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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C02F
管理番号 1353653
審判番号 不服2018-13147  
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-10-02 
確定日 2019-08-06 
事件の表示 特願2014- 21037「純水製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 8月20日出願公開、特開2015-147172、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年 2月 6日の出願であって、平成29年12月 5日付けで拒絶理由通知がされ、平成30年 2月 1日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年 6月27日付けで拒絶査定(原査定)がされ、同年10月 2日付けで拒絶査定不服審判が請求され、同年11月15日付けで審判請求書の手続補正書が提出されると共に手続補足書が提出されたものである。

第2 原査定の理由の概要
引用文献1:特開2001-137859号公報
引用文献2:特開2008-284488号公報
引用文献3:特表2002-527238号公報
引用文献4:特開2010-201361号公報
周知文献A:特開2004-33976号公報
周知文献B:特開2011-88085号公報
周知文献C:特開2001-38359号公報
周知文献D:特開2004-82092号公報

1 引用文献1を主引用例とする場合について
本願請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2?4、周知文献A?Dに記載される事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

2 引用文献2を主引用例とする場合について
本願請求項1に係る発明は、引用文献2に記載された発明及び引用文献4、周知文献A?Dに記載される事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

3 引用文献3を主引用例とする場合について
本願請求項1に係る発明は、引用文献3に記載された発明及び引用文献4、周知文献A?Dに記載される事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第3 本願発明
本願請求項1に係る発明は、平成30年 2月 1日付けの手続補正により補正された本願特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものであると認める(以下、「本願発明」という。)。
「【請求項1】
逆浸透膜装置とその後段に配置された電気式脱イオン装置とを利用した純水製造方法において、電気式脱イオン装置として、陽極を備えた陽極室と陰極を備えた陰極室との間に陰イオン交換膜および陽イオン交換膜を交互に配列して順次形成される複数組の脱塩室および濃縮室から構成され、脱塩室および濃縮室には陽イオン交換体および陰イオン交換体の混合物が収容されて成る電気式脱イオン装置を使用し、上記の各脱塩室の通水方向を上向流とし、上記の各濃縮室への通水方向を下向流することにより、上記の各脱塩室の通水方向と上記の各濃縮室への通水方向とを向流方向にし、電気式脱イオン装置に被処理水として供給される逆浸透膜装置の透過水のシリカ濃度を1.5?3.0mg/Lの範囲とすることを特徴とする純水製造方法。」

第4 当審の判断
1 引用文献の記載事項
(1)引用文献1の記載事項
原査定で引用される引用文献1には、以下の記載がある(当審注:下線は当審が付与した。また、「・・・」は記載の省略を表す。以下、同様である。)。
(1a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 陽極を備えた陽極室と陰極を備えた陰極室との間に陰イオン交換膜および陽イオン交換膜を交互に配列して順次形成される複数組の脱塩室および濃縮室から構成され、脱塩室には陽イオン交換体および陰イオン交換体の混合物に導電性物質が付加されたイオン交換体充填物が収容されて成る電気再生式純水製造装置において、濃縮室および/または電極室に導電性物質(a)及び/又は陽イオン交換体および陰イオン交換体の混合物(b)を収容して成ることを特徴とする電気再生式純水製造装置。」

(1b)「【0022】実施例1?8並びに比較例1及び2
図1に示す様な構造を有する電気再生式純水製造装置であって、脱塩室が45室および濃縮室が44室より成る装置(A)と脱塩室が90室および濃縮室が89室より成る装置(B)をそれぞれ使用して実験を行った。・・・
・・・
【0024】上記の脱塩室のイオン交換体充填物としては、ポリビニルアルコールをマトリックスにスチレン-ジビニルベンゼンのスルホン酸化物を均一に分散させた強酸性陽イオン交換繊維(株式会社ニチビ製「IEF-SC」)とポリビニルアルコールの主鎖にトリメチルアンモニウム基を付加してなる強塩基性陰イオン交換繊維(株式会社ニチビ製「IEF-SA」)の両イオン交換繊維を交換容量で同当量混和し、これに導電性繊維(鐘紡株式会社製「ベルトロン」)を50%の割合で混合状態にした後、不織布状にしたものを使用した。
【0025】そして、以下の表1に示す様に、上記の様に構成された装置の濃縮室および/または電極室に導電性物質(a)及び/又は陽イオン交換体および陰イオン交換体の混合物(b)を収容した。
・・・
【0027】陽イオン交換体および陰イオン交換体の混合物(b)としては、前記の強酸性陽イオン交換繊維(株式会社ニチビ製「IEF-SC」)と強塩基性陰イオン交換繊維(株式会社ニチビ製「IEF-SA」)の両イオン交換繊維を交換容量で同当量混和し、これに不活性合成繊維としてポリエステル繊維を50%の割合で混合状態にした後、不織布状にしたものを使用した。
【0028】
【表1】

【0029】被処理水としては横浜市水のRO(逆浸透膜)処理水(電気伝導度:20μS/cm)を使用した。流入管(131)から脱塩室にLV25m/hで被処理水を通水した。同様に両電極室および濃縮室にも被処理水を脱塩室への供給速度と同じ流速で供給した。・・・」

(1c)「【図1】



(ア)上記(1a)?(1c)によれば、引用文献1には「電気再生式純水製造装置」が記載されており、上記「電気再生式純水製造装置」は、陽極を備えた陽極室と陰極を備えた陰極室との間に陰イオン交換膜および陽イオン交換膜を交互に配列して順次形成される複数組の脱塩室および濃縮室から構成され、脱塩室には陽イオン交換体および陰イオン交換体の混合物に導電性物質が付加されたイオン交換体充填物が収容されて成る電気再生式純水製造装置において、濃縮室および/または電極室に導電性物質(a)及び/又は陽イオン交換体および陰イオン交換体の混合物(b)を収容して成るものである。
また、上記(1b)の実施例5に注目すれば、上記「電気再生式純水製造装置」は、脱塩室に、ポリビニルアルコールをマトリックスにスチレン-ジビニルベンゼンのスルホン酸化物を均一に分散させた強酸性陽イオン交換繊維(株式会社ニチビ製「IEF-SC」)とポリビニルアルコールの主鎖にトリメチルアンモニウム基を付加してなる強塩基性陰イオン交換繊維(株式会社ニチビ製「IEF-SA」)の両イオン交換繊維を交換容量で同当量混和し、これに導電性繊維(鐘紡株式会社製「ベルトロン」)(a)を50%の割合で混合状態にした後、不織布状にしたものが収容され、濃縮室に、強酸性陽イオン交換繊維(株式会社ニチビ製「IEF-SC」)と強塩基性陰イオン交換繊維(株式会社ニチビ製「IEF-SA」)の両イオン交換繊維を交換容量で同当量混和し、これに不活性合成繊維としてポリエステル繊維を50%の割合で混合状態にした後、不織布状にした、陽イオン交換体および陰イオン交換体の混合物(b)が収容されるものである。
そして、上記「電気再生式純水製造装置」は、被処理水として横浜市水のRO(逆浸透膜)処理水(電気伝導度:20μS/cm)を使用し、流入管(131)から脱塩室に被処理水を通水し、同様に両電極室および濃縮室にも被処理水を脱塩室への供給速度と同じ流速で供給して、純水を製造するものである。

