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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D
管理番号 1353836
審判番号 不服2018-2697  
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-26 
確定日 2019-07-29 
事件の表示 特願2014-5789号「パウチ」拒絶査定不服審判事件〔平成27年7月27日出願公開、特開2015-134615号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年1月16日の出願であって、平成29年8月10日付けで拒絶理由が通知され、平成29年10月2日に意見書及び手続補正書が提出され、平成29年11月20日付けで拒絶査定がされ、平成30年2月26日に拒絶査定不服審判が請求された。これに対して、平成30年9月19日付けで当審より拒絶理由が通知され、平成30年11月5日に意見書及び手続補正書が提出され、平成31年1月15日付けで当審より拒絶理由(最後)が通知され、平成31年3月18日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。


第2 平成31年3月18日付けの手続補正の補正却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成31年3月18日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、平成30年11月5日付けの補正書の特許請求の範囲の請求項1の
「重ねられた積層フィルムをヒートシールすることにより製袋され、内容物を収容する収容空間を有するパウチであって、
加熱時に前記収容空間内の蒸気を逃がすための蒸気抜き機構を備え、
前記積層フィルムは、袋外方となる側から袋内方となる側に向けて、多層共押出しフィルムと、ポリエステル系樹脂フィルムと、シーラントフィルムとを、この順で含み、
前記多層共押出しフィルムは、袋外方となる側から袋内方となる側に向けて、第1ポリエステル系樹脂層と、ポリアミド系樹脂層とを、この順で含み、
前記収容空間の周りを取り囲む周囲領域に、重ねられた前記積層フィルムがヒートシールされたシール領域と、前記シール領域によって前記収容空間から隔離され、重ねられた前記積層フィルムがヒートシールされていない第1未シール領域と、が設けられ、
前記第1未シール領域には、重ねられた積層フィルムの縁部によって規定される開口が形成されており、
前記第1未シール領域の縁部は、前記開口の周りから前記収容空間側に延び出た第1縁部及び第2縁部と、前記第1縁部の先端と前記第2縁部の先端との間を延びる第3縁部と、を含み、
前記シール領域は、当該パウチの外縁に沿って前記第1未シール領域の前記第1縁部まで延びる第1外縁シール部分と、当該パウチの外縁に沿って前記第1未シール領域の前記第2縁部まで延びる第2外縁シール部分と、前記第1外縁シール部分と前記第2外縁シール部分との間に位置し、少なくとも前記第1外縁シール部分よりも前記収容空間に向けて張り出した張出部と、を有し、
前記第1未シール領域と前記開口と前記張出部とによって、前記蒸気抜き機構が構成され、
前記張出部は、前記第1縁部の一部分及び前記第3縁部に隣接しており、
前記張出部は、前記第1外縁シール部分に対して3mm以上の大きさの段差を形成し、
前記シール領域の前記張出部の巾は、前記シール領域の前記張出部以外の部分の巾よりも狭く、
前記周囲領域のうち、前記収容空間を挟んで前記第1未シール領域に対面する位置に、前記シール領域によって前記収容空間から隔離された第2未シール領域が設けられている、パウチ。」を
「重ねられた積層フィルムをヒートシールすることにより製袋され、内容物を収容する収容空間を有するパウチであって、
加熱時に前記収容空間内の蒸気を逃がすための蒸気抜き機構を備え、
前記積層フィルムは、袋外方となる側から袋内方となる側に向けて、多層共押出しフィルムと、ポリエステル系樹脂フィルムと、シーラントフィルムとを、この順で含み、
前記多層共押出しフィルムは、袋外方となる側から袋内方となる側に向けて、第1ポリエステル系樹脂層と、ポリアミド系樹脂層とを、この順で含み、
前記収容空間の周りを取り囲む周囲領域に、重ねられた前記積層フィルムがヒートシールされたシール領域と、前記シール領域によって前記収容空間から隔離され、重ねられた前記積層フィルムがヒートシールされていない第1未シール領域と、が設けられ、
前記第1未シール領域には、重ねられた積層フィルムの縁部によって規定される開口が形成されており、
前記第1未シール領域の縁部は、前記開口の周りから前記収容空間側に延び出た第1縁部及び第2縁部と、前記第1縁部の先端と前記第2縁部の先端との間を延びる第3縁部と、を含み、
前記シール領域は、当該パウチの外縁に沿って前記第1未シール領域の前記第1縁部まで延びる第1外縁シール部分と、当該パウチの外縁に沿って前記第1未シール領域の前記第2縁部まで延びる第2外縁シール部分と、前記第1外縁シール部分と前記第2外縁シール部分との間に位置し、少なくとも前記第1外縁シール部分よりも前記収容空間に向けて張り出した張出部と、を有し、
前記第1未シール領域と前記開口と前記張出部とによって、前記蒸気抜き機構が構成され、
前記張出部は、前記第1縁部の一部分及び前記第3縁部に隣接しており、
前記張出部は、前記第1外縁シール部分に対して3mm以上の大きさの段差を形成し、
前記シール領域の前記張出部の巾は、前記シール領域の前記張出部以外の部分の巾よりも狭く、
前記周囲領域のうち、前記収容空間を挟んで前記第1未シール領域に対面する位置に、前記シール領域によって前記収容空間から隔離された第2未シール領域が設けられ、
前記積層フィルムは、前記多層共押出しフィルムの面のうち袋内方となる側の面上に積層された絵柄層と、前記ポリエステル系樹脂フィルムの面のうち袋外方となる側の面上に直接形成されたバリア層とをさらに含む、パウチ。」と補正した。

