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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A61K
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A61K
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61K
管理番号 1354063
異議申立番号 異議2018-700270  
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-09-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-04-02 
確定日 2019-06-26 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6207545号発明「学習記憶能力増強剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6207545号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。 特許第6207545号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6207545号の請求項1?5に係る特許についての出願は、平成27年 4月30日に出願され、平成29年 9月15日にその特許権の設定登録がされ、同年10月 4日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
平成30年 4月 2日
特許異議申立人矢部陽子(以下、「申立人A」という。)
による特許異議の申立て
平成30年 4月 3日
特許異議申立人石丸光男(以下、「申立人B」という。)
による特許異議の申立て
平成30年 4月 4日
特許異議申立人合同会社 SAS(以下、「申立人C」という。)
による特許異議の申立て
平成30年 6月12日付け
取消理由通知書(上記3事件を併合)
平成30年 8月17日
特許権者による意見書の提出及び訂正の請求
平成30年10月12日
申立人Cによる意見書の提出
平成30年10月15日
申立人A,Bによる意見書の提出
平成31年 1月11日付け
取消理由通知書(決定の予告)
平成31年 3月19日
特許権者による意見書の提出及び訂正の請求

第2 訂正の適否
1.訂正の内容
平成31年 3月19日に請求された訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。下線は、訂正箇所を示す。
なお、平成30年 8月17日付けの訂正の請求(以下、「先の請求」という。)は、本件訂正の請求がされたことに伴い、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「プラズマローゲンを含む、学習記憶能力増強剤であって、
前記プラズマローゲンが、エタノールアミンプラズマローゲン及びコリンプラズマローゲンを含み、
前記プラズマローゲンの90重量%以上が、エタノールアミンプラズマローゲン及びコリンプラズマローゲンであり、
健常な哺乳動物に対して投与されるように用いられ、健常な学習記憶能力を増強するための学習記憶能力増強剤。」
とあるのを
「プラズマローゲンを含む、学習記憶能力増強剤であって、
前記プラズマローゲンが、鶏ムネ肉から抽出されたプラズマローゲンであり、
前記プラズマローゲンが、エタノールアミンプラズマローゲン及びコリンプラズマローゲンを含み、
前記プラズマローゲンの90重量%以上が、エタノールアミンプラズマローゲン及びコリンプラズマローゲンであり、
前記プラズマローゲンに含有される(エタノールアミンプラズマローゲン:コリンプラズマローゲン)の質量比が、(1:2)?(2:1)であり、
健常な哺乳動物に対して投与されるように用いられ、健常な学習記憶能力を増強するための学習記憶能力増強剤。」
に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に
「前記プラズマローゲンが、生体組織から抽出されたプラズマローゲンである、請求項1に記載の学習記憶能力増強剤。」
とあるのを
「プラズマローゲンを含む、学習記憶能力増強剤であって、
前記プラズマローゲンが、鶏ムネ肉から抽出されたプラズマローゲンであり、
前記プラズマローゲンが、エタノールアミンプラズマローゲン及びコリンプラズマローゲンを含み、
前記プラズマローゲンの90重量%以上が、エタノールアミンプラズマローゲン及びコリンプラズマローゲンであり、
前記プラズマローゲンに含有される(エタノールアミンプラズマローゲン:コリンプラズマローゲン)の質量比が、(1:1.5)?(1.5:1)であり、
健常な哺乳動物に対して投与されるように用いられ、健常な学習記憶能力を増強するための学習記憶能力増強剤。」
に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に
「前記生体組織が、鳥組織である、請求項2に記載の学習記憶能力増強剤。」
とあるのを
「プラズマローゲンを含む、学習記憶能力増強剤であって、
前記プラズマローゲンが、鶏ムネ肉から抽出されたプラズマローゲンであり、
前記プラズマローゲンが、エタノールアミンプラズマローゲン及びコリンプラズマローゲンを含み、
前記プラズマローゲンの90重量%以上が、エタノールアミンプラズマローゲン及びコリンプラズマローゲンであり、
前記プラズマローゲンに含有される(エタノールアミンプラズマローゲン:コリンプラズマローゲン)の質量比が、(1:1.5)?(1.5:1)であり、
健常な哺乳動物に対して投与されるように用いられ、健常な学習記憶能力を増強するための学習記憶能力増強経口剤。」
に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に
「前記プラズマローゲンに含有される(エタノールアミンプラズマローゲン:コリンプラズマローゲン)の質量比が、(1:5)?(5:1)である、請求項1?3のいずれかに記載の学習記憶能力増強剤。」
とあるのを
「プラズマローゲンを含む、学習記憶能力増強剤であって、
前記プラズマローゲンが、鶏ムネ肉から抽出されたプラズマローゲンであり、
前記プラズマローゲンが、エタノールアミンプラズマローゲン及びコリンプラズマローゲンを含み、
前記プラズマローゲンの90重量%以上が、エタノールアミンプラズマローゲン及びコリンプラズマローゲンであり、
前記プラズマローゲンに含有される(エタノールアミンプラズマローゲン:コリンプラズマローゲン)の質量比が、(1:1.5)?(1.5:1)であり、
健常なヒトに対して投与されるように用いられ、健常な学習記憶能力を増強するための学習記憶能力増強経口剤。」
に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に
「経口剤である、請求項1?4のいずれかに記載の学習記憶能力増強剤。」
とあるのを
「プラズマローゲンを含む、学習記憶能力増強剤であって、
前記プラズマローゲンが、鶏ムネ肉から抽出されたプラズマローゲンであり、
前記プラズマローゲンが、エタノールアミンプラズマローゲン及びコリンプラズマローゲンを含み、
前記プラズマローゲンの90重量%以上が、エタノールアミンプラズマローゲン及びコリンプラズマローゲンであり、
前記プラズマローゲンに含有される(エタノールアミンプラズマローゲン:コリンプラズマローゲン)の質量比が、(1:1.5)?(1.5:1)であり、
飲食品又は食品添加剤である、
健常なヒトに対して投与されるように用いられ、健常な学習記憶能力を増強するための学習記憶能力増強経口剤。」
に訂正する。

2.一群の請求項について
訂正前の請求項1?5は、請求項2?5が訂正の請求の対象である請求項1の記載を直接又は間接的に引用する関係にあるから、訂正前において一群の請求項に該当する。そうすると、訂正前の請求項1?5について訂正する訂正事項1?5は、当該一群の請求項に対して請求されたものであるといえる。

3.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、願書に添付した明細書(以下、「本件明細書」という。)の【0016】【0017】【0022】及び【0036】の記載に基づき、訂正前の請求項1の「プラズマローゲン」を、「鶏ムネ肉から抽出された」ものであって、「プラズマローゲンに含有される(エタノールアミンプラズマローゲン:コリンプラズマローゲン)の質量比が、(1:2)?(2:1)」であるものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項2における請求項1との引用関係をその内容を変更することなく解消した上で、本件明細書の【0016】【0017】【0022】及び【0036】の記載に基づき、訂正前の請求項2の「生体組織から抽出されたプラズマローゲン」を、「鶏ムネ肉から抽出された」ものであって、「プラズマローゲンに含有される(エタノールアミンプラズマローゲン:コリンプラズマローゲン)の質量比が、(1:1.5)?(1.5:1)」であるものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び請求項間の引用関係の解消を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)訂正事項3について、
訂正事項3は、訂正前の請求項3における請求項2との引用関係をその内容を変更することなく解消した上で、本件明細書の【0016】【0017】【0022】及び【0036】の記載に基づき、訂正前の請求項3の「生体組織から抽出されたプラズマローゲン」であって「前記生体組織が、鳥組織である」プラズマローゲンを、「鶏ムネ肉から抽出された」ものであって、「プラズマローゲンに含有される(エタノールアミンプラズマローゲン:コリンプラズマローゲン)の質量比が、(1:1.5)?(1.5:1)」であるものに限定し、かつ、本件明細書の【0007】の記載に基づき、訂正前の請求項3の「学習記憶能力増強剤」を「学習記憶能力増強経口剤」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び請求項間の引用関係の解消を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(4)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正前の請求項4における請求項1?3との引用関係を、訂正前の請求項1を引用する範囲においてその内容を変更することなくすべて解消した上で、本件明細書の【0016】【0017】【0022】及び【0036】の記載に基づき、訂正前の請求項4の「プラズマローゲンに含有される(エタノールアミンプラズマローゲン:コリンプラズマローゲン)の質量比が、(1:5)?(5:1)である」プラズマローゲンを、「鶏ムネ肉から抽出された」ものであって、「プラズマローゲンに含有される(エタノールアミンプラズマローゲン:コリンプラズマローゲン)の質量比が、(1:1.5)?(1.5:1)」であるものに限定し、本件明細書の【0054】の記載に基づき、訂正前の請求項4の「哺乳動物」を「ヒト」に限定し、かつ、本件明細書の【0007】の記載に基づき、訂正前の請求項4の「学習記憶能力増強剤」を「学習記憶能力増強経口剤」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び請求項間の引用関係の解消を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(5)訂正事項5について
訂正事項5は、訂正前の請求項5における請求項1?4との引用関係を、訂正前の請求項1を引用する範囲においてその内容を変更することなくすべて解消した上で、本件明細書の【0016】【0017】【0022】及び【0036】の記載に基づき、訂正前の請求項5の「プラズマローゲン」を、「鶏ムネ肉から抽出された」ものであって、「プラズマローゲンに含有される(エタノールアミンプラズマローゲン:コリンプラズマローゲン)の質量比が、(1:1.5)?(1.5:1)」であるものに限定し、本件明細書の【0040】の記載に基づき、訂正前の請求項5の「学習記憶能力増強剤」を「飲食品又は食品添加剤である」ものに限定し、本件明細書の【0054】の記載に基づき、訂正前の請求項5の「哺乳動物」を「ヒト」に限定し、かつ、訂正前の請求項5の「経口剤である、・・・学習記憶能力増強剤」なる記載を、「学習記憶能力増強経口剤」と明瞭にするものであるから、特許請求の範囲の減縮、明瞭でない記載の釈明及び請求項間の引用関係の解消を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

