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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1354041
審判番号 不服2018-12158  
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-09-10 
確定日 2019-08-05 
事件の表示 特願2017- 92508「口腔清浄用発泡性錠剤」拒絶査定不服審判事件〔平成29年10月26日出願公開、特開2017-193547〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年4月21日に出願された特願2016-85522号の一部を、平成29年5月8日に新たな特許出願としたものであって、同年5月8日に上申書が提出され、同年12月20日に手続補正書が提出され、平成30年2月21日付けで拒絶理由が通知され、同年4月9日に意見書及び手続補正書が提出されたものの、同年6月4日付けで、同年4月9日にした手続補正は却下されるとともに拒絶査定がされたところ、これに対して、同年9月10日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に特許請求の範囲についての手続補正書が提出されたものである。


第2 平成30年9月10日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成30年9月10日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
平成30年9月10日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、平成29年12月20日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲をさらに補正するものであって、以下の補正を含むものである。

(1)補正事項
特許請求の範囲の請求項1について、補正前の
「【請求項1】
結晶セルロースを含む材料からなる錠剤用基材、炭酸水素ナトリウムを含む発泡剤、及び無水ケイ酸を含む研磨剤を含む混合物を錠剤化してなる口腔清浄用発泡性錠剤であって、前記発泡剤は発泡時における体積が26ミリリットル以上53ミリリットル以下である発泡剤の重量とした口腔清浄用発泡性錠剤。」

「【請求項1】
結晶セルロースを含む材料からなる錠剤用基材、炭酸水素ナトリウムを含む発泡剤、及び無水ケイ酸を含む研磨剤を含む混合物を錠剤化してなる口腔清浄用発泡性錠剤であって、歯ブラシや水を必要とせず前記発泡剤は発泡時における体積が26ミリリットル以上53ミリリットル以下である発泡剤の重量とした口腔清浄用発泡性錠剤。」(なお、下線部は当審で付した。)
とする補正。

2 補正の適否
上記補正の「歯ブラシや水を必要とせず」との特定は、本願明細書の【発明が解決しようとする課題」の段落【0006】の記載からみて、新規事項を追加するものではなく、特許法第17条の2第3項で規定を満たすものであり、また、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決すべき課題が同一であるから、上記補正は特許法17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

3 独立特許要件について
本件補正は、補正事項に係る特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むので、本件補正後の請求項1に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか、つまり、本件補正が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するものであるかどうか(いわゆる独立特許要件違反の有無)について検討する。
そして、当審は、本件補正により補正された請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、引用文献1(特表2002-531480号公報)に記載された発明及び引用文献5(国際公開第2014/042120号)に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない、と判断する。
以下、その理由を詳述する。

(1) 本願補正発明
本願補正発明は、以下のとおりであり、再掲する。

「【請求項1】
結晶セルロースを含む材料からなる錠剤用基材、炭酸水素ナトリウムを含む発泡剤、及び無水ケイ酸を含む研磨剤を含む混合物を錠剤化してなる口腔清浄用発泡性錠剤であって、歯ブラシや水を必要とせず前記発泡剤は発泡時における体積が26ミリリットル以上53ミリリットル以下である発泡剤の重量とした口腔清浄用発泡性錠剤。」

(2) 引用文献1、5に記載された事項及び引用文献1に記載された発明
ア 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の分割に係る原出願の出願前に頒布された引用文献1(特表2002-531480号公報)には、以下の記載がある(なお、下線部は当審で付した。以下も同様。)。
(ア) 「【請求項1】
i) 結晶セルロース、粉末状セルロース、食物繊維、およびそれらの混合物からなる群より選択される錠剤用基材30?70重量%、ii) 重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、重炭酸カリウム、炭酸鉄、およびそれらの混合物からなる群より選択される発泡剤10?50重量%、iii)研磨剤5?20重量%、iv) 有機酸3?20重量%、v) 歯牙保護剤0.05?1.0重量%、ならびにvi) 風味用、フレーバー用、着色用の添加剤を含む口腔清浄用発泡タブレット。
【請求項2】
上記研磨剤が、シリカ、亜リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、軽質シリカ、水和シリカ、水和アルミナ、シリカゲル、不溶性メタリン酸ナトリウム、ケイ酸ジルコニウム、重炭酸ナトリウム、アルミノケイ酸塩、およびそれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする請求項1に記載の発泡タブレット。
【請求項3】
上記有機酸が、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコン酸、アスコルビン酸、コハク酸、プロピオン酸およびそれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする請求項1に記載の発泡タブレット。
【請求項4】
上記歯牙保護剤が、フッ化ナトリウムおよび他のフッ化化合物からなる群より選択されることを特徴とする請求項1に記載の発泡タブレット。
【請求項5】
さらにラウリル硫酸ナトリウム、N-ラウロイルサルコシンナトリウム、N-アシルグルタミン酸塩、サッカロース脂肪エステル、ポリオキシエチレン硬化カスター油、ソルビタン脂肪エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマー、およびそれらの混合物からなる群から選択される補助発泡剤としてのアニオンおよび/または非イオン性界面活性剤を含む請求項1?4のいずれかに記載の発泡タブレット。」

(イ) 「【0001】
【発明の技術分野】
本発明は、口腔清浄用発泡タブレットに関する。さらに詳しくは、口腔の効率的な清浄剤に使用される口腔清浄成分と発泡剤とを混合し次いで錠剤化することにより製造される発泡タブレットに関する。
詳細には、発泡タブレットは、i) 結晶セルロース、粉末状セルロース、食物繊維、およびそれらの混合物からなる群より選択される錠剤用基材、ii) 重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、重炭酸カリウム、炭酸鉄、およびそれらの混合物からなる群より選択される発泡剤、iii)研磨剤、iv) 有機酸、v) 歯牙保護剤、ならびにvi) 風味用、フレーバー用、着色用の添加剤を含む。本発明に係る発泡タブレットは、使用と保存の利便性を提供する。
【0002】
【発明の技術的背景】
歯磨の場合、歯ブラシの運動により完全なこすり磨きと歯石の除去が達成され得るとしても、口腔を清潔にするためには付加的な道具および時間を必要とする。他方、液体タイプの口腔清浄剤は、その大きい容量と重量のためにカップまたは他の容器といった付加的な道具を必要とする。
【0003】
上記の問題を解決するため、タブレットタイプの口腔清浄剤が本発明において開発されており、たとえば、i)保存の便利さ、ii)他に道具を必要としない、iii)歯と口腔を良好な風味と香味で清浄することなどの多くの利点を有する。
商業的に市販されている口腔清浄剤は、次の通り例証することができる。i)飲料茶タイプの液剤、ii)キャンディータイプの固形剤およびiii)液体またはゲルタイプの歯磨である。以下は、今日までに開発されたゲルタイプの練り歯磨である。」

