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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A63F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A63F
管理番号 1353927
審判番号 不服2018-8063  
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-06-12 
確定日 2019-08-27 
事件の表示 特願2015- 46215「ゲーム装置、ゲームシステム、及びゲーム制御プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 9月15日出願公開、特開2016-165360、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年3月9日に出願された出願であって、平成29年6月16日付けで拒絶理由通知がされ、同年8月18日付けで手続補正がされ、同年11月9日付けで拒絶理由通知がされ、平成30年1月17日付けで手続補正がされ、同年3月7日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対し、同年6月12日付けで拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がされ、その後、当審において、平成31年1月21日付けで拒絶理由通知がされ、同年3月6日付けで手続補正がされ、令和1年5月30日付けで拒絶理由通知がされ、同年6月19日付け手続補正書(以下「本件補正書」という。)により手続補正がされたものである。

第2 本願発明
本願請求項1ないし6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明6」という。)は、本件補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
複数のキャラクタのそれぞれに対応する複数のオブジェクトのうちから選択された一又は複数のオブジェクトによる編成を複数用いて行うゲームの処理を行なうゲーム装置であって、
前記複数のオブジェクトのそれぞれは、それぞれのキャラクタを示す識別情報と予め設定された付随情報とゲームの進行に応じて値が変動するパラメータとを有し、
前記編成には、複数のオブジェクトのうちから選択された一又は複数の第一オブジェクトが含まれるとともに、前記第一オブジェクトのそれぞれに対応付けられた第二オブジェクトをさらに含むことが可能であり、
前記複数のオブジェクトのうちのユーザ情報に対応付けられたオブジェクトのうち、編成される一又は複数の第一オブジェクトを選択する指示を、同一の編成において複数の第一オブジェクトが選択される場合には共通のキャラクタを示す識別情報を有する第一オブジェクトの重複を禁止するように受け付ける第一受付部と、
前記複数のオブジェクトのうちのユーザ情報に対応付けられたオブジェクトのうち、前記第一受付部により選択する指示を受け付けた一又は複数の第一オブジェクトのうちから選択された特定の第一オブジェクトと共通のキャラクタを示す前記識別情報を有し、且つ前記特定の第一オブジェクトと前記付随情報の少なくとも一部が異なるオブジェクトのみを、前記特定の第一オブジェクトに対応付けて編成する第二オブジェクトとして選択可能なオブジェクトであると判定する判定部と、
前記判定部により第二オブジェクトとして選択可能なオブジェクトであると判定されたオブジェクトのうち、前記特定の第一オブジェクトに対応付けて編成する第二オブジェクトを選択する指示を受け付ける第二受付部と、
前記第二受付部により選択する指示を受け付けた第二オブジェクトと前記特定の第一オブジェクトとを対応付けする対応付け部と、
前記対応付け部により対応付けされた第二オブジェクトが有する前記パラメータに基づいて、当該第二オブジェクトに対応付けられた前記特定の第一オブジェクトが有する前記パラメータを変更する変更部と、
前記対応付け部により対応付けされた第二オブジェクトと前記特定の第一オブジェクトとの対応付けを解除する指示を受け付ける第三受付部と、
前記第三受付部が前記対応付けを解除する指示を受け付けた場合、前記第二オブジェクトと前記特定の第一オブジェクトとの対応付けを解除する解除部と、
を備え、
前記変更部は、
複数の編成のうちの第一編成において前記第二オブジェクトとして編成されたオブジェクトの前記パラメータが、当該オブジェクトが前記第一編成以外の第二編成において前記第一オブジェクトとして編成されてゲームの進行に応じて変更された場合、変更された当該オブジェクトの前記パラメータに基づいて、当該オブジェクトが前記第一編成において前記第二オブジェクトとして対応付けられた第一オブジェクトの前記パラメータをさらに変更する、
ゲーム装置。
【請求項2】
前記第二オブジェクトとして選択可能なオブジェクトを選択可能に表示するとともに、前記第二オブジェクトとして選択不可能なオブジェクトを、当該選択可能なオブジェクトの表示と異なる態様で表示する、または非表示にする表示制御部、
を備える請求項1に記載のゲーム装置。
【請求項3】
前記判定部により前記第二オブジェクトとして選択可能なオブジェクトであると判定されたオブジェクトのうち、前記特定の第一オブジェクトの前記パラメータの変更後の値が所定の第1条件を満たすオブジェクトを選択し、選択したオブジェクトを前記第二オブジェクトとして選択する指示を前記第二受付部に行う選択部、
を備える請求項1または請求項2に記載のゲーム装置。
【請求項4】
前記変更部は、
前記第二オブジェクトのパラメータ及び前記第二オブジェクトの付随情報に基づいて、前記第一オブジェクトのパラメータを変更する、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のゲーム装置。