(イ)そうすると、引用文献1には、以下の発明が記載されているといえる。
「陽極を備えた陽極室と陰極を備えた陰極室との間に陰イオン交換膜および陽イオン交換膜を交互に配列して順次形成される複数組の脱塩室および濃縮室から構成され、脱塩室には陽イオン交換体および陰イオン交換体の混合物に導電性物質が付加されたイオン交換体充填物が収容されて成る電気再生式純水製造装置において、濃縮室および/または電極室に導電性物質及び/又は陽イオン交換体および陰イオン交換体の混合物を収容して成る電気再生式純水製造装置であって、
脱塩室に、ポリビニルアルコールをマトリックスにスチレン-ジビニルベンゼンのスルホン酸化物を均一に分散させた強酸性陽イオン交換繊維(株式会社ニチビ製「IEF-SC」)とポリビニルアルコールの主鎖にトリメチルアンモニウム基を付加してなる強塩基性陰イオン交換繊維(株式会社ニチビ製「IEF-SA」)の両イオン交換繊維を交換容量で同当量混和し、これに導電性繊維(鐘紡株式会社製「ベルトロン」)を50%の割合で混合状態にした後、不織布状にしたものが収容され、濃縮室に、強酸性陽イオン交換繊維(株式会社ニチビ製「IEF-SC」)と強塩基性陰イオン交換繊維(株式会社ニチビ製「IEF-SA」)の両イオン交換繊維を交換容量で同当量混和し、これに不活性合成繊維としてポリエステル繊維を50%の割合で混合状態にした後、不織布状にした、陽イオン交換体および陰イオン交換体の混合物が収容される、電気再生式純水製造装置を使用し、
被処理水として、横浜市水のRO(逆浸透膜)処理水(電気伝導度:20μS/cm)を使用し、流入管から脱塩室に被処理水を通水し、同様に両電極室および濃縮室にも被処理水を脱塩室への供給速度と同じ流速で供給する、純水を製造する方法。」(以下、「引用1発明」という。)

(2)引用文献2の記載事項
原査定で引用される引用文献2には、以下の記載がある。
(2a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰極と陽極との間に、複数のアニオン交換膜とカチオン交換膜とを配列して脱塩室と濃縮室とを形成してなる電気脱イオン装置であって、
前記脱塩室及び/又は前記濃縮室に、微細状のイオン交換体を保持する連続気泡構造の発泡体が充填されていることを特徴とする電気脱イオン装置。」

(2b)「【0026】
図1に示すように、本実施形態に係る電気脱イオン装置1は、陰極6と陽極7との間に、複数のカチオン交換膜4とアニオン交換膜5とを配置し、当該カチオン交換膜4とアニオン交換膜5との間にそれぞれ形成された複数の脱塩室2と濃縮室3とを有する。」

(2c)「【0052】
以上のような構成を有する電気脱イオン装置1は、図4に示す純水製造システム10に適用することができる。
図4に示すように、純水製造システム10は、市水たる被処理水W1が供給される活性炭装置11と、活性炭装置11の透過水を処理する逆浸透膜(RO膜)装置12と、RO膜装置12を透過したRO処理水を処理する脱気膜13と、脱気膜13で得られる脱気水を脱塩室2において処理して脱イオン水W2を製造する、本実施形態に係る電気脱イオン装置1とを備える。
【0053】
このような純水製造システム10において、市水(被処理水W1)を活性炭装置11に供給して微粒子等を吸着除去し、活性炭装置11の処理水をRO膜装置12に供給して、処理水に含まれるカルシウム、シリカ等を除去する。そして、RO膜装置12で処理したRO処理水を脱気膜13に供給し、RO処理水に含まれている炭酸イオン等を二酸化炭素として除去した後、得られた脱気水を電気脱イオン装置1の脱塩室2に供給する。」(当審注:【0052】の「図4」は「図3」の誤記と認める。)

(2d)「【0061】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
なお、以下の実施例及び比較例では、試験装置として電気脱イオン装置(栗田工業社製,製品名:クリテノンSH型,処理水量:420L/hr)を使用した。
【0062】
また、試験用の被処理水として、市水を活性炭装置、逆浸透膜装置(日東電工社製,製品名:ES-20)で処理した以下の水質のものを用意した。
<被処理水の水質>
電気伝導度:9μS/cm
CO_(2)濃度:3.8ppm
SiO_(2)濃度:0.8ppm
水温:15℃
【0063】
〔実施例1〕
電気脱イオン装置のイオン交換膜、脱塩室に充填するイオン交換体A及び濃縮室に充填するイオン交換体Bとして下記のものを用い、図1、2に示すような構成の電気脱イオン装置を用いて、図3に示すような構成の純水製造システムで上記被処理水の通水を行い、電気脱イオン装置の入口導電率、処理水の比抵抗値、印加電圧の経時変化を調べた。結果を表1に示す。
アニオン交換膜:旭化成工業社製,「アシプレックスA501SB」
カチオン交換膜:旭化成工業社製,「アシプレックスK501SB」
イオン交換体A:下記のようにして製造した発泡体
アニオン交換樹脂(三菱化学社製,製品名:SA10A)とカチオン交換樹脂(三菱化学社製,製品名:SK1B)とを体積混合比率6:4で混合した混合物をボールミルで破砕して、イオン交換樹脂微粉末を得た(平均粒子径:7μm)。得られたイオン交換樹脂微粉末を、マトリックス樹脂(エチレン-プロピレン-ビニルスルホン酸ナトリウム共重合体)と、発泡剤(ブタン及び1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンの混合物)にとのそれぞれに添加した。このようにして得られたマトリックス樹脂(85質量%)、発泡剤(14質量%)及び収縮防止剤(ステアリン酸モノグリセリド,1質量%)を、押出機(モリヤマ社製,2軸1軸押出機)に供給して加圧下に溶融混合して独立気泡構造を有する発泡体を形成した後、独立気泡構造を有する発泡体を圧縮することにより機械的な外力を加えて気泡壁を破壊し、連続気泡構造を有する発泡体を得た。
・・・
イオン交換体B:アニオン交換樹脂(三菱化学社製,製品名:SA10A)とカチオン交換樹脂(三菱化学社製,製品名:SK1B)とを体積混合比率6・4で混合したもの。」

