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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J
管理番号 1353728
審判番号 不服2017-11486  
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-08-02 
確定日 2019-07-24 
事件の表示 特願2014-528377「可変電力分配を用いる車両用マルチポートDC充電システム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 3月 7日国際公開、WO2013/032519、平成26年10月 9日国内公表、特表2014-527393〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2012年(平成24年)6月5日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年9月2日(US)米国)を国際出願日とする出願であって、平成28年4月26日付け拒絶理由通知に対して同年11月10日に手続補正がなされたが、平成29年3月27日付けで拒絶査定がなされた。これに対し、同年8月2日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がなされ、平成30年9月7日付け当審の拒絶理由通知に対して、同年12月14日に手続補正がなされた。


2.本願発明
本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成30年12月14日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「 【請求項1】
バッテリ充電ステーションであって、
3相AC電源と、
少なくとも2つの充電ポートであって、前記少なくとも2つの充電ポートのうちの第1のポートは第1の車両へ連結可能であり、且つ、前記少なくとも2つの充電ポートのうちの第2のポートは第2の車両へ連結可能である、少なくとも2つの充電ポートと、
前記3相AC電源から電力が供給される複数の電力ステージであって、前記複数の電力ステージの各電力ステージはAC-DC変換器で構成され、且つ、前記複数の電力ステージの各電力ステージは、前記バッテリ充電ステーションの利用可能な最大充電電力の一部を提供する複数の電力ステージと、
スイッチングシステムであって、前記スイッチングシステムは、ゼロ電力ステージから前記複数の電力ステージの全てに至る間の電力ステージを前記少なくとも2つの充電ポートのうちの任意のポートへ連結することにより、ゼロ電力から前記利用可能な最大充電電力までの間の電力を前記少なくとも2つの充電ポートのうちの任意のポートへ連結可能であるスイッチングシステムと、
システムモニタであって、前記システムモニタは充電ステーションおよび車両の現行状態を決定し、前記充電ステーションおよび車両の状態は経時的に変化するシステムモニタと、
前記スイッチングシステムおよび前記システムモニタへ連結されるコントローラであって、前記コントローラは、予め規定された配電規則セットに従って、かつ充電ステーションおよび車両の現行状態に応答して、前記スイッチングシステムの動作を制御するコントローラと、を備え、
前記複数の電力ステージは、複数の電力ブロックを形成するように纏めてグルーピングされ、各電力ブロックは前記複数の電力ステージのうちの3つの電力ステージで構成され、前記各電力ブロックの3つの電力ステージは、前記3相AC電源側での均衡を達成するように前記3相AC電源にそれぞれ接続され、且つ、前記スイッチングシステムは、ゼロ個の電力ブロックから前記複数の電力ブロックの全てに至る間の電力ブロックを前記少なくとも2つの充電ポートのうちの任意のポートへ連結可能である、バッテリ充電ステーション。」


3.平成30年9月7日付け当審の拒絶理由通知の概要
当審において、平成30年9月7日付けで通知した拒絶理由の概要は、次のとおりのものである。

(1)本件出願の請求項1ないし3に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
(2)本件出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

引用文献1:特開2008-199752号公報


4.引用文献
当審の拒絶理由通知に引用された引用文献1(特開2008-199752号公報)には、「充電装置」に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線部は当審で付与した。

ア.「【0006】
変圧器6から交流電力が充電装置18に給電され、直流電力に整流されて二次電池へ充電を行う。一般的な充電装置は、交流の商用電力を受電するため、交流を整流する整流回路、電圧を上げる高周波トランス、交流を直流にする高周波インバータ、直流を整流する整流回路を備える構成となる。受電する電力に応じこの構成は変更されるが、二次電池の充電に適した直流電力に整流する回路を通常、直流安定化電源回路と称している。」

イ.「【0023】
本発明の実施例について図を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0024】
図1は本発明の充電装置の動作を示すブロック図、図2は本発明の充電装置を利用できる二次電池の例を示す図である。
【0025】
二次電池(a)?(n)は接続部(1)?(n)により充電装置と接続され、通信手段19により制御部21と接続され、それぞれの二次電池(a)?(n)に搭載されるCPUが保有する二次電池情報により、電池電圧(V)、電池温度(℃)、入力許容電力値(W)等が送信される。
【0026】
二次電池としては、例えば、電気自動車用:使用電圧が350V前後で定格容量10?25KWh程度、移動用電源:使用電圧100?200Vで定格容量5?20KWh程度の移動用電源装置、ポータブル電源:使用電圧10?15Vはパソコン、携帯電話などの小型電子機器、また、使用電圧100?200Vで定格容量1?5KWh程度の電源装置については、家庭用非常電源や土木建築作業,電気工事作業などの工事電源がある。
【0027】
入力部20では、充電器利用者がニーズに合った充電パターンなどの入力情報を選択して充電開始を指示する。これにより、制御部21では通信手段19で得られた二次電池情報と入力部20の入力情報に基づく演算を行い、直流電源部22に複数設けられている待機中の直流安定化電源回路(I)?(X)の中から最も適した直流安定化電源回路を選択し、選択された直流安定化電源回路から充電する二次電池までの電力供給回路の構成及び供給電力の電圧(V)並びに出力(kw)を決定し、直流電源部22へ充電指令を出す。
【0028】
直流電源部22では、制御部21からの充電指令を受け、交流電力もしくは直流電力により受電した電力を選択された直流安定化電源回路において、充電指令に見合った電力に調整するとともに、選択された直流安定化電源回路から充電する二次電池までの電力供給回路の構成を行い、充電を開始する。
【0029】
二次電池は、それぞれの残容量や充電パターンに応じて充電されるが、二次電池(a)には、直流安定化電源回路(I)(II)(III)の3個の直流安定化電源回路が選択され急速充電が行われている。また、二次電池(b)は、2個の直流安定化電源回路(IV)(V)が選択され充電が行われている。この時、最適な組合せが構成されることから、充電装置の稼動効率を高めることができる。演算結果から急速充電が必要である場合は複数の直流安定化電源回路が選択され充電を開始することができる。
【0030】
二次電池(a)?(n)の充電が完了すると、二次電池(a)?(n)は、二次電池情報により、充電完了を送信し、制御部21は、通信手段19によりその情報を入手し、当該の充電の停止指令を直流電源部22に指示する。
【0031】
なお、二次電池には、充電に必要な固有の情報を有しており、それぞれ通信手段が異なることや、受電する電力により直流安定化電源回路の整流回路の構成が異なることなどから、直流安定化電源回路における整流回路の構成、容量、本数、または、通信手段、充電する回線の構成手段及び直流安定化電源回路の選択手段は、受電する電力、充電を可能とする二次電池の個数や種類により設定されるものであって、設置する充電装置の規模や構成など設置者が既存の技術から選択し決定されるものである。」

