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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01B |
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管理番号 | 1353991 |
審判番号 | 不服2018-2891 |
総通号数 | 237 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-09-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-02-28 |
確定日 | 2019-08-08 |
事件の表示 | 特願2013-189479「導電性粒子、導電材料及び接続構造体」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 3月23日出願公開、特開2015- 56306〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成25年9月12日に出願された特願2013-189479号であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。 平成29年 4月14日付け :拒絶理由通知書 平成29年 6月21日 :意見書及び手続補正書の提出 平成29年11月21日付け :拒絶査定 平成30年 2月28日 :審判請求書の提出 平成30年12月11日付け :拒絶理由通知書 平成31年 2月14日 :意見書及び手続補正書の提出 (以下、この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。) 第2 本願発明 本願の請求項1ないし6に係る発明は、本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「基材粒子と、 前記基材粒子の表面上に配置されており、かつ金属又は金属の合金により形成された導電部とを備え、 前記導電部が外表面に複数の突起を有し、 前記突起が、前記金属又は金属の合金の粒子が列状に複数個連結して形成されておらず、かつ前記金属又は金属の合金により形成されている複数の第1の突起部を有し、 前記突起が、前記金属又は金属の合金の粒子が列状に複数個連結した粒子連結体により形成された第2の突起部を少なくとも1つ有し、 前記第1の突起部と前記第2の突起部との全個数100%中の70%以上、99%以下が、前記第1の突起部であり、 前記第1の突起部の高さが、前記導電部の前記突起が無い部分の厚みの0.5倍以上である、導電性粒子。」 第3 拒絶の理由 平成30年12月11日付けの当審が通知した拒絶理由は、以下の理由を含むものである。 「1.(進歩性) この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 ・・・ 記 ●理由1、2(進歩性・新規性) 請求項1ないし6 引用文献 1 ・・・ 引 用 文 献 等 一 覧 1.特開2012-113850号公報 」 第4 引用文献の記載及び引用発明 1 引用文献1(特開2012-113850号公報)の記載 引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、合議体による。以下同じ)。 (1) 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 芯材粒子の表面に、金属又は合金の皮膜が形成された導電性粒子からなる導電性粉体であって、 前記導電性粒子は、前記皮膜の表面から突出した突起部を複数有し、 前記突起部は、前記金属又は合金の粒子が列状に複数個連結してなる粒子連結体から構成されていることを特徴とする導電性粉体。」 (2) 「【発明が解決しようとする課題】 【0007】 ところで、近年の電子機器類の一層の小型化に伴い、電子回路の回路幅やピッチはますます小さくなっている。それに伴い、導電性接着剤、異方性導電膜及び異方性導電接着剤等に用いられる導電性粉体として、導電性の高いものが必要である。上述した各種の形状を有する突起を備えた導電性粉体を用いれば導電性をある程度高めることは可能であるが、導電性の向上の要求はますます厳しくなっており、これまでよりも一層高い導電性を有する粒子が求められている。 