そして、この補正は、特許請求の範囲に記載した発明を特定するために必要な事項である、積層フィルムについて、「前記多層共押出しフィルムの面のうち袋内方となる側の面上に積層された絵柄層と、前記ポリエステル系樹脂フィルムの面のうち袋外方となる側の面上に直接形成されたバリア層とをさらに含む」ことの限定を付加するものであり、この補正により、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題を変更するものでもないことは明らかである。

よって、本件補正における請求項1に係る発明の補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項(特許請求の範囲のいわゆる限定的減縮)を目的とするものである。

2 独立特許要件についての検討
(1)そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反しないか)について検討する。

(2)引用例
ア 引用例1
当審で通知したの拒絶理由(最後)に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2007-191199号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】
電子レンジにより加熱するための包装袋であって、少なくとも片面がシーラント層から構成される積層フィルムを用いて、シーラント面同士を対向させて周縁部をヒートシールして周縁シール部として形成され、周縁シール部から張り出した張り出しシール部として形成され、当該張り出しシール部内に未シール部と電子レンジで加熱する際に発生する蒸気を袋外に排出する蒸通口を備えた包装袋において、
日本工業規格 JIS Z 0238における「容器の破裂強さ試験」に準じて測定した前記の包装袋の破裂強さが、30kPa以上、60kPa以下の範囲にあることを特徴とする電子レンジ用包装袋。」

(イ)「【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジで加熱するときに内容物を包装した袋が破裂せず、蒸気を袋外に放出して自動的に内圧を低下させることができる電子レンジ用包装袋に関するものである。
さらに詳しくは、所定の範囲内に電子レンジ用包装袋の破裂強さを保つことで、輸送や保管をするときに加わる圧力や衝撃に耐え得る密封性と、電子レンジで加熱調理する際に蒸気を速やかに排出できる開口性との両特性を発揮させることができる電子レンジ用包装袋に関するものである。」