(ウ) 「【0008】
他方、米国特許No.4,417,993は、炭酸カルシウムとヒドロキシ炭酸マグネシウムを含む義歯用清浄タブレットを開示した。米国特許No.3,888,976は、プラーグを除去するため銅化合物を、またアレルギーを除くため亜鉛またはストロンチウム成分を含む清浄タブレットを開示した。米国特許No.5,670,138は、研磨効果とフレーバーを向上させるためN-ビニルピロリドンおよびアクリル酸を含む清浄タブレットを開示した。また、米国特許No.4,243,655は、プラーグおよび酸生成を抑制するビオチンを含む清浄タブレットを開示した。米国特許No.5,529,788は、酵素、界面活性剤および発泡剤を含む清浄タブレットを開示した。
【0009】
そのような清浄タブレットは,歯磨と比べて多くの利点を有する。歯磨は、完全なこすり磨きとプラーグの除去が達成されるとしても、付加的に道具および時間を必要とする。しかし、清浄用タブレットは、時間と道具を必要とせず使用と保存の利便性があり、噛んで洗い出すことにより使える。」

(エ) 「【0010】
【発明の概要】
本発明の目的は、
i) 結晶セルロース、粉末状セルロース、食物繊維、およびそれらの混合物からなる群より選択される錠剤用基材30?70重量%、ii) 重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、重炭酸カリウム、炭酸鉄、およびそれらの混合物からなる群より選択される発泡剤10?50重量%、iii)研磨剤5?20重量%、iv) 有機酸3?20重量%、v) 歯牙保護剤0.05?1.0重量%、ならびにvi) 風味、フレーバー、着色用の添加剤を含む口腔清浄用発泡タブレットを提供することにある。
【0011】
詳細には、i) 結晶セルロース、粉末状セルロース、食物繊維、およびそれらの混合物からなる群より選択される錠剤用基材30?70重量%、ii) 重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、重炭酸カリウム、炭酸鉄、およびそれらの混合物からなる群より選択される発泡剤10?50重量%、iii) シリカ、亜リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、軽質シリカ、水和シリカ、水和アルミナ、シリカゲル、不溶性メタリン酸ナトリウム、ケイ酸ジルコニウム、重炭酸ナトリウム、アルミノケイ酸塩、およびそれらの混合物からなる群より選択される研磨剤5?20重量%、iv) クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコン酸、アスコルビン酸、コハク酸、プロピオン酸およびそれらの混合物からなる群より選択される有機酸3?20重量%、v) フッ化ナトリウムおよび他のフッ化化合物からなる群より選択される歯牙保護剤0.05?1.0重量%、ならびにvi) 風味、フレーバー、着色用の添加剤を含む口腔清浄用発泡タブレットを提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、充分な口腔清浄効果を有する、使用と保存に便利な発泡タブレットを提供することにある。」

(オ) 「【0014】
【最良の結果をもたらす発明実施の形態】
本発明の錠剤用基材は、結晶セルロース、粉末状セルロース、食物繊維、およびそれらの混合物からなる群より選択することができる。とくに結晶セルロース、粉末状セルロース、およびそれらの混合物が好ましい。そうした材料は、組織感を与える結合剤としての機能もまた有する。
【0015】
重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、重炭酸カリウム、炭酸鉄、およびそれらの混合物からなる群より選択される発泡剤は、発泡剤としてだけでなく口腔清浄剤としても使用され得る。さらに重炭酸ナトリウムは、その安全性によりベーキングパウダーとして使用されており、水に可溶な白色の粉末であり水に溶解する際、二酸化炭素を放出する。他方、重炭酸ナトリウムはまた、口腔バクテリアに対し抑制作用を有するとともにプラーグによりもたらされる有機酸を中和することによる歯牙保護効果をも有する。
【0016】
研磨剤は、シリカ、亜リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、軽質シリカ、水和シリカ、水和アルミナ、シリカゲル、不溶性メタリン酸ナトリウム、ケイ酸ジルコニウム、重炭酸ナトリウム、アルミノケイ酸塩、およびそれらの混合物からなる群より選択することができる。その中でシリカ、とくにチクソシル-73K(Tixosil-73K)が好ましい。」

(カ) 「【0021】
虫歯は、歯のエナメル質が充分に強くなく、砂糖を含むものを多く食する人にバクテリアにより引き起こされる。かかる虫歯において歯石が成長し歯茎に出血または炎症をもたらす。この場合、一般に口臭が発生する。かかる口臭はその人の社会生活に悪影響を及ぼす。したがって、他の人々と良好な関係を保つために口腔を清浄することは重要である。これまで開発されてきた口腔清浄剤は、主に液体タイプである。固形または粉末タイプの口腔清浄剤は極めて稀である。
【0022】
したがって、本発明に係る口腔清浄用発泡タブレットは、次の多くの利点を与える;i) これを噛んだとき良好な組織感がある、ii) 口腔内で良く溶けて速やかに泡を発生する、iii) 優れた歯牙保護機能、iv) 良いフレーバーと清浄効果である。
本発明は、さらに次の実施例により具体的に説明される。しかし、実施例は本発明を説明するためであり、いかなる様式においてその範囲を限定する意図ではないことは理解されるべきである。」

(キ) 「【0023】
【実施例1?12】
製造方法
発泡組成物を調製するため、各成分は以下の工程により混合される。
1)予備混合工程
着色剤であるTSメロンの天然色素を蒸留水に加えて3.5%溶液を作成する。この着色溶液は結晶セルロース、粉末セルロースおよびその混合物30?70重量%に吸着される。次いで混合物は65℃で2?3時間乾燥される。得られたものを粉砕し40メッシュ篩に通す。
2)混合工程
上記工程の予備調製物に対し以下の成分;i) 重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、重炭酸カリウム、炭酸鉄、およびそれらの混合物からなる群より選択される発泡剤10?50重量%、ii) シリカ(Tixosil-73K)といった 研磨剤5?20重量%、iii) クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコン酸、アスコルビン酸、コハク酸、プロピオン酸およびそれらの混合物(あるいは2?30重量%の糖アルコール、たとえばキシリトールまたはオリゴサッカライド)からなる群より選択される有機酸2?20重量%、iv) 0.1?0.5重量%のメントール、v) フッ化ナトリウムまたは他のフッ化化合物0.1?0.5重量%、ならびにvi) ペパーミントフレーバー(またはスペアミント、オレンジ、ストロベリー、果実風フレーバー)若干量、vii) ラウリル硫酸ナトリウム、若干量およびviii)ローズマリー、緑茶粉末、柿エキス、シャンピニオンエキスおよびそれらの混合物の若干量を表1に示すように混合する。
3)錠剤化工程
上記工程の混合物を適当な用具を使用して錠剤化される。
【0024】
【表1】