4.小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。

第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められたので、本件特許の請求項1?5に係る発明(以下、請求項順にそれぞれ「本件発明1」?「本件発明5」といい、まとめて「本件発明」ともいう。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
プラズマローゲンを含む、学習記憶能力増強剤であって、
前記プラズマローゲンが、鶏ムネ肉から抽出されたプラズマローゲンであり、
前記プラズマローゲンが、エタノールアミンプラズマローゲン及びコリンプラズマローゲンを含み、
前記プラズマローゲンの90重量%以上が、エタノールアミンプラズマローゲン及びコリンプラズマローゲンであり、
前記プラズマローゲンに含有される(エタノールアミンプラズマローゲン:コリンプラズマローゲン)の質量比が、(1:2)?(2:1)であり、
健常な哺乳動物に対して投与されるように用いられ、健常な学習記憶能力を増強するための学習記憶能力増強剤。
【請求項2】
プラズマローゲンを含む、学習記憶能力増強剤であって、
前記プラズマローゲンが、鶏ムネ肉から抽出されたプラズマローゲンであり、
前記プラズマローゲンが、エタノールアミンプラズマローゲン及びコリンプラズマローゲンを含み、
前記プラズマローゲンの90重量%以上が、エタノールアミンプラズマローゲン及びコリンプラズマローゲンであり、
前記プラズマローゲンに含有される(エタノールアミンプラズマローゲン:コリンプラズマローゲン)の質量比が、(1:1.5)?(1.5:1)であり、
健常な哺乳動物に対して投与されるように用いられ、健常な学習記憶能力を増強するための学習記憶能力増強剤。
【請求項3】
プラズマローゲンを含む、学習記憶能力増強剤であって、
前記プラズマローゲンが、鶏ムネ肉から抽出されたプラズマローゲンであり、
前記プラズマローゲンが、エタノールアミンプラズマローゲン及びコリンプラズマローゲンを含み、
前記プラズマローゲンの90重量%以上が、エタノールアミンプラズマローゲン及びコリンプラズマローゲンであり、
前記プラズマローゲンに含有される(エタノールアミンプラズマローゲン:コリンプラズマローゲン)の質量比が、(1:1.5)?(1.5:1)であり、
健常な哺乳動物に対して投与されるように用いられ、健常な学習記憶能力を増強するための学習記憶能力増強経口剤。
【請求項4】
プラズマローゲンを含む、学習記憶能力増強剤であって、
前記プラズマローゲンが、鶏ムネ肉から抽出されたプラズマローゲンであり、
前記プラズマローゲンが、エタノールアミンプラズマローゲン及びコリンプラズマローゲンを含み、
前記プラズマローゲンの90重量%以上が、エタノールアミンプラズマローゲン及びコリンプラズマローゲンであり、
前記プラズマローゲンに含有される(エタノールアミンプラズマローゲン:コリンプラズマローゲン)の質量比が、(1:1.5)?(1.5:1)であり、
健常なヒトに対して投与されるように用いられ、健常な学習記憶能力を増強するための学習記憶能力増強経口剤。
【請求項5】
プラズマローゲンを含む、学習記憶能力増強剤であって、
前記プラズマローゲンが、鶏ムネ肉から抽出されたプラズマローゲンであり、
前記プラズマローゲンが、エタノールアミンプラズマローゲン及びコリンプラズマローゲンを含み、
前記プラズマローゲンの90重量%以上が、エタノールアミンプラズマローゲン及びコリンプラズマローゲンであり、
前記プラズマローゲンに含有される(エタノールアミンプラズマローゲン:コリンプラズマローゲン)の質量比が、(1:1.5)?(1.5:1)であり、
飲食品又は食品添加剤である、
健常なヒトに対して投与されるように用いられ、健常な学習記憶能力を増強するための学習記憶能力増強経口剤。」

第4 取消理由の概要
先の請求による訂正後の請求項1?5に係る特許に対して、当審が平成31年 1月11日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

1.本件の請求項1?5に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の規定を満たさない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。
2.本件の請求項1?5に係る特許は、特許法第36条第4項第1号の規定を満たさない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

第5 当審の判断
1.特許法第36条第6項第1号について
(1)はじめに
特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件(サポート要件)に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が本件出願日当時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、以下、この観点から検討する。

(2)発明の詳細な説明の記載
本件明細書の発明の詳細な説明及び図面には、以下の記載がある。

ア.「【技術分野】
本発明は、プラズマローゲンを含む学習記憶能力増強剤に関する。
【背景技術】
プラズマローゲンはグリセロリン脂質の1種であり、ヒトにおいては、神経、心血管、免疫系などに多く存在することが知られている。さらに、プラズマローゲンは、細胞核やシナプス間隙にも存在することが知られており、プラズマローゲンは神経活動において広範に機能していることが示唆されている。
これまでに、プラズマローゲンの機能として、脳神経細胞新生作用(特許文献1)、抗中枢神経系炎症作用(特許文献2)などが明らかにされている。」(【0001】-【0003】)

イ.「【発明が解決しようとする課題】
本発明は、プラズマローゲンの新たな用途を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、驚くべきことに、プラズマローゲンが学習記憶能力増強作用を有することを見出し、さらに研究を重ねることにより本発明を完成させるに至った。
・・・
【発明の効果】
本発明によれば、学習記憶能力を増強させることができる。」(【0005】-【0008】)

ウ.「【図面の簡単な説明】
・・・
【図2】図2は、試験例1で行ったモリス水迷路試験の結果を示す。図2中、a)はステージに到達するまでの時間(逃避時間:Escape latency)の平均値を示し、b)はマウスのプール内の移動軌跡を示す。なお、「**」は、p<0.01を示す。
【図3】図3は、試験例2で行ったLC-MSによる測定結果を示す。なお、「*」は、p<0.05を示す。」(【0009】)

エ.「本発明では、生体組織から抽出されたプラズマローゲンとして、鳥組織から抽出されたプラズマローゲンを用いることが特に好ましい。中でも、従来から食用とされてきた鳥(食鳥)は、安全性が確認されており、安定供給もし易いため、好適である。中でも、鶏が最適である。 」(【0017】)

オ.生体組織抽出プラズマローゲンは、主にエタノールアミンプラズマローゲン及び/又はコリンプラズマローゲンを含む。特に制限されないが、生体組織抽出プラズマローゲンは、エタノールアミンプラズマローゲン及びコリンプラズマローゲンの含有量が、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましく、80質量%以上であることがよりさらに好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。
また、特に制限されないが、生体組織抽出プラズマローゲンにおける、エタノールアミンプラズマローゲン及びコリンプラズマローゲンの質量比(エタノールアミンプラズマローゲン:コリンプラズマローゲン)は、(1:5)?(1:0)であることが好ましく、(1:5)?(1:0.01)であることがより好ましく、(1:5)?(5:1)であることがさらに好ましく、(1:3)?(3:1)であることがよりさらに好ましく、(1:2)?(2:1)であることがいっそう好ましく、(1:1.5)?(1.5:1)であることが特に好ましい。(【0035】【0036】)

カ.摂取させる対象としては、哺乳動物であれば特に制限されず、ヒトのみならず、非ヒト哺乳動物も含まれる。中でも、健常な哺乳動物に対して摂取させることが好ましい。なお、本明細書において「健常な」とは、学習記憶能力が低下するような疾患、例えば、認知症(アルツハイマー病、パーキンソン病等)などの疾患に罹患していないことを意味する。また、健常なヒトに対して学習能力増強剤を摂取させる場合、これは、いわゆる医療行為を指向するものではない。例えば、食事指導を謳った講習会やサロンなどで学習能力増強を所望する人などに薦めたり、パッケージなどに学習能力の増強を所望する人に訴求する文章やイラスト等を表示したりすることなどが挙げられる。
このように、本発明の学習記憶増強剤を上記した対象に摂取させることにより、当該対象の学習記憶を増強させることができる。
(【0054】【0055】)

キ.「【実施例】
・・・
生体組織抽出プラズマローゲンの調製
鳥組織である鶏ムネ肉を常法に従って採取し、約8mmのミンチへチョッピングし、微生物制御のために加熱工程を経た後、これをチルド冷凍保存した。その後、常法により凍結乾燥を行い、グラインダー処理により粉砕し、乾燥鶏ムネ肉粉末を得た。なお、乾燥鶏ムネ肉粉末は、抽出に使用するまでは脱酸素剤と共に密封保存した。
<有機溶媒抽出工程>
工程(1)
上述の方法により得られた乾燥鶏ムネ肉粉末1kgにエタノール4Lを加えて12時間、40℃で攪拌・静置した後、抽出液を固形物と分離した。固形物には再度エタノール2.5Lを加えて上記と同様の操作を行い、得られた抽出液を合わせて濾紙で濾過した後、減圧乾燥して濃縮された抽出乾固物を得た。
工程(2)
工程(1)で得られた抽出乾固物に水8mLを加えて攪拌及び遠心し、上層を除去することにより沈殿を回収した。当該沈殿に、アセトン200mLを加えて攪拌及び4℃で遠心し、沈殿を回収した。当該沈殿にさらにヘキサン/アセトン(7:3)混合溶媒100mLを加えて攪拌及び遠心し、液層(プラズマローゲン含有画分)を回収した。液層は速やかにロータリーエバポレーターで濃縮乾固して、濃縮乾固体物20gを得た。なお、遠心は、3000rpm×10分で行い、アセトン単一及びヘキサン/アセトン混合溶媒を用いた操作は4℃で、その他の操作は15℃で行った。
工程(3)
工程(2)で得られたプラズマローゲン含有画分20gを、ホスホリパーゼA1(三菱化学フーズ株式会社製)溶液400mL(10mg/mL 0.1クエン酸-HClバッファー)中に分散させ、窒素ガス充填下50℃で2時間攪拌した。その後、冷却し、2倍容量のヘキサンを加えて2回攪拌、分配し、ヘキサン層を回収して濃縮乾固した。さらに、当該乾固物にアセトン60mLを加えて撹拌及び遠心し、沈殿を回収する操作を2回繰り返した。さらに、当該沈殿にヘキサン/アセトン(7:3)混合溶媒60mLを加えて攪拌及び遠心し、液層(高純度プラズマローゲン含有画分)を回収した。当該液層に、ヘキサン198mLとアセトン222mL(即ち、合計でヘキサン/アセトン(1:1)となる)を加えて分液漏斗に移し、水72mLを加えて攪拌及び分配した。下層(アセトン層)を除去し、上層(ヘキサン層)にアセトン/水(5:3)192mLを加えて、攪拌及び分配した。上層(ヘキサン層)を回収し、速やかに減圧乾燥して鶏ムネ肉由来高純度プラズマローゲン含有物を得た。
<鶏ムネ肉由来高純度プラズマローゲン含有物の純度の検討>
上述の方法により得られた鶏ムネ肉由来高純度プラズマローゲン含有物をHPLCにより解析し、クロマトグラムを得た。HPLCの解析条件を以下に示す。
[HPLC解析条件]
・機器:Shimadzu LC-10AD
・カラム:LiChrospher Diol 100(250-4、Merk社製)(プレカラムなし)
・溶媒;A液:ヘキサン/2-プロパノール/酢酸(87:17:1、v/v)、B液:2-プロパノール/水/酢酸(85:14:1、v/v)+0.2% トリエチルアミン
・グラジエント条件:

・流速:1.0mL/min
・検出:ELSD蒸発光散乱検出器(島津製作所社製)
HPLC-ELSDにより分析して得られたクロマトグラムを図1に示す。鶏ムネ肉由来高純度プラズマローゲン含有物に含まれるプラズマローゲンは、エタノールアミンプラズマローゲン(plPE)及びコリンプラズマローゲン(plPC)の混合物であることが分った。検出された全ピーク面積を100%としたとき、プラズマローゲンの面積比率は約94.6%であり、エタノールアミンプラズマローゲンが約47.9%、コリンプラズマローゲンが約46.7%であった。従って、鶏ムネ肉由来高純度プラズマローゲン含有物には、約94.6質量%のプラズマローゲンが含まれることが分かった。なお、プラズマローゲンのピーク位置は、例えば、予め標品を分析することにより知ることができる。
以下の試験例では、上記の方法により得られた鶏ムネ肉由来高純度プラズマローゲン含有物を生体組織抽出プラズマローゲンとして使用した。
生体組織抽出プラズマローゲンの学習記憶能力増強作用の検討
<飼料の調製>
実際に使用するマウスの飼料として、AIN-93M(米国国立栄養研究所により1993年に発表されたマウス・ラットの栄養研究用標準飼料)を購入した(以下、「通常飼料」と記載する。)。また、特別注文により、生体組織抽出プラズマローゲンを0.1質量%含有するAIN-93M(以下、「0.1%Pls含有飼料」と記載する。)も購入した(いずれもオリエンタル酵母株式会社製)。
<試験例1:モリス水迷路試験>
8週齢の健康なC57BJ6雄マウス14匹を日本エスエルシー株式会社から購入し、プラズマローゲン投与群(n=7)及びコントロール群(n=7)に群分けした。プラズマローゲン投与群には0.1%Pls含有飼料を、コントロール群には通常飼料を、それぞれ6週間自由摂取させて飼育した。なお、飼育中、水は自由摂取とした。
飼育後、各群7匹のマウスについて、モリス水迷路試験を行った。当該試験の概要は次の通りである。試験前日にマウスをランダムにプール内に入れ、十分に水に慣れさせた。その翌日、直径120cmの円形プールの任意の箇所の水底に直径10cmの円柱状のアクリル製ステージを設置し、ステージ上における水深が2cmとなるように水を入れた後、マウスをプール内の所定の箇所に入れ、ステージに到達するまでの時間(逃避時間:Escape latency)を測定した。試験は1匹につき計4回の試行を行い、各試行の間隔は40分とした。なお、試行を繰り返すことにより、マウスはステージの位置を学習・記憶するため、逃避時間が短くなる。
モリス水迷路試験の結果を図2に示す。試験の結果、4回目の試行において、プラズマローゲン投与群はコントロール群と比較して、逃避時間が有意に減少することが確認された。なお、モリス水迷路試験は、海馬依存性の学習能力を評価するための試験であり、学習記憶能力の評価に最も良く用いられる手法のひとつである。よって、当該試験結果から、健常マウスにプラズマローゲンを投与することにより、海馬依存性の学習能力が増強されること(即ち、プラズマローゲンが海馬依存性の学習記憶能力の増強作用を有すること)が分かった。さらに、プラズマローゲンを経口投与することにより、健常マウスの海馬依存性の学習能力が増強されることが分かった。
<試験例2:海馬に含まれるプラズマローゲン量の測定>
試験例1の試験後のプラズマローゲン投与群及びコントロール群のマウス各1匹を心腔内から生理食塩水で灌流した後、開頭して海馬を取り出し、常法に従って脂質を抽出し、液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS)により、海馬に含まれるプラズマローゲン量を測定した。LC-MSによる測定結果を図3に示す。
図3から明らかなように、プラズマローゲン投与群はコントロール群と比較して、海馬における相対的プラズマローゲン量が有意に増加していることが確認された。」(【0056】?【0072】)

ク.「

」(図2、3)

(3)本件発明1について
ア.本件発明1の課題は、(2)ア.、イ.及びカ.をはじめとする本件明細書の発明の詳細な説明の記載からみて、健常な哺乳動物に対して投与されるように用いられ、健常な学習記憶能力を増強するための学習記憶能力増強剤の提供であると認められる。

イ.また、(2)エ.及びオ.のとおり、本件明細書の発明の詳細な説明には、学習記憶能力増強剤の有効成分であるプラズマローゲンとして、鶏から抽出されたものが最適であり、エタノールアミンプラズマローゲン及びコリンプラズマローゲンの含有量が90質量%以上であることが特に好ましく、また、(エタノールアミンプラズマローゲン:コリンプラズマローゲン)の質量比が(1:2)?(2:1)であることがいっそう好ましく、(1:1.5)?(1.5:1)であることが特に好ましいことも記載されている。

ウ.さらに、(2)ウ.、キ.及びク.のとおり、本件明細書の発明の詳細な説明には、実施例として、鶏ムネ肉からの抽出により鶏ムネ肉由来高純度プラズマローゲン含有物を得たこと、当該含有物をHPLC分析した結果、プラズマローゲン約94.6%、エタノールアミンプラズマローゲン約47.9%及びコリンプラズマローゲン約46.7%の面積比率を示したこと、並びに、8週齢の健康なC57BJ6雄マウスにおいて、上記鶏ムネ肉由来プラズマローゲン投与群は、コントロール群と比較して、モリス水迷路試験の4回目の試行の逃避時間が有意に減少し、海馬における相対的プラズマローゲン量が有意に増加することが具体的に記載されている。
そして、当該記載によれば、少なくとも当該実施例のプラズマローゲン、すなわち抽出物中の約94.6%をも占める主たる成分であって、その約100%がエタノールアミンプラズマローゲン及びコリンプラズマローゲンであり、エタノールアミンプラズマローゲン:コリンプラズマローゲンの質量比が約1:0.97である鶏ムネ肉由来のプラズマローゲンが、健常マウス、ひいては健常な哺乳動物において健常な学習記憶能力を増強することは認識できるといえる。

エ.一方、プラズマローゲンは由来する生体組織によりリン酸結合基及び脂肪酸由来基の構造、組成等が異なり、それにより発現する作用効果も異なり得るという、本件出願日当時の技術常識によれば、鶏ムネ肉由来でないプラズマローゲンが鶏ムネ肉由来のものと同様の作用効果を示すとはいえないものの、本件訂正により、本件発明1のプラズマローゲンは、本件明細書の発明の詳細な説明の記載から健常な哺乳動物において健常な学習記憶能力を増強することが認識できるといえる、鶏ムネ肉由来のものに限定された。

オ.したがって、本件発明1は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。

カ.特許異議申立人の主張については、以下のとおりである。
(ア)申立人A,Bの主張について
申立人A,Bは、特許異議申立書において
「本件特許明細書の発明の詳細な説明には、鶏ムネ肉から抽出されたプラズマローゲンについて、学習記憶能力増強効果を確認したことしか記載されておらず、他の生体組織由来のプラズマローゲンについては、学習記憶能力増強剤として用いることが実質的に記載されていない」ことから、本件訂正前の請求項1,2,4,5に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえないと主張し、また意見書においては、
「訂正請求書に記載された請求項1,2,4,5(当審注:当該訂正請求書は、取り下げられたものとみなされる先の請求に係るものである。そして、指摘されていない当該訂正請求書に記載された請求項3では、本件訂正前の請求項3と同様に、プラズマローゲンが鳥組織から抽出されたものであることが特定されていた。)の構成では、なおかつ、由来原料等の違いによって脂肪酸組成等が異なる様々なプラズマローゲンが包含されることになり、また、エタノールアミンプラズマローゲン:コリンプラズマローゲンの質量比が1:2?2:1という範囲においても、その範囲の1点で効果の確認がなされているのみであるから、上記請求項の発明の全範囲において、当業者は、本件発明の目的とする『健常な哺乳動物において健常な学習記憶能力を増強させるための学習記憶能力増強』効果が奏されると認識することはできない。」
と主張する。
しかしながら、本件発明1は本件訂正によりプラズマローゲンが鶏ムネ肉から抽出された特定組成のものに限定されており、申立人A,Bが指摘しない本件訂正前の請求項3に記載された発明からみて、由来する生体組織及びプラズマローゲンの組成の双方がさらに減縮されているのだから、上記主張に基づく拒絶理由はもはや存在しない。

(イ)申立人Cの主張について
申立人Cは、意見書において、「由来する生体組織によって得られるプラズマローゲン中のグリセロリン脂質の脂肪酸組成や全脂肪酸組成が変化」し、「プラズマローゲンの生理活性は、2つの脂肪酸基の構造によって変化するものであるが本件出願日当時に知られていた」ことから、「由来する生体組織を「鶏ムネ肉」に限定していない」とともに、「側鎖脂肪酸の構造・組成を特定していない本件訂正発明1?5(当審注:当該本件訂正発明1?5とは、取り下げられたものとみなされる先の請求における訂正特許請求の範囲に記載されたものである。)は、依然として、本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものとはいえない」と主張する。
しかしながら、本件訂正により本件発明1のプラズマローゲンは鶏ムネ肉由来のものに限定されており、また鶏ムネ肉由来のプラズマローゲンであっても特定の側鎖脂肪酸の構造・組成でなければア.に示す課題を解決し得ないとする根拠は本件出願日当時の技術常識からは見出せないので、上記主張はもはや採用し得るものではない。

(4)本件発明2?5について
本件発明2?5は、本件発明1の発明特定事項をすべて有しつつ、さらに本件明細書に記載された事項で発明を特定するものであるから、本件発明2?5もまた、本件明細書の発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。

(5)小括
以上のとおり、本件発明1?5は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるから、本件の請求項1?5に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものではない。

2.特許法第36条第4項第1号について
(1)特許法第36条第4項第1号の規定によれば、発明の詳細な説明の記載は、経済産業省令で定めるところにより、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること、との要件、いわゆる実施可能要件に適合するものでなければならない。そして、該実施可能要件における「実施」には、物の発明の場合、特許法第2条第3項第1号に規定する「その物の使用をする行為」が含まれる。
そうすると、発明の詳細な説明の記載が、物の発明について、実施可能要件を満たすためには、当業者がその物の使用をすることができる程度のものである必要がある。

(2)本件発明1?5について、当業者が当該発明に係る物を使用することができる程度に発明の詳細な説明が記載されているというためには、本件発明1?5におけるプラズマローゲンが、「健常な哺乳動物に対して投与されるように用いられ」たときに「健常な学習記憶能力を増強する」ことを、当業者が認識することができる必要があるといえる。
そして、1.(3)?(5)で説示したとおり、本件明細書の発明の詳細な説明に接した当業者は、本件発明1?5における鶏ムネ肉由来のプラズマローゲンであれば、健常な哺乳動物において健常な学習記憶能力を増強する作用を有すると認識できるといえる。
したがって、本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者がその物の使用をすることができる程度に記載されたものであるから、本件の請求項1?5に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものではない。

第6 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立ての理由について
1.申立人Aによる特許異議申立ての理由
(1)特許法第36条第6項第2号について
ア.申立人Aは、特許異議申立書において、以下の二点を理由に、訂正前の本件特許の請求項1?5に記載された発明は、特許法第36条第6項第2号に違反している旨主張する。
(ア)「健常な哺乳動物」とは、どのような哺乳動物を意味しているのかが明確でない。
(イ)「健常な学習記憶能力を増強するため」とは、どのような意味であるかが明確でない。

