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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1353714
審判番号 不服2017-19564  
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-12-28 
確定日 2019-07-17 
事件の表示 特願2016-512214「情報伝送方法及び機器」拒絶査定不服審判事件〔平成26年11月13日国際公開、WO2014/180315、平成28年 7月28日国内公表、特表2016-522628〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2014年(平成26年)5月8日(パリ条約による優先権主張外国庁受理、2013年5月8日 中国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成27年11月20日 手続補正書の提出
平成28年10月28日付け 拒絶理由通知書
平成29年 2月 7日 意見書、手続補正書の提出
平成29年 8月23日付け 拒絶査定
平成29年12月28日 拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提 出

第2 平成29年12月28日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成29年12月28日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正の概要

本件補正は、平成29年2月7日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項9に記載された
「端末機器が、自身の電力増幅器の種類又は電力増幅器の能力レベル情報をネットワーク側機器に報告することを含み、
さらに、
前記端末機器が、前記ネットワーク側機器から発信する電力バックオフ値情報を受信し、前記電力バックオフ値情報に基づいて電力バックオフを行うことを含み、
又は
前記端末機器が、前記ネットワーク側機器から発信するリソース割当方式情報を受信し、前記リソース割当方式情報に基づいてデータ伝送を行うことを含み、
又は
前記端末機器が、前記ネットワーク側機器から発信する不連続受信DRX設定情報を受信し、前記DRX設定情報に基づいてデータ受信を行うことを特徴とする情報伝送方法。」との発明(以下、「本願発明」という。)を、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項7に記載された
「端末機器が、自身の電力増幅器の種類又は電力増幅器の能力レベル情報として、低効率電力増幅器又は高効率電力増幅器であることをネットワーク側機器に報告することを含み、
さらに、
前記端末機器が、前記ネットワーク側機器から発信する電力バックオフ値情報を受信し、前記電力バックオフ値情報に基づいて電力バックオフを行うことを含み、
又は
前記端末機器が、前記ネットワーク側機器から発信するリソース割当方式情報を受信し、前記リソース割当方式情報に基づいてデータ伝送を行うことを含み、
又は
前記端末機器が、前記ネットワーク側機器から発信する不連続受信DRX設定情報を受信し、前記DRX設定情報に基づいてデータ受信を行うことを特徴とする情報伝送方法。」との発明(以下、「本願補正発明」という。下線は、補正箇所を示す。)に補正することを含むものである。

2.補正の適否

(1)新規事項の有無、シフト補正の有無、補正の目的要件
上記補正は、端末機器がネットワーク側機器に報告する「自身の電力増幅器の種類又は電力増幅器の能力レベル情報」を、「低効率電力増幅器又は高効率電力増幅器であること」に限定する補正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
また、当該補正は、特許法第17条の2第3項(新規事項)、及び第4項(シフト補正)の規定に違反するものではない。

(2)独立特許要件
上記補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのか否かについて、以下検討する。

ア 本願補正発明
本願補正発明は、上記「1.補正の概要」で示した本願補正発明のとおりのものと認める。

イ 引用例の記載事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された特表2010-503360号公報(以下、「引用例3」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