(ウ)「【0011】
図1は、本発明の電子レンジ用包装袋1の実施例を示す斜視図である。
図1に示すように、本発明にかかる電子レンジ用包装袋1は、胴部を構成する四角形からなる前面2と後面3の底部に、底面4を逆V字状に折り畳んで挿入し、前面2と後面3と底面4の周縁部をそれぞれヒートシールして、胴部シール部5、および、底部シール部6を形成し、内容物を充填後、天部シール部7をヒートシールして密封され、充填した内容物により底面4が前後に拡張して自立できる形態の自立性包装袋である。
更に、本発明にかかる電子レンジ用包装袋1は、張り出しシール部9を胴部シール部5と連結して設け、張り出しシール部9に囲まれた未シール部19に図5に示すような切込み17または切欠18等を形成する構成からなる包装袋である。
このことによって、加熱によって発生した蒸気の熱と圧力により張り出しシール部9が、剥離後退し、切込み17または切欠18から蒸気が放散して自然開封が行なわれるので安全である。
また、本発明の包装袋1は、自立させた状態で電子レンジ加熱ができるので流動性のある食品にも対応できる。
また、この切込み17または切欠18は張り出しシール部9の内側にあるので流通段階では完全に密封性を保つことができる。
更に、本発明において、包装袋1の破裂強さが、30kPa以上、60kPa以下の範囲にある包装袋であることが必要である。
このことによって、輸送や保管をするときに加わる圧力や衝撃に耐え得る密封性を有すると共に、電子レンジで加熱調理する際に蒸気を排出できる開口性にバラツキが少なく、速やかに蒸気を排出できるので、安全で衛生的に加熱調理できる。
包装袋1の破裂強さが、30kPa未満であると、内容物の重量に耐えられず破袋したり、包装袋に内容物を充填後、ヒートシールして密封した包装体を輸送や保管をするときに加わる圧力や衝撃に耐え得ることができず、輸送中や保管中に、内容物の液漏れや破袋をするため、好ましくない。
包装袋1の破裂強さが、60kPaを超えると、電子レンジで加熱調理する際に速やかに開封せず、包装袋が必要以上に膨らみ、破袋して内容物が電子レンジ内に散乱するのではないかという恐怖感を消費者に与え、加熱条件、内容物によっては破袋する場合があるので好ましくない。」

(エ)「【0025】
次に、図3は、本発明の電子レンジ用包装袋1を形成する包装材料の積層体10の断面図である。
図3に示すように、本発明の電子レンジ用包装袋を形成する積層体10 は、基材層11と、シーラント層13とを接着層12を介して順次に積層するものである。
なお、接着層13は、必須の層ではなく、適宜必要に応じて設けられる層である。
また、図3(当審注:「図4」の誤記である。)に示すように、必要に応じて、基材層11 とシーラント層13との層間に中間層14、印刷層15を設けてもよい。」

(オ)「【0030】
さらに、本発明においては、基材層11とシーラント層13の間に中間層14を設けてもよく、中間層14は、通常、基材層11とシーラント層13だけでは包装袋1としての機能を十分に果たすことができない場合等に設けられる。
前記の機能としては、気体遮断性、機械的強靱性、耐屈曲性、耐突き刺し性、耐衝撃性、耐磨耗性、耐寒性、耐熱性、耐薬品性等であり、包装袋1として要求されるこれらの機能を中間層14として設けることで達成するものである。
【0031】
前記の中間層14として用いられる基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物等のフィルムあるいはこれらにポリ塩化ビニリデンを塗工したフィルムないしは酸化珪素、酸化アルミニウム等の無機物の蒸着を施したフィルムあるいはポリ塩化ビニリデン等のフィルム等を用いることができる。
また、これら基材の一種ないしそれ以上を組み合わせて使用することができる。
尚、上記基材の厚さとしては、包装体として要求される機能を満たすことができればよいのであって、必要に応じて適宜に選ぶことができる。
なお、上記の積層を行う場合、必要ならば、例えば、コロナ処理、オゾン処理、フレーム処理、その他等の前処理を施し、積層することができる。」