イ.しかしながら、ア.(ア)の点については、第5 1.(2)カ.のとおり、本件明細書の【0054】には、「本明細書において「健常な」とは、学習記憶能力が低下するような疾患、例えば・・・などの疾患に罹患していないことを意味する。」ことが記載されているから、本件発明1の「健常な哺乳動物」が、「学習記憶能力が低下するような疾患に罹患していない哺乳動物」であるのは明確である。

ウ.また、ア.(イ)の点については、イ.で指摘した記載に加え、同じく本件明細書の【0054】の「また、健常なヒトに対して学習能力増強剤を摂取させる場合、これは、いわゆる医療行為を指向するものではない。例えば・・・」なる記載も参酌すると、本件発明1の「健常な学習記憶能力を増強するため」が、「医療行為を指向するもの」ではなく、「学習記憶能力が低下するような疾患に罹患していない」状態から「学習記憶能力を増強するため」を示すことは明確である。

エ.以上より、本件発明1?5は明確であり、本件の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号の規定に適合する。

(2)特許法第29条第1項第3号について
ア.申立人Aは、特許異議申立書において、訂正前の本件特許の請求項1?5に係る発明は、本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第1号証(以下、「甲A1」という。また同様に、以下、申立人○(○はA?C)が提出した甲第△号証(△は正の整数)を、「甲○△」という。)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により、特許を受けることができなかったものである旨主張する。

イ.申立人Aは、証拠方法として以下の甲A1を提出した。
甲A1:国際公開第2011/083827号

ウ.甲A1には、以下の記載がある。

(ア)「本発明は、プラズマローゲンを有効成分とする脳神経細胞新生剤に関し、より詳細には生体組織から抽出されたプラズマローゲンを有効成分とする脳神経細胞新生剤に関する。」([0001])

(イ)「また、脳神経細胞を新生させることで、上述のような脳神経細胞の変化を阻止するよりも、より優れた治療効果が得られると期待されている。近年、ヒトを含む多くの哺乳類の成体においても神経細胞の新生が生じていることが明らかになってきた。特に海馬歯状回における神経細胞の新生はアルツハイマー病やパーキンソン病といった神経変性疾患の再生療法の開発に大きく貢献するものと考えられている。例えば、うつ病の治療薬フルオキセチン(fluoxetine)は3?4週間で脳神経細胞の数を増大させることが報告されており(非特許文献1)、当該治療薬の抗うつ効果に寄与しているものと推察されている。
しかしながら、脳神経細胞を新生させる効果を有する物質はほとんど知られておらず、新規な、安全かつ効率的に脳神経細胞を新生することができる物質が望まれていた。」([0004][0005])

(ウ)「本発明は、新規な脳神経細胞新生効果を有する物質を提供することを課題とする。」([0008])

(エ)「本発明の、プラズマローゲンを有効成分とする脳神経細胞新生剤により、脳神経細胞(特に歯状回の脳神経細胞)を新生させ、増加させることができる。また、このため、当該脳神経細胞新生剤により、各種神経疾患の治療を行うことができると考えられる。特に、脳神経細胞の硬化、萎縮、死滅、又は減少等が観察され得る神経疾患(例えばアルツハイマー病、うつ病、統合失調症、及び認知症等)の治療及び/又は予防に優れた効果を奏すると考えられる。
また、本発明の脳神経細胞新生剤は特に歯状回の脳神経細胞を新生し得る。歯状回は記憶を司る海馬の一領域であり海馬への情報入力に重要な役割を果たしていると考えられているため、本発明の脳神経細胞新生剤は、記憶障害の改善及び治療、あるいは学習記憶などの学習能力の向上という効果をも奏すると考えられる。」([0011][0012])

(オ)「[図1]鶏ムネ肉から抽出した高純度プラズマローゲン含有物をHPLC-ELSDにより分析して得られたクロマトグラムを示す。plPEはエタノールアミンプラズマローゲンを、plPCはコリンプラズマローゲンを、それぞれ示す。
[図2]プラズマローゲン投与群及び非投与群のマウスの脳を免疫染色した結果を示す。なお、画像に記載する白いスケールバーは50μmを示す。」
([0014])

(カ)「本発明に係る医薬剤を投与する対象としては、制限はされないが、例えば脳神経細胞の硬化、萎縮、死滅、又は減少等の変化が観察される神経疾患を患った患者であることが好ましい。このような神経疾患としては、例えば、認知症(アルツハイマー病、パーキンソン病等)、統合失調症、うつ病等を挙げることが出来る。また、当該患者の重症度は特に制限されず、初期患者、中期患者、後期患者いずれの患者にも好ましく用いることができる。さらに、高齢者等、このような神経疾患を患う可能性の高い人に対して、予防的に用いることもできる。」([0046])

(キ)「本発明の脳神経細胞新生剤を脳神経細胞新生用の飲食品として用いる場合、当該剤(以下「本発明に係る飲食品」と記載することがある)は、プラズマローゲン、及び食品衛生学上許容される基剤、担体、添加剤、その他飲食品として利用され得る成分・材料等が適宜配合されたものである。例えば、プラズマローゲンを含む、脳神経細胞新生用又は神経疾患の症状改善用若しくは予防用の加工食品、飲料、健康食品(栄養機能食品、特定保健用食品等)、サプリメント、病者用食品(病院食、病人食又は介護食等)等の食品組成物が例示できる。」([0052])

(ク)「本発明は、神経疾患患者及び神経疾患を患う可能性の高い人又は哺乳動物等に対し、本発明の脳神経細胞新生剤を経口投与又は摂取することを特徴とする神経疾患の予防方法、改善方法及び治療方法をも提供する。当該方法は、具体的には、前述の本発明の脳神経細胞新生剤を投与又は摂取することで実施される。なお、当該方法における、対象、投与経路又は摂取量等の各条件は前述の通りである。」([0057])

(ケ)「実施例
・・・
調製例1:生体組織抽出プラズマローゲン含有画分の製造
鳥組織である鶏ムネ肉を常法に従って採取し、約8mmのミンチへチョッピングし、微生物制御のために加熱工程を経た後、これをチルド冷凍保存した。その後、常法により凍結乾燥を行い、グラインダー処理により粉砕した。乾燥胸肉粉末は、抽出に使用するまで脱酸素剤と共に密封保存した。
<有機溶媒抽出工程>
工程(1)
上述のようにして得た乾燥ムネ肉粉末1kgにエタノール4Lを加えて12時間、40℃で撹拌・静置し、その後抽出液を固形物と分離した。固形物には再度エタノール2.5Lを加えて前述のとおり抽出し、得られた抽出液を合わせて濾紙で濾過後、減圧乾燥して濃縮された抽出乾固物を得た。
工程(2)
上述の抽出乾固物に水8mLを加えて撹拌、遠心し、上層を除去した。この沈殿にアセトン200mLを加えて撹拌、4℃で遠心し、アセトン層を除去した。さらにこの沈殿にアセトン100mLを加えて撹拌、遠心し、沈殿を回収した。さらにこの沈殿にヘキサン/アセトン(7:3)混合溶媒100mLを加えて撹拌、遠心し、液層(プラズマローゲン含有画分)20gを回収した。液層は速やかにロータリーエバポレーターで濃縮乾固した。なお、遠心は3000rpm×10minで行い、アセトン単一及びヘキサン/アセトン混合溶媒を用いたものは4℃、他は15℃で行なった。
工程(3)
上述のようにして得たプラズマローゲン含有画分20gを、ホスホリパーゼA1(三菱化学フーズ)溶液400mL(10mg/mL 0.1Mクエン酸-HClバッファー)中に分散させ、窒素ガス充填下で50℃で2時間撹拌した。その後、冷却し、2倍容量のヘキサンを加えて2回撹拌、分配し、上層を回収して濃縮乾固した。さらに、当該乾固物にアセトンを60mL加えて撹拌、遠心し、沈殿を回収する操作を2回繰り返した。さらに当該沈殿にヘキサン/アセトン(7:3) 60mL加えて撹拌、遠心し、液層(高純度プラズマローゲン含有画分)を回収した。この液層に、ヘキサン198mLとアセトン222mL(すなわち、合計でヘキサン/アセトン(1:1)となる)を加えて分液ロートに移し、水を72mL添加して撹拌・分配した。下層(アセトン層)を除去し、上層(ヘキサン層)にアセトン/水(5:3)192mLを添加して、撹拌・分配した。上層(ヘキサン層)を回収し、速やかに減圧乾燥して鶏ムネ肉由来高純度プラズマローゲン含有物を得た。
<鶏ムネ肉由来高純度プラズマローゲン含有物の純度の検討>
上述のようにして得た鶏ムネ肉由来高純度プラズマローゲン含有物を下記条件のHPLCにて解析し、クロマトグラムを得た。
[HPLC解析条件]
機器;Shimadzu LC-10AD
カラム;LiChrospher Diol 100(250-4, Merck社)(プレカラム無し)
溶媒;A液:ヘキサン/2-プロパノール/酢酸(82:17:1. v/v),B液:2-プロパノール/水/酢酸(85:14:1, v/v)+0.2%トリエチルアミン
グラジエント条件:
[表1]