(ク) 「【0025】
【実施例13】
他の市販製品と比較して本発明の発泡タブレットの歯のバクテリアの殺菌効果および口腔清浄効果
1)緒言
歯のバクテリアに対する最低殺菌効果を決定するために、殺菌作用を有する各成分、すなわちこれらとして重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、重炭酸アンモニウム、重炭酸カリウム、硫酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、および重炭酸ナトリウムとラウリル硫酸ナトリウムの混合物が試験された。その結果は、本発明に係る発泡性タブレットと他の市販製品と比較して、これらの殺菌機能を示すだろう。
2)方法
歯のバクテリアの選別と保存
選別され保存された11の歯のバクテリアは、次のバクテリアである;ストレプトコッカス サンギス(Streptococcus sanguis),ストレプトコッカス ミュータンス (Streptococcus mutans),ラクトバチルス カゼイ(Lactobacillus casei), アセチノバチルス(Acetinobacillus),バクテロイデス ギンギヴァリス( Bacterioides gingivalis), カプノチトファガ オクラセウス(Capnocytophaga ochraceus),エイケネラ コールデンス(Eikenella corrdens),フソバクテリウム ヌクレアヌム(Fusobacterium nucleanum),バクテロイデス メラニノゲニカス sspインタメディウス(Bacteroides melaninogenicus ssp intermedius), スタフィロコッカス アウレウス(Staphylococcus aureus),ストレプトコッカス フェカーリス( Steptococcus feacalis).
これらは、laked-rabbit brucella (LRBB)寒天培地に嫌気条件(85%N_(2), 10%H_(2), 5%CO_(2))で保存されている。
ii) 試薬および材料
重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、重炭酸アンモニウム、重炭酸カリウム、硫酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、および重炭酸ナトリウムとラウリル硫酸ナトリウムの混合物が試薬として使用される。さらに商業的に市販されている歯磨、液体タイプの口腔清浄剤および本発明の発泡タブレットを材料として用いられる。
iii) 殺菌濃度を決定する試験
歯のバクテリアに対する殺菌濃度を決定するために、重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、重炭酸アンモニウム、重炭酸カリウム、硫酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、および重炭酸ナトリウムとラウリル硫酸ナトリウムの混合物をMueller Hinton(MH)培地を使用して、図1に示すように希釈される。保存液(1.2?4.8M塩溶液)は、0.2μmのメンブレンでろ過され、ブランク(B)は、塩を添加しないで作成される。24時間培養と72時間培養して調製した株を混合する。次いでその溶液0.1mlは10^(5)?10^(7)のバクテリアを含む。
【0026】
37℃で嫌気的に96時間培養後、不透明でない(nonopaque)試験管の最低濃度を、最低殺菌濃度として決定される。最低殺菌濃度を確認するため、株はLRBB寒天平面培地に移して培養した。次いで10未満のコロニー数を検出することにより株の最低殺菌濃度を決定される。
株の培養は、#1 Macfarlandの標準法に従い、MH培地で行われている。コロニー生成は、LRBB寒天培地で72?96時間嫌気的培養により行われた。試験したバクテリアの各サスペンジョン(10μl)は、塩希釈しまたはしないでシェドラー(shaedler)寒天(Difco)培地に接種された。平板培地で培養は37℃で5?7日間行った。
iv) バクテリアの殺菌作用
種々のバクテリア株は1M重炭酸ナトリウムとともにMH培地に懸濁し、水浴中で37℃で維持する。かかる株はLRBB寒天培地で希釈し嫌気的条件下で5?7日間平板培地で培養しコロニーを形成させる。
v) 本発明のタブレット、歯磨および液体タイプの口腔清浄剤の口腔清浄効果の比較
・調製
本発明で調製したタブレット(700mg)は、19.7gのリン酸緩衝液に溶解し希釈される。市販の歯磨(1g)も19gのリン酸緩衝液に溶解し希釈される。液体タイプの口腔清浄剤(20g)を調製 する。3試料全部を高圧下で殺菌し4つの歯のバクテリア〔Streptococcus sanguis, Streptococcus mutans, Lactobacillus casei, Acetinobacillus〕が調製され、10^(5)?10^(7)濃度に希釈される。
・歯のバクテリアの数の測定
45℃で20mlの標準法寒天培地を殺菌したペトリ皿に用意し、5gの試験サンプルと1gのバクテリアサンプルとを混合し撹拌して培養する。これらは室温で放置することにより静置して凝固させる。コロニー数を、20℃で7日間培養後に測定して歯のバクテリアの数を算出する。
3)結果
表2は、歯のバクテリアに対する種々の塩の殺菌濃度を示す。ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)と重炭酸ナトリウムの混合物は、他の塩と比較してより良い殺菌作用を示す。さらに重炭酸ナトリウムは、より良い泡形成作用と安全性を示す。もちろん、重炭酸ナトリウムの殺菌作用は、重炭酸アニオンとみなされる。
【0027】
【表2】

【0028】
表3は、市販の歯磨および液体タイプの口腔清浄剤と比較して本発明により調製されたタブレットにより、より良い殺菌効果を示す。
【0029】
【表3】



(ケ) 「【0030】
【実施例14】
官能試験
1)パネル
パネルは、25?30歳の男5名、女5名が選ばれる。
2)材料
i) 市販歯磨:2.5gの歯磨を使用し、上下のブラッシング15回、歯ブラシで磨いた。次いで水を使って10回洗い流しを行った。
【0031】
ii) 実施例4で調製した本発明に係る発泡タブレット:1タブレットを選び歯と舌を清掃するため噛む。水をうがいのために使用する。
iii) 液体タイプの口腔清浄剤:20mlの口腔清浄剤を口に入れて口腔内で15回うがいする。
3)方法
次の項目の機能を測定する。
【0032】
i) 歯の中の不必要なものの除去:試験の前後で歯の中の不必要なものの除去のレベルを測定する。
ii) 口臭の除去:試験の前後で口臭除去のレベルを測定する。
iii) 組織感:口に入れたとき組織感のレベルを測定する。
iv) 味覚とフレーバー:口に入れたとき味覚とフレーバーのレベルを測定する。
【0033】
v) 利便性:口に入れるときの便利さのレベルを測定する。
4)結果
結果は、10名のパネルにより試験され成績を合計される。次の規則により数字を与えられる成績は、各項目毎に集計される。
最悪 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10 最良
表4はその結果を示す。歯の中の不必要なものの除去は、歯磨を使用したときが優れている。しかし、他の項目、口臭の除去、組織感、味覚とフレーバー、利便性は、本発明に係る発泡タブレットを使用したときが優れている。
【0034】
【表4】