ウ.【図1】


上記アないしウから、引用文献1には、実施例1の充電装置に関して、以下の事項が記載されている。
・上記イの段落【0025】の記載によれば、二次電池(a)?(n)は接続部(1)?(n)により充電装置と接続されるものである。
・上記イの段落【0026】の記載によれば、二次電池としては、例えば、電気自動車用のものがある。
・上記イの段落【0028】の記載によれば、直流電源部22では、制御部21からの充電指令を受け、交流電力により受電した電力を選択された直流安定化電源回路において、充電指令に見合った電力に調整するものである。また、上記アによれば、直流安定化電源回路は、二次電池の充電に適した直流電力に整流する回路である。したがって、直流安定化電源回路は、交流電力により受電した電力を二次電池の充電に適した直流電力に整流するものである。
・上記イの段落【0028】の記載によれば、直流電源部22では、制御部21からの充電指令を受け、選択された直流安定化電源回路から充電する二次電池までの電力供給回路の構成を行うものである。したがって、直流電源部22における電力供給回路は、制御部21からの充電指令を受けて構成が行われる、選択された直流安定化電源回路から充電する二次電池までの回路である。
・上記イの段落【0027】の記載によれば、入力部20では、充電器利用者がニーズに合った充電パターンなどの入力情報を選択して充電開始を指示するものである。
・上記イの段落【0027】の記載によれば、制御部21では通信手段19で得られた二次電池情報と入力部20の入力情報に基づく演算を行い、直流電源部22に複数設けられている待機中の直流安定化電源回路(I)?(X)の中から最も適した直流安定化電源回路を選択し、選択された直流安定化電源回路から充電する二次電池までの電力供給回路の構成を決定し、直流電源部22へ充電指令を出すものである。また、上記イの段落【0029】の記載によれば、演算結果から急速充電が必要である場合は複数の直流安定化電源回路が選択されるものである。
したがって、通信手段19は二次電池情報を得るものである。
また、制御部21では、通信手段19で得られた二次電池情報と入力部20の入力情報に基づく演算を行い、直流電源部22に複数設けられている待機中の直流安定化電源回路(I)?(X)の中から最も適した直流安定化電源回路を選択し、演算結果から急速充電が必要である場合は複数の直流安定化電源回路が選択され、選択された直流安定化電源回路から充電する二次電池までの電力供給回路の構成を決定し、直流電源部22へ充電指令を出すものである。
・上記イの段落【0025】の記載によれば、それぞれの二次電池(a)?(n)に搭載されるCPUが保有する二次電池情報により、電池電圧(V)、電池温度(℃)、入力許容電力値(W)等が送信されるものである。したがって、二次電池情報には、電池電圧や電池温度などが含まれるものである。
・上記イの段落【0031】の記載によれば、直流安定化電源回路における整流回路の本数は、受電する電力、充電を可能とする二次電池の個数や種類により設定されるものである。
・上記イの段落【0023】?【0024】の記載によれば、図1は実施例1の充電装置の動作を示すブロック図であり、図1によれば、充電装置は、交流電力を受電するものである。
また、図1によれば、直流電源部22における直流安定化電源回路から充電する二次電池までの回路(直流電源部22における電力供給回路)として、直流安定化電源回路(I)?(X)に接続される●で表される接点と各接続部(1)?(n)に接続される●で表される接点とを接続する回路が記載されている。
さらに、図1によれば、充電装置は、接続部(1)?(n)と、直流安定化電源回路(I)?(X)と、直流電源部22における電力供給回路と、入力部20と、通信手段19と、制御部21と、を備えるものである。