【0008】 したがって本発明の目的は、前述した従来技術の導電性粉体よりも、各種の性能が更に向上した導電性粉体を提供することにある。」 (3) 「【0011】 本発明の導電性粉体は、それを構成する導電性粒子が有する突起部が、列状に複数個連結してなる粒子連結体から構成されていることで、従来の導電性粉体よりも導電性が一層向上する。 【図面の簡単な説明】 【0012】 【図1】図1は、実施例1で得られた導電性粒子の走査型電子顕微鏡像である。 ・・・」 (4) 「【0016】 後述する図1に示すように、連結突起部は、これを走査型電子顕微鏡(SEM)観察すると、隣り合う突起部形成粒子間に粒界が観察される。この事実によって連結突起部は、複数個の突起部形成粒子の連結体からなることが確認される。これに対して、例えば先に述べた特許文献3に記載の導電性粒子における突起部には粒界は観察されず、1個の突起部が、細長い1個の結晶粒から構成されていると考えられる。 【0017】 突起部形成粒子は、これが複数個列状に連結して連結突起部を形成している。列状に連結しているとは、複数個の突起部形成粒子が一方向に延びるように連結していることを意味する。連結突起部は、例えば複数個の突起部形成粒子が直線状に連結して構成されていてもよく、あるいは複数個の突起部形成粒子の連結によって、蛇行した形状の連結突起部が形成されてもよい。また、直線状部と蛇行部とが混在した形状であってもよい。更に連結突起部は、金属皮膜と結合している基部から先端部に向かうまでの間で2分岐又はそれよりも多数に分岐していてもよい。例えば連結突起部は、Y字状をなしていてもよく、あるいは樹状をなしていてもよい。1個の導電性粒子に着目したとき、そこに存在する複数個の連結突起部の形状は同じであってもよく、あるいは様々な形状の複数個の連結突起部が1個の導電性粒子中に混在していてもよい。 【0018】 各連結突起部においては、これを構成する突起部形成粒子の数は同じでもよく、あるいは異なっていてもよい。連結突起部は、少なくとも2個の突起部形成粒子が列状に連結して構成されていれば所望の効果が奏されるが、好ましくは2?30個、更に好ましくは2?20個の突起部形成粒子が列状に連結していることが、導電性の一層の向上の点から有利である。連結突起部を構成する突起部形成粒子の個数は、該連結突起部をSEM観察して計測する。」 (5) 「【0019】 個々の導電性粒子は、それに存在する突起部がすべて複数個の突起部形成粒子の列状粒子連結体からなることが理想的であるが、不可避的に単一の突起部形成粒子からなる突起部や、複数個の突起部形成粒子が塊状に結合した突起部が少数存在していてもよい。1個の導電性粒子に着目した場合、該粒子に存在する突起部を任意に10個サンプリングしたときに、そのうちの2個以上の突起部が、複数個の突起部形成粒子の列状粒子連結体からなるものであれば、本発明の効果が十分に奏される。 【0020】 連結突起部が、複数個の突起部形成粒子の列状粒子連結体から構成されることで、導電性が向上する理由は完全に明確ではないが、本発明者らは次のように考えている。すなわち、連結突起部は複数個の突起部形成粒子の列状粒子連結体から構成されているので、そのアスペクト比が高いものになっている。したがって、導体との電気伝導性をとるために、本発明の導電性粉体を圧縮したときに、アスペクト比の高い連結突起部が、導体の表面に存在する薄い酸化膜や、導体と導電性粒子の間に存在する樹脂を突き破りやすい。また、圧縮に起因して連結突起部がその途中で折れる場合があり、その折れた部位が導体と導電性粒子との間に存在する空間を埋めて、導電性を確保する。更に、連結突起部が折れることで、実装のまさにその瞬間に、酸化されていない清浄な金属面が露出することになる。これらの理由によって、本発明の導電性粉体は、その導電性が高くなると考えられる。 (6) 「【実施例】 【0076】 以下、実施例により本発明を更に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。 【0077】 〔実施例1ないし5及び比較例1ないし5〕 ・・・ 【0080】 実施例1及び比較例1で得られた導電性粒子のSEM像を図1及び図2に示す。図1から明らかなように、実施例1で得られた導電性粒子は、微小粒子が列状に連なった多数の連結突起部を有していることが判る。また、連結突起部と皮膜が連続体になっていることが判る。一方、図2から明らかなように、比較例1で得られた導電性粒子は、突起部が形成されているもののこの突起部は単一の粒子から構成されている。