【図面の簡単な説明】
【図1】・・・
【図3】 図3は、重炭酸ナトリウムの濃度に対する殺菌作用を示すグラフである。」

(コ) 「【図3】



イ 引用文献5に記載された事項
本願の分割に係る原出願の出願前に頒布された引用文献5(国際公開第2014/042120号)には、以下の記載がある。
(ア) 「[請求項1] 有機酸の表面が油脂で被覆されてなり、前記油脂の量が5?50質量%、前記有機酸の量が50?95質量%である油脂被覆有機酸(A)と、炭酸塩(B)とを含有してなることを特徴とする発泡性口腔用組成物。
[請求項2] 油脂被覆有機酸(A)の油脂が、結晶構造がα型で融点が40?80℃の食用油脂である請求項1記載の発泡性口腔用組成物。
[請求項3] 油脂被覆有機酸(A)の有機酸が、クエン酸、フマル酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸及びマロン酸から選ばれるものである請求項1又は2記載の発泡性口腔用組成物。
[請求項4] 油脂被覆有機酸(A)を7?30質量%、炭酸塩(B)を10?40質量%含有してなる請求項1、2又は3記載の発泡性口腔用組成物。
[請求項5] 油脂被覆有機酸(A)と炭酸塩(B)との配合比率が、質量比として(A)/(B)が0.2?3である請求項1乃至4のいずれか1項記載の発泡性口腔用組成物。
[請求項6] 更に、クロスポビドン、アルファ化デンプン、カルメロースナトリウム、トウモロコシデンプンから選ばれる1種以上の化合物(C)を2?20質量%含有する請求項1乃至5のいずれか1項記載の発泡性口腔用組成物。
[請求項7] 油脂被覆有機酸(A)及び炭酸塩(B)と、化合物(C)との配合比率が、質量比として((A)+(B))/(C)が1?35である請求項6記載の発泡性口腔用組成物。
[請求項8] 請求項1?7のいずれか1項記載の発泡性口腔用組成物からなる発泡性口腔用固形製剤。
[請求項9] 錠剤又は粒状剤である請求項8記載の発泡性口腔用固形製剤。
[請求項10] 口腔内崩壊型製剤である請求項8又は9記載の発泡性口腔用固形製剤。
[請求項11] 固形タイプの洗口剤又は歯磨剤である請求項8、9又は10記載の発泡性口腔用固形製剤。
[請求項12] 請求項8乃至11のいずれか1項記載の発泡性口腔用固形製剤が、防湿性材料で形成された包装体で密封包装されてなる発泡性口腔用製品。」

(イ) 「[0002] 生理的口臭を除去するためには、口臭の原因となる口腔内の食物残渣、プラーク、舌苔等を歯磨き等によって取り除くことが有効であるが、歯磨きをせずに、より簡便に口臭を除去するには、タブレットなどを用いて口腔内の汚れを除去することが効果的である(特許文献1;国際公開第2007/026755号)。更に、有機酸と炭酸塩の発泡反応を利用したタブレットを使用することでより効果的に口臭を除去でき、同時に効果実感を付与することができる(特許文献2;特開平3-279321号公報)。
[0003] しかし、上記タブレットは、有機酸や発泡などによる不快な刺激感がある使用上の課題や、経時で反応が進行して発泡性が低下するといった安定性上の課題があった。
[0004] これに対し、ポリビニルピロリドンなどの水溶性高分子物質を用いて有機酸の表面をコーティングすることで、経時での反応を抑えて安定性を改善した技術が提案され、かかるコーティング有機酸が配合された発泡性口腔用固体組成物が提案されている(特許文献3;特開2002-308747号公報)。しかし、この特許文献3には、口臭除去効果については言及されていない。
先行技術文献
特許文献
[0005] 特許文献1:国際公開第2007/026755号
特許文献2:特開平3-279321号公報
特許文献3:特開2002-308747号公報
発明の概要
発明が解決しようとする課題
[0006] 従って、口臭除去効果が高く、また、口腔内での不快な刺激感が抑制され、経時保存安定性にも優れた発泡性口腔用組成物の開発が望まれた。
[0007] 本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、発泡性に優れると共に口臭除去効果に優れ、また、口腔内での不快な刺激感が抑制され、製剤の経時保存安定性も良好な、発泡性口腔用組成物、発泡性口腔用固形製剤及び発泡性口腔用製品を提供することを目的とする。」

(ウ) 「[0020] 炭酸塩(B)は、油脂被覆有機酸(A)の有機酸と反応して発泡することによって、舌苔除去効果及び効果実感を付与し、口臭除去効果を与える。
炭酸塩としては、口腔内で溶解時に二酸化炭素を発生すればよく、炭酸水素塩も含む。例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸アンモニウム等が挙げられ、中でも炭酸水素ナトリウムが好ましい。
炭酸塩としては、重炭酸ナトリウム(KF、旭硝子(株)製)等を使用できる。
[0021] 炭酸塩(B)の配合量は、組成物全体の10?40%が好ましく、より好ましくは15?40%、更に好ましくは20?40%、とりわけ20?35%が好ましい。配合量が多いほど口臭除去効果は高まり、10%以上配合することが、優れた口臭除去効果を与えるには好適であるが、40%以下であることが、製剤の保存安定性を良好に維持するのに好適である。」

(エ) 「[0027] 本発明組成物には、上記成分に加えて必要に応じてその他の公知成分を配合できる。例えば、後述のように発泡性の口腔用錠剤として調製する場合は、具体的に、結晶セルロース、エリスリトール等の賦形剤、無水ケイ酸、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アラビアガム等の結合剤、ラウリル硫酸ナトリウム等の界面活性剤、ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤、l-メントール等の香料、甘味剤などを配合できる。なお、これら任意添加成分は、本発明の効果を妨げない範囲で通常量配合できる。
[0029] 本発明の発泡性口腔用組成物は、発泡性口腔用固形製剤として好適に調製され、錠剤、粒状剤等の固形製剤、特に錠剤として製剤化することが好ましい。また、前記固形製剤は、唾液等の水分と接触して口腔内で発泡し、崩壊する口腔内崩壊型の固形製剤、例えば口腔内崩壊錠とすることができ、固形タイプの洗口剤、歯磨剤等として好適に用いることができる。なお、錠剤は素錠でよいが、製剤の適度な崩壊による唾液の浸入を妨げない範囲で、必要に応じてコーティング錠としてもよい。」

(オ) 「[0030] また、製剤形状は、口腔内に適用して上記効果を奏すればよく、特に制限はない。
錠剤の形状としては、丸型(スミ角平錠、R錠、リング錠)、三角形、四角形、六角形、八角形、楕円形、ラグビーボール形等が挙げられるが、特に表面積が大きく崩壊速度が速いトローチ状の丸型リング錠が、効果発現の点で好ましい。ここで、丸型スミ角平錠とは、丸型の錠剤で、両底面が平面である錠剤である。丸型R錠とは、丸型の錠剤で、両底面が球冠状である錠剤である。丸型リング錠とは、スミ角平錠の中央に円筒状の孔を有する錠剤である。
[0031] 錠剤の大きさ(質量)は、1錠あたり100?2,000mgが好ましく、口臭除去効果の点から、より好ましくは300?1,000mgである。100mg以上であることが、口臭除去効果を与えるのに好ましく、2,000mg以下であることが、刺激を抑制するのに好ましい。
[0032] 錠剤の外径は、直径5?20mmが好ましく、より好ましくは10?15mmである。5mm以上であることが、口臭除去効果を与えるのに好ましく、20mm以下であることが、刺激を抑え、良好な使用性を維持するのに好ましい。なお、丸型リング錠の内径は適宜調整でき、通常、直径2?8mmとすることができる。
錠剤の厚みは、2?10mmが好ましく、より好ましくは3?7mmである。2mm以上であることが、口臭除去効果を与えるのに好ましく、10mm以下であることが、刺激を抑え、良好な使用性を維持するのに好ましい。
また、錠剤の外径/厚みの割合は、1.5?7が好ましく、より好ましくは1.8?5である。1.5以上であることが、口臭除去効果を与えるのに好ましく、また、良好な使用性を維持するのに好ましい。7以下であることが、錠剤の割れを防止するのに好ましい。
[0033] 本発明では、とりわけ、(A)成分が、油脂としてナタネ油極度硬化油の量が10?30%、有機酸としてクエン酸の量が90?70%である油脂被覆有機酸で、(B)成分が炭酸水素ナトリウムであり、上記油脂被覆有機酸(A)を組成物全体の10?30%、特に10?25%、炭酸塩(B)を組成物全体の15?40%、特に20?40%含有する発泡性口腔用組成物を、口腔内崩壊型の発泡性口腔用丸型リング錠に調製すると、本発明の効果がより優れることから好適である。」