流速;1.0ml/min
検出;ELSD蒸発光散乱検出器 (島津製作所,京都,日本)
結果を図1に示す。鶏ムネ肉から得られるプラズマローゲンはエタノールアミンプラズマローゲン(plPE)とコリンプラズマローゲン(plPC)の混合物であることが分かった。検出された全ピークの面積を100%としたとき、プラズマローゲンの面積比率は94.6%であり、前者が47.9%、後者が46.7%であった。従って、得られた鶏ムネ肉由来高純度プラズマローゲン含有物は、プラズマローゲンを94.6質量%含有することが分かった。なお、プラズマローゲンのピーク位置は、例えば、予め標品を分析することにより知ることができる。
以下の実験では、当該鶏ムネ肉由来高純度プラズマローゲン含有物を鳥組織抽出プラズマローゲンとして使用した。
実施例1:生体組織抽出プラズマローゲンの脳神経細胞に与える影響の検討
鳥組織抽出プラズマローゲンが脳神経細胞に及ぼす影響を検討するため、以下の実験を行った。
<試料の調製>
実験に使用するマウスの飼料として、AIN-93M(米国国立栄養研究所により1993年に発表されたマウス・ラットの栄養研究用標準飼料)を購入した(以下「通常飼料」と表記することがある)。また、特別注文により、鳥組織抽出プラズマローゲンを0.1質量%含有するAIN-93M(以下「0.1%pl含有飼料」と表記することがある)も購入した(いずれもオリエンタル酵母株式会社)。
<脳神経細胞に与える影響検討実験>
老化促進マウスSenescence-Accelerated Mouse-Prone 8 (SAMP8)14匹を、日本エスエルシー株式会社から購入し、プラズマローゲン投与群(n=7)及び非投与群(n=7)に群分けした。SAMP8は、学習・記憶障害をはじめとする行動生理学的障害、免疫応答能低下を示すモデルマウスである。投与群には、0.1%pl含有飼料を25週間自由摂取させて飼育した。非投与群には、通常飼料を25週間自由摂取させて飼育した。なお、飼育中、水は自由摂取とした。飼育後、投与群2匹及び非投与群2匹について、灌流固定を行い、凍結切片を常法に従って作成し、これを免疫染色して比較検討した。
免疫染色は、具体的には次のようにして行った。20μmの脳切片をブロッキング溶液にて30分間室温で処置した後、適切に希釈した1次抗体(DCX(1:500)、NeuN (1:1000))を反応させ、4℃で一晩静置した。その後、数回PBS(リン酸緩衝生理食塩水)で洗浄後、2次抗体を適切に希釈(1:500)して反応させ、室温で6時間静置し、PBSで数回洗浄して脳切片標本を作成した。標本は共焦点顕微鏡にて観察・解析を行った。なお、用いた抗体は次の通りである。神経細胞核染色には、1次抗体として抗神経細胞核抗体(Anti-Neuronal Nuclei(NeuN) monoclomal antibody, マウス由来,Millipore製)を、2次抗体として蛍光標識抗マウスIgG抗体(Labeled Anti-Mouse IgG antibody, Alexa Fluor 568, ヤギ由来,Molecular Probes製)を用いた。未成熟な神経細胞染色には、1次抗体としてダブルコルチン抗体(DCX;Doublecortin(N-19):sc-8067,ヤギ由来, Santa Cruz Biotechnology製)を、2次抗体として蛍光標識抗ヤギIgG抗体(Labeled Anti-Goat IgG antibody,ロバ由来,Molecular Probes製)を用いた。
なお、免疫染色法は、神経新生に対する研究が盛んに行われるようになり評価法や実験技術も日々向上している現状において、最も一般的かつ信頼性が高い実験法といえる。免疫染色法は、本来は不可視化の抗原抗体反応を可視化する方法であり、神経新生の評価に最も良く用いられる手法の一つである。ここで用いた神経前駆細胞の分子マーカーであるダブルコルチン(Doublecortin;DCX)は、多くの論文で頻用される分子マーカーであり、信頼性が最も高い分子マーカーの一つであるといえる。よって、今回得られた実験結果もまた、信頼性が非常に高い結果であると言える。
結果を図2に示す。なお、図2は海馬歯状回を観察した画像である。
その結果、海馬歯状回において、プラズマローゲン非投与群に比べてプラズマローゲン投与群では、未成熟の脳神経細胞のマーカーであるdoublecortin (DCX)陽性細胞数が増加したことがわかった。これらの細胞は、脳神経細胞のマーカーであるNeuNに対する抗体によっても染色され、未成熟の神経前駆細胞であることが示された。このことから、プラズマローゲン投与群では脳神経細胞が新生していることがわかった。」
([0058]-[0071])

(コ)「

」(図2)

エ.以下、甲A1に記載された発明について検討する。
上記ウ.の(オ)、(ケ)及び(コ)のとおり、甲A1には実施例として、鶏ムネ肉から抽出された、プラズマローゲンを94.6質量%含有し、エタノールアミンプラズマローゲンが47.9%、コリンプラズマローゲンが46.7%である鶏ムネ肉由来高純度プラズマローゲン含有物を老化促進マウスSAMP8に投与した結果、海馬歯状回において脳神経細胞が新生したことが記載されている。また、(ア)、(ウ)及び(エ)の記載からみて、上記実施例における鶏ムネ肉から抽出されたプラズマローゲンは、脳神経細胞新生剤の有効成分といえる。加えて、(ク)のとおり、脳神経細胞新生剤の投与対象は、神経疾患患者及び神経疾患を患う可能性の高い人又は哺乳動物等である。
そうすると、甲A1には、以下の発明が記載されているといえる。

「プラズマローゲンを有効成分とする脳神経細胞新生剤であって、前記プラズマローゲンは、鶏ムネ肉から抽出された鶏ムネ肉由来高純度プラズマローゲン含有物に94.6質量%含有されるプラズマローゲンであって、エタノールアミンプラズマローゲン47.9%、コリンプラズマローゲン46.7%であり、神経疾患患者及び神経疾患を患う可能性の高い人又は哺乳動物等に対し投与又は摂取させる、脳神経細胞新生剤」
(以下、「甲1発明」という。)

オ.以下、本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明では、プラズマローゲンの面積比率94.6%のうち、エタノールアミンプラズマローゲンが47.9%、コリンプラズマローゲンが46.7%であって、両者の合計がプラズマローゲンの全面積比率と等しいことから、甲1発明のプラズマローゲンはその100重量%がエタノールアミンプラズマローゲン及びコリンプラズマローゲンである。また両者の質量比は、約1:0.97である。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、

「プラズマローゲンを含む剤であって、
前記プラズマローゲンが、鶏ムネ肉から抽出されたプラズマローゲンであり、
前記プラズマローゲンが、エタノールアミンプラズマローゲン及びコリンプラズマローゲンを含み、
前記プラズマローゲンの90重量%以上が、エタノールアミンプラズマローゲン及びコリンプラズマローゲンであり、
前記プラズマローゲンに含有される(エタノールアミンプラズマローゲン:コリンプラズマローゲン)の質量比が、(1:2)?(2:1)であり、
哺乳動物に対して投与されるように用いられる、剤。」

である点で一致し、以下の点で相違するといえる。

(相違点)本件発明1は「健常な哺乳動物に対して投与されるように用いられ、健常な学習記憶能力を増強するための学習記憶能力増強剤」であるのに対し、甲1発明は「脳神経細胞新生剤」である点

カ.上記相違点につき、申立人Aは特許異議申立書において、ウ.(エ)、(カ)及び(キ)の記載を根拠に、甲A1には、健常者が予防のために、甲A1の脳神経細胞新生用の飲食品を摂取する場合も含む意図で、「学習記憶などの学習能力の向上という効果をも奏する」と記載しているから、実質的な相違点ではない旨主張している。
しかしながら、甲A1では、プラズマローゲンを有効成分とする脳神経細胞新生剤により、脳神経細胞を新生させ、増加させることができると記載され、実施例においては、老化促進マウス(SAMP8)に鶏ムネ肉由来のプラズマローゲンを投与し、実際に脳神経細胞が新生したことが確認されているものの、脳神経細胞の新生と学習記憶などの学習能力の向上との関連を示す本件出願日当時の技術常識はないこと、またウ.(エ)の記載は、単に「学習記憶などの学習能力の向上という効果をも奏すると考えられる」という推論的なものにすぎないことを踏まえると、鶏ムネ肉由来のプラズマローゲンを有効成分とする脳神経細胞新生剤を健常な哺乳動物に投与し健常な学習記憶能力を増強させることが、甲A1に開示されているということはできない。

キ.よって、出願人の主張は採用できず、本件発明1は、甲1発明ではない。

ク.また、本件発明2?5は、本件発明1の発明特定事項をすべて含むものであるから、本件発明2?5もまた、甲1発明ではない。

ケ.以上のとおりであるから、本件発明1?5は、甲A1に記載された発明ではなく、特許法第29条第1項第3号の規定により、特許を受けることができなかったものではない。

(3)特許法第29条第2項について
ア.申立人Aは、特許異議申立書において、訂正前の本件特許の請求項1?5に係る発明は、本件特許出願前に頒布された刊行物である甲A1?甲A5に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができなかったものである旨主張する。

イ.申立人Aは、証拠方法として以下の甲A1?甲A5を提出した。
甲A1:国際公開第2011/083827号
甲A2:「アンチエイジングをめざした水産物の利用」、
平田孝、菅原達也編者、公益社団法人 日本水産学会監修
株式会社恒星社厚生閣、平成23年9月30日発行
52-60頁
甲A3:Effects of dietary docosahexaenoic acid connecting
phospholipids on the learning ability and fatty acid
composition of the brain,
JOURNAL OF NUTRITIONAL SCIENCE AND VITAMINOLOGY、
Vol 55, No 4, 2009年8月、374-380頁の写し、及びその翻訳文
甲A4:アルツハイマーモデルラットの空間認知力とアミロイドβ凝集
反応に対する食餌性プラズマローゲンの効能に関する研究、
博士学位論文の要旨及び審査結果の要旨、
公開日:2009年2月26日、東北大学機関リポジトリ
甲A5:アルツハイマーモデルラットの空間認知力とアミロイドβ凝集
反応に対する食餌性プラズマローゲンの効能に関する研究、
山下慎司[著]、東北大学、博士論文、
国立国会図書館蔵書

ウ.甲A2?甲A5には、以下の事項が記載されている。

(ア)甲A2
「ホヤのPE画分の約60%はプラズマローゲンである。ホヤプラズマローゲンのグリセロール骨格の1位に結合するのは炭素数18(1位結合炭素鎖の88%を占める)の長鎖炭素鎖であり,2位にはDHA(総脂肪酸の46%)やエイコサペンタエン酸(EPA,総脂肪酸の31%)がエステル結合したものが主分子種であった・・・」(p57下から3行?p582行)

「アルツハイマーモデルラットは・・・ラットの脳室にアミロイドβを浸透圧ポンプで連続的に注入することで作成した。・・・その結果,ホヤプラズマローゲンの経口摂取によって,アミロイドβによって引き起こされる空間認知力の低下が有意に抑制されることがわかった。このような効果は長期記憶と短期記憶の両方で観察され,さらに,ホヤプラズマローゲンの摂取によって行動試験のごく初期から観察される認知力の低下を顕著に防ぐことが確認された.・・・」(p58下から4行?p596行)

(イ)甲A3
「リン脂質に結合する食物ドコサヘキサエン酸(DHA、C22:6n-3)の、学習能力及び脳の脂肪酸組成に対する効果を、高コレステロール血症マウスを用いて調査した。ICRマウスは、2世代にわたって非常に低レベルのn-3脂肪酸に供された。4週齢で、4種の脂質(サフラワー油:Saf、DHA結合トリグリセリド:DHA-TG、DHA結合リン脂質:DHA-PL、大豆リン脂質:Soy-PL)を5週間投与した。別の群のICRマウスを得て、市販の食餌(CE-2、CLEAJapan、Inc.)を対照として与えた。マウスの学習能力および記憶能力は、修正された回避手順によって評価された。学習および記憶能力レベルは、DHA-PL食餌を与えたマウスでは、SafおよびSoy-PL食餌を与えたマウスよりも有意に高く、対照と同じレベルであった。脳内のホスファチジルエタノールアミンのDHAレベルは、2種類のDHA含有食餌を与えたマウスではSafおよびSoy-PL食餌を与えたマウスよりも有意に高く、DHA-TGとDHA-PLの間で有意差はなかった。脳のジメチルアセタールレベルは、DHA-PL食餌を与えたマウスでは、SafおよびDHA-TG食を与えたマウスより有意に高かった。これらの結果は、リン脂質に結合する食物DHAが記憶学習を改善する効果を有し、脳のDHA及びプラズマローゲンレベルに関連し得ることを示唆している。」(Summaryの翻訳文)

