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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B61B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B61B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B61B
管理番号 1354048
異議申立番号 異議2018-700425  
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-09-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-05-25 
確定日 2019-06-14 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6240803号発明「搬送台車」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6240803号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1,〔2?4〕について訂正することを認める。 特許第6240803号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 特許第6240803号の請求項2?4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6240803号の請求項1?4に係る特許についての出願は、特願2013-263409号(平成25年12月20日を出願日とする出願。以下「原出願」という。)の一部を平成29年5月16日に新たな特許出願としたものであって、同年11月10日に特許権の設定登録がされ、同年11月29日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
平成30年 5月25日 :特許異議申立人 森 收平(以下「申立人」
という。)により請求項1?4に係る特許に
対する特許異議の申立て
平成30年 8月21日付け:取消理由通知書
平成30年10月10日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
平成30年10月23日付け:訂正請求があった旨の通知(特許法第120
条の5第5項)
平成30年11月27日 :申立人による意見書の提出
平成30年12月21日付け:審尋
平成31年 2月 1日 :特許権者による回答書(以下「回答書」とい
う。)の提出
平成31年 3月 4日付け:取消理由通知書(決定の予告)
平成31年 3月29日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
平成31年 4月 9日付け:訂正請求があった旨の通知(特許法第120
条の5第5項)
令和 1年 5月14日 :申立人による意見書の提出


第2 訂正の適否
1 訂正の内容
平成31年3月29日になされた訂正請求の趣旨は、本件特許第6240803号の願書に添付した明細書(以下「明細書」といい、特許請求の範囲及び図面を含めて「明細書等」という。)及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書(以下「訂正明細書」という。)及び訂正特許請求の範囲(以下「訂正特許請求の範囲」という。)のとおり、訂正後の請求項1?4について訂正することを求めるものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。
なお、平成30年10月10日になされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に
「前記挿入部は、側板部と、該側板部の端部同士の間を繋ぐ底板部とに囲まれて構成されていることを特徴とする請求項1に記載の搬送台車。」と記載されているのを、
「物品を載置支持し、かつ、その載置面を有する載置台と、該載置台を昇降させる昇降装置と、左右に離間したレール上を左右の車輪により走行する走行装置と、を備えた搬送台車であって、
前記搬送台車は、前記左右の車輪の間において前記搬送台車の底板にフォークリフトのフォークが挿入可能な挿入部が突設されており、
前記挿入部を構成するフォーク挿入部材の最下点が前記車輪の最下点より下方に位置し、
前記挿入部は、側板部と、該側板部の端部同士の間を繋ぐ底板部とに囲まれて構成されていることを特徴とする搬送台車。」に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に
「請求項1または2に記載の搬送台車。」と記載されているのを、
「請求項2に記載の搬送台車。」に訂正する。

(4)訂正事項4
明細書の段落【0007】を削除する。

(5)訂正事項5
明細書の段落【0008】に
「本発明の搬送台車は、
前記挿入部は、側板部と、該側板部の端部同士の間を繋ぐ底板部とに囲まれて構成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、フォークリフトのフォークが側板部と底板部とに囲まれて構成されているため、搬送台車の運搬時において、フォークが挿入部から離脱することを確実に防止できる。」と記載されているのを、
「本発明の搬送台車は、
物品を載置支持し、かつ、その載置面を有する載置台と、該載置台を昇降させる昇降装置と、左右に離間したレール上を左右の車輪により走行する走行装置と、を備えた搬送台車であって、
前記搬送台車は、前記左右の車輪の間において前記搬送台車の底板にフォークリフトのフォークが挿入可能な挿入部が突設されており、
前記挿入部を構成するフォーク挿入部材の最下点が前記車輪の最下点より下方に位置し、
前記挿入部は、側板部と、該側板部の端部同士の間を繋ぐ底板部とに囲まれて構成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、搬送台車の底板にフォークリフトのフォークが挿入できる挿入部を突設させたので、挿入部にフォークを挿入することによって、搬送台車を持ち上げ、運搬でき、さらには運搬中の搬送台車とフォークとの動きも制限されるので、搬送台車がフォークから大きくずれたり、落下する等の危険を減少させることができる。また、搬送台車を床面に置いた状態では、フォーク挿入部材が床面に接触し、車輪が床面から浮いた状態となるため、車輪の交換、走行装置の試運転、走行装置の点検等を容易に行うことができる。
また、この特徴によれば、フォークリフトのフォークが側板部と底板部とに囲まれて構成されているため、搬送台車の運搬時において、フォークが挿入部から離脱することを確実に防止できる。」に訂正する。

なお、訂正前の請求項1?4は一群の請求項に該当するから、訂正事項1?3に係る請求項1?4についての訂正は、一群の請求項である請求項1?4について請求されており、訂正事項4?5に係る明細書の訂正は、一群の請求項である請求項1?4について請求されている。
また、訂正後の請求項2に係る訂正について、特許権者は、該訂正が認められるときに請求項1とは別の訂正単位として扱われることを求めている。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1に係る請求項1についての訂正は、訂正前の請求項1を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2)訂正事項2について
訂正事項2に係る請求項2についての訂正は、訂正前の請求項2が訂正前の請求項1の記載を引用するものであったところ、その引用関係を解消して訂正前の請求項1の内容を書き下して独立請求項にするものであり、またその書き下しの際に訂正前の請求項1にあった「載置面を昇降自在な載置台」という不明瞭な記載を明細書等の段落【0016】、図2?3等に基づいて「載置面を有する載置台」と明確にし、また訂正前の請求項1にあった「フォーク収容部材」という不明瞭な記載を明細書等の段落【0020】、図5等に基づいて「フォーク挿入部材」と明確にするものであるから、引用関係の解消及び明瞭でない記載の釈明を目的としており、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)訂正事項3について
訂正事項3に係る請求項3についての訂正は、訂正前の請求項3が請求項1又は請求項2を引用していたところ、請求項2のみを引用するようにするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としており、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(4)訂正事項4?5について
訂正事項4に係る明細書の段落【0007】についての訂正及び訂正事項5に係る明細書の段落【0008】についての訂正は、上記訂正事項1?2の訂正に伴い、特許請求の範囲の記載との整合を図るための訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

3 小括
以上のとおり、訂正事項1?5に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1,〔2?4〕について訂正することを認める。


第3 本件訂正発明
上記「第2」で述べたとおり、本件訂正は認められるので、訂正特許請求の範囲の請求項2?4に係る発明(以下それぞれ「本件訂正発明2」?「本件訂正発明4」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項2?4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである(下線は訂正箇所を示す。)。

