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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61B
管理番号 1353827
審判番号 不服2018-6201  
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-05-07 
確定日 2019-08-20 
事件の表示 特願2015-524500「脈管を閉鎖する装置および方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 1月30日国際公開、WO2014/018954、平成27年 8月24日国内公表、特表2015-524307、請求項の数(34)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)7月27日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2012年(平成24年)7月27日、米国(US))を国際出願日とする特許出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
平成29年 4月18日付け:拒絶理由通知書
平成29年 7月13日 :意見書・手続補正書の提出
平成29年12月26日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
平成30年 5月 7日 :審判請求書の提出


第2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願の請求項1、3及び4に係る発明は、以下の引用文献2及び3に記載の発明に基いて、請求項2に係る発明は、以下の引用文献2ないし4に記載の発明に基いて、請求項32ないし34に係る発明は、以下の引用文献2、3及び5に記載の発明及び引用文献6に記載の周知の技術に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献2 特表2008-513052号公報
引用文献3 特表2011-520570号公報
引用文献4 特開2010-81970号公報
引用文献5 特開2010-178897号公報
引用文献6 登録実用新案第3127252号公報(周知の技術を示す文献)


第3 本願発明
本願の請求項1ないし34に係る発明(以下「本願発明1」ないし「本願発明34」という。)は、平成29年7月13日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし34に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
患者の体内の管状構造を閉鎖するための装置であって、前記装置が、
ハブを含む基端と、鋭利な遠位チップを含む先端と、前記先端から近位方向に延在し、前記基端と前記先端との間で長手方向軸を画定する、楕円形または長方形の断面を有するルーメンと、を備える管状部材と、
クリップであって、前記クリップが、前記クリップの複数のタインが患者の体内の管状構造に係合して前記管状構造を閉鎖するような形状をとる緩和状態と、前記タインが、前記クリップを前記長手方向軸の周囲で前記ルーメン内に所定の方向に装着させるように圧迫される緊張状態と、の間で圧迫可能である、クリップと、
前記クリップを前記管状部材の遠位チップから展開し、それにより、前記タインが、前記管状部材が誘導される管状構造に係合して前記管状構造を閉鎖するための、前記ルーメン内での進行のためのサイズをとる基端および先端を備えるプッシャー部材と、
を備え、
前記複数のタインが、前記クリップの中央領域の第一の端部から延在する一対の遠位タインと、前記中央領域の第二の端部から延在する一対の近位タインと、を備え、前記遠位タインが前記近位タインよりも短く、前記近位タインが前記中央領域から延在し、それにより、前記近位タインが、前記緩和状態で平面内にて前記中央領域および前記遠位タインを少なくとも部分的に包囲する、装置。
【請求項2】
前記ルーメン内における前記クリップの方向の視覚的表示を提供するための、前記ハブ上の1つ以上の特色を更に備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記タインが、前記緊張状態では一緒に圧迫されてルーメン内に配設されており、前記プッシャー部材が、前記管状部材に対して第一の位置から第二の位置まで移動可能であり、前記遠位タインが、前記ルーメンから前記遠位チップを越えて展開され、前記遠位タインが、前記緩和状態に向かって弾性回復して、前記管状部材の先端が誘導される管状構造に少なくとも部分的に係合する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記管状部材が、前記クリップ全体を前記ルーメンから前記遠位チップを越えて展開するように、前記プッシャー部材に対して前記第二の位置から第三の位置まで軸方向に移動可能であり、前記近位タインが、前記緩和状態に向かって弾性回復して、前記管状構造に更に係合して前記管状構造を閉鎖する、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記近位タインが、前記中央領域の第二の端部から前記緩和状態で前記中央領域の第一の端部に向かって戻るように外側に湾曲し、それにより、前記管状部材が前記第三の位置まで移動されるときに、前記近位タインは周囲に拡張して前記管状構造に係合する、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記遠位タイン、前記近位タイン、および前記クリップの中央領域が、前記緩和状態で前記平面内に存在する、請求項1?5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記近位タインが、前記近位タインが前記緊張状態で前記中央領域と軸方向に心合わせされるように真っ直ぐになる、請求項1?5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記第一の位置と前記第二の位置との間の、前記管状部材に対する前記プッシャー部材の移動を制限するように、前記プッシャー部材と前記ハブとの間に連結されたストップを更に備える、請求項4に記載の装置。
【請求項9】
前記ストップが、前記第二の位置から前記第三の位置までの、前記プッシャー部材に対する前記管状部材の移動を可能にするように、前記プッシャー部材および前記ハブのうちの少なくとも一方から着脱自在である、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記クリップが、前記緩和状態に偏っており、前記緊張状態に弾性変形可能である、請求項1?5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記クリップが、前記中央領域の先端に隣接する鳩目を更に備える、請求項1?5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記鳩目を通して誘導され、前記管状部材のルーメン内にバックロードされるフィラメントを更に備える、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記クリップが鳩目を更に備え、前記装置が、前記鳩目を通して誘導され、前記管状部材のルーメン内にバックロードされるフィラメントを更に備える、請求項1?5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