(ア)「【0024】
本明細書に記載される技法は、多元接続通信システム、ブロードキャストシステム、無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)等といった種々の無線通信システムに用いられ得る。「システム」及び「ネットワーク」という用語は、しばしば互換的に使用される。多元接続システムは、符号分割多元接続(CDMA)、時分割多元接続(TDMA)、周波数分割多元接続(FDMA)、直交FDMA(OFDMA)、シングルキャリアFDMA(SC-FDMA)等といった多元接続のスキームを利用してもよい。多元接続システムはまた、多元接続スキームの組み合わせ、例えば、ダウンリンクの用の一つ又は複数の多元接続スキーム及びアップリンク用の一つ又は複数の多元接続スキーム、を利用してもよい。
【0025】
OFDMAは直交周波数分割多重(OFDM)を利用するが、これはマルチキャリアの多重化スキームである。SC-FDMAは、LFDM(Localized Frequency Division Multiplexing)、IFDM(Interleaved FDM)、エンハンストFDM(EFDM)等を利用し得るが、これらは集合的にシングルキャリアFDM(SC-FDM)と称される、異なるシングルキャリア多重化スキームである。OFDM及びSC-FDMは、システム帯域幅を複数の(K個の)直交副搬送波に分割するが、これらはまた、トーン(tones)、ビン(bins)等と一般に称される。各副搬送波はデータで変調され得る。一般に、変調シンボルは、OFDMを用いて周波数ドメインで、SC-FDMを用いて時間ドメインで送信される。LFDMは連続的な副搬送波上でデータを送信し、IFDMはシステム帯域幅にわたって分散された副搬送波上でデータを送信し、EFDMは連続的な副搬送波のグループ上でデータを送信する。
【0026】
OFDMは、地球上の通信システムにおいて一般的なマルチパス効果と対抗する能力を含む、幾つかの望ましい特性を有する。しかしながら、OFDMの主な不利益は、OFDM波形の高いピーク平均電力比(peak-to-average power ratio)(PAPR)、即ち、OFDM波形についての平均電力に対するピーク電力の比率が高くなり得ることである。高いPAPRは、副搬送波がデータと独立して変調されるとき、全ての副搬送波の考え得る同相の(あるいはコヒーレントな)追加に起因する。OFDM波形についての高いPAPRは望ましくなく、性能を低下させることがある。例えば、OFDM波形中の大きなピークは電力増幅器を非常に非線形な領域で動作させるか、あるいはおそらくクリップさせる(clip)が、これは次いで、信号品質を劣化させ得る相互変調ひずみ及び他のアーティファクトを引き起こすことがある。非線形性を回避するために、電力増幅器はピーク電力レベルよりも低い平均電力レベルにバックオフさせて動作される。電力増幅器をピーク電力からバックオフさせて動作させることによって、バックオフが4dBから7dBまで変動する場合、電力増幅器は過度のひずみを生成することなく、波形中の大きなピークを処理する(handle)ことができる。
【0027】
SC-FDM(例えば、LFDM)は、OFDMと類似する、マルチパス効果に対するロバストネス(robustness)といった幾つかの望ましい特性を有する。更に、SC-FDMでは変調シンボルが時間ドメインで送信されるので、SC-FDMは高いPAPRを有しない。SC-FDM波形のPAPRは、使用のために選択された信号のコンステレーション(constellation)(例えば、M-PSK、M-QAM等)の信号点(signal points)によって判定される。しかしながら、SC-FDMの時間ドメインの変調シンボルは、非平坦な(non-flat)通信チャンネルに起因してシンボル間干渉を受けやすい。受信されたシンボルに対して等化を行なって、シンボル間干渉の有害な影響を緩和してもよい。
【0028】
ある面において、OFDM及びSC-FDM(例えば、LFDM)は所与のリンク(例えば、アップリンク)上の送信に使用され得る。一般に、OFDM波形のリンク効率は、SC-FDM波形のそれを上回る。OFDMのより高いリンク効率は、SC-FDMよりも大きなOFDMの電力増幅器バックオフによって相殺される。SC-FDMは、このようにOFDMに対して低いPAPRという利点を有する。高いSN比(SNR)を有するUEについては、OFDMのリンクレベル利得は、SC-FDMのPAPRの利点を超過し得る。OFDMとSC-FDMとの両方を利用することによって、システムは、低いSNRシナリオのSC-FDMのPAPRの利点だけでなく、高いSNRシナリオのOFDMのより高いリンク効率からも利益を得てもよい。
【0029】
一般に、任意のSC-FDMスキームをOFDMと共に用い得る。更に、OFDM及びSC-FDMは、アップリンク、又はダウンリンク、又はアップリンクとダウンリンクとの両方に共同で用いられてもよい。明確にするために、以下の記載の多くは、アップリンクでOFDM及びLFDMの共同使用を対象としている。
(中略)
【0041】
内部のサブバンドとは、帯域幅の全体又はスペクトル割当ての端(edges)から遠ざかったサブバンドである。帯域外放射は、変調処理の結果として生じる帯域幅のすぐ外部の1つの周波数又は複数の周波数上の放射である。帯域外放射レベルは、割り当てによって及んだ総帯域幅及びスペクトル割当ての端へのこのスパンの近接(proximity)又はシステムの最大の帯域幅に依存する。概して、割り当てスパン(即ち、広範な割り当て)が大きければ大きいほど、帯域外放射レベルも高くなるであろう。また、端から遠く離れた割り当ては、低い帯域外放射レベルという結果をもたらす。帯域外放射レベルは、チャネル割当てに隣接した1MHzを超える総電力の関数として測定されてもよい。一例によれば、1MHzを超えて統合された総送信電力は-13dBmを超過するべきでない。また、概して平均的に23dBmで送信された電力の場合、スペクトルマスクは隣接した1MHzで約30dBの減衰を要求する。
【0042】
スペクトルマスクマージンは、許可された放射レベルと実際の放射レベルとの間の差として定義される。スペクトルマスクマージン、Lmaskは、下記によって表現することができる。
【数1】