(2e)「【図1】



(2f)「【図3】



(ア)上記(2a)?(2b)、(2e)によれば、引用文献2には「電気脱イオン装置」が記載されており、上記「電気脱イオン装置」は、陰極と陽極との間に、複数のアニオン交換膜とカチオン交換膜とを配列して脱塩室と濃縮室とを形成してなる電気脱イオン装置であって、上記脱塩室及び/又は上記濃縮室に、微細状のイオン交換体を保持する連続気泡構造の発泡体が充填されているものである。
また、上記(2d)によれば、上記「電気脱イオン装置」は、脱塩室に、アニオン交換樹脂(三菱化学社製,製品名:SA10A)とカチオン交換樹脂(三菱化学社製,製品名:SK1B)とを体積混合比率6:4で混合した混合物をボールミルで破砕して、イオン交換樹脂微粉末とし(平均粒子径:7μm)、得られたイオン交換樹脂微粉末を、マトリックス樹脂(エチレン-プロピレン-ビニルスルホン酸ナトリウム共重合体)と、発泡剤(ブタン及び1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンの混合物)とのそれぞれに添加し、このようにして得られたマトリックス樹脂(85質量%)、発泡剤(14質量%)及び収縮防止剤(ステアリン酸モノグリセリド,1質量%)を、押出機(モリヤマ社製,2軸1軸押出機)に供給して加圧下に溶融混合して独立気泡構造を有する発泡体を形成した後、独立気泡構造を有する発泡体を圧縮することにより機械的な外力を加えて気泡壁を破壊し、連続気泡構造を有する発泡体としたイオン交換体Aが充填され、濃縮室に、アニオン交換樹脂(三菱化学社製,製品名:SA10A)とカチオン交換樹脂(三菱化学社製,製品名:SK1B)とを体積混合比率6・4で混合したイオン交換体Bが充填されるものである。
そして、上記(2c)?(2f)によれば、上記「電気脱イオン装置」においては、被処理水として、市水を活性炭装置、逆浸透膜装置(日東電工社製,製品名:ES-20)で処理した、SiO_(2)濃度:0.8ppmのものを使用し、市水(被処理水W1)を活性炭装置11に供給して微粒子等を吸着除去し、活性炭装置11の処理水をRO膜装置12に供給して、処理水に含まれるカルシウム、シリカ等を除去し、RO膜装置12で処理したRO処理水を脱気膜13に供給し、RO処理水に含まれている炭酸イオン等を二酸化炭素として除去した後、得られた脱気水を電気脱イオン装置1の脱塩室2に供給し、濃縮室と脱塩室の通水方向を反対方向とすることにより、純水を製造するものである。

(イ)そうすると、引用文献2には、以下の発明が記載されているといえる。
「陰極と陽極との間に、複数のアニオン交換膜とカチオン交換膜とを配列して脱塩室と濃縮室とを形成してなる電気脱イオン装置であって、上記脱塩室及び/又は上記濃縮室に、微細状のイオン交換体を保持する連続気泡構造の発泡体が充填されているものである、電気脱イオン装置であって、
脱塩室に、アニオン交換樹脂(三菱化学社製,製品名:SA10A)とカチオン交換樹脂(三菱化学社製,製品名:SK1B)とを体積混合比率6:4で混合した混合物をボールミルで破砕して、イオン交換樹脂微粉末とし(平均粒子径:7μm)、得られたイオン交換樹脂微粉末を、マトリックス樹脂(エチレン-プロピレン-ビニルスルホン酸ナトリウム共重合体)と、発泡剤(ブタン及び1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンの混合物)とのそれぞれに添加し、このようにして得られたマトリックス樹脂(85質量%)、発泡剤(14質量%)及び収縮防止剤(ステアリン酸モノグリセリド,1質量%)を、押出機(モリヤマ社製,2軸1軸押出機)に供給して加圧下に溶融混合して独立気泡構造を有する発泡体を形成した後、独立気泡構造を有する発泡体を圧縮することにより機械的な外力を加えて気泡壁を破壊し、連続気泡構造を有する発泡体としたイオン交換体Aが充填され、濃縮室に、アニオン交換樹脂(三菱化学社製,製品名:SA10A)とカチオン交換樹脂(三菱化学社製,製品名:SK1B)とを体積混合比率6・4で混合したイオン交換体Bが充填される、電気脱イオン装置を使用し、
被処理水として、市水を活性炭装置、逆浸透膜装置(日東電工社製,製品名:ES-20)で処理した、SiO_(2)濃度:0.8ppmのものを使用し、市水を活性炭装置に供給して微粒子等を吸着除去し、活性炭装置の処理水をRO膜装置に供給して、処理水に含まれるカルシウム、シリカ等を除去し、RO膜装置で処理したRO処理水を脱気膜に供給し、RO処理水に含まれている炭酸イオン等を二酸化炭素として除去した後、得られた脱気水を電気脱イオン装置の脱塩室に供給し、濃縮室と脱塩室の通水方向を反対方向とすることにより、純水を製造する方法。」(以下、「引用2発明」という。)

(3)引用文献3の記載事項
原査定で引用される引用文献3には、以下の記載がある。
(3a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 ユニットの一方の末端にアノード室を有し、ユニットの反対側の末端にカソード室を有し、および前記アノード室とカソード室の間に濃縮室と交互に配置された複数の希釈室を有する、水を脱イオンするための電気脱イオンユニットにおいて、スケールが生じるのを阻止する方法であって、
脱イオンすべき供給水を前記希釈室の中を通して精製水流を作るステップと、
前記供給水からイオンを受け取るための水または水溶液を前記供給水の向きと反対の向きに前記濃縮室の少なくとも一つの中を通すステップと、
水または水溶液を前記アノード室およびカソード室の中を通すステップと、
前記アノードと前記カソードの間に電圧を印加して、前記供給水の中のイオンを前記濃縮室の中の前記水または水溶液に移行させるステップと
を含んでなる方法。」

(3b)「【0002】
【従来の技術】
液体の精製は、多くの産業界で大きな関心を集めている。特に、純水は、半導体チップの製造工程、発電所、石油化学産業などの多数の工業用途、およびその他多くの用途に使用されている。」

(3c)【0014】
まず、図1および5を参照すると、この発明による電気脱イオンユニット10は、アノード24が設けられたアノード室20と、カソード26が設けられたカソード室2を備えている。複数のカチオン交換膜28とアニオン交換膜30が、アノード室20とカソード室26の間に交互に配置されて、アノード側のアニオン交換膜30とカソード側のカチオン交換膜28によってそれぞれが画定されている希釈室32、およびアノード側のカチオン交換膜28とカソード側のアニオン交換膜30によってそれぞれが画定されている濃縮室18が形成されている。電解質溶液が、それぞれの排出路60および62を有する流路36および38を介してアノード室20とカソード室22に供給される。」

(3d)「【0028】
実施例1
電気脱イオンデバイス(有効面積507cm^(2)[幅(=希釈および濃縮室スペーサの幅)13cm、長さ(=希釈および濃縮室スペーサの長さ)39cm×30セル対])を、複数の希釈室と複数の濃縮室を交互に有するフィルタプレス型電気脱イオンスタックで構成した。これらの室のそれぞれは、カチオン交換膜(強酸タイプの不均一膜、厚さ0.05cm、イオン交換能力4.5meq/g乾燥樹脂)およびアニオン交換膜(強塩基タイプの不均一膜、厚さ0.05cm、イオン交換能力3.5meq/g乾燥樹脂)で巻いて、希釈室スペーサフレーム(ポリプロピレン製)および濃縮室フレーム(ポリオレフィン製)によって配置し固定した。・・・
【0029】
希釈室には、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂を詰めた。・・・上記の二つのイオン交換樹脂は、スルホン酸タイプのカチオン交換樹脂(Mitsubishi Chemical Corporation 製の Diaion SK-1B(商標))および第4アンモニウム塩アニオン交換樹脂(Mitsubishi Chemical Corporation 製の Diaion SA-10A(商標))で、アニオン対カチオンの体積比(乾燥)が54:46のものであった。
【0030】
この電気脱イオンデバイスを使用して、以下の要領で試験した。精製すべき供給水を、CaCO_(3)(0.67ppmのCa、0.33ppmのMg)として1ppmの硬度、SiO_(2)として0.5ppmの反応性シリカ、および13.5ppmの塩化ナトリウムでもって用意した。精製すべき水を、電気脱イオンデバイスの希釈室の中を下流方向に12.5USgpmの流量で通した。低硬度の水を、塩化ナトリウムの低硬度溶液の注入により800?1800マイクロジーメンス/cmに導電率を高めて、濃縮室および電極室の中を上流方向(向流)に1.0?1.1USgpmの流量で通して、ドレインへ排出した。濃縮室供給流および電極室供給流は、希釈室からの出力流の圧より5?10psig下の圧で導入した。・・・」