患者の体内の管状構造を閉鎖するための装置であって、前記装置が、
管状部材であって、前記管状部材が、ハブを含む基端と、前記管状部材が患者の体内の管状構造に入り、そして前記管状構造内を通して誘導され得るように鋭利な遠位チップを含む先端と、前記基端と前記先端との間に延在し、前記基端と前記先端との間で長手方向軸を画定するルーメンと、を備える、管状部材と、
一対の近位タインおよび一対の遠位タインを備えるクリップであって、前記クリップが、前記タインが患者の体内の管状構造に係合して前記管状構造を閉鎖するような形状をとる緩和状態と、前記タインが、前記クリップを前記長手方向軸の周囲で前記ルーメン内に所定の方向に装着させるように圧迫される緊張状態と、の間で圧迫可能である、クリップと、
前記遠位タインが最初に展開されて管状構造に部分的に係合し、前記近位タインが引き続き展開されて前記管状構造に更に係合し、前記クリップが前記緩和状態に向かって弾性回復し、続いて前記管状部材が誘導される前記管状構造を閉鎖するように、前記クリップを前記管状部材の遠位チップから展開するために前記ルーメン内での進行のためのサイズをとる基端および先端を備えるプッシャー部材と、
を備え、
前記遠位タインが前記近位タインよりも短く、前記近位タインが、前記緩和状態で平面内にて前記遠位タインを少なくとも部分的に包囲する、装置。
【請求項15】
前記プッシャー部材が、前記管状部材に対して第一の位置から第二の位置まで移動可能であり、前記遠位タインが、前記ルーメンから前記遠位チップを越えて展開され、前記遠位タインが、前記緩和状態に向かって弾性回復して、前記管状部材の先端が誘導される管状構造に少なくとも部分的に係合し、
前記管状部材が、前記クリップ全体を前記ルーメンから前記遠位チップを越えて展開するように、前記プッシャー部材に対して前記第二の位置から第三の位置まで軸方向に移動可能であり、前記近位タインが、前記緩和状態に向かって弾性回復して、前記管状構造に更に係合して前記管状構造を閉鎖する、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記近位タインが前記緩和状態で外側に湾曲し、それにより、前記管状部材が前記第三の位置まで移動されるときに、前記近位タインは周囲に拡張して前記管状構造に係合する、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記一対の遠位タインが前記クリップの中央領域の第一の端部から延在し、前記一対の近位タインが前記中央領域の第二の端部から延在する、請求項14に記載の装置。
【請求項18】
前記第一の位置と前記第二の位置との間の、前記管状部材に対する前記プッシャー部材の移動を制限するように、前記プッシャー部材と前記ハブとの間に連結されたストップを更に備える、請求項15に記載の装置。
【請求項19】
前記ストップが、前記第二の位置から前記第三の位置までの、前記プッシャー部材に対する前記管状部材の移動を可能にするように、前記プッシャー部材および前記ハブのうちの少なくとも一方から着脱自在である、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記近位タインが、前記中央領域の第二の端部から前記緩和状態で前記中央領域の第一の端部に向かって戻るように外側に湾曲する、請求項18に記載の装置。
【請求項21】
前記クリップが、前記緩和状態に偏っており、前記緊張状態に弾性変形可能である、請求項14?17のいずれか1項に記載の装置。
【請求項22】
患者の体内の管状構造を閉鎖するための装置であって、
ハブを含む基端と、鋭利な遠位チップを含む先端と、前記基端と前記先端との間に延在し、前記基端と前記先端との間で長手方向軸を画定するルーメンと、を備える管状部材と、
クリップであって、前記クリップが、前記クリップの中央領域の第一の端部から延在する一対の遠位タインと、前記中央領域の第二の端部から延在する一対の近位タインと、を備え、前記クリップが、前記管状部材のルーメン内に装着するために緩和状態から緊張状態にまで圧迫可能であり、前記遠位タインが前記近位タインよりも短く、前記遠位タインが前記緩和状態でフックの形状を画定し、前記近位タインが平面内にて前記中央領域および前記遠位タインを少なくとも部分的に包囲する曲線形状を画定し、前記遠位タインおよび前記近位タインが、前記管状部材の前記ルーメン内に装着されるために前記緊張状態で直線構成にまで圧迫される、クリップと、
前記クリップを前記管状部材の遠位チップから展開するために、前記ルーメン内に基端および先端を備えるプッシャー部材と、
を備える、装置。
【請求項23】
前記遠位タイン、前記近位タイン、および前記クリップの中央領域が、前記緩和状態で前記平面内に存在する、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記遠位タインおよび前記近位タインが、前記タインが前記緊張状態にまで圧迫されるときに前記平面内に留まる、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記近位タインが、前記近位タインが前記緊張状態で前記中央領域と軸方向に心合わせされるように真っ直ぐになる、請求項22に記載の装置。
【請求項26】
前記遠位タインが、前記遠位タインが前記緊張状態で前記中央領域と軸方向に心合わせされるように真っ直ぐになる、請求項24に記載の装置。
【請求項27】
前記近位タインが、前記中央領域の第二の端部から前記緩和状態で前記中央領域の第一の端部に向かって戻るように外側に湾曲する、請求項22に記載の装置。
【請求項28】
前記クリップが、前記緩和状態に偏っており、前記緊張状態に弾性変形可能である、請求項22に記載の装置。
【請求項29】
前記クリップが、前記中央領域の先端に隣接する鳩目を更に備える、請求項22に記載の装置。
【請求項30】
前記鳩目を通して誘導され、前記管状部材のルーメン内にバックロードされるフィラメントを更に備える、請求項29に記載の装置。
【請求項31】
前記クリップが鳩目を更に備え、前記装置が、前記鳩目を通して誘導され、前記管状部材のルーメン内にバックロードされるフィラメントを更に備える、請求項22に記載の装置。
【請求項32】
患者の体内の管状構造を閉鎖するためのシステムであって、
閉鎖のために管状構造を識別する患者の身体に接する配置のための撮像プローブと、
請求項1?31のいずれか1項に記載の装置と、
を備える、システム。
【請求項33】
前記撮像プローブが超音波プローブを備える、請求項32に記載のシステム。
【請求項34】
前記プローブに取り付けられ、前記管状構造を通じる前記患者の体内への前記装置の制御された挿入を可能にするよう構成されたニードルガイドを更に備える、請求項32または33に記載のシステム。」