「【請求項2】
物品を載置支持し、かつ、その載置面を有する載置台と、該載置台を昇降させる昇降装置と、左右に離間したレール上を左右の車輪により走行する走行装置と、を備えた搬送台車であって、
前記搬送台車は、前記左右の車輪の間において前記搬送台車の底板にフォークリフトのフォークが挿入可能な挿入部が突設されており、
前記挿入部を構成するフォーク挿入部材の最下点が前記車輪の最下点より下方に位置し、
前記挿入部は、側板部と、該側板部の端部同士の間を繋ぐ底板部とに囲まれて構成されていることを特徴とする搬送台車。
【請求項3】
前記挿入部は、前記搬送台車の左右の車輪の間において前記搬送台車の底板に左右に一対突設されていることを特徴とする請求項2に記載の搬送台車。
【請求項4】
前記挿入部のフォーク挿入口における前記側板部には、前記搬送台車の進行方向の中心に向うにつれて下方に傾斜する傾斜部が形成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の搬送台車。」


第4 取消理由の概要
1 平成31年3月4日付けで通知した取消理由(決定の予告)の概要
平成30年10月10日になされた訂正後の請求項1,3に係る特許に対して、当審が平成31年3月4日付けで通知した取消理由(決定の予告)(以下「本件取消理由A」という。)の要旨は、次のとおりである。

[取消理由1-1](新規性)平成30年10月10日になされた訂正後の請求項1,3に係る発明は、本件特許の原出願の出願日前に日本国内又は外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に示された発明(引用発明)であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

[取消理由1-2](進歩性)平成30年10月10日になされた訂正後の請求項1,3に係る発明は、本件特許の原出願の出願日前に日本国内又は外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に示された発明(引用発明)に基いて、その原出願の出願日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。

2 平成30年8月21日付けで通知した取消理由の概要
本件特許の願書に添付された特許請求の範囲の請求項1,3?4に係る特許に対して、当審が平成30年8月21日付けで通知した取消理由(以下「本件取消理由B」という。)の要旨は、次のとおりである。

[取消理由2-1](明確性)本件特許は、本件特許の願書に添付された特許請求の範囲の請求項1,3?4の記載が特許法第36条第6項第2号に適合するものではなく、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。

[取消理由2-2](新規性)本件特許の願書に添付された特許請求の範囲の請求項1,3?4に係る発明は、本件特許の原出願の出願日前に日本国内又は外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に示された発明(引用発明)であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。


第5 甲第1号証の記載等
1 甲第1号証
本件特許の原出願の出願日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証は以下のとおりである。

甲第1号証:「Link 51 Pallet Racking Shuttle System」、LINK 51社、
2013年3月7日、https://www.youtube.com/watch?v=
0WGqlCsO4Gs

2 甲第1号証に示された事項等
甲第1号証には以下の事項が示されている。なお、甲第1号証の摘示箇所を示すものとして、動画の再生時間を用い、参考として申立人から甲第1号証の静止画を示す資料として提出された甲第1号証の1の各頁右下に付された頁番号を示す。

(1A)甲第1号証の0:22(甲第1号証の1の第1ページ)には以下の画像が示されている。



(1B)甲第1号証の2:33(甲第1号証の1の第2ページ)には以下の画像が示されている。



(1C)甲第1号証の2:54には以下の画像が示されている。



(1D)甲第1号証の3:01には以下の画像が示されている。



(1E)甲第1号証の4:42(甲第1号証の1の第3ページの左側)には以下の画像が示されている。



(1F)甲第1号証の4:44(甲第1号証の1の第3ページの右側)には以下の画像が示されている。



(1G)甲第1号証の4:55には以下の画像が示されている。



(1H)甲第1号証の5:14(甲第1号証の1の第4ページ)には以下の画像が示されている。



(1I)甲第1号証の5:54(甲第1号証の1の第5ページ)には以下の画像が示されている。



(1J)甲第1号証の5:58(甲第1号証の1の第6ページ)には以下の画像が示されている。



(1K)甲第1号証の7:54(甲第1号証の1の第10ページ左側)には以下の画像が示されている。



(1L)甲第1号証の7:56(甲第1号証の1の第10ページ右側)には以下の画像が示されている。



また、甲第1号証は、表題のとおり「Pallet Racking Shuttle System」に関する動画であるが、上記画像によれば、「Shuttle」(当審訳:シャトル)に関し、以下の事項が認められる。

(1a) 上記摘示(1A)の内容から、以下の事項が看取できる。
・シャトルがパレット及びパレット上の物品を載置支持すること

(1b) 上記摘示(1K)、(1L)の内容から、上記認定事項(1a)に関し、さらに以下の事項が看取できる(参考図1として、甲第1号証の1の第10ページの図を示す。)。
・シャトルが、載置面を有して昇降自在な載置台を備えること

参考図1



(1c) 上記摘示(1G)、(1H)の内容から、以下の事項が看取できる。
・シャトルが左右に車輪を備えること

(1d) 上記摘示(1E)、(1F)の内容から、以下の事項が看取できる。
・シャトルは左右に離間したレール上を走行すること

(1e) 上記摘示(1H)の内容から、以下の事項が看取できる。
・左右の車輪の間において、シャトルの底面は板状の部分を有すること

(1f) 上記摘示(1H)、(1I)の内容から、以下の事項が看取できる(参考図2として、甲第1号証の1の第4ページを示し、参考図3として、第5ページの図を示す。)。
・左右の車輪の間において、シャトルの下面に、前後に伸びる4本の突条を有すること
・4本の突条のうち、左方の2本の間と、右方の2本の間とのそれぞれにフォークリフトのフォークが位置すること

参考図2



参考図3



(1g) 上記摘示(1J)の内容から、以下の事項が看取できる。
・シャトル下面の突条の最も下の点は、車輪の最も下の点より下方に位置していること

(1h) 上記摘示(1C)、(1D)の内容から、以下の事項が看取できる(参考図4として、当審で作成した図を示す。)。
・シャトル下面の突条の端面はシャトルの走行する方向に向けて下方に傾斜していること

参考図4



以上の認定事項(1a)?(1h)を総合すると、甲第1号証から、次の発明(以下「引用発明」という。)が認定できる。

「パレット及びパレット上の物品を載置支持し、
載置面を有して昇降自在な載置台を備え、
左右に車輪を備え、
左右に離間したレール上を走行し、
左右の車輪の間において、シャトルの底面は板状の部分を有し、
左右の車輪の間において、シャトルの下面に、前後に伸びる4本の突条を有し、
4本の突条のうち、左方の2本の間と、右方の2本の間とのそれぞれにフォークリフトのフォークが位置するようになっており、
シャトル下面の突条の最も下の点は、車輪の最も下の点より下方に位置し、
シャトル下面の突条の端面はシャトルの走行する方向に向けて下方に傾斜している
シャトル。」


第6 当審の判断
1 本件取消理由Aについて
本件取消理由Aにおける取消理由1-1(特許法第29条第1項第3号)及び取消理由1-2(同法第29条第2項第3号)の取消の対象は平成30年10月10日になされた訂正後の請求項1,3であったが、上記「第2 1」でも述べたように平成30年10月10日になされた訂正請求は特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなすため、取消理由の対象は存在しなくなった。

