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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G02B |
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管理番号 | 1353687 |
審判番号 | 不服2018-13254 |
総通号数 | 237 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-09-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-10-04 |
確定日 | 2019-08-13 |
事件の表示 | 特願2015-135057「光学構造物及びその光学構造物を組み込んだディスプレイシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 1月14日出願公開、特開2016- 6509、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
1 手続の経緯 本願は、2010年(平成22年)4月15日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年4月15日)を国際出願日とする特願2012-506198号の一部を、平成27年7月6日に新たな特許出願としたものであって、同年8月5日に上申書の提出とともに手続補正がなされ、平成28年6月23日付けで拒絶理由が通知され、同年12月28日に意見書の提出とともに手続補正がなされ、平成29年5月30日付けで拒絶理由が通知され、同年12月6日に意見書の提出とともに手続補正がなされ、平成30年5月29日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し同年10月4日に拒絶査定不服審判の請求と同時に手続補正がなされたものである。 その後、平成30年11月29日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、令和元年5月24日に意見書の提出とともに手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされた。 2 本件発明 本願の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である。 「 一体的構造を有する光学スタックであって、 光学構造物と、 前記光学構造物に接着されて該光学構造物に積層された吸収偏光子層と、を備え、 前記光学構造物は、 結合剤、および該結合剤の内部に分散された複数のボイドを有し、10%以下の光学ヘイズを有する、光学フィルムと、 前記結合剤に物理的に接触するように該結合剤に積層された反射偏光子層と、を有し、 前記光学フィルムの側から光を照射した場合に1.2以上の軸方向輝度ゲインを有するように構成され、 前記光学フィルムは、前記吸収偏光子層と前記反射偏光子層との間に配設され、 前記吸収偏光子層は、前記結合剤に接着される、光学スタック。」 3 原査定の概要 原査定の拒絶の理由の概要は、この出願の請求項1?5に係る発明は、その優先権主張の日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である引用文献6に記載された発明及び引用文献7及び引用文献8に記載された周知技術に基づいて、その優先権主張の日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献6:特表2008-517328号公報 引用文献7:特表2000-506992号公報(周知技術) 引用文献8:特開2000-352623号公報(周知技術) 4 当審拒絶理由の概要 当審拒絶理由の概要は、以下のとおりである。 理由1(明確性) 本件出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 理由2(進歩性) 本件出願の請求項1、3?5に係る発明は、その優先権主張の日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である引用文献Aに記載された発明及び引用文献B?Gに記載された周知技術に基づいて、その優先権主張の日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献A:特開2007-304460号公報 引用文献B:特表2008-517328号公報(周知技術) 引用文献C:特表2007-502010号公報(周知技術) 引用文献D:国際公開第2008/042457号(周知技術) 引用文献E:登録実用新案第3128397号公報(周知技術) 引用文献F:特開2000-352623号公報(周知技術) 引用文献G:特表2000-506992号公報(周知技術) 5 引用発明 (1)引用文献6の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用され、本願優先権主張の日前の平成20年5月22日に頒布された刊行物である引用文献6(特表2008-517328号公報)には、図面とともに、以下の記載事項がある。