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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1354001 |
審判番号 | 不服2018-15841 |
総通号数 | 237 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-09-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-11-29 |
確定日 | 2019-08-08 |
事件の表示 | 特願2016-159186号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成30年2月22日出願公開、特開2018-27136号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯の概要 本願は、平成28年8月15日の出願であって、平成29年7月19日付けで拒絶の理由が通知され、同年9月21日に意見書及び手続補正書が提出され、平成30年2月9日付けで最後の拒絶の理由が通知され、同年4月12日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年9月4日付け(発送日:平成30年9月11日)で、同年4月12日付け手続補正が却下されるとともに拒絶査定がなされ、それに対して、同年11月29日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。 第2 平成30年11月29日にされた手続補正についての補正却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成30年11月29日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について (1)補正の内容 本件補正により、平成29年9月21日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1における 「遊技動作を制御するための演算処理を行う演算処理手段と、 前記演算処理手段による前記演算処理の実行に必要な情報が記憶された第1記憶手段と、 前記演算処理手段による前記演算処理の実行に必要な情報が記憶される第2記憶手段と、を備え、 前記第1記憶手段には、遊技者により実施される遊技の遊技性に関与する処理の実行に必要な情報が記憶された第1の記憶領域と、前記第1の記憶領域とは異なる領域に配置され且つ遊技者により実施される遊技の遊技性に関与しない処理の実行に必要な情報が記憶された第2の記憶領域とが設けられ、 前記第2記憶手段には、遊技者により実施される遊技の遊技性に関与する処理の実行に必要な情報が一時的に記憶される第1作業領域及び第1スタック領域を含む第1の一時記憶領域と、前記第1の一時記憶領域とは異なる領域に配置され、且つ、遊技者により実施される遊技の遊技性に関与しない処理の実行に必要な情報が一時的に記憶される第2作業領域及び第2スタック領域を含む第2の一時記憶領域とが設けられ、 前記第1記憶手段内において、前記第1の記憶領域及び前記第2の記憶領域は、アドレス上、連続して配置されている ことを特徴とする遊技機。」は、 審判請求時に提出された手続補正書(平成30年11月29日付け)における 「遊技動作を制御するための演算処理を行う演算処理手段と、 前記演算処理手段による前記演算処理の実行に必要な情報が記憶された第1記憶手段と、 前記演算処理手段による前記演算処理の実行に必要な情報が記憶される第2記憶手段と、を備え、 前記第1記憶手段には、遊技者により実施される遊技の遊技性に関与する処理の実行に必要な情報が記憶された第1の記憶領域と、前記第1の記憶領域とは異なる領域に配置され且つ遊技者により実施される遊技の遊技性に関与しない処理の実行に必要な情報が記憶された第2の記憶領域とが設けられ、 前記第2記憶手段には、遊技者により実施される遊技の遊技性に関与する処理の実行に必要な情報が一時的に記憶される第1作業領域及び第1スタック領域を含む第1の一時記憶領域と、前記第1の一時記憶領域とは異なる領域に配置され、且つ、遊技者により実施される遊技の遊技性に関与しない処理の実行に必要な情報が一時的に記憶される第2作業領域及び第2スタック領域を含む第2の一時記憶領域とが設けられ、 前記第1記憶手段内において、前記第1の記憶領域及び前記第2の記憶領域は、アドレス上、連続して配置されており、設定変更が行われる起動時、一遊技終了時、及び、設定変更を行わない起動時に実行される前記第2記憶手段の初期化の範囲が、設定変更が行われる起動時、一遊技終了時、及び、設定変更を行わない起動時の順で狭くなる ことを特徴とする遊技機。」に補正された(下線は、補正箇所を明示するために当審にて付した。)。 (2)補正の適否 本件補正は、補正前の請求項1について、 発明を特定するために必要な事項である「第2記憶手段」に関し、「設定変更が行われる起動時、一遊技終了時、及び、設定変更を行わない起動時に実行される前記第2記憶手段の初期化の範囲が、設定変更が行われる起動時、一遊技終了時、及び、設定変更を行わない起動時の順で狭くなる」ことを限定するものである。 そして、補正後の請求項1に係る発明は、補正前の請求項1に係る発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。 また、本件補正は、本願明細書の【0432】、【0449】、【0457】、【0559】、【図12】C、【図64】、【図66】、【図68】、【図82】等の記載からみて新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものである。 2 独立特許要件 そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか、すなわち、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するかについて、以下に検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、次のとおりのものであると認める(記号A?Fは、分説するため審決にて付した。)。 「A 遊技動作を制御するための演算処理を行う演算処理手段と、 B 前記演算処理手段による前記演算処理の実行に必要な情報が記憶された第1記憶手段と、 C 前記演算処理手段による前記演算処理の実行に必要な情報が記憶される第2記憶手段と、を備え、 D 前記第1記憶手段には、遊技者により実施される遊技の遊技性に関与する処理の実行に必要な情報が記憶された第1の記憶領域と、前記第1の記憶領域とは異なる領域に配置され且つ遊技者により実施される遊技の遊技性に関与しない処理の実行に必要な情報が記憶された第2の記憶領域とが設けられ、 E 前記第2記憶手段には、遊技者により実施される遊技の遊技性に関与する処理の実行に必要な情報が一時的に記憶される第1作業領域及び第1スタック領域を含む第1の一時記憶領域と、前記第1の一時記憶領域とは異なる領域に配置され、且つ、遊技者により実施される遊技の遊技性に関与しない処理の実行に必要な情報が一時的に記憶される第2作業領域及び第2スタック領域を含む第2の一時記憶領域とが設けられ、 F 前記第1記憶手段内において、前記第1の記憶領域及び前記第2の記憶領域は、アドレス上、連続して配置されており、設定変更が行われる起動時、一遊技終了時、及び、設定変更を行わない起動時に実行される前記第2記憶手段の初期化の範囲が、設定変更が行われる起動時、一遊技終了時、及び、設定変更を行わない起動時の順で狭くなる ことを特徴とする遊技機。」 (2)引用文献1 原査定の拒絶理由において引用された、本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である特開2016-101275号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同様。)。 ア 記載事項 (ア)「【技術分野】 【0001】 遊技機に関する。」 (イ)「【0032】 主制御基板Mは、回胴式遊技機Pで行われる遊技全体の進行を司る基板である。当該主制御基板Mには、主制御チップCが搭載されており、主制御チップCには、CPUC100、内蔵ROMC110、内蔵RAMC120等がバスによって互いにデータをやり取り可能に接続されて搭載されている(図示及び詳細については後述する)。そして、主制御基板Mは、前扉DUに搭載された扉基板Dから、スタートレバーD50等が操作されたことを示す信号等を受け取って、副制御基板Sや、扉基板D、回胴基板K等に向かって制御コマンド(あるいは制御信号)を出力することにより、これら各種基板の動作を制御している。」 (ウ)「【0041】 以下、上記説明した各部の詳細について説明する。 【0042】 まず、CPUC100は、内蔵ROMC110や内蔵RAMC120のプログラムやデータによって様々な数値計算や情報処理、制御処理などを実行する。内蔵ROMC110は、制御プログラムや各種データを記憶する。内蔵RAMC120は、一時的にデータを記憶する。また、内蔵ROMC110及び内蔵RAMC120はアドレスとデータとをセットとして保持しており、アドレス範囲で用途が区切られている。尚、当該用途として主なものは、プログラム領域とデータ領域であるが、この点の詳細については、後述するメモリマップの説明に譲る。」 (エ)「【0057】 尚、内蔵ROMC110は、主として遊技の進行を制御する領域である第1ROM領域と、主としてエラー関連等の遊技の正常な進行とは異なる処理を制御する領域である第2ROM領域と、を有しており、「0000H」から「1FFFH」までの空間には第1ROM領域が割り当てられ、「2000H」から「27FFH」までの空間には第2ROM領域が割り当てられている。尚、第1ROM領域は、第2ROM領域よりも容量が大きくなるよう構成されている(換言すれば、第1ROM領域内に存在しCPUC100からアクセスされるデータ容量は、第2ROM領域内に存在しCPUC100からアクセスされるデータ容量よりも大きくなるよう構成されている)。 ・・・ 【0060】 他方、内蔵RAMC120は、主として遊技の進行に基づく情報を格納する領域である第1RAM領域と、主としてエラー関連等の遊技の正常な進行とは異なる処理に基づく情報を格納する領域である第2RAM領域と、プログラムが内部的にデータを保存しておく必要がある場合使用されるスタックエリアと、を有しており、「F000H」から「F1FFH」までの空間には第1RAM領域が割り当てられ、「F200H」から「F2C9H」までの空間には第2RAM領域が割り当てられ、「F2CAH」から「F2FFH」までの空間にはスタックエリアが割り当てられている(但し、各領域のバイト数はあくまでも一例である)。 【0061】 また、第1RAM領域は、主として遊技の進行に係る情報を一時記憶するための作業領域である第1作業領域を有しており、第2RAM領域は、主としてエラー関連等に係る情報を一時記憶するための作業領域である第2作業領域と、第1RAM領域及び第2RAM領域に一時記憶された情報の誤り検出を行うための作業領域であるチェックサム領域を有している。尚、第1RAM領域は、第2RAM領域よりも容量が大きくなるよう構成されている。また、本実施形態においては、チェックサム領域は第2RAM領域のみが有しており(第1RAM領域は有しておらず)、当該チェックサム領域が第1RAM領域と第2RAM領域との双方の(双方に一時記憶された情報を通算した)チェックサムを管理するよう構成されている。また、本実施形態においては、後述するように、チェックサムを算出する際、未使用領域をも含めて算出しているが、これには限定されず、未使用領域を除いた領域(第1作業領域及び第2作業領域)についてチェックサムを算出するよう構成してもよい。また、誤り検出を行う手法は、チェックサムチェックを行う手法に限らず、その他の手法(例えば、パリティチェック等)を行う手法を用いてもよく、その場合には、当該チェックサム領域が、これら手法を用いる際に必要となる誤り検出用の情報(例えば、パリティビット等)を格納する領域となる。」 (オ)「【0076】 <第1ROM・RAM領域における処理> 次に、ステップ1014で、CPUC100は、第1ROM・RAM領域内のデータに基づき、前扉スイッチD80、設定扉スイッチM10及び設定キースイッチM20のスイッチ状態を確認する。次に、ステップ1016で、CPUC100は、第1ROM・RAM領域内のデータを参照し、扉スイッチD80、設定扉スイッチM10及び設定キースイッチM20のいずれかがオフであるか否かを判定する。ステップ1016でYesの場合、ステップ1018で、CPUC100は、第1ROM・RAM領域内のデータに基づき、第2ROM領域内の非設定変更時初期化処理を呼び出し、ステップ1022に移行する。他方、ステップ1016でNoの場合には、ステップ1020で、CPUC100は、第1ROM・RAM領域内のデータに基づき、第2ROM領域内の設定変更時初期化処理を呼び出し、ステップ1030に移行する。 【0077】 <第2ROM・RAM領域における処理> 次に、ステップ1022で、CPUC100は、第2ROM・RAM領域内のデータに基づき、第1RAM内の電源断処理済みフラグのオン・オフ(ステップ1904でオンとなる)及び全RAMのチェックサム状態(ステップ1010でのチェック結果)を参照し、第2RAM内の電源断復帰データは正常ではないか否かを判定する。ステップ1022でYesの場合、ステップ1026で、CPUC100は、第2ROM・RAM領域内のデータに基づき、バックアップエラー表示をセットする(例えば、レジスタ領域内にエラー番号をセットする)。次に、ステップ1300で、CPUC100は、第2ROM・RAM領域内のデータに基づき、後述する、復帰不可能エラー処理を実行する。