第4 引用文献及び引用発明
1 引用文献3
(1)引用文献3の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特表2011-520570号公報には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【0003】
しかしながら、場合によっては、卵円孔が完全に閉鎖できない。PFOとして知られている、この状態により、個人の成人期の全体を通して、血液が心臓の左心房と右心房との間で分流し続け得る。PFOは、概して、一次中隔および二次中隔といった心房組織の2つの皮弁の間に位置する、開口部として本明細書で規定される。」
イ 「【0008】
使用される閉鎖技法にかかわらず、心臓の中隔欠損の閉鎖のために、埋込型デバイス、およびそれらの送達のためのシステムおよび方法の必要性が存在する。」
ウ 「【0020】
ここで例示的実施形態を参照すると、図2Aは、埋込型PFOデバイス103の例示的実施形態を描写する側面図である。図2Bは、上面図であり、図2Cは、この例示的実施形態の斜視図である。インプラント103は、好ましくは、図2Eで描写されるように、二次中隔210および一次中隔214の両方を通した経中隔埋込を介して、天然PFOトンネルを閉鎖するように構成される。インプラント103は、クリップ状方式で構成され、この論議を容易にするために、本明細書では、クリップ103と呼ばれる。
【0021】
クリップ103は、好ましくは、左心房(LA)アンカ部分303と、右心房(RA)アンカ部分304と、中間にある、好ましくは中央に位置する部分305とを含む。ここで、クリップ103は、連結デバイス302によって一緒に連結された、2つの変形可能なワイヤ状部材301-1および301-2を含む。本明細書で使用される参照スキームに関して、概して、要素の特定のもの(例えば、ワイヤ301-1および301-2)は、ナンバーが要素の特定のもの(例えば、1、2、3・・・N)である、付属物-ナンバーを使用して参照される。要素を一般的に参照する時は、付属物-ナンバーは省略される。連結デバイス302は、好ましくは、ワイヤ301-1および301-2を一緒に担持し、相互ならびに連結デバイス302に対して、それらの位置を維持するように構成される。各ワイヤ301の端部分は、それぞれ、LA部材およびRA部材と呼ばれる、中隔アンカ306および307を形成するように、偏向可能である。対向する端部分の間の各ワイヤ301の中間部分は、概して細長く、直線である。
【0022】
図2A-Cでは、クリップ103は、例示的静止状態で描写されている。クリップ103が送達デバイス、例えば、中空針および/またはカテーテル内に収納されることを可能にするために、クリップ103は、好ましくは、図2Dの側面図で描写されるように、比較的直線である、または細長い構成(または状態)に偏向可能である。クリップ103は、好ましくは、細長い構成から、図2A-Cで描写された静止構成に向かって移行するように付勢されるが、中隔組織の存在が、クリップ103が静止状態に完全に移行するのを妨げ得る。例えば、PFOを有する隔壁内に埋め込まれたクリップ103を描写する部分断面図である、図2Eで描写されるように、中隔組織は、静止状態と細長い状態との間の中間構成でクリップ103を担持する。クリップ103が静止状態に移行するように付勢されるため、LA/RA部材306/307は、中隔組織に力を及ぼし続け、それは、その間の組織を圧迫し、クリップ103を隔壁207内の定位置で維持するのに役立つとともに、天然PFOトンネル215を閉鎖状態で維持するのに役立つ。」
エ 「【0023】
図2Eでは、好ましくは、クリップ103が収納され、そこからクリップ103が送達される針によって作成される、穿刺206内にクリップ103が存在する。そのうちのいくつかが軸外位置に進入するように構成される、中隔欠損を治療するための例示的システムおよび方法、ならびに、本明細書で記載されるデバイス、システム、および方法と併せて使用することができる、押込器、本体部材、および近位コントローラ等の、治療を容易にするための支援デバイスおよび方法は、それらの各々の全体が本明細書に参考として明示的に援用される、以下の米国特許出願公開、(1)「Systems and Methods for Treating Septal Defects」と題された第2006/0052821号、(2)「Clip-Based Systems and Methods for Treating Septal Defects」と題された第2007/0129755号、(3)「Systems And Methods For Treating Septal Defects」と題された第2007/0112358号、(4)2007年5月4日出願の「Systems And Methods For Treating Septal Defects」と題された第2008/0015633号、および(5)2007年11月7日出願の「Systems, Devices and Methods for Achieving Transverse Orientation in the Treatment of Septal Defects」と題された第60/986229号で説明されている。しかしながら、クリップ103は、いずれか1つの具体的な埋込方法に縛られず、任意の所望のPFO閉鎖技法とともに、または任意の所望のPFO閉鎖送達システムとともに使用できることに留意されたい。
【0024】
図2Eで描写されるように、隔壁に埋め込まれると、LA部分303は、好ましくは、左心房212の中に位置し、RA部分304は、好ましくは、右心房205の中に位置する。LA部材306は、好ましくは、中隔組織の比較的広い領域に閉鎖力を印加するように、RA部材307より比較的長い。LA部材306およびRA部材307のそれぞれの長さは、同じとなり得るか、または変動し得ることに留意されたい。所望であれば、RA部材307は、LA部材306より比較的長くなり得て、および/または、各LA部材306(またはRA部材307)は、異なる長さを有することができる、等である。
【0025】
この実施形態では、LA/RA部材306/307の数は、使用されるワイヤ301の数に応じて変動させることができる。1つだけのLA部材306およびRA部材307が所望される場合には、1つだけのワイヤ301を使用することができる。そのような実施形態では、連結デバイス302を省略することができる。LA/RA部材306/307の数は、追加部材を各ワイヤ301に連結することによって、または各ワイヤ301をさらに分割することによって変動できることに留意されたい。複数のワイヤ301が使用される場合、これらのワイヤ301の断面外形は、デバイスの中心軸に沿って間隙が存在しないように、相互を補完するように構成することができる。以下でより詳細に論議されるように、2つのワイヤ301は、好ましくは、「D」字形断面を有する。3つ以上のワイヤ301が使用される場合、各ワイヤの断面外形は、ほぼ円形の扇形(すなわち、パイスライス形状)を有することができる。LA/RA部材306/307は、援用された’358公報で説明されているものを含む、多数の異なる方法で、相互に対して構成、配設、および配向することができる。
【0026】
図2A-Bを再び参照すると、LA部材306はそれぞれ、長手方向軸318および先端314を有する。RA部材307も、長手方向軸319および先端315を有することができる。先端314および315は、好ましくは、非外傷性で実質的に鈍く構成される。RA部材307はまた、各先端315付近で端部分上に位置する、頸部領域317も含む。頸部領域317の使用および機能を、以下でさらに詳細に説明する。
【0027】
クリップ103は、長手方向軸308を有し、長手方向軸308からのLA部材306およびRA部材307の偏向度は、それぞれ、LA偏向322およびRA偏向323と呼ばれる。ここで示されるように、LA偏向322およびRA偏向323は、両方とも90度を超える。実装される実際のLA偏向322は、少なくとも2つの要因に依存し得る。より大きい偏向は、通常は、より大きい圧縮力を印加する能力をもたらすが、同時に、力が、配備中にクリップを回転させるか、または遠位方向へ極端に移動させる可能性があり、それはRA部材307の適正な配置を妨害し得る。例えば、RA部材307が配備される前に、LA部材306の配備がクリップ103を過度に遠位に移動させる場合には、RA部材307を実際の組織穿刺に引き込み、部分的にその内側で捕らえて、所望量の偏向を防ぐことができる。好ましくは、LA偏向322およびRA偏向323は、両方とも、90度から135度の間であり、最も好ましくは、95度から100度の間である。」
オ 「【0087】
ここでクリップ103の送達を参照すると、図13A-Cは、クリップ103の血管内送達のために構成された送達システム100の複数部分の例示的実施形態を描写する。図13Aは、中隔組織を穿刺するように構成される、実質的に鋭い開放遠位端371と、クリップ103および押込器373を収納するように構成される内部管腔372とを有する、針状部材370の部分断面図である。RA部材307-1およびRA部材307-2(図示せず)の一方または両方の近位端はそれぞれ、RA部材307-1の近位端より遠位に位置する、比較的狭い頸部領域317-1を含むことができる。頸部領域317は、押込器373とのクリップ103の係合を可能にするように構成される。押込器373は、この実施形態では、頸部317-1を含むRA部材307-1の近位部分を補完して構成される、陥凹375-1および375-2(図示せず)を有する、比較的幅が広い遠位部分374を含む。
【0088】
押込器373の遠位部分374は、好ましくは、密接した嵌合が得られ、針壁が押込器373の対応する陥凹375内で各RA部材307を維持するように、針370の内径よりも比較的小さい幅を有する。この構成は、押込器373が、確実にクリップ103に係合し、所望に応じて、クリップ103の前進および後退を行うことを可能にする。
【0089】
図13B-Cは、それぞれ、RA部材307を伴う、およびRA部材307を伴わない、押込器373の遠位部分を両方ともより詳細に描写する斜視図である。本明細書の説明に基づいて、当業者であれば、押込器373がクリップ103を前進および後退させることを可能にする、RA部材307および陥凹375の多くの種々の構成を容易に認識するであろう。」
カ 「【0096】
本明細書で説明されるデバイス、システム、および方法は、種々の疾患状態を治療するために、身体の任意の部分で使用されてもよい。特に関心となるのは、心臓および血管(動脈および静脈)、肺および気道、消化器官(食道、胃、腸、胆道系等)を含むがそれらに限定されない、中空臓器内での適用である。デバイスおよび方法はまた、膀胱、尿道、および他の領域等の領域中の尿生殖路内での使用も見出す。」
キ 図13Aには、針状部材370において、開放遠位端371を含む遠位端を備えている点、内部管腔372が遠位端から近位方向に延び、遠位端から近位方向に向かって長手方向軸を画定する点、クリップ103が針状部材370に収納されている点、及び、押込器373が遠位部分374を備えている点が、それぞれ図示されている。
ク 図2Aないし図2Fには、一対の遠位側のLA部材306が中央に位置する部分305の左心房(LA)アンカ部分303から延びる点、及び、一対の近位側のRA部材307が中央に位置する部分305の右心房(RA)アンカ部分304から延びる点、長手方向軸308からのLA部材306及びRA部材307はそれぞれ偏向しており、中央に位置する部分305、LA部材307、RA部材307とが同じ平面内にない点が、それぞれ図示されている。

