ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B01F |
---|---|
管理番号 | 1353997 |
審判番号 | 不服2018-10645 |
総通号数 | 237 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-09-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-08-03 |
確定日 | 2019-08-08 |
事件の表示 | 特願2016-196631号「鉱物原料の付着及び詰まり防止方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年4月12日出願公開、特開2018-58017号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯・本願発明 本願は、平成28年10月4日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成30年8月3日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。 「【請求項1】 湿潤な鉱物原料に、前記鉱物原料と同等以下の粒径の粒状又は粉末状の高吸水性樹脂を接触させた原料混合物を移送設備にて移送し、前記鉱物原料の前記移送設備での付着及び詰まりを防止する方法であり、 前記湿潤な鉱物原料は、スラリー状態ではなく、ベルトコンベヤで搬送可能な固形物である、鉱物原料の付着及び詰まり防止方法。」 2 当審の拒絶理由 当審において平成31年4月1日付けで通知した拒絶の理由の概要は、本願発明は、本願の出願日前の平成21年6月18日に頒布された特開2009-132971号公報(以下、「引用例」という。)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、というものである。 3 引用例 引用例には、以下の記載がある。 (a)「【請求項1】 湿潤状態の冶金用コークスに粉状の水分吸収剤を添加して混合し、篩い分けを行った篩い上の冶金用コークスを竪型炉に装入することを特徴とする竪型炉の操業方法。 【請求項2】 水分吸収剤として、高分子吸水材を用いることを特徴とする、請求項1に記載の竪型炉の操業方法。 【請求項3】 水分吸収剤の粒径は篩目の1/2以下として用いることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の竪型炉の操業方法。」 (b)「【0019】 さらに、従来湿潤原料を篩い分けする際、水分を含んだ篩下粉がベルト上に付着しベルトコンベアの故障の原因となる事があったが、本発明の方法を用いることで水分が水分吸収剤に補足されるため篩下粉の付着性が小さくなり、これらのトラブルを回避できるため、生産性も向上する。」 (c)「【0020】 本発明では、冶金用コークスに粉状の水分吸収剤を添加して混合し、篩い分けを行うことで、水分の存在により湿潤状態にある冶金用コークスから水分を除去し、水分架橋による粉の付着を少なくできる為、従来の篩設備を用いながら容易に粉を除去できるようになる。そして、篩い分けにより粉が除去された篩い上を、竪型炉に装入して操業を行ない、銑鉄等を製造する。本発明は湿潤状態にある全ての冶金用コークスに対して適用可能である。 【0021】 尚、湿潤状態とは、冶金用コークスの粒子表面に水分が存在する状態である。冶金用コークスの水分含有量に対する水分吸収剤の効果は、コークスの粒子内部の気孔分布により異なるが(コークス内部の気孔に水分が吸収された後の粒子表面の水分が問題となるため)、原料の水分含有量が5mass%以上の場合に効果が大きい。」 (d)「【0024】 水分吸収剤の添加は、湿潤コークスの篩い分けを行うまでの搬送ライン上のいずれかの場所で添加することが好ましい。例えば、ヤードに保管しておいたコークスの場合、ヤードでの切出しから篩に至るまでの間であり、湿式消火したコークスであれば消火電車から篩に至るまでの間で水分吸収剤を添加する。ヤード等で長期に保管する際に水分吸収剤を添加するとその後の降雨等の影響を受けるため、ヤードで水分吸収剤を添加する場合はヤードから切り出す際に水分吸収剤を添加する。これにより水分吸収剤添加後にヤード等で雨にさらされることがなく、湿潤コークスがもつ水分以外の影響をできるだけ低減することができ、水分吸収剤の効果を十分に発現させることができる。また、通常、竪型炉に装入するコークスを貯めておくホッパーである貯骸槽の下には発生粉を除去するための篩があるので、貯骸槽に入れる前に水分吸収剤を添加すれば、貯骸槽内でコークスと水分吸収剤とが混合されて、水分吸収のための時間が確保されるので好ましい。」 (e)「【0027】 また篩い上コークスに水分を吸収した水分吸収剤が混入するのを防止するため、さらにまた篩分け設備に含水水分吸収剤が付着し篩い目が閉塞するのを防止するため、水分吸収剤の粒径は篩い目の1/2以下とすることが好ましい、さらに湿潤コークス表面に水分吸収剤が均一に分散するため、水分吸収剤の粒径は1mm以下とすることがより好ましい。このような粒径であれば、水分吸収後も充分に篩い目を通過できるので、湿潤コークスに付着していたコークス粉とともに篩い下として回収され、篩い上の竪型炉で使用されるコークスへの混入を防止することができる。 【0028】 図1は、本発明の一実施形態を示すフロー図である。粉が付着した湿潤コークス1を高炉の原料として用いる際に、密閉状態にある貯留タンク内の水分吸収剤2を、気送ライン3により湿潤コークス1に上部から吹き付けて添加する。