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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1353483
審判番号 不服2018-15281  
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-11-19 
確定日 2019-07-11 
事件の表示 特願2014-143480号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 2月 4日出願公開、特開2016- 19557号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年7月11日の出願であって、平成30年2月16日付けで拒絶の理由が通知され、同年4月17日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年8月15日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、それに対して、同年11月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書(以下、この手続補正書による補正を「本件補正」という。)が提出されたものである。

第2 本件補正についての補正の却下の決定
〔補正の却下の決定の結論〕
本件補正を却下する。

〔理由〕
1 本件補正の概要
(1)本件補正は、
平成30年4月17日付け手続補正書によって補正された本件補正前の請求項1に、
「遊技領域に遊技媒体を発射可能な遊技機であって、
前記遊技領域は第1経路と第2経路とを含み、
第1遊技状態と第2遊技状態とに制御可能であり、
前記第1遊技状態に制御されているときには、前記第1経路に遊技媒体を発射する方が有利であり、
前記第2遊技状態に制御されているときには、前記第2経路に遊技媒体を発射する方が有利であり、
前記第1遊技状態に制御されているときに前記第2経路への遊技媒体の発射を検出したことに基づいて報知を行う一方で、
前記第1遊技状態に制御されている可変表示中に前記第2遊技状態に制御されることを示唆した場合、その後に前記第2経路への遊技媒体の発射を検出しても報知を制限する
ことを特徴とする遊技機。」とあったものを、

「遊技領域に遊技媒体を発射可能な遊技機であって、
前記遊技領域は第1経路と第2経路とを含み、
第1遊技状態と第2遊技状態とに制御可能であり、
前記第1遊技状態に制御されているときには、前記第1経路に遊技媒体を発射する方が有利であり、
前記第2遊技状態に制御されているときには、前記第2経路に遊技媒体を発射する方が有利であり、
前記第1遊技状態に制御されているときに前記第2経路への遊技媒体の発射を検出したことに基づいて、前記第1経路に遊技媒体を発射すべき旨の報知を行う一方で、
前記第1遊技状態に制御されている可変表示中に前記第2遊技状態に制御されることを示唆した場合、その後に前記第2経路への遊技媒体の発射を検出しても前記報知を制限する
ことを特徴とする遊技機。」
と補正するものである(下線は、補正前後の箇所を明示するために合議体が付した)。

(2)本件補正後の請求項1に係る上記(1)の補正は、次の補正事項からなる。
ア 本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である、「前記第1遊技状態に制御されているときに前記第2経路への遊技媒体の発射を検出したことに基づいて」行う「報知」を、「前記第1経路に遊技媒体を発射すべき旨の報知」と限定する補正。
イ 本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である、「制限」される「報知」を、「前記報知」とすることで、間接的に、「前記第1経路に遊技媒体を発射すべき旨の報知」と限定する補正。

2 本件補正の目的
(1)上記1(2)アないしイの補正は、願書に最初に添付された特許請求の範囲、明細書及び図面(以下「当初明細書等」という。)の【0186】、【0239】、図29等の記載に基づいて、本件補正前の請求項1において記載されていた「報知」がいずれも「前記第1経路に遊技媒体を発射すべき旨の報知」であることを限定するものである。

(2)以上のとおり、本件補正後の請求項1に係る上記1(2)アないしイの補正は、新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。また、本件補正後の請求項1に係る上記1(2)アないしイの補正は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が補正の前後において同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

3 独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明を再掲すると、次のとおりのものである。なお、記号AないしGは、分説するため合議体が付した。

「A 遊技領域に遊技媒体を発射可能な遊技機であって、
B 前記遊技領域は第1経路と第2経路とを含み、
C 第1遊技状態と第2遊技状態とに制御可能であり、
D 前記第1遊技状態に制御されているときには、前記第1経路に遊技媒体を発射する方が有利であり、
E 前記第2遊技状態に制御されているときには、前記第2経路に遊技媒体を発射する方が有利であり、
F 前記第1遊技状態に制御されているときに前記第2経路への遊技媒体の発射を検出したことに基づいて、前記第1経路に遊技媒体を発射すべき旨の報知を行う一方で、
G 前記第1遊技状態に制御されている可変表示中に前記第2遊技状態に制御されることを示唆した場合、その後に前記第2経路への遊技媒体の発射を検出しても前記報知を制限する
A ことを特徴とする遊技機。」

