)」に相当し、引用発明の「中央球状部分19が弁座部材16及び17と接触」することは、本件補正発明の「前記ボール(114)は前記ボールシート(119)内に着座」することに相当する。
引用発明において、横孔14と、横孔14と連通する入口通路12及び出口通路13とにより流路が画定されていることは、前記bで検討したとおり、明らかであって、入口通路12と出口通路13との間で横断流路35を介する流れを許容することは、横断流路35を、当該流路と位置合わせすることにほかならず、前記流れを遮断阻止することは、横断流路35を、当該流路と位置ずれさせることにほかならないから、引用発明の「開放位置」及び「閉鎖位置」は、それぞれ、本件補正発明の「開位置」及び「閉位置」に相当し、引用発明の「トラニオン21がその長手方向軸線の周りに回転されることにより、入口通路12と出口通路13との間で横断流路35を介する流れを許容する開放位置と当該流れを遮断阻止する閉鎖位置との間で回転する」ことは、本件補正発明の「開位置と閉位置との間の前記ステム(126)の回転は、前記通過通路(121)を通る流体の流れを所望の流量に制御するために前記通過通路(121)と前記流路(123)の位置合わせおよび位置ずれにそれぞれ作用する」ことに相当する。
そうすると、引用発明の「横断流路35と、トラニオン21とを有し、中央球状部分19が弁座部材16及び17と接触し、トラニオン21が前記第3の通路の中を通って延び、トラニオン21がその長手方向軸線の周りに回転されることにより、入口通路12と出口通路13との間で横断流路35を介する流れを許容する開放位置と当該流れを遮断阻止する閉鎖位置との間で回転する玉型回転プラグ閉鎖部材15」は、本件補正発明の「ボール(114)であって、通過通路(121)と、前記ボール(114)から延びるステム(126)とを有し、前記ボール(114)は前記ボールシート(119)内に着座し、前記ステム(126)は前記ステム通路を通って延び、開位置と閉位置との間の前記ステム(126)の回転は、前記通過通路(121)を通る流体の流れを所望の流量に制御するために前記通過通路(121)と前記流路(123)の位置合わせおよび位置ずれにそれぞれ作用する、ボール(114)」に相当する。
c.引用発明の「モータ機構」は、本件補正発明の「リニアアクチュエータ」に相当する。そして、引用例1の記載、特に第1図の記載からみて、引用発明において、モータ機構がピストン46の往復線運動を生じさせるものであり、当該往復線運動の行程に上端位置と下端位置があることは明らかであるから、引用発明の「往復線運動を生じさせるために流体圧力で制御されるモータ機構」であって、「モータ機構は、」「ハウジング45の内部を摺動自在のピストン46」「を備え」ることは、本件補正発明の「第1の位置と第2の位置との間を直線的に移動可能なピストン(138)を有するリニアアクチュエータ(118)」に相当する。
d.前記cにおいて検討したとおり、引用発明のモータ機構は、ピストン46の往復線運動を生じさせるものであり、ピストン46に連結されたピストン棒54がピストン46と一体に往復線運動することは明らかであり、更に回転スリーブ65の回転によりトラニオン21が回転せしめられるように回転スリーブ65の孔がトラニオン21の突出端と係合されているから、ピストン46とトラニオン21を動作的に連結しているといえ,引用発明の「ピストン46に連結されたピストン棒54の往復線運動をトラニオン21の回転に変換する回転子機構42」は、本件補正発明の「前記ピストン(138)を前記ステム(128)に連結し、前記ピストン(138)の直線運動を前記ステム(126)の回転運動に変換する回転変換器(116)」に相当する。
引用発明において、回転子機構42は、スプール状本体58の壁の直径方向対向側に形成された螺旋状カムスロット91と、ピストン棒54の長手方向軸線に関して自由に回転し得るピン70とを備え、ピン70が螺旋状カムスロット91に受容されており、引用例1の記載、特に記載事項ア-fからみて、ピン70は、ピストン棒54の長手方向に移動する際、螺旋状カムスロット91に沿って移動し、ピストン棒54の長手方向軸線に関して回転するから、引用発明の「螺旋状カムスロット91」及び「ピン70」は、それぞれ、本件補正発明の「チャネル」及び「ピン」に相当する。更に、ピン70は、回転スリーブ65に設けられたスロット68にも受容されており、回転スリーブ65は、ピストン棒54の長手方向軸線に関する回転運動に関してピン70とともに回転するから、結果として、回転スリーブ65は螺旋状カムスロット91に沿って回転するといえ、引用発明の「回転スリーブ65」は、本件補正発明の「フォロワ」に相当する。