2 本件取消理由Bについて
2-1 取消理由2-1(特許法第36条第6項第2号)について
(1)訂正前の請求項1の「フォーク収容部材」に関する記載が不明確である点について
ア 概要
訂正前の請求項1の「前記挿入部を構成するフォーク収容部材」の意味する構成が明細書の記載を参照しても判然とせず、「前記挿入部を構成するフォーク収容部材の最下点が前記車輪の最下点より下方に位置する」という記載が意味する具体的な事物の範囲を一意に当業者が理解することができないから、訂正前の請求項1に係る発明は明確でない。

イ 本件訂正について
本件訂正(訂正事項1?2)により、訂正前の請求項1は削除され、訂正後の請求項2において訂正前の請求項1の内容が書き下され、その際に訂正前の請求項1にあった「前記挿入部を構成するフォーク収容部材」という記載が「前記挿入部を構成するフォーク挿入部材」という記載に訂正された。

ウ 判断
訂正後の請求項2の「前記搬送台車は、前記左右の車輪の間において前記搬送台車の底板にフォークリフトのフォークが挿入可能な挿入部が突設されており、
前記挿入部を構成するフォーク挿入部材の最下点が前記車輪の最下点より下方に位置し、
前記挿入部は、側板部と、該側板部の端部同士の間を繋ぐ底板部とに囲まれて構成されていること」という記載から(下線は当審で付した。)、「挿入部」は「前記搬送台車の底板にフォークリフトのフォークが挿入可能」に「突設され」ていて「側板部と、該側板部の端部同士の間を繋ぐ底板部とに囲まれて構成され」たものであり、「フォーク挿入部材」はその「挿入部を構成する」部材であることが明確に理解されることから、本件訂正発明2は不明確でない。

(2)訂正前の請求項1の「その載置面を昇降自在な載置台」及び「該載置台を昇降させる昇降装置」という記載が整合せず、不明確な点について
ア 概要
訂正前の請求項1における「その載置面を昇降自在な載置台」との記載では、昇降する対象は「載置面」であると解され、一方「該載置台を昇降させる昇降装置」との記載では、昇降する対象が「載置台」であると解されるために、両者の記載が整合しないので、訂正前の請求項1に係る発明は明確でない。

イ 本件訂正
本件訂正(訂正事項1?2)により、訂正前の請求項1は削除され、訂正後の請求項2において訂正前の請求項1の内容が書き下され、その際に訂正前の請求項1にあった「その載置面を昇降自在な載置台」という記載が「その載置面を有する載置台」という記載に訂正された。

ウ 判断
訂正後の請求項2における「その載置面を有する載置台」という記載と「該載置台を昇降させる昇降装置」という記載は整合するので、本件訂正発明2は不明確でない。

(3)訂正前の請求項3?4が不明確な記載のある訂正前の請求項1を引用するために、請求項3?4に係る発明が不明確となる点について
本件訂正(訂正事項3)により、訂正後の請求項3は請求項2のみを引用するものとなり、そして上記「(1)」及び「(2)」で述べたように訂正後の請求項2の記載は不明確でないことから、本件訂正発明3は不明確でない。
また本件訂正(訂正事項3)により、訂正後の請求項4は請求項2又は請求項2を引用する請求項3を引用するものとなったことから、本件訂正発明4は不明確でない。

(4)訂正前の請求項4に係る発明が、請求項1を引用する請求項3を引用する場合を含むために不明確となる点について
本件訂正(訂正事項3)により、訂正後の請求項4は請求項2又は請求項2を引用する請求項3を引用するものとなったことから、本件訂正発明4は不明確でない。

(5)小括
以上より、本件訂正発明2?4は明確であり、本件訂正後の請求項2?4の記載は特許法第36条第6項第2号に適合するものであるから、その発明に係る特許は取り消すべきものでない。

2-2 取消理由2-2(特許法第29条第1項第3号)について
取消理由2-2は訂正前の請求項1に係る発明、請求項1を引用する請求項3及び該請求項3を引用する請求項4に係る発明に対するものであるところ、本件訂正(訂正事項1)により、訂正前の請求項1は削除されたので、訂正前の請求項1に係る発明に対する取消理由2-2は解消した。
また、本件訂正(訂正事項2?3)により、訂正後の請求項3は取消理由2-2の対象でない請求項2のみを引用するものとなり、訂正後の請求項4は該請求項2又は該請求項2を引用する請求項3を引用するものとなったので、訂正前の請求項3?4に係る発明に対する取消理由2-2は解消した。

3 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。

(1-1)申立理由1(特許法第29条第1項第3号)
請求項1に係る発明は甲第2?5号証のそれぞれに示された発明であり、請求項3に係る発明は甲第2,4?5号証のそれぞれに示された発明であり、請求項4に係る発明は甲第5号証のそれぞれに示された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。したがって、請求項1,3?4に係る特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。

(1-2)申立理由2(特許法第29条第2項)
請求項1に係る発明は甲第1?5号証のそれぞれに示された発明に基いて、請求項2に係る発明は甲第1号証又は甲第2号証に示された発明及び甲第6号証に示された事項に基いて、請求項3に係る発明は甲第1?2,4?5号証に示された発明に基いて、請求項4に係る発明は甲第1,5号証に示された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、請求項1?4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。

(2)甲第2?6号証の記載等
ア 甲第2?6号証
上記申立理由1?2における甲第2?6号証は以下のとおりである。なお、甲第1号証については上記「第5」で示したとおりである。

甲第2号証:「Dematic Deep Lane Pallet Storage」、DEMATIC社、201
3年7月17日、https://www.youtube.com/watch?v=-bKVar0R
40s
甲第3号証:国際公開第2004/035429号
甲第4号証:特開平10-87020号公報
甲第5号証:国際公開第2012/127419号
甲第6号証:国際公開第2011/042265号

イ 記載事項等
(ア)甲第2号証
本件特許の原出願の出願日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第2号証には以下の事項が示されている。なお、甲第2号証の摘示箇所を示すものとして、動画の再生時間を用い、参考として申立人から甲第2号証の静止画を示す資料として提出された甲第2号証の1の各頁右下に付された頁番号を示す。

(2A)甲第2号証の0:30(甲第2号証の1の第1ページ)には以下の画像が示されている。


(2B)甲第2号証の1:12(甲第2号証の1の第4ページ)には以下の画像が示されている。



(イ)甲第3号証
本件特許の原出願の出願日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第3号証には日本語にして以下の事項が示されている。なお、翻訳は申立人が甲第3号証に添付した日本語訳を参考にした当審の訳である。

(3A)「本発明は、複数のパレットを支持するのに十分な長さをもつ少なくとも一対のパレット搬送用のレールと、一対のレールに載置可能でレールに沿って移動するために走行可能な台車を含んだ、パレットの大規模貯蔵ラックシステムに関するものであり、一対のレールは、それぞれ上部にパレットを支持するための縦支持面、下部に台車が走行可能な縦回転面を持つ。」(第1頁第5?10行(なお、行は各頁の左方に付された数字による。以下(3B)?(3D)についても同様。))