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用され、本願出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2012-24470号公報(平成24年2月9日出願公開、以下「引用例」という。)には、弾球遊技機に関し、次の事項が図面とともに記載されている(下線は引用発明等の認定に関連する箇所を明示するために合議体が付した。以下同様)。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、パチンコ機、アレンジボール機等の弾球遊技機に関するものである。」
イ 「【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳述する。図1?図12は本発明をパチンコ機に採用した第1の実施形態を例示している。図1において、遊技機本体1は、矩形状の外枠2と、この外枠2の左右一側、例えば左側のヒンジ3を介して縦軸心廻りに開閉及び着脱自在に枢着された内枠4とを備えている。
【0014】
内枠4には、その上部側に遊技盤5等が、下部側に発射手段6等が夫々配置されており、その内枠4の前側には、遊技盤5の前側を覆うガラス扉7と、そのガラス扉7の下側で発射手段6等の前側を覆う下部開閉扉8とがヒンジ3と同じ側のヒンジ9により開閉及び着脱自在に枢着されている。ガラス扉7には、遊技盤5の前面側に設けられた遊技領域15に対応するガラス窓10が設けられ、また下部開閉扉8には、払い出し手段(図示省略)から払い出された遊技球を貯留して発射手段6に供給する上皿11、その上皿11が満杯のときに余剰球を貯留する下皿12、発射手段6を作動させるために操作する発射ハンドル13等が設けられている。
【0015】
遊技盤5には、発射手段6から発射された遊技球を案内するガイドレール14が環状に装着されると共に、そのガイドレール14の内側の遊技領域15に、センターケース16の他、普通図柄始動手段17、第1,第2特別図柄始動手段(図柄始動手段)18a,18b、大入賞手段(開閉入賞手段)19、普通入賞手段20等の遊技球検出手段を含む各種遊技部品が配置されている。
【0016】
センターケース16は、例えば遊技盤5の裏側に固定される液晶式等の画像表示手段21に対応して遊技領域15内の略中央に配置されており、遊技盤5の前面側に沿って設けられ且つ固定ねじ等により遊技盤5に固定される前面装着板22と、画像表示手段21の表示画面21aを取り囲む表示枠部23とを一体に備えている。表示枠部23は、例えばその略全体が前面装着板22から前側に突出しており、その内側、即ち画像表示手段21側への遊技球の侵入を阻止するようになっている。即ち、発射手段6により遊技領域15の上部側に打ち込まれた遊技球は、この表示枠部23の上部側で左右に振り分けられ、センターケース16の左側の左流下経路(非特定流下経路)24aと右側の右流下経路(特定流下経路)24bとの何れかを流下する。
【0017】
センターケース16の例えば表示枠部23上には、普通図柄表示手段31、第1,第2特別図柄表示手段(図柄表示手段)32a,32b、普通保留個数表示手段33等の表示手段の他、画像表示手段21の前側下部に、表示枠部23の例えば左側部に設けられた入球口34から入球した遊技球を左右方向に自由に転動させて左右方向中央の落下口35又はその左右両側から落下させるステージ36が設けられている。また画像表示手段21は、第1,第2演出図柄表示手段37a,37b、第1,第2特別保留個数表示手段38a,38b、発射誘導情報表示手段39、発射警告情報表示手段(発射警告表示出力手段)40等を構成している。
【0018】
普通図柄始動手段17は、普通図柄表示手段31による普通図柄の変動表示を開始させるためのもので、遊技球が通過可能な通過ゲート等により構成され、例えばセンターケース16の右側上部、即ち右流下経路24b上の上部側に配置されており、通過した遊技球を検出可能となっている。
・・・略・・・
【0032】
発射誘導情報表示手段39(図2,図12)は、左流下経路(非特定流下経路)24aを狙って発射する「左打ち」の方が遊技者に有利な左打ち期間(非特定期間)中であるか、右流下経路(特定流下経路)24bを狙って発射する「右打ち」の方が遊技者に有利な右打ち期間(特定期間)中であるかに関する発射誘導情報を表示するもので、左打ち期間中には「←左へ」等の左打ち誘導情報を、右打ち期間中には「右へ→」等の右打ち誘導情報を画像表示手段21上に表示するように構成されており、例えば遊技状態が変化した場合に所定期間作動するようになっている。
【0033】
発射警告情報表示手段(発射警告表示出力手段)40は、遊技者が狙うべき流下経路と反対側の流下経路に遊技球が打ち込まれた場合に発射警告情報を表示するもので、例えば左打ち期間中に右流下経路24b上の普通図柄始動手段(特定検出手段)17等が検出した遊技球の個数が所定個数(例えば3個)以上となった場合に「←左を狙え!」等の右打ち警告情報を、右打ち期間中に左流下経路24a上の普通入賞手段20等が検出した遊技球の個数が所定個数(例えば3個)以上となった場合に「右を狙え!→」等の左打ち警告情報を画像表示手段21上に表示するように構成されている。
【0034】
大入賞手段19は、遊技球が入賞可能な開状態と入賞不可能な閉状態とに切り換え可能な開閉板42を備えた開閉入賞手段で、例えばセンターケース16の右側の右流下経路 (特定流下経路)24b上で且つ第2特別図柄始動手段18bよりも下流側に配置されており、第1,第2特別図柄表示手段32a,32bの変動後の第1,第2特別図柄が大当たり態様となることに基づいて発生する大当たり状態中に、開閉板42が複数種類の開放パターンの何れかに従って前側に開放して、その上に落下した遊技球を内部へと入賞させると共に、その入賞した遊技球を検出するようになっている。」
ウ 「【0062】
発射誘導情報制御手段85は、発射誘導情報の出力制御を行うもので、図7に示す発射誘導情報制御処理を例えば定期割り込み毎に実行することにより、変化後の遊技状態に応じて左打ち誘導情報又は右打ち誘導情報の何れかを出力させるように構成されている。この発射誘導情報制御手段85による発射誘導情報制御処理(図7)では、遊技状態コマンド(図6)を受信したか否かが判定され、遊技状態コマンドを受信したと判定された場合には(S1:No)、図8に示す発射誘導情報出力開始処理が実行される(S2)。
【0063】
この発射誘導情報出力開始処理(図8)では、まず受信した遊技状態コマンドの種類が判定される(S11?S14)。そして、受信した遊技状態コマンドが15R大当たり開始コマンドであれば(S11:Yes)、右打ち期間中フラグが、右打ち期間中であることを示すONに設定される(S15)と共に、図11及び図12(a)に示すように、発射誘導情報表示手段39、即ち画像表示手段21の表示画面21a上に「右へ→」等の右打ち誘導情報の表示が開始され(S16)、また発射誘導情報出力中フラグがONに切り換えられ(S17)、発射誘導情報出力開始処理は終了する。15R大当たり開始コマンドが送信されると、その後に15R大当たり状態が開始され、右流下経路24b上にある大入賞手段19が開放されるため、遊技者は右流下経路24b側を狙って「右打ち」を行う方が有利(右打ち期間)となる。
【0064】