そうすると、上記摘示事項及び図面の記載を総合勘案すると、引用文献1には、実施例1の充電装置として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「充電装置であって、
交流電力を受電し、
電気自動車用の二次電池(a)?(n)を充電装置と接続する接続部(1)?(n)と、
交流電力により受電した電力を二次電池の充電に適した直流電力に整流する直流安定化電源回路(I)?(X)と、
制御部21からの充電指令を受けて構成が行われる、選択された直流安定化電源回路から充電する二次電池までの回路であって、直流安定化電源回路(I)?(X)に接続される接点と各接続部(1)?(n)に接続される接点とを接続する回路である電力供給回路と、
充電器利用者がニーズに合った充電パターンなどの入力情報を選択して充電開始を指示する入力部20と、
電池電圧や電池温度などの二次電池情報を得る通信手段19と、
通信手段19で得られた二次電池情報と入力部20の入力情報に基づく演算を行い、直流電源部22に複数設けられている待機中の直流安定化電源回路(I)?(X)の中から最も適した直流安定化電源回路を選択し、演算結果から急速充電が必要である場合は複数の直流安定化電源回路が選択され、選択された直流安定化電源回路から充電する二次電池までの電力供給回路の構成を決定し、直流電源部22へ充電指令を出す制御部21と、を備え、
直流安定化電源回路における整流回路の本数は、受電する電力、充電を可能とする二次電池の個数や種類により設定される充電装置。」

また、引用文献1には、図面とともに以下の事項も記載されている。なお、下線は当審で付与した。

エ.「【実施例2】
【0034】
図3は本発明の電気自動車用充電装置の概略を示す全体図である。
【0035】
電気自動車用充電装置(以下「充電装置」という。)は、敷地内に立設した直流電源部設置用の柱2の上に設置された直流電源部1と地上に設置された充電操作装置3とで構成される。充電操作装置3の充電用給電ケーブル4を電気自動車の二次電池接続して充電を行う。直流電源部1へは電柱5の変圧器6あるいは地中変圧器から架空引込線あるいは地中ケーブル線などの給電ケーブル7により電力が供給、もしくは太陽光、風力発電設備などの蓄電電源により電力を供給できる。」

オ.「【0039】
直流電源部1には、変圧器6より交流電力や直流電力が供給される。直流電源部1には直流電源を発生させる複数の直流安定化電源回路と出力調整を指示するマスタースレーブユニットおよび充電出力を調整する出力コントロールユニット、充電操作装置への出力を配分する出力分配ユニットが設けられる。直流安定化電源回路は図6に示す充電装置と同様に、整流回路、高周波トランス、高周波インバータ、整流回路を備えている。出力分配ユニットは、規模に応じて複数設けることができる。」

カ.「【0045】
出力分配ユニット8は、スイッチ9、選択スイッチ10及び開閉スイッチ11を介してそれぞれの充電操作装置に直流が給電される。
【0046】
スイッチ9および選択スイッチ10、開閉スイッチ11は、接続された電気自動車A,B,Cの通信で送られてきた電池残量と直流安定化電源A?Dの可能出力を演算したCPUユニットの指示により、適正な回路構成にするため、スイッチングユニットの指令により、ON・OFFを行う。充電時間の経過において電気自動車A,B,Cの充電容量の変化に応じてスイッチングユニットはスイッチ9および選択スイッチ10を切り替えて、充電装置の性能を最大限に活用した最適な並行充電を実施する。」

キ.「【0051】
図6は本発明の出力分配方式と従来の方式との比較事例を示す図である。」

ク.【図6】


上記エないしクから、引用文献1には、実施例2の電気自動車用充電装置に関して、以下の事項が記載されている。
・上記エによれば、電気自動車用充電装置は、直流電源部1と充電操作装置3とで構成され、充電操作装置3の充電用給電ケーブル4を電気自動車の二次電池接続して充電を行うものである。
・上記オによれば、直流電源部1には、交流電力が供給され、直流電源部1には直流電源を発生させる複数の直流安定化電源回路と、充電操作装置への出力を配分する出力分配ユニットが設けられるものである。
・上記カによれば、出力分配ユニット8は、スイッチ9、選択スイッチ10及び開閉スイッチ11を介してそれぞれの充電操作装置に直流が給電され、スイッチ9および選択スイッチ10、開閉スイッチ11は、適正な回路構成にするため、スイッチングユニットの指令により、ON・OFFを行うものである。
・上記キによれば、図6は実施例2の電気自動車用充電装置の出力分配方式と従来の方式との比較事例を示す図であり、図6によれば、実施例2の電気自動車用充電装置の出力分配方式(図6の下半分の「本発明の出力分配方式」の図)は、15kWを出力可能な4つの直流安定化電源回路(「最大出力15kW×4台」)から3つの充電用給電ケーブルに接続された電気自動車(「A」、「B」、「C」で示される車両)の二次電池を充電する際に、0個の直流安定化電源回路(図6の「35min」以降の時間)から複数の直流安定化電源回路の全て(【図6】の「30min」の直前の時間)に至る間(0?4個)の直流安定化電源回路を1つの充電用給電ケーブル(車両「C」の充電用給電ケーブル)に連結することにより、ゼロ電力から利用可能な最大充電電力(「15kW×4台」の60kW)までの間の電力を1つの充電用給電ケーブルに連結するものである。

そうすると、上記摘示事項及び図面の記載を総合勘案すると、引用文献1には、実施例2の電気自動車用充電装置に関して、以下の技術事項(以下「第1の技術事項」と呼ぶ。)が記載されている。
「複数の直流安定化電源回路と、電気自動車の二次電池を接続する接続部(「充電用給電ケーブル4」)と、複数の直流安定化電源回路と接続部とを接続する出力分配ユニットとを備える充電装置において、0個の直流安定化電源回路から複数の直流安定化電源回路の全てに至る間の直流安定化電源回路を接続部に連結可能にすることにより、ゼロ電力から利用可能な最大充電電力までの間の電力を接続部に連結可能にする技術事項」