【0043】
この実例に従えば、Pmaskはマスク限界である。一例によれば、Pmaskは-13dbmを超過するべきでない。PTXは総送信電力である。量
【数2】


【0044】
は電力増幅器出力における電力スペクトル密度を表わす。量
【数3】


【0045】
はチャネル割当てに隣接している1MHzである。正の値は、許可された放射レベルと実際の放射レベルとの間のマージンを示す。負の値は、許可された放射レベルを超過することを示す。
(中略)
【0055】
図6に移ると、図示されているのは、無線通信システムにおける電力制限インジケータの考察に基づいてサブバンドにモバイル装置をスケジュールすることを容易にする方法論600である。参照符号602では、電力制限インジケータが受信される。電力制限インジケータは、特に、電力増幅器のサイズ又は能力に関連する情報、もしあれば干渉制約の存在、所与のセクタ若しくはセル内の位置及び/又は1つを越えるセクタ若しくはセルに関する位置情報、又はモバイル装置によって経験される搬送波対干渉パラメータ(carrier-to-interference parameter)を含み得る。参照符号604では、サブバンドが選択される。選択は、モバイル装置の電力制限、サブバンドにわたるチャネル選択性などのうちの少なくとも1つに基づくことができる。参照符号606では、モバイル装置はサブバンドにスケジュールされる。スケジューリングは、受信された電力制限インジケータに基づく。例えば、電力制限されたユーザは内部のサブバンドにスケジュールされるが、電力制限の無いモバイル装置はスペクトル割当ての残りの部分にスケジュールされる。
【0056】
図7に移ると、図示されているのは、電力制限及びサブバンドスケジューリング情報の考察に基づいて電力増幅器バックオフを調整することを容易にする方法論700である。参照符号702では、電力制限インジケータが、基地局又はアクセスポイントへ送信される。電力制限インジケータは、特に、電力増幅器のサイズ又は能力に関する情報、もしあれば干渉制約の存在、所与のセクタ若しくはセル内の位置及び/又は1つを超えるセクタ若しくはセルに関する位置情報、及びモバイル装置若しくはアクセス端末によって経験される搬送波対干渉パラメータを含み得る。参照符号704では、サブバンドスケジューリング情報が受信される。サブバンドスケジューリング情報は、用いられるべき割り当てられたスペクトル内のサブバンドを含むことができる。例えば、スケジューリング情報は、内部のサブバンドが利用されるべきことを示すことができる。参照符号706では、電力増幅器に適用されるべき電力増幅器バックオフを評価するためにスケジューリング情報が使用される。例えば、スケジューリング情報が内部のサブバンドの利用を示す場合、低いバックオフが判定され得る。反対に、情報が端のサブバンドが利用されるべきことを示す場合、適当なスペクトルマスクマージンが維持されるように、高いバックオフが判定され得る。
【0057】
図8を参照すると、図示されているのは、送信のためにスケジュールされたサブバンド割り当てを取得することに関してアップリンクで情報をシグナリングすること(signaling)を容易にする方法論800である。802で、電力制限を含む情報が、逆方向リンクで基地局へ信号で送られてもよい。一例によれば、情報は要求の一部として送信されてもよい。しかしながら、特許請求の範囲に記載された主題はそのように制限されない。804で、サブバンド割り当てが基地局から取得され得るが、割り当ては、信号で送られた情報に少なくとも部分的に基づいて生成され得る。例えば、信号で送られた情報は、情報を信号で送っているユーザについてのスペクトルマスクマージンを判定するために基地局によって使用されてもよい。更に、基地局はサブバンド割り当てを与えること(yielding)に関してそのようなマージンを考慮してもよい。806で、トラヒックはサブバンド割り当てを用いることによって、逆方向リンク上で送信され得る。従って、逆方向リンク送信は、サブバンド割り当てで特定される、周波数、時間、レート等で実施され得る。」