(3e)「【図1】



(3f)「【図5】



(ア)上記(3a)?(3c)、(3e)?(3f)によれば、引用文献3には、「水を脱イオンするための電気脱イオンユニットにおいて、スケールが生じるのを阻止する方法」が記載されており、上記「方法」は、ユニットの一方の末端にアノード室を有し、ユニットの反対側の末端にカソード室を有し、および上記アノード室とカソード室の間に濃縮室と交互に配置された複数の希釈室を有する、水を脱イオンするための電気脱イオンユニットにおいて、スケールが生じるのを阻止する方法であって、脱イオンすべき供給水を上記希釈室の中を通して精製水流を作るステップと、上記供給水からイオンを受け取るための水または水溶液を上記供給水の向きと反対の向きに上記濃縮室の少なくとも一つの中を通すステップと、水または水溶液を上記アノード室およびカソード室の中を通すステップと、上記アノードと上記カソードの間に電圧を印加して、上記供給水の中のイオンを上記濃縮室の中の上記水または水溶液に移行させるステップと、を含んでなるものである。
また、上記(3d)によれば、上記「電気脱イオンユニット」は、精製すべき供給水が、SiO_(2)として0.5ppmの反応性シリカを含むものであり、精製すべき水を、電気脱イオンデバイスの希釈室の中を下流方向に通す一方、低硬度の水を、塩化ナトリウムの低硬度溶液の注入により800?1800マイクロジーメンス/cmに導電率を高めて、濃縮室および電極室の中を上流方向(向流)に通して、ドレインへ排出するものである。
更に、上記「電気脱イオンユニット」は、希釈室にカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂を詰めるものであり、上記二つのイオン交換樹脂は、スルホン酸タイプのカチオン交換樹脂(Mitsubishi Chemical Corporation 製の Diaion SK-1B(商標))および第4アンモニウム塩アニオン交換樹脂(Mitsubishi Chemical Corporation 製の Diaion SA-10A(商標))で、アニオン対カチオンの体積比(乾燥)が54:46のものである。

(イ)そうすると、引用文献3には、以下の発明が記載されているといえる。
「ユニットの一方の末端にアノード室を有し、ユニットの反対側の末端にカソード室を有し、および上記アノード室とカソード室の間に濃縮室と交互に配置された複数の希釈室を有する、水を脱イオンするための電気脱イオンユニットにおいて、スケールが生じるのを阻止する方法であって、
脱イオンすべき供給水を上記希釈室の中を通して精製水流を作るステップと、上記供給水からイオンを受け取るための水または水溶液を上記供給水の向きと反対の向きに上記濃縮室の少なくとも一つの中を通すステップと、水または水溶液を上記アノード室およびカソード室の中を通すステップと、上記アノードと上記カソードの間に電圧を印加して、上記供給水の中のイオンを上記濃縮室の中の上記水または水溶液に移行させるステップと、を含んでなる方法であり、
上記電気脱イオンユニットは、精製すべき供給水が、SiO_(2)として0.5ppmの反応性シリカを含むものであり、精製すべき水を、電気脱イオンデバイスの希釈室の中を下流方向に通す一方、低硬度の水を、塩化ナトリウムの低硬度溶液の注入により800?1800マイクロジーメンス/cmに導電率を高めて、濃縮室および電極室の中を上流方向(向流)に通して、ドレインへ排出するものであり、
更に、上記電気脱イオンユニットは、希釈室にカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂を詰めるものであり、上記二つのイオン交換樹脂は、スルホン酸タイプのカチオン交換樹脂(Mitsubishi Chemical Corporation 製の Diaion SK-1B(商標))および第4アンモニウム塩アニオン交換樹脂(Mitsubishi Chemical Corporation 製の Diaion SA-10A(商標))で、アニオン対カチオンの体積比(乾燥)が54:46のものである、方法」(以下、「引用3発明」という。)

2 対比・判断
(1)引用文献1を主引用例とする場合について
ア 対比
(ア)本願発明1と引用1発明とを対比すると、引用1発明における、「電気再生式純水製造装置を使用し、被処理水として、横浜市水のRO(逆浸透膜)処理水」を使用する、「純水を製造する方法」は、本願発明1における、「逆浸透膜装置とその後段に配置された電気式脱イオン装置とを利用した純水製造方法」に相当し、
引用1発明における、「陽極を備えた陽極室と陰極を備えた陰極室との間に陰イオン交換膜および陽イオン交換膜を交互に配列して順次形成される複数組の脱塩室および濃縮室から構成され、脱塩室には陽イオン交換体および陰イオン交換体の混合物に導電性物質が付加されたイオン交換体充填物が収容されて成る電気再生式純水製造装置において、濃縮室および/または電極室に導電性物質及び/又は陽イオン交換体および陰イオン交換体の混合物を収容して成る電気再生式純水製造装置であって、」「脱塩室に、ポリビニルアルコールをマトリックスにスチレン-ジビニルベンゼンのスルホン酸化物を均一に分散させた強酸性陽イオン交換繊維(株式会社ニチビ製「IEF-SC」)とポリビニルアルコールの主鎖にトリメチルアンモニウム基を付加してなる強塩基性陰イオン交換繊維(株式会社ニチビ製「IEF-SA」)の両イオン交換繊維を交換容量で同当量混和し、これに導電性繊維(鐘紡株式会社製「ベルトロン」)を50%の割合で混合状態にした後、不織布状にしたものが収容され、濃縮室に、強酸性陽イオン交換繊維(株式会社ニチビ製「IEF-SC」)と強塩基性陰イオン交換繊維(株式会社ニチビ製「IEF-SA」)の両イオン交換繊維を交換容量で同当量混和し、これに不活性合成繊維としてポリエステル繊維を50%の割合で混合状態にした後、不織布状にした、陽イオン交換体および陰イオン交換体の混合物が収容される、電気再生式純水製造装置」は、本願発明1における、「陽極を備えた陽極室と陰極を備えた陰極室との間に陰イオン交換膜および陽イオン交換膜を交互に配列して順次形成される複数組の脱塩室および濃縮室から構成され、脱塩室および濃縮室には陽イオン交換体および陰イオン交換体の混合物が収容されて成る電気式脱イオン装置」に相当する。

(イ)そうすると、本願発明1と引用1発明とは、
「逆浸透膜装置とその後段に配置された電気式脱イオン装置とを利用した純水製造方法において、電気式脱イオン装置として、陽極を備えた陽極室と陰極を備えた陰極室との間に陰イオン交換膜および陽イオン交換膜を交互に配列して順次形成される複数組の脱塩室および濃縮室から構成され、脱塩室および濃縮室には陽イオン交換体および陰イオン交換体の混合物が収容されて成る電気式脱イオン装置を使用する、純水製造方法。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