【請求項5】
複数のキャラクタのそれぞれに対応する複数のオブジェクトのうちから選択された一又は複数のオブジェクトによる編成を複数用いて行うゲームの処理を行なうゲーム装置とゲームサーバとを備えるゲームシステムであって、
前記複数のオブジェクトのそれぞれは、それぞれのキャラクタを示す識別情報と予め設定された付随情報とゲームの進行に応じて値が変動するパラメータとを有し、
前記編成には、複数のオブジェクトのうちから選択された一又は複数の第一オブジェクトが含まれるとともに、前記第一オブジェクトのそれぞれに対応付けられた第二オブジェクトをさらに含むことが可能であり、
前記ゲーム装置は、
前記複数のオブジェクトのうちのユーザ情報に対応付けられたオブジェクトのうち、編成される一又は複数の第一オブジェクトを選択する指示を、同一の編成において複数の第一オブジェクトが選択される場合には共通のキャラクタを示す識別情報を有する第一オブジェクトの重複を禁止するように受け付ける第一受付部と、
前記複数のオブジェクトのうちのユーザ情報に対応付けられたオブジェクトのうち、前記第一受付部により選択する指示を受け付けた一又は複数の第一オブジェクトのうちから選択された特定の第一オブジェクトと共通のキャラクタを示す前記識別情報を有し、且つ前記特定の第一オブジェクトと前記付随情報の少なくとも一部が異なるオブジェクトのみを、前記特定の第一オブジェクトに対応付けて編成する第二オブジェクトとして選択可能なオブジェクトであると判定する判定部と、
前記判定部により第二オブジェクトとして選択可能なオブジェクトであると判定されたオブジェクトのうち、前記特定の第一オブジェクトに対応付けて編成する第二オブジェクトを選択する指示を受け付ける第二受付部と、
前記第二受付部により選択する指示を受け付けた第二オブジェクトと前記特定の第一オブジェクトとを対応付けする対応付け部と、
前記対応付け部により対応付けされた第二オブジェクトが有する前記パラメータに基づいて、当該第二オブジェクトに対応付けられた前記特定の第一オブジェクトが有する前記パラメータを変更する変更部と、
前記対応付け部により対応付けされた第二オブジェクトと前記特定の第一オブジェクトとの対応付けを解除する指示を受け付ける第三受付部と、
前記第三受付部が前記対応付けを解除する指示を受け付けた場合、前記第二オブジェクトと前記特定の第一オブジェクトとの対応付けを解除する解除部と、
を備え、
前記変更部は、
複数の編成のうちの第一編成において前記第二オブジェクトとして編成されたオブジェクトの前記パラメータが、当該オブジェクトが前記第一編成以外の第二編成において前記第一オブジェクトとして編成されてゲームの進行に応じて変更された場合、変更された当該オブジェクトの前記パラメータに基づいて、当該オブジェクトが前記第一編成において前記第二オブジェクトとして対応付けられた第一オブジェクトの前記パラメータをさらに変更する、
ゲームシステム。
【請求項6】
複数のキャラクタのそれぞれに対応する複数のオブジェクトのうちから選択された一又は複数のオブジェクトによる編成を複数用いて行うゲームの処理を行なうゲーム制御プログラムであって、
前記複数のオブジェクトのそれぞれは、それぞれのキャラクタを示す識別情報と予め設定された付随情報とゲームの進行に応じて値が変動するパラメータとを有し、
前記編成には、複数のオブジェクトのうちから選択された一又は複数の第一オブジェクトが含まれるとともに、前記第一オブジェクトのそれぞれに対応付けられた第二オブジェクトをさらに含むことが可能であり、
コンピュータに、
前記複数のオブジェクトのうちのユーザ情報に対応付けられたオブジェクトのうち、編成される一又は複数の第一オブジェクトを選択する指示を、同一の編成において複数の第一オブジェクトが選択される場合には共通のキャラクタを示す識別情報を有する第一オブジェクトの重複を禁止するように受け付ける第一受付ステップと、
前記複数のオブジェクトのうちのユーザ情報に対応付けられたオブジェクトのうち、前記第一受付部により選択する指示を受け付けた一又は複数の第一オブジェクトのうちから選択された特定の第一オブジェクトと共通のキャラクタを示す前記識別情報を有し、且つ前記特定の第一オブジェクトと前記付随情報の少なくとも一部が異なるオブジェクトのみを、前記特定の第一オブジェクトに対応付けて編成する第二オブジェクトとして選択可能なオブジェクトであると判定する判定ステップと、
前記判定ステップにより第二オブジェクトとして選択可能なオブジェクトであると判定されたオブジェクトのうち、前記特定の第一オブジェクトに対応付けて編成する第二オブジェクトを選択する指示を受け付ける第二受付ステップと、
前記第二受付ステップにより選択する指示を受け付けた第二オブジェクトと前記特定の第一オブジェクトとを対応付けする対応付けステップと、
前記対応付け部により対応付けされた第二オブジェクトが有する前記パラメータに基づいて、当該第二オブジェクトに対応付けられた前記特定の第一オブジェクトが有する前記パラメータを変更する変更ステップと、
前記対応付けステップにより対応付けされた第二オブジェクトと前記特定の第一オブジェクトとの対応付けを解除する指示を受け付ける第三受付ステップと、
前記第三受付ステップにおいて前記対応付けを解除する指示を受け付けた場合、前記第二オブジェクトと前記特定の第一オブジェクトとの対応付けを解除する解除ステップと、
を実行させ、
前記変更ステップにおいて、
複数の編成のうちの第一編成において前記第二オブジェクトとして編成されたオブジェクトの前記パラメータが、当該オブジェクトが前記第一編成以外の第二編成において前記第一オブジェクトとして編成されてゲームの進行に応じて変更された場合、変更された当該オブジェクトの前記パラメータに基づいて、当該オブジェクトが前記第一編成において前記第二オブジェクトとして対応付けられた第一オブジェクトの前記パラメータをさらに変更する、
ゲーム制御プログラム。」