なお、合議体が発明の認定等に用いた箇所に下線を付した。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は、光ディスプレイに関し、より具体的には液晶ディスプレイ(LCD)モニターおよびLCDテレビジョンに使用することができるLCDに関する。 (中略) 【0003】 一部のLCDモニターおよび大部分のLCD-TVは、一般に背後から複数個の冷陰極蛍光ランプ(CCFL)によって照らされる。これらの光源は直線上に並んでおり、そのディスプレイの全幅にわたって広がり、その結果そのディスプレイの背面は、暗い領域によって分離された一連の明るい縞によって照らされる。このような照明の輪郭は望ましいものではなく、したがってディフューザープレートがLCDデバイスの背面における照明の輪郭を滑らかにするために用いられる。 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 現在、LCD-TVのディフューザープレートは、ガラス、ポリスチレンビード、およびCaCO_(3)粒子を含めた様々な分散相を有するポリメチルメタクリラート(PMMA)のポリマー母材を使用している。これらのプレートはランプの高温にさらされたのち変形または反ることが多い。さらに拡散プレートのなかには、LCDパネルの背面における照明の輪郭をより均一にしようとしてその幅全体にわたって空間的に異なる拡散特性を備えたものもある。このような一様でないディフューザーは印刷型パターンディフューザーと呼ばれることがある。これらは製造に費用がかかり、かつ組立時にその拡散用の形模様を照明源に位置合わせしなければならないので製造コストを増加させる。さらにディフューザープレートは、拡散粒子をそのポリマー母材全体に一様に分配するようにカスタマイズされた押出し配合を必要とし、これがさらにコストを増加させる。 【課題を解決するための手段】 【0005】 本発明の一実施形態は、光源と、上側のプレート、下側のプレート、およびこの上側のプレートと下側のプレートとの間に配置された液晶層を含むLCDパネルとを有する液晶ディスプレイ(LCD)装置に関する。この下側のプレートは光源に面し、吸収偏光子を含む。光源が光管理フィルム(light management film)配列を介してLCDパネルを照らすように、光管理フィルム配列が光源とLCDパネルとの間に配置される。この光管理フィルム配列はLCDパネルの下側のプレートに取り付けられ、その光管理フィルム配列は少なくとも第一ディフューザー層を含む。」 イ 「【0014】 本発明は、LCDパネル自体と光源との間に位置付けられた光管理層配列を有する直接照明LCDデバイスに関する。この光管理層配列は、剛性の有機または無機基板と、その基板の片面に直接隣接し、特定の透過およびヘイズレベルを持つポリマー体積の拡散用シートとを有するディフューザープレートを含む。別のポリマー体積の拡散用シートを基板のもう一方の面上に配置することもできる。各構成部品の透過およびヘイズレベルは、明るさがそのディスプレイ全体にわたって比較的均一な直接照光LCディスプレイを実現するように設計される。」 ウ 「【0021】 光管理層配列120は、バックライト112とLCパネル102との間に位置付けられる。これら光管理層は、ディスプレイデバイス100の動作を改善するようにバックライト112から伝搬する光に作用する。例えば、光管理層配列120はディフューザープレート122を含むことができる。ディフューザープレート122は光源から受ける光を拡散させるために用いられ、LCパネル102上に入射する照明光の均一性の増大をもたらす。その結果、これはより一様で明るいと観察者が分かる像をもたらす。 【0022】 光管理層配列120はまた、反射偏光子124を含むこともできる。光源116は一般に偏光していない光を生ずるが、下側の吸収偏光子110は単偏光状態のみを透過させるので、光源116が発生する光の約半分はLC層104まで透過してこない。