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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K
管理番号 1353814
審判番号 不服2018-4573  
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-04-05 
確定日 2019-07-31 
事件の表示 特願2016- 15242「抗ウイルス療法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 8月12日出願公開、特開2016-145204〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2011年(平成23年)1月24日を国際出願日とする特願2012-551213号(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2010年1月27日 米国)の一部を平成28年1月29日に新たな出願としたものであって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。

平成28年 2月26日 :手続補正書
同年 3月 4日 :上申書
同年11月28日付け:拒絶理由通知書
平成29年 4月 4日 :意見書、手続補正書
同年 4月26日付け:拒絶理由通知書
同年 7月31日 :意見書
同年11月21日付け:拒絶査定
同年12月 7日作成:応対記録
平成30年 4月 5日 :審判請求書
同年11月27日付け:拒絶理由通知書
平成31年 1月 9日作成:応対記録
同年 1月16日 :意見書

(なお、平成29年12月7日作成の応対記録は拒絶理由通知で引用した引用文献の誤記、及び、平成31年1月9日作成の応対記録は拒絶理由通知の対象となる請求項の誤記に関する問合せについての応対を記録したものである。)

第2 本願発明
本願の請求項1ないし15に係る発明は、平成29年4月4日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定されたとおりのものであり、そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「【請求項1】
式(I)の化合物:
【化1】


またはその薬学上許容される塩と、リルピビリンまたはその薬学上許容される塩を含む医薬組成物。」

第3 当審で通知した拒絶の理由
平成30年11月27日付けで当審が通知した、本願発明についての拒絶の理由は、本願発明は、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものではないから、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない、というものである。

第4 本願明細書の発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明には、以下の記載がある(なお、【0025】の「リルピビリン(rilpivirine)(TMC-278)」の下線は当審で付加したものである。)。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、HIVインテグラーゼ阻害剤および他の治療薬を含んでなる化合物の組み合わせに関する。」

「【背景技術】
【0002】
ヒト免疫不全ウイルス(「HIV」)は、後天性免疫不全症候群(「AIDS」)(免疫系の破壊、特に、CD4^(+)T細胞の破壊を特徴とし、結果として日和見感染への感受性を伴う疾患)およびその前駆症状であるAIDS関連症候群(「ARC」)(持続性全身性リンパ節腫脹、発熱および体重減少などの症候を特徴とする症候群)の原因物質である。HIVは、レトロウイルスであり;そのRNAからDNAへの変換は、逆転写酵素の作用によって行われる。逆転写酵素の機能を阻害する化合物は、感染細胞におけるHIVの複製を阻害する。そのような化合物は、ヒトにおけるHIV感染の予防または治療において有用である。
【0003】
HIVは、標的細胞に侵入するために、CD4に加えて、補助受容体を必要とする。ケモカイン受容体は、HIVに対する補助受容体としてCD4とともに機能する。ケモカイン受容体のCXCR4およびCCR5は、HIV-1に対する主要な補助受容体として同定されている。CCR5は、マクロファージ指向性HIVが宿主細胞に融合および侵入するための主要な補助受容体として作用する。これらのケモカイン受容体は、HIV感染の確立および伝播において重要な役割を果たすと考えられている。ゆえに、CCR5アンタゴニストは、HIVに対して有効な治療薬として有用であると考えられる。
【0004】
他のいくつかのレトロウイルスの場合のように、HIVは、感染性ビリオンの形成に必要なプロセスにおいて前駆体ポリペプチドの翻訳後切断を行うプロテアーゼの産生をコードする。これらの遺伝子産物には、pol(ビリオンのRNA依存性DNAポリメラーゼ(逆転写酵素)をコードする)、エンドヌクレアーゼ、HIVプロテアーゼ、およびgag(ビリオンのコアタンパク質をコードする)が含まれる。
【0005】
抗ウイルス薬設計の焦点の1つは、ウイルスのポリプロテイン前駆体のプロセシングを妨害することによって感染性ビリオンの形成を阻害する化合物を作り出すことである。これらの前駆体タンパク質のプロセシングには、複製に不可欠な、ウイルスによってコードされるプロテアーゼの作用が必要である。HIVプロテアーゼを阻害することが抗ウイルス性である可能性は、ペプチジル阻害剤を用いて証明されている。
【0006】
ヒトT細胞におけるHIV複製に必要とされる工程は、ウイルスによってコードされるインテグラーゼによる、宿主細胞ゲノムへのプロウイルスDNAの挿入である。インテグレーションは、あるプロセスにおいてインテグラーゼによって媒介されると考えられており、そのプロセスは、ウイルスDNA配列と安定な核タンパク質複合体とが集合すること、線形プロウイルスDNAの3’末端から2つのヌクレオチドを切断すること、およびそのプロウイルスDNAの3’OH陥凹末端を、宿主標的部位において生成された付着末端(staggered cut)において共有結合的に連結することを含む。結果として生じるギャップの修復合成は、細胞の酵素によって行われ得る。HIVインテグラーゼの阻害剤は、AIDSの治療およびウイルス複製の阻害において有効であり得る。
【0007】
HIV感染および関連症状の治療において治療用化合物の組み合わせを投与することによって、抗ウイルス活性の増強、毒性の低下、耐性となるまでの進行の遅延、および薬効の増大をもたらすことができる。単一の投薬単位として投与される組み合わせは、服用個数(pill burden)を減少させ、投薬スケジュールを単純にするので、患者の服薬率を上昇させることができる。しかしながら、すべての化合物が、組み合わせでの投与に適しているとは限らない。組み合わせの成否に影響する因子としては、その化合物の化学的不安定性、投薬単位のサイズ、組み合された化合物が拮抗作用を起こす可能性または単なる相加作用しかもたらさない可能性、および好適な製剤を得るに当たっての問題が挙げられる。
【0008】
HIV感染を治療するための、組み合わせでの使用に適した治療薬および実行可能な医薬組成物を見つけ出すことが必要とされ続けている。ある特定のHIVインテグラーゼ阻害剤は、その高力価および薬物動態学的プロファイルに起因して、併用療法における構成要素として魅力的である。