第3 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1) 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2014-198184号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【0026】
図1(A)では、サーバシステム500(情報処理システム)が、ネットワーク510を介して端末装置TM1?TMnと通信接続されている。例えばサーバシステム500はホストであり、端末装置TM1?TMnはクライアントである。なお、以下では、本実施形態のゲームシステム及びその処理を、主にサーバシステム500により実現する場合を例にとり説明するが、ゲームシステム及びその処理の全部又は一部を、端末装置TM1?TMnにより実現してもよい。

イ 「【0029】
端末装置TM1?TMn(プレーヤ端末)は、例えばネット接続機能(インターネット接続機能)を有する端末である。これらの端末装置TM1?TMnとしては、例えば図1(B)の携帯型通信端末(スマートフォン、フューチャーフォン、携帯電話機)、図1(C)の携帯型ゲーム装置、図1(D)の家庭用ゲーム装置(据え置き型)、或いは図1(E)の業務用ゲーム装置などの種々の装置を用いることができる。或いは、端末装置TM1?TMnとして、パーソナルコンピュータ(PC)やタブレット型コンピュータなどの情報処理装置を用いてもよい。」

ウ 「【0059】
そして本実施形態では図2に示すように、サーバシステム500(ゲームシステム)が、配属処理部606、転換処理部607、ゲーム処理部608を含む。
【0060】
配属処理部606は、プレーヤがゲームプレイに使用するゲームプレイ要素に対して従属ゲームプレイ要素を配属させる処理を行う。そしてゲーム処理部608は、ゲームプレイ要素と従属ゲームプレイ要素を用いたゲーム処理を行う。
【0061】
ここでゲームプレイ要素は、例えばプレーヤがゲームに使用するキャラクタやアイテムなどである。またゲームプレイ要素は、例えばカードゲーム(電子的なカードゲーム)に使用されるカード(キャラクタ又はアイテムを表すカード)である。このゲームプレイ要素には、ゲーム処理の演算に使用されるゲームパラメータが関連づけられており、ゲームプレイ要素がキャラクタである場合には、このゲームパラメータは、キャラクタのステータスパラメータ(攻撃力、守備力、魔法力、ヒットポイント、又は耐久力等を表すパラメータ)などである。ゲーム処理部608は、このゲームプレイ要素に関連づけられたゲームパラメータを用いてゲーム処理を実行する。
【0062】
また従属ゲームプレイ要素は、例えばゲームプレイ要素が、プレーヤがメインに使用するキャラクタ(カード)である場合に、例えばこのメインのキャラクタ(カード)に従属するサブのキャラクタ(カード)である。また、「従属」とは、例えばゲームプレイ要素を用いたゲーム処理が行われる場合に、従属ゲームプレイ要素がそのゲーム処理の演算結果に何らかの影響を与えることを意味する。一例としては、ゲームプレイ要素を用いたゲーム処理において、当該ゲームプレイ要素のゲームパラメータに加えて、従属ゲームプレイ要素のゲームパラメータが参照されて、ゲーム処理が実行され、ゲーム結果が演算される。即ち、ゲーム処理部608は、ゲームプレイ要素と従属ゲームプレイ要素を用いたゲーム処理として、ゲームプレイ要素のゲームパラメータと従属ゲームプレイ要素のゲームパラメータの両方を使用したゲーム処理を実行する。

エ 「【0070】
例えばゲームプレイ要素が、プレーヤがゲームプレイに使用するキャラクタである場合に、この要素グループは、複数のキャラクタで構成されるパーティのデッキである。例えばキャラクタを表象したカードを用いたカードゲームにおけるデッキである。デッキは、プレーヤが収集したカード(キャラクタ)の中から、自由に或いは所与のルールに従って組合わせたカード(キャラクタ)の束を意味する。」

オ 「【0081】
2.1 配属可能数の変更
図4に本実施形態のゲームシステムで実現されるゲームのゲーム画像例を示す。図4のゲームでは、プレーヤは、メインのキャラクタ(広義にはゲームプレイ要素)を用いて敵と対戦する。具体的にはプレーヤは、例えば4人のメインのキャラクタCHM1、CHM2、CHM3、CHF(ゲームプレイ要素)でパーティ(広義には要素グループ)を組んで、敵のキャラクタCHEと対戦している。ここでキャラクタCHFは、フレンドプレーヤ(広義には他のプレーヤ)が有するキャラクタである。即ち本実施形態ではプレーヤは、自身が有するメインのキャラクタCHM1、CHM2、CHM3のみならず、フレンドプレーヤのキャラクタCHFについてもパーティに加えて、敵キャラクタCHEとの対戦ゲームをプレイすることができる。
【0082】
このゲームでは、各キャラクタには素早さを表すゲームパラメータが設定されており、このゲームパラメータを用いて行動の順番が決定される。例えば図4では、キャラクタCHM1、CHM2、CHF、CHE、CHM3の順で行動を行うことになる。そして、各キャラクタの行動のターンになった時に、プレーヤが、例えば「剣攻撃」、「魔法攻撃」、「回復」「スキル発動」などから所望の行動を選択することで、選択された行動に応じたゲーム処理が実行される。例えば図4のようにキャラクタCHM1の行動のターンの時に、「剣攻撃」を選択すれば、敵キャラクタCHEに対して剣によるCHM1の攻撃が行われ、その攻撃によるダメージの分だけ、敵キャラクタCHEのヒットポイント等が減少する。このとき、攻撃により敵キャラクタCHEに与えられるダメージは、キャラクタCHM1のゲームパラメータである攻撃力パラメータなどにより決定される。
【0083】
図4に示すような対戦を行って、敵を倒したり、ゲームのミッションをクリアすることなどにより、キャラクタのレベルは上昇して行く。
【0084】
例えば図5(A)に示す初期ステータスでは、プレーヤのメインのキャラクタCHMのレベルは1となっており、HP(ヒットポイント)、攻撃力、魔力、防御力、又は素早さなどのゲームパラメータも、当該キャラクタCHMの初期値に設定されている。
【0085】
また図5(A)に示すように、プレーヤは、メインのキャラクタCHMに対して従属キャラクタ(サブキャラクタ)CHS1を配属させることができる。即ち、キャラクタCHMをメインとした部隊を編成できる。例えば図5(A)の状態では、キャラクタCHMの配属可能数(配置可能数、スロット数)は1となっているため、1つの従属キャラクタCHS1だけを配属させることができる。そして他の3つのスロット枠は使用不可となっている。具体的には、この配属可能数は例えばキャラクタのレアリティレベルにより決められており、図5(A)では、キャラクタCHMのレアリティレベルは1(最小値)であるため、配属可能数も1となる。
【0086】
また、キャラクタCHMに従属キャラクタCHS1を配属することで、キャラクタCHMのゲームパラメータも変化する。例えば図5(A)では、キャラクタCHMのゲームパラメータに対して従属キャラクタCHS1のゲームパラメータが加算されている。具体的にはキャラクタCHMのデフォルトのHP、攻撃力、魔力、防御力、素早さのゲームパラメータは、各々、952、96、92、73、81となっており、キャラクタCHS1のHP、攻撃力、魔力、防御力、素早さのゲームパラメータ(ステータスパラメータ)は、各々、50、30、5、15、7となっている。従って、キャラクタCHMに従属キャラクタCHS1を従属させることで、キャラクタCHMの最終的なHP、攻撃力、魔力、防御力、素早さのゲームパラメータ(合計値)は、各々、952+50=1002、96+30=126、92+5=97、73+15=88、81+7=88になる。即ち、キャラクタCHMに対して従属キャラクタCHS1を配属することで、キャラクタCHMのゲームパラメータの値を上昇させることができる。
【0087】
なお、図5(A)では、従属キャラクタCHS1を従属させることで、ゲームパラメータの値が単純加算される場合の例を示したが、本実施形態はこれに限定されない。例えばキャラクタCHMのゲームパラメータ(ゲームパラメータ値)と、従属キャラクタCHS1のゲームパラメータを、所与の演算式(所与のテーブル)に代入して、キャラクタCHMの最終的なゲームパラメータを求めることができる。この場合の演算式は、単純加算の式には限定されず、所与の次数の多項式や様々な関数を用いることができる。
【0088】
図5(B)では、図4に示すような対戦を繰り返したり、様々なミッションをクリアすることで、キャラクタCHMのレベルが上昇し、当該キャラクタCHMの属性として設定された最大レベル(=30)に到達している。また、HP、攻撃力、魔力、防御力、素早さなどのゲームパラメータも、キャラクタCHMのレベルが上昇するにつれて増加しており、図5(A)の初期ステータスの時のゲームパラメータよりも十分に高くなっている。」