なお、特別遊技状態中(潜伏確変状態を除く)は、右流下経路24b上にある第2特別図柄始動手段18bの開閉パターンが延長開閉パターンとなるため(図3)、遊技者にとって「右打ち」が有利な右打ち期間であり、この特別遊技状態中に大当たり状態が開始しても「右打ち」が有利な状態は変わらない。従って、15R大当たり開始コマンドを受信した場合(S11:Yes)であっても、それが特別遊技状態中(潜伏確変状態を除く)である場合、即ち右打ち期間中である場合には、右打ち誘導情報の表示を開始しないように制御してもよい。
【0065】
また、受信した遊技状態コマンドが確変開始コマンドと時短開始コマンドとの何れかであった場合は(S12:Yes)、図11及び図12(c)に示すように、発射誘導情報表示手段39により、画像表示手段21の表示画面21a上で例えば変動表示中の第1,第2演出図柄表示手段37a,37bの前側に重なるように「右へ→」等の右打ち誘導情報の表示が開始され(S16)、発射誘導情報出力中フラグがONに切り換えられる(S17)。確変開始コマンド又は時短開始コマンドが送信されると、その後に確変状態(潜伏確変状態を除く)又は時短状態が開始され、右流下経路24b上にある第2特別図柄始動手段18bの開閉パターンが延長開閉パターンとなるため(図3)、遊技者は右流下経路24b側を狙って「右打ち」を行う方が有利(右打ち期間)となる。
【0066】
なお、この確変/時短状態の開始前の大当たり状態中は「右打ち」が有利な右打ち期間であるため、確変/時短状態が開始しても「右打ち」が有利な状態は変わらない。従って、確変開始コマンドと時短開始コマンドとの何れかを受信した場合(S12:Yes)は右打ち誘導情報の表示を開始しないように制御してもよい。また、右打ち期間である大当たり状態と、同じく右打ち期間である確変/時短状態との間の大当たりエンディング期間中は、厳密には左打ち期間であるが、この期間は僅かであって必ずしも右打ちから左打ちに切り換えることが遊技者に有利になるとも言えないため、本実施形態では便宜上この期間もその前後と同じ右打ち期間とみなして制御する。従って、大当たり状態の終了時、及び確変/時短開始コマンドの受信時(S12:Yes)の何れの時点でも右打ち期間中フラグは変更していない。
【0067】
また、受信した遊技状態コマンドが時短終了コマンドであれば(S13:Yes)、右打ち期間中フラグが左打ち期間中であることを示すOFFに設定される(S18)と共に、図11及び図12(e)に示すように、発射誘導情報表示手段39により、画像表示手段21の表示画面21a上で例えば変動表示中の第1,第2演出図柄表示手段37a,37bの前側に重なるように「←左へ」等の左打ち誘導情報の表示が開始され(S19)、発射誘導情報出力中フラグがONに切り換えられる(S17)。
【0068】
時短終了コマンドが送信されると、それまでの時短状態が終了して通常遊技状態となり、右流下経路24b上にある第2特別図柄始動手段18bの開閉パターンが延長開閉パターンから通常開閉パターンに切り換わって入賞の可能性が極めて低くなるため(図3)、第1特別図柄始動手段18aを狙って「左打ち」を行う方が遊技者にとって有利(左打ち期間)となる。
【0069】
また、受信した遊技状態コマンドが潜伏確変開始コマンドであった場合(S14:Yes)も同様に、右打ち期間中フラグが左打ち期間中であることを示すOFFに設定される(S18)と共に、図12(e)に示すように発射誘導情報表示手段39に「←左へ」等の左打ち誘導情報の表示が開始され(S19)、発射誘導情報出力中フラグがONに切り換えられる(S17)。なお本実施形態の場合には、潜伏確変状態が開始されるのは通常遊技状態中に開始された2R大当たり状態の終了後であり(図4)、この2R大当たり状態では「右打ち」をしても入賞が殆ど期待できないことに鑑みれば、その前の通常遊技状態から「左打ち」が有利な状態は変わらないため、潜伏確変開始コマンドを受信した場合には左打ち誘導情報の表示を開始しないように制御してもよい。
【0070】
また、図7の発射誘導情報制御処理において、発射誘導情報出力中フラグがONであると判定された場合には(S3:Yes)、図9に示す発射誘導情報出力終了処理が実行される(S4)。この発射誘導情報出力終了処理(図9)では、まず予め定められた発射誘導情報の出力終了時期が到来したか否かが判定される(S31)。ここで、発射誘導情報の出力終了時期は任意に設定することができ、本実施形態では出力開始から所定時間経過時点とするが、例えば遊技者に有利な発射位置が変化した時点としてもよい。
【0071】
発射誘導情報の出力終了時期が到来したと判定された場合には(S31:Yes)、その時点で発射誘導情報表示手段39、即ち画像表示手段21の表示画面21a上への発射誘導情報の表示が停止され(S32)、発射誘導情報出力中フラグがOFFに切り換えられ、発射誘導情報出力終了処理は終了する。
【0072】
発射警告情報制御手段86は、発射警告情報の出力制御を行うもので、図10に示す発射警告情報制御処理を例えば定期割り込み毎に実行することにより、左打ち期間中であるにも拘わらず右流下経路24b側に所定個数の遊技球が打ち込まれ、右打ち期間中であるにも拘わらず左流下経路24a側に所定個数の遊技球が打ち込まれた場合に発射警告情報を出力させるように構成されている。
【0073】
この発射警告情報制御手段86による発射警告情報制御処理(図10)では、まず右打ち期間中フラグの値の変化状態が判定される(S41?S43)。そして、右打ち期間中フラグがOFFからONに変化したと判定された場合(S41:Yes)、即ち右打ち期間が開始された場合には左打ちカウンタの値がクリアされ(S44)、また発射警告情報の出力抑制中であるか否かを示す発射警告情報抑制フラグがOFFに設定され(S45)、発射警告情報制御処理は終了する。一方、右打ち期間中フラグがONからOFFに変化したと判定された場合(S42:Yes)、即ち左打ち期間が開始された場合には、右打ちカウンタの値がクリアされ(S47)、発射警告情報制御処理は終了する。
【0074】
右打ち期間中フラグがONのまま変化なしと判定された場合(S43:Yes)、即ち右打ち期間が継続中の場合には、発射誘導情報出力中フラグがONであるか否かが判定され(S48)、発射誘導情報出力中フラグがONであれば(S48:Yes)、即ち発射誘導情報の出力中であればその時点で発射警告情報制御処理は終了する。発射誘導情報出力中フラグがONでなければ(S48:No)、即ち発射誘導情報の出力が既に終了している場合には、左流下経路24a上に存在する所定の遊技球検出手段、例えば普通入賞手段20が遊技球を検出したか否かが判定され(S49)、検出したと判定された場合(S49:Yes)には左打ちカウンタに1が加算される(S50)。なお、普通入賞手段20が遊技球を検出したか否かについては、主制御基板51から送信される普通入賞手段20に関する遊技球検出コマンドに基づいて判断される。
【0075】
そして、加算後の左打ちカウンタの値が所定個数N(例えば3個)以上であれば(S51:Yes)、図12(d)に示すように発射警告情報表示手段40、即ち画像表示手段21の表示画面21a上に「右を狙え!→」等の左打ち警告情報が所定期間表示され(S52)、左打ちカウンタの値がクリアされて(S53)、発射警告情報出力開始処理は終了する。
【0076】