なお、導電性粒子のうち、一次粒子が占める重量は、実施例1ないし5においていずれも85重量%以上であった。」 (7) 「【0087】 〔連結突起部の数〕 走査型電子顕微鏡(SEM)を用い、導電性粒子を25000倍に拡大して10視野を観察し、特開2010-118334号公報を参照して、導電性粒子1個の表面に見られる小さい粒が少なくとも2個以上列状に連なった連結突起部の存在個数の平均値を算出した。」 (8) 「【0091】 〔導電性〕 エポキシ主剤JER828(三菱化学社製)を100重量部、硬化剤アミキュアPN23J(味の素ファインテクノ社製)を30重量部、粘度調整剤2重量部を遊星式攪拌機で混練して絶縁性接着剤を調製した。これに導電性粒子15重量部を配合してペーストを得た。バーコーターを用い、このペーストをシリコーン処理ポリエステルフィルム上に塗布し乾燥させた。得られた塗工フィルムを用い、全面をアルミニウムで蒸着したガラスと50μmピッチに銅パターンを形成したポリイミドフィルム基板との間の接続を行った。そして電極間の導通抵抗を測定することで、導電性粒子の導電性を評価した。」 (9) 「【表2】 」 (10) 「【図1】 」 2 引用発明 引用文献1の上記1(1)、(5)?(10)の記載からみて、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。 「芯材粒子の表面に、金属又は合金の皮膜が形成された導電性粒子からなる導電性粉体であって、 前記導電性粒子は、前記皮膜の表面から突出した突起部を複数有し、 前記突起部は、前記金属又は合金の粒子が列状に複数個連結してなる粒子連結体から構成されているほか、 突起部には、単一の突起部形成粒子からなる突起部や、複数個の突起部形成粒子が塊状に結合した突起部が存在している、導電性粉体。」 第5 対比・判断 1 本願発明と引用発明との対比 本願発明と引用発明を対比すると、引用発明の「芯材粒子」、「金属又は合金の被膜」、「突起部」、「導電性粉体」は、それぞれ、本願発明の「基材粒子」、「金属又は金属の合金により形成された導電部」、「突起」、「導電性粒子」に相当する。 引用発明の「金属又は合金の粒子が列状に複数個連結してなる粒子連結体から構成されてい」る突起部(引用発明の「粒子連結体から構成されている突起部」を、以下「連結突起部」ともいう。)は、引用文献1の上記第4 1(4)及び(7)の記載から、本願発明の「前記金属又は金属の合金の粒子が列状に複数個連結した粒子連結体により形成された第2の突起部」に相当する。 引用発明の連結突起部のほかに存在している「単一の突起部形成粒子からなる突起部や、複数個の突起部形成粒子が塊状に結合した突起部」は、金属又は金属の合金の粒子が列状に複数個連結して形成されていない突起部であるから、本願発明の「前記金属又は金属の合金の粒子が列状に複数個連結して形成されておらず、かつ前記金属又は金属の合金により形成されている複数の第1の突起部」に相当する。 そうすると、引用発明と本願発明は、以下の点で一致し、 「基材粒子と、 前記基材粒子の表面上に配置されており、かつ金属又は金属の合金により形成された導電部とを備え、 前記導電部が外表面に複数の突起を有し、 前記突起が、前記金属又は金属の合金の粒子が列状に複数個連結して形成されておらず、かつ前記金属又は金属の合金により形成されている複数の第1の突起部を有し、 前記突起が、前記金属又は金属の合金の粒子が列状に複数個連結した粒子連結体により形成された第2の突起部を少なくとも1つ有する、 、導電性粒子。」 次の点で相違する。 <相違点1> 第1の突起部の割合に関し、本願発明は、「前記第1の突起部と前記第2の突起部との全個数100%中の70%以上、99%以下」と特定するのに対し、引用発明では、この点を特定しない点。 <相違点2> 第1の突起部(単一の突起部形成粒子からなる突起部や、複数個の突起部形成粒子が塊状に結合した突起部)の高さに関し、本願発明は、「前記導電部の前記突起が無い部分の厚みの0.5倍以上である」と特定するのに対して、引用発明では、この点を特定しない点。 2 相違点1についての判断 引用文献1の「1個の導電性粒子に着目した場合、該粒子に存在する突起部を任意に10個サンプリングしたときに、そのうちの2個以上の突起部が、複数個の突起部形成粒子の列状粒子連結体からなるものであれば、本発明の効果が十分に奏される。」