(ウ)甲A4
「・・・そこで、ホヤ内蔵から40%純度のプラズマローゲンを精製した。これを用いて、プラズマローゲンの経口投与がアルツハイマーモデルラットの行動に与える影響を明らかにしようとした。
・・・
アルツハイマーモデルラットは、凝集核として塩化アルミニウムを脳梁に注入後、アミロイドβ(1-40)を脳梁にオスミニウムポンプにより2時間持続注入することで作製した。
・・・
[結果と考察]
●プラズマローゲン投与による行動改善効果
プラズマローゲンをアルツハイマーモデルラットに与えると、行動試験のごく初期から、参照記憶エラー数と作業記憶エラー数が低値を示すことがわかった・・・プラズマローゲンの経口摂取は即効的に空間認知の改善を促す可能性が示された。
・・・
ホヤ由来プラズマローゲンを構成する脂肪酸の大部分はドコサヘキサエン酸(DHA)とエイコサペンタエン酸(EPA)などの高度不飽和脂肪酸である・・・」
(p587-p590、第一章)

(エ)甲A5
「・・・そこで、ホヤ内蔵からプラズマローゲンを精製し、これを用いて、プラズマローゲンの経口投与がアルツハイマーモデルラットの行動に与える影響を明らかにしようとした。」(p6、第一章の緒言)

「・・・ホヤPE画分のPEにはグリセロール骨格の1位にビニルエーテル結合を有する炭素数18の炭素鎖(18:0p)をもつプラズマローゲンが多く、その中でも特に、2位に20:5(EPA)と22:6(DHA)を含むプラズマローゲンが多く含まれていることがわかった・・・」(p16、1-1-3-3)

「本実験により、プラズマローゲンの経口投与はアミロイドβにより引き起こされる空間認知力の低下を防ぐことがわかった。その効果は長期記憶、短期記憶の両方でみられ、さらに行動試験のごく初期から顕著に認知力の低下を防いだ。・・・」
(p51、1-2-4、第一段落)

エ.以下、本件発明1と甲1発明との相違点について検討する。
(ア)鶏ムネ肉由来のプラズマローゲンを有効成分とする脳神経細胞新生剤を健常な哺乳動物に投与し健常な学習記憶能力を増強させることが、甲A1に開示されているとはいえないことは、(2)カ.に説示したとおりである。

(イ)また、ウ.のとおり、甲A2,甲A4及び甲A5には、ホヤ由来のプラズマローゲンがアルツハイマーモデルラットに対し空間認知力の低下を抑制したことが記載され、さらに甲A3には、プラズマローゲンではないDHA結合リン脂質をラットに与えた際に、学習能力及び記憶能力が有意に高まることが記載されている。
しかしながら、そもそも甲A2?甲A5に記載される有効成分は、甲1発明の鶏ムネ肉由来のプラズマローゲンとは異なるものであり、プラズマローゲンは由来する生体組織によりリン酸結合基及び脂肪酸由来基の構造、組成等が異なり、それにより発現する作用効果も異なり得るという本件出願日当時の技術常識も踏まえると、甲A2?甲A5の記載を参酌しても、鶏ムネ肉由来のプラズマローゲンを有効成分とする脳神経細胞新生剤である甲1発明が、健常な哺乳動物に投与し健常な学習記憶能力を増強させるための学習記憶能力増強剤として使用しうることを、当業者が想起することはない。

オ.そして、本件発明1は、鶏ムネ肉由来であって特定組成のプラズマローゲンが健常な哺乳動物の健常な学習記憶能力を向上させるという、従来技術からは予測し得ない作用効果を奏するものである。

カ.したがって、本件発明1は、甲1発明及び甲A1?甲A5の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

キ.また、本件発明2?5は、本件発明1の発明特定事項をすべて含むものであるから、本件発明2?5もまた、甲1発明及び甲A1?甲A5の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。。

ク.以上のことから、本件発明1?5は、甲1発明及び甲A1?甲A5の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができなかったものではない。

2.申立人Bによる特許異議申立ての理由
(1)特許法第36条第6項第2号について
申立人Bは、特許異議申立書において、以下の二点を理由に、訂正前の本件特許の請求項1?5に記載された発明は、特許法第36条第6項第2号に違反している旨主張する。
(ア)「健常な哺乳動物」とは、どのような哺乳動物を意味しているのかが明確でない。
(イ)「健常な学習記憶能力を増強するため」とは、どのような意味であるかが明確でない。
しかしながら、1.(1)と同様の理由により、本件発明1?5は明確であり、本件の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号の規定に適合する。

(2)特許法第29条第1項第3号について
ア.申立人Bは、特許異議申立書において、訂正前の本件特許の請求項1?5に係る発明は、本件特許出願前に頒布された刊行物である甲B1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により、特許を受けることができなかったものである旨主張する。

イ.申立人Bは、証拠方法として以下の甲B1を提出した。
甲B1:国際公開第2011/083827号

ウ.しかしながら、甲B1は甲A1と同一であり、1.(2)のとおり、甲A1に記載された甲1発明は本件発明1?5ではないので、本件発明1?5は、甲B1に記載された発明ではなく、特許法第29条第1項第3号の規定により、特許を受けることができなかったものではない。

(3)特許法第29条第2項について
ア.申立人Bは、特許異議申立書において、訂正前の本件発明1?5は、本件特許出願前に頒布された刊行物である甲B1?甲B6に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができなかったものである旨主張する。

イ.申立人Bは、証拠方法として以下の甲B1?甲B6を提出した。
甲B1:国際公開第2011/083827号
甲B2:特開2009-269864号公報
甲B3:特開2012-36214号公報
甲B4:「アンチエイジングをめざした水産物の利用」、
平田孝、菅原達也編者、公益社団法人 日本水産学会監修
株式会社恒星社厚生閣、平成23年9月30日発行
52-60頁
甲B5:特開平7-143862号公報
甲B6:Effects of dietary docosahexaenoic acid connecting
phospholipids on the learning ability and fatty acid
composition of the brain,
JOURNAL OF NUTRITIONAL SCIENCE AND VITAMINOLOGY、
Vol 55, No 4, 2009年8月、374-380頁の写し、及びその翻訳文

ウ.上記のうち、甲B4は甲A2と、甲B6は甲A3と同一であり、その記載された事項については、1.(3)ウ.のとおりである。
また、甲B2,B3,B5には、以下の事項が記載されている。

(ア)甲B2
「プラスマローゲンを有効成分として含むことを特徴とするリン脂質結合型アラキドン酸増加剤。」(【請求項1】)

「・・・
〔製造例1〕
凍結乾燥したブタ脳1.4kgを、ヘキサン/エタノール混合溶剤(6:4)で脂質を抽出した。得られた粗脂質は溶剤蒸留後、ヘキサン/エタノール混合溶剤(8:2)に溶解し、あらかじめヘキサン/エタノール混合溶剤(8:2)で平衡化したシリカゲルカラム(400g)にアプライした。引き続きシリカゲルカラムに、ヘキサン/エタノール混合溶剤(8:2)4Lで中性脂質を溶出後、エタノール8Lで溶出させ、プラスマローゲン含有リン脂質〔エタノールアミン型グリセロリン脂質(以下EPという)90%以上含有〕24gを得た。全脂肪酸組成中のアラキドン酸は9.8%であった。全脂肪酸組成を表1に記載した。
また、プラスマローゲン濃度は54%であり、脂肪酸組成中のアラキドン酸は19.75%であった。全脂肪酸組成を表2に記載した。
〔製造例2〕
凍結乾燥したウシ心臓3.6kgを、ヘキサン/エタノール混合溶剤(6:4)で脂質を抽出した。得られた粗脂質は溶剤蒸留後、ヘキサン/エタノール混合溶剤(8:2)に溶解し、あらかじめヘキサン/エタノール混合溶剤(8:2)で平衡化したシリカゲルカラム(400g)にアプライした。引き続きシリカゲルカラムに、ヘキサン/エタノール混合溶剤(8:2)4Lで中性脂質を溶出後、次いでエタノール8Lでエタノールアミン
型グリセロリン脂質を溶出、更にエタノール/水混合溶剤(8:2)11Lで溶出させ、プラスマローゲン含有リン脂質〔コリン型グリセロリン脂質(以下CPという)90%以上含有〕8.0gを得た。全脂肪酸組成中のアラキドン酸は4.3%であった。全脂肪酸組成を表1に記載した。なお、参考のため、卵黄から抽出したエタノールアミン型グリセロリン脂質の全脂肪酸組成についても表1に記載した。
また、プラスマローゲン濃度は59%であり、脂肪酸組成中のアラキドン酸は16.47%であった。全脂肪酸組成を表2に記載した。
【表1】

【表2】

〔実施例1?2、比較例1?2〕
6週齢のWistar-ST系雄ラットをステンレスケージに個別に入れて飼育し、飼料及び水(水道水)を自由に摂取させた。毎朝同一時刻に体重及び摂食量を計測した。試験飼料は毎日、飲水は3日毎に交換した。なお、飼育室を、室温23±1℃、湿度60%前後、明暗周期を12時間(明期8:00?20:00、暗期20:00?8:00)に設定した。
AIN93Gに準じた精製飼料(基本食)で5日間飼育した後、基本食(比較例1)、基本食の大豆油の50%を、卵黄から精製したコリン型グリセロリン脂質(卵黄PC:比較例2)、製造例1のエタノールアミン型グリセロリン脂質(ブタ脳PE:実施例1)、製造例2のコリン型グリセロリン脂質(ウシ心臓PC:実施例2)に置き換えて飼育した。
・・・
上記表4からわかるとおり、本発明のリン脂質結合型アラキドン酸増加剤を投与した実施例1、実施例2では、コントロール(比較例1)に比べ、血清中のリン脂質結合型アラキドン酸含量が有意に増加していることがわかる。
特に実施例1(1.58倍)よりも実施例2(2.94倍)の効果が高いことから、エタノールアミン型グリセロリン脂質に比べコリン型グリセロリン脂質が、血清中のリン脂質結合型アラキドン酸増加剤として有用であることがわかる。
なお、プラスマローゲン中のアラキドン酸含量は比較例とほぼ同等であるにもかかわらず、血清中のプラスマローゲン結合型アラキドン酸含量が飛躍的に増加していることから、プラスマローゲンが小腸で吸収されてから血液中に放出されるまでの間に、アラキドン酸がプラスマローゲンに選択的に再エステル化されていること示された。
〔実施例3、4〕
カプセル剤として経口投与した場合を想定し、十二指腸に脂質投与用、胸管にリンパ液採取用カテーテルを留置したWistar-ST系雄ラット(10週齢)に、製造例1で得たエタノールアミン型リン脂質(実施例3)、製造例2で得たコリン型リン脂質(実施例4)を、タウロコール酸ナトリウムで10%エマルジョンとし、それぞれを1.0mL経腸投与した。投与開始から4時間、経時的に胸管リンパ液を全量採取し、リンパ液からリン脂質を抽出後、吸収されたプラスマローゲンの脂肪酸組成をLC/MSにて測定、投与したエマルジョン中のプラスマローゲンと比較し、その結果を表5に記載した。表5の結果からわかるとおり、投与エマルジョン中のC20:4(アラキドン酸)含量に比べ、リンパ液中のC20:4(アラキドン酸)含量が飛躍的に増加していることから、リンパ液中には、アラキドン酸結合型プラスマローゲンが選択的に放出されることが示された。
また、リンパ液から抽出したリン脂質中のアラキドン酸結合型プラスマローゲンの含量についても、LC/MSにて測定し、表6に記載した。表6の結果から、エタノールアミン型グリセロリン脂質に比べコリン型グリセロリン脂質が、リンパ液中のアラキドン酸結合型プラスマローゲンを特異的に増加させることがわかる。
・・・」(【0031】-【0042】)