(カ) 「[0034] 本発明にかかわる発泡性口腔用固形製剤は、口中に10?30秒間、特に10?20秒間含んで適用することができ、具体的には口中に含み、舌の上にのせて舐めるなどして製剤が崩壊、あるいは崩壊して溶けるまで適用することが好ましい。このように適用することで、唾液の浸入により製剤が適度に崩壊、溶けると共に油脂被覆有機酸(A)の油脂被膜が溶出して有機酸と炭酸塩とが反応し、発泡させることができる。
なお、本発明では、口中に口腔用固形製剤と共に水を少量含み、適用してもよく、また、使用時に固形製剤をコップ等の容器中で適量の水と予め接触させて発泡を開始し、直ぐにこの水と共に固形製剤を口腔内に導入して適用することもできる。
口中に適用後は、剤型や使用目的に応じ、必要により製剤を吐出前又は後に歯ブラシで歯磨きしたり、うがいをしてもよい。あるいは吐出せずに摂食してもよい。」

(キ) 「[0038][実施例、比較例]
表1?3に示す組成の発泡性固形洗口剤を調製した。調製は、各組成について、一錠あたり500mgを混合し、打錠機(ロータリー式打錠機、コレクト12HUK、(株)菊水製作所製)により、外径13mm、内径5mmのリング状の錠剤(表1?3の錠剤、形状:丸型リング錠、質量:500mg、厚み5mm)を調製し、発泡性固形洗口剤を得た。また、同様に、表4に示す組成、形状、質量の各種錠剤(厚みはいずれも5mm)を調製し、発泡性固形洗口剤を得た。
得られた製剤を試料として用い、女性被験者10名で試料を下記方法で使用し、口臭除去効果及び刺激抑制効果について、官能評価を下記方法で行った。また、下記方法で製剤を包装体で密封包装し、製剤の保存安定性の評価を行った。結果を表に併記した。なお、実施例の製剤は、いずれも発泡性は良好であった。
<使用方法>
試料製剤を一つ口に入れて口中に含み、製剤が崩壊して溶けるまで(10?30秒間)舌の上で舐め、発泡して溶けた後に口中の内容物(試料製剤)を吐き出した。

[0039] (1)口臭除去効果
<評価方法>
試料を使用後、UBC式官能検査法に準じて、口臭について専門家による臭気強度の官能評価を行い、下記評価基準に基づき評価を行った。10名の被験者の平均点を求め、下記判断基準の通り評価した。
<評価基準>
0点:全く臭いを感知しない
1点:悪臭と認識できない
2点:ほとんど悪臭と認識できない
3点:悪臭と認識できる
4点:容易に悪臭と認識できる
5点:強い悪臭と認識できる
<判断基準>
◎:10人の被験者の平均点が0点以上1点未満
○:10人の被験者の平均点が1点以上2点未満
△:10人の被験者の平均点が2点以上2.5点未満
×:10人の被験者の平均点が2.5点以上5点以下
[0040]
(2)刺激抑制効果
<評価方法>
試料を使用している時(製剤を口中に含み舌の上で舐め発泡させて使用している時)の舌の刺激感を、被験者が下記評価基準の通り評価した。10名の被験者の平均点を求め、刺激抑制効果を下記判断基準で評価した。
<評価基準>
5点:刺激を非常に抑制できた
4点:刺激をかなり抑制できた
3点:刺激を抑制できた
2点:刺激をやや抑制できた
1点:刺激をまったく抑制できていない
<判断基準>
◎:10人の被験者の平均点が4点以上5点以下
○:10人の被験者の平均点が3点以上4点未満
△:10人の被験者の平均点が2点以上3点未満
×:10人の被験者の平均点が1点以上2点未満
(3)製剤の保存安定性
<評価方法>
各試料を1辺の長さが30mm四方のポリエチレンラミネートアルミ箔袋状包装体で、一錠ずつシーラーを用いて密封し、ノギスで包装体の中央部分の厚みを測定した。その後、各試料を5品ずつ、50℃にて1ヶ月保存した後、保存前と同箇所の包装体の厚みをノギスで測定し、保存前からの包装体の厚みの増加分を以下の評価基準で判断し、経時での保存安定性を評価した。○、○?◎、◎のものを、経時において発泡が抑制され、包装体の膨張が許容範囲であり、製剤の保存安定性が良好であると判断した。
<判断基準>
◎ :5品の平均が0.2mm未満
○?◎:5品の平均が0.2mm以上0.5mm未満
○ :5品の平均が0.5mm以上1.0mm未満
△ :5品の平均が1.0mm以上2.0mm未満
× :5品の平均が2.0mm以上
[0042] なお、表中に示した錠剤の形状は下記の通りである。
<錠剤の形状>
A;丸型リング錠 B;丸型スミ角平錠 C;丸型R錠
D;三角形 E;四角形
・・・

[0045]
[表2]



(ク) 「[0053][処方例6]
表7に示す可食型の発泡性固形洗口剤を調製した。
試料(発泡性固形洗口剤)を舌の上に一錠のせ、20秒間含んで舌全体で舐めるようにして崩壊、溶かして発泡させた後、口中に残った内容物を飲み込んだ。この方法で使用して上記と同様に官能評価を行ったところ、口臭除去効果:○、刺激抑制効果:◎であり、また、製剤の経時での保存安定性の評価結果も◎であり、良好な結果が得られた。
[0054]
[表7]