(2)引用文献3の記載から認定できること
上記(1)の記載事項及び図示事項から、次のことが把握できる。(下線は、当審が付与。以下同様。)
ア 上記(1)アの【0020】の「インプラント103は、好ましくは、図2Eで描写されるように、二次中隔210および一次中隔214の両方を通した経中隔埋込を介して、天然PFOトンネルを閉鎖するように構成される。インプラント103は、クリップ状方式で構成され、この論議を容易にするために、本明細書では、クリップ103と呼ばれる。」という記載、上記(1)ウの【0087】の「ここでクリップ103の送達を参照すると、図13A-Cは、クリップ103の血管内送達のために構成された送達システム100の複数部分の例示的実施形態を描写する。」という記載から、送達システム100は、心臓の中隔欠損(PFO)を閉鎖するためのクリップ送達システムであるといえる。
イ 上記(1)ウの【0087】の「図13Aは、中隔組織を穿刺するように構成される、実質的に鋭い開放遠位端371と、クリップ103および押込器373を収納するように構成される内部管腔372とを有する、針状部材370の部分断面図である。」という記載、及び、上記(1)クの図示事項とを併せて踏まえれば、針状部材370は、実質的に鋭い開放遠位端371を含む遠位端と、前記遠位端から近位方向に延び、長手方向軸を画定する内部管腔372と、を備えるものであるといえる。
ウ 上記(1)アの【0021】の「クリップ103は、好ましくは、左心房(LA)アンカ部分303と、右心房(RA)アンカ部分304と、中間にある、好ましくは中央に位置する部分305とを含む。ここで、クリップ103は、連結デバイス302によって一緒に連結された、2つの変形可能なワイヤ状部材301-1および301-2を含む。」という記載及び【0022】の「クリップ103が送達デバイス、例えば、中空針および/またはカテーテル内に収納されることを可能にするために、クリップ103は、好ましくは、図2Dの側面図で描写されるように、比較的直線である、または細長い構成(または状態)に偏向可能である。クリップ103は、好ましくは、細長い構成から、図2A-Cで描写された静止構成に向かって移行するように付勢されるが、中隔組織の存在が、クリップ103が静止状態に完全に移行するのを妨げ得る。例えば、PFOを有する隔壁内に埋め込まれたクリップ103を描写する部分断面図である、図2Eで描写されるように、中隔組織は、静止状態と細長い状態との間の中間構成でクリップ103を担持する。クリップ103が静止状態に移行するように付勢されるため、LA/RA部材306/307は、中隔組織に力を及ぼし続け、それは、その間の組織を圧迫し、クリップ103を隔壁207内の定位置で維持するのに役立つとともに、天然PFOトンネル215を閉鎖状態で維持するのに役立つ。」という記載から、クリップ103は、複数のワイヤ状部材301を有しており、これらのワイヤ状部材が、中隔組織に担持されてPFOを閉鎖するような形状をとる静止構成と、クリップ103を長手方向軸に沿って内部管腔372内に比較的直線状で収納されるように付勢される細長い構成と、の間で付勢可能であるといえる。
エ 上記(1)ウの【0088】の「押込器373の遠位部分374は、好ましくは、密接した嵌合が得られ、針壁が押込器373の対応する陥凹375内で各RA部材307を維持するように、針370の内径よりも比較的小さい幅を有する。押込器373が、確実にクリップ103に係合し、所望に応じて、クリップ103の前進および後退を行うことを可能にする。」という記載、及び、上記(1)キの図示事項を踏まえると、押込373は、クリップ103を前進させることで針状部材370の開放遠位端371から押し出すものであり、針状部材370は、クリップ103を針状部材の内部管腔内で前進させるための幅を有する遠位部分374を備えるものであることが理解できる。そして、これらのことと、上記アないしウの認定事項を踏まえると、クリップが針状部材の開放遠位端から押し出されることにより、ワイヤ状部材301は、針状部材370が穿刺される中隔組織に担持してPFOを閉鎖するものであることが理解できる。
オ 上記(1)イの【0021】の「クリップ103は、好ましくは、左心房(LA)アンカ部分303と、右心房(RA)アンカ部分304と、中間にある、好ましくは中央に位置する部分305とを含む。」という記載及び「各ワイヤ301の端部分は、それぞれ、LA部材およびRA部材と呼ばれる、中隔アンカ306および307を形成するように、偏向可能である。」という記載から、ワイヤ状部材301は部材306と部材307を備えるものであるといえ、上記(1)クの図示事項とを併せて踏まえると、複数のワイヤ状部材は、クリップの中央に位置する部分305のアンカ部分303から延びる一対の遠位側の部材306と、中央に位置する部分305のアンカ部分304から延びる一対の近位側の部材307とを備えるものであるといえる。
カ 上記(1)イの【0024】の「LA部材306は、好ましくは、中隔組織の比較的広い領域に閉鎖力を印加するように、RA部材307より比較的長い。LA部材306およびRA部材307のそれぞれの長さは、同じとなり得るか、または変動し得ることに留意されたい。所望であれば、RA部材307は、LA部材306より比較的長くなり得て、および/または、各LA部材306(またはRA部材307)は、異なる長さを有することができる、等である。」という記載からみて、遠位側の部材306が近位側の部材307よりも短い場合があり得るといえる。
キ 上記(1)イの【0027】の「クリップ103は、長手方向軸308を有し、長手方向軸308からのLA部材306およびRA部材307の偏向度は、それぞれ、LA偏向322およびRA偏向323と呼ばれる。ここで示されるように、LA偏向322およびRA偏向323は、両方とも90度を超える。・・・(中略)・・・好ましくは、LA偏向322およびRA偏向323は、両方とも、90度から135度の間であり、最も好ましくは、95度から100度の間である。」という記載から、近位側の部材307と遠位側の部材306とは、クリップの長手軸方向308からそれぞれ偏向しており同じ平面内にないものであるといえる。