(イ)「
【図8】



上記記載及び当業者の技術常識を考慮すると、引用例3には、次の技術的事項が記載されている。

a 上記(ア)段落【0056】の記載によれば、モバイル装置が、モバイル装置の電力増幅器の能力に関する情報を含む電力制限インジケータを基地局に送信するといえる。したがって、引用例3には、「モバイル装置が、自身の電力増幅器の能力に関する情報を含む電力制限インジケータを基地局に送信する」ことが記載されているといえる。

b 上記(ア)段落【0056】、【0057】の記載及び上記(イ)【図8】によれば、モバイル装置が基地局から、用いられるべき割り当てられたスペクトル内のサブバンドを含むサブバンドスケジューリング情報を受信する。また、上記(ア)段落【0055】の記載によれば、基地局が、電力制限インジケータに基づいて、モバイル装置をサブバンドにスケジュールする。さらに、上記(ア)段落【0041】、【0042】、【0057】の記載によれば、基地局がサブバンド割り当てを与えることに関して、帯域外放射に係る許可された放射レベルと実際の放射レベルとの間の差として定義されるスペクトルマスクマージンを考慮するといえる。したがって、引用例3には、「モバイル装置が、基地局から帯域外放射に係る許可された放射レベルと実際の放射レベルとの間の差として定義されるスペクトルマスクマージンを考慮して、電力制限インジケータに基づいてスケジュールされた、サブバンドスケジューリング情報を受信する」ことが記載されているといえる。

c 上記(ア)段落【0057】の記載及び上記(イ)【図8】によれば、モバイル装置が基地局から取得したサブバンド割り当てを用いて、逆方向リンク上でトラヒックを送信する。さらに、上記(ア)段落【0025】、【0028】、【0029】の記載によれば、逆方向リンク上の送信に、OFDM及び連続的な副搬送波上でデータを送信するLFDM、帯域幅にわたって分散された副搬送波上でデータを送信するIFDM、連続的な副搬送波のグループ上でデータを送信するEFDMを含むSC-FDMが使用されるといえる。
したがって、引用例3には、「モバイル装置が、基地局から取得したサブバンドスケジューリング情報を用いて、OFDM及び連続的な副搬送波上でデータを送信するLFDM、システム帯域幅にわたって分散された副搬送波上でデータを送信するIFDM、連続的な副搬送波のグループ上でデータを送信するEFDMを含むSC-FDMを使用する逆方向リンク上でトラヒックを送信する」ことが記載されているといえる。

d 上記(ア)段落【0057】の記載によれば、引用例3には、「情報をシグナリングする方法」が記載されているといえる。

したがって、引用例3には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

「モバイル装置が、自身の電力増幅器の能力に関する情報を含む電力制限インジケータを基地局に送信することを含み、
さらに、
前記モバイル装置が、前記基地局から帯域外放射に係る許可された放射レベルと実際の放射レベルとの間の差として定義されるスペクトルマスクマージンを考慮して、前記電力制限インジケータに基づいてスケジュールされた、サブバンドスケジューリング情報を受信し、前記サブバンドスケジューリング情報を用いて、OFDM及び連続的な副搬送波上でデータを送信するLFDM、システム帯域幅にわたって分散された副搬送波上でデータを送信するIFDM、連続的な副搬送波のグループ上でデータを送信するEFDMを含むSC-FDMを使用する逆方向リンク上でトラヒックを送信することを含む、
情報をシグナリングする方法。」