(段落【0019】)との記載によれば、引用発明の「連結突起部」(第2の突起部)は20%以上必要とされているものであるから、引用発明の連結突起部以外の突起である「単一の突起部形成粒子からなる突起部や、複数個の突起部形成粒子が塊状に結合した突起部」(第1の突起部)の全突起部に占める比率は80%以下とすることの動機付けとなる記載があるといえる。 このことを踏まえて、相違点1の数値範囲のうち、下限値を70%とすることの技術的、臨界的な意義について、以下検討する。 (1) 本願明細書の記載 本願明細書には、相違点1に係る第1の突起部の割合に関し、以下の記載がある。 ア 「【0004】 上記導電性粒子の一例として、下記の特許文献1には、芯材粒子(基材粒子)と、該芯材粒子の表面に、金属又は合金の皮膜とを有する導電性粒子が開示されている。この導電性粒子は、上記皮膜の表面から突出した複数の突起部を有する。上記突起部は、金属又は合金の複数の粒子が列状に連結した粒子連結体から構成されている。特許文献1の実施例及び比較例では、連結突起部の割合が32%以上である導電性粒子が示されている。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0005】 【特許文献1】特開2012-113850号公報」(当審注:「特許文献1」は、この拒絶理由における引用文献1と同じ) イ 「【0007】 しかしながら、特許文献1に記載のような従来の導電性粒子を用いて、電極間を電気的に接続した場合には、接続抵抗が高くなることがある。 【0008】 電極の表面及び導電性粒子の表面には、酸化膜が形成されていることが多い。特許文献1に記載の導電性粒子では、電極間の接続時に、突起が折れやすく、結果として、突起が酸化膜を十分に貫通しないことがある。このため、電極間の接続抵抗が高くなることがある。 【0009】 本発明の目的は、電極間を電気的に接続した場合に、接続抵抗を低くすることができる導電性粒子を提供することである。また、本発明の目的は、上記導電性粒子を用いた導電材料及び接続構造体を提供することである。」 ウ 「【発明の効果】 【0016】 本発明に係る導電性粒子は、基材粒子と、上記基材粒子の表面上に配置されており、かつ金属又は金属の合金により形成された導電部とを備え、上記導電部が外表面に複数の突起を有し、上記突起が、上記金属又は金属の合金の粒子が列状に複数個連結して形成されておらず、かつ上記金属又は金属の合金により形成されている複数の第1の突起部を有し、上記突起が、上記金属又は金属の合金の粒子が列状に複数個連結した粒子連結体により形成された第2の突起部を有さないか、又は上記金属又は金属の合金の粒子が列状に複数個連結した粒子連結体により形成された第2の突起部を少なくとも1つ有し、上記第1の突起部と上記第2の突起部との全個数100%中の70%以上が、上記第1の突起部であるので、本発明に係る導電性粒子を用いて電極間を電気的に接続した場合に、接続抵抗を低くすることができる。」 エ 「【0021】 本発明に係る導電性粒子における上述した構成の採用により、本発明に係る導電性粒子を用いて、電極間を電気的に接続した場合に、接続抵抗を低くすることができる。上記第2の突起部は、上記第1の突起部と比べて、電極間の接続時に、折れたり、損傷したりしやすい。このため、上記第1の突起部と上記第2の突起部との全個数に占める上記第1の突起部の割合が少なくなり(例えば70%未満)、かつ上記第2の突起部の割合が多くなると(例えば30%以上)、突起が、電極又は導電性粒子の表面の酸化膜を十分に貫通せずに、電極間の接続抵抗が高くなる傾向がある。これに対して、本発明では、上記第1の突起部と上記第2の突起部との全個数に占める上記第1の突起部の割合が多いので、突起が電極又は導電性粒子の表面の酸化膜を十分に貫通するために、電極間の接続抵抗を低くすることができる。 【0022】 導電部の外表面に複数の突起を有する導電性粒子は、知られている。また、特開2012-113850号公報では、金属又は合金の複数の粒子が列状に連結した粒子連結体から構成されている突起を有する導電性粒子が開示されている。特開2012-113850号公報の実施例及び比較例では、連結突起部の割合が32%以上である導電性粒子が示されている。しかしながら、このような連結突起部を有する導電性粒子において、連結突起部の割合が比較的大きいと、電極間の接続抵抗が十分に低くならないことがある。これに対して、本発明に係る導電性粒子では、連結突起部が無いか、又は連結突起部の割合が少ないために、電極間の接続抵抗を十分に低くすることができる。 