(3)上記(1)アないしキ及び上記(2)アないしキから、引用文献3には、次の発明(以下「引用発明3-1」ないし「引用発明3-3」という。)が記載されているといえる。
ア 引用発明3-1
「心臓の中隔欠損(PFO)を閉鎖するためのクリップ送達システム100であって、前記クリップ送達システムが、
実質的に鋭い開放遠位端371を含む遠位端と、前記遠位端から近位方向に延び、長手方向軸を画定する内部管腔372と、を備える針状部材370と、
クリップ103であって、前記クリップ103が、前記クリップ103の複数のワイヤ状部材301が中隔組織に担持されて前記PFOを閉鎖するような形状をとる静止構成と、前記ワイヤ状部材301が、前記クリップ103を前記長手方向軸に沿って前記内部管腔372内に比較的直線状に収納されるように付勢される細長い構成と、の間で付勢可能である、クリップと、
前記クリップを前記針状部材の開放遠位端から押し出され、それにより、前記ワイヤ状部材が、前記針状部材が穿刺される前記中隔組織に担持して前記PFOを閉鎖するための、前記内部管腔内での前進のための幅を有する遠位部分374を備える押込器373と、
を備え、
前記複数のワイヤ状部材が、前記クリップの中央に位置する部分305のアンカ部分303から延びる一対の遠位側の部材306と、前記中央に位置する部分305のアンカ部分304から延びる一対の近位側の部材307と、を備え、前記遠位側の部材306が近位側の部材307よりも短く、前記近位側の部材307が前記中央に位置する部分305から延び、長手軸方向308から前記近位側の部材307と前記遠位側の部材306とがそれぞれ偏向しており同じ平面内にない、クリップ送達システム。」
イ 引用発明3-2
「心臓の中隔欠損(PFO)を閉鎖するためのクリップ送達システム100であって、前記クリップ送達システムが、
針状部材370であって、前記針状部材が、前記針状部材が中隔組織を穿刺するように構成された実質的に鋭い開放遠位端371を含む遠位端と、長手方向軸を画定する内部管腔372と、を備える針状部材と、
一対の近位側の部材307及び一対の遠位側の部材306を備えるクリップ103であって、前記クリップ103が、前記部材307及び部材306が中隔組織に担持されて前記PFOを閉鎖するような形状をとる静止構成と、前記部材307及び部材306が、前記クリップ103を前記長手方向軸に沿って前記内部管腔372内に比較的直線状に収納されるように付勢される細長い構成と、の間で付勢可能である、クリップと、
遠位部分374を備える押込器373と、
を備え、
前記遠位端側の部材306が前記近位側の部材307よりも短く、長手軸方向308から前記近位側の部材307と前記遠位側の部材306とがそれぞれ偏向しており同じ平面内にない、クリップ送達システム。」
ウ 引用発明3-3
「心臓の中隔欠損(PFO)を閉鎖するためのクリップ送達システムであって、
実質的に鋭い開放遠位端371を含む遠位端と、長手方向軸を画定する内部管腔372と、を備える針状部材370と、
クリップ103であって、前記クリップ103が、前記クリップ103の中央に位置する部分305のアンカ部分303から延びる一対の遠位側の部材306と、前記中央に位置する部分305のアンカ部分304から延びる一対の近位側の部材307と、を備え、前記クリップが、前記針状部材の内部管腔内に収納するために静止構成から細長い構成にまで付勢可能であり、前記遠位側の部材が前記近位側の部材よりも短く、長手軸方向308から前記近位側の部材307と前記遠位側の部材306とがそれぞれ偏向しており同じ平面内になく、前記遠位側の部材及び前記近位側の部材が、前記針状部材の前記内部管腔内に収納されるために前記細長い構成で比較的直線状にまで付勢される、クリップと、
前記クリップを前記針状部材の開放遠位端から押し出すために、前記内部管腔内に遠位部分374を備える押込器373と、
を備える、クリップ送達システム。」