相違点1-1:本願発明1は、「電気式脱イオン装置」の「各脱塩室の通水方向を上向流とし、上記の各濃縮室への通水方向を下向流することにより、上記の各脱塩室の通水方向と上記の各濃縮室への通水方向とを向流方向」にするのに対して、引用1発明は、「流入管から脱塩室に被処理水を通水し、同様に両電極室および濃縮室にも被処理水を脱塩室への供給速度と同じ流速で供給」する点。

相違点1-2:本願発明1は、「電気式脱イオン装置に被処理水として供給される逆浸透膜装置の透過水のシリカ濃度を1.5?3.0mg/Lの範囲とする」のに対して、引用1発明は、「被処理水」として「電気伝導度:20μS/cm」の水を使用する点。

イ 判断
(ア)事案に鑑み、上記相違点1-2から検討すると、引用文献1の記載をみても、引用1発明において、「電気式脱イオン装置に被処理水として供給される逆浸透膜装置の透過水のシリカ濃度」が「1.5?3.0mg/Lの範囲」となっているとはいえない。

(イ)ここで、「電気式脱イオン装置に被処理水として供給される逆浸透膜装置の透過水のシリカ濃度」について、引用文献4には、以下の記載がある。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極側のアニオン交換膜と、陰極側のカチオン交換膜と、前記アニオン交換膜と前記カチオン交換膜との間に設けられた中間イオン交換膜と、で区画される小脱塩室にイオン交換体が充填されて脱塩室が構成され、前記脱塩室の両側に前記アニオン交換膜又は前記カチオン交換膜を介して濃縮室が設けられ、
前記アニオン交換膜と前記中間イオン交換膜とで区画された陽極側小脱塩室に充填するイオン交換体は、弱塩基性アニオン交換体、中塩基性アニオン交換体、II形強塩基性アニオン交換体からなる群から選択される少なくとも一種を含むアニオン交換体であり、
前記カチオン交換膜と前記中間イオン交換膜とで区画された陰極側小脱塩室に充填するイオン交換体は、カチオン交換体を含み、
前記濃縮室は、前記アニオン交換膜に接してアニオン交換体が充填されたアニオン交換体層を有し、
前記陰極側小脱塩室を流通した水を前記陽極側小脱塩室に流す送水手段が設けられていることを特徴とする、電気式脱イオン水製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電気式脱イオン水製造装置を用い、被処理水を前記陰極側小脱塩室で処理した後、前記陽極側小脱塩室で処理することを特徴とする、脱イオン水の製造方法。」
「【0013】
本発明の脱イオン水の製造方法は、前記EDIを用い、被処理水を前記陰極側小脱塩室で処理した後、前記陽極側小脱塩室で処理することを特徴とする。前記被処理水は、全炭酸濃度が0.5mg/L以上であってもよく、シリカ濃度が0.2mg/L以上であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、大量の被処理水や炭酸濃度が高い被処理水であっても、比抵抗の高い良好な水質の脱イオン水を安定的に得られる。」
「【0062】
被処理水中に含まれるイオン成分濃度は特に限定されないが、例えば、全炭酸濃度が・・・さらに好ましくは10mg/L以上の被処理水に対して、EDI10を好適に用いることができる。・・・また、例えば、シリカ濃度が好ましくは0.2mg/L以上、より好ましくは0.5mg/L以上、さらに好ましくは1.0mg/L以上の被処理水に対して、EDI10を好適に用いることができる。被処理水中のシリカ濃度の上限は特に限定されないが、30mg/L以下であることが好ましい。一般に、被処理水中には、従来のEDIでは除去しにくい弱酸成分の炭酸やシリカが多く含まれている。即ち、上述のような全炭酸濃度及び/又はシリカ濃度が比較的高い被処理水において、本発明のEDIは従来のEDIと比較して顕著な効果を示すことができる。・・・」

(ウ)そして、上記(イ)の記載事項によれば、引用文献4には、陽極側のアニオン交換膜と、陰極側のカチオン交換膜と、上記アニオン交換膜と上記カチオン交換膜との間に設けられた中間イオン交換膜と、で区画される小脱塩室にイオン交換体が充填されて脱塩室が構成される電気式脱イオン水製造装置において、被処理水を陰極側小脱塩室で処理した後、陽極側小脱塩室で処理することによって、被処理水中に含まれるシリカ濃度を1.0mg/L以上30mg/L以下としたとき、比抵抗の高い良好な水質の脱イオン水を安定的に得られることが記載されるものである。
ところが、引用1発明は、電気式脱イオン装置が、陽極側のアニオン交換膜と、陰極側のカチオン交換膜と、上記アニオン交換膜と上記カチオン交換膜との間に設けられた中間イオン交換膜と、で区画される小脱塩室にイオン交換体が充填されて脱塩室が構成され、被処理水を陰極側小脱塩室で処理した後、陽極側小脱塩室で処理するものではないから、引用1発明においてシリカ濃度が1.0mg/L以上30mg/L以下の被処理水を処理しても、引用文献4に記載されるように、比抵抗の高い良好な水質の脱イオン水を安定的に得られるものではない。
してみれば、引用1発明において、引用文献4の記載事項に基づいて、「電気式脱イオン装置に被処理水として供給される逆浸透膜装置の透過水のシリカ濃度を1.5?3.0mg/Lの範囲」とする合理的な動機付けは見いだせない。

(エ)また、周知文献Cには、以下の記載がある。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 脱塩室、濃縮室及び電極室を有すると共に、一対の電極に電圧を印加することで脱塩室から脱イオン水を得る電気式脱イオン水製造装置の濃縮水にスケール発生防止剤を添加し、前記スケール発生防止剤を含有する濃縮水を前記電気式脱イオン水製造装置の前段に配置される逆浸透膜装置の被処理水流入側へ返送することを特徴とする脱イオン水製造方法。」
「【0011】このような脱イオン水製造方法によれば、電気式脱イオン水製造装置の濃縮水は所定量のスケール発生防止剤が添加されて循環使用される。このため、濃縮水中に添加されたスケール発生防止剤は、例えば、シリカと硬度成分が複合した形態のスケールをミセル形成による荷電反発などにより分散させたり、あるいはキレート化により安定化させる。したがって、濃縮水が高濃度に濃縮されても濃縮室内や電極室内でのケイ酸カルシウムなどのスケールの発生を防止することができる。また、スケール発生防止剤を含んだ濃縮水は逆浸透膜装置の被処理水側に返送されるため、逆浸透膜装置においても同様のスケール発生を防止することができる。」
「【0016】前記被処理水としては、特に制限されないが、市水、工業用水を逆浸透膜処理した透過水、あるいは半導体ウェハーを超純水で洗浄した際に排出される洗浄排水等が挙げられる。また、該被処理水に含まれるCa、Mgなどの硬度成分量およびシリカの量は、原水の硬度成分濃度により異なるが、硬度成分で0.01?2mg/Lおよびシリカで0.01?2mg/L程度である。本発明においては、特に、硬度成分およびシリカを多く含有する水を被処理水とする場合に有効である。」