【0023】 上記第1の突起部は、上記金属又は金属の合金の粒子が列状に複数個連結して形成されておらず、かつ上記金属又は金属の合金により形成されている。上記第1の突起部は、上記粒子連結体以外の突起部である。上記第2の突起部は、上記金属又は金属の合金の粒子が列状に複数個連結した粒子連結体により形成されている。上記突起は、上記第1の突起と上記第2の突起との双方により形成されている。上記第2の突起部及び上記粒子連結体を構成している個々の粒子は、導電部を形成している金属又は金属の合金により形成されている。また、上記第1の突起及び上記第2の突起は、直線状部に分岐した突起部が混在した形状でもよい。分岐の数に関しては、2分岐又は多数分岐していてもよく、樹枝状でもよい。 【0024】 電極間の接続抵抗をより一層低くする観点からは、上記第1の突起部と上記第2の突起部との全個数100%中の上記第1の突起部の個数の割合は好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上であり、上記第2の突起部の個数の割合は30%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満、更に好ましくは5%未満である。 【0025】 上記第1の突起部と上記第2の突起部との全個数100%中の上記第2の突起部の割合は1%以上であってもよく、上記第1の突起部の割合は99%以下であってもよい。」 オ 「【0114】 (実施例1) (1)導電性粒子の作製 粒子径が3.0μmであるジビニルベンゼン共重合体樹脂粒子(積水化学工業社製「ミクロパールSP-203」)を用意した。 【0115】 パラジウム触媒液を5重量%含むアルカリ溶液100重量部に、上記樹脂粒子10重量部を、超音波分散器を用いて分散させた後、溶液をろ過することにより、樹脂粒子を取り出した。次いで、樹脂粒子をジメチルアミンボラン1重量%溶液100重量部に添加し、樹脂粒子の表面を活性化させた。表面が活性化された樹脂粒子を十分に水洗した後、蒸留水500重量部に加え、分散させることにより、懸濁液を得た。 【0116】 また、硫酸ニッケル0.23mol/L、ジメチルアミンボラン0.92mol/L、クエン酸ナトリウム0.25mol/L、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム0.25mol/L、及びL-システイン50ppmを含むニッケルめっき液(pH7.0)を用意した。 【0117】 得られた懸濁液を40℃にて攪拌しながら、上記ニッケルめっき液を懸濁液に徐々に滴下し、無電解ニッケルめっきを行った。その後、懸濁液をろ過することにより、粒子を取り出し、水洗し、乾燥することにより、樹脂粒子の表面にニッケル-ボロン導電層(厚み0.1μm)を配置して、表面が導電層である導電性粒子を得た。 【0118】 (2)異方性導電材料の作製 得られた導電性粒子7重量部と、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂25重量部と、フルオレン型エポキシ樹脂4重量部と、フェノールノボラック型エポキシ樹脂30重量部と、SI-60L(三新化学工業社製)とを配合して、3分間脱泡攪拌することで、異方性導電ペーストを得た。 【0119】 (3)接続構造体の作製 L/Sが10μm/20μmであるIZO電極パターン(第1の電極、電極表面の金属のビッカース硬度100Hv)が上面に形成された透明ガラス基板を用意した。また、L/Sが10μm/20μmであるAu電極パターン(第2の電極、電極表面の金属のビッカース硬度50Hv)が下面に形成された半導体チップを用意した。 【0120】 (実施例2) ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウムをトリエチレンテトラミン六酢酸ナトリウムに変更したこと以外は実施例1と同様にして、導電性粒子を作製した。得られた導電性粒子を用いて、実施例1と同様にして、異方性導電材料及び接続構造体を作製した。 【0121】 (実施例3) L-システインをチオ尿素に変更したこと以外は実施例1と同様にして、導電性粒子を作製した。得られた導電性粒子を用いて、実施例1と同様にして、異方性導電材料及び接続構造体を作製した。 【0122】 (実施例4) L-システインをチオジグリコール酸に変更したこと以外は実施例1と同様にして、導電性粒子を作製した。得られた導電性粒子を用いて、実施例1と同様にして、異方性導電材料及び接続構造体を作製した。 