また、上記摘示事項及び図面の記載を総合勘案すると、引用文献1には、実施例2の電気自動車用充電装置に関して、以下の技術事項(以下「第2の技術事項」と呼ぶ。)も記載されている。
「複数の直流安定化電源回路と、電気自動車の二次電池を接続する接続部(「充電用給電ケーブル4」)と、指令を受けて構成が行われ、複数の直流安定化電源回路と接続部とを接続する出力分配ユニットとを備える充電装置において、出力分配ユニットを複数のスイッチ(「スイッチ9、選択スイッチ10及び開閉スイッチ11」)で構成する技術事項」


5.対比
本願発明と引用発明とを対比する。

a.引用発明の「充電装置」は、二次電池の充電を行うものであるから、本願発明の「バッテリ充電ステーション」に相当する。

b.引用発明は「交流電力を受電」するものであるから、本願発明と同様に、「AC電源」を備えるものであるといえる。
ただし、AC電源について、本願発明では「3相AC電源」であるのに対し、引用発明にはその旨の特定はない。

c.引用発明の「接続部(1)?(n)」は、充電する二次電池が接続されるものであるから、本願発明の「少なくとも2つの充電ポート」に相当する。また、引用発明の「電気自動車用の二次電池(a)?(n)を充電装置と接続する接続部(1)?(n)」は、電気自動車用の二次電池(a)?(n)を接続することにより、電気自動車が接続されることになる。したがって、引用発明の「電気自動車用の二次電池(a)?(n)を充電装置と接続する接続部(1)?(n)」は、本願発明の「少なくとも2つの充電ポートであって、前記少なくとも2つの充電ポートのうちの第1のポートは第1の車両へ連結可能であり、且つ、前記少なくとも2つの充電ポートのうちの第2のポートは第2の車両へ連結可能である、少なくとも2つの充電ポート」に相当する。

d.引用発明の「交流電力により受電した電力を二次電池の充電に適した直流電力に整流する直流安定化電源回路(I)?(X)」について、「直流安定化電源回路における整流回路の本数は、受電する電力、充電を可能とする二次電池の個数や種類により設定される」ものであるから、各直流安定化電源回路は、設定された本数の整流回路を有するものであり、各整流回路は、交流電力により受電した電力が供給されるものである。したがって、引用発明の「整流回路」は、本願発明の「AC電源から電力が供給される複数の電力ステージ」に相当する。
そして、整流回路がAC-DC変換器であることは技術常識であるから、引用発明の「交流電力により受電した電力を二次電池の充電に適した直流電力に整流する直流安定化電源回路(I)?(X)」及び「直流安定化電源回路における整流回路の本数は、受電する電力、充電を可能とする二次電池の個数や種類により設定される」ことは、本願発明の「AC電源から電力が供給される複数の電力ステージであって、前記複数の電力ステージの各電力ステージはAC-DC変換器で構成され」ることに相当する。
ただし、電力ステージについて、本願発明では、「前記複数の電力ステージの各電力ステージは、前記バッテリ充電ステーションの利用可能な最大充電電力の一部を提供する」のに対し、引用発明にはその旨の特定はない。
また、引用発明の設定された本数の整流回路を有する「直流安定化電源回路(I)?(X)」は、設定された本数の整流回路が纏めてグルーピングされているものといえるから、本願発明の「複数の電力ブロック」に相当する。したがって、引用発明の「交流電力により受電した電力を二次電池の充電に適した直流電力に整流する直流安定化電源回路(I)?(X)」及び「直流安定化電源回路における整流回路の本数は、受電する電力、充電を可能とする二次電池の個数や種類により設定される」ことは、本願発明の「前記複数の電力ステージは、複数の電力ブロックを形成するように纏めてグルーピングされ、各電力ブロックは前記複数の電力ステージのうちの・・・電力ステージで構成され」ることに相当する。
ただし、電力ブロックを構成する電力ステージの数について、本願発明では、「3つの電力ステージ」であるのに対し、引用発明にはその旨の特定はない。
また、本願発明では、「前記各電力ブロックの3つの電力ステージは、前記3相AC電源側での均衡を達成するように前記3相AC電源にそれぞれ接続され」るのに対し、引用発明にはその旨の特定はない。