ウ 周知例の記載事項及び周知事項

(ア)Qualcomm Incorporated、High Efficiency PAs and Multi-Cluster Performance(当審仮訳:高効率PAとマルチクラスター性能)、3GPP TSG-RAN WG4 #64、R4-124657、[online]、2012年8月6日アップロード、インターネット<http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG4_Radio/TSGR4_64/docs/R4-124657.zip>(以下、「周知例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

「3 Spectral Comparison
Figures 1-3 show spectral plots of the high efficiency PAs compared to a conventional PA. The high efficiency PA is shown in red.
Figure 1 shows the PAs at 0 dB backoff. Note that in general the high efficiency PA emissions tend to be lower closer to the channel and somewhat higher farther out. As backoff is increased to 4 dB in Figure 2 and 8 dB in Figure 3 the high efficiency PA tends to show higher emissions out of the channel bandwidth.
It is clear that these devices perform somewhat differently than the conventional lower efficiency PAs. We intend to include these high efficiency devices in our performance studies and encourage other companies to do the same.
Since the single CC multi-cluster work is active we propose to include these devices in that work.


」(1-4葉)

(当審仮訳:
3 スペクトル比較
図1-3は、従来のPAと比較した高効率PAのスペクトルプロットを示す。高効率PAは、赤で示される。
図1は0dBバックオフでのPAを示す。概して、高効率PAの放射は、チャネルに近いほどより低く、遠いほど幾分より高くなる傾向があることに気づく。バックオフが図2の4dB、図3の8dBに増加した時、高効率PAはチャネルバンド幅外でより高い放射を示す傾向がある。
これらのデバイスが従来の低効率PAよりも幾分異なる性能を示すことは明らかである。我々の性能調査にこれらの高効率デバイスを含めるとともに、他社にも同様のことを行うことを勧めるつもりだ。
シングルCCマルチクラスタ作業がアクティブなので、その作業にこれらのデバイスを含めることを提案する。
(図1略)
図1-0dBバックオフでのPA比較
(図2略)
図2-4dBバックオフでのPA比較
(図3略)
図3-8dBバックオフでのPA比較)

(イ)Motorola Mobility、Band 26 A-MPR Tables for Protection of Adjacent Services(当審仮訳:隣接サービスの保護のためのバンド26のA-MPRテーブル)、3GPP TSG RAN WG4 Meeting #62、R4-120775、[online]、2012年2月12日アップロード、インターネット<http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG4_Radio/TSGR4_62/docs/R4-120775.zip>(以下、「周知例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

「3. High Efficiency Power Amplifiers
Within the next few years, more efficient power amplifiers are becoming available for which the current drain at full power can be in excess of 20% less than that of the current generation of devices. There is some data to indicate that the adjacent channel emissions of these more efficient power amplifiers may behave somewhat differently than the current generation of devices as output power is reduced. In particular, measurements are provided for two such high efficiency devices which indicate that the adjacent channel leakage power does not attenuate as quickly with output power reduction as for the current generation of devices.