そうすると、引用発明の「回転子機構42は、壁の直径方向対向側に螺旋状カムスロット91が形成されたスプール状本体58と、スプール状本体58の孔57内に回転自在に配設され、孔の下方部分がトラニオン21の突出端と係合するようになっており、その回転によりトラニオン21が回転せしめられる、長手方向に延びるスロット68が設けられた回転スリーブ65と、ピストン棒54の長手方向軸線に関して自由に回転し得、該長手方向についてピストン棒54とともに移動するピン70とを備え、ピン70が螺旋状カムスロット91とスロット68とに受容され」ることは、本件補正発明の「前記回転変換器(116)が、相補的なチャネルおよびフォロワを備え、前記チャネルが、ピンを備え」ることと、少なくとも「回転変換器が、チャネルおよびフォロワ、並びにピンを用いる」点で一致する。
そして、引用発明は、トラニオン21がその長手方向軸線の周りに回転されることにより、玉型回転プラグ閉鎖部材15が入口通路12と出口通路13との間で横断流路35を介する流れを許容する開放位置と当該流れを遮断阻止する閉鎖位置との間で回転するものであって、このことは、前記bにおいて検討したとおり、本件補正発明の「開位置と閉位置との間の前記ステム(126)の回転は、前記通過通路(121)を通る流体の流れを所望の流量に制御するために前記通過通路(121)と前記流路(123)の位置合わせおよび位置ずれにそれぞれ作用する」ことに相当するから、引用発明の「回転子機構42は、」「ピストン棒54の往復線運動を回転スリーブ65の回転運動に、従ってまたトラニオン21の回転に変換」することは、本件補正発明の「前記リニアアクチュエータ(118)の作動は、前記第1の位置と第2の位置との間の前記ピストン(138)の相対的な直線運動に作用して前記開位置と閉位置との間の前記ステム(126)の対応する相対的な回転運動に作用し、前記通過通路(121)と前記流路(123)の相対的な位置合わせを制御することにより前記流路(123)を通る流体の流れを制御」することに相当する。
e.引用発明のモータ機構は、開口102を備えるハウジング45を備え、ピストン46がハウジング45の内部を摺動自在であって、加圧下の作動用流体が開口102を介してピストン46の上に導入されると、ハウジング45内の圧力がピストン46をコイルばね50の力に抗して下向きに移動させ、ハウジング45内の圧力が開口102を介して減少乃至解放されると、コイルばね50がピストン46を上向きに移動させるから、引用発明の「ハウジング45の内部」は、本件補正発明の「ピストンチャンバ」に相当し、引用発明の「開口102」は、本件補正発明の「前記ピストン(138)を収容するピストンチャンバ(136)に対する流体入口と流体出口」に相当し、引用発明の「ハウジング45内の圧力」は、本件補正発明の「前記ピストン(138)の両側の前記ピストンチャンバ(136)に選択的に供給され、放出される流体圧力」と、「ピストンチャンバに選択的に供給され、放出される流体圧力」である点で一致する。
そして、本件補正発明において、ハウジング(112)は、「チャンバ(113)の形態のボールシート(119)、前記チャンバ(113)と連通する入口(115)、前記チャンバ(113)と連通する出口(117)、および前記チャンバ(113)と連通するステム通路を画定」し、「前記入口(115)、前記チャンバ(113)、および前記出口(117)は、前記ハウジング(112)を通る流路(123)を画定する」のみならず、「前記ピストン(138)の両側に前記ピストン(138)を収容するピストンチャンバ(136)に対する流体入口と流体出口とを備え」るものである。一方、引用発明は、スプール状本体58が閉鎖連結用フランジ52を含み(前記(2)ア(ア)事項ア-p参照)、「ハウジング11とハウジング45は、スプール状本体58を介して互いに連結されている」るから、引用発明の「ハウジング11」、「スプール状本体58」及び「ハウジング45」は、合わせて、本件補正発明の「ハウジング(112)」に相当する。