e.引用発明の「選択された直流安定化電源回路から充電する二次電池までの回路であって、直流安定化電源回路(I)?(X)に接続される接点と各接続部(1)?(n)に接続される接点とを接続する回路である電力供給回路」は、直流安定化電源回路(I)?(X)と各接続部(1)?(n)とを接続する回路であるから、本願発明の「スイッチングシステム」と同様に、「電力ブロックを前記少なくとも2つの充電ポートのうちの任意のポートへ連結可能である」ものである。
また、引用発明の「選択された直流安定化電源回路から充電する二次電池までの回路であって、直流安定化電源回路(I)?(X)に接続される接点と各接続部(1)?(n)に接続される接点とを接続する回路である電力供給回路」は、直流安定化電源回路(I)?(X)と各接続部(1)?(n)とが接続されることにより、直流安定化電源回路(I)?(X)が有する設定された本数の整流回路(上記dのとおり、本願発明の「電力ステージ」に相当)が各接続部(1)?(n)に接続されることになるため、本願発明の「スイッチングシステム」と同様に、「電力ステージを前記少なくとも2つの充電ポートのうちの任意のポートへ連結する」回路である。
ただし、電力ステージを前記少なくとも2つの充電ポートのうちの任意のポートへ連結する回路(以下「連結回路」という。)について、本願発明では「スイッチングシステム」であるのに対し、引用発明にはその旨の特定はない。
また、連結回路について、本願発明では、「ゼロ電力ステージから前記複数の電力ステージの全てに至る間の電力ステージを前記少なくとも2つの充電ポートのうちの任意のポートへ連結することにより、ゼロ電力から前記利用可能な最大充電電力までの間の電力を前記少なくとも2つの充電ポートのうちの任意のポートへ連結可能である」のに対し、引用発明にはその旨の特定はない。
さらに、連結回路について、本願発明では、「ゼロ個の電力ブロックから前記複数の電力ブロックの全てに至る間の電力ブロックを前記少なくとも2つの充電ポートのうちの任意のポートへ連結可能である」のに対し、引用発明にはその旨の特定はない。

f.引用発明の「ニーズに合った充電パターン」は、充電装置が備える入力部20により選択される入力情報であり、かつ、充電装置が行う充電に関する情報であるから、充電装置(上記aのとおり、本願発明の「充電ステーション」に相当)の現在の状態を表す情報であるといえる。また、引用発明の「ニーズに合った充電パターン」は、充電器利用者が入力部20で入力情報を選択することにより、経時的に変化する情報である。
したがって、引用発明の「ニーズに合った充電パターン」は、本願発明の「充電ステーションの・・・現行状態」であって、「前記充電ステーションの・・・状態は経時的に変化する」ことに相当する。

g.引用発明の「二次電池情報」は、電気自動車用の二次電池に関する情報であるから、電気自動車の現在の状態を表す情報であるといえる。また、引用発明の「電池電圧や電池温度などの二次電池情報」が経時的に変化する情報であることは明らかである。
したがって、引用発明の「電池電圧や電池温度などの二次電池情報」は、本願発明の「車両の現行状態」であって、「車両の状態は経時的に変化する」ことに相当する。

h.引用発明の「制御部21」は、「直流電源部22に複数設けられている待機中の直流安定化電源回路(I)?(X)の中から最も適した直流安定化電源回路を選択」するものであり、待機中の直流安定化電源回路から直流安定化電源回路を選択するためには、各直流安定化電源回路の利用の有無や故障の有無などの直流安定化電源回路の状態の情報が必要であるから、引用発明は、各直流安定化電源回路の利用の有無や故障の有無などの直流安定化電源回路の状態の情報を監視しているものであるといえる。そして、直流安定化電源回路の状態の情報は、充電装置が備える直流安定化電源回路の現在の状態を表す情報であるから、充電装置の現行状態であるいえる。また、直流安定化電源回路の状態の情報が経時的に変化する情報であることは明らかである。
したがって、引用発明は、本願発明の「充電ステーションの・・・現行状態」であって、「前記充電ステーションの・・・状態は経時的に変化する」ことに相当する、直流安定化電源回路の状態の情報を監視する構成を備えるものであるといえる。

i.上記f、g、hによれば、引用発明の「充電器利用者がニーズに合った充電パターンなどの入力情報を選択して充電開始を指示する入力部20」、「二次電池情報を得る通信手段19」及び直流安定化電源回路の状態の情報を監視する構成は、本願発明の「システムモニタであって、前記システムモニタは充電ステーションおよび車両の現行状態を決定し、前記充電ステーションおよび車両の状態は経時的に変化するシステムモニタ」に相当する。

j.引用発明の「制御部21」は、選択された直流安定化電源回路から充電する二次電池までの電力供給回路の構成を決定し、直流電源部22へ充電指令を出すものであり、「電力供給回路」は、制御部21からの充電指令を受けて構成が行われるものであるから、引用発明の「制御部21」は、本願発明の「コントローラ」と同様に、連結回路(上記eのとおり、引用発明の「電力供給回路」、本願発明の「スイッチングシステム」)へ「連結される」ものであり、連結回路の「動作を制御する」ものである。
また、引用発明の「制御部21」は、通信手段19で得られた二次電池情報と入力部20の入力情報に基づく演算を行い、直流電源部22に複数設けられている待機中の直流安定化電源回路(I)?(X)の中から最も適した直流安定化電源回路を選択し、演算結果から急速充電が必要である場合は複数の直流安定化電源回路が選択され、選択された直流安定化電源回路から充電する二次電池までの電力供給回路の構成を決定するものであるから、「制御部21」は、通信手段19や入力部20に連結されるものであり、直流安定化電源回路の選択と電力供給回路の構成の決定は、通信手段19で得られた二次電池情報と入力部20の入力情報に応答するものである。また、引用発明の「制御部21」は、上記hで述べたとおり、各直流安定化電源回路の利用の有無や故障の有無などの直流安定化電源回路の状態の情報を利用して、待機中の直流安定化電源回路(I)?(X)の中から最も適した直流安定化電源回路を選択するものであるから、直流安定化電源回路の状態の情報を監視する構成に連結されるものであり、直流安定化電源回路の選択と電力供給回路の構成の決定は、直流安定化電源回路の状態の情報に応答するものである。
したがって、引用発明の「制御部21」は、本願発明の「コントローラ」と同様に、「システムモニタへ連結される」ものであり、「充電ステーションおよび車両の現行状態に応答して、」連結回路の「動作を制御する」ものである。
よって、引用発明の「通信手段19で得られた二次電池情報と入力部20の入力情報に基づく演算を行い、直流電源部22に複数設けられている待機中の直流安定化電源回路(I)?(X)の中から最も適した直流安定化電源回路を選択し、演算結果から急速充電が必要である場合は複数の直流安定化電源回路が選択され、選択された直流安定化電源回路から充電する二次電池までの電力供給回路の構成を決定し、直流電源部22へ充電指令を出す制御部21」は、本願発明の「コントローラ」と同様に、連結回路および「前記システムモニタへ連結されるコントローラであって、前記コントローラは、充電ステーションおよび車両の現行状態に応答して、」連結回路の「動作を制御するコントローラ」である。
ただし、コントローラによる連結回路の動作の制御について、本願発明では、「予め規定された配電規則セットに従って、」行われるのに対して、引用発明にはその旨の特定はない。