他方、ステップ1022でNoの場合、ステップ1028で、CPUC100は、第2ROM・RAM領域内のデータに基づき、第1RAM及び第2RAMの初期化範囲を未使用RAM範囲(図中欄外にて示す、第1RAM領域における未使用領域と第2RAM領域における未使用領域)に決定してセットし(例えば、レジスタ領域内にセットし)、ステップ1036に移行する。 【0078】 他方、ステップ1020の処理の後、ステップ1030で、CPUC100は、第2ROM・RAM領域内のデータに基づき、第1RAM内の電源断処理済みフラグのオン・オフ(ステップ1904でオンとなる)及び全RAMのチェックサム状態(ステップ1010でのチェック結果)を参照し、第2RAM内の電源断復帰データは正常であるか否かを判定する。ステップ1030でYesの場合、ステップ1032で、CPUC100は、第2ROM・RAM領域内のデータに基づき、第1RAM及び第2RAMの初期化範囲をRAM内における設定値を除くすべての範囲に決定してセットし(例えば、レジスタ領域内にセットし)、ステップ1036に移行する。尚、設定値は第1RAM領域の先頭アドレスに格納されている。他方、ステップ1030でNoの場合、ステップ1034で、CPUC100は、第2ROM・RAM領域内のデータに基づき、第1RAM及び第2RAMの初期化範囲をRAMのすべての範囲に決定してセットし(例えば、レジスタ領域内にセットし)、ステップ1036に移行する。 【0079】 次に、ステップ1036で、CPUC100は、第2ROM・RAM領域内のデータに基づき、決定された初期化範囲で第2RAM領域のみの初期化を実行する。次に、ステップ1038で、CPUC100は、第2ROM・RAM領域内のデータに基づき、第1ROM領域の呼び出し元に復帰し、ステップ1040に移行する。」 イ 引用発明 上記アの記載事項、及び、図面の図示内容を総合勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(a?fは、本件補正発明の構成A?Fに対応させて付与した。)。 「a 遊技全体の進行を司る基板である主制御基板Mに搭載され、様々な制御処理などを実行するCPUC100(【0032】、【0042】)と、 b 上記主制御基板Mに搭載され、CPUC100が様々な制御処理などを実行するための制御プログラムや各種データを記憶する内蔵ROMC110(【0032】、【0042】)と、 c 上記主制御基板Mに搭載され、CPUC100が様々な制御処理などを実行するために一時的にデータを記憶する内蔵RAMC120(【0032】、【0042】)と、を備え、 d 内蔵ROMC110は、主として遊技の進行を制御する領域である第1ROM領域と、主としてエラー関連等の遊技の正常な進行とは異なる処理を制御する領域である第2ROM領域とを有し(【0057】)、 e 内蔵RAMC120は、主として遊技の進行に基づく情報を格納する領域である第1RAM領域と、主としてエラー関連等の遊技の正常な進行とは異なる処理に基づく情報を格納する領域である第2RAM領域と、プログラムが内部的にデータを保存しておく必要がある場合に使用されるスタックエリアと、を有し(【0060】)、 f 「0000H」から「1FFFH」までの空間には第1ROM領域が割り当てられ、「2000H」から「27FFH」までの空間には第2ROM領域が割り当てられ(【0057】)、 CPUC100は、設定変更時初期化処理において、第2RAM内の電源断復帰データが正常である場合、第1RAM及び第2RAMの初期化範囲をRAM内における設定値を除くすべての範囲に決定し、第2RAM内の電源断復帰データが正常でない場合、第1RAM及び第2RAMの初期化範囲をRAMのすべての範囲に決定し(【0076】、【0078】)、 CPUC100は、非設定変更時初期化処理において、第1RAMび第2RAMの初期化範囲を第1作業領域及び第2作業領域を除いた、第1RAM領域における未使用領域と第2RAM領域における未使用領域とに決定する(【0061】、【0076】?【0077】) 遊技機。」 (3)引用文献2 本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である特開2016-129556号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。 ア 記載事項 (ア)「【技術分野】 【0001】 本発明は、遊技を行うことが可能な遊技機に関する。」 (イ)「【0153】 [初期設定処理] まず、メイン制御部41が実行する初期設定処理について説明する。メイン制御部41は、電力が供給されてリセット回路49からリセット信号が入力されると、システムリセットを行い、起動処理を実行する。そして、起動処理を実行することにより、後述するIMFが0となり、割込禁止状態が設定される。また、起動処理によって内部機能レジスタ(CTCコントロールレジスタや乱数回路に関わるレジスタなど)に初期値が設定される(図24参照)。その後、ユーザプログラムとしてROM41bに記憶されたプログラムにしたがって、図5および図6のフローチャートに示す初期設定処理を行う。 【0154】 図5及び図6に示すように、メイン制御部41は、まず、後述するDI命令の実行により割込マスタ許可フラグ(IMF)=0にし、割込を禁止する(Sa1)。なお、割込処理とは、割込要因が発生したときに基本処理に割り込んで発生する処理である。図10および図11において説明するメイン制御部41が一定間隔(0.56msの間隔)で実行するタイマ割込処理(メイン)の割込を禁止する(Sa1)。次いで、初期化データをセットし(Sa2)、各出力ポートを初期化する(Sa3)。次いで、内蔵レジスタの設定を行う(Sa4)。」 (ウ)「【0160】 次いで、設定キースイッチがオンにされているか否かを判定する(Sa15)。設定キースイッチがオンの場合(Sa15でY)には、メイン制御部41は、タイマ割込の設定を行う(Sa22)。具体的には、所定時間毎に定期的にタイマ割込がかかるようにメイン制御部41に内蔵されているタイマ回路のレジスタの設定を行なう。例えば0.56msに相当する値が所定のレジスタ(時間定数レジスタ)に設定される。この実施の形態では、0.56ms毎に定期的にタイマ割込がかかるとする。なお、タイマ回路では該レジスタの設定が行われることにより、タイマが初期化され、初期値から計時を開始することになる。そして、タイマ割込の設定が終了すると図7及び図8に示す設定変更処理に移行する。」 【0161】 一方、設定キースイッチがオフの場合(Sa15でY)には、Sa11の判定、Sa13の判定、後述するRAM異常フラグがセットされているか否かにもとづきRAM41cの記憶内容が破壊されていたか否か、すなわちRAM41cの記憶内容が正常か否かを判定する(Sa16)。RAM41cの記憶内容が破壊されていない場合(Sa16でN)には、電断復帰コマンド(電断復帰コマンド1?4)をサブ制御部91に送信するとともに(Sa17)、ホットスタートコマンドをサブ制御部91に送信する(Sa18)。なお、RAM41cの記憶内容が破壊されていない場合とは、Sa11でY、かつSa13でRAM破壊診断用固定データが正しいと判定され、かつRAM異常フラグがセットされていない場合である。 