また、右打ち期間中フラグがOFFのまま変化なしと判定された場合(S43:No)、即ち左打ち期間が継続中の場合には、2R大当たり開始前演出コマンドと15R大当たり開始前演出コマンドとの何れかを受信したか否か、即ち大当たり状態の開始前の図柄変動が終了したか否かが判定され(S54)、2R大当たり開始前演出コマンドと15R大当たり開始前演出コマンドとの何れかを受信したと判定された場合には発射警告情報抑制フラグがONに設定される(S55)。
【0077】
続いて、発射警告情報抑制フラグがONであるか否かが判定される(S56)。そして、発射警告情報抑制フラグがONでないと判定された場合(S56:No)、即ちこの左打ち期間中に未だ2R大当たり開始前演出コマンドと15R大当たり開始前演出コマンドとの何れも受信していない場合には、発射誘導情報出力中フラグがONであるか否かが判定され(S57)、発射誘導情報出力中フラグがONであれば(S57:Yes)、即ち発射誘導情報の出力中であればその時点で発射警告情報制御処理は終了する。
【0078】
発射誘導情報出力中フラグがONでなければ(S57:No)、即ち発射誘導情報の出力が既に終了している場合には、右流下経路24b上に存在する所定の遊技球検出手段、例えば普通図柄始動手段(特定検出手段)17が遊技球を検出したか否かが判定され(S58)、検出したと判定された場合(S58:Yes)には右打ちカウンタに1が加算される(S59)。そして、加算後の右打ちカウンタの値が所定個数N(例えば3個)以上であれば(S60:Yes)、図12(f)に示すように発射警告情報表示手段40、即ち画像表示手段21の表示画面21a上に「←左を狙え!」等の右打ち警告情報が所定期間表示され(S61)、右打ちカウンタの値がクリアされて(S62)、発射警告情報出力開始処理は終了する。なお、普通図柄始動手段17が遊技球を検出したか否かについては、主制御基板51から送信される普通図柄始動手段17に関する遊技球検出コマンドに基づいて判断される。
【0079】
一方、S56において発射警告情報抑制フラグがONであると判定された場合(S56:Yes)、即ちこの左打ち期間中に既に2R大当たり開始前演出コマンドと15R大当たり開始前演出コマンドとの何れかを受信した場合には、S57以下の処理をスキップして発射警告情報出力開始処理を終了するため、次に右打ち期間である大当たり状態が開始されるまでの間に右流下経路24b側に遊技球が打ち込まれても右打ち警告情報が出力されることはない。
【0080】
このように、左打ち期間(非特定期間)が終了して右打ち期間(特定期間)である大当たり状態が開始される場合には、その大当たり状態の開始前の大当たり図柄変動の終了から大当たり状態の開始までの期間(所定期間)、即ち大当たり状態前のファンファーレ演出期間については、右打ち期間の開始が間近であるため、右打ち警告情報(発射警告情報)の出力は行わない。
【0081】
以上説明したように、本実施形態のパチンコ機では、左打ち期間(非特定期間)が終了して右打ち期間(特定期間)の一例としての大当たり状態が開始される場合に、その大当たり状態の開始前の所定期間、例えば大当たり態様となる図柄変動の終了から大当たり状態の開始までの期間は右打ち警告情報(発射警告情報)の出力を行わないように構成しているため、遊技者の右打ちに対して警告を行ったにも拘わらず短期間で右打ち期間に移行してしまい、逆に遊技者の利益を損ねてしまうような事態を防止できる。」
エ 「【0082】
図13は本発明の第2の実施形態を例示し、左打ち期間(非特定期間)が終了して右打ち期間(特定期間)である大当たり状態が開始される場合に、その大当たり状態の開始前の大当たり図柄変動の開始から大当たり状態の開始までの期間を所定期間とし、その所定期間中は右打ち警告情報(発射警告情報)の出力を行わないように構成した例を示している。
【0083】
本実施形態が第1の実施形態と異なるのは、図13に示す発射警告情報制御処理におけるS54の処理のみである。即ち、本実施形態の発射警告情報制御処理では、右打ち期間中フラグがOFFのまま変化なしと判定された場合(S43:No)、即ち左打ち期間が継続中の場合には、大当たりに対応する変動パターン指定コマンドを受信したか否かが判定され(S54)、大当たりに対応する変動パターン指定コマンドを受信したと判定された場合に発射警告情報抑制フラグがONに設定される(S55)ようになっている。この発射警告情報制御処理におけるS54以外の処理については第1の実施形態と共通である。
【0084】
これにより、S56において発射警告情報抑制フラグがONであると判定された場合 (S56:Yes)、即ちこの左打ち期間中に大当たり態様となる図柄変動が開始された場合には、S57以下の処理をスキップして発射警告情報出力開始処理を終了するため、次に右打ち期間である大当たり状態が開始されるまでの間に右流下経路24b側に遊技球が打ち込まれても右打ち警告情報が出力されることはない。
【0085】
このように、左打ち期間(非特定期間)が終了して右打ち期間(特定期間)である大当たり状態が開始される場合に右打ち警告情報(発射警告情報)の出力を行わない所定期間を、その大当たり状態の開始前の大当たり図柄変動の開始から大当たり状態の開始までの期間としてもよい。」
オ 「【0086】
図14は本発明の第3の実施形態を例示し、左打ち期間(非特定期間)が終了して右打ち期間(特定期間)である大当たり状態が開始される場合に、その左打ち期間中に大当たり判定値と一致する大当たり判定乱数値が取得されてから大当たり状態の開始までの期間を所定期間とし、その所定期間中は右打ち警告情報(発射警告情報)の出力を行わないように構成した例を示している。
【0087】
本実施形態が第1,第2の実施形態と異なるのは、図14に示す発射警告情報制御処理におけるS54の処理のみである。即ち、本実施形態の発射警告情報制御処理では、右打ち期間中フラグがOFFのまま変化なしと判定された場合(S43:No)、即ち左打ち期間が継続中の場合には、通常確率時大当たりに対応する第1/第2特別保留個数指定コマンドを受信したか否かが判定され(S54)、通常確率時大当たりに対応する第1/第2特別保留個数指定コマンドを受信したと判定された場合に発射警告情報抑制フラグがONに設定される(S55)ようになっている。この発射警告情報制御処理におけるS54以外の処理については第1の実施形態と共通である。
【0088】
これにより、S56において発射警告情報抑制フラグがONであると判定された場合(S56:Yes)、即ち左打ち期間中に大当たり判定値と一致する大当たり判定乱数値が取得された場合には、S57以下の処理をスキップして発射警告情報出力開始処理を終了するため、次に右打ち期間である大当たり状態が開始されるまでの間に右流下経路24b側に遊技球が打ち込まれても右打ち警告情報が出力されることはない。
【0089】
このように、左打ち期間(非特定期間)が終了して右打ち期間(特定期間)である大当たり状態が開始される場合に右打ち警告情報(発射警告情報)の出力を行わない所定期間を、その左打ち期間中に大当たり判定値と一致する大当たり判定乱数値が取得されてから大当たり状態の開始までの期間としてもよい。」
カ 「【0095】
発射誘導情報の出力を抑制する所定期間は任意であり、実施形態に示したもの以外でも、例えば大当たり態様となる図柄変動が終了する所定時間前から大当たり状態の開始までの期間、大当たり態様となる図柄変動でリーチ状態が出現してから大当たり状態の開始までの期間、図柄変動中に大当たり予告演出が実行されてから大当たり状態の開始までの期間等でもよい。」
キ 「【図10】