k.引用発明の「充電装置」は、直流安定化電源回路(I)?(X)を含むものであり、各直流安定化電源回路は、設定された本数の整流回路を有するものであるから、引用発明の「充電装置」は、整流回路(上記dのとおり、本願発明の「電力ステージ」に相当)を含むものである。
したがって、引用発明の「充電装置」が「・・・接続部(1)?(n)と、・・・直流安定化電源回路(I)?(X)と、・・・入力部20と、・・・通信手段19と、・・・制御部21と、を備え」ることは、本願発明の「バッテリ充電ステーション」が「・・・少なくとも2つの充電ポートと、・・・複数の電力ステージと、・・・システムモニタと、・・・コントローラと、を備え」ることに相当する。
また、引用発明の「充電装置」は「・・・電力供給回路・・・を備え」るものであるから、本願発明の「バッテリ充電ステーション」が「・・・スイッチングシステム・・・を備え」ることと同様に、「バッテリ充電ステーション」が連結回路を備えるものである。

上記aないしkから、本願発明と引用発明とは、次の点で一致し、以下の点で相違している。

<一致点>
バッテリ充電ステーションであって、
AC電源と、
少なくとも2つの充電ポートであって、前記少なくとも2つの充電ポートのうちの第1のポートは第1の車両へ連結可能であり、且つ、前記少なくとも2つの充電ポートのうちの第2のポートは第2の車両へ連結可能である、少なくとも2つの充電ポートと、
前記AC電源から電力が供給される複数の電力ステージであって、前記複数の電力ステージの各電力ステージはAC-DC変換器で構成される複数の電力ステージと、
連結回路であって、前記連結回路は、電力ステージを前記少なくとも2つの充電ポートのうちの任意のポートへ連結する連結回路と、
システムモニタであって、前記システムモニタは充電ステーションおよび車両の現行状態を決定し、前記充電ステーションおよび車両の状態は経時的に変化するシステムモニタと、
前記連結回路および前記システムモニタへ連結されるコントローラであって、前記コントローラは、充電ステーションおよび車両の現行状態に応答して、前記連結回路の動作を制御するコントローラと、を備え、
前記複数の電力ステージは、複数の電力ブロックを形成するように纏めてグルーピングされ、各電力ブロックは前記複数の電力ステージのうちの電力ステージで構成され、前記連結回路は、電力ブロックを前記少なくとも2つの充電ポートのうちの任意のポートへ連結可能である、バッテリ充電ステーション。

<相違点1>
AC電源について、本願発明では「3相AC電源」であるのに対し、引用発明にはその旨の特定はない点。

<相違点2>
電力ステージについて、本願発明では、「前記複数の電力ステージの各電力ステージは、前記バッテリ充電ステーションの利用可能な最大充電電力の一部を提供する」のに対し、引用発明にはその旨の特定はない点。

<相違点3>
連結回路について、本願発明では「スイッチングシステム」であるのに対し、引用発明にはその旨の特定はない点。

<相違点4>
連結回路について、本願発明では、「ゼロ電力ステージから前記複数の電力ステージの全てに至る間の電力ステージを前記少なくとも2つの充電ポートのうちの任意のポートへ連結することにより、ゼロ電力から前記利用可能な最大充電電力までの間の電力を前記少なくとも2つの充電ポートのうちの任意のポートへ連結可能である」のに対し、引用発明にはその旨の特定はない点。

<相違点5>
コントローラによる連結回路の動作の制御について、本願発明では、「予め規定された配電規則セットに従って、」行われるのに対して、引用発明にはその旨の特定はない点。

<相違点6>
電力ブロックを構成する電力ステージの数について、本願発明では、「3つの電力ステージ」であるのに対し、引用発明にはその旨の特定はない点。

<相違点7>
本願発明では、「前記各電力ブロックの3つの電力ステージは、前記3相AC電源側での均衡を達成するように前記3相AC電源にそれぞれ接続され」るのに対し、引用発明にはその旨の特定はない点。

<相違点8>
連結回路について、本願発明では、「ゼロ個の電力ブロックから前記複数の電力ブロックの全てに至る間の電力ブロックを前記少なくとも2つの充電ポートのうちの任意のポートへ連結可能である」のに対し、引用発明にはその旨の特定はない点。