(カ)「【実施例1】
【0037】
本発明の電子レンジ用包装袋について、実施例によりさらに具体的に説明する。
包装袋1としては、厚さ12μmのシリカ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム、15μmの延伸ナイロンフィルム、70μmの無延伸ポリプロピレンフィルムをドライラミネートして、外側から、層構成、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(12μm)・シリカ蒸着層/接着剤層/延伸ナイロンフィルム(15μm)/接着剤層/無延伸ポリプロピレンフィルム(70μm)の積層フィルム10を作製した。
上記で得られた積層フィルム10を用いて、胴部が前面2と後面3の2枚の壁面フィルムの両側端縁部を胴部シール部5でヒートシールして形成し、胴部シール部5と連結して張り出しシール部9を一体で形成し、更に、張り出しシール部9に囲まれた未シール部19に蒸通口18を一つ設けた後、底面4のフィルムを内側に折り返してなるガセット形式で形成され、底部シール部6が舟底形のシールパターンでヒートシールされ、図1に示すような本発明にかかる形態の電子レンジ用包装袋1を製造した。(外寸法、高さ:145mm×巾:155mm、張り出しシール部の縦寸法:15mm×横寸法:35mm、切欠の直径:5mm、張り出しシール部のシール幅:3mm、周縁シール部のシール幅:10mm、天部シール部7から張り出しシール部9までの寸法:48mm)
なお、積層フィルム10の無延伸ポリプロピレンフィルム面同士をシール温度:220℃、加熱時間0.4秒、圧力0.2MPaで3回ヒートシールを行った。
上記で得られた包装袋1を用いて、内容物を充填し、天部シール部7をシールして密封後、121℃で30分レトルト処理した。
しかる後。上記で得られたレトルト処理後の包装体を自立させた状態で入れ、700Wの家庭用電子レンジで加熱した。
その結果、本発明に係る電子レンジ用包装袋1は、輸送や保管をするときに加わる圧力や衝撃に耐え得る破裂強さを有すると共に、電子レンジで加熱調理する際に、速やかに蒸気を排出できる開口性を有する優れた電子レンジ用包装袋であった。
【0038】
次に、上記で得られた電子レンジ用包装袋1の破裂強さは、日本工業規格 JIS Z 0238における「容器の破裂強さ試験」に準じて、ヒートシールして密閉された電子レンジ用包装袋1に空気を注入して容器が破裂する圧力を求めることにより測定した。
なお、上記の容器の破裂強さ試験の測定サンプルには、上記で得られた包装袋1を用いて、内容物として、水200gを充填し、天部シール部7をヒートシールして密封後、レトルト殺菌処理したものを使用した(レトルト殺菌条件、温度、121℃、加熱時間、30分)。
その結果、表1に示すように、実施例1の容器の破裂強さは、平均60kPaであった。」

(キ)「図4



イ 引用例1に記載された発明
引用例1の図4(【0030】、【0031】)の層構造に着目して、請求項1について整理すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「電子レンジにより加熱するための包装袋であって、基材層11とシーラント層13の間に、印刷層15、中間層14の順に設けた積層フィルムを用いて、シーラント面同士を対向させて周縁部をヒートシールして周縁シール部として形成され、周縁シール部から張り出した張り出しシール部として形成され、当該張り出しシール部内に未シール部と電子レンジで加熱する際に発生する蒸気を袋外に排出する蒸通口を備えた包装袋において、
日本工業規格 JIS Z 0238における「容器の破裂強さ試験」に準じて測定した前記の包装袋の破裂強さが、30kPa以上、60kPa以下の範囲にあることを特徴とする電子レンジ用包装袋。」

ウ 引用例2
当審で通知した拒絶理由(最後)に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2013-245000号公報(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、レトルト処理用の包装材料及びそれよりなるパウチに関し、更に詳しくは、例えば食品、薬品、飲料等、特にレトルト処理を施す内容物の包装に好適に利用可能な包装材料及びそれよりなるパウチに関する。」

(イ)「【0021】
(基材層)
無機酸化物蒸着フィルムの基材層としては、化学的ないし物理的強度に優れ、蒸着層を形成する条件等に耐え、それら蒸着層の特性を損なうことなく良好に保持し得ることができるプラスチックフィルムを使用することができる。」