ク 「【図12】


ケ 「【図13】


コ 「【図14】


サ 引用例には、上記ウ及びキに示したように、【0062】ないし【0081】及び図10に第1の実施形態が記載され、上記エ及びケに示したように、【0082】ないし【0085】及び図13に、第2の実施形態が記載され、さらに、上記オ及びコに示したように、【0086】ないし【0089】及び図14に、第3の実施形態が記載されており、その他の実施形態は記載されていないところ、それら第1から第3の実施形態において、その出力が所定期間抑制されるのは「発射警告情報」であるから、【0095】(上記カ)の「発射誘導情報の出力を抑制する所定期間は任意であり、実施形態に示したもの以外でも、例えば・・・図柄変動中に大当たり予告演出が実行されてから大当たり状態の開始までの期間等でもよい。」に記載された「発射誘導情報」は明らかな誤記であって、正しくは「発射警告情報」であると認められる。
シ 上記アないしサの記載内容からみて、引用例には、実施の形態として、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。なお、aないしgについては本願補正発明のAないしGに対応させて付与し、引用箇所の段落番号等を併記した。
「a 遊技領域15に遊技球を発射するパチンコ機であって(【0013】、【0015】ないし【0016】)、
b 前記遊技領域15に打ち込まれた遊技球は、センターケース16の左側の左流下経路(非特定流下経路)24aと右側の右流下経路(特定流下経路)24bとの何れかを流下し(【0016】)、
c 大入賞手段19の開閉板42を、遊技球が入賞可能な開状態と入賞不可能な閉状態とに切り換え可能であり、大当たり状態中に開閉板42は開放され(【0034】)、
d 通常遊技状態であるときは、第1特別図柄始動手段18aを狙って「左打ち」を行う方が遊技者にとって有利(左打ち期間)であり(【0068】)、
e 右流下経路24b上にある大入賞手段19が開放されるときは、遊技者が右流下経路24b側を狙って「右打ち」を行う方が有利(右打ち期間)であり(【0063】)、
f 左打ち期間中に右流下経路24b上の普通図柄始動手段(特定検出手段)17等が検出した遊技球の個数が所定個数以上となった場合に、「←左を狙え!」等の右打ち発射警告情報を表示し(【0033】、図12)、
g 左打ち期間(非特定期間)が継続中に、大当たり開始前演出コマンドを受信したと判定された場合には、発射警告情報抑制フラグをONに設定し、その大当たり状態の開始前の大当たり図柄変動の終了から大当たり状態の開始までの期間(所定期間)については、右打ち警告情報(発射警告情報)の出力は行わず(【0076】、【0079】、【0081】)、それにより、遊技者の右打ちに対して警告を行ったにも拘わらず短期間で右打ち期間に移行してしまい、逆に遊技者の利益を損ねてしまうような事態を防止でき(【0081】)、ここで、前記所定期間として、大当たり態様となる図柄変動の終了から大当たり状態の開始までの期間に替えて、大当たり状態の開始前の大当たり図柄変動の開始から大当たり状態の開始までの期間や、左打ち期間中に大当たり判定値と一致する大当たり判定乱数値が取得されてから大当たり状態の開始までの期間を用いてもよく(【0085】、【0089】)、さらに、前記所定期間は任意であって、先に示したもの以外でも、例えば、図柄変動中に大当たり予告演出が実行されてから大当たり状態の開始までの期間でもよい(【0095】)、
a パチンコ機(【0013】)。」

ス 上記サで示したように、【0095】(上記(2)カ)に記載された「発射誘導情報」が「発射警告情報」の明らかな誤記である、とは認められない場合、上記のアないしオ及びキないしコの記載内容からみて、引用例には、実施の形態として、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。なお、aないしf及びg-2については本願補正発明のAないしGに対応させて付与し、引用箇所の段落番号等を併記した。
「a 遊技領域15に遊技球を発射するパチンコ機であって(【0013】【0015】ないし【0016】)、
b 前記遊技領域15に打ち込まれた遊技球は、センターケース16の左側の左流下経路(非特定流下経路)24aと右側の右流下経路(特定流下経路)24bとの何れかを流下し(【0016】)、
c 大入賞手段19の開閉板42を、遊技球が入賞可能な開状態と入賞不可能な閉状態とに切り換え可能であり、大当たり状態中に開閉板42は開放され(【0034】)、
d 通常遊技状態であるときは、第1特別図柄始動手段18aを狙って「左打ち」を行う方が遊技者にとって有利(左打ち期間)であり(【0068】)、
e 右流下経路24b上にある大入賞手段19が開放されるときは、遊技者が右流下経路24b側を狙って「右打ち」を行う方が有利(右打ち期間)であり(【0063】)、
f 左打ち期間中に右流下経路24b上の普通図柄始動手段(特定検出手段)17等が遊技球を検出し、その検出された遊技球の個数が所定個数以上となった場合に、「←左を狙え!」等の右打ち発射警告情報を表示し(【0033】、図12)、
g-2 左打ち期間(非特定期間)が継続中に、大当たり開始前演出コマンドを受信したと判定された場合には、発射警告情報抑制フラグをONに設定し、その大当たり状態の開始前の大当たり図柄変動の終了から大当たり状態の開始までの期間(所定期間)については、右打ち警告情報(発射警告情報)の出力は行わず(【0076】、【0079】、【0081】)、それにより、遊技者の右打ちに対して警告を行ったにも拘わらず短期間で右打ち期間に移行してしまい、逆に遊技者の利益を損ねてしまうような事態を防止でき(【0081】)、ここで、前記所定期間として、大当たり態様となる図柄変動の終了から大当たり状態の開始までの期間に替えて、大当たり状態の開始前の大当たり図柄変動の開始から大当たり状態の開始までの期間や、左打ち期間中に大当たり判定値と一致する大当たり判定乱数値が取得されてから大当たり状態の開始までの期間を用いてもよい(【0085】、【0089】)、
a パチンコ機(【0013】)。」