しかしながら反射偏光子124を用いて普通なら下側の吸収偏光子中で吸収されるはずの光を反射させることができるので、この光を反射偏光子124とレフレクター118との間の反射によって再利用することができる。反射偏光子124によって反射される光の少なくとも一部は偏光を解消され、続いて反射偏光子124および下側の吸収偏光子110を通ってLC層104へ向けて透過する偏光状態で反射偏光子124に戻すことができる。この方法では反射偏光子124を用いて、光源116によって放射された、LC層104に達する光の分率を増すことができるので、ディスプレイデバイス100によって生じる像がより明るくなる。」 エ 「【0035】 ディフューザー層204の具体例としての実施形態は、拡散粒子を含有するポリマー母材を含む。このポリマー母材は、可視光に対して実質上透明な任意の好適な種類のポリマー、例えば上記で列挙したポリマー材料のいずれかであることができる。 【0036】 この拡散粒子は、拡散光に対して有効な任意の種類の粒子、例えば屈折率が周囲のポリマー母材、拡散反射粒子、またはその母材中の空洞または泡とは異なる透明な粒子であることができる。好適なこれら透明な粒子の例には、固体または中空の無機粒子、例えばガラスビーズまたはガラスの殻と、固体または中空ポリマー粒子、例えば固体ポリマー球またはポリマーの中空の殻とが挙げられる。好適な拡散反射粒子の例には、二酸化チタン(TiO_(2))、炭酸カルシウム(CaCO_(3))、硫酸バリウム(BaSO_(4))、硫酸マグネシウム(MgSO_(4))などの粒子が挙げられる。さらに光を拡散させるためにポリマー母材中の空洞を用いることもできる。このような空洞は気体、例えば空気または二酸化炭素で満たすことができる。ディフューザー層に使用するのに適した市販の材料には、ミネソタ州セントポールのスリー・エム・カンパニーから入手できる3M(登録商標)スコッチカル(登録商標)ディフューザーフィルム(3M^(TM)Scotchcal^(TM)Diffuser Film)タイプ3635-70および3635-30と、3M(登録商標)スコッチカル(登録商標)エレクトロカット(登録商標)グラフィックフィルム(3M^(TM)Scotchcal^(TM)ElectroCut^(TM)Graphic Film)タイプ7725-314が挙げられる。他の市販のディフューザーには、3M(登録商標)VHB(登録商標)アクリルフォームテープ(3M^(TM)VHB^(TM)Acrylic Foam Tape)No.4920などのアクリル発泡テープが挙げられる。 【0037】 ディフューザー層204は、例えばそのディフューザー層204のポリマー母材が接着剤である場合、基板202の表面に直接塗布することができる。具体例としての別の実施形態ではディフューザー層204は、図2Bに図式的に示すように接着剤層206を用いて基板202の表面に付着させることもできる。具体例としての幾つかの実施形態ではディフューザー層204は、その幅全体にわたって均質な拡散特性を有する。換言すればそのディフューザーを通過する光が受ける拡散の量はそのディフューザー層の幅の至る所で同一である。」 オ 「【0068】 具体例としての幾つかの実施形態ではLCDパネルの下側のプレート自体をディフューザー層および他の光学層を支える基板として用いることができる。図5AにLCDパネル102がLC層104および上側と下側のプレート106a、106bを含むそのようなディスプレイアセンブリ500の具体例としての一実施形態を図式的に示す。プレート106a、106bは一般にはガラスまたは厚いポリマーから作られ、また吸収偏光子を含むこともできる。光管理装置502を下側のプレート106bに取り付けることができる。この光管理装置502はディフューザー層504を含み、さらに他の光学層を含むこともできる。例えば光管理装置502は、さらに明るさ向上層506および反射偏光子508を含むことができる。明るさ向上層506を含む場合、上記方法のいずれかを用いて空洞510をその下側の表面に形成することができる。例えば光管理装置502の縁部を取り巻く接着剤の層512を用いて空洞510を設けることができる。この光管理装置502は、別の接着剤層514を用いて下側のプレート106bに取り付けることができる。この光管理装置502はまた、パネル102に取り付けられない装置として準備することもできる。 【0069】 他の層が、LCDパネル102に取り付けられた光管理装置502中にさらに存在してもよい。例えば、追加の基板を光管理装置502内に置くことができる。 【0070】 図5Bに図式的に示すディスプレイアセンブリ520の具体例としての別の実施形態ではディフューザー層522、例えば拡散性接着剤の層またはアクリル発泡テープは、反射偏光子層508がそのディフューザー層522の下側の表面に取り付けられた状態で下側の偏光子106bに直接取り付けられる。