(3B)「図1は、大規模貯蔵ラックに含まれるレールの一部を示している。レール1は、互いに間隔を空けて対となって配置されており、大規模貯蔵ラック内でのパレットを輸送するために台車がレール1上を走行可能となっている。大規模貯蔵ラックを構築するべく、多数の対をなすレールが異なるレベルに設けられている。
レール1は上部に縦支持面、すなわち、上端に搬送面2がある。支持面2は、レール1が組み立てられたときに、実質的に水平となるように配置される。パレットは、支持面2上に載置されるようになっている。」(第4頁第6?14行)

(3C)「台車7は、図2に示されるようにレール1上に降下して配置されると、横方向に正しく位置合わせされないことがよく起きる。その一方で、台車7は、フォークリフト車のフォークによって位置決めされるので、実質的に水平となる。そのため、台車7が斜めにずれてレール間に落下する危険はない。このように、台車7の正確な水平の位置合わせは、いつでも想定される水平面で行われ、フォークリフト車のフォークの位置によって規定される。」(第5頁第24?30行)

(3D)「図3は、支持面2上に載置されたパレット9下の台車7を示す。パレット9は、以下のように配置される。台車7は上述したように、レール1の端部に設置される。大規模貯蔵ラック内に配置したいパレット9は、台車7をレール1上に配したものと同一(又は同様)のフォークリフト車で持ち上げられる。パレット9は、図3に示されるように支持面2上に配置される。台車7は、台車全体を持ち上げることが可能な昇降機構を有しており、この持ち上げにおいて車輪8は下方に移動し、台車の上側に配される持ち上げ部材10はパレット9の下部側と接触して台車を上部の支持面2のやや上方に持ち上げる。パレット9は、台車7とともにすぐに移動可能となっている。台車7は、遠隔操作されてもよいものであるが、パレット9を大規模貯蔵ラックの所望の位置、すなわち、台車7が載置されるレール1に沿った所定の位置にパレット9を搬送する。所望の位置に到達すると、台車7は、持ち上げ部材によって下降し、支持面2と接触する。持ち上げ部材10は、パレット9の底面と接触しなくなり、その結果、台車7は再び自由移動可能となる。ここにおいて、台車7は、他の階のラックに移動するため、又は別のパレットを選択して搬送するために、レール1の端部に移動可能となっている。
別の実施形態として、持ち上げ動作時に、台車7の車輪8を垂直方向において固定し、持ち上げ部材10を代わりに昇降可能としてもよい。」(第7頁第28行?第8頁第13行)

(3E)甲第3号証には以下の図が示されている。

図2 図3


(ウ)甲第4号証
本件特許の原出願の出願日前に頒布された甲第4号証には以下の事項が示されている。

(4A)「【0009】
【発明の実施の形態】図1,図2は、複数の収納部1aを上下左右に備えている収納棚1の複数と、それらの収納部1aの内側に設けた走行路1bを走行して、その収納部1aに対してパレット2a上の物品2をパレット2aごと搬出入する搬送台車3と、この搬送台車3を昇降台4に載せて収納棚1の前面側に沿って移動し、かつ、その昇降台4を駆動昇降させて搬送台車3を所定の収納部1aの走行路1bに案内する移動台車としてのスタッカークレーン5とが設けられている収納棚用の搬出入設備を示す。」

(4B)「【0011】前記収納部1aの各々は、図3,図4に示すように、パレット2aに載せた物品2の複数個をパレット2aごと一列に並べて載置収納できるように、収納棚1両側のクレーン走行通路5aに連通する細長い物品収納空間を形成する状態で設けられ、搬送台車3の走行面6aが形成されている二本の走行フレーム6をその収納部1aの長手方向に沿って設けて搬送台車3の走行路1bが構成され、いずれのクレーン走行通路5a側からでも、そのクレーン走行通路5aを走行するスタッカークレーン5に載せた搬送台車3で物品2をパレット2aごと搬出入できるように設けられているとともに、その走行路1bの両側脇には、この走行フレーム6に一体形成した荷載置面6bに収納物品2をパレット2aごと載置支持する物品支持部がその走行路長手方向に沿って設けられている。」

(4C)「【0018】前記搬送台車3には、図9,図10に示すように、左右各4輪の走行車輪3aと、それらの走行車輪3aをチェーン駆動する減速機付走行用電動モータ3bと、走行フレーム4a,6の内側面4f,6cとの接触で転動してその走行方向を規制するガイドローラ3cと、物品2をパレット2aごとを昇降自在に載置支持する四つの載置面3dを備えた載置台3eと、その載置台3eを駆動昇降させる電動式アクチュエータとしての減速機付昇降用電動モータ3fと、走行用電動モータ3b及び昇降用電動モータ3fに駆動用の電力を給電する二次電池3gと、その二次電池3gに充電するための電力を受け取る受電端子10aを備えた受電コネクタ10と、搬送台車3の停止位置を検出するためのフォトセンサ3nとが設けられている。」

(4D)甲第4号証には以下の図が示されている。

図3 図6 図11


(エ)甲第5号証
本件特許の原出願の出願日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第5号証には日本語にして以下の事項が示されている。なお、翻訳は申立人が甲第5号証に添付した日本語訳を参考にした当審の訳である。

(5A)「貯蔵レーン11,21,31内における位置決めは、貯蔵レーン11,21,31内を移動でき、かつ前述の搬送マザーシャトル2,22内に配置が可能な適切なパレット搬送シャトル3によって行われる。
言い換えると、パレットの処理過程は、マザーシャトル2,22によってパレットを詰込み台/取出し台に取り入れ/取り出し、選択した貯蔵レーンに搬送する過程を含む。
マザーシャトル2,22と貯蔵レーン11,21,31内での選択場所との間での処理は、上記とは異なりパレット搬送シャトル3で行われ、パレット搬送シャトル3はパレットを取り入れ/取り出すために搬送マザーシャトル内に載置可能となっており、さらにレーン内パレット処理のためレーン内を移動可能となっている。
ここで、図2は搬送レーン10の貯蔵レーン11に留まるマザーシャトル2内に配置したシャトル3を示し、また図3はレーン11内を移動中のシャトル3を示す。図を明瞭に示すため、処理/保管されるパレットは記されていない。」(第4頁第20?32行)

(5B)甲第5号証には以下の図が示されている。

図2 図3


図10


(オ)甲第6号証
本件特許の原出願の出願日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第6号証には日本語にして以下の事項が示されている。なお、翻訳は申立人が甲第6号証に添付した日本語訳を参考にした当審の訳である。

(6A)「[0034]図2A及び図2Bは、シャトルステーション30の第1の実施形態を斜視図で示している。図2Aは、斜視上面図を示す。図2Bは、図2Aのステーション30の斜視底面図を示す。シャトルステーションは、しばしば、シャトル22が「ドッキング」して積み込み、再配置されるか、またはパレットを持ち上げたり、落ろしたりする「ドッキングステーション」と呼ばれる。」