Figures 1-3 illustrate the adjacent channel leakage power in units of dBm / 6.25 kHz at 851 MHz as a function of output power at the antenna for three different power amplifiers. The measurements labelled "PA3" are for a current generation power amplifier and were taken on the same power amplifier as that used to generate the A-MPR values in the companion spreadsheet. The other two measurements labelled "PA1" and "PA2" were taken for high efficiency power amplifiers from two different manufacturers. The results in Figure1 show the adjacent channel power at 851 MHz as a function of output power for an allocation of 48 RB's with RB_start = 0. Similarly, Figures 2 and 3 show the adjacent channel power at 851 MHz for RB allocations of 32 and 24 RB's with RB_start = 0 and RB_start = 11, respectively. It can be noted that the allocations used in Figure 1-3 are all allocations for which significant A-MPR (at least 3 dB) is required for the current generation power amplifier.


From Figures 1-3, it can be observed that adjacent channel power reduces more slowly with the reduction of output power for the high efficiency power amplifiers. This observation is most pronounced for "PA1" for which the reduction in adjacent channel leakage as a function of power reduction can be 5 dB less than for current generation "PA3". For "PA2", the reduction in adjacent channel leakage power as a function of output power reduction is typically within 3 dB of that for "PA3."」(1-3葉)

(当審仮訳:
3 高効率電力増幅器
向こう数年以内に、フルパワーでのカレントドレインが現世代のデバイスのそれよりも20%超低下する可能性のある、より効率的な電力増幅器が利用可能になるだろう。これらのより効率的な電力増幅器の隣接チャネル放射が、出力電力が減少するにつれて現世代のデバイスとは幾分異なる振る舞いをする可能性があることを示すデータがある。特に、隣接チャネル漏洩電力が現世代のデバイスと同じように出力電力の減少とともに急速に減衰しないことを示す2つの高効率デバイスについての測定結果が提供される。

図1-3は、3つの異なる電力増幅器に対するアンテナでの出力電力の関数として、851MHzにおけるdbm/6.25kHz単位で隣接チャネル漏洩電力を示す。“PA3”とラベルされた測定値は、現世代の電力増幅器に対するものであり、コンパニオンスプレッドシートのA-MPR値を生成するために使用されたものと同じ電力増幅器で取られたものである。“PA1”と“PA2”とラベルされた他の2つの測定値は、2つの異なる製造元からの高効率電力増幅器に対して、取られたものである。図1の結果は、RB_start=0で48RBの割り当てに対する出力電力の関数としての851MHzでの隣接チャネル電力を示す。同様に、図2と3は、それぞれRB_start=0、11で32と24RBのRB割り当てに対する851MHzでの隣接チャネル電力を示す。図1-3で使用される割り当ては全て、意味のあるA-MPR(少なくとも3dB)が現世代の電力増幅器に対して必要とされる割り当てであることに気づくことができる。

(図1略)
図1 RB_start=0で48RBの割り当てに対する851MHzでの隣接チャネル漏洩電力
(図2略)
図2 RB_start=7で32RBの割り当てに対する851MHzでの隣接チャネル漏洩電力
(図3略)
図3 RB_start=11で24RBの割り当てに対する851MHzでの隣接チャネル漏洩電力

図1-3から、隣接チャネル電力は、高効率電力増幅器にとって、出力電力の減少に伴い、よりゆっくり減少すると見える。この観察結果は、電力減少の関数としての隣接チャネル漏洩の減少が現世代の“PA3”よりも5dB少なくなり得る“PA1”について、最も顕著である。“PA2”の場合、出力電力の関数としての隣接チャネル漏洩の減少は、基本的に“PA3”の場合のそれの3dB以内である。)

(ウ)ST-Ericsson, Ericsson、Discussion on CM and MPR for DC-HSUPA(当審仮訳:DC-HSUPAのためのCM及びMPRについての検討)、3GPP TSG-RAN WG4 Meeting #66bis、R4-131334、[online]、2013年4月8日アップロード、インターネット<http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG4_Radio/TSGR4_66bis/docs/R4-131334.zip>(以下、「周知例3」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

「On the other hand, a high-efficiency PA, e.g., with envelope tracking technique is a way of having the PA appearing to have the same gain for different signal input levels. Selecting this gain is a trade-off between increasing PA efficiency and reducing unwanted emissions. Depending how this trade-off is done, it is possible that a specific PA setting would require larger MPR to satisfy the ACLR requirement.」(1葉)