そうすると、引用発明の「横孔14と、横孔14と連通する入口通路12及び出口通路13と、横孔14と連通する第3の通路とを有し、弁座部材16及び17が横孔14内に配設されている」ことは、本件補正発明の「チャンバ(113)の形態のボールシート(119)、前記チャンバ(113)と連通する入口(115)、前記チャンバ(113)と連通する出口(117)、および前記チャンバ(113)と連通するステム通路を画定」し、「前記入口(115)、前記チャンバ(113)、および前記出口(117)は、前記ハウジング(112)を通る流路(123)を画定する」ことと、前記aにおいて検討した点に加えて、入口、チャンバ、および出口は、「ハウジングを通る」流路を画定することでも一致するから、引用発明の「横孔14と、横孔14と連通する入口通路12及び出口通路13と、横孔14と連通する第3の通路とを有し、弁座部材16及び17が横孔14内に配設されているハウジング11」は、本件補正発明の「チャンバ(113)の形態のボールシート(119)、前記チャンバ(113)と連通する入口(115)、前記チャンバ(113)と連通する出口(117)、および前記チャンバ(113)と連通するステム通路を画定するハウジング(112)であって、前記入口(115)、前記チャンバ(113)、および前記出口(117)は、前記ハウジング(112)を通る流路(123)を画定する、ハウジング(112)」に相当する。
更に、前記cにおいて検討したとおり、引用発明のピストン46は往復線運動をするから、引用発明の「ピストン46を」「下向きに移動」及び「ピストン46を上向きに移動」は、合わせて、本件補正発明の「ピストン(138)の2方向の直線運動」に相当し、引用発明の「モータ機構は、開口102を備えるハウジング45と、」「ハウジング45に連結される閉鎖連結用フランジ52と、ハウジング内に配設され、ピストン46の下側51と閉鎖連結用フランジ52との間に拘束されるコイルばね50とを備え、開口102は、ピストン46より上でハウジング45の内部に開口しており、加圧下の作動用流体が開口102を介してピストン46の上に導入されると、ハウジング45内の圧力がピストン46をコイルばね50の力に抗して下向きに移動させ、ハウジング45内の圧力が開口102を介して減少乃至解放されると、コイルばね50がピストン46を上向きに移動させ」ることは、本件補正発明の「前記ハウジング(112)がさらに、前記ピストン(138)の両側に前記ピストン(138)を収容するピストンチャンバ(136)に対する流体入口と流体出口とを備え、前記ピストン(138)の両側の前記ピストンチャンバ(136)に選択的に供給され、放出される流体圧力は、ピストン(138)の2方向の直線運動に作用する」ことと、「ハウジングがさらに、ピストンを収容するピストンチャンバに対する流体入口と流体出口とを備え、前記ピストンチャンバに選択的に供給され、放出される流体圧力は、ピストンの2方向の直線運動に作用する」点で一致する。
f.引用発明の「弁作動装置」は、本件補正発明の「ボール弁アセンブリ(100)」に相当する。
g.以上のことから、本件補正発明と引用発明は、
「チャンバの形態のボールシート、前記チャンバと連通する入口、前記チャンバと連通する出口、および前記チャンバと連通するステム通路を画定するハウジングであって、
前記入口、前記チャンバ、および前記出口は、前記ハウジングを通る流路を画定する、ハウジングと、
ボールであって、通過通路と、前記ボールから延びるステムとを有し、前記ボールは前記ボールシート内に着座し、前記ステムは前記ステム通路を通って延び、
開位置と閉位置との間の前記ステムの回転は、前記通過通路を通る流体の流れを所望の流量に制御するために前記通過通路と前記流路の位置合わせおよび位置ずれにそれぞれ作用する、ボールと、
第1の位置と第2の位置との間を直線的に移動可能なピストンを有するリニアアクチュエータと、
前記ピストンを前記ステムに連結し、前記ピストンの直線運動を前記ステムの回転運動に変換する回転変換器とを備え、
前記回転変換器が、チャネルおよびフォロワ、並びにピンを用い、
前記リニアアクチュエータの作動は、前記第1の位置と第2の位置との間の前記ピストンの相対的な直線運動に作用して前記開位置と閉位置との間の前記ステムの対応する相対的な回転運動に作用し、前記通過通路と前記流路の相対的な位置合わせを制御することにより前記流路を通る流体の流れを制御し、
前記ハウジング(112)がさらに、前記ピストン(138)を収容するピストンチャンバ(136)に対する流体入口と流体出口とを備え、
前記ピストンチャンバ(136)に選択的に供給され、放出される流体圧力は、ピストン(138)の2方向の直線運動に作用する、ボール弁アセンブリ。」
の点で一致し、以下の点で一応相違する。