(6B)「[0049]さらに図2Bは、任意の沈降ストラット46,46’を示す。沈降ストラット46,46’は、実質的にZ方向に延び、例えばフォークのような荷重受け手段を有するスタッカ20と協働する。」

(6C)「[0071]図8は、ステーション30’の別の実施形態の斜視図を示す。」

(6D)「[0075]図9は、図8のステーション30’を斜視底面図で示し、ステーション30’内にシャトル22が駐車されている。」

(6E)「[0077]ステーション30’は、上昇位置(搬送位置)に示されており、スタッカ20のフォークがストッパプレート40の開口部86を通ってステーション30’の下の沈降装置46,46’に通常挿入される。」

(6F)「[0083]図12は、レールセクション36又は36’を完全になくすことができる、本発明によるさらなるシャトルステーション30”の変形例を示しており、図12は、ラック32及びそれに通常接続されたリフトテーブル100の以下の説明において、同じ構造的特徴には前と同じ参照番号が付されていることが理解される。」

(6G)「[0087]昇降台100は、ここでは、受歯108,110の構成に従って、2つの長手部材120,122を有する。・・・」

(6H)「[0096]フォークリフト運転手がフォーク152を長手部材120,122の下(Z方向)に安全かつ選択的に格納させるために、長手部材120,122はここでは少なくとも部分的に閉じられている。フォーク152が適切に位置決めされると、それらは長手部材120,122の頂部が受歯108,110の下側に当接するまでの正のY方向に持ち上げることができる。交差部材124?126は、開口部112?118を貫通している。そこに取り付けられたマンドレル130も同様である。」

(6I)甲第6号証には以下の図が示されている。

図2A 図2B


図8 図9


図12 図13?14


図15?図17


(3)検討
(3-1)請求項1について
本件訂正(訂正事項1)により請求項1は削除されたので、申立理由1及び申立理由2における申立ての対象のうちの請求項1は存在しなくなった。

(3-2)請求項2について
請求項2に対する申立理由2について以下検討する。
ア 対比
本件訂正発明2と引用発明(甲第1号証に示された発明)とを対比する。

(ア)引用発明の「パレット」及び「パレット上の物品」、「載置面」、「載置台」、「車輪」、「レール」、「フォークリフト」、「フォーク」、「シャトル」は、その意味、機能または構造からみて、本件訂正発明2の「物品」、「載置面」、「載置台」、「車輪」、「レール」、「フォークリフト」、「フォーク」、「搬送台車」にそれぞれ相当する。

(イ)引用発明の「シャトル」は「パレット及びパレット上の物品を載置支持し、載置面を有して昇降自在な載置台を備え」るから、載置台を昇降自在とするための装置、すなわち昇降装置を備えることが明らかである。
そうすると、引用発明の「シャトル」が「パレット及びパレット上の物品を載置支持し、載置面を有して昇降自在な載置台を備え」ることは、本件訂正発明2の「搬送台車」が「物品を載置支持し、かつ、その載置面を有する載置台と、該載置台を昇降させる昇降装置と」「を備え」ることに相当する。

(ウ)引用発明の「シャトル」は「左右に車輪を備え」、「左右に離間したレール上を走行」するのであるから、「左右」の「車輪」を含む走行装置を備えることが明らかである。
そうすると、引用発明の「シャトル」が「左右に車輪を備え」、「左右に離間したレール上を走行」することは、本件訂正発明2の「搬送台車」が「左右に離間したレール上を左右の車輪により走行する走行装置」「を備え」ることに相当する。

(エ)引用発明の「4本の突条」の「左方の2本の間と、右方の2本の間」に「フォークリフトのフォークが位置」できることから、左方及び右方のそれぞれにおいて2本の突条の間はフォークリフトのフォークをさし入れるところであることは明らかである。また引用発明の「突条」を構成する部材があることは明らかである。
そして、「挿入」の字義が「さし入れること。さしこむこと。」を意味すると解されること(株式会社岩波書店・広辞苑第六版)を踏まえると、引用発明の「4本の突条」は本件訂正発明2の「挿入部」に相当し、引用発明の「突条」を構成している部材は「前記挿入部を構成するフォーク挿入部材」に相当する。

(オ)引用発明は「左右の車輪の間において、シャトルの底面は板状の部分を有し」ているから、当該板状の部分はシャトルの底板をなすといえる。また引用発明が有する「シャトルの下面に、前後に伸びる4本の突条」は当該底板に突設されたものといえる。
そうすると、引用発明の「左右の車輪の間において、シャトルの底面は板状の部分を有し、左右の車輪の間において、シャトルの下面に、前後に伸びる4本の突条を有し、4本の突条のうち、左方の2本の間と、右方の2本の間とのそれぞれにフォークリフトのフォークが位置するようになって」いることは、本件訂正発明2の「前記搬送台車は、前記左右の車輪の間において前記搬送台車の底板にフォークリフトのフォークが挿入可能な挿入部が突設されて」いることに相当する

(カ)引用発明の「シャトル下面の突条の最も下の点は、車輪の最も下の点より下方に位置し」ているから、「突条」を構成している部材の最も下の点も、車輪の最も下の点より下方に位置していることが明らかである。
そうすると、引用発明の「シャトル下面の突条の最も下の点は、車輪の最も下の点より下方に位置し」ていることは、本件訂正発明2の「前記挿入部を構成するフォーク挿入部材の最下点が前記車輪の最下点より下方に位置」することに相当する。

以上のことから、本件訂正発明2と引用発明とは以下の点で一致し、また以下の点で一応相違する。

<一致点1>
「物品を載置支持し、かつ、その載置面を有する載置台と、該載置台を昇降させる昇降装置と、左右に離間したレール上を左右の車輪により走行する走行装置と、を備えた搬送台車であって、
前記搬送台車は、前記左右の車輪の間において前記搬送台車の底板にフォークリフトのフォークが挿入可能な挿入部が突設されており、
前記挿入部を構成するフォーク挿入部材の最下点が前記車輪の最下点より下方に位置する、
搬送台車。」

<相違点1>
「挿入部」について、本件訂正発明2は「前記挿入部は、側板部と、該側板部の端部同士の間を繋ぐ底板部とに囲まれて構成されていること」という構成を有するのに対し、引用発明は「4本の突条」によるものであってそのような構成を有しない点。