2 引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特表2008-513052号公報の図4には、外部スライドチューブ25内に設けられた内部軸27を形成する上部バー49及び下部バー50で囲まれた中央領域40が、クリップの反作用部6及び基部5を保持することができるよう、長方形の断面形状をしている点が図示されている。


第5 対比・判断
1 本願発明1について
本願発明1と引用発明3-1を対比する。
引用発明3-1の「クリップ送達システム100」は、その機能及び構造からみて、本願発明1の「装置」に相当し、以下同様に、「実質的に鋭い開放遠位端371」は「鋭利な遠位チップ」に、「遠位端」は「先端」に、「内部管腔372」は「ルーメン」に、「針状部材370」は「管状部材」に、「クリップ103」は「クリップ」に、「ワイヤ状部材301」は「タイン」に、「静止構成」は「緩和状態」に、「長手軸方向に沿って」は「長手軸方向の周囲で」に、「比較的直線状に」は「所定の方向に」に、「収納され」は「装着させ」に、「付勢され」は「圧迫され」に、「細長い構成」は「緊張状態」に、「付勢可能である」は「圧迫可能である」に、「押し出され」は「展開し」に、「穿刺され」は「誘導され」に、「前進の」は「進行の」に、「幅」は「サイズ」に、「遠位部分374」は「先端」に、「押込器373」は「プッシャー部材」に、「中央に位置する部分305」は「中央領域」に、「アンカ部分303」は「第一の端部」に、「延びる」は「延在する」に、「遠位側の部材306」は「遠位タイン」に、「アンカ部分304」は「第二の端部」に、「近位側の部材307」は「近位タイン」に、それぞれ相当する。
また、引用発明3-1の「心臓の中隔欠損(PFO)」及び「中隔組織」と本願発明1の「患者の体内の管状構造」とは、人体組織である限りにおいて共通する。

してみると、本願発明1と引用発明3-1の一致点及び相違点は、次のとおりとなる。
(一致点)
「人体組織を閉鎖するための装置であって、前記装置が、
鋭利な遠位チップを含む先端と、前記先端から近位方向に延在し、長手方向軸を画定するルーメンと、を備える管状部材と、
クリップであって、前記クリップが、前記クリップの複数のタインが、人体組織に担持されて人体組織を閉鎖するような形状をとる緩和状態と、前記タインが前記クリップを前記長手方向軸の周囲で前記ルーメン内に所定の方向に装着させるように圧迫される緊張状態と、の間で圧迫可能である、クリップと、
前記クリップを前記管状部材の遠位チップから展開し、それにより、前記タインが、前記管状部材が誘導される人体組織を閉鎖するための、前記ルーメン内での進行のためのサイズをとる先端を備えるプッシャー部材と、
を備え、
前記複数のタインが、前記クリップの中央領域の第一の端部から延在する一対の遠位タインと、前記中央領域の第二の端部から延在する一対の近位タインと、を備え、前記遠位タインが前記近位タインよりも短く、前記近位タインが前記中央領域から延在する、装置。」

(相違点1)
本願発明1では、装置が、患者の体内の管状構造を閉鎖するためのものであって、クリップの複数のタインが、患者の体内の管状構造に係合して前記管状構造を閉鎖するような形状をとり、近位タインが、緩和状態で平面内にて中央領域および遠位タインを少なくとも部分的に包囲するという構成を有するのに対して、引用発明3-1では、装置が、心臓の中隔欠損(PFO)を閉鎖するためのものであって、クリップの複数のタインが、中隔組織に担持されて前記PFOを閉鎖するような形状をとり、近位タインと遠位タインとが、長手軸方向からそれぞれ偏向しており同じ平面内にないという構成を有する点。

(相違点2)
本願発明1では、管状部材が、ハブを含む基端を備え、ルーメンが、基端と先端との間で長手方向軸を画定する、楕円形または長方形の断面を有し、プッシャー部材が、基端を備えるのに対して、引用発明3-1では、そのような構成を有するか明らかでない点。