「【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、HIVインテグラーゼ阻害剤および他の治療薬を含んでなる化合物の組み合わせに関する。そのような組み合わせは、HIV複製の阻害、HIVによる感染の予防および/または治療、ならびにAIDSおよび/またはARCの治療において有用である。本発明はまた、HIVインテグラーゼ阻害剤を含んでなる医薬組成物を特徴とする。」

「【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、以下の式(I)、(II)もしくは(III)の化合物:
【化1】


【化2】


【化3】

【0012】
またはその薬学上許容される塩、ならびにヌクレオチド逆転写酵素阻害剤、ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NRTI)、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTI)、プロテアーゼ阻害剤、CCR5アンタゴニスト、CXCR4アンタゴニスト、融合阻害剤、成熟阻害剤およびインテグラーゼ阻害剤からなる群から選択される1種以上の治療薬を含んでなる組み合わせに関する。
【0013】
本発明は、式(I)、(II)または(III)の化合物、ならびにヌクレオチド逆転写酵素阻害剤、ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NRTI)、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTI)、プロテアーゼ阻害剤、CCR5アンタゴニスト、CXCR4アンタゴニスト、融合阻害剤、成熟阻害剤およびインテグラーゼ阻害剤からなる群から選択される1種以上の治療薬を被験体に投与することによる、HIV感染、AIDSおよびAIDS関連症状の治療方法に関する。
【0014】
式(I)の化合物は、GSK1349572としても知られる。式(I)の化合物の化学名は、(4R,12aS)-N-[2,4-フルオロフェニル(flurophenyl))メチル]-3,4,6,8,12,12a-ヘキサヒドロ-7-ヒドロキシ-4-メチル-6,8-ジオキソ-2H-ピリド[1’,2’:4,5]ピラジノ[2,1-b][1,3]オキサジン-9-カルボキサミドである。
【0015】
式(II)の化合物の化学名は、(3S,11aR)-N-[(2,4-ジフルオロフェニル)メチル]-2,3,5,7,11,11a-ヘキサヒドロ-6-ヒドロキシ-3-メチル-5,7-ジオキソ-オキサゾロ[3,2-a]ピリド[1,2-d]ピラジン-8-カルボキサミドである。
【0016】
式(III)の化合物の化学名は、(4aS,13aR)-N-[2,4-ジフルオロフェニル)メチル]-10-ヒドロキシ-9,11-ジオキソ-2,3,4a,5,9,11,13,13a-オクタヒドロ-1H-ピリド[1,2-a]ピロロ[1’,2’:3,4,]イミダゾ[1,2-d]ピラジン-8-カルボキサミドである。」