イ 判断
甲第6号証には、摘示(6F)?(6H)の事項及び摘示(6I)の図12?17の図示内容から明らかなとおり、シャトル22のシャトルステーション30”においてリフトテーブル100における長手部材120,122の下にフォーク152を安全かつ選択的に格納させるために断面矩形状に閉じる構成(以下「構成A」という。)が示されており、また摘示(6A)?(6E)の事項及び摘示(6I)の図2A?2B,8?9の図示内容から明らかなとおり、シャトル22のためのシャトルステーション30,30’におけるフォークが挿入される断面矩形状の沈降ストラット46,46’の構成(以下「構成B」という。)が示されている。そして、構成Aにおける「断面矩形状に閉じる」部分及び構成Bにおける「断面矩形状の沈降ストラット46,46’」は、フォークを挿入する部分であること、及び断面矩形状から側板と側板の端部同士を繋ぐ底板を備えることが自明であることを踏まえると、本件訂正発明2の「側板部と、該側板部の端部同士の間を繋ぐ底板部とに囲まれて構成されている」「挿入部」に一応相当する。
しかしながら、甲第6号証に示された構成A及び構成Bにおける「挿入部」は本件訂正発明2の「搬送台車」に相当するシャトル22自体の構成でなく、あくまでもシャトルステーション30,30’,30”に特化した構成である(要するに挿入部と車輪との技術的な関係は一切ない。)。
してみると、搬送台車についての引用発明と、シャトルステーション30,30’,30”についての甲第6号証に示された構成A及び構成Bとは物自体が異なるため、両者を適用する動機付けがなく、仮に動機付けがあるとしても引用発明において甲第6号証に示された該構成A又は構成Bを適用すると、挿入部を備えるシャトルステーション30,30’,30”自体の構成が組み合わされることになり、本件訂正発明2に想到し得ない。
一方、本件訂正発明2では、「挿入部」の構成について、相違点1に係る本件訂正発明2の「前記挿入部は、側板部と、該側板部の端部同士の間を繋ぐ底板部とに囲まれて構成されていること」という構成を、「前記左右の車輪の間において前記搬送台車の底板にフォークリフトのフォークが挿入可能な挿入部が突設されており」という構成及び「前記挿入部を構成するフォーク挿入部材の最下点が前記車輪の最下点より下方に位置し」という構成とともに特定することにより(これらの三つの構成による「挿入部」の構成を以下「構成X」という。)、訂正明細書の段落【0008】に記載の「この特徴によれば、搬送台車の底板にフォークリフトのフォークが挿入できる挿入部を突設させたので、挿入部にフォークを挿入することによって、搬送台車を持ち上げ、運搬でき、さらには運搬中の搬送台車とフォークとの動きも制限されるので、搬送台車がフォークから大きくずれたり、落下する等の危険を減少させることができる。また、搬送台車を床面に置いた状態では、フォーク挿入部材が床面に接触し、車輪が床面から浮いた状態となるため、車輪の交換、走行装置の試運転、走行装置の点検等を容易に行うことができる。また、フォークリフトのフォークが側板部と底板部とに囲まれて構成されているため、搬送台車の運搬時において、フォークが挿入部から離脱することを確実に防止できる。」という効果及び段落【0021】に記載の「また、図5に示すように、挿入部底板22は、搬送台車1の載置台と略平行に設けられているとともに、走行装置12の下端よりも突出しているので、搬送台車1を床面に置いた状態では走行装置12は、床面に接触しない状態となる。このように、搬送台車1の走行装置12は床面から浮いた状態となるので、車輪の交換、走行装置の試運転、走行装置の点検等を容易に行うことができる。さらに、搬送台車1を一時的に保管する際には、床面上にフォーク挿入部材21を介して置いたり、あるいは他の搬送台車1の載置台7の上にフォーク挿入部材21を介して搬送台車1を積み重ねることができる。」という効果を奏するものと認められる。そして、該効果は、搬送台車についての引用発明の効果とシャトルステーション30,30’,30”についての甲第6号証に示された構成A及び構成Bの効果の総和から、当業者が予想し得たものといえない。
したがって、本件訂正発明2は、引用発明及び甲第6号証に示された構成A又は構成Bに基づき、当業者が容易に想到し得たものでない。
そして他の甲第2号証?甲第5号証をみても、相違点1に係る本件訂正発明2の構成を含む構成Xは示されていない。
さらに令和1年5月14日に申立人から提出された意見書で提示された特開2002-167009号公報(参考資料6)、特開2002-362564号公報(参考資料7)、特許第4312611号公報(参考資料8)、特開2000-280136号公報(参考資料9)をみても、構成Xは示されていない。

ウ 小括
以上より、本件訂正発明2は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでないので、特許を受けることができないものでない。

(3-3)請求項3?4について
本件訂正発明3?4は、本件訂正発明2の発明特定事項を全て含み、さらに減縮するものであることから、特許法第29条第1項の規定及び同法第29条第2項の規定に違反してされたものでないので、特許を受けることができないものでない。