(ウ)「【0027】
さらには、前記多層共押出フィルムが、第1のポリエステル系樹脂層、ポリアミド系樹脂層、及び第2のポリエステル系樹脂層をこの順に有する二軸延伸多層積層フィルムであることが好ましい。共押出フィルムにおいて、対照性があることにより、フィルムがカールするのを防ぐことができる。」

(エ)「【0049】
(製膜)
上記のポリエステル系樹脂層及びポリアミド系樹脂層を有する二軸延伸多層積層フィルムは、上記の層構成となるように各層を二軸延伸によって積層する。例えば、各層の樹脂を200℃?300℃の温度で押出し、各層の順になるように、Tダイスより冷却水が循環する20℃?40℃のチルロール上に共押出せしめ、フラット状の多層フィルムを得る。得られたフィルムは、例えば50?100℃のロール延伸機により2?4倍に縦延伸し、更に90?150℃の雰囲気のテンター延伸機により3?5倍に横延伸せしめ、引き続いて同テンターにより100?240℃雰囲気中で熱処理して得ることができる。本発明の多層延伸フィルムは、同時二軸延伸、逐次二軸延伸をしても良く、得られた多層延伸フィルムは、必要ならばその両表面又は片表面に任意の表面処理層を設けてもよい。」

エ 引用例3
当審で通知した拒絶理由(最後)に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2010-131993号公報(以下「引用例3」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0067】
例1.(A)層が、PETからなる(A-1)層(膜厚1?8μm)とPETからなる(A-2)層(膜厚1?8μm)とからなり;(B)層が、ナイロン-6及びアモルファスナイロンからなり、ナイロン-6の含有量が85?97重量%、アモルファスナイロンの含有量が3?15重量%(膜厚8?23μm)であり;(C)層が酸化ケイ素からなり(膜厚20?150nm);(A-1)層、(B)層、(A-2)層、(C)層の順に積層されている。
【0068】
2.製造方法
本発明の多層延伸フィルムは、上記の層構成となるように各層を二軸延伸によって積層する。本発明の多層延伸フィルムの製造方法は、例えば、各層の樹脂を200℃?300℃の温度で押出し、各層の順になるように、Tダイスより冷却水が循環する20℃?40℃のチルロール上に共押出せしめ、フラット状の多層フィルムを得る。得られたフィルムは、例えば50?100℃のロール延伸機により2?4倍に縦延伸し、更に90?150℃の雰囲気のテンター延伸機により3?5倍に横延伸せしめ、引き続いて同テンターにより100?240℃雰囲気中で熱処理して得ることができる。本発明の多層延伸フィルムは、同時二軸延伸、逐次二軸延伸をしても良く、得られた多層延伸フィルムは、必要ならばその両表面又は片表面にコロナ放電処理を施すこともできる。」

(イ)「【0073】
本発明の多層延伸フィルムは、上記の特徴を有しているため、包装用フィルムとして好適に用いられる。本発明の多層延伸フィルムを包装用フィルムとする場合、該フィルムの(C)層側に、シール層をラミネートして、包装用フィルムを製造する。これを、最外層を外側に向けて袋状にして、シール層面同士をヒートシールして袋状に加工して包装用袋を製造する。ヒートシールする方法は、公知の方法を採用することができる。」

(ウ)「【0077】
3台の押出機を用い、(A-1)層の樹脂を280℃、(A-2)層の樹脂を280℃、(B)層の樹脂を260℃の温度でそれぞれ溶融させ、(A-1)層/(B)層/(A-2)層の順になるように、280℃のTダイスより冷却水が循環する30℃のチルロール上に共押出しせしめて、フラット状の3層シートを得た。この3層シートを、65℃のロール延伸機により3.0倍に縦延伸し、次いで110℃の雰囲気のテンター延伸機により4.0倍に横延伸し、さらに同テンターにより210℃の雰囲気中で熱処理して厚さ15μmの3層フィルムを得た。各層の厚みは、(A-1)層が2μm、(B)層が11μm、(A-2)層が2μmであった。」