(イ)甲B3
「アラキドン酸及び/又はアラキドン酸を構成脂肪酸とする化合物を含んで成る、脳機能の低下に起因する症状あるいは疾患の予防又は改善作用を有する組成物。」(【請求項1】)

「実施例1.アラキドン酸を含有するトリグリセリドの製造方法
・・・アラキドン酸含有トリグリセリド(アラキドン酸はトリグリセリドの任意な位置に結合)150kgを得た。
得られた油脂(トリグリセリド)をメチルエステル化し、得られた脂肪酸メチルエステルをガスクロマトグラフィーで分析したところ、全脂肪酸に占めるアラキドン酸の割合は40.84質量%であった。なお、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、γ-リノレン酸、ジホモ-γ-リノレン酸などが、それぞれ、11.63、7.45、7.73、9.14、2.23、3.27質量%であった。さらに、上記アラキドン酸含有油脂(トリグリセリド)をエチルエステル化し、アラキドン酸エチルエステルを40質量%含む脂肪酸エチルエステル混合物から、定法の高速液体クロマトグラフィーによって、99質量%アラキドン酸エチルエステルを分離・精製した。
実施例2.8A8を5モル%以上含有するトリグリセリドの製造
・・・8A8を含有する油脂(トリグリセリド)を得た。
そして、ガスクロマトグラフィー及び高速液体クロマトグラフィーにより、得られた8A8含有油脂(トリグリセリド)中の8A8の割合を調べたところ、31.6モル%であった(なお、8P8、808、8L8、8G8、8D8の割合はそれぞれ0.6、7.9、15.1、5.2、4.8モル%であった。トリグリセリドの2-位に結合する脂肪酸P、O、L、G、Dはそれぞれパルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、γ-リノレン酸、ジホモ-γ-リノレン酸を表し、8P8は1,3-カプリロイル-2-パルミトイル-グリセロール、808は1,3-カプリロイル-2-オレオイル-グリセロール、8L8は1,3-カプリロイル-2-リノレオイル-グリセロール、8G8は1,3-カプリロイル-2-γ-リノレノイル-グリセロール、8D8は1,3-カプリロイル-2-ジホモ-γ-リノレノイル-グリセロールをいう)。なお、得られた8A8含有油脂(トリグリセリド)から定法の高速液体クロマトグラフィーによって、96モル% 8A8を分離・精製した。
実施例3.モリス型水迷路試験によるTGA40Sの学習能評価
老齢ラットの実験群として、18ヶ月齢雄性Fischer系ラット16匹を対照飼料群(8匹:OC群)とTGA40S配合飼料群(8匹:OA群)の2群に分け、それぞれの群に、表1に示した対照飼料およびSUNTGA40S配合飼料を与えた。そして、若齢ラットのコントロール群(YC群)として、4ヶ月齢雄性Fischer系ラット8匹に表1に示した対照飼料を与えた(YC群)。なお、TGA40S配合飼料に使用したTGA40Sは実施例1で得たものを使用した。
・・・
飼育3ヶ月目(老齢ラットの場合は21ヶ月齢、若齢ラットの場合は7ヶ月齢)の前後でモリス型水迷路学習試験を実施した。
・・・若齢ラットに比較して、老齢ラットの学習の獲得率は明らかに低下するが、TAG40Sつまりアラキドン酸を与えることで、若齢ラットのレベルに近づき改善した・・・
次に、学習の獲得の度合いを計るため、プローブテストを、前記2週間の学習の翌日、すなわち、15日目に実施した。
・・・老齢ラットにTGA40Sを与えたOA群については、逃避台のあった区画の滞在時間(逃避台の場所を記憶して、あった場所を泳いでいる時間)は有意に長いことがわかる。・・・
次に、モリス型水迷路試験に供したラットから、脳海馬を摘出し、Folch法にて全脂質を抽出した。・・・逃避台への到達時間では、海馬アラキドン酸量と負の相関(相関係数R=-0.38)が、遊泳軌跡のHit%とは正の相関(相関係数R=0.32)が認められた。・・・このように、TGA40Sを与えることで、学習能あるいは認知能力が改善することを初めて明らかにし、その効果はアラキドン酸によることが初めて証明された。
実施例4.モリス型水迷路試験による8A8の学習能評価
老齢ラットの実験群として、18ヶ月齢雄性Fischer系ラット20匹を対照飼料群(6匹:OC群)、TGA40S配合飼料群(6匹:OA群)と8A8配合飼料群(8匹:8A8群)の3群に分け、それぞれの群に、表3に示した対照飼料、TGA40S配合飼料及び8A8配合飼料を与えた。そして、若齢ラットの対照群(YC群)として、4ヶ月齢雄性Fischer系ラット8匹に表3に示した対照飼料を与えた。なお、8A8配合飼料に使用した8A8は実施例2で得た96モル% 8A8を使用した。
・・・
飼育3ヶ月目(老齢ラットの場合は21ヶ月齢、若齢ラットの場合は7ヶ月齢)の前後でモリス型水迷路学習試験を実施した。
・・・したがって、アラキドン酸を構成脂肪酸とするトリグリセリドを与えることにより、加齢に伴って低下した学習の獲得の度合いが、若齢ラットのレベルに向って、有意に改善された。そして、TGA40Sと8A8の比較では、8A8の方が学習の獲得の度合いが高い傾向を示した。OA群、8A8群いずれも、ラットのアラキドン酸摂取量は同じであることから、8A8の方が吸収されやすいことを示しており、加齢により活性が低下した膵リパーゼに有効であることを実証した。
実施例5.モリス型水迷路試験による8A8を5%以上含むトリグリセリドの学習能評価
老齢ラットの実験群として、18ヶ月齢雄性Fischer系ラット20匹を対照飼料群(6匹:OC群)、8A8配合飼料群(6匹:8A8群)と8A8含有油脂配合飼料群(8匹:8A8(32モル%)群)の3群に分け、それぞれの群に、表4に示した対照飼料、8A8配合飼料及び8A8含有油脂配合飼料を与えた。そして、若齢ラットの対照群として、4ヶ月齢雄性Fischer系ラット8匹に表4に示した対照飼料を与えた(YC群)。なお、8A8配合飼料に使用した8A8は実施例2で得た96モル% 8A8を、8A8含有油脂配合飼料に使用した8A8含有油脂(トリグリセリド)は実施例2で得た8A8を31.6モル%含有する油脂(トリグリセリド)を使用した。
・・・
飼育3ヶ月目(老齢ラットの場合は21ヶ月齢、若齢ラットの場合は7ヶ月齢)の前後でモリス型水迷路学習試験を実施した。
・・・したがって、8A8を5モル%以上含有する油脂(トリグリセリド)を与えることにより、加齢に伴って低下した学習の獲得の度合いが、若齢ラットのレベルに向って、有意に改善された。しかし、8A8配合飼料群より、明らかに獲得の度合いは低値であり、8A8の濃度、さらにはアラキドン酸の濃度に依存することを実証した。」
(【0060】-【0084】)

(ウ)甲B5
「食品中にドコサヘキサエン酸またはその誘導体のエステル、アミド、トリグリセリド、リン脂質のうち少なくとも一種以上を有効成分として含有する脳機能改善組成物を混入したことを特徴とする学習能力増強、記憶力増強、痴呆予防などの脳機能改善効果を有する機能性食品。」
(最上段の【請求項1】)

「<実験例3.>“DHAリン脂質群”の学習能力向上及び記憶力向上効果の実験。
雄ウィスタ-系4週令ラット20匹を1週間予備飼育した後、11週間DHA含有リン脂質を有効成分として混入した試験飼料で飼育し、その後、2週間ラットの体重が85%になるように個別飼いケ-ジに入れてShappingを行ってから本試験を行う。以下、このように、試験飼料により飼育をしたラット群を“DHAリン脂質群”と称す。
・・・この場合も、実験を開始してから18日目にはDHAリン脂質群の正反応率が73%に達し、対照群(正反応率)にくらべて極めて高い正反応率を示している。・・・DHAリン脂質群の方が、早く灯りの側へ行けば、餌がもらえることを学習し、それを何日も忘れずに記憶していることになる。つまり、DHA含有リン脂質の場合も、DHA含有トリグリセリドや、DHA含有エチルエステルを有効成分とした場合とほぼ同じように、Y迷路を用いて行った明暗弁別餌とり行動における学習効果を強力に増強し、記憶力を増強する効果が得られた。」
(【0021】【0022】)

エ.以下、本件発明1と甲1発明との相違点について検討する。
(ア)鶏ムネ肉由来のプラズマローゲンを有効成分とする脳神経細胞新生剤を健常な哺乳動物に投与し健常な学習記憶能力を増強させることが、甲B1に開示されているとはいえないことは、1.(2)カ.に説示したとおりである。

(イ)また、1.(3)のウ.、及び上記ウ.のとおり、甲B2にはブタ脳由来のエタノールアミン型プラズマローゲン及びウシ心臓由来のコリン型プラズマローゲンをラットに摂取させると血清中又はリンパ液中のプラズマローゲン結合型アラキドン酸含量を増加させることが、甲B3にはプラズマローゲンではないアラキドン酸含有トリグリセリドが老齢ラットにおける学習脳あるいは認知能力を改善することが、甲B4にはホヤ由来のプラズマローゲンがアルツハイマーモデルラットに対し空間認知力の低下を抑制したことが、甲B5にはプラズマローゲンであるか否か不明であるDHAリン脂質をラットに摂取させた際に学習能力、記憶能力の増強が見られたことが、並びに甲B6にはプラズマローゲンではないDHA結合リン脂質をラットに与えた際に学習能力及び記憶能力が有意に高まることが記載されている。
しかしながら、そもそも甲B2?甲B6に記載される有効成分は、甲1発明の鶏ムネ肉由来のプラズマローゲンとは異なるものであり、プラズマローゲンは由来する生体組織によりリン酸結合基及び脂肪酸由来基の構造、組成等が異なり、それにより発現する作用効果も異なり得るという本件出願日当時の技術常識も踏まえると、甲B2?甲B6の記載をどのように組み合わせて参酌しても、鶏ムネ肉由来のプラズマローゲンを有効成分とする脳神経細胞新生剤である甲1発明が、健常な哺乳動物に投与し健常な学習記憶能力を増強させるための学習記憶能力増強剤として使用しうることを、当業者が想起することはない。