相違点1について検討する。
上記第4の1(1)エのとおり、引用文献3の【0096】には、「 本明細書で説明されるデバイス、システム、および方法は、種々の疾患状態を治療するために、身体の任意の部分で使用されてもよい。特に関心となるのは、心臓および血管(動脈および静脈)、肺および気道、消化器官(食道、胃、腸、胆道系等)を含むがそれらに限定されない、中空臓器内での適用である。デバイスおよび方法はまた、膀胱、尿道、および他の領域等の領域中の尿生殖路内での使用も見出す。」と記載されていることから、引用文献3には、引用発明3-1を患者の体内の管状構造に適用することについては一応の示唆があるといえる。
しかしながら、引用文献3には、近位側の部材307が、静止構成において平面内にて中央に位置する部分305および遠位側の部材306を少なくとも部分的に包囲するよう構成することについては記載や示唆はなく、また、当該構成が本願の優先日前において当業者の技術常識であったともいえないことから、引用発明3-1において、このような構成を採用することは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
そして、本願発明2ないし4及び32ないし34に対する原査定の拒絶の理由において引用された引用文献2、4ないし6にも、本願発明1の「前記近位タインが、前記緩和状態で平面内にて前記中央領域および前記遠位タインを少なくとも部分的に包囲する」という構成については記載や示唆はない。

相違点2について検討する。
引用発明3-1の針状部材370及び押込器373はともに遠位端とは反対側の端部である近位端を有すること、また、針状部材370の長手方向軸が近位端と遠位端との間に存在することは、技術常識を踏まえれば明らかであり、さらに、針状部材370の基端部にハブを設けるか否かは、必要に応じて設定することのできる単なる設計事項に過ぎない。
次に、引用発明3-1の内部管腔372は、クリップ103をその内部に収納及び前進できるよう保持するものであり、その構造はクリップ103が収納及び前進できるように設計されるべきものといえることから、当該内部管腔372の断面形状を楕円形又は長方形とする程度のことは、クリップ103の断面形状等を踏まえながら必要に応じて設定することのできる単なる設計事項に過ぎず、当業者にとって何ら困難性はない。また、上記第4の2のとおり、引用文献2の図4には、外部スライドチューブ25内の中央領域40が、クリップを保持できるよう長方形の断面形状をしている点が図示されていることからみても、引用発明3-1の内部管腔372にクリップ103を保持すべく、その断面形状を長方形とすることに何ら困難性はない。

そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本願発明1の奏する作用効果は、引用発明3-1及び引用文献2、4ないし6に記載された技術的事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものであるとはいえない。

したがって、本願発明1は、引用発明3-1及び引用文献2、4ないし6に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2ないし13について
本願発明2ないし13は、上記相違点1に係る本願発明1の「前記近位タインが、前記緩和状態で平面内にて前記中央領域および前記遠位タインを少なくとも部分的に包囲する」という構成を備えるものであるから、上記1のとおり、本願発明1と同じ理由により、引用発明3-1及び引用文献2、4ないし6に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 本願発明14について
本願発明14と引用発明3-2を対比する。
引用発明3-2の「クリップ送達システム100」は、その機能及び構造からみて、本願発明14の「装置」に相当し、以下同様に、「針状部材370」は「管状部材」に、「穿刺する」は「誘導され得る」に、「実質的に鋭い開放遠位端371」は「鋭利な遠位チップ」に、「遠位端」は「先端」に、「内部管腔372」は「ルーメン」に、「近位側の部材307」は「近位タイン」に、「遠位側の部材306」は「遠位タイン」に、「クリップ103」は「クリップ」に、「静止構成」は「緩和状態」に、「に沿って」は「の周囲で」に、「比較的直線状に」は「所定の方向に」に、「収納され」は「圧迫され」に、「付勢可能である」は「圧迫可能である」に、「遠位部分374」は「先端」に、「押込器373」は「プッシャー部材」に、それぞれ相当する。
引用発明3-2の「心臓の中隔欠陥(PFO)」及び「中隔組織」と本願発明14の「患者の体内の管状構造」とは、人体組織である限りにおいて共通する。

してみると、本願発明14と引用発明3-2との一致点及び相違点は、次のとおりとなる。
(一致点)
「人体組織を閉鎖するための装置であって、前記装置が、
管状部材であって、前記管状部材が、前記管状部材が人体組織に誘導され得るように鋭利な遠位チップを含む先端と、長手方向軸を画定するルーメンと、を備える、管状部材と、
一対の近位タインおよび一対の遠位タインを備えるクリップであって、前記クリップが、人体組織を閉鎖するような形状をとる緩和状態と、前記タインが、前記クリップを前記長手方向軸の周囲で前記ルーメン内に所定の方向に装着させるように圧迫される緊張状態と、の間で圧迫可能である、クリップと、
先端を備えるプッシャー部材と、
を備え、
前記遠位タインが前記近位タインよりも短い、装置。」

(相違点3)
本願発明14では、装置が患者の体内の管状構造を閉鎖するためのものであって、管状部材が、患者の体内の管状構造に入り、そして管状構造内を通して誘導されるものであり、クリップの緩和状態が、タインが患者の体内の管状構造に係合して管状構造を閉鎖するような形状をとるものであり、プッシャー部材が、遠位タインが最初に展開されて管状構造に部分的に係合し、近位タインが引き続き展開されて管状構造に更に係合し、クリップが緩和状態に向かって弾性回復し、続いて管状部材が誘導される管状構造を閉鎖するようなものであり、近位タインが、緩和状態で平面内にて遠位タインを少なくとも部分的に包囲するものであるのに対して、引用発明3-2では、装置が、心臓の中隔欠損(PFO)を閉鎖するためのものであって、針状部材が、中隔組織を穿刺するよう構成されており、クリップが、中隔組織に担持されて前記PFOを閉鎖するような形状をとるものであり、近位タインと遠位タインとが長手軸方向からそれぞれ偏向しており同じ平面にないものである点。