カ 「【0108】
2.2 従属キャラクタの入れ替え、自動編成
さて、SNS等でのネットワークゲームでは、プレーヤとそのフレンドプレーヤとの絆を強めて、その連帯感を高めることが、プレーヤのゲームプレイの継続性を高める上で重要な要素となる。
【0109】
そこで本実施形態では、複数のメインのキャラクタ(ゲームプレイ要素)でパーティ(要素グループ)を形成できるようにして、このパーティにフレンドプレーヤ(他のプレーヤ)のキャラクタが参加(所属)できるようにしている。
【0110】
例えば図8(A)では、プレーヤが有するキャラクタCHM1、CHM2、CHM3のパーティに対して、フレンドプレーヤのキャラクタCHFが参加している。CHM1、CHM2、CHM3のメインの各キャラクタに対しては、従属キャラクタが配属されており、これによりメインの各キャラクタを隊長とする各部隊が構成されている。例えばキャラクタCHM1には従属キャラクタCHS11、CHS12、CHS13、CHS14が配属され、キャラクタCHM2には従属キャラクタCHS21が配属され、キャラクタCHM3には従属キャラクタCHS31、CHS32、CHS33が配属されている。
【0111】
そして、このような複数の部隊からなる部隊群のパーティに対して、フレンドプレーヤのキャラクタCHFが参加している。具体的には、キャラクタCHFには従属キャラクタCHFS1が配属され、CHFとCHFS1からなるフレンドプレーヤの部隊が、プレーヤのパーティに参加している。
【0112】
このようにフレンドプレーヤのキャラクタCHFがパーティに参加できるようにすることで、フレンドプレーヤのキャラクタCHF(及びCHFS1)がプレーヤの助っ人として活躍できるようになる。従って、プレーヤとそのフレンドプレーヤとの絆を強めて、その連帯感を高めることができ、プレーヤのゲームプレイの継続性を高めることが可能になる。
【0113】
また本実施形態では、図8(A)に示すように、メインの各キャラクタに配属される従属キャラクタの配属可能数が、各キャラクタごとに異なるようになるため、部隊編成が多彩になり、ゲームの面白みを増すことができる。
【0114】
また本実施形態では、フレンドプレーヤのキャラクタCHFに配属された従属キャラクタCHFS1(広義には、他のプレーヤのゲームプレイ要素に配属された従属ゲームプレイ要素)と、プレーヤのキャラクタCHM1に配属された従属キャラクタCHS11(広義には、プレーヤのゲームプレイ要素に配属された従属ゲームプレイ要素)との入れ替え処理が可能になっている。
【0115】
即ち、図8(A)では、従属キャラクタCHFS1はフレンドプレーヤのキャラクタCHFに配属され、従属キャラクタCHS11はプレーヤのキャラクタCHM1に配属されていた。これに対して、図8(B)のように入れ替え処理が行われることで、従属キャラクタCHFS1はプレーヤのキャラクタCHM1に配属され、従属キャラクタCHS11はフレンドプレーヤのキャラクタCHFに配属されるようになる。」

キ 「【0120】
例えば、キャラクタはカードゲームおけるカードであり、キャラクタの部隊の集まりであるパーティは、カードゲームにおけるデッキに相当する。プレーヤは、自分がストックしている手札の中から、所望するキャラクタのカードを選択して、ゲームプレイに使用するデッキを構成する。この場合に図9(B)では、フレンドプレーヤのキャラクタCHFやその従属キャラクタCHFS1のカードが、所与の期間、プレーヤの手札として保存されることになる。」

ク 引用文献1の記載において、「CHM」という符号は、「メインのキャラクタ」を意味し、「CHS」の符号は、「従属キャラクタ」を意味することは明らかである。

ケ 上記ア?ウで摘記した事項から、引用文献1には、「配属処理部606、ゲーム処理部608を含むゲームシステム」が記載されているが、「ゲームシステム及びその処理の全部又は一部を、端末装置TM1?TMnにより実現してもよ」く、「これらの端末装置TM1?TMnとしては、」「携帯型ゲーム装置」、「家庭用ゲーム装置(据え置き型)」、或いは「業務用ゲーム装置などの種々の装置を用いることができる」ことから、引用文献1には、配属処理部606、ゲーム処理部608を含むゲーム装置が開示されているものと認められる。
また、上記ウで摘記した事項から、引用文献1には、「配属処理部606は、プレーヤがゲームプレイに使用するゲームプレイ要素に対して従属ゲームプレイ要素を配属させる処理を行う。そしてゲーム処理部608は、ゲームプレイ要素と従属ゲームプレイ要素を用いたゲーム処理を行う」ことが記載されているが、「ゲームプレイ要素」は、カードゲームで使用されるカードであり、カードゲームで使用されるカードとして、「キャラクタのカード」が記載されているから、上記エ、オ及びキで摘記した事項も参酌すると、引用文献1の記載において、「ゲームプレイ要素に対して従属ゲームプレイ要素を配属させる」ことは、「メインのキャラクタに対して従属キャラクタを配属させる」ことを意味し、「ゲームプレイ要素と従属ゲームプレイ要素を用いたゲーム処理」は、「メインのキャラクタと従属キャラクタを用いたゲーム処理」を意味するものと認められる。
したがって、引用文献1には、「配属処理部606」が、「メインのキャラクタに従属キャラクタを配属させる処理を行う」こと、「ゲーム処理部608が、メインのキャラクタと従属キャラクタを用いたゲーム処理を行う」ことが開示されているものと認められる。