オ.そして、本件発明1は、鶏ムネ肉由来であって特定組成のプラズマローゲンが健常な哺乳動物の健常な学習記憶能力を向上させるという、従来技術からは予測し得ない作用効果を奏するものである。

カ.したがって、本件発明1は、甲1発明及び甲B1?甲B6の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

キ.また、本件発明2?5は、本件発明1の発明特定事項をすべて含むものであるから、本件発明2?5もまた、甲1発明及び甲B1?甲B6の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。。

ク.以上のことから、本件発明1?5は、甲1発明及び甲B1?甲B6の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができなかったものではない。

3.申立人Cによる特許異議申立ての理由
(1)特許法第36条第6項第2号について
ア.申立人Cは、特許異議申立書において、甲C1(以下(2)参照、甲A1及び甲B1と同一。)に記載されるSMAP8は老化促進マウスであるから、老化が促進されて加齢により学習・記憶が障害された状態の哺乳動物であり、そのような加齢による学習記憶能力の低下(障害)は疾患と呼ばれないことが通常であって、能力が低下していても「健常な」学習記憶能力であると解することができるにもかかわらず、特許権者は平成29年 7月 3日付け審判請求書において、SMAP8は「健常な」マウスではないと主張しているから、本件明細書の【0054】の記載を参酌しても、訂正前の請求項1に記載される「健常な哺乳動物」及び「健常な学習記憶能力」の各用語が示す範囲を明確に把握することができないので、訂正前の本件特許の請求項1?5に記載された発明は、不明確である旨主張する。

イ.しかしながら、1.(1)で説示するとおり、本件発明1の「健常な哺乳動物」が、「学習記憶能力が低下するような疾患に罹患していない哺乳動物」であって、「健常な学習記憶能力を増強するため」が、「医療行為を指向するもの」ではなく、「学習記憶能力が低下するような疾患に罹患していない」状態から「学習記憶能力を増強するため」を示すことは明確である。

ウ.また、申立人Cは、SMAP8が老化促進マウスと称されることのみをもって、SMAP8が「健常な」哺乳動物である旨主張するが、1.(2)カ.に示すとおり、SAMP8は老化促進マウスとは称されるものの、SMAP系統は促進老化・短寿命を示すのみならず、『病理学』的変化を基準とした選抜交配により確立された多様な老化『病態』を示すマウス系統であるから(必要であれば、例えば「基礎老化研究」37(3);37-40,2013等参照)、このような交配により意図的に病態が付与されたマウスの状態を、哺乳動物の一般論で言うところの加齢による老化状態と同一であるとする、すなわち「健常な」状態と認定する申立人Cの主張は、採用し得るものではない。

エ.以上より、本件発明1?5は明確であり、本件の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号の規定に適合する。

(2)特許法第29条第1項第3号について
ア.申立人Cは、特許異議申立書において、訂正前の本件特許の請求項1?5に係る発明は、甲C1に記載された発明である旨主張する。

イ.申立人Cは、証拠方法として以下の甲C1を提出した。
甲C1:国際公開第2011/083827号

ウ.しかしながら、甲C1は甲A1と同一であり、1.(2)のとおり、甲A1に記載された甲1発明は本件発明1?5ではない。

エ.申立人Cは、甲C1に記載されたSMAP8が老化促進マウスであることを根拠の一つとして、甲1発明は本件発明1の「健常な学習記憶能力を増強するための学習記憶能力向上剤」に相当すると主張するものの、(1)ウ.のとおり、SMAP8は「健常な」マウスであるとはいえず、その余の点は1.(2)オ.?キ.に示したとおりであるから、当該主張は採用し得るものではない。

オ.以上より、本件発明1?5は、甲C1に記載された発明ではなく、特許法第29条第1項第3号の規定により、特許を受けることができなかったものではない。

(3)特許法第29条第2項について
ア.申立人Cは、特許異議申立書において、訂正前の本件発明1?5は、甲C1に記載された発明に基づき、容易に発明をすることができたものであるか、又は、甲C1に記載された発明及び甲C2の記載事項に基づき、当業者が容易に発明できたものである旨主張する。

イ.申立人Cは、証拠方法として以下の甲C1及び甲C2を提出した。
甲C1:国際公開第2011/083827号
甲C2:Hiratsuka, S et al., Journal of Nutritional Science
and Vitaminology,
2009, Vol.55, p.374-380及びその抄訳文
甲C2は、甲A3及び甲B6と同一である。

ウ.以下、本件発明1と甲1発明との相違点について検討する。
(ア)申立人Cは特許異議申立書において、1.(2)ウ.(エ)の「学習記憶などの学習能力の向上」なる記載から、甲C1には甲1発明を学習記憶などの学習能力の向上に用いることが示唆されており、甲1発明について学習記憶などの学習能力の向上効果を確認してみることは、当業者にとり格別の困難を要することではない旨主張するものの、鶏ムネ肉由来のプラズマローゲンを有効成分とする脳神経細胞新生剤を健常な哺乳動物に投与し健常な学習記憶能力を増強させることが、甲C1に開示されているとはいえないことは、1.(2)カ.に説示したとおりである。

(イ)また、申立人Cは、甲C2にはDHA結合リン脂質の投与により学習記憶能力が増進することが記載されている一方、甲C1にはプラズマローゲンのR2がドコサヘキサノイル基であることが記載されており、当該基が結合したプラズマローゲンはDHA結合リン脂質といえるので、甲C1記載のプラズマローゲンを学習記憶能力の増進に使用してみることは、当業者が容易に想到し得たことである旨主張する。
しかしながら、甲C1におけるドコサヘキサノイル基は、単にプラズマローゲンにおける一般的な脂肪酸側鎖の一例として列挙されたものでしかなく、甲1発明の鶏ムネ肉由来のプラズマローゲンがドコサヘキサノイル基を必須脂肪酸残基として有することが甲C1に記載されている、又は本件出願日当時の技術常識から明らかであるとはいえないので、甲1発明の鶏ムネ肉プラズマローゲンがドコサヘキサノイル基を必須脂肪酸残基とすることを前提とした上記申立人の主張は、採用し得るものではない。

(ウ)以上より、甲C1及び甲C2の記載から、甲1発明を「健常な学習記憶能力を増強するための学習記憶能力増強剤」とすることが容易に想到し得たとはいえない。

エ.そして、本件発明1は、鶏ムネ肉由来であって特定組成のプラズマローゲンが健常な哺乳動物の健常な学習記憶能力を向上させるという、従来技術からは予測し得ない作用効果を奏するものである。

オ.したがって、本件発明1は、甲1発明並びに甲C1及び甲C2の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

カ.また、本件発明2?5は、本件発明1の発明特定事項をすべて含むものであるから、本件発明2?5もまた、甲1発明並びに甲C1及び甲C2の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。。

ク.以上のことから、本件発明1?5は、甲1発明並びに甲C1及び甲C2の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができなかったものではない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、当審が通知した取消理由及び特許異議申立ての理由によっては、請求項1?5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマローゲンを含む、学習記憶能力増強剤であって、
前記プラズマローゲンが、鶏ムネ肉から抽出されたプラズマローゲンであり、
前記プラズマローゲンが、エタノールアミンプラズマローゲン及びコリンプラズマローゲンを含み、
前記プラズマローゲンの90質量%以上が、エタノールアミンプラズマローゲン及びコリンプラズマローゲンであり、
前記プラズマローゲンに含有される(エタノールアミンプラズマローゲン:コリンプラズマローゲン)の質量比が、(1:2)?(2:1)であり、
健常な哺乳動物に対して投与されるように用いられ、健常な学習記憶能力を増強するための学習記憶能力増強剤。
【請求項2】
プラズマローゲンを含む、学習記憶能力増強剤であって、
前記プラズマローゲンが、鶏ムネ肉から抽出されたプラズマローゲンであり、
前記プラズマローゲンが、エタノールアミンプラズマローゲン及びコリンプラズマローゲンを含み、
前記プラズマローゲンの90質量%以上が、エタノールアミンプラズマローゲン及びコリンプラズマローゲンであり、
前記プラズマローゲンに含有される(エタノールアミンプラズマローゲン:コリンプラズマローゲン)の質量比が、(1:1.5)?(1.5:1)であり、
健常な哺乳動物に対して投与されるように用いられ、健常な学習記憶能力を増強するための学習記憶能力増強剤。
【請求項3】
プラズマローゲンを含む、学習記憶能力増強剤であって、
前記プラズマローゲンが、鶏ムネ肉から抽出されたプラズマローゲンであり、
前記プラズマローゲンが、エタノールアミンプラズマローゲン及びコリンプラズマローゲンを含み、
前記プラズマローゲンの90質量%以上が、エタノールアミンプラズマローゲン及びコリンプラズマローゲンであり、
前記プラズマローゲンに含有される(エタノールアミンプラズマローゲン:コリンプラズマローゲン)の質量比が、(1:1.5)?(1.5:1)であり、
健常な哺乳動物に対して投与されるように用いられ、健常な学習記憶能力を増強するための学習記憶能力増強経口剤。
【請求項4】
プラズマローゲンを含む、学習記憶能力増強剤であって、
前記プラズマローゲンが、鶏ムネ肉から抽出されたプラズマローゲンであり、
前記プラズマローゲンが、エタノールアミンプラズマローゲン及びコリンプラズマローゲンを含み、
前記プラズマローゲンの90質量%以上が、エタノールアミンプラズマローゲン及びコリンプラズマローゲンであり、
前記プラズマローゲンに含有される(エタノールアミンプラズマローゲン:コリンプラズマローゲン)の質量比が、(1:1.5)?(1.5:1)であり、
健常なヒトに対して投与されるように用いられ、健常な学習記憶能力を増強するための学習記憶能力増強経口剤。
【請求項5】
プラズマローゲンを含む、学習記憶能力増強剤であって、
前記プラズマローゲンが、鶏ムネ肉から抽出されたプラズマローゲンであり、
前記プラズマローゲンが、エタノールアミンプラズマローゲン及びコリンプラズマローゲンを含み、
前記プラズマローゲンの90質量%以上が、エタノールアミンプラズマローゲン及びコリンプラズマローゲンであり、
前記プラズマローゲンに含有される(エタノールアミンプラズマローゲン:コリンプラズマローゲン)の質量比が、(1:1.5)?(1.5:1)であり、
飲食品又は食品添加剤である、
健常なヒトに対して投与されるように用いられ、健常な学習記憶能力を増強するための学習記憶能力増強経口剤。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-06-14 
出願番号 特願2015-92999(P2015-92999)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (A61K)
P 1 651・ 536- YAA (A61K)
P 1 651・ 113- YAA (A61K)
P 1 651・ 121- YAA (A61K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 参鍋 祐子横山 敏志高橋 樹理  
特許庁審判長 滝口 尚良
特許庁審判官 淺野 美奈
小川 知宏
登録日 2017-09-15 
登録番号 特許第6207545号(P6207545)
権利者 国立大学法人九州大学 丸大食品株式会社
発明の名称 学習記憶能力増強剤  
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所  
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所  
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所  
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