6.判断
そこで、上記各相違点について検討する。

相違点1、6、7について
引用発明は、交流電力を受電して電気自動車用の二次電池を充電する充電装置の発明であるところ、例えば、特開平10-32937号公報(段落【0001】、【0007】及び【図6】参照。以下「周知文献1」という。)に記載されるように、車両のバッテリの充電を三相交流電源(本願発明の「3相AC電源」に相当)の交流電力で行うことは、一般的なことである。
そして、例えば、上記周知文献1(段落【0001】、【0007】及び【図6】参照。)及び特開平7-31150号公報(段落【0006】?【0007】及び【図2】参照。以下「周知文献2」という。)に記載されるように、3相AC電源に整流回路を接続する際に、3相AC電源のU相に接続される整流回路(周知文献1の「チヨッピング機能付整流器4」を構成するスイッチング素子「UP」及び「UN」や、「UP」及び「UN」に並列に接続されるダイオードや、「UP」及び「UN」に接続される「チョークコイル3」で構成される回路。周知文献2の「単相整流回路2A」及び「単相力率改善回路6A」で構成される回路)と、3相AC電源のV相に接続される整流回路と、3相AC電源のW相に接続される整流回路とからなる3つの整流回路を纏めた構成を用いることは、常とう手段である。
したがって、引用発明において、充電装置が受電する交流電力を3相AC電源の交流電力とすることで相違点1の構成とし、設定された本数の整流回路(本願発明の「電力ステージ」に相当)を有する直流安定化電源回路(本願発明の「電力ブロック」に相当)を、3相AC電源のU相に接続される整流回路と3相AC電源のV相に接続される整流回路と3相AC電源のW相に接続される整流回路とからなる3つの整流回路により構成されるものとすることで、相違点6の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
そして、本願発明の「前記各電力ブロックの3つの電力ステージは、前記3相AC電源側での均衡を達成するように前記3相AC電源にそれぞれ接続され」る構成について、本願の明細書には、「3相AC電源側での均衡を達成する」ための「3つの電力ステージ」の具体的な構成や「3つの電力ステージ」と「3相AC電源」との具体的な接続方式は記載されていないが、平成30年12月14日付けの意見書(「2.意見」参照)の「なお、本発明の『前記各電力ブロックの3つの電力ステージは、前記3相AC電源側での均衡を達成するように前記3相AC電源にそれぞれ接続され』るという構成が、(明細書に具体的に記述されていませんが)3相AC電源のU相、V相、W相が電力ブロックの3つの電力ステージにそれぞれ接続されていることを意味することは、当業者にとって言わずもがなであるといえます。」との主張によれば、3相AC電源のU相を3つの電力ステージの第1の電力ステージに接続し、3相AC電源のV相を3つの電力ステージの第2の電力ステージに接続し、3相AC電源のW相を3つの電力ステージの第3の電力ステージに接続することにより、3相AC電源側での均衡が達成されるものと解されるから、引用発明において、3相AC電源のU相に接続される整流回路と3相AC電源のV相に接続される整流回路と3相AC電源のW相に接続される整流回路とからなる3つの整流回路により構成されるものとした場合には、3相AC電源側での均衡が達成されることになるので、相違点7の構成となる。

なお、審判請求人は、平成30年12月14日付けの意見書(「2.意見」参照)において、「すなわち、引用文献1の充電装置(図5参照)は、各直流安定化電源がグループ化されることなく、各々が独立して電気自動車を充電するように構成されている。つまり、引用文献1は、複数の直流安定化電源回路(I)?(X)を予め纏めてグルーピングするといった思想を教示するものではありません。」との主張している。
しかし、引用発明は、引用文献1の【図5】に関連する「実施例2」に対応するものではなく、引用文献1の【図1】に関連する「実施例1」に対応するものである。そして、引用文献1には、実施例1に関して、「直流安定化電源回路における整流回路の・・本数は、受電する電力、充電を可能とする二次電池の個数や種類により設定されるもの」との記載があり(段落【0031】参照)、当該記載によれば、直流安定化電源回路は、設定された本数の整流回路を有するものである。したがって、引用文献1には、複数の整流回路(本願発明の「電力ステージ」に相当)を纏めてグルーピングすることで、直流安定化電源回路(本願発明の「電力ブロック」に相当)を構成する思想が記載されているものである。
よって、審判請求人の上記主張を採用することはできない。

相違点2、4、8について
上記第1の技術事項は、引用発明と同様に、複数の直流安定化電源回路と電気自動車の二次電池を接続する接続部とを接続する回路の構成を行うことで、二次電池の充電を行うための技術であるから、引用発明に、上記第1の技術事項を適用して、直流安定化電源回路(I)?(X)のうち、0個の直流安定化電源回路から複数の直流安定化電源回路の全てに至る間の直流安定化電源回路(本願発明の「電力ブロック」に相当)を接続部(1)?(n)(本願発明の「少なくとも2つの充電ポート」に相当)に連結可能にすることにより、相違点8の構成とし、ゼロ電力から利用可能な最大充電電力までの間の電力を接続部(1)?(n)に連結可能にすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
そして、直流安定化電源回路が、充電装置の利用可能な最大充電電力の一部を提供することになるため、各直流安定化電源回路が有する設定された本数の整流回路(本願発明の「電力ステージ」に相当)は、充電装置(本願発明の「バッテリ充電ステーション」に相当)の利用可能な最大充電電力の一部を提供することになるので、相違点2の構成となる。
また、0個の直流安定化電源回路から複数の直流安定化電源回路の全てに至る間の直流安定化電源回路を接続部(1)?(n)に連結可能にすることにより、各直流安定化電源回路が有する設定された本数の整流回路(本願発明の「電力ステージ」に相当)について、ゼロ個の整流回路(本願発明の「ゼロ電力ステージ」に相当)から全ての直流安定化電源回路の合計の本数の整流回路(本願発明の「前記複数の電力ステージの全て」に相当)に至る間の整流回路が接続部(1)?(n)に連結されることになるので、上述したように、ゼロ電力から利用可能な最大充電電力までの間の電力を接続部(1)?(n)に連結可能にすることと併せて、相違点4の構成となる。