(当審仮訳:
一方、例えばエンベロープトラッキング技術を用いた高効率PAは、異なる信号入力レベルに対して同じ利得を有するように見えるPAを有する手法である。この利得を選択することは、PAの効率向上と不要な放射の減少との間のトレードオフである。このトレードオフが行われる方法に依存して、特定のPA設定がACLR要件を満たすためのより大きなMPRを必要とする可能性がある。)

したがって、「高効率電力増幅器と低効率電力増幅器とで帯域外への放射電力が異なる。」こと(以下、「周知事項」という)は、例えば周知例1-3にも示されるように周知である。

エ 対比及び判断

本願補正発明と引用発明とを対比すると、以下のとおりとなる。

(ア)引用発明の「モバイル装置」、「基地局」は、それぞれ「端末機器」、「ネットワーク側機器」といえる。また、引用発明の「電力増幅器の能力に関する情報」は、「電力増幅器の能力レベル情報」ともいえる。さらに、モバイル装置が基地局装置にモバイル装置自身の情報を送信することは、報告に他ならない。
したがって、引用発明の「モバイル装置が、自身の電力増幅器の能力に関する情報を含む電力制限インジケータを基地局に送信する」ことは、「端末機器が、自身の電力増幅器の能力レベル情報をネットワーク側機器に報告する」点で本願補正発明と共通する。
ここで、本願補正発明の報告の内容として、「電力増幅器の種類」と「電力増幅器の能力レベル情報」とは、択一的な選択肢であるから、引用発明が前者を報告しないことは相違点とはならない。

(イ)引用発明の「サブバンドスケジューリング情報」はモバイル装置が基地局から受信するものであるから、基地局から発信するものであることは、自明である。また、引用発明の「逆方向リンク」は、「OFDM及び連続的な副搬送波上でデータを送信するLFDM、システム帯域幅にわたって分散された副搬送波上でデータを送信するIFDM、連続的な副搬送波のグループ上でデータを送信するEFDMを含むSC-FDM」が使用される。そのため、引用発明が逆方向リンクで用いる「サブバンドスケジューリング情報」は、リソースの割当方式がOFDM、LFDM、IFDM、EFDMのいずれの方式であるかの情報を含むことは、当業者にとって明らかであるから、「リソース割当方式情報」を含むといえる。さらに、引用発明の「前記サブバンドスケジューリング情報を用いて、・・・逆方向リンク上でトラヒックを送信する」ことは、「前記リソース割当方式情報に基づいてデータ伝送を行う」ことといえる。
したがって、引用発明の「前記モバイル装置が、前記基地局から帯域外放射に係る許可された放射レベルと実際の放射レベルとの間の差として定義されるスペクトルマスクマージンを考慮して、前記電力制限インジケータに基づいてスケジュールされた、サブバンドスケジューリング情報を受信し、前記サブバンドスケジューリング情報を用いて、OFDM及び連続的な副搬送波上でデータを送信するLFDM、システム帯域幅にわたって分散された副搬送波上でデータを送信するIFDM、連続的な副搬送波のグループ上でデータを送信するEFDMを含むSC-FDMを使用する逆方向リンク上でトラヒックを送信」することは、「前記端末機器が、前記ネットワーク側機器から発信するリソース割当方式情報を受信し、前記リソース割当方式情報に基づいてデータ伝送を行う」点で本願補正発明と共通する。
ここで、本願補正発明の「前記端末機器が、前記ネットワーク側機器から発信する電力バックオフ値情報を受信し、前記電力バックオフ値情報に基づいて電力バックオフを行う」との発明特定事項(以下、「第1の発明特定事項」という。)、「前記端末機器が、前記ネットワーク側機器から発信するリソース割当方式情報を受信し、前記リソース割当方式情報に基づいてデータ伝送を行う」との発明特定事項(以下、「第2の発明特定事項」という。)、「前記端末機器が、前記ネットワーク側機器から発信する不連続受信DRX設定情報を受信し、前記DRX設定情報に基づいてデータ受信を行う」との発明特定事項(以下、「第3の発明特定事項」という。)は、択一的な選択肢であるから、引用発明が第1の発明特定事項及び第3の発明特定事項を有しないことは相違点とはならない。