「【0022】
本発明は、ヒトにおけるウイルス感染、例えば、HIV感染を治療または予防する方法に関し、その方法は、治療有効量の式(I)、(II)もしくは(III)の化合物またはその薬学上許容される塩を、ヌクレオチド逆転写酵素阻害剤、ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NRTI)、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTI)、プロテアーゼ阻害剤、CCR5アンタゴニスト、CXCR4アンタゴニスト、融合阻害剤、成熟阻害剤およびインテグラーゼ阻害剤からなる群から選択される1種以上の治療薬と併用してヒトに投与することを含んでなる。その組み合わせは、同時に投与されてもよいし、連続的に投与されてもよい。
【0023】
式(I)、(II)および(III)の化合物は、特に、HIV感染および関連する症状の治療または予防に適している。本明細書中での治療に対する言及は、確立された感染、症候および関連する臨床症状(例えば、エイズ関連症候群(ARC)、カポジ肉腫およびAIDS痴呆)の治療と同様に予防にまで拡張される場合がある。
【0024】
併用療法は、本発明の化合物またはその薬学上許容される塩および別の薬学的に活性な物質の投与を含む。その活性成分および薬学的に活性な物質は、同じもしくは異なる医薬組成物として同時に(すなわち、共に)投与されてもよいし、任意の順序で連続的に投与されてもよい。組み合わされる所望の治療効果を達成するために、その活性成分および薬学的に活性な物質の量、ならびに相対的な投与のタイミングが選択される。
【0025】
そのような治療薬の例としては、ウイルス感染または関連する症状の治療に有効な物質が挙げられるが、それに限定されない。これらの物質は、ヌクレオチド逆転写酵素阻害剤、非環式ヌクレオシドホスホネート、例えば、(S)-1-(3-ヒドロキシ-2-ホスホニル-メトキシプロピル)シトシン(HPMPC)、[[[2-(6-アミノ-9H-プリン-9-イル)エトキシ]メチル]ホスフィニリデン]ビス(オキシメチレン)-2,2-ジメチルプロパン酸(ビス-POM PMEA,アデホビルジピボキシル)、アデホビル、[[(1R)-2-(6-アミノ-9H-プリン-9-イル)-1-メチルエトキシ]メチル]ホスホン酸(テノホビル)、テノホビルジソプロキシルフマレエートおよび(R)-[[2-(6-アミノ-9H-プリン-9-イル)-1-メチルエトキシ]メチル]ホスホン酸ビス-(イソプロポキシカルボニルオキシメチル)エステル(ビス-POC-PMPA);ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、例えば、3’-アジド-3’-デオキシチミジン(AZT,ジドブジン)、2’,3’-ジデオキシシチジン(ddC,ザルシタビン)、2’,3’-ジデオキシアデノシン、2’,3’-ジデオキシイノシン(ddI,ジダノシン)、2’,3’-ジデヒドロチミジン(d4T,スタブジン)、(-)-cis-1-(2-ヒドロキシメチル)-1,3-オキサチオラン5-イル)-シトシン(ラミブジン)、cis-1-(2-(ヒドロキシメチル)-1,3-オキサチオラン-5-イル)-5-フルオロシトシン(FTC、エムトリシタビン(emtricitabine))、(-)-cis-4-[2-アミノ-6-(シクロ-プロピルアミノ)-9H-プリン-9-イル]-2-シクロペンテン-1-メタノール(アバカビル)、ホジブジンチドキシル(fozivudine tidoxil)、アロブジン(alovudine)、アムドキソビル(amdoxovir)、エルブシタビン(elvucitabine)、アプリシタビン(apricitabine)およびフェスティナビル(festinavir)(OBP-601);プロテアーゼ阻害剤、例えば、インジナビル、リトナビル、ネルフィナビル、アンプレナビル、サキナビル、ホサンプレナビル(fosamprenavir)、ロピナビル、アタザナビル、チプラナビル(tipranavir)、ダルナビル(darunavir)、ブレカナビル(brecanavir)、パリナビル(palinavir)、ラシナビル(lasinavir)、TMC-310911、DG-17、PPL-100およびSPl-256;非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTI)、例えば、ネビラピン、デラビルジン、エファビレンツ、GSK2248761(IDX-12899)、レルシビリン(lersivirine)(UK-453,061)、リルピビリン(rilpivirine)(TMC-278)、エトラビリン(etravirine)、ロビリド(loviride)、イムノカル(immunocal)、オルチプラズ(oltipraz)、カプラビリン(capravirine)およびRDEA-806;インテグラーゼ阻害剤、例えば、ラルテグラビル(raltegravir)、エルビテグラビル(elvitegravir)およびJTK-656;CCR5および/またはCXCR4アンタゴニスト、例えば、マラビロック(maraviroc)、ビクリビロク(vicriviroc)(Sch-D)、TBR-652(TAK-779)、TAK-449、PRO-140、GSK706769およびSCH-532706;融合阻害剤、例えば、エンフビルチド(enfuvirtide)(T-20)、T-1249、PRO-542、イバリズマブ(ibalizumab)(TNX-355)、BMS-378806(BMS-806)、BMS-488043、KD-247、5-Helix阻害剤およびHIV付着阻害剤;ならびに成熟阻害剤、例えば、ベビリマット(bevirimat)(PA-344およびPA-457)である。
【0026】
本発明は、式(I)の化合物:
【化4】


