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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G09F |
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管理番号 | 1353826 |
審判番号 | 不服2018-14074 |
総通号数 | 237 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-09-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-10-24 |
確定日 | 2019-08-20 |
事件の表示 | 特願2014- 41472「画像表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年10月16日出願公開、特開2014-197183、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許出願: 平成26年3月4日(優先権主張:平成25年3月6日) 拒絶査定: 平成30年7月17日(送達日:同年7月25日) 拒絶査定不服審判の請求: 平成30年10月24日 手続補正: 平成30年10月24日 (以下、「本件補正」という。) 第2 原査定の理由の概要 原査定の理由の概要は、本件補正前の本願請求項1?5に係る発明は、引用文献1?7に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 <引用文献等一覧> 1.国際公開第2011/078231号 2.特開2006-294448号公報(周知技術を示す文献) 3.特開2013-016314号公報(周知技術を示す文献) 4.国際公開第2012/046702号(周知技術を示す文献) 5.特開2013-029553号公報(周知技術を示す文献) 6.特開2012-003209号公報(周知技術を示す文献) 7.特開2008-274135号公報(周知技術を示す文献) 第3 本願発明 本願の請求項1-5に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 視認側から順に、円偏光板と、透明導電性フィルムと、金属製の反射体を有する表示素子とを備え、 該透明導電性フィルムは、透明基材と、該透明基材の少なくとも片側に配置された透明導電性層とを有し、 該透明導電性層が透明基材上に直接配置され、かつ、該円偏光板が該透明導電性層上に直接配置され、 該透明基材の面内位相差Reが、1nm?100nmであり、 該透明基材の厚み方向の位相差Rthの絶対値が、100nm以下である、 該透明導電性層が金属ナノワイヤまたは金属メッシュを含む、 画像表示装置。 【請求項2】 前記円偏光板が、位相差フィルムと偏光子とを有し、 該偏光子が、視認側となるようにして配置される、 請求項1に記載の画像表示装置。 【請求項3】 前記画像表示装置における円偏光板および透明導電性フィルムの積層部分において、拡散反射率が90%以上低減されている、請求項1または2に記載の画像表示装置。 【請求項4】 前記透明導電性層がパターン化されている、請求項1から3のいずれかに記載の画像表示装置。 【請求項5】 前記金属ナノワイヤが、金、白金、銀および銅からなる群より選ばれた1種以上の金属により構成される、請求項1から4のいずれかに記載の画像表示装置。」(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明5」という。) 第4 当審の判断 1 引用文献の記載事項、引用発明 ア 原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第2011/078231号(以下、「引用文献1」という。)には、「静電容量式タッチセンサ、電子機器及び透明導電膜積層体の製造方法」(発明の名称)に関し、次の事項(a)ないし(d)が図面とともに記載されている。(下線は当審による。以下同様。) (a) 「[0001] 本発明は、静電容量式タッチセンサ及び静電容量式センサを備える電子機器並びに、静電容量式タッチセンサなどで用いられる透明導電膜積層体の製造方法に関する。」 (b) 「[0036] (2-4)透明導電膜層313 透明導電膜層313は、インジウムスズ酸化物、亜鉛酸化物などの金属酸化物や、樹脂バインダーとカーボンナノチューブや金属ナノワイヤなどとからなる層が挙げられ、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、鍍金法、グラビア、スクリーン、オフセットなどの汎用の印刷法、各種コーターによる方法、塗装、ディッピングなどの方法で形成される。