【0162】 そして、全レジスタを復帰し(Sa19)、Sa22と同様のタイマ割込みの設定を行う(Sa20)。そして、図11に示すタイマ割込処理(メイン)のSk26の処理に復帰する。 【0163】 また、RAM41cの記憶内容が破壊されている場合(Sa16でY)には、初期化するRAMの開始アドレスをレジスタにセットし(Sa23)、指定したアドレスで示すRAMの領域をクリア(以下、「初期化」ともいう)する(Sa24)。なお、RAM41cの記憶内容が破壊されている場合とは、Sa11でNまたはSa13でRAM破壊診断用固定データが正しいと判定されない場合またはRAM異常フラグがセットされている場合のいずれかの場合である。 【0164】 ここで、RAM41cの格納領域は、設定値ワーク、特別ワーク、重要ワーク、一般ワーク、未使用領域、スタック領域に区分されている。 【0165】 設定値ワーク(本実施形態では0000H?(図14参照))は、設定値や乱数値など、通常の設定変更時に初期化すると不都合のあるデータが格納される領域である。 【0166】 特別ワーク(本実施形態では0003H?(図14参照))は、I/Oポート41dの入出力データや、演出制御基板90へコマンドを送信するためのデータなど、設定変更開始前にのみ初期化されるデータが格納される領域である。 【0167】 重要ワーク(本実施形態では0014H?(図14参照))は、クレジット数を示すカウンタや、各種表示器やLEDの表示データ、遊技時間の計時カウンタ、ゲーム終了時に初期化すると不都合があるデータが格納される領域である。 【0168】 一般ワーク(本実施形態では0045H?(図14参照))は、持越しが行われない当選フラグや、停止制御テーブル、停止図柄、メダルの払い出し枚数など、1遊技(1ゲーム)に必要なデータであって、ゲーム終了時に初期化可能なデータが格納される領域である。 【0169】 未使用領域(本実施形態では0173H?(図14参照))は、RAM41cの格納領域のうち使用していない領域である。 【0170】 スタック領域(本実施形態では01CCH?(図14参照))は、メイン制御部41のレジスタから退避したデータが格納される領域である。 【0171】 そして、Sa23でアドレスを指定した場合には、RAM41cの格納領域のうち、上記した全ての領域が初期化される。次いで、RAM41cの記憶内容が正常でないことを示すRAM異常フラグをRAM41cにセットし(Sa25)、エラー処理に移行する。エラー処理では、エラー状態になって遊技を行うことが不能になる。エラー状態は、設定キースイッチ37をオンにして電源スイッチ39をオンにすることによって、Sa15でYと判定させ、設定変更処理(図7及び図8参照)に移行させることにより解除することができる。よって、設定キースイッチ37をオンにせずに電源スイッチ39をオンにした場合には、Sa15でNとなり、Sa16でYとなるので再度エラー状態になる。」 (エ)「【0173】 [設定変更処理] 次に、メイン制御部41が実行する設定変更処理について説明する。 【0174】 図7及び図8に示すように、メイン制御部41は、まず、初期化するRAM41cの開始アドレスをレジスタにセットする(Sb1)。なお、RAM41cは16ビットのメモリ空間アドレスにより、使用目的に応じた領域に区切られている(図14参照)。そして、Sb1の処理においては、メモリ空間アドレスのうち初期化を行う開始アドレスをレジスタにセットする。次いで、図5のSa10におけるRAMパリティの計算又は図5のSa12で取得したRAM破壊診断用固定データにもとづき、RAMの内容が異常であるか否かを判定する(Sb2)。RAMの内容が異常の場合(Sb2でY)にはSb3処理に進む。RAMの内容が異常でない場合(Sb2でN)には、設定変更開始時の初期化対象RAMの先頭アドレスをレジスタにセットする(Sb3)。 【0175】 次いで、Sb1又はSb3で指定したアドレスで示すRAMの領域をクリアする(Sb4)。なお、Sb1でアドレスをした場合には、RAM41cの格納領域のうち、上記した全ての領域が初期化される。また、Sb2でアドレスを指定した場合には、RAM41cの格納領域のうち、特別ワーク、重要ワーク、一般ワーク、未使用領域、スタック領域が初期化される。Sb4の処理が終了すると、後述する設定変更開始コマンドをサブ制御部91に送信し(Sb5)、図10および図11において説明するメイン制御部41が一定間隔(0.56msの間隔)で実行するタイマ割込処理(メイン)の割込を許可する(Sb6)。」 (オ)「【0179】 [メイン処理] 次に、メイン制御部41が実行するメイン処理について説明する。なお、メイン処理は一単位の遊技毎に繰り返し実行される。そして、メイン処理の一周期が遊技の一単位に相当している。 【0180】 図9に示すように、メイン制御部41は、まず、図10および図11において説明するメイン制御部41が一定間隔(0.56msの間隔)で実行するタイマ割込処理(メイン)の割込を禁止する(Sc1)。次いで、初期化対象RAMの最終アドレスをセットする(Sc2)。 【0181】 次いで、指定したアドレスで示すRAMの領域をクリアする(Sc3)。このとき、設定変更処理後にメイン処理が開始された場合は、図8のSb13で指定したアドレスからSc2で指定したアドレスまでが初期化される。これにより、RAM41cの格納領域のうち、重要ワーク、一般ワークが初期化される。また、一単位の遊技の終了時には、Sc9で指定したアドレスからSc2で指定したアドレスまでが初期化される。これにより、RAM41cの格納領域のうち、一般ワークが初期化される。そして、図10および図11において説明するメイン制御部41が一定間隔(0.56msの間隔)で実行するタイマ割込処理(メイン)の割込を許可する(Sc4)。」 イ 引用発明2 上記アの記載事項、及び、図面の図示内容を総合勘案すると、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 「初期設定処理において、メイン制御部41は、起動処理を実行し、 設定キースイッチがオンの場合には、設定変更処理に移行し(【0153】、【0160】)、 RAMの内容が異常でない場合、RAM41cの格納領域のうちの全ての領域を初期化し、 RAMの内容が異常の場合、RAM41cの格納領域のうち、特別ワーク、重要ワーク、一般ワーク、未使用領域、スタック領域を初期化し(【0173】?【0175】)、 設定キースイッチがオフ、かつ、記憶内容が破壊されていない場合、初期化するRAMの開始アドレスをレジスタにセットすることなく、タイマ割込処理(メイン)のSk26の処理に復帰し(【0161】?【0163】)、 メイン処理において、メイン制御部41は、一単位の遊技の終了時に、RAM41cの格納領域のうち、一般ワークを初期化する(【0179】、【0181】) 遊技機。」 (4)引用文献3 本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である特開2015-217223号公報(以下「引用文献3」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。 