(3)対比
ア 本願補正発明と引用発明1とを対比する。なお、以下の見出し(a)ないし(g)は、本願補正発明のAないしGに対応させている。

(a)引用発明1における「遊技領域15」、「遊技球」、「発射」及び「パチンコ機」は、それぞれ、本願補正発明における「遊技領域」、「遊技媒体」、「発射」及び「遊技機」に相当するといえるから、引用発明1の特定事項aは、本願補正発明の特定事項Aに相当する。

(b)引用発明1のbより、遊技領域15は、左側の左流下経路(非特定流下経路)24aと右側の右流下経路(特定流下経路)24bを含むものであるから、引用発明1における「左流下経路(非特定流下経路)24a」及び「右流下経路(特定流下経路)24b」は、それぞれ、本願補正発明における「第1経路」及び「第2経路」に相当するといえる。そうすると、引用発明1の特定事項bは、本願補正発明の特定事項Bに相当する。

(c)引用発明1における「入賞不可能な閉状態」及び「入賞可能な開状態」は、それぞれ、本願補正発明における「第1遊技状態」及び「第2遊技状態」に相当するといえるから、引用発明1における「入賞可能な開状態と入賞不可能な閉状態とに切り換え可能であ」ることは、本願補正発明における「第1遊技状態と第2遊技状態とに制御可能であ」ることに相当するといえる。そうすると、引用発明1の特定事項cは、本願補正発明の特定事項Cに相当する。

(e)事案に鑑み、本願補正発明のEについて先に検討する。引用発明1における「右流下経路24b上にある大入賞手段19が開放されるときは、遊技者が右流下経路24b側を狙って「右打ち」を行う方が有利(右打ち期間)であ」ることは、本願補正発明における「前記第2遊技状態に制御されているときには、前記第2経路に遊技媒体を発射する方が有利であ」ることに相当するといえる。そうすると、引用発明1の特定事項eは、本願補正発明の特定事項Eに相当する。

(d)引用発明1のdより、「通常遊技状態であるとき」は、遊技者にとって「左打ち」を行う方が有利(左打ち期間)である。ここで、上記(e)で示したように、引用発明1において、大入賞手段19の開閉板42が入賞可能な開状態であれば、「右打ち」を行う方が有利(右打ち期間)な状態になるといえるから、逆に、「左打ち」を行う方が有利(左打ち期間)な状態であるときは、大入賞手段19の開閉板42が、入賞可能な開状態ではない、換言すると、入賞不可能な閉状態である、ことは明らかである。これはすなわち、「通常遊技状態であるとき」は、入賞不可能な閉状態であることを意味するから、引用発明1における「通常遊技状態であるときは、第1特別図柄始動手段18aを狙って「左打ち」を行う方が遊技者にとって有利(左打ち期間)であ」ることは、本願補正発明における「前記第1遊技状態に制御されているときには、前記第1経路に遊技媒体を発射する方が有利であ」ることに相当するといえる。そうすると、引用発明1の特定事項dは、本願補正発明の特定事項Dに相当する。

(f)上記(d)で示したように、引用発明1において、「左打ち」を行う方が有利(左打ち期間)である「通常遊技状態」は、大入賞手段19の開閉板42が入賞不可能な閉状態であることは明らかであるから、引用発明1における「左打ち期間中に右流下経路24b上の普通図柄始動手段(特定検出手段)17等が遊技球を検出」することが、本願補正発明における「前記第1遊技状態に制御されているときに前記第2経路への遊技媒体の発射を検出したこと」に相当するといえる。また、引用発明1における「「←左を狙え!」等の右打ち発射警告情報」は、本願補正発明における「前記第1経路に遊技媒体を発射すべき旨の報知」に相当するといえる。さらに、引用発明1は、「普通図柄始動手段(特定検出手段)17等」で「検出された遊技球が所定個数以上となった場合に」、「右打ち発射警告情報を表示」するものであるから、本願補正発明における「前記第1遊技状態に制御されているときに前記第2経路への遊技媒体の発射を検出したことに基づいて、前記第1経路に遊技媒体を発射すべき旨の報知を行う」ことも具備するといえる。そうすると、引用発明1の特定事項fは、本願補正発明の特定事項Fに相当する。

(g)引用発明1において、「右打ち警告情報(発射警告情報)の出力」を行わない「所定期間」として、「図柄変動中に大当たり予告演出が実行されてから大当たり状態の開始までの期間」を用いた場合、その「大当たり予告演出」が、遊技者に対して、「大当たり状態」、すなわち、「大入賞手段19の開閉板42」が「遊技球が入賞可能な開状態」に切り換えられることを示唆するものといえるため、引用発明1における「図柄変動中に大当たり予告演出が実行され」ることは、本願補正発明における「前記第1遊技状態に制御されている可変表示中に前記第2遊技状態に制御されることを示唆」することに相当するといえる。そして、引用発明1における「大当たり状態の開始前の所定期間において、右打ち警告情報(発射警告情報)の出力を行わない」ことは、本願補正発明における「その後に前記第2経路への遊技媒体の発射を検出しても前記報知を制限する」ことに相当するといえる。そうすると、引用発明1の特定事項gは、本願補正発明の特定事項Gに相当する。