(ウ)引用発明の「情報をシグナリングする方法」は、「情報伝送方法」といえる。

以上のことから、本願補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

(一致点)
「端末機器が、自身の電力増幅器の能力レベル情報をネットワーク側機器に報告することを含み、
さらに、
前記端末機器が、前記ネットワーク側機器から発信するリソース割当方式情報を受信し、前記リソース割当方式情報に基づいてデータ伝送を行うことを含む、
情報伝送方法。」

(相違点)
一致点の「端末機器が、自身の電力増幅器の能力レベル情報をネットワーク側機器に報告すること」について、本願補正発明は、「低効率電力増幅器又は高効率電力増幅器であること」との発明特定事項を有するのに対して、引用発明は、当該発明特定事項を有しない点

上記相違点について検討する。

引用発明は、基地局が帯域外放射に係る許可された放射レベルと実際の放射レベルとの間の差として定義されるスペクトルマスクマージンを考慮して、サブバンドをスケジュールするものであるところ、上記「ウ 周知例の記載事項及び周知事項」で認定した周知事項のとおり、「高効率電力増幅器と低効率電力増幅器とで帯域外への放射電力が異なる。」ことは、周知事項である。そうすると、引用発明の基地局がスペクトルマスクマージンを考慮する際に、低効率電力増幅器又は高効率電力増幅器であることの情報を利用すること、すなわち、引用発明のモバイル装置が、自身の電力増幅器の能力に関する情報として、低効率電力増幅器又は高効率電力増幅器であることを基地局に送信することは、格別困難なことではなく、当業者が適宜なし得たことである。

また、本願補正発明の作用効果も、引用発明及び周知事項から当業者が予測し得る範囲内のものである。

そうすると、本願補正発明は、引用発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.本件補正についてのむすび

以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明

本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成29年2月7日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項9に係る発明は、上記「第2 平成29年12月28日にされた手続補正についての補正の却下の決定」の「1.補正の概要」で示した本願発明のとおりのものと認める。すなわち、択一的な選択肢を考慮すると、本願発明は、
「端末機器が、自身の電力増幅器の能力レベル情報をネットワーク側機器に報告することを含み、
さらに、
前記端末機器が、前記ネットワーク側機器から発信するリソース割当方式情報を受信し、前記リソース割当方式情報に基づいてデータ伝送を行うことを
特徴とする情報伝送方法。」との発明を含む。

第4 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由の概要は、
「(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。」、
「(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」
というものであり、請求項9に対して、引用例3が引用されている。

第5 引用発明

引用例3に記載された引用発明は、上記「第2 平成29年12月28日にされた手続補正についての補正の却下の決定」の「2.補正の適否」の「(2)独立特許要件」の「イ 引用例の記載事項及び引用発明」で認定したとおりのものと認める。

第6 対比及び判断

本願発明は、本願補正発明から電力増幅器の能力レベル情報として、「低効率電力増幅器又は高効率電力増幅器であること」との限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明と引用発明との間には、上記「第2 平成29年12月28日にされた手続補正についての補正の却下の決定」の「2.補正の適否」の「(2)独立特許要件」の「エ 対比及び判断」で示した「(相違点)」が存在しないから、本願発明と引用発明とは、同一である。また 本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。また、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-02-15 
結審通知日 2019-02-19 
審決日 2019-03-04 
出願番号 特願2016-512214(P2016-512214)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04W)
P 1 8・ 113- Z (H04W)
P 1 8・ 575- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 三浦 みちる  
特許庁審判長 菅原 道晴
特許庁審判官 山本 章裕
長谷川 篤男
発明の名称 情報伝送方法及び機器  
代理人 多田 繁範  
代理人 寺田 雅弘  

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