(オ)そして、上記(エ)の記載事項によれば、周知文献Cには、脱塩室、濃縮室及び電極室を有すると共に、一対の電極に電圧を印加することで脱塩室から脱イオン水を得る電気式脱イオン水製造装置の濃縮水にスケール発生防止剤を添加し、上記スケール発生防止剤を含有する濃縮水を上記電気式脱イオン水製造装置の前段に配置される逆浸透膜装置の被処理水流入側へ返送することによって、濃縮水が高濃度に濃縮されても濃縮室内や電極室内でのケイ酸カルシウムなどのスケールの発生を防止することができ、このときの被処理水として、市水、工業用水を逆浸透膜処理した透過水が挙げられ、該被処理水に含まれるシリカの量は、0.01?2mg/L程度であることが記載されるものである。
ところが、引用1発明は、電気式脱イオン水製造装置の濃縮水にスケール発生防止剤を添加し、上記スケール発生防止剤を含有する濃縮水を上記電気式脱イオン水製造装置の前段に配置される逆浸透膜装置の被処理水流入側へ返送するものではないから、引用1発明においてシリカ濃度が0.01?2mg/L程度の被処理水を処理しても、周知文献Cに記載されるように、濃縮室内や電極室内でのケイ酸カルシウムなどのスケールの発生を防止できるものではない。
してみれば、引用1発明において、周知文献Cの記載事項に基づいて、「電気式脱イオン装置に被処理水として供給される逆浸透膜装置の透過水のシリカ濃度を1.5?3.0mg/Lの範囲」とする合理的な動機付けは見いだせない。

(カ)更に、周知文献Dには以下の記載がある。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰極と陽極との間に、第1のカチオン交換膜と、アニオン交換膜と、第2のカチオン交換膜とがこの順に配置され、
該陰極と第1のカチオン交換膜との間に濃縮室兼陰極室が設けられ、
第1のカチオン交換膜と該アニオン交換膜との間に脱塩室が設けられ、
該アニオン交換膜と第2のカチオン交換膜との間に濃縮室が設けられ、
該第2のカチオン交換膜と該陽極との間に陽極室が設けられ、
該濃縮室内、該陽極室内及び濃縮室兼陰極室内にそれぞれ導電体が充填され、該脱塩室内にイオン交換体が充填されてなる電気式脱イオン装置。」
「【0025】
図1において、陰極1と陽極2との間に電圧を印加した状態にて原水を脱塩室7に導入し、脱イオン水として取り出す。上記の通り、原水又は該脱イオン水を陽極室6に導入し、順次に濃縮室10及び濃縮室兼陰極室5に流通させる。原水中のカチオンは第1のカチオン交換膜3を透過し、陰極電極水に混入して排出される。原水中のアニオンはアニオン交換膜4を透過して濃縮室10に移動し、濃縮室流出水に混入して濃縮室兼陰極室5を経て排出される。
【0026】
次に、図7を参照して本発明の別の実施の形態に係る電気式脱イオン装置を説明する。図7の電気式脱イオン装置は、濃縮室10にアニオン交換樹脂9が充填されている点、及び陽極室6に脱イオン水の一部が通水され、濃縮室10にも上昇流で通水が行われる点が図1に示す電気式脱イオン装置と異なり、その他は同様の構成とされている。図7において、図1に示す部材と同一機能を奏する部材には同一符号を付してある。」
「【0076】
実施例1
図7に示す電気式脱イオン装置に、市水を活性炭、RO処理した水を通水した。この給水の水質は、電気伝導度:10μS/cm、CO_(2)濃度:30ppm、SiO_(2)濃度:2ppmで、水温は10℃であった。」
「【0081】
【発明の効果】
以上の通り、本発明の電気式脱イオン装置は、陰極と陽極との間にそれぞれ1個の濃縮室兼陰極室、脱塩室、濃縮室及び陽極室を配置したものであり、電極間距離が小さく、また陰極室と濃縮室とが兼用され電極水が高電気伝導度の濃縮水となっているため、電極間の印加電圧を低くしても必要量の電流を流し、十分に脱イオン処理することができる。また、陽極室でのCl_(2)発生が防止ないし抑制されるため、陽極室内のカチオン交換樹脂等の導電体や、陽極室に臨む第2のカチオン交換膜の劣化が長期にわたり防止される。」
「【図7】



(キ)そして、上記(カ)の記載事項によれば、周知文献Dには、陰極と陽極との間に、第1のカチオン交換膜と、アニオン交換膜と、第2のカチオン交換膜とがこの順に配置され、陰極と第1のカチオン交換膜との間に濃縮室兼陰極室が設けられ、第1のカチオン交換膜とアニオン交換膜との間に脱塩室が設けられ、アニオン交換膜と第2のカチオン交換膜との間に濃縮室が設けられ、第2のカチオン交換膜と陽極との間に陽極室が設けられ、濃縮室内、陽極室内及び濃縮室兼陰極室内にそれぞれ導電体が充填され、脱塩室内にイオン交換体が充填されてなる電気式脱イオン装置であって、脱塩室から取り出される脱イオン水を陽極室、濃縮室、濃縮室兼陰極室に順次流通させる電気式脱イオン装置において、市水を活性炭、RO処理した、SiO_(2)濃度:2ppmの水質の被処理水を通水したとき、電極間の印加電圧を低くしても必要量の電流を流し、十分に脱イオン処理することができ、陽極室でのCl_(2)発生が防止ないし抑制されるため、陽極室内のカチオン交換樹脂等の導電体や、陽極室に臨む第2のカチオン交換膜の劣化が長期にわたり防止されることが記載されるものである。
ところが、引用1発明は、陰極と陽極との間に、第1のカチオン交換膜と、アニオン交換膜と、第2のカチオン交換膜とがこの順に配置され、陰極と第1のカチオン交換膜との間に濃縮室兼陰極室が設けられ、第1のカチオン交換膜とアニオン交換膜との間に脱塩室が設けられ、アニオン交換膜と第2のカチオン交換膜との間に濃縮室が設けられ、第2のカチオン交換膜と陽極との間に陽極室が設けられ、濃縮室内、陽極室内及び濃縮室兼陰極室内にそれぞれ導電体が充填され、脱塩室内にイオン交換体が充填されてなる電気式脱イオン装置であって、脱塩室から取り出される脱イオン水を陽極室、濃縮室、濃縮室兼陰極室に順次流通させるものではないから、引用1発明においてSiO_(2)濃度:2ppmの水質の被処理水を処理しても、周知文献Dに記載されるように、電極間の印加電圧を低くしても必要量の電流を流し、十分に脱イオン処理することができるものではなく、陽極室でのCl_(2)発生が防止ないし抑制されるため、陽極室内のカチオン交換樹脂等の導電体や、陽極室に臨む第2のカチオン交換膜の劣化が長期にわたり防止されるものでもない。
してみれば、引用1発明において、周知文献Dの記載事項に基づいて、「電気式脱イオン装置に被処理水として供給される逆浸透膜装置の透過水のシリカ濃度を1.5?3.0mg/Lの範囲」とする合理的な動機付けは見いだせない。