【相違点1】
本件補正発明は、回転変換器(116)が、相補的なチャネルおよびフォロワを備え、前記チャネルがピンを備えるのに対し、
引用発明は、回転変換器(回転子機構42)が、チャネル(螺旋状カムスロット91)がハウジング(スプール状本体58)に形成され、フォロワ(回転スリーブ65)がステム(トラニオン21)の突出端と係合し、ピン(ピン70)がリニアアクチュエータ(モータ機構)のピストン(ピストン46)に連結されたピストン棒54の長手方向についてピストン棒54とともに移動するものである点。
【相違点2】
本件補正発明は、ハウジング(112)が、前記ピストン(138)を収容するピストンチャンバ(136)に対する流体入口と流体出口とをピストン(138)の両側に備え、前記ピストン(138)の両側の前記ピストンチャンバ(136)に選択的に供給され、放出される流体圧力がピストン(138)の2方向の直線運動に作用するのに対し、
引用発明は、ハウジング(ハウジング45)が、前記ピストン(ピストン46)を収容するピストンチャンバ(ハウジング45の内部)に対する流体入口と流体出口(開口102)を前記ピストンより上で前記ピストンチャンバに開口するように備え、前記ハウジング内に配設され、前記ピストンの下側とハウジング(スプール状本体58に含まれる閉鎖連結用フランジ52)との間に拘束されるコイルばね50を備え、前記ピストンより上の前記ピストンチャンバに選択的に供給され、放出される流体圧力(ハウジング45内の圧力)が前記ピストンの2方向の直線運動に作用する(加圧下の作動用流体が開口102を介してピストン46の上に導入されると、ハウジング45内の圧力がピストン46をコイルばね50の力に抗して下向きに移動させ、ハウジング45内の圧力が開口102を介して減少乃至解放されると、コイルばね50がピストン46を上向きに移動させる)点。
(4)判断
ア.相違点1について検討する。
本件補正後の請求項1の記載のみからでは、本件補正発明の「前記回転変換器(116)が、相補的なチャネルおよびフォロワを備え、前記チャネルが、ピンを備え」ることが意味するところは必ずしも明らかではない。そこで、明細書及び図面の記載を参照すると、特に段落0019の記載からみて、本件補正発明の、「相補的なチャネルおよびフォロワを備え」る「回転変換器(116)」は、前記チャネルが作動要素であるピストン(138)及びステム(126)の一方に位置し、前記フォロワがピストン(138)及びステム(126)の他方に位置するものであるといえる。
そして、「相補的なチャネルおよびフォロワ」は、明細書及び図面に記載されている、ピストン(138)に配置された第2のねじ山(134)と、該第2のねじ山と相補的な、ステム(126)に配置された第1のねじ山(132)とに代えて、設けられるものであることからみて、前記チャネルとフォロワは、一方の直線運動を他方の回転運動に変換し得る態様で互いに係合するものであるものといえる。更に、直線運動する第1の部材及び回転運動する第2の部材の一方に位置するチャネル、前記第1の部材及び前記第2の部材の他方に位置するフォロワ、並びにピンを用い、前記第1の部材の直線運動を前記第2の運動の回転運動に変換する、慣用されている運動変換機構を考慮すれば、本件補正発明の「相補的なチャネルおよびフォロワを備え、前記チャネルが、ピンを備え」る「回転変換器(116)」は、少なくとも、前記チャネルが作動要素であるピストン(138)及びステム(126)の一方に位置し、前記フォロワがピストン(138)及びステム(126)の他方に位置し、前記チャネルに摺動可能に係合するピンを介して、前記チャネルとフォロワが、ピストン(138)の直線運動をステム(126)の回転運動に変換し得る態様で互いに係合するものを包含する。
しかしながら、直線運動する第1の部材及び回転運動する第2の部材の一方に位置するチャネル、前記第1の部材及び前記第2の部材の他方に位置するフォロワ、並びにピンを用い、前記ピンが前記チャネルに摺動可能に係合し、前記ピンを介して、前記チャネルとフォロワが、前記第1の部材の直線運動を前記第2の部材の回転運動に変換し得る態様で互いに係合してなる、運動変換機構は、例えば引用例2及び3に記載されているように、周知技術であって、引用発明の回転変換器も、直線運動する第1の部材と回転運動する第2の部材とを連結し、前記第1の部材の直線運動を前記第2の部材の回転運動に変換するものである点において機能を一にするものである。