透明導電膜層313は、厚さ数十nm程度から数μm程度、光線透過率80%以上、表面抵抗値数mΩから数百Ωの値に設定されることが好ましい。」 (c) 「[0066](1-3)透明導電膜層412及び粘着層413 透明導電膜層412及び粘着層413は、第1実施形態の透明導電膜層313及び粘着層314と同じに形成できるので、説明を省略する。 (1-4)光学等方性シート414 光学等方性シート414は、波長550nmにおける面内方向リタデーション値が20nm以下の透明なプラスチックフィルムで構成されている。この光学等方性シート414の厚みは、30?2000μm程度が好ましい。面内方向リタデーション値を20nm以下にできる光学等方性シート414の材料としては、ポリカーボネート系樹脂、ポリアリレート系樹脂、セルロース系樹脂、ノルボルネン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂などのプラスチックフィルムが挙げられる。なかでも、ポリカーボネート系樹脂を用いたプラスチックフィルムは、製膜条件を好適にすることで上記面内方向リタデーション値を5nm以下にすることが可能であるため特に好ましい。」 (d) 「[0092] <第3実施形態> 本発明の第3実施形態に係る静電容量式タッチセンサについて図17を用いて説明する。図17は携帯電話機10Aの部分断面図である。図17において、図2と同じ符号を付したものは図2と同じものであるので説明を省略する。 [0093] (1)概要 図17の携帯電話機10Aが図2の携帯電話機10と異なる点は、液晶ディスプレイ装置20の上に配置されている位相差フィルム22と、静電容量式タッチセンサ50の構成である。静電容量式タッチセンサ50は、図17に示す透明導電膜積層体51及び他の部材52と、図示を省略しているFPCから構成されている。他の部材51は例えばガラス基材であり、FPCは図1に示したFPC30cと同様に透明導電膜積層体51の透明導電膜層412に接続されている。 [0094] (2)透明導電膜積層体51 (2-1)構成の概要 透明導電膜積層体51は、基体シート411と透明導電膜層412と粘着層413と光学等方性シート414と偏光フィルム511と位相差フィルム512とを備えている。透明導電膜積層体51は、偏光フィルム511及び位相差フィルム512を除く構成が図16に示す透明導電膜積層体41Cと同じである。そのため、ここでは偏光フィルム511及び位相差フィルム512について説明し、基体シート411と透明導電膜層412と粘着層413と光学等方性シート414については説明を省略する。 [0095] 位相差フィルム512は、第2の粘着層413の上に積層され、その位相差フィルム512の上に偏光フィルム511が積層されている。偏光フィルム511の上には、ガラス基材などからなる他の部材52が積層されている。 [0096] (2-2)偏光フィルム511 偏光フィルム511は、入射する光を直線偏光に変換する。偏光フィルム511は、例えば、染色されたポリビニルアルコール(PVA)とそれを両側から支える支持体としてのトリアセチルセルロース(TAC)から構成される三層構造を有するものである。偏光フィルム511は、光学特性として、単体透過率40%以上、偏光度99%以上のものを使用することが好ましい。 [0097] (2-3)位相差フィルム512 位相差フィルム512は、偏光フィルム511よりも光学等方性シート414側に設けられ、直線偏光された光を円偏光に変換する。位相差フィルム512は、人間の視感度が最も高い550nmの波長の1/4の長さに当たる137nm程度の位相差値を有するものであることが好ましい。位相差フィルム512は、例えば、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリアリレート樹脂(PAR)、ノルボルネン系樹脂のフィルムを予め設定された延伸条件で製膜して所望の位相差値を得たものである。ノルボルネン系樹脂のフィルムとしては、株式会社JSR製の ARTON(登録商標)や日本ゼオン株式会社製のZEONOR(登録商標)等のフィルムが挙げられる。」 (e)引用文献1には以下の図が示されている。 また、上記記載事項及び図示内容によれば、以下の事項が認められる。 (f) 「視認側から順に、偏光フィルム511と、位相差フィルム512と、透明導電膜層412と粘着層413からなる層と、光学等方性シート414と、液晶ディスプレイ装置20とを備えていること」 (g) 「透明導電膜層412と粘着層413からなる層が、光学等方性シート414の少なくとも片側に配置されていること」 (h) 「透明導電膜層412と粘着層413からなる層が光学等方性シート414上に直接配置され、かつ、偏光フィルム511と位相差フィルム512が透明導電膜層412と粘着層413からなる層上に直接配置されていること」 上記(a)?(d)、(f)?(h)の事項から、引用文献1には、 「視認側から順に、偏光フィルム511と、位相差フィルム512と、透明導電膜層412と粘着層413からなる層と、光学等方性シート414と、液晶ディスプレイ装置20とを備え([0093]-[0095]、図17参照。)、 透明導電膜層412と粘着層413からなる層が、光学等方性シート414の少なくとも片側に配置され([0094]、図17参照。)、 透明導電膜層412と粘着層413からなる層が光学等方性シート414上に直接配置され、かつ、偏光フィルム511と位相差フィルム512が透明導電膜層412と粘着層413からなる層上に直接配置され([0094]、[0095]、図17参照。)、 該光学等方性シート414の面内位相リタデーション値が、20nm以下であり([0066]参照。)、 該透明導電膜層412が金属ナノワイヤを含む([0036]、[0066]参照。)、 携帯電話機10A([0093]参照。)。」 の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。 イ 原査定の拒絶の理由に引用された特開2006-294448号公報(以下、「引用文献2」という。)の【0016】-【0021】、第1図には、携帯電話機に用いられる表示装置として、金属製の反射体(光反射性の金属膜からなる陰極21)を有する表示素子を用いる周知技術が記載されていると認められる。 ウ 原査定の拒絶の理由に引用された特開2013-016314号公報(以下、「引用文献3」という。)の【0019】、【0020】、国際公開第2012/046702号(以下、「引用文献4」という。)の【0054】、【0057】、【0092】、【0095】には、ナノワイヤが、金、銀および銅などにより構成される周知技術が記載されていると認められる。 エ 原査定の拒絶の理由に引用された特開2013-029553号公報(以下、「引用文献5」という。)の【0166】、【0214】、特開2012-003209号公報(以下、「引用文献6」という。)の【0181】、特開2008-274135号公報(以下、「引用文献7」という。)の【0110】には、シクロオレフィン系樹脂フィルムの厚み方向の位相差Rthも100nm以下の小さいものであるという周知技術が記載されていると認められる。 2 対比 本願発明1と引用発明1とを対比する。 引用発明1における「偏光フィルム511と位相差フィルム512」、「光学等方性シート414」、「透明導電膜層412と粘着層413からなる層」、「携帯電話機10A」は、それぞれ、本願発明1における「円偏光板」、「透明基材」、「透明導電性層」、「画像表示装置」に相当する。 引用発明1における「液晶ディスプレイ装置20」は「表示素子」を有するものである。 引用発明1における「透明導電膜層412と粘着層413からなる層」及び「光学等方性シート414」と、本願発明1の「透明導電性フィルム」とは、透明導電性部材である点で共通する。また、引用発明1における、「透明導電膜層412と粘着層413からなる層が、光学等方性シート414の少なくとも片側に配置され」ていることと、本願発明1における、「該透明導電性フィルムは、透明基材と、該透明基材の少なくとも片側に配置された透明導電性層とを有」することとは、「透明導電性部材は、透明基材と、該透明基材の少なくとも片側に配置された透明導電性層とを有」する点で共通する。 引用発明1における、「視認側から順に、偏光フィルム511と、位相差フィルム512と、透明導電膜層412と粘着層413からなる層と、光学等方性シート414と、液晶ディスプレイ装置20とを備え」ることと、本願発明1における、「視認側から順に、円偏光板と、透明導電性フィルムと、金属製の反射体を有する表示素子とを備え」ることは、「視認側から順に、円偏光板と、透明導電性部材と、表示素子とを備え」る点で共通する。 引用発明1における、「透明導電膜層412と粘着層413からなる層が光学等方性シート414上に直接配置され、かつ、偏光フィルム511と位相差フィルム512が透明導電膜層412と粘着層413からなる層上に直接配置され」ていることは、本願発明1における、「該透明導電性層が透明基材上に直接配置され、かつ、該円偏光板が該透明導電性層上に直接配置され」ることに相当する。 