(2) したがって、上記引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「メインのキャラクタに従属キャラクタを配属させる処理を行う配属処理部606と、メインのキャラクタと従属キャラクタを用いたゲーム処理を行うゲーム処理部608を含むゲーム装置であって、
プレーヤは、自分がストックしている手札の中から、所望するキャラクタを表象したカードを選択して、ゲームプレイに使用するデッキを構成し、
前記デッキを構成するカードで表象されるCHM1、CHM2、CHM3のメインの各キャラクタに対しては、前記デッキを構成するカードで表象される従属キャラクタを配属し、これによりメインの各キャラクタを隊長とする各部隊を構成し、メインのキャラクタCHM1には従属キャラクタCHS11、CHS12、CHS13、CHS14を配属し、メインのキャラクタCHM2には従属キャラクタCHS21を配属し、メインのキャラクタCHM3には従属キャラクタCHS31、CHS32、CHS33を配属し、メインのキャラクタに従属キャラクタを配属することで、メインのキャラクタのゲームパラメータに対して従属キャラクタのゲームパラメータが加算され、ゲームパラメータは、キャラクタのレベルが上昇するにつれて増加するものであり、
フレンドプレーヤのキャラクタCHFに配属された従属キャラクタCHFS1と、プレーヤのメインのキャラクタCHM1に配属された従属キャラクタCHS11との入れ替え処理が可能になっており、入れ替え処理が行われることで、従属キャラクタCHFS1はプレーヤのメインのキャラクタCHM1に配属され、従属キャラクタCHS11はフレンドプレーヤのキャラクタCHFに配属されるようになる、
ゲーム装置。」

2 引用文献2について
(1) 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2014-161527号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【0039】
図1に戻って、プレーヤ2は本実施形態のゲームをプレイするための事前準備として、ゲームカード3を入手する必要がある。そして、プレーヤ登録手続きをしてアカウントを取得して、入手したゲームカード3をゲームで利用可能とするためのカード登録手続きをする。そして、カード登録を済ませて有効にしたゲームカード3の中から所定枚数を選択してデッキ19(山札の意)を編成する。
【0040】
ゲームカード3は、本実施形態におけるゲームをプレイするために必要な要素、すなわちゲームプレイ要素でありゲームコンテンツの一部を構成する。ゲームカード3は、ゲーム製作者側が用意する。本実施形態のゲームカード3には、複数の種類が設定されている。各種類には、ゲーム内での利用価値や入手可能なチャンスの多寡に応じたランク、所謂「レアリティ」が設定されている。そして、ゲームカード3には、カード種類を示す識別情報である「カード種類ID」と、固有識別情報である「シリアルナンバ」とが付与されている。」

イ 「【0045】
デッキ編成では、有効カードリスト552に登録されているカードから所定数を選択してデッキ19を編成する。図1では、デッキ19は一つだけ図示しているが、複数のデッキが編成・登録可能であり、プレイ開始前に登録済デッキの中から何れかのデッキをプレイ用に選択する。」

(2) したがって、上記引用文献2には、プレーヤは、ゲームプレイ要素でありゲームコンテンツの一部を構成するゲームカードの中から所定枚数を選択して編成した複数のデッキを登録可能であり、登録後のデッキの中から何れかのデッキをプレイ用に選択するという技術的事項が記載されていると認められる。

3 引用文献3について
(1) 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(チェインクロニクルV 義勇軍 絆の書 CHAIN CHRONICLE V,株式会社KADOKAWA,2014年 8月12日,第572巻,第7頁)には、次の事項が記載されている。

「パーティの人数は最大6人。各キャラクターにはコストが設定されており、合計値がパーティコスト内に収まるようにメンバーを編成する必要がある。コストオーバーや同一キャラクターを複数組み込むことはできない。」

(2) したがって、上記引用文献3には、ゲームにおいて、複数のキャラクターによるパーティのメンバーを編成するときに、同一キャラクターを複数組み込むことができないようにするという技術的事項が記載されていると認められる。

第4 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア 引用発明の「カード」は、本願発明1の「オブジェクト」に相当する。

イ 引用発明の「カード」は、「キャラクタを表象したカード」であるから、「カード」と「キャラクタ」は対応するものといえ、引用発明において、「キャラクタ」が複数であることは明らかである。したがって、引用発明の「プレーヤ」が「自分のストックしている手札の中から所望のカードを選択して」「構成される」「デッキ」は、本願発明1の「複数のキャラクタのそれぞれに対応する複数のオブジェクトのうちから選択された一又は複数のオブジェクトによる編成」に相当する。

ウ 引用発明の「デッキ」は、「ゲームプレイに使用する」ものであり、引用発明は「ゲーム処理を行うゲーム処理部608を含むゲーム装置」であるところ、本願発明1と引用発明とは、「編成を」「用いてゲームの処理を行うゲーム装置」である点で共通する。

エ 上記イで検討したとおり、引用発明の「カード」は、「キャラクタを表象したカード」であるから、「キャラクタを表象」するための情報を持つことは明らかである。
してみると、本願発明1の「オブジェクト」と引用発明の「カード」は、「それぞれのキャラクタを示す識別情報」を有する点で共通する。

オ 引用発明の「メインのキャラクタ」及び「従属キャラクタ」は、いずれも「キャラクタ」であって、「カードで表象され」、かつ、「キャラクタのレベルが上昇するにつれて増加する」「ゲームパラメータ」を有する。
したがって、本願発明1の「パラメータ」と引用発明の「ゲームパラメータ」とは、「ゲームの進行に応じて値が変動する」点で共通し、上記イで検討したとおり、引用発明の「キャラクタ」と「カード」が対応するので、本願発明1の「オブジェクト」と引用発明の「カード」は、「ゲームの進行に応じて値が変動するパラメータ」を有する点でも共通する。

カ 引用発明の「メインのキャラクタ」及び「従属キャラクタ」は、「カードで表象され」、「メインのキャラクタに従属キャラクタを配属することで、メインのキャラクタのゲームパラメータに対して従属キャラクタのゲームパラメータが加算され」ることから、「メインのキャラクタ」の「ゲームパラメータ」が、配属される「従属キャラクタ」の「ゲームパラメータ」に基づいて変更されることとなる。
したがって、引用発明の「メインのキャラクタ」を表象した「カード」は、本願発明1の「第一オブジェクト」に相当し、引用発明の「従属キャラクタ」を表象した「カード」は、本願発明1の「第二オブジェクト」に相当する。