合計量500mgを混合し、打錠機により直径13mm、厚み5mmの丸型スミ角平形状の錠剤を調製した。」


ウ 引用文献1に記載された発明
引用文献1の実施例1?12における発泡剤について、表1には「重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、重炭酸カリウム、重炭酸鉄、又はそれらの混合物」と記載されているが、記載事項ア(オ)に重炭酸ナトリウムが口腔バクテリアに対し抑制作用を有するとともにプラークによりもたらされる有機酸を中和することによる歯牙保護効果も有することが指摘され、記載事項ア(ク)の実施例13の【0026】の「3)結果」では、表2の結果を示しながら、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)と重炭酸ナトリウムの混合物が他の塩と比較して歯のバクテリアに対するよい殺菌効果を有し、よい泡形成作用と安全性も示すことも指摘されており、図3には、重炭酸ナトリウムの殺菌作用が示されているので、これらの実施例では、発泡剤として重炭酸ナトリウムが用いられているものと認める。
また、記載事項ア(ク)の実施例13の【0026】に、「本発明で調製したタブレット700mg」とあることから、実施例1?12における口腔用発泡タブレットも実施例13と同じ重量であると認める。
そうすると、記載事項ア(ア)?(コ)、特に(ア)、(オ)、(キ)の表1の記載からみて、引用文献1の実施例5、8?11には、それぞれ以下の発明が記載されていると認められる。

「結晶セルロース又は粉末セルロース 46.24重量%
重炭酸ナトリウム 30.65重量%
シリカ(チクソシル73K) 11.95重量%
クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコン酸、アスコルビン酸、コハク酸、プロピオン酸又はそれらの混合物 7.74重量%
アスパルテーム 2.00重量%
メントール 0.30重量%
ペパーミント 0.50重量%
フッ化ナトリウム 0.15重量%
TSメロンの天然色素 0.40重量%
ラウリル硫酸ナトリウム 0.05重量%
合計100重量%
からなる700mgの口腔用発泡タブレット。」(以下、「引用発明1-1」という。)

「結晶セルロース又は粉末セルロース 43.30重量%
重炭酸ナトリウム 29.23重量%
シリカ(チクソシル73K) 14.62重量%
クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコン酸、アスコルビン酸、コハク酸、プロピオン酸又はそれらの混合物 8.35重量%
アスパルテーム 2.00重量%
メントール 0.40重量%
ペパーミント 0.50重量%
フッ化ナトリウム 0.20重量%
TSメロンの天然色素 0.40重量%
ラウリル硫酸ナトリウム 0.05重量%
果実風フレーバー 0.50重量%
フルオロリン酸ナトリウム 0.15重量%
ローズマリー 0.30重量%
合計100重量%

からなる700mgの口腔用発泡タブレット。」(以下、「引用発明1-2」という。)

「結晶セルロース又は粉末セルロース 38.49重量%
重炭酸ナトリウム 32.69重量%
シリカ(チクソシル73K) 15.88重量%
クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコン酸、アスコルビン酸、コハク酸、プロピオン酸又はそれらの混合物 9.34重量%
アスパルテーム 2.00重量%
メントール 0.50重量%
フッ化ナトリウム 0.15重量%
TSメロンの天然色素 0.40重量%
ラウリル硫酸ナトリウム 0.05重量%
ストロベリーフレーバー 0.50重量%
合計100重量%
からなる700mgの口腔用発泡タブレット。」(以下、「引用発明1-3」という。)」

「結晶セルロース又は粉末セルロース 31.54重量%
重炭酸ナトリウム 37.38重量%
シリカ(チクソシル73K) 10.35重量%
クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコン酸、アスコルビン酸、コハク酸、プロピオン酸又はそれらの混合物 10.68重量%
アスパルテーム 2.00重量%
メントール 0.30重量%
ペパーミント 0.50重量%
フッ化ナトリウム 0.30重量%
TSメロンの天然色素 0.40重量%
ラウリル硫酸ナトリウム 0.05重量%
梅エキス 0.50重量%
合計100重量%
からなる700mgの口腔用発泡タブレット。」(以下、「引用発明1-4」という。)」

「結晶セルロース又は粉末セルロース 35.40重量%
重炭酸ナトリウム 48.20重量%
シリカ(チクソシル73K) 6.18重量%
クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコン酸、アスコルビン酸、コハク酸、プロピオン酸又はそれらの混合物 6.52重量%
アスパルテーム 2.00重量%
メントール 0.30重量%
ペパーミント 0.50重量%
フッ化ナトリウム 0.15重量%
TSメロンの天然色素 0.40重量%
ラウリル硫酸ナトリウム 0.05重量%
シャンピニオンエキス 0.30重量%
合計100重量%
からなる700mgの口腔用発泡タブレット。」(以下、「引用発明1-5」という。)」

なお、引用発明1-1?1-5をまとめて「引用発明1」ともいう。

(3) 対比・判断
ア 対比
本願補正発明と引用発明1-1?1-5を対比する。
引用発明1-1?1-5の「結晶セルロース又は粉末セルロース」、「重炭酸ナトリウム」、「シリカ(チクソル73K)」は、それぞれ、「錠剤用基材」、「発泡剤」、「研磨剤」であるから(記載事項ア(ア)、(オ))、本願補正発明の「錠剤用基材」、「炭酸水素ナトリウムを含む発泡剤」、「無水ケイ酸を含む研磨剤」に相当する。
引用発明1-1?1-5の「口腔用発泡タブレット」は、本願補正発明の「口腔清浄用発泡性錠剤」に相当する。
また、引用発明1-1?1-5は、記載事項ア(イ)からみて、他の道具を必要としないものであるから、「歯ブラシを必要とせず」との限りにおいて、本願補正発明と一致する。
さらに、引用発明1-1?1-5は、上記錠剤用基材、発泡剤、研磨剤以外の成分も含むものであるが、本願補正発明でも「結晶セルロースを含む材料からなる錠剤用基材、炭酸水素ナトリウムを含む発泡剤、及び無水ケイ酸を含む研磨剤を含む混合物を錠剤化してなる口腔清浄用発泡性錠剤」と記載され、結晶セルロースを含む材料からなる錠剤用基材、炭酸水素ナトリウムを含む発泡剤及び無水ケイ酸を含む研磨剤の3成分以外の他の成分を含むことが可能であり、本願明細書の【0027】に、クエン酸、キシリトール、ペパーミント、アスパルテーム、L-メントール等も含んでもよい旨の記載もあるから、上記錠剤用基材、発泡剤及び研磨剤の3成分以外の他の成分も含む点において、引用発明1-1?1-5は、本願補正発明と一致する。
そうすると、本願補正発明と引用発明1-1?1-5は、
「錠剤用基材、炭酸水素ナトリウムを含む発泡剤、及び無水ケイ酸を含む研磨剤を含む混合物を錠剤化してなる口腔清浄用発泡性錠剤であって、歯ブラシを必要としない口腔清浄用発泡性錠剤。」
の発明である点で一致し、以下の相違点1、2で相違し、相違点3で一応相違する。