第7 むすび
以上のとおり、本件訂正発明2?4に係る特許は、本件取消理由A?B及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によって取り消すことはできない。さらに、他に本件訂正発明2?4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また請求項1に係る特許は、上記のとおり、本件訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項1に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
搬送台車
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を運搬する搬送台車に関する。
【背景技術】
【0002】
大型の倉庫等には、上下左右に物品を複数収容できる収容棚が複数配置されており、その指定された物品を収容棚に対して搬入もしくは搬出を行う際に物品にアクセス可能な走行レールを敷設し、この走行レールを自走可能な搬送台車を利用することで、収容棚に対する荷物の搬出入の自動化し、作業の効率化を図った搬送設備が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1のような搬送設備は、自走可能な搬送台車と、物品を載置支持し、かつ、その載置面を昇降自在な載置台と、搬送台車の駆動車輪が走行する走行レールと、走行レールの上方に配置され物品を載置可能とする棚部と、を備えている。搬送台車は、ボックス型の車体内に、載置台の底部に当接する複数の偏心カム(偏心作用部)と、複数の偏心カムを同期回転駆動させる昇降用の電動モータと、左右両端に駆動車輪を備える前後一対の駆動軸と、駆動軸を回転させる走行用の電動モータと、が備えられている。載置台を降下状態とした搬送台車は、棚部上の物品に干渉しないように走行可能となっており、載置台の上昇により指定された物品底部を棚部から所定高さ浮かせて運搬できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3138983号公報(第4頁、第10図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した特許文献1の搬送台車にあっては、最初に走行レール上に搬送台車を設置するとき、スタッカークレーン、ユニッククレーン等によって吊り上げて、搬送台車を走行レールに設置していた。しかしながら、スタッカークレーン、ユニッククレーンにおいては、クレーンの可動範囲が制限され、搬送台車を走行レールに設置するのに時間と手間を要していた。また、フォークリフトを使用して、搬送台車を走行レールに設置することも考えられるが、床面上に置かれた搬送台車の下面にフォークリフトのフォークを差し込む際に、2本のフォークに均等に搬送台車の荷重が加わるように支持しないと、運搬中の振動、揺れ等により、搬送台車がフォークからずれたり、最悪の場合にはフォークから落下してしまうことがあった。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、搬送台車をフォークリフトで運搬する際に、フォークを搬送台車の適切な位置に挿入でき、運搬中に搬送台車がフォークからの落下することを防止できる搬送台車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(削除)
【0008】
本発明の搬送台車は、
物品を載置支持し、かつ、その載置面を有する載置台と、該載置台を昇降させる昇降装置と、左右に離間したレール上を左右の車輪により走行する走行装置と、を備えた搬送台車であって、
前記搬送台車は、前記左右の車輪の間において前記搬送台車の底板にフォークリフトのフォークが挿入可能な挿入部が突設されており、
前記挿入部を構成するフォーク挿入部材の最下点が前記車輪の最下点より下方に位置し、
前記挿入部は、側板部と、該側板部の端部同士の間を繋ぐ底板部とに囲まれて構成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、搬送台車の底板にフォークリフトのフォークが挿入できる挿入部を突設させたので、挿入部にフォークを挿入することによって、搬送台車を持ち上げ、運搬でき、さらには運搬中の搬送台車とフォークとの動きも制限されるので、搬送台車がフォークから大きくずれたり、落下する等の危険を減少させることができる。また、搬送台車を床面に置いた状態では、フォーク挿入部材が床面に接触し、車輪が床面から浮いた状態となるため、車輪の交換、走行装置の試運転、走行装置の点検等を容易に行うことができる。
また、この特徴によれば、フォークリフトのフォークが側板部と底板部とに囲まれて構成されているため、搬送台車の運搬時において、フォークが挿入部から離脱することを確実に防止できる。
【0009】
本発明の搬送台車は、
前記挿入部は、前記搬送台車の左右の車輪の間において前記搬送台車の底板に左右に一対突設されていることを特徴としている。
この特徴によれば、フォークリフトの左右一対のフォークを挿入部に挿入させることで、安定して搬送台車を運搬することができる。
【0010】
前記挿入部のフォーク挿入口における前記側板部には、前記搬送台車の進行方向の中心に向うにつれて下方に傾斜する傾斜部が形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、挿入部のフォーク挿入口が、搬送台車の進行方向の中心に向かうにつれて下方に傾斜させて形成されているので、フォークの先端がフォーク挿入口に接触しても、フォークの先端はフォーク挿入口の傾斜部に沿って接触しながら押し込まれるので、搬送台車は浮き上がるのみで、床面上を横滑りすることがなくなり、延いては、他の物品との衝突及び搬送台車の損傷を防止でき、運転者は挿入位置を容易に確認できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1における搬送台車が収容棚の走行レールを走行する状態を示す側面図である。
【図2】搬送台車の構造を示す斜視図である。
【図3】搬送台車にフォーク挿入部材を取付けた状態を示す側面図である。
【図4】搬送台車にフォーク挿入部材を取付けた状態を示す底面図である。
【図5】搬送台車にフォーク挿入部材を取付けた状態を示す正面図である。
【図6】(a)は、フォーク挿入部材にフォークを挿入する手順で、フォークをフォーク挿入口に対向させた状態を示す側面図、(b)は、同じく、フォークをフォーク挿入口に挿入した状態を示す側面図、(c)は、フォークで搬送台車を持ち上げた状態を示す側面図である。
【図7】(a)は、フォーク挿入部材にフォークを正しく挿入できない状態を説明する図で、フォークをフォーク挿入口に対向させた状態を示す側面図、(b)は、同じく、挿入部側板にフォークが接触した状態を示す側面図、(c)は、フォークが挿入部側板の傾斜部に沿って入り込み、搬送台車を持ち上った状態を示す側面図である。
【図8】(a)は、高所に置かれた搬送台車の下方からフォーク挿入口の位置に合わせてフォークの配置するときの状態を示す側面図で、(b)は、同じくフォーク上昇させて、フォークをフォーク挿入口に対向させた状態を示す側面図、(c)は、同じく、フォークをフォーク挿入口に挿入した状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る搬送台車を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0014】
実施例1に係る搬送台車につき、図1から図8を参照して説明する。以下、図2の画面左斜め下を搬送台車の正面側(前方側)、図3及び図4の画面の下を搬送台車の正面側(前方側)とし、図5は、搬送台車の正面側(前方側)から見た図を示す。
【0015】
図1及び図2に示されるように、搬送台車1は、複数の収容部2aを上下左右に備えた収容棚2が複数配置された大型倉庫等において、指定された物品3を収容棚2の所定の収容部2aに対して搬入もしくは搬出を行う際に用いられる。収容棚2の各収容部2aの底面2bには、正面視L字状、逆L字状で一対に対向する走行レール4が敷設されており、走行レール4の上端面4aには、物品3が載置された複数のパレット5が支持されている。
【0016】
図1から図3に示されるように、搬送台車1は走行レール4の走行面4bを走行可能な車体6と、物品3を載置支持し、車体6に対し昇降可能に設けられた載置台7と、該載置台を昇降させる昇降駆動部(図示せず)と、搬送台車1を走行レール4上で走行可能とする走行装置12とを備えており、載置台7がパレット5の下面から離間する最下降状態で走行レール4の走行面4bを走行してパレット5の下方に進入した後、載置台7を上昇させることでパレット5ごと物品3を持ち上げ、パレット5及び物品3を走行レール4の上端面4aから所定高さ浮かせて運搬するようになっている。
【0017】
図2から図5に示されるように、車体6は、金属板の前後を屈曲して断面コ字状に形成された底板10aと前後の側板部10b、10cを有する基部材10と、基部材10の左右に取付けられる側板11、11と、を備え、側板11、11は、図示しないボルト・ナット等により基部材10に対して着脱可能に固定されている。
【0018】