この実施形態においてディフューザー層が偏光保存性であることが望ましい場合もある。図5Cに図式的に示すディスプレイアセンブリ530の具体例としての別の実施形態では反射偏光子層508をディフューザー層522とディスプレイパネル102との間に配置することができる。他の光管理フィルムが、反射偏光子層508およびディフューザー層522を備えることもできる。」 なお、図5A?図5Cは、以下に示すものである。 (2)引用文献6に記載された発明 引用文献6の記載事項エには、「ディフューザー層204の具体例としての実施形態は、拡散粒子を含有するポリマー母材を含む」と記載されており、この「拡散粒子」として、「光を拡散させるためにポリマー母材中の空洞を用いること」も記載されている。また、引用文献6の記載事項オには、「LCDパネル102がLC層104および上側と下側のプレート106a、106bを含む」こと、「プレート106a、106bは一般にはガラスまたは厚いポリマーから作られ、また吸収偏光子を含むこと」が記載されている。そして、「図5Bに図式的に示すディスプレイアセンブリ520の具体例」として、「反射偏光子層508がそのディフューザー層522の下側の表面に取り付けられた状態で下側の偏光子106bに直接取り付けられる」ことが記載されている。 そうすると、引用文献6には、「光を拡散させるためにポリマー母材中の空洞を用い」た「ディフューザー層」を、「図5B」に示す「ディスプレイアセンブリ」とした、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「反射偏光子層がディフューザー層の下側の表面に取り付けられた状態で、ディフューザー層がLCDパネルの下側の吸収偏光子に直接取り付けられるディスプレイアセンブリであって、ディフューザー層は、拡散粒子を含有するポリマー母材を含み、この拡散粒子は、光を拡散させるためにポリマー母材中の空洞を用いたものである、ディスプレイアセンブリ。」 6 対比・判断 (1)対比 本件発明と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「ディフューザー層」は、「光を拡散させるためにポリマー母材中の空洞を用いた」ものである「拡散粒子」と、その拡散粒子を含有する「ポリマー母材」を含むものである。 ここで、引用発明の「ポリマー母材」及び「光を拡散させるため」の「ポリマー母材中の空洞」は、それぞれ、本件発明の「結合剤」及び「結合剤の内部に分散された複数のボイド」に相当する。そして、引用発明の「ディフューザー層」は、本件発明の「光学フィルム」に該当する。 したがって、引用発明の「ディフューザー層」と本件発明の「結合剤、および該結合剤の内部に分散された複数のボイドを有し、10%以下の光学ヘイズを有する、光学フィルム」とは、「結合剤、および該結合剤の内部に分散された複数のボイドを有する、光学フィルム」である点で共通する。 イ 引用発明の「反射偏光子層」は、技術的役割からみて、本件発明の「反射偏光子層」に相当する。 そして、引用発明の「反射偏光子層」は、「反射偏光子層がディフューザー層の下側の表面に取り付けられた状態」にある。そうしてみると、引用発明の「反射偏光子層」は、本件発明の「反射偏光子層」の「前記結合剤に物理的に接触するように該結合剤に積層された」とする要件を満たしている。 また、引用発明の「ディフューザー層」と「反射偏光子層」とは、本件発明の「光学構造物」を構成するといえる。 ウ 引用発明の「吸収偏光子」は、技術的役割からみて、本件発明の「吸収偏光子層」に相当する。 そして、引用発明の「ディスプレイアセンブリ」は、「ディフューザー層がLCDパネルの下側の吸収偏光子に直接取り付けられる」ものである。そして、「ディフューザー層」と「吸収偏光子」とが「直接」取り付けられていることから、「ディフューザー層」の「ポリマー母材」と、「吸収偏光子」とが接しているといえる。 そうすると、引用発明の「吸収偏光子」は、本件発明の「吸収偏光子層」における「前記光学構造物に接着されて該光学構造物に積層された」とする要件を満たす。また、引用発明の「吸収偏光子」は、本件発明の「吸収偏光子層」における「前記吸収偏光子層は、前記結合剤に接着される」とする要件を満たしている。 エ 引用発明の「ディスプレイアセンブリ」は、「反射偏光子層がディフューザー層の下側の表面に取り付けられた状態で、ディフューザー層がLCDパネルの下側の吸収偏光子に直接取り付けられる」ものである。そうすると、引用発明の「ディスプレイアセンブリ」は、「ディフューザー層」と「反射偏光子層」とからなる「光学構造物」と、「吸収偏光子」とを備えているといえる。