キ 引用発明において、プレーヤは、自分がストックしている手札の中から、所望するキャラクタのカードを選択して、ゲームプレイに使用するデッキを構成するのであるから、当該「デッキ」において、「メインのキャラクタ」として選択されるカードは、当該プレーヤに対応付けられているものと解される。また、引用発明において、「デッキ」を構成する「メインの各キャラクタ」は、「CHM1」、「CHM2」、「CHM3」と複数選択されるものと認められる。
したがって、本願発明1と引用発明とは、「前記複数のオブジェクトのうちのユーザ情報に対応付けられたオブジェクトのうち、編成される一又は複数の第一オブジェクトを選択する指示を」「受け付ける」受付部に相当する機能を備える点で共通する。

ク 引用発明において、プレーヤは、自分がストックしている手札の中から、所望するキャラクタのカードを選択して、ゲームプレイに使用するデッキを構成するのであるから、当該「デッキ」において「従属キャラクタ」として選択されるカードも、当該プレーヤに対応付けられているものと解される。
そして、本願発明1の「判定部」は、「複数のオブジェクトのうちのユーザ情報に対応付けられたオブジェクト」を対象として、「前記第一受付部により選択する指示を受け付けた一又は複数の第一オブジェクトのうちから選択された特定の第一オブジェクトと共通のキャラクタを示す前記識別情報を有し、且つ前記特定の第一オブジェクトと前記付随情報の少なくとも一部が異なるオブジェクトのみを、前記特定の第一オブジェクトに対応付けて編成する第二オブジェクトとして選択可能なオブジェクトであると判定」しているので、「第二オブジェクト」は、少なくとも「ユーザ情報に対応付けられたオブジェクト」であると解される。
したがって、本願発明1の「第二オブジェクト」と、引用発明の「従属キャラクタ」を表象した「カード」とは、「ユーザ情報に対応付けられたオブジェクト」のうちから選択されるものである点で共通する。

ケ 引用発明においては、「メインのキャラクタCHM1には従属キャラクタCHS11、CHS12、CHS13、CHS14が配属され、メインのキャラクタCHM2には従属キャラクタCHS21が配属され、メインのキャラクタCHM3には従属キャラクタCHS31、CHS32、CHS33が配属され」ることから、各従属キャラクタは、特定のメインのキャラクタに対応付けて編成されるものと認められる。
したがって、本願発明1と引用発明とは、「前記特定の第一オブジェクトに対応付けて編成する第二オブジェクトを選択する指示を受け付ける」限りにおいて、本願発明1の「第二受付部」に相当する機能を備える点で共通する。また、本願発明1と引用発明とは、「前記第二受付部により選択する指示を受け付けた第二オブジェクトと前記特定の第一オブジェクトとを対応付けする対応付け部」に相当する機能を備える点で共通する。

コ 引用発明において、「メインのキャラクタのゲームパラメータに対して従属キャラクタのゲームパラメータが加算され」ることから、本願発明1と引用発明とは、「前記対応付け部により対応付けされた第二オブジェクトが有する前記パラメータに基づいて、当該第二オブジェクトに対応付けられた前記特定の第一オブジェクトが有する前記パラメータを変更する変更部」に相当する機能を備える点で共通する。

サ 引用発明において、「フレンドプレーヤのキャラクタCHFに配属された従属キャラクタCHFS1と、プレーヤのキャラクタCHM1に配属された従属キャラクタCHS11との入れ替え処理が可能になっており、入れ替え処理が行われることで、従属キャラクタCHFS1はプレーヤのキャラクタCHM1に配属され、従属キャラクタCHS11はフレンドプレーヤのキャラクタCHFに配属されるようになる」が、「従属キャラクタCHS11」は、「メインのキャラクタCHM1」に配属されていたところ、「メインのキャラクタCHM1」と「従属キャラクタCHS11」とは対応付けられていたものと解され、「従属キャラクタCHS11」が、フレンドプレーヤの「キャラクタCHF」に配属されるようになる際には、当該対応付けが解除されるものと認められる。
したがって、本願発明1と引用発明とは、「前記対応付け部により対応付けされた第二オブジェクトと前記特定の第一オブジェクトとの対応付けを解除する指示を受け付ける」限りにおいて、本願発明1の「第三受付部」に相当する機能を有する点で共通する。また、本願発明1と引用発明とは、「前記第三受付部が前記対応付けを解除する指示を受け付けた場合、前記第二オブジェクトと前記特定の第一オブジェクトとの対応付けを解除する解除部」に相当する機能を備える点で共通する。

上記ア?サより、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

[一致点]
「複数のキャラクタのそれぞれに対応する複数のオブジェクトのうちから選択された一又は複数のオブジェクトによる編成を用いて行うゲームの処理を行なうゲーム装置であって、
前記複数のオブジェクトのそれぞれは、それぞれのキャラクタを示す識別情報とゲームの進行に応じて値が変動するパラメータとを有し、
前記編成には、複数のオブジェクトのうちから選択された一又は複数の第一オブジェクトが含まれるとともに、前記第一オブジェクトのそれぞれに対応付けられた第二オブジェクトをさらに含むことが可能であり、
前記複数のオブジェクトのうちのユーザ情報に対応付けられたオブジェクトのうち、編成される一又は複数の第一オブジェクトを選択する指示を受け付ける受付部と、
前記複数のオブジェクトのうちのユーザ情報に対応付けられたオブジェクトのうち、特定の第一オブジェクトに対応付けて編成する第二オブジェクトを選択する指示を受け付ける第二受付部と、
前記第二受付部により選択する指示を受け付けた第二オブジェクトと前記特定の第一オブジェクトとを対応付けする対応付け部と、
前記対応付け部により対応付けされた第二オブジェクトが有する前記パラメータに基づいて、当該第二オブジェクトに対応付けられた前記特定の第一オブジェクトが有する前記パラメータを変更する変更部と、
前記対応付け部により対応付けされた第二オブジェクトと前記特定の第一オブジェクトとの対応付けを解除する指示を受け付ける第三受付部と、
前記第三受付部が前記対応付けを解除する指示を受け付けた場合、前記第二オブジェクトと前記特定の第一オブジェクトとの対応付けを解除する解除部と、
を備えるゲーム装置」

[相違点1]
本願発明1は、「複数のキャラクタのそれぞれに対応する複数のオブジェクトのうちから選択された一又は複数のオブジェクトによる編成を複数用いて行うゲームの処理を行なう」のに対して、引用発明は、デッキを複数用いるのか否かが特定されていない点。