(ク)以上のとおり、引用文献4、周知文献C、Dに記載される電気式脱イオン装置は、それぞれ、
陽極側のアニオン交換膜と、陰極側のカチオン交換膜と、上記アニオン交換膜と上記カチオン交換膜との間に設けられた中間イオン交換膜と、で区画される小脱塩室にイオン交換体が充填されて脱塩室が構成され、被処理水を陰極側小脱塩室で処理した後、陽極側小脱塩室で処理すること、
電気式脱イオン水製造装置の濃縮水にスケール発生防止剤を添加し、上記スケール発生防止剤を含有する濃縮水を上記電気式脱イオン水製造装置の前段に配置される逆浸透膜装置の被処理水流入側へ返送すること、又は、
陰極と陽極との間に、第1のカチオン交換膜と、アニオン交換膜と、第2のカチオン交換膜とがこの順に配置され、陰極と第1のカチオン交換膜との間に濃縮室兼陰極室が設けられ、第1のカチオン交換膜とアニオン交換膜との間に脱塩室が設けられ、アニオン交換膜と第2のカチオン交換膜との間に濃縮室が設けられ、第2のカチオン交換膜と陽極との間に陽極室が設けられ、濃縮室内、陽極室内及び濃縮室兼陰極室内にそれぞれ導電体が充填され、脱塩室内にイオン交換体が充填され、脱塩室から取り出される脱イオン水を陽極室、濃縮室、濃縮室兼陰極室に順次流通させること、
という構成を特に採用することによって、1.5mg/L程度以上のシリカ濃度の被処理水を処理できるものと認められるから、引用文献4、周知文献C、Dの記載から、電気式脱イオン装置の構成を問わずに1.5mg/L程度以上のシリカ濃度の被処理水を供給して処理することが、本願出願日前に周知技術であったとはいえない。
更に、引用文献2、3、周知文献A、Bには、「電気式脱イオン装置に被処理水として供給される逆浸透膜装置の透過水のシリカ濃度を1.5?3.0mg/Lの範囲とする」ことは記載も示唆もされていない。

(ケ)上記(イ)?(ク)によれば、引用文献2?4、周知文献A?Dの記載事項をみても、引用1発明において、「電気式脱イオン装置に被処理水として供給される逆浸透膜装置の透過水のシリカ濃度を1.5?3.0mg/Lの範囲とする」ための合理的な動機付けは見いだせないから、引用1発明において、「純水製造方法」を、「電気式脱イオン装置に被処理水として供給される逆浸透膜装置の透過水のシリカ濃度を1.5?3.0mg/Lの範囲」として、上記相違点1-2に係る本願発明1の発明特定事項とすることを、引用文献2?4、周知文献A?Dに記載される事項に基づいて当業者が容易になし得るとはいえないので、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本願発明1を、引用1発明及び引用文献2?4、周知文献A?Dに記載される事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)引用文献2を主引用例とする場合について
ア 対比
(ア)本願発明1と引用2発明とを対比すると、引用2発明における、「電気脱イオン装置を使用し、」「被処理水として、市水を活性炭装置、逆浸透膜装置(日東電工社製,製品名:ES-20)で処理した」ものを使用し、「市水を活性炭装置に供給して微粒子等を吸着除去し、活性炭装置の処理水をRO膜装置に供給して、処理水に含まれるカルシウム、シリカ等を除去し、RO膜装置で処理したRO処理水を脱気膜に供給し、RO処理水に含まれている炭酸イオン等を二酸化炭素として除去した後、得られた脱気水を電気脱イオン装置の脱塩室に供給」して、「純水を製造する方法」は、本願発明1における、「逆浸透膜装置とその後段に配置された電気式脱イオン装置とを利用した純水製造方法」に相当し、
引用2発明における、「陰極と陽極との間に、複数のアニオン交換膜とカチオン交換膜とを配列して脱塩室と濃縮室とを形成してなる電気脱イオン装置であって、」「上記脱塩室及び/又は上記濃縮室に、微細状のイオン交換体を保持する連続気泡構造の発泡体が充填されているものである、電気脱イオン装置であって、脱塩室に、アニオン交換樹脂(三菱化学社製,製品名:SA10A)とカチオン交換樹脂(三菱化学社製,製品名:SK1B)とを体積混合比率6:4で混合した混合物をボールミルで破砕して、イオン交換樹脂微粉末とし(平均粒子径:7μm)、得られたイオン交換樹脂微粉末を、マトリックス樹脂(エチレン-プロピレン-ビニルスルホン酸ナトリウム共重合体)と、発泡剤(ブタン及び1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンの混合物)とのそれぞれに添加し、このようにして得られたマトリックス樹脂(85質量%)、発泡剤(14質量%)及び収縮防止剤(ステアリン酸モノグリセリド,1質量%)を、押出機(モリヤマ社製,2軸1軸押出機)に供給して加圧下に溶融混合して独立気泡構造を有する発泡体を形成した後、独立気泡構造を有する発泡体を圧縮することにより機械的な外力を加えて気泡壁を破壊し、連続気泡構造を有する発泡体としたイオン交換体Aが充填され、濃縮室に、アニオン交換樹脂(三菱化学社製,製品名:SA10A)とカチオン交換樹脂(三菱化学社製,製品名:SK1B)とを体積混合比率6・4で混合したイオン交換体Bが充填される、電気脱イオン装置」は、本願発明1における、「陽極を備えた陽極室と陰極を備えた陰極室との間に陰イオン交換膜および陽イオン交換膜を交互に配列して順次形成される複数組の脱塩室および濃縮室から構成され、脱塩室および濃縮室には陽イオン交換体および陰イオン交換体の混合物が収容されて成る電気式脱イオン装置」に相当する。

(イ)そうすると、本願発明1と引用2発明とは、
「逆浸透膜装置とその後段に配置された電気式脱イオン装置とを利用した純水製造方法において、電気式脱イオン装置として、陽極を備えた陽極室と陰極を備えた陰極室との間に陰イオン交換膜および陽イオン交換膜を交互に配列して順次形成される複数組の脱塩室および濃縮室から構成され、脱塩室および濃縮室には陽イオン交換体および陰イオン交換体の混合物が収容されて成る電気式脱イオン装置を使用する、純水製造方法。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

相違点2-1:本願発明1は、「電気式脱イオン装置」の「各脱塩室の通水方向を上向流とし、上記の各濃縮室への通水方向を下向流することにより、上記の各脱塩室の通水方向と上記の各濃縮室への通水方向とを向流方向」にするのに対して、引用2発明は、「濃縮室と脱塩室の通水方向を反対方向とする」ものであるが、「脱塩室の通水方向を上向流」とし、「濃縮室への通水方向を下向流」とすることまでは記載されていない点。

相違点2-2:本願発明1は、「電気式脱イオン装置に被処理水として供給される逆浸透膜装置の透過水のシリカ濃度を1.5?3.0mg/Lの範囲とする」のに対して、引用2発明は、「被処理水」として、「SiO_(2)濃度:0.8ppmのものを使用」する点。