【0027】
またはその薬学上許容される塩、ならびにラミブジン、アバカビル、テノホビル、エファビレンツ、GSK2248761、レルシビリン、ロピナビル、ホサンプレナビルおよびアタザナビルからなる群から選択される1種以上の治療薬を含んでなる組み合わせを特徴とする。
【0028】
本発明はまた、式(I)の化合物またはその薬学上許容される塩、およびアバカビル、エファビレンツまたはロピナビルから選択される1種以上の治療薬を含んでなる組み合わせを特徴とする。本発明は、式(I)の化合物またはその薬学上許容される塩およびアバカビルを含んでなる組み合わせを特徴とする。
【0029】
本発明は、HIV感染の治療方法を特徴とし、その方法は、式(I)の化合物またはその薬学上許容される塩と、ラミブジン、アバカビル、テノホビル、エファビレンツ、GSK2248761、レルシビリン、ロピナビル、ホサンプレナビルおよびアタザナビルからなる群から選択される1種以上の治療薬とを被験体に投与することを含んでなる。
【0030】
本発明は、HIV感染の治療方法を特徴とし、その方法は、式(I)の化合物またはその薬学上許容される塩を、アバカビル、エファビレンツおよびロピナビルからなる群から選択される1種以上の治療薬とともに被験体に投与することを含んでなる。本発明は、HIV感染の治療方法を特徴とし、その方法は、式(I)の化合物またはその薬学上許容される塩およびアバカビルを被験体に投与することを含んでなる。
【0031】
本発明は、式(I)の化合物またはその薬学上許容される塩と、ラミブジン、アバカビル、エファビレンツ、テノホビル、GSK2248761、レルシビリン、ロピナビル、ホサンプレナビルおよびアタザナビルからなる群から選択される1種以上の治療薬とを、それらのための薬学上許容される担体とともに含んでなる医薬組成物を特徴とする。
【0032】
本発明は、式(I)の化合物またはその薬学上許容される塩と、アバカビル、エファビレンツおよびロピナビルからなる群から選択される1種以上の治療薬とを、それらのための薬学上許容される担体とともに含んでなる医薬組成物を特徴とする。本発明は、式(I)の化合物またはその薬学上許容される塩およびアバカビルを、それらのための薬学上許容される担体とともに含んでなる医薬組成物を特徴とする。」

「【0047】
本発明は、上に記載されたような組み合わせ、治療方法および医薬組成物を特徴とし、ここで、式(I)、(II)または(III)の化合物の薬学上許容される塩は、ナトリウム塩である。
【0048】
本発明は、上に記載されたような組み合わせ、治療方法および医薬組成物を特徴とし、ここで、1種以上の治療薬は、前記治療薬の薬学上許容される塩、例えば、アバカビルヘミ硫酸塩、ホサンプレナビルカルシウム、アタザナビル硫酸塩、テノホビルジソプロキシル硫酸塩、ビクリビロクマレイン酸塩またはベビリマットジメグルミンである。
【0049】
本発明は、上に記載されたような治療方法を特徴とし、ここで、被験体は、ヒトである。
【0050】
本発明は、上に記載されたような組み合わせ、治療方法および医薬組成物を特徴とし、ここで、その組み合わせは、連続的に投与される。
【0051】
本発明は、上に記載されたような組み合わせ、治療方法および医薬組成物を特徴とし、ここで、その組み合わせは、同時にまたは共に投与される。
【0052】
式(I)、(II)および(III)の化合物は、WO2006/116764、米国特許出願第61/193,634号(WO2010/068253)または同第61/193,636号(WO2010/068262)(これらは本明細書に参考として援用される)に開示されている方法によって生成され得る。
【0053】
アバカビルは、米国特許第5,034,394号;…または同第6,646,125号に開示されている方法によって生成され得る。
【0054】
ラミブジンは、米国特許第5,047,407号;…または同第6,329,522号に開示されている方法によって生成され得る。
【0055】
テノホビルは、米国特許第5,922,695号;…、同第6,069,249号によって生成され得る。
【0056】
エファビレンツは、米国特許第5,519.021号;…または同第6,939,964号に開示されている方法によって生成され得るによって生成され得る。
【0057】
GSK2248761は、米国特許第7,534,809号に開示されている方法によって生成され得る。
【0058】
レルシビリンは、米国特許第7,109,228号に開示されている方法によって生成され得る。
【0059】
ロピナビルは、米国特許第5,914,332号に開示されている方法によって生成され得る。
【0060】
ホサンプレナビルは、米国特許第6,436,989号;同第6,514,953号;または同第6,281,367号に開示されている方法によって生成され得る。
【0061】
アタザナビルは、米国特許第5,849,911号または同第6,087,383号に開示されている方法によって生成され得る。
【0062】
上記組み合わせの治療薬は、公開されている方法に従って生成されてもよいし、当業者に公知の任意の方法によって生成されてもよい。
【0063】
本発明の一態様において、式(I)、(II)もしくは(III)の化合物またはその薬学上許容される塩は、1種以上の治療薬とともに組成物に製剤化されることがある。その組成物は、医薬組成物であり得、それは、式(I)、(II)または(III)の化合物、1種以上の治療薬、および薬学上許容される担体、佐剤または賦形剤を含んでなる。1つの実施形態において、その組成物は、生物学的サンプルまたは患者におけるウイルス感染、例えば、HIV感染を治療または予防するのに有効な量の本発明の組み合わせを含んでなる。別の実施形態において、本発明の組み合わせ、ならびにウイルスの複製を阻害するのに有効な量またはウイルス感染もしくはウイルス疾患もしくはウイルス障害、例えば、HIV感染を治療もしくは予防するのに有効な量の本発明の組み合わせおよび薬学上許容される担体、佐剤または賦形剤を含んでなるその医薬組成物は、患者への投与用に、例えば、経口投与用に製剤化され得る。
【0064】
本発明は、医学療法における使用のため、例えば、ウイルス感染、例えば、HIV感染および関連する症状の治療または予防のための本発明に係る組み合わせを特徴とする。本発明に係る化合物は、特に、AIDSおよび関連する臨床症状(例えば、エイズ関連症候群(ARC)、進行性全身性リンパ節腫脹(PGL)、カポジ肉腫、血小板減少性(thromobocytopenic)紫斑病、AIDS関連の神経学的症状(例えば、AIDS痴呆複合症、多発性硬化症または熱帯性不全対麻痺(tropical paraperesis))、抗HIV抗体陽性およびHIV陽性状態)(無症候性患者におけるそのような症状を含む)の治療に有用である。」