してみれば、引用発明において、相違点1に係る本件補正発明を特定する事項を備えるようにすることは、前記周知技術に基いて、当業者が容易に想到し得る事項である。
イ.相違点2について検討する。
本件補正発明と引用例4に記載された技術を対比する。
引用例4に記載された技術の「ピストン12」は、本件補正発明の「ピストン(138)」に相当する。そして、引用例4に記載された技術において、ピストン12は、直線的に下降移動又は上昇するものであって、その移動ストロークに上限端及び下限端があることは明らかであるから、引用例4に記載された技術の「シリンダ部材10内に装着され、弁軸5の方向に往復動するピストン12」「を有する」「駆動部」は、本件補正発明の「第1の位置と第2の位置との間を直線的に移動可能なピストン(138)を有するリニアアクチュエータ(118)」に相当する。
引用例4に記載された技術の「弁軸5」は、本件補正発明の「ステム(126)」に相当し、ピストン12の往復動を弁軸5の回転動に変換するねじ変換機構19が、ピストン12と弁軸5を動作的に連結していることは明らかであるから、引用例4に記載された技術の「ピストン12の往復動を弁軸5の回転動に変換するねじ変換機構19」は、本件補正発明の「前記ピストン(138)を前記ステム(126)に連結し、前記ピストン(138)の直線運動を前記ステム(126)の回転運動に変換する回転変換器(116)」に相当する。
そうすると、引用例4に記載された技術の「支持部6の上部に取付けられ、弁軸5を回動する駆動部8」であって、「支持部6に取付けられたシリンダ部材10と、シリンダ部材10内に装着され、弁軸5の方向に往復動するピストン12と、第1ねじ部材21とこの第1ねじ部材21に螺合された第2ねじ部材22とからなり、ピストン12の往復動を弁軸5の回転動に変換するねじ変換機構19と、を有する」駆動部は、本件補正発明の「第1の位置と第2の位置との間を直線的に移動可能なピストン(138)を有するリニアアクチュエータ(118)」及び「前記ピストン(138)を前記ステム(126)に連結し、前記ピストン(138)の直線運動を前記ステム(126)の回転運動に変換する回転変換器(116)」に相当する。
引用例4に記載された技術の「シリンダ部材10内」は、本件補正発明の「ピストンチャンバ(136)」に相当し、引用例4に記載された技術の「圧力流体供給孔26」と「通孔27」は、いずれも、本件補正発明の「ピストンチャンバ(136)に対する流体入口と流体出口」に相当するから、引用例4に記載された技術の「シリンダ部材10」は、本件補正発明の「ハウジング(112)」と、少なくとも「ピストンを収容するピストンチャンバに対する流体入口と流体出口とを備え」る点で一致する。そして、引用例4に記載された技術において、シリンダ部材10の頂部に開設した圧力流体供給孔26とシリンダ部材10の支持部6側に開設した通孔27は、ピストン12を挟んで互いに異なる側にあるから、引用例4に記載された技術の「スプリング25をなくして、シリンダ部材10の頂部に開設した圧力流体供給孔26に加えてシリンダ部材10の支持部6側に通孔27を開設」することは、本件補正発明の「前記ハウジング(112)がさらに、前記ピストン(138)の両側に前記ピストン(138)を収容するピストンチャンバ(136)に対する流体入口と流体出口とを備え」ることに相当する。
更に、引用例4に記載された技術の「圧力室A」及び「反圧力室B」は、合わせて、本件補正発明の「前記ピストン(138)の両側の前記ピストンチャンバ(136)」に相当するから、引用例4に記載された技術の「圧力流体供給孔26から圧力室Aに圧力流体を導入しつつ、通孔27から反圧力室B内の圧力流体を排出し」又は「圧力流体供給孔26から圧力室A内の圧力流体を排出しつつ、通孔27から反圧力室Bに圧力流体を導入」するものである圧力流体は、本件補正発明の「前記ピストン(138)の両側の前記ピストンチャンバ(136)に選択的に供給され、放出される流体圧力」に相当する。引用例4に記載された技術の「ピストン12を直線的に下降移動させ」ること及び「ピストン12を直線的に上昇させる」ことは、本件補正発明の「ピストン(138)の2方向の直線運動」に相当し、引用例4に記載された技術において、ピストン12の直線的な下降移動又は上昇移動が圧力室A又は反圧力室Bに導入又は排出される圧力流体の作用によるものであることは明らかである。
そして、引用例4に記載された技術の「バタフライ開閉弁」は、本件補正発明の「ボール弁アセンブリ(100)」と、「弁アセンブリ」である点で一致する。