イ 判断
(ア)事案に鑑み、上記相違点2-2から検討すると、引用2発明は、電気式脱イオン装置の構成が、陽極側のアニオン交換膜と、陰極側のカチオン交換膜と、上記アニオン交換膜と上記カチオン交換膜との間に設けられた中間イオン交換膜と、で区画される小脱塩室にイオン交換体が充填されて脱塩室が構成され、被処理水を陰極側小脱塩室で処理した後、陽極側小脱塩室で処理するものではない点、電気式脱イオン水製造装置の濃縮水にスケール発生防止剤を添加し、上記スケール発生防止剤を含有する濃縮水を上記電気式脱イオン水製造装置の前段に配置される逆浸透膜装置の被処理水流入側へ返送するものではない点、及び、陰極と陽極との間に、第1のカチオン交換膜と、アニオン交換膜と、第2のカチオン交換膜とがこの順に配置され、陰極と第1のカチオン交換膜との間に濃縮室兼陰極室が設けられ、第1のカチオン交換膜とアニオン交換膜との間に脱塩室が設けられ、アニオン交換膜と第2のカチオン交換膜との間に濃縮室が設けられ、第2のカチオン交換膜と陽極との間に陽極室が設けられ、濃縮室内、陽極室内及び濃縮室兼陰極室内にそれぞれ導電体が充填され、脱塩室内にイオン交換体が充填されてなる電気式脱イオン装置であって、脱塩室から取り出される脱イオン水を陽極室、濃縮室、濃縮室兼陰極室に順次流通させるものではない点で、引用文献4、周知文献C、Dに記載されるものと異なるものであることは、引用1発明の場合と同様である。

(イ)そうすると、上記(1)イ(ウ)、(オ)、(キ)に記載したのと同様の理由により、引用2発明において、「電気式脱イオン装置に被処理水として供給される逆浸透膜装置の透過水のシリカ濃度を1.5?3.0mg/Lの範囲とする」ための合理的な動機付けは見いだせない。
また、引用文献4、周知文献C、Dの記載から、電気式脱イオン装置の構成を問わずに1.5mg/L程度以上のシリカ濃度の被処理水を供給して処理することが、本願出願日前に周知技術であったとはいえないこと、引用文献2、3、周知文献A、Bには、「電気式脱イオン装置に被処理水として供給される逆浸透膜装置の透過水のシリカ濃度を1.5?3.0mg/Lの範囲」とすることは記載も示唆もされていないことは、上記(1)イ(ク)に記載のとおりである。

(ウ)してみれば、上記(1)イ(ケ)に記載したのと同様の理由により、引用2発明において、「純水製造方法」を、「電気式脱イオン装置に被処理水として供給される逆浸透膜装置の透過水のシリカ濃度を1.5?3.0mg/Lの範囲」として、上記相違点2-2に係る本願発明1の発明特定事項とすることを、引用文献4、周知文献A?Dに記載される事項に基づいて当業者が容易になし得るものとはいえないから、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本願発明1を、引用2発明及び引用文献4、周知文献A?Dに記載される事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)引用文献3を主引用例とする場合について
ア 対比
(ア)本願発明1と引用3発明とを対比すると、引用3発明における、「水を脱イオンするための電気脱イオンユニット」による「方法」は、本願発明1における、「電気式脱イオン装置」を利用した「方法」に相当し、
引用3発明における、「ユニットの一方の末端にアノード室を有し、ユニットの反対側の末端にカソード室を有し、および上記アノード室とカソード室の間に濃縮室と交互に配置された複数の希釈室を有する」ものであって、「希釈室にカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂を詰めるものであり、上記二つのイオン交換樹脂は、スルホン酸タイプのカチオン交換樹脂(Mitsubishi Chemical Corporation 製の Diaion SK-1B(商標))および第4アンモニウム塩アニオン交換樹脂(Mitsubishi Chemical Corporation 製の Diaion SA-10A(商標))で、アニオン対カチオンの体積比(乾燥)が54:46のものである」「電気脱イオンユニット」は、本願発明1における、「陽極を備えた陽極室と陰極を備えた陰極室との間に陰イオン交換膜および陽イオン交換膜を交互に配列して順次形成される複数組の脱塩室および濃縮室から構成され、脱塩室には陽イオン交換体および陰イオン交換体の混合物が収容されて成る電気式脱イオン装置」に相当する。

(イ)そうすると、本願発明1と引用3発明とは、
「電気式脱イオン装置を利用した方法において、電気式脱イオン装置として、陽極を備えた陽極室と陰極を備えた陰極室との間に陰イオン交換膜および陽イオン交換膜を交互に配列して順次形成される複数組の脱塩室および濃縮室から構成され、脱塩室には陽イオン交換体および陰イオン交換体の混合物が収容されて成る電気式脱イオン装置を使用する、方法。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

相違点3-1:本願発明1は,「純水製造方法」に係るものであるのに対して、引用3発明は、「水を脱イオンするための電気脱イオンユニットにおいて、スケールが生じるのを阻止する方法」に係るものである点。

相違点3-2:本願発明1は、「純水製造方法」が、「逆浸透膜とその後段に配置された電気式脱イオン装置とを利用」したものであるのに対して、引用3発明は、「逆浸透膜」を利用するものであるか否かが不明である点。

相違点3-3:本願発明1は、「電気脱イオン装置」の「濃縮室」に「陽イオン交換体および陰イオン交換体の混合物が収容されて成る」のに対して、引用3発明は、「電気脱イオン装置」の「濃縮室」に「陽イオン交換体および陰イオン交換体の混合物が収容」されない点。

相違点3-4:本願発明1は、「電気式脱イオン装置」の「各脱塩室の通水方向を上向流とし、上記の各濃縮室への通水方向を下向流することにより、上記の各脱塩室の通水方向と上記の各濃縮室への通水方向とを向流方向」にするのに対して、引用3発明は、「精製すべき水を、電気脱イオンデバイスの希釈室の中を下流方向に通す一方、低硬度の水を、塩化ナトリウムの低硬度溶液の注入により800?1800マイクロジーメンス/cmに導電率を高めて、濃縮室および電極室の中を上流方向(向流)に通して、ドレインへ排出する」点。

相違点3-5:本願発明1は、「電気式脱イオン装置に被処理水として供給される逆浸透膜装置の透過水のシリカ濃度を1.5?3.0mg/Lの範囲とする」のに対して、引用3発明は、「精製すべき供給水が、SiO_(2)として0.5ppmの反応性シリカを含む」ものである点。

イ 判断
(ア)事案に鑑み、上記相違点3-5から検討すると、引用3発明は、電気式脱イオン装置の構成が、上記(2)イ(ア)に記載される点で引用文献4、周知文献C、Dに記載されるものと異なるものであることは、引用1発明及び引用2発明の場合と同様である。

(イ)そうすると、上記(2)イ(イ)に記載される事項は、引用文献3についても同様であるから、上記(1)イ(ケ)に記載したのと同様の理由により、引用3発明において、「純水製造方法」を、「電気式脱イオン装置に被処理水として供給される逆浸透膜装置の透過水のシリカ濃度を1.5?3.0mg/Lの範囲」として、上記相違点3-5に係る本願発明1の発明特定事項とすることを、引用文献4、周知文献A?Dに記載される事項に基づいて当業者が容易になし得るものとはいえないので、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本願発明1を、引用3発明及び引用文献4、周知文献A?Dに記載される事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-07-22 
出願番号 特願2014-21037(P2014-21037)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (C02F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 高橋 成典  
特許庁審判長 豊永 茂弘
特許庁審判官 金 公彦
櫛引 明佳
発明の名称 純水製造方法  
代理人 岡田 数彦  

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