ア 記載事項 (ア)「【技術分野】 【0001】 本発明は、回転している複数のリールが停止したときに表示された図柄の組合せによって、遊技の結果が定まるスロットマシンに関する。」 (イ)「【0143】 <RAM180の初期化領域の説明> 図16は、主制御回路100のRAM180のクリア領域(初期化領域)を状態毎に示した図である。図中の○は、クリアするRAM180の領域を示している。電断復帰時には、未使用領域の情報をクリアする。設定変更電断復帰正常時には、使用中スタック領域から作業領域までの情報をクリアする。設定変更電断復帰正常時とは、設定変更時において、電断前に記憶された情報(チェックサム)と電源投入後の情報(チェックサム)との比較により、電断の復帰が正常に行われたと判断されたときを示す。 【0144】 設定変更電断復帰異常時には、使用中スタック領域から設定値記憶領域までの情報をクリアする。設定変更電断復帰異常時とは、設定変更時において、電断前に記憶された情報(チェックサム)と電源投入後の情報(チェックサム)との比較により、電断の復帰が正常に行われていないと判断されたときを示す。 【0145】 遊技終了(演出状態)時には、フリーズ当選確率状態等を記憶する演出状態記憶領域の情報をクリアする。遊技終了(条件装置状態)時には、小役1、再遊技役等の小役の情報等を記憶する条件装置記憶領域(小役)の情報をクリアする。遊技終了(疑似遊技状態)時には、小役1、疑似遊技の制御や疑似遊技中であるか否か等の情報を記憶する疑似遊技状態記憶領域の情報をクリアする。」 イ 認定事項 (ア)スロットマシンにおける主制御回路のRAMのクリア領域を状態毎に示した図である【図16】には、 「設定変更電断復帰異常」に主制御回路のRAMの全ての記憶領域を初期化し、「電断復帰」時に「未使用領域」のみを初期化することが図示されているものと認められる。 ウ 引用発明3 上記アの記載事項、上記イの認定事項、及び、図面の図示内容を総合勘案すると、引用文献3には、次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。 「設定変更電断復帰異常時に主制御回路100のRAM180の使用中スタック領域から設定値記憶領域までの全ての記憶領域を初期化し(【0143】?【0144】、認定事項(ア))、 遊技終了(条件装置状態)時に小役1、再遊技役等の小役の情報等を記憶する条件装置記憶領域(小役)の情報を初期化し(【0145】)、 電断復帰時に未使用領域のみを初期化する(認定事項(ア)) スロットマシン(【0001】)。」 (5)対比 本件補正発明と引用発明とを対比する(対比にあたっては、本件補正発明の構成A?Fと引用発明の構成a?fについて、それぞれ(a)?(f)の見出しを付して行った。)。 (a) 引用発明における「遊技全体の進行を司る基板である主制御基板Mに搭載され、様々な制御処理などを実行する」ことは、本件補正発明における「遊技動作を制御するための演算処理を行う」ことに相当する。 したがって、引用発明における構成aの「CPUC100」は、本件補正発明における構成Aの「演算処理手段」としての機能を有する。 (b) 引用発明における「CPUC100が様々な制御処理などを実行するための制御プログラムや各種データを記憶する」ことは、本件補正発明における「演算処理手段による演算処理の実行に必要な情報が記憶された」ことに相当する。 したがって、引用発明における構成bの「内蔵ROMC110」は、本件補正発明における構成Bの「第1記憶手段」としての機能を有する。 (c) 引用発明における「CPUC100が様々な制御処理などを実行するために一時的にデータを記憶する」ことは、本件補正発明における「演算処理手段による前記演算処理の実行に必要な情報が記憶される」ことに相当する。 したがって、引用発明における構成cの「内蔵RAMC120」は、本件補正発明における構成Cの「第2記憶手段」としての機能を有する。 (d) 引用発明における「主として遊技の進行を制御する領域である第1ROM領域」は、本件補正発明における「遊技者により実施される遊技の遊技性に関与する処理の実行に必要な情報が記憶された第1の記憶領域」に相当する。 そして、引用発明における「主としてエラー関連等の遊技の正常な進行とは異なる処理を制御する領域である第2ROM領域」は、本件補正発明における「第1の記憶領域とは異なる領域に配置され且つ遊技者により実施される遊技の遊技性に関与しない処理の実行に必要な情報が記憶された第2の記憶領域」に相当する。 したがって、引用発明における構成dの「内蔵ROMC110は、主として遊技の進行を制御する領域である第1ROM領域と、主としてエラー関連等の遊技の正常な進行とは異なる処理を制御する領域である第2ROM領域とを有」することは、本件補正発明における構成Dの「第1記憶手段には、遊技者により実施される遊技の遊技性に関与する処理の実行に必要な情報が記憶された第1の記憶領域と、第1の記憶領域とは異なる領域に配置され且つ遊技者により実施される遊技の遊技性に関与しない処理の実行に必要な情報が記憶された第2の記憶領域とが設けられ」たことに相当する。 (e) 引用発明における「主として遊技の進行に基づく情報を格納する領域である第1RAM領域」は、本件補正発明における「遊技者により実施される遊技の遊技性に関与する処理の実行に必要な情報が一時的に記憶される第1作業領域」に相当する。 そして、引用発明における「主としてエラー関連等の遊技の正常な進行とは異なる処理に基づく情報を格納する領域である第2RAM領域」は、本件補正発明における「第1の一時記憶領域とは異なる領域に配置され、且つ、遊技者により実施される遊技の遊技性に関与しない処理の実行に必要な情報が一時的に記憶される第2作業領域」に相当する。 また、引用発明における「プログラムが内部的にデータを保存しておく必要がある場合に使用されるスタックエリア」と、本件補正発明における「第1スタック領域」及び「第2スタック領域」とは、「スタック領域」である点で共通する。 そうすると、引用発明における「内蔵RAMC120は、主として遊技の進行に基づく情報を格納する領域である第1RAM領域と、主としてエラー関連等の遊技の正常な進行とは異なる処理に基づく情報を格納する領域である第2RAM領域と、プログラムが内部的にデータを保存しておく必要がある場合に使用されるスタックエリアと、を有」することと、本件補正発明における「第2記憶手段には、遊技者により実施される遊技の遊技性に関与する処理の実行に必要な情報が一時的に記憶される第1作業領域及び第1スタック領域を含む第1の一時記憶領域と、第1の一時記憶領域とは異なる領域に配置され、且つ、遊技者により実施される遊技の遊技性に関与しない処理の実行に必要な情報が一時的に記憶される第2作業領域及び第2スタック領域を含む第2の一時記憶領域とが設けられ」ることとは、「第2記憶手段には、遊技者により実施される遊技の遊技性に関与する処理の実行に必要な情報が一時的に記憶される第1作業領域を含む第1の一時記憶領域と、第1の一時記憶領域とは異なる領域に配置され、且つ、遊技者により実施される遊技の遊技性に関与しない処理の実行に必要な情報が一時的に記憶される第2作業領域を含む第2の一時記憶領域と、スタック領域とが設けられ」ることで共通する。 (f) 引用発明における「「0000H」から「1FFFH」までの空間には第1ROM領域が割り当てられ、「2000H」から「27FFH」までの空間には第2ROM領域が割り当てられ」ることは、16進数で「1FFF」の次の数は、「2000」であることから、本件補正発明における「第1記憶手段内において、第1の記憶領域及び第2の記憶領域は、アドレス上、連続して配置されて」いることに相当する。 そして、引用発明における「CPUC100」が、「設定変更時初期化処理において、第2RAM内の電源断復帰データが正常である場合、第1RAM及び第2RAMの初期化範囲をRAM内における設定値を除くすべての範囲に決定し、第2RAM内の電源断復帰データが正常でない場合、第1RAM及び第2RAMの初期化範囲をRAMのすべての範囲に決定」することは、「設定変更時初期化処理」において、少なくとも「第1RAM及び第2RAMの」、「第1作業領域及び第2作業領域」を含み、「RAM内における設定値を除くすべての範囲」が初期化されることを意味する。 また、引用発明における「CPUC100」が、「非設定変更時初期化処理において、第1RAMび第2RAMの初期化範囲を第1作業領域及び第2作業領域を除いた、第1RAM領域における未使用領域と第2RAM領域における未使用領域とに決定する」ことは、「第1作業領域及び第2作業領域」については、初期化されないことを意味する。 そうすると、引用発明の構成fにおいて、「第1作業領域及び第2作業領域」に関して、「設定変更時初期化処理」における「初期化範囲」が、「非設定変更時初期化処理」における「初期化範囲」より広いことになる。 したがって、引用発明における構成fの「CPUC100は、設定変更時初期化処理において、第2RAM内の電源断復帰データが正常である場合、第1RAM及び第2RAMの初期化範囲をRAM内における設定値を除くすべての範囲に決定し、第2RAM内の電源断復帰データが正常でない場合、第1RAM及び第2RAMの初期化範囲をRAMのすべての範囲に決定し、CPUC100は、非設定変更時初期化処理において、第1RAMび第2RAMの初期化範囲を第1作業領域及び第2作業領域を除いた、第1RAM領域における未使用領域と第2RAM領域における未使用領域とに決定」することと、本件補正発明における構成Fの「設定変更が行われる起動時、一遊技終了時、及び、設定変更を行わない起動時に実行される第2記憶手段の初期化の範囲が、設定変更が行われる起動時、一遊技終了時、及び、設定変更を行わない起動時の順で狭くなる」こととは、「設定変更が行われる起動時、及び、設定変更を行わない起動時に実行される第2記憶手段の初期化の範囲が、設定変更が行われる起動時よりも、設定変更を行わない起動時の方が狭くなる」ことで共通する。 上記(a)?(f)より、両者の一致点および相違点は、次のとおりである。 [一致点] 「A 遊技動作を制御するための演算処理を行う演算処理手段と、 B 前記演算処理手段による前記演算処理の実行に必要な情報が記憶された第1記憶手段と、 C 前記演算処理手段による前記演算処理の実行に必要な情報が記憶される第2記憶手段と、を備え、 D 前記第1記憶手段には、遊技者により実施される遊技の遊技性に関与する処理の実行に必要な情報が記憶された第1の記憶領域と、前記第1の記憶領域とは異なる領域に配置され且つ遊技者により実施される遊技の遊技性に関与しない処理の実行に必要な情報が記憶された第2の記憶領域とが設けられ、 E’前記第2記憶手段には、遊技者により実施される遊技の遊技性に関与する処理の実行に必要な情報が一時的に記憶される第1作業領域を含む第1の一時記憶領域と、前記第1の一時記憶領域とは異なる領域に配置され、且つ、遊技者により実施される遊技の遊技性に関与しない処理の実行に必要な情報が一時的に記憶される第2作業領域を含む第2の一時記憶領域と、スタック領域とが設けられ、 F’前記第1記憶手段内において、前記第1の記憶領域及び前記第2の記憶領域は、アドレス上、連続して配置されており、設定変更が行われる起動時、及び、設定変更を行わない起動時に実行される前記第2記憶手段の初期化の範囲が、設定変更が行われる起動時よりも、設定変更を行わない起動時の方が狭くなる 遊技機。」 [相違点1](構成E) スタック領域に関して、本件補正発明は、「第1の一時記憶領域」に「第1スタック領域」が含まれ、かつ、「第2の一時記憶領域」に「第2スタック領域」が含まれるのに対して、引用発明は、そのような構成を備えない点。 [相違点2](構成F) 本件補正発明は、「設定変更が行われる起動時、一遊技終了時、及び、設定変更を行わない起動時に実行される第2記憶手段の初期化の範囲が、設定変更が行われる起動時、一遊技終了時、及び、設定変更を行わない起動時の順で狭くなる」のに対して、引用発明は、「一遊技終了時」に「第2記憶手段の初期化」が実行されるか否か明らかでないため、3者(設定変更が行われる起動時、一遊技終了時、設定変更を行わない起動時)の間における「第2記憶手段の初期化の範囲」の広狭が不明である点。 (6)当審の判断 ア 相違点1(構成E)について 上記相違点1について検討する。 引用発明における構成eの「プログラムが内部的にデータを保存しておく必要がある場合使用されるスタックエリア」は、「主として遊技の進行」に関する処理、及び、「主としてエラー関連等の遊技の正常な進行とは異なる処理」のいずれの処理が実行されるときにも使用される領域であることから、本件補正発明における「第1の一時記憶領域」の「第1スタック領域」の機能と、「第2の一時記憶領域」の「第2スタック領域」の機能とを奏し得るものである。 一方、遊技機を含む情報処理装置一般の技術分野において、メモリの利用効率を向上させるため、異なる内容のプログラム毎に、RAMにスタック領域を形成することは、本願出願前に周知の技術事項である(例えば、特開2002-878号公報の【0005】、【0017】、【0027】?【0029】、【図3】には、「復帰情報を記憶する領域を複数の領域に区分けすることで・・・サブルーチン化されたプログラムを実行できプログラム記憶容量を小さくすることができる遊技機を提供する。」(【0005】)ことを目的として、「RAM106は、図3に示すように、先頭のアドレスから順に、上述した各プログラムを実行するための作業を行う作業領域Wと、未使用領域Nを挟んで上述したパチンコ遊技処理を実行する際に使用されるスタック領域S1と、上述した復電処理を実行する際に使用されるスタック領域S2とが設けられている。」(【0017】)ことが記載され、 特開平6-168145号公報の【0005】、【0018】?【0019】、【0045】、【図4】、【図10】には、「スタック領域をタスクに割り付ける処理が簡単であって、且つ、スタック領域のためのメモリ利用効率を向上させることができるマルチタスク処理システムにおけるスタック制御方式を提供すること」(【0005】)を目的として、「タスクP1,P11には、それぞれスタック領域A及びEが専用スタック領域として割り当てられ」(【0019】)、「タスクP2,P3,P4のスタック領域B、タスクP5,P6,P7のスタック領域C、タスクP8,P9,P10のスタック領域Dが夫々共有スタック領域とされる。」