(相違点4)
本願発明14では、管状部材が、ハブを含む基端を備え、ルーメンが、基端と先端との間に延在し、基端と先端との間で長手方向軸を画定し、プッシャー部材が基端を備えるのに対して、引用発明3-2では、そのような構成を有するか明らかでない点。

相違点3について検討する。
上記1のとおり、引用文献3には、近位側の部材307が、静止構成において平面内にて中央に位置する部分305および遠位側の部材306を少なくとも部分的に包囲するよう構成することについては記載や示唆はなく、また、当該構成が本願の優先日前に当業者の技術常識であったともいえないことから、引用発明3-2において、このような構成を採用することは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
そして、本願発明2ないし4及び32ないし34に対する原査定の拒絶の理由において引用された引用文献2、4ないし6にも、本願発明14の「前記近位タインが、前記緩和状態で平面内にて前記中央領域および前記遠位タインを少なくとも部分的に包囲する」という構成については記載や示唆はない。
してみると、相違点4について検討するまでもなく、本願発明14は、引用発明3-2及び引用文献2、4ないし6に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

4 本願発明15ないし21について
本願発明15ないし21は、本願発明14の「前記近位タインが、前記緩和状態で平面内にて前記遠位タインを少なくとも部分的に包囲する」という構成を備えるものであるから、上記3のとおり、本願発明14と同じ理由により、引用発明3-2及び引用文献2、4ないし6に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

5 本願発明22について
本願発明22と引用発明3-3を対比する。
引用発明3-3の「クリップ送達システム」は、その機能及び構造からみて、本願発明22の「装置」に相当し、以下同様に、「実質的に鋭い開放遠位端371」は「鋭利な遠位チップ」に、「遠位端」は「先端」に、「内部管腔372」は「ルーメン」に、「針状部材370」は「管状部材」に、「クリップ103」は「クリップ」に、「中央に位置する部分305」は「中央領域」に、「アンカ部分303」は「第一の端部」に、「延びる」は「延在する」に、「遠位側の部材306」は「遠位タイン」に、「アンカ部分304」は「第二の端部」に、「近位側の部材307」は「近位タイン」に、「収納する」は「装着する」に、「静止構成」は「緩和状態」に、「細長い構成」は「緊張状態」に、「付勢可能」は「圧迫可能」に、「比較的直線状」は「直線構成」に、「付勢され」は「圧迫され」に、「押し出す」は「展開する」に、「遠位部分374」は「先端」に、「押込器373」は「プッシャー部材」に、それぞれ相当する。
また、引用発明3-3の「心臓の中隔(PFO)」と本願発明22の「患者の体内の管状構造」とは、人体組織である限りにおいて共通する。

してみると、本願発明22と引用発明3-3の一致点及び相違点は、次のとおりとなる。
(一致点)
「人体組織を閉鎖するための装置であって、
鋭利な遠位チップを含む先端と、長手方向軸を画定するルーメンと、を備える管状部材と、
クリップであって、前記クリップが、前記クリップの中央領域の第一の端部から延在する一対の遠位タインと、前記中央領域の第二の端部から延在する一対の近位タインと、を備え、前記クリップが、前記管状部材のルーメン内に装着するために緩和状態から緊張状態にまで圧迫可能であり、前記遠位タインが前記近位タインよりも短く、前記遠位タインおよび前記近位タインが、前記管状部材の前記ルーメン内に装着されるために前記緊張状態で直線構成にまで圧迫される、クリップと、
前記クリップを前記管状部材の遠位チップから展開するために、前記ルーメン内に先端を備えるプッシャー部材と、
を備える、装置。」

(相違点5)
本願発明22では、装置が、患者の体内の管状構造を閉鎖するためのものであって、遠位タインが、前記緩和状態でフックの形状を画定し、近位タインが、平面内にて中央領域および遠位タインを少なくとも部分的に包囲する曲線形状を画定するのに対して、引用発明3-3では、装置が、心臓の中隔欠損(PFO)を閉鎖するためのものであって、近位タインと遠位タインとが長手軸方向からそれぞれ偏向しており同じ平面内にないという構成を有している点。

(相違点6)
本願発明22では、管状部材が、ハブを含む基端を備え、ルーメンが、基端と先端との間に延在し、基端と先端との間で長手方向軸を画定し、プーシャー部材が基端を備えるのに対して、引用発明3-3では、そのような構成を有するか明らかでない点。

相違点5について検討する。
上記1のとおり、引用文献3には、近位側の部材307が、平面内にて中央に位置する部分305および遠位側の部材306を少なくとも部分的に包囲するよう構成することについては記載や示唆はなく、また、当該構成が本願の優先日前に当業者の技術常識であったともいえないことから、引用発明3-3において、このような構成を採用することは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
そして、本願発明2ないし4及び32ないし34に対する原査定の拒絶の理由において引用された引用文献2、4ないし6にも、本願発明22の「前記近位タインが平面内にて前記中央領域および前記遠位タインを少なくとも部分的に包囲する曲線形状を画定し」という構成については記載や示唆はない。
してみると、相違点6について検討するまでもなく、本願発明22は、引用発明3-3及び引用文献2、4ないし6に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

6 本願発明23ないし34について
本願発明23ないし13は、本願発明22の「前記近位タインが平面内にて前記中央領域および前記遠位タインを少なくとも部分的に包囲する曲線形状を画定し」という構成を備えるものであるから、上記5のとおり、本願発明22と同じ理由により、引用発明3-3及び引用文献2、4ないし6に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。


第6 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし34については、引用発明3-1ないし3-3、引用文献2、4ないし6に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
したがって、原査定の拒絶の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-08-05 
出願番号 特願2015-524500(P2015-524500)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A61B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 沼田 規好  
特許庁審判長 林 茂樹
特許庁審判官 寺川 ゆりか
芦原 康裕
発明の名称 脈管を閉鎖する装置および方法  
代理人 小田 直  
代理人 高橋 香元  
代理人 高岡 亮一  

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