(3)本願補正発明と引用発明の対比
ア 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「電子レンジで加熱する際に発生する蒸気を袋外に排出する蒸通口」は、その作用より、本願補正発明の「加熱時に前記収容空間内の蒸気を逃がすための蒸気抜き機構」に相当し、同様に、「シーラント層13」は「シーラントフィルム」に相当する。

(イ)引用発明の「基材層11とシーラント層13の間に中間層14を設けた積層フィルムを用いて、シーラント面同士を対向させて周縁部をヒートシールして周縁シール部として形成され」た「電子レンジにより加熱するための包装袋」は、積層フィルムを重ねて周縁部をヒートシールして形成した包装袋であって、内容物を収容する収容空間を有することは明らかであるから、本願補正発明の「重ねられた積層フィルムをヒートシールすることにより製袋され、内容物を収容する収容空間を有するパウチ」に相当する。

(ウ)引用発明の「基材層11」と本願補正発明の「多層共押出しフィルム」とは、基材フィルムの限りで一致し、同様に「中間層14」と「ポリエステル系樹脂フィルム」とは、「中間層フィルム」の限りで一致する。
そして、引用発明の「基材層11とシーラント層13の間に、印刷層15、中間層14の順に設けた積層フィルム」と、本願補正発明の「袋外方となる側から袋内方となる側に向けて、多層共押出しフィルムと、ポリエステル系樹脂フィルムと、シーラントフィルムとを、この順で含」む「積層フィルム」とは、「袋外方となる側から袋内方となる側に向けて、基材フィルムと、中間層フィルムと、シーラントフィルムとを、この順で含」む「積層フィルム」の限りで一致する。

(エ)引用発明の「積層フィルムを用いて、シーラント面同士を対向させて周縁部をヒートシールして周縁シール部として形成され、周縁シール部から張り出した張り出しシール部として形成され、当該張り出しシール部内に未シール部と電子レンジで加熱する際に発生する蒸気を袋外に排出する蒸通口を備えた」態様は、包装袋の回りを取り囲む領域に、周縁シール部と未シール部とが設けられていることであるから、本願補正発明の「前記収容空間の周りを取り囲む周囲領域に、重ねられた前記積層フィルムがヒートシールされたシール領域と、前記シール領域によって前記収容空間から隔離され、重ねられた前記積層フィルムがヒートシールされていない第1未シール領域と、が設けられ」た態様に相当する。

イ 一致点、相違点
そうすると、本願補正発明と引用発明とは、以下の点で一致し、相違する。
<一致点>
「重ねられた積層フィルムをヒートシールすることにより製袋され、内容物を収容する収容空間を有するパウチであって、
加熱時に前記収容空間内の蒸気を逃がすための蒸気抜き機構を備え、
前記積層フィルムは、袋外方となる側から袋内方となる側に向けて、基材フィルムと、中間層フィルムと、シーラントフィルムとを、この順で含み、
前記収容空間の周りを取り囲む周囲領域に、重ねられた前記積層フィルムがヒートシールされたシール領域と、前記シール領域によって前記収容空間から隔離され、重ねられた前記積層フィルムがヒートシールされていない第1未シール領域と、が設けられた、
パウチ。」