【0123】 (実施例5) クエン酸ナトリウムをグルコン酸ナトリウムに変更したこと以外は実施例1と同様にして、導電性粒子を作製した。得られた導電性粒子を用いて、実施例1と同様にして、異方性導電材料及び接続構造体を作製した。 【0124】 (実施例6) 金属ニッケル粒子スラリー(三井金属社製「2020SUS」、平均粒子径200nm)を用いて、実施例1で用いた樹脂粒子の表面に金属ニッケル粒子を付着させた後に、導電層を形成して、導電部の外表面に突起を形成した。また、導電層を形成する際に、クエン酸ナトリウムの濃度を0.50mol/Lに変更したこと以外は実施例1と同様にして、導電性粒子を作製した。得られた導電性粒子を用いて、実施例1と同様にして、異方性導電材料及び接続構造体を作製した。 【0125】 (比較例1) ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウムを酒石酸ナトリウムに変更したこと以外は実施例1と同様にして、導電性粒子を作製した。得られた導電性粒子を用いて、実施例1と同様にして、異方性導電材料及び接続構造体を作製した。 【0126】 (比較例2) L-システインを硝酸ビスマスに変更したこと以外は実施例1と同様にして、導電性粒子を作製した。得られた導電性粒子を用いて、実施例1と同様にして、異方性導電材料及び接続構造体を作製した。」 カ 「【0127】 (評価) (1)突起の状態1 走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、画像倍率を25000倍に設定し、10個の導電性粒子を無作為に選択し、それぞれの導電性粒子の突起部を観察した。全ての突起部は、金属又は金属の合金の粒子間に粒界が観察されるか否かを評価して、金属又は金属の合金の粒子が列状に複数個連結して形成されておらず、かつ金属又は金属の合金により形成されている突起部(第1の突起部)と、金属又は金属の合金の粒子が列状に複数個連結した粒子連結体により形成されている突起部(第2の突起部)とに分別した。このようにして、1つの導電性粒子あたりの1)第1の突起部の個数と、2)第2の突起部の個数とを計測した。第1、第2の突起部の全個数100%中の第1、第2の突起部の割合を算出した。 【0128】 (2)突起の状態2 走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、画像倍率を25000倍に設定し、10個の導電性粒子を無作為に選択し、それぞれの導電性粒子の突起部を観察した。全ての突起部は、金属又は金属の合金の粒子間に粒界が観察されるか否かを評価して、金属又は金属の合金の粒子が列状に複数個連結して形成されておらず、かつ金属又は金属の合金により形成されている突起部(第1の突起部)と、金属又は金属の合金の粒子が列状に複数個連結した粒子連結体により形成されている突起部(第2の突起部)とに分別した。このようにして、得られた導電性粒子における1)第1の突起部の高さと、2)第1の突起部の幅と、3)第2の突起部の高さと、4)第2の突起部の幅とを計測した。さらに、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、5)導電部の突起が無い部分の厚みを計測した。 【0129】 [電極間の接続抵抗の判定基準] ○○○:接続抵抗が2.0Ω以下 ○○:接続抵抗が2.0Ωを超え、3.0Ω以下 ○:接続抵抗が3.0Ωを超え、5.0Ω以下 △:接続抵抗が5.0Ωを超え、10Ω以下 ×:接続抵抗が10Ωを超える」 キ 「【表1】 」 (2) 本願発明の「第1の突起部の割合が前記第1の突起部と前記第2の突起部との全個数100%中の70%以上」とすることの技術的、臨界的意義について 本願明細書には、上記(1)アにおいて、特許文献1(この審決における引用文献1)に「連結突起部の割合が32%以上である導電性粒子が示されている」と記載されると共に、上記(1)イに「特許文献1に記載の導電性粒子では、電極間の接続時に、突起が折れやすく、結果として、突起が酸化膜を十分に貫通しないことがある。このため、電極間の接続抵抗が高くなることがある」という問題点が指摘されていて、上記(1)ウにおいて「上記第1の突起部と上記第2の突起部との全個数100%中の70%以上が、上記第1の突起部であるので、本発明に係る導電性粒子を用いて電極間を電気的に接続した場合に、接続抵抗を低くすることができる。」とされている。 