そうすると、引用例4には、第1の位置と第2の位置との間を直線的に移動可能なピストンを有するリニアアクチュエータと、前記ピストンをステムに連結し、前記ピストンの直線運動を前記ステムの回転運動に変換する回転変換器とを備える弁アセンブリにおいて、相違点2に係る本件補正発明を特定する事項である、ハウジングが、前記ピストンの両側に前記ピストンを収容するピストンチャンバに対する流体入口と流体出口とを備え、前記ピストンの両側の前記ピストンチャンバに選択的に供給され、放出される流体圧力は、ピストンの2方向の直線運動に作用するようにすることが記載されている。
引用発明と引用例4に記載された技術は、少なくとも、第1の位置と第2の位置との間を直線的に移動可能なピストンを有するリニアアクチュエータと、前記ピストンをステムに連結し、前記ピストンの直線運動を前記ステムの回転運動に変換する回転変換器とを備える弁アセンブリに係るものである点において技術分野を一にするものである。更に、引用例4に記載された技術は、ピストンの一側に該ピストンを収容するピストンチャンバに対する流体入口と流体出口とを備え、前記ピストンの他側に前記一側に向けて前記ピストンを弾撥するスプリングを設け、前記ピストンの一側の前記ピストンチャンバに選択的に供給され、放出される流体圧力は、ピストンの2方向の直線運動に作用するものに代えて、相違点2に係る本件補正発明を特定する事項のようにすることを示唆するものであるところ、引用例4に記載された、ピストンの一側に該ピストンを収容するピストンチャンバに対する流体入口と流体出口とを備え、前記ピストンの他側に前記一側に向けて前記ピストンを弾撥するスプリングを設け、前記ピストンの一側の前記ピストンチャンバに選択的に供給され、放出される流体圧力は、ピストンの2方向の直線運動に作用するものは、相違点2に係る引用発明の構成に相当するものである。更に、ピストンチャンバに対する流体入口及び流体出口をピストンの片側に備えるいわゆる単動シリンダとピストンの両側に備えるいわゆる複動シリンダは、いずれも慣用されている(例えば,(社)日本油空圧学会編,「新版油空圧便覧」,第1版第1刷,株式会社オーム社,1989年2月25日, p.255-256,表3・35参照)。
そうすると、引用例4に記載された技術を引用発明に適用し、引用発明において、相違点2に係る本件補正発明を特定する事項を備えるようにすることは、当業者が容易になし得る事項である。
この点に関し、請求人は、審判請求書において、「引用文献2(当審注:本審決における引用例4)は、スプリング25によりピストン12を図の上方向に移動させており、流体圧力によるピストン12の2方向の直線運動を開示しません。引用文献2では、スプリング25が他の部材に引っかかる等で動作不良を発生させる可能性があり、また、コンパクトな弁アセンブリを提供することができません。」(「【本願発明が特許されるべき理由】本願発明の非創作容易性について」参照)と主張している。
しかしながら、先に検討したとおり、引用例4には、スプリング25をなくして、シリンダ部材10の頂部に開設した圧力流体供給孔26に加えてシリンダ部材10の支持部6側に通孔27を開設し、圧力流体供給孔26から圧力室Aに圧力流体を導入しつつ、通孔27から反圧力室B内の圧力流体を排出して、ピストン12を直線的に下降移動させ、圧力流体供給孔26から圧力室A内の圧力流体を排出しつつ、通孔27から反圧力室Bに圧力流体を導入して、ピストン12を直線的に上昇させることが開示されており(前記「(2)エ」参照)、スプリング25がなければ、当然、スプリング25が他の部材に引っかかることによる動作不良は発生することはない。また、機械製品において、部品を省くことにより、製品をコンパクトし得ることは、当業者が容易に想到し得る事項である。
したがって、請求人の前記主張は、採用することができない。
ウ.そして、本件補正発明を特定する事項を総合してみても、本件補正発明の奏する効果に、引用例1及び引用例4に記載された事項及び前記周知技術に基いて、当業者が容易に想到し得る範囲を越えるものは見いだせない。
(5)小括
以上のとおり、本件補正発明は、引用発明並びに引用例4に記載された技術及び前記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3.本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1.本願発明