したがって、引用発明の「ディスプレイアセンブリ」は、本件発明の「一体的構造を有する光学スタック」に相当し、本件発明の「光学構造物」と、「前記光学構造物に接着されて該光学構造物に積層された吸収偏光子層と、を備え」るとする要件を満たしている。 また、引用発明の「ディフューザー層」は、本件発明の「光学フィルム」における「前記吸収偏光子層と前記反射偏光子層との間に配設され」るとする要件を満たしている。 オ 以上より、本件発明と引用発明とは、 「 一体的構造を有する光学スタックであって、 光学構造物と、 前記光学構造物に接着されて該光学構造物に積層された吸収偏光子層と、を備え、 前記光学構造物は、 結合剤、および該結合剤の内部に分散された複数のボイドを有する、光学フィルムと、 前記結合剤に物理的に接触するように該結合剤に積層された反射偏光子層と、を有し、 前記光学フィルムは、前記吸収偏光子層と前記反射偏光子層との間に配設され、 前記吸収偏光子層は、前記結合剤に接着される、光学スタック。」である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点1]本件発明は、光学フィルムが、「10%以下の光学ヘイズ」を有するのに対し、引用発明は「ディフューザー層」が、どの程度のヘイズを有するかを特定していない点。 [相違点2]光学構造物について、光学フィルムの側から光を照射した場合の軸方向輝度ゲインが、本件発明は、「1.2以上」であるのに対し、引用発明は、どの程度の軸方向輝度ゲインを有するかを特定していない点。 (2)判断 前記[相違点1]について検討する。 引用発明の「ディフューザー層」は、「光を拡散させるためにポリマー母材中の空洞を用いた」「拡散粒子」を含有するものである。そして、引用文献1の記載事項ウには、「ディフューザープレート122は光源から受ける光を拡散させるために用いられ、LCパネル102上に入射する照明光の均一性の増大をもたらす。その結果、これはより一様で明るいと観察者が分かる像をもたらす。」と記載されており、記載事項イには、「各構成部品の透過およびヘイズレベルは、明るさがそのディスプレイ全体にわたって比較的均一な直接照光LCディスプレイを実現するように設計される。」と記載されている。そして、背景技術として記載事項アに「このような照明の輪郭は望ましいものではなく、したがってディフューザープレートがLCDデバイスの背面における照明の輪郭を滑らかにするために用いられる。」と記載されていることを鑑みれば、引用発明の「ディフューザー層」は、その名称のとおり、透過する光を拡散させる機能を有するものであり、照明の輪郭を滑らかにし、照明光の均一性を増大させるものといえる。そうすると、引用発明の「ディフューザー層」は、本願の明細書の段落【0025】に、「光学ヘイズは、本明細書で用いるとき、垂直方向から4度超で逸脱する透過光と全透過光との比として定義されるものである。」と定義される光学ヘイズについて、照明の輪郭が滑らかとなるように、大きな値とするように設定されるべきものである。 したがって、当業者であっても、引用発明において、「ディフューザー層」を、「10%以下の光学ヘイズ」を有するものとすることは、容易になし得たということはできない。 以上より、[相違点2]について検討するまでもなく、本件発明は、当業者が、引用発明に基づいて容易に発明をすることができたということはできない。 7 原査定及び当審拒絶理由についての判断 前記6に記載したとおりであるから、本件補正により補正された本件発明は、当業者が、引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 当審拒絶理由の理由1(明確性)は、令和元年5月24日に提出された意見書における主張により解消された。また、理由2(進歩性)は、対象とされた請求項が、本件補正により削除された。 8 むすび 以上のとおりであるから、本件発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2019-07-30 |
出願番号 | 特願2015-135057(P2015-135057) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G02B)
P 1 8・ 537- WY (G02B) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 池田 博一 |
特許庁審判長 |
里村 利光 |
特許庁審判官 |
河原 正 宮澤 浩 |
発明の名称 | 光学構造物及びその光学構造物を組み込んだディスプレイシステム |
代理人 | 赤澤 太朗 |
代理人 | 野村 和歌子 |
代理人 | 佃 誠玄 |