[相違点2]
本願発明1は、「複数のオブジェクトのそれぞれ」が、「予め設定された付随情報」を有するのに対して、引用発明は、カードが、「予め設定された付随情報」を有するのか否かが特定されていない点。

[相違点3]
本願発明1は、「編成される一又は複数の第一オブジェクトを選択する指示を、同一の編成において複数の第一オブジェクトが選択される場合には共通のキャラクタを示す識別情報を有する第一オブジェクトの重複を禁止するように受け付ける」のに対して、引用発明は、そのような重複を禁止するのか否か特定されていない点。

[相違点4]
本願発明1が、「前記複数のオブジェクトのうちのユーザ情報に対応付けられたオブジェクトのうち、前記第一受付部により選択する指示を受け付けた一又は複数の第一オブジェクトのうちから選択された特定の第一オブジェクトと共通のキャラクタを示す前記識別情報を有し、且つ前記特定の第一オブジェクトと前記付随情報の少なくとも一部が異なるオブジェクトのみを、前記特定の第一オブジェクトに対応付けて編成する第二オブジェクトとして選択可能なオブジェクトであると判定する判定部」を備え、「前記判定部により第二オブジェクトとして選択可能なオブジェクトであると判定されたオブジェクトのうち、前記特定の第一オブジェクトに対応付けて編成する第二オブジェクトを選択する指示を受け付ける」のに対して、引用発明が、そのような「判定部」を備えておらず、そのような「判定部」によって選択可能なオブジェクトと判定されたオブジェクトのうちから、第二オブジェクトを選択するものではない点。

[相違点5]
本願発明1が、「複数の編成のうちの第一編成において前記第二オブジェクトとして編成されたオブジェクトの前記パラメータが、当該オブジェクトが前記第一編成以外の第二編成において前記第一オブジェクトとして編成されてゲームの進行に応じて変更された場合、変更された当該オブジェクトの前記パラメータに基づいて、当該オブジェクトが前記第一編成において前記第二オブジェクトとして対応付けられた第一オブジェクトの前記パラメータをさらに変更する」のに対して、引用発明が、このような変更をすることが特定されていない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑みて、相違点1及び5について検討する。
引用文献2に記載された技術的事項を考慮すると、プレーヤは、自分がストックしている手札の中から、所望するキャラクタのカードを選択して、ゲームプレイに使用するデッキを構成するゲームを行うところの引用発明において、「デッキ」を複数用意して、選択的に用いるようにし、相違点1に係る、本願発明1の発明特定事項をなすことは、当業者が容易に想到し得るとはいえるものの、「複数の編成のうちの第一編成において前記第二オブジェクトとして編成されたオブジェクトの前記パラメータが、当該オブジェクトが前記第一編成以外の第二編成において前記第一オブジェクトとして編成されてゲームの進行に応じて変更された場合、変更された当該オブジェクトの前記パラメータに基づいて、当該オブジェクトが前記第一編成において前記第二オブジェクトとして対応付けられた第一オブジェクトの前記パラメータをさらに変更する」ことまでは、引用文献2には記載されていない。また、このように第一オブジェクトのパラメータを変更することは、引用文献3にも記載されていない。
したがって、引用発明に対して、引用文献2又は3に記載された技術的事項を適用しても、直ちに、上記相違点5に係る、本願発明1の発明特定事項を導き出すことはできない。
そして、このようにパラメータを変更することが、本願出願時の周知技術であることを示す証拠もない。
さらに、本願発明1は、第一編成に第二オブジェクトとして設定されているオブジェクトが、前記第一編成以外の第二編成で第一オブジェクトとしてバトルされることによってパラメータの値が上昇すると、その第二オブジェクトが設定されている第一編成での第一オブジェクトのパラメータの値がさらに上昇し、ブースト効果をさらに高めることができるという格別な効果を奏し、本願発明1は、共通のキャラクタのオブジェクトをユーザが複数所持している場合に、同じキャラクタのオブジェクトをより有効に活用できるという格別な効果を奏する。

(3)小括
よって、上記相違点2ないし4について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2及び3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2ないし4について
本願発明2ないし4は、本願発明1を、さらに限定するものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2及び3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

3 本願発明5及び6について
本願発明5及び6は、それぞれ、本願発明1に対応するゲームシステム及びゲーム制御プログラムの発明であるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2及び3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は、平成30年1月17日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲に記載される請求項1ないし7について、上記引用文献1ないし3に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかしながら、上記のとおり、本願発明1ないし6は、上記引用文献1に記載された発明、上記引用文献2及び3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由通知について
1 平成31年1月21日付け拒絶理由通知書について
(1) 当審では、平成31年1月21日付け拒絶理由通知書において、平成30年6月12日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲の記載に対して、
ア 請求項1の「第一オブジェクトを選択する」という記載の意味が明確でない旨、
イ 請求項1の「オブジェクト」が「キャラクタを示す識別情報」以外にどのような情報を含むのか明確でない旨、
ウ 請求項1の「第二オブジェクトとして選択する指示を受け付け」た「オブジェクト」が、「前記第一編成に編成される前記第一オブジェクトとして選択された前記第一オブジェクトと共通のキャラクタを示す識別情報を有し且つ少なくとも一の付随情報が異なる」ことをどのように判定しているのか明確でない旨、
エ 請求項1の「第二受付部」が「第二オブジェクト」として受け付ける対象となるオブジェクトが明確でない旨、
オ 請求項1の「前記第二受付部が受け付けた」という修飾語の対象が明確でない旨、
カ 請求項1の「前記第二受付部が受け付けた前記第二オブジェクト」の意味が明確でない旨、
キ 請求項1の「第一オブジェクト」がどのような情報を含むのか明確でないため、「第一オブジェクト」の「パラメータ」が「変更」されるという記載の意味が明確でない旨、
ク 請求項3の「第一オブジェクト」がどのような情報を含むのか明確でないため、「第一オブジェクト」の「パラメータの変更後の値が所定の第1条件を満たす」という記載の意味が明確でない旨、
ケ 請求項5の「第一オブジェクト」がどのような情報を含むのか明確でない旨、
の拒絶理由を通知した。
(2) これらの拒絶理由に対して、平成31年3月6日付け手続補正書において、
ア 請求項1について、「複数のオブジェクトのうち、第一編成に編成される第一オブジェクトを選択する」と補正されたことで、上記(1)アの拒絶理由が解消され、
イ 請求項1について、「オブジェクトのそれぞれに付随する付随情報」、「複数のオブジェクトのそれぞれには前記第一オブジェクトとして選択された場合にゲームの進行に応じて変更されるパラメータが対応付けられており」と補正されたことで、上記(1)イ、キ?ケの拒絶理由が解消され、
ウ 請求項1について、「判定部」が追加されたことで、上記(1)ウの拒絶理由が解消され、
エ 請求項1について、「前記判定部により前記第二オブジェクトとして選択可能なオブジェクトであると判定されたオブジェクトのうち、前記第一編成に編成される前記第二オブジェクトを選択する指示を受け付ける第二受付部」と補正されたことで、上記(1)エ?カの拒絶理由が解消された。