(【0018】)ことが記載されている。以下「周知の技術事項1」という。)。 そして、引用発明において、内蔵RAMC120の利用効率を向上させる必要のあることは、自明の課題である。 したがって、引用発明に上記周知の技術事項1を適用して、「スタックエリア」を、「主として遊技の進行」に関する処理に用いるスタックエリアと、「主としてエラー関連等の遊技の正常な進行とは異なる処理」に用いるスタックエリアとに分割し、上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得たものである。 イ 相違点2(構成F)について (ア)引用発明2を適用する場合について 本件補正発明と引用発明2とを比較する。 引用発明2における「起動処理を実行し、設定キースイッチがオンの場合には、設定変更処理に移行」するとき(以下「タイミング1」という。)は、本件補正発明における「設定変更が行われる起動時」に相当する。 そして、引用発明2における「起動処理を実行し」、「設定キースイッチがオフ、かつ、記憶内容が破壊されていない場合」(以下「タイミング3」という。)は、本件補正発明における「設定変更を行わない起動時」に相当する。 また、引用発明2における「一単位の遊技の終了時」(以下「タイミング2」という。)は、本件補正発明における「一遊技終了時」に相当する。 ここで、引用発明2は、タイミング1のときは、RAM41cの格納領域のうちの全ての領域、若しくは、「特別ワーク、重要ワーク、一般ワーク、未使用領域、スタック領域を初期化」し、タイミング2のときは、「一般ワークを初期化」し、タイミング3のときは、初期化を行わないものであるから、タイミング1、タイミング2、タイミング3で実行されるRAMの初期化の範囲が、タイミング1、タイミング2、及び、タイミング3の順で狭くなるといえる。 したがって、引用発明2は、本件補正発明における構成Fの「設定変更が行われる起動時、一遊技終了時、及び、設定変更を行わない起動時に実行される前記第2記憶手段の初期化の範囲が、設定変更が行われる起動時、一遊技終了時、及び、設定変更を行わない起動時の順で狭くなる」構成を備えるものである。 ここで、引用発明と引用発明2とは、第2記憶手段の初期化を設定変更が行われる起動時、及び、設定変更を行わない起動時に実行するという共通の機能を有するものである。 よって、引用発明における初期化処理に引用発明2の初期化に関する技術を適用して、一遊技終了時に第2記憶手段の初期化を行うとともに、設定変更が行われる起動時、一遊技終了時、及び、設定変更を行わない起動時におけるそれぞれの初期化の範囲を決定し、上記相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは当業者が容易になし得たものである。 (イ)引用発明3を適用する場合について 本件補正発明と引用発明3とを比較する。 引用発明3における「設定変更電断復帰異常時」(以下「タイミング4」という。)は、本件補正発明における「設定変更が行われる起動時」に相当する。 そして、引用発明3における「電断復帰時」(以下「タイミング6」という。)は、本件補正発明における「設定変更を行わない起動時」に相当する。 また、引用発明3における「遊技終了(条件装置状態)時」(以下「タイミング5」という。)は、本件補正発明における「一遊技終了時」に相当する。 ここで、引用発明3は、タイミング4のときは、「RAM180の」「全ての記憶領域を初期化」し、タイミング5のときは、「再遊技役等の小役の情報等を記憶する条件装置記憶領域(小役)の情報を初期化」し、タイミング6のときは、「未使用領域」以外の領域の初期化を行はないものであるから、タイミング4、タイミング5、タイミング6で実行されるRAMの初期化の範囲が、タイミング4、タイミング5、及び、タイミング6の順で狭くなるといえる。 したがって、引用発明3は、本件補正発明における構成Fの「設定変更が行われる起動時、一遊技終了時、及び、設定変更を行わない起動時に実行される前記第2記憶手段の初期化の範囲が、設定変更が行われる起動時、一遊技終了時、及び、設定変更を行わない起動時の順で狭くなる」構成を備えるものである。 ここで、引用発明と引用発明3とは、第2記憶手段の初期化を設定変更が行われる起動時、及び、設定変更を行わない起動時に実行するという共通の機能を有するものである。 よって、引用発明における初期化処理に引用発明3の初期化に関する技術を適用して、一遊技終了時に第2記憶手段の初期化を行うとともに、設定変更が行われる起動時、一遊技終了時、及び、設定変更を行わない起動時におけるそれぞれの初期化の範囲を決定し、上記相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは当業者が容易になし得たものである。 (ウ)引用文献2?3に基づく周知技術を適用する場合について。 上記(ア)?(イ)において検討したことから、遊技機の技術分野において、RAMの初期化処理に関し、一遊技終了時にRAMの初期化を行うこと、及び、設定変更が行われる起動時、一遊技終了時、及び、設定変更を行わない起動時に実行されるRAMの初期化の範囲が、設定変更が行われる起動時、一遊技終了時、及び、設定変更を行わない起動時の順で狭くなるようにすることは、本願出願前に周知の技術事項である(例えば、引用文献2?3を参照。以下「周知の技術事項2」という。)。 そして、引用発明における初期化処理に上記周知の技術事項2を適用して、上記相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは当業者が容易になし得たものである。 ウ 請求人の審判請求書における主張について 請求人は、平成30年11月29日付け審判請求書において、次の主張をする。 (ア)「本願請求項1に係る発明では、・・・例えば、主制御基板のROM内におけるプログラム及びテーブルの拡張性を高めることができる、という効果が得られます。」(c.拒絶理由1(進歩性)について(1)請求項1の欄を参照。) (イ)「引用文献1及び2のいずれにも、本願請求項1に記載の「前記第1記憶手段内において、前記第1の記憶領域及び前記第2の記憶領域は、アドレス上、連続して配置されており、設定変更が行われる起動時、一遊技終了時、及び、設定変更を行わない起動時に実行される前記第2記憶手段の初期化の範囲が、設定変更が行われる起動時、一遊技終了時、及び、設定変更を行わない起動時の順で狭くなる」という第3の特徴(特に下線部の事項)に相当する技術的事項については教示も示唆もされていません。」(c.拒絶理由1(進歩性)について(1)請求項1の欄を参照。) そこで、請求人の上記主張について検討する。 まず、請求人の上記主張(イ)について検討する。 上記「イ 相違点2(構成F)について」において検討したように、請求人が主張する本願発明の第3の特徴については、引用発明2、及び、引用発明3が備える構成であるとともに、本願出願前における周知の技術事項であるから、引用発明にこれらを適用することにより当業者が容易になし得たものである。 