<相違点1>
積層フィルムの基材フィルムが、本願補正発明では、「多層共押出しフィルム」であって、「多層共押出しフィルムは、袋外方となる側から袋内方となる側に向けて、第1ポリエステル系樹脂層と、ポリアミド系樹脂層とを、この順で含」み、「前記積層フィルムは、前記多層共押出しフィルムの面のうち袋内方となる側の面上に積層された絵柄層」を含むのに対して、引用発明は、基材層が、そのように特定されておらず、印刷層を備えているものの、絵柄層をそのような配置で設けるとは特定されていない点。
<相違点2>
本願補正発明では、「前記第1未シール領域には、重ねられた積層フィルムの縁部によって規定される開口が形成されており、
前記第1未シール領域の縁部は、前記開口の周りから前記収容空間側に延び出た第1縁部及び第2縁部と、前記第1縁部の先端と前記第2縁部の先端との間を延びる第3縁部と、を含み、
前記シール領域は、当該パウチの外縁に沿って前記第1未シール領域の前記第1縁部まで延びる第1外縁シール部分と、当該パウチの外縁に沿って前記第1未シール領域の前記第2縁部まで延びる第2外縁シール部分と、前記第1外縁シール部分と前記第2外縁シール部分との間に位置し、少なくとも前記第1外縁シール部分よりも前記収容空間に向けて張り出した張出部と、を有し、
前記第1未シール領域と前記開口と前記張出部とによって、前記蒸気抜き機構が構成され、
前記張出部は、前記第1縁部の一部分及び前記第3縁部に隣接しており、
前記張出部は、前記第1外縁シール部分に対して3mm以上の大きさの段差を形成し、
前記シール領域の前記張出部の巾は、前記シール領域の前記張出部以外の部分の巾よりも狭く、
前記周囲領域のうち、前記収容空間を挟んで前記第1未シール領域に対面する位置に、前記シール領域によって前記収容空間から隔離された第2未シール領域が設けられ」るのに対して、引用発明は、蒸通口の具体的な形状が、そのように特定されていない点。
<相違点3>
中間層フィルムについて、本願補正発明では、「ポリエステル系樹脂フィルム」であって「前記ポリエステル系樹脂フィルムの面のうち袋外方となる側の面上に直接形成されたバリア層とをさらに含む」のに対して、引用発明は、中間層を有するものの、具体的な層構成がそのように特定されていない点。

(4)判断
上記相違点について検討する。
<相違点1について>
パウチに用いる包装材料において、パウチの強度等を考慮して、用いる材料を選択することは、当業者が適宜なし得るものであるところ、基材層としてポリエステル系樹脂層とポリアミド系樹脂層とからなる多層共押出フィルムを用いることは、引用文献2(上記2ウの摘記事項参照。)、引用文献3(上記2エの摘記事項参照。)に記載されているように周知である。
また、基材フィルムの内面上に絵柄層を設けることも周知(例えば、特開2014-94767号公報の【0021】、【0024】、【0025】等参照。)である。
そして、引用発明の積層フィルムは、基材層から見て袋の内側に印刷層15を備えるものであり、この印刷層には絵柄も含み得るものである。また、引用文献1の【0026】には、基材層として種々のフィルムを積層した複合フィルムが採用できることが示唆されており、包装袋において、商品の情報の表示等のために絵柄を設けることは当然の課題といえる。
よって、引用発明において、基材層として、上記周知の多層共押出フィルム及び絵柄層を適用し、上記相違点1に係る本願補正発明の事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

<相違点2について>
本願補正発明の「蒸気抜き機構」と同様の、開口、第1縁部、第2縁部、第3縁部、及び張出部からなる蒸気抜き機構、シール領域の張出部の巾を張出部以外の部分の巾よりも狭くすること並びに蒸気抜き機構を対向する左右に設けることは、周知(例えば、特開平10-101154号公報の【0014】、【0033】、図1等、特開2013-43699号公報の【0021】、【0023】、図1、4等、米国特許出願公開第2011/0100983号明細書のFig1等参照。)であり、さらに、蒸気抜き機構が本願図面の図8?11の形状を表しているとしても、そのような形状のものも周知(例えば、特開2006-321493号の図3、特開2001-171756号公報の図7参照。)である。
そして、蒸気抜き機構の構成は、求められる蒸気抜きの程度により決められるものであり、引用発明の蒸通口に代えて、上記周知の蒸気抜き機構を対向する左右に設けることは、当業者が容易に想到し得たことであり、その際の一方の周知の蒸気抜き機構が本願補正発明の「第1未シール領域」を形成するものとなり、他方の周知の蒸気抜き機構が本願補正発明の「第2未シール領域」を形成することとなる。
また、例えば実願平2-50424号(実開平4-10079号)のマイクロフィルムの、未シール部を自動開口させるために、V字状シール部の谷にある未シール部をサイドシール部(3)より1mm以上内側の位置(h_(3))とすること(9頁末行?10頁4行)、V字状のシール部のシール幅(S_(1))を2mm?5mmにすることが望ましいとされていること(11頁2?6行)、及び第2図のV字状シール部(本願発明1の「張出部」に相当。)の記載、及び特開2001-171756号公報の【0031】の記載を参酌すると、一般に流通しているパウチの寸法からみて、引用発明の張出部の段差の大きさを3mm以上とすることは、蒸気抜きを着実に行うために通常採用されている範囲でしかなく、当業者が設計上適宜決定し得たことである。
したがって、引用発明において、上記周知の事項を適用し、上記相違点2に係る本願補正発明の事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