水分吸収剤2を添加された湿潤コークス1をベルトコンベア4で搬送し、ベルトコンベア4の乗り継ぎシュート部分4aで落下する際に、水分吸収剤と湿潤コークスとが混合される。この状態で湿潤コークス1を、従来高炉装入前の原料の篩い分けに用いている篩い設備5を用いて篩い分けを行うことで、湿潤コークス1は篩い下粉6と粉除去後の高炉行きコークス7とに分離され、高炉行きコークス7を高炉に装入することで、粉の割合の少ない原料を高炉に装入することが可能となる。」 (f)「 【図1】 」 上記(a)ないし(f)より、引用例には、 「湿潤コークスに、粒径が篩い目(例えば9.5mm)の1/2以下である粉状の水分吸収剤(高分子吸収材)を添加した混合物をベルトコンベヤ、篩い設備にて搬送し、篩い分けした冶金用コークスを竪型炉に装入する竪型炉の操業方法であり、湿潤コークスは、その表面に水分が存在した湿潤状態のものである、竪型炉の操業方法。」(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。 4 対比・判断 本願発明と引用発明とを対比する。 (i)引用発明の「湿潤コークス」、「水分吸収剤(高分子吸収材)」、「混合物」、「添加」、「ベルトコンベヤ、篩い設備」及び「湿潤コークスは、その表面に水分が存在した湿潤状態のものである」は、本願発明の「湿潤な鉱物原料」、「高吸収性樹脂」、「原料混合物」、「接触」、「移送設備」及び「湿潤な鉱物原料は、スラリー状態ではなく、ベルトコンベヤで搬送可能な固形物である」にそれぞれ相当する。 (ii)湿潤コークスは篩い上になり、粉状の水分吸収剤(高分子吸収材)は篩い下になること(上記(e)参照)を考慮すると、引用発明の「湿潤コークスに、粒径が篩い目(例えば9.5mm)の1/2以下である粉状の水分吸収剤(高分子吸収材)を添加した原料をベルトコンベヤ、篩い設備にて搬送し」は、本願発明の「湿潤な鉱物原料に、鉱物原料と同等以下の粒径の粒状又は粉末状の高吸水性樹脂を接触させた原料混合物を移送設備にて移送し」に相当する。 上記(i)及び(ii)からして、本願発明と引用発明とは、 「湿潤な鉱物原料に、鉱物原料と同等以下の粒径の粒状又は粉末状の高吸水性樹脂を接触させた原料混合物を移送設備にて移送し、」「湿潤な鉱物原料は、スラリー状態ではなく、ベルトコンベヤで搬送可能な固形物である」という点で一致し、 本願発明は、「鉱物原料の移送設備での付着及び詰まりを防止する方法」であるのに対して、引用発明は、「コークス(鉱物原料)を竪型炉に装入する竪型炉の操業方法」である点(以下、「相違点」という。)で一応相違している。 上記相違点について検討する。 引用発明は、上記(b)(c)からして、「コークスの粒」および「コークスの粉」の水分を高分子吸収材により除去することで、「コークスの粒」および「コークスの粉」そのものの付着性を低くし、ベルトコンベヤ、篩い設備への付着(付着による詰まりが生じ得る箇所にあっては詰まり)を抑制・防止するものであるということができる。 そうすると、引用発明の「コークス(鉱物原料)を竪型炉に装入する竪型炉の操業方法」において、本願発明の「鉱物原料の移送設備での付着及び詰まりを防止する方法」も実施されていることは明らかである。 したがって、上記相違点は、文言上の差異でしかなく、本願発明は、引用例に記載された発明である、というべきである。 5 請求人の主張 請求人は、令和1年5月14日付け意見書において、本願発明は、「湿潤な鉱物原料が、移送設備の接触面に付着して固着したり、配管等での詰まりを生じたりするという課題に対してなされたもの」であり、また、「鉱物原料は、粉も高吸水性樹脂も分離(篩分け)されることなく移送され」るものであるのに対して、引用発明は、「篩を用いて、粉と分離し、かつ、高分子吸水材(高吸水性樹脂)とも分離されたコークス(鉱物原料)を得ることを目的と」するものである点で、本願発明と引用発明とは異なる発明である旨の主張をしている。 以下、上記主張について検討する。 引用発明は、上記「4」で述べたように、「コークスの粒」および「コークスの粉」の水分を高分子吸収材により除去することで、「コークスの粒」および「コークスの粉」そのものの付着性を低くし、ベルトコンベヤ、篩い設備への付着(付着による詰まりが生じ得る箇所にあっては詰まり)を抑制・防止するものであるということができ、改めていうと、ベルトコンベヤにおいて、「コークスの粒」、「コークスの粉」および高分子吸収材は、一緒に搬送されている 一方、本願発明は、「篩を用いて、粉と分離し、かつ、高吸収性樹脂とも分離された鉱物原料を得ること」を排除するものではない。 そうすると、請求人の上記主張のいずれも採用することはできない。 6 むすび したがって、本願は、当審で通知した上記拒絶の理由によって拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2019-05-31 |
結審通知日 | 2019-06-04 |
審決日 | 2019-06-24 |
出願番号 | 特願2016-196631(P2016-196631) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
WZ
(B01F)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中田 誠二郎 |
特許庁審判長 |
大橋 賢一 |
特許庁審判官 |
豊永 茂弘 金 公彦 |
発明の名称 | 鉱物原料の付着及び詰まり防止方法 |
代理人 | 大谷 保 |