(相違点1)
本願補正発明は、「錠剤用基材」として、「結晶セルロースを含む材料からなる錠剤用基材」と特定するのに対し、引用発明1-1?1-5では、「結晶セルロース又は粉末セルロース」と特定する点。
(相違点2)
本願補正発明は、「水を必要とせず」と特定するのに対し、引用発明1-1?1-5ではこの特定がない点。
(相違点3)
本願補正発明は、「発泡剤は発泡時における体積が26ミリリットル以上53ミリリットル以下である発泡剤の重量とした」と特定するのに対し、引用発明1-1?1-5では、発泡剤の重量%による特定である点。

イ 判断
上記相違点1について検討する。
引用発明1-1?1-5において、錠剤用基材として挙げられた2つの選択肢から「結晶セルロース」を採用することは、当業者であれば容易になし得たことである。

上記相違点2について検討する。
相違点2に係る事項は、口腔清浄用発泡性錠剤の剤自体を直接特定するものではないものの、引用文献1の記載事項ア(ウ)の【0009】には、「清浄用タブレットは、時間と道具を必要とせず使用と保存の利便性があり、噛んで洗い出すことにより使える。」との記載があり、また、記載事項ア(ケ)の実施例14では、発泡タブレットと市販の歯磨き、液体タイプの口腔清浄剤との比較において、「実施例4で調製した本発明に係る発泡タブレット:1タブレットを選び歯と舌を清掃するために噛む。水をうがいのために使用する。」との記載があり、発泡タブレットを歯と舌を清掃するために噛み、水をうがいのために使用していることから、「噛んで洗い出す」ために水を用いるものであって、実施例14では水を用いる点で本願補正発明と異なると判断できる。
しかしながら、引用文献5には、舌苔等の口腔内の汚れを除去して口臭除去を目的とした、引用発明1と同様の口腔内清浄用の錠剤などの発泡性口腔用固形製剤に係る発明が記載され(記載事項イ(ア)?(オ))、製剤を適用後に、必要により製剤を吐き出し前又は吐き出し後で、歯ブラシで歯磨きしたり、うがいをしてもよい旨の記載もあるものの、他方、吐き出さずに摂食してよい旨の記載もある(記載事項イ(カ))。そして、具体的な実施例では、結晶セルロース、炭酸水素ナトリウム及び無水ケイ酸を含む発泡性固形洗口剤1錠500mgのものを、口中に含み、製剤が崩壊して溶けるまで舌の上で舐め、発泡して溶けた後に、口中の内容物(試料製剤)を吐き出すことが記載されており(記載事項イ(キ)[0038]、表2)、これは水を必要としない発泡性固形洗口剤である。また、可食型の発泡性固形洗口剤について、試料を舌の上に1錠のせ、発泡させた後、口の中に残った内容物を飲み込むことも記載されている(記載事項イ(ク)処方例6[0053])。
そうすると、引用発明1において、引用文献5に記載されているように、口腔内清浄用の口腔用発泡タブレット(口腔内清浄用の発泡性固形製剤)を噛んだ後に、水を用いずに、そのまま吐き出したり、可食することを採用することも、当業者であれば容易に想到し得たことである。

上記相違点3について検討する。
まず、引用発明1-1?1-5の錠剤700mgにおける重炭酸ナトリウム(炭酸水素ナトリウム)の重量は、重量%に基づいて以下のように計算すると、それぞれ0.21455g、0.20461g、0.22883g、0.2647g、0.3374gとなる。
引用発明1-1:700mg×0.3065=214.55mg
=約0.2146g
引用発明1-2:700mg×0.2923=204.61mg
=約0.2046g
引用発明1-3:700mg×0.3269=228.83mg
=約0.2288g
引用発明1-4:700mg×0.3738=261.66mg
=約0.2617g
引用発明1-5:700mg×0.4820=337.40mg
=約0.3374g

ここで、本願明細書の段落【0042】?【0044】には以下の記載がある。
「【0042】
例えば、発泡剤として炭酸水素ナトリウムのみが含まれている場合において、その発泡時における体積が26ミリリットルである場合、発泡剤の重量は、0.2グラムとなる。
これは以下の関係から導かれる。
【0043】
炭酸水素ナトリウムを唾液と接触させると、化学式1(化1)に示す化学反応により、二酸化炭素が発生し、これがほぼ発泡剤の発泡時の体積となる。
(化1)
2NaHCO_(3)→Na_(2)CO_(3)+H_(2)O+CO_(2)
【0044】
ここで、炭酸水素ナトリウムの分子量は84であるから、炭酸水素ナトリウム168グラムから1molの二酸化炭素(体積22.4リットル)が発生することとなる。そこで、この反応により26ミリリットルの二酸化炭素を発生させるための炭酸水素ナトリウムの重量は、0.2グラムとなる(≒168×26/22400)。炭酸水素ナトリウムの発泡時の体積はほぼ二酸化炭素の体積に匹敵するといえるので、発泡時の体積が26ミリリットルとなる炭酸水素ナトリウムの重量は0.2グラムとなる。また、同様の計算により、53ミリリットルの二酸化炭素を発生させるための炭酸水素ナトリウムの重量は、0.4グラムとなる。また、40ミリリットルの二酸化炭素を発生させるための炭酸水素ナトリウムの重量は、0.3グラムとなる。即ち、本実施例の錠剤は、錠剤の大きさを服用に適したものとしたときに、発泡剤の発泡量が適切な体積、即ち歯や舌の周囲やすき間に充分に行きわたって所要の清浄効果が得られる一方で、なるべく口に含んでいることがわからない程度の体積になるようにその重量を調整したものである。」

本願明細書の上記記載に基づいて、引用発明1-1?1-5の炭酸水素ナトリウムの重量から発泡時における体積を計算すると次のようになる。
引用発明1-1:(約0.2146/168)×22400
=28.61ml
引用発明1-2:(約0.2046/168)×22400
=27.28ml
引用発明1-3:(約0.2288/168)×22400
=30.51ml
引用発明1-4:(約0.2617/168)×22400
=34.89ml
引用発明1-5:(約0.3374/168)×22400
=44.99ml

そうすると、引用発明1-1?1-5の発泡剤の発泡時の体積は、本願補正発明で特定する26ミリリットル以上53ミリリットルの範囲に含まれる。また、発泡剤の重量としてみても、本願補正発明の炭酸水素ナトリウムの重量は、0.2?0.4gであるから(【0042】?【0044】)、引用発明1-1?1-5の炭酸水素ナトリムの重量は、本願補正発明の発泡剤の重量の範囲に含まれる。
したがって、本願補正発明と引用発明1-1?1-5との間において、相違点2は実質的な相違点ではない。

本願補正発明の効果について検討する。
審判請求人が主張する本願補正発明の効果は、本願明細書の段落【0022】に記載されているように、口腔清浄用発泡性錠剤が、「発泡時における発泡剤の体積が適切な体積、即ち歯や舌の周囲やすき間に充分に行きわたって所要の清浄効果が得られる一方で、なるべく口に含んでいることがわからない程度の体積になるように構成される」ことであるが、本願明細書の以下の表3に錠剤を製造することの記載はあるが、結晶セルロース、炭酸水素ナトリウム及び無水ケイ酸の3成分以外のその他の成分は、具体的な種類及び配合量は不明であり、また、製造した錠剤を人の口腔に実際に適用して効果を確認していない。
「【表3】