「【0069】
通常、上述の各症状に適した用量は、1日あたりレシピエント(例えば、ヒト)の体重1キログラムあたり0.01?250mgの範囲、0.1?100mg/キログラム体重/日の範囲;1?30mg/キログラム体重/日の範囲;0.5?20mg/キログラム体重/日の範囲であり得る。別段示されない限り、活性成分の総重量は、式(I)、(II)または(III)の親化合物および他の治療薬として算出される。それらの塩の場合、その重量は、比例して増加されるだろう。所望の用量は、その日のうちに適切な間隔で投与される1、2、3、4、5、6またはそれ以上の分割用量で提供されてもよい。場合によっては、所望の用量は、別の日に投与されてもよい。これらの分割用量は、例えば、単位剤形1つあたり1?2000mg;5?500mg;10?400mg、20?300mgの各活性成分を含む単位剤形として投与され得る。
【0070】
上記組み合わせは、各活性成分のピーク血漿濃度を達成するように投与され得る。
【0071】
活性成分を単独で投与することも可能であるが、医薬組成物として活性成分を提供することが好ましい。本発明の組成物は、上で定義されたような活性成分を、その1種以上の許容される担体および1種以上の追加の治療薬とともに含んでなる。各担体は、その組成物の他の成分と適合性であり、かつ患者にとって有害でないという意味において、許容されなければならない。
【0072】
医薬組成物には、経口、経直腸、経鼻、局所的(経皮的、頬側および舌下を含む)、経膣または非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内および硝子体内を含む)投与に適した医薬組成物が含まれる。その組成物は、単位剤形として都合よく提供され得、薬学分野で周知の任意の方法によって調製され得る。そのような方法は、本発明のさらなる特徴に相当し、活性成分と、1種以上の副成分を構成する担体とを会合させることを含んでなる。一般に、本組成物は、その活性成分と、液体担体もしくは微粉化された固体担体またはその両方とを均一かつ密接に会合させ、次いで必要であれば、その生成物を成形することによって調製される。」

「【実施例】
【0084】
実施例1:生物学的活性
アッセイ
方法
ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV-1)で形質転換された細胞株であるMT-4においてテトラゾリウムベースの比色法を用いて抗ウイルスHIV活性を測定した。試験化合物のアリコートを、培地…の入った深ウェルのマスターアッセイプレートにおいて、最終アッセイ濃度よりも約40倍高い濃度になるように垂直方向に希釈した。段階希釈物を1:2または1:3.16比で作製した。HIV阻害剤を、最終アッセイ濃度よりも約40倍高い濃度になるようにマスターアッセイプレートにおいて水平方向に希釈した。垂直方向に希釈された化合物と水平方向に希釈された化合物の両方の小アリコートを、自動96ウェルピペッティングシステム…を用いて娘プレートにおいて混合した。すべての濃度の試験化合物がすべての濃度のHIV阻害剤の存在下および非存在下において試験されるように、チェッカー盤スタイルで希釈物を配置した。3つ組のアッセイまたはそれ以上の各組み合わせにおいて、抗HIV活性試験を行った。指数関数的に増加しているMT-4細胞を回収し、Jouan遠心機(Model CR412)において1,000rpmで10分間遠心した。細胞ペレットを、1.25×10^(6)細胞/mLの密度に新鮮培地…に再懸濁した。1×10^(4)細胞あたり73pfUというウイルス感染効率(MOI)が得られるように希釈されたHIV-1(IIIB株)を加えることによって細胞アリコートを感染させた。同様の細胞アリコートを培地で希釈することにより、mock感染コントロールを得た。加湿5%CO_(2)雰囲気の組織培養恒温器内の37℃において1時間、細胞感染を進めた。1時間のインキュベーションの後、事前に希釈された化合物を含むプレートの各ウェルにウイルス/細胞懸濁液を加えた。次いで、プレートを加湿5%CO_(2)雰囲気の組織培養恒温器内に5日間置いた。インキュベーション期間の終わりに、インキュベーションプレートの各ウェルに40μLのCellTiter 96 MTS試薬(Promega no.G3581)を加えた。プレートを37℃で2?3時間インキュベートすることにより、発色させた。マイクロプレート吸光度リーダー(Tecan no.20-300)を用いてO.D.を492nMにおいて測定した。
【0085】
使用したウイルス
野生型の実験室株であるHIV-1 IIIB株、ウイルス価=6.896E4 TCID_(50)/mL。
【0086】
データ解析
一部のアッセイ形式は、組み合わせの細胞傷害性に起因して理論上では拮抗作用を捉え損ね得るが、本明細書中に記載されるアプローチは、拮抗作用を捉え損ねないはずである。MT-4細胞アッセイにおける読み出しには、テトラゾリウムベースの染色試薬であるMTSが利用され、ここで、処理後に残存する全細胞数を推定するために、その試薬の光学濃度(O.D.)の変化が用いられる。最終的なMT-4細胞の数は、2つの作用に起因して減少する可能性がある。第1に、HIVが、感染後の5日間で75%超のMT-4細胞を殺滅するときは、HIVによって誘導される細胞傷害性が生じている可能性がある。第2に、感染細胞または非感染細胞のいずれかにおいて5日間にわたって化合物がMT-4細胞を直接殺滅するかまたは細胞増殖を妨げる(静止)場合は、化合物によって誘導される細胞傷害性が生じている可能性がある。これらのいずれかの状況では、そのO.D.は、抗HIV-1化合物によって保護された感染細胞と比べて、または未処置コントロール細胞および非感染コントロール細胞と比べて、低い。抗HIV活性の細胞傷害作用と拮抗作用の両方が、O.D.を低下させ得るので、本発明者らは、組み合わせの細胞傷害性に起因する拮抗作用を捉え損ねないはずであるが、相乗的な組み合わせを過小評価する可能性がある。
【0087】
アッセイにおいて、最高濃度の試験化合物または比較対照化合物を含むアッセイプレートの非感染MT-4細胞を含むウェルと、対応する最高濃度の組み合わせの下のHIV-1感染MT-4細胞を含むウェルとを比較することによって、組み合わせの細胞傷害性を評価した。これらの値の各々については、アッセイプレート1枚あたり1ウェル、ひいては組み合わせアッセイ1つあたり少なくとも3ウェルが存在する。それらは、正式な組み合わせ細胞傷害性解析を構成しないが、組み合わせにおける化合物と単独での化合物との比は、調べられた濃度における化合物の組み合わせの細胞傷害性の尺度を提供する。
【0088】
化合物の組み合わせの各対の相互作用を、Selleseth,D.W.et al.(2003)Antimicrobial Agents and Chemotherapy 47:1468-71に記載された方法によって解析した。相乗作用および拮抗作用は、2つの薬物が同じ薬物であるかのように相互作用するときに生じる用量相加性(dosewise additivity)からの偏差として定義される。-0.1から-0.2の範囲の相加性からの平均偏差に対する値は、弱い相乗作用を示唆し、-0.5にほぼ等しい値は、その相互作用の強い相乗作用を示唆し得る。逆に、0.1から0.2の正の値は、弱い拮抗作用がその処置間に存在することを示唆し得る。
【0089】
結果
式(I)の化合物は、ラルテグラビル、アデホビル(adefovir)およびマラビロックと相加的であると見出され、リバビリンの存在には影響されなかった。式(I)の化合物は、スタブジン、アバカビル、エファビレンツ、ネビラピン、ロピナビル、アンプレナビル、エンフビルチドと相乗的であると見出された。」

第5 判断
1 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、発明の詳細な説明に記載や示唆がなくとも、当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである。
そこで、上記の観点に立って、以下検討する。

2 本願発明の課題
本願明細書の【0001】【0007】及び【0008】の記載によれば、従来、HIV感染の治療において、治療用化合物の組み合わせを投与することによって、抗ウイルス活性の増強、毒性の低下、耐性となるまでの進行の遅延、及び薬効の増大をもたらすことができるが、すべての化合物が、組み合わせでの投与に適しているとは限らず、組み合わされた化合物が拮抗作用を起こす可能性等の問題が挙げられるところ、本願発明は、「HIVインテグラーゼ阻害剤および他の治療薬を含んでなる化合物の組み合わせに関し、HIV感染を治療するための、組み合わせでの使用に適した治療薬および実行可能な医薬組成物を見つけ出すこと」を課題とするものであるといえる。

3 抗HIV薬に関する技術常識
1987年に世界初の抗HIV薬であるジドブジン(AZT)がFDA承認申請されて以降、日進月歩で新たな抗HIV薬が開発され、1996年頃に登場した多剤併用療法によって、HIV感染症は慢性疾患と捉えられるまでになった。
原出願日当時、核酸系逆転写酵素阻害薬、非核酸系逆転写酵素阻害薬、プロテアーゼ阻害薬、インテグラーゼ阻害薬、CCR5阻害薬等の抗HIV薬が知られており、多剤併用の抗HIV療法の効果を最大限に引き出すためには、それぞれの薬剤の作用機序、特性、副作用をよく理解し、相互作用を考慮しつつ、組み合わせて投与することが必要であった。
そして、原出願日当時、ダルナビルとラルテグラビルの組合せが奏功した例など、2剤の組合せが有効であった事例が報告されているものの、2剤の併用療法は一般的とはなっておらず、抗HIV療法の標準治療は、3剤?4剤の多剤併用療法であった。
(技術常識については、「日薬理誌(Folia Pharmacol.Jpn.)」,130,152?156,2007 、「新薬と臨床 J.New Rem.&Clin. 」,Vol.58,No.7, p.135(1259)?138(1262),2009 、「臨床とウイルス」,Vol.38,No.4,p.260?269,2010.10、「HIV感染症とAIDSの治療」,Vol.2,No.1,p.14-17の「はじめに」の項の1?10行,2011年5月〔注:2011年5月は原出願日より後であるが、該当箇所は原出願日当時の当業者の認識を示すものといえる。〕、等参照。)

4 本願発明の課題を解決できると認識できる範囲
(1)本願明細書の発明の詳細な説明には、「本発明は、ヒトにおけるウイルス感染、例えば、HIV感染を治療または予防する方法に関し、その方法は、治療有効量の式(I)、(II)もしくは(III)の化合物またはその薬学上許容される塩を、ヌクレオチド逆転写酵素阻害剤、ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NRTI)、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTI)、プロテアーゼ阻害剤、CCR5アンタゴニスト、CXCR4アンタゴニスト、融合阻害剤、成熟阻害剤およびインテグラーゼ阻害剤からなる群から選択される1種以上の治療薬と併用してヒトに投与することを含んでなる。その組み合わせは、同時に投与されてもよいし、連続的に投与されてもよい。」(【0022】)、「併用療法は、本発明の化合物またはその薬学上許容される塩および別の薬学的に活性な物質の投与を含む。その活性成分および薬学的に活性な物質は、同じもしくは異なる医薬組成物として同時に(すなわち、共に)投与されてもよいし、任意の順序で連続的に投与されてもよい。組み合わされる所望の治療効果を達成するために、その活性成分および薬学的に活性な物質の量、ならびに相対的な投与のタイミングが選択される。」(【0024】)と記載され、式(I)、(II)もしくは(III)の化合物と組み合わせる治療薬の限定されない例として、多数の治療薬が例示されている(【0025】)。
この多数の例示された治療薬のうち、式(I)の化合物と組み合わせて単一の医薬組成物とすることが具体的に記載されているのは、「ラミブジン、アバカビル、テノホビル、エファビレンツ、GSK2248761、レルシビリン、ロピナビル、ホサンプレナビルおよびアタザナビルからなる群から選択される1種以上の治療薬」(【0031】【0032】)のみである。
そして、HIVの治療用化合物の全ての化合物が、組み合わせでの投与に適しているとは限らず、拮抗作用を起こす可能性等があることが指摘された上で(【0007】)、本願明細書の実施例において、相乗作用、相加作用及び拮抗作用を確認するためのMT-4細胞アッセイの結果が記載され、「式(I)の化合物」は、「ラルテグラビル、アデホビル…およびマラビロックと相加的」であり、「スタブジン、アバカビル、エファビレンツ、ネビラピン、ロピナビル、アンプレナビル、エンフビルチドと相乗的」であった(【0089】)と記載されている。

(2)上記3に示したように、原出願日当時、多剤併用の抗HIV療法の効果を最大限に引き出すためには、それぞれの薬剤の作用機序、特性、副作用をよく理解し、相互作用を考慮しつつ、組み合わせて投与することが必要であったという技術常識に照らし、本願明細書の記載(特に、HIVの治療用化合物の全ての化合物が、組み合わせでの投与に適しているとは限らず、拮抗作用を起こす可能性等があるとの記載(【0007】))に接した当業者は、何らの具体的な実験結果の裏付けもなく、【0025】に例示された治療薬の何れもが、式(I)の化合物と組み合わせて単一の医薬組成物として使用し得ると理解するとはいえない。
そうすると、当業者が、本願発明の課題を解決できるものとして認識できるのは、せいぜい、MT-4細胞アッセイの実験結果が示されている、「式(I)の化合物」と「ラルテグラビル、アデホビル、マラビロック、スタブジン、アバカビル、エファビレンツ、ネビラピン、ロピナビル、アンプレナビル又はエンフビルチド」のいずれかを含む医薬組成物にすぎない。

5 本願発明のサポート要件について
本願明細書において、リルピビリンを用いた実験結果は何ら示されていない。また、リルピビリンは、式(I)、(II)もしくは(III)の化合物のいずれかと組み合わせることができる、限定されない多数の例の一つとして【0025】に記載されているだけであり、式(I)の化合物とともに単一の医薬組成物とする具体的な治療薬が記載された【0031】【0032】においても、リルピビリンは取り上げられていないことから、当業者において、本願明細書の記載から式(I)の化合物とリルピビリンとの具体的な組み合わせに着目するといえる根拠すらない。
そして、上記3に示したように、原出願日当時、多剤併用の抗HIV療法の効果を最大限に引き出すためには、それぞれの薬剤の作用機序、特性、副作用をよく理解し、相互作用を考慮しつつ、組み合わせて投与することが必要であったという技術常識に照らし、本願明細書の記載(特に、HIVの治療用化合物の全ての化合物が、組み合わせでの投与に適しているとは限らず、拮抗作用を起こす可能性等があるとの記載(【0007】))に接した当業者は、実験結果も示されておらず、本願明細書の記載から当業者が着目するといえる根拠すらない「式(I)の化合物とリルピビリンとの組み合わせ」を、単一の医薬組成物とした場合に、組み合わせでの使用に適し、実行可能な医薬組成物となることを、当業者において認識することはできないといわざるを得ない。
したがって、「式(I)の化合物とリルピビリンとの組み合わせ」を含む医薬組成物である本願発明は、原出願日当時の技術常識に照らし本願明細書の発明の詳細な説明の記載により、「HIVインテグラーゼ阻害剤および他の治療薬を含んでなる化合物の組み合わせに関し、HIV感染を治療するための、組み合わせでの使用に適した治療薬および実行可能な医薬組成物を見出すこと」という課題を解決できると認識できる範囲のものとはいえない。

2 審判請求人の主張について
(1)審判請求人は、平成28年3月4日提出の上申書及び平成30年4月5日提出の審判請求書において、参考資料1?4を示し、(i)式(I)の化合物(DTG;ドルテグラビル)とリルピビリン(RPV)の2剤の組み合わせは、他の逆転写阻害剤とインテグラーゼ阻害剤の組み合わせと比較して最もよい耐性プロフィールを示し、予想外にも、単剤投与よりも低い濃度でHIV増殖を阻害し、それと同時にNNRTIまたはINSTI耐性の出現を抑制するという点でユニークであること、(ii)本願発明に係る組み合わせは、標準的である3つおよび4つの薬剤の組み合わせと比較して、好ましいまたは少なくとも劣らない結果を示すことが実証されており、本願発明の組み合わせに係る医薬品は米国において既に承認されている旨を主張する。

しかしながら、本願明細書には、本願発明に係る組み合わせが個別に記載されているわけではなく、本願発明についての薬理データが記載されていないことに加え、当業者において、本願発明が、原出願日当時の技術常識に照らし本願明細書に記載された事項から、HIV感染を治療するための組み合わせでの使用に適し、実行可能な医薬組成物であると認識することもできない。
本願明細書における開示が上記の程度のものであるにもかかわらず、本願発明が、HIV感染の治療において組み合わせでの使用に適し、実行可能な医薬組成物であるとの技術思想が、本願発明者の単なる憶測でなかったということを明らかにするために、参考資料1?3の原出願日以降に行われた実験結果や論文を用いることはできない。
また、本願発明の組み合わせに係る医薬品が米国において承認されたことは(参考資料4)、本願発明のサポート要件に関する判断に影響しない。
したがって、審判請求人の上記主張を検討しても、サポート要件に関する判断は上記のとおりであるといわざるを得ない。

(2)審判請求人は、平成31年1月16日付け意見書において、「本願明細書には式(I)の化合物と併用することができる化合物として非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTI)が記載され、さらに非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTI)としてリルピビリンが記載されている(本願明細書段落番号0022及び0025)。当業者であれば本願明細書の記載から本願発明により課題を解決できると認識できるものと信じる。よって、上記拒絶理由は解消したものと信じる。」と主張する。

しかしながら、審判請求人は、本願明細書の【0022】【0025】の記載を指摘するのみで、本願発明により課題を解決できると認識できるものと信じるとする技術的な根拠を、何ら説明していない。
したがって、審判請求人の上記主張は、上記に示した判断を左右するものではない。

第6 むすび
以上のとおり、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-02-27 
結審通知日 2019-03-05 
審決日 2019-03-20 
出願番号 特願2016-15242(P2016-15242)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 馬場 亮人谷合 正光金田 康平  
特許庁審判長 滝口 尚良
特許庁審判官 前田 佳与子
藤原 浩子
発明の名称 抗ウイルス療法  
代理人 特許業務法人平木国際特許事務所  

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