走行装置12は、駆動モータ(図示せず)、駆動車輪13及び従動輪14により主に構成され、駆動モータが図示しないケーブルにより制御部と接続されており、制御部から送信される回転方向や回転数等の情報に基づき回転駆動するようになっている。これら制御部、走行装置及び昇降駆動部は、車体6内に内蔵されたバッテリー(図示せず)から供給される電力によりそれぞれ駆動可能となっている。
【0019】
また、基部材10の前後の側板部10b、10cには、それぞれの左右端部から外側に張り出す水平ローラ28、28、…が設けられている。さらに、左右の側板11、11には、その前後方向の中央部近傍に水平ローラ29、29がそれぞれ設けられている。これら水平ローラ28、28、…及び水平ローラ29、29が走行レール4の側面に当接することにより、車体6が走行レール4に沿って走行するようになっている。
【0020】
図3から図5に示されるように、搬送台車1の底板10aには、本発明としてのフォーク挿入部材21が設けられている。図5に示すように、フォーク挿入部材21は、挿入部底板22、挿入部側板24、挿入部天板25及び挿入部フランジ26から構成される。また、フォークリフトのフォークが挿入される挿入部23は、挿入部底板22の両端に挿入部側板24が立設され、正面から見て上方に開放した略コ字状として形成されている。図3に示すように、フォークの挿入が容易となるように、フォーク挿入部材21のフォーク挿入口は、搬送台車1の中心に向かうにつれて下方に傾斜させて形成している。なお、図4に示すように、フォーク挿入部材21は、搬送台車1の底板10aに、挿入部天板25及び挿入部フランジ26をボルト30により着脱可能に結合されている。挿入部23の大きさは、フォークリフトのフォークの寸法に対し、若干の余裕を持たせ、挿入作業が容易となる寸法及び運搬中に搬送台車が大きくずれことを防止する寸法に設定されている。また、フォーク挿入部材21は、搬送台車1の底板10aに着脱可能に結合されているので、フォークの寸法に応じて挿入部23の寸法を自在に変更して、搬送台車1の底板10aに取付けることができる。
【0021】
また、図5に示すように、挿入部底板22は、搬送台車1の載置台と略平行に設けられているとともに、走行装置12の下端よりも突出しているので、搬送台車1を床面に置いた状態では走行装置12は、床面に接触しない状態となる。このように、搬送台車1の走行装置12は床面から浮いた状態となるので、車輪の交換、走行装置の試運転、走行装置の点検等を容易に行うことができる。さらに、搬送台車1を一時的に保管する際には、床面上にフォーク挿入部材21を介して置いたり、あるいは他の搬送台車1の載置台7の上にフォーク挿入部材21を介して搬送台車1を積み重ねることができる。
【0022】
次に、フォークリフトによる搬送台車1の運搬方法について説明する。図6に示すように、床面上に置かれた搬送台車1をフォークリフトで運搬する場合には、フォーク40を搬送台車1のフォーク挿入部材21のフォーク挿入口31に対向させる(図6(a)参照)。次に、フォーク40をゆっくりフォーク挿入口31に挿入した後(図6(b)参照)、フォーク40を上昇させ、搬送台車1を床面から離れるように持ち上げる(図6(c)参照)。持ち上げられた搬送台車1は、設置位置まで運搬され、図1の収容部2aの走行レール4の高さまで上昇され、走行レール4上に降ろされて、最後に、フォーク40は挿入部23から引き抜かれ、走行レール4上に配置される。
【0023】
次に、フォーク挿入部材21のフォーク挿入口31に傾斜を設ける効果について説明する。図7に示すように、搬送台車1を床面に置いて、フォーク挿入口31にフォーク40を挿入する場合、フォークリフトの運転者は、上方から搬送台車を見下ろすようになるので、運転者は、フォーク挿入口31の位置を直接確認できない。そこで、運転者は、概略の位置を想定して、フォーク40を挿入することになるが、図7(b)のように、挿入位置が適切でないと、フォーク40の先端が、フォーク挿入口31の傾斜部に沿って接触しながら押し込まれるので、図7(c)のように、搬送台車1は浮き上がる。この搬送台車1の浮上りによって、運転者は挿入位置が適切でないことが判断できる。
【0024】
反対に、フォーク挿入部材21のフォーク挿入口が、傾斜を有さず搬送台車1の底板10aに対して垂直に形成されていると、フォーク40の先端が、垂直に形成されたフォーク挿入口を押すことになり、搬送台車1は床面上を横滑りして移動してしまい、横滑りした搬送台車1が、他の物品に接触して破損させたり、または、搬送台車自身が損傷してしまう危険性がある。これに対しフォーク挿入口31は傾斜を有していると、フォーク40の先端がフォーク挿入口31に接触しても、フォーク40の先端はフォーク挿入口31の傾斜部に沿って接触しながら押し込まれるので、搬送台車1は浮き上がるのみで、床面上をほとんど横滑りすることなく、延いては、他の物品及び搬送台車1を損傷させずに、運転者は挿入位置を確認することができるようになる。
【0025】
さらに、図4に示すように、搬送台車を底面から見たとき、車体の底板10aの表面色と、フォーク挿入部材21の挿入部底板22、挿入部側板24、挿入部天板25及び挿入部フランジ26の表面色との色差、たとえば、色の彩度、明度、色相の差を大きくして、視認性、識別性を高めることができる。図8(a)、(b)に示すように、高所に置かれた搬送台車の下方からフォークを挿入するときには、フォークリフトの運転者は、高所に置かれた搬送台車の下方から見上げてフォーク挿入口の位置にフォークを位置合わせする(図8(a))。この位置合わせの際、搬送台車1の底板10aの表面色とフォーク挿入部材21の表面色との色差を大きくしてあるので、フォーク挿入口31の位置を容易に識別できる。次に、図8(c)に示すように、フォークを挿入して、搬送台車を持ち上げることができる。このように、搬送台車1の底板10aの表面色とフォーク挿入部材21の表面色との色差を大きくして、フォーク挿入口31の位置の識別を容易にして、フォーク40をフォーク挿入口31に挿入する際の安全性を高めることができる。
【0026】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0027】
例えば、前記実施例の図5において、フォーク挿入部材21を構成する挿入部底板22、挿入部側板24、挿入部天板25及び挿入部フランジ26を1枚の板を折曲げて構成することもできるが、各部材を溶接等により接合して構成してもよいし、折り曲げと溶接を併用して構成してもよい。
【0028】
また、前記実施例では、車体の底板10aの色とフォーク挿入部材21の表面色との色差を大きくして、視認性、識別性を高めたが、色差に限らず、模様差又は色差と模様差との組合せによって、視認性、識別性を高めてもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 搬送台車
2 収容棚
3 物品
4 走行レール
5 パレット
6 車体
7 載置台
10 基部材
10a 底板
11 側板
12 走行装置
13 駆動車輪
14 従動輪
21 フォーク挿入部材
22 挿入部底板
23 挿入部
24 挿入部側板
25 挿入部天板
26 挿入部フランジ
31 フォーク挿入口
40 フォーク
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(削除)
【請求項2】
物品を載置支持し、かつ、その載置面を有する載置台と、該載置台を昇降させる昇降装置と、左右に離間したレール上を左右の車輪により走行する走行装置と、を備えた搬送台車であって、
前記搬送台車は、前記左右の車輪の間において前記搬送台車の底板にフォークリフトのフォークが挿入可能な挿入部が突設されており、
前記挿入部を構成するフォーク挿入部材の最下点が前記車輪の最下点より下方に位置し、
前記挿入部は、側板部と、該側板部の端部同士の間を繋ぐ底板部とに囲まれて構成されていることを特徴とする搬送台車。
【請求項3】
前記挿入部は、前記搬送台車の左右の車輪の間において前記搬送台車の底板に左右に一対突設されていることを特徴とする請求項2に記載の搬送台車。
【請求項4】
前記挿入部のフォーク挿入口における前記側板部には、前記搬送台車の進行方向の中心に向うにつれて下方に傾斜する傾斜部が形成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の搬送台車。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-06-04 
出願番号 特願2017-97327(P2017-97327)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (B61B)
P 1 651・ 113- YAA (B61B)
P 1 651・ 121- YAA (B61B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 諸星 圭祐  
特許庁審判長 氏原 康宏
特許庁審判官 中村 泰二郎
一ノ瀬 覚
登録日 2017-11-10 
登録番号 特許第6240803号(P6240803)
権利者 株式会社オカムラ
発明の名称 搬送台車  
代理人 林 道広  
代理人 堅田 多恵子  
代理人 秋庭 英樹  
代理人 林 道広  
代理人 石川 好文  
代理人 重信 和男  
代理人 溝渕 良一  
代理人 秋庭 英樹  
代理人 石川 好文  
代理人 溝渕 良一  
代理人 堅田 多恵子  
代理人 重信 和男  

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