また、本願明細書に掲げられている表2も、当該表の下に出典が記載されている「口腔機能検査としての新しい口腔内容積測定法の検討」なる文献に掲載された、10人の成人が口に含むことができた「水」の量の計測結果をそのまま転載したものであって、本願補正発明を適用したときの発泡時の体積や、これと清浄効果との関係を具体的に検証したものではない。
「【表2】




したがって、本願補正発明における、審判請求人が主張する発泡剤の発泡体積を所定範囲としたことによる清浄化の効果は、人による具体的な検証(実施例)がなされておらず、一方、口腔の清浄化を目的とした引用発明1-1?1-5は、その炭酸水素ナトリウムの重量に基づいた発泡剤の発泡体積が本願補正発明の範囲内のものであり、本願補正発明の効果が自ずと奏されるものであるから、本願補正発明の効果が、引用発明1-1?1-5に比して格別顕著なものと認めることはできない。

よって、本願補正発明は、引用文献1に記載された発明と引用文献5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4) 審判請求人の主張
ア 審判請求人の主張の概要
審判請求人は平成30年9月10日提出の審判請求書において、以下の主張をしている。
(ア) 引用文献1は、特許公報であるところ、当該文献の特許出願(特願2000-586294号)の特許庁における審査時の拒絶理由通知において、数値限定に臨界的意義がないとされ、そのまま意見書による反論もなく、拒絶査定が確定したものであり、数値限定の効果が不明であるから、サポート要件を満たしておらず、このような文献を引例に用いて進歩性で否定することは不当である。
(イ) 本願発明の課題は発泡時における発泡剤の体積が適切な体積になるようにすることで、(a)歯や舌の周囲やすき間に充分に行きわたって所要の洗浄効果が得られる一方で、(b)なるべく口に含んでいることがわからない程度の体積(口一杯に頬張るほどにはならない程度の体積)になるようにした口腔清浄用発泡性錠剤を提供することにあり(段落[0009]、[0034]など参照)、このような課題は、
・例えば外出先で人に面会する直前になるべく口に含んでいることを他人に知られないように使用することができ、使用後も泡を吐き出す必要がないなどゴミが出ないようにしたいといったニーズ、
・手の不自由な身体障害者や高齢者が歯ブラシや水を必要とせずに口の中に入れるだけで簡単に清浄作用を行うことができ、特に高齢者が誤って泡を飲み込んでしまい肺炎を起こすといった危険を避けるというニーズ、
・大規模災害に伴う避難生活で十分な水を利用できず歯磨きなどが十分にできない場合におけるニーズ
にも対応できるものであり、このような課題認識の下では、錠剤に含まれる発泡剤の発泡時体積をいかなるものとするかが課題解決にとって本質的に重要な事柄であって、かかる観点から(a)、(b)両者の要請を同時に満たす体積として、「26ミリリットル以上53ミリリットル以下」を導き、これを必須の構成としたことに本願発明の最大の特徴がある。
引用文献1には、このような課題はなく、発泡剤の発泡時の体積についても記載や示唆もない。引用文献1に課題の認識がない以上、偶発的に引用文献1に本願発明と同一の構成が記載されたとみることができたとしても、本願発明の進歩性を否定する理由にはならない。そして、引用文献1の表1から計算すると9.3ミリリットル?46.7ミリリットルとなり、本願発明の適切な範囲を大きく逸脱している。

イ 審判請求人の主張に対する判断
(ア) 特許法第29条第2項進歩性における数値限定の臨界的意義の有無は、数値限定の範囲内と外とで効果の顕著性の有無を判断するものであり、一方、同法第36条第6項第1号のサポート要件は、発明が詳細な説明に記載されているか否かの判断であって、両者は全く関連せず、前者の臨界的意義が無いことにより後者が否定されるものではないから、審判請求人の主張は採用できない。また、引用文献1は、実施例において、タブレットを複数種類製造し、具体的に人の口腔内で使用して検証をしているから、引例文献として用いることに不当な点はなく、審判請求人の主張は採用できない。
(イ) 発泡剤の発泡時の体積については、上記相違点3について述べたとおりであり、本願補正発明と引用文献1に記載された発明との間で相違点とはならない。そして、審判請求人は、引用文献1の表1の全ての例から「9.3ミリリットル?46.7ミリリットル」の範囲を算出しているが、引用発明として認定しているのは、そのうちの実施例5?11、特に重炭酸ナトリウム(炭酸水素ナトリウム)の量の違いに着目して認定した実施例5、8?11に記載された発明(引用発明1-1?1-5)の範囲である。そして、これら実施例5、8?11の発泡剤の発泡時の体積は、下限が「27.28ml」、「28.61ml」、「30.51ml」、「34.89ml」、上限が「44.99ml」の概ね連続した範囲と認識でき、本件補正発明の発泡剤の発泡時の体積の範囲とかなりの部分で重複するから、引用文献1の表1から計算した発泡剤の発泡時の体積が大きく逸脱するとの審判請求人の主張は採用できない。

(5) まとめ
本願補正発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

4 補正却下の決定のむすび
以上のとおりであるから、上記補正事項1を含む本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正却下の決定の結論]のとおり、決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明
平成30年9月10日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?8に係る発明は、平成29年12月20日にされた手続補正により補正された請求項1?8に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりである。

「【請求項1】
結晶セルロースを含む材料からなる錠剤用基材、炭酸水素ナトリウムを含む発泡剤、及び無水ケイ酸を含む研磨剤を含む混合物を錠剤化してなる口腔清浄用発泡性錠剤であって、前記発泡剤は発泡時における体積が26ミリリットル以上53ミリリットル以下である発泡剤の重量とした口腔清浄用発泡性錠剤。」

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の分割に係る原出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1.特表2002-531480号公報」

3 引用文献1の記載事項及び引用文献1に記載された発明
引用文献1に記載された事項は、第2 3(2)アのとおりであり、引用文献1に記載された発明(引用発明)は、第2 3(2)ウに記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、本願補正発明から「歯ブラシや水を必要とせず」との発明特定事項を除いたものであるから、本願発明と引用発明1-1?1-5は、上記第2 3(3)アの相違点1で相違し、相違点3で一応相違する。
しかし、相違点1、3については、第2 3(3)イで検討したとおり、相違点1については、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものであり、また,相違点3については、両者において相違点とはならないと判断されるから、本願発明は、引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


第4 むすび
以上のとおり、本願発明、すなわち、請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-06-10 
結審通知日 2019-06-11 
審決日 2019-06-24 
出願番号 特願2017-92508(P2017-92508)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (A61K)
P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松本 直子  
特許庁審判長 田村 聖子
特許庁審判官 冨永 みどり
岡崎 美穂
発明の名称 口腔清浄用発泡性錠剤  
代理人 工藤 一郎  

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