次に、請求人の上記主張(ア)について検討する。 引用発明は、構成dにより「内蔵ROMC110」を「主として遊技の進行を制御する領域である第1ROM領域」と、「主としてエラー関連等の遊技の正常な進行とは異なる処理を制御する領域である第2ROM領域」とに区分けするものであって、「主として遊技の進行を制御する」プログラムに着目してみれば、「主としてエラー関連等の遊技の正常な進行とは異なる処理」のために用いられるプログラムと分離されることにより、その拡張性が向上し、本件補正発明と同様のROM内におけるプログラム及びテーブルの拡張性を高めるなる効果を奏するものであることは明らかである。 また、上記周知の技術事項として提示した特開2002-878号公報には、ROMの記憶領域を遊技処理プログラム記憶領域M1、電源断時処理プログラム記憶領域M2、復電処理プログラム記憶領域M3とに区分すること(【0016】、【図3】)が記載されていることから、本件補正発明と同様に、ROM内におけるプログラム及びテーブルの拡張性を高めるなる効果を奏することは明らかである。 そうすると、遊技機の技術分野において、ROM内におけるプログラム及びテーブルの拡張性を高めるために、ROMの記憶領域をプラグラムの種類毎に区分けすることは、本願出願前に周知の技術事項であるといえる。 したがって、請求人が主張する本件補正発明についての効果は、遊技機の技術分野における周知の効果であると共に、引用発明が奏する効果であって、格別なものではない。 よって、請求人の上記主張(ア)?(イ)を採用することはできない。 エ 小括 本件補正発明により奏される効果は、引用発明、引用発明2、及び、上記周知の技術事項1に基づいて、あるいは、引用発明、引用発明3、及び、上記周知の技術事項1に基づいて、若しくは、引用発明、上記周知の技術事項1?2に基づいて当業者が予測できる効果の範囲内のものであり、格別なものではない。 よって、上記ア?ウにおいて検討したとおり、本件補正発明は、引用発明、引用発明2、及び、上記周知の技術事項1に基づいて、あるいは、引用発明、引用発明3、及び、上記周知の技術事項1に基づいて、若しくは、引用発明、上記周知の技術事項1?2に基づいて当業者が容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。 (7)まとめ 上記(1)?(6)より、本件補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たさないものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は、上記のとおり却下されることとなったので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という)。は、平成29年9月21日付け手続補正書における特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであるところ、本願発明(記号A?F’’は、分説するため当審で付した。)は、次のとおりのものと認める。 「A 遊技動作を制御するための演算処理を行う演算処理手段と、 B 前記演算処理手段による前記演算処理の実行に必要な情報が記憶された第1記憶手段と、 C 前記演算処理手段による前記演算処理の実行に必要な情報が記憶される第2記憶手段と、を備え、 D 前記第1記憶手段には、遊技者により実施される遊技の遊技性に関与する処理の実行に必要な情報が記憶された第1の記憶領域と、前記第1の記憶領域とは異なる領域に配置され且つ遊技者により実施される遊技の遊技性に関与しない処理の実行に必要な情報が記憶された第2の記憶領域とが設けられ、 E 前記第2記憶手段には、遊技者により実施される遊技の遊技性に関与する処理の実行に必要な情報が一時的に記憶される第1作業領域及び第1スタック領域を含む第1の一時記憶領域と、前記第1の一時記憶領域とは異なる領域に配置され、且つ、遊技者により実施される遊技の遊技性に関与しない処理の実行に必要な情報が一時的に記憶される第2作業領域及び第2スタック領域を含む第2の一時記憶領域とが設けられ、 F’’前記第1記憶手段内において、前記第1の記憶領域及び前記第2の記憶領域は、アドレス上、連続して配置されている ことを特徴とする遊技機。」 2 拒絶の理由(平成30年2月9日付け) 原査定の請求項1?2に係る拒絶の理由は、概略、次のとおりのものである。 (進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1又は2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、また、この出願の請求項2に係る発明は、その出願前に日本国内において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1、3又は2、3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 〈引用文献等一覧〉 1:特開2009-136408号公報 2:特開2016-101275号公報 3:特開2002-878号公報(周知技術を示す文献) 3 引用文献に記載された事項 原査定の拒絶理由において提示された、引用文献2である特開2016-101275号公報(前記「第2 2(2)引用文献1」における「引用文献1」に対応する。)の記載事項及び引用発明の認定については、前記「第2 2(2)引用文献1」に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、前記「第2[理由]2(1)本件補正発明」で検討した本件補正発明の「設定変更が行われる起動時、一遊技終了時、及び、設定変更を行わない起動時に実行される前記第2記憶手段の初期化の範囲が、設定変更が行われる起動時、一遊技終了時、及び、設定変更を行わない起動時の順で狭くなる」との限定を省くものである。 そうすると、本願発明と引用発明とは、前記相違点1において相違し、その余の点で一致するものである。 そして、相違点1についての判断は、本件補正発明と引用発明との相違点1について、前記「第2 2(6)当審の判断 ア」において検討したとおりである。 したがって、本願発明は、引用発明、及び、上記周知の技術事項1に基づいて当業者が容易になし得たものである。 5 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2019-06-04 |
結審通知日 | 2019-06-11 |
審決日 | 2019-06-27 |
出願番号 | 特願2016-159186(P2016-159186) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山本 一 |
特許庁審判長 |
▲吉▼川 康史 |
特許庁審判官 |
牧 隆志 長崎 洋一 |
発明の名称 | 遊技機 |
代理人 | 特許業務法人信友国際特許事務所 |