イ 上記アからみて、本願補正発明と引用発明1とは、
「A 遊技領域に遊技媒体を発射可能な遊技機であって、
B 前記遊技領域は第1経路と第2経路とを含み、
C 第1遊技状態と第2遊技状態とに制御可能であり、
D 前記第1遊技状態に制御されているときには、前記第1経路に遊技媒体を発射する方が有利であり、
E 前記第2遊技状態に制御されているときには、前記第2経路に遊技媒体を発射する方が有利であり、
F 前記第1遊技状態に制御されているときに前記第2経路への遊技媒体の発射を検出したことに基づいて、前記第1経路に遊技媒体を発射すべき旨の報知を行う一方で、
G 前記第1遊技状態に制御されている可変表示中に前記第2遊技状態に制御されることを示唆した場合、その後に前記第2経路への遊技媒体の発射を検出しても前記報知を制限する
A 遊技機。」である点で一致し、相違するところはない。

したがって、本願補正発明は、引用発明1と同一であり、引用例に記載された発明である。

ウ 本願補正発明と引用発明2とを対比すると、本願補正発明のAないしFについては、上記(3)ア(a)ないし(f)で示したように、本願補正発明と引用発明1との対比結果のとおりであって、本願補正発明のGについては、以下の見出し(g-2)に示すとおりである。

(g-2)引用発明2において、「右打ち警告情報(発射警告情報)の出力」を行わない「所定期間」として、「大当たり態様となる図柄変動の終了から大当たり状態の開始までの期間」、「大当たり状態の開始前の大当たり図柄変動の開始から大当たり状態の開始までの期間」または「左打ち期間中に大当たり判定値と一致する大当たり判定乱数値が取得されてから大当たり状態の開始までの期間」のいずれを用いたとしても、「大当たり状態」になるまでは、「大入賞手段19の開閉板42」が「遊技球が入賞不可能な閉状態」であることは、当業者にとって自明である。さらに、その「所定期間」経過後に、そのような「閉状態」から「大当たり状態」、すなわち、「大入賞手段19の開閉板42」が「遊技球が入賞可能な開状態」へと切り換えられることも明らかである。そして、引用発明2における「大当たり状態の開始前の所定期間において、右打ち警告情報(発射警告情報)の出力を行わない」ことは、本願補正発明における「前記第2経路への遊技媒体の発射を検出しても前記報知を制限する」ことに相当する。そうすると、引用発明2の特定事項g-2と、本願補正発明の特定事項Gとは、「G’前記第1遊技状態に制御された後に前記第2遊技状態に制御され、前記第2経路への遊技媒体の発射を検出しても前記報知を制限する」点で共通する。

イ 上記アからみて、本願補正発明と引用発明とは、
「A 遊技領域に遊技媒体を発射可能な遊技機であって、
B 前記遊技領域は第1経路と第2経路とを含み、
C 第1遊技状態と第2遊技状態とに制御可能であり、
D 前記第1遊技状態に制御されているときには、前記第1経路に遊技媒体を発射する方が有利であり、
E 前記第2遊技状態に制御されているときには、前記第2経路に遊技媒体を発射する方が有利であり、
F 前記第1遊技状態に制御されているときに前記第2経路への遊技媒体の発射を検出したことに基づいて、前記第1経路に遊技媒体を発射すべき旨の報知を行う一方で、
G’前記第1遊技状態に制御された後に前記第2遊技状態に制御され、前記第2経路への遊技媒体の発射を検出しても前記報知を制限する
A 遊技機。」
である点で一致し、次の点で相違する。

・相違点(特定事項G)
「前記報知を制限する」ことに関し、
本願補正発明では、「前記第1遊技状態に制御されている可変表示中に前記第2遊技状態に制御されることを示唆した場合、その後に前記第2経路への遊技媒体の発射を検出しても前記報知を制限する」のに対し、
引用発明2では、「前記第2遊技状態に制御されることを示唆」するのが、「前記第1遊技状態に制御されている可変表示中」であるとの特定がない点。

(4)判断
相違点について検討する。
ア 引用発明2は、「左打ち期間(非特定期間)が終了して右打ち期間(特定期間)の一例として大当たり状態が開始される場合に、その大当たり状態の開始前の所定期間は右打ち警告情報(発射警告情報)の出力を行わないように構成しているため、遊技者の右打ちに対して警告を行ったにも拘わらず短期間で右打ち期間に移行してしまい、逆に遊技者の利益を損ねてしまうような事態を防止できる(上記(2)ウの【0081】)」ことを目的の一つとしたものである。

イ そして、引用発明2において、大当たり態様となる図柄変動の終了から大当たり状態の開始までの期間を所定期間とする一方で、それに替えて、大当たり状態の開始前の大当たり図柄変動の開始から大当たり状態の開始までの期間や、左打ち期間中に大当たり判定値と一致する大当たり判定乱数値が取得されてから大当たり状態の開始までの期間を所定期間としてもよいとされているから、大当たり状態の開始前の所定期間が適宜の期間を設定し得るものであることは、当業者にとって明らかである。

ウ そうすると、引用発明2において、前記「所定期間」として、「遊技者の右打ちに対して警告を行ったにも拘わらず短期間で右打ち期間に移行してしまい、逆に遊技者の利益を損ねてしまうような事態を防止でき」るような期間を選択することは、当業者が適宜なし得ることであるところ、その具体的な期間として、図柄変動中に大当たり予告演出が実行されてから大当たり状態の開始までの期間を採用することに格別な困難性は認められない。そして、その大当たり予告演出は、遊技者に対して、「大当たり状態」、すなわち、「大入賞手段19の開閉板42」が「遊技球が入賞可能な開状態」に切り換えられることを示唆するものといえるから、結果として、本願補正発明の特定事項Gを具備する構成となることは明らかである。