本件補正は、前記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成29年9月25日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1?3に係る発明(以下、「本願発明1」?「本願発明3」という。)は、その請求項1?3に記載された事項により特定される、前記「第2[理由]1(2)」に記載されたとおりのものである。


2.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1?15に係る発明は、その出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明並びに引用文献2に記載された技術及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1.特公昭48-4326号公報 (本審決における「引用例1」)
引用文献2.特開平4-4367号公報 (本審決における「引用例4」)
引用文献3.独国特許出願公開第19815008号明細書 (周知引例として)(本審決における「引用例2」)
引用文献4.実願昭56-86047号(実開昭57-196868号)のマイクロフィルム (周知引例として)

3.引用文献
原査定の理由の通知で引用された引用文献1?3,すなわち引用例1、2、4の記載事項は、前記「第2[理由]2(2)」に記載したとおりである。

4.対比・判断
前記「第2[理由]2」で検討したとおり、本件補正発明は、本願発明3を特定する事項である「それにより流体圧力を前記ピストン(138)の前記直線運動に作用するように使用する」ことを、「前記ピストン(138)の両側の前記ピストンチャンバ(136)に選択的に供給され、放出される流体圧力は、ピストン(138)の2方向の直線運動に作用する」ことと、前記ピストンの前記直線運動に作用するように前記流体圧力が使用される態様の点において限定したものである。
そうすると、本願発明3の発明特定事項を全て含み、更に他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「第2[理由]2(3)?(5)」に記載したとおり、引用発明並びに引用例4に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明3も、引用発明並びに引用例4に記載された技術及び前記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
そして、本願発明2は、本願発明3から、「前記ハウジング(112)がさらに、前記ピストン(138)の両側に前記ピストンチャンバ(136)に対する流体入口と流体出口とを備え、それにより流体圧力を前記ピストン(138)の前記直線運動に作用するように使用することができる」という発明特定事項を削除したものであり、更に、本願発明1は、本願発明2から、「前記ハウジング(112)が、前記ピストン(138)が収容されるピストンチャンバ(136)を画定する」という発明特定事項を削除したものであるから、本件補正発明は、本願発明1及び本願発明2の発明特定事項を全て含み、更に他の事項を付加したものに相当するといえる。そうすると、本願発明1及び本願発明2も、引用発明並びに引用例4に記載された技術及び前記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび

以上のとおり、本願発明1?3は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-01-31 
結審通知日 2019-02-12 
審決日 2019-02-25 
出願番号 特願2016-537523(P2016-537523)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16K)
P 1 8・ 575- Z (F16K)
P 1 8・ 121- Z (F16K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 正木 裕也  
特許庁審判長 堀川 一郎
特許庁審判官 長馬 望
久保 竜一
発明の名称 ボール弁アセンブリ  
代理人 荒川 聡志  
代理人 田中 拓人  
代理人 小倉 博  

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