相違点3について
引用発明の「電力供給回路」は、充電指令を受けて構成が行われる回路であり、直流安定化電源回路(I)?(X)に接続される接点と各接続部(1)?(n)に接続される接点とを接続する回路であるところ、引用文献1の図1に記載されるように、●で表される接点間を接続する回路は通常スイッチを表すものであるから、引用文献1には、引用発明の「電力供給回路」を複数のスイッチで構成(本願発明の「スイッチングシステム」に相当)することが示唆されているといえる。
また、上記第2の技術事項の「出力分配ユニット」は、引用発明の「電力供給回路」と同様に、指令を受けて構成が行われ、複数の直流安定化電源回路と接続部とを接続する回路であるから、引用発明に、上記第2の技術事項を適用して、電力供給回路を複数のスイッチで構成(本願発明の「スイッチングシステム」に相当)することは、当業者が容易に想到し得ることである。

相違点5について
一般に、決定を行う際に、予め規定された規則に従って決定を行うことは常とう手段であるところ、引用発明の「制御部21」は、「通信手段19で得られた二次電池情報と入力部20の入力情報に基づく演算を行い、直流電源部22に複数設けられている待機中の直流安定化電源回路(I)?(X)の中から最も適した直流安定化電源回路を選択し、演算結果から急速充電が必要である場合は複数の直流安定化電源回路が選択され、選択された直流安定化電源回路から充電する二次電池までの電力供給回路の構成を決定し、直流電源部22へ充電指令を出す」ものであるから、制御部21は、電力供給回路の動作を制御するにあたり、複数の入力情報(「二次電池情報」や「入力部20の入力情報」)に基づいて、複数の決定(「最も適した直流安定化電源回路」の「選択」や「電力供給回路の構成」の決定)を行うものである。
したがって、引用発明において、制御部21(本願発明の「コントローラ」に相当)を、複数の決定を行うための複数の予め規定された規則(本願発明の「予め規定された配電規則セット」に相当)に従って、電力供給回路の動作を制御するものとすることは、当業者が通常なし得る程度のことである。

以上のとおりであるから、本願発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献1に記載された第1の技術事項及び第2の技術事項、並びに、周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

そして、本願発明の作用効果も、引用文献1に記載された発明、引用文献1に記載された第1の技術事項及び第2の技術事項、並びに、周知の事項から当業者が十分に予測できたものであって格別なものとはいえない。
なお、平成30年12月14日付けの意見書(「2.意見」参照)において、審判請求人は、「よって、本願発明は、3相AC側での均衡を達成すること、及び、スイッチングシステムの複雑さを抑えるといった引用発明1にない顕著な効果を発揮するものです。」との主張をしている。
しかし、上記周知文献1及び上記周知文献2に記載される常とう手段は、3相AC電源に整流回路を接続する際に、3相AC電源のU相に接続される整流回路とV相に接続される整流回路とW相に接続される整流回路とからなる3つの整流回路を纏めた構成を用いるものであり、当該常とう手段により、3相AC電源のそれぞれの相に整流回路が接続されることになるため、3相AC側での均衡が保たれることは、当業者にとって明らかである。したがって、引用発明に、上記周知文献1及び上記周知文献2に記載される常とう手段を適用することにより、3相AC側での均衡を達成するという効果を奏することは、当業者が予測し得る程度のことにすぎない。
また、引用発明において、各直流安定化電源回路は、設定された本数の整流回路を有するものであるから、複数の整流回路を纏めてグルーピングすることで直流安定化電源回路を構成しているものであり、「電力供給回路」は、各直流安定化電源回路を各接続部と接続する回路である。したがって、複数の整流回路を纏めてグルーピングすることなく、「電力供給回路」を、個別の整流回路を各接続部と接続する回路にした場合と比較して、「電力供給回路」により接続すべき回路の個数が減少するため、「電力供給回路」の構成や制御の複雑さが抑えられていることは、当業者にとって明らかである。したがって、引用発明に、上記第2の技術事項を適用して、電力供給回路をスイッチングシステムで構成した場合に、スイッチングシステムの複雑さを抑えるという効果を奏することは、当業者が予測し得る程度のことにすぎない。
よって、審判請求人の上記主張を採用することはできない。


7.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について言及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-02-15 
結審通知日 2019-02-19 
審決日 2019-03-04 
出願番号 特願2014-528377(P2014-528377)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H02J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 馬場 慎  
特許庁審判長 酒井 朋広
特許庁審判官 東 昌秋
山澤 宏
発明の名称 可変電力分配を用いる車両用マルチポートDC充電システム  
代理人 特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所  

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