エ さらに、上記3(2)サで示した【0095】には、「発射誘導情報の出力を抑制する所定期間」として、「図柄変動中に大当たり予告演出が実行されてから大当たり状態の開始までの期間」が例示されているところ、引用発明2において、「発射警告情報」の「所定期間」として、「遊技者の右打ちに対して警告を行ったにも拘わらず短期間で右打ち期間に移行してしまい、逆に遊技者の利益を損ねてしまうような事態を防止でき」るような期間を選択するにあたり、「発射誘導情報」の「所定期間」から着想を得て、「図柄変動中に大当たり予告演出が実行されてから大当たり状態の開始までの期間」を採用することは、当業者が適宜なし得たことであるともいえる。

オ 以上のとおりであるから、引用発明2において、上記相違点に係る本願補正発明の特定事項のようになすことは、当業者が引用例の記載事項に基づいて容易に想到し得たことである。

カ 本願補正発明の奏する効果は、引用発明2の奏する効果及び引用例の記載事項の奏する効果から予測することができた程度のものである。

キ 審判請求人の主張について
(ア)審判請求人は、審判請求書において、概略以下のとおり主張している。
「4 本願発明が特許されるべき理由
(1) 構成上の相違
いずれの引用文献にも、本願の請求項1に係る発明の下記の構成が記載されていない。

「前記第1遊技状態に制御されているときに前記第2経路への遊技媒体の発射を検出したことに基づいて、前記第1経路に遊技媒体を発射すべき旨の報知を行う一方で、前記第1遊技状態に制御されている可変表示中に前記第2遊技状態に制御されることを示唆した場合、その後に前記第2経路への遊技媒体の発射を検出しても前記報知を制限する」

上記補正により、本願発明は、引用発明と相違するものとなった。

(2) 本願発明の有利な効果
かかる構成上の相違により、本願発明は、引用文献に記載された発明と比較して有利な下記の効果を奏する。

補正後の本願発明によれば、第1遊技状態に制御されている可変表示中に第2遊技状態に制御されることを示唆した場合、その後に第2経路への遊技媒体の発射を検出しても、検出に基づいて報知される筈の報知を制限するので、第2遊技状態に制御されることの示唆を受けて可変表示が終了しないうちに第2経路への遊技媒体の発射を開始した遊技者に対し、発射の検出に基づいて報知が実行されることによる煩わしさを与えてしまうことを防止することができるだけでなく、発射の検出に基づく報知により演出が阻害されて興趣を低下させてしまうことを防止することができる。
・・・略・・・
このように、引用文献1には、「第1遊技状態に制御されているときに、第1経路に遊技媒体を発射すべき旨の第1報知を行い、第1遊技状態に制御されているときに第2経路への遊技媒体の発射を検出したことに基づいて、第1経路に遊技媒体を発射すべき旨の第2報知を行う一方で、第1遊技状態に制御されている可変表示中に第2遊技状態に制御されることを示唆した場合、第1報知を制限する」との事項が開示されているに過ぎず、補正後の本願発明における「前記第1遊技状態に制御されているときに前記第2経路への遊技媒体の発射を検出したことに基づいて、前記第1経路に遊技媒体を発射すべき旨の報知を行う一方で、前記第1遊技状態に制御されている可変表示中に前記第2遊技状態に制御されることを示唆した場合、その後に前記第2経路への遊技媒体の発射を検出しても前記報知を制限する」との事項について、開示も示唆もされていない。

したがって、引用文献1に記載の発明では、第2遊技状態に制御されることの示唆を受けて、遊技者が第2経路への遊技媒体の発射を開始した場合、その発射の検出に基づく報知を制限することができず、発射の検出に基づく報知が実行されることによる煩わしさを与えてしまうだけでなく、発射の検出に基づく報知により演出が阻害され、興趣を低下させてしまう。」

(イ)しかしながら、上記(3)ア(f)ないし(g)で示したとおり、審判請求人が主張する上記構成(本願補正発明の特定事項FないしG)は、引用例に記載されているといえるから、審判請求人の主張を採用することはできない。
また、仮に、上記(2)サで示したように、【0095】(上記(2)カ)に記載された「発射誘導情報」が「発射警告情報」の明らかな誤記である、とは認められないとしても、上記ウで示したとおり、引用発明2において、引用例の記載事項に基づき、「所定期間」として、「図柄変動中に大当たり予告演出が実行されてから大当たり状態の開始までの期間」を採用することは、当業者が適宜なし得たことであって、その結果、本願補正発明の特定事項Gを具備する構成となることは明らかであるから、審判請求人の主張を採用することはできない。

(5)独立特許要件のむすび
以上のとおりであるから、本願補正発明は、引用例に記載された発明である。
仮に、本願補正発明が引用例に記載された発明に対して相違点を見出すことができるとしても、本願補正発明は、当業者が引用例に記載された発明に基づいて容易に想到することができたものである。
よって、本願補正発明は、特許法第29条第1項第3号に該当するか、又は、同法同条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 小括
以上のとおり、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものである。
したがって、本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成30年4月17日付け手続補正書で補正された、上記第2〔理由〕1(1)に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2 原査定の理由の概略
原査定の拒絶の理由は、この出願の平成30年4月17日に提出された手続補正書により補正された請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、または、この出願の平成30年4月17日に提出された手続補正書により補正された請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。


引用文献1.特開2012-24470号公報

3 引用文献
引用文献1(引用例)の記載事項は、上記第2〔理由〕3(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願補正発明は、上記「第2〔理由〕1(2)」のとおり、本願発明を特定するために必要な事項を限定したものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに限定を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2〔理由〕3」に記載したとおり、引用例に記載された発明といえるのであるから、本願発明も同様の理由により、引用例に記載された発明であるといえる。
仮に、本願発明が引用発明に対して相違点を見出すことができるとしても、本願発明は、上記「第2〔理由〕3」に記載したのと同様の理由により、とおり、当業者が引用例に記載された発明に基づいて容易に想到することができたものである。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
また、本願発明は、当業者が引用例に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、同法同条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-05-10 
結審通知日 2019-05-14 
審決日 2019-05-30 
出願番号 特願2014-143480(P2014-143480)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 眞壁 隆一弓指 洋平  
特許庁審判長 鉄 豊郎
特許庁審判官 島田 英昭
田邉 英治
発明の名称 遊技機  
代理人 佐伯 義文  
代理人 田▲崎▼ 聡  
代理人 松沼 泰史  
代理人 平野 昌邦  

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