<相違点3について>
引用例1には、中間層について、「前記の機能としては、気体遮断性、機械的強靱性、耐屈曲性、耐突き刺し性、耐衝撃性、耐磨耗性、耐寒性、耐熱性、耐薬品性等であり、包装袋1として要求されるこれらの機能を中間層14として設けることで達成するものである。」(【0030】)、「中間層14として用いられる基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、・・・等のフィルムあるいはこれらに・・・酸化珪素、酸化アルミニウム等の無機物の蒸着を施したフィルムあるいは・・・等を用いることができる。」(【0031】)と記載されており、 気体遮断性を有する中間層として、ポリエチレンテレフタレートに酸化珪素、酸化アルミニウム等の無機物の蒸着を施したフィルムを用いる点が示唆されている。
ここで、引用発明の包装袋においても、気体遮断性の向上は当然の課題であるから、上記引用例1の示唆に基づいて、ポリエチレンテレフタレートを含むポリエステル系樹脂からなるフィルムの面状に、基体遮断性の向上のために、無機物の蒸着によるバリア層を形成して、上記相違点3に係る本願補正発明の事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

<本願補正発明の奏する効果について>
本願補正発明は「パウチ」という物の発明であるところ、請求人が平成30年11月5日の意見書において主張する効果は、パウチの製造方法にかかる効果であって、製造された後の「パウチ」としての効果でないから、当該主張は採用できない。
したがって、本願補正発明の奏する効果は、引用発明及び周知の事項から、当業者が容易に想到し得る範囲のものであって、格別なものでない。

(5)小括
したがって、本願補正発明は、引用発明、及び周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3 むすび
以上のとおりであり、本件補正発明は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定により違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。


第3 本願発明について
1 本願発明
平成31年3月18日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成30年11月5日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。(上記「第2 平成31年3月18日付けの手続補正の補正却下の決定」の「1 本件補正について」の記載参照。)

2 引用例
当審で通知した拒絶理由(最後)に引用された引用例1?3記載事項並びに引用発明については、上記「第2 平成31年3月18日付けの手続補正の補正却下の決定」の「2 独立特許要件違反についての検討」の「(2)引用例」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、本願補正発明から、積層フィルムについて、「前記多層共押出しフィルムの面のうち袋内方となる側の面上に積層された絵柄層と、前記ポリエステル系樹脂フィルムの面のうち袋外方となる側の面上に直接形成されたバリア層とをさらに含む」ことの限定を省いたものである。
そうすると、本願発明を特定するための事項をすべて含み、更に他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2 平成31年3月18日付けの手続補正の補正却下の決定」の「2 独立特許要件違反についての検討」の「(3)本願補正発明と引用発明の対比」及び「(4)当審の判断」に記載したとおりの引用発明及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


第4 まとめ
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定より特許を受けることができない。
ゆえに、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-06-04 
結審通知日 2019-06-07 
審決日 2019-06-18 
出願番号 特願2014-5789(P2014-5789)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 正宗  
特許庁審判長 千壽 哲郎
特許庁審判官 佐々木 正章
井上 茂夫
発明の名称 パウチ  
代理人 堀田 幸裕  
代理人 中村 行孝  
代理人 永井 浩之  
代理人 伊藤 大幸  
代理人 佐藤 泰和  
代理人 朝倉 悟  
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