2 令和1年5月30日付け拒絶理由通知書について
(1) 当審では、令和1年5月30日付け拒絶理由通知書において、平成31年3月6日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲の記載に対して、
ア 請求項1の記載は、ユーザ情報と対応付けられていないオブジェクトを、第一オブジェクト及び第二オブジェクトとして選択可能とする態様を含むものであるが、このような態様は発明の詳細な説明に記載されていない旨、
イ 請求項1の記載は、オブジェクトの「付随情報」が、「ゲームの進行に応じて変更されるパラメータ」を含む態様を含むものであるが、このような態様は発明の詳細な説明に記載されていない旨、
ウ 請求項1の「前記第一オブジェクトに基づいて、前記複数のオブジェクトのうち、前記第一オブジェクトと共通のキャラクタを示す識別情報を有し、且つオブジェクトのそれぞれに付随する付随情報のうち少なくとも一の付随情報が異なるオブジェクトのみを、前記第一編成において前記第一オブジェクトに対応付ける第二オブジェクトとして選択可能なオブジェクトであると判定する」という記載における、「第一オブジェクト」が、選択されたものでないことは、発明の詳細な説明に記載されていない旨、
エ 請求項1の「第一オブジェクト」を1つしか選択しない場合における、「共通のキャラクタを示す識別情報を有する前記第一オブジェクトの重複を禁止する」ことの技術的意味が明確でない旨、
オ 請求項1の「第一オブジェクト」及び「第二オブジェクト」が、「第一編成」に編成されるのか、「第二編成」に編成されるのか明確でない旨、
カ 請求項3の「選択部」の技術的意味が明確でない旨、
キ 請求項7の「対応付けステップ」及び「変更ステップ」の技術的意味が明確でない旨、
の拒絶理由を通知した。
(2) これらの拒絶理由に対して、令和1年6月19日付け手続補正書において、
ア 請求項1について、「複数のキャラクタのそれぞれに対応する複数のオブジェクトのうちから選択された一又は複数のオブジェクトによる編成を複数用いて行うゲームの処理を行なうゲーム装置であって、・・・前記編成には、複数のオブジェクトのうちから選択された一又は複数の第一オブジェクトが含まれるとともに、前記第一オブジェクトのそれぞれに対応付けられた第二オブジェクトをさらに含むことが可能であり、」、「複数の編成のうちの第一編成において前記第二オブジェクトとして編成されたオブジェクトの前記パラメータが、当該オブジェクトが前記第一編成以外の第二編成において前記第一オブジェクトとして編成されてゲームの進行に応じて変更された場合、変更された当該オブジェクトの前記パラメータに基づいて、当該オブジェクトが前記第一編成において前記第二オブジェクトとして対応付けられた第一オブジェクトの前記パラメータをさらに変更する」と補正されたことで、上記(1)オの拒絶理由が解消され、
イ 請求項1について、「前記複数のオブジェクトのそれぞれは、それぞれのキャラクタを示す識別情報と予め設定された付随情報とゲームの進行に応じて値が変動するパラメータとを有し、」と補正されたことで、上記(1)イの拒絶理由が解消され、
ウ 請求項1について、「前記複数のオブジェクトのうちのユーザ情報に対応付けられたオブジェクトのうち、編成される一又は複数の第一オブジェクトを選択する」と補正され、請求項4が削除されるとともに、請求項1について、「前記複数のオブジェクトのうちのユーザ情報に対応付けられたオブジェクトのうち、・・・第二オブジェクトとして選択可能なオブジェクトであると判定する」と補正されたことで、上記アの拒絶理由が解消され、
エ 請求項1について、「前記第一受付部により選択する指示を受け付けた一又は複数の第一オブジェクトのうちから選択された」「第一オブジェクト」を「特定の第一オブジェクト」とする補正がされたことで、上記(1)ウの拒絶理由が解消され、
オ 請求項1について、「同一の編成において複数の第一オブジェクトが選択される場合には共通のキャラクタを示す識別情報を有する第一オブジェクトの重複を禁止するように受け付ける」と補正されたことで、上記(1)エの拒絶理由が解消され、
カ 請求項1について、「前記第二受付部により選択する指示を受け付けた第二オブジェクト」と補正され、請求項3について、「前記判定部により前記第二オブジェクトとして選択可能なオブジェクトであると判定されたオブジェクトのうち、前記特定の第一オブジェクトの前記パラメータの変更後の値が所定の第1条件を満たすオブジェクトを選択し、選択したオブジェクトを前記第二オブジェクトとして選択する指示を前記第二受付部に行う選択部」と補正されたことで、上記(1)カの拒絶理由が解消され、
キ 補正前の請求項7に対応する請求項6について、「前記第二受付ステップにより選択する指示を受け付けた第二オブジェクトと前記特定の第一オブジェクトとを対応付けする対応付けステップと、
前記対応付け部により対応付けされた第二オブジェクトが有する前記パラメータに基づいて、当該第二オブジェクトに対応付けられた前記特定の第一オブジェクトが有する前記パラメータを変更する変更ステップと、」と補正されたことで、上記(1)キの拒絶理由が解消された。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審拒絶理由によっては、本願は拒絶することはできない。
また、ほかに本願を拒絶すべき理由は発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-08-13 
出願番号 特願2015-46215(P2015-46215)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (A63F)
P 1 8・ 121- WY (A63F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 上田 泰奈良田 新一  
特許庁審判長 吉村 尚
特許庁審判官 塚本 丈二
尾崎 淳史
発明の名称 ゲーム装置、ゲームシステム、及びゲーム制御プログラム  
代理人 西澤 和純  
代理人 小林 淳一  

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