また、上記(1)エにおいて、その作用機序として「上記第2の突起部は、上記第1の突起部と比べて、電極間の接続時に、折れたり、損傷したりしやすい。このため、上記第1の突起部と上記第2の突起部との全個数に占める上記第1の突起部の割合が少なくなり(例えば70%未満)、かつ上記第2の突起部の割合が多くなると(例えば30%以上)、突起が、電極又は導電性粒子の表面の酸化膜を十分に貫通せずに、電極間の接続抵抗が高くなる傾向がある。これに対して、本発明では、上記第1の突起部と上記第2の突起部との全個数に占める上記第1の突起部の割合が多いので、突起が電極又は導電性粒子の表面の酸化膜を十分に貫通するために、電極間の接続抵抗を低くすることができる。」との記載がある。 さらに、本願明細書の具体的な実施例及び比較例(上記(1)オ?キ)には、第1の突起部と第2の突起部との全個数100%中の第1の突起部の割合が、72.9?95.0%であって、第1の突起部の高さが77?296nm、第2の突起部の高さが79?255nmである実施例1ないし6の電極間の接続抵抗は、「○○」又は「○○○」であるのに対して、同じく第1の突起部の割合が57.1又は62.9%であって、第1の突起部の高さが29?53nm、第2の突起部の高さが33?44nmである比較例1及び2の電極間の接続抵抗が「×」又は「△」であることが示されている。 しかし、導電性粒子に設ける突起部の高さをある程度まで高くすることで導電性が向上するとの技術常識(引用文献1の段落【0020】、特開2006-228474号公報の【0016】【0019】、特開2009-205842号公報の【0025】を参照)を踏まえると、実施例及び比較例との間の接続抵抗の差異は、単に突起部の高さに起因し、第1の突起部の割合を70%以上(99%以下)とすることとは関係がないと解するのが合理的である。 しかも、第1の突起部の割合を70%以上(99%以下)とすれば第1の突起部と第2の突起部の高さとは無関係に接続抵抗を低くできることについて、本願明細書には記載がないし、当業者の技術常識であったということもできない。 そうすると、本願明細書の記載及び当業者の技術常識を踏まえると、第1の突起部の割合を70%以上とすることのみをもってただちに、電極間の接続抵抗が格別に低くなるとはいえないから、第1の突起部と第2の突起部の高さを特定していない本願発明において、第1の突起部の割合が前記第1の突起部と前記第2の突起部との全個数100%中の70%以上とすることに技術的、臨界的な意義を認めることはできない。 (3) まとめ 上記のとおり、引用文献1には、第1の突起部の全突起部に占める割合を80%以下とすることに関しての動機付けとなる記載がある。そして、その下限を規定しようとするにあたり、70%とすることは単なる設計事項にすぎないといえる。 しかも、上記(2)のとおり、下限値の70%に技術的、臨界的な意義なく、そのことによる効果に格別のものがあるとは認められない。 よって、相違点1は当業者において想到容易である。 3 相違点2についての判断 上記2で述べたように、導電性粒子に設ける突起部の高さをある程度まで高くすることで導電性が向上することが当業者の技術常識であることを踏まえると、導電性を高くするために、導電性粒子にそれなりの割合で設けられている「単一の突起部形成粒子からなる突起部や、複数個の突起部形成粒子が塊状に結合した突起部」(「第1の突起部」に相当)の高さを高くすること、その指標として、導電部の突起が無い部分の厚みの0.5倍以上とすることは、当業者が適宜なし得たことであって、そのことによる効果に格別のものがあるとは認められない。 4 まとめ 以上のとおり、本願発明は、引用発明、すなわち引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2019-06-06 |
結審通知日 | 2019-06-11 |
審決日 | 2019-06-25 |
出願番号 | 特願2013-189479(P2013-189479) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H01B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 赤樫 祐樹 |
特許庁審判長 |
加藤 友也 |
特許庁審判官 |
須藤 康洋 大島 祥吾 |
発明の名称 | 導電性粒子、導電材料及び接続構造体 |
代理人 | 特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所 |