引用発明1における、「該光学等方性シート414の面内位相リタデーション値が、20nm以下であ」ることと、本願発明1における、「該透明基材の面内位相差Reが、1nm?100nmであ」ることは、「該透明基材の面内位相差Reが、100nm以下であ」る点で共通する。 引用発明1における、「該透明導電膜層412が金属ナノワイヤを含む」ことが、本願発明1における、「該透明導電性層が金属ナノワイヤを含む」ことに相当する。 してみると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。 (一致点) 「視認側から順に、円偏光板と、透明導電性部材と、表示素子とを備え、 該透明導電性部材は、透明基材と、該透明基材の少なくとも片側に配置された透明導電性層とを有し、 該透明導電性層が透明基材上に直接配置され、かつ、該円偏光板が該透明導電性層上に直接配置され、 該透明基材の面内位相差Reが、100nm以下であり、 該透明導電性層が金属ナノワイヤを含む、 画像表示装置。」 (相違点) (相違点1)本願発明1は、「透明基材と、該透明基材の少なくとも片側に配置された透明導電性層とを有」する「透明導電性フィルム」という構成を備えるのに対し、引用発明1の「透明導電膜層412と粘着層413からなる層」及び「光学等方性シート414」は、本願発明1のごとく「フィルム」として構成されていない点。 (相違点2)本願発明1は、「金属製の反射体を有する表示素子」を備えるのに対し、引用発明1は、「金属製の反射体を有する表示素子」という構成を備えていない点。 (相違点3)本願発明1は、「該透明基材の面内位相差Reが、1nm?100nmであ」る構成を備えているのに対し、引用発明1は、「該光学等方性シート414の面内位相リタデーション値が、20nm以下であ」る構成を備えているものの、「透明基材の面内位相差Re」が「1nm」以上であるという範囲に限定されていない点。 (相違点4)本願発明1は、「該透明基材の厚み方向の位相差Rthの絶対値が、100nm以下である」構成を備えるのに対し、引用発明1は本願発明1の該構成を備えていない点。 3 判断 事案に鑑みて、上記相違点2について先に検討する。 上記「1 引用文献の記載事項、引用発明」の「イ」に示したように、「金属製の反射体を有する表示素子」という構成は、周知技術であるが、本願発明1は、引用文献1-7に記載されていない、「視認側から順に、円偏光板と、透明導電性フィルムと、金属製の反射体を有する表示素子とを備え」るとともに、「該透明導電性層が金属ナノワイヤまたは金属メッシュを含む」という構成を備えており、本願発明1は、該構成を備えることにより、1つの円偏光板を、金属ナノワイヤまたは金属メッシュを含む透明導電性フィルム、及び、金属製の反射体を有する表示素子よりも視認側に配置することにより、金属ナノワイヤまたは金属メッシュと表示素子の反射体の両者からの反射光が低減されるという格別の効果を奏するもの(本願明細書の段落【0014】参照)と認められる。 したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明1及び引用文献2-7に記載された周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 また、本願発明1を直接又は間接的に引用する本願発明2-5も、相違点2に係る本願発明1の構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1及び引用文献2-7に記載された周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 第5 原査定について ・理由(特許法第29条第2項)について 本願発明1-5は、「視認側から順に、円偏光板と、透明導電性フィルムと、金属製の反射体を有する表示素子とを備え」ており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-7に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。 第6 むすび 以上のとおり、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2019-07-26 |
出願番号 | 特願2014-41472(P2014-41472) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G09F)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 小林 謙仁、後藤 亮治 |
特許庁審判長 |
中塚 直樹 |
特許庁審判官 |
梶田 真也 濱野 隆 |
